説明

放熱装置および騒音低減方法

【課題】低騒音で且つ放熱効率のよい放熱装置およびその方法を提供する。
【解決手段】複数の放熱溝(42)および減音溝(43)が形成されるように複数の放熱フィン(40)を遠心ファン(3)の周りに積み重ねて設置し、当該減音溝(43)を遠心ファン(3)の風速の高い領域に対応して設置し、当該減音溝(43)の開口を遠心ファン(3)の比較的に大きい風量が十分に流れるように設置して騒音を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ファンを備える放熱装置の改善技術に関するものであって、特に放熱装置からの騒音発生の低減に関する技術と構造設計を提案することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
図8に、従来の遠心ファンを備える放熱装置の構造を示す。遠心ファン(94)は回転する際に、図中の矢印の示す方向に冷たい風を吸い込み、冷たい風を当該遠心ファン(94)の周縁から放熱フィン(930)の方向へ横向きに吹き出して放熱を行う。
【0003】
冷たい風が、放熱フィン(930)を流れる際には、風切りに起因する騒音が発生し、この騒音は、風速が早ければ早いほど大きくなる。そのため、規定を越える騒音が発生しないように、遠心ファン(94)は、通常比較的遅い回転速度に制御されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように遠心ファン(94)の回転速度を下げることによって騒音を低減する方法は、遠心ファン(94)の風速および単位時間あたりの風量を低下させるので、遠心ファン(94)の放熱効率を上げることができなくなる。
【0005】
そこで、本発明の主な目的は騒音の発生を大幅に低減させつつ、放熱効率を向上させることが可能な放熱装置およびその騒音低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による放熱放置は、放熱器と遠心ファンを含み、前記放熱器は収納空間部と複数の放熱溝を有し、前記収納空間部は前記遠心ファンを収納し、前記放熱溝は前記収納空間と外部空間を連通することを特徴とする。
【0007】
また、本発明による騒音低減方法は、まず前記遠心ファンに単位時間の空気の流量が他の領域より大きい、つまり流速が他の領域より高い特定領域を定義し、次に前記収納空間部と外部空間を連通し、前記特定領域と向かい合って前記特定領域を覆う減音溝を放熱器に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による放熱装置によれば、遠心ファンからの風のうち、風速が比較的に早く高周波数の風切り音を引き起しやすい風は、減音溝を経由して吹き出されるので、風切りに起因する騒音は大幅に低減される。
【0009】
なお、従来の放熱装置に比べると、本発明の放熱装置は、騒音が比較的に低いため、同じ騒音レベルの規定内で遠心ファンの回転速度を上げることができ、さらに大きな風量を発生してより大きな放熱効果を提供することも可能となる。
【0010】
また、本発明は、放熱器に導流装置をさらに設けて、減音溝から吹き出す風を強制的に導流し、例えば、高熱を発しやすい部品上を流れるように風を導流して、これらの部品に良好な放熱効果を提供することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1と図2は、一般的な遠心ファンを示す図である。遠心ファンは、ファンの頂部および底部から空気を吸い込んで、ファンの外周から外側へと横向きに風を吹き出すような空気の流れを生成する。本発明者らは、実際の測定と研究の結果から、遠心ファンの外周表面の各風吹出点の風速は異なり、外周表面の中央部に近いほど風速は大きくなり、すなわち中央部に近いほど単位時間あたりの風量が大きくなり、この中央部付近の風が、放熱溝を流れる際に高周波数の風切り音が発生しやすくなることを見いだした。
【0012】
従って、本発明の実施形態の騒音低減方法は、まず、遠心ファンにおいて、単位時間当たりの風量が他の領域より大きい特定領域を外周表面上に定義し、次に、内部に当該遠心ファンを収納可能な放熱器に、放熱部の内部(収納空間部)と外部空間を連通し、当該特定領域と向かい合って当該特定領域を覆う減音溝を形成することで、風速の大きい領域に関しては、減音溝を経由して外部空間へ風を放出することにより、風切り音の発生を低減するものである。
