説明

放熱構造体

【課題】放熱性に優れる放熱構造体を提供すること。
【解決手段】放熱構造体1は、基板2と、基板2に実装される電子部品3と、電子部品3から生じる熱を放熱させるためのフレーム4と、基板2に、電子部品3を被覆するように設けられる熱伝導性接着シート5とを備え、熱伝導性接着シート5は、板状の窒化ホウ素粒子8を含有する熱伝導性層6を備え、熱伝導性層6は、面方向SDの熱伝導率が、4W/m・K以上であり、熱伝導性接着シート5が、フレーム4に接触している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリなどの電子部品は、大容量化に伴い、動作時に発生する発熱量が増大し、それにより、電子部品が劣化するおそれがあり、そのため、電子部品およびそれを実装する基板を含む構造体では、高い放熱性(高熱伝導性)が要求されている。
【0003】
例えば、基板に実装される複数のメモリの上面に、アルミニウムからなる平板状のメモリ用ヒートシンクを載置し、基板、各メモリおよびメモリ用ヒートシンクをクリップで挟み込む構造体が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
非特許文献1の構造体では、メモリ用ヒートシンクをメモリの上面に接触させることによって、メモリから生じる熱をメモリ用ヒートシンクによって放熱させている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】メモリ用ヒートシンク、インターネット(URL:http://www.ainex.jp/products/hm−02.htm)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1では、メモリの側面は、平板状のメモリ用ヒートシンクと接触しておらず、しかも、各メモリの厚みが異なる場合には、厚みの薄いメモリの上面と、メモリ用ヒートシンクとの間に隙間を生じる。そのため、メモリから生じる熱を十分に放熱させることができないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、放熱性に優れる放熱構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の放熱構造体は、基板と、前記基板に実装される電子部品と、前記電子部品から生じる熱を放熱させるための放熱性部材と、前記基板に、前記電子部品を被覆するように設けられる熱伝導性接着シートとを備え、前記熱伝導性接着シートは、板状の窒化ホウ素粒子を含有する熱伝導性層を備え、前記熱伝導性層は、前記熱伝導性層の厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であり、前記熱伝導性接着シートが、前記放熱性部材に接触していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の放熱構造体では、前記熱伝導性接着シートは、前記熱伝導性層の少なくとも一方面に積層される接着剤層または粘着剤層を備え、前記接着剤層または前記粘着剤層は、前記基板と接着または粘着していることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の放熱構造体では、電子部品が、熱伝導性接着シートに被覆されているので、電子部品から生じる熱を、電子部品の上面および側面から熱伝導性接着シートに熱伝導させることができる。そして、かかる熱を、熱伝導性接着シートから放熱部材に熱伝導させて、放熱部材において外部に放熱させることができる。
【0011】
そのため、電子部品から生じる熱を、熱伝導性接着シートおよび放熱部材によって、効率的に放熱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の放熱構造体の一実施形態の断面図を示す。
【図2】図2は、熱伝導性層の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、混合物または積層シートを熱プレスする工程、(b)は、プレスシートを複数個に分割する工程、(c)は、分割シートを積層する工程を示す。
【図3】図3は、熱伝導性層の斜視図を示す。
【図4】図4は、熱伝導性接着シートの断面図を示す。
【図5】図5は、図1の放熱構造体を作製するための工程図であって、フレームが支持される筐体に電子部品が実装されている基板を固定するともに、熱伝導性接着シートを用意する工程を示す。
【図6】図6は、本発明の放熱構造体の他の実施形態(熱伝導性接着シートが熱伝導性層からなる態様)の断面図を示す。
【図7】図7は、図6の放熱構造体を作製するための工程図であって、フレームが支持される筐体に電子部品が実装されている基板を固定するともに、熱伝導性接着シートを用意する工程を示す。
【図8】図8は、本発明の放熱構造体の他の実施形態(熱伝導性接着シートの他端部が筐体に接触する態様)の断面図を示す。
【図9】図9は、本発明の放熱構造体の他の実施形態(接着・粘着層が電子部品の上面に接触する態様)の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の放熱構造体の一実施形態の断面図、図2は、熱伝導性層の製造方法を説明するための工程図、図3は、熱伝導性層の斜視図、図4は、熱伝導性接着シートの断面図、図5は、図1の放熱構造体を作製するための工程図を示す。
【0014】
図1において、この放熱構造体1は、基板2と、基板2に実装される電子部品3と、電子部品3から生じる熱を放熱(熱輸送、熱伝導)させるための放熱性部材としてのフレーム4と、基板2に設けられる熱伝導性接着シート5とを備えている。
【0015】
基板2は、略平板形状に形成されており、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどセラミックス、例えば、ガラス・エポキシ樹脂、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂などから形成されている。
【0016】
電子部品3は、例えば、IC(集積回路)チップ20、コンデンサ21、コイル22および/または抵抗器23を含んでいる。なお、電子部品3は、例えば、5V未満の電圧、および/または、1A未満の電流を制御する。電子部品3は、基板2の上面に実装されており、面方向(基板2の面方向、図1の左右方向および奥行方向。)に互いに間隔を隔てて配置されている。電子部品3の厚みは、例えば、1μm〜1cm程度である。
【0017】
フレーム4は、基板2を収容する筐体(図1において図示しない)に支持され、基板2の外方(側方)に間隔を隔てて配置されており、平面視において、基板2を囲む略枠状に形成されている。また、フレーム4は、断面視において、上下方向に長い略矩形状に形成されている。フレーム4は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄などの金属などから形成されている。
【0018】
熱伝導性接着シート5は、基板2の上に、電子部品3を被覆するように設けられている。また、熱伝導性接着シート5は、一端部(図1における右端部)が電子部品3の表面(上面および側面)に接触し、他端部(図1における左上端部)がフレーム4の内面(右側面)に接触するように配置されている。
【0019】
詳しくは、熱伝導性接着シート5は、放熱構造体1において、断面略L字状をなし、中央(左右方向中央)部および一端部は、基板2の上面において、面方向に延びるように配置されており、中央部より他端側部分が、基板2の一端縁(左端縁)から上方に向かって屈曲し、そして、熱伝導性接着シート5の他端部は、フレーム4の右側面(内面)において、上方に延びるように配置されている。
【0020】
この熱伝導性接着シート5は、図4が参照されるように、熱伝導性層6と、熱伝導性層6の裏面(下面)に積層される接着剤層7または粘着剤層7(以下、これらを「接着・粘着層7」と総称する場合がある。)とを備えている。
【0021】
熱伝導性層6は、シート形状に形成されており、窒化ホウ素粒子を含有している。
【0022】
具体的には、熱伝導性層6は、窒化ホウ素(BN)粒子を必須成分として含有し、さらに、例えば、樹脂成分を含有している。
【0023】
窒化ホウ素粒子は、板状(あるいは鱗片状)に形成されており、熱伝導性層6において所定方向(後述)に配向された形態で分散されている。
【0024】
窒化ホウ素粒子は、長手方向長さ(板の厚み方向に対する直交方向における最大長さ)の平均が、例えば、1〜100μm、好ましくは、3〜90μmである。また、窒化ホウ素粒子の長手方向長さの平均は、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、通常、例えば、100μm以下、好ましくは、90μm以下である。
【0025】
また、窒化ホウ素粒子の厚み(板の厚み方向長さ、つまり、粒子の短手方向長さ)の平均は、例えば、0.01〜20μm、好ましくは、0.1〜15μmである。
【0026】
