説明

放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システム

【課題】装置自体で放射線の照射開始を検出する場合に、放射線画像撮影装置からコンソールに対して、プレビュー画像用のデータを途中で送信が停止されることなく送信することが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線画像撮影前にスイッチ手段8を介してリークした電荷qに相当するリークデータdleakの読み出し処理を行い、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出し、放射線の照射開始を検出すると、電荷蓄積状態を経た後、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行わせ、画像データDの読み出し処理後に、オフセットデータOの読み出し処理を行わせ、オフセットデータOの読み出し処理の後で、読み出した画像データDに基づくプレビュー画像用のデータDtをコンソール58に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに係り、特に、装置自体で放射線の照射を検出して放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置およびそれに用いた放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台と一体的に形成された、いわゆる専用機型として構成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図7等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。
【0005】
そして、通常、放射線画像撮影は、放射線発生装置の放射線源から放射線画像撮影装置に対して、被験者の身体等の所定の撮影部位(すなわち胸部正面や腰椎側面等)を介した状態で放射線が照射されて行われる。
【0006】
その際、放射線画像撮影装置の走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して全てのTFT8をオフ状態とした状態で放射線を照射することで、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が、各放射線検出素子7内に的確に蓄積される。
【0007】
そして、放射線画像撮影の後、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各TFT8を順次オン状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生して蓄積された電荷を各信号線6に順次放出させて、各読み出し回路17で画像データDとしてそれぞれ読み出すように構成される。
【0008】
ところで、上記のように、放射線画像撮影が的確に行われるためには、放射線画像撮影装置に放射線が照射される際に、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxに適切にオフ電圧が印加され、スイッチ手段である各TFT8がオフ状態になることが必要となる。
【0009】
そこで、例えば従来の専用機型の放射線画像撮影装置等では、放射線発生装置との間でインターフェースを構築し、互いに信号等をやり取りして、放射線画像撮影装置が走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して電荷蓄積状態になったことを確認したうえで、放射線画像撮影装置が放射線源から放射線を照射させるように構成される場合が多い。
【0010】
しかし、例えば、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との製造メーカーが異なっているような場合には、両者の間でインターフェースを構築することが必ずしも容易でない場合があり、或いは、インターフェースを構築できない場合もある。
【0011】
このように放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間でインターフェースが構築されない場合、放射線画像撮影装置側から見ると、放射線源からどのようなタイミングで放射線が照射されるかが分からない。そのため、放射線源から放射線が照射されたことを、放射線画像撮影装置が自ら検出しなければならなくなる。
【0012】
そこで、近年、このような放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間のインターフェースによらずに、放射線が照射されたことを自ら検出するように構成された放射線画像撮影装置が種々開発されている。
【0013】
例えば、特許文献4や特許文献5に記載の発明では、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されて各放射線検出素子7内に電荷が発生すると、各放射線検出素子7から、各放射線検出素子7に接続されているバイアス線9(後述する図7等参照)に電荷が流れ出してバイアス線9を流れる電流が増加することを利用して、バイアス線9に電流検出手段を設けてバイアス線9内を流れる電流の電流値を検出し、その電流値に基づいて放射線の照射の開始等を検出することが提案されている。
【0014】
しかし、本発明者らの研究で、上記の手法は、バイアス線9が各放射線検出素子7の電極に接続されているため、電流検出手段で発生したノイズがバイアス線9を介して各放射線検出素子7に伝わり、放射線検出素子7から読み出される画像データDにノイズとして重畳される場合があるなど、必ずしも解決が容易でない問題があることが分かってきた。
【0015】
そして、本発明者らは、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出する別の手法について種々研究を重ねた結果、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを的確に検出することが可能ないくつかの手法を見出すことができた。
【0016】
後述するように、本発明者らが見出した新たな放射線の照射開始の検出方法では、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データdの読み出し処理を行う。なお、以下では、撮影直後に行われる本画像としての画像データDと区別して、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出のために読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データdという。
【0017】
そして、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると、読み出される照射開始検出用の画像データdの値が上昇することを利用して、読み出された照射開始検出用の画像データdの値に基づいて放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成される。
【0018】
また、本発明者らが見出した別の新たな放射線の照射開始の検出方法では、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから全ての走査線5にオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で読み出し回路17に読み出し動作を行わせ、TFT8を介して放射線検出素子7からリークした電荷q(後述する図15参照)をリークデータdleakに変換するリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成される。
【0019】
そして、この場合も、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると、読み出されるリークデータdleakの値が上昇するため、それを利用して、読み出されたリークデータdleakの値に基づいて放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成される。
【0020】
その際、上記のリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdに予め閾値dleak_thや閾値dthを設けておき、読み出したリークデータdleakや画像データdが閾値dleak_th、dthを越えた時点で、放射線画像撮影装置に対する放射線の照射が開始されたことを検出するように構成される。
【0021】
本発明者らの研究では、上記のように構成することで、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間でインターフェースを構築しない場合でも、読み出されるリークデータdleak等に基づいて、放射線発生装置の放射線源から放射線の照射が開始されたことを放射線画像撮影装置自体で的確に検出することができることが分かった。
【0022】
一方、放射線の照射開始が検出されると、上記のようにして、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧が印加されて電荷蓄積状態に移行した後、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7から画像データDがそれぞれ読み出される。
【0023】
また、電荷蓄積状態において各TFT8がオフ状態とされている間に、各放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等により常時発生するいわゆる暗電荷(暗電流ともいう。)も各放射線検出素子7内に蓄積される。そして、この暗電荷に起因するオフセット分が、読み出される画像データDにそれぞれ重畳される状態になる。
【0024】
そこで、読み出された画像データDから、画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分を除去するために、暗電荷に起因するオフセット分に相当するオフセットデータOを取得するためのオフセットデータOの読み出し処理を行うように構成される場合がある。
【0025】
また、後述するコンソール58(後述する図11や図12参照)で、放射線画像撮影装置で読み出された画像データDやオフセットデータO等に基づいて精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像が生成される。
【0026】
しかし、例えば画像中に被写体が適切に撮影されていないような場合には、放射線画像を生成しても使い物にならなくなる。そこで、放射線画像撮影装置で、例えば画像データDの読み出し処理を終えた後で、画像データDや、読み出した全画像データD中から画像データDを所定の割合で間引いて間引きデータDtを作成して、コンソール58に送信する。そして、コンソール58で、間引きデータDtに基づいてプレビュー画像を生成して表示するように構成される場合がある。
【0027】
そして、放射線技師は、コンソール58の表示部上に表示されたプレビュー画像を見て放射線画像撮影が適切に行われたか否か、すなわち画像中に被写体が適切に撮影されているか否か等を判断して、再撮影の要否を判断する。なお、以下では、上記のプレビュー画像用の画像データDや間引きデータDtをまとめてプレビュー画像用のデータという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】米国特許第7211803号明細書
【特許文献5】特開2009−219538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
ところで、本発明者らの研究では、上記のように放射線画像撮影装置自体でリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成する場合に、上記の画像データDの読み出し処理後のオフセットデータOの読み出し処理において、上記の検出方法に適した処理の仕方でオフセットデータOの読み出し処理を行うことで、好適なオフセットデータOを読み出すことが可能となることが分かってきた。
【0030】
しかしながら、上記の検出方法に適した特有の処理の仕方でオフセットデータOの読み出し処理を行うと、画像データDの読み出し処理後に、プレビュー画像用に放射線画像撮影装置から間引きデータDtを送信している最中にオフセットデータOの読み出し処理が開始されてしまう虞れがある。
【0031】
そして、このような現象が生じると、読み出されるオフセットデータOにノイズが重畳される等の問題が生じる虞れがあるため、通常、このような場合には、放射線画像撮影装置からコンソール58に対する間引きデータDtの送信が途中で停止される。しかし、間引きデータDtの送信が途中で停止されると、コンソール58上にプレビュー画像が表示されたとしても、プレビュー画像が十分に表示されなくなり、放射線技師が見ても上記の判断を適切に行うことができないといった問題が生じる虞れがあることが分かってきた。
【0032】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を検出する場合に、放射線画像撮影装置からコンソールに対して、間引きデータDt等のプレビュー画像用のデータを途中で送信が停止されることなく送信することが可能な放射線画像撮影装置およびそれを用いた放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して行う前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に繰り返し行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
放射線の照射開始を検出すると、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加し、前記各スイッチ手段をオフ状態とする電荷蓄積状態を経た後、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの画像データの読み出し処理を行わせ、
前記画像データの読み出し処理の後に、放射線が照射されない状態で、前記画像データの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理を行わせ、
前記オフセットデータの読み出し処理の後で、読み出した前記画像データに基づくプレビュー画像用のデータをコンソールに送信することを特徴とする。
【0034】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
放射線の照射開始を検出すると、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加し、前記各スイッチ手段をオフ状態とする電荷蓄積状態を経た後、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの画像データの読み出し処理を行わせ、
前記画像データの読み出し処理の後に、放射線が照射されない状態で、前記画像データの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理を行わせ、
前記オフセットデータの読み出し処理の後で、読み出した前記画像データに基づくプレビュー画像用のデータをコンソールに送信することを特徴とする。
【0035】
さらに、本発明の放射線画像撮影システムは、
通信手段を備える上記の本発明の放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記プレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像を生成して表示部上に表示させるコンソールと、
を備え、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置から前記プレビュー画像用のデータが送信されてくるごとに前記プレビュー画像を生成して前記表示部上にワイプ表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムによれば、放射線画像撮影装置の制御手段は、放射線画像撮影前に読み出したリークデータdleakや照射開始検出用の画像データd等に基づいて、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。そのため、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間でインターフェースが構築できない(或いはインターフェースを構築しない)場合であっても、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射開始を的確に検出して、放射線画像撮影を適切に行うことが可能となる。
【0037】