【0013】
次に、図面を参照して本発明の放熱装置および騒音低減方法の実施形態を説明する。
【0014】
図3から図5は、本発明の実施形態の騒音低減方法を用いた放熱装置を示す図である。熱伝導部(1)を用いて回路基板上の熱源(例えば、CPU等のマイクロプロセッサチップ)からの熱を、四本の熱伝導パイプ(10)を経由して放熱器(4)に伝導し、支持台(2)の上に設置された遠心ファン(3)によって放熱器(4)から放熱を行う。なお、遠心ファン(3)は制御回路板(5)によってその運転が制御され、放熱器(4)の頂部には蓋板(6)を設け、その上にさらに上蓋体(7)を設ける。
【0015】
上述した放熱装置において、放熱器(4)は、複数の環状放熱フィン(40)を積み重ねて構成され、その内部には遠心ファン(3)を収納する収納空間(41)が形成され、当該放熱器(4)の各放熱フィン(40)の間には、収納空間(41)から外部空間に連通する複数の放熱溝(42)と減音溝(43)が形成される。減音溝(43)は、遠心ファン(3)の外周表面の中央部付近(即ち前記特定領域)に対向して設置され、減音溝(43)の収納空間側の開口は遠心ファン(3)の中央部付近の比較的に大きい風量が、十分に流れるように設置される。また、収納空間(41)内の遠心ファン(3)の上側には負圧空間(410)が形成されるように放熱器(4)の収納空間の高さを当該遠心ファン(3)の高さより高くする。
【0016】
また、放熱器(4)には、お互いに向かい合う二つの半カバー体(80)からなる導流カバー(8)を増設し、当該半カバー体(80)の両端には熱伝導パイプ(10)に掛けられるように掛け溝(81)を設け、半カバー体(80)には、複数の導流板(82)を、外側に向いて下方向に傾くように設置し、導流板(82)の上縁は減音溝(43)の外部空間側の外周上縁に設置する。
【0017】
図5に示すように、遠心ファン(3)が回転する際に、外部空間の空気は、主に2種類の空気流を形成し、放熱器内に吸い込まれることとなる。第1の空気流は、放熱器(4)の下側を経由して当該遠心ファン(3)の下側から吸い込まれる流れである。第2の空気流は、放熱器(4)の上部の複数の放熱溝(42)を経由して負圧空間(410)に抽入された後、遠心ファン(3)の上側から吸い込まれる流れである。そして、最後に、第1及び第2の空気流は、遠心ファン(3)内で一体化し、遠心ファン(3)の横側の放熱溝(42)および減音溝(43)から吹き出される流れとなる。このようにして、第1の空気流が、熱伝導部(1)の上側と放熱器(3)の上部の熱を吸入し、第1及び第2の空気流の合流した流れが、放熱器(3)の下部の熱を吹き出して放熱の目的を達成する。
【0018】
遠心ファン(3)の中央部の比較的に大きい風量を減音溝(43)から吹き出す場合、当該減音溝(43)は、比較的に大きい風量を吹き出すように十分な大きさを有するので、吹き出した風は大きな風切りを受けることがなく、騒音の発生を大幅に低減することが可能である。騒音が大幅に低減された結果は、図6と図7の比較により明らかにされる。図6は、図8に示す従来の放熱装置の騒音測定結果を示し、図7は、同じ環境および条件で本実施形態の放熱装置の騒音測定結果を示す図である。従来の放熱装置および本実施形態の放熱装置は、同一の遠心ファンを使用し、測定条件は、両方とも4500rpmで運転するように制御した。
【0019】
図6と図7において、横軸は、騒音周波数の分布を表し、縦軸は、騒音値の大きさdB値を表す。図から分かるように、従来の放熱装置の騒音のオーバーオール値は49.9dBで、本実施形態の放熱装置の騒音のオーバーオール値は46.3dBである。つまり、本実施形態の放熱装置から発生した騒音は、従来の放熱装置より3.6dB低くなっている。測定値の大きさは音圧レベル(Sound Pressure Level)を採用し、騒音レベルの大きさは音圧をlog関数で換算して得られたものであるため、本実施形態と従来の放熱装置の騒音値の差は3.6dBとなっている。しかしながら、実際の聴覚から感じた両者の騒音の差は非常に大きいものであった。
【0020】