また、窒化ホウ素粒子のアスペクト比(長手方向長さ/厚み)は、例えば、2〜10000、好ましくは、10〜5000である。
【0027】
そして、窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均粒子径は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、さらに好ましくは、20μm以上、とりわけ好ましくは、30μm以上、最も好ましくは、40μm以上であり、通常、100μm以下である。
【0028】
なお、光散乱法によって測定される平均粒子径は、動的光散乱式粒度分布測定装置にて測定される体積平均粒子径である。
【0029】
窒化ホウ素粒子の光散乱法によって測定される平均粒子径が上記範囲に満たないと、熱伝導性層6が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0030】
また、窒化ホウ素粒子の嵩密度(JIS K 5101、見かけ密度)は、例えば、0.3〜1.5g/cm、好ましくは、0.5〜1.0g/cmである。
【0031】
また、窒化ホウ素粒子は、市販品またはそれを加工した加工品を用いることができる。窒化ホウ素粒子の市販品としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製の「PT」シリーズ(例えば、「PT−110」など)、昭和電工社製の「ショービーエヌUHP」シリーズ(例えば、「ショービーエヌUHP−1」など)などが挙げられる。
【0032】
樹脂成分は、窒化ホウ素粒子を分散できるもの、つまり、窒化ホウ素粒子が分散される分散媒体(マトリックス)であって、例えば、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分などの樹脂成分が挙げられる。
【0033】
熱硬化性樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体など)、アクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなど)、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルスルホン、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミノビスマレイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリメチルペンテン、フッ化樹脂、液晶ポリマー、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー、ポリアリレート、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0035】
これら樹脂成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0036】
樹脂成分のうち、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
エポキシ樹脂は、常温において、液状、半固形状および固形状のいずれかの形態である。
【0038】
具体的には、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性ビスフェノール型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など)、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂(例えば、ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂など)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂など)などの芳香族系エポキシ樹脂、例えば、トリエポキシプロピルイソシアヌレート(トリグリシジルイソシアヌレート)、ヒダントインエポキシ樹脂などの含窒素環エポキシ樹脂、例えば、脂肪族型エポキシ樹脂、例えば、脂環族型エポキシ樹脂(例えば、ジシクロ環型エポキシ樹脂など)、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
これらエポキシ樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0040】
好ましくは、液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂の組合せが挙げられ、さらに好ましくは、液状の芳香族系エポキシ樹脂および固形状の芳香族系エポキシ樹脂の組合せなどが挙げられる。そのような組合せとしては、具体的には、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂および固形状のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂の組合せ、液状のビスフェノール型エポキシ樹脂および固形状のビスフェノール型エポキシ樹脂の組合せが挙げられる。
【0041】
また、エポキシ樹脂として、好ましくは、半固形状のエポキシ樹脂の単独使用が挙げられ、さらに好ましくは、半固形状の芳香族系エポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。そのようなエポキシ樹脂としては、具体的には、半固形状のフルオレン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
液状のエポキシ樹脂および固形状のエポキシ樹脂の組合せ、半固形状のエポキシ樹脂であれば、熱伝導性層6の段差追従性(後述)を向上させることができる。
【0043】
また、エポキシ樹脂は、エポキシ当量が、例えば、100〜1000g/eqiv.、好ましくは、160〜700g/eqiv.であり、軟化温度(環球法)が、例えば、80℃以下(具体的には、20〜80℃)、好ましくは、70℃以下(具体的には、25〜70℃)である。
【0044】
また、エポキシ樹脂の80℃における溶融粘度は、例えば、10〜20,000mPa・s、好ましくは、50〜15,000mPa・sでもある。エポキシ樹脂を2種以上併用する場合には、それらの混合物としての溶融粘度が、上記した範囲内に設定される。
【0045】
また、常温で固形状のエポキシ樹脂と、常温で液状のエポキシ樹脂とを併用する場合には、軟化温度が、例えば、45℃未満、好ましくは、35℃以下の第1エポキシ樹脂と、軟化温度が、例えば、45℃以上、好ましくは、55℃以上の第2エポキシ樹脂とを併有する。これにより、樹脂成分(混合物)の動粘度(JIS K 7233に準拠、後述)を所望の範囲に設定することができ、また、熱伝導性層6の段差追従性を向上させることができる。
【0046】
また、エポキシ樹脂には、例えば、硬化剤および硬化促進剤を含有させて、エポキシ樹脂組成物として調製することができる。
【0047】
硬化剤は、加熱によりエポキシ樹脂を硬化させることができる潜在性硬化剤(エポキシ樹脂硬化剤)であって、例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物、酸無水物化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾリン化合物などが挙げられる。また、上記の他に、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィド化合物なども挙げられる。
【0048】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0049】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0050】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロコハク酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、クロレンディック酸無水物などが挙げられる。
【0051】
アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0052】
ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0053】
イミダゾリン化合物としては、例えば、メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、エチルイミダゾリン、イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、フェニルイミダゾリン、ウンデシルイミダゾリン、ヘプタデシルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0054】