また、放射線画像撮影装置の制御手段は、本画像としての画像データDの読み出し処理後、それまでの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理を行わせた後で、プレビュー画像用のデータをコンソールに送信する。そのため、放射線画像撮影装置からコンソールに対して、プレビュー画像用のデータを、途中で送信が停止されることなく送信することが可能となる。
【0038】
そのため、コンソールの表示部上に、プレビュー画像を、放射線技師が見て、画像中に被写体が適切に撮影されているか否かを的確に判断でき、再撮影の要否の判断を的確に行うことができる程度に的確に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図14】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】検出方法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図17】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図18】検出方法2において放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図20】検出方法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図21】検出部が4つの領域に分割され、各領域に読み出しICがそれぞれ割り当てられた状態を表す図である。
【図22】放射線画像撮影装置に照射野が絞られた放射線が照射された場合を表す図である。
【図23】各読み出し回路で読み出されたリークデータの読み出しICごとの平均値の時間的推移の例を表すグラフである。
【図24】移動平均の算出の仕方を説明する図である。
【図25】読み出しICごとに算出される各差分の時間的推移の例を表すグラフである。
【図26】算出された差分の最大値の時間的推移の例を表すグラフである。
【図27】統計値法により算出される統計値dleak_st(z)の、放射線の照射開始前後の時間的推移の例を示すグラフである。
【図28】差分法により算出される差分Δd(z)の最大値Δdmaxの、放射線の照射開始前後の時間的推移の例を示すグラフである。
【図29】Max-Min法により算出される差分δdの、放射線の照射開始前後の時間的推移の例を示すグラフである。
【図30】積算法により算出される差分Δd(z)の積算値ΣΔdの、放射線の照射開始前後の時間的推移の例を示すグラフである。
【図31】画像データD中に現れる線欠陥を表す図である。
【図32】照射開始の検出が遅れて画像データの読み出し処理が複数回行われた場合の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングの例を表すタイミングチャートである。
【図33】線欠陥が連続して発生する状態を表す図である。
【図34】検出方法1の場合にリークデータの読み出し処理と交互に行うリセット処理を、検出部の両端側の各走査線から順に交互に、検出部の中心部に向かってオン電圧を印加する走査線をシフトさせるようにして行うことを表すタイミングチャートである。
【図35】検出方法2の場合に照射開始検出用の画像データの読み出し処理を、検出部の両端側の各走査線から順に交互に、検出部の中心部に向かってオン電圧を印加する走査線をシフトさせるようにして行うことを表すタイミングチャートである。
【図36】本実施形態に係る放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムにおける放射線画像撮影の手順および各処理等を示す図である。
【図37】各放射線検出素子のリセット処理を通常の短周期で行う場合に各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図38】ゲートドライバーに存在する非接続の端子を説明する図である。
【図39】(A)リークデータ、および(B)移動平均の時間的な変動を表すグラフである。
【図40】差分の時間的な変動を表すグラフであり、差分の変動パターンを示すグラフである。
【図41】算出した差分から予め取得した差分の変動パターンを減算した値がほぼ0に近い値になることを表すグラフである。
【図42】本画像としての画像データの読み出し処理からオフセットデータの読み出し処理までの各処理において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図43】画像データの中から間引きデータを抽出する仕方の一例を説明する図である。
【図44】(A)コンソールの表示部上にワイプ表示される途中のプレビュー画像、および(B)ワイプ表示された後のプレビュー画像等を表す図である。
【図45】従来の放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムにおける放射線画像撮影の手順および各処理等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0041】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0042】
また、本発明は、本実施形態で説明する、いわゆる可搬型の放射線画像撮影装置のみならず、例えば支持台等と一体的に形成された専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
【0043】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0044】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0045】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0046】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0047】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0048】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0049】
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0050】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0051】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0052】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0053】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0054】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0056】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0057】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0058】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
【0059】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0060】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0061】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位Vが印加されるようになっている。
【0062】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0063】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0064】
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0065】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0066】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0067】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0068】
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0069】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0070】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0071】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0072】
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、装置自体で放射線の照射開始を検出するようになっているが、そのための制御構成等については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
【0073】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0074】
撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
【0075】
図11に示すように、撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0076】
撮影室R1には、撮影室R1内の各装置等や撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0077】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0078】
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0079】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0080】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。
【0081】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0082】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0083】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0084】
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
【0085】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室R1の臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0086】
本実施形態では、コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータとして間引きデータDtが送信されてくると、間引きデータDtが送信されてくるごとにプレビュー画像p_preを生成して表示部58a上にワイプ表示させるようになっているが、この点については後で説明する。
【0087】
また、コンソール58は、後述するように、続いて放射線画像撮影装置1から残りの画像データD等が送信されてくると、間引きデータDtと残りの画像データDから元の全画像データDを復元し、それらとオフセットデータO等に基づいてゲイン補正やオフセット補正、欠陥画素補正、撮影部位に応じた諧調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像pを生成するようになっている。
【0088】
[放射線画像撮影装置における放射線の照射開始の検出の制御構成について]
次に、上記のように構成された放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出処理の制御構成について説明する。
【0089】
本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1自体で、放射線発生装置55の放射線源52(図11や図12参照)から放射線が照射されたことを検出するようになっている。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
【0090】
なお、本実施形態に係る検出方法は、本発明者らの研究により新たに見出された検出方法であり、前述した特許文献4や特許文献5に記載されているように、装置内に電流検出手段を設けて電流検出手段からの出力値に基づいて放射線の照射開始等を検出する手法は採用されていない。
【0091】
本発明者らの研究により新たに見出された検出方法としては、例えば、下記の2つの検出方法のいずれかを採用することが可能である。
【0092】
[検出方法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。ここで、リークデータdleakとは、図13に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0093】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図14に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0094】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0095】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0096】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0097】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図15に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。なお、図15や後述する図16等のTやτ、Tacについては後で説明する。
【0098】
このように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図15参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かった。
【0099】
そして、例えば図16に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合、図17に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0100】
なお、図16および図17では、図16で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図17の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図16において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0101】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図17参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、放射線の照射開始の検出処理以降の処理については、後で説明する。
【0102】
[検出方法2]
また、上記の検出方法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図18に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
【0103】
なお、前述したように、撮影直後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データd(或いは単に画像データd)という。
【0104】
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図19に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図19等におけるTやΔTについては後で説明する。
【0105】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された画像データd(図20では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された画像データd)が、前述した図17に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0106】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、読み出された画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、図20中のΔTやτ、Tacについては以下で説明する。
