放射線画像撮影装置
【課題】被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性の低減を実現する。
【解決手段】患者の血管にカテーテル(ガイドワイヤ)を挿入するIVRでの放射線動画像の撮影・表示において、当初は被曝量低減を優先した通常時の曝射条件を設定し(200)、動画像の範囲内に心臓や肺等の脈動臓器が入ってきた場合(214が肯定)には、放射線照射時間tを通常時よりも長くした曝射条件を設定する(228)か、放射線照射周期Tを通常時よりも短くした曝射条件を設定する(234)ことで、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性を低減させる。
【解決手段】患者の血管にカテーテル(ガイドワイヤ)を挿入するIVRでの放射線動画像の撮影・表示において、当初は被曝量低減を優先した通常時の曝射条件を設定し(200)、動画像の範囲内に心臓や肺等の脈動臓器が入ってきた場合(214が肯定)には、放射線照射時間tを通常時よりも長くした曝射条件を設定する(228)か、放射線照射周期Tを通常時よりも短くした曝射条件を設定する(234)ことで、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性を低減させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線を断続照射すると共に放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出し、検出結果を動画像として表示させる放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先端に様々な器具を取り付けたカテーテルを患者の体内に挿入し、モニタに表示される放射線動画像により患者の体内の状態をリアルタイムで観察しながら、カテーテルの先端を病変部にまで到達させ、カテーテルを体外で操作して治療を行うIVR(Interventional Radiology)が急速に普及してきているが、このIVRを始めとして、医療の現場で放射線動画像の撮影・表示を行う機会は増加している。
【0003】
放射線動画像の撮影に関し、特許文献1には、放射線画像中のエッジ部分にボケが生じることを防止するために、連続するフレーム間の被写体映像を比較してフレーム間における被写体の動きの大きさを検出し、検出した被写体の動きの大きさに応じてX線管の1フレーム当たりの曝射時間を減少させる技術が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、検査対象部位毎の撮影条件を記憶部に予め記憶しておき、指定された検査対象部位に応じた撮影条件を記憶部から読み出して撮影装置に設定し、設定した撮影条件で撮影装置による検査対象部位の動態撮影を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−58665号公報
【特許文献2】特開2009−50531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放射線動画像の撮影・表示では、撮影している間、被写体に継続的に放射線が照射されるため、被写体の放射線被曝量が増大し易いという課題がある。一方、被写体の放射線被曝量を抑制するために、被写体への放射線照射周期を長くすることで、モニタに表示される放射線画像の更新時間間隔を長くしたとすると、例えばIVRを行う際の放射線動画像の撮影等のように、撮影中に撮影範囲が変化する撮影において、被写体の臓器のうち心臓や肺等のように動きの速い臓器が撮影範囲内に入っている間、動画像上での前記動きの速い臓器の動きが所謂コマ送りのような不連続な(滑らかさの乏しい)動きになることで、動画像の視認性が低下するという問題が生ずる。
【0007】
これに対して特許文献1に記載の技術は、被写体の動きが大きくなるに従って1フレーム当たりの曝射時間を減少させるものであり、曝射時間を減少させることに伴い、エッジ部分のボケは低減されるものの、動画像上での被写体の動きの不連続性については逆に悪化する。そして特許文献1に記載の技術は、被写体の放射線被曝量の低減について考慮されておらず、被写体の放射線被曝量を低減することと、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することを両立するための具体的な構成については何ら開示されていない。
【0008】
また特許文献2に記載の技術は、検査対象部位毎に予め記憶した撮影条件を用いて動画像の撮影を行うものであり、被写体の放射線被曝量の低減について考慮されておらず、被写体の放射線被曝量を低減することと、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することを両立するための具体的な構成について何ら開示されていない。
【0009】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減できる放射線画像撮影装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、放射線を断続的に照射する照射手段と、前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定する判定手段と、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在している場合に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行う撮影制御手段と、を含んで構成されている。
【0011】
請求項1記載の発明では、照射手段によって放射線が断続的に照射され、放射線検出手段により、照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線が検出され、放射線検出手段による放射線の検出結果が、表示制御手段により動画像として表示手段に表示される。また判定手段は、放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定し、撮影制御手段は、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行う。
【0012】
これにより、撮影制御手段が、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御を行ったとすると、放射線が照射されている期間における前記物体の動きの量が増大することで、動画像中のエッジ部分のボケは増大する可能性はあるものの、放射線が照射されていない期間が短くなり、当該期間における前記物体の動きの量が減少することで、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性が低減される。
【0013】
また、撮影制御手段が、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行ったとすると、放射線検出手段による放射線検出の周期(時間間隔)が短くなり、これに伴い、放射線検出の1周期における前記物体の動きの量が減少することで、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性が低減される。従って、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、撮影制御手段が上記第1制御又は第2制御を行うことで、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性を低減することができる。
【0014】
一方、請求項1記載の発明において、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合には、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間が第1制御よりも短くされるか、又は、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔が第2制御よりも長くされるので、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かに拘わらず第1制御又は第2制御を常に行う場合と比較して、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない期間における被写体の放射線被曝量が低減される。従って請求項1記載の発明によれば、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することができる。
【0015】
なお、請求項1記載の発明において、第1制御は、照射手段によって照射される放射線の線量を低下させることで、単位時間当りの被写体の放射線被曝量を低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さい、という利点を有している。これを考慮すると、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、被写体の放射線累積被曝量を演算する演算手段を設け、撮影制御手段を、演算手段によって演算された被写体の放射線累積被曝量が所定値を越えた場合に、第1制御を行うと共に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段によって照射される放射線の線量が低下するように制御するよう構成することが好ましい。これにより、照射手段によって照射される放射線の線量低下に伴う動画像の画質劣化を抑制しつつ、被写体の放射線累積被曝量も抑制することができる。
【0016】
また、第1制御及び第2制御は、共に、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性が低減された動画像が得られるものの、第1制御は、前述のように、照射手段によって照射される放射線の線量を低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さいという利点を有する一方、動画像中のエッジ部分のボケについては第2制御によって得られる動画像よりも大きいという欠点を有しており、第2制御は、動画像中のエッジ部分のボケが小さく、第1制御よりも高画質の動画像が得られるという利点を有している一方で、被写体の放射線被曝量が大きくなり易いという欠点を有している。
【0017】
上記のように、第1制御と第2制御が異なる特性を有していることを考慮すると、請求項1又は請求項2記載の発明において、例えば請求項3に記載したように、第1制御を行うか第2制御を行うかを選択するための選択手段を設け、撮影制御手段を、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、第1制御及び第2制御のうち選択手段を介して予め選択された制御を行うように構成することが好ましい。これにより、動画像の撮影目的や撮影部位、被写体の放射線累積被曝量等の諸条件に応じて、第1制御を行うか第2制御を行うかを任意に選択することが可能となる。
【0018】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、撮影制御手段は、例えば請求項4に記載したように、第1制御を行う場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段によって照射される放射線の線量が少なくなるように制御するよう構成してもよい。これにより、撮影制御手段によって第1制御が行われる場合、照射手段によって照射される放射線の線量低下に伴う動画像の画質劣化が抑制され、かつ、被写体の放射線被曝量も抑制されるので、第1制御を、第2制御よりも被写体の放射線被曝量が抑制される撮影モードとして用いることも可能となる。
【0019】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、例えば請求項5に記載したように、放射線の線量を設定するための設定手段を設け、撮影制御手段を、設定手段を介して設定された放射線の線量に応じて、照射手段によって照射される放射線の線量を変化させるように構成してもよい。これにより、動画像の撮影目的や撮影部位、被写体の放射線累積被曝量等の諸条件に応じて、照射手段によって照射される放射線の線量を任意に設定することが可能となる。
【0020】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、本発明に係る放射線画像撮影装置による放射線動画像の撮影・表示と並行して、被写体の体内に挿通部材を挿入して病変部の治療が行われる場合には、例えば請求項6に記載したように、照射手段及び放射線検出手段を被写体と相対的に移動させる移動手段を設け、撮影制御手段を、被写体の体内に挿入された挿通部材の先端部に相当する画像部が動画像中の所定領域内に位置するように、挿通部材の先端部の位置変化に応じて、移動手段により、照射手段及び放射線検出手段と被写体とを相対的に移動させるように構成することが好ましい。これにより、挿通部材の先端部の位置変化に応じて、照射手段及び放射線検出手段と被写体とを相対的に移動させる操作を術者(治療者)が行う必要が無くなり、術者の負担が軽減される。
【0021】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の発明において、判定手段が放射線検出範囲内に存在しているか否かを判定する物体(動きの速度が所定値以上の物体)としては、例えば、被写体の臓器のうち動きの速さが所定値以上の臓器を適用することができ、放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体としての動きの速度が所定値以上の臓器が存在しているか否かを判定することは、例えば請求項7に記載したように、判定手段を、放射線検出手段による放射線の検出結果を表す単一フレームの画像を順に取得すると共に、連続する複数フレームの画像に基づいて、前記画像を複数のブロックに分割したときの個々のブロック毎に動きベクトルを演算し、演算した動きベクトルの大きさが各々所定値以上でかつ隣り合う複数個のブロックから成る動き有りブロック群が存在しているか否かを探索し、前記動き有りブロック群が抽出された場合には、過去所定数以内のフレームの画像からも対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていたか否かを判定し、前記対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていた場合には、今回抽出された前記動き有りブロック群を動きの速度が所定値以上の臓器に対応するブロック群と判定する処理を繰り返すように構成することによって実現することができる。
【0022】
請求項8記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、放射線を断続的に照射する照射手段と、前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、被写体の臓器のうち動きの速度が所定値以上の臓器が前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に存在している場合に、前記動きの速度が所定値以上の臓器の前記動画像上での動きの不連続性が低下するように、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を変更する撮影制御手段と、を含んで構成されている。
【0023】
請求項8記載の発明では、請求項1記載の発明と同様に、照射手段によって放射線が断続的に照射され、放射線検出手段により、照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線が検出され、放射線検出手段による放射線の検出結果が、表示制御手段により動画像として表示手段に表示される。そして撮影制御手段は、被写体の臓器のうち動きの速度が所定値以上の臓器が放射線検出手段による放射線検出範囲内に存在している場合に、動きの速度が所定値以上の臓器の動画像上での動きの不連続性が低下するように、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間、又は、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を変更するので、請求項1記載の発明と同様に、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することができる。
【0024】
また、請求項1〜請求項8の何れかに記載の発明において、放射線検出手段としては、例えば請求項9に記載したように、放射線変換層とスイッチング層を含んだ構成を適用することができる。なお、スイッチング層を構成する基板は放射線が透過する材料から構成されていてもよい。放射線検出手段が放射線変換層とスイッチング層を含む構成の場合、放射線変換層側から放射線が照射されるように放射線検出手段を配置して撮影を行うことが一般的であるが、上記のようにスイッチング層を構成する基板を放射線が透過する材料から構成すれば、スイッチング層側から放射線が照射されるように放射線検出手段を配置して撮影を行うことも可能となる。
【0025】
また、請求項1〜請求項9の何れかに記載の発明において、放射線検出手段としては、例えば請求項10に記載したように、放射線画像撮影装置に対して着脱自在な可搬型の放射線画像検出装置を適用することができる。
【0026】
また、請求項1〜請求項10の何れかに記載の発明において、放射線検出手段は、例えば請求項11に記載したように、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する光検出手段と、を備え、発光部が光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されていることが好ましい。この構成では、発光部及び光検出手段のうちの発光部側から放射線が入射される場合と比較して、発光部のうち光検出手段により近い部分が主発光領域となり、光検出手段による受光量が増大するので、放射線画像撮影装置における放射線の検出感度を向上させることができる。
【0027】
また、請求項11記載の発明において、例えば請求項12に記載したように、発光部はCsIを含む材料から成り、柱状結晶構造部が形成されていることが好ましい。これにより、発光部が放射線を吸収することで発生した光は、発光部に形成された柱状結晶構造部において、柱状結晶の間隙に案内されて光検出手段側へ射出されることで、光検出手段側へ射出される光の拡散が抑制されるので、放射線検出手段の光検出手段によって検出される画像の鮮鋭度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明は、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定し、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行うようにしたので、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】放射線画像撮影システムが設置された手術室の様子を示す斜視図である。
【図2】電子カセッテの内部構成を一部破断して示す斜視図である。
【図3】放射線照射装置の要部構成を示す斜視図である。
【図4】載置台、支持部材及びその周辺の構成を示す断面図である。
【図5】載置台の内部構成を示す断面図である。
【図6】放射線照射装置の周辺の構成を示す断面図である。
【図7】放射線画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図8】放射線検出器の1画素に相当する部分の等価回路を示す回路図である。
【図9】放射線動画像撮影・表示処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】(A)は通常の撮影時、(B),(C)は脈動臓器撮影時の曝射条件等の一例を各々示す線図である。
【図11】脈動臓器探索処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】脈動臓器探索処理を説明するためのイメージ図である。
【図13】電子カセッテに内蔵された放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【図14】図13に示す放射線検出器におけるシンチレータの結晶構成の一例を模式的に示す概略図である。
【図15】放射線検出器のシンチレータとして使用可能なCsIの特性を概略的に示す線図である。
【図16】電子カセッテに内蔵された放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には本実施形態に係る放射線画像撮影システム10が示されている。放射線画像撮影システム10は、術者12や放射線技師が放射線画像の撮影を行うためのものであり、患者(被写体)14が横たわるためのベッド16と、予め設定された撮影条件に応じた放射線量の放射線Xを患者14へ照射すると共にベッド16の長手方向に沿って移動可能とされた放射線照射装置18と、患者14を透過した放射線Xを検出して放射線画像情報を生成・記憶する可搬型撮影装置(以下、「電子カセッテ」という)20と、ベッド16の幅方向一端部側に設けられ電子カセッテ20を支持しかつベッド16の長手方向に沿って移動可能とされた支持部材22と、ベッド16の患者14が載置される側で電子カセッテ20を片持ち支持する支持部材22と、放射線照射装置18、電子カセッテ20、第1移動装置50(後述)及び第2移動装置78(後述)の動作を制御するコンソール24と、を含んで構成されている。
【0031】
支持部材22に支持される電子カセッテ20は本発明に係る放射線検出手段(より詳しくは請求項9,10に記載の放射線検出手段)の一例であり、図2に示すように、放射線Xを透過させる材料から成る略矩形平板状の筐体30を備えている。電子カセッテ20は、手術室等で使用される際に血液やその他の雑菌が付着する可能性がある。このため、筐体30は高い防水性・密閉性を有する構造とされている。これにより、必要に応じて殺菌洗浄することで、同一の電子カセッテ20を繰り返し使用することが可能となる。
【0032】
筐体30の内部には、放射線Xが照射される筐体30の照射面32側から、放射線Xの散乱線を除去するグリッド34、放射線検出器36、及び、放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板38が順に配設されている。放射線検出器36は放射線Xが照射される略矩形状の照射面36Aを備え、患者14を透過して照射面36Aに照射された放射線Xの放射線量を検出し、当該放射線量に応じた放射線画像を表す放射線画像情報を出力する。なお、放射線検出器36の詳細は後述する。
【0033】
また、筐体30内の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能な二次電池を収容するケース40が配置されている。放射線検出器36及び電子回路は、ケース40に収容された二次電池から供給される電力によって作動する。ここで、ケース40内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース40の照射面32側には鉛板等の放射線を遮蔽する遮蔽部材を配設しておくことが望ましい。また、電子カセッテ20の筐体30の側面のうちケース40に対応する位置には、通信ケーブルを接続するための接続端子20Aが設けられている。
【0034】
放射線照射装置18は本発明に係る照射手段の一例であり、図3に示すように、放射線Xを射出する放射線源42と、放射線源42の放射線X射出側に配置され、4枚のスリット板44A,44B,44C,44Dを含んで構成された絞り部44と、を備えている。各スリット板44A〜44Dは、鉛やタングステン等の放射線Xを遮蔽する材料から成り、先端部から後端部に亘って厚さが徐々に厚くされた平面視矩形状の板状に整形されて構成されており、絞り部44は、スリット板44Aとスリット板44Bとの先端部同士が対向し、かつスリット板44Cとスリット板44Dとの先端部同士が対向すると共に、各スリット板44A〜44Dの先端部により平面視矩形状の開口領域51が形成されるように各スリット板44A〜44Dが配置されて構成されている。
【0035】
スリット板44A及びスリット板44Bは図3x方向に移動可能とされ、スリット板44C及びスリット板44Dは図3x方向と直交する図3y方向に移動可能とされている。なお、各スリット板44A〜44Dの可動範囲は、対向配置されているスリット板同士の先端部が接触する位置(開口領域51が全閉となる全閉状態)から、開口領域51が平面視矩形状を保ちかつ最大面積となる位置(全開状態)迄の範囲とされている。また、スリット板44Aは、モータ160(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動し、スリット板44Bはモータ162(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動し、スリット板44Cはモータ164(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動し、スリット板44Dはモータ166(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動する。
【0036】
また放射線照射装置18は、鉛やタングステン等の放射線Xを遮蔽する材料から成り、放射線源42及び絞り部44を収容する収容箱53(図1参照)を備えている。図1に示すように、収容箱51には、放射線源42から射出され絞り部44を通過した放射線Xを電子カセッテ20へ向けて照射するための開口部53Aが形成されている。
【0037】
