説明

放射線画像撮影システム

【課題】照射される放射線の照射量が低下した場合でも、画質の低下を抑えて透視画像を撮影できる放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】透視撮影中に放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、放射線源130から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に、放射線に対する感度を増加させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムに係り、特に、放射線画像の撮影を連続的に行う透視撮影が可能とされた放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、X線等の放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化され、この放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置は、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線画像撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。なお、放射線検出器には、放射線を変換する方式として、放射線をシンチレータで光に変換した後にフォトダイオード等の半導体層で電荷に変換する間接変換方式や、放射線をアモルファスセレン等の半導体層で電荷に変換する直接変換方式等があり、各方式でも半導体層に使用可能な材料が種々存在する。
【0003】
ところで、透視撮影は、連続的に放射線画像の撮影を繰り返すため、患者の被曝が多くなる。
【0004】
このため、特許文献1には、透視撮影中、面積線量計によって放射線を検出を行い、検出された面積線量に基づいて被検体における照射線量を算出し、算出された照射線量が予め設定された許容照射線量に近くなると、X線発生部より放射される単位時間当たりの放射線の照射量を低下させる技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、X線の実照射時間がX線照射許容時間に近くなると、単位時間当たりの放射線の照射量を低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−198762号公報
【特許文献2】特開2008−272381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術を用いて単位時間当たりの放射線の照射量を低下させた場合、放射線検出器に照射される放射線の照射量も低下し、撮影される放射線画像の画質が低下する。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、照射される放射線の照射量を低下させた場合でも、画質の低下を抑えて透視画像を撮影できる放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線画像撮影システムは、放射線が照射されることにより電荷を発生すると共に当該電荷を蓄積する複数の画素が設けられた放射線検出器と、前記放射線検出器に対して放射線を照射する放射線源と、前記放射線検出器の各画素に蓄積された電荷をそれぞれ電気信号として読み出し、読み出した電気信号に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する生成手段と、放射線画像を連続的に撮影する透視撮影を行う場合、所定のフレームレートで前記放射線検出器の各画素に蓄積された電荷を読み出すように前記生成手段を制御し、当該透視撮影中に前記放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、前記放射線源から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に、放射線に対する感度を増加させる制御を行う制御手段と、を備えている。
【0010】
請求項1に記載の放射線画像撮影システムによれば、放射線が照射されることにより電荷を発生すると共に当該電荷を蓄積する複数の画素が放射線検出器に設けられており、当該放射線検出器に対して放射線源から放射線が照射され、生成手段により、放射線検出器の各画素に蓄積された電荷がそれぞれ電気信号として読み出され、読み出された電気信号に基づいて放射線画像を示す画像情報が生成される。
【0011】
そして、本発明では、制御手段により、放射線画像を連続的に撮影する透視撮影を行う場合、所定のフレームレートで放射線検出器の各画素に蓄積された電荷を読み出すように生成手段が制御され、当該透視撮影中に放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、放射線源から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に、放射線に対する感度を増加させる制御が行われる。
【0012】
このように、請求項1に記載によれば、透視撮影中に放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、放射線源から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に、放射線に対する感度を増加させる制御を行うので、照射される放射線の照射量を低下させた場合でも、画質の低下を抑えて透視画像を撮影できる。
【0013】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、前記生成手段が、前記放射線検出器から読み出した電気信号を増幅する増幅器をさらに備え、前記制御手段が、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記増幅器のゲインを増加させてもよい。
【0014】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、前記制御手段が、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記放射線検出器に設けられた複数の画素にそれぞれ蓄積された電荷又は当該電荷に基づいて生成される放射線画像の画素の情報を、2以上の画素ずつ1つの画素としてまとめるビニングを行ってもよい。
【0015】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、前記放射線検出器が、放射線が照射されることにより電荷が発生する電荷発生層及び当該電荷発生層にバイアス電圧を印加するための電極を有し、前記電極に対してバイアス電圧を供給する供給手段をさらに備え、前記制御手段が、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記電荷発生層に印加するバイアス電圧を増加させてもよい。
【0016】
また、本発明は、請求項5に記載の発明のように、前記放射線検出器が、放射線が照射された際に発光するシート状シンチレータを有すると共に、当該シート状シンチレータの光を検出して前記複数の画素が電荷を発生し、前記複数の画素が設けられた検出領域と重なるように配置され、当該検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有する袋体と、放射線が照射された際に発光する液体シンチレータが貯留されたタンクと、前記タンクに貯留された液体シンチレータの前記袋体への注入及び当該袋体に注入された液体シンチレータの取り出しを行うアクチュエータと、をさらに備え、前記制御手段が、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記アクチュエータを制御して前記タンクに貯留された液体シンチレータを前記袋体へ注入させてもよい。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記袋体が、前記液体シンチレータを注入するための注入口及び注入された液体シンチレータの取り出すための取出口を有し、前記制御手段が、前記透視撮影の際、前記注入口へ前記液体シンチレータを所定量ずつ注入させつつ前記取出口から液体シンチレータを当該所定量ずつ取り出すように前記アクチュエータを制御してもよい。
【0018】
また、請求項5又は請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記シート状シンチレータが、CsIの柱状結晶を含んで構成されてもよい。
【0019】
また、請求項5〜請求項7に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記放射線検出器が、前記複数の画素が形成された基板に前記シート状シンチレータが積層されて構成され、前記基板側から放射線が入射するように配置されてもよい。
【0020】
また、請求項1〜請求項8に記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記制御手段が、前記透視撮影中に前記放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、前記放射線源から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に前記放射線源の管電圧を増加させ、前記生成手段により生成される放射線画像のダイナミックレンジが広がるように放射線に対する感度を増加させる制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、照射される放射線の照射量が低下した場合でも、画質の低下を抑えて透視画像を撮影できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1〜第4の実施の形態に係る放射線情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1〜第4の実施の形態に係る放射線画像撮影システムの放射線撮影室における各装置の配置状態の一例および放射線発生装置の構成を示す斜視図である。
【図3】第1〜第4の実施の形態に係る電子カセッテの内部構成を示す透過斜視図である。
【図4】第1〜第4の実施の形態に係る撮影システムの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図5】第1〜第4の実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分に注目した等価回路図である。
【図6】第1〜第4の実施の形態に係る連続照射での静止画撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図7】第1〜第4の実施の形態に係るパルス照射での静止画撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図8】第1〜第4の実施の形態に係る連続照射での透視撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図9】第1〜第4の実施の形態に係るパルス照射での透視撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図10】第1の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態に係る連続照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図12】第1の実施の形態に係るパルス照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図13】第2の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】第2の実施の形態に係る連続照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図15】第2の実施の形態に係るパルス照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図16】第3の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図17】第3の実施の形態に係る連続照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図18】第3の実施の形態に係るパルス照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図19】第4の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図20】第4の実施の形態に係る連続照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図21】第4の実施の形態に係るパルス照射での透視撮影中に放射線源から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートである。
【図22】第5の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の概略構成を示した側面図である。
【図23】図23(A)は貯留された液量が少ない袋体の状態を示した側面図であり、図23(B)は貯留された液量が少ない袋体の状態を示した側面図である。放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図24】第5の実施の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図25】第5の実施の形態に係るTFTアクティブマトリクス基板66の構成を概略的に示した断面図である。
【図26】第5の実施の形態に係るTFT基板の構成を示した平面図である。
【図27】第5の実施の形態に係る制御部の構成を示したブロック図である。
【図28】第5の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図29】他の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図30】表面照射(裏面読取方式)と裏面照射(表面読取方式)を説明するための断面側面図である。
【図31】他の形態に係る放射線検出器の構成を詳細に示した断面図である。
