放熱性成形体、放熱性部材及び筐体
【課題】軽量、高剛性で、かつ放熱性、耐熱寸法安定性に優れた放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体を提供する。
【解決手段】ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体であって、該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、該炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50wt%以上であり、該成形体の炭素繊維含有率が30〜80重量%であることを特徴とする放熱性成形体。
【解決手段】ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体であって、該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、該炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50wt%以上であり、該成形体の炭素繊維含有率が30〜80重量%であることを特徴とする放熱性成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化合成樹脂よりなる放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体に関する。詳しくは、本発明は、例えばパソコンやOA機器、携帯機器、フラットパネルディスプレイ等の部品や筐体部分として用いるのに好適な高剛性、軽量でかつ高放熱性、高耐熱寸法安定性を有した放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品、フラットパネルディスプレイなどの電気・電子機器の携帯化、薄型化、軽量化が進むにつれ、高放熱性・高耐熱寸法安定性が要求されている。その要求を達成するためにこれらの電子機器に搭載される光源、バッテリー、IC回路などの高集積化により、機器を構成する部品、特に筐体には、薄型化による製品の捩じれを抑制し、これらに搭載される内蔵部品の破損を防ぐ必要があるため、高剛性、軽量化を達成しつつ、かつ高放熱性、高耐熱寸法安定性が求められている。
【0003】
中でも、薄型を目的とする液晶TVに搭載される導光板を用いるタイプのバックライトについては、LED光源化に伴い、その発熱によるバックライトシャーシの熱変形が問題となっている。熱変形が大きいと、LED光源と導光板との光軸が維持できず、画像の表示品位が低下するという問題があった。このため、LEDを用いた筐体用部材は従来使用されてきた筐体用部材に対し、更なる高剛性、高放熱性、高耐熱寸法安定性が要求されている。
【0004】
特開2007−38519(特許文献1)には、強化繊維を含んでいる熱可塑性樹脂成形品を積層部材の硬質部材部分や、該積層部材の周囲の樹脂部材として使用してなる筐体が記載されている。この筐体は、剛性や強度が高いことは記載されているが、放熱性に関する記載は無く、特に強化繊維として、比機械的特性(弾性率)や比弾性率の点からポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が好ましいとされている(第0012段落)。しかしながら、一般的なPAN系の炭素繊維は熱伝導率及び引張弾性率が低いために、成形品は放熱特性及び剛性等に劣ったものとなる。
【0005】
特開2006−297929(特許文献2)には、電子機器用筐体の金属/繊維強化樹脂の積層複合材料が記載され、該繊維強化樹脂層を、炭素繊維を熱可塑性樹脂中に分散させた熱可塑性樹脂組成物にて構成することが記載されている。しかし、炭素繊維の種類及び好適な物性については記載がない。
【0006】
特開2008−230237(特許文献3)には、連続した炭素繊維を含んだ熱可塑性樹脂よりなる複合構造体が記載されているが、連続繊維を用いているためにリブや放熱フィンなどを有した複雑な形状の成形品の成形が困難である。また、連続繊維を使用しているため、強度や放熱性に異方性があり、粒子状の熱伝導性物質を用いた被覆層を設ける必要があり、成形が煩雑である。
【0007】
特開2006−49878(特許文献4)には、連続した炭素繊維とマトッリクス樹脂からなる熱伝導性部材が記載されているが、当該文献においては、PAN系の炭素繊維(東レ(株)製 トレカM40J、熱伝導率85W/m・K、引張弾性率377GPa)を用いることしか記載されていない(第0080段落)。また、連続繊維を使用するため、強度に異方性がある。
【0008】
特開2004−200586(特許文献5)には、炭素繊維を含有した樹脂モールド材で形成された筐体熱伝導部と、グラファイトシートあるいは金属箔である熱伝導部材を使用した筐体が記載されているが、炭素繊維としていかなる特性のものが好適であるかについての記載はない。さらに、これらは熱膨張による耐熱寸法安定性の向上や高剛性化による軽量化に関する効果も望めないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−38519号公報
【特許文献2】特開2006−297929号公報
【特許文献3】特開2008−230237号公報
【特許文献4】特開2006−49878号公報
【特許文献5】特開2004−200586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、軽量、高剛性で、かつ放熱性、耐熱寸法安定性に優れた放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)の放熱性成形体は、ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体であって、該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、該炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50wt%以上であり、該成形体の炭素繊維含有率が30〜80重量%であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の放熱性成形体は、請求項1において、前記炭素繊維が成形体の面方向に2次元ランダムに分散していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の放熱性成形体は、請求項1又は2において、厚さ方向に突出又は凹陥する凸部又は凹部を有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の放熱性成形体は、請求項3において、該凸部又は凹部が設けられた放熱性成形体の板面に正対したときの該凸部又は凹部の形状がトラス形、フィン形、筋交い形又は梯子形であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の放熱性成形体は、請求項1ないし4のいずれか1項において、板状部と、該板状部の周縁部が連なる、該板状部よりも平均肉厚が大きい枠状部とを有するように一体に成形されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6の放熱性成形体は、請求項1ないし4のいずれか1項において、枠状に成形されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7の放熱性部材は、請求項6の放熱性成形体と、該放熱性成形体が囲む枠状部の内側部に配置された板体部とを備えてなるものである。
【0018】
請求項8の放熱性部材は、請求項7において、前記板体部は、芯材と該芯材の両面に設けられた炭素繊維強化樹脂よりなる表皮材とを有することを特徴とするものである。
【0019】
請求項9の放熱性部材は、請求項8において、表皮材を構成する炭素繊維強化樹脂の炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50重量%以上であり、該炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維含有量が30〜80重量%であることを特徴とするものである。
重量平均繊維長が0.3mm未満では、急激に成形体の弾性率が低下し、軽量化効果が低い。また、25mmを超えた成形体を得ることは、成形工程での切断が起こるため、実質的に困難である。
【0020】
請求項10の放熱性部材は、請求項8又は9において、前記芯材は発泡構造体又はハニカム構造体よりなることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11の放熱性部材は、請求項7において、前記板体部は金属製であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項12の筐体は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放熱性成形体を備えてなるものである。
【0023】
請求項13の筐体は、請求項7ないし11のいずれか1項に記載の放熱性部材を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の放熱性成形体、放熱性部材及び筐体にあっては、放熱性成形体の炭素繊維が高引張弾性率かつ高熱伝導率のピッチ系炭素繊維であり、放熱性成形体、放熱性部材及び筐体の熱伝導率及び剛性が高い。また、放熱性成形体、放熱性部材及び筐体は放熱特性にも優れる。
【0025】
この放熱性成形体に、厚さ方向に突出又は凹陥する凸部又は凹部を設けることにより、放熱性成形体の比表面積が大きくなり、放熱特性が向上する。また、凸部を設けた場合には、放熱性成形体の強度及び剛性が大きくなる。
【0026】