ここで、開口部52Aは、絞り部44の各スリット板44A〜44Dが全開状態のときに開口領域51を通過する放射線Xの直接線と、各スリット板44A〜44Dの厚さに応じた透過線量でスリット板44A〜44Dを透過した放射線X(以下「透過線」という)との双方が射出できる大きさとされている。また、本実施形態に係る放射線画像撮影システム10では、絞り部44の各スリット板44A〜44Dが全開状態の場合に、電子カセッテ20における照射面32の全面に放射線Xが照射されるように、電子カセッテ20及び放射線照射装置18が予め位置決めされている。
【0038】
一方、図1に示すベッド16は、放射線Xを透過させる材料から成り患者14が横たわるための略矩形平板状の載置台16Aと、載置台16Aの四隅に設けられ載置台16Aを支持する脚部16Bと、から構成されている。載置台16Aの上面のうち載置台16Aの幅方向一端部側には、載置台16Aの長手方向に沿って長溝48が形成されている。図4に示すように、載置台16Aの内部のうち長溝48に対応する位置には、長溝48を介して外部と連通する収容室52が形成されており、この収容室52内には、支持部材22の一部(後述する基部54)と、支持部材22を長溝48に沿って移動させる第1移動装置50が収容されている。
【0039】
支持部材22は、収容室52内に収容された基部54、当該基部54の上面に取付けられ長溝48を介して載置台16A上へ突出しているフレーム56、及び、基端部がL字状に屈曲されたフレーム58を備えている。フレーム56の突出部分のうちの先端部付近には、突出方向に沿って互いに異なる位置に複数の孔60が各々穿設されており、フレーム58は、複数の孔60の何れか1つに挿通されたボルト62がフレーム58の基端部にねじ込まれることで、フレーム56に締結固定されている。また、フレーム58の先端部には電子カセッテ20の筐体30がボルトによって締結固定されている。従って、電子カセッテ20の高さ位置は、ボルト62を挿通する孔60を変更することで調整可能とされている。
【0040】
支持部材22の基部54には、載置台16Aの幅方向へ突出する一対のフランジ54Aが設けられており、収容室52内の両側壁には一対の長溝52Aが形成されている。一対の長溝52Aは載置台16Aの長手方向に沿って延設されており、一対のフランジ54Aが嵌め込まれている。これにより、支持部材22(及び電子カセッテ20)は、フランジ54Aが長溝52Aの内壁面と接触することで、図1,4に示す姿勢を維持したまま、載置台16Aの長手方向に沿って摺動移動可能とされている。
【0041】
また、収容室52内のうち基部54の下方には第1移動装置50が配設されている。第1移動装置50は、基部54の下面54Bに固定されたモータ66と、同じく基部54の下面54Bに固定されコンソール24からの指示に従いモータ66を駆動する駆動装置68と、モータ66の駆動力を伝達するギアユニット64と、収容室52の底面に配置され載置台16Aの長手方向に沿って延設されたラックギア69と、から構成されている。図5にも示すように、ギアユニット64は、モータ66の回転軸に取付けられた駆動ギア64Aと、駆動ギア64A及びラックギア69と噛合するピニオンギア64Bと、を備えている。これにより、駆動装置68によってモータ66が駆動されると、支持部材22(及び電子カセッテ20)は、モータ66の回転軸の回転方向に応じて図1の矢印A方向又は矢印B方向へ摺動移動される。
【0042】
また、載置台16Aの下方には、直方体状で載置台16Aの長手方向に沿って延設された収容体74と、載置台16A上の患者14へ放射線Xが照射される向きで支持部材70に支持された放射線照射装置18と、が配置されている。収容体74の上面には、載置台16Aの長手方向に沿って長溝76が形成されている。図6に示すように、収容体74の内部には長溝76を介して外部と連通する収容室80が形成されている。支持部材70は、収容室80内に収容された基部72と、当該基部72の上面に取付けられ長溝76を介して載置台16A側へ突出するフレーム73を備えており、フレーム73の先端には放射線照射装置18が固定されている。なお収容体74は、放射線照射装置18からの放射線Xの照射範囲のうち載置台16Aの幅方向に沿った中心位置が、長手方向に沿って、支持部材22に支持されている電子カセッテ20のうち載置台16Aの幅方向に沿った中心位置とほぼ一致するように、載置台16Aの幅方向に沿った位置が調整されている。
【0043】
支持部材70の基部72には、載置台16Aの幅方向へ突出する一対のフランジ72Aが設けられており、収容室80内の両側壁には一対の長溝80Aが形成されている。一対の長溝80Aは載置台16Aの長手方向に沿って延設されており、一対のフランジ72Aが嵌め込まれている。これにより、支持部材70(及び放射線照射装置18)は、フランジ72Aが長溝80Aの内壁面と接触することで、図1,6に示す姿勢を維持したまま、載置台16Aの長手方向に沿って摺動移動可能とされている。
【0044】
また、収容室80内のうち基部72の下方には第2移動装置78が配設されている。第1移動装置78は、基部72の下面72Bに固定されたモータ84と、同じく基部72の下面72Bに固定されコンソール24からの指示に従いモータ84を駆動する駆動装置86と、モータ84の駆動力を伝達するギアユニット82と、収容室80の底面に配置され載置台16Aの長手方向に沿って延設されたラックギア85と、から構成されている。ギアユニット82は、モータ84の回転軸に取付けられた駆動ギア82Aと、駆動ギア82A及びラックギア85と噛合するピニオンギア82Bと、を備えている。これにより、駆動装置86によってモータ84が駆動されると、支持部材70(及び放射線照射装置18)は、モータ84の回転軸の回転方向に応じて図1の矢印A方向又は矢印B方向へ摺動移動される。
【0045】
次に図7を参照し、放射線画像撮影システム10の電気系の構成を説明する。放射線照射装置18にはコンソール24と通信を行うための接続端子18Aが設けられている。またコンソール24には、放射線照射装置18と通信を行うための接続端子24A、電子カセッテ20と通信を行うための接続端子24B、第1移動装置50と無線通信を行うためのアンテナ24C及び第2移動装置78と無線通信を行うためのアンテナ24Dが設けられている。
【0046】
放射線照射装置18は、一端が接続端子18Aに接続された通信ケーブル90の他端が接続端子24Aに接続されていることで、コンソール24と接続されている。電子カセッテ20は、放射線画像の撮影時に、接続端子20Aに通信ケーブル92の一端が接続され、当該通信ケーブル92の他端が接続端子24Bに接続されることでコンソール24と接続される。なお、本実施形態では、電子カセッテ20とコンソール24との間のデータ転送の高速化を図るために、通信ケーブル92として光通信ケーブルを用いており、電子カセッテ20とコンソール24との間で光通信によるデータ転送が行われる。
【0047】
電子カセッテ20に内蔵された放射線検出器36は、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板94上に、放射線Xを吸収して電荷に変換する光電変換層が積層されて構成されている。光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、放射線Xが照射されると、照射された放射線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線Xを電荷へ変換する。なお、放射線検出器36は、アモルファスセレンのような放射線Xを直接的に電荷に変換する放射線−電荷変換材料の代わりに、蛍光体材料と光電変換素子(フォトダイオード)を用いて間接的に電荷に変換する構成であってもよい。蛍光体材料としては、ガドリニウム硫酸化物(GOS)やヨウ化セシウム(CsI)が知られている。この場合、蛍光体材料によって放射線−光変換を行い、光電変換素子のフォトダイオードによって光−電荷変換が行われる。
【0048】
また、TFTアクティブマトリクス基板94上には、光電変換層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量96と、蓄積容量96に蓄積された電荷を読み出すためのTFT98とを備えた画素部100(図7では個々の画素部100に対応する光電変換層を光電変換部102として模式的に示している)がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ20への放射線Xの照射に伴って光電変換層で発生された電荷は、個々の画素部100の蓄積容量96に蓄積される。これにより、電子カセッテ20に照射された放射線Xに担持されていた放射線画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器36に保持される。
【0049】
また、TFTアクティブマトリクス基板94には、一定方向(行方向)に延設され、個々の画素部100のTFT98をオンオフさせるための複数本のゲート配線104と、ゲート配線104と直交する方向(列方向)に延設され、オンされたTFT98を介して蓄積容量96から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線106が設けられている。個々のゲート配線104はゲート線ドライバ108に接続されており、個々のデータ配線106は信号処理部110に接続されている。個々の画素部100の蓄積容量96に電荷が蓄積されると、個々の画素部100のTFT98は、ゲート線ドライバ108からゲート配線104を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT98がオンされた画素部100の蓄積容量96に蓄積されている電荷は、電荷信号としてデータ配線106を伝送されて信号処理部110に入力される。従って、個々の画素部100の蓄積容量96に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0050】
図8に示すように、TFT98のソースはデータ配線106に接続され、データ配線106は信号処理部110に接続されている。また、TFT98のドレインは蓄積容量96及び光電変換部102に接続され、TFT98のゲートはゲート配線104に接続されている。信号処理部110は、個々のデータ配線106毎にサンプルホールド回路112を備えている。個々のデータ配線106を伝送された電荷信号はサンプルホールド回路112に保持される。サンプルホールド回路112はオペアンプ112Aとコンデンサ112Bを含んで構成され、電荷信号をアナログ電圧に変換する。また、サンプルホールド回路112にはコンデンサ112Bの両電極をショートさせることで、コンデンサ112Bに蓄積された電荷を放電させるリセット回路として作用するスイッチ112Cが設けられている。
【0051】
サンプルホールド回路112の出力側にはマルチプレクサ114、A/D(アナログ/デジタル)変換器116が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はアナログ電圧に変換されてマルチプレクサ114に順に(シリアルに)入力され、A/D変換器116によってデジタルの放射線画像情報へ変換される。
【0052】
図7に示すように、信号処理部110にはラインメモリ118が接続されており、信号処理部110のA/D変換器116から出力された放射線画像情報はラインメモリ118に順に記憶される。ラインメモリ118は放射線画像を表す放射線画像情報を所定ライン分記憶可能な記憶容量を有しており、1ラインずつ電荷の読み出しが行われる毎に、読み出された1ライン分の放射線画像情報がラインメモリ118に順次記憶される。
【0053】
ラインメモリ118は電子カセッテ20全体の動作を制御するカセッテ制御部120と接続されている。カセッテ制御部120はマイクロコンピュータから成り、光通信制御部122が接続されている。光通信制御部122は接続端子20Aに接続されており、接続端子20Aを介して接続された外部機器(例えばコンソール24)との間での各種情報の伝送を制御する。従って、カセッテ制御部120は、光通信制御部122を介して外部機器との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0054】
また、電子カセッテ20はカセッテ制御部120及び電源部126を備えており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ108、信号処理部110、ラインメモリ118、光通信制御部122やカセッテ制御部120として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部126から供給された電力によって作動する。電源部126は、電子カセッテ20の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路や素子へ電力を供給する。
【0055】
一方、コンソール24は、例えばサーバ・コンピュータ等から成り、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するためのディスプレイ136と、複数のキーを含んで構成され各種の情報や操作指示が入力される操作パネル140と、を備えている。
【0056】
またコンソール24には、装置全体の動作を司るCPU128、制御プログラム等が予め記憶されたROM130、各種データを一時的に記憶するRAM132、各種データを記憶すると共に後述する放射線動画像撮影・表示処理を行うための放射線動画像撮影・表示プログラムを含む各種のアプリケーション・プログラムがイントールされたHDD(Hard Disk Drive)134、ディスプレイ136への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ138、操作パネル140に対する操作状態を検出する操作入力検出部142、接続端子24Aに接続され接続端子24A及び通信ケーブル90を介して放射線照射装置18との間で曝射条件や放射線照射装置18の状態情報等の各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部144、接続端子24Bに接続され接続端子24B及び通信ケーブル92を介して電子カセッテ20との間で画像情報等の各種情報の送受信を行う光通信制御部146、アンテナ24Cに接続され第1移動装置50との間で無線通信を行う無線通信制御部148、及び、アンテナ24Dに接続され第2移動装置78との間で無線通信を行う無線通信制御部150が設けられており、これらはシステムバスを介して相互に接続されている。
【0057】
また放射線照射装置18は、放射線照射装置18全体の動作を制御する照射装置制御部156を備えている。照射装置制御部156はマイクロコンピュータから成り、通信I/F部154が接続されている。通信I/F部154は接続端子18Aに接続されており、接続端子18A及び通信ケーブル90を介して接続されたコンソール24との間での各種情報の伝送を制御する。従って、照射装置制御部156は、通信I/F部154を介してコンソール24との間での各種情報の送受信が可能とされている。また、照射装置制御部156には放射線源42が接続されており、照射装置制御部156は、通信I/F部154を介してコンソール24から受信した曝射条件に基づいて放射線源42を制御する。
【0058】
また、放射線照射装置18は、スリット板44Aを移動させるための駆動力を発生するモータ160、スリット板44Bを移動させるための駆動力を発生するモータ162、スリット板44Cを移動させるための駆動力を発生するモータ164、及び、スリット板44Dを移動させるための駆動力を発生するモータ166を各々備えており、モータ160の駆動制御を行うモータドライバ168、モータ162の駆動制御を行うモータドライバ170、モータ164の駆動制御を行うモータドライバ172、及び、モータ166の駆動制御を行うモータドライバ174も各々備えている。
【0059】
モータ160はモータドライバ168を介して照射装置制御部156に接続され、モータ162はモータドライバ170を介して照射装置制御部156に接続され、モータ164はモータドライバ172を介して照射装置制御部156に接続され、モータ166はモータドライバ174を介して照射装置制御部156に接続されている。従って、モータ160,162,164,166の駆動は、コンソール24からの指示に応じて、照射装置制御部156によって制御される。
【0060】
また、第1移動装置50は、モータ66及び駆動装置68の他に、コンソール24と無線通信を行うためのアンテナ50Aを備えている。駆動装置68は、第1移動装置50全体の動作を制御するコントローラ68Aと、モータ66の駆動を制御するモータドライバ68Bと、アンテナ50Aに接続されアンテナ50Aを介してコンソール24との間で無線通信を行う無線通信制御部68Cと、コントローラ68A、モータドライバ68B、無線通信制御部68C及びモータ66に電力を供給する電源部68Dと、を備えている。
【0061】
コントローラ68Aはマイクロコンピュータから成り、モータドライバ68B及び無線通信制御部68Cが接続されている。コントローラ68Aは、コンソール24からの指示に従い、モータドライバ68Bを介してモータ66の駆動を制御すると共に、モータ66の駆動状態を把握し、当該駆動状態を示す情報を無線通信制御部68Cを介してコンソール24に送信する。
【0062】
また、第2移動装置78は、モータ84及び駆動装置86の他に、コンソール24と無線通信を行うためのアンテナ78Aを備えている。駆動装置86は、第2移動装置78全体の動作を制御するコントローラ86Aと、モータ84の駆動を制御するモータドライバ86Bと、アンテナ78Aに接続されアンテナ78Aを介してコンソール24との間で無線通信を行う無線通信制御部86Cと、コントローラ86A、モータドライバ86B、無線通信制御部86C及びモータ84に電力を供給する電源部86Dと、を備えている。
【0063】
コントローラ86Aはマイクロコンピュータから成り、モータドライバ86B及び無線通信制御部86Cが接続されている。コントローラ86Aは、コンソール24からの指示に従い、モータドライバ86Bを介してモータ84の駆動を制御すると共に、モータ84の駆動状態を把握し、当該駆動状態を示す情報を無線通信制御部86Cを介してコンソール24に送信する。
【0064】
次に本実施形態の作用として、本実施形態に係る放射線画像撮影システム10を利用しながら、ベッド16に横たわっている患者(被写体)14の血管にカテーテルを挿入するIVRを実施する場合に、術者12からの指示を契機としてコンソール24で行われる放射線動画像撮影・表示処理について、図9を参照して説明する。なお、この放射線動画像撮影・表示処理は、HDD134にインストールされている放射線動画像撮影・表示プログラムがCPU128によって実行されることで実現される。また、放射線動画像撮影・表示処理の実行が開始される際には、患者(被写体)14の体のうちカテーテル(詳しくはカテーテルを先導するガイドワイヤ:請求項6に記載の挿通部材の一例)の挿入口やその周辺が撮影範囲内に入るように、患者(被写体)14の体に対する放射線照射装置18及び電子カセッテ20の相対位置が術者12によって予め調整される。
【0065】
放射線動画像撮影・表示処理では、まずステップ200において、IVR実施中に放射線画像撮影システム10が患者(被写体)14の動画像を撮影するための、放射線照射装置18による放射線の曝射条件として、通常の動画像撮影での曝射条件として予め定められた条件を設定する。患者(被写体)14の動画像を撮影する場合、放射線照射装置18は、図10に示すように患者(被写体)14に対して断続的に放射線を照射する。このため、動画像撮影における曝射条件には放射線照射周期T、放射線照射線量W及び放射線照射時間tの各項目が含まれており、ステップ200では、上記各項目について通常の動画像撮影用として予め定められた値を各々設定する(照射周期T←T1、照射線量W←W1、照射時間t←t1:図10(A)も参照)。
【0066】
なお、本実施形態において、通常の動画像撮影での曝射条件は、撮影される動画像の画質よりも患者(被写体)14の放射線被曝量の低減が優先されるように各項目の値が定められており、具体的には、後述する照射時間増大モードでの動画像撮影と比較して照射時間tが短くされ、後述する高レートモードでの動画像撮影と比較して、照射周期Tが長くされている。
【0067】
ステップ202では脈動臓器撮影フラグに0を設定し、次のステップ204では放射線の曝射条件として放射線照射周期T、放射線照射線量W及び放射線照射時間tの現在の設定値(この場合はステップ200で設定した値)を放射線照射装置18へ通知し、通知した曝射条件での放射線射出(照射)を指示する。これにより、放射線照射装置18では、放射線源42による放射線の曝射が、コンソール24から通知された曝射条件に従い照射装置制御部156によって制御され、放射線源42からは、例として図10(A)に示すように、照射周期T1で、照射線量W1の放射線が照射時間t1だけ射出され、放射線源42から射出され絞り部44を透過した放射線が患者(被写体)14に照射される。
【0068】
次のステップ206では放射線照射1周期内の放射線の照射が終了したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ206を繰り返す。ステップ206の判定が肯定されるとステップ208へ移行し、電子カセッテ20に対してTFTアクティブマトリクス基板94上の個々の画素部100の蓄積容量96に蓄積された電荷の読み出しを指示し、この電荷読み出しによって得られた放射線画像のデータ(放射線動画像の1フレームに相当する画像のデータ)を電子カセッテ20から受信することで取得し、取得したデータをHDD134に記憶させると共に、当該データが表す放射線動画像の1フレームに相当する画像をディスプレイ136に表示させる。なお、このステップ208は表示制御手段に相当する処理の一例である。
【0069】
ステップ210では、ステップ208で電子カセッテ20から取得したデータが表す放射線画像(放射線動画像の1フレームに相当する画像)に基づき、当該画像上におけるカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置を検出する。カテーテルのガイドワイヤは放射線の吸収率が人体の各部と大きく相違しているので、放射線画像上において、カテーテルのガイドワイヤに相当する画像部は、他の画像部と明確に濃度が相違している。従って、放射線画像上におけるカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置は、例えばカテーテルのガイドワイヤに相当する画像部とその他の画像部を弁別可能な閾値により放射線画像を二値化し、二値化後の放射線画像上でカテーテルのガイドワイヤに相当する画像部を細線化し、細線化によって得られた曲線の端部の位置をガイドワイヤの先端部の位置と認識する等の画像処理を行うことで検出することができる。
【0070】
次のステップ212では脈動臓器探索処理を行う。この脈動臓器探索処理は、ステップ208でデータを取得した放射線画像の中に、患者(被写体)14の臓器のうち動きの速さが所定値以上の脈動臓器(例えば心臓や肺等)に相当する画像部が存在しているか否かを探索・判定し、判定結果として「脈動臓器有り」又は「脈動臓器無し」を出力する処理であり、詳細は後述する。なお、ステップ212は本発明に係る判定手段の一例である。次のステップ214では、ステップ212の脈動臓器探索処理の判定結果が「脈動臓器有り」であったか否か判定する。判定が否定された場合はステップ216へ移行し、脈動臓器撮影フラグが1か否か判定する。
【0071】
この判定が否定された場合はステップ238へ移行し、患者(被写体)14の体のうち放射線画像撮影システム10が撮影する範囲の移動が必要か否か判定する。この判定は、例えば先のステップ210で検出したカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置が、放射線画像上の所定範囲(例えば放射線画像の中心から所定距離以内の範囲、或いは放射線画像のうち外縁から所定距離以内の範囲を除外して残った範囲)から逸脱しているか否かを判断することで行うことができる。
【0072】
この判定が否定された場合はステップ242へ移行するが、ステップ238の判定が肯定された場合はステップ240へ移行し、ステップ210で位置を検出したカテーテルのガイドワイヤの先端部を、放射線画像上の所定範囲内に位置させるための放射線照射装置18及び電子カセッテ20の移動方向及び移動量を演算し、演算した移動方向及び移動量を第1移動装置50及び第2移動装置78へ通知することで、放射線照射装置18及び電子カセッテ20を演算した移動方向へ演算した移動量だけ移動させる。これにより、IVRの進行に伴いカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置が患者(被写体)14の血管内を移動していくのに追随して、患者(被写体)14の体のうち放射線画像撮影システム10が撮影する範囲が移動していくことになる。なお、上述したステップ238,240は請求項6に記載の撮影制御手段による処理の一例である。
【0073】
次のステップ242では、IVRの終了に伴い放射線画像撮影システム10による動画像の撮影終了が術者12から指示されたか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ204に戻り、ステップ204〜ステップ216、ステップ238〜ステップ242を繰り返す。これにより、通常の動画像撮影の曝射条件での放射線照射装置18による患者(被写体)14への放射線の照射、電子カセッテ20による放射線の検出、及び、電子カセッテ20からの放射線画像データの取得が繰り返され、通常の動画像撮影の曝射条件で撮影された放射線動画像がディスプレイ136に表示される。このように、放射線動画像中に脈動臓器に相当する画像部が存在していない間は、通常の動画像撮影での曝射条件(照射時間tが短くかつ照射周期Tが長い曝射条件)に従って患者(被写体)14へ放射線が照射され、動画像の撮影・表示が行われるので、患者(被写体)14の放射線被曝量は低く抑制される。
【0074】