また、従来の放熱装置の騒音の周波数分布は高周波数成分が多いのに対して、本実施形態の放熱装置は低周波数成分が多い。これは、従来の放熱装置は高周波数の騒音が発しやすくて耳障りであることを意味し、一方、本実施形態の放熱装置は、このような耳障りな騒音が少ないことを意味する。
【0021】
さらに、減音溝(43)から吹き出された比較的風速が大きい風については、複数の導流板(82)を、所定の角度で外側に向いて下方向に傾くように設置することにより、導流カバー(8)上の導流板(82)によって回路基板へ導流し、回路基板の他の熱源(コンデンサーやインダクタなど)の放熱を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】遠心ファンの外観を示す立体図である。
【図2】図1の遠心ファンの風の流れを示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態の放熱装置の立体分解図である。
【図4】本発明の実施形態の放熱装置の正面図である。
【図5】本発明の実施形態の放熱装置の動作を示す概略断面図である。
【図6】従来の放熱装置の騒音測定結果を示す図である。
【図7】本発明の実施形態の放熱装置の騒音測定結果を示す図である。
【図8】従来の放熱装置の動作を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 熱伝導部
2 支持台
3 遠心ファン
4 放熱器
40 放熱フィン
41 収納空間
42 放熱溝
43 減音溝
5 回路板
6 蓋板
7 上蓋体
8 導流カバー
80 半カバー体
81 掛け溝
82 導流板
10 熱伝導パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納空間部と、前記収納空間部と外部空間を連通する複数の放熱溝と、を有する放熱器と、
前記放熱溝へ送風するように前記放熱器の前記収納空間部内に設置され、外周表面に単位時間あたりの流量が他の領域より大きい空気流を生成する特定領域を有する遠心ファンと、を備える放熱装置において、
前記放熱器は、前記収納空間部と外部空間を連通し、前記遠心ファンの前記特定領域が生成する空気流が導通する減音溝をさらに備えることを特徴とする放熱装置。
【請求項2】
前記放熱器の減音溝の前記外部空間側に固定され、前記減音溝の前記外部空間側の外周から外側に向いて所定の角度で下方向に傾く、前記減音溝から吹き出す風を所定の方向へ導流するための複数の導流板を有する導流カバーをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の放熱装置。
【請求項3】
前記放熱器の収納空間部の高さを前記遠心ファンの高さより高くすることにより、前記収納空間部の上部に負圧空間部を形成し、
前記放熱器の上端部には前記負圧空間部の上端部を密閉する蓋板をさらに設け、
前記遠心ファンが回転する際に、外部空間の空気を前記放熱溝を介し前記負圧空間部内に強制的に吸い込んでから、前記遠心ファンから吹き出す空気流を生成することを特徴とする請求項1に記載の放熱装置。
【請求項4】
放熱器と遠心ファンを含み、前記放熱器は収納空間部と複数の放熱溝を有し、前記収納空間部には前記遠心ファンが収納され、前記放熱溝は前記収納空間部と外部空間を連通する放熱装置の騒音低減方法において、
前記遠心ファンの外周表面に、単位時間あたりの流量が他の領域より大きい空気流を生成する特定領域を定義し、
前記収納空間部と外部空間を連通し、前記遠心ファンの前記特定領域が生成する空気流が導通する減音溝を前記放熱器に形成したことを特徴とする放熱装置の騒音低減方法。
【請求項5】
導流装置を用いて前記減音溝から吹き出す風を強制的に所定の方向へ導流することを、さらに含むことを特徴とする請求項4に記載の放熱装置の騒音低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−41455(P2006−41455A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274401(P2004−274401)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(504037461)ギガ−バイト テクノロジー カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】