説明

放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板

【課題】 パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードにおける樹脂絶縁層などに有用な放熱性を持ち、保存安定性に優れた放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】 (A)遠赤外線を放射するセラミックス粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなり、(A)の体積占有率が、硬化物の全容量に対して60容量%以上であることを特徴とする放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板に関し、さらに詳しくは、パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードの樹脂絶縁層などに有用な放熱性を持ち、保存安定性にすぐれた放熱絶縁性樹脂組成物、及びそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、半導体の高密度化、高機能化が求められている。そのため、半導体を実装する回路基板も小型高密度のものが要求されている。その結果、最近では、部品、回路基板の放熱性が大きな課題となっている。
これに対し、放熱性の良い回路基板として、銅やアルミニウムなどの金属板を使用し、この金属板の片面又は両面に、プリプレグや熱硬化性樹脂組成物などの電気絶縁層を介して回路パターンを形成する金属ベース基板が挙げられる(例えば、参考文献1参照)。
しかしながら、かかる金属ベース基板は、電気絶縁層の熱伝導性が悪いために絶縁層を薄くする必要があり、その結果として、絶縁耐圧の問題が生じる場合がある。
【0003】
一方、高密度な半導体チップの実装方法は、表面実装が主流となり、最近では、BGA(ボール・グリッド・アレイ)やCSP(チップ・スケール・パッケージ)等のパッケージ基板が登場してきた。このようなパッケージ基板に用いられるソルダーレジスト組成物(例えば、特許文献2参照。)や層間絶縁材料は、低分子量のエポキシ化合物をベースとしたもので、充填材も電気絶縁性や耐薬品性が良好であるシリカや沈降性硫酸バリウムであり、放熱性は乏しいものであった。また、放熱性、電気絶縁性、耐薬品性が期待されるアルミナをフィラーとして使用した場合は、フィラーの沈降が激しく、沈降したフィラーは固く凝集するために使用不能となり、保存安定性の面で実用性に乏しい。
これに対し、半導体上部にヒートシンクを付帯させるという方法も考えられるが、放出される熱の約50%はパッケージ基板に蓄積されるため、依然として、パッケージ基板の放熱性が問題となっている。
【0004】
また、多数の表面実装型発光ダイオードがプッシュボタン表示に用いられている最近の携帯電話などでは、発光ダイオードから発散される熱の大部分が、基板に蓄積するという問題がある。具体的には、例えば、端子部が形成された樹脂絶縁層上に発光ダイオードチップが配置され、その上部にレンズ層を兼ねた封止樹脂でパッケージされている表面実装型発光ダイオードにおいて、前記樹脂絶縁層の放熱性が問題となる。
【特許文献1】特開平6−224561号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−288091号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み開発されたものであり、その主たる目的は、パッケージ基板や表面実装型発光ダイオードにおける樹脂絶縁層などに有用な放熱性を持ち、保存安定性に優れた放熱絶縁性樹脂組成物を提供することにある。
さらに、上記放熱絶縁性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射/又は熱硬化して得られる硬化物により、絶縁層及び/又はソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、前記目的の実現に向けて鋭意研究した結果、(A)遠赤外線を放射するセラミックス粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなり、(A)の体積占有率が、硬化物の全容量に対して60容量%以上である組成物が、沈降や凝集の問題がなく保存安定性に優れ、プリント配線用絶縁性硬化性樹脂組成物として優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
尚、前記硬化性樹脂組成物(B)としては、(B−1)熱硬化性樹脂組成物、又は(B−2)光硬化性樹脂組成物のいずれでも同様の効果が得られ、熱硬化性、及び光硬化性の絶縁性硬化性組成物を提供することができる。また、熱硬化性樹脂組成物(B−1)と光硬化性樹脂組成物(B−2)を混合して用いることにより、熱硬化・光硬化併用型の絶縁性硬化性樹脂組成物を提供することもできる。
