説明

放熱構造及び車両用インバータ

【課題】部材間同士の接触部分を増やすと共に、これらの間に配置された熱伝導性グリースの流動を抑制し、これにより、発熱体から放熱部材への放熱性を向上させることができる放熱構造及び該放熱構造を備えた車両用インバータを提供する。
【解決手段】電子機器11が載置されたケース20と、熱伝導性グリースGを介してケース20に接触する冷却器30とを備えた放熱構造10であって、ケース20及び冷却器30のうち少なくとも一方の接触面21は、複数の直線状の凹部25が並行に形成された接触領域23を有し、接触領域23に伝導性グリースGが配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体から放熱部材に熱を放熱する放熱構造に係り、特に、熱伝導性グリースを用いて放熱するに好適な放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部機器を実装した車両用インバータ等には、発熱体から発生する熱を放熱するための放熱構造が採用されている。例えば、車両用インバータのパワーコントロールユニットには、昇圧IPMやリアクトルなどの電子機器を備えており、図5(a)に示すように、電子機器91は、ケース(基材)92内に配置されている。電子機器91は、インバータの使用時に発熱する発熱体であるため、この発熱する熱を放熱すべく、熱伝導性グリース(放熱グリース)Gを介して、ヒートシンクを含む冷却器(放熱部材)95が、基材92に接触するように配置されている。
【0003】
このような放熱構造を採用した場合には、基材92と、放熱部材95との間の熱伝導性グリースGが、電子機器91から発熱する熱に伴い流動することがある。特に、基材92と放熱部材95との間の対向する面が鉛直方向Yに沿って(又は鉛直方向Yに傾斜して)配置されている場合には、熱伝導性グリースGは、鉛直方向Yに沿って、重力により流動し易く、熱伝導性グリースGが垂れ落ちることがあった。
【0004】
このような点を鑑みて、例えば、図5(a)に示すように、基材92と放熱部材95との間において、熱伝導性グリースGを囲繞するように、グリース流出防止材94を設けたものや、基材の下部に凹み部分を設け、この凹み部分によりグリースの垂れ落ちを抑制するもの(例えば、特許文献1参照)などを挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−293918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5(a)に示すような、グリース流出防止材94は、通常、金属材料や高分子樹脂材料を用いることが一般的であるが、グリース流出防止材94のZ方向の厚みにより、熱伝導性グリースGが配置された基材92と放熱部材95との表面同士が、直接的に接触(メタルタッチ)をすることがほとんどなく、熱伝導性がよいものであるとはいえない。
【0007】
例えば、金属製のグリース流出防止材を用いた場合には、この防止材の熱伝導性は高いが、金属は高分子樹脂に比べて弾性変形し難いので、高分子樹脂のものに比べて表面同士の接触部分は少なくなる。一方、高分子樹脂製のグリース流出防止材を用いた場合には、この高分子樹脂は金属に比べて弾性変形し易いので、表面同士の接触部分は増えるが、この防止材の熱伝導性は金属製のものに比べて低いので、全体的には放熱し難くなる。
【0008】
さらに、図5(b)に示すように、基材と放熱部材との間の対向する面の傾斜角度が大きくなるに従って熱伝導性グリースGは流動して基板の下方に偏り、上部のグリース流出防止材94の近傍に空間Sが形成され易くなる。また、特許文献1のように、基板の下部に凹み部分を設けた場合には、グリースの垂れ落ちを防止できるが、その上部には、グリースの流動により同様に空間が形成されることになる。
【0009】
このようにして形成された空間は、断熱層として作用するため、放熱構造の上部は下部に比べて放熱性が低く、接触面内の放熱性の良否にアンバランスが生じることになり、全体としての放熱性が低下することになる。
