説明

放電ランプを点弧するための点弧回路構成体および放電ランプの点弧方法

少なくとも1つの放電ランプを、該放電ランプに点弧電圧パルスを印加することにより点弧する点弧回路構成体が記載されており、この点弧回路構成体は次の特徴を有する:一次電圧パルスを供給するための少なくとも1つの電源回路、点弧電圧パルスを供給するための少なくとも1つの点弧回路、および前記一次電圧パルスを点弧回路に誘導的に入力結合して点弧電圧パルスを形成するための誘導的結合素子。この点弧回路構成体は、誘導性結合素子が、1/25から1/400までの領域から選択される電圧変換の変換比を有することを特徴とする。その他に、放電ランプに前記請求項による点弧回路構成体を使用して点弧電圧パルスを印加することにより点弧する方法も、以下の方法ステップを有する:a)並列に接続された放電ランプを備える点弧共振回路を形成し、b)この点弧共振回路に点弧電圧パルスを形成するのである。この点弧回路構成体はとりわけVIPランプを点弧するために使用され、このVIPランプは500℃から1000℃の温度での動作ホット状態でも再点弧することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの放電ランプを、該放電ランプに点弧電圧パルスを印加することにより点弧する点弧回路構成体に関するものであり、この点弧回路構成体は次の特徴を有する:一次電圧パルスを供給するための少なくとも1つの電源回路、点弧電圧パルスを供給するための少なくとも1つの点弧回路、および前記一次電圧パルスを点弧回路に誘導的に入力結合して点弧電圧パルスを形成するための誘導性結合素子。点弧回路構成体の他に、この点弧回路構成体を使用した、放電ランプの点弧方法が記載される。
【0002】
前記形式の点弧回路構成体は、それぞれEP0903967A1およびEP0987928A1から公知である。放電ランプの点弧の際には、ガスが放電ランプのランプ燃焼室内でイオン化される。このガスは例えば水銀蒸気からなる。そして導電性のプラズマが発生する。このプラズマは放電ランプの最初の発光を引き起こす。この発光とランプ燃焼室の内部電極の急速な加熱を維持するために、放電ランプは例えば正弦波状の交流電流(点弧引継ぎ電流)によって制御される。この交流電流の周波数は例えば200kHzである。放電ランプの点弧引継ぎ電圧は室温では例えば150Vから500Vである。数秒の領域(1秒以下から数秒)の点弧引継ぎ時間後に、本来の駆動電流を印加することができる。この駆動電流は正弦波状であるか、または矩形状を有する。このために必要な駆動電圧は例えば15Vから225Vである。このフェーズ(1分から4分後)から放電ランプは所望の高温の駆動状態となり、ランプ燃焼室は高圧となり、最も高い発光効率と幅の広い放射スペクトルを以て駆動される。
【0003】
点弧のために、放電ランプのランプ燃焼室の内部電極は点弧電圧パルスにより制御される。ガスのイオン化を引き起こすフラッシュオーバが発生する。点弧パルスは、多数の電圧パルスからなるパケット(電圧パルス列)である。1つの電圧パルス列内の電圧パルスのパルス列周波数は1MHzから10MHzである。従って放電ランプを点弧するためには、kV領域のピーク電圧を有する点弧電圧パルスが必要である。従って点弧電圧パルスは高周波領域の高電圧パルス列(高電圧RFバースト)である。この高電圧パルス列は点弧引継ぎ電圧に点弧過程中に重畳される。点弧回路構成体は、点弧引継ぎ電圧が最大の時に重畳が行われ、放電ランプが点弧されるように構成されている。
【0004】
公知の点弧回路構成体は実質的に、電源回路と、共振回路の形態の点弧回路(点弧共振回路、二次共振回路)と、点弧トランスの形態の誘導性結合素子とからなる。放電ランプは点弧共振回路に対して電気的に並列に接続されている。電源回路では一次電圧パルスが形成される。点弧トランスによって一次電圧パルスは点弧共振回路に入力結合される。点弧共振回路には点弧電圧パルスが発生する。そして放電ランプが点弧される。点弧回路構成体の要素、とりわけ誘導性結合素子の点弧トランスは、点弧共振回路にできるだけ大きなQが生じるように構成されている。このQは100以上である。
【0005】
放電ランプを点弧するための点弧回路構成体は、例えばいわゆる電子的前置スイッチング装置(EVG)に実現される。このEVGは電気エネルギーを使用可能な電源電圧から変換し、放電ランプを最適の電圧領域、電流領域、および周波数領域で駆動できるようにする。放電ランプは例えば高圧ランプまたは超高圧ランプであり、ビデオランプおよびプロジェクタランプ(VIPランプ)として使用される。
