説明

放射線画像撮影装置

【課題】放射線源を複数備えた放射線画像撮影装置において、散乱線の影響を十分に除去するとともに、複数の放射線の強度と分布のばらつきの影響を抑制する。
【解決手段】多数の放射線源1aからファンビームの放射線を射出させるとともに、放射線の照射範囲が重畳または隣接しないような一部の放射線源1aの群からのみ同時に放射線を射出させるようにし、被写体が存在しない状態において、放射線源の群を順次切り替えて放射線を放射線画像検出器に照射することにより各画像補正データを取得し、各画像補正データのそれぞれについて、所定の閾値よりも高い値の有効領域を決定し、被写体を設置した状態において、放射線源の群を順次切り替えて放射線を放射線画像検出器に順次照射し、有効領域に基づいて取得した各放射線源の群に対応する各放射線画像データを上記各画像補正データに基づいて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を射出する多数の放射線源が分散配置された放射線画像撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子放出素子を多数配列したマルチ電子放出素子を備え、各電子放出素子から射出された電子線をターゲットに照射することによってマルチX線ビームを射出するマルチX線発生装置を用いた放射線画像撮影装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の放射線画像撮影装置のように、多数の電子放出素子から同時に電子線を射出させ、複数のX線ビームを同時に被写体に照射するようにしたのでは、X線検出器上における複数のX線ビームの照射範囲が重複してしまうため、これにより散乱線を生じてノイズとなって放射線画像の画質の劣化を招いてしまう。また、電子放出素子を1つずつ駆動して電子線を射出するようにして上記のような散乱線の影響を防止することも考えられるが、全ての電子放出素子を駆動し終わるまでに時間がかかり撮影時間が長くなってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献2においても、特許文献1に記載の放射線画像撮影装置と同様に、マルチX線ビームを射出するマルチX線発生装置を用いた放射線画像撮影装置が提案されており、特許文献2に記載の放射線画像撮影装置においては、マルチX線ビームが同時に照射される範囲を千鳥格子状に2つに分け、X線検出器上における各X線ビームの照射範囲が隣接しないようにすることによって散乱線の影響を防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2007−265981号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0133747号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の放射線画像撮影装置のように各X線ビームの照射範囲を制御したとしても、斜め方向には散乱線が重なることになるので、やはり十分に散乱線の影響を十分に除去することができない。
【0007】
さらに、特許文献2に記載の放射線画像撮影装置においては、複数のX線ビームが同時に照射されるが、これらの複数のX線ビームは必ずしも全て同じX線強度ではなく、ばらつきがあるので放射線画像にむらが生じてしまうおそれがある。また、X線ビームの照射範囲の分布も必ずしも設計通りではなく、ずれ生じた場合には放射線画像の画質に影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、上記のような複数の放射線を射出する放射線照射部を備えた放射線画像撮影装置において、散乱線の影響を十分に除去するとともに、複数の放射線の強度と分布のばらつきの影響を抑制することができる放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放射線画像撮影装置は、広がり角が広い方の面が互いに平行に並ぶファンビームの放射線を射出する多数の放射線源が分散配置された放射線照射部と、放射線照射部の各放射線源から射出された放射線を検出する放射線画像検出器と、多数の放射線源のうち、放射線画像検出器上において放射線の照射範囲が重畳または隣接しないような一部の放射線源の群からのみ同時に放射線を射出させるとともに、放射線源の群を順次切り替えて放射線を射出させるよう制御する放射線照射制御部と、放射線照射部と放射線画像検出器との間に被写体が存在しない状態において、放射線照射制御部により放射線源の群が順次切り替えられて放射線が放射線画像検出器に順次照射されることによって放射線画像検出器により順次検出された各放射線源の群に対応する各画像補正データを取得する画像データ取得部と、画像データ取得部により取得された各画像補正データのそれぞれについて、所定の閾値よりも高い値の有効領域を決定する有効領域決定部と、放射線照射部と放射線画像検出器との間に被写体を設置した状態において、放射線照射制御部により放射線源の群が順次切り替えられて放射線が放射線画像検出器に順次照射