【0010】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材と放熱部材との接触部分を増やすと共に、これらの間に配置された熱伝導性グリースの流動を抑制し、これにより、発熱体から放熱部材への放熱性を向上させることができる放熱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく、本発明に係る放熱構造は、発熱体が載置された基材と、熱伝導性グリースを介して前記基材に接触する放熱部材と、を備えた放熱構造であって、前記基材及び前記放熱部材のうち少なくとも一方の接触面は、複数の直線状の凹部が並行に形成された接触領域を有し、該接触領域に前記伝導性グリースが配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、熱伝導性グリースが配置される接触面に、複数の直線状の凹部が形成された接触領域を設けたことにより、この接触領域の複数の直線状の凸部(突起部)が形成され、この凸部が対向する接触面に対して直接接触し、この領域の複数の直線状の凹部には、熱伝導性グリースが配置されることになる。
【0013】
そして、基材と放熱部材との接触面が、鉛直方向に対して傾斜して配置されている場合や、鉛直方向に沿って配置されている場合であっても、直線状の凹部を水平方向に沿って形成されるように、前記基材と前記放熱部材とを配置さえすれば、熱伝導性グリースは、水平方向に延在した凹部(水平方向に延在した凸部同士の間)に配置されるので、重力により熱伝導グリースが鉛直方向に流動し難い。
【0014】
このように、接触領域に配置されたグリースは漏れ難く、これにより、基材と放熱部材との間に空間が形成され難いので、発熱体から放熱部材への均一な熱伝導が可能となり、これにより発熱体からの放熱性を向上させることができる。
【0015】
本発明にいう「熱伝導性グリース」はいわゆる放熱グリースであり、例えば、シリコーングリースなどを例示することができるが、特にこれに限定されるものではなく、グリースの中でも、熱を伝導し易い(放熱性に富んだ)組成からなるグリースであればよい。また、本発明にいう「接触面」とは、相手方の部材に対して直接的に接触する面又は線を含む仮想面をいい、「接触領域」とは、基材と放熱部材とが接触する接触面の領域のうち、複数の直線状の凹部が並行に形成された(並んで形成された)領域のことをいい、例えば、接触領域において、この直線状の凹部が平行に形成されていてもよい。また、本発明にいう「直線状の凹部」とは、接触面に対して直線状に凹んだ部分のことであり、直線状の溝部であることがより好ましい。
【0016】
また、基材と放熱部材の少なくとも一方の表面に、他方に対して直接的に接触する直線状の凸部と、これらの凸部の間の熱伝導性グリースを保持ことができる直線状の凹部とが、複数形成されているのであれば、凹凸が設けられた表面粗さは特に限定されるものではないが、本発明に係る放熱部材は、前記凹部の直線方向に対する垂直方向の前記接触領域の表面粗さが、中心線平均粗さRa12.5μm以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明によれば、直線状の凹部の直線に沿った方向に対して垂直の方向の接触領域の中心線平均粗さRaをこのような範囲にすることにより、接触領域における複数の直線状の凸部が密になり、基材と放熱部材との直接接触する部分が増えるので、発熱体から放熱部材までの熱の熱伝導性が向上する。一方、中心線平均粗さRa12.5μmを超えるに従って、基材と放熱部材との間の熱抵抗が上昇し、放熱性が低下する場合がある。
【0018】
さらに、本発明に係る放熱構造は、前記直線状の凹部の直線方向に対する垂直方向の表面粗さが、中心線平均粗さRa3.0μm以上であることがより好ましい。本発明によれば、中心線平均粗さRaをこのような範囲とすることにより、基材と放熱部材とを上述する配置状態にした場合であっても、接触領域における凹部の深さが深くなり、凹部に配置された熱伝導性グリースが、重力により凸部を乗り越えて、下方(鉛直方向)に流動し難くなる。これにより、基材と放熱部材との間に、熱伝導性グリースの移動による空間が形成され難くなる。
【0019】
すなわち、表面粗さが、中心線平均粗さRa3.0μm未満の場合には、熱伝導性グリースが重力により凸部を乗り越えて鉛直方向に流動し易くなり、空気による断熱層が上部に形成され、面内の放熱性の良否にアンバランスが生じ、全体としての放熱性が低下することがある。
【0020】
また、本発明に係る放熱構造は、前記接触面には、前記接触領域を囲繞するような山部が形成されていることがより好ましい。本発明によれば、接触領域を囲繞するように山部が形成されるので、例えば熱サイクルによる熱負荷、重力、及び振動などにより、熱伝導性グリースが流動した場合であっても、この山部が堰として作用し、接触領域内に配置された熱伝導グリースを好適に封止することができ、グリース漏れを回避することができる。
【0021】
また、上述したように、本発明に係る放熱構造は、前記接触面が鉛直方向に沿って形成され、かつ、前記直線状凹部が水平方向に沿って形成されるように、前記基材と前記放熱部材とが配置されていることがより好ましい。このような配置構成とすることにより、上述した如く、熱伝導性グリースの垂れを抑制し、放熱性をより高めることができる。