【0107】
[検出感度を向上させるための処理について]
また、上記の検出方法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図15や図16等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。そのため、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度が向上する。
【0108】
また、上記の検出方法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図19や図20参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の画像データdの読み出し処理で読み出される画像データdの値が大きくなる。そのため、やはり放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度が向上する。
【0109】
なお、この場合も、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図20参照)や、制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T(図19参照)が長くなる。
【0110】
このように、上記の検出方法1や検出方法2を採用する場合には、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させるために、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における上記の周期τや、制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔T、或いはオン時間ΔTを長くする等の処理が適宜行われる。
【0111】
[改良された放射線の照射開始の検出手法について]
ところで、上記の検出方法1、2は、以下のように改良することが可能であり、本実施形態では、実際には、以下の改良された検出手法によって放射線の照射開始が検出されるようになっている。
【0112】
なお、以下では、主に、前述した検出方法1、すなわち放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理および各放射線検出素子7のリセット処理を交互に行い、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明するが、上記の検出方法2を採用する場合についても同様にあてはまる。
【0113】
上記の検出方法1を採用して放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を検出するように構成する場合、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7等参照)には、通常、数千本から数万本の信号線6が配線されており、各信号線6にそれぞれ読み出し回路17が設けられているため、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの数は、数千個から数万個の数になる。
【0114】
そして、それらの全てのリークデータdleakについて、上記のように閾値を越えたか否かを判断する処理を各読み出し処理ごとに行うように構成すると、検出処理が非常に重くなり、リアルタイムで放射線の照射開始を検出することができなくなる虞れがある。そこで、以下のような検出手法を採用することが可能である。
【0115】
[検出手法A(統計値法)]
この検出手法Aは、閾値を越えたか否かの判断を行うデータ量を減らすことを目的とする検出手法である。
【0116】
本実施形態では、読み出しIC16(図7参照)内には、例えば、128個や256個の読み出し回路17が形成されて内蔵されている。すなわち、1個の読み出しIC16内の128個や256個等の読み出し回路17にそれぞれ信号線6が接続されており、1回のリークデータdleakの読み出し処理で、1個の読み出しIC16から信号線6ごとに128個や256個のリークデータdleakが読み出される。
【0117】
いま、仮に信号線6が8192本設けられており、1個の読み出しIC16に256個の読み出し回路17が内蔵されている(すなわち1個の読み出しIC16に256本の信号線6が接続されている)とすると、読み出しIC16の数は、全部で8192÷256=32個になる。
【0118】
そこで、例えば、1回のリークデータdleakの読み出し処理で1つの読み出しIC16から出力される256個等のリークデータdleakの平均値や合計値、中間値、最大値等(以下、これらをまとめて統計値という。)を算出する。そして、各読み出しIC16ごとに1つずつ算出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が、それぞれ当該統計値dleak_st(z)について設定された閾値dthAを越えたか否かを判断するように構成することが可能である。
【0119】
なお、この検出手法Aに基づく放射線の照射開始の検出手法を、以下、統計値法という。また、上記の「統計値dleak_st(z)」の記載中のzは、読み出しIC16の番号であり、上記の例では、読み出しIC16は32個設けられているため、zは1から32までの値をとる。また、閾値dthAは、全ての読み出しIC16について同じ値として設定することも可能であり、各読み出しIC16ごとに設定される値であってもよい。
【0120】
この統計値法(検出手法A)を採用すると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記の例で言えば、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出される8192個のリークデータdleakについて各々閾値を越えたか否かを判断する必要がなくなり、各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakの32個の統計値dleak_st(z)について閾値dthAを越えたか否かを判断するだけで済む。そのため、放射線画像撮影装置1の制御手段22における放射線の照射開始の判断処理が軽くなる。
【0121】
[検出手法B(差分法)]
また、さらに判断処理を軽くするために、制御手段22で、1回のリークデータdleakの読み出し処理で各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakから算出した32個の統計値dleak_st(z)の中から最大値を抽出し、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)の最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することも可能である。
【0122】
また、図21に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が例えば4つの領域Pa〜Pdに分割されており、例えば上記の32個の読み出しIC16が32÷4=8個ずつ各領域Pa〜Pdに割り当てられているような場合がある。
【0123】
このような場合には、各領域Pa〜Pdごとに、1回の読み出し処理で読み出された各リークデータdleakから算出した読み出しIC16ごとの8個の統計値dleak_st(z)の中から最大値を抽出し、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)の最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することも可能である。なお、図21では、走査駆動手段15等の記載が省略されている。また、図21では簡略化して示したが、各読み出しIC16にはそれぞれ256本等の信号線6が接続されている。
【0124】
しかし、上記のように構成する場合、各読み出しIC16ごとの検出感度が問題になる場合があり得る。各読み出しIC16(図7や図21参照)の検出感度は、通常、各読み出しIC16ごとに異なる。
【0125】
すなわち、各放射線検出素子7から信号線6にリークする電荷qの合計値(図13参照)が信号線6ごとに同じであったとしても、他の読み出しIC16よりも常に大きな値のリークデータdleakを読み出す読み出しIC16もあれば、他の読み出しIC16よりも常に小さな値のリークデータdleakを読み出す読み出しIC16もある。
【0126】
このような状況において、例えば図22に示すように、放射線画像撮影装置1に対して放射線が、検出部Pの中央部分に照射野Fが絞られた状態で照射され、他の読み出しIC16よりも常に大きな値のリークデータdleakを読み出す読み出しIC16に接続されている信号線6aが照射野F外に存在する場合を考える。
【0127】
この場合、図23に示すように、照射野F内に存在する信号線6が接続されている読み出しIC16γから出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)(図中のγ参照)が放射線の照射により上昇しても、照射野F外に存在する信号線6aが接続されている読み出しIC16δから出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)(図中のδ参照)を越えない場合が生じ得る。
【0128】
このような場合、1回のリークデータdleakの読み出し処理で各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakから算出した各統計値dleak_st(z)の中から最大値を抽出すると、図中δで示されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が抽出されるが、抽出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)は放射線の照射によっても変動しない。そのため、抽出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の最大値が閾値を越えなくなり、結局、放射線の照射を検出することができなくなってしまう。
【0129】
そこで、このような問題を回避するために、例えば、各読み出し処理ごとに各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の移動平均(Moving Average)dlst_ma(z)を、読み出しIC16ごとに算出するように構成することが可能である。なお、移動平均dlst_ma(z)の算出手法としては、単純移動平均や加重移動平均、或いは指数移動平均等の公知の手法を用いることが可能である。
【0130】
具体的には、リークデータdleakの読み出し処理の際に読み出しIC16から出力されるリークデータdleakの統計値dleak_st(z)を算出するごとに、図24に示すように、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む所定回数(例えば10回)分の過去の各読み出し処理の際に算出された、読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の平均(すなわち移動平均dlst_ma(z))を算出するように構成する。
【0131】
そして、下記(1)式に従って、読み出しIC16ごとに、今回の読み出し処理で算出したリークデータdleakの統計値dleak_st(z)と、算出した移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を算出するように構成することが可能である。
Δd(z)=dleak_st(z)−dlst_ma(z) …(1)
なお、この検出手法Bに基づく放射線の照射開始の検出手法を、以下、差分法という。
【0132】
そして、制御手段22で、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出しIC16から出力されたリークデータdleakから算出した統計値dleak_st(z)と、それぞれに対応する移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を、各読み出しIC16ごとにそれぞれ算出する。そして、算出した差分Δd(z)(上記の例では32個の差分Δd(z)や8個等の差分Δd(z))の中から最大値Δdmaxを抽出し、差分Δd(z)の最大値Δdmaxが閾値Δdthを越えたか否かを判断するように構成することが可能である。
【0133】
このように構成すれば、読み出しIC16ごとに検出感度にばらつきがあったとしても、同じ読み出しIC16において同じ検出感度で読み出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)と移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を算出することで、読み出しIC16ごとの検出感度によるばらつきが相殺される。
【0134】
すなわち、図23に示したように各読み出しIC16ごとに検出感度にばらつきがあったとしても、図25に示すように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない限り、上記の読み出しIC16γ、16δを含むいずれの読み出しIC16においても、算出される差分Δd(z)の値がほぼ0になる(図25における放射線の照射開始前のγ、δ参照)。
【0135】
そのため、上記差分Δd(z)が、読み出しIC16ごとに、純粋にリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が過去のデータから増加したか否かのみを反映する値になり、それに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することで、図23に示したような問題が発生することを的確に防止することが可能となる。
【0136】
この差分法(検出手法B)を採用する場合には、制御手段22は、放射線画像撮影前に行うリークデータdleakの読み出し処理において、読み出しIC16から出力されたリークデータdleakから算出した読み出しIC16ごとの統計値dleak_st(z)と、各読み出しIC16ごとの統計値dleak_st(z)に対応する移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)を、各読み出しIC16ごとにそれぞれ算出する。
【0137】
そして、算出した差分Δd(z)(上記の例では32個の差分Δd(z)、或いは図21の場合には検出部Pの各領域Pa〜Pdごとの8個の差分Δd(z))の中から最大値Δdmaxを抽出する。そして、差分Δd(z)の最大値Δdmaxが、閾値Δdthを越えたか否かを判断するように構成される。
【0138】
このように構成すると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射される以前は、図25に示したように、いずれの読み出しIC16においても算出される差分Δd(z)の値がほぼ0になるため、各読み出しIC16ごとに算出した差分Δd(z)の最大値Δdmaxは、図26に示すようにほぼ0に近い値になる(図中の時刻T1以前参照)。
【0139】
そして、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると(図26中の時刻T1参照)、いずれかの読み出しIC16(或いは全ての読み出しIC16)において、それまでの例えば過去10回分の読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)の移動平均dlst_ma(z)(図24参照)よりも、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)が格段に大きくなる。
【0140】
そのため、上記(1)式に従って差分Δd(z)を算出すると、放射線の照射により差分Δd(z)が格段に大きくなる読み出しIC16が現れる。そして、図26に示すように、差分Δd(z)の最大値Δdmaxが確実に閾値Δdthを越えるようになる。そのため、差分法を採用した場合も、制御手段22は、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。
【0141】
[検出手法C(Max-Min法)]
また、上記の差分法のように読み出しIC16ごとに算出した差分Δd(z)の中から最大値Δdmaxを抽出するだけでなく、最小値Δdminをも抽出し、差分Δd(z)の最大値Δdmaxと最小値Δdminとの差δdが、閾値dthCを越えたか否かを判断するように構成することも可能である。なお、この検出手法Cに基づく放射線の照射開始の検出手法を、以下、Max-Min法という。
【0142】
