説明

放射線非破壊検査方法

【課題】 放射線画像のコントラストを高めた場合においても、被検体に応じた適切な濃
度の画像が得られるようにする。
【解決手段】 管状被検体16に放射線を照射する放射線源、放射線により複数色に発光す
るカラー発光シート、複数色の発光を受光するカラーCCDカメラとを一体的に組み込ん
だヘッド17と、カラー発光シートとカラーCCDカメラとの感度特性をマッチングして相
対的に撮影感度を高めてカラーCCDカメラで受光された複数の色信号を含む画像情報を
RGB信号に分離し各色の単独画像情報としてそれぞれ検出する演算処理装置21とを有す
る非破壊検査装置を用い、ヘッド17を管状被検体16の管に沿う方向または管周りの回転方
向に移動させつつカラーCCDカメラで撮像を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカラー発光を用いて管状被検体を非破壊で検査する放射線非破壊検査方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線が物質を透過する際には、その構成物質の種類や形状によって吸収や散乱が異な
ってくる。これを映像として写真やビデオ、デジタルファイル等として記録すれば、物質
の破損状態、変化、充填状況等を把握することができる。これは一般にレントゲン写真で
人体の内部の状態を診察するのと同様の原理である。測定したい物体あるいは試料を破壊
せずに内部の状態を測定するこの方法はラジオグラフィまたは非破壊放射線撮影法と呼ば
れている。
【0003】
医療診断や工業用非破壊検査などに利用されるX線撮影では、通常、撮影系の感度を向
上させるために、X線フィルムを放射線増感紙と組み合わせて使用している。X線撮影に
おいては、被検体を透過したX線や増感紙で可視光に変換された光で、例えばX線用フィ
ルム上の銀粒子を黒化させることによって、被検体の透過画像を得ている。
【0004】
X線撮影などに用いられる放射線増感紙としては、紙やプラスチックなどからなる支持
体上に、X線フィルムに応じた発光ピークを有する蛍光体層とこれを保護する保護膜とを
順に形成したものが一般的である。また近年、撮像系としてCCDカメラなどの光検出素
子を用い、X線フィルムを使わずに放射線の透過量の違いをデジタル的に検出することも
行われている。
【0005】
従来の放射線撮影においては、診断能力を向上させるために、特に特性曲線の勾配を大
きくした高コントラストのフィルムを用いたX線撮影がある。例えば乳房撮影のように、
X線吸収差の少ない石灰化や異常軟部組織などについては、高い分解能と高いコントラス
トで撮影する必要がある。しかし、僅かな撮影条件のずれにより適切な濃度の写真像を得
ることができなくなってしまうという問題がある。すなわち測定のダイナミックレンジが
狭いという点で問題である。また、測定対象が骨と筋肉のように測定対象の元素組成が異
なる場合には使用するX線エネルギーと部位の厚さなどを考慮して、X線の照射時間を多
くの経験から決めなければならない。正常な組織と癌などの異常組織のように、元素組成
はほぼ同じで密度が異なる場合でも同様である。
【0006】
一方、従来のカラーラジオグラフィーにおいてはX線の線量の違いに対応して色彩を変
化させたカラーX線写真が得られる(特許文献1,2を参照)。しかし、このようなカラ
ーX線写真上の色彩の変化のみから情報を取り出そうとしても、例えば線量が多い部分で
は赤色成分に緑色成分や青色成分が加わり、カラー写真上は白色に近くなるため、かえっ
て情報の取り出しが難しく、多くの情報を含んでいてもそれらを有効に活用することがで
きないという問題がある。また場合によっては通常の白黒写真より情報の取り出しが困難
になってしまう。
【0007】
このような点に対して、被検体を通過したX線などの放射線が照射されて複数色に発光
するカラー発光シートと、カラー発光シートから放射された複数色の発光を色別に検出す
るカラーフィルムやカラーカメラなどの光検出手段を具備し、異なる感度特性を持つ複数
色の画像情報を得るようにしたカラーレントゲンシステムが、例えば特許文献3に開示さ
れている。また、ここで、カラー発光シートには、例えば可視光領域内の1つの発光色に
対応する主発光成分と、主発光成分と異なる発光色を有すると共に同一強度の放射線に対
する発光割合が主発光成分とは異なる少なくとも1つの副発光成分とを有し、さらに主発