他の態様としては、上記放熱絶縁性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射/又は熱硬化して得られる硬化物により、絶縁層及び/又はソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に用いられる遠赤外線を放射するセラミックス粒子は、球状であることにより、組成物の粘度を大幅に上げることなく、高充填化ができ、特に最密充填となる粒度分布を持つ球状の粒子を用いることにより、沈降及び凝集を抑えることができ、保存安定性、熱伝導性に優れた絶縁性樹脂組成物を提供することが可能となった。このような放熱性に優れ、かつ保存安定性に優れた絶縁性樹脂組成物は、発熱量の多い半導体や発光ダイオードを搭載したプリント配線板に好適に使用することができ、さらに熱伝導性に優れていることから、小型軽量化も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の放熱絶縁性樹脂組成物の基本的な態様は、(A)遠赤外線を放射するセラミックス粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなり、前記(A)遠赤外線を放射するセラミックス粒子の体積占有率が、硬化物の全容量に対して60容量%以上含むことを特徴としている。特に化学的にも安定で、絶縁性に優れる、球状の酸化アルミニウムを、硬化物の体積占有率が60容量%以上にすることにより、コーティング性を損なうことなく、硬化物の放熱性に優れ、絶縁性を有する硬化物を提供することが出来ることを見出した。
【0009】
以下、本発明の放熱絶縁性硬化性樹脂組成物の各構成成分について、詳しく説明する。
まず、本発明に用いられる遠赤外線を放射するセラミックス粒子(A)に使用できる材料は、一般的に遠赤外セラミックスと呼ばれる、酸化アルミニウム(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム(MgO)、ムライト(3Al・2SiO)、ジルコン(とはのうち特にZrO・SiO)、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、酸化マンガン(MnO)、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(CoO)などがある。
これらの中でも酸化アルミニウムは、化学的にも安定で、絶縁性にも優れている。特に、球状の酸化アルミニウムを用いることで高充填した際の粘度上昇を和らげることができる。このような酸化アルミニウム粒子(A−1)の平均粒径は、0.01μm〜30μm、より好ましくは0.01μm〜20μmである。平均粒径が、0.01μmよりも小さいと組成物の粘度が高くなりすぎて、分散が困難であり、被塗布物への塗布も困難となる。一方、平均粒径が、30μmより大きいと塗膜への頭出しが発生することと、沈降速度が速くなり保存安定性が悪化する。また、最密充填となるような粒度分布を持つ2種類以上の平均粒子径のものを配合することにより、更に高充填にすることができ、保存安定性、熱伝導率の両側面から好ましい。
尚、本明細書において、遠赤外線とは、一般的な概念である波長4〜1000μmの電磁波を示す。また、遠赤外線を放射するセラミックス粒子(A)とは、例えば、特開2003−136618号公報に記載してあるような、理想黒体に対して、好ましくは80%以上の高い遠赤外線放射率を持つセラミック粒子である。
【0010】
前記酸化アルミニウム粒子(A−1)の市販品としては、DAW−05(電気化学工業社製、平均粒径5μm)、DAW−10(電気化学工業社製、平均粒径10μm)、AS−40(昭和電工社製、平均粒径12μm)、AS−50(昭和電工製、平均粒径9μm)等が挙げられる。
この酸化アルミニウム粒子(A−1)の配合量としては、硬化物の全容量に対して60容量%以上である。酸化アルミニウム粒子(A−1)の配合量が、硬化物の全容量に対して60容量%未満であると放熱材料としての十分な熱伝導率を得ることができない。
尚、一般的に硬化性樹脂の比重は、1.1位であり、酸化アルミニウムの比重は、4.0g/mlであることから、硬化性樹脂40(ml)×1.1(g/ml)=44gに対して、酸化アルミニウム60(ml)×4.0(g/ml)=240g以上となり、質量基準とした場合、約84質量%以上となる。
【0011】
本発明に用いられる硬化性樹脂組成物(B)は、(B−1)熱硬化性樹脂組成物、及び/又は(B−2)光硬化性樹脂組成物のいずれであっても良い。
上記熱硬化性樹脂組成物(B−1)としては、加熱により硬化して電気絶縁性を示す組成物、例えばエポキシ系組成物、オキセタン系組成物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられ、特に、本発明においては、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物、及び硬化剤及び/又は硬化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物が、好ましく用いることができる。
【0012】
上記エポキシ化合物としては、一分子中に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば、公知慣用のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。さらに、硬化塗膜特性を低下させない範囲で、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物を添加しても良い。
これらは、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0013】
前記オキセタン化合物は、下記一般式(I)のように、
【化1】



