説明

放送受信装置

【課題】妨害局が存在する場合であっても、選局時の誤通過を防止できる放送受信装置を提供すること。
【解決手段】受信周波数を掃引し、受信信号のレベルがSDチェックにおけるSメータ信号のスレッショルドレベル以上(SDチェックがH判定)のときに掃引を停止して前記受信周波数で受信状態とするシーク機能を有する放送受信装置であって、前記受信信号のレベルを検出するシグナルメータ(8)と、入力信号の電界強度によって前記受信信号のレベルを制御するAGC回路(11)と、を備え、隣接妨害チャンネルが存在するためAGC回路(11)が動作している状態において、PINダイオード(13)に印加される直流電圧値が所定の直流電圧値以上である場合に、Sメータ信号のスレッショルドレベルをより小さい値に変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選局時の誤通過を防止した放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クオリティの高いチャンネルを選局する自動選局(シーク)機能を備えた放送受信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献に記載のAMラジオ受信機は、SD(Station Detector)チェックおよびIF(Intermediate Frequency)カウントの結果を総合判定して、クオリティの高いチャンネルを選局している。
【0003】
SDチェックとは、受信RF信号を周波数変換した中間周波数(IF)信号の電界強度を示すSメータ信号をスレッショルドレベルと比較し、Sメータ信号がスレッショルドレベルよりもハイ(High:H)かロー(Low:L)かを判定する(以下、H/L判定と記す)判定方法である。また、IFカウントとは、IF信号のカウント値は妨害が無い状態では、原理的に目的受信局の周波数スペクトルの平均周波数である中間周波数fIFになるが、隣接妨害を受けている状態では、隣接妨害局の信号成分が含まれるため、周波数スペクトルが隣接妨害局側へシフトし、その平均周波数に対応して得られるカウント値NもfIFからずれた値となることを利用して、受信周波数のクオリティを判定する判定方法である。
【0004】
一般的に、クオリティの低いチャンネルを選局することのないよう、SDチェックにおけるSメータ信号のスレッショルドレベルは、30[dBuV]前後の電界強度に設定される。図7(a)は、シーク対象となる放送帯域に存在する放送局(チャンネル)の電界強度(縦軸)とチャンネル周波数(横軸)との関係を示すグラフである。このグラフにおいて、Sメータ信号のスレッショルドレベルを示す直線Xより上側に存在する受信チャンネルAは、SDチェックにおいてH判定となるクオリティの高いチャンネルであり、直線Xより下側に存在する受信チャンネルBは、SDチェックにおいてL判定となるクオリティの低いチャンネルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−294080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の放送受信装置においては、所望の受信チャンネル(以下、希望チャンネルと記す)に隣接するチャンネル(以下、隣接妨害チャンネルと記す)の信号レベルが高いと隣接妨害が発生する。このとき、隣接妨害チャンネルの信号レベルを減衰するためにAGC(Automatic Gain Control)回路が動作するが、隣接妨害チャンネルの信号レベルが高いと、希望チャンネルの受信レベルも同時に減衰されてしまう。これに伴って、クオリティの高いチャンネルのSメータ信号も低下し、SDチェックでH判定されずに誤通過するという課題があった。
【0007】
すなわち、図7(b)に示すように、妨害信号Cの存在によってAGC回路が減衰を強める方向に動作すると、本来はクオリティの高いチャンネルAおよびクオリティの低いチャンネルBの電界強度が一緒に下がって、それらのチャンネルに対応するSメータ信号も低下する。これにより、本来H判定とされるべきYで囲まれた領域に存在するクオリティの高いチャンネルAが、スレッショルドレベルとの関係でL判定となってしまう。この結果、これらのチャンネルAは選局されずに誤通過が発生してしまう。
【0008】
この誤通過を防ぐ対策として、AGC回路での減衰量を少なくしてクオリティの高いチャンネルのSメータ信号の低下を抑制する対策が挙げられる。しかし、この対策によれば、隣接妨害チャンネルの電界強度を十分に低下できないため、隣接妨害チャンネルによる混信が増大し、受信性能の低下につながってしまう。