されることによって放射線画像検出器により順次検出され、有効領域に基づいて取得された各放射線源の群に対応する各放射線画像データを、各画像補正データに基づいて補正する画像補正部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置においては、放射線画像検出器を、放射線の照射に対応する電荷を発生する電荷発生部と、電荷発生部において発生した電荷を蓄積する、2次元状に多数配列された電荷蓄積部と、電荷蓄積部の行毎にそれぞれ設けられ、電荷蓄積部に蓄積された電荷信号が流れ出す多数の信号線と、信号線と信号線に対応する電荷蓄積部との接続をオンオフする、電荷蓄積部毎に設けられた多数のスイッチ素子と、スイッチ素子をオンオフするための制御信号が出力され、電荷蓄積部の列毎に信号線に直交して設けられた多数の走査線とを備えたものとし、放射線画像検出器と放射線照射部とを、各放射線源から射出されるファンビームの広がり角が広い方の広がり方向と走査線の延びる方向とが同じになるように配置することができる。
【0011】
ここで、上記「電荷蓄積部」としては、電荷発生層自身の容量を利用するようにしてもよいし、別途設けられた容量を利用してもよい。
【0012】
また、有効領域に対応する放射線画像検出器上の範囲内の電荷蓄積部の列に接続される各走査線に対してスイッチ素子をオンするための制御信号を順次出力して電荷信号を読み出し、その後、有効領域に対応する放射線画像検出器上の範囲外の電荷蓄積部の列に接続される複数の走査線に対してスイッチ素子を順次オンするための制御信号を同時に出力して電荷蓄積部をリセットする走査信号制御部を設けることができる。
【0013】
また、画像補正データに基づいて放射線源の群に属する各放射線源から射出される放射線の強度が近づくように各放射線源を制御する放射線源制御部を設けることができる。
【0014】
また、画像データ取得部により取得された複数の画像補正データの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算した各総和画素値が同じ値となるように各放射線源を配置するとともに、各放射線源から射出されるファンビームの広がり角を設定し、強度を制御することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放射線画像撮影装置によれば、多数の放射線源から広がり角が広い方の面が互いに平行に並ぶファンビームの放射線を射出させるとともに、多数の放射線源のうち、放射線画像検出器上において放射線の照射範囲が重畳または隣接しないような一部の放射線源の群からのみ同時に放射線を射出させるようにしたので、多数の放射線が重畳または隣接することによる散乱線の影響を除去することができる。また、上記のように一方向にのみ広く広がるファンビームを使用するようにしたので、さらに散乱線の影響を効率良く除去することができる。
【0016】
そして、被写体が存在しない状態において、放射線源の群を順次切り替えて放射線を放射線画像検出器に順次照射することによって放射線画像検出器により各放射線源の群に対応する各画像補正データを取得し、各画像補正データのそれぞれについて、所定の閾値よりも高い値の有効領域を決定し、被写体を設置した状態において、放射線源の群を順次切り替えて放射線を放射線画像検出器に順次照射することによって放射線画像検出器により順次検出し、有効領域に基づいて取得した各放射線源の群に対応する各放射線画像データを、上記各画像補正データに基づいて補正するようにしたので、散乱線の照射によって検出された放射線画像データを除去することができるとともに、上記補正により、複数の放射線の強度と分布のばらつきの影響を抑制することができる。
【0017】
また、上記本発明の放射線画像撮影装置において、各放射線源から射出されるファンビームの広がり角が広い方の広がり方向と放射線画像検出器の走査線の延びる方向とが同じになるように放射線画像検出器と放射線照射部とを配置するようにした場合には、上記有効領域と有効領域ではない領域とを走査線単位で区分することができる。
【0018】
そして、たとえば、有効領域に対応する放射線画像検出器上の範囲内の電荷蓄積部の列に接続される各走査線に対してスイッチ素子をオンするための制御信号を順次出力して電荷信号を読み出し、その後、有効領域に対応する放射線画像検出器上の範囲外の電荷蓄積部の列に接続される複数の走査線に対してスイッチ素子を順次オンするための制御信号を同時に出力して電荷蓄積部をリセットするようにした場合には、各放射線源の群から放射線を射出する毎に全ての走査線を順次切り替えて電荷信号を読み出す場合と比較すると、電荷信号の全読出時間を短縮することができる。同時にリセットする走査線数が多いほど時間短縮の効果は大きく、リセット電流が問題にならなければ全ての走査線を同時にリセットしてもよい。
【0019】
たとえば、n個置きに配置された放射線源によって放射線源の群を構成し、この放射線源の群を切り替えて放射線を照射し、上記のようにして電荷の読出しを行った場合には、下式で算出される全読出時間となるので高速な読み出しが可能である。なお、下式における全面読出時間とは全ての走査線を順次切り替えて電荷信号を読み出したときにかかる時間を意味し、αは隣接する放射線源の群の照射範囲の重複比率を意味し、全面リセット時間とは全ての電荷蓄積部をリセットするのにかかる時間のことを意味する。