この放熱性成形体を枠状とし、これとは別体の板体部を枠状部の内側に配置した放熱性部材の場合、放熱性成形体と板体部とを別に形成することができ、製造が容易である。また、板体部を枠状部とは別の素材にて構成することができる。板体部を芯材と、該芯材の両面に設けられた炭素繊維強化樹脂よりなる表皮材にて構成した場合、板体部の特性を種々の値とすることができる。例えば、芯材を発泡構造体又はハニカム構造体とすることにより、板体部を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係る放熱性成形体の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII部分の拡大断面斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る放熱性成形体の図4と同様部分の構成図である。
【図7】さらに別の実施の形態に係る放熱性成形体の図4と同様部分の構成図である。
【図8】異なる実施の形態に係る放熱性成形体の図3と同様部分の断面斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線斜視図である。
【図10】別の実施の形態に係る放熱性成形体の斜視図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】さらに別の実施の形態に係る放熱性成形体の断面斜視図である。
【図13】実施の形態に係る放熱性成形体を備えた液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明の放熱性成形体は、ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体である。まず、この炭素繊維について説明する。
【0030】
[ピッチ系炭素繊維]
本発明において用いるピッチ系炭素繊維は、好ましくは単繊維を100〜50000本集束剤により集束したものである。
【0031】
ピッチ系炭素繊維の炭素質原料としては、配向しやすい分子種が形成されており、光学的には異方性の炭素繊維を与えるようなものであれば特に制限はない。例えば、石炭系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、石油系の重質油、タール、ピッチ、または、ナフタレンやアントラセンの触媒反応による重合反応生成物等が挙げられる。これらの炭素質原料には、フリーカーボン、未溶解石炭、灰分、窒素分、硫黄分、触媒等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、濾過、遠心分離、あるいは溶剤を使用する静置沈降分離等の周知の方法であらかじめ除去しておくことが望ましい。
【0032】
また、前記炭素質原料を、例えば、加熱処理した後、特定溶剤で可溶分を抽出するといった方法、あるいは、水素供与性溶剤、水素ガスの存在下に水添処理するといった方法で予備処理を行っておいても良い。
【0033】
本発明で用いる炭素繊維の繊維径は3〜20μm、特に5〜12μmであることが好ましい。炭素繊維の繊維径が細過ぎると、取り扱い性に劣り、また、一般に極細の炭素繊維は高コストであるため、製品コストを押し上げる原因となる。炭素繊維の繊維径が太過ぎると、繊維強度が低下し、折れ易くなるため、好ましくない。
【0034】
なお、ここで、炭素繊維の繊維径は、炭素繊維の顕微鏡観察またはレーザー計測器により20〜30個の繊維径を測定し、その測定値の平均値で求められる。また、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率は、炭素繊維とエポキシ樹脂の一方向材を作製し、その繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率を測定した値を、複合則に則って、炭素繊維の体積含有率で割り返して、繊維単体の物性としたものである。さらに具体的には、引張弾性率については、JIS K7073に準拠し、万能試験機で測定された値からの計算値である。また、熱伝導率は、JIS R1611に準拠し、真空理工(株)製レーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TC−3000」で測定された値からの計算値である。後掲の実施例においても同様である。
【0035】
また、成形体における、炭素繊維の重量平均繊維長は重要な要素である。重量平均繊維長は重量としての存在率を示す。同種の繊維の場合は繊維の長さが重さと関係するため、重量平均繊維長は長い繊維が少ない場合、大きく低減する。繊維長さが短いと、例えば熱伝導や電気伝導などのパスの形成に関与する特性に関し、強化効果が低減する。成形体中に存在する炭素繊維は、重量平均繊維長が0.3〜25mm、特に1〜20mmであることが好ましい。また、炭素繊維は2〜50mmのものの割合が50wt%以上、好ましくは50〜90wt%の繊維長分布を有することが好ましい。重慮平均繊維長が0.3mm未満では、急激に成形体の弾性率が低下し、軽量化効果が低い。また、25mmを超えた成形体を得ることは、成形工程での切断が起こるため、実質的に困難である。
【0036】
成形体の製造に用いる炭素繊維の短繊維の長さは、好ましくは50mm以下特に1〜50mmとりわけ3〜20mmである。繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いがなくなって不織布を形成し難くなり、また得られる成形体の曲げ弾性率や熱伝導率を十分に高めることができない恐れがある。一方、原料繊維の長さが長過ぎると繊維同士の絡まりや開繊不良などを生じやすく、熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混合が不均一になる恐れがある。
【0037】
本発明で用いる炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率は400GPa以上、好ましくは440GPa以上、例えば500〜900GPaで、また、繊維軸方向の熱伝導率は、60W/mK以上、好ましくは110W/mK以上、例えば120〜600W/mKである。
【0038】
このように、それ自体、引張弾性率および熱伝導率の高い炭素繊維を用いることにより、得られる炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体の曲げ弾性率および熱伝導率を高くすることができる。
【0039】
炭素繊維の体積抵抗値は、1〜20μΩ・m特に2〜15μΩ・m程度が好ましい。
【0040】
炭素繊維は黒鉛化処理することにより、引張弾性率や熱伝導率が向上する。従って、本発明では、炭素繊維不織布として黒鉛化炭素繊維を用いてもよく、また、黒鉛化していない低弾性率・低熱伝導率の炭素繊維を不織布とした後に、樹脂と複合化する前の段階で黒鉛化処理して、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率や熱伝導率を高めるようにしてもよい。
本発明においては、従来発熱がある電子機器等の剛性や強度を確保するために使用されている金属部材は、熱伝導度が高い(アルミの場合、通常120〜220w/mK(面方向)程度)が、熱膨張係数が大きいので、枠状部材の熱寸法安定性を確保することが難しい。
特に、発光装置や回路装置などの熱を発生させる機器の筐体として、炭素繊維強化合成樹脂を使用すると、熱膨張係数が極めて低い(或いは無い)ので、寸法安定性に優れる。
しかも黒色であるので放熱性が高い。
中でも、炭素繊維強化合成樹脂の炭素繊維を高引張弾性率かつ高熱伝導率のピッチ系炭素繊維とすることにより、枠状部材及び筐体の熱伝導率、放射特性及び剛性が高いものとなる。特に、このような熱伝導率の高い炭素繊維を使用すると、炭素繊維強化合成樹脂成形体としての熱伝導率が20〜60W/mK(面方向)と、従来一般的であるPAN系の炭素繊維を使用した場合の2W/mK(面方向)という低い熱伝導率に比べても高いので、成形品に熱源からの熱が即座に分散し、放熱性が向上する。なお、該炭素繊維強化剛性樹脂成形体としては、熱伝導率が20〜40W/mK(面方向)であるものがより好ましい。
【0041】
[マトリックス樹脂]
次に、炭素繊維と複合化するマトリックス樹脂について説明する。
【0042】
炭素繊維と複合化する樹脂は、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロリレン樹脂(PP)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE)、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニルサルフォン樹脂(PPSU)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)等の芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
なお、樹脂が熱可塑性である場合、後述のように、表皮材と芯材とを熱融着によって接合して一体化して3層構造の板状体を製造することができる。
【0045】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(例えば紫外線硬化性樹脂)、湿気硬化性樹脂等が挙げられる。
【0046】
熱硬化性樹脂としては、常温で流動性を示し、加熱により硬化性を示す樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン、シリコーン樹脂等を挙げることができる。特に、炭素繊維との接着性や剛性、取り扱い易さの観点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0047】
光硬化性樹脂としては、ラジカル重合性成分及び光ラジカル重合開始剤、カチオン重合性成分及び光カチオン重合開始剤からなる組成物が用いることができる。本発明では、特に制限はないが好ましくは硬化後の樹脂剛性を考慮した場合、カチオン重合性成分及び光カチオン重合開始剤からなる組成物を用いることが好ましい。