ところで、IVRが進行し、患者(被写体)14の体のうち放射線画像撮影システム10による放射線画像の撮影範囲が移動していくと、患者(被写体)14の脈動臓器が放射線画像撮影システム10による放射線画像の撮影範囲内に入ることがあるが、この場合、ディスプレイ136に表示する放射線動画像上での脈動臓器の動きが所謂コマ送りのような不連続な(滑らかさの乏しい)動きになることで、放射線動画像の視認性が低下するという問題が生ずる。これに対し、本実施形態に係る放射線動画像撮影・表示処理(図9)では、脈動臓器が放射線画像の撮影範囲内に入ると、ステップ212の脈動臓器探索処理の判定結果が「脈動臓器有り」となることで、ステップ214の判定が肯定されてステップ222へ移行し、ステップ222以降で放射線照射装置18による放射線の曝射条件を脈動臓器撮影用の曝射条件に切り替える処理が行われる。
【0075】
すなわち、まずステップ222では、放射線動画像撮影・表示処理を開始してからの患者(被写体)14の放射線累積被曝量を演算する。放射線照射1周期当りの放射線被曝量は、その周期での照射線量Wと照射時間tから算出できるので、放射線動画像撮影・表示処理を開始してからの患者(被写体)14の放射線累積被曝量は、放射線照射の各周期での放射線被曝量を各々算出し、それらを全て加算することで求めることができる。また、放射線累積被曝量を一旦演算した後は、以後の各周期での放射線被曝量を順次加算していくことで、放射線動画像撮影・表示処理を行っている途中の各時点での放射線累積被曝量を求めることができる。なお、ステップ222は請求項2に記載の演算手段の一例である。
【0076】
ところで、本実施形態では、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている場合(脈動臓器撮影時)の撮影モードとして、放射線の曝射条件が互いに異なる2種類の撮影モード(照射時間増大モードと高レートモード)が設けられている。照射時間増大モードは、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されるように、通常の動画像撮影での曝射条件よりも照射時間tが長くされた曝射条件で動画像撮影を行うモードであり、本発明に係る第1制御の一例である。また高レートモードは、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されるように、通常の動画像撮影での曝射条件よりも照射周期Tが短くされた曝射条件で動画像撮影を行うモードであり、本発明に係る第2制御の一例である。
【0077】
照射時間増大モード及び高レートモードは、共に、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減された動画像が得られるものの、照射時間増大モードは、照射線量Wを低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さいという利点を有する一方、動画像中のエッジ部分のボケについては高レートモードによって得られる動画像よりも大きいという欠点を有しており、高レートモードは、動画像中のエッジ部分のボケが小さく、照射時間増大モードよりも高画質の動画像が得られるという利点を有している一方で、患者(被写体)14の放射線被曝量が大きくなり易いという欠点を有している。
【0078】
このため、本実施形態では、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている場合(脈動臓器撮影時)の撮影モードとして、照射時間増大モード及び高レートモードの何れを適用するかを術者12が選択可能とされていると共に、脈動臓器撮影時の照射線量Wについても術者12が設定可能とされており、術者12は、動画像の撮影目的や撮影部位(に応じた脈動臓器撮影時の動画像に対する要求画質)、患者(被写体)14の放射線被曝量等の諸条件を勘案し、脈動臓器撮影時の撮影モードとして照射時間増大モード及び高レートモードの何れかを操作パネル140を介して予め選択すると共に、脈動臓器撮影時の照射線量Wを操作パネル140を介して予め設定する。上記操作が行われる場合の操作パネル140は、請求項3に記載の選択手段及び請求項5に記載の設定手段に対応している。なお、脈動臓器撮影時の撮影モード及び照射線量Wは放射線動画像撮影・表示処理の途中で変更することも可能である。
【0079】
次のステップ224以降の処理は本発明に係る撮影制御手段による処理の一例であり、まずステップ224では、ステップ222で演算した放射線累積被曝量が所定値以上か否か判定する。判定が否定された場合はステップ230へ移行し、照射線量Wとして予め設定された値(術者12によって照射線量Wが予め設定されていた場合はその値を、術者12による設定が無ければデフォルトとして予め設定されていた値)を設定する。なお、ステップ230は請求項4に記載の撮影制御手段による処理の一例である。次のステップ232では、脈動臓器撮影時の撮影モードとして設定されているモードが照射時間増大モード及び高レートモードの何れであるかを判定し、判定結果に応じて分岐する。なお、ステップ232は請求項3に記載の撮影制御手段による処理の一例である。
【0080】
脈動臓器撮影時の撮影モードとして照射時間増大モードが設定されていた場合は、ステップ232からステップ228へ移行し、照射周期T及び照射時間tについて、脈動臓器撮影時の照射時間増大モードとして予め定められた値を各々設定する(照射周期T←T1、照射時間t←t2:図10(B)も参照)。そして、次のステップ236で脈動臓器撮影フラグに1を設定し、ステップ238へ移行する。前述のように、照射時間増大モードの曝射条件は、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射時間tが長くされており(t2>t1)、これにより、図10(B)を図10(A)と比較しても明らかなように、患者(被写体)14に放射線が照射されない期間(放射線画像として画像化されない期間)が短くなり、当該期間における脈動臓器の動きの量が減少することで、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されることになる。また、放射線画像として画像化されない期間が短くなることで、脈動臓器に重要な一瞬の動き変化があった場合にも、当該動き変化が画像化される可能性が高くなるので、放射線動画像の視認者(例えば術者12)が脈動臓器の重要な一瞬の動き変化を見逃す可能性を低減することができる。
【0081】
なお、照射時間増大モードでの照射周期Tについては、上記のように通常の動画像撮影における照射周期T(=T1)と同じにすることに代えて、患者(被写体)14に放射線が照射されない期間が通常の動画像撮影よりも短くなる範囲内で、照射時間tと共に値を変更してもよい。
【0082】
また、脈動臓器撮影時の撮影モードとして高レートモードが設定されていた場合は、ステップ232からステップ234へ移行し、照射周期T及び照射時間tについて、脈動臓器撮影時の高レートモードとして予め定められた値を各々設定する(照射周期T←T2、照射時間t←t3:図10(C)も参照)。そして、ステップ236で脈動臓器撮影フラグに1を設定してステップ238へ移行する。前述のように、高レートモードの曝射条件は、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射周期Tが短くされており(T2<T1)、これにより、放射線照射の1周期の間の脈動臓器の動きの量が減少することで、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されることになる。また、照射周期Tを短くすることで、放射線動画像の単位時間当りのフレーム数は増大するものの、これに伴い、放射線動画像の視認者(例えば術者12)が脈動臓器の重要な一瞬の動き変化を見逃す可能性を低減することができる。
【0083】
なお、図10(C)では高レートモードでの照射時間t(=t3)を通常の動画像撮影における照射時間t(=t1)と同長さとして示しているが、高レートモードでの照射周期T(=T2)に応じて、通常の動画像撮影における照射時間t(=t1)と異なる値としてもよいことは言うまでもない。
【0084】
このように、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている間、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射時間tが長くされた照射時間増大モード、又は、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射周期Tが短くされた高レートモードで動画像撮影が行われることで、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減され、放射線動画像の視認性が向上するので、術者12の疲労軽減等の効果が得られる。また、脈動臓器撮影時の撮影モードとして、互いに異なる特徴を有する照射時間増大モードと高レートモードの何れかを選択可能としているので、動画像の撮影目的や撮影部位(に応じた脈動臓器撮影時の動画像に対する要求画質)、患者(被写体)14の放射線被曝量等の諸条件に応じて、より適切な撮影モードを選択することができる。
【0085】
また、例えばIVRの長時間化等の理由で、放射線動画像撮影・表示処理を開始してからの患者(被写体)14の放射線累積被曝量が所定値以上となった場合には、ステップ224の判定が肯定されてステップ226へ移行し、照射線量Wとして予め設定された値W2を設定した後にステップ228へ移行する。この場合、照射周期T=T1、照射時間t=t2、照射線量W=W2の曝射条件で、照射時間増大モードにより脈動臓器を含む撮影範囲の動画像撮影が行われることになる。なお、ステップ224の判定が肯定された場合にステップ226.228の処理を行うことは、請求項2に記載の撮影制御手段による処理の一例である。
【0086】
上記の照射線量W2は、照射時間増大モードが照射線量Wを低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さいという利点を有していることに基づき、照射時間増大モードで動画像の撮影を行った場合に、一定の画質の動画像が得られる照射線量の最小値又は当該最小値に近い値に設定されている。従って、患者(被写体)14の放射線累積被曝量が所定値に達した以降は、脈動臓器撮影時の撮影モードとして高レートモードが設定されていたとしても、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている間、照射線量Wが抑制された(W=W2)照射時間増大モードによって動画像の撮影が行われ、患者(被写体)14の放射線累積被曝量が過大となることを抑制しつつ、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減された動画像の撮影が行われることになる。
【0087】
また、放射線画像の撮影範囲の更なる移動に伴い、脈動臓器が放射線画像の撮影範囲から外れた場合には、ステップ212の脈動臓器探索処理の判定結果が「脈動臓器無し」となることでステップ214の判定が否定されるが、この場合は脈動臓器撮影フラグが1となっていることで、ステップ216の判定が肯定されてステップ218へ移行し、先に説明したステップ200と同様に、放射線の曝射条件として、通常の動画像撮影での曝射条件を設定する(照射周期T←T1、照射線量W←W1、照射時間t←t1)。また、ステップ220では脈動臓器撮影フラグを0に戻し、ステップ238へ移行する。
【0088】
これにより、通常の動画像撮影での曝射条件に従い、放射線の照射、動画像の撮影・表示を行う状態に戻り、患者(被写体)14の放射線累積被曝量が過大となることが抑制されることになる。そしてIVRが終了し、放射線画像撮影システム10による動画像の撮影終了が術者12から指示されると、ステップ242の判定が肯定されて放射線動画像撮影・表示処理を終了する。
【0089】
続いて、放射線動画像撮影・表示処理(図9)のステップ212で行われる脈動臓器探索処理の詳細について、図11を参照して説明する。なお、以下で説明する脈動臓器探索処理は請求項8に記載の判定手段による処理の一例である。図11に示す脈動臓器探索処理では、まずステップ250において、処理対象の放射線画像(放射線動画像撮影・表示処理(図9)の直前のステップ208でデータを取得した最新の放射線画像)を複数のブロックに分割する。次のステップ252では、前周期にデータを取得した放射線画像のデータをHDD134から読み出す。またステップ254では、先のステップ250で処理対象の放射線画像を分割することで得られた複数のブロックの中から、以降の処理(ステップ256,258の処理)を未実施のブロックを処理対象のブロックとして選択する。
【0090】
次のステップ256では、処理対象の放射線画像上での処理対象のブロックの位置を基準として、先のステップ252で読み出した前周期の放射線画像上に探索範囲を設定し、前周期の放射線画像上に設定した探索範囲内で参照ブロックを移動させながら、処理対象ブロックと参照ブロックとの誤差を演算することを繰り返すことで、処理対象のブロックとの誤差が最小となる参照ブロックを前周期の放射線画像上の探索範囲内で探索する。そして、処理対象のブロックとの誤差が最小の参照ブロックが前周期の放射線画像上の探索範囲内から抽出されると、次のステップ258において、処理対象のブロックと抽出された参照ブロックとのずれ量及びずれの方向を動きベクトルとして求め、求めた動きベクトルを処理対象のブロックに属性情報として付加する。
【0091】
次のステップ260では、処理対象の放射線画像を分割することで得られた全てのブロックに対してステップ256,258の処理を行ったか否か判定する。判定が否定された場合はステップ254に戻り、ステップ260の判定が肯定される迄、ステップ254〜ステップ260を繰り返す。これにより、例として図12(B)に示すように、処理対象の放射線画像を構成する全てのブロックについて、前周期の放射線画像からの動きベクトルが各々算出・設定されることになる。なお、図12(B)に示す例では、動きベクトルの大きさが所定値未満のブロックについては動きベクトルの図示を省略している。
【0092】
ところで、図12(B)は、例として図12(A)に示すように、脈動臓器である心臓及び肺の一部を含む撮影範囲を撮影することで得られた放射線画像に対し、複数のブロックへの分割及び動きベクトルの算出を行った結果の一例を示しているが、図12(B)に斜線で示すように、複数のブロックのうち脈動臓器に対応するブロックは、動きベクトルの大きさが何れも所定値以上でかつ互いに隣り合っている。これに基づき、次のステップ262では、動きベクトルの大きさが所定値以上でかつ隣り合う複数のブロックから成るブロック群(以下、このブロック群を「動き有りブロック群」という)が存在しているか否かを探索する。そしてステップ264では、ステップ262の探索によって動き有りブロック群が抽出されたか否か判定する。
【0093】
ステップ264の判定が否定された場合はステップ276へ移行し、フラグが0か否か判定する。なお、このフラグは放射線動画像撮影・表示処理(図9)の実行が開始される際に0に初期設定される。ステップ276の判定が肯定された場合は、処理対象の放射線画像中に脈動臓器に対応する画像部は存在しないと判断できるので、ステップ286へ移行し「脈動臓器無し」の判定結果を出力して脈動臓器探索処理を終了する。
【0094】
また、ステップ262の探索で動き有りブロック群が抽出された場合、抽出された動き有りブロック群は、脈動臓器に対応するブロック群の可能性があるものの、例えば患者(被写体)14が体を動かした等により一時的に抽出された可能性も否定できない。このため、動き有りブロック群が抽出された場合はステップ264の判定が肯定されてステップ266へ移行し、ステップ262の探索で抽出された動き有りブロック群の情報を、処理対象の放射線画像のフレームを識別するフレーム識別情報と対応付けてRAM132等に記憶させる。
【0095】
次のステップ268では、RAM132等に記憶されている動き有りブロック群の情報に基づいて、過去N周期以内の少なくとも1つの放射線画像において、今回抽出された動き有りブロック群に対応するブロック群も、過去の処理で動き有りブロック群として抽出されていたか否か判定する。なお、上記判定は、今回抽出された動き有りブロック群が脈動臓器に対応するブロック群か否かを判定するものであるが、判定の対象を「過去N周期以内の少なくとも1つの放射線画像」としているのは、心臓や肺等の脈動臓器は膨張期と収縮期の間にごく短時間ではあるものの静止している期間があるためである。
【0096】
ステップ268の判定が否定された場合、今回抽出された動き有りブロック群は患者(被写体)14が体を動かした等により一時的に抽出されたものである可能性が高いと判断できるので、前述のステップ276へ移行する。一方、ステップ268の判定が肯定された場合、今回抽出された動き有りブロック群は、過去N周期以内にも対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていることから、脈動臓器に対応するブロック群である可能性が非常に高いと判断できる。このため、ステップ270へ移行して「脈動臓器有り」の判定結果を出力する。そしてステップ272でフラグに1を設定し、ステップ274で変数mに0を代入して脈動臓器探索処理を終了する。
【0097】
また、上記のステップ272でフラグに一旦0が設定されると、ステップ264又はステップ268の判定が否定された場合に、ステップ276の判定が否定されてステップ278へ移行し、変数mを1だけインクリメントする。次のステップ280では変数mが閾値M以上となったか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ282へ移行し、「脈動臓器有り」の判定結果を出力して脈動臓器探索処理を終了する。
【0098】
これにより、ステップ264又はステップ268の判定が否定されることがM周期連続する迄の間は、「脈動臓器有り」の判定結果が出力されると共に、変数mが閾値Mに達する前にステップ268の判定が肯定された場合は変数mの値が0に戻ることになる。このように、本実施形態に係る脈動臓器探索処理では、出力する判定結果の切り替えにヒステリシス性を持たせているので、脈動臓器探索処理の判定結果が頻繁に切り替わることで、放射線の曝射条件が頻繁に切り替わることが防止される。また、ステップ264又はステップ268の判定が否定されることがM周期連続すると、ステップ280の判定が肯定されてステップ284でフラグを0に戻し、出力する判定結果をステップ286で「脈動臓器有り」に切り替えて脈動臓器探索処理を終了する。
【0099】
次に、電子カセッテ20に内蔵された放射線検出器の他の構成について、図13を参照して説明する。図13に示す放射線検出器300は、照射された放射線を光へ一旦変換した後に電荷へ変換する間接変換方式により放射線を検出する構成であり、放射線の到来方向に沿って光検出部(TFTアクティブマトリクス基板)306、シンチレータ302が順に配置されて構成されている。なお、放射線検出器300は請求項11に記載の放射線検出手段の一例であり、光検出部306は請求項11に記載の光検出手段、シンチレータ302は請求項11に記載の発光部の一例である。
【0100】
放射線検出器300のシンチレータ302は、患者(被写体)14の体を透過して筐体30の照射面32に照射され、筐体30の天板及び光検出器(TFT基板)306を透過して照射された放射線Xを吸収して光を放出する。シンチレータ302の発光波長域は可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、放射線検出器300によってモノクロの放射線画像の撮影を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。一般に、シンチレータに適用する蛍光体としては、例えばCsI(Tl)(タリウムを添加したヨウ化セシウム)や、CsI(Na)(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができるが、放射線としてX線を用いて撮影を行う場合はヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0101】
また、本実施形態では、例として図14に示すように、シンチレータ302を、放射線入射/光射出側(光検出部306側)に柱状結晶302Aから成る柱状結晶領域が形成され、シンチレータ302の放射線入射側と反対側に非柱状結晶302Bから成る非柱状結晶領域が形成された構成としており、シンチレータ302としてCsIを含む材料を用い、当該材料を蒸着基板304に蒸着させることで、柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成されたシンチレータ302を得ている。なお、蒸着基板304としては耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ302は、柱状結晶302Aの平均径が柱状結晶302Aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。このように、シンチレータ302は、より詳しくは請求項12に記載の発光部の一例である。
【0102】
上記のように、シンチレータ302を柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成された構成にすると共に、高効率の発光が得られる柱状結晶302Aから成る柱状結晶領域を光検出部306側に配置することで、シンチレータ302で発生された光は柱状結晶302A内を進行して光検出部306へ射出され、光検出部306側へ射出される光の拡散が抑制されることで、電子カセッテ20によって検出される放射線画像の鮮鋭度の低下が抑制される。また、シンチレータ302の深部(非柱状結晶領域)に到達した光も、非柱状結晶302Bによって光検出部306側へ反射されることで、光検出部306に入射される光の光量(シンチレータ302で発光された光の検出効率)が向上する。
【0103】
なお、シンチレータ302の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ302の蒸着基板304側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式を満たすことが好ましい。
【0104】
0.01≦(t2/t1)≦0.25
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)と、のシンチレータ302の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となり、シンチレータ302の発光効率、シンチレータ302で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ20の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0105】
なお、シンチレータ302は柱状結晶領域と非柱状結晶領域が連続的に形成された構成であるが、例えば上記の非柱状結晶領域に代えてアルミニウム等から成る光反射層が設けられ、柱状結晶領域のみが形成された構成であってもよいし、他の構成であってもよい。
【0106】
また、放射線検出器300の光検出部306は、シンチレータ302の光射出側から射出された光を検出するものであり、図13に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等から成る光電変換部308、TFT310及び蓄積容量312を備えた画素部314が、図7に示す放射線検出器36のTFTアクティブマトリクス基板94と同様に、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板316上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)で構成されている。
【0107】
なお、本実施形態では、シンチレータ302の放射線照射面側に光検出器(TFT基板)306が配置されているが、発光部(シンチレータ302)と光検出手段(光検出部306)とをこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する(請求項11記載の発明に相当する構成)。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出手段(光検出部306)を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出手段(光検出部306)を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出手段とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出手段(光検出部306)の受光量が増大することで、結果として放射線画像撮影装置(電子カセッテ)の感度が向上する。
【0108】
光電変換部308は、下部電極308Aと上部電極308Bとの間に、シンチレータ302から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜308Cが配置されて構成されている。なお、下部電極308Aは、シンチレータ302から放出された光を光電変換膜308Cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ302の発光波長の光に対する光透過率の高い導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極308AとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極308Aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0109】
また、光電変換膜308Cはシンチレータ302から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜308Cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜308Cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ302から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンから成る光電変換膜308Cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板316が合成樹脂製である場合、絶縁性基板316の耐熱性が不足する可能性がある。