【0022】
また、本発明に係る放熱構造は、前記接触領域の前記基材の厚さ方向に沿った位置に、前記発熱体が載置されていることがより好ましい。発熱体をこのような位置に載置することで、発熱体の熱を、熱伝導性グリースを介して、より効率的に放熱部材から放熱することができる。
【0023】
また、前記放熱構造を車両用インバータに備えることがより好ましく、前記接触面が鉛直方向に沿って形成され、かつ、前記直線状凹部が水平方向に沿って形成されるように、前記基材と前記放熱部材とが配置されていることがより好ましい。発熱し易いリアクトル等の発熱体の熱を好適に放熱させ、熱伝導性グリースの垂れも抑えることができるので、車両の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基材と放熱部材との接触部分を増やすと共に、これらの間に配置された熱伝導性グリースの流動を抑制し、これにより、発熱体から放熱部材への放熱性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明に係る放熱構造の一実施形態に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用インバータ1の放熱構造の全体構成図を示しており、図1(a)は、放熱構造の縦断面図であり、(b)は図1に示すケース(基材)と冷却器(放熱部材)との接触状態を説明するための図である。また、図2は、図1(a)に示すケース(基材)の接触領域を示した図である。尚、図中のXYZは、直交座標系を示している。
【0026】
図1(a)に示す放熱構造10は、車両用インバータ1のコンバータ部の放熱構造である。この放熱構造10は、発熱体として、昇圧IPMやリアクトルなどの電子機器11とを備えており、これらは、車両用インバータ1の作動時に放熱する。
【0027】
電子機器11は、アルミニウム合金等の金属製のケース(基材)20内に載置されている。ケース20は、例えばフィラーにシリコーン等の基油(オイル)を含んだ熱伝導性グリースGを介して、アルミニウム合金等の金属製の冷却器(放熱部材)30にボルトにより固定されて接触している。このような基本構成により、電子機器11から発熱する熱は、図1(a)に示す横矢印方向Zに、冷却器30に伝達される。
【0028】
また、図1(a),(b)に示すように、ケース20と冷却器30とが接触する接触面21,31は、鉛直方向Yに沿って配置されている。さらに、図2に示すように、ケース20の接触面21は、水平方向Xに沿って、複数の直線状の凹部(溝部)26が並行に(本実施形態では直線状の凹部が平行に)形成された接触領域23を有し、この接触領域23に熱伝導性グリースGが配置されている。接触面21の少なくとも一部を構成する接触領域23に、このような凹部26を設けることにより、この接触領域23には、水平方向Xに沿って、直線状の凸部(突起部)25と凹部26が交互に形成されることになる。
【0029】
そして、図1(b)に示すように、各凸部25,25…は、冷却器30の接触面31に直接的に接触(メタルタッチ)することになる。一方、各凹部26,26…には、熱伝導性グリースGが配置されることになる。このようにして、ケース20と冷却器30との接触面が鉛直方向Yに沿って配置されている場合であっても、熱伝導性グリースGは、水平方向Xに延在した凹部(水平方向に延在した凸部同士の間)に配置されているので、重力により熱伝導グリースGが鉛直方向Yに流動し難い。
【0030】
この結果として、接触領域23に配置されたグリースGは漏れ難く、ケース20と冷却器30との間には空間が形成され難いので、電子機器11から冷却器20への均一な熱伝導が可能となり、これにより電子機器11から冷却器20への放熱性を向上させることができる。
【0031】
さらに、接触領域23の鉛直方向Yの表面粗さ(ケース20を設置前の場合には、凹部の直線方向に対する垂直方向の前記接触領域の表面粗さ)、すなわち水平方向Xに対して垂直方向に沿った表面粗さは、中心線平均粗さRa3.0〜12.5μmの範囲となっている。後述する発明者らの実験によれば、中心線平均粗さを12.5μm以下にすることにより、接触領域23における直線状の凸部25が密になり、ケース20と冷却器30との直接接触する部分が増え、この結果、電子機器11から冷却器30までの熱の熱伝導性が向上する。一方、中心線平均粗さをRa3.0μm以上にすることにより、接触領域の凹凸における凸部25の高さが高くなり(凹部26の深さが深くなり)、凸部25,25同士の間(凹部26)に配置された熱伝導性グリースGが、重力により凸部25を乗り越えて、下方(鉛直方向)に流動し難くなる。この結果、グリースGの垂れ落ちを抑制するばかりでなく、グリースGの移動による空間の形成を抑えることができる。