【図32】他の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図33】他の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した断面図である。
【図34】他の実施の形態に係る放射線検出器の構成を模式的に示した上面図である。
【図35】1フレームあたりの電荷の蓄積期間、電荷の読み出し期間を模式的に示した図である。
【図36】CsIとGOSの温度と感度の関係を示すグラフである。
【図37】CsIの累積被曝量と感度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、放射線検出器を用いて照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する可搬型放射線画像撮影装置(以下、「電子カセッテ」ともいう。)を用いて放射線画像を撮影する放射線画像撮影システムに本発明を適用した形態例について説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、病院における放射線科部門で取り扱われる情報を統括的に管理するシステムである放射線情報システム(以下、「RIS(Radiology Information System)」と称する。)10の構成について説明する。
【0025】
RIS10は、放射線科部門内における、診療予約、診断記録等の情報管理を行うためのシステムであり、病院情報システム(以下、「HIS(Hospital Information System)」と称する。)の一部を構成する。
【0026】
RIS10は、複数台の撮影依頼端末装置(以下、「端末装置」と称する。)12、RISサーバ14、および病院内の放射線撮影室(あるいは手術室)の個々に設置された放射線画像撮影システム(以下、「撮影システム」と称する。)18を有しており、これらが有線や無線のLAN(Local Area Network)等から成る病院内ネットワーク16に各々接続されて構成されている。なお、病院内ネットワーク16には、HIS全体を管理するHISサーバ(図示省略。)も接続されている。
【0027】
端末装置12は、医師や放射線技師が、診断情報や施設予約の入力、閲覧等を行うためのものであり、放射線画像の撮影依頼や撮影予約もこの端末装置12を介して行われる。各端末装置12は、表示装置を有するパーソナル・コンピュータを含んで構成され、RISサーバ14と病院内ネットワーク16を介して相互通信が可能とされている。
【0028】
一方、RISサーバ14は、各端末装置12からの撮影依頼を受け付け、撮影システム18における放射線画像の撮影スケジュールを管理するものであり、データベース14Aを含んで構成されている。
【0029】
データベース14Aは、患者の属性情報(氏名、性別、生年月日、年齢、血液型、体重、患者ID(Identification)等)、病歴、受診歴、過去に撮影した放射線画像等の患者に関する情報を含んで構成されている。
【0030】
撮影システム18は、RISサーバ14からの指示に応じて医師や放射線技師の操作により放射線画像の撮影を行う。撮影システム18は、放射線源130(図2も参照。)から曝射条件に従った線量とされた放射線X(図3も参照。)を被検者に照射する放射線発生装置34と、患者の撮影対象部位を透過した放射線Xを吸収して電荷を発生し、発生した電荷を蓄積する放射線検出器60(図3も参照。)を内蔵する電子カセッテ32と、電子カセッテ32に内蔵されているバッテリを充電するクレードル40と、電子カセッテ32,放射線発生装置34,およびクレードル40を制御するコンソール42と、を備えている。
【0031】
図2には、本実施の形態に係る撮影システム18の放射線撮影室44における各装置の配置状態の一例および放射線発生装置34の構成が示されている。
【0032】
本実施の形態に係る撮影システム18では、放射線発生装置34とコンソール42とをそれぞれケーブルで接続して有線通信によって各種情報の送受信を行うが、図2では、放射線発生装置34とコンソール42を接続するケーブルを省略している。また、電子カセッテ32とコンソール42との間は、無線通信又は有線通信によって各種情報の送受信を行う。
【0033】
本実施の形態に係る放射線発生装置34は、Cアーム140を備えており、Cアーム140の一端には放射線Xを射出する放射線源130が設けられる一方、他端には電子カセッテ32が着脱可能とされた着脱機構142が設けられている。なお、同図では、電子カセッテ32が着脱機構142から取り外されており、放射線撮影室44の略中央部に設けられたベッド46と当該ベッド46に仰臥している被検者(患者)48との間に設けられた状態が示されている。
【0034】
放射線源130は、支持軸136および一対の支持板138を介してCアーム140の一端に設けられており、支持軸136を回転中心として同図A方向およびB方向に回転可能とされると共に、支持板138と共にCアーム140の円弧の接線を軸として同図C方向およびD方向に回転可能とされている。
【0035】
Cアーム140の円筒面の外周に当接する位置には、Cアーム140を同図時計回り方向および反時計回り方向に回転可能に保持するCアーム保持部144が設けられる一方、Cアーム保持部144はCアーム保持部146を介して支柱148に上下移動自在に保持されている。また、Cアーム保持部144は、Cアーム保持部146に対して水平軸まわりに回転可能に支持されている。
【0036】
一方、放射線発生装置34は、後述する通信I/F部132、線源制御部134等を内蔵した本体部150を備えており、支柱148は、下端が本体部150の筐体の下端部近傍から側方に突設された支柱支持部152に取り付けられている。
【0037】
また、本体部150の底部には車輪154が設けられており、放射線発生装置34は病院内を移動することができる。
【0038】
一方、本実施の形態に係る放射線撮影室44には、その壁面付近にクレードル40およびコンソール42が設置されている。
【0039】
クレードル40は、電子カセッテ32を収納可能な収容部40Aが形成されている。
【0040】
電子カセッテ32は、待機時、クレードル40の収容部40Aに収納され、内蔵されるバッテリに充電が行われ、放射線画像の撮影時、クレードル40から取り出され、被検者48の撮影部位に対応する位置(同図に示される位置)に配置されるか、または放射線発生装置34のCアーム140における着脱機構142に取り付けられて用いられる。
【0041】
なお、電子カセッテ32は、放射線撮影室や手術室のみで使用されるものではなく、その可搬性から、例えば、検診や病院内での回診等にも使用することができる。
【0042】
図3には、本実施の形態に係る電子カセッテ32の内部構成が示されている。
【0043】
同図に示すように、電子カセッテ32は、放射線Xを透過させる材料からなる筐体54を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ32は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ32を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ32を繰り返し続けて使用することができる。
【0044】
筐体54の内部には、放射線Xが照射される筐体54の照射面56側から、患者による放射線Xの散乱線を除去するグリッド58、患者を透過した放射線Xを検出する放射線検出器60、および放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板62が順に配設されている。なお、筐体54の照射面56をグリッド58として構成してもよい。この筐体54の側面にはケーブル43を接続するための接続端子32Aが設けられている。
【0045】
また、筐体54の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能な二次電池を収容するケース31が配置されている。放射線検出器60及び電子回路は、ケース31に配置された二次電池から供給される電力によって作動する。ケース31内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース31の照射面56側には鉛板等を配設しておくことが望ましい。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ32は、照射面56の形状が長方形とされた直方体とされており、その長手方向一端部にケース31が配置されている。
【0046】
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る撮影システム18の電気系の要部構成について説明する。
【0047】
放射線発生装置34には、コンソール42と通信を行うための接続端子34Aが設けられている。コンソール42には、放射線発生装置34と通信を行うための接続端子42A、電子カセッテ32と通信を行うための接続端子42Bが設けられている。放射線発生装置34の接続端子34Aとコンソール42の接続端子42Aはケーブル35によって接続されている。
【0048】
電子カセッテ32は、有線通信を行う場合、接続端子32Aにケーブル43が接続され、当該ケーブル43を介してコンソール42に接続される。
【0049】
電子カセッテ32に内蔵された放射線検出器60は、TFTアクティブマトリクス基板66上に、放射線Xを吸収し、電荷に変換する光電変換層が積層されて構成されている。光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)からなり、放射線Xが照射されると、照射された放射線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線Xを電荷へ変換する。この光電変換層上には、光電変換層の表面側に、光電変換層へバイアス電圧を印加するためのバイアス電極が形成されている。
【0050】
TFTアクティブマトリクス基板66上には、光電変換層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量68と、蓄積容量68に蓄積された電荷を読み出すためのTFT70を備えた画素部74がマトリクス状に多数個配置されている。なお、図4では個々の画素部74に対応する光電変換層を光電変換部72として模式的に示し、個々の画素部74に対応するバイアス電極をバイアス電極72Aとして示している。
【0051】
バイアス電極72Aは、バイアス電源回路73に接続され、バイアス電源回路73から所定のバイアス電圧が供給される。
【0052】
電子カセッテ32への放射線Xの照射に伴って光電変換層(光電変換部72)で発生された電荷は、バイアス電極72Aから印加されるバイアス電圧により移動し、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ32に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0053】
なお、放射線検出器60は、アモルファスセレンのような放射線Xを直接的に電荷に変換する放射線-電荷変換材料の代わりに、蛍光体材料と光電変換素子(フォトダイオード)を用いて間接的に電荷に変換してもよい。蛍光体材料としては、ガドリニウム硫酸化物(GOS)やヨウ化セシウム(CsI)がよく知られている。この場合、蛍光体材料によって放射線X−光変換を行い、光電変換素子のフォトダイオードによって光−電荷変換を行う。
【0054】
TFTアクティブマトリクス基板66には、一定方向(行方向)に延設され、個々の画素部74のTFT70をオン・オフさせるための複数本のゲート配線76と、ゲート配線76と直交する方向(列方向)に延設され、オンされたTFT70を介して蓄積容量68から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。個々のゲート配線76はゲート線ドライバ80に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部82に接続されている。個々の画素部74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素部74のTFT70は、ゲート線ドライバ80からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされる。TFT70がオンされた画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部82に入力される。従って、個々の画素部74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0055】
図5には、本実施の形態に係る放射線検出器60の1画素部分に注目した等価回路図が示されている。
【0056】
同図に示すように、TFT70のソースは、データ配線78に接続されており、このデータ配線78は、信号処理部82に接続されている。また、TFT70のドレインは蓄積容量68及び光電変換部72に接続され、TFT70のゲートはゲート配線76に接続されている。
【0057】
信号処理部82は、個々のデータ配線78毎にサンプルホールド回路84を備えている。個々のデータ配線78を伝送された電荷信号はサンプルホールド回路84に保持される。サンプルホールド回路84はオペアンプ84Aとコンデンサ84Bを含んで構成され、電荷信号をアナログ電圧に変換する。また、サンプルホールド回路84にはコンデンサ84Bの両電極をショートさせ、コンデンサ84Bに蓄積された電荷を放電させるリセット回路としてスイッチ84Cが設けられている。オペアンプ84Aは、後述するカセッテ制御部92からの制御によりゲインを調整可能とされている。
【0058】
サンプルホールド回路84の出力側にはマルチプレクサ86、A/D変換器88が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はアナログ電圧に変換されてマルチプレクサ86に順に(シリアルに)入力され、A/D変換器88によってデジタルの画像情報へ変換される。
【0059】
信号処理部82には画像メモリ90が接続されており(図4参照。)、信号処理部82のA/D変換器88から出力された画像データは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ90に順次記憶される。
【0060】