【0048】
湿気硬化性樹脂としては、特開平2−16180、特開2000−036026、特開2000−219855、特開2000−211278、特開2000−219855、特開2002−175510等に記載の樹脂、具体的には、ウレタン系樹脂、アルコキシド基含有シリコーン系樹脂などが挙げられる。湿気硬化型接着剤の1例として、分子末端にイソシアネート基含有ウレタンポリマーを主成分とし、このイソシアネート基が水分と反応して架橋構造を形成するものがある。湿気硬化型接着剤としては、例えば積水化学工業社製9613N、住友スリーエム社製TE030、TE100、日立化成ポリマー社製ハイボン4820、カネボウエヌエスシー社製ボンドマスター170シリーズ、Henkel社製MacroplastQR3460等があげられる。
【0049】
これらの樹脂には、難燃剤、カップリング剤、導電性付与剤、無機フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、各種染顔料等、通常、樹脂に配合される各種の添加剤を配合してもよい。
【0050】
[成形体の製造方法]
<繊維混抄マット状成形体>
炭素繊維強化合成樹脂を用いた成形体を製造する手法として、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂も繊維状にしておき、炭素繊維と樹脂繊維からなる繊維混抄マット状成形体(不織布)とした後、熱プレスして樹脂を溶融させて成形するのが好ましい。ただし、マトリックス樹脂の一部を平均粒径0.1〜100μm特に0.5〜20μm程度の粉体としてもよい。
【0051】
樹脂繊維の長さは、好ましくは50mm以下特に1〜50mmとりわけ3〜20mmである。繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いが不十分となり、マット状成形体の成形や形状維持が困難となる。一方、樹脂繊維の長さが長過ぎると繊維同士の絡まりや開繊不良などを生じやすく、樹脂繊維と炭素繊維の混合が不均一になる恐れがある。
【0052】
熱可塑性樹脂繊維の製造方法としては、例えば単軸押出機、二軸押出機を用いた方法としてマルチフィラメントダイやモノフィラメントダイを用いた溶融紡糸方法、メルトブロー法やフラッシュ紡糸法、ポリマーブレンド法、エレクトロスピニング法、海島複合紡糸法、割繊複合紡糸法などの種々の方法を用いることが可能であり、通常は繊維径0.1μm〜500μm程度である。
【0053】
上記の繊維混抄マット状成形体は不織布と言われるものであり、前述した樹脂繊維及び炭素繊維を所定の長さに切断して短繊維状とし、それらを面状(2次元)にランダムに分散させてシート状とすることにより製造することができる。
【0054】
短繊維から繊維混抄マット状成形体を製造する方法としては湿式法、乾式法など様々な方法を採用することができる。
【0055】
湿式法による作成方法としては、繊維を溶媒中に分散させ、製紙工業で使われるビーター、パルパーなどの装置を使用して解繊させた後に網上に抄き上げ、付着した溶媒を乾燥除去してシート化する所謂湿式抄紙法などがある。
【0056】
湿式抄紙法による繊維混抄マット状成形体の製造において、炭素短繊維を均一に分散させるための溶媒としては、水、アセトン、炭素数1〜5のアルコール、アントラセン油、その他の有機溶媒が例示されるが、好ましくは水を使用する。
【0057】
乾式法による繊維混抄マット状成形体の作製方法としては、針や凹凸のついたロール間に繊維を通して機械的に叩解・解繊してシート化するカード法、あるいは、繊維を気流中で浮遊・解繊した後にスクリーン上に吸引してシート化するエアレイ法などがある。具体的には、例えば、炭素短繊維と樹脂繊維とを予備的に、例えば袋や容器等の中に両者を収容して軽く上下や左右に1分程度撹拌し、その後ヘンシェルミキサー、二軸式混合撹拌機などにより予備混合した後に、エアレイド装置等、乾式混合機を用いた装置中で、繊維を気流で撹拌した後、回転バーで叩き撹拌する等して更に撹拌混合し、これを気流搬送して金網ベルト上にベルト下部より吸引積層して不織布とする。
【0058】
繊維混抄マット状成形体の目付、すなわち単位面積あたりの繊維の重量(Fiber Areal Weight、以下FAWと記すことがある。)は250〜2000g/m2特に500〜1000g/m2であることが好ましい。FAWの小さいものは繊維混抄マット状成形体自体の強度不足により取り扱いが困難となる上、所望の厚さの成形体を得るためには、後述する成形工程で不織布および/または炭素繊維強化樹脂シートの積層枚数を多くする必要があり、製造工程が煩雑となる。逆にFAWの大きすぎるものは樹脂の含浸性が悪く、樹脂の複合化が容易ではなくなる。
【0059】
繊維混抄マット状成形体には、金属繊維を少量たとえば10重量%以下混合してもよい。金属繊維の好適な径、長さは炭素繊維の場合と同様である。
【0060】
<繊維混抄マット状成形体からの繊維強化成形体の製造方法>
上記の繊維混抄マット状成形体を、当該混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂の短繊維の流動開始温度(Tf)以上においてプレス成形することにより繊維強化成形体が製造される。
【0061】
なお、繊維混抄マット状成形体から繊維強化成形体を直接に成形してもよいが、繊維混抄マット状成形体を溶融プレス成形することによりプレスシートを成形し、このプレスシートをプレス成形することにより繊維強化成形体を成形してもよい。
【0062】
このプレス成形時の温度は、流動開始温度Tfよりも10〜100℃特に20〜50℃程度高い温度であることが好ましい。プレス成形時の圧力は1〜20MPa特に3〜10MPa程度が好適であり、プレス時間は1〜30min特に3〜20min程度が好適である。このプレス成形に際し、繊維混抄マット状成形体又はプレスシートを1層だけプレスしてもよく、2枚以上重ねて複層プレス成形してもよい。この複層プレス成形によれば、厚みの大きい繊維強化成形体を製造することができる。
【0063】
製造された繊維強化樹脂成形体中における炭素繊維と樹脂との合計に対する炭素繊維の割合は30〜80重量%、特に35〜65重量%であることが好ましい。
また、繊維強化樹脂成形体としての面方向の熱伝導率は5〜60W/mKが好ましく、より好ましくは20〜40W/mKである。
【0064】
[成形体の形状]
本発明の繊維強化樹脂成形体は、好ましくは、平均肉厚が0.3〜2.0mm特に0.5〜1.5mmの板状である。平均肉厚は、板状の成形体の体積を板面の投影面積で除した値である。
【0065】
次に、上記炭素繊維強化樹脂成形体よりなる製品形状の一例について第1図〜第13図を参照して説明する。これらの成形体は、電子機器の筐体として用いられる長方形の板状又は枠状のものである。
【0066】
第1図〜第5図の成形体1は、比較的厚さが大きい枠状部2と、この枠状部2で囲まれた内側領域の板状部3とを有している。
【0067】
成形体1の1つの長辺に沿う辺部にあっては、厚さ方向に突出する凸部4が該長辺方向に延設され、この凸部4の裏側には、厚さ方向に凹陥する凹部5が設けられている。この凹部5を横断するように複数のリブ部6が所定間隔をあけて設けられている。リブ部6の板面は該長辺方向と直交方向に延在している。第4図の通り、多数のリブ部6が所定間隔をあけて平行に配列されているので、このリブ部6の配列は梯子状である。
【0068】
この成形体1は、上記の成形用材料を金型内に配置して熱プレスすることにより全体として一体に成形されたものである。リブ部6等を含め、成形体1の全体に成形用材料中の炭素繊維が存在している。
【0069】
この成形体1を用いた液晶表示装置の断面構成の一例を第13図に示す。なお、第13図は厚さ方向に拡大した模式図であり、成形体の寸法は第1図〜第5図のものとは異なっている。
【0070】
この液晶表示装置10にあっては、成形体1の板状部3上に反射層11を介して導光板12が配置されている。この導光板12の端面に沿ってLED等の発光装置13が設置されている。この発光装置13は凸部4に沿って配置されている。導光板12上に光学シート14を介して液晶パネル15が設置され、その前面がガラス板16で覆われている。発光装置13で発生した熱は、主として凸部4及びリブ部6を介して放散される。多数のリブ部6を設けて放熱面積を大きくしているので、成形体1の素材の熱伝導率が高いことと相俟って放熱特性に優れたものとなっている。
【0071】
また、成形体1に枠状部2、凸部4及びリブ6を設けているので、成形体1の素材の高剛性と合わせて、成形体1の強度、剛性が高いものとなっている。
【0072】
第6図〜第9図に、リブの構成を異ならせた成形体1A〜1Cを示す。第6図の成形体1Aは、凹部5にさらに斜交方向のリブ部7を設け、トラス構造としたものである。第7図の成形体1Bは、斜め十字形のリブ部8を設けて筋交い構造としたものである。第8,9図の成形体1Cは、リブ部9を凹部5の長手方向に延設してフィン構造としたものである。
【0073】
本発明では、上記の板状部3に対しさらに別の薄板状部材を積層して一体化させてもよい。このような薄板状部材としては、合成樹脂のハニカム、金属シートなどが例示される。薄板状部材を板状部3に一体化させるには、接着、溶着などが好適である。この薄板状部材の上からさらに上記炭素繊維強化樹脂を重ね、接着、溶着等により一体化させて三層構造としてもよい。
【0074】
第1図〜第9図の成形体1,1A〜1Cは板状部3を備え、板央部から周縁部まで全体として一体の板状となっているが、本発明の成形体は、第10,11図のように枠状の成形体1Dであってもよい。この成形体1Dの板央の開口部1aに、別途成形された板状体が装着されて筐体とされる。第10,11図のその他の符号は第1図〜第5図と同一部分を示している。
【0075】