(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)

オキセタン環を含有する化合物である。具体的な化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−101)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−211)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製の商品名 OXT−212)、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製の商品名 OXT−121)、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製の商品名 OXT−221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。
上記オキセタン化合物は、前記エポキシ化合物と併用または単独で使用することができるが、エポキシ化合物に比べて反応性が悪い為、硬化の温度を高くする等の注意が必要である。
【0014】
次に、硬化剤として使用されるものとしては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸及びその酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、多官能フェノール化合物、及びポリカルボン酸及びその酸無水物が、作業性、絶縁性の面から、好ましく用いられる。
多官能フェノール化合物としては、一分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば、公知慣用のものが使用できる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAのノボラック樹脂、ビニルフェノール共重合樹脂などが挙げられるが、特に、フェノールノボラック樹脂が、反応性が高く、耐熱性を上げる効果も高いため好ましい。 このような多官能フェノール化合物は、適切な硬化触媒の存在下、前記エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物とも付加反応する。
【0015】
前記ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。市販品としては、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル(商品群名)、アーコケミカル社製のSMAレジン(商品群名)、新日本理科社製のポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。
【0016】
前記硬化触媒としては、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物と、多官能フェノール化合物及び/又はポリカルボン酸及びその酸無水物の反応の硬化触媒となる化合物、または硬化剤を使用しない場合に重合触媒となる化合物、例えば、三級アミン、三級アミン塩、四級オニウム塩、三級ホスフィン、クラウンエーテル錯体、及びホスホニウムイリドなどが挙げられ、これらの中から任意に選択することが可能であり、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中で、好ましいものとしては、商品名2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ等のイミダゾール類や、商品名2MZ−A、2E4MZ−A等のイミダゾールのAZINE化合物、商品名2MZ−OK、2PZ−OK等のイミダゾールのイソシアヌル酸塩、商品名2PHZ、2P4MHZ等のイミダゾールヒドロキシメチル体(前記商品名はいずれも四国化成工業(株)製)、ジシアンジアミドとその誘導体、メラミンとその誘導体、ジアミノマレオニトリルとその誘導体、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエタノーアミン、ジアミノジフェニルメタン、有機酸ジヒドラジド等のアミン類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(商品名DBU、サンアプロ(株)製)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名ATU、味の素(株)製)、又は、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。
これら硬化触媒の配合量は通常の量的割合で充分であり、例えば前記エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物の合計100質量部当り0.1質量部以上、10質量部以下が適当である。
【0017】
光硬化性樹脂組成物(B−2)としては、活性エネルギー線照射により硬化して電気絶縁性がある組成物であればよいが、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、光重合開始剤を含む組成物が耐熱性、電気絶縁性に優れており好ましい。
前記一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマー、及び光重合性ビニルモノマー等が用いられる。
前記光重合性オリゴマーとしては、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0018】
前記光重合性ビニルモノマーとしては、公知慣用のもの、例えば、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル又は安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
これらは、塗膜の特性上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、ベンジルメチルケタ−ルなどのベンゾイン化合物とそのアルキルエ−テル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;メチルアンソラキノン、2−エチルアンソラキノン、2−タ−シャリ−ブチルアンソラキノン、1−クロロアンソラキノン、2−アミルアンソラキノンなどのアンソラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタ−ル、ベンジルジメチルケタ−ルなどのケタ−ル類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類などが挙げられる。これらは単独または2種類以上を混合して使用することが可能であり、さらにトリエタノ−ルアミン、メチルジエタノ−ルアミン等の第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体などの光開始助剤等と組み合わせて使用することができる。
【0020】
本発明の絶縁性硬化性樹脂組成物には、必要に応じて高充填化を容易にするために、湿潤・分散剤を添加することができる。このような湿潤・分散剤としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。市販されている湿潤・分散剤で特に好適に用いることができるものとしては、Disperbyk(登録商標)−101、−103、−110、−111、−160、−171、−174、−190、−300、Bykumen(登録商標)、BYK−P105、−P104、−P104S、−240(いずれもビック・ケミー・ジャパン社製)、EFKA−ポリマー150、EFKA−44、−63、−64、−65、−66、−71、−764、−766、N(いずれもエフカ社製)が挙げられる。
【0021】
本発明の絶縁性硬化性樹脂組成物は、組成物の調整や粘度調整のために、有機溶剤を添加してもよい。前記有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などの有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
本発明の絶縁性硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0023】
本発明の絶縁性硬化性樹脂組成物は、前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、スクリーン印刷法等の方法により塗布する。
前記絶縁性硬化性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物(B−1)の場合、塗布後、約140℃〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化塗膜を得ることができる。
また、前記絶縁性硬化性樹脂組成物が、光硬化性樹脂組成物(B−2)の場合、塗布後、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等で紫外線照射し、硬化塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て「質量部」および「質量%」を表わす。
【0025】
下記表1に示す実施例1、2及び比較例1、2の配合成分を、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物の保存安定性の評価結果を表2に示し、その特性評価結果を表3、温度温度シミュレーション結果を図1、図2に示す。






