【0009】
また、誤通過を防ぐ別の対策として、SDチェックにおけるスレッショルドレベルを下げる対策が挙げられる。しかし、この対策によれば、隣接妨害チャンネルが存在しない状態において、クオリティの低いチャンネルがH判定とされる誤停止の増加につながってしまう。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、大きな妨害信号が存在する場合であっても、選局時の誤通過を防止できる放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放送受信装置は、受信周波数を掃引し、受信信号のレベルが第1のレベル以上のときに掃引を停止して前記受信周波数で受信状態とするシーク機能を有する放送受信装置であって、前記受信信号のレベルを検出するシグナルメータと、入力信号の電界強度によって前記受信信号のレベルを制御するAGC回路と、を備え、前記AGC回路が動作している状態において、前記入力信号の電界強度が第2のレベル以上の場合に、前記第1のレベルの値をより小さい値に変更することを特徴とする。
【0012】
この放送受信装置によれば、妨害信号が存在することによりAGC回路が動作している状態において、AGC回路への入力信号の電界強度のレベルが所定の第2のレベル以上の場合に、第1のレベルであるSメータ信号のスレッショルドレベルの値をより小さい値に変更することができる。そのため、AGC回路の動作によって、クオリティの高い放送チャンネルの電界強度が低下している場合であっても、Sメータ信号のスレッショルドレベルの値も小さく変更されているため、SDチェックにおいてH判定となり、選局時の誤通過を防止することが可能となる。
【0013】
また、上記放送受信装置において、前記シーク機能を実現するためのファームウェアに、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベル以上か否か判定する判定機能を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記放送受信装置において、前記入力信号を減衰させるPINダイオードを有した減衰回路を備え、前記AGC回路は、受信信号の電界強度に応じた制御電圧を生成して前記受信信号のレベルを制御し、前記AGC回路で生成した制御電圧に対応した直流電圧を前記PINダイオードに印加し、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベルを超えたときに前記PINダイオードがオンするように設定することが好ましい。この場合には、AGC回路で取り出した受信信号のレベルに応じた直流電圧値とPINダイオードに設定されたスレッショルドレベルとを比較することにより、妨害信号の有無を判定できるため、この結果に応じてSDチェックにおけるSメータ信号のスレッショルドレベルを変更することが可能となる。
【0015】
また、上記放送受信装置において、前記PINダイオードに印加する直流電圧の大きさを所定の電圧値と比較することによってAGC回路がオンしているかオフしているかを判断し、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベル以上か否かを判定することを特徴とする。
【0016】
また、上記放送受信装置において、前記AGC回路のAGC動作状態を示すデータがレジスタに記憶され、前記ファームウェアが前記レジスタに記憶されたレジスタ値によって前記AGC回路がオンしているかオフしているかを判断し、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベル以上か否かを判定することを特徴とする。
【0017】
さらに、上記放送受信装置において、AM放送またはFM放送を受信することが好ましい。この場合には、選局時の誤通過が防止され、精度よくクオリティの高い放送局を検出できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大きな妨害信号が存在する場合であっても、選局時の誤通過を防止できる放送受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施の形態に係る放送受信装置について、その要部構成を示す機能ブロック図である。
【図2】上記実施の形態に係る放送受信装置におけるPINダイオードに印加される直流電圧と受信RF信号の電界強度との関係を示すグラフである。