これら硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0055】
硬化剤として、好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0056】
硬化促進剤としては、例えば、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン化合物、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエートなどのリン化合物、例えば、4級アンモニウム塩化合物、有機金属塩化合物、およびこれらの誘導体などが挙げられる。これら硬化促進剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
エポキシ樹脂組成物における硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.5〜50質量部、好ましくは、1〜10質量部であり、硬化促進剤の配合割合は、例えば、0.1〜10質量部、好ましくは、0.2〜5質量部である。
【0058】
上記した硬化剤および/または硬化促進剤は、必要により、溶媒により溶解および/または分散された溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製して用いることができる。
【0059】
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などケトン類、例えば、酢酸エチルなどのエステル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などの有機溶媒などが挙げられる。また、溶媒として、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類などの水系溶媒も挙げられる。溶媒として、好ましくは、有機溶媒、さらに好ましくは、ケトン類、アミド類が挙げられる。
【0060】
また、樹脂成分のJIS K 7233(泡粘度計法)に準拠する動粘度試験(温度:25℃±0.5℃、溶媒:ブチルカルビトール、樹脂成分(固形分)濃度:40質量%)によって測定される動粘度は、例えば、0.22×10−4〜2.00×10−4/s、好ましくは、0.3×10−4〜1.9×10−4/s、さらに好ましくは、0.4×10−4〜1.8×10−4/sである。また、上記の動粘度を、例えば、0.22×10−4〜1.00×10−4/s、好ましくは、0.3×10−4〜0.9×10−4/s、さらに好ましくは、0.4×10−4〜0.8×10−4/sに設定することもできる。
【0061】
樹脂成分の動粘度が上記範囲を超える場合には、熱伝導性層6に優れた柔軟性および段差追従性(後述)を付与することができない場合がある。一方、樹脂成分の動粘度が上記範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子を所定方向に配向させることができない場合がある。
【0062】
なお、JIS K 7233(泡粘度計法)に準拠する動粘度試験では、樹脂成分サンプルにおける泡の上昇速度と、標準サンプル(動粘度が既知)における泡の上昇速度とを比較し、上昇速度が一致する標準サンプルの動粘度が、樹脂成分の動粘度であると判定することにより、樹脂成分の動粘度を測定する。
【0063】
そして、熱伝導性層6において、窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合(固形分、つまり、樹脂成分および窒化ホウ素粒子の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率)は、例えば、35体積%以上、好ましくは、60体積%以上、好ましくは、65体積%以上、通常、例えば、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0064】
窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子を熱伝導性層6において所定方向に配向させることができない場合がある。一方、窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合が上記した範囲を超える場合には、熱伝導性層6が脆くなり、取扱性が低下する場合がある。
【0065】
また、熱伝導性層6を形成する各成分(窒化ホウ素粒子および樹脂成分)の総量(固形分総量)100質量部に対する窒化ホウ素粒子の質量基準の配合割合は、例えば、40〜95質量部、好ましくは、65〜90質量部であり、熱伝導性層6を形成する各成分の総量100質量部に対する樹脂成分の質量基準の配合割合は、例えば、5〜60質量部、好ましくは、10〜35質量部である。なお、窒化ホウ素粒子の、樹脂成分100質量部に対する質量基準の配合割合は、例えば、60〜1900質量部、好ましくは、185〜900質量部でもある。
【0066】
また、2種のエポキシ樹脂(第1エポキシ樹脂および第2エポキシ樹脂)を併用する場合において、第1エポキシ樹脂の第2エポキシ樹脂に対する質量割合(第1エポキシ樹脂の質量/第2エポキシ樹脂の質量)は、各エポキシ樹脂(第1エポキシ樹脂および第2エポキシ樹脂)の軟化温度などに応じて適宜設定することができ、例えば、1/99〜99/1、好ましくは、10/90〜90/10である。
【0067】
なお、樹脂成分には、上記した各成分(重合物)の他に、例えば、ポリマー前駆体(例えば、オリゴマーを含む低分子量ポリマーなど)、および/または、モノマーが含まれる。
【0068】
次に、熱伝導性層6を形成する方法について説明する。
【0069】
この方法では、まず、上記した各成分を上記した配合割合で配合して、攪拌混合することにより、混合物を調製する。
【0070】
攪拌混合では、各成分を効率よく混合すべく、例えば、溶媒を上記した各成分とともに配合するか、または、例えば、加熱により樹脂成分(好ましくは、熱可塑性樹脂成分)を溶融させることができる。
【0071】
溶媒としては、上記と同様の有機溶媒が挙げられる。また、上記した硬化剤および/または硬化促進剤が溶媒溶液および/または溶媒分散液として調製されている場合には、攪拌混合において溶媒を追加することなく、溶媒溶液および/または溶媒分散液の溶媒をそのまま攪拌混合のための混合溶媒として供することができる。あるいは、攪拌混合において溶媒を混合溶媒としてさらに追加することもできる。
【0072】
溶媒を用いて攪拌混合する場合には、攪拌混合の後、溶媒を除去する。
【0073】
溶媒を除去するには、例えば、室温にて、1〜48時間放置するか、例えば、40〜100℃で、0.5〜3時間加熱するか、または、例えば、0.001〜50kPaの減圧雰囲気下で、20〜60℃で、0.5〜3時間加熱する。
【0074】
加熱により樹脂成分を溶融させる場合には、加熱温度が、例えば、樹脂成分の軟化温度付近またはそれを超過する温度であって、具体的には、40〜150℃、好ましくは、70〜140℃である。
【0075】
次いで、この方法では、得られた混合物を、熱プレスする。
【0076】
具体的には、図2(a)に示すように、混合物を、例えば、必要により、2枚の離型フィルム12を介して熱プレスすることにより、プレスシート6Aを得る。熱プレスの条件は、温度が、例えば、50〜150℃、好ましくは、60〜140℃であり、圧力が、例えば、1〜100MPa、好ましくは、5〜50MPaであり、時間が、例えば、0.1〜100分間、好ましくは、1〜30分間である。
【0077】
さらに好ましくは、混合物を真空熱プレスする。真空熱プレスにおける真空度は、例えば、1〜100Pa、好ましくは、5〜50Paであり、温度、および圧力および時間は、上記した熱プレスのそれらと同様である。
【0078】
熱プレスにおける温度、圧力および/または時間が、上記した範囲外にある場合には、熱伝導性層6の空隙率P(後述)を所望の値に調整できない場合がある。
【0079】
熱プレスにより得られるプレスシート6Aの厚みは、例えば、50〜1000μm、好ましくは、100〜800μmである。
【0080】
次いで、この方法では、図2(b)に示すように、プレスシート6Aを、複数個(例えば、4個)に分割して、分割シート6Bを得る(分割工程)。プレスシート6Aの分割では、厚み方向に投影したときに複数個に分断されるように、プレスシート6Aをその厚み方向に沿って切断する。なお、プレスシート6Aは、各分割シート6Bが厚み方向に投影されたときに同一形状となるように、切断する。
【0081】
次いで、この方法では、図2(c)に示すように、各分割シート6Bを、厚み方向に積層して、積層シート6Cを得る(積層工程)。
【0082】
その後、この方法では、図2(a)に示すように、積層シート6Cを、熱プレス(好ましくは、真空熱プレス)する(熱プレス工程)。熱プレスの条件は、上記した混合物の熱プレスの条件と同様である。
【0083】