この場合も、差分Δd(z)の最大値Δdmaxから最小値Δdminを減算して差分δdを算出すると、放射線の照射により差分δdが格段に大きくなる読み出しIC16が現れる。そのため、差分δdが設定された閾値δdthを確実に越えるようになり、Max-Min法(検出手法C)を採用した場合も、制御手段22は、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。
【0143】
[検出手法D(積算法)]
一方、放射線源52から放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が非常に小さい場合、上記の統計値法(検出手法A)に従って算出される読み出しIC16ごとのリークデータdleakの平均値等の統計値dleak_st(z)が小さくなる場合がある。そして、放射線が照射されても統計値dleak_st(z)が閾値dthAを越えない場合が生じ得る。
【0144】
また、上記の差分法(検出手法B)やMax-Min法(検出手法C)を採用する場合も同様に、読み出しIC16ごとのリークデータdleakの統計値dleak_st(z)と移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)が小さくなり、その最大値Δdmax(差分法の場合)やそれと最小値Δdminとの差分δd(Max-Min法の場合)が小さくなる。
【0145】
そのため、放射線が照射されてもそれらの値が閾値Δdthや閾値δdthを越えない場合が生じ得るが、それでは放射線画像撮影装置1に放射線が照射されているにもかかわらず、放射線画像撮影装置1が放射線の照射開始を検出することができなくなる。
【0146】
そこで、例えば、読み出しIC16ごとに、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)と移動平均dlst_ma(z)との差分Δd(z)の時間的な積算値(積分値ともいう。)ΣΔdを算出するように構成し、この積算値ΣΔdが閾値ΣΔdthを越えたか否かを判断するように構成することが可能である。なお、この検出手法Dに基づく放射線の照射開始の検出手法を、以下、積算法という。
【0147】
このように構成すると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されないうちは、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)がゆらいで移動平均dlst_ma(z)よりも大きくなったり小さくなったりする。そのため、それらの差分Δd(z)の積算値ΣΔdは0に近い値で推移する。しかし、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、リークデータdleakの統計値dleak_st(z)は移動平均dlst_ma(z)よりも有意に大きな値になるため、それらの差分Δd(z)は、正の値になる場合が多くなる。
【0148】
そのため、上記のように構成すれば、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されないうちは積算値ΣΔdが閾値ΣΔdthを越えることはないが、放射線の照射が開始されると、積算値ΣΔdが増加していき、閾値ΣΔdthを越えるようになる。そのため、放射線源52から放射線画像撮影装置1に照射される放射線の線量が非常に小さい場合でも、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0149】
ここで、以上の検出手法A〜Dすなわち統計値法、差分法、Max-Min法および積算法により算出される統計値dleak_st(z)や、差分Δd(z)の最大値Δdmax、差分Δd(z)の最大値Δdmaxと最小値Δdminとの差分δd、差分Δd(z)の積算値ΣΔdが、放射線の照射開始前から照射開始後、および放射線の照射終了後にどのように変化するかを、図27〜図30に例示する。
【0150】
なお、図27は統計値法、図28は差分法、図29はMax-Min法、図30は積算法の場合をそれぞれ示し、また、図27〜図30において、時刻T1は放射線の照射が開始された時点を表し、時刻T2は放射線の照射が終了した時点を表す。さらに、リークデータdleakの読み出し処理や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理は、図16や図20に示したように、実際には放射線の照射開始を検出した時点で停止される。そのため、図27〜図30では、仮に放射線の照射開始を検出した後もリークデータdleakの読み出し処理を続行した場合の状態が示されている。
【0151】
図27〜図30に示すように、検出手法A〜Dすなわち統計値法、差分法、Max-Min法および積算法では、算出される各値が、放射線の照射開始前後でそれぞれ各図に示したように推移し、それぞれ閾値を越えることで、放射線の照射開始が的確に検出される。
【0152】
[スパイクノイズに対する対策について]
ところで、放射線画像撮影装置1は電子機器であるため、電子機器においてよく知られているように、スパイク状のノイズ(すなわち突発的に発生するノイズ。以下、スパイクノイズ(spike noise)という。)が発生し得る。そして、スパイクノイズの発生を回避することは必ずしも容易ではない。
【0153】
また、例えば、読み出されたリークデータdleak(或いは照射開始検出用の画像データd。以下同じ。)に重畳されるスパイクノイズは、読み出しIC16等の電気系の機能部が動作することによって発生する、いわゆる通常のスパイクノイズである場合もあるが、本発明者らの研究では、例えば放射線画像撮影装置1に衝撃や振動等が加わることによってもスパイクノイズが発生する場合があることも分かっている。
【0154】
なお、この場合、スパイクノイズとは、例えば放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行う際に、ある回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakがそれまでのリークデータdleakよりも異常に大きな値(すなわちノイズが重畳された値)になるが、その直後の回の読み出し処理で読み出されるリークデータdleakはノイズが重畳されていない元の小さな値に戻るようなノイズをいう。
【0155】
しかし、読み出されるリークデータdleak等にこのようなスパイクノイズが重畳されると、スパイクノイズが発生した時点で読み出された異常に大きな値のリークデータdleakやそれに基づいて算出される差分Δd(z)の最大値Δdmax等の各値が閾値を越えてしまい、実際には放射線が照射されていないにもかかわらず、放射線の照射が開始されたと誤検出されてしまう虞れがある。
【0156】
そこで、本実施形態では、このようなスパイクノイズによる放射線の照射開始の誤検出が生じることを防止するために、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、基本的に、放射線画像撮影前に繰り返し行うリークデータdleakの読み出し処理において、ある回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakやそれに基づいて算出される差分Δd(z)の最大値Δdmax等の各値が閾値を越えても即座に放射線の照射開始を検出せず、その直後の回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleak等が閾値を越えた時点で初めて放射線の照射開始を検出するように構成されている。
【0157】
すなわち、簡単に言えば、制御手段22は、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で、読み出されたリークデータdleak等が連続して(すなわち時間的に連続する読み出し処理において)それぞれ閾値を越えた場合に、放射線の照射開始を検出するようになっている。
【0158】
このように構成すれば、仮に読み出されるリークデータdleak等にこのようなスパイクノイズが重畳されてリークデータdleakやそれに基づいて算出される差分Δd(z)の最大値Δdmax等の各値が閾値を越えても、その直後の回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakやそれに基づく各値が閾値を越えなければ、先の回でリークデータdleakやそれに基づく各値が閾値を越えたのはスパイクノイズのためであると的確に判断できる。
【0159】
そして、このような場合に、放射線の照射開始を検出しないように構成することで、スパイクノイズの影響を的確に排除することが可能となり、スパイクノイズの発生に起因する放射線の照射開始の誤検出の発生を的確に防止することが可能となる。
【0160】
ところで、上記の検出手法A〜Dすなわち統計値法、差分法、Max-Min法および積算法のいずれの手法を採用するかは予め任意に決められるが、本実施形態では、そのうち、差分法(検出手法B)とMax-Min法(検出手法C)、積算法(検出手法D)の3つの手法が採用されている。そして、リークデータdleakが読み出されるごとに、それぞれの手法に基づいて放射線の照射が開始されたか否かが判断されるようになっている。
【0161】
このように構成する場合、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理において、例えば、ある回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakに基づいていずれかの検出手法に基づいて算出された値が閾値を越えた後、その直後の回の読み出し処理では、別の検出手法で算出された値が閾値を越える場合が生じ得る。
【0162】
すなわち、ある回の読み出し処理で、例えば差分法(検出手法B)に基づいて算出された上記の差分Δd(z)の最大値Δdmaxが閾値Δdthを越えた後、その直後の回の読み出し処理では、差分法に基づいて算出された最大値Δdmaxは閾値Δdthを越えないが、それとは別の例えばMax-Min法(検出手法C)に基づいて算出された差分Δd(z)の最大値Δdmaxと最小値Δdminとの差分δdが閾値δdthを越える場合があり得る。
【0163】
そして、このような場合でも、後の回の読み出し処理で値(すなわち上記の例ではMax-Min法に基づいて算出された差分δd)が閾値を越えた時点で、放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0164】
しかし、実際に放射線が照射されていれば、ある回の読み出し処理でもその直後の回の読み出し処理でも、同じ検出手法で算出された値が連続してそれぞれ閾値を越えるはずであると考えられる。
【0165】
そこで、放射線の照射開始をより厳密に検出するために(すなわちスパイクノイズによる誤検出をより厳密に防止するために)、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で、読み出されたリークデータdleakから同一の検出手法に基づいて算出された値が連続して閾値を越えた場合に初めて放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0166】
すなわち、この場合には、ある回の読み出し処理で、例えば差分法(検出手法B)に基づいて算出された差分Δd(z)の最大値Δdmaxが閾値Δdthを越えたとすると、その直後の回の読み出し処理で、同じ差分法に基づいて算出された最大値Δdmaxが閾値Δdthを越えれば、放射線の照射が開始されたと判断されて放射線の照射開始が検出される。
【0167】
しかし、ある回の読み出し処理で、例えば差分法に基づいて算出された最大値Δdmaxが閾値Δdthを越えた後、その直後の回の読み出し処理で、同じ差分法に基づいて算出された最大値Δdmaxが閾値Δdthを越えなければ、たとえ他の検出手法に基づいて算出された値が閾値を越えたとしても、放射線の照射が開始されたとは判断されない。
【0168】
このように構成すれば、同じ検出手法で算出された値が連続して閾値を越えた場合に初めて放射線の照射開始が検出されるようになり、スパイクノイズによる誤検出をより的確に防止することが可能となる。
【0169】
一方、図21に示したように、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7等参照)が、例えば4つの領域Pa〜Pd等の複数の領域に分割されて構成されている場合には、検出部Pを分割する各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出方法、すなわち読み出されたリークデータdleak等が連続して閾値を越えた場合に放射線の照射開始を検出する検出方法を採用するように構成することが可能である。
【0170】
そして、この場合も、先の回の読み出し処理とその直後の回の読み出し処理でそれぞれ値が閾値を越えたと判断された検出手法が異なる検出手法であっても放射線の照射開始を検出する構成とするか、或いは、同一の検出手法である場合にのみ放射線の照射開始を検出する構成とするかは、適宜決められる。
【0171】
また、上記のように検出部Pが複数の領域に分割されている場合、いわば各領域に跨って放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0172】
すなわち、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理において、例えば、ある回の読み出し処理で例えば領域Paで読み出されたリークデータdleakやそれに基づいて算出された各値が閾値を越えた後、その直後の回の読み出し処理において、領域Pa以外の別の領域で読み出されたリークデータdleakやそれに基づいて算出された各値が閾値を越えた場合にも、放射線の照射が開始されたと判断して放射線の照射開始を検出するように構成することも可能である。
【0173】
なお、このように構成する場合でも、ある回の読み出し処理で例えば領域Paで読み出されたリークデータdleakやそれに基づいて算出された各値が閾値を越えた後、その直後の回の読み出し処理で、再度、同じ領域Paで読み出されたリークデータdleak等が閾値を越えた場合には、当然、放射線の照射が開始されたと判断されて、放射線の照射開始が検出される。
【0174】
以上のように、本実施形態では、放射線画像撮影前のリークデータdleak(或いは照射開始検出用の画像データd)の読み出し処理で、読み出されたリークデータdleakやそれに基づいて算出される各値が連続して(すなわち時間的に連続する少なくとも2回の読み出し処理において)それぞれ閾値を越えた場合に、放射線の照射開始を検出するように構成されている。
【0175】
このように構成することにより、仮に読み出されるリークデータdleak等に上記のようなスパイクノイズが重畳されてリークデータdleakやそれに基づいて算出される差分Δd(z)の最大値Δdmax等の各値が閾値を越えてしまっても、その直後の回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleak等が閾値を越えなければ、先の回でリークデータdleakやそれに基づく各値が閾値を越えたのはスパイクノイズのためであると的確に判断することが可能となる。
【0176】
そして、このような場合には、放射線の照射開始を検出しないように構成されるため、スパイクノイズの影響を的確に排除することが可能となり、スパイクノイズの発生に起因する放射線の照射開始の誤検出の発生を的確に防止することが可能となる。
【0177】
[線欠陥の発生およびそれに対する対処について]
ところで、上記の検出方法1(図16等参照)や検出方法2(図20等参照)に基づいて、読み出されたリークデータdleakや照射開始検出用の画像データd、或いは上記の検出手法A〜Dのようにそれらから算出された各値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成する場合、その後、後述する画像データDの読み出し処理で本画像として読み出される画像データD中に、いわゆる線欠陥が現れることが分かっている。
【0178】
例えば、上記の検出方法2を採用した場合、前述したように、放射線の照射により、読み出された照射開始検出用の画像データdが増加することに基づいて放射線の照射開始が検出される。しかし、読み出した照射開始検出用の画像データdが増加するということは、結局、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷の一部、すなわち本画像としての画像データDとして読み出されるべき電荷の一部が、放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdとして各放射線検出素子7内から失われてしまうことを意味する。
【0179】
すなわち、図20に示した例で言えば、走査線5のラインLnにオン電圧を印加した時点で放射線の照射開始が検出されているが、これは、走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7からは、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷の一部が失われたこと(すなわち照射開始検出用の画像データdとして読み出されたこと)を意味する。