【0020】
全読出時間={(全面読出時間)/(n+1)×α}+(全面リセット時間)
また、画像補正データに基づいて放射線源の群に属する各放射線源から射出される放射線の強度が近づくように各放射線源を制御するようにした場合には、放射線源の群に属する各放射線源から射出される放射線の強度のばらつきを抑制することができる。
【0021】
また、画像データ取得部により取得された複数の画像補正データの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算した各総和画素値が同じ程度の値となるように各放射線源を配置するとともに、各放射線源から射出されるファンビームの広がり角を設定し、強度を制御するようにした場合には、さらにムラのない放射線画像データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態の概略構成図
【図2】図1に示す放射線画像撮影装置における放射線照射部のX−Z断面図
【図3】電子放出素子の詳細な構成図
【図4A】放射線源から射出されるファンビームの広がり角が広い方の断面図
【図4B】放射線源から射出されるファンビームの広がり角が狭い方の断面図
【図5】図1に示す放射線画像撮影装置における放射線画像検出器の概略構成図
【図6】図5に示す放射線画像検出器の1つの検出部の概略構成を示す図
【図7】放射線源の群を順次切り替えて制御する作用を説明するための図
【図8】放射線画像補正データGDと画素信号PDと有効領域Rを模式的に示した図
【図9】有効領域R1に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲とそれ以外の範囲との読出方法を説明するための図
【図10】複数枚の放射線画像補正データGD1〜nと同じ画素位置の画素信号PD1〜nとを模式的に示す図
【図11】放射線源列を複数設けた場合の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態について説明する。図1に本放射線画像線撮影装置の概略構成を示す。
【0024】
本放射線画像撮影装置は、図1に示すように、放射線照射部1と、放射線画像検出器2と、放射線照射制御部3と、画像データ取得部4と、有効領域決定部5と、画像補正部6とを備えている。
【0025】
放射線照射部1は、図1に示すように、広がり角が広い方の面が互いに平行に並ぶファンビームの放射線を射出する多数の放射線源1aが1次元状に配列されたものである。そして、各放射線源1aから射出された放射線は、被写体10を透過した後、放射線画像検出器2により検出されるが、各放射線源1aは、各放射線源1aから射出されて被写体10を透過した放射線が、被写体の投影像の一部分を形成するように分散配置されている。つまり、各放射線源1aから射出された放射線により形成される被写体の部分的な投影像の結合により被写体の全体の投影像が形成される。
【0026】
図2に、放射線照射部1の詳細な構成図を示す。なお、図2は、図1に示す放射線照射部1のX−Z断面図である。
【0027】
放射線照射部1は、図2に示すように、真空室を形成する筐体11を備え、筐体11内には、多数の電子線を射出するマルチ電子源12と、マルチ電子源12から射出された電子線の衝突を受けて放射線を射出するターゲット13とが配置されている。そして、1つの電子放出素子15と1つの電子放出素子15に対応する電子レンズ16とターゲット13の一部分と放射線取出窓19の組み合わせから各放射線源1aが構成されている。なお、ターゲット13を各電子放出素子15に対応させて離散的に配置するようにしてもよい。
【0028】
マルチ電子源12は、基板14と、基板14上に設けられ、電子線を射出する多数の電子放出素子15とを備えており、各電子放出素子15は、放射線照射制御部3により駆動が制御される。
【0029】
また、筐体11内には、マルチ電子源12の各電子放出素子15から射出された電子線を集束する電子レンズ16と、ターゲット13から射出された放射線をファンビームに成形する放射線遮蔽板17とを備えている。さらに、放射線の射出方向の筐体11の壁部には、放射線を透過する放射線透過膜18を備えた放射線取出窓19が設けられている。なお、図2に示す放射線照射部1は概略構成を示すものであり、電子放出素子15、その他各電子放出素子15に対応する電子レンズ16や放射線取出窓19など構成要素の数は省略してあるものとする。
【0030】