板央の開口部1aに装着される板状体は、上記の炭素繊維強化樹脂製であってもよく、炭素繊維強化樹脂とその他の素材とを積層した積層体であってもよく、金属など他の素材にて構成された板状体であってもよい。
【0076】
第12図は、上記炭素繊維強化樹脂よりなる枠状体21と、積層構造の板状体22とを備えた放熱性成形体の一例を示す断面斜視図である。
【0077】
この枠状体21は、長方形又は正方形の枠状であり、放熱性成形体20の周縁を構成している。この枠状体21の内周面に突状部21aが設けられ、板状体22の端面の凹条が係合しているが、板状体22と枠状体21との係合方式はこれに限定されない。例えば、枠状体21の内周縁に凹段部を切欠状に設け、板状体22の周縁部を該凹段部に係合させてもよい。また、板状体22と枠状体21とを接着や溶着によって結合してもよい。
【0078】
この第12図の実施の形態では、板状体22は炭素繊維強化樹脂よりなる1対の表皮材22a,22aと、該表皮材22a,22aに挟持された芯材22bとを有したサンドイッチ構造体よりなる。表皮材22aを構成する炭素繊維強化樹脂としては、上記の炭素繊維強化樹脂が好適である。芯材22bとしては、合成樹脂板、発泡合成樹脂板、発泡合成樹脂のハニカム、パンチングメタル、金属メッシュ、金属パネルなどのいずれでもよい。金属としてはアルミ、アルミ合金、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼などが例示される。なお、樹脂に難燃剤が配合されていることが望ましい。
【0079】
第12図では、枠状体21はその全体が上記炭素繊維強化樹脂にて枠形状とされているが、一部を金属にて構成してもよい。例えば、長方形の枠状体の長辺部分を炭素繊維強化樹脂にて構成し、短辺部分を金属(例えば、アルミ、アルミ合金、銅合金、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼など)にて構成し、両者をビス、リベット、接着、樹脂の溶着などによって連結した枠状体であっても良い。
【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0081】
なお、以下の実施例1,3では、以下のようにして製造した繊維混抄マット状成形体のプレス成形体を金型で熱プレスして成形体(バックライトシャーシ)を成形した。
【0082】
[繊維混抄マット状成形体の調製]
ピッチ系炭素繊維としてダイアリード6371T(三菱樹脂(株)製、引張弾性率640GPa、繊維軸方向の熱伝導率140W/mK、6mmカットファイバー)60重量部を用い、熱可塑性樹脂繊維としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバレックス M7020AD2」)を用いて溶融紡糸法により作製した樹脂繊維40重量部を用い、分散剤としてポリエチレングリコール(Mw=50000)を用いた。これらの繊維を50Lの水槽へ導入し、さらに濃度0.1%となるように分散剤を加えた後にマキタ製ハンドミキサーを用いて1360rpmの回転速度で15秒間攪拌させた後に400Lの水を入れた水槽へ導入し、更に1分程度混合・開繊させた。次いで、1m2の金網上で抄き上げることにより目付け750g/m2の繊維混抄マット状成形体とした。
【0083】
この繊維混抄マット状成形体を1枚または2枚、厚さ1または2mmのスペーサーを用いて温度280℃、圧力3〜5MPa、加圧保持時間7分で溶融プレス成形することにより厚み1mmまたは2mmのプレス成形体(以下、プレスシートという。)を作製した。このプレスシート中の炭素繊維の割合は、上記の配合の通り、60重量%である。
【0084】
[実施例1]
このプレスシート(厚さ1mm品)を赤外線ヒータにより成形温度300℃に予熱後、金型温度130℃のプレス金型にて印加圧力5MPaでプレス成形し、1分間の冷却後に成形体を離型し、第1,2,6図に示す構造の放熱性成形体1Aよりなるフラットパネルディスプレイ用バックライトシャーシを作製した。この放熱性成形体(バックライトシャーシ)は、板状部2の肉厚0.6mm、外形950×550mm、最高高さ(凸部4における厚さ)6mmであり、凸部4の裏面に第6図のトラス構造を有する。
【0085】
なお、この成形体を溶剤で溶解して炭素繊維を取り出し、その長さを測定したところ、重量平均繊維長は3mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合は85wt%であった。
【0086】
繊維長の測定方法は次の通りである。
【0087】
溶剤を用いて成形体の樹脂部分を溶解させたのちに白色シート上に移し、乾燥させた後に、光学顕微鏡により観察する。このとき、残存する樹脂材料は白色シートにより観察されなくなり、結果として炭素繊維からなる黒色繊維のみが観察されるようになる。この炭素繊維をランダムに1000本選択し、繊維長さを測定する。
【0088】
[実施例2]
実施例1で得られた成形品の板状部3にアラミド製ハニカム(デュポン(株)ノーメックス製ハニカム;セルサイズ1/8” 箔厚(0.05mm、密度0.0048g/cm2、厚さ3mm)を積層し、エポキシ接着剤で貼り付けた後、さらに上記プレスシート(厚さ1mm品)をエポキシ接着剤で貼り付けることにより、ハニカムコアをサンドイッチしたフラットパネルディスプレイ用バックライトシャーシを作製した。
【0089】
[実施例3]
上記プレスシート(厚さ2mm品)を赤外線ヒータにより成形温度300℃に予熱後、金型温度130℃のプレス金型にて印加圧力5MPaでプレスし、1分間の冷却後に成形体を離型し、第10,11図に示す構造を有した、基本度肉厚1.2mmt、外形950×550mm、内形810×310mm、最高部の高さ6mm、凸部4の裏面にトラス構造を有する枠体形状のフラットパネルディスプレイ用バックライトシャーシを作製した。
【0090】
なお、この成形体を溶剤で溶解して炭素繊維を取り出し、その長さを測定したところ、重量平均繊維長は3.5mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合は75wt%であった。
【0091】
[比較例1]
アルミ材として、三菱樹脂(株)製 KN500(厚さ10mm、長さ700mm、幅40mm)の加工ブロックよりNC旋盤加工機を用いて、外形830×40×最後部の高さ6mmの帯状部材を作製した。この帯状部材を枠状に組み合わせ、アルミ製リベットで固定し、フラットパネルディスプレイ用の枠状のバックライトシャーシを作製した。
【0092】
[評価項目及びその測定方法並びに結果]
上記の各シャーシについて、以下の3項目を次のようにして測定した。
(1)荷重撓み量
枠体を3点で固定し、このうちの中間の1点に50Nの荷重を加え、変位量(mm)を測定した。
(2)発熱状態(温度分布)
周囲温度24℃にて、長辺に沿ってLED光源基盤(32.5W)を取り付け、1時間点灯した後、熱伝対を用いて、長辺の中央部のLED光源から1mmの箇所(測定点1)及び短辺の中央の箇所(測定点2)の温度をそれぞれ計測した。
(3)熱変形量
周囲温度24℃にて、長辺に沿ってLED光源(32.5W)基盤を取り付け、1時間点灯後の最大変位量を測定した。
【0093】
評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の通り、実施例1〜3の放熱性成形体はすべての評価項目を満足するものである。
【符号の説明】
【0096】
1,1A,1B,1C,1D 放熱性成形体
2 枠状部
3 板状部
4 凸部
5 凹部
6〜9 リブ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維強化合成樹脂よりなる放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体に関する。詳しくは、本発明は、例えばパソコンやOA機器、携帯機器、フラットパネルディスプレイ等の部品や筐体部分として用いるのに好適な高剛性、軽量でかつ高放熱性、高耐熱寸法安定性を有した放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品、フラットパネルディスプレイなどの電気・電子機器の携帯化、薄型化、軽量化が進むにつれ、高放熱性・高耐熱寸法安定性が要求されている。その要求を達成するためにこれらの電子機器に搭載される光源、バッテリー、IC回路などの高集積化により、機器を構成する部品、特に筐体には、薄型化による製品の捩じれを抑制し、これらに搭載される内蔵部品の破損を防ぐ必要があるため、高剛性、軽量化を達成しつつ、かつ高放熱性、高耐熱寸法安定性が求められている。
【0003】
中でも、薄型を目的とする液晶TVに搭載される導光板を用いるタイプのバックライトについては、LED光源化に伴い、その発熱によるバックライトシャーシの熱変形が問題となっている。熱変形が大きいと、LED光源と導光板との光軸が維持できず、画像の表示品位が低下するという問題があった。このため、LEDを用いた筐体用部材は従来使用されてきた筐体用部材に対し、更なる高剛性、高放熱性、高耐熱寸法安定性が要求されている。
【0004】
特開2007−38519(特許文献1)には、強化繊維を含んでいる熱可塑性樹脂成形品を積層部材の硬質部材部分や、該積層部材の周囲の樹脂部材として使用してなる筐体が記載されている。この筐体は、剛性や強度が高いことは記載されているが、放熱性に関する記載は無く、特に強化繊維として、比機械的特性(弾性率)や比弾性率の点からポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が好ましいとされている(第0012段落)。しかしながら、一般的なPAN系の炭素繊維は熱伝導率及び引張弾性率が低いために、成形品は放熱特性及び剛性等に劣ったものとなる。
【0005】
特開2006−297929(特許文献2)には、電子機器用筐体の金属/繊維強化樹脂の積層複合材料が記載され、該繊維強化樹脂層を、炭素繊維を熱可塑性樹脂中に分散させた熱可塑性樹脂組成物にて構成することが記載されている。しかし、炭素繊維の種類及び好適な物性については記載がない。