光成分と副発光成分の発光割合が撮影系のダイナミックレンジに応じて調整されている蛍
光体が用いられている。
【0008】
図8は、X線を適用した際に得られる濃度と受光量についての特性の一例を示すグラフ
である。上述したカラーレントゲンシステムによれば、この図8に特性曲線R(赤色を示
す)、G(緑色を示す)、B(青色を示す)等で示したように、撮影系の露光量と濃度の
関係を示す特性を利用して、X線の線量の違いに対応して発光した複数色の光を色毎に検
出することで画像が得られる。得られた画像においては、低線量の部分は緑色、青色の情
報はなく赤色の情報として得られ、線量が多くなると赤色情報は飽和して緑色の情報とし
て得られ、さらに線量が多くなると赤色,緑色の情報は飽和して青色の情報として得られ
る。すなわち、比較的広い条件下で適切な濃度の写真像を得ると共に、得られた写真像か
ら多くの情報を得ることを可能にしている。
【0009】
しかしながら、このカラーレントゲンシステムは撮影系のダイナミックレンジ拡大する
基本手法について記載されているが、被検体である人体や動物の撮影対象部位や個体差に
よっては適切な条件になるとは限らず、撮影レンジ内でも適切な写真像が得られない場合
がある。例えば、測定対象物が鉄の場合とプラスチィックの場合ではこれらの比重差に基
づいて撮影条件の最適化は当然ながら異なり、また撮影対象部分の厚さなども考慮しなけ
ればならない。さらに、複合材料のような異なる複数の物質が存在している場合には、適
切な写真像が得られなくなってしまう事が考えられる。
【0010】
一方、上記の測定手法でフィルムやイメージングプレートなどを用いた場合には、直接
その場で撮影した結果が得られず、現像またはレーザーによる読み取り作業を行わなけれ
ば画像情報にすることができない。これらに対して直接デジタル情報として画像を取り込
む方法に、電子管イメージインテンシファイヤを用いモノクロCCDカメラと組み合わせ
た動画システムや液晶ディスプレイを受光装置に用いた半導体タイプの平面検出器が開発
されている。これらの検出器を用いたシステムでは、静止画や動画をモニタで直接その場
にて見ることが可能であるが、X線の検出器がモノクロであるためダイナミックレンジの
広い画像を同時に見ることができない。また、人間の視認性の問題からモノクロでダイナ
ミックレンジを広くしてもグレーの差は認識できる範囲が限られる。一般的には濃度差と
して1桁から2桁までである。更に、現状ではこれらの検出器では製造上の点で大きなサ
イズができていない。30センチメートル四方程度であり、価格もかなり高い物になって
いる。
【特許文献1】特公昭48−6157号公報
【特許文献2】特公昭48−12676号公報
【特許文献3】特開2001−209142公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の放射線撮影においては、高コントラストのフィルムを用いた場
合に、僅かな撮影条件のずれにより適切な濃度の写真像を得ることができなくなってしま
うという問題がある。また、放射線の透過量は測定対象物の比重と密度に関係することか
ら、比重が異なる物質が存在している部位や同物質で密度が異なる物質が存在している部
位を撮影する場合には撮影条件の設定が難しく、適切な濃度の写真が得られなくなってし
まう。
【0012】
一方、従来のカラーラジオグラフィーは、単にX線量の違いに対応させて色彩を変化さ
せているにすぎない。このようなカラーX線写真上の色彩の変化のみからでは情報を取り
出すことが難しく、多くの情報を含んでいてもそれらを有効に活用することができないと
いう問題がある。また場合によっては通常の白黒写真より情報の取り出しが困難になって
しまう。
【0013】
また、カラーレントゲンシステムにおいては、撮影系のダイナミックレンジが広くなり
、失敗の少ない測定が可能になったが、被検体が明確な場合には、被検体に合わせてカラ
ーの発光割合を変えて色別の特性曲線を調整することが求められる。
【0014】
このようなことから、例えば、X線の透過量の異なる被検体に応じて適切な撮影条件を
設定可能で、僅かな撮影条件のずれなどによる露光量不足や露光量過多などの発生を防ぎ
、さらに得られた多くの情報を有効に利用することを可能にした放射線撮影システムが求
められている。放射線撮影時の条件設定の緩和は、撮影ミスの発生を防ぐと共に過剰な放
射線を減らすだけでなく、検査精度の向上などに対しても大きく寄与する。