【0180】
そのため、後の画像データDの読み出し処理で、走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出される本画像としての各画像データDには、有用な電荷の一部の欠損が生じていることになる。すなわち、当該各画像データDは、本来の値よりも若干小さな値になっている。そのため、例えば図31に示すように、各画像データDのうち、走査線5のラインLnに対応する部分に、欠損を生じている画像データDの線、すなわち線欠陥が現れる状態になる。
【0181】
一方、上記のように(図20参照)、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された直後の読み出し処理で放射線の照射開始が検出された場合には、図31に示したように、発生する線欠陥は1本で済むが、実際に放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されてから放射線の照射開始が検出されるまでに時間がかかると、発生する線欠陥の本数が増える。
【0182】
すなわち、例えば図32に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が実際に開始されてから、放射線画像撮影装置1で放射線の照射開始を検出するまでに時間がかかると、その間に、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理が複数回行われる。そして、読み出し処理が行われるごとに、読み出し処理のためにオン電圧が印加された各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から、放射線の照射により発生した有用な電荷の一部が失われる。
【0183】
そのため、例えば図32に示したように、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理で、走査線5のラインLnにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理が行われた時点で放射線源52からの放射線の照射が開始され、走査線5のラインLn+2にオン電圧を印加して行われた画像データdの読み出し処理で放射線の照射開始が検出された場合には、図33に示すように、走査線5のラインLn〜Ln+2に接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データDに欠損が生じる。
【0184】
そのため、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が実際に開始されてから放射線画像撮影装置1で放射線の照射開始が検出されるまでに時間がかかると、例えば図33に示すように、画像データD中に、複数の線欠陥が連続して発生する状態になる。
【0185】
また、この線欠陥が現れる現象は、上記の検出方法1を採用した場合でも同様に生じ得る。すなわち、例えば図16に示したタイミングで放射線の照射開始が検出された場合、4回目のリークデータdleakの読み出し処理の直前に各放射線検出素子7のリセット処理が行われた走査線5のラインL4では、リセット処理により、この走査線5に接続されている各放射線検出素子7内から放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷の一部が失われてしまっている可能性がある。
【0186】
そのため、この場合には、上記の検出方法2の場合(図31参照)と同様に、後で読み出される本画像としての画像データD中に、線欠陥が1本以上生じ得る。
【0187】
また、上記と同様に、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が実際に開始されてから、放射線画像撮影装置1で放射線の照射が開始されたことを検出するまでに時間がかかると、その間に、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理が複数回行われてしまい、図33に示した場合と同様に、画像データD中に複数の線欠陥が連続して発生する状態になる。
【0188】
このような線欠陥を有する画像データDに基づいて放射線画像を生成すると、放射線画像中に線状の(或いは複数の線欠陥が連続して発生する場合には帯状の)模様が写り込んでしまい、放射線画像が見難くなる。そして、例えば放射線画像を医療における診断用の画像等として用いる場合、線欠陥の部分に病変部が撮影されていると、それが病変部なのか線欠陥による模様なのかが判別し難くなる場合があり、医師が誤診してしまう可能性が生じる。
【0189】
そこで、画像データDが線欠陥を有する場合には、欠陥を生じている画像データDを修復することが必要になる。その際、例えば図33に示した例で言えば、例えば走査線5のラインLn-1、Ln+3に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDのように欠陥を生じていない画像データDを用い、例えば線形補間等の手法により欠陥を生じている画像データDが修復される場合がある。
【0190】
しかし、特に図33に示したように複数の線欠陥が連続して発生している場合に、このような修復を行うと、走査線5のラインLn〜Ln+2の画像データDの部分に病変部が撮影されていても、病変部が撮影されていない走査線5のラインLn-1、Ln+3の画像データD等でそれらの画像データDが修復されてしまい、結局、修復された画像データDやそれに基づいて生成された放射線画像中から病変部が消えてしまうといった事態が生じる可能性がある。
【0191】
このような事態は、少なくとも放射線画像を医療における診断用の画像等として用いる場合には、極力回避される必要がある。
【0192】
本実施形態では、前述したように、上記の検出方法1におけるリークデータdleakの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理や、検出方法2における照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図15や図16、図20等参照)を長くする等して、放射線の照射開始の検出感度を向上させるように構成される。
【0193】
そして、このように構成すると、実際に放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されてから放射線画像撮影装置1で放射線の照射が開始されたことが検出されるまでの間に、各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合)でオン電圧が印加される走査線5の本数を減らすことが可能となる。
【0194】
そのため、本実施形態では、上記のように周期τを長くするように構成することで、放射線の照射開始の検出感度が向上されるだけでなく、画像データD中に発生する線欠陥の本数をできるだけ減らすようになっている。
【0195】
また、本実施形態では、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理や、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、オン電圧を印加する走査線5の順番を工夫して、画像データD中の線欠陥をできるだけ連続して生じさせないように構成されている。
【0196】
具体的には、例えば上記の検出方法1を採用し、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成する場合には、例えば図34に示すように、検出部P(図7等参照)上の各走査線5のうち、検出部Pの両端側に配置された走査線5のラインL1、Lxから順に交互に、検出部Pの中心部の走査線5(図34では図示省略)に向かってオン電圧を印加する走査線5をシフトさせながら、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0197】
この場合、例えば図21に示したように、放射線画像撮影装置1の検出部Pが複数の領域に分割されているような場合も同様に構成することができる。
【0198】
すなわち、図21に示したように、検出部Pが例えば4つの領域Pa〜Pdに分割されており、各走査線5が、領域Paと領域Pbにわたって、或いは領域Pcと領域Pdにわたってそれぞれ配置されている場合には、図34に示したように、領域Pa、Pbに配置された走査線5にオン電圧が印加された次のタイミングでは領域Pc、Pdに配置された走査線5にオン電圧を印加するようにして、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。
【0199】
また、上記の検出方法2を採用し、読み出した照射開始検出用の画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成する場合にも、例えば図35に示すように、検出部P(図7等参照)上の各走査線5のうち、検出部Pの両端側に配置された走査線5のラインL1、Lxから順に交互に、検出部Pの中心部の走査線5(図35では図示省略)に向かって、オン電圧を印加する走査線5をシフトさせていくように構成することが可能である。
【0200】
以上のように構成することで、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合)や、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合)において、画像データD中の線欠陥が連続して発生することを防止し、或いは、連続する線欠陥の本数を非常に少なくすることが可能となる。
【0201】
[本発明における放射線画像撮影の手順等について]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50における放射線画像撮影の手順および各処理等について、図36以下の各図を参照して説明する。
【0202】
なお、以下でも、主に、前述した検出方法1、すなわち放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理および各放射線検出素子7のリセット処理を交互に行い、読み出したリークデータdleakやそれに基づいて算出された各値に基づいて放射線の照射開始を検出する場合について説明するが、上記の検出方法2を採用する場合についても同様にあてはまる。
【0203】
[各放射線検出素子のリセット処理]
本実施形態では、図36に示すように、例えばコンソール58から放射線画像撮影装置1に対して放射線画像撮影を開始する旨の信号が送信されると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、まず、各放射線検出素子7内に残存している余分な電荷を各放射線検出素子7内から除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるようになっている。
【0204】
この場合のリセット処理は、前述した放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる周期τ(図15や図16等参照)が長い、いわゆる長周期のリセット処理ではなく、図37に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5のラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加する周期τが短い、いわゆる通常の短周期のリセット処理が、所定回数だけ繰り返して行われるようになっている。
【0205】
なお、この場合、ゲートドライバー15bから走査線5のラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、検出部Pに設けられた各走査線5にオン電圧を1回ずつ印加してリセット処理を行う場合を、1回のリセット処理とする。図37の場合は、4回分のリセット処理が記載されている。そして、上記の所定回数としては、1回や5回、10回等の適宜の回数が設定される。
【0206】
[放射線の照射開始の検出処理]
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、各放射線検出素子7のリセット処理を終えると、続いて、放射線の照射開始の検出処理に移行する。放射線の照射開始の検出処理は、先に説明した仕方に従って行われる。
【0207】
[少なくとも1回分の検出処理を行わないことについて]
しかし、特に上記の検出方法1を採用して放射線の照射開始の検出処理を行うように構成されている場合には、リセット処理から検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間(図36参照。すなわちリークデータdleakの読み出し処理と交互に行う上記の長周期のリセット処理(図15や図16参照)を走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を1回ずつ印加して行う間)は、制御手段22は、放射線の照射開始の検出処理を行わないようになっている。このように構成する理由は、以下の通りである。
【0208】
本発明者らの研究では、各放射線検出素子7のリセット処理から検出処理に移行してリークデータdleakの読み出し処理を行うと、リセット処理を終了した直後、すなわちリークデータdleakの読み出し処理を開始した直後に読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる場合があることが分かっている。
【0209】
このような現象が生じる原因は必ずしも明確には分かっていないが、1つの原因として、各放射線検出素子7のリセット処理を行うと、各放射線検出素子7から信号線6に電荷が放出される際に各TFT8中のトラップ準位に比較的多くの電荷がトラップされる。そして、上記のように各TFT8をオフ状態としてリークデータdleakを読み出す初期段階では、各TFT8のトラップ準位にトラップされた電荷が、放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6にリークする電荷に重畳されるために、リークデータdleakの値が大きくなると考えられる。
【0210】
なお、リークデータdleakの読み出し処理を開始した直後のリークデータdleakが上記のように大きくなったとしても、読み出し処理を繰り返すうちに、読み出されるリークデータdleakの値は平常の比較的小さな値に収束する。
【0211】
このような現象が生じる場合に、各放射線検出素子7のリセット処理から検出処理に移行した直後から検出処理を行うように構成すると、読み出し処理を開始した直後の大きな値のリークデータdleakやそれに基づいて算出される各値が閾値を越えてしまい、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたと誤検出してしまう可能性がある。
【0212】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、各放射線検出素子7のリセット処理から放射線の照射開始の検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間は、放射線の照射開始の検出処理(すなわち読み出したリークデータdleakやそれに基づいて算出した各値と閾値との比較処理)を行わないようになっている。
【0213】
なお、本実施形態では、検出処理を1回行う間に、読み出されるリークデータdleakの値は平常の比較的小さな値に収束するため、検出処理に移行した直後の1回分の検出処理を行う間だけ検出処理を行わないように構成されるが、リークデータdleakの収束が長引く場合等には、検出処理を行わない回数を増やしてもよい。
【0214】
また、各放射線検出素子7のリセット処理から検出処理に移行した直後に読み出されるリークデータdleakが上記のように大きな値にならず、最初から平常の比較的小さな値のリークデータdleakが読み出されるのであれば、検出処理に移行した直後から放射線の照射開始の検出処理(すなわち読み出したリークデータdleakやそれに基づいて算出した各値と閾値との比較処理)を行うように構成することも可能である。
【0215】
本実施形態では、図36に示すように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、その後、上記のようにして放射線の照射開始の検出処理に移行して、放射線の照射が開始されるのを待つ状態に移行するようになっている。
【0216】
[変動パターンの取得処理について]
なお、本実施形態では、各放射線検出素子7のリセット処理から放射線の照射開始の検出処理に移行した後、実際に放射線の照射が開始されるまでの間に、以下のような変動パターンの取得処理を行うようになっている。まず、このような処理を行うことが必要となる前提事項について説明する。
【0217】