画像メモリ90は電子カセッテ32全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータによって構成されており、CPU(中央処理装置)92A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ92B、HDD(ハードディスク・ドライブ)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0061】
カセッテ制御部92は、ゲート線ドライバ80及び信号処理部82に接続され、オペアンプ84Aのゲインを制御しており、ゲインを調整することにより、放射線検出器60の放射線に対する感度を曝射条件に従って放射線が照射された際に放射線画像の撮影を行うための通常感度と、放射線量を減少させて放射線画像の撮影を行うための高感度に切り替えることが可能とされている。このカセッテ制御部92には無線通信部94及び有線通信部95が接続されている。無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間で各種情報の伝送を制御する。有線通信部95は、接続端子32Aに接続され、接続端子32A及びケーブル43を介してコンソール42との間で各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94又は有線通信部95を介してコンソール42と無線通信が可能とされており、コンソール42との間で各種情報の送受信を行う。カセッテ制御部92は、コンソール42から無線通信部94又は有線通信部95を介して受信される後述する曝射条件、感度指示情報を記憶し、曝射条件に基づいて電荷の読み出しを開始する。
【0062】
また、電子カセッテ32には電源部96が設けられており、上述した各種回路や各素子(バイアス電源回路73、ゲート線ドライバ80、信号処理部82、画像メモリ90、無線通信部94、有線通信部95、カセッテ制御部92として機能するマイクロコンピュータ等)は、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ32の可搬性を損なわないように、前述したバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路や各素子へ電力を供給する。なお、図4では、電源部96と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0063】
一方、コンソール42は、サーバ・コンピュータとして構成されており、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するディスプレイ100と、複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される操作パネル102と、を備えている。
【0064】
また、本実施の形態に係るコンソール42は、装置全体の動作を司るCPU104と、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM106と、各種データを一時的に記憶するRAM108と、各種データを記憶して保持するHDD110と、ディスプレイ100への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ112と、操作パネル102に対する操作状態を検出する操作入力検出部114と、を備えている。また、コンソール42は、接続端子42Aに接続され、接続端子42A及びケーブル35を介して放射線発生装置34との間で後述する曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部116と、電子カセッテ32との間で無線通信により曝射条件、感度指示情報等の各種情報の送受信を行う無線通信部118と、接続端子42Bに接続され、接続端子42B及びケーブル43を介して電子カセッテ32との間で画像情報、感度指示情報等の各種情報の送受信を行う有線通信部120と、を備えている。
【0065】
CPU104、ROM106、RAM108、HDD110、ディスプレイドライバ112、操作入力検出部114、無線通信部118、及び有線通信部120は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。従って、CPU104は、ROM106、RAM108、HDD110へのアクセスを行うことができると共に、ディスプレイドライバ112を介したディスプレイ100への各種情報の表示の制御、通信I/F部116を介した放射線発生装置34との各種情報の送受信の制御、無線通信部118を介した電子カセッテ32との各種情報の送受信の制御、及び有線通信部120を介した電子カセッテ32との各種情報の送受信の制御、を行うことができる。また、CPU104は、操作入力検出部114を介して操作パネル102に対するユーザの操作状態を把握することができる。
【0066】
一方、放射線発生装置34は、放射線Xを射出する放射線源130と、コンソール42との間で曝射条件等の各種情報を送受信する通信I/F部132と、受信した曝射条件に基づいて放射線源130を制御する線源制御部134と、を備えている。
【0067】
線源制御部134もマイクロコンピュータによって実現されており、受信した曝射条件を記憶し、当該曝射条件に基づいて放射線源130から放射線Xを照射させる。
【0068】
次に、本実施の形態に係る撮影システム18の作用を説明する。
【0069】
本実施の形態に係る電子カセッテ32及びコンソール42は、ケーブル43によって接続された場合、有線通信を行うものとされており、ケーブル43で接続されていない場合、無線通信を行うものとされている。また、本実施の形態に係る撮影システム18は、1回ずつ撮影を行う静止画撮影と連続的に撮影を行う透視撮影との間で撮影モードが選択可能とされている。さらに、本実施の形態に係る撮影システム18は、撮影中に放射線源130から放射線を連続的に照射させる連続照射と、撮影中に撮影のフレームレートに同期させて放射線源130か放射線をパルス状に照射させるパルス照射との選択が可能とされている。
【0070】
端末装置12(図1参照。)は、放射線画像の撮影する場合、医師又は放射線技師からの撮影依頼を受け付ける。当該撮影依頼では、撮影対象とする患者、撮影対象とする撮影部位、撮影モードが指定され、管電圧、管電流、照射期間及び照射する放射線総量などが必要に応じて指定される。
【0071】
端末装置12は、受け付けた撮影依頼の内容をRISサーバ14に通知する。RISサーバ14は、端末装置12から通知された撮影依頼の内容をデータベース14Aに記憶する。
【0072】
コンソール42は、RISサーバ14にアクセスすることにより、RISサーバ14から撮影依頼の内容及び撮影対象とする患者の属性情報を取得し、撮影依頼の内容及び患者の属性情報をディスプレイ100(図4参照。)に表示する。
【0073】
撮影者は、ディスプレイ100に表示された撮影依頼の内容に基づいて放射線画像の撮影を開始する。
【0074】
例えば、図2に示すように、ベッド46上に横臥した被検者48の患部の撮影の行を行う際、撮影者は、電子カセッテ32とコンソール42間を無線通信とする場合は電子カセッテ32及びコンソール42にケーブル43を接続することなく、電子カセッテ32とコンソール42間を有線通信とする場合は電子カセッテ32及びコンソール42をケーブル43で接続した後に、撮影の部位に応じてベッド46と被検者48の患部との間に電子カセッテ32を配置する。
【0075】
そして、撮影者は、操作パネル102に対して撮影モードとして静止画撮影又は透視撮影を指定し、撮影モードとして静止画撮影を指定した場合は操作パネル102に対して放射線Xを照射する際の管電圧、管電流、照射期間等の曝射条件を指定し、撮影モードとして透視撮影を指定した場合は操作パネル102に対してフレームレート、管電圧、管電流等の曝射条件を指定する。また、撮影者は、連続照射又はパルス照射の何れで撮影を行うかを指定する。
【0076】
コンソール42は、指定された曝射条件を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。また、コンソール42は、初期感度として通常感度を指定した感度指示情報を電子カセッテ32へ送信する。
【0077】
放射線発生装置34の線源制御部134は、コンソール42から曝射条件を受信すると、受信した曝射条件を記憶し、電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から曝射条件及び感度指示情報を受信すると、受信した曝射条件を記憶部92Cに記憶し、オペアンプ84Aのゲインを、曝射条件に従って放射線が照射された放射線画像の撮影を行うための所定値に設定する。
【0078】
撮影者は、撮影準備完了すると、コンソール42の操作パネル102に対して撮影を指示する撮影指示操作を行う。
【0079】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれると、連続照射での静止画撮影、パルス照射での静止画撮影、連続照射での透視撮影、パルス照射での透視撮影の何れが指定されたかに応じて、以下の図6〜図9に示す撮影動作を開始する。
【0080】
図6には、連続照射での静止画撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0081】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれた場合、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0082】
放射線発生装置34は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流での放射線を発生・射出を開始する。
【0083】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、曝射開始を指示する指示情報を受信してから曝射条件で指定された照射期間の経過後にゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンさせて全ての画素部74に蓄積された電荷を読み出す。
【0084】
放射線検出器60は、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出す。各データ配線78に流れ出した電気信号は信号処理部82でデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ90に記憶され、コンソール42へ送信される。
【0085】
コンソール42は、画像情報を受信すると、曝射終了を指示する指示情報を放射線発生装置34へ送信すると共に、受信した画像情報に対してシェーディング補正などの各種の補正する画像処理を行ない、画像処理後の画像情報をHDD110に記憶する。
【0086】
放射線発生装置34は、曝射終了を指示する指示情報を受信すると、放射線の発生・射出を終了する。
【0087】
HDD110に記憶された画像情報は、撮影した放射線画像の確認等のためにディスプレイ100に表示されると共に、RISサーバ14に転送されてデータベース14Aにも格納される。これにより、医師が撮影された放射線画像の読影や診断等を行うことが可能となる。
【0088】
一方、図7には、パルス照射での静止画撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0089】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれた場合、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0090】
放射線発生装置34は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流、及び照射期間で放射線を発生・射出する。
【0091】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、曝射開始を指示する指示情報を受信してから曝射条件で指定された照射期間の経過後にゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンさせて全ての画素部74に蓄積された電荷を読み出す。これにより、全ての画素部74から電荷が読出され、各画素部74に蓄積された電荷に応じた画像データが画像メモリ90に記憶される。画像メモリ90に記憶された画像データは、コンソール42へ送信され、コンソール42でシェーディング補正などの各種の補正する画像処理が行われてHDD110に記憶される。HDD110に記憶された画像情報は、撮影した放射線画像の確認等のためにディスプレイ100に表示されると共に、RISサーバ14に転送されてデータベース14Aにも格納される。
【0092】
一方、図8には、連続照射での透視撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0093】
コンソール42は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれた場合、曝射開始を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0094】
放射線発生装置34は、曝射開始を指示する指示情報を受信すると、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流での放射線の照射を開始する。
【0095】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、曝射条件で指定されたフレームレートに応じた周期でゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンさせて全ての画素部74に蓄積された電荷を読み出す読出動作を繰り返し、指定されたフレームレートでの画像の読み出しを行う。これにより、1回の順次走査毎に、全ての画素部74から電荷が読出され、各画素部74に蓄積された電荷に応じた画像データが画像メモリ90に記憶される。画像メモリ90に記憶された画像データは、1画像ずつコンソール42へ送信される。コンソール42へ送信された画像は、コンソール42でシェーディング補正などの各種の補正する画像処理が行われてHDD110に記憶される。HDD110に記憶された画像情報は、撮影した放射線画像の確認等のためにディスプレイ100に表示されると共に、RISサーバ14に転送されてデータベース14Aにも格納される。
【0096】