【0006】
特開2008−230237(特許文献3)には、連続した炭素繊維を含んだ熱可塑性樹脂よりなる複合構造体が記載されているが、連続繊維を用いているためにリブや放熱フィンなどを有した複雑な形状の成形品の成形が困難である。また、連続繊維を使用しているため、強度や放熱性に異方性があり、粒子状の熱伝導性物質を用いた被覆層を設ける必要があり、成形が煩雑である。
【0007】
特開2006−49878(特許文献4)には、連続した炭素繊維とマトッリクス樹脂からなる熱伝導性部材が記載されているが、当該文献においては、PAN系の炭素繊維(東レ(株)製 トレカM40J、熱伝導率85W/m・K、引張弾性率377GPa)を用いることしか記載されていない(第0080段落)。また、連続繊維を使用するため、強度に異方性がある。
【0008】
特開2004−200586(特許文献5)には、炭素繊維を含有した樹脂モールド材で形成された筐体熱伝導部と、グラファイトシートあるいは金属箔である熱伝導部材を使用した筐体が記載されているが、炭素繊維としていかなる特性のものが好適であるかについての記載はない。さらに、これらは熱膨張による耐熱寸法安定性の向上や高剛性化による軽量化に関する効果も望めないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−38519号公報
【特許文献2】特開2006−297929号公報
【特許文献3】特開2008−230237号公報
【特許文献4】特開2006−49878号公報
【特許文献5】特開2004−200586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、軽量、高剛性で、かつ放熱性、耐熱寸法安定性に優れた放熱性成形体と、この放熱性成形体を用いた放熱性部材及び筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明(請求項1)の放熱性成形体は、ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体であって、該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、該炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50wt%以上であり、該成形体の炭素繊維含有率が30〜80重量%であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の放熱性成形体は、請求項1において、前記炭素繊維が成形体の面方向に2次元ランダムに分散していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の放熱性成形体は、請求項1又は2において、厚さ方向に突出又は凹陥する凸部又は凹部を有することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の放熱性成形体は、請求項3において、該凸部又は凹部が設けられた放熱性成形体の板面に正対したときの該凸部又は凹部の形状がトラス形、フィン形、筋交い形又は梯子形であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の放熱性成形体は、請求項1ないし4のいずれか1項において、板状部と、該板状部の周縁部が連なる、該板状部よりも平均肉厚が大きい枠状部とを有するように一体に成形されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6の放熱性成形体は、請求項1ないし4のいずれか1項において、枠状に成形されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7の放熱性部材は、請求項6の放熱性成形体と、該放熱性成形体が囲む枠状部の内側部に配置された板体部とを備えてなるものである。
【0018】
請求項8の放熱性部材は、請求項7において、前記板体部は、芯材と該芯材の両面に設けられた炭素繊維強化樹脂よりなる表皮材とを有することを特徴とするものである。
【0019】
請求項9の放熱性部材は、請求項8において、表皮材を構成する炭素繊維強化樹脂の炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50重量%以上であり、該炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維含有量が30〜80重量%であることを特徴とするものである。
重量平均繊維長が0.3mm未満では、急激に成形体の弾性率が低下し、軽量化効果が低い。また、25mmを超えた成形体を得ることは、成形工程での切断が起こるため、実質的に困難である。
【0020】
請求項10の放熱性部材は、請求項8又は9において、前記芯材は発泡構造体又はハニカム構造体よりなることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11の放熱性部材は、請求項7において、前記板体部は金属製であることを特徴とするものである。
【0022】
請求項12の筐体は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放熱性成形体を備えてなるものである。
【0023】
請求項13の筐体は、請求項7ないし11のいずれか1項に記載の放熱性部材を備えてなるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の放熱性成形体、放熱性部材及び筐体にあっては、放熱性成形体の炭素繊維が高引張弾性率かつ高熱伝導率のピッチ系炭素繊維であり、放熱性成形体、放熱性部材及び筐体の熱伝導率及び剛性が高い。また、放熱性成形体、放熱性部材及び筐体は放熱特性にも優れる。
【0025】
この放熱性成形体に、厚さ方向に突出又は凹陥する凸部又は凹部を設けることにより、放熱性成形体の比表面積が大きくなり、放熱特性が向上する。また、凸部を設けた場合には、放熱性成形体の強度及び剛性が大きくなる。
【0026】
この放熱性成形体を枠状とし、これとは別体の板体部を枠状部の内側に配置した放熱性部材の場合、放熱性成形体と板体部とを別に形成することができ、製造が容易である。また、板体部を枠状部とは別の素材にて構成することができる。板体部を芯材と、該芯材の両面に設けられた炭素繊維強化樹脂よりなる表皮材にて構成した場合、板体部の特性を種々の値とすることができる。例えば、芯材を発泡構造体又はハニカム構造体とすることにより、板体部を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係る放熱性成形体の斜視図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII部分の拡大断面斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る放熱性成形体の図4と同様部分の構成図である。
【図7】さらに別の実施の形態に係る放熱性成形体の図4と同様部分の構成図である。
【図8】異なる実施の形態に係る放熱性成形体の図3と同様部分の断面斜視図である。
【図9】図8のIX−IX線斜視図である。
【図10】別の実施の形態に係る放熱性成形体の斜視図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】さらに別の実施の形態に係る放熱性成形体の断面斜視図である。
【図13】実施の形態に係る放熱性成形体を備えた液晶表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明の放熱性成形体は、ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体である。まず、この炭素繊維について説明する。
【0030】
[ピッチ系炭素繊維]
本発明において用いるピッチ系炭素繊維は、好ましくは単繊維を100〜50000本集束剤により集束したものである。
【0031】
ピッチ系炭素繊維の炭素質原料としては、配向しやすい分子種が形成されており、光学的には異方性の炭素繊維を与えるようなものであれば特に制限はない。例えば、石炭系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、石油系の重質油、タール、ピッチ、または、ナフタレンやアントラセンの触媒反応による重合反応生成物等が挙げられる。これらの炭素質原料には、フリーカーボン、未溶解石炭、灰分、窒素分、硫黄分、触媒等の不純物が含まれているが、これらの不純物は、濾過、遠心分離、あるいは溶剤を使用する静置沈降分離等の周知の方法であらかじめ除去しておくことが望ましい。
【0032】
また、前記炭素質原料を、例えば、加熱処理した後、特定溶剤で可溶分を抽出するといった方法、あるいは、水素供与性溶剤、水素ガスの存在下に水添処理するといった方法で予備処理を行っておいても良い。
【0033】
本発明で用いる炭素繊維の繊維径は3〜20μm、特に5〜12μmであることが好ましい。炭素繊維の繊維径が細過ぎると、取り扱い性に劣り、また、一般に極細の炭素繊維は高コストであるため、製品コストを押し上げる原因となる。炭素繊維の繊維径が太過ぎると、繊維強度が低下し、折れ易くなるため、好ましくない。
【0034】
なお、ここで、炭素繊維の繊維径は、炭素繊維の顕微鏡観察またはレーザー計測器により20〜30個の繊維径を測定し、その測定値の平均値で求められる。また、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率は、炭素繊維とエポキシ樹脂の一方向材を作製し、その繊維軸方向の引張弾性率および熱伝導率を測定した値を、複合則に則って、炭素繊維の体積含有率で割り返して、繊維単体の物性としたものである。さらに具体的には、引張弾性率については、JIS K7073に準拠し、万能試験機で測定された値からの計算値である。また、熱伝導率は、JIS R1611に準拠し、真空理工(株)製レーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TC−3000」で測定された値からの計算値である。後掲の実施例においても同様である。