本実施形態では、図38に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bやそれを構成するゲートIC15cには、走査線5が接続されていない、いわゆる非接続の端子pが存在する。例えば図21に示したように、検出部Pが複数の領域Pa〜Pdに分割されている場合には、図21では図示を省略したゲートドライバー15bの図中上端側と下端側に、図38に示したような非接続の端子pが存在している。
【0218】
そして、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理では、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されるが、図38の場合には、実際にはゲートドライバー15bの非接続の端子pにオン電圧が順次印加された後で、各走査線5の各ラインL1〜Lxが接続されている各端子にオン電圧が順次印加される。
【0219】
そして、走査線5の最終ラインLx(図38では図示省略)にオン電圧が印加されると、次のタイミングでは、また、図38の上端の非接続の端子pから順にオン電圧の印加が再開される。なお、以下の説明では、非接続の端子pにオン電圧が順次印加されている期間をΔTp、各走査線5が接続されている端子にオン電圧が順次印加されている期間をΔTaという。
【0220】
このように、ゲートドライバー15やそれを構成するゲートIC15cに非接続の端子pが存在する場合、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が、図39(A)に示すように変動する。すなわち、各走査線5が接続されている端子にオン電圧が順次印加されている期間ΔTaでは、読み出されるリークデータdleakの値が相対的に大きいが、非接続の端子pにオン電圧が順次印加されている期間ΔTpでは、読み出されるリークデータdleakの値が相対的に小さくなることが分かっている。
【0221】
このような現象が生じる原因は必ずしも明らかではないが、例えば以下のように考えられている。すなわち、リークデータdleakは、図13に示したように、各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6にリークする電荷qの総和に相当するデータであるが、その直前にいずれかの走査線5(例えば走査線5のラインLi-1)にオン電圧が印加されて、当該走査線5(例えばラインLi-1)に接続されている各放射線検出素子7のリセット処理が行われる。
【0222】
そのため、このリセット処理により、上記のように、当該走査線5(例えばラインLi-1)に接続されている各TFT8のトラップ準位に電荷がトラップされるため、その直後のリークデータdleakの読み出し処理の際には、少なくとも当該走査線5(例えばラインLi-1)では当該TFT8を介して信号線6にリークする電荷qが大きくなる。
【0223】
そして、次のリセット処理で、今度は、次の走査線5(例えば走査線5のラインLi)にオン電圧が印加されると、このリセット処理により、当該走査線5(例えばラインLi)に接続されている各TFT8のトラップ準位に電荷がトラップされる。そのため、その直後のリークデータdleakの読み出し処理の際には、今度は、少なくとも当該走査線5(例えばラインLi)で、当該TFT8を介して信号線6にリークする電荷qが大きくなる。
【0224】
このように、各走査線5が接続されている端子にオン電圧が順次印加されている期間ΔTaでは、その直前の各放射線検出素子7のリセット処理でオン電圧が印加された走査線5に接続されているTFT8のトラップ準位に電荷がトラップされるため、その直後のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が、その分だけ大きくなる。
【0225】
しかし、非接続の端子pにオン電圧が順次印加されている期間ΔTpには、非接続の端子pにはオン電圧が印加されるが、その間、いずれの走査線5にもオン電圧が印加されないため、上記のようなリセット処理によるTFT8のトラップ準位への電荷の供給が行われなくなる。
【0226】
そのため、リセット処理によるTFT8のトラップ準位への電荷の供給が行われない分だけ、読み出されるリークデータdleakの値が、相対的に小さくなると考えられている。
【0227】
図39(A)に示したようにリークデータdleakの値が変動する場合、例えばそれらに基づいて各読み出しIC16から出力されたリークデータdleakの統計値dleak_st(z)(例えば平均値等)を算出し、その移動平均dlst_ma(z)を算出すると、算出される移動平均dlst_ma(z)は、例えば図39(B)に示すように変動する。
【0228】
そして、上記(1)式に従って、図39(A)に示したようにリークデータdleakの変動と同様に変動するリークデータdleakの統計値dleak_st(z)から、図39(B)に示したように変動する移動平均dlst_ma(z)を減算して差分Δd(z)(或いは差分Δd(z)の最大値Δdmax等。以下同じ。)を算出すると、算出される差分Δd(z)等は、図40に示すように、比較的大きく変動する。
【0229】
しかし、このように差分Δd(z)等が変動すると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないにもかかわらず、差分Δd(z)等が閾値Δdth等を越えてしまい、放射線の照射開始を誤検出してしまう可能性が生じる。
【0230】
そこで、本実施形態では、このような不都合が生じることを防止するために、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、少なくとも差分Δd(z)が変動する期間、すなわち上記の期間ΔTpおよびその直後の期間(図40参照)における差分Δd(z)等の変動パターン、すなわち上記の例では図40に示した差分Δd(z)の変動パターンΔd(z)pat等を、前述したように、各放射線検出素子7のリセット処理(図36参照)から放射線の照射開始の検出処理に移行した後、実際に放射線の照射が開始されるまでの間に、予め取得しておくようになっている。
【0231】
そして、本実施形態では、制御手段22は、少なくとも差分Δd(z)が変動する期間、すなわち上記の期間ΔTpおよびその直後の期間(図40参照)には、上記(1)式に従って算出される差分Δd(z)の代わりに、下記(2)式に従って算出される値Δd(z)を各読み出しIC16ごとの差分として、上記の放射線の照射開始の検出処理を行うようになっている。
Δd(z)=Δd(z)−Δd(z)pat
∴Δd(z)=dleak_st(z)−dlst_ma(z)−Δd(z)pat …(2)
【0232】
すなわち、本実施形態では、制御手段22は、少なくとも上記の期間においては、このようにして算出した値Δd(z)が閾値を越えたか否かを判断して、放射線の照射が開始されたか否かを判断するようになっている。
【0233】
このように構成すると、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていないにもかかわらず、リークデータdleak等が例えば図39(A)に示したように周期的に変動することによって、上記の差分Δd(z)が例えば図40に示したように変動する場合であっても、図41に示すように、算出した差分Δd(z)から変動パターンΔd(z)patを減算した値Δd(z)はほぼ0に近い値になる。
【0234】
このように、差分Δd(z)が変動しても、それと同様に変動する差分Δd(z)の変動パターンΔd(z)が減算されることにより、差分Δd(z)の変動と変動パターンΔd(z)patの変動とが的確に相殺される。そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない場合には、リークデータdleak等が周期的に変動しても、上記の値Δd(z)を、ほぼ0に近く、ほとんど変動しない値として算出することが可能となる。そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていない場合には、放射線の照射開始の誤検出が的確に防止される。
【0235】
また、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された場合には、読み出されるリークデータdleak等が、それ以前に読み出されたリークデータdleak等よりも格段に大きな値になる(図17参照)。そのため、上記のようにして算出される差分Δd(z)は、上記のように放射線が照射されない状態で取得された差分Δd(z)の変動パターンΔd(z)patの変動分よりも格段に大きな値になる。
【0236】
そのため、図示を省略するが、算出される値Δd(z)も格段に大きな値になり、的確に閾値Δdthを越えるようになる。そのため、上記のように構成すれば、リークデータdleak等が周期的に変動する場合でも、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された際には、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0237】
[電荷蓄積状態への移行]
次に、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして、放射線の照射が開始されたことを検出すると、図36に示すように、電荷蓄積状態に移行するようになっている。
【0238】
すなわち、図16(検出方法1の場合)や図20(検出方法2の場合)に示したように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0239】
[本画像としての画像データDの読み出し処理]
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、図36に示すように、本画像としての画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0240】
すなわち、本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点の直前のリセット処理でオン電圧が印加された走査線5(図16の場合は走査線5のラインL4)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図16の場合は走査線5のラインL5)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、本画像としての画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0241】
また、検出方法2の場合も同様に、図20に示すように、制御手段22は、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過すると、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5(図20の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図20の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、本画像としての画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0242】
なお、図16や図20では、本画像としての画像データDの読み出し処理を、放射線の照射開始を検出した時点でオン電圧が印加された走査線5のラインL4、Lnの次にラインL5、Ln+1からオン電圧の印加を開始して行う場合を示したが、例えば、走査線5の最初のラインL1等からオン電圧の印加を開始して画像データDの読み出し処理を行うように構成することも可能である。
【0243】
また、本実施形態では、本画像としての画像データDの読み出し処理の際に、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図16等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図20参照)における周期τと同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
【0244】
[画像データDの読み出し処理後の検出動作について]
上記のようにして本画像としての画像データDの読み出し処理が行われると、従来は、前述したように、読み出し処理の直後に放射線画像撮影装置1からコンソール58に対して、後述する間引きデータDt等のプレビュー画像用のデータが送信されるように構成された。
【0245】
しかし、本実施形態では、このようには構成されず、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして本画像としての画像データDの読み出し処理を終えると、プレビュー画像用のデータを送信せずに、図36に示すように、オフセットデータOの読み出し処理の前処理として、前述した放射線の照射開始の検出動作を1回だけ行うようになっている。
【0246】
すなわち、本実施形態では、制御手段22は、例えば上記の検出方法1の場合には、図42に示すように、本画像としての画像データDの読み出し処理が終了すると、引き続き、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL5〜Lx、L1〜L4にオン電圧を順次印加し、各走査線5についてそれぞれ1回だけオン電圧を印加して各放射線検出素子7のリセット処理(図42中のR参照)を行わせる。
【0247】
そして、それとリークデータdleakの読み出し処理(図42中のL参照)を交互に繰り返し行わせるようになっている。
【0248】
なお、この時点では、放射線画像撮影装置1には放射線は照射されない。そのため、この時点で、すなわちオフセットデータOの読み出し処理前に、放射線の照射開始の検出動作を行う必要はないはずである。
【0249】
しかし、本実施形態では、上記のように、本画像としての画像データDの読み出し処理が終了すると、オフセットデータOの読み出し処理の前処理として検出動作を行うようになっている。この理由について、以下、簡単に説明する。
【0250】
上記の構成の放射線画像撮影装置1では、原因が必ずしも明確でないが、各放射線検出素子7のリセット処理を行っている場合と、各読み出し回路17を作動させてリークデータdleakや照射開始検出用の画像データd等のデータの読み出し処理を行っている場合とで、各信号線6の電位が変化することが分かっている。
【0251】
そして、オフセットデータOの読み出し処理(図36参照)前の電荷蓄積状態に移行する直前に、各読み出し回路17を作動させてリークデータdleak等の読み出し処理を行っていたか、各読み出し回路17を作動させないで各放射線検出素子7のリセット処理のみを繰り返し行っていたかによって、電荷蓄積状態に移行する際に各TFT8がオフ状態とされる時点での各信号線6の電位が異なった状態になる。
【0252】
また、各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位が同じ状態であれば、TFT8と信号線6との間でやりとりされる電荷の量が同じ量になる。そのため、各放射線検出素子7内に存在する残存電荷の量が同じ量になる。
【0253】
しかし、各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位が同じ状態でなければ、TFT8と信号線6との間の電位差が変わるため、TFT8と信号線6との間でやりとりされる電荷の量が異なる量になる。そのため、各放射線検出素子7内に存在する残存電荷の量が異なる量になる。
【0254】
本実施形態では、例えば上記の検出方法1を採用した場合には、前述したように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakと各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行っていた状態で各TFT8がオフ状態とされて電荷蓄積状態に移行した後、本画像としての画像データDの読み出し処理が行われる(図16等参照)。
【0255】
そして、上記の理由から分かるように、オフセットデータOの読み出し処理前に各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位を、上記の画像データDの読み出し処理前に各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位と同じ電位にしなければ、オフセットデータOの読み出し処理時における各放射線検出素子7内の残存電荷の量が、本画像としての画像データDの読み出し処理時における各放射線検出素子7内の残存電荷の量とは異なる量になってしまう。
【0256】
しかし、逆に、オフセットデータOの読み出し処理前に各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位を、上記の画像データDの読み出し処理前に各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位と同じ電位にすれば、オフセットデータOの読み出し処理時における各放射線検出素子7内の残存電荷の量が、本画像としての画像データDの読み出し処理時における各放射線検出素子7内の残存電荷の量と同じ量になる。