図3は、電子放出素子15のより詳細な構成を示す図である。本実施形態における電子放出素子15は冷陰極型の電子放出素子である。具体的には、Siを材料とした素子基板31上に絶縁体32と引出電極33が設けられ、引出電極33間の中心のμmサイズの溝にカーボンナノチューブや金属や半導体材料からなる先端径が数10nmのエミッタ34が形成されている。そして、放射線照射制御部3によってターゲット13(陽極)とマルチ電子源12(陰極)との間に高圧電圧が印加されるとともに、図3に示すように引出電極33に電圧が印加されることによってエミッタ34から電子が放出される。放射線照射制御部3は、この引出電極33に印加する電圧を制御することによって、各電子放出素子15からの電子線の射出を制御する。すなわち、各放射線源1aからの放射線の射出を制御する。
【0031】
ターゲット13は陽極として構成され、たとえば、Cu、W、Moなどの金属から形成される。
【0032】
そして、上述したような電子放出素子15およびターゲット13を備えた各放射線源1aは、それぞれY方向に広がるファンビームの放射線を射出するものである。図4Aに放射線源1aから射出される放射線のY−Z断面図を、図4BにX−Z断面図を示す。図4Aに示すように、各放射線源1aから射出される放射線はY方向についての広がり角θ1を有するものであるとともに、X方向ついての広がり角θ2を有するものであり、θ1>θ2の関係を満たすようなファンビームである。
【0033】
また、放射線照射制御部3は、多数の放射線源1aのうち、放射線画像検出器本体20上において放射線の照射範囲が重畳または隣接しないような一部の放射線源1aの群からのみ同時にファンビームを射出させるとともに、放射線源1aの群を順次切り替えて放射線を射出させるよう制御するものである。なお、その制御方法については、後で詳述する。
【0034】
放射線画像検出器2は、図5に示すように、放射線画像検出器本体20と、スキャン信号制御回路23と、信号検出回路24とを備えている。
【0035】
放射線画像検出器本体20は、図5に示すように、複数の走査配線21がY方向に延びるように設けられ、その走査配線21に交差して複数の信号配線22がX方向に延びるように設けられ、走査配線21と信号配線22の交差部に対応して検出部30が2次元状に複数設けられている。
【0036】
図6には、放射線画像検出器本体20に設けられた1つの検出部30の詳細な構成の一例が示されている。
【0037】
検出部30は、図6に示すように、放射線照射部1から射出される放射線に対して感度を有し、照射された放射線の線量に応じた電荷を発生するセンサ部Seと、センサ部Seで発生した電荷を蓄積するための電荷蓄積部Csと、電荷蓄積部Csに蓄積された電荷を読み出すためのTFT(Thin film transistor)型のスイッチRSWとを備えている。
【0038】
センサ部Seは、放射線を吸収し、電荷に変換する光電変換層が積層されて構成され
ている。この光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶
質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、放射線が照射されると、照射された放射線の線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線を電荷へ変換する。なお、センサ部Seは、アモルファスセレンのような放射線を直接的に電荷に変換する材料の代わりに、蛍光体材料と光電変換素子(フォトダイオード)を用いて間接的に電荷に変換しても良い。蛍光体材料としては、TbあるいはEuで付活した酸硫化ガドリニウム(GOS)やTlあるいはNaで付活したヨウ化セシウム(CsI)が良く知られている。この場合、蛍光材料によって放射線を光に変換し、アモルファスシリコンなどを用いた光電変換素子のフォトダイオードによって光から電荷への変換を行なう。
【0039】
スイッチRSWのソースは信号配線22に接続されており、スイッチRSWのドレイ
ンは電荷蓄積部Csに接続され、スイッチRSWのゲートは走査配線21に接続されている。
【0040】
信号配線22には、その信号配線22に接続されたスイッチRSWがONされることに
より電荷蓄積部Csに蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0041】
また、図5に示すように、各信号配線22には、各信号配線22に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路24が接続されており、各走査配線21には、各走査配線21にスイッチRSWをON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御回路23が接続されている。
【0042】
信号検出回路24は、各信号配線22毎に設けられた、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。信号検出回路24では、各信号配線22より入力される各検出部30毎の電気信号を増幅回路により増幅して検出することによって放射線画像を構成する画素毎の画素信号を検出する。
【0043】
そして、放射線画像検出器本体20と放射線照射部1とは、各放射線源1aから射出されるファンビームの広がり角が広い方の広がり方向と走査配線21の延びる方向(Y方向)とが同じになるように配置されている。
【0044】