【0035】
また、成形体における、炭素繊維の重量平均繊維長は重要な要素である。重量平均繊維長は重量としての存在率を示す。同種の繊維の場合は繊維の長さが重さと関係するため、重量平均繊維長は長い繊維が少ない場合、大きく低減する。繊維長さが短いと、例えば熱伝導や電気伝導などのパスの形成に関与する特性に関し、強化効果が低減する。成形体中に存在する炭素繊維は、重量平均繊維長が0.3〜25mm、特に1〜20mmであることが好ましい。また、炭素繊維は2〜50mmのものの割合が50wt%以上、好ましくは50〜90wt%の繊維長分布を有することが好ましい。重慮平均繊維長が0.3mm未満では、急激に成形体の弾性率が低下し、軽量化効果が低い。また、25mmを超えた成形体を得ることは、成形工程での切断が起こるため、実質的に困難である。
【0036】
成形体の製造に用いる炭素繊維の短繊維の長さは、好ましくは50mm以下特に1〜50mmとりわけ3〜20mmである。繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いがなくなって不織布を形成し難くなり、また得られる成形体の曲げ弾性率や熱伝導率を十分に高めることができない恐れがある。一方、原料繊維の長さが長過ぎると繊維同士の絡まりや開繊不良などを生じやすく、熱可塑性樹脂繊維と炭素繊維の混合が不均一になる恐れがある。
【0037】
本発明で用いる炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率は400GPa以上、好ましくは440GPa以上、例えば500〜900GPaで、また、繊維軸方向の熱伝導率は、60W/mK以上、好ましくは110W/mK以上、例えば120〜600W/mKである。
【0038】
このように、それ自体、引張弾性率および熱伝導率の高い炭素繊維を用いることにより、得られる炭素繊維強化樹脂シートおよび炭素繊維強化樹脂成形体の曲げ弾性率および熱伝導率を高くすることができる。
【0039】
炭素繊維の体積抵抗値は、1〜20μΩ・m特に2〜15μΩ・m程度が好ましい。
【0040】
炭素繊維は黒鉛化処理することにより、引張弾性率や熱伝導率が向上する。従って、本発明では、炭素繊維不織布として黒鉛化炭素繊維を用いてもよく、また、黒鉛化していない低弾性率・低熱伝導率の炭素繊維を不織布とした後に、樹脂と複合化する前の段階で黒鉛化処理して、炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率や熱伝導率を高めるようにしてもよい。
本発明においては、従来発熱がある電子機器等の剛性や強度を確保するために使用されている金属部材は、熱伝導度が高い(アルミの場合、通常120〜220w/mK(面方向)程度)が、熱膨張係数が大きいので、枠状部材の熱寸法安定性を確保することが難しい。
特に、発光装置や回路装置などの熱を発生させる機器の筐体として、炭素繊維強化合成樹脂を使用すると、熱膨張係数が極めて低い(或いは無い)ので、寸法安定性に優れる。
しかも黒色であるので放熱性が高い。
中でも、炭素繊維強化合成樹脂の炭素繊維を高引張弾性率かつ高熱伝導率のピッチ系炭素繊維とすることにより、枠状部材及び筐体の熱伝導率、放射特性及び剛性が高いものとなる。特に、このような熱伝導率の高い炭素繊維を使用すると、炭素繊維強化合成樹脂成形体としての熱伝導率が20〜60W/mK(面方向)と、従来一般的であるPAN系の炭素繊維を使用した場合の2W/mK(面方向)という低い熱伝導率に比べても高いので、成形品に熱源からの熱が即座に分散し、放熱性が向上する。なお、該炭素繊維強化剛性樹脂成形体としては、熱伝導率が20〜40W/mK(面方向)であるものがより好ましい。
【0041】
[マトリックス樹脂]
次に、炭素繊維と複合化するマトリックス樹脂について説明する。
【0042】
炭素繊維と複合化する樹脂は、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロリレン樹脂(PP)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE)、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニルサルフォン樹脂(PPSU)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)等の芳香族ポリアミド樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
なお、樹脂が熱可塑性である場合、後述のように、表皮材と芯材とを熱融着によって接合して一体化して3層構造の板状体を製造することができる。
【0045】
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(例えば紫外線硬化性樹脂)、湿気硬化性樹脂等が挙げられる。
【0046】
熱硬化性樹脂としては、常温で流動性を示し、加熱により硬化性を示す樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン、シリコーン樹脂等を挙げることができる。特に、炭素繊維との接着性や剛性、取り扱い易さの観点からエポキシ樹脂が好ましい。
【0047】
光硬化性樹脂としては、ラジカル重合性成分及び光ラジカル重合開始剤、カチオン重合性成分及び光カチオン重合開始剤からなる組成物が用いることができる。本発明では、特に制限はないが好ましくは硬化後の樹脂剛性を考慮した場合、カチオン重合性成分及び光カチオン重合開始剤からなる組成物を用いることが好ましい。
【0048】
湿気硬化性樹脂としては、特開平2−16180、特開2000−036026、特開2000−219855、特開2000−211278、特開2000−219855、特開2002−175510等に記載の樹脂、具体的には、ウレタン系樹脂、アルコキシド基含有シリコーン系樹脂などが挙げられる。湿気硬化型接着剤の1例として、分子末端にイソシアネート基含有ウレタンポリマーを主成分とし、このイソシアネート基が水分と反応して架橋構造を形成するものがある。湿気硬化型接着剤としては、例えば積水化学工業社製9613N、住友スリーエム社製TE030、TE100、日立化成ポリマー社製ハイボン4820、カネボウエヌエスシー社製ボンドマスター170シリーズ、Henkel社製MacroplastQR3460等があげられる。
【0049】
これらの樹脂には、難燃剤、カップリング剤、導電性付与剤、無機フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、各種染顔料等、通常、樹脂に配合される各種の添加剤を配合してもよい。
【0050】
[成形体の製造方法]
<繊維混抄マット状成形体>
炭素繊維強化合成樹脂を用いた成形体を製造する手法として、マトリックス樹脂である熱可塑性樹脂も繊維状にしておき、炭素繊維と樹脂繊維からなる繊維混抄マット状成形体(不織布)とした後、熱プレスして樹脂を溶融させて成形するのが好ましい。ただし、マトリックス樹脂の一部を平均粒径0.1〜100μm特に0.5〜20μm程度の粉体としてもよい。
【0051】
樹脂繊維の長さは、好ましくは50mm以下特に1〜50mmとりわけ3〜20mmである。繊維の長さが短か過ぎると、繊維同士の絡み合いが不十分となり、マット状成形体の成形や形状維持が困難となる。一方、樹脂繊維の長さが長過ぎると繊維同士の絡まりや開繊不良などを生じやすく、樹脂繊維と炭素繊維の混合が不均一になる恐れがある。
【0052】
熱可塑性樹脂繊維の製造方法としては、例えば単軸押出機、二軸押出機を用いた方法としてマルチフィラメントダイやモノフィラメントダイを用いた溶融紡糸方法、メルトブロー法やフラッシュ紡糸法、ポリマーブレンド法、エレクトロスピニング法、海島複合紡糸法、割繊複合紡糸法などの種々の方法を用いることが可能であり、通常は繊維径0.1μm〜500μm程度である。
【0053】
上記の繊維混抄マット状成形体は不織布と言われるものであり、前述した樹脂繊維及び炭素繊維を所定の長さに切断して短繊維状とし、それらを面状(2次元)にランダムに分散させてシート状とすることにより製造することができる。
【0054】
短繊維から繊維混抄マット状成形体を製造する方法としては湿式法、乾式法など様々な方法を採用することができる。
【0055】
湿式法による作成方法としては、繊維を溶媒中に分散させ、製紙工業で使われるビーター、パルパーなどの装置を使用して解繊させた後に網上に抄き上げ、付着した溶媒を乾燥除去してシート化する所謂湿式抄紙法などがある。
【0056】
湿式抄紙法による繊維混抄マット状成形体の製造において、炭素短繊維を均一に分散させるための溶媒としては、水、アセトン、炭素数1〜5のアルコール、アントラセン油、その他の有機溶媒が例示されるが、好ましくは水を使用する。
【0057】
乾式法による繊維混抄マット状成形体の作製方法としては、針や凹凸のついたロール間に繊維を通して機械的に叩解・解繊してシート化するカード法、あるいは、繊維を気流中で浮遊・解繊した後にスクリーン上に吸引してシート化するエアレイ法などがある。具体的には、例えば、炭素短繊維と樹脂繊維とを予備的に、例えば袋や容器等の中に両者を収容して軽く上下や左右に1分程度撹拌し、その後ヘンシェルミキサー、二軸式混合撹拌機などにより予備混合した後に、エアレイド装置等、乾式混合機を用いた装置中で、繊維を気流で撹拌した後、回転バーで叩き撹拌する等して更に撹拌混合し、これを気流搬送して金網ベルト上にベルト下部より吸引積層して不織布とする。
【0058】