熱プレス後の積層シート6Cの厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0084】
その後、図3が参照されるように、熱伝導性層6において窒化ホウ素粒子8を樹脂成分9中に所定方向に効率的に配向させるべく、上記した分割工程(図2(b))、積層工程(図2(c))および熱プレス工程(図2(a))の一連の工程を、繰り返し実施する。繰返回数は、特に限定されず、窒化ホウ素粒子の充填状態に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜10回、好ましくは、2〜7回である。
【0085】
なお、上記した熱プレス工程(図2(a))では、例えば、複数のカレンダーロールなどによって、混合物および積層シート6Cを圧延することもできる。
【0086】
これにより、図3および図4に示す熱伝導性層6を形成することができる。
【0087】
形成された熱伝導性層6の厚みは、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、通常、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0088】
また、熱伝導性層6における窒化ホウ素粒子8の体積基準の含有割合(固形分、つまり、樹脂成分9および窒化ホウ素粒子8の総体積に対する窒化ホウ素粒子8の体積百分率)は、上記したように、例えば、35体積%以上(好ましくは、60体積%以上、さらに好ましくは、75体積%以上)、通常、95体積%以下(好ましくは、90体積%以下)である。
【0089】
窒化ホウ素粒子8の含有割合が上記した範囲に満たない場合には、窒化ホウ素粒子8を熱伝導性層6において所定方向に配向させることができない場合がある。
【0090】
また、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、例えば、上記した分割工程(図2(b))、積層工程(図2(c))および熱プレス工程(図2(a))の一連の工程を、未硬化状態で繰り返し実施し、そのまま、未硬化状態の熱伝導性層6として得る。なお、未硬化状態の熱伝導性層6は、熱伝導性接着シート5の電子部品3および基板2に対する接着時に、熱硬化させる。
【0091】
そして、このようにして形成された熱伝導性層6において、図3およびその部分拡大模式図に示すように、窒化ホウ素粒子8の長手方向LDが、熱伝導性層6の厚み方向TDに交差(直交)する面方向SDに沿って配向している。
【0092】
また、窒化ホウ素粒子8の長手方向LDが熱伝導性層6の面方向SDに成す角度の算術平均(窒化ホウ素粒子8の熱伝導性層6に対する配向角度α)は、例えば、25度以下、好ましくは、20度以下であり、通常、0度以上である。
【0093】
なお、窒化ホウ素粒子8の熱伝導性層6に対する配向角度αは熱伝導性層6を厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で、200個以上の窒化ホウ素粒子8を観察できる視野の倍率で写真撮影し、得られたSEM写真より、窒化ホウ素粒子8の長手方向LDの、熱伝導性層6の面方向SD(厚み方向TDに直交する方向)に対する傾斜角αを取得し、その平均値として算出される。
【0094】
これにより、熱伝導性層6の面方向SDの熱伝導率は、4W/m・K以上、好ましくは、5W/m・K以上、より好ましくは、10W/m・K以上、さらに好ましくは、15W/m・K以上、とりわけ好ましくは、25W/m・K以上であり、通常、200W/m・K以下である。
【0095】
なお、熱伝導性層6の面方向SDの熱伝導率は、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化の前後において、実質的に同一である。
【0096】
熱伝導性層6の面方向SDの熱伝導率が上記範囲に満たないと、面方向SDの熱伝導性が十分でないため、そのような面方向SDの熱伝導性が要求される放熱用途に用いることができない場合がある。
【0097】
なお、熱伝導性層6の面方向SDの熱伝導率は、パルス加熱法により測定する。パルス加熱法では、キセノンフラッシュアナライザー「LFA−447型」(NETZSCH社製)が用いられる。
【0098】
また、熱伝導性層6の厚み方向TDの熱伝導率は、例えば、0.5〜15W/m・K、好ましくは、1〜10W/m・Kである。
【0099】
なお、熱伝導性層6の厚み方向TDの熱伝導率は、パルス加熱法、レーザーフラッシュ法またはTWA法により測定する。パルス加熱法では、上記と同様のものが用いられ、レーザーフラッシュ法では、「TC−9000」(アルバック理工社製)が用いられ、TWA法では、「ai−Phase mobile」(アイフェイズ社製)が用いられる。
【0100】
これにより、熱伝導性層6の面方向SDの熱伝導率の、熱伝導性層6の厚み方向TDの熱伝導率に対する比(面方向SDの熱伝導率/厚み方向TDの熱伝導率)は、例えば、1.5以上、好ましくは、3以上、さらに好ましくは、4以上であり、通常、20以下である。
【0101】
また、熱伝導性層6には、図3において図示しないが、例えば、空隙(隙間)が形成されている。
【0102】
熱伝導性層6における空隙の割合、すなわち、空隙率Pは、窒化ホウ素粒子8の含有割合(体積基準)、さらには、窒化ホウ素粒子8および樹脂成分9の混合物の熱プレス(図2(a))の温度、圧力および/または時間によって、調整することができ、具体的には、上記した熱プレス(図2(a))の温度、圧力および/または時間を上記範囲内に設定することにより、調整することができる。
【0103】
熱伝導性層6における空隙率Pは、例えば、30体積%以下であり、好ましくは、10体積%以下である。
【0104】
上記した空隙率Pは、例えば、まず、熱伝導性層6を厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、200倍で観察して、像を得、得られた像から、空隙部分と、それ以外の部分とを二値化処理し、次いで、熱伝導性層6全体の断面積に対する空隙部分の面積比を算出することにより測定される。
【0105】
なお、熱伝導性層6において、硬化後の空隙率P2は、硬化前の空隙率P1に対して、例えば、100%未満、具体的には、好ましくは、50%以下である。
【0106】
空隙率P(P1)の測定には、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化前の熱伝導性層6が用いられる。
【0107】
熱伝導性層6の空隙率Pが上記した範囲内にあれば、熱伝導性層6の段差追従性(後述)を向上させることができる。
【0108】
また、熱伝導性層6は、JIS K 5600−5−1の円筒形マンドレル法に準拠する耐屈曲性試験において、下記の試験条件で評価したときに、好ましくは、破断が観察されない。
【0109】
試験条件
試験装置:タイプI
マンドレル:直径10mm
屈曲角度:90度以上
熱伝導性層6の厚み:0.3mm
さらに好ましくは、熱伝導性層6は、上記した試験条件において、屈曲角度を180度に設定したときでも、破断が観察されない。
【0110】
なお、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、屈曲性試験に供される熱伝導性層6は、半硬化(Bステージ状態)の熱伝導性層6である。
【0111】
上記した屈曲角度での耐屈曲性試験において熱伝導性層6に破断が観察される場合には、熱伝導性層6に優れた柔軟性を付与することができない場合がある。
【0112】
また、この熱伝導性層6は、JIS K 7171(2008年)に準拠する3点曲げ試験において、下記の試験条件で評価したときに、例えば、破断が観察されない。
【0113】
試験条件
試験片:サイズ20mm×15mm
支点間距離:5mm
試験速度:20mm/min(圧子の押下速度)
曲げ角度:120度
評価方法:上記試験条件で試験したときの、試験片の中央部におけるクラックなどの破断の有無を目視にて観察する。
【0114】
なお、3点曲げ試験には、樹脂成分3が熱硬化性樹脂成分である場合に、熱硬化前の熱伝導性層6が用いられる。
【0115】
従って、この熱伝導性層6は、上記した3点曲げ試験において破断が観察されないことから、段差追従性が優れている。なお、段差追従性とは、熱伝導性層6を、段差のある設置対象(例えば、上記した基板2など)に設けるときに、その段差(例えば、上記した電子部品3によって形成される段差)に沿って密着するように追従する特性である。
【0116】
また、熱伝導性層6には、例えば、文字、記号などのマークを付着させることができる。つまり、熱伝導性層6は、マーク付着性に優れている。マーク付着性とは、上記したマークを熱伝導性層6に確実に付着させることができる特性である。
【0117】
マークは、具体的には、印刷、または、刻印などによって熱伝導性層6に付着(塗布、定着または固着)される。
【0118】
印刷として、例えば、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、レーザー印刷などが挙げられる。