【0257】
そして、オフセットデータOの読み出し処理で読み出されるオフセットデータOが、本画像としての画像データDに重畳されている各放射線検出素子7内の残存電荷に起因するオフセット分と同じ大きさのデータとなる。そのため、後のコンソール58における画像処理において、画像データDからオフセットデータOを減算することにより、少なくとも各データ中の各放射線検出素子7内の残存電荷に起因するオフセット分を的確に相殺することが可能となるのである。
【0258】
オフセットデータOの読み出し処理前に各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位を、上記の画像データDの読み出し処理前に各TFT8をオン状態からオフ状態に切り替える瞬間の信号線6の電位と同じ電位にするためには、本画像としての画像データDの読み出し処理前の処理状況を、オフセットデータOの読み出し処理前に再現すればよい。
【0259】
そこで、本実施形態では、本画像としての画像データDの読み出し処理の後、オフセットデータOの読み出し処理の前に、放射線の照射開始を検出する必要がないにもかかわらず、画像データDの読み出し処理前に行った処理(すなわち上記の検出方法1を採用する場合にはリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理を交互に行う処理、上記の検出方法2を採用する場合には照射開始検出用の画像データdの読み出し処理)を、各走査線5についてそれぞれ1回ずつオン電圧を印加して行わせるようになっている。
【0260】
なお、この場合のリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの読み出し処理は、上記のように信号線6の電位の同じ状態にするために行われる処理であり、読み出したリークデータdleak等に基づいて放射線の照射開始の検出処理を行う必要はない。
【0261】
そのため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、読み出し回路17等にリークデータdleak等の読み出し処理は行わせるが、読み出されたリークデータdleak等と閾値dleak_th等との比較処理、すなわち放射線の照射開始の検出処理は行わないようになっている。なお、この意味で、以上の本画像としての画像データDの読み出し処理後の各処理についての説明では、検出処理ではなく検出動作という文言を用いて説明した。
【0262】
また、本実施形態で、上記の読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を、検出部P上の各走査線5についてそれぞれ1回ずつオン電圧を印加して行わせるように構成する理由は、一連の処理(すなわちオフセットデータOの読み出し処理までの各処理)をより短時間で行わせるようにするためである。
【0263】
また、本実施形態のように、本画像としての画像データDの読み出し処理の後、オフセットデータOの読み出し処理の前に、リークデータdleak等の読み出し処理等を行わせる理由の1つは、上記のように、上記の放射線画像撮影装置1では各放射線検出素子7のリセット処理を行っている場合と読み出し処理を行っている場合とで各信号線6の電位が異なることにある。
【0264】
そのため、例えば、放射線画像撮影装置において、各放射線検出素子7のリセット処理を行っている場合と、各読み出し回路17を作動させて読み出し処理を行っている場合とで、各信号線6の電位が同じ電位である場合には、本実施形態のように、本画像としての画像データDの読み出し処理の後、オフセットデータOの読み出し処理の前に、リークデータdleak等の読み出し処理を行わせる必要はない。
【0265】
そこで、このような放射線画像撮影装置においては、上記の検出方法1を採用する場合には、各読み出し回路17にリークデータdleakの読み出し処理を行わずに、放射線画像撮影前のリークデータdleakと交互に行われた各放射線検出素子7のリセット処理と同じ周期τで、各放射線検出素子7のリセット処理のみを行わせるように構成することが可能である。
【0266】
また、上記の検出方法2を採用する場合には、各読み出し回路17に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行わせる代わりに、それと同じ周期で各走査線5にオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成することも可能である。
【0267】
[電荷蓄積状態への移行]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして、本画像としての画像データDの読み出し処理の後、オフセットデータOの読み出し処理の前に、検出処理を1回分行わせると、例えば図36や図42に示すように、ゲートドライバー15bから各走査線5にオフ電圧を印加させて電荷蓄積状態に移行するようになっている。
【0268】
この場合の電荷蓄積状態は、本画像としての画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態(図16や図20参照)と同じ時間だけ、すなわち前述した所定時間だけ継続される。
【0269】
[オフセットデータOの読み出し処理]
そして、電荷蓄積状態に移行してから所定時間が経過した時点で、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、図36や図42に示すように、オフセットデータOの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0270】
その際、本実施形態では、制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理においてゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL5〜Lx、L1〜L4(なお、図20に示した場合には走査線5の各ラインLn+1〜Lx、L1〜Ln)にオン電圧を順次印加した際の周期τと同じ周期で、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインLにオン電圧を順次印加させて、オフセットデータOの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0271】
すなわち、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理の後に、放射線が照射されない状態で、画像データDの読み出し処理までの一連の処理シーケンス(検出処理から電荷蓄積状態を経て読み出し処理までの処理シーケンス)と同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0272】
このように、本画像としての画像データDの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと、画像データDの読み出し処理後のオフセットデータOの読み出し処理までの一連の処理シーケンスを同じにすると、電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態後の読み出し処理で当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac(図16、図20および図42参照。以下、実効蓄積時間Tacという。)が、本画像としての画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと、オフセットデータOの読み出し処理までの処理シーケンスとで同じ時間になる。
【0273】
前述したように、各放射線検出素子7内では暗電荷が常時発生しており、電荷蓄積状態において各TFT8がオフ状態とされている間すなわち上記の実効蓄積時間Tacの間に、各放射線検出素子7内に暗電荷が蓄積される。そして、放射線検出素子7内に蓄積される暗電荷の量は実効蓄積時間Tacの長さによって変わるが、実効蓄積時間Tacの長さが同じであれば、蓄積される暗電荷の量が同じになる。
【0274】
一方、本画像として各放射線検出素子7から読み出される画像データDは、下記(3)式に示すように、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因する、いわゆる真の画像データDと、上記のように電荷蓄積状態前にTFT8をオン状態からオフ状態に切り替えた瞬間に放射線検出素子7内に存在する残存電荷の量に起因するオフセット分と、その後の実効蓄積時間Tac内に放射線検出素子7内で発生した暗電荷の量に起因するオフセット分との和になる。
D=D+残存電荷に起因するオフセット分+暗電荷に起因するオフセット分…(3)
【0275】
また、オフセットデータOの読み出し処理で各放射線検出素子7から読み出されるオフセットデータOは、下記(4)式に示すように、放射線検出素子7内に存在する残存電荷の量に起因するオフセット分と、実効蓄積時間Tac内に放射線検出素子7内で発生した暗電荷の量に起因するオフセット分との和になる。
O=残存電荷に起因するオフセット分+暗電荷に起因するオフセット分 …(4)
【0276】
本実施形態では、本画像としての画像データDの読み出し処理の後、オフセットデータOの読み出し処理の前にリークデータdleakの読み出し処理等を行うことで、各放射線検出素子7内に存在する残存電荷の量を画像データDの読み出し処理時とオフセットデータOの読み出し処理時で同じ量にすることは前述した通りである。
【0277】
そして、上記のように、本画像としての画像データDの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行わせるように構成すれば、画像データDの読み出し処理時とオフセットデータOの読み出し処理時で実効蓄積時間Tacが同じになり、各放射線検出素子7内に蓄積される暗電荷の量も同じになる。
【0278】
このように、本実施形態では、上記のように構成することで、本画像としての画像データDに重畳されている残存電荷に起因するオフセット分とオフセットデータO中の残存電荷に起因するオフセット分とが同じ値になり、本画像としての画像データDに重畳されている暗電荷に起因するオフセット分とオフセットデータO中の暗電荷に起因するオフセット分も同じ値になる。
【0279】
そのため、本実施形態では、本画像としての画像データDやオフセットデータOに何らの演算処理を施すことなく、放射線検出素子7ごとに、単純に画像データDからオフセットデータOを減算するだけで(すなわち上記(3)式で表される画像データDから上記(4)式で表されるオフセットデータOを減算するだけで)、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因する真の画像データDを確実に得ることが可能となる。
【0280】
すなわち、逆の言い方をすれば、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、本画像として得られた画像データDからオフセットデータOを単純に減算するだけで真の画像データDが確実に得られるようにするために、上記のような処理構成が採用されているのである。
【0281】
また、これは、上記のように、本画像としての画像データDの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理を行わせることで実現できる。そのため、放射線画像撮影装置1の制御手段22における各処理の制御構成を非常に容易に構築することが可能となるといったメリットもある。
【0282】
[プレビュー画像用のデータの送信]
図36に示すように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、本実施形態では、上記のようにしてオフセットデータOの読み出し処理を終了した時点で、コンソール58に対してプレビュー画像用のデータとして間引きデータDtを送信するようになっている。間引きデータDtは、例えば、以下のようにして抽出されるようになっている。
【0283】
例えば図43に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7参照)のn行、m列目の放射線検出素子7(n,m)から読み出された画像データDをD(n,m)で表すとすると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、読み出した画像データD(n,m)の中から、例えば図中に斜線を付して示すように予め所定本数(図43の場合は4本)の走査線5の各ラインL1〜Lxごとに1本の割合で指定された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データD(n,m)を抽出して、間引きデータDtとする。
【0284】
本実施形態では、制御手段22は、このようにして、読み出した画像データDの中から画像データDを所定の割合で間引いて作成した間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信するようになっている。
【0285】
なお、間引きデータDtの抽出の仕方は、これに限定されず、図示を省略するが、例えば、4×4画素すなわち4行4列の計16個の放射線検出素子7(n,m)から読み出された16個の画像データD(n,m)の中から1個の割合で画像データDを抽出する等して、画像データDの中から画像データDを所定の割合で間引いて作成した間引きデータDtを抽出するように構成することも可能である。
【0286】
また、本実施形態では、上記のように、放射線画像撮影装置1からコンソール58に対して間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとして送信する場合について説明したが、プレビュー画像用のデータとして、間引かれていない全画像データDを送信するように構成することも可能である。
【0287】
[プレビュー画像の生成、表示]
図36に示すように、コンソール58は、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、プレビュー画像用のデータが送信されてくるごとに、プレビュー画像p_preを生成して、表示部58a(図11や図12参照)上にワイプ表示させるようになっている。
【0288】
その際、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてきた時点では、まだ今回の撮影で得られたオフセットデータOは送信されていない。
【0289】
そこで、例えば、プレビュー画像用のデータ(すなわち本実施形態では間引きデータDt)に対応するオフセットデータとして、予め当該放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7にそれぞれ仮のオフセットデータOを割り当てておき、コンソール58は、送信されてきたプレビュー画像用のデータからそれらの仮のオフセットデータOを減算し、減算した値(上記の真の画像データDに対応する。)に基づいてプレビュー画像p_preを生成するように構成することが可能である。
【0290】
また、プレビュー画像用のデータから減算するオフセットデータとして、当該放射線画像撮影装置1を用いて行われた前回の撮影時に放射線画像撮影装置1から送信されたオフセットデータOを保存しておき、この前回の撮影時のオフセットデータOを、今回の撮影時に送信されてくるプレビュー画像用のデータから減算するオフセットデータとして用いるように構成することも可能である。
【0291】
一方、本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1から、例えば図43に示したようにして間引かれた間引きデータDtが順次送信されてくる。そこで、コンソール58は、例えば図44(A)、(B)に示すように、放射線画像撮影装置1から間引きデータDtが送信されてくるごとに、上記のようにしてプレビュー画像p_preを生成して、表示部58a上にワイプ表示させるようになっている。
【0292】
なお、詳しい説明は省略するが、放射線画像撮影装置1から間引きデータDtや画像データD等を送信する際にデータを圧縮して送信した場合には、コンソール58では、それらの圧縮されたデータを伸長して元のデータに復元する処理が行われること等は言うまでもない。
【0293】
また、本実施形態では、図44(B)に示すように、コンソール58の表示部58a上に、「OK」ボタン60aすなわちプレビュー画像p_preを承認する旨を指示するボタンと、「NG」ボタン60bすなわちプレビュー画像p_preを否認する(すなわち承認しない)旨を指示するボタンが表示されるようになっている。
【0294】
そして、プレビュー画像p_preを見た放射線技師が、画像中に被写体が適切に撮影されておらず、再撮影が必要であると判断して「NG」ボタン60bをクリックした場合には、コンソール58から放射線画像撮影装置1に停止信号が送信される。そして、放射線画像撮影装置1では、図36に示す以後の各処理、すなわちプレビュー画像用のデータ以外の残りの画像データDの送信やオフセットデータOの送信等の各処理が停止される。
【0295】