また、コンソール42は、操作パネル102に対して撮影終了操作が行なわれると、曝射終了を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。これにより、放射線源130は放射線の照射を停止し、電子カセッテ32は画像を読み出しを終了する。
【0097】
一方、図9には、パルス照射での透視撮影が指定された場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0098】
コンソール42は、指定されたフレームレートに応じた周期で同期信号を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0099】
放射線発生装置34は、同期信号を受信する毎に、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流、及び照射期間で放射線を発生・射出する。
【0100】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、同期信号を受信してから曝射条件で指定された照射期間の経過後にゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンさせて全ての画素部74に蓄積された電荷を読み出す。これにより、1回の順次走査毎に、全ての画素部74から電荷が読出され、各画素部74に蓄積された電荷に応じた画像データが画像メモリ90に記憶される。画像メモリ90に記憶された画像データは、1画像ずつコンソール42へ送信される。コンソール42へ送信された画像は、コンソール42でシェーディング補正などの各種の補正する画像処理が行われてHDD110に記憶される。HDD110に記憶された画像情報は、撮影した放射線画像の確認等のためにディスプレイ100に表示されると共に、RISサーバ14に転送されてデータベース14Aにも格納される。
【0101】
また、コンソール42は、操作パネル102に対して撮影終了操作が行なわれると、曝射終了を指示する指示情報を放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。これにより、放射線源130は放射線の照射を停止し、電子カセッテ32は画像を読み出しを終了する。
【0102】
ところで、透視撮影では、放射線が患者に長時間照射された場合、患者の被曝が多くなる。
【0103】
そこで、コンソール42は、透視撮影中、放射線源130から照射された累計の放射線量を求めている。この累計の放射線量は、透視撮影中の患者の被曝量と見なすことができる。コンソール42は、累計の放射線量が所定の許容量を超えた場合、患者の被曝を抑えるため、放射線源130から照射させる放射線量を低下させて透視撮影を行う撮影方式に切り替える制御を行う。
【0104】
なお、許容量は、撮影者により操作パネル102から入力されもよい。また、撮影部位毎の照射を許容する許容量を撮影部位別許容量情報としてHDD110に予め記憶しておき、撮影者が操作パネル102に対して撮影部位が指定を行い、撮影部位が指定された際に撮影部位別許容量情報から指定された撮影部位に対応する許容量と得るものとしてもよい。また、RISサーバ14のデータベース14Aに、患者毎に日別の被曝量を記憶しておき、RISサーバ14が所定期間(例えば、直近3ヶ月間)での被曝量の合計値から患者の許容される被曝量を求めて当該許容される被曝量を許容量としてコンソール42へ通知されるものとしてもよい。
【0105】
図10には、透視撮影が開始した際にCPU104により実行される透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、当該プログラムはROM106の所定の領域に予め記憶されている。
【0106】
同図のステップS10では、指定された曝射条件で指定された管電圧及び管電流に基づいて放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量を求める。
【0107】
次のステップS12では、透視撮影が終了したか否かを判定し、肯定判定となった場合は処理終了となり、否定判定となった場合はステップS14へ移行する。
【0108】
次のステップS14では、透視撮影中に放射線源130から放射線を照射した累計の照射期間を求める。連続照射での透視撮影では、透視撮影の開始した時点から現時点までの期間が累計の照射期間となる。一方、パルス照射での透視撮影では、透視撮影の開始した時点から現時点までの同期信号の送信回数と曝射条件で指定された照射期間を乗算した期間が累計の照射期間となる。
【0109】
次のステップS16では、上記ステップS10で求めた単位時間あたりの放射線量に、上記ステップS14で求めた累計の照射期間を乗算して透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量を求める。
【0110】
ステップS18では、上記ステップS16で求めた累計の放射線量が許容量以内であるか否かを判定し、肯定判定となった場合は再度ステップS12へ移行し、否定判定となった場合はステップS20へ移行する。
【0111】
ステップS20では、曝射条件で指定された管電圧及び管電流を、放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量が半分となるように変更(例えば、管電流を1/2に変更)し、変更した管電圧及び管電流を曝射条件として放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0112】
放射線発生装置34は、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流を変更して放射線の照射を開始する。これにより、放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量が半分に低下する。
【0113】
ステップS22では、放射線検出器60の放射線に対する感度として高感度を指定した感度指示情報を電子カセッテ32へ送信し、処理を終了する。
【0114】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から感度指示情報を受信すると、受信した感度指示情報に従い、オペアンプ84Aのゲインを、通常感度よりも増加(例えば、通常感度の2倍)に設定する。
【0115】
図11には、連続照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示され、図12には、パルス照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0116】
図11、12に示すように、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた時点T1以降で、放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量が半分となり、オペアンプ84Aのゲインが増加する。
【0117】
このようにオペアンプ84Aのゲインを増加させることにより、放射線検出器60の各画素部74に蓄積された電荷が少ない場合でも検出できるようになるため、放射線に対する感度が高くなる。
【0118】
以上、本実施の形態によれば、放射線発生装置34から照射される放射線量が半分に低下するが、オペアンプ84Aのゲインを増加させることにより電子カセッテ32の放射線に対する感度が高くなるため、放射線発生装置34から照射される放射線量の低下による放射線画像の画質の低下を抑えることができる。
【0119】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0120】
第2の実施の形態に係る放射線情報システム10の構成、撮影システム18の構成、及び電子カセッテ32の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜5参照)と同一であるので、ここでは異なる部分についてのみ説明し、同一の部分の説明は省略する。
【0121】
第2の実施の形態に係る電子カセッテ32は、ゲート線ドライバ80が、1回の画像の読み出し動作でゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力して1ラインずつ各画素部74に蓄積された電荷を読み出す上述の走査方式(以下、「順次読出方式」という)に加え、1回の画像の読み出し動作でゲート線ドライバ80から2ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力して2ラインずつ各画素部74に蓄積された電荷を読み出すビニング読出方式での読み出しが可能とされており、順次読出方式とビニング読出方式とに画像の読出方式が切り替え可能とされている。
【0122】
電子カセッテ32は、コンソール42から画像の読出方式を指定する読出方式情報を無線通信又は有線通信で受信する。カセッテ制御部92は、ゲート線ドライバ80に接続されており、受信された読出方式情報に従い、ゲート線ドライバ80の画像の読出方式を制御する。
【0123】
透視撮影を行う場合、コンソール42は、初期の読出方式として順次読出方式を指定した読出方式情報を電子カセッテ32へ送信する。これにより、カセッテ制御部92は、パルス照射及び連続照射での透視撮影中、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンさせる順次読出方式で、全ての画素部74に蓄積された電荷を読み出す。
【0124】
また、コンソール42は、透視撮影中、放射線源130から照射された累計の放射線量を求めており、累計の放射線量が所定の許容量を超えた場合、患者の被曝を抑えるため、放射線源130から照射させる放射線量を低下させて透視撮影を行う撮影方式に切り替える制御を行う。
【0125】
図13には、第2の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、第1の実施の形態の透視撮影切替制御処理プログラム(図10参照)と同一処理部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0126】
ステップS22Aでは、読出方式としてビニング読出方式を指定した読出方式情報を電子カセッテ32へ送信し、処理を終了する。
【0127】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から読出方式情報を受信すると、受信した読出方式情報に従い、ゲート線ドライバ80を制御して1回の画像の読み出し動作でゲート線ドライバ80から2ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力して2ラインずつ各画素部74に蓄積された電荷を読み出すビニング読出方式を行う。
【0128】
図14には、連続照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示され、図15には、パルス照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0129】
図14、15に示すように、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた時点T1以降で、ビニング読出方式で画像の読み出しが行われる。
【0130】
これにより、各データ配線78には、ゲート線ドライバ80から2ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号が出力される毎に、2つの画素部74に蓄積された電荷が合算された電気信号が流れる。
【0131】
このように放射線検出器60の各画素部74に蓄積された電荷を、2ラインずつ読み出すことにより、各データ配線78に2つの画素部74にされた電荷が合算されて流れるようになるため、放射線に対する感度が高くなる。また、2ラインずつ読み出すことにより、画像の読み出し速度が向上する。
【0132】
信号処理部82は、各データ配線78に流れる、2つの画素部74に蓄積された電荷が合算された電気信号を1画素としてデジタルデータに変換して、画像メモリ90に記憶させる。すなわち、信号処理部82は、2つの画素部74を1つの画素として画像データを生成する。
【0133】
以上、本実施の形態によれば、放射線発生装置34から照射される放射線量が半分に低下するが、2つの画素部74にされた電荷が合算させることにより電子カセッテ32の放射線に対する感度が高くなるため、放射線発生装置34から照射される放射線量の低下による放射線画像の画質の低下を抑えることができる。
【0134】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0135】
第3の実施の形態に係る放射線情報システム10の構成、撮影システム18の構成、及び電子カセッテ32の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜5参照)と同一であるので、ここでは異なる部分についてのみ説明し、同一の部分の説明は省略する。
【0136】
第3の実施の形態に係る電子カセッテ32は、バイアス電源回路73が、カセッテ制御部92からの制御により各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を変更可能とされている。
【0137】
カセッテ制御部92は、バイアス電源回路73が各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を制御しており、光電変換部72にリーク等の電気的な破壊を発生させない範囲内でバイアス電圧を調整することにより、放射線検出器60の放射線に対する感度を、曝射条件に従って放射線が照射された際に放射線画像の撮影を行うための通常感度と、放射線量を減少させて放射線画像の撮影を行うための高感度とに切り替えることが可能とされている。
【0138】
電子カセッテ32は、コンソール42から放射線検出器60の放射線に対する感度を指定した感度指示情報を無線通信又は有線通信で受信する。カセッテ制御部92は、ゲート線ドライバ80に接続されており、受信された感度指示情報に従い、バイアス電源回路73から各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を制御する。
【0139】
透視撮影を行う場合、コンソール42は、初期感度として通常感度を指定した感度指示情報を電子カセッテ32へ送信する。これにより、カセッテ制御部92は、パルス照射及び連続照射での透視撮影中、バイアス電源回路73から各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を、所定の電圧値に設定する。