【図3】上記実施の形態に係る放送受信装置のシーク時における主要な処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】上記実施の形態に係る放送受信装置のシークによる検出結果を示すグラフである。
【図5】本発明の変形例に係る放送受信装置について、その要部構成を示す機能ブロック図である。
【図6】上記変形例に係る放送受信装置のシーク時におけるSメータ信号のスレッショルドレベルを変更する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】従来例の放送受信装置のシークによる検出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る放送受信装置の要部構成を示す機能ブロック図であり、AM/FMチューナーに適用した例が示されている。図1に示すように、放送受信装置は、各放送局から放送された放送波をアンテナ1で受信し、アンテナ1から出力される受信RF信号をチューナー部2に供給する。チューナー部2においてIF信号に周波数変換された受信IF信号からクオリティチェック用のパラメータを測定してマイコン部3へ出力する。マイコン部3においてパラメータ測定結果から選局のためのいくつかの判定処理を行う。マイコン部3は、プロセッサ、プロセッサと協働してファームウェアを実現するプログラムが記憶されたメモリなどを備える。
【0021】
アンテナ1から出力されるRF信号は、RFフィルタ4において放送帯域のチャンネル信号が抽出され、LNA(Low Noise Amplifier)回路5において低雑音で増幅される。増幅されたRF信号は、ミキサ6において局部発振信号とミキシングされて中間周波数(IF)信号に変換される。シーク時には、ミキサ6に供給する局部発振信号の周波数を切り替えることで放送帯域全体をスイープする。ミキサ6から出力されるIF信号は、IFフィルタ7において受信チャンネル信号以外が制限され、シグナルメータ(Sメータ)8において受信チャンネル信号の電界強度に応じたSメータ信号に変換される。
【0022】
シーク機能によるチャンネル(放送局)選択は、SDチェック部9およびIFカウント部10によるパラメータ測定値を用いて行われる。ここで、SDチェックおよびIFカウントについて簡単に説明する。SDチェックは、マイコン部3のファームウェア上でSメータ信号のレベルとスレッショルドレベルとを比較してH/L判定を実行する判定方法である。SDチェックでは、Sメータ信号のレベルが、スレッショルドレベルと比較してH判定(Sメータ信号>スレッショルドレベル)である場合に、クオリティの高い放送局からの放送信号(特定チャンネル)をとらえたと判定する。また、IFカウントは、IF信号を同期検波し、マイコン部3のファームウェア上で検波値が所定のレベルの範囲内にあるときの回数をカウントして、所定時間内にその数が所定の値の範囲内にあるか否かH/L判定を実行する。IFカウントでは、カウント数が所定の値の範囲内にあるH判定(所定値min<カウント数<所定値max)である場合に、クオリティの高い放送局からの放送信号(特定チャンネル)をとらえたと判定する。そして、この2通りの方法による判定結果がともにH判定であった場合に、クオリティの高いチャンネルを選局できたと判定する。
【0023】
また、チューナー部2は、受信RF信号の信号レベルを検出し、検波出力から取り出した直流電圧をもとにLNA回路5の利得を制御するAGC回路11を備えている。具体的には、AGC回路11は、入力された受信RF信号のRFレベルに応じた直流電圧を生成し、生成した直流電圧を制御電圧としてLNA5に出力する。AGC回路11は、シーク中に強電界の妨害信号(隣接妨害チャンネル)が検出されると、大入力信号に応答して妨害信号の電界強度を抑圧する制御電圧を出力する。例えば、AGC回路11は、妨害電波が強い(所定値以上)場合に、直流電圧からなる制御電圧が小さくなってLNA回路5の利得を下げるように動作する。
【0024】
アッテネータ(Attenuator:ATT)12は、AGC回路11の制御電圧に応じてアンテナ1から入力されるRF信号のレベルの減衰量を調節して、アンテナ1から入力されるRF信号のレベルを最適化するように動作する。アッテネータ12は、例えばRFフィルタ4の一部(信号経路)を接地する可変抵抗器として機能するPINダイオード13を備えている。AGC回路11から制御電圧に対応した電圧値の直流電圧がアッテネータ12へ入力される。アッテネータ12は、PINダイオード13のアノードにバイアス抵抗を介して上記直流電圧を印加すると共にアノードがバイパスコンデンサを介して高周波的に接地される。