【0119】
なお、インクジェット印刷、凸版印刷または凹版印刷によって、マークが印刷される場合には、例えば、マークの定着性を向上させるためのインク定着層を、熱伝導性層6の表面(印刷側面、上面、接着・粘着剤層7に対する反対側面)に設けることができる。
【0120】
また、レーザー印刷によって、マークが印刷される場合には、例えば、マークの定着性を向上させるためのトナー定着層を、熱伝導性層6の表面(印刷側面、上面、接着・粘着剤層7に対する反対側面)に設けることができる。
【0121】
刻印としては、例えば、レーザー刻印、打刻などが挙げられる。
【0122】
また、熱伝導性層6は、絶縁性および粘着性(微タック性)を有している。
【0123】
具体的には、熱伝導性層6の体積抵抗(JIS K6271)は、例えば、1×1010Ω・cm以上、好ましくは、1×1012Ω・cm以上、通常、1×1020Ω・cm以下である。
【0124】
熱伝導性層6の体積抵抗Rは、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法、2006年版)に準拠して測定される。
【0125】
熱伝導性層6の体積抵抗Rが、上記範囲に満たない場合には、後述する電子素子間の短絡を防止できない場合がある。
【0126】
なお、熱伝導性層6において、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、体積抵抗Rは、硬化後の熱伝導性層6の値である。
【0127】
また、熱伝導性層6は、以下の初期接着力試験(1)において、例えば、被着体から脱落しない。つまり、熱伝導性層6と被着体との仮固定状態が保持される。
【0128】
初期接着力試験(1):熱伝導性層6を水平方向に沿う被着体の上に加熱圧着して仮固定して、10分間放置した後、被着体を上下反転させる。
【0129】
被着体としては、例えば、上記した電子部品が実装された基板2などが挙げられる。圧着は、例えば、シリコーン樹脂などの樹脂からなるスポンジロールを、熱伝導性層6に対して押圧させながら、熱伝導性層6の表面を転動させる。
【0130】
また、加熱圧着の温度は、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分(例えば、エポキシ樹脂)である場合には、例えば、80℃である。
【0131】
一方、加熱圧着の温度は、樹脂成分9が熱可塑性樹脂成分(例えば、ポリエチレン)である場合には、例えば、熱可塑性樹脂成分の軟化点または融点に10〜30℃を加えた温度であり、好ましくは、熱可塑性樹脂成分の軟化点または融点に15〜25℃を加えた温度であり、さらに好ましくは、熱可塑性樹脂成分の軟化点または融点に20℃を加えた温度であり、具体的には、120℃(つまり、熱可塑性樹脂成分の軟化点または融点が100℃であり、その100℃に20℃を加えた温度)である。
【0132】
熱伝導性層6は、上記した初期接着力試験(1)において、被着体から脱落する場合、つまり、熱伝導性層6と被着体との仮固定状態が保持されない場合には、熱伝導性層6を被着体に確実に仮固定することができない場合がある。
【0133】
なお、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、初期接着力試験(1)および初期接着力試験(2)(後述)に供される熱伝導性層6は、未硬化の熱伝導性層6であり、初期接着力試験(1)および初期接着力試験(2)における加熱圧着により、熱伝導性層6は、Bステージ状態とされる。
【0134】
また、樹脂成分9が熱可塑性樹脂成分である場合には、初期接着力試験(1)および初期接着力試験(2)(後述)に供される熱伝導性層6は、固体状の熱伝導性層6であり、初期接着力試験(1)および初期接着力試験(2)における加熱圧着により、熱伝導性層6は、軟化状態とされる。
【0135】
好ましくは、熱伝導性層6は、上記した初期接着力試験(1)および以下の初期接着力試験(2)の両方において、被着体から脱落しない。つまり、熱伝導性層6と被着体との仮固定状態が保持される。
【0136】
初期接着力試験(2):熱伝導性層6を水平方向に沿う被着体の上に加熱圧着して仮固定して、10分間放置した後、被着体を鉛直方向(上下方向)に沿うように配置する。
【0137】
初期接着力試験(2)の加熱圧着における温度は、上記した初期接着力試験(1)の加熱圧着における温度と同様である。
【0138】
接着・粘着層7は、図4に示すように、熱伝導性層6の裏面に形成されている。詳しくは、接着・粘着層7は、図1に示すように、電子部品3から露出する基板2と対向する熱伝導性層6の下面に形成されている。
【0139】
接着・粘着層7は、常温雰囲気および加熱雰囲気において、柔軟性、かつ、接着性または粘着性(タック性)を有しており、加熱、または、加熱後の冷却により、接着作用を発現できる接着剤、または、粘着作用(粘着する作用、すなわち、感圧接着する作用)を発現できる粘着剤からなる。
【0140】
接着剤として、例えば、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤などが挙げられる。
【0141】
熱硬化型接着剤は、加熱により熱硬化して固化することにより、基板2に接着する。熱硬化型接着剤としては、例えば、エポキシ系熱硬化型接着剤、ウレタン系熱硬化型接着剤、アクリル系熱硬化型接着剤などが挙げられる。好ましくは、エポキシ系熱硬化型接着剤が挙げられる。
【0142】
熱硬化型接着剤の硬化温度は、例えば、100〜200℃である。
【0143】
ホットメルト型接着剤は、加熱により溶融または軟化して、基板2に熱融着し、その後の冷却によって、固化することにより、基板2に接着する。ホットメルト型接着剤としては、例えば、ゴム系ホットメルト型接着剤、ポリエステル系ホットメルト型接着剤、オレフィン系ホットメルト型接着剤などが挙げられる。好ましくは、ゴム系ホットメルト型接着剤が挙げられる。
【0144】
ホットメルト型接着剤の軟化温度(環球法)は、例えば、100〜200℃である。また、ホットメルト型接着剤の溶融粘度は、180℃で、例えば、100〜30,000mPa・sである。
【0145】
また、上記した接着剤に、必要により、例えば、熱伝導性粒子を含有させることもできる。
【0146】
熱伝導性粒子としては、例えば、熱伝導性無機粒子、熱伝導性有機粒子などが挙げられ、好ましくは、熱伝導性無機粒子が挙げられる。
【0147】
熱伝導性無機粒子としては、例えば、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ガリウム粒子などの窒化物粒子、例えば、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子などの水酸化物粒子、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、酸化銅粒子、酸化ニッケル粒子などの酸化物粒子、例えば、炭化ケイ素粒子などの炭化物粒子、例えば、炭酸カルシウム粒子などの炭酸塩粒子、例えば、チタン酸バリウム粒子、チタン酸カリウム粒子などのチタン酸塩粒子などの金属酸塩粒子、例えば、銅粒子、銀粒子、金粒子、ニッケル粒子、アルミニウム粒子、白金粒子などの金属粒子などが挙げられる。
【0148】
これら熱伝導性粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0149】
熱伝導性粒子の形状としては、例えば、バルク状、針状、板状、層状、チューブ状などが挙げられる。熱伝導性粒子の平均粒子径(最大長さ)は、例えば、0.1〜1000μmである。
【0150】
また、熱伝導性粒子は、例えば、異方的熱伝導性または等方的熱伝導性を有している。好ましくは、等方的熱伝導性を有している。
【0151】
熱伝導性粒子の熱伝導率は、例えば、1W/m・K以上、好ましくは、2W/m・K以上、さらに好ましくは、3W/m・K以上であり、通常、1000W/m・K以下である。
【0152】
熱伝導性粒子の配合割合は、接着剤の樹脂成分100質量部に対して、例えば、190質量部以下、好ましくは、900質量部以下である。また、熱伝導性粒子の体積基準の配合割合は、95体積%以下、好ましくは、90体積%以下である。
【0153】
熱伝導性粒子を接着剤に配合する場合には、熱伝導性粒子を接着剤に上記した配合割合で加えて、攪拌混合する。
【0154】
これにより、接着剤を、熱伝導性接着剤として調製する。
【0155】
熱伝導性接着剤の熱伝導率は、例えば、0.01W/m・K以上、通常、100W/m・K以下である。
【0156】
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤などの公知の粘着剤から適宜選択される。粘着剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。粘着剤として、好ましくは、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられ、さらに好ましくは、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤が挙げられる。また、粘着剤に、上記した熱伝導性粒子を上記と同様の割合で含有させて、粘着剤を熱伝導性粘着剤として調製することもできる。熱伝導性粘着剤の熱伝導率は、上記と同様である。