【0140】
また、コンソール42は、透視撮影中、放射線源130から照射された累計の放射線量を求めており、累計の放射線量が所定の許容量を超えた場合、患者の被曝を抑えるため、放射線源130から照射させる放射線量を低下させて透視撮影を行う撮影方式に切り替える制御を行う。
【0141】
図16には、第3の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、第1の実施の形態の透視撮影切替制御処理プログラム(図10参照)と同一処理部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0142】
ステップS22Bでは、放射線検出器60の放射線に対する感度として高感度を指定した感度指示情報を電子カセッテ32へ送信し、処理を終了する。
【0143】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から感度指示情報を受信すると、受信した感度指示情報に従い、バイアス電源回路73から各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を、通常感度よりも高い電圧(例えば、光電変換部72にリーク等の電気的な破壊を発生させない範囲内で最も高い電圧)に設定する。
【0144】
図17には、連続照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示され、図18には、パルス照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0145】
図17、18に示すように、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた時点T1以降で、バイアス電圧が高く変更される。
【0146】
このようにバイアス電源回路73から各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を高くすることにより、光電変換部72に発生した電荷が光電変換部72内でトラップされることが抑制されて電荷が流れやすくなるため、放射線に対する感度が高くなる。
【0147】
以上、本実施の形態によれば、放射線発生装置34から照射される放射線量が半分に低下するが、光電変換部72に印加するバイアス電圧を高くすることにより電子カセッテ32の放射線に対する感度が高くなるため、放射線発生装置34から照射される放射線量の低下による放射線画像の画質の低下を抑えることができる。
【0148】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0149】
第4の実施の形態に係る放射線情報システム10の構成、撮影システム18の構成、及び電子カセッテ32の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜5参照)と同一であるので、ここでは異なる部分についてのみ説明し、同一の部分の説明は省略する。
【0150】
ここで、放射線発生装置34は、管電圧を高いほど放射線源130から照射される放射線のエネルギーが増加して透過力も増し、患者で吸収される放射線が低下する。放射線のエネルギーが増加すると放射線検出器60で吸収される放射線も低下し、撮影される放射線画像においてダイナミックレンジが狭くなる。
【0151】
カセッテ制御部92は、オペアンプ84Aのゲインを制御しており、ゲインを調整することにより放射線検出器60から出力される電気信号のダイナミックレンジが、A/D変換器88で所定ビットのデジタルデータへ変換する変換範囲となるように調整している。カセッテ制御部92は、オペアンプ84Aのゲインを調整することにより、放射線検出器60の放射線に対する感度を、曝射条件に従って放射線が照射された際に放射線画像の撮影を行うための通常感度と、エネルギーが増加させた放射線が照射された際に放射線画像の撮影を行うための分解能を高めた高感度に切り替えることが可能とされている。
【0152】
電子カセッテ32は、コンソール42から放射線検出器60の放射線に対する感度を指定した感度指示情報を無線通信又は有線通信で受信する。カセッテ制御部92は、ゲート線ドライバ80に接続されており、受信された感度指示情報に従い、オペアンプ84Aのゲインを制御する。
【0153】
透視撮影を行う場合、コンソール42は、初期感度として通常感度を指定した感度指示情報を電子カセッテ32へ送信する。これにより、カセッテ制御部92は、パルス照射及び連続照射での透視撮影中、オペアンプ84Aのゲインを曝射条件に従って放射線が照射された放射線画像の撮影を行うための所定値に設定する。
【0154】
また、コンソール42は、透視撮影中、放射線源130から照射された累計の放射線量を求めており、累計の放射線量が所定の許容量を超えた場合、患者の被曝を抑えるため、放射線源130から照射させる放射線量を低下させて透視撮影を行う撮影方式に切り替える制御を行う。
【0155】
図19には、第4の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、第1の実施の形態の透視撮影切替制御処理プログラム(図10参照)と同一処理部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0156】
ステップS20Cでは、曝射条件で指定された管電圧及び管電流を、放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量が半分となるように変更(例えば、管電流を1/2に変更)すると共に、管電圧を通常感度よりも高い電圧(例えば、患者への照射が許容される最大の管電圧)に変更し、変更した管電圧及び管電流を曝射条件として放射線発生装置34及び電子カセッテ32へ送信する。
【0157】
放射線発生装置34は、コンソール42から受信した曝射条件に応じた管電圧、管電流を変更して放射線の照射を開始する。これにより、放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量が半分に低下すると共に、照射される放射線のエネルギーが増加する。
【0158】
ステップS22Cでは、放射線検出器60の放射線に対する感度として高感度を指定した感度指示情報を電子カセッテ32へ送信し、処理を終了する。
【0159】
電子カセッテ32のカセッテ制御部92は、コンソール42から感度指示情報を受信すると、受信した感度指示情報に従い、オペアンプ84Aのゲインを、放射線検出器60から出力される電気信号のダイナミックレンジがA/D変換器88で所定ビットのデジタルデータへ変換する変換範囲となる値に設定する。
【0160】
図20には、連続照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示され、図21には、パルス照射での透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合の撮影動作の流れを示すタイムチャートが示されている。
【0161】
図20、21に示すように、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた時点T1以降で、管電圧が通常感度よりも高い電圧に変更され、オペアンプ84Aのゲインが増加する。
【0162】
このようにオペアンプ84Aのゲインを増加させることにより、管電圧が通常感度よりも高い電圧に変更されて放射線のエネルギーが増加し、撮影される放射線画像においてダイナミックレンジが狭くなった場合でも、ダイナミックレンジを補正できるため、放射線に対する感度が高くなる。なお、管電圧を増加させすぎるとダイナミックレンジが低下するだけでなく、患者内外での散乱が増加してS/Nが低下し、ゲインの増加では補正できなくなってしまう。このため管電圧の増加は、適切な範囲内であることは言うまでもない。
【0163】
以上、本実施の形態によれば、放射線発生装置34から照射される放射線量が半分に低下し、照射される放射線のエネルギーを増加するが、オペアンプ84Aのゲインを増加させることにより電子カセッテ32の放射線に対する感度が高くなるため、放射線発生装置34から照射される放射線量の低下による放射線画像の画質の低下を抑えることができる。
【0164】
なお、上記第1〜第4の各実施の形態では、可搬型の放射線画像撮影装置である電子カセッテに適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線画像撮影装置に適用してもよい。
【0165】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、以下では据置型の放射線画像撮影装置に本発明を適用した形態例について説明する。
【0166】
図22には、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置200の概略構成を示す構成図が示されている。なお、上記第1の実施の形態に係る撮影システム18の構成と対応する部分には同一の符号を付して説明する。
【0167】
本実施形態に係る放射線画像撮影装置200は、間接変換型の放射線検出器60を備えている。
【0168】
間接変換型の放射線検出器60は、光を検出する検出領域にフォトダイオードがマトリクス状に形成されたTFTアクティブマトリクス基板66を備えており、TFTアクティブマトリクス基板66の、撮影の際に放射線源130から放射線Xが照射される照射側にシート状のシンチレータ67が配置されている。放射線検出器60は、放射線Xをシンチレータ67で一旦、光に変換し、シンチレータ67で変換された光をTFTアクティブマトリクス基板66のフォトダイオードで検出することにより、放射線画像を検出する。
【0169】
この放射線検出器60上には、TFTアクティブマトリクス基板66の検出領域に対向するように、光透過性を有する袋体202が配置されている。袋体202はポンプ204に接続され、ポンプ204はタンク206に接続されている。タンク206には放射線が照射された際に発光する液体シンチレータが貯留されている。ポンプ204は、制御部210に接続されており、制御部210からの制御により動作し、タンク206に貯留された液体シンチレータの袋体202への注入、及び袋体202に注入された液体シンチレータの取り出しを行う。
【0170】
袋体202は、内部に貯留された液体シンチレータの液量に応じて厚さが変化し、貯留された液量が少ない場合、図23(A)に示すように薄くなり、貯留された液量が多い場合、図23(B)に示すように厚くなる。
【0171】
図24には、本実施形態に係る放射線検出器60の構成を模式的に示した断面図が示されている。
【0172】
図24に示すように、放射線検出器60は、絶縁性基板300にTFT70が形成されたTFTアクティブマトリクス基板66を備えている。
【0173】
このTFTアクティブマトリクス基板66上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ67が設けられている。このシンチレータ67としては、例えば、CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)を用いることができる。なお、シンチレータ67は、これらの材料に限られるものではない。
【0174】
シンチレータ67が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器60によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0175】
シンチレータ67に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0176】
シンチレータ67は、例えば、CsI(Tl)等の柱状結晶で形成しようとする場合、蒸着基板への蒸着によって形成されてもよい。このように蒸着によってシンチレータ67を形成する場合、蒸着基板は、X線の透過率、コストの面からAlの板がよく使用されるがこれに限定されるものではない。なお、シンチレータ67としてGOSを用いる場合、蒸着基板を用いずにTFTアクティブマトリクス基板66の表面にGOSを塗布することにより、シンチレータ67を形成してもよい。
【0177】
絶縁性基板300としては、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものあれが何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板300は、これらの材料に限られるものではない。
【0178】
シンチレータ67とTFTアクティブマトリクス基板66との間には、シンチレータ67によって変換された光が入射されることにより電荷を発生する光電変換層72が形成されている。この光電変換層72のシンチレータ67側の表面には、光電変換層72にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極72Aが形成されている。
【0179】
TFTアクティブマトリクス基板66には、光電変換層72で発生した電荷を収集する電荷収集電極72Bが形成されている。TFTアクティブマトリクス基板66では、各電荷収集電極72Bで収集された電荷が、TFT70によって読み出される。
【0180】
また、TFTアクティブマトリクス基板66上には、TFTアクティブマトリクス基板66上を平坦化するための平坦化層75Aが形成されている。また、TFTアクティブマトリクス基板66とシンチレータ67との間であって、平坦化層75A上には、シンチレータ67をTFTアクティブマトリクス基板66に接着するための接着層75Bが、形成されている。
【0181】
光電変換層72は、シンチレータ67から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換層72は、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光電変換層72であれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ67による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光電変換層72であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ67による発光以外の電磁波が光電変換層72に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換層72で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0182】