一方、PINダイオード13のカソードは他のバイパスコンデンサを介してRFフィルタ4の一部(信号経路)に接続される。例えば、AGC回路11は、妨害電波が強い(所定値以上)場合に、制御電圧が小さくなるが、制御電圧が小さくなるのに応じてPINダイオード13へ入力される直流電圧が大きくなるように変換する。AGC回路11がONする制御電圧に合わせて、PINダイオード13がONする直流電圧となるように設定する。PINダイオード13がONして抵抗値が下がることで、PINダイオード13を介してRF信号がグラウンドに流れ、その結果、RF信号を減衰させることができる。マイコン部3のファームウェア上において、PINダイオード13に印加される直流電圧値と、スレッショルドレベルとのH/L判定が実行される。ここで、ファームウェアとは、マイコン部3の不揮発性記憶領域にあらかじめ書き込まれたソフトウェアをいう。なお、本実施の形態はPINダイオード13に印加される直流電圧とスレッショルドレベルとをコンパレータ14で比較し、比較結果をマイコン部3のファームウェアへ伝えている。
【0025】
図2は、このPINダイオード13に印加される直流電圧(縦軸)と入力信号となる受信RF信号の電界強度(横軸)との関係を示すグラフである。図2に示すように、受信RF信号の電界強度が大きくなるほど、このPINダイオード13に印加される直流電圧は高くなる。また、受信RF信号の電界強度が50〜80[dBuV]である場合には、PINダイオード13に直流電圧は印加されない。これは、所定レベル以上の妨害信号が存在せず、AGC回路11が動作していないためである。
【0026】
図2に示す直流電圧値の特性曲線Zにおいて、PINダイオード13に印加される直流電圧値が、スレッショルドレベルを示す直線Wより下側に存在する場合、H/L判定の結果はL判定となる。以下、この状態をPin−Di[0]と記す。また、PINダイオード13に印加される直流電圧値が、スレッショルドレベルを示す直線Wより上側に存在する場合、H/L判定の結果はH判定となる。以下、この状態をPin−Di[1]と記す。すなわち、電界強度がPin−Di[0]からPin−Di[1]へ切り替わる境界が第2のレベルとなる。なお、図2において、スレッショルドレベルは1[V]に設定されているが、この値に限られず、スレッショルドレベルは所定の直流電圧値であればよい。
【0027】
続いて、本実施の形態に係る放送受信装置におけるシーク動作について説明する。図3は、この放送受信装置のシーク時における主要な処理の流れを示すフローチャートである。シーク動作は、例えば、放送受信装置の使用者により放送波を受信できる環境で自動選局(シーク)ボタンが押されることにより、開始される(ステップST1)。
【0028】
シーク動作が開始すると、放送受信装置が消音され(ステップST2)、受信周波数の掃引が開始される。
【0029】
続いて、PINダイオード13に印加される直流電圧が所定の直流電圧値以上か否か、すなわち、Pin−Di[1]であるか否かを判定する(ステップST3)。妨害信号が存在する環境では、Pin−Di[1]と判定される。Pin−Di[1]と判定された場合には(ステップST3:Yes)、図4に示すように、SDチェック部9におけるSメータ信号のスレッショルドレベルをより小さな値に変更する(ステップST4)。
【0030】
ここで、図4は、シーク対象となる放送帯域に存在する放送局(チャンネル)の電界強度(縦軸)とチャンネル周波数(横軸)との関係を示すグラフである。図4(a)は、妨害信号が存在しない環境下でのPin−Di[0]状態を示すグラフであり、直線Xで示すSDチェック部9におけるSメータ信号のスレッショルドレベルは30[dBuV]である。一方、図4(b)は、妨害信号が存在する環境下でのPin−Di[1]状態を示すグラフであり、直線X2で示すSDチェック部9におけるSメータ信号のスレッショルドレベルは30[dBuV]より小さな値の20[dBuV]に変更されている。
【0031】
続いて、SDチェックのH/L判定の結果が、H判定であるか否かを判定する(ステップST5)。また、IFカウントのH/L判定の結果が、H判定であるか否かを判定する(ステップST6)。
【0032】
現在の受信周波数においてクオリティの高いチャンネルが選局できていないため、SDチェックおよびIFカウントの結果がともにH判定ではない場合には(ステップST5:No,ステップST6:No)、受信周波数をより高い周波数あるいはより低い周波数に変更した後(ステップST7)、再びステップST5に戻り、クオリティの高いチャンネルが選局できるまでSDチェックおよびIFカウントを繰り返す。
【0033】