繊維混抄マット状成形体の目付、すなわち単位面積あたりの繊維の重量(Fiber Areal Weight、以下FAWと記すことがある。)は250〜2000g/m2特に500〜1000g/m2であることが好ましい。FAWの小さいものは繊維混抄マット状成形体自体の強度不足により取り扱いが困難となる上、所望の厚さの成形体を得るためには、後述する成形工程で不織布および/または炭素繊維強化樹脂シートの積層枚数を多くする必要があり、製造工程が煩雑となる。逆にFAWの大きすぎるものは樹脂の含浸性が悪く、樹脂の複合化が容易ではなくなる。
【0059】
繊維混抄マット状成形体には、金属繊維を少量たとえば10重量%以下混合してもよい。金属繊維の好適な径、長さは炭素繊維の場合と同様である。
【0060】
<繊維混抄マット状成形体からの繊維強化成形体の製造方法>
上記の繊維混抄マット状成形体を、当該混抄マット状成形体中の熱可塑性樹脂の短繊維の流動開始温度(Tf)以上においてプレス成形することにより繊維強化成形体が製造される。
【0061】
なお、繊維混抄マット状成形体から繊維強化成形体を直接に成形してもよいが、繊維混抄マット状成形体を溶融プレス成形することによりプレスシートを成形し、このプレスシートをプレス成形することにより繊維強化成形体を成形してもよい。
【0062】
このプレス成形時の温度は、流動開始温度Tfよりも10〜100℃特に20〜50℃程度高い温度であることが好ましい。プレス成形時の圧力は1〜20MPa特に3〜10MPa程度が好適であり、プレス時間は1〜30min特に3〜20min程度が好適である。このプレス成形に際し、繊維混抄マット状成形体又はプレスシートを1層だけプレスしてもよく、2枚以上重ねて複層プレス成形してもよい。この複層プレス成形によれば、厚みの大きい繊維強化成形体を製造することができる。
【0063】
製造された繊維強化樹脂成形体中における炭素繊維と樹脂との合計に対する炭素繊維の割合は30〜80重量%、特に35〜65重量%であることが好ましい。
また、繊維強化樹脂成形体としての面方向の熱伝導率は5〜60W/mKが好ましく、より好ましくは20〜40W/mKである。
【0064】
[成形体の形状]
本発明の繊維強化樹脂成形体は、好ましくは、平均肉厚が0.3〜2.0mm特に0.5〜1.5mmの板状である。平均肉厚は、板状の成形体の体積を板面の投影面積で除した値である。
【0065】
次に、上記炭素繊維強化樹脂成形体よりなる製品形状の一例について第1図〜第13図を参照して説明する。これらの成形体は、電子機器の筐体として用いられる長方形の板状又は枠状のものである。
【0066】
第1図〜第5図の成形体1は、比較的厚さが大きい枠状部2と、この枠状部2で囲まれた内側領域の板状部3とを有している。
【0067】
成形体1の1つの長辺に沿う辺部にあっては、厚さ方向に突出する凸部4が該長辺方向に延設され、この凸部4の裏側には、厚さ方向に凹陥する凹部5が設けられている。この凹部5を横断するように複数のリブ部6が所定間隔をあけて設けられている。リブ部6の板面は該長辺方向と直交方向に延在している。第4図の通り、多数のリブ部6が所定間隔をあけて平行に配列されているので、このリブ部6の配列は梯子状である。
【0068】
この成形体1は、上記の成形用材料を金型内に配置して熱プレスすることにより全体として一体に成形されたものである。リブ部6等を含め、成形体1の全体に成形用材料中の炭素繊維が存在している。
【0069】
この成形体1を用いた液晶表示装置の断面構成の一例を第13図に示す。なお、第13図は厚さ方向に拡大した模式図であり、成形体の寸法は第1図〜第5図のものとは異なっている。
【0070】
この液晶表示装置10にあっては、成形体1の板状部3上に反射層11を介して導光板12が配置されている。この導光板12の端面に沿ってLED等の発光装置13が設置されている。この発光装置13は凸部4に沿って配置されている。導光板12上に光学シート14を介して液晶パネル15が設置され、その前面がガラス板16で覆われている。発光装置13で発生した熱は、主として凸部4及びリブ部6を介して放散される。多数のリブ部6を設けて放熱面積を大きくしているので、成形体1の素材の熱伝導率が高いことと相俟って放熱特性に優れたものとなっている。
【0071】
また、成形体1に枠状部2、凸部4及びリブ6を設けているので、成形体1の素材の高剛性と合わせて、成形体1の強度、剛性が高いものとなっている。
【0072】
第6図〜第9図に、リブの構成を異ならせた成形体1A〜1Cを示す。第6図の成形体1Aは、凹部5にさらに斜交方向のリブ部7を設け、トラス構造としたものである。第7図の成形体1Bは、斜め十字形のリブ部8を設けて筋交い構造としたものである。第8,9図の成形体1Cは、リブ部9を凹部5の長手方向に延設してフィン構造としたものである。
【0073】
本発明では、上記の板状部3に対しさらに別の薄板状部材を積層して一体化させてもよい。このような薄板状部材としては、合成樹脂のハニカム、金属シートなどが例示される。薄板状部材を板状部3に一体化させるには、接着、溶着などが好適である。この薄板状部材の上からさらに上記炭素繊維強化樹脂を重ね、接着、溶着等により一体化させて三層構造としてもよい。
【0074】
第1図〜第9図の成形体1,1A〜1Cは板状部3を備え、板央部から周縁部まで全体として一体の板状となっているが、本発明の成形体は、第10,11図のように枠状の成形体1Dであってもよい。この成形体1Dの板央の開口部1aに、別途成形された板状体が装着されて筐体とされる。第10,11図のその他の符号は第1図〜第5図と同一部分を示している。
【0075】
板央の開口部1aに装着される板状体は、上記の炭素繊維強化樹脂製であってもよく、炭素繊維強化樹脂とその他の素材とを積層した積層体であってもよく、金属など他の素材にて構成された板状体であってもよい。
【0076】
第12図は、上記炭素繊維強化樹脂よりなる枠状体21と、積層構造の板状体22とを備えた放熱性成形体の一例を示す断面斜視図である。
【0077】
この枠状体21は、長方形又は正方形の枠状であり、放熱性成形体20の周縁を構成している。この枠状体21の内周面に突状部21aが設けられ、板状体22の端面の凹条が係合しているが、板状体22と枠状体21との係合方式はこれに限定されない。例えば、枠状体21の内周縁に凹段部を切欠状に設け、板状体22の周縁部を該凹段部に係合させてもよい。また、板状体22と枠状体21とを接着や溶着によって結合してもよい。
【0078】
この第12図の実施の形態では、板状体22は炭素繊維強化樹脂よりなる1対の表皮材22a,22aと、該表皮材22a,22aに挟持された芯材22bとを有したサンドイッチ構造体よりなる。表皮材22aを構成する炭素繊維強化樹脂としては、上記の炭素繊維強化樹脂が好適である。芯材22bとしては、合成樹脂板、発泡合成樹脂板、発泡合成樹脂のハニカム、パンチングメタル、金属メッシュ、金属パネルなどのいずれでもよい。金属としてはアルミ、アルミ合金、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼などが例示される。なお、樹脂に難燃剤が配合されていることが望ましい。
【0079】
第12図では、枠状体21はその全体が上記炭素繊維強化樹脂にて枠形状とされているが、一部を金属にて構成してもよい。例えば、長方形の枠状体の長辺部分を炭素繊維強化樹脂にて構成し、短辺部分を金属(例えば、アルミ、アルミ合金、銅合金、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、鋼など)にて構成し、両者をビス、リベット、接着、樹脂の溶着などによって連結した枠状体であっても良い。
【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0081】
なお、以下の実施例1,3では、以下のようにして製造した繊維混抄マット状成形体のプレス成形体を金型で熱プレスして成形体(バックライトシャーシ)を成形した。
【0082】
[繊維混抄マット状成形体の調製]
ピッチ系炭素繊維としてダイアリード6371T(三菱樹脂(株)製、引張弾性率640GPa、繊維軸方向の熱伝導率140W/mK、6mmカットファイバー)60重量部を用い、熱可塑性樹脂繊維としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバレックス M7020AD2」)を用いて溶融紡糸法により作製した樹脂繊維40重量部を用い、分散剤としてポリエチレングリコール(Mw=50000)を用いた。これらの繊維を50Lの水槽へ導入し、さらに濃度0.1%となるように分散剤を加えた後にマキタ製ハンドミキサーを用いて1360rpmの回転速度で15秒間攪拌させた後に400Lの水を入れた水槽へ導入し、更に1分程度混合・開繊させた。次いで、1m2の金網上で抄き上げることにより目付け750g/m2の繊維混抄マット状成形体とした。
【0083】
この繊維混抄マット状成形体を1枚または2枚、厚さ1または2mmのスペーサーを用いて温度280℃、圧力3〜5MPa、加圧保持時間7分で溶融プレス成形することにより厚み1mmまたは2mmのプレス成形体(以下、プレスシートという。)を作製した。このプレスシート中の炭素繊維の割合は、上記の配合の通り、60重量%である。
【0084】
[実施例1]
このプレスシート(厚さ1mm品)を赤外線ヒータにより成形温度300℃に予熱後、金型温度130℃のプレス金型にて印加圧力5MPaでプレス成形し、1分間の冷却後に成形体を離型し、第1,2,6図に示す構造の放熱性成形体1Aよりなるフラットパネルディスプレイ用バックライトシャーシを作製した。この放熱性成形体(バックライトシャーシ)は、板状部2の肉厚0.6mm、外形950×550mm、最高高さ(凸部4における厚さ)6mmであり、凸部4の裏面に第6図のトラス構造を有する。
【0085】
なお、この成形体を溶剤で溶解して炭素繊維を取り出し、その長さを測定したところ、重量平均繊維長は3mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合は85wt%であった。