【0015】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、その目的は、例えば放射線
写真のコントラストを高めた場合においても、被検体に応じて適切な濃度の写真像と的確
な写真像を得ることを可能にした放射線非破壊検査方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、被検体に応じて適切な濃度の写真像と的確な写真像を得るとと
もに、被検体に応じて一回の撮影で多くの情報を確実にかつ有効に得ることを可能にした
放射線非破壊検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、管状被検体に放射線を照射する放射線源と、この
放射線源から照射された放射線が前記被検体を透過する先に配設され、前記放射線により
複数色に発光するとともに同一強度の放射線に対する前記複数色の発光の割合が異なる蛍
光体を有するカラー発光シートと、このカラー発光シートの後方に設けられ前記複数色の
発光を受光するカラーCCDカメラと、前記放射線源、放射線、カラー発光シート、カラ
ーCCDカメラを一体的に組み込んだヘッドと、前記カラー発光シートと前記カラーCC
Dカメラとの感度特性をマッチングして相対的に撮影感度を高めて前記カラーCCDカメ
ラで受光された複数の色信号を含む画像情報をRGB信号に分離し各色の単独画像情報と
してそれぞれ検出する演算処理装置と、前記管状被検体に対して前記ヘッドを相対的に移
動させる移動手段とを備えた放射線非破壊検査装置を用いて行う放射線非破壊検査方法で
あって、前記ヘッドを前記移動手段によって前記管状被検体の管に沿う方向または管周り
の回転方向に移動させつつ、前記カラーCCDカメラで撮像を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の放射線非破壊検査方法によれば、放射線画像のコントラストを高めた場合にお
いても、被検体に応じた適切な濃度の画像が得られ、被検体に応じて一回の撮影で多くの
情報を確実にかつ有効に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る放射線非破壊検査方法の実施形態について、図面を参照して説明す
る。
【0020】
図1は、本発明の放射線非破壊検査装置を適用した放射線撮影装置の基本的な構成例を
模式的に示す概略構成図である。この図1に示すように、放射線撮影装置は、人体や各種
物品などの被検体1を対象とし、この被検体1に例えばX線管2などの放射線源が対向設
置されている。このX線管2からX線3などの放射線が照射される。なお、撮影に使用す
る放射線としては、X線(もしくはγ線)に限られるものではなく、β線や熱中性子線な
どを用いることも可能である。
【0021】
被検体1に対してX線管2と反対側の部位にはカラー発光手段としてのカラー発光シー
ト4が配設され、被検体1により吸収もしくは散乱されたX線3が、このカラー発光シー
ト4に照射される。カラー発光シートはX線3などの放射線に対して複数色に発光する蛍
光体を有している。このカラー発光シート4から発光された複数色の発光は、被検体1で
吸収もしくは散乱されたX線3の分布に応じた輝度分布を有するものである。また、カラ
ー発光シート4は被検体に応じてカラー発光割合が変えられるようにしている。
【0022】
カラー発光シート4の後方には、カラー発光シート4からの複数色の発光を一括して受
光する手段としてカラーCCDカメラ5が配置されている。カラーCCDカメラ5では、
被検体1で吸収もしくは散乱されたX線3の分布情報に基づく発光分布を有する複数色の
発光(複数色の画像情報)が一括して受光される。
【0023】
カラーCCDカメラ5で受光、検出された複数の色信号を含む画像情報は、演算処理装
置6でRGB信号に分離され、各色の単独画像情報としてそれぞれ検出される。これらの
各色の画像情報はそれぞれデジタル信号として記録手段、例えば演算処理装置6のメモリ
等に記録される。この際、白色成分を分離した後に赤色、緑色、青色を示すRGB信号の
割合を変化させることによって、ダイナミックレンジを調整することができる。図中7は
表示装置であり、各色の画像情報を直接表示することが可能とされている。
【0024】
さらに、色別に分離した各信号をそれぞれの信号で相互に演算して、その結果を記録す