【0157】
接着・粘着層7の厚みTは、例えば、50μm以下、好ましくは、25μm以下、さらに好ましくは、15μm以下であり、通常、1μm以上である。接着・粘着層7の厚みTが上記範囲を超える場合には、電子部品3から生じる熱を熱伝導性層6から接着・粘着層7を介してフレーム4に熱伝導させることができない場合がある。
【0158】
そして、熱伝導性接着シート5を得るには、図4が参照されるように、まず、上記した熱伝導性層6を用意し、次いで、接着・粘着層7を、熱伝導性層6の裏面に積層する。
【0159】
具体的には、接着剤(好ましくは、熱硬化型接着剤)または粘着剤に上記した溶媒を配合して溶解させることによりワニスを調製し、かかるワニスをセパレータの表面に塗布し、その後、常圧乾燥または真空(減圧)乾燥により、ワニスの有機溶媒を留去させる。なお、ワニスの固形分濃度は、例えば、10〜90質量%である。
【0160】
その後、接着・粘着層7を、熱伝導性層6に貼り合わせる。接着・粘着層7と熱伝導性層6とを貼り合わせる際に、必要に応じて、圧着または熱圧着する。
【0161】
次に、放熱構造体1を作製する方法について、図5を用いて説明する。
【0162】
まず、この方法では、図5に示すように、フレーム4が支持される筐体(図示せず)に電子部品3が実装されている基板2を固定するともに、熱伝導性接着シート5を用意する。
【0163】
なお、熱伝導性接着シート5は、厚み方向に投影したときに、基板2を含むように外形加工する。詳しくは、熱伝導性接着シート5は、中央部および一端部が基板2と重複し、他端部が基板2と重複しない寸法に切断加工する。
【0164】
次いで、この方法では、図5に示すように、熱伝導性接着シート5を、電子部品3および基板2と、フレーム4とに熱圧着する。
【0165】
具体的には、熱伝導性接着シート5の中央部および一端部を、電子部品3および基板2に熱圧着するとともに、熱伝導性接着シート5の他端部を、フレーム4に熱圧着する。
【0166】
詳しくは、まず、図5の仮想線で示すように、熱伝導性接着シート5と基板2とを、接着・粘着層7の中央部および一端部が電子部品3に対向するように、配置するとともに、熱伝導性接着シート5の他端部を屈曲させる。
【0167】
次いで、図5の矢印が参照されるように、熱伝導性接着シート5の中央部および一端部を、電子部品3および基板2に接触させるとともに、熱伝導性接着シート5の他端部を、フレーム4に接触させ、続いて、熱伝導性接着シート5を加熱しつつ、熱伝導性接着シート5の中央部および一端部を基板2に向けて圧着(押圧、すなわち、熱圧着)するとともに、熱伝導性接着シート5の他端部をフレーム4に向けて圧着(押圧、すなわち、熱圧着)する。
【0168】
圧着は、例えば、シリコーン樹脂などの樹脂からなるスポンジロールを、熱伝導性接着シート5に対して押圧させながら、熱伝導性接着シート5の表面(熱伝導性層6の上面)を転動させる。
【0169】
加熱温度は、例えば、40〜120℃である。
【0170】
この熱圧着では、接着・粘着層7の柔軟性が向上するので、図1が参照されるように、基板2の表面(上面)から表側(上側)に突出する電子部品3が接着・粘着層7を突き破り、電子部品3の表面(上面)が熱伝導性層6の裏面(下面)に接触する。また、電子部品3の周囲に形成される隙間(例えば、抵抗器23と基板2との間の隙間)14が、接着・粘着層7によって充填される。さらに、電子部品3(具体的には、ICチップ20および抵抗器23)と、基板2とを接続するための図示しない端子および/またはワイヤ15には、接着・粘着層7が絡まり被覆する。
【0171】
詳しくは、電子部品3の上面および側面の上部は、熱伝導性層6に被覆されている。
【0172】
一方、電子部品3の側面の下部は、電子部品3に突き破られた接着・粘着層7に被覆(接着または粘着)されている。
【0173】
より具体的には、熱圧着では、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、樹脂成分9がBステージ状態となるので、熱伝導性層6は、電子部品3から露出する基板2の表面(上面)に粘着する。さらに、電子部品3の厚みが接着・粘着層7の厚みより厚い場合には、熱伝導性層6には、電子部品3の上部が、熱伝導性層6の裏面から内部に向かって進入する。
【0174】
また、接着剤がホットメルト型接着剤である場合には、上記した熱圧着により、接着・粘着層7は、溶融または軟化して、接着・粘着層7の中央部および一端部が、基板2の表面および電子部品3の側面に熱融着するとともに、接着・粘着層7の他端部がフレーム4の内面に熱融着する。
【0175】
接着剤が熱硬化型接着剤である場合には、上記した熱圧着により、接着・粘着層7は、Bステージ状態となり、接着・粘着層7の中央部および一端部が、基板2の上面および電子部品3の側面に仮固定されるとともに、接着・粘着層7の他端部が、フレーム4の内面に仮固定される。
【0176】
その後、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、熱伝導性層6を熱硬化させるとともに、接着剤が熱硬化型接着剤である場合には、接着・粘着層7を熱硬化させる。
【0177】
熱伝導性層6および接着・粘着層7を熱硬化させるには、例えば、熱伝導性接着シート5が仮固定された、フレーム4、基板2および電子部品3を、乾燥機に投入する。熱硬化の条件は、加熱温度が、例えば、100〜250℃、好ましくは、120〜200℃であり、加熱時間が、例えば、10〜200分間、好ましくは、60〜150分間である。
【0178】
これにより、熱伝導性接着シート5の中央部および一端部が、電子部品3および基板2に接着するとともに、熱伝導性接着シート5の他端部が、フレーム4に接着する。
【0179】
そして、上記した放熱構造体1では、電子部品3が、熱伝導性接着シート5に被覆されているので、電子部品3から生じる熱を、電子部品3の上面および側面から熱伝導性接着シート5に熱伝導させることができる。そして、かかる熱を、熱伝導性接着シート5からフレーム4に熱伝導させて、フレーム4において外部に放熱させることができる。
【0180】
そのため、電子部品3から生じる熱を、熱伝導性接着シート5およびフレーム4によって、効率的に放熱させることができる。
【0181】
また、熱伝導性接着シート5を、電子部品3を被覆するように基板2に設ける、簡易かつ優れた作業性で、電子部品3から生じる熱を放熱させることができる。
【0182】
図6は、本発明の放熱構造体の他の実施形態(熱伝導性接着シートが熱伝導性層からなる態様)の断面図、図7は、図6の放熱構造体を作製するための工程図、図8は、本発明の放熱構造体の他の実施形態(熱伝導性接着シートの他端部が筐体に接触する態様)の断面図、図9は、本発明の放熱構造体の他の実施形態(接着・粘着層が電子部品の上面に接触する態様)の断面図を示す。
【0183】
なお、以降の各図面において、上記した各部に対応する部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0184】
上記した説明では、熱伝導性接着シート5に、接着・粘着層7を設けているが、例えば、図6に示すように、接着・粘着層7を設けることなく、熱伝導性層6から熱伝導性接着シート5を形成することもできる。
【0185】
図6において、電子部品3の側面は、熱伝導性層6と接触している。詳しくは、電子部品3から露出する基板2の上面、および、電子部品3の側面の全部は、熱伝導性層6と接触している。
【0186】
この放熱構造体1を得るには、図7に示すように、フレーム4が支持される筐体(図示せず)に電子部品3が実装されている基板2を固定するともに、熱伝導性接着シート5を用意する。熱伝導性接着シート5は、熱伝導性層6からなる。
【0187】
次いで、図7の仮想線で示すように、熱伝導性接着シート5を屈曲させ、続いて、図7の矢印が参照されるように、熱伝導性接着シート5の中央部および一端部を、電子部品3および基板2に熱圧着するとともに、熱伝導性接着シート5の他端部をフレーム4に熱圧着する。
【0188】
熱伝導性接着シート5の熱圧着では、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、樹脂成分9がBステージ状態となるので、電子部品3の周囲に形成される隙間14が、熱伝導性層6によって充填される。
【0189】
これにより、熱伝導性接着シート5が、基板2とフレーム4とに仮固定される。
【0190】
その後、樹脂成分9が熱硬化性樹脂成分である場合には、熱伝導性層6を熱硬化させる。
【0191】
これにより、熱伝導性層6の中央部および一端部が、電子部品3の上面および側面と、電子部品3から露出する基板2の上面とに接着するとともに、熱伝導性層6の他端部が、フレーム4の右側面に接着する。