先述のとおり、妨害信号が存在する環境下でPin−Di[1]である場合は(ステップST3:Yes)、妨害信号の電界強度を所定レベル以下に抑制するためにAGC回路11が動作してLNA回路5の利得を下げるように制御する。これにより受信RF信号が抑制される。図4(a)と(b)とを比較すると、妨害チャンネルCの存在によってAGC回路11が動作(ON状態)することにより、受信チャンネルA,Bの電界強度が約30[dB]下がっていることがわかる。しかしながら、図4(b)に示すように、クオリティの高いチャンネルAの電界強度が下がってそのSメータ信号が低下しても、ステップST4において直線X2で示すSDチェックにおけるSメータ信号のスレッショルドレベルもより小さな値に変更されているため、依然としてクオリティの高いチャンネルAは、スレッショルドレベルを示す直線X2より上側に存在する。したがって、このチャンネルAのSDチェック9の結果はH判定となり、誤通過の発生を回避できる。
【0034】
一方、図4(a)に示すように、妨害信号が存在しないPin−Di[0]である場合は(ステップST3:No)、スレッショルドレベルはクオリティの低いチャンネルを選局することのない値のままなので、クオリティの低いチャンネルBは、スレッショルドレベルを示す直線Xより下側に存在する。したがって、このチャンネルBのSDチェックの結果はL判定となり、誤停止の発生を回避できる。
【0035】
そして、クオリティの高いチャンネルが選局できたため、SDチェックおよびIFカウントの結果がともにH判定である場合には(ステップST5:Yes,ステップST6:Yes)、受信周波数の掃引を停止してシーク動作を停止する(ステップST8)。最後に、放送受信装置の消音状態が解除され(ステップST9)、選局された放送局の放送を聴取または視聴できる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態に係る放送受信装置によれば、妨害信号が存在することによりAGC回路11が動作している状態において、AGC回路11への入力信号の電界強度のレベルが第2のレベルであるPINダイオード13におけるスレッショルドレベル以上の場合に、第1のレベルであるSDチェックにおけるSメータ信号のスレッショルドレベルの値をより小さい値に変更することができる。そのため、AGC回路11の動作によって、クオリティの高いチャンネルの電界強度が低下している場合であっても、第1のレベルであるスレッショルドレベルの値が小さく変更されているため、SDチェックにおいてH判定となり、選局時の誤通過を防止することが可能となる。
【0037】
以上の説明では、アッテネータ12のPINダイオード13に印加される直流電圧を直接モニタして、AGC回路11のAGC動作状態(ON/OFF)を判定しているが、AGC回路11のON/OFFをレジスタに書き込み、これをマイコン部3が読み込んでAGC回路11のON/OFFを判定するようにしても良い。以下、AM受信についてレジスタからAGC回路11のON/OFF状態を示すビットデータを読み込んで判定する変形例について説明するが、FM/AMの区別なく対応可能である。また、FM受信用のデータ放送受信装置であれば、FM受信にのみ適用可能である。
【0038】
図5は変形例に係る放送受信装置の要部構成を示す機能ブロック図である。本変形例に係る放送受信装置は、図1に示す放送受信装置と基本構成は同じであるが、AGC回路11のON/OFFをレジスタ経由で読み込む経路を利用している点が主に相違する。以下の説明では、FM受信におけるAGCのON/OFFはPINダイオード13に印加される直流電圧値から検出し、AM受信におけるAGCのON/OFFはレジスタを介して読み込まれるデータに基づいて検出するものとするが、FM受信のみがAGCのON/OFFを、レジスタを介して読み込まれるレジスタ値に基づいて検出するように構成しても良い。この場合、PINダイオード13に印加される直流電圧をコンパレータ14と比較する経路は不要である。
【0039】