【0110】
一方、光電変換膜308Cを有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜308Cによるシンチレータ302から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜308Cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料から成る光電変換膜308Cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、放射線検出器300では光電変換部308の光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成している。
【0111】
光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜308Cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように光検出部306が配置される表面読取方式(ISS)において、光検出部306を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0112】
光電変換膜308Cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ302から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ302の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ302の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ302から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ302の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0113】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ302の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜308Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0114】
放射線画像撮影装置に適用可能な光電変換膜308Cについて具体的に説明する。放射線画像撮影装置における電磁波吸収/光電変換部位は、電極308A,308Bと、該電極308A,308Bに挟まれた光電変換膜308Cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0115】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0116】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜308Cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光電変換膜308Cは、更にフラーレン又はカーボンナノチューブを含有していてもよい。
【0117】
また、光電変換部308は、少なくとも電極対308A,308Bと光電変換膜308Cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0118】
電子ブロッキング膜は、上部電極308Bと光電変換膜308Cとの間に設けることができ、上部電極308Bと下部電極308Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極308Bから光電変換膜308Cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜308Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜308Cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0119】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部308の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0120】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜308Cと下部電極308Aとの間に設けることができ、上部電極308Bと下部電極308Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極308Aから光電変換膜308Cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜308Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜308Cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0121】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部308の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0122】
なお、光電変換膜308Cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極308Aに移動し、電子が上部電極308Bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0123】
TFT310は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0124】
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0125】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0126】
TFT310の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、画像信号へのノイズの重畳を効果的に抑制することができる。
【0127】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT310のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT310における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT310の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0128】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜308Cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT310と、を組み合わせた構成であれば、患者(被写体)14の体の重みが荷重として加わることのある光検出部306の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。このため、放射線検出器300ではTFT310の活性層を有機半導体材料で形成している。
【0129】
また、絶縁性基板316は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT310の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部308の光電変換膜308Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板316としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板316には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0130】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板316を形成してもよい。
【0131】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて絶縁性基板316を薄型化できる。
【0132】
絶縁性基板316としてガラス基板を用いた場合、光検出器(TFT基板)306全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、放射線検出器300では、電子カセッテ20の薄型化も考慮し、絶縁性基板316として、光透過性を有する合成樹脂から成る薄型の基板を用いている。これにより、光検出器(TFT基板)306全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、光検出器(TFT基板)306に可撓性をもたせることができる。また、光検出器(TFT基板)306に可撓性をもたせることで、放射線検出部300の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ20の筐体30に衝撃が加わった場合にも放射線検出部300が破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板316をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板316による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により光検出部306を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0133】
なお、電子カセッテ20の絶縁性基板316として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ20の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料から成る基板を絶縁性基板316として用いるようにしてもよい。
【0134】
前述のように、放射線検出器300は、放射線の到来方向に沿って光検出部306、シンチレータ302が順に配置された表面読取方式(ISS)とし、かつ、シンチレータ302を、CsIを含む材料から成り光検出部306側に柱状結晶領域が形成された構成とすることで、シンチレータ302から光検出部306に入射される光の光量の増大及び拡散の抑制を実現しており、更に、光検出部306の光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成し、TFT310の活性層を有機半導体材料で形成し、絶縁性基板316として合成樹脂製の基板を用いることで、光検出部306を透過してシンチレータ302に照射される放射線の光検出部306における吸収を抑制しているので、放射線検出感度の向上及び撮影する放射線画像の高画質化を実現できる。
【0135】
そして、上記構成の放射線検出器300を内蔵した電子カセッテ20は放射線動画像の撮影に特に好適である。すなわち、放射線動画像の撮影は、患者(被写体)14の放射線累積被曝量の抑制が課題であり、画質に対する要求レベルは比較的低い。これに対し、上記構成の放射線検出器300は放射線検出感度が高く、かつ高画質な放射線画像を撮影できるので、放射線動画像の撮影に際して放射線の照射線量を大幅に低下させたとしても、撮影される放射線画像の画質が問題となるレベル迄低下することはなく、放射線の照射線量を大幅に低下させることで、患者(被写体)14の放射線累積被曝量を大幅に抑制することが可能となる。
【0136】
なお、CsIは、例えば温度変化1℃当り約0.3%程度の変化率で感度が変化するという特性を有している(図15(A)も参照)。このため、電子カセッテ20に内蔵する放射線検出器として、上記の放射線検出器300のようにCsIから成るシンチレータを含む構成の放射線検出器を用いた場合、温度上昇に伴って放射線検出感度の低下が生ずる。特に放射線動画像を撮影する際は温度変化が大きいために放射線検出感度の変化も大きくなり、これに伴い、撮影期間内の初期に撮影された画像と撮影期間内の終期に撮影された画像との濃度差が大きくなることで、放射線動画像の視認性が悪化する等の不都合が生ずる可能性もある。
【0137】
これを考慮すると、例えばシンチレータの温度を検出する温度センサを設け、温度センサによって検出された温度が予め設定された閾値以上になった場合には、撮影モードを照射時間増大モードに設定する等により、本発明に係る第1制御を行うように構成することが好ましい。本発明に係る第1制御は本発明に係る第2制御よりも放射線の断続照射の時間間隔が長く、電子カセッテ20に内蔵された電子回路からの発熱量が小さくなるので、シンチレータを構成するCsIの温度上昇を抑制することができ、CsIの温度上昇に伴って放射線検出感度が低下することを抑制することができる。なお、シンチレータの温度の検出は、シンチレータ自体の温度を直接検出することに限られるものではなく、例えば電子カセッテ20の筐体30内の温度を検出することで、シンチレータの温度を間接的に検出する構成を採用することも可能である。
【0138】
また、CsIは、放射線累積被曝量の増大に伴って感度が徐々に低下するという特性も有している(図15(B)も参照)。なお、放射線累積被曝量の増大に伴う感度の低下は一時的な現象であり、放射線を照射しない状態を数時間程度継続すれば回復するものの、電子カセッテ20に内蔵する放射線検出器として、上記の放射線検出器300のようにCsIから成るシンチレータを含む構成の放射線検出器を用いた場合、CsIの感度が大幅に低下した状態になってしまうと、放射線画像の撮影に支障が生ずる可能性もある。
【0139】
これを考慮すると、放射線累積被曝量を監視し、放射線累積被曝量が予め設定した閾値以上になった場合には、撮影モードを照射時間増大モードに設定する等により、本発明に係る第1制御を行うように構成することが好ましい。本発明に係る第1制御は本発明に係る第2制御よりも放射線被曝量を低減できるので、電子カセッテ20の使用可能時間を長時間化することができる。
【0140】
また、放射線検出器の更に別の構成を図16に示す。図13に示した放射線検出器300は、シンチレータ302から射出された光を単一の光検出部306で検出する構成であるが、図16に示す放射線検出器318は、光検出部306に加えて、シンチレータ302から射出された光を検出する光検出部320が、光検出部306を挟んでシンチレータ302の反対側に設けられている。光検出部320は、配線がパターニングされた配線層322、絶縁層324が順に形成され、その上層に、シンチレータ302から射出され光検出部306を透過した光を検出するセンサ部326が複数形成され、更に当該センサ部326の上層に保護層328が形成されて構成されている。なお、光検出部320の厚みは例えば0.05mm程度である。
【0141】
センサ部326は、上部電極330A及び下部電極330Bを備え、上部電極330Aと下部電極330Bとの間に、シンチレータ302からの光を吸収して電荷を発生する光電変換膜330Cが配置されて構成されている。センサ部326(光電変換膜330C)としては、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードを適用することも可能であるが、放射線検出器318では、光電変換部308の光電変換膜308Cと同様に、光電変換膜330Cを有機光電変換材料で構成している。これにより、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで光電変換膜330Cを形成させることが可能となり、絶縁性基板316として、光透過性を有する合成樹脂製で薄型の基板を用いることが可能となる。
【0142】
センサ部326による放射線量の検出結果は、電極330A,330Bと接続された図示しない信号処理部を介して読み出され、例えば電子カセッテ20への放射線の照射開始/終了タイミングの検知や、電子カセッテ20への放射線照射量の積算値の検知等に用いられる。なお、放射線画像の検出(撮影)は光検出部306によって行われるので、光検出部320のセンサ部326は、光検出部306の画素部314よりも配置ピッチが大きく(配置密度が低く)されており、単一のセンサ部326の受光領域は、光検出部306の画素部314の数個〜数百個分のサイズでよい。
【0143】
なお、上記では放射線動画像の撮影範囲内に脈動臓器が存在しているか否かに応じて、放射線照射時間t又は放射線照射周期Tを2段階に変化させる態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば放射線動画像中の脈動臓器に対応する画像部の面積率が増大するに従って、放射線照射時間tを連続的に長くするか、又は、放射線照射時間tが長くなるように、3段階以上の放射線照射時間tの値のうちの何れかの値へ切り替えてもよい。また、放射線照射周期Tについても、例えば放射線動画像中の脈動臓器に対応する画像部の面積率が増大するに従って、放射線照射周期Tを連続的に短くするか、又は、放射線照射周期Tが短くなるように、3段階以上の放射線照射周期Tの値のうちの何れかの値へ切り替えてもよい。
【0144】
また、上記では脈動臓器探索処理(図11)において、放射線の曝射条件(放射線照射周期T、放射線照射時間t及び放射線照射線量W)に拘わらず、一定の処理で脈動臓器の有無を判定する態様を説明したが、これに限定されるものではなく、放射線の曝射条件に応じて、例えば前周期の放射線画像に対して設定する探索範囲の広さ、動きベクトルの大きさに対する閾値、動き有りブロック群の判定対象とするブロックの数に対する閾値、ステップ268の判定における周期の数Nの値、及び、ステップ280の判定で変数mと比較する閾値Mの値の少なくとも1つを変更するようにしてもよい。また、図11に示した脈動臓器探索処理は一例であり、放射線動画像の撮影範囲内に脈動臓器が存在しているか否かを別の処理によって判定することも本発明の権利範囲に含まれる。
【0145】
また、上記ではコンソール24のディスプレイ136に動画像を表示させる態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子カセッテ20にディスプレイを設け、コンソール24のディスプレイ136に代えて電子カセッテ20にディスプレイに動画像を表示させるようにしてもよい。
【0146】
更に、上記では請求項6に記載の移動手段として、電子カセッテ20を移動させる第1移動装置50及び放射線照射装置18を移動させる第2移動装置78を例に説明したが、移動手段はベッド16の一部(例えば載置台16Aのみ)又は全体を移動させることで、患者(被写体)14を移動させる構成であってもよい。また、第1移動装置50及び第2移動装置78は、放射線照射装置18及び電子カセッテ20と患者(被写体)14とを載置台16Aの長手方向にのみ相対的に移動させる(1軸移動を行う)構成であるが、請求項6に記載の移動手段は上記に限られるものではなく、放射線照射装置18及び電子カセッテ20と患者(被写体)14とを載置台16Aの幅方向にも相対移動可能な(2軸移動を行う)構成であってもよい。
【0147】
また、上記ではIVRを実施する際の放射線動画像の撮影に本発明を適用した態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、医療現場におけるIVRの実施以外の場面での放射線動画像の撮影にも適用可能である。
【0148】
また、上記では請求項2,6,8に記載の被写体として人間(患者14)を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記の被写体は、人間以外の生物であっても非生物であってもよく、動きの速度が所定値以上の物体(この物体も臓器に限らない)が撮影範囲内に入る可能性の有る任意の被写体の放射線動画像の撮影に適用可能である。
【符号の説明】
【0149】
10 放射線画像撮影システム
18 放射線照射装置
20 電子カセッテ
24 コンソール
136 ディスプレイ
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線を断続照射すると共に放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出し、検出結果を動画像として表示させる放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、先端に様々な器具を取り付けたカテーテルを患者の体内に挿入し、モニタに表示される放射線動画像により患者の体内の状態をリアルタイムで観察しながら、カテーテルの先端を病変部にまで到達させ、カテーテルを体外で操作して治療を行うIVR(Interventional Radiology)が急速に普及してきているが、このIVRを始めとして、医療の現場で放射線動画像の撮影・表示を行う機会は増加している。
【0003】
放射線動画像の撮影に関し、特許文献1には、放射線画像中のエッジ部分にボケが生じることを防止するために、連続するフレーム間の被写体映像を比較してフレーム間における被写体の動きの大きさを検出し、検出した被写体の動きの大きさに応じてX線管の1フレーム当たりの曝射時間を減少させる技術が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、検査対象部位毎の撮影条件を記憶部に予め記憶しておき、指定された検査対象部位に応じた撮影条件を記憶部から読み出して撮影装置に設定し、設定した撮影条件で撮影装置による検査対象部位の動態撮影を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−58665号公報
【特許文献2】特開2009−50531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、放射線動画像の撮影・表示では、撮影している間、被写体に継続的に放射線が照射されるため、被写体の放射線被曝量が増大し易いという課題がある。一方、被写体の放射線被曝量を抑制するために、被写体への放射線照射周期を長くすることで、モニタに表示される放射線画像の更新時間間隔を長くしたとすると、例えばIVRを行う際の放射線動画像の撮影等のように、撮影中に撮影範囲が変化する撮影において、被写体の臓器のうち心臓や肺等のように動きの速い臓器が撮影範囲内に入っている間、動画像上での前記動きの速い臓器の動きが所謂コマ送りのような不連続な(滑らかさの乏しい)動きになることで、動画像の視認性が低下するという問題が生ずる。
【0007】
これに対して特許文献1に記載の技術は、被写体の動きが大きくなるに従って1フレーム当たりの曝射時間を減少させるものであり、曝射時間を減少させることに伴い、エッジ部分のボケは低減されるものの、動画像上での被写体の動きの不連続性については逆に悪化する。そして特許文献1に記載の技術は、被写体の放射線被曝量の低減について考慮されておらず、被写体の放射線被曝量を低減することと、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することを両立するための具体的な構成については何ら開示されていない。
【0008】
また特許文献2に記載の技術は、検査対象部位毎に予め記憶した撮影条件を用いて動画像の撮影を行うものであり、被写体の放射線被曝量の低減について考慮されておらず、被写体の放射線被曝量を低減することと、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することを両立するための具体的な構成について何ら開示されていない。
【0009】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減できる放射線画像撮影装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、放射線を断続的に照射する照射手段と、前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定する判定手段と、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在している場合に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行う撮影制御手段と、を含んで構成されている。
【0011】
請求項1記載の発明では、照射手段によって放射線が断続的に照射され、放射線検出手段により、照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線が検出され、放射線検出手段による放射線の検出結果が、表示制御手段により動画像として表示手段に表示される。また判定手段は、放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定し、撮影制御手段は、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行う。
【0012】
これにより、撮影制御手段が、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御を行ったとすると、放射線が照射されている期間における前記物体の動きの量が増大することで、動画像中のエッジ部分のボケは増大する可能性はあるものの、放射線が照射されていない期間が短くなり、当該期間における前記物体の動きの量が減少することで、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性が低減される。
【0013】