【0026】
【表1】



注.フィラー成分の体積占有率は、フィラー成分を除く成分の体積Vと、フィラー添
加後の体積Vから、以下のように求めた。
フィラー成分の体積占有率(容量%)=(V−V)/V×100
【0027】
【表2】


【0028】
【表3】


【0029】
なお、上記表3及び表4の評価方法は以下のとおりである。
保存安定性評価:
実施例1及び比較例1の熱硬化組成物を、ポリエチレン製の密封黒色容器に入れて5℃にて保存した。2日後、7日後、30日後、90日後の沈降状態を評価した。
また、実施例2及び比較例2の光硬化組成物を、ポリエチレン製の密封黒色容器に入れて20℃の暗所にて保存した。2日後、7日後、30日後、90日後の沈降状態を評価した。
◎:沈降なし
○:若干沈降しているが凝集はなく、攪拌することにより使用に問題なし
×:沈降し凝集している。攪拌してもダマとなり、使用不能
【0030】
特性評価:
(1)耐溶剤性
実施例1及び比較例1の熱硬化組成物を、回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。
また、実施例2及び比較例2の光硬化性組成物を回路形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射して硬化させた。得られた基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれ・変色について評価した。
○:剥がれや変色がないもの
×:剥がれや変色があるもの
【0031】
(2)耐熱性
実施例1及び比較例1の熱硬化組成物と実施例2及び比較例2の光硬化性組成物を用いて、耐溶剤性と同様の方法で硬化した。得られた基板にロジン系フラックスを塗布して、260℃のはんだ槽で10秒間フローさせて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄・乾燥後、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれについて評価した。
○:剥がれがないもの
×:剥がれがあるもの
【0032】
(3)鉛筆硬度
実施例1及び比較例1の熱硬化組成物と実施例2及び比較例2の光硬化性組成物を用いて耐溶剤性と同様の方法で硬化した。得られた基板に、Bから9Hの鉛筆の芯を先が平らになるように研ぎ、約45°の角度で押しつけて塗膜が剥がれない鉛筆の硬さを記録した。
【0033】
(4)電気絶縁性
実施例1及び比較例1の熱硬化組成物を、IPC規格Bパターンのくし形電極が形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。また、実施例2及び比較例2の光硬化性組成物をIPC規格Bパターンのくし形電極が形成されたFR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射して硬化させた。得られた基板の電極間の絶縁抵抗値を印加電圧500Vにて測定した。
【0034】
(5)放熱試験
実施例1及び比較例1の熱硬化組成物を、銅張FR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、150℃で60分間硬化させた。また、実施例2及び比較例2の光硬化性組成物を銅張FR−4基板上にスクリーン印刷で乾燥塗膜が約30μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cmの積算光量を照射して硬化させた。このとき基板の一角は銅箔が露出するように印刷を行う。この一角に熱源となる60Wのヒーターを押し付け、10分間加熱し、その後、10分間放熱させた。その時の基板の温度を、ヒーターから3mmの距離に貼り付けておいたK型熱電対で測定した。その結果を、図1及び図2に示した。
また、10分間加熱した時の基板の温度を、表2及び表3に示した。
【0035】
表2及び表3に示す結果から明らかなように、本発明の放熱絶縁性樹脂組成物によれば、熱硬化性、光硬化性いずれにおいても、放熱性に優れ、かつ、プリント配線板用の耐熱絶縁材料として十分な特性の硬化物を得ることができる。
また、図1及び図2から明らかなように、実施例1,2の放熱絶縁性樹脂組成物を用いた基板は、比較例の組成物を用いた基板に比べ、放熱性に優れ、温度上昇が少ないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1及び比較例1を用いた基板の放熱シュミュレーション
【図2】実施例2及び比較例2を用いた基板の放熱シュミュレーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)遠赤外線を放射するセラミックス粒子、(B)硬化性樹脂組成物を含有してなり、(A)の体積占有率が、硬化物の全容量に対して60容量%以上であることを特徴とする放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項2】
前記遠赤外線を放射するセラミックス粒子(A)が、球状の酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物(B)が、(B−1)熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物(B−1)が、エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物、及び硬化剤(及び/又は硬化触媒を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂組成物(B)が、(B−2)光硬化性樹脂組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項6】
前記光硬化性樹脂組成物(B−2)が、一分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物、及び光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項5に記載の放熱絶縁性樹脂組成物。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか一項に記載の放熱絶縁性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射/又は熱硬化して得られる硬化物により、絶縁層及び/又はソルダーレジスト層が形成されてなるプリント配線板。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−191519(P2007−191519A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9196(P2006−9196)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】