ることもできる。例えば、ある物質で密度の違いが赤色成分で確認でき、別な物質で密度
の違いが緑色成分で見える場合には、それぞれが分かるように擬似カラーで表示すること
ができる。また、その部分のみを切り出して別に表示することもできる。さらに、赤色成
分中のノイズを緑色成分や青色成分で補正し、一部データが欠落して白色になっている部
分を補正することができる。
【0025】
上記の透過画像と同時に外観を観測するモニタカメラ9を備え、同時に通信装置8での
遠隔診断を可能としている。
【0026】
図2は、図1に示した放射線撮影装置で使用したカラー発光シートの構成の一例を示す
断面図である。この図2に示すように、カラー発光シート4は、例えばプラスチックフィ
ルムや不織布などからなるシート基材10を有しており、このシート基材10上に蛍光体
層11が設けられている。蛍光体層11の上部には、必要に応じて透明な保護膜12、例
えば厚さ数μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなる保護膜12が配
置される。
【0027】
上述した蛍光体層11は、複数色に発光する蛍光体、すなわち複数の発光波長領域を有
する蛍光体を含むものである。蛍光体層11には、例えばカラーCCDカメラなどを考慮
して、可視光領域(例えば波長400〜700nmの領域)内の広い波長範囲で発光する
蛍光体を用いることが好ましい。具体的には、可視光領域内の少なくとも2つの発光色に
対応する発光スペクトルを有する蛍光体を用いることが好ましい。すなわち、発光色が互
いに異なる主発光成分と副発光成分とを含む発光スペクトルを有する蛍光体を用いること
が好ましい。
【0028】
蛍光体の発光色としては、代表的には青色発光、緑色発光、赤色発光のうち少なくとも
2つの発光色が挙げられる。ただし、これらの発光色に限定されるものではなく、互いに
区別できる発光色であれば種々の発光色を適用することができ、例えば紫外線に近い紫色
発光や黄色発光などであってもよい。
【0029】
図3(A),(B)は、図1に示した放射線撮影装置で使用したカラー発光シート4と
カラーCCDカメラ5との感度特性(感度マッチング)、および蛍光体の付活剤濃度と発
光波長とを示すグラフである。
【0030】
図3(A)は、2種類のCCDカメラ5(A,B)の感度特性と、カラー発光シート4
に使用される蛍光体Gd2O2S:Eu(実線)およびGd2O2S:Tb(二点鎖線)
の発光特性を示している。この図3(A)に一点鎖線で示したカメラBの感度に比べて破
線で示したカメラAの感度が高い。この場合、蛍光体Gd2O2S:Tbに比べるとGd
2O2S:Euの方がカメラの感度特性にマッチングしており相対的に撮像の感度が高く
なる。
【0031】
また、図3(B)は、この蛍光体Gd2O2S:Euの付活剤Euの濃度を変えた場合
(4%および0.1%)を示している。この図3(B)に示すように、蛍光体Gd2O2
S:Euの付活剤Euの濃度を変えると、赤色発光領域(R)と緑色発光領域(G)、青
色発光領域(B)の割合を変えることができる。すなわち、図8に示すような撮影系の露
光量と濃度の関係を示す特性曲線を利用して、X線の線量の違いに対応して発光した複数
色の光を色毎に検出することで画像が得られる。得られた画像においては、低線量の部分
は緑色,青色の情報はなく赤色の情報として得られ、線量が多くなると赤色情報は飽和し
て緑色の情報として得られ、さらに線量が多くなると赤色,緑色の情報は飽和して青色の
情報として得られる。すなわち、比較的広い条件下で適切な濃度の写真像を得るとともに
、得られた写真像から多くの情報を得ることを可能にしている。
【0032】
図4は、本発明の放射線非破壊検査装置をドラム缶に適用した具体的な構成例を示して
いる。この図4に示す構成例では、被検体1としてドラム缶13を用いている。そして、
放射線源であるX線発生装置としてのX線管2と、ドラム缶13の外観を観察するモニタ
カメラ9とが同一支柱に設置されている。また、ドラム缶13をX線管2およびモニタカ
メラ9と対向する位置に移動するための移動手段として、水平配置のコンベア14と、ド
ラム缶13を昇降並びに回転させるターンテーブル15とを備えている。コンベア14は
、ドラム缶を多数のローラ14aにより移動させる機能と、ローラ14aをベルト14b
で移動させる機能とを備えており、複数のドラム缶13を縦状態でローラ14a上に搭載