【0032】
さらに、図2に示すように、接触面21には、接触領域23を囲繞するような山部24が形成されている。山部24は、各凸部25の山高さと同じ高さとなっており、これにより、山部24の頂部と、凸部25の頂部とが同一接触面上に配置されることになり、凸部25と山部24とを同時に接触させることができる。尚、このような表面形状の接触面21は、型彫放電加工などの表面加工により得ることができる。
【0033】
このようにして、接触領域23を囲繞するように山部24(接触領域23を囲繞し、冷却器30に接触する接触部分)が形成されるので、例えば熱サイクルによる熱負荷、重力、及び振動などにより、熱伝導性グリースGが流動した場合であっても、この山部24が堰として作用し、接触領域23内に配置された熱伝導グリースGを好適に封止することができ、グリース漏れを回避することができる。
【実施例】
【0034】
以下に本発明を実施例により説明する。
<実施例1>
図1(a)に示すような、基材(ケース)と放熱部材(冷却器)に相当する異なる表面粗さ(中心線平均粗さRa)のアルミニウム平板を準備した。具体的には、基材に相当するアルミニウム平板(以下、基材という)の表面のうち、放熱部材の相当するアルミニウム平板(以下、放熱部材という)と接触する部分(接触領域:100mm×100mm)に複数の直線状の凹部を平行に形成し、この接触領域を囲繞するように山部を形成し、直線状の凹部に沿った直線方向に対して垂直方向の接触方向の表面粗さ(後述する鉛直方向の表面粗さ)が、触針式表面粗さ測定器で測定して、中心線平均粗さRa6.0μmとなるように、型彫放電加工により、その表面を加工した。
【0035】
この基材と放熱部材とを用いて、基材の接触領域を含む接触面が鉛直方向に沿って形成され、かつ、接触領域が水平方向に沿って直線状の凹部が形成されるように基材と放熱部材とを配置し、熱伝導性グリースとしてシリコーングリースを介して、基材の接触領域の凸部及び山部が放熱部材に当接するように、放熱部材を接触させた放熱構造を製造した。尚、放熱部材の表面粗さは、中心線平均粗さRa約0.5μmである。
【0036】
そして、この姿勢を維持して、温度負荷として0℃以下100℃近傍の温度変化を1サイクルとして500回繰返した熱サイクル試験を行った。その後、下方向(鉛直方向)へ移動するシリコーングリースの移動距離を測定した。この結果を図3に示す。
【0037】
<比較例1>
実施例1と同じように、放熱構造を製造した。実施例1と相違する点は、基材の接触領域が鉛直方向に沿って直線状の凹凸が形成されるように、基材と放熱部材とを接触させた点である。そして、実施例1と同じように、熱サイクル試験を行った。この結果を図3に示す。
【0038】
[結果1]
図3に示すように、実施例1のシリコーングリースの移動距離は、比較例1のものに比べて、短かった。これは、実施例1の基材の接触領域に、水平方向に沿って直線状の凹凸が形成された接触領域を設け、この接触領域に熱伝導性グリースを配置したので、接触領域の凹部に配置されたシリコーングリースは、重力により鉛直方向に移動し難くなったためであると考えられる。一方、比較例1の基材の接触領域は、鉛直方向に沿って直線状の凹凸が形成されたので、この接触領域に配置されたシリコーングリースは、鉛直方向に沿って形成された直線状の凹部に沿って流動し易くなったものと考えられる。
【0039】
<実施例2>
実施例1と同じようにして、放熱構造を製造した。実施例1と相違する点は、接触領域の表面粗さ(鉛直方向に沿った測定により得られる表面粗さ(凹部の直線方向に対する垂直方向の接触領域の表面粗さ))を、中心線平均粗さRa3.0〜12.5μmの範囲にした点である。そして、実施例1と同じようにして、熱サイクル試験を行った。この結果を図4(a)に示す。尚、図4(a),(b)に示した点は代表的な測定点を示している。
【0040】
さらに、この放熱構造の基材と放熱部材とを挟むように一対の熱電対の温調支持体を配置し、一方の温調支持体の温度が100℃近傍となるよう加熱調整にし、他方の温調支持体の温度を、測定し、これにより、放熱構造の熱抵抗を測定した。この結果を図4(b)に示す。
【0041】
<比較例2>
実施例1と同じようにして、放熱構造を製造した。実施例1と相違する点は、接触領域の表面粗さを、中心線平均粗さRa3.0μm未満、12.5μm超えとした点である。そして、実施例と同じようにして、熱サイクル試験、熱抵抗測定試験を行った。この結果を図4(a),(b)に示す。