また、撮影制御手段が、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行ったとすると、放射線検出手段による放射線検出の周期(時間間隔)が短くなり、これに伴い、放射線検出の1周期における前記物体の動きの量が減少することで、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性が低減される。従って、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、撮影制御手段が上記第1制御又は第2制御を行うことで、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性を低減することができる。
【0014】
一方、請求項1記載の発明において、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合には、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間が第1制御よりも短くされるか、又は、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔が第2制御よりも長くされるので、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かに拘わらず第1制御又は第2制御を常に行う場合と比較して、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない期間における被写体の放射線被曝量が低減される。従って請求項1記載の発明によれば、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することができる。
【0015】
なお、請求項1記載の発明において、第1制御は、照射手段によって照射される放射線の線量を低下させることで、単位時間当りの被写体の放射線被曝量を低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さい、という利点を有している。これを考慮すると、請求項1記載の発明において、例えば請求項2に記載したように、被写体の放射線累積被曝量を演算する演算手段を設け、撮影制御手段を、演算手段によって演算された被写体の放射線累積被曝量が所定値を越えた場合に、第1制御を行うと共に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段によって照射される放射線の線量が低下するように制御するよう構成することが好ましい。これにより、照射手段によって照射される放射線の線量低下に伴う動画像の画質劣化を抑制しつつ、被写体の放射線累積被曝量も抑制することができる。
【0016】
また、第1制御及び第2制御は、共に、動画像上での動きの速い物体の動きの不連続性が低減された動画像が得られるものの、第1制御は、前述のように、照射手段によって照射される放射線の線量を低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さいという利点を有する一方、動画像中のエッジ部分のボケについては第2制御によって得られる動画像よりも大きいという欠点を有しており、第2制御は、動画像中のエッジ部分のボケが小さく、第1制御よりも高画質の動画像が得られるという利点を有している一方で、被写体の放射線被曝量が大きくなり易いという欠点を有している。
【0017】
上記のように、第1制御と第2制御が異なる特性を有していることを考慮すると、請求項1又は請求項2記載の発明において、例えば請求項3に記載したように、第1制御を行うか第2制御を行うかを選択するための選択手段を設け、撮影制御手段を、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、第1制御及び第2制御のうち選択手段を介して予め選択された制御を行うように構成することが好ましい。これにより、動画像の撮影目的や撮影部位、被写体の放射線累積被曝量等の諸条件に応じて、第1制御を行うか第2制御を行うかを任意に選択することが可能となる。
【0018】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、撮影制御手段は、例えば請求項4に記載したように、第1制御を行う場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、照射手段によって照射される放射線の線量が少なくなるように制御するよう構成してもよい。これにより、撮影制御手段によって第1制御が行われる場合、照射手段によって照射される放射線の線量低下に伴う動画像の画質劣化が抑制され、かつ、被写体の放射線被曝量も抑制されるので、第1制御を、第2制御よりも被写体の放射線被曝量が抑制される撮影モードとして用いることも可能となる。
【0019】
また、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、例えば請求項5に記載したように、放射線の線量を設定するための設定手段を設け、撮影制御手段を、設定手段を介して設定された放射線の線量に応じて、照射手段によって照射される放射線の線量を変化させるように構成してもよい。これにより、動画像の撮影目的や撮影部位、被写体の放射線累積被曝量等の諸条件に応じて、照射手段によって照射される放射線の線量を任意に設定することが可能となる。
【0020】
また、請求項1〜請求項5の何れかに記載の発明において、本発明に係る放射線画像撮影装置による放射線動画像の撮影・表示と並行して、被写体の体内に挿通部材を挿入して病変部の治療が行われる場合には、例えば請求項6に記載したように、照射手段及び放射線検出手段を被写体と相対的に移動させる移動手段を設け、撮影制御手段を、被写体の体内に挿入された挿通部材の先端部に相当する画像部が動画像中の所定領域内に位置するように、挿通部材の先端部の位置変化に応じて、移動手段により、照射手段及び放射線検出手段と被写体とを相対的に移動させるように構成することが好ましい。これにより、挿通部材の先端部の位置変化に応じて、照射手段及び放射線検出手段と被写体とを相対的に移動させる操作を術者(治療者)が行う必要が無くなり、術者の負担が軽減される。
【0021】
また、請求項1〜請求項6の何れかに記載の発明において、判定手段が放射線検出範囲内に存在しているか否かを判定する物体(動きの速度が所定値以上の物体)としては、例えば、被写体の臓器のうち動きの速さが所定値以上の臓器を適用することができ、放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体としての動きの速度が所定値以上の臓器が存在しているか否かを判定することは、例えば請求項7に記載したように、判定手段を、放射線検出手段による放射線の検出結果を表す単一フレームの画像を順に取得すると共に、連続する複数フレームの画像に基づいて、前記画像を複数のブロックに分割したときの個々のブロック毎に動きベクトルを演算し、演算した動きベクトルの大きさが各々所定値以上でかつ隣り合う複数個のブロックから成る動き有りブロック群が存在しているか否かを探索し、前記動き有りブロック群が抽出された場合には、過去所定数以内のフレームの画像からも対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていたか否かを判定し、前記対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていた場合には、今回抽出された前記動き有りブロック群を動きの速度が所定値以上の臓器に対応するブロック群と判定する処理を繰り返すように構成することによって実現することができる。
【0022】
請求項8記載の発明に係る放射線画像撮影装置は、放射線を断続的に照射する照射手段と、前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、被写体の臓器のうち動きの速度が所定値以上の臓器が前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に存在している場合に、前記動きの速度が所定値以上の臓器の前記動画像上での動きの不連続性が低下するように、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を変更する撮影制御手段と、を含んで構成されている。
【0023】
請求項8記載の発明では、請求項1記載の発明と同様に、照射手段によって放射線が断続的に照射され、放射線検出手段により、照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線が検出され、放射線検出手段による放射線の検出結果が、表示制御手段により動画像として表示手段に表示される。そして撮影制御手段は、被写体の臓器のうち動きの速度が所定値以上の臓器が放射線検出手段による放射線検出範囲内に存在している場合に、動きの速度が所定値以上の臓器の動画像上での動きの不連続性が低下するように、照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間、又は、照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を変更するので、請求項1記載の発明と同様に、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減することができる。
【0024】
また、請求項1〜請求項8の何れかに記載の発明において、放射線検出手段としては、例えば請求項9に記載したように、放射線変換層とスイッチング層を含んだ構成を適用することができる。なお、スイッチング層を構成する基板は放射線が透過する材料から構成されていてもよい。放射線検出手段が放射線変換層とスイッチング層を含む構成の場合、放射線変換層側から放射線が照射されるように放射線検出手段を配置して撮影を行うことが一般的であるが、上記のようにスイッチング層を構成する基板を放射線が透過する材料から構成すれば、スイッチング層側から放射線が照射されるように放射線検出手段を配置して撮影を行うことも可能となる。
【0025】
また、請求項1〜請求項9の何れかに記載の発明において、放射線検出手段としては、例えば請求項10に記載したように、放射線画像撮影装置に対して着脱自在な可搬型の放射線画像検出装置を適用することができる。
【0026】
また、請求項1〜請求項10の何れかに記載の発明において、放射線検出手段は、例えば請求項11に記載したように、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する光検出手段と、を備え、発光部が光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されていることが好ましい。この構成では、発光部及び光検出手段のうちの発光部側から放射線が入射される場合と比較して、発光部のうち光検出手段により近い部分が主発光領域となり、光検出手段による受光量が増大するので、放射線画像撮影装置における放射線の検出感度を向上させることができる。
【0027】
また、請求項11記載の発明において、例えば請求項12に記載したように、発光部はCsIを含む材料から成り、柱状結晶構造部が形成されていることが好ましい。これにより、発光部が放射線を吸収することで発生した光は、発光部に形成された柱状結晶構造部において、柱状結晶の間隙に案内されて光検出手段側へ射出されることで、光検出手段側へ射出される光の拡散が抑制されるので、放射線検出手段の光検出手段によって検出される画像の鮮鋭度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明は、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定し、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在している場合に、放射線検出範囲内に動きの速度が所定値以上の物体が存在していない場合よりも、放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行うようにしたので、被写体の放射線被曝量を抑制しつつ、放射線検出範囲内に動きの速い物体が存在している場合に、動画像上での前記物体の動きの不連続性を低減できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】放射線画像撮影システムが設置された手術室の様子を示す斜視図である。
【図2】電子カセッテの内部構成を一部破断して示す斜視図である。
【図3】放射線照射装置の要部構成を示す斜視図である。
【図4】載置台、支持部材及びその周辺の構成を示す断面図である。
【図5】載置台の内部構成を示す断面図である。
【図6】放射線照射装置の周辺の構成を示す断面図である。
【図7】放射線画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図8】放射線検出器の1画素に相当する部分の等価回路を示す回路図である。
【図9】放射線動画像撮影・表示処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】(A)は通常の撮影時、(B),(C)は脈動臓器撮影時の曝射条件等の一例を各々示す線図である。
【図11】脈動臓器探索処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】脈動臓器探索処理を説明するためのイメージ図である。
【図13】電子カセッテに内蔵された放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【図14】図13に示す放射線検出器におけるシンチレータの結晶構成の一例を模式的に示す概略図である。
【図15】放射線検出器のシンチレータとして使用可能なCsIの特性を概略的に示す線図である。
【図16】電子カセッテに内蔵された放射線検出器の構成の他の例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には本実施形態に係る放射線画像撮影システム10が示されている。放射線画像撮影システム10は、術者12や放射線技師が放射線画像の撮影を行うためのものであり、患者(被写体)14が横たわるためのベッド16と、予め設定された撮影条件に応じた放射線量の放射線Xを患者14へ照射すると共にベッド16の長手方向に沿って移動可能とされた放射線照射装置18と、患者14を透過した放射線Xを検出して放射線画像情報を生成・記憶する可搬型撮影装置(以下、「電子カセッテ」という)20と、ベッド16の幅方向一端部側に設けられ電子カセッテ20を支持しかつベッド16の長手方向に沿って移動可能とされた支持部材22と、ベッド16の患者14が載置される側で電子カセッテ20を片持ち支持する支持部材22と、放射線照射装置18、電子カセッテ20、第1移動装置50(後述)及び第2移動装置78(後述)の動作を制御するコンソール24と、を含んで構成されている。
【0031】
支持部材22に支持される電子カセッテ20は本発明に係る放射線検出手段(より詳しくは請求項9,10に記載の放射線検出手段)の一例であり、図2に示すように、放射線Xを透過させる材料から成る略矩形平板状の筐体30を備えている。電子カセッテ20は、手術室等で使用される際に血液やその他の雑菌が付着する可能性がある。このため、筐体30は高い防水性・密閉性を有する構造とされている。これにより、必要に応じて殺菌洗浄することで、同一の電子カセッテ20を繰り返し使用することが可能となる。
【0032】
筐体30の内部には、放射線Xが照射される筐体30の照射面32側から、放射線Xの散乱線を除去するグリッド34、放射線検出器36、及び、放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板38が順に配設されている。放射線検出器36は放射線Xが照射される略矩形状の照射面36Aを備え、患者14を透過して照射面36Aに照射された放射線Xの放射線量を検出し、当該放射線量に応じた放射線画像を表す放射線画像情報を出力する。なお、放射線検出器36の詳細は後述する。
【0033】
また、筐体30内の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能な二次電池を収容するケース40が配置されている。放射線検出器36及び電子回路は、ケース40に収容された二次電池から供給される電力によって作動する。ここで、ケース40内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース40の照射面32側には鉛板等の放射線を遮蔽する遮蔽部材を配設しておくことが望ましい。また、電子カセッテ20の筐体30の側面のうちケース40に対応する位置には、通信ケーブルを接続するための接続端子20Aが設けられている。
【0034】
放射線照射装置18は本発明に係る照射手段の一例であり、図3に示すように、放射線Xを射出する放射線源42と、放射線源42の放射線X射出側に配置され、4枚のスリット板44A,44B,44C,44Dを含んで構成された絞り部44と、を備えている。各スリット板44A〜44Dは、鉛やタングステン等の放射線Xを遮蔽する材料から成り、先端部から後端部に亘って厚さが徐々に厚くされた平面視矩形状の板状に整形されて構成されており、絞り部44は、スリット板44Aとスリット板44Bとの先端部同士が対向し、かつスリット板44Cとスリット板44Dとの先端部同士が対向すると共に、各スリット板44A〜44Dの先端部により平面視矩形状の開口領域51が形成されるように各スリット板44A〜44Dが配置されて構成されている。
【0035】
スリット板44A及びスリット板44Bは図3x方向に移動可能とされ、スリット板44C及びスリット板44Dは図3x方向と直交する図3y方向に移動可能とされている。なお、各スリット板44A〜44Dの可動範囲は、対向配置されているスリット板同士の先端部が接触する位置(開口領域51が全閉となる全閉状態)から、開口領域51が平面視矩形状を保ちかつ最大面積となる位置(全開状態)迄の範囲とされている。また、スリット板44Aは、モータ160(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動し、スリット板44Bはモータ162(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動し、スリット板44Cはモータ164(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動し、スリット板44Dはモータ166(図7参照)の駆動力が図示しない伝達手段を介して伝達されることで移動する。
【0036】
また放射線照射装置18は、鉛やタングステン等の放射線Xを遮蔽する材料から成り、放射線源42及び絞り部44を収容する収容箱53(図1参照)を備えている。図1に示すように、収容箱51には、放射線源42から射出され絞り部44を通過した放射線Xを電子カセッテ20へ向けて照射するための開口部53Aが形成されている。
【0037】
ここで、開口部52Aは、絞り部44の各スリット板44A〜44Dが全開状態のときに開口領域51を通過する放射線Xの直接線と、各スリット板44A〜44Dの厚さに応じた透過線量でスリット板44A〜44Dを透過した放射線X(以下「透過線」という)との双方が射出できる大きさとされている。また、本実施形態に係る放射線画像撮影システム10では、絞り部44の各スリット板44A〜44Dが全開状態の場合に、電子カセッテ20における照射面32の全面に放射線Xが照射されるように、電子カセッテ20及び放射線照射装置18が予め位置決めされている。
【0038】
一方、図1に示すベッド16は、放射線Xを透過させる材料から成り患者14が横たわるための略矩形平板状の載置台16Aと、載置台16Aの四隅に設けられ載置台16Aを支持する脚部16Bと、から構成されている。載置台16Aの上面のうち載置台16Aの幅方向一端部側には、載置台16Aの長手方向に沿って長溝48が形成されている。図4に示すように、載置台16Aの内部のうち長溝48に対応する位置には、長溝48を介して外部と連通する収容室52が形成されており、この収容室52内には、支持部材22の一部(後述する基部54)と、支持部材22を長溝48に沿って移動させる第1移動装置50が収容されている。
【0039】
支持部材22は、収容室52内に収容された基部54、当該基部54の上面に取付けられ長溝48を介して載置台16A上へ突出しているフレーム56、及び、基端部がL字状に屈曲されたフレーム58を備えている。フレーム56の突出部分のうちの先端部付近には、突出方向に沿って互いに異なる位置に複数の孔60が各々穿設されており、フレーム58は、複数の孔60の何れか1つに挿通されたボルト62がフレーム58の基端部にねじ込まれることで、フレーム56に締結固定されている。また、フレーム58の先端部には電子カセッテ20の筐体30がボルトによって締結固定されている。従って、電子カセッテ20の高さ位置は、ボルト62を挿通する孔60を変更することで調整可能とされている。
【0040】
支持部材22の基部54には、載置台16Aの幅方向へ突出する一対のフランジ54Aが設けられており、収容室52内の両側壁には一対の長溝52Aが形成されている。一対の長溝52Aは載置台16Aの長手方向に沿って延設されており、一対のフランジ54Aが嵌め込まれている。これにより、支持部材22(及び電子カセッテ20)は、フランジ54Aが長溝52Aの内壁面と接触することで、図1,4に示す姿勢を維持したまま、載置台16Aの長手方向に沿って摺動移動可能とされている。
【0041】
また、収容室52内のうち基部54の下方には第1移動装置50が配設されている。第1移動装置50は、基部54の下面54Bに固定されたモータ66と、同じく基部54の下面54Bに固定されコンソール24からの指示に従いモータ66を駆動する駆動装置68と、モータ66の駆動力を伝達するギアユニット64と、収容室52の底面に配置され載置台16Aの長手方向に沿って延設されたラックギア69と、から構成されている。図5にも示すように、ギアユニット64は、モータ66の回転軸に取付けられた駆動ギア64Aと、駆動ギア64A及びラックギア69と噛合するピニオンギア64Bと、を備えている。これにより、駆動装置68によってモータ66が駆動されると、支持部材22(及び電子カセッテ20)は、モータ66の回転軸の回転方向に応じて図1の矢印A方向又は矢印B方向へ摺動移動される。
【0042】
また、載置台16Aの下方には、直方体状で載置台16Aの長手方向に沿って延設された収容体74と、載置台16A上の患者14へ放射線Xが照射される向きで支持部材70に支持された放射線照射装置18と、が配置されている。収容体74の上面には、載置台16Aの長手方向に沿って長溝76が形成されている。図6に示すように、収容体74の内部には長溝76を介して外部と連通する収容室80が形成されている。支持部材70は、収容室80内に収容された基部72と、当該基部72の上面に取付けられ長溝76を介して載置台16A側へ突出するフレーム73を備えており、フレーム73の先端には放射線照射装置18が固定されている。なお収容体74は、放射線照射装置18からの放射線Xの照射範囲のうち載置台16Aの幅方向に沿った中心位置が、長手方向に沿って、支持部材22に支持されている電子カセッテ20のうち載置台16Aの幅方向に沿った中心位置とほぼ一致するように、載置台16Aの幅方向に沿った位置が調整されている。
【0043】
支持部材70の基部72には、載置台16Aの幅方向へ突出する一対のフランジ72Aが設けられており、収容室80内の両側壁には一対の長溝80Aが形成されている。一対の長溝80Aは載置台16Aの長手方向に沿って延設されており、一対のフランジ72Aが嵌め込まれている。これにより、支持部材70(及び放射線照射装置18)は、フランジ72Aが長溝80Aの内壁面と接触することで、図1,6に示す姿勢を維持したまま、載置台16Aの長手方向に沿って摺動移動可能とされている。
【0044】
また、収容室80内のうち基部72の下方には第2移動装置78が配設されている。第1移動装置78は、基部72の下面72Bに固定されたモータ84と、同じく基部72の下面72Bに固定されコンソール24からの指示に従いモータ84を駆動する駆動装置86と、モータ84の駆動力を伝達するギアユニット82と、収容室80の底面に配置され載置台16Aの長手方向に沿って延設されたラックギア85と、から構成されている。ギアユニット82は、モータ84の回転軸に取付けられた駆動ギア82Aと、駆動ギア82A及びラックギア85と噛合するピニオンギア82Bと、を備えている。これにより、駆動装置86によってモータ84が駆動されると、支持部材70(及び放射線照射装置18)は、モータ84の回転軸の回転方向に応じて図1の矢印A方向又は矢印B方向へ摺動移動される。
【0045】
次に図7を参照し、放射線画像撮影システム10の電気系の構成を説明する。放射線照射装置18にはコンソール24と通信を行うための接続端子18Aが設けられている。またコンソール24には、放射線照射装置18と通信を行うための接続端子24A、電子カセッテ20と通信を行うための接続端子24B、第1移動装置50と無線通信を行うためのアンテナ24C及び第2移動装置78と無線通信を行うためのアンテナ24Dが設けられている。
【0046】
放射線照射装置18は、一端が接続端子18Aに接続された通信ケーブル90の他端が接続端子24Aに接続されていることで、コンソール24と接続されている。電子カセッテ20は、放射線画像の撮影時に、接続端子20Aに通信ケーブル92の一端が接続され、当該通信ケーブル92の他端が接続端子24Bに接続されることでコンソール24と接続される。なお、本実施形態では、電子カセッテ20とコンソール24との間のデータ転送の高速化を図るために、通信ケーブル92として光通信ケーブルを用いており、電子カセッテ20とコンソール24との間で光通信によるデータ転送が行われる。
【0047】