して、ローラ14aを回転させながらX線管2およびモニタカメラ9の位置まで前進させ
ることができる。ターンテーブル15はX線管2およびモニタカメラ9に対向する位置に
配置され、ドラム缶13を例えば垂直軸心まわりに回転させることができる。ドラム缶1
3を挟んでX線管2およびモニタカメラ9と対向する位置には、カラー発光シート4およ
びカラーCCDカメラ5が配置されている。なお、図4には図示省略されているが、カラ
ーCCDカメラ5には図1と同様に、演算処理装置6、表示装置7および通信装置8が接
続され、例えば離間した遠隔操作できる場所に有線または無線により情報伝送が行われる
ようになっている。また、図示しないが、ドラム缶13を上下に移動する昇降機が設けら
れている。
【0033】
ところで、ドラム缶13の外観は、円柱状であるためどちらの方向から見ているか外観
のみからでは判別しにくい。そこで、ドラム缶13の外周面上に角度判別用の標識13a
を一体的に付し、また標識13aやドラム缶13の外周面にドラム缶ナンバー、社名、ロ
ゴなどを記載し、モニタカメラ9によってドラム缶13の向きを判別しやすい工夫を行っ
ている。
【0034】
撮像に際しては、X線管2より照射されるX線がドラム缶13を透過し、カラー発光シ
ート4とカラーCCDカメラ5に入力される。カラー発光シート4とカラーCCDカメラ
5により検出された複数の色信号を含むドラム缶13内の画像情報は、演算処理装置6で
RGB信号に分離され、各色の単独画像情報としてそれぞれ検出される。これらの各色の
画像情報はそれぞれデジタル信号として表示装置7に表示され、通信装置8等の記録手段
に記録される。さらに、このデータは、遠隔操作できる場所に送信される。
【0035】
この図4に示した装置では、ドラム缶13などの物品を回転させながら、外観と内部の
非破壊画像を同時にしかもカラー発光シートとカラーCCDカメラによりダイナミックレ
ンジの広い画像を同時に得ることができる。
【0036】
図5(A)〜(E)は、図4に示した装置を使用して得られた結果を例示する説明図で
ある。この図5(A)〜(E)の各図は、小さなドラム缶13を実際に撮像して得た写真
に基づいて作図したものであり、図5(A)はカラー取得画像を示し、図5(B)は外観
画像を示している。図5(C),(D),(E)は、それぞれ赤色成分の画像、緑色成分
の画像、青色成分の画像を示している。
【0037】
ドラム缶13の内部には、挿入物27として鉄製のパイプ27aやスパナ27b、ドラ
イバ27cなどを入れ、回転させながら撮影した。鉄などのX線が透過し難い物は、図5
(C)に示すように、赤色成分の画像で構造がよく見えている。例えば、配管27aの様
子やスパナ27bの様子など陰になっている部分でも透過して見えている。一方ドライバ
の柄のように樹脂で作成されている物は、緑色成分(図5(D))や青色成分(図5(E
))で確認することができる。これらの成分では、赤色成分と異なり、鉄などは真っ黒な
陰として写るに過ぎない。
【0038】
さらに、回転させて見ることで陰になった物の確認が容易になり、色成分の違った画像を
同時に観察できるため、内容物の確認がその場で瞬時に確認し易くなっている。また、外
観のモニタ画像(図5(B))も同時に観察でき、方向と中身の充填状況が分かり易くな
っている。
【0039】
図6は、本発明の放射線非破壊検査装置を配管に適用した実施形態の要部構成を例示し
ている。この図6に示す構成例では、被検体1として配管16を用いた場合の放射線非破
壊検査装置を示している。X線発生装置としてX線管2とモニタカメラ9並びにカラー発
光シート4とカラーCCDカメラ5は、ヘッド17にまとめて組み込んでいる。
【0040】
このヘッド17に送る電源とヘッド17より得られる外観並びに複数の色信号を含む透
過画像情報が表示・記録され、さらに遠隔に送信する機能がユニット18としてまとめて
構成されている。ヘッド17には、配管16まわりの回転と配管16に沿う例えば横方向
に自走する機能が持たせてある。なお、作業エリアはポール19で規制される。そして、
図6に枠付きとして示したように、遠隔操作できる場所20での情報転送により、画像情
報による診断と、ヘッド17およびユニット18の操作を計算機21で行えるようになっ
ている。
【0041】
図7は、本発明の放射線非破壊検査装置を移動しにくい物体に適用した構成例を示す説
明図である。この図7に示すように、被検体1として動かすことが困難な物体が台23に