画像データ取得部4は、放射線画像検出器2によって検出された放射線画像データを取得するものである。そして、画像データ取得部4は、放射線照射部1と放射線画像検出器2との間に被写体10が存在しない状態において放射線画像検出器2によって検出された放射線画像補正データと、放射線照射部1と放射線画像検出器2との間に被写体10が存在する状態において放射線画像検出器2によって検出された放射線画像補正データとを取得するものである。
【0045】
有効領域決定部5は、画像データ取得部4により取得された放射線画像補正データの各画素信号と所定の閾値とを比較し、その閾値よりも高い値の画素信号の領域を有効領域として決定するものである。なお、上記所定の閾値は、検出器自体や周辺にある部材によるX線散乱の影響をカットすればよいので、たとえば、ビーム中央の値の10%というように適宜決めることができる。
【0046】
画像補正部は、画像データ取得部4において取得された放射線画像データに対して、放射線画像補正データを用いて補正を施すものである。放射線画像データと放射線画像補正データとは、放射線源1aの群を順次切り替えることによってそれぞれ複数枚取得される。そして、複数枚の放射線画像データの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算することによって1枚の全体放射線画像データが生成されるとともに、複数枚の放射線画像補正データの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算することによって1枚の全体放射線画像補正データが生成され、全体放射線画像データに対して、全体放射線画像補正データを用いて補正が施される。補正方法としては、具体的には、全体放射線画像補正データの各画素の加算画素信号の逆数が、その各画素と同じ画素位置の全体放射線画像データの加算画素信号に対して掛け算されて行われる。
【0047】
次に、本実施形態の放射線画像撮影装置の作用について説明する。
【0048】
まず、放射線照射部1と放射線画像検出器2との間に、被写体10を配置しない状態で放射線照射部1から放射線を射出させ、その放射線を放射線画像検出器2により検出することによって放射線画像補正データの撮影が行われる。
【0049】
まず、放射線照射制御部3の制御により、多数の放射線源1aのうち、放射線画像検出器本体20上において放射線の照射範囲が重畳または隣接しないような一部の放射線源1aの群からのみ同時にファンビームが射出され、放射線源1aの群が順次切り替えられて放射線が順次射出される。具体的には、たとえば、図7に示すように、まず、3つおきに配置された放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、その放射線が放射線画像検出器本体20に照射される。
【0050】
そして、放射線画像検出器本体20に照射された放射線は、放射線画像検出器本体20の各検出部30のセンサ部Seによって電荷に変換され、その電荷が電荷蓄積部Csに蓄積されることによって放射線画像が記録される。
【0051】
そして、スキャン信号制御回路23から検出部30のスイッチRSWをONするための制御信号が各走査配線21に対して順次出力される。そして、上記制御信号に応じて各走査配線21に接続された検出部30から電荷が読み出され、信号配線22を介して信号検出回路24に入力され、信号検出回路24によって画素信号として検出される。
【0052】
そして、信号検出回路24によって検出された画素信号は画像データ取得部4によって取得され、画像データ取得部4は1枚の放射線画像補正データを生成し、その放射線画像補正データを画像補正部6と有効領域決定部5とに出力する。
【0053】
そして、画像補正部6は、入力された放射線画像補正データを記憶し、有効領域決定部5は、入力された放射線画像補正データの各画素信号と所定の閾値とを比較し、その閾値よりも高い値の画素信号の領域を有効領域として決定する。図8に、放射線画像補正データGDと画素信号PDと有効領域Rを模式的に示した図を示す。有効領域決定部5により決定された有効領域の情報は放射線画像検出器2のスキャン信号制御回路23に出力される。
【0054】
次に、放射線照射制御部3の制御により、図7に示すように、放射線源1aに隣接する放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、その放射線が放射線画像検出器本体20に照射される。
【0055】
そして、上記と同様にして、画像データ取得部4は1枚の放射線画像補正データを生成し、その放射線画像補正データが画像補正部6と有効領域決定部5とに出力され、画像補正部6によって放射線画像補正データが記憶されるとともに、有効領域決定部5によって決定された有効領域の情報が放射線画像検出器2のスキャン信号制御回路23に出力される。
【0056】