電子カセッテ20に内蔵された放射線検出器36は、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板94上に、放射線Xを吸収して電荷に変換する光電変換層が積層されて構成されている。光電変換層は例えばセレンを主成分(例えば含有率50%以上)とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)から成り、放射線Xが照射されると、照射された放射線量に応じた電荷量の電荷(電子−正孔の対)を内部で発生することで、照射された放射線Xを電荷へ変換する。なお、放射線検出器36は、アモルファスセレンのような放射線Xを直接的に電荷に変換する放射線−電荷変換材料の代わりに、蛍光体材料と光電変換素子(フォトダイオード)を用いて間接的に電荷に変換する構成であってもよい。蛍光体材料としては、ガドリニウム硫酸化物(GOS)やヨウ化セシウム(CsI)が知られている。この場合、蛍光体材料によって放射線−光変換を行い、光電変換素子のフォトダイオードによって光−電荷変換が行われる。
【0048】
また、TFTアクティブマトリクス基板94上には、光電変換層で発生された電荷を蓄積する蓄積容量96と、蓄積容量96に蓄積された電荷を読み出すためのTFT98とを備えた画素部100(図7では個々の画素部100に対応する光電変換層を光電変換部102として模式的に示している)がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ20への放射線Xの照射に伴って光電変換層で発生された電荷は、個々の画素部100の蓄積容量96に蓄積される。これにより、電子カセッテ20に照射された放射線Xに担持されていた放射線画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器36に保持される。
【0049】
また、TFTアクティブマトリクス基板94には、一定方向(行方向)に延設され、個々の画素部100のTFT98をオンオフさせるための複数本のゲート配線104と、ゲート配線104と直交する方向(列方向)に延設され、オンされたTFT98を介して蓄積容量96から蓄積電荷を読み出すための複数本のデータ配線106が設けられている。個々のゲート配線104はゲート線ドライバ108に接続されており、個々のデータ配線106は信号処理部110に接続されている。個々の画素部100の蓄積容量96に電荷が蓄積されると、個々の画素部100のTFT98は、ゲート線ドライバ108からゲート配線104を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT98がオンされた画素部100の蓄積容量96に蓄積されている電荷は、電荷信号としてデータ配線106を伝送されて信号処理部110に入力される。従って、個々の画素部100の蓄積容量96に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0050】
図8に示すように、TFT98のソースはデータ配線106に接続され、データ配線106は信号処理部110に接続されている。また、TFT98のドレインは蓄積容量96及び光電変換部102に接続され、TFT98のゲートはゲート配線104に接続されている。信号処理部110は、個々のデータ配線106毎にサンプルホールド回路112を備えている。個々のデータ配線106を伝送された電荷信号はサンプルホールド回路112に保持される。サンプルホールド回路112はオペアンプ112Aとコンデンサ112Bを含んで構成され、電荷信号をアナログ電圧に変換する。また、サンプルホールド回路112にはコンデンサ112Bの両電極をショートさせることで、コンデンサ112Bに蓄積された電荷を放電させるリセット回路として作用するスイッチ112Cが設けられている。
【0051】
サンプルホールド回路112の出力側にはマルチプレクサ114、A/D(アナログ/デジタル)変換器116が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電荷信号はアナログ電圧に変換されてマルチプレクサ114に順に(シリアルに)入力され、A/D変換器116によってデジタルの放射線画像情報へ変換される。
【0052】
図7に示すように、信号処理部110にはラインメモリ118が接続されており、信号処理部110のA/D変換器116から出力された放射線画像情報はラインメモリ118に順に記憶される。ラインメモリ118は放射線画像を表す放射線画像情報を所定ライン分記憶可能な記憶容量を有しており、1ラインずつ電荷の読み出しが行われる毎に、読み出された1ライン分の放射線画像情報がラインメモリ118に順次記憶される。
【0053】
ラインメモリ118は電子カセッテ20全体の動作を制御するカセッテ制御部120と接続されている。カセッテ制御部120はマイクロコンピュータから成り、光通信制御部122が接続されている。光通信制御部122は接続端子20Aに接続されており、接続端子20Aを介して接続された外部機器(例えばコンソール24)との間での各種情報の伝送を制御する。従って、カセッテ制御部120は、光通信制御部122を介して外部機器との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0054】
また、電子カセッテ20はカセッテ制御部120及び電源部126を備えており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ108、信号処理部110、ラインメモリ118、光通信制御部122やカセッテ制御部120として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部126から供給された電力によって作動する。電源部126は、電子カセッテ20の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路や素子へ電力を供給する。
【0055】
一方、コンソール24は、例えばサーバ・コンピュータ等から成り、操作メニューや撮影された放射線画像等を表示するためのディスプレイ136と、複数のキーを含んで構成され各種の情報や操作指示が入力される操作パネル140と、を備えている。
【0056】
またコンソール24には、装置全体の動作を司るCPU128、制御プログラム等が予め記憶されたROM130、各種データを一時的に記憶するRAM132、各種データを記憶すると共に後述する放射線動画像撮影・表示処理を行うための放射線動画像撮影・表示プログラムを含む各種のアプリケーション・プログラムがイントールされたHDD(Hard Disk Drive)134、ディスプレイ136への各種情報の表示を制御するディスプレイドライバ138、操作パネル140に対する操作状態を検出する操作入力検出部142、接続端子24Aに接続され接続端子24A及び通信ケーブル90を介して放射線照射装置18との間で曝射条件や放射線照射装置18の状態情報等の各種情報の送受信を行う通信インタフェース(I/F)部144、接続端子24Bに接続され接続端子24B及び通信ケーブル92を介して電子カセッテ20との間で画像情報等の各種情報の送受信を行う光通信制御部146、アンテナ24Cに接続され第1移動装置50との間で無線通信を行う無線通信制御部148、及び、アンテナ24Dに接続され第2移動装置78との間で無線通信を行う無線通信制御部150が設けられており、これらはシステムバスを介して相互に接続されている。
【0057】
また放射線照射装置18は、放射線照射装置18全体の動作を制御する照射装置制御部156を備えている。照射装置制御部156はマイクロコンピュータから成り、通信I/F部154が接続されている。通信I/F部154は接続端子18Aに接続されており、接続端子18A及び通信ケーブル90を介して接続されたコンソール24との間での各種情報の伝送を制御する。従って、照射装置制御部156は、通信I/F部154を介してコンソール24との間での各種情報の送受信が可能とされている。また、照射装置制御部156には放射線源42が接続されており、照射装置制御部156は、通信I/F部154を介してコンソール24から受信した曝射条件に基づいて放射線源42を制御する。
【0058】
また、放射線照射装置18は、スリット板44Aを移動させるための駆動力を発生するモータ160、スリット板44Bを移動させるための駆動力を発生するモータ162、スリット板44Cを移動させるための駆動力を発生するモータ164、及び、スリット板44Dを移動させるための駆動力を発生するモータ166を各々備えており、モータ160の駆動制御を行うモータドライバ168、モータ162の駆動制御を行うモータドライバ170、モータ164の駆動制御を行うモータドライバ172、及び、モータ166の駆動制御を行うモータドライバ174も各々備えている。
【0059】
モータ160はモータドライバ168を介して照射装置制御部156に接続され、モータ162はモータドライバ170を介して照射装置制御部156に接続され、モータ164はモータドライバ172を介して照射装置制御部156に接続され、モータ166はモータドライバ174を介して照射装置制御部156に接続されている。従って、モータ160,162,164,166の駆動は、コンソール24からの指示に応じて、照射装置制御部156によって制御される。
【0060】
また、第1移動装置50は、モータ66及び駆動装置68の他に、コンソール24と無線通信を行うためのアンテナ50Aを備えている。駆動装置68は、第1移動装置50全体の動作を制御するコントローラ68Aと、モータ66の駆動を制御するモータドライバ68Bと、アンテナ50Aに接続されアンテナ50Aを介してコンソール24との間で無線通信を行う無線通信制御部68Cと、コントローラ68A、モータドライバ68B、無線通信制御部68C及びモータ66に電力を供給する電源部68Dと、を備えている。
【0061】
コントローラ68Aはマイクロコンピュータから成り、モータドライバ68B及び無線通信制御部68Cが接続されている。コントローラ68Aは、コンソール24からの指示に従い、モータドライバ68Bを介してモータ66の駆動を制御すると共に、モータ66の駆動状態を把握し、当該駆動状態を示す情報を無線通信制御部68Cを介してコンソール24に送信する。
【0062】
また、第2移動装置78は、モータ84及び駆動装置86の他に、コンソール24と無線通信を行うためのアンテナ78Aを備えている。駆動装置86は、第2移動装置78全体の動作を制御するコントローラ86Aと、モータ84の駆動を制御するモータドライバ86Bと、アンテナ78Aに接続されアンテナ78Aを介してコンソール24との間で無線通信を行う無線通信制御部86Cと、コントローラ86A、モータドライバ86B、無線通信制御部86C及びモータ84に電力を供給する電源部86Dと、を備えている。
【0063】
コントローラ86Aはマイクロコンピュータから成り、モータドライバ86B及び無線通信制御部86Cが接続されている。コントローラ86Aは、コンソール24からの指示に従い、モータドライバ86Bを介してモータ84の駆動を制御すると共に、モータ84の駆動状態を把握し、当該駆動状態を示す情報を無線通信制御部86Cを介してコンソール24に送信する。
【0064】
次に本実施形態の作用として、本実施形態に係る放射線画像撮影システム10を利用しながら、ベッド16に横たわっている患者(被写体)14の血管にカテーテルを挿入するIVRを実施する場合に、術者12からの指示を契機としてコンソール24で行われる放射線動画像撮影・表示処理について、図9を参照して説明する。なお、この放射線動画像撮影・表示処理は、HDD134にインストールされている放射線動画像撮影・表示プログラムがCPU128によって実行されることで実現される。また、放射線動画像撮影・表示処理の実行が開始される際には、患者(被写体)14の体のうちカテーテル(詳しくはカテーテルを先導するガイドワイヤ:請求項6に記載の挿通部材の一例)の挿入口やその周辺が撮影範囲内に入るように、患者(被写体)14の体に対する放射線照射装置18及び電子カセッテ20の相対位置が術者12によって予め調整される。
【0065】
放射線動画像撮影・表示処理では、まずステップ200において、IVR実施中に放射線画像撮影システム10が患者(被写体)14の動画像を撮影するための、放射線照射装置18による放射線の曝射条件として、通常の動画像撮影での曝射条件として予め定められた条件を設定する。患者(被写体)14の動画像を撮影する場合、放射線照射装置18は、図10に示すように患者(被写体)14に対して断続的に放射線を照射する。このため、動画像撮影における曝射条件には放射線照射周期T、放射線照射線量W及び放射線照射時間tの各項目が含まれており、ステップ200では、上記各項目について通常の動画像撮影用として予め定められた値を各々設定する(照射周期T←T1、照射線量W←W1、照射時間t←t1:図10(A)も参照)。
【0066】
なお、本実施形態において、通常の動画像撮影での曝射条件は、撮影される動画像の画質よりも患者(被写体)14の放射線被曝量の低減が優先されるように各項目の値が定められており、具体的には、後述する照射時間増大モードでの動画像撮影と比較して照射時間tが短くされ、後述する高レートモードでの動画像撮影と比較して、照射周期Tが長くされている。
【0067】
ステップ202では脈動臓器撮影フラグに0を設定し、次のステップ204では放射線の曝射条件として放射線照射周期T、放射線照射線量W及び放射線照射時間tの現在の設定値(この場合はステップ200で設定した値)を放射線照射装置18へ通知し、通知した曝射条件での放射線射出(照射)を指示する。これにより、放射線照射装置18では、放射線源42による放射線の曝射が、コンソール24から通知された曝射条件に従い照射装置制御部156によって制御され、放射線源42からは、例として図10(A)に示すように、照射周期T1で、照射線量W1の放射線が照射時間t1だけ射出され、放射線源42から射出され絞り部44を透過した放射線が患者(被写体)14に照射される。
【0068】
次のステップ206では放射線照射1周期内の放射線の照射が終了したか否か判定し、判定が肯定される迄ステップ206を繰り返す。ステップ206の判定が肯定されるとステップ208へ移行し、電子カセッテ20に対してTFTアクティブマトリクス基板94上の個々の画素部100の蓄積容量96に蓄積された電荷の読み出しを指示し、この電荷読み出しによって得られた放射線画像のデータ(放射線動画像の1フレームに相当する画像のデータ)を電子カセッテ20から受信することで取得し、取得したデータをHDD134に記憶させると共に、当該データが表す放射線動画像の1フレームに相当する画像をディスプレイ136に表示させる。なお、このステップ208は表示制御手段に相当する処理の一例である。
【0069】
ステップ210では、ステップ208で電子カセッテ20から取得したデータが表す放射線画像(放射線動画像の1フレームに相当する画像)に基づき、当該画像上におけるカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置を検出する。カテーテルのガイドワイヤは放射線の吸収率が人体の各部と大きく相違しているので、放射線画像上において、カテーテルのガイドワイヤに相当する画像部は、他の画像部と明確に濃度が相違している。従って、放射線画像上におけるカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置は、例えばカテーテルのガイドワイヤに相当する画像部とその他の画像部を弁別可能な閾値により放射線画像を二値化し、二値化後の放射線画像上でカテーテルのガイドワイヤに相当する画像部を細線化し、細線化によって得られた曲線の端部の位置をガイドワイヤの先端部の位置と認識する等の画像処理を行うことで検出することができる。
【0070】
次のステップ212では脈動臓器探索処理を行う。この脈動臓器探索処理は、ステップ208でデータを取得した放射線画像の中に、患者(被写体)14の臓器のうち動きの速さが所定値以上の脈動臓器(例えば心臓や肺等)に相当する画像部が存在しているか否かを探索・判定し、判定結果として「脈動臓器有り」又は「脈動臓器無し」を出力する処理であり、詳細は後述する。なお、ステップ212は本発明に係る判定手段の一例である。次のステップ214では、ステップ212の脈動臓器探索処理の判定結果が「脈動臓器有り」であったか否か判定する。判定が否定された場合はステップ216へ移行し、脈動臓器撮影フラグが1か否か判定する。
【0071】
この判定が否定された場合はステップ238へ移行し、患者(被写体)14の体のうち放射線画像撮影システム10が撮影する範囲の移動が必要か否か判定する。この判定は、例えば先のステップ210で検出したカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置が、放射線画像上の所定範囲(例えば放射線画像の中心から所定距離以内の範囲、或いは放射線画像のうち外縁から所定距離以内の範囲を除外して残った範囲)から逸脱しているか否かを判断することで行うことができる。
【0072】
この判定が否定された場合はステップ242へ移行するが、ステップ238の判定が肯定された場合はステップ240へ移行し、ステップ210で位置を検出したカテーテルのガイドワイヤの先端部を、放射線画像上の所定範囲内に位置させるための放射線照射装置18及び電子カセッテ20の移動方向及び移動量を演算し、演算した移動方向及び移動量を第1移動装置50及び第2移動装置78へ通知することで、放射線照射装置18及び電子カセッテ20を演算した移動方向へ演算した移動量だけ移動させる。これにより、IVRの進行に伴いカテーテルのガイドワイヤの先端部の位置が患者(被写体)14の血管内を移動していくのに追随して、患者(被写体)14の体のうち放射線画像撮影システム10が撮影する範囲が移動していくことになる。なお、上述したステップ238,240は請求項6に記載の撮影制御手段による処理の一例である。
【0073】
次のステップ242では、IVRの終了に伴い放射線画像撮影システム10による動画像の撮影終了が術者12から指示されたか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ204に戻り、ステップ204〜ステップ216、ステップ238〜ステップ242を繰り返す。これにより、通常の動画像撮影の曝射条件での放射線照射装置18による患者(被写体)14への放射線の照射、電子カセッテ20による放射線の検出、及び、電子カセッテ20からの放射線画像データの取得が繰り返され、通常の動画像撮影の曝射条件で撮影された放射線動画像がディスプレイ136に表示される。このように、放射線動画像中に脈動臓器に相当する画像部が存在していない間は、通常の動画像撮影での曝射条件(照射時間tが短くかつ照射周期Tが長い曝射条件)に従って患者(被写体)14へ放射線が照射され、動画像の撮影・表示が行われるので、患者(被写体)14の放射線被曝量は低く抑制される。
【0074】
ところで、IVRが進行し、患者(被写体)14の体のうち放射線画像撮影システム10による放射線画像の撮影範囲が移動していくと、患者(被写体)14の脈動臓器が放射線画像撮影システム10による放射線画像の撮影範囲内に入ることがあるが、この場合、ディスプレイ136に表示する放射線動画像上での脈動臓器の動きが所謂コマ送りのような不連続な(滑らかさの乏しい)動きになることで、放射線動画像の視認性が低下するという問題が生ずる。これに対し、本実施形態に係る放射線動画像撮影・表示処理(図9)では、脈動臓器が放射線画像の撮影範囲内に入ると、ステップ212の脈動臓器探索処理の判定結果が「脈動臓器有り」となることで、ステップ214の判定が肯定されてステップ222へ移行し、ステップ222以降で放射線照射装置18による放射線の曝射条件を脈動臓器撮影用の曝射条件に切り替える処理が行われる。
【0075】
すなわち、まずステップ222では、放射線動画像撮影・表示処理を開始してからの患者(被写体)14の放射線累積被曝量を演算する。放射線照射1周期当りの放射線被曝量は、その周期での照射線量Wと照射時間tから算出できるので、放射線動画像撮影・表示処理を開始してからの患者(被写体)14の放射線累積被曝量は、放射線照射の各周期での放射線被曝量を各々算出し、それらを全て加算することで求めることができる。また、放射線累積被曝量を一旦演算した後は、以後の各周期での放射線被曝量を順次加算していくことで、放射線動画像撮影・表示処理を行っている途中の各時点での放射線累積被曝量を求めることができる。なお、ステップ222は請求項2に記載の演算手段の一例である。
【0076】
ところで、本実施形態では、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている場合(脈動臓器撮影時)の撮影モードとして、放射線の曝射条件が互いに異なる2種類の撮影モード(照射時間増大モードと高レートモード)が設けられている。照射時間増大モードは、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されるように、通常の動画像撮影での曝射条件よりも照射時間tが長くされた曝射条件で動画像撮影を行うモードであり、本発明に係る第1制御の一例である。また高レートモードは、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されるように、通常の動画像撮影での曝射条件よりも照射周期Tが短くされた曝射条件で動画像撮影を行うモードであり、本発明に係る第2制御の一例である。
【0077】
照射時間増大モード及び高レートモードは、共に、動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減された動画像が得られるものの、照射時間増大モードは、照射線量Wを低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さいという利点を有する一方、動画像中のエッジ部分のボケについては高レートモードによって得られる動画像よりも大きいという欠点を有しており、高レートモードは、動画像中のエッジ部分のボケが小さく、照射時間増大モードよりも高画質の動画像が得られるという利点を有している一方で、患者(被写体)14の放射線被曝量が大きくなり易いという欠点を有している。
【0078】
このため、本実施形態では、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている場合(脈動臓器撮影時)の撮影モードとして、照射時間増大モード及び高レートモードの何れを適用するかを術者12が選択可能とされていると共に、脈動臓器撮影時の照射線量Wについても術者12が設定可能とされており、術者12は、動画像の撮影目的や撮影部位(に応じた脈動臓器撮影時の動画像に対する要求画質)、患者(被写体)14の放射線被曝量等の諸条件を勘案し、脈動臓器撮影時の撮影モードとして照射時間増大モード及び高レートモードの何れかを操作パネル140を介して予め選択すると共に、脈動臓器撮影時の照射線量Wを操作パネル140を介して予め設定する。上記操作が行われる場合の操作パネル140は、請求項3に記載の選択手段及び請求項5に記載の設定手段に対応している。なお、脈動臓器撮影時の撮影モード及び照射線量Wは放射線動画像撮影・表示処理の途中で変更することも可能である。
【0079】
次のステップ224以降の処理は本発明に係る撮影制御手段による処理の一例であり、まずステップ224では、ステップ222で演算した放射線累積被曝量が所定値以上か否か判定する。判定が否定された場合はステップ230へ移行し、照射線量Wとして予め設定された値(術者12によって照射線量Wが予め設定されていた場合はその値を、術者12による設定が無ければデフォルトとして予め設定されていた値)を設定する。なお、ステップ230は請求項4に記載の撮影制御手段による処理の一例である。次のステップ232では、脈動臓器撮影時の撮影モードとして設定されているモードが照射時間増大モード及び高レートモードの何れであるかを判定し、判定結果に応じて分岐する。なお、ステップ232は請求項3に記載の撮影制御手段による処理の一例である。
【0080】
脈動臓器撮影時の撮影モードとして照射時間増大モードが設定されていた場合は、ステップ232からステップ228へ移行し、照射周期T及び照射時間tについて、脈動臓器撮影時の照射時間増大モードとして予め定められた値を各々設定する(照射周期T←T1、照射時間t←t2:図10(B)も参照)。そして、次のステップ236で脈動臓器撮影フラグに1を設定し、ステップ238へ移行する。前述のように、照射時間増大モードの曝射条件は、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射時間tが長くされており(t2>t1)、これにより、図10(B)を図10(A)と比較しても明らかなように、患者(被写体)14に放射線が照射されない期間(放射線画像として画像化されない期間)が短くなり、当該期間における脈動臓器の動きの量が減少することで、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されることになる。また、放射線画像として画像化されない期間が短くなることで、脈動臓器に重要な一瞬の動き変化があった場合にも、当該動き変化が画像化される可能性が高くなるので、放射線動画像の視認者(例えば術者12)が脈動臓器の重要な一瞬の動き変化を見逃す可能性を低減することができる。
【0081】
なお、照射時間増大モードでの照射周期Tについては、上記のように通常の動画像撮影における照射周期T(=T1)と同じにすることに代えて、患者(被写体)14に放射線が照射されない期間が通常の動画像撮影よりも短くなる範囲内で、照射時間tと共に値を変更してもよい。
【0082】
また、脈動臓器撮影時の撮影モードとして高レートモードが設定されていた場合は、ステップ232からステップ234へ移行し、照射周期T及び照射時間tについて、脈動臓器撮影時の高レートモードとして予め定められた値を各々設定する(照射周期T←T2、照射時間t←t3:図10(C)も参照)。そして、ステップ236で脈動臓器撮影フラグに1を設定してステップ238へ移行する。前述のように、高レートモードの曝射条件は、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射周期Tが短くされており(T2<T1)、これにより、放射線照射の1周期の間の脈動臓器の動きの量が減少することで、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減されることになる。また、照射周期Tを短くすることで、放射線動画像の単位時間当りのフレーム数は増大するものの、これに伴い、放射線動画像の視認者(例えば術者12)が脈動臓器の重要な一瞬の動き変化を見逃す可能性を低減することができる。