光電変換層72を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ67で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ67の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ67の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ67から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ67の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0183】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ67の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換層72で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0184】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器60に適用可能な光電変換層72について具体的に説明する。
【0185】
本発明に係る放射線検出器60における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電荷収集電極72B,バイアス電極72Aと、該電荷収集電極72B,バイアス電極72A間に挟まれた光電変換層72とを含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0186】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0187】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0188】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0189】
この有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料、及び光電変換層72の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光電変換層72は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0190】
各画素部を構成するセンサ部77は、少なくとも電荷収集電極72B、光電変換層72、及びバイアス電極72Aを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0191】
電子ブロッキング膜は、電荷収集電極72Bと光電変換層72との間に設けることができ、電荷収集電極72Bとバイアス電極72A間にバイアス電圧を印加したときに、電荷収集電極72Bから光電変換層72に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0192】
電子ブロッキング膜には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0193】
実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層72の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換層72の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0194】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部77の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0195】
正孔ブロッキング膜は、光電変換層72とバイアス電極72Aとの間に設けることができ、電荷収集電極72Bとバイアス電極72A間にバイアス電圧を印加したときに、バイアス電極72Aから光電変換層72に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0196】
正孔ブロッキング膜には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0197】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部77の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0198】
実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換層72の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換層72の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0199】
なお、光電変換層72で発生した電荷のうち、正孔がバイアス電極72Aに移動し、電子が電荷収集電極72Bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。又、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0200】
図25には、TFT70の構成が概略的に示されている。
【0201】
TFTアクティブマトリクス基板66は、電荷収集電極72Bに対応して、絶縁性基板300上に電荷収集電極72Bに移動した電荷を電気信号に変換して出力するTFT70が形成されている。TFT70の形成された領域は、平面視において電荷収集電極72Bと重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部におけるTFT70とセンサ部77とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器60(画素部)の平面積を最小にするために、TFT70の形成された領域が電荷収集電極72Bによって完全に覆われていることが望ましい。
【0202】
TFT70は、ゲート電極320、ゲート絶縁膜322、及び活性層(チャネル層)324が積層され、さらに、活性層324上にソース電極326とドレイン電極328が所定の間隔を開けて形成されている。
【0203】
ドレイン電極328は、絶縁性基板300と電荷収集電極72Bとの間に設けられた絶縁膜319を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する電荷収集電極72Bと電気的に接続されている。これにより、電荷収集電極72Bで捕集された電荷をTFT70に移動させることができる。
【0204】
活性層324は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層324を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0205】
活性層324を構成可能な非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層324を構成可能な非晶質酸化物は、これらに限定されるものではない。
【0206】
活性層324を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0207】
TFT70の活性層324を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、TFT70におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0208】
また、活性層324をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT70のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低いTFT70を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層324を形成する場合、活性層324に極微量の金属性不純物が混入するだけで、TFT70の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0209】
ここで、上述した非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板300としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0210】
また、基板300には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0211】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために,透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板300を形成してもよい。
【0212】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く絶縁性基板300を形成できる。
【0213】
本実施の形態では、絶縁性基板300上に、TFT70、センサ部77、透明な平坦化層75Aを順に形成し、当該絶縁性基板300上に光吸収性の低い接着樹脂等を用いた接着層75Bでシンチレータ67を貼り付けることにより放射線検出器60を形成している。以下、平坦化層75Aまで形成された絶縁性基板300をTFTアクティブマトリクス基板66と称する。
【0214】
図26には、本実施の形態に係る放射線検出器60の詳細な構成の一例が示されている。
【0215】
同図に示すように、放射線検出器60は、バイアス電極72A、光電変換層72、電荷収集電極72Bにより構成され、光が入射されることにより電荷を発生するフォトダイオードとして機能するセンサ部77と、センサ部77に蓄積された電荷を読み出すためのTFT70と、を含んで構成される画素部74が2次元状に複数設けられている。
【0216】
また、放射線検出器60には、上記TFT70をオン・オフさせるための複数のゲート配線76と、オンされたTFT70を介してセンサ部77から蓄積電荷を読み出すための複数のデータ配線78と、が互いに交差して設けられている。
【0217】
各データ配線78には、当該データ配線78に接続された何れかのTFT70がONされることによりセンサ部77に蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。各データ配線78は、各データ配線78に流れ出した電気信号を検出する信号処理部82が接続されており、各ゲート配線76には、各ゲート配線76にTFT70をオン・オフするための制御信号を出力するゲート線ドライバ80が接続されている。
【0218】
信号処理部82は、各データ配線78毎に、上述のサンプルホールド回路、、マルチプレクサ、A/D変換器等が内臓され、各データ配線78より入力される電気信号を増幅して検出することにより、画像を構成する各画素の情報(画素値)として、各センサ部77に蓄積された電荷量を検出する。
【0219】
図27には、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置200の動作を制御する制御部210の構成が示されている。
【0220】
同図に示すように、制御部210は、放射線画像撮影装置200全体の動作を司るCPU104と、各種制御プログラムや後述する基準画像撮影処理プログラム、被写体画像撮影処理プログラム等が予め記憶されたROM106と、CPU104による各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM108と、各種情報を記憶するHDD110と、ディスプレイ100に接続されて当該ディスプレイ100への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ112と、操作パネル102に対する操作状態を検出する操作入力検出部114と、信号処理部82及びゲート線ドライバ80を制御することにより放射線検出器60による撮像動作の制御する検出器制御部212と、放射線源130への電力供給を制御することにより、放射線源130からの放射線の放射を制御する線源制御部214と、ポンプ204の駆動を制御するポンプ制御部216と、を備えている。
【0221】
CPU104、ROM106、RAM108、HDD110、ディスプレイドライバ112、操作入力検出部114、検出器制御部212、線源制御部214、及びポンプ制御部216は、システムバスBUSを介して相互に接続されている。
【0222】
従って、CPU104は、RAM108、ROM106、及びHDD110に対するアクセスと、ディスプレイドライバ112を介したディスプレイ100への操作画面、各種メッセージ等の各種情報の表示の制御と、検出器制御部212を介して放射線検出器60の撮影動作の制御と、線源制御部214を介した放射線源130からの放射線の放射の制御と、ポンプ制御部216を介したポンプ204の駆動の制御と、を各々行うことができる。また、CPU100は、操作入力検出部114により検出された操作情報に基づく、操作パネル110に対する操作内容を把握することができる。
【0223】
本実施形態に係る放射線画像撮影装置200も、第1〜第4の実施の形態の撮影システム18と同様に、1回ずつ撮影を行う静止画撮影と連続的に撮影を行う透視撮影との間で撮影モードが選択可能とされ、さらに、撮影中に放射線源130から放射線を連続的に照射させる連続照射と、撮影中に撮影のフレームレートに同期させて放射線源130か放射線をパルス状に照射させるパルス照射との選択が可能とされている。
【0224】
撮影を行う際、撮影者は、操作パネル102に対して撮影モードとして静止画撮影又は透視撮影を指定し、撮影モードとして静止画撮影を指定した場合は操作パネル102に対して放射線Xを照射する際の管電圧、管電流、照射期間等の曝射条件を指定し、撮影モードとして透視撮影を指定した場合は操作パネル102に対してフレームレート、管電圧、管電流等の曝射条件を指定する。また、撮影者は、連続照射又はパルス照射の何れで撮影を行うかを指定する。