そして、次に、図7に示すように、放射線源1aに隣接する放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、その次に、放射線源1aに隣接する放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、それぞれの放射線の射出に対して、上記と同様の作用が繰り返され、画像補正部6によって放射線画像補正データが記憶されるとともに、有効領域決定部5によって決定された有効領域の情報が放射線画像検出器2のスキャン信号制御回路23に出力される。
【0057】
上記のようにして、まず、複数枚の放射線画像補正データが取得されるとともに、各放射線画像補正データに対応する有効領域の情報が取得される。なお、以下、放射線源1an(n=1〜4)の群からの放射線の射出によって取得された放射線画像補正データをGDn(n=1〜4)といい、その放射線画像補正データGDn(n=1〜4)に基づいて決定された有効領域をRn(n=1〜4)という。
【0058】
そして、次に、放射線照射部1と放射線画像検出器2との間に、被写体10が配置された状態で放射線照射部1から放射線が射出され、その放射線を放射線画像検出器2により検出することによって放射線画像データの撮影が行われる。
【0059】
具体的には、上述した放射線画像補正データの撮影の場合と同様に、まず、放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、被写体10を透過した放射線が放射線画像検出器本体20に照射される。
【0060】
そして、放射線画像検出器本体20に照射された放射線は、放射線画像検出器本体20の各検出部30のセンサ部Seによって電荷に変換され、その電荷が電荷蓄積部Csに蓄積されることによって被写体10の放射線画像が記録される。
【0061】
そして、スキャン信号制御回路23から検出部30のスイッチRSWをONするための制御信号が各走査配線21に対して出力されるが、このとき、スキャン信号制御回路23は、予め設定された有効領域の情報に基づいて制御信号を出力する。具体的には、まず、スキャン信号制御回路23は、有効領域R1に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲内の検出部30の列に接続される各走査配線21に対しては、スイッチRSWをONするための制御信号を走査配線21を順次切り替えて出力する。たとえば、有効領域R1に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲が、図9に示す斜線部の範囲となる場合には、走査配線S、走査配線S、走査配線Sn−3、走査配線Sn−2の順番で切り替えられて制御信号が出力される。
【0062】
そして、上記制御信号に応じて各走査配線21に接続された検出部30から電荷が読み出され、信号配線22を介して信号検出回路24に入力され、信号検出回路24によって画素信号として検出される。
【0063】
そして、信号検出回路24によって検出された画素信号は画像データ取得部4によって取得され、画像データ取得部4は1枚の放射線画像データを生成し、その放射線画像データを画像補正部6に出力する。なお、このとき有効領域R1に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲外の検出部30に対応する画素信号は0として放射線画像データが生成される。
【0064】
そして、上記のようにして1枚の放射線画像データが取得された後、その後、スキャン信号制御回路23は、有効領域R1に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲外の検出部30の列に接続される全ての走査配線21に対して、スイッチRSWをオンするための制御信号を同時に出力し、検出部30に蓄積された電荷をリセットする。たとえば、有効領域R1に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲が、図9に示す斜線部の範囲となる場合には、走査配線S3〜n−4と走査配線Sn−1、走査配線Sに同時に制御信号が出力される。
【0065】
そして、次に、放射線源1aに隣接する放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、被写体10を透過した放射線が放射線画像検出器本体20に照射される。
【0066】
そして、放射線画像検出器本体20に照射された放射線は、放射線画像検出器本体20の各検出部30のセンサ部Seによって電荷に変換され、その電荷が電荷蓄積部Csに蓄積されることによって被写体10の放射線画像が記録される。
【0067】
そして、スキャン信号制御回路23が、有効領域R2に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲内の検出部30の列に接続される各走査配線21に対して、スイッチRSWをONするための制御信号を順次切り替えて出力する。
【0068】
そして、上記制御信号に応じて各走査配線21に接続された検出部30から電荷が読み出され、信号配線22を介して信号検出回路24に入力され、信号検出回路24によって画素信号として検出される。
【0069】