【0083】
なお、図10(C)では高レートモードでの照射時間t(=t3)を通常の動画像撮影における照射時間t(=t1)と同長さとして示しているが、高レートモードでの照射周期T(=T2)に応じて、通常の動画像撮影における照射時間t(=t1)と異なる値としてもよいことは言うまでもない。
【0084】
このように、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている間、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射時間tが長くされた照射時間増大モード、又は、通常の動画像撮影における曝射条件よりも照射周期Tが短くされた高レートモードで動画像撮影が行われることで、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減され、放射線動画像の視認性が向上するので、術者12の疲労軽減等の効果が得られる。また、脈動臓器撮影時の撮影モードとして、互いに異なる特徴を有する照射時間増大モードと高レートモードの何れかを選択可能としているので、動画像の撮影目的や撮影部位(に応じた脈動臓器撮影時の動画像に対する要求画質)、患者(被写体)14の放射線被曝量等の諸条件に応じて、より適切な撮影モードを選択することができる。
【0085】
また、例えばIVRの長時間化等の理由で、放射線動画像撮影・表示処理を開始してからの患者(被写体)14の放射線累積被曝量が所定値以上となった場合には、ステップ224の判定が肯定されてステップ226へ移行し、照射線量Wとして予め設定された値W2を設定した後にステップ228へ移行する。この場合、照射周期T=T1、照射時間t=t2、照射線量W=W2の曝射条件で、照射時間増大モードにより脈動臓器を含む撮影範囲の動画像撮影が行われることになる。なお、ステップ224の判定が肯定された場合にステップ226.228の処理を行うことは、請求項2に記載の撮影制御手段による処理の一例である。
【0086】
上記の照射線量W2は、照射時間増大モードが照射線量Wを低下させた場合の動画像の画質劣化の度合いが小さいという利点を有していることに基づき、照射時間増大モードで動画像の撮影を行った場合に、一定の画質の動画像が得られる照射線量の最小値又は当該最小値に近い値に設定されている。従って、患者(被写体)14の放射線累積被曝量が所定値に達した以降は、脈動臓器撮影時の撮影モードとして高レートモードが設定されていたとしても、放射線画像の撮影範囲内に脈動臓器が入っている間、照射線量Wが抑制された(W=W2)照射時間増大モードによって動画像の撮影が行われ、患者(被写体)14の放射線累積被曝量が過大となることを抑制しつつ、放射線動画像上での脈動臓器の動きの不連続性が低減された動画像の撮影が行われることになる。
【0087】
また、放射線画像の撮影範囲の更なる移動に伴い、脈動臓器が放射線画像の撮影範囲から外れた場合には、ステップ212の脈動臓器探索処理の判定結果が「脈動臓器無し」となることでステップ214の判定が否定されるが、この場合は脈動臓器撮影フラグが1となっていることで、ステップ216の判定が肯定されてステップ218へ移行し、先に説明したステップ200と同様に、放射線の曝射条件として、通常の動画像撮影での曝射条件を設定する(照射周期T←T1、照射線量W←W1、照射時間t←t1)。また、ステップ220では脈動臓器撮影フラグを0に戻し、ステップ238へ移行する。
【0088】
これにより、通常の動画像撮影での曝射条件に従い、放射線の照射、動画像の撮影・表示を行う状態に戻り、患者(被写体)14の放射線累積被曝量が過大となることが抑制されることになる。そしてIVRが終了し、放射線画像撮影システム10による動画像の撮影終了が術者12から指示されると、ステップ242の判定が肯定されて放射線動画像撮影・表示処理を終了する。
【0089】
続いて、放射線動画像撮影・表示処理(図9)のステップ212で行われる脈動臓器探索処理の詳細について、図11を参照して説明する。なお、以下で説明する脈動臓器探索処理は請求項8に記載の判定手段による処理の一例である。図11に示す脈動臓器探索処理では、まずステップ250において、処理対象の放射線画像(放射線動画像撮影・表示処理(図9)の直前のステップ208でデータを取得した最新の放射線画像)を複数のブロックに分割する。次のステップ252では、前周期にデータを取得した放射線画像のデータをHDD134から読み出す。またステップ254では、先のステップ250で処理対象の放射線画像を分割することで得られた複数のブロックの中から、以降の処理(ステップ256,258の処理)を未実施のブロックを処理対象のブロックとして選択する。
【0090】
次のステップ256では、処理対象の放射線画像上での処理対象のブロックの位置を基準として、先のステップ252で読み出した前周期の放射線画像上に探索範囲を設定し、前周期の放射線画像上に設定した探索範囲内で参照ブロックを移動させながら、処理対象ブロックと参照ブロックとの誤差を演算することを繰り返すことで、処理対象のブロックとの誤差が最小となる参照ブロックを前周期の放射線画像上の探索範囲内で探索する。そして、処理対象のブロックとの誤差が最小の参照ブロックが前周期の放射線画像上の探索範囲内から抽出されると、次のステップ258において、処理対象のブロックと抽出された参照ブロックとのずれ量及びずれの方向を動きベクトルとして求め、求めた動きベクトルを処理対象のブロックに属性情報として付加する。
【0091】
次のステップ260では、処理対象の放射線画像を分割することで得られた全てのブロックに対してステップ256,258の処理を行ったか否か判定する。判定が否定された場合はステップ254に戻り、ステップ260の判定が肯定される迄、ステップ254〜ステップ260を繰り返す。これにより、例として図12(B)に示すように、処理対象の放射線画像を構成する全てのブロックについて、前周期の放射線画像からの動きベクトルが各々算出・設定されることになる。なお、図12(B)に示す例では、動きベクトルの大きさが所定値未満のブロックについては動きベクトルの図示を省略している。
【0092】
ところで、図12(B)は、例として図12(A)に示すように、脈動臓器である心臓及び肺の一部を含む撮影範囲を撮影することで得られた放射線画像に対し、複数のブロックへの分割及び動きベクトルの算出を行った結果の一例を示しているが、図12(B)に斜線で示すように、複数のブロックのうち脈動臓器に対応するブロックは、動きベクトルの大きさが何れも所定値以上でかつ互いに隣り合っている。これに基づき、次のステップ262では、動きベクトルの大きさが所定値以上でかつ隣り合う複数のブロックから成るブロック群(以下、このブロック群を「動き有りブロック群」という)が存在しているか否かを探索する。そしてステップ264では、ステップ262の探索によって動き有りブロック群が抽出されたか否か判定する。
【0093】
ステップ264の判定が否定された場合はステップ276へ移行し、フラグが0か否か判定する。なお、このフラグは放射線動画像撮影・表示処理(図9)の実行が開始される際に0に初期設定される。ステップ276の判定が肯定された場合は、処理対象の放射線画像中に脈動臓器に対応する画像部は存在しないと判断できるので、ステップ286へ移行し「脈動臓器無し」の判定結果を出力して脈動臓器探索処理を終了する。
【0094】
また、ステップ262の探索で動き有りブロック群が抽出された場合、抽出された動き有りブロック群は、脈動臓器に対応するブロック群の可能性があるものの、例えば患者(被写体)14が体を動かした等により一時的に抽出された可能性も否定できない。このため、動き有りブロック群が抽出された場合はステップ264の判定が肯定されてステップ266へ移行し、ステップ262の探索で抽出された動き有りブロック群の情報を、処理対象の放射線画像のフレームを識別するフレーム識別情報と対応付けてRAM132等に記憶させる。
【0095】
次のステップ268では、RAM132等に記憶されている動き有りブロック群の情報に基づいて、過去N周期以内の少なくとも1つの放射線画像において、今回抽出された動き有りブロック群に対応するブロック群も、過去の処理で動き有りブロック群として抽出されていたか否か判定する。なお、上記判定は、今回抽出された動き有りブロック群が脈動臓器に対応するブロック群か否かを判定するものであるが、判定の対象を「過去N周期以内の少なくとも1つの放射線画像」としているのは、心臓や肺等の脈動臓器は膨張期と収縮期の間にごく短時間ではあるものの静止している期間があるためである。
【0096】
ステップ268の判定が否定された場合、今回抽出された動き有りブロック群は患者(被写体)14が体を動かした等により一時的に抽出されたものである可能性が高いと判断できるので、前述のステップ276へ移行する。一方、ステップ268の判定が肯定された場合、今回抽出された動き有りブロック群は、過去N周期以内にも対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていることから、脈動臓器に対応するブロック群である可能性が非常に高いと判断できる。このため、ステップ270へ移行して「脈動臓器有り」の判定結果を出力する。そしてステップ272でフラグに1を設定し、ステップ274で変数mに0を代入して脈動臓器探索処理を終了する。
【0097】
また、上記のステップ272でフラグに一旦0が設定されると、ステップ264又はステップ268の判定が否定された場合に、ステップ276の判定が否定されてステップ278へ移行し、変数mを1だけインクリメントする。次のステップ280では変数mが閾値M以上となったか否か判定する。この判定が否定された場合はステップ282へ移行し、「脈動臓器有り」の判定結果を出力して脈動臓器探索処理を終了する。
【0098】
これにより、ステップ264又はステップ268の判定が否定されることがM周期連続する迄の間は、「脈動臓器有り」の判定結果が出力されると共に、変数mが閾値Mに達する前にステップ268の判定が肯定された場合は変数mの値が0に戻ることになる。このように、本実施形態に係る脈動臓器探索処理では、出力する判定結果の切り替えにヒステリシス性を持たせているので、脈動臓器探索処理の判定結果が頻繁に切り替わることで、放射線の曝射条件が頻繁に切り替わることが防止される。また、ステップ264又はステップ268の判定が否定されることがM周期連続すると、ステップ280の判定が肯定されてステップ284でフラグを0に戻し、出力する判定結果をステップ286で「脈動臓器有り」に切り替えて脈動臓器探索処理を終了する。
【0099】
次に、電子カセッテ20に内蔵された放射線検出器の他の構成について、図13を参照して説明する。図13に示す放射線検出器300は、照射された放射線を光へ一旦変換した後に電荷へ変換する間接変換方式により放射線を検出する構成であり、放射線の到来方向に沿って光検出部(TFTアクティブマトリクス基板)306、シンチレータ302が順に配置されて構成されている。なお、放射線検出器300は請求項11に記載の放射線検出手段の一例であり、光検出部306は請求項11に記載の光検出手段、シンチレータ302は請求項11に記載の発光部の一例である。
【0100】
放射線検出器300のシンチレータ302は、患者(被写体)14の体を透過して筐体30の照射面32に照射され、筐体30の天板及び光検出器(TFT基板)306を透過して照射された放射線Xを吸収して光を放出する。シンチレータ302の発光波長域は可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、放射線検出器300によってモノクロの放射線画像の撮影を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。一般に、シンチレータに適用する蛍光体としては、例えばCsI(Tl)(タリウムを添加したヨウ化セシウム)や、CsI(Na)(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(Gd2O2S:Tb)等の材料を用いることができるが、放射線としてX線を用いて撮影を行う場合はヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜600nmにあるCsI(Tl)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0101】
また、本実施形態では、例として図14に示すように、シンチレータ302を、放射線入射/光射出側(光検出部306側)に柱状結晶302Aから成る柱状結晶領域が形成され、シンチレータ302の放射線入射側と反対側に非柱状結晶302Bから成る非柱状結晶領域が形成された構成としており、シンチレータ302としてCsIを含む材料を用い、当該材料を蒸着基板304に蒸着させることで、柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成されたシンチレータ302を得ている。なお、蒸着基板304としては耐熱性の高い材料が望ましく、例えば低コストという観点からアルミニウムが好適である。なお、本実施形態に係るシンチレータ302は、柱状結晶302Aの平均径が柱状結晶302Aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。このように、シンチレータ302は、より詳しくは請求項12に記載の発光部の一例である。
【0102】
上記のように、シンチレータ302を柱状結晶領域及び非柱状結晶領域が形成された構成にすると共に、高効率の発光が得られる柱状結晶302Aから成る柱状結晶領域を光検出部306側に配置することで、シンチレータ302で発生された光は柱状結晶302A内を進行して光検出部306へ射出され、光検出部306側へ射出される光の拡散が抑制されることで、電子カセッテ20によって検出される放射線画像の鮮鋭度の低下が抑制される。また、シンチレータ302の深部(非柱状結晶領域)に到達した光も、非柱状結晶302Bによって光検出部306側へ反射されることで、光検出部306に入射される光の光量(シンチレータ302で発光された光の検出効率)が向上する。
【0103】
なお、シンチレータ302の放射線入射側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ302の蒸着基板304側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2としたときに、t1とt2が下記の関係式を満たすことが好ましい。
【0104】
0.01≦(t2/t1)≦0.25
柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記関係式を満たすことで、発光効率が高く光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、光を反射する領域(非柱状結晶領域)と、のシンチレータ302の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となり、シンチレータ302の発光効率、シンチレータ302で発光された光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。非柱状結晶領域の厚みt2が厚過ぎると発光効率の低い領域が増え、電子カセッテ20の感度の低下に繋がることから、(t2/t1)は0.02以上かつ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0105】
なお、シンチレータ302は柱状結晶領域と非柱状結晶領域が連続的に形成された構成であるが、例えば上記の非柱状結晶領域に代えてアルミニウム等から成る光反射層が設けられ、柱状結晶領域のみが形成された構成であってもよいし、他の構成であってもよい。
【0106】
また、放射線検出器300の光検出部306は、シンチレータ302の光射出側から射出された光を検出するものであり、図13に示すように、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等から成る光電変換部308、TFT310及び蓄積容量312を備えた画素部314が、図7に示す放射線検出器36のTFTアクティブマトリクス基板94と同様に、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされた絶縁性基板316上にマトリクス状に複数形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)で構成されている。
【0107】
なお、本実施形態では、シンチレータ302の放射線照射面側に光検出器(TFT基板)306が配置されているが、発光部(シンチレータ302)と光検出手段(光検出部306)とをこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する(請求項11記載の発明に相当する構成)。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出手段(光検出部306)を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出手段(光検出部306)を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出手段とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出手段(光検出部306)の受光量が増大することで、結果として放射線画像撮影装置(電子カセッテ)の感度が向上する。
【0108】
光電変換部308は、下部電極308Aと上部電極308Bとの間に、シンチレータ302から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜308Cが配置されて構成されている。なお、下部電極308Aは、シンチレータ302から放出された光を光電変換膜308Cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ302の発光波長の光に対する光透過率の高い導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、下部電極308AとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO2、TiO2、ZnO2等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極308Aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0109】
また、光電変換膜308Cはシンチレータ302から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜308Cを構成する材料は光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜308Cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ302から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンから成る光電変換膜308Cの形成には蒸着を行う必要があり、絶縁性基板316が合成樹脂製である場合、絶縁性基板316の耐熱性が不足する可能性がある。
【0110】
一方、光電変換膜308Cを有機光電変換材料を含む材料で構成した場合は、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜308Cによるシンチレータ302から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜308Cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料から成る光電変換膜308Cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで形成させることができ、被形成体に対して耐熱性は要求されない。このため、放射線検出器300では光電変換部308の光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成している。
【0111】
光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜308Cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するように光検出部306が配置される表面読取方式(ISS)において、光検出部306を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0112】
光電変換膜308Cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ302から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ302の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ302の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ302から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ302の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0113】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ302の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜308Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0114】
放射線画像撮影装置に適用可能な光電変換膜308Cについて具体的に説明する。放射線画像撮影装置における電磁波吸収/光電変換部位は、電極308A,308Bと、該電極308A,308Bに挟まれた光電変換膜308Cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0115】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0116】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜308Cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光電変換膜308Cは、更にフラーレン又はカーボンナノチューブを含有していてもよい。
【0117】
また、光電変換部308は、少なくとも電極対308A,308Bと光電変換膜308Cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0118】
電子ブロッキング膜は、上部電極308Bと光電変換膜308Cとの間に設けることができ、上部電極308Bと下部電極308Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極308Bから光電変換膜308Cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜308Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜308Cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0119】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部308の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0120】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜308Cと下部電極308Aとの間に設けることができ、上部電極308Bと下部電極308Aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極308Aから光電変換膜308Cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜308Cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜308Cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0121】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部308の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0122】
なお、光電変換膜308Cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極308Aに移動し、電子が上部電極308Bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0123】
TFT310は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0124】
活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO3(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnO4がより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0125】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0126】