【0192】
この放熱構造体1では、熱伝導性層6が、電子部品3の表面とフレーム4の右側面とに直接接触している。そのため、図6の放熱構造体1は、図1の放熱構造体1に比べて、電子部品3から生じる熱を、熱伝導性層6を介してより効率的に放熱させることができる。
【0193】
一方、図1の放熱構造体1では、熱伝導性層6が、接着・粘着層7によって、基板2およびフレーム4に接着されるので、図6の放熱構造体1に比べて、熱伝導性接着シート5が、より確実に接着され、長期にわたってより優れた放熱性を発現することができる。
【0194】
また、上記した図1および図6の説明では、本発明における放熱性部材として、フレーム4を例示しているが、放熱性部材はそれに限定されず、例えば、筐体10(図8)、ヒートシンク(図示せず)、補強ビーム(図示せず)などを例示することもできる。
【0195】
図8において、筐体10は、上側が開放された有底箱状をなし、底壁13およびそれの周端部から上方に延びる側壁11を一体的に備えている。側壁11は、基板2の周囲に配置され、底壁13は、基板2の下側に配置されている。筐体10は、例えば、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄などの金属から形成されている。
【0196】
また、熱伝導性接着シート5の中央部より他端側部分は、基板2の一端縁から下方に屈曲して、熱伝導性接着シート5の他端部は、フレーム4の右側面(内面)において、下方に延びるように配置されている。熱伝導性接着シート5の他端部は、フレーム4の右側面の下部(具体的には、側壁11および底壁13の連結部の近傍)に接触している。
【0197】
また、上記した説明では、接着・粘着層7を、熱伝導性層6の片面(裏面)に積層しているが、例えば、図1の仮想線および図4の仮想線で示すように、熱伝導性接着シート5の両面(表面および裏面)に形成することもできる。
【0198】
また、上記した図1の説明では、熱圧着を、接着・粘着層7が電子部品3に突き破られるように実施しているが、例えば、図9が参照されるように、接着・粘着層7が電子部品3に突き破られることなく、電子部品3の上面を被覆するように実施することもできる。
【0199】
接着・粘着層7は、電子部品3の上面に接触する一方、電子部品3から露出する基板2の上面には接触することなく、基板2の上面と間隔(隙間)を隔てて配置されている。
【0200】
この放熱構造体1でも、電子部品3からの熱を、接着・粘着層7を介して、熱伝導性層6に熱伝導することができ、さらに、この熱伝導性層6が、かかる熱を放熱性部材4に熱輸送することができる。
【実施例】
【0201】
以下に調製例、実施例および作製例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されない。
【0202】
(熱伝導性層の調製)
調製例1
PT−110(商品名、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(光散乱法)45μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)13.42gと、JER828(商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、第1エポキシ樹脂、液状、エポキシ当量184〜194g/eqiv.、軟化温度(環球法)25℃未満、溶融粘度(80℃)70mPa・s、ジャパンエポキシレジン社製)1.0g、および、EPPN−501HY(商品名、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、第2エポキシ樹脂、固形状、エポキシ当量163〜175g/eqiv.、軟化温度(環球法)57〜63℃、日本化薬社製)2.0gと、硬化剤(キュアゾール2P4MHZ−PW(商品名、四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン分散液)3g(固形分0.15g)(エポキシ樹脂であるJER828およびEPPN−501HYの総量に対して5質量%)とを配合して攪拌し、室温(23℃)で1晩放置して、メチルエチルケトン(硬化剤の分散媒)を揮発させて、半固形状の混合物を調製した。
【0203】
なお、上記の配合において、硬化剤を除く固形分(つまり、窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂との固形分)の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率(体積%)は、70体積%であった。
【0204】
次いで、得られた混合物をシリコーン処理した2枚の離型フィルムで挟み込み、それらを真空加熱プレス機によって、80℃、10Paの雰囲気(真空雰囲気)下、5トンの荷重(20MPa)で、2分間、熱プレスすることにより、厚み0.3mmのプレスシートを得た(図2(a)参照)。
【0205】
その後、得られたプレスシートを、プレスシートの厚み方向に投影したときに、複数個に分割されるように切断することにより分割シートを得(図2(b)参照)、続いて、分割シートを厚み方向に積層して積層シートを得た(図2(c)参照)。
【0206】
続いて、得られた積層シートを、上記と同様の真空加熱プレス機によって、上記と同様の条件で熱プレスした(図2(a)参照)。
【0207】
次いで、上記した切断、積層および熱プレスの一連の操作(図2参照)を、4回繰り返して、厚み0.3mmの熱伝導性層(未硬化状態)を得た(図3参照)。
【0208】
調製例2〜16
表1〜表3の配合割合および製造条件に準拠して、調製例1と同様に処理することにより、熱伝導性層(調製例2〜16)を得た(図3参照)。
【0209】
(熱伝導性接着シートの作製)
作製例1
アクリル系粘着剤のワニス(溶媒:MEK、固形分濃度:50質量%、フィラーレスタイプ)を、セパレータの表面に、乾燥時の厚みが10μmとなるように、塗布した。次いで、真空乾燥により、MEKを留去させることにより、粘着剤層を形成した。
【0210】
次いで、調製例1の粘着剤層を、熱伝導性層に圧着させて、これにより、熱伝導性接着シートを作製した(図4参照)。
【0211】
作製例2〜16
調製例2〜16の熱伝導性層をそれぞれ用いた以外は、作製例1と同様に処理して、熱伝導性接着シート(作製例2〜16)をそれぞれ得た(図4参照)。
【0212】
(放熱構造体の作製)
実施例1
平板状のポリイミドからなる基板と、それに実装される電子部品(厚み2mmのICチップ、1mmのコンデンサ、4mmのコイルおよび0.5mmの抵抗器)と、フレームとを用意した(図5参照)。
【0213】
次いで、作製例1の熱伝導性接着シートを、中央部および一端部が基板と重複し、他端部が基板と重複しない寸法に切断した。
【0214】
次いで、熱伝導性接着シートと基板とを、粘着剤層の中央部および一端部が電子部品に対向するように、配置し、続いて、熱伝導性接着シートの他端部を上方に屈曲させて、その後、熱伝導性接着シートを、電子部品およびフレームに向けて、シリコーン樹脂からなるスポンジロールを用いて圧着(仮固定)した(図9参照)。
【0215】
これにより、熱伝導性接着シートの中央部および一端部が、電子部品の上面に接着するとともに、熱伝導性接着シートの他端部が、フレームに接着した。
【0216】
なお、熱伝導性接着シートの中央部および一端部と、電子部品から露出する基板との間には隙間が形成された(図9参照)。
【0217】
実施例2〜16
作製例1の熱伝導性接着シートに代えて、表4に記載した作製例2〜16の熱伝導性接着シートをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、放熱構造体(実施例2〜16)をそれぞれ形成した。
【0218】
実施例17
熱伝導性接着シートの作製において、粘着剤層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして放熱構造体を作製した(図6参照)。
【0219】
実施例18〜32
熱伝導性接着シートの作製において、粘着剤層を設けなかった以外は、実施例2〜16と同様にして放熱構造体(実施例18〜32)をそれぞれ作製した(図6参照)。
【0220】
(評価)
1.熱伝導率
調製例1〜16の熱伝導性層について、熱伝導率を測定した。
【0221】
すなわち、面方向(SD)における熱伝導率を、キセノンフラッシュアナライザー「LFA−447型」(NETZSCH社製)を用いるパルス加熱法により測定した。
【0222】
その結果を表1〜表3に示す。
2.空隙率(P)
調製例1〜16の熱硬化前の熱伝導性層の空隙率(P1)を下記の測定方法により測定した。
【0223】