そして、信号検出回路24によって検出された画素信号は画像データ取得部4によって取得され、画像データ取得部4は1枚の放射線画像データを生成し、その放射線画像データを画像補正部6に出力する。なお、このとき有効領域R2に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲外の検出部30に対応する画素信号は0として放射線画像データが生成される。
【0070】
そして、上記のようにして1枚の放射線画像データが取得された後、その後、スキャン信号制御回路23は、有効領域R2に対応する放射線画像検出器本体20上の範囲外の検出部30の列に接続される複数の走査配線21に対して、スイッチRSWをオンするための制御信号を同時に出力し、検出部30に蓄積された電荷を順次リセットする。
【0071】
そして、次に、放射線源1aに隣接する放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、その次に、放射線源1aに隣接する放射線源1aの群から同時に放射線が射出され、それぞれの放射線の射出に対して、上記と同様の作用が繰り返され、画像補正部6によって放射線画像データが記憶される。
【0072】
上記のようにして複数枚の放射線画像補データが取得される。なお、以下、放射線源1an(n=1〜4)の群からの放射線の射出によって取得された放射線画像データをHGDn(n=1〜4)という。
【0073】
上記のようにして画像補正部6に4枚の放射線画像補正データGDnと4枚の放射線画像データHGDnとが記憶される。
【0074】
そして、次に、画像補正部6は、4枚の放射線画像データHGDnの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算することによって1枚の全体放射線画像データを生成するとともに、
4枚の放射線画像補正データGDnの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算することによって1枚の全体放射線画像補正データを生成し、全体放射線画像データに対して、全体放射線画像補正データを用いて補正が施される。具体的には、全体放射線画像補正データの各画素の加算画素信号の逆数が、その各画素と同じ画素位置の全体放射線画像データの加算画素信号に対して掛け算されて補正が行われる。
【0075】
そして、画像補正部6から補正済みの全体放射線画像データが出力され、その補正済み全体放射線画像データに基づいて可視画像をモニタ(図示省略)に表示したり、所定の記録媒体に印刷したりする。
【0076】
また、上記実施形態の放射線画像撮影装置においては、上記のようにして取得して放射線画像補正データGDnに基づいて、放射線源1anの群に属する各放射線源1aから射出される放射線の強度が近づくように各放射線源1aを制御するようにしてもよい。
【0077】
また、図10に示すように、複数枚の放射線画像補正データGDnの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算することによって1枚の全体放射線画像補正データを生成し、その全体放射線画像補正データの各加算画素信号が同じ値となるように、放射線照射部1の隣接する放射線源1aの間隔や、各放射線源1aから射出されるファンビームの広がり角θ1およびθ2を設定することが望ましい。
【0078】
なお、上記実施形態の放射線画像撮影装置においては、予め設定された有効領域に対応する範囲内の検出部30からのみ電荷信号を読み出して放射線画像データを取得し、その他の範囲の検出部30はリセットするようにしたが、これに限らず、たとえば、所定の放射線源の群からの放射線の照射を行った後、放射線画像補正データを取得したときと同様に、全ての走査配線21に対して制御信号を順次切り替えて出力することによって全ての画素信号を取得した後、その全ての画素信号の中から予め設定された有効領域に対応する範囲の画素信号のみを抽出して1枚の放射線画像データを生成するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態の放射線画像撮影装置においては、放射線源1aを1次元状に配置して放射線照射部を構成するようにしたが、これに限らず、たとえば、放射線源1aの列をその列が延びる方向(X方向)に直行する方向(Y方向)に並列に複数列配置するようにしてもよい。なお、図11における紙面厚さ方向が放射線源1aの列が延びる方向である。
【0080】
そして、図11に示すように、放射線源列40と、放射線源列41と、放射線源列42とからそれぞれ互いに異なる角度から被写体10に対して放射線を入射し、各放射線源列についてそれぞれ上記と同様にして補正済みの全体放射線画像データを取得し、これらの複数の補正済全体放射線画像データに基づいて被写体10の断層像を生成するようにしてもよい。断層像の生成方法としては、たとえば、複数の補正済全体放射線画像データを所望の被写体の断面位置に応じてシフトし、それらを加算することによって生成する、いわゆるshift and add方法を用いるようにすればよい。各補正済全体放射線画像データのシフト量を制御することによって、図11に示すような断面1および断面2に対応する断層像をそれぞれ生成することができる。