TFT310の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、画像信号へのノイズの重畳を効果的に抑制することができる。
【0127】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT310のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT310における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT310の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0128】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜308Cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT310と、を組み合わせた構成であれば、患者(被写体)14の体の重みが荷重として加わることのある光検出部306の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。このため、放射線検出器300ではTFT310の活性層を有機半導体材料で形成している。
【0129】
また、絶縁性基板316は光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT310の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部308の光電変換膜308Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板316としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板316には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0130】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板316を形成してもよい。
【0131】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて絶縁性基板316を薄型化できる。
【0132】
絶縁性基板316としてガラス基板を用いた場合、光検出器(TFT基板)306全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、放射線検出器300では、電子カセッテ20の薄型化も考慮し、絶縁性基板316として、光透過性を有する合成樹脂から成る薄型の基板を用いている。これにより、光検出器(TFT基板)306全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、光検出器(TFT基板)306に可撓性をもたせることができる。また、光検出器(TFT基板)306に可撓性をもたせることで、放射線検出部300の耐衝撃性が向上し、電子カセッテ20の筐体30に衝撃が加わった場合にも放射線検出部300が破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、絶縁性基板316をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板316による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)により光検出部306を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0133】
なお、電子カセッテ20の絶縁性基板316として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、電子カセッテ20の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料から成る基板を絶縁性基板316として用いるようにしてもよい。
【0134】
前述のように、放射線検出器300は、放射線の到来方向に沿って光検出部306、シンチレータ302が順に配置された表面読取方式(ISS)とし、かつ、シンチレータ302を、CsIを含む材料から成り光検出部306側に柱状結晶領域が形成された構成とすることで、シンチレータ302から光検出部306に入射される光の光量の増大及び拡散の抑制を実現しており、更に、光検出部306の光電変換膜308Cを有機光電変換材料で構成し、TFT310の活性層を有機半導体材料で形成し、絶縁性基板316として合成樹脂製の基板を用いることで、光検出部306を透過してシンチレータ302に照射される放射線の光検出部306における吸収を抑制しているので、放射線検出感度の向上及び撮影する放射線画像の高画質化を実現できる。
【0135】
そして、上記構成の放射線検出器300を内蔵した電子カセッテ20は放射線動画像の撮影に特に好適である。すなわち、放射線動画像の撮影は、患者(被写体)14の放射線累積被曝量の抑制が課題であり、画質に対する要求レベルは比較的低い。これに対し、上記構成の放射線検出器300は放射線検出感度が高く、かつ高画質な放射線画像を撮影できるので、放射線動画像の撮影に際して放射線の照射線量を大幅に低下させたとしても、撮影される放射線画像の画質が問題となるレベル迄低下することはなく、放射線の照射線量を大幅に低下させることで、患者(被写体)14の放射線累積被曝量を大幅に抑制することが可能となる。
【0136】
なお、CsIは、例えば温度変化1℃当り約0.3%程度の変化率で感度が変化するという特性を有している(図15(A)も参照)。このため、電子カセッテ20に内蔵する放射線検出器として、上記の放射線検出器300のようにCsIから成るシンチレータを含む構成の放射線検出器を用いた場合、温度上昇に伴って放射線検出感度の低下が生ずる。特に放射線動画像を撮影する際は温度変化が大きいために放射線検出感度の変化も大きくなり、これに伴い、撮影期間内の初期に撮影された画像と撮影期間内の終期に撮影された画像との濃度差が大きくなることで、放射線動画像の視認性が悪化する等の不都合が生ずる可能性もある。
【0137】
これを考慮すると、例えばシンチレータの温度を検出する温度センサを設け、温度センサによって検出された温度が予め設定された閾値以上になった場合には、撮影モードを照射時間増大モードに設定する等により、本発明に係る第1制御を行うように構成することが好ましい。本発明に係る第1制御は本発明に係る第2制御よりも放射線の断続照射の時間間隔が長く、電子カセッテ20に内蔵された電子回路からの発熱量が小さくなるので、シンチレータを構成するCsIの温度上昇を抑制することができ、CsIの温度上昇に伴って放射線検出感度が低下することを抑制することができる。なお、シンチレータの温度の検出は、シンチレータ自体の温度を直接検出することに限られるものではなく、例えば電子カセッテ20の筐体30内の温度を検出することで、シンチレータの温度を間接的に検出する構成を採用することも可能である。
【0138】
また、CsIは、放射線累積被曝量の増大に伴って感度が徐々に低下するという特性も有している(図15(B)も参照)。なお、放射線累積被曝量の増大に伴う感度の低下は一時的な現象であり、放射線を照射しない状態を数時間程度継続すれば回復するものの、電子カセッテ20に内蔵する放射線検出器として、上記の放射線検出器300のようにCsIから成るシンチレータを含む構成の放射線検出器を用いた場合、CsIの感度が大幅に低下した状態になってしまうと、放射線画像の撮影に支障が生ずる可能性もある。
【0139】
これを考慮すると、放射線累積被曝量を監視し、放射線累積被曝量が予め設定した閾値以上になった場合には、撮影モードを照射時間増大モードに設定する等により、本発明に係る第1制御を行うように構成することが好ましい。本発明に係る第1制御は本発明に係る第2制御よりも放射線被曝量を低減できるので、電子カセッテ20の使用可能時間を長時間化することができる。
【0140】
また、放射線検出器の更に別の構成を図16に示す。図13に示した放射線検出器300は、シンチレータ302から射出された光を単一の光検出部306で検出する構成であるが、図16に示す放射線検出器318は、光検出部306に加えて、シンチレータ302から射出された光を検出する光検出部320が、光検出部306を挟んでシンチレータ302の反対側に設けられている。光検出部320は、配線がパターニングされた配線層322、絶縁層324が順に形成され、その上層に、シンチレータ302から射出され光検出部306を透過した光を検出するセンサ部326が複数形成され、更に当該センサ部326の上層に保護層328が形成されて構成されている。なお、光検出部320の厚みは例えば0.05mm程度である。
【0141】
センサ部326は、上部電極330A及び下部電極330Bを備え、上部電極330Aと下部電極330Bとの間に、シンチレータ302からの光を吸収して電荷を発生する光電変換膜330Cが配置されて構成されている。センサ部326(光電変換膜330C)としては、アモルファスシリコンを用いたPIN型、MIS型フォトダイオードを適用することも可能であるが、放射線検出器318では、光電変換部308の光電変換膜308Cと同様に、光電変換膜330Cを有機光電変換材料で構成している。これにより、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を被形成体上に付着させることで光電変換膜330Cを形成させることが可能となり、絶縁性基板316として、光透過性を有する合成樹脂製で薄型の基板を用いることが可能となる。
【0142】
センサ部326による放射線量の検出結果は、電極330A,330Bと接続された図示しない信号処理部を介して読み出され、例えば電子カセッテ20への放射線の照射開始/終了タイミングの検知や、電子カセッテ20への放射線照射量の積算値の検知等に用いられる。なお、放射線画像の検出(撮影)は光検出部306によって行われるので、光検出部320のセンサ部326は、光検出部306の画素部314よりも配置ピッチが大きく(配置密度が低く)されており、単一のセンサ部326の受光領域は、光検出部306の画素部314の数個〜数百個分のサイズでよい。
【0143】
なお、上記では放射線動画像の撮影範囲内に脈動臓器が存在しているか否かに応じて、放射線照射時間t又は放射線照射周期Tを2段階に変化させる態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば放射線動画像中の脈動臓器に対応する画像部の面積率が増大するに従って、放射線照射時間tを連続的に長くするか、又は、放射線照射時間tが長くなるように、3段階以上の放射線照射時間tの値のうちの何れかの値へ切り替えてもよい。また、放射線照射周期Tについても、例えば放射線動画像中の脈動臓器に対応する画像部の面積率が増大するに従って、放射線照射周期Tを連続的に短くするか、又は、放射線照射周期Tが短くなるように、3段階以上の放射線照射周期Tの値のうちの何れかの値へ切り替えてもよい。
【0144】
また、上記では脈動臓器探索処理(図11)において、放射線の曝射条件(放射線照射周期T、放射線照射時間t及び放射線照射線量W)に拘わらず、一定の処理で脈動臓器の有無を判定する態様を説明したが、これに限定されるものではなく、放射線の曝射条件に応じて、例えば前周期の放射線画像に対して設定する探索範囲の広さ、動きベクトルの大きさに対する閾値、動き有りブロック群の判定対象とするブロックの数に対する閾値、ステップ268の判定における周期の数Nの値、及び、ステップ280の判定で変数mと比較する閾値Mの値の少なくとも1つを変更するようにしてもよい。また、図11に示した脈動臓器探索処理は一例であり、放射線動画像の撮影範囲内に脈動臓器が存在しているか否かを別の処理によって判定することも本発明の権利範囲に含まれる。
【0145】
また、上記ではコンソール24のディスプレイ136に動画像を表示させる態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子カセッテ20にディスプレイを設け、コンソール24のディスプレイ136に代えて電子カセッテ20にディスプレイに動画像を表示させるようにしてもよい。
【0146】
更に、上記では請求項6に記載の移動手段として、電子カセッテ20を移動させる第1移動装置50及び放射線照射装置18を移動させる第2移動装置78を例に説明したが、移動手段はベッド16の一部(例えば載置台16Aのみ)又は全体を移動させることで、患者(被写体)14を移動させる構成であってもよい。また、第1移動装置50及び第2移動装置78は、放射線照射装置18及び電子カセッテ20と患者(被写体)14とを載置台16Aの長手方向にのみ相対的に移動させる(1軸移動を行う)構成であるが、請求項6に記載の移動手段は上記に限られるものではなく、放射線照射装置18及び電子カセッテ20と患者(被写体)14とを載置台16Aの幅方向にも相対移動可能な(2軸移動を行う)構成であってもよい。
【0147】
また、上記ではIVRを実施する際の放射線動画像の撮影に本発明を適用した態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、医療現場におけるIVRの実施以外の場面での放射線動画像の撮影にも適用可能である。
【0148】
また、上記では請求項2,6,8に記載の被写体として人間(患者14)を例に説明したが、これに限定されるものではなく、上記の被写体は、人間以外の生物であっても非生物であってもよく、動きの速度が所定値以上の物体(この物体も臓器に限らない)が撮影範囲内に入る可能性の有る任意の被写体の放射線動画像の撮影に適用可能である。
【符号の説明】
【0149】
10 放射線画像撮影システム
18 放射線照射装置
20 電子カセッテ
24 コンソール
136 ディスプレイ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を断続的に照射する照射手段と、
前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定する判定手段と、
前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在している場合に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行う撮影制御手段と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項2】
被写体の放射線累積被曝量を演算する演算手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、前記演算手段によって演算された被写体の放射線累積被曝量が所定値を越えた場合に、前記第1制御を行うと共に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段によって照射される放射線の線量が低下するように制御する請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記第1制御を行うか前記第2制御を行うかを選択するための選択手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在している場合に、前記第1制御及び前記第2制御のうち前記選択手段を介して予め選択された制御を行う請求項1又は請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影制御手段は、前記第1制御を行う場合に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段によって照射される放射線の線量が少なくなるように制御する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
放射線の線量を設定するための設定手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、前記設定手段を介して設定された放射線の線量に応じて、前記照射手段によって照射される放射線の線量を変化させる請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記照射手段及び前記放射線検出手段を前記被写体と相対的に移動させる移動手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、被写体の体内に挿入された挿通部材の先端部に相当する画像部が前記動画像中の所定領域内に位置するように、前記挿通部材の先端部の位置変化に応じて、前記移動手段により、前記照射手段及び前記放射線検出手段と前記被写体とを相対的に移動させる請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記放射線検出手段による放射線の検出結果を表す単一フレームの画像を順に取得すると共に、連続する複数フレームの画像に基づいて、前記画像を複数のブロックに分割したときの個々のブロック毎に動きベクトルを演算し、演算した動きベクトルの大きさが各々所定値以上でかつ隣り合う複数個のブロックから成る動き有りブロック群が存在しているか否かを探索し、前記動き有りブロック群が抽出された場合には、過去所定数以内のフレームの画像からも対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていたか否かを判定し、前記対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていた場合には、今回抽出された前記動き有りブロック群を動きの速度が所定値以上の臓器に対応するブロック群と判定する処理を繰り返すことで、前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体としての動きの速度が所定値以上の臓器が存在しているか否かを判定する請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
放射線を断続的に照射する照射手段と、
前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、
被写体の臓器のうち動きの速度が所定値以上の臓器が前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に存在している場合に、前記動きの速度が所定値以上の臓器の前記動画像上での動きの不連続性が低下するように、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を変更する撮影制御手段と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記放射線検出手段は放射線変換層とスイッチング層を含んで構成されている請求項1〜請求項8の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記放射線検出手段は、前記放射線画像撮影装置に対して着脱自在な可搬型の放射線画像検出装置である請求項1〜請求項9の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記放射線検出手段は、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する光検出手段と、を備え、前記発光部が前記光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されている請求項1〜請求項10の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記発光部はCsIを含む材料から成り、柱状結晶構造部が形成されている請求項11記載の放射線画像撮影装置。
【請求項1】
放射線を断続的に照射する照射手段と、
前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体が存在しているか否かを判定する判定手段と、
前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在している場合に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間を長くする第1制御、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を短くする第2制御を行う撮影制御手段と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項2】
被写体の放射線累積被曝量を演算する演算手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、前記演算手段によって演算された被写体の放射線累積被曝量が所定値を越えた場合に、前記第1制御を行うと共に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段によって照射される放射線の線量が低下するように制御する請求項1記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記第1制御を行うか前記第2制御を行うかを選択するための選択手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在している場合に、前記第1制御及び前記第2制御のうち前記選択手段を介して予め選択された制御を行う請求項1又は請求項2記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記撮影制御手段は、前記第1制御を行う場合に、前記放射線検出範囲内に動きの速度が前記所定値以上の物体が存在していない場合よりも、前記照射手段によって照射される放射線の線量が少なくなるように制御する請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
放射線の線量を設定するための設定手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、前記設定手段を介して設定された放射線の線量に応じて、前記照射手段によって照射される放射線の線量を変化させる請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記照射手段及び前記放射線検出手段を前記被写体と相対的に移動させる移動手段を更に備え、
前記撮影制御手段は、被写体の体内に挿入された挿通部材の先端部に相当する画像部が前記動画像中の所定領域内に位置するように、前記挿通部材の先端部の位置変化に応じて、前記移動手段により、前記照射手段及び前記放射線検出手段と前記被写体とを相対的に移動させる請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記放射線検出手段による放射線の検出結果を表す単一フレームの画像を順に取得すると共に、連続する複数フレームの画像に基づいて、前記画像を複数のブロックに分割したときの個々のブロック毎に動きベクトルを演算し、演算した動きベクトルの大きさが各々所定値以上でかつ隣り合う複数個のブロックから成る動き有りブロック群が存在しているか否かを探索し、前記動き有りブロック群が抽出された場合には、過去所定数以内のフレームの画像からも対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていたか否かを判定し、前記対応するブロック群が動き有りブロック群として抽出されていた場合には、今回抽出された前記動き有りブロック群を動きの速度が所定値以上の臓器に対応するブロック群と判定する処理を繰り返すことで、前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に、動きの速度が所定値以上の物体としての動きの速度が所定値以上の臓器が存在しているか否かを判定する請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
放射線を断続的に照射する照射手段と、
前記照射手段による放射線の断続照射と同期したタイミングで放射線を検出する放射線検出手段と、
前記放射線検出手段による放射線の検出結果を動画像として表示手段に表示させる表示制御手段と、
被写体の臓器のうち動きの速度が所定値以上の臓器が前記放射線検出手段による放射線検出範囲内に存在している場合に、前記動きの速度が所定値以上の臓器の前記動画像上での動きの不連続性が低下するように、前記照射手段による放射線の断続照射における1周期当りの放射線の照射時間、又は、前記照射手段による放射線の断続照射の時間間隔を変更する撮影制御手段と、
を含む放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記放射線検出手段は放射線変換層とスイッチング層を含んで構成されている請求項1〜請求項8の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記放射線検出手段は、前記放射線画像撮影装置に対して着脱自在な可搬型の放射線画像検出装置である請求項1〜請求項9の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項11】
前記放射線検出手段は、照射された放射線を吸収して発光する発光部と、前記発光部から放出された光を画像として検出する光検出手段と、を備え、前記発光部が前記光検出手段よりも放射線到来方向下流側に配置されている請求項1〜請求項10の何れか1項記載の放射線画像撮影装置。
【請求項12】
前記発光部はCsIを含む材料から成り、柱状結晶構造部が形成されている請求項11記載の放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−194214(P2011−194214A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263931(P2010−263931)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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