空隙率の測定方法:まず、熱伝導性シートを厚み方向に沿ってクロスセクションポリッシャー(CP)により切断加工して、それにより現れる断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で、200倍で観察して、像を得た。その後、得られた像から、空隙部分と、それ以外の部分とを二値化処理し、次いで、熱伝導性シート全体の断面積に対する空隙部分の面積比を算出した。
【0224】
その結果を表1〜表3に示す。
3.段差追従性(3点曲げ試験)
調製例1〜16の熱硬化前の熱伝導性層について、下記試験条件における3点曲げ試験を、JIS K7171(2008年)に準拠して、実施することにより、段差追従性を下記の評価基準に従って評価した。その結果を表1〜表3に示す。
【0225】
試験条件
試験片:サイズ20mm×15mm
支点間距離:5mm
試験速度:20mm/min(圧子の押下速度)
曲げ角度:120度
(評価基準)
◎:破断が全く観察されなかった。
【0226】
○:破断がほとんど観察されなかった。
【0227】
×:破断が明確に観察された。
4.印刷マーク視認性(印刷マーク付着性:インクジェット印刷またはレーザー印刷によるマーク付着性)
調製例1〜16の熱伝導性層に、インクジェット印刷およびレーザー印刷によって、マークを印刷し、かかるマークを観察した。
【0228】
その結果、調製例1〜16の熱伝導性層のいずれについても、インクジェット印刷およびレーザー印刷の両方によるマークを良好に視認することができ、印刷マーク付着性が良好であることを確認した。
5.体積抵抗
調製例1〜16の熱伝導性層の体積抵抗(R)を測定した。
【0229】
すなわち、熱伝導性層の体積抵抗(R)は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法、2006年版)に準拠して、測定した。
【0230】
その結果を表1〜表3に示す。
6.初期接着力試験
6−1.ノートパソコン用実装基板に対する初期接着力試験
調製例1〜16の未硬化の熱伝導性層について、複数の電子部品が実装されたノートパソコン用実装基板に対する初期接着力試験(1)および(2)を実施した。
【0231】
すなわち、熱伝導性層を水平方向に沿うノートパソコン用実装基板の表面(電子部品が実装される側)に、シリコーン樹脂からなるスポンジロールを用いて、80℃(調製例1〜9および調製例11〜16)または120℃(調製例10)で加熱圧着して仮固定して、10分間放置した後、ノートパソコン用実装基板を上下方向に沿うように設置した(初期接着力試験(2))。
【0232】
続いて、ノートパソコン用実装基板を、熱伝導性層が下側を指向するように(つまり、仮固定直後の状態から上下反転するように)設置した(初期接着力試験(1))。
【0233】
そして、上記した初期接着力試験(1)および初期接着力試験(2)において、熱伝導性層を下記の基準に従って評価した。その結果を、表1〜表3に示す。
【0234】
<基準>
○:熱伝導性層がノートパソコン用実装基板から脱落しなかったことを確認した。
【0235】
×:熱伝導性層がノートパソコン用実装基板から脱落したことを確認した。
6−2.ステンレス基板に対する初期接着力試験
調製例1〜16の未硬化の熱伝導性層について、ステンレス基板(SUS304製)に対する初期接着力試験(1)および(2)を、上記と同様にして実施した。
【0236】
そして、上記した初期接着力試験(1)および初期接着力試験(2)において、熱熱伝導性層を下記の基準に従って評価した。その結果を、表1〜表3に示す。
【0237】
<基準>
○:熱伝導性層がステンレス基板から脱落しなかったことを確認した。
【0238】
×:熱伝導性層がステンレス基板から脱落したことを確認した。
7.体積抵抗
調製例1〜16の未硬化の熱伝導性層の体積抵抗(R)を測定した。
【0239】
すなわち、熱伝導性層の体積抵抗(R)は、JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法、2006年版)に準拠して、測定した。
【0240】
その結果を表1〜表3に示す。
8.放熱性
実施例1〜32の放熱構造体における電子部品を動作させ、1時間経過させた。動作中における熱伝導性接着シートの表面温度を赤外線カメラで測定したところ、70℃であり、温度上昇が抑制されたことが確認された。
【0241】
一方、熱伝導性接着シートを用いない基板(比較例1の放熱構造体の放熱構造体における基板)について、同様に評価したところ、電子部品の直上の温度が130℃であった。
【0242】
従って、実施例1〜32の放熱構造体の放熱性が優れていることが確認された。
【0243】
【表1】

【0244】
【表2】

【0245】
【表3】

【0246】
【表4】

【0247】
表1〜表3における各成分中の数値は、特段の記載がない場合には、g数を示す。
【0248】
なお、表1〜表3の窒化ホウ素粒子の欄において、上段の数値は、窒化ホウ素粒子の配合質量(g)であり、中段の数値は、熱伝導性シートにおいて硬化剤を除く固形分(つまり、窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂またはポリエチレンとの固形分)の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率(体積%)であり、下段の数値は、熱伝導性シートの固形分(つまり、窒化ホウ素粒子と、エポキシ樹脂および硬化剤との固形分)の総体積に対する窒化ホウ素粒子の体積百分率(体積%)である。
【0249】
また、表1〜表3の各成分中、※印を付した成分について、以下にその詳細を記載する。
PT−110※1:商品名、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(光散乱法)45μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
UHP−1※2:商品名:ショービーエヌUHP−1、板状の窒化ホウ素粒子、平均粒子径(光散乱法)9μm、昭和電工社製
エポキシ樹脂A※3:オグソールEG(商品名)、ビスアリールフルオレン型エポキシ樹脂、半固形状、エポキシ当量294g/eqiv.、軟化温度(環球法)47℃、溶融粘度(80℃)1360mPa・s、大阪ガスケミカル社製
エポキシ樹脂B※4:JER828(商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状、エポキシ当量184〜194g/eqiv.、軟化温度(環球法)25℃未満、溶融粘度(80℃)70mPa・s、ジャパンエポキシレジン社製
エポキシ樹脂C※5:JER1002(商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形状、エポキシ当量600〜700g/eqiv.、軟化温度(環球法)78℃、溶融粘度(80℃)10000mPa・s以上(測定限界以上)、ジャパンエポキシレジン社製
エポキシ樹脂D※6:EPPN−501HY(商品名)、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、固形状、エポキシ当量163〜175g/eqiv.、軟化温度(環球法)57〜63℃、日本化薬社製
硬化剤※7:キュアゾール2PZ(商品名、四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン溶液
硬化剤※8:キュアゾール2P4MHZ−PW(商品名、四国化成社製)の5質量%メチルエチルケトン分散液
ポリエチレン※9:低密度ポリエチレン、重量平均分子量(Mw)4000、数平均分子量(Mn)1700、Aldrich社製
【符号の説明】
【0250】
1 放熱構造体
2 基板
3 電子部品
4 フレーム
5 熱伝導性接着シート
6 熱伝導性層
7 接着・粘着層(接着剤層または粘着剤層)
8 窒化ホウ素粒子
10 筐体
SD 面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に実装される電子部品と、
前記電子部品から生じる熱を放熱させるための放熱性部材と、
前記基板に、前記電子部品を被覆するように設けられる熱伝導性接着シートとを備え、
前記熱伝導性接着シートは、板状の窒化ホウ素粒子を含有する熱伝導性層を備え、
前記熱伝導性層は、前記熱伝導性層の厚み方向に対する直交方向の熱伝導率が、4W/m・K以上であり、
前記熱伝導性接着シートが、前記放熱性部材に接触していることを特徴とする、放熱構造体。
【請求項2】
前記熱伝導性接着シートは、前記熱伝導性層の少なくとも一方面に積層される接着剤層または粘着剤層を備え、
前記接着剤層または前記粘着剤層は、前記基板と接着または粘着していることを特徴とする、請求項1に記載の放熱構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−49496(P2012−49496A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16931(P2011−16931)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】