画像データD等に基づいて放射線画像pを生成しても、正常な放射線画像pが得られないためである。そして、この場合、放射線画像撮影装置1は、再撮影に備えるために、図36に示した最初の各放射線検出素子7のリセット処理や放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理等の検出処理を行う状態に戻る。
【0296】
[残りの画像データD等の送信]
一方、プレビュー画像p_preを見た放射線技師が、画像中に被写体が適切に撮影されており、再撮影の必要がないと判断して「OK」ボタン60aをクリックした場合には、放射線画像撮影装置1で以後の各処理が続行される。
【0297】
すなわち、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、送信した間引きデータDtに対応するオフセットデータO(すなわち間引きデータDtとして送信した1/4の画像データDに対応する1/4のオフセットデータO)を送信し、間引きデータDt以外の残りの3/4の画像データDを送信し、最後に間引きデータDtに対応するオフセットデータO以外の残りの3/4のオフセットデータOをそれぞれコンソール58に送信するようになっている。
【0298】
[放射線画像の生成]
そして、コンソール58では、放射線画像撮影装置1から間引きデータDtに対応するオフセットデータOが送信されてくると、既に受信している間引きデータDtすなわち1/4の画像データDからオフセットデータOを減算処理して、前述した真の画像データDを算出する。
【0299】
また、放射線画像撮影装置1から、残りの3/4の画像データDと、残りの3/4のオフセットデータOが送信されてくると、それらを減算処理して、残りの3/4の画像データDについて前述した真の画像データDを算出する。
【0300】
そして、コンソール58は、算出した真の画像データDに基づいてゲイン補正やオフセット補正、欠陥画素補正、撮影部位に応じた諧調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像pを生成するようになっている。本実施形態では、コンソール58は、放射線画像pを生成すると、表示部58a上に表示されているプレビュー画像p_pre(図44(B)参照)に代えて、生成した放射線画像pを表示するようになっている。
【0301】
また、コンソール58は、一連の放射線画像撮影が終了する等した時点で、放射線技師の操作により、各放射線画像pの情報等を、例えば、図示しない医療用画像管理システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等に送信する等の必要な処理を行うようになっている。
【0302】
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50の作用について説明する。
【0303】
前述したように、従来の放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムでは、図45に示すように、本画像としての画像データDの読み出し処理が終了した時点で、オフセットデータOの読み出し処理に向けて各処理を行うのと同時並行で、コンソール58への間引きデータDt(すなわちプレビュー画像用のデータ)の送信処理を行っていた。
【0304】
そのため、プレビュー画像用のデータの送信処理が、オフセットデータOの読み出し処理が開始される前に終了すればよいが、プレビュー画像用のデータの送信時間は、通信状況(すなわち通信の混み具合等)や、各種の処理を行うコンソール58での処理の負荷状況等に応じて長くなる場合がある。
【0305】
このような場合には、放射線画像撮影装置からプレビュー画像用のデータをコンソール58に送信している最中にオフセットデータOの読み出し処理が開始されてしまう場合があり得る。そして、このような現象が生じると、放射線画像撮影装置からコンソール58に対するプレビュー画像用のデータの送信が途中で停止してしまう。
【0306】
そのため、コンソール58上にプレビュー画像p_preが表示されたとしても、プレビュー画像p_preが例えば図44(A)に示した程度にしか表示されず、放射線技師が見ても、画像中に被写体が適切に撮影されているか否かを適切に判断できず、再撮影の要否の判断を行うことができない虞れがあった。
【0307】
それに対し、本実施形態では、図36に示したように、放射線画像撮影装置1で本画像としての画像データDの読み出し処理が終了しても、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、その時点ではプレビュー画像用のデータ(本実施形態では間引きデータDt)を送信せずにオフセットデータOの読み出し処理に移行する。
【0308】
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、オフセットデータOの読み出し処理が終了した時点でプレビュー画像用のデータをコンソール58に送信するように構成されている。そのため、オフセットデータOの読み出し処理後に、プレビュー画像用のデータが、途中で送信が中断されることなく、最後まで的確にコンソール58に送信される。
【0309】
また、コンソール58は、最後まで的確に送信されたプレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像p_preを生成することが可能となり、例えば図44(B)に示したように、プレビュー画像p_preを、放射線技師が見て、画像中に被写体が適切に撮影されているか否かを的確に判断でき、再撮影の要否の判断を的確に行うことができる程度に表示することが可能となる。
【0310】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50によれば、まず、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線画像撮影前に読み出したリークデータdleakや照射開始検出用の画像データd、或いはそれらから算出した各値に基づいて、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0311】
そのため、放射線画像撮影装置と放射線発生装置55(図11や図12参照)との間でインターフェースが構築できない(或いはインターフェースを構築しない)場合であっても、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を的確に検出して、放射線画像撮影を適切に行うことが可能となる。
【0312】
また、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理後、それまでの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理を行わせた後で、プレビュー画像用のデータをコンソール58に送信する。
【0313】
そのため、放射線画像撮影装置1からコンソール58に対して、プレビュー画像用のデータ(本実施形態では間引きデータDt)を、途中で送信が停止されることなく送信することが可能となる。そして、そのため、コンソール58の表示部58a上に、プレビュー画像p_preを、放射線技師が見て、画像中に被写体が適切に撮影されているか否かを的確に判断でき、再撮影の要否の判断を的確に行うことができる程度に的確に表示することが可能となる。
【0314】
なお、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理(検出方法1の場合)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合)を行い、検出処理を行っている最中に、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動等が加わると、読み出されるリークデータdleak等にスパイクノイズ等のノイズが発生する場合があることは前述した通りである。
【0315】
しかし、このノイズの発生は、放射線画像撮影前の検出処理だけでなく、いつでも生じ得る現象である。そして、例えば本画像としての画像データDの読み出し処理やその後のオフセットデータOの読み出し処理等の最中にスパイクノイズが生じると、読み出される画像データDやオフセットデータOが異常に大きな値になる場合がある。
【0316】
従って、放射線画像撮影前の検出処理の際のみならず、放射線画像撮影を行っている間は、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動等が加わらないようにすることが必要となる。
【0317】
しかし、本実施形態のように構成すると(図36参照)、コンソール58の表示部58a上にプレビュー画像p_preが表示され始めた時点(図44(A)参照)では、既に本画像としての画像データDの読み出し処理だけでなくオフセットデータOの読み出し処理も終了していることになる。
【0318】
そのため、コンソール58の表示部58a上にプレビュー画像p_preが表示され始めれば、その時点以降に、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動等が加わる等しても、少なくとも本画像としての画像データDやオフセットデータOには、スパイクノイズ等のノイズは重畳されない状態になる。
【0319】
そのため、コンソール58の表示部58a上にプレビュー画像p_preが表示され始めた時点で、放射線画像撮影装置1に衝撃や振動等が加わらないようにする必要がなくなり、放射線画像撮影装置1を動かす等してもよいことになる。
【0320】
このように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50によれば、放射線技師等は、コンソール58の表示部58a上にプレビュー画像p_preが表示され始めたか否かに応じて、放射線画像撮影装置1を動かしてもよいか否かを判断することが可能となる。
【0321】
そのため、放射線技師等が、コンソール58の表示部58a上にプレビュー画像p_preが表示され始めたか否かを確認するだけで、放射線画像撮影装置1を動かしてもよいか否かを判断することが可能となり、放射線画像撮影装置1を動かすことが可能となったことを、放射線技師等に容易かつ的確に伝えることが可能となるといったメリットもある。
【0322】
なお、本発明が上記の実施形態に限定されず、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0323】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 コネクター(通信手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール
58a 表示部
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
Dt 間引きデータ(オフセット画像用のデータ)
dth 閾値
O オフセットデータ
P 検出部
p_pre プレビュー画像
q 電荷
r 小領域
τ 周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して行う前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に繰り返し行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
放射線の照射開始を検出すると、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加し、前記各スイッチ手段をオフ状態とする電荷蓄積状態を経た後、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの画像データの読み出し処理を行わせ、
前記画像データの読み出し処理の後に、放射線が照射されない状態で、前記画像データの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理を行わせ、
前記オフセットデータの読み出し処理の後で、読み出した前記画像データに基づくプレビュー画像用のデータをコンソールに送信することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画像データの読み出し処理の後、前記オフセットデータの読み出し処理の前に、前記リークデータの読み出し処理と交互に行う前記各放射線検出素子のリセット処理を前記検出部の前記各走査線についてそれぞれ1回のみ行わせるようにして、前記リークデータの読み出し処理と前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記画像データの読み出し処理の後、前記オフセットデータの読み出し処理の前に、前記リークデータの読み出し処理を行わせず、前記各放射線検出素子のリセット処理のみを行わせることを特徴とする請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧またはオフ電圧を印加する走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
放射線の照射開始を検出すると、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加し、前記各スイッチ手段をオフ状態とする電荷蓄積状態を経た後、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの画像データの読み出し処理を行わせ、
前記画像データの読み出し処理の後に、放射線が照射されない状態で、前記画像データの読み出し処理までの一連の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理を行わせ、
前記オフセットデータの読み出し処理の後で、読み出した前記画像データに基づくプレビュー画像用のデータをコンソールに送信することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画像データの読み出し処理の後、前記オフセットデータの読み出し処理の前に、前記照射開始検出用の画像データの読み出し処理を前記検出部の前記各走査線についてそれぞれ1回のみ行わせることを特徴とする請求項4に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記画像データの読み出し処理の後、前記オフセットデータの読み出し処理の前に、前記照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせる代わりに、放射線画像撮影前の前記照射開始検出用の画像データの読み出し処理と同じ周期で前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせることを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記制御手段は、放射線画像撮影前の前記リークデータの読み出し処理と交互に行う前記各放射線検出素子のリセット処理の際、または前記照射開始検出用の画像データの読み出し処理の際に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加する周期と同じ周期で前記各走査線にオン電圧を順次印加して、前記画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記プレビュー画像用のデータとして、読み出した前記画像データの中から前記画像データを所定の割合で間引いて作成した間引きデータをコンソールに送信することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記間引きデータを送信した後、当該間引きデータに対応する前記オフセットデータ、前記間引きデータ以外の残りの前記画像データ、および前記間引きデータに対応する前記オフセットデータ以外の残りの前記オフセットデータをそれぞれコンソールに送信することを特徴とする請求項8に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
通信手段を備える請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
前記放射線画像撮影装置から送信されてきた前記プレビュー画像用のデータに基づいてプレビュー画像を生成して表示部上に表示させるコンソールと、
を備え、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置から前記プレビュー画像用のデータが送信されてくるごとに前記プレビュー画像を生成して前記表示部上にワイプ表示させることを特徴とする放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2013−38475(P2013−38475A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170593(P2011−170593)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】