搭載され、この台23は稼動台24上に配置されている。
【0042】
X線発生装置としてのX線管2と、X線3の方向を決めるコリメータ22とは被検体1
の上方に配置されている。
【0043】
台23の下方には、カラー発光シート4が被検体1の略直下に位置して設けられ、その
下方には反射用のミラー25が斜設されている。そして、このミラー25に臨む位置に、
ズームレンズ26を有するカラーCCDカメラ5が配置されている。
【0044】
撮像に際しては、X線管2から下方に向って照射されたX線3が被検体1を透過する。
そして、カラー発光シート4で発光した複数の色信号を含む透過画像が、ミラー25で反
射して横方向に曲げられ、ズームレンズ26を通してカラーCCDカメラ5で撮像される
。これらは一つの撮像ユニットにまとめて組み込まれ、さらに台23の下で移動できるよ
うになっている。撮像ユニットは、コリメータ22と連動し、特定の部位をXY方向に移
動して見ることができる。さらに、ズームレンズ26により局所的に拡大して見ることも
可能である。
【0045】
以上の実施形態によれば、被検体1に放射線を照射するX線管2等の放射線源と、この
放射線源から照射された放射線が被検体1を透過する先に配設され、放射線により複数色
に発光するとともに同一強度の放射線に対する複数色の発光の割合が異なる蛍光体を有す
るカラー発光シート4と、放射線の照射に基づいて蛍光体から放射される複数色の発光を
色別に分離して検出するカラーCCDカメラ5等の検出手段を備えた構成とすることによ
り、ダイナミックレンジの広い画像を同時に得ることができる。
【0046】
また、放射線源、放射線、被検体1およびカラー発光シート4等の少なくとも一つを他
に対して相対的に移動させるコンベア14、ターンテーブル15等の移動手段を備えてい
るので、例えば被検体1に対して放射線源とカラー発光シート4を相対的に動かして撮像
することにより、一方向からでは確認できない薄い物や重金属に隠れて見えにくい物の確
認を容易に行える。
【0047】
また、被検体1の外観を観察するモニタカメラ9と、このモニタカメラ9の画像および
放射線の照射に基づいて蛍光体から放射される複数色の発光からなる色別に分離された検
出画像を同時に表示する表示装置7等の表示手段、またはこれらの画像を記録する記録手
段とを備えているので、被検体1の外観を観察するカメラの画像と放射線の照射に基づい
て蛍光体から放射された複数色の発光を色別に分離して検出した画像を、同時に表示また
は記録することができ、外観から見た方向でどの部分に何が含まれているか、またどのよ
うな状態になっているか確認し易い。
【0048】
また、モニタカメラ9の画像および放射線の照射に基づいて蛍光体から放射される複数
色の発光からなる色別に分離された検出画像を、被検体1から離間した位置に有線または
無線により転送する通信装置8等の画像転送手段を備えているので、取得した画像を有線
または無線で転送し、遠隔診断を行うことができる。
【0049】
また、モニタカメラ9の画像および放射線の照射に基づいて蛍光体から放射される複数
色の発光からなる色別に分離された検出画像を、光学的または電子的に拡大処理するズー
ムレンズ26等のズーム機構を備え、画像を拡大して観察することができるので、局所的
な場所での分解能を高めることができる。
【0050】
また、被検体1を放射線に対して相対的に移動させて撮像する場合に、その被検体1を
上下または左右に回転させながらコンベア14等の搬送手段で連続的に移動させて撮像す
ることにより、被検体1のラインの流れを止めずに立体的な透視を行うことができる。
【0051】
また、被検体1を放射線に対して相対的に移動させて撮像されたカラー画像から、計算
機21により画像再構成を行って立体画像を得ることにより、コンピューテッドトモグラ
フィ画像による断層画像の観察を行うことができる。
【0052】
また、被検体1の外観画像と、放射線の照射に基づいて蛍光体から放射された複数色の
発光を色別に分離して検出した画像とを、同時に表示または記録する場合に、被検体1も
しくはこれを示す標識13aの位置または移動量を同時に表示し、または記録することに
より、被検体1の外観画像と放射線の照射に基づいて蛍光体から放射された複数色の発光
を色別に分離して検出した画像とを、同時に表示並びに記録するときに、被検体1の位置
や方向が分かり易くなる。
【0053】