本変形例に係る放送受信装置は、アンテナ1、チューナー部2、マイコン部3を備える。チューナー部2は、RFフィルタ4、RFフィルタ4から出力されるRF信号を増幅するLNA回路5、LNA回路5で利得制御されたRF信号をIF信号へ変換するミキサ6、ミキサ6から出力されるIF信号から希望チャンネルのIF信号を抽出するIFフィルタ7を備える。IFフィルタ7から出力されるIF信号は、不図示の後段回路を経てマイコン部3へ入力される。また、チューナー部2は、受信チャンネル信号の電界強度に応じたSメータ信号を出力するシグナルメータ(Sメータ)8、Sメータ信号のレベルとスレッショルドレベルとを比較するSDチェック部9、IF信号を同期検波して検波値が所定のレベルの範囲内にあるときの回数をカウントするIFカウント部10を備える。さらに、チューナー部2は、LNA回路5で利得制御されたRF信号の信号レベルを検波し、検波出力から取り出した直流電圧をもとにLNA回路5の利得を制御するAGC回路11と、AGC回路11の出力する制御電圧に対応した直流電圧をPINダイオード13に印加してアンテナ1から入力される受信RF信号のレベルの減衰量を調節するアッテネータ12と、アッテネータ12のPINダイオード13に入力する直流電圧をスレッショルドと比較するコンパレータ14とを備える。
【0040】
本変形例は、AGC回路11のON/OFF状態がビットデータで書き込まれるレジスタを構成するRAM15を備える。AGC回路11は、LNA回路5の出力する受信RF信号の信号レベルが所定値を超えるとON状態となって利得を下げるように動作し、受信RF信号の信号レベルが所定値より低いとOFF状態となって利得を元に戻すように動作する。具体的には、AGC回路11のAGC動作状態をONとOFFの2状態とし、ON状態とOFF状態の境界は、PINダイオード12がONする電界強度に合わせている。
【0041】
マイコン部3は、AGC回路11のON/OFF状態を判定するAGC_ON/OFF判定部31と、SDチェック部9及びIFカウント部10の出力に基づいてスレッショルドレベルを超えるクオリティのチャンネルを選局するH/L判定部32と、AGC_ON/OFF判定部31による判定結果に対応してSDチェック部9のスレッショルドを切り替えるスレッショルド制御部33とを主な機能ブロックとして備える。AGC_ON/OFF判定部31、H/L判定部32、スレッショルド制御部33は、ミドルウエアとプロセッサによって実現される機能である。SDチェック部9に設定されるスレッショルドは停止感度と呼ぶこともできる。H/L判定部32は、FM受信時におけるAGC_ON時のスレッショルド(1)と、FM受信時におけるAGC_OFF時のスレッショルド(2)と、AM受信時におけるAGC_ON時のスレッショルド(3)と、AM受信時におけるAGC_OFF時のスレッショルド(4)と、を例えば所定ビット数のビットデータ形式で記憶しており、送信コマンドによっていずれかのスレッショルドをSDチェック部9に設定する。
【0042】
図6はシーク動作前に実行されるSDチェック部9のスレッショルド設定に関するフロー図である。マイコン部3は、シーク開始指示を受けて、以下のスレッショルド設定動作を開始する。FM受信かAM受信かを判断し(ステップST11)、FM受信状態であればコンパレータ14の出力する比較結果に基づいて、アッテネータ12のPINダイオード13に入力する直流電圧がスレッショルド(第2のレベル)を超えているか否かを判断する(ステップST12)。コンパレータ14の比較結果がAGC回路11のON/OFFの2状態を示すように、コンパレータ14のスレッショルドが設定されている。AGC_ON/OFF判定部31は、コンパレータ14の比較結果からFM受信時のAGC回路11のON/OFF状態を判断することができる。一方、ステップST11の判定において、AM受信状態であると判断した場合、RAM15の所定アドレスからAGC回路11のON/OFF状態を示すレジスタ値(ビットデータ)を読み込む(ステップST13)。AGC_ON/OFF判定部31は、RAM15のレジスタ値(ビットデータ)からAGC回路11のON/OFF状態を判断することができる。
【0043】
AGC_ON/OFF判定部31は、FM受信時にはコンパレータ14の比較結果からAGC回路11のON/OFF状態を判断し、AM受信時にはRAM15のビットデータからAGC回路11のON/OFF状態を判断する(ステップST14)。AGC回路11のON/OFF状態を判断した結果はスレッショルド制御部33へ渡される。
【0044】
スレッショルド制御部33は、FM受信時にAGC回路11がON状態であれば、上記スレッショルド(1)をSDチェック部9に設定し(ステップST15)、FM受信時にAGC回路11がOFF状態であれば、上記スレッショルド(2)をSDチェック部9に設定する(ステップST16)。一方、スレッショルド制御部33は、AM受信時にAGC回路11がON状態であれば、上記スレッショルド(3)をSDチェック部9に設定し(ステップST15)、AM受信時にAGC回路11がOFF状態であれば、上記スレッショルド(4)をSDチェック部9に設定する(ステップST16)。このように、入力電界強度(AGC回路11のON/OFF)に対応してSDチェック部9に設定するスレッショルドを最適化している。