【0225】
撮影者は、撮影準備完了すると、コンソール42の操作パネル102に対して撮影を指示する撮影指示操作を行う。
【0226】
放射線画像撮影装置200は、操作パネル102に対して撮影開始操作が行なわれると、指定された条件に従い、連続照射での静止画撮影、パルス照射での静止画撮影、連続照射での透視撮影、パルス照射での透視撮影の何れが撮影行う。
【0227】
ところで、シンチレータは、厚くなるほど放射線に対して発光量が多く感度が高くなるが、厚くなるほどシンチレータ内で光が拡散されるため、画像がぼやけてしまう。
【0228】
本実施形態に係る放射線画像撮影装置200は、シート状のシンチレータ67の厚さを、曝射条件に従って放射線画像の撮影を行う通常撮影用に調整しており、放射線に対する感度を高くする場合、袋体202内に所定量の液体シンチレータを貯留させて放射線に対する発光量を多くする。
【0229】
また、透視撮影では、放射線が患者に長時間照射された場合、患者の被曝が多くなる。
【0230】
そこで、放射線画像撮影装置200は、透視撮影中、放射線源130から照射された累計の放射線量を求めており、累計の放射線量が所定の許容量を超えた場合、患者の被曝を抑えるため、放射線源130から照射させる放射線量を低下させて透視撮影を行う撮影方式に切り替える制御を行う。
【0231】
図28には、第5の実施の形態に係る透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートが示されている。なお、第1の実施の形態の透視撮影切替制御処理プログラム(図10参照)と同一処理部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0232】
ステップS20Dでは、曝射条件で指定された管電圧及び管電流を、放射線源130から照射される単位時間あたりの放射線量が半分となるように変更(例えば、管電流を1/2に変更)し、変更した管電圧及び管電流で放射線源130から放射線を照射させる。
【0233】
ステップS22Dでは、袋体202内に所定量の液体シンチレータを貯留させて放射線に対する発光量を多くする。
【0234】
このように、本実施の形態によれば、放射線発生装置34から照射される放射線量が半分に低下しているが、袋体202内に液体シンチレータを貯留させて放射線に対する発光量を多くすることにより放射線検出器60の放射線に対する感度が高くなるため、放射線発生装置34から照射される放射線量の低下による放射線画像の画質の低下を抑えることができる。
【0235】
以上、本発明を上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0236】
また、上記の上記各実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また上記各実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した上記各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記各実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0237】
また、上記第1〜第4の実施の形態では、可搬型の放射線画像撮影装置である電子カセッテに適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線画像撮影装置に適用してもよい。また、上記第5の実施の形態では、据置型の放射線画像撮影装置に適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、可搬型の放射線画像撮影装置に適用してもよい。
【0238】
また、上記第2の実施の形態では、ビニング読出方式としてゲート線ドライバ80から2ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力して2ラインずつ各画素部74に蓄積された電荷を読み出す場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ゲート線ドライバ80からN(Nは2以上の整数)ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力してNラインずつ各画素部74に蓄積された電荷を読み出すようにしてもよい。
【0239】
また、上記第2の実施の形態では、複数ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力して当該複数ラインの各画素部74に蓄積された電荷を合算する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力して1ラインずつ各画素部74に蓄積された電荷を読み出し、読み出された画像データにおいて複数画素のデータ(画素値)をまとめるビニングを行ってもよい。複数ラインずつ読み出して画素に蓄積された電荷をビニングする場合、上述したように読み出し速度が向上する。一方、画像データにおいて画素のデータをビニングする場合、各画素の電荷を1ラインずつ読み出すため、各画素のデータに含まれるスイッチングノイズの割合が少ないので、オペアンプ84Aのゲインを増加させることができる。画像データにおいて画素のデータをビニングする場合、複数画素のデータを1つの画素のデータにまとめる画像処理の処理時間が必要となる。透視撮影では、フレームレートが高くなるほど、1フレーム当たりの時間が短くなる。例えば、図35に示すように、フレームレートを60fpsとした場合、各フレームの期間は1/60≒16.7msecとなる。各フレームの電荷の蓄積期間を5msecとし、画像の読み出しに10msecかかるものとした場合、画像処理の処理時間を1.7msecしか確保できなくなる。このため、フレームレートが高くする場合、複数ラインずつ読み出して画素に蓄積された電荷をビニングする方が好ましい。
【0240】
また、上記第2の実施の形態では、直接変換型の放射線検出器60においてバイアス電源回路73から各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を高くする場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第5の実施の形態で説明したような間接変換型の放射線検出器60においてバイアス電源回路73から各バイアス電極72Aに供給するバイアス電圧を高くするようにしてもよい。
【0241】
また、上記第4の実施の形態では、オペアンプ84Aのゲインを調整することにより放射線検出器60から出力される電気信号のダイナミックレンジが、A/D変換器88で所定ビットのデジタルデータへ変換する変換範囲となるように調整した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、A/D変換器88の分解能を変えたり、分解能が異なるA/D変換器88を並列に接続し、アナログ信号のデジタルデータへの変換に使用するA/D変換器88を切り替えることにより、放射線検出器60から出力される電気信号のダイナミックレンジがA/D変換器88の変換範囲となるように調整してもよい。
【0242】
また、上記各実施の形態では、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量を求め、累計の放射線量が許容量を超えた場合、透視撮影の撮影方式に切り替える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の照射期間を求め、累計の照射期間が所定の許容照射期間を超えた場合、透視撮影の撮影方式に切り替えるものとしてもよい。許容照射期間は、撮影者により操作パネル102から入力されもよい。また、撮影部位毎の照射を許容する許容量を撮影部位別許容量情報としてHDD110に予め記憶しておき、撮影者が操作パネル102に対して撮影部位が指定を行い、撮影部位が指定された際に撮影部位別許容量情報から指定された撮影部位に対応する許容量を求め、透視撮影を行った際の累計の放射線量が許容量となる照射期間を予測し、予測された照射期間を許容照射期間としてもよい。また、RISサーバ14のデータベース14Aに患者毎の日ごとの被曝量を記憶しておき、RISサーバ14が所定期間(例えば、直近3ヶ月間)での被曝量の合計値から患者の許容される被曝量を求めて当該許容される被曝量を許容量としてコンソール42へ通知されるものとし、透視撮影を行った際の累計の放射線量が通知された許容量となる照射期間を予測し、予測された照射期間を許容照射期間としてもよい。
【0243】
また、上記実施の形態では、透視撮影中に放射線源130から照射された累計の放射線量が許容量を超えた場合、透視撮影の撮影方式に切り替える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、操作パネル102に放射線源130から照射する放射線量を指定するボリュームスイッチを設けた場合、当該ボリュームスイッチで放射線源130から照射する放射線量を低下させた場合、放射線量の低下量に応じて放射線に対する感度を増加させる制御を行うようにしてもよい。
【0244】
また、上記各実施の形態では、管電流を1/2に変更して放射線源130から照射する単位時間あたりの放射線量を半分に低下させる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、パルス照射の場合、各パルス照射の照射期間を半分に短縮して放射線量を低下させるようにしてもよい。また、パルス照射の場合、透視撮影の各画像の撮影において、それぞれ複数回パルス照射を行う場合、パルス照射を行う照射回数を減らして放射線量を低下させるようにしてもよい。また、放射線源130から照射する単位時間あたりの放射線量、照射期間、照射回数を組み合わせて放射線量を低下させるようにしてもよい。
【0245】
また、上記実施の形態では、放射線発生装置34としてCアームを有するものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、一例として特開2005−323673号公報に開示されているような、Cアームを有しない移動式の放射線発生装置を適用する形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0246】
また、上記実施の形態では、放射線発生装置34として移動式のものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線撮影室44において放射線源130のみが移動機構によって移動するものを放射線発生装置として適用する形態としてもよい。
【0247】
また、上記実施の形態では、電子カセッテ32を放射線発生装置34に取り付けることなく単独で用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、電子カセッテ32を放射線発生装置34の着脱機構142に取り付けた状態で用いる形態としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0248】
また、上記第5の実施の形態では、図22に示すように、TFTアクティブマトリクス基板66の撮影の際に放射線Xが照射される照射側に、シート状のシンチレータ67及び袋体202を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、放射線に対して透過性を有するようにTFTアクティブマトリクス基板66を形成し、図29に示すように、シート状のシンチレータ67及び袋体202を、撮影の際に照射される放射線XがTFTアクティブマトリクス基板66を透過して到達するように配置してもよい。
【0249】
ここで、間接変換型の放射線検出器60は、図30に示すように、シンチレータ67が接着された表側から放射線が照射(「表面照射」、「裏面読取方式」(所謂PSS(Penetration Side Sampling)方式)ともいう。)された場合、シンチレータ67の上面側(TFTアクティブマトリクス基板66の反対側)でより強く発光し、シンチレータ67が接着された表側されていない裏側から放射線が照射(「裏面照射」、「表面読取方式」(所謂ISS(Irradiation Side Sampling)方式))ともいう。)された場合、TFTアクティブマトリクス基板66を透過した放射線がシンチレータ67に入射してシンチレータ67のTFTアクティブマトリクス基板66側がより強く発光する。各光電変換層72には、シンチレータ67で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器60は、表側から放射線が照射された場合の方が裏側から放射線が照射された場合よりも、放射線がTFTアクティブマトリクス基板66を透過しないため、放射線に対する感度を高く設計することが可能であり、また、裏側から放射線が照射された場合の方が表側から放射線が照射された場合よりも各光電変換層72に対するシンチレータ67の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。このため、図29に示すように、シンチレータ67及び袋体202を配置した場合、放射線画像の分解能が高くなる。
【0250】
また、間接変換型の放射線検出器60は、光電変換層72を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換層72で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器36は、表面読取方式により放射線がTFTアクティブマトリクス基板66を透過する場合でも光電変換層72による放射線の吸収量を少ないため、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。表面読取方式では、放射線がTFTアクティブマトリクス基板66を透過してシンチレータ67に到達するが、このように、TFTアクティブマトリクス基板66の光電変換層72を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換層72での放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができるため、表面読取方式に適している。
【0251】