【0086】
繊維長の測定方法は次の通りである。
【0087】
溶剤を用いて成形体の樹脂部分を溶解させたのちに白色シート上に移し、乾燥させた後に、光学顕微鏡により観察する。このとき、残存する樹脂材料は白色シートにより観察されなくなり、結果として炭素繊維からなる黒色繊維のみが観察されるようになる。この炭素繊維をランダムに1000本選択し、繊維長さを測定する。
【0088】
[実施例2]
実施例1で得られた成形品の板状部3にアラミド製ハニカム(デュポン(株)ノーメックス製ハニカム;セルサイズ1/8” 箔厚(0.05mm、密度0.0048g/cm2、厚さ3mm)を積層し、エポキシ接着剤で貼り付けた後、さらに上記プレスシート(厚さ1mm品)をエポキシ接着剤で貼り付けることにより、ハニカムコアをサンドイッチしたフラットパネルディスプレイ用バックライトシャーシを作製した。
【0089】
[実施例3]
上記プレスシート(厚さ2mm品)を赤外線ヒータにより成形温度300℃に予熱後、金型温度130℃のプレス金型にて印加圧力5MPaでプレスし、1分間の冷却後に成形体を離型し、第10,11図に示す構造を有した、基本度肉厚1.2mmt、外形950×550mm、内形810×310mm、最高部の高さ6mm、凸部4の裏面にトラス構造を有する枠体形状のフラットパネルディスプレイ用バックライトシャーシを作製した。
【0090】
なお、この成形体を溶剤で溶解して炭素繊維を取り出し、その長さを測定したところ、重量平均繊維長は3.5mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合は75wt%であった。
【0091】
[比較例1]
アルミ材として、三菱樹脂(株)製 KN500(厚さ10mm、長さ700mm、幅40mm)の加工ブロックよりNC旋盤加工機を用いて、外形830×40×最後部の高さ6mmの帯状部材を作製した。この帯状部材を枠状に組み合わせ、アルミ製リベットで固定し、フラットパネルディスプレイ用の枠状のバックライトシャーシを作製した。
【0092】
[評価項目及びその測定方法並びに結果]
上記の各シャーシについて、以下の3項目を次のようにして測定した。
(1)荷重撓み量
枠体を3点で固定し、このうちの中間の1点に50Nの荷重を加え、変位量(mm)を測定した。
(2)発熱状態(温度分布)
周囲温度24℃にて、長辺に沿ってLED光源基盤(32.5W)を取り付け、1時間点灯した後、熱伝対を用いて、長辺の中央部のLED光源から1mmの箇所(測定点1)及び短辺の中央の箇所(測定点2)の温度をそれぞれ計測した。
(3)熱変形量
周囲温度24℃にて、長辺に沿ってLED光源(32.5W)基盤を取り付け、1時間点灯後の最大変位量を測定した。
【0093】
評価結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の通り、実施例1〜3の放熱性成形体はすべての評価項目を満足するものである。
【符号の説明】
【0096】
1,1A,1B,1C,1D 放熱性成形体
2 枠状部
3 板状部
4 凸部
5 凹部
6〜9 リブ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体であって、
該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、該炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、
該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50wt%以上であり、
該成形体の炭素繊維含有率が30〜80重量%であることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項2】
請求項1において、前記炭素繊維が成形体の面方向に2次元ランダムに分散していることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項3】
請求項1又は2において、厚さ方向に突出又は凹陥する凸部又は凹部を有することを特徴とする放熱性成形体。
【請求項4】
請求項3において、該凸部又は凹部が設けられた放熱性成形体の板面に正対したときの該凸部又は凹部の形状がトラス形、フィン形、筋交い形又は梯子形であることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、板状部と、該板状部の周縁部が連なる、該板状部よりも平均肉厚が大きい枠状部とを有するように一体に成形されていることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、枠状に成形されていることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項7】
請求項6の放熱性成形体と、該放熱性成形体が囲む枠状部の内側部に配置された板体部とを備えてなる放熱性部材。
【請求項8】
請求項7において、前記板体部は、芯材と該芯材の両面に設けられた炭素繊維強化樹脂よりなる表皮材とを有することを特徴とする放熱性部材。
【請求項9】
請求項8において、表皮材を構成する炭素繊維強化樹脂の炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、
該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50重量%以上であり、該炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維含有量が30〜80重量%であることを特徴とする放熱性部材。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記芯材は発泡構造体又はハニカム構造体よりなることを特徴とする放熱性部材。
【請求項11】
請求項7において、前記板体部は金属製であることを特徴とする放熱性部材。
【請求項12】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放熱性成形体を備えてなる筐体。
【請求項13】
請求項7ないし11のいずれか1項に記載の放熱性部材を備えてなる筐体。
【請求項1】
ピッチ系炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む組成物を平均肉厚0.2〜3mmに熱プレス成形してなる成形体であって、
該炭素繊維の繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、該炭素繊維の繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、
該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50wt%以上であり、
該成形体の炭素繊維含有率が30〜80重量%であることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項2】
請求項1において、前記炭素繊維が成形体の面方向に2次元ランダムに分散していることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項3】
請求項1又は2において、厚さ方向に突出又は凹陥する凸部又は凹部を有することを特徴とする放熱性成形体。
【請求項4】
請求項3において、該凸部又は凹部が設けられた放熱性成形体の板面に正対したときの該凸部又は凹部の形状がトラス形、フィン形、筋交い形又は梯子形であることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、板状部と、該板状部の周縁部が連なる、該板状部よりも平均肉厚が大きい枠状部とを有するように一体に成形されていることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、枠状に成形されていることを特徴とする放熱性成形体。
【請求項7】
請求項6の放熱性成形体と、該放熱性成形体が囲む枠状部の内側部に配置された板体部とを備えてなる放熱性部材。
【請求項8】
請求項7において、前記板体部は、芯材と該芯材の両面に設けられた炭素繊維強化樹脂よりなる表皮材とを有することを特徴とする放熱性部材。
【請求項9】
請求項8において、表皮材を構成する炭素繊維強化樹脂の炭素繊維は、繊維軸方向の引張弾性率が400GPa以上であり、繊維軸方向の熱伝導率が60W/mK以上であり、
該炭素繊維の重量平均繊維長が0.3〜25mmであり、該炭素繊維のうち、繊維長が2〜50mmのものの割合が50重量%以上であり、該炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維含有量が30〜80重量%であることを特徴とする放熱性部材。
【請求項10】
請求項8又は9において、前記芯材は発泡構造体又はハニカム構造体よりなることを特徴とする放熱性部材。
【請求項11】
請求項7において、前記板体部は金属製であることを特徴とする放熱性部材。
【請求項12】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放熱性成形体を備えてなる筐体。
【請求項13】
請求項7ないし11のいずれか1項に記載の放熱性部材を備えてなる筐体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−25831(P2012−25831A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164989(P2010−164989)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
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