【0042】
[結果2]
図4(a)に示すように、実施例2の如く接触領域の表面粗さが、中心線平均粗さRa3.0μm以上で、シリコーングリースの移動距離が減少し、比較例2の如く、中心線平均粗さRa12.5μmを超えた場合には、熱抵抗が増加した。この結果から、グリースの移動を抑制し、放熱構造の放熱性を向上させるためには、接触領域の鉛直方向Yの表面粗さが、中心線平均粗さRa3.0〜12.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0043】
比較例2の如く中心線平均粗さRa3.0μm未満の場合には、熱伝導性グリースが重力により凸部を乗り越えて鉛直方向に流動し易くなると考えられる。比較例2の如く中心線平均粗さRa12.5μmを超えるに従って、メタルタッチとなると凸部の割合が減少し、基材と放熱部材と間の熱抵抗が上昇し、放熱性が低下したと考えられる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【0045】
例えば、本実施形態では、ケースに接触領域を設けたが、冷却器又は、これらの双方に、上述した表面状態となる接触領域を設けてもよい。また、本実施形態では、ケースと冷却器との接触面が鉛直方向に形成されるように配置されているが、この接触面が鉛直方向に対して傾斜するように配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】、本実施形態に係る車両用インバータの放熱構造の全体構成図を示しており、(a)は、放熱構造の縦断面図であり、(b)はケース(基材)と冷却器(放熱部材)との接触状態を説明するための図。
【図2】図1(a)に示すケース(基材)の接触領域を示した図。
【図3】実施例1及び比較例1に係る熱サイクル試験の結果を示した図。
【図4】実施例2及び比較例2の熱サイクル試験及び熱抵抗試験の結果を示した図であり、(a)熱サイクル試験の結果、(b)は熱抵抗試験の結果を示した図。
【図5】従来の車両用インバータの放熱構造の全体構成図であり、(a)は、熱負荷前の全体構成図であり、(b)は、熱負荷後の全体構成図。
【符号の説明】
【0047】
1:車両用インバータ、10:放熱構造、11:電子機器(発熱体)、20:ケース(基材)、21:接触面、25:凸部、26:凹部、30:冷却器(放熱部材)、31:接触面、23:接触領域、24:山部、Y:鉛直方向、X:水平方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が載置された基材と、熱伝導性グリースを介して前記基材に接触する放熱部材と、を備えた放熱構造であって、
前記基材及び前記放熱部材のうち少なくとも一方の接触面は、複数の直線状の凹部が並行に形成された接触領域を有し、該接触領域に前記伝導性グリースが配置されていることを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記凹部の直線方向に対する垂直方向の前記接触領域の表面粗さは、中心線平均粗さRa12.5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記凹部の直線方向に対する垂直方向の前記接触領域の表面粗さは、中心線平均粗さRa3.0μm以上であることを特徴とする請求項2に記載の放熱構造。
【請求項4】
前記接触面には、前記接触領域を囲繞する山部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放熱構造。
【請求項5】
前記接触面が鉛直方向に沿って形成され、かつ、前記凹部が水平方向に沿って形成されるように、前記基材と前記放熱部材とが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放熱構造。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の放熱構造を備えた車両用インバータであって、前記接触面が鉛直方向に沿って形成され、かつ、前記凹部が水平方向に沿って形成されるように、前記基材と前記放熱部材とが配置されていることを特徴とする車両用インバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−92999(P2010−92999A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260233(P2008−260233)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】