【0045】
以上のように、SDチェック部9のスレッショルドを更新した後は、図3に示すフローチャートにおけるステップST5-ST9の処理を実行する。
【0046】
本変形例によれば、入力電界強度に対応して変化するAGC回路11のON/OFF状態を示すビットデータをRAM15(レジスタ)経由でマイコン部3に取り込む経路を設けたので、例えばPINダイオード13への入力電圧をモニタしただけでは入力電界強度を把握できない受信モード(例えばAM受信状態)が存在したとしても、当該受信モード(AM受信状態)でのAGC回路11のON/OFF状態を検出でき、SDチェック部9に設定するスレッショルドを最適化できる。
【0047】
以上の説明では、FM受信とAM受信とで異なる経路でAGC回路11のON/OFF状態を検出しているが、FM受信とAM受信の区別なく、AGC回路11のON/OFF状態を示すビットデータをRAM15(レジスタ)経由でマイコン部3に取り込んで判定する構成としても良い。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 アンテナ
2 チューナー部
3 マイコン部
4 RFフィルタ
5 LNA回路
6 ミキサ
7 IFフィルタ
8 シグナルメータ
9 SDチェック部
10 IFカウント部
11 AGC回路
12 アッテネータ
13 PINダイオード
14 コンパレータ
15 RAM
31 AGC_ON/OFF判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信周波数を掃引し、受信信号のレベルが第1のレベル以上のときに掃引を停止して前記受信周波数で受信状態とするシーク機能を有する放送受信装置であって、
前記受信信号のレベルを検出するシグナルメータと、
入力信号の電界強度によって前記受信信号のレベルを制御するAGC回路と、を備え、
前記AGC回路が動作している状態において、前記入力信号の電界強度が第2のレベル以上の場合に、前記第1のレベルの値をより小さい値に変更することを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記シーク機能を実現するためのファームウェアに、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベル以上か否か判定する判定機能を備えることを特徴とする請求項1記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記入力信号を減衰させるPINダイオードを有した減衰回路を備え、
前記AGC回路は、受信信号の電界強度に応じた制御電圧を生成して前記受信信号のレベルを制御し、
前記AGC回路で生成した制御電圧に対応した直流電圧を前記PINダイオードに印加し、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベルを超えたときに前記PINダイオードがオンするように設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記PINダイオードに印加する直流電圧の大きさを所定の電圧値と比較することによってAGC回路がオンしているかオフしているかを判断し、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベル以上か否かを判定することを特徴とする請求項3記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記AGC回路のAGC動作状態を示すデータがレジスタに記憶され、前記ファームウェアが前記レジスタに記憶されたレジスタ値によって前記AGC回路がオンしているかオフしているかを判断し、前記入力信号の電界強度が前記第2のレベル以上か否かを判定することを特徴とする請求項2記載の放送受信装置。
【請求項6】
AM放送またはFM放送を受信することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載の放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−156989(P2012−156989A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282760(P2011−282760)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】