また、被検体1に標識13aを付し、その被検体1の外観画像から標識13aを読み取
って被検体1の素性、検査位置もしくは移動量を同時に表示し、または記録することによ
り、特に球体や円柱、円錐など外観をどの方向から見ても区別が付きにくい被検体に対し
て、外観位置が明確になり、撮影した方向と内部の位置とを明確に知ることができる。
【0054】
また、被検体1を固定する一方、この被検体に対して放射線源、カメラおよび検出手段
の少なくともいずれかを相対的に移動させ、被検体1もしくはこれを示す標識13aの位
置または移動量を同時に表示し、または記録することにより、被検体1を移動することが
難しい場合の移動負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の放射線非破壊検査装置を適用した放射線撮影装置の実施形態の要部構成を模式的に示す説明図。
【図2】図1に示した放射線撮影装置で使用したカラー発光シートの構成の一例を示す断面図。
【図3】(A)(B)は、図1に示した放射線撮影装置で使用したカラー発光シートとカラーCCDカメラの感度特性と蛍光体の付活剤濃度と発光波長を示す図。
【図4】本発明の放射線非破壊検査装置をドラム缶に適用した実施形態の要部構成を示す図。
【図5】(A),(B)(C)(D)(E)は、図4に示した放射線非破壊検査装置を使用して得られた結果の一例を示す図。
【図6】本発明の放射線非破壊検査装置を配管に適用した実施形態の要部構成を示す図。
【図7】本発明の放射線非破壊検査装置を移動しにくい物体に適用した実施形態の要部構成を示す図。
【図8】本発明の放射線非破壊検査装置を適用した際に得られる濃度と受光量の特性曲線の一例を示す図。
【符号の説明】
【0056】
1…被検体,2…X線管,3…X線,4…カラー発光シート,5…カラーCCDカメラ
,6…演算処理装置,7…表示装置,8…通信装置,9…モニタカメラ,10…シート基
材,11…蛍光体層,12…保護膜,13…ドラム缶,14…コンベア,15…ターンテ
ーブル,16…配管,17…ヘッド,18…ユニット,19…ポール,20…遠隔操作で
きる場所,21…計算機,22…コリメータ,23…台,24…稼働台,25…ミラー,
26…ズームレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状被検体に放射線を照射する放射線源と、この放射線源から照射された放射線が前記被
検体を透過する先に配設され、前記放射線により複数色に発光するとともに同一強度の放
射線に対する前記複数色の発光の割合が異なる蛍光体を有するカラー発光シートと、この
カラー発光シートの後方に設けられ前記複数色の発光を受光するカラーCCDカメラと、
前記放射線源、放射線、カラー発光シート、カラーCCDカメラを一体的に組み込んだヘ
ッドと、前記カラー発光シートと前記カラーCCDカメラとの感度特性をマッチングして
相対的に撮影感度を高めて前記カラーCCDカメラで受光された複数の色信号を含む画像
情報をRGB信号に分離し各色の単独画像情報としてそれぞれ検出する演算処理装置と、
前記管状被検体に対して前記ヘッドを相対的に移動させる移動手段とを備えた放射線非破
壊検査装置を用いて行う放射線非破壊検査方法であって、前記ヘッドを前記移動手段によ
って前記管状被検体の管に沿う方向または管周りの回転方向に移動させつつ、前記カラー
CCDカメラで撮像を行うことを特徴とする放射線非破壊検査方法。
【請求項2】
前記ヘッドの電源と、前記カラーCCDカメラで得られる前記画像情報を記録する手段と
を具備したユニットを、前記ヘッドに接続してなることを特徴とする請求項1記載の放射
線非破壊検査方法。
【請求項3】
前記ユニットは、前記演算処理装置に前記画像情報を送信する機能を有することを特徴と
する請求項2記載の放射線非破壊検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−17446(P2007−17446A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201203(P2006−201203)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【分割の表示】特願2001−401565(P2001−401565)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】