【0081】
また、上記実施形態の放射線画像撮影装置においては、図5に示すような構成の放射線画像検出器を用いるようにしたが、放射線画像検出器の構成はこれに限らず、その他の直接変換型および間接変換型のフラットパネル検出器、イメージングプレートなどの従来の放射線画像撮影装置に使われているものを使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 放射線照射部
1a 放射線源
2 放射線画像検出器
3 放射線照射制御部
4 画像データ取得部
5 有効領域決定部
6 画像補正部
10 被写体
12 マルチ電子源
13 ターゲット
15 電子放出素子
16 電子レンズ
17 放射線遮蔽板
18 放射線透過膜
19 放射線取出窓
20 放射線画像検出器本体
21 走査配線
22 信号配線
23 スキャン信号制御回路
24 信号検出回路
30 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広がり角が広い方の面が互いに平行に並ぶファンビームの放射線を射出する多数の放射線源が分散配置された放射線照射部と、
該放射線照射部の各放射線源から射出された放射線を検出する放射線画像検出器と、
前記多数の放射線源のうち、前記放射線画像検出器上において前記放射線の照射範囲が重畳または隣接しないような一部の放射線源の群からのみ同時に前記放射線を射出させるとともに、該放射線源の群を順次切り替えて前記放射線を射出させるよう制御する放射線照射制御部と、
前記放射線照射部と前記放射線画像検出器との間に被写体が存在しない状態において、前記放射線照射制御部により前記放射線源の群が順次切り替えられて前記放射線が前記放射線画像検出器に順次照射されることによって前記放射線画像検出器により順次検出された前記各放射線源の群に対応する各画像補正データを取得する画像データ取得部と、
該画像データ取得部により取得された各画像補正データのそれぞれについて、所定の閾値よりも高い値の有効領域を決定する有効領域決定部と、
前記放射線照射部と前記放射線画像検出器との間に被写体を設置した状態において、前記放射線照射制御部により前記放射線源の群が順次切り替えられて前記放射線が前記放射線画像検出器に順次照射されることによって前記放射線画像検出器により順次検出され、前記有効領域に基づいて取得された前記各放射線源の群に対応する各放射線画像データを、前記各画像補正データに基づいて補正する画像補正部とを備えたことを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記放射線画像検出器が、前記放射線の照射に対応する電荷を発生する電荷発生部と、該電荷発生部において発生した電荷を蓄積する、2次元状に多数配列された電荷蓄積部と、該電荷蓄積部の行毎にそれぞれ設けられ、前記電荷蓄積部に蓄積された電荷信号が流れ出す多数の信号線と、該信号線と該信号線に対応する電荷蓄積部との接続をオンオフする、前記電荷蓄積部毎に設けられた多数のスイッチ素子と、該スイッチ素子をオンオフするための制御信号が出力され、前記電荷蓄積部の列毎に前記信号線に直交して設けられた多数の走査線とを備えたものであり、
前記放射線画像検出器と前記放射線照射部とが、前記各放射線源から射出されるファンビームの広がり角が広い方の広がり方向と前記走査線の延びる方向とが同じになるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記有効領域に対応する前記放射線画像検出器上の範囲内の前記電荷蓄積部の列に接続される各走査線に対して前記スイッチ素子をオンするための制御信号を順次出力して前記電荷信号を読み出し、その後、前記有効領域に対応する放射線画像検出器上の範囲外の前記電荷蓄積部の列に接続される複数の走査線に対して前記スイッチ素子を順次オンするための制御信号を同時に出力して前記電荷蓄積部をリセットする走査信号制御部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記画像補正データに基づいて前記放射線源の群に属する各放射線源から射出される放射線の強度が近づくように前記各放射線源を制御する放射線源制御部を備えたことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記画像データ取得部により取得された複数の画像補正データの同じ画素位置の画素信号をそれぞれ加算した各総和画素値が同じ程度の値となるように前記各放射線源が配置されているとともに、前記各放射線源から射出されるファンビームの広がり角が設定されており、強度が制御されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−181149(P2010−181149A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22115(P2009−22115)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】