また、TFT70の活性層324を構成する非晶質酸化物や光電変換層72を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板300を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板300は放射線の吸収量を少ないため、表面読取方式により放射線がTFTアクティブマトリクス基板66を透過する場合でも、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。
【0252】
また、例えば、放射線検出器36をTFTアクティブマトリクス基板66が照射面56側となるように筐体54内の照射面56部分に貼り付けるものとし、基板300を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器36自体の剛性が高くいため、筐体54の照射面56部分を薄く形成することができる。また、基板300を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器36自体が可撓性を有するため、照射面56に衝撃が加わった場合でも放射線検出器36が破損しづらい。
【0253】
図31には、シンチレータ67をCsI(Tl)の柱状結晶とし、TFTアクティブマトリクス基板66側から放射線Xが入射する表面読取方式で放射線検出器60を配置し、その放射線検出器60のシンチレータ67上に袋体202を配置した場合が示されている。
【0254】
シンチレータ67は、光透過性の樹脂(例えば、耐熱性の透明ポリイミドなど)による蒸着基板400上にCsI(Tl)を蒸着させて形成する。蒸着基板400上には、蒸着によってCsI(Tl)の非柱状部が形成され、その上に柱状部が形成される。図31では、シンチレータ67の柱状部側の面とTFTアクティブマトリクス基板66とを貼り合わせており、放射線検出器60の蒸着基板400側に面に袋体202を積層している。TFTアクティブマトリクス基板66は、例えば、絶縁性基板300としてプラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用い、センサ部77を有機光電変換材料を用いて形成し、活性層324として非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブを用いてTFT70を形成する。これにより、放射線検出器60を軽量、薄型化できるため、袋体202を積層させた場合でも全体を軽量、薄型にできる。
【0255】
また、動画撮影では、撮影される画像が多少ノイジーであっても影響は少なく、患者の被曝量を低く抑えることがより重要である。このため、放射線検出器60に袋体202を積層させて、袋体202に液体シンチレータを貯留させることにより感度が向上するため、患者の被曝量を低く抑えることができる。なお、図31では、TFTアクティブマトリクス基板66に対して放射線Xが入射する反対側にシンチレータ67及び袋体202を配置したが、TFTアクティブマトリクス基板66に対して放射線Xが入射側に袋体202を配置してもよい。例えば、放射線Xの入射側から順に袋体202、TFTアクティブマトリクス基板66、シンチレータ67、蒸着基板400と配置される場合、蒸着基板400は光透過性を有する必要はない。このように配置することにより、袋体202内の液体シンチレータとTFTアクティブマトリクス基板66との距離が近くなるため、感度を向上させることができる。
【0256】
また、TFTアクティブマトリクス基板66を放射線に対して透過性を有する共に、検出領域に設けられたセンサ部77を表裏の両側で光に対して感度を有するように形成し、シート状のシンチレータ67及び袋体202を、検出領域を挟むように配置してもよい。シート状のシンチレータ67及び袋体202は何れを表側、裏側としてもよい。図32には、シート状のシンチレータ67をTFTアクティブマトリクス基板66の裏側に配置し、袋体202をTFTアクティブマトリクス基板66の表側に配置した例が示されている。
【0257】
また、上記第5の実施の形態では、放射線検出器60にシート状のシンチレータ67を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シート状のシンチレータ67を設けずに、袋体202内に貯留させた液体シンチレータのみで放射線の光への変換を行うようにしてもよい。この場合、液量情報には、シート状のシンチレータ67を設けていない放射線検出器60での袋体202内に貯留させる液体シンチレータの液量と画質の対応を予め調べ、画質の対応する液量を記憶させればよい。袋体202は、表側、裏側の何れに配置されもよい。図33には、袋体202をTFTアクティブマトリクス基板66の裏側に配置した例が示されている。
【0258】
また、図34に示すように袋体202に液体シンチレータを注入するための注入口202A及び注入された液体シンチレータの取り出すための取出口202Bを設け、注入口202A及び取出口202Bをポンプ204に接続する。また、液体シンチレータを冷却するための冷却機構220を設ける。そして、タンク206に貯留された液体シンチレータを、冷却機構220を介してポンプ204に供給し、ポンプ204は冷却機構220から供給される液体シンチレータを注入口202Aへ注入し、取出口202Bから取り出した液体シンチレータをタンク206へ排出して、液体シンチレータを循環させるようにしてもよい。なお、図34は、放射線画像撮影装置200を上方向から見た構成図である。タンク206に貯留される液体シンチレータの液量が多く、タンク206で液体シンチレータを十分に冷却できる場合は冷却機構220設けなくてもよい。
【0259】
また、上記第5の実施の形態の袋体202は、全面が光透過性を有する必要はなく、放射線検出器60の検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有すればよく、対向面の反対となる面は遮光されていることが好ましい。これにより、外部からの光の入射を防止する点、及び発生した光の外部への散乱を防止できる。
【0260】
また、上記各実施の形態では、袋体202への液体シンチレータの注入、及び取り出しをポンプ204で行う場合について説明したが、袋体202への液体シンチレータの注入、及び取り出しができれば何れの機構でもよい。
【0261】
また、シンチレータ67として用いられるCsIは、図36に示すように、温度変化により感度が変化し、例えば、1度温度の上昇により約0.3%感度が低下する。一方、GOSは、温度変化による感度変化はほとんど発生しない。
【0262】
電子カセッテ32は、撮影を行うことにより電源部96や、ゲート線ドライバ80、信号処理部82などの各種回路や各素子が発熱する。特に、動画撮影は、撮影時間が長時間となるため、発熱量が大きくなる。このため、シンチレータ67としてCsIを用いた電子カセッテ32では、動画撮影に各種回路や各素子からの熱によりシンチレータ67の感度が低下する場合がある。撮影者は、シンチレータ67の感度が低下した際に診断に必要な画質を維持しようとした場合、照射する放射線の線量を増加させるが、線量を増加させた場合、患者への被曝量も増加してしまう。そこで、放射線検出器60に袋体202を積層させて、袋体202に液体シンチレータを貯留させることにより、袋体202内の液体シンチレータにより放射線検出器60を冷却することができるため、シンチレータ67の感度の低下を抑制できる。特に、図34に示すように袋体202に液体シンチレータを循環させるものとした場合、シンチレータ67の感度の低下をより抑制できる。このように、シンチレータ67の感度の低下を抑制することにより、患者への被曝量の増加を抑制することができる。
【0263】
また、CsIは、図37に示すように、連続して撮影が行われて累積被曝量の増加と共に感度が低下し、放射線が照射されない状態で維持されると低下した感度が回復する。動画撮影は、撮影時間が長時間となり、また、動画撮影中に静止画撮影を頻繁に行った場合、静止画撮影の放射線の照射量は動画撮影の1フレームの10〜1000倍程度であるため、シンチレータ67は累積被曝量の増加の増加と共に感度が低下する。そこで、放射線検出器60に袋体202を積層させて、袋体202に液体シンチレータを貯留させることにより、シンチレータ67の感度低下を袋体202に貯留された液体シンチレータで補うことができる。これにより、撮影者は、診断に必要な画質を維持するために照射する放射線の線量を増加させる必要が無くなるため、患者への被曝量の増加を抑制することができる。
【0264】
その他、上記実施の形態で説明したRIS10の構成(図1参照。)、放射線撮影室および放射線発生装置34の構成(図2参照。)、電子カセッテ32の構成(図3参照。)、撮影システム18の構成(図4参照。)、放射線画像撮影装置200(図22参照)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【0265】
また、上記実施の形態で説明した透視撮影切替制御処理プログラムの処理の流れ(図10、13、16、19、27参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ換えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0266】
18 撮影システム
32 電子カセッテ
60 放射線検出器
67 シンチレータ
68 蓄積容量
72A バイアス電極(電極)
72 光電変換層
73 バイアス電源回路(供給手段)
74 画素部
80 ゲート線ドライバ(生成手段)
82 信号処理部(生成手段)
84A オペアンプ(増幅器)
104 CPU(制御手段)
130 放射線源
200 放射線画像撮影装置
202 袋体
202B 取出口
202A 注入口
204 ポンプ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が照射されることにより電荷を発生すると共に当該電荷を蓄積する複数の画素が設けられた放射線検出器と、
前記放射線検出器に対して放射線を照射する放射線源と、
前記放射線検出器の各画素に蓄積された電荷をそれぞれ電気信号として読み出し、読み出した電気信号に基づいて放射線画像を示す画像情報を生成する生成手段と、
放射線画像を連続的に撮影する透視撮影を行う場合、所定のフレームレートで前記放射線検出器の各画素に蓄積された電荷を読み出すように前記生成手段を制御し、当該透視撮影中に前記放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、前記放射線源から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に、放射線に対する感度を増加させる制御を行う制御手段と、
を備えた放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記生成手段は、前記放射線検出器から読み出した電気信号を増幅する増幅器をさらに備え、
前記制御手段は、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記増幅器のゲインを増加させる
請求項1記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記放射線検出器に設けられた複数の画素にそれぞれ蓄積された電荷又は当該電荷に基づいて生成される放射線画像の画素の情報を、2以上の画素ずつ1つの画素としてまとめるビニングを行う
請求項1又は請求項2記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記放射線検出器は、放射線が照射されることにより電荷が発生する電荷発生層及び当該電荷発生層にバイアス電圧を印加するための電極を有し、
前記電極に対してバイアス電圧を供給する供給手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記電荷発生層に印加するバイアス電圧を増加させる
請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線検出器は、放射線が照射された際に発光するシート状シンチレータを有すると共に、当該シート状シンチレータの光を検出して前記複数の画素が電荷を発生し、
前記複数の画素が設けられた検出領域と重なるように配置され、当該検出領域と対向する対向面が少なくとも光透過性を有する袋体と、
放射線が照射された際に発光する液体シンチレータが貯留されたタンクと、
前記タンクに貯留された液体シンチレータの前記袋体への注入及び当該袋体に注入された液体シンチレータの取り出しを行うアクチュエータと、をさらに備え、
前記制御手段は、前記放射線に対する感度を増加させる制御として、前記アクチュエータを制御して前記タンクに貯留された液体シンチレータを前記袋体へ注入させる
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記袋体は、前記液体シンチレータを注入するための注入口及び注入された液体シンチレータの取り出すための取出口を有し、
前記制御手段は、前記透視撮影の際、前記注入口へ前記液体シンチレータを所定量ずつ注入させつつ前記取出口から液体シンチレータを当該所定量ずつ取り出すように前記アクチュエータを制御する
請求項5記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記シート状シンチレータは、CsIの柱状結晶を含んで構成された
請求項5又は請求項6記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記放射線検出器は、前記複数の画素が形成された基板に前記シート状シンチレータが積層されて構成され、前記基板側から放射線が入射するように配置された
請求項5〜請求項7の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記透視撮影中に前記放射線源から所定の許容量又は所定の照射時間だけ放射線が照射された場合、前記放射線源から照射される単位時間あたりに線量を低下させると共に前記放射線源の管電圧を増加させ、前記生成手段により生成される放射線画像のダイナミックレンジが広がるように放射線に対する感度を増加させる制御を行う
請求項1〜請求項8の何れか1項記載の放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2011−212427(P2011−212427A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277138(P2010−277138)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】