【0006】
ランプ温度が比較的に低い場合(例えば室温が約20℃)、点弧電圧パルスのピーク電圧は、ランプの内部電極間にフラッシュオーバを励起するのに数百から数千Vで十分である。ランプ温度が高ければ高いほど、高圧ランプないしは超高圧ランプの点弧に必要なピーク電圧は高くなる。VIPランプの場合、通常の駆動温度は950℃から1050℃である。内部電極間のフラッシュオーバに必要な点弧電圧は、この温度では極端に高くなる。なぜならランプ燃焼室内のガスが、存在するガス圧のため強い絶縁作用を引き起こすからである。そのため、VIPランプを、これを再び点弧できるようになる前に冷却しなければならない。燃焼室の温度は、現在の前置スイッチング装置では約500℃まで低下しなければならない。約1000℃であるVIPランプのトーチ駆動温度から出発して、500℃までの冷却には約30秒かかる。30秒の冷却時間内では、VIPランプの再点弧(高温再点弧)は付加的手段なしでは失敗する。
【0007】
本発明の課題は、放電ランプをランプの冷却時間内でも点弧することのできる点弧回路構成体を提供することである。
【0008】
この課題を解決するために、少なくとも1つの放電ランプを、該放電ランプに点弧電圧パルスを印加することにより点弧する点弧回路構成体が記載されており、この点弧回路構成体は次の特徴を有する:一次電圧パルスを供給するための少なくとも1つの電源回路、点弧電圧パルスを供給するための少なくとも1つの点弧回路、および前記一次電圧パルスを点弧回路に誘導的に入力結合して点弧電圧パルスを形成するための誘導性結合素子。この点弧回路構成体は、誘導性結合素子が、1/25から1/400を含むまでの領域から選択される電圧変換の変換比を有することを特徴とする。有利には変換比は1/40から1/200を含むまでの領域から、とりわけ1/40から1/70を含むまでの領域から選択される。
【0009】
この課題を解決するために、放電ランプに前記請求項による点弧回路構成体を使用して点弧電圧パルスを印加することにより点弧する方法も、以下の方法ステップを有する:a)並列に接続された放電ランプを備える点弧共振回路を形成し、b)この点弧共振回路に点弧電圧パルスを形成するのである。
【0010】
放電ランプないしは放電ランプの内部電極は別の要素と共に点弧共振回路に接続される。点弧回路は必要な反応性構成部材を全て有する。高変換比と、点弧回路または結合素子に発生する共振電圧上昇によって、非常に高いピーク電圧を備える高周波点弧パルスが点弧回路に形成される。有利には10kVから50kVのピーク電圧、特に有利には15kVから25kVのピーク電圧を有する点弧電圧パルスが形成される。
【0011】
MHz領域のパルスシーケンス周波数を有する高周波電圧パルスが形成される。有利な実施形態では、点弧電圧パルスは0.5MHzから30MHzのパルスシーケンス周波数により、特に有利には0.9MHzから10MHzのパルスシーケンス周波数により形成される。特に良好な結果は、1.5MHzのパルスシーケンス周波数により得られた。
【0012】
このパルスシーケンス周波数と高電圧によって、点弧電圧パルスの点弧パルス持続を短時間維持することができる。点弧パルス持続時間は50μs以下である。有利な構成では、5μsから30μsの領域の点弧パルス持続時間を有する点弧電圧パルスが形成される。とりわけ20μs以下の点弧パルス持続時間が可能である。この比較的に短い点弧パルス持続時間で、放電ランプが高温である場合でも変換比が高いので放電ランプを点弧するのに十分である。
【0013】
頻繁な点弧反復によって点弧確率が上昇する。従って別の構成によれば、点弧電圧パルスは、50Hzから10kHzの領域の反復周波数(反復率)により、特に有利には100Hzから1kHzの領域の反復周波数により形成される。この反復周波数により点弧電圧パルスが点弧回路に入力結合される。比較的高い反復周波数、例えば1kHzにより、点弧が所定の時間インターバル内で成功する確率が高まる。
【0014】
誘導性結合素子は少なくとも1つの点弧トランスを有する。この点弧トランスは、少なくとも1つの一次巻線を備える一次インダクタンスと、少なくとも1つの二次巻線を備える二次インダクタンスを有する。点弧トランスの二次インダクタンスは点弧回路の構成部分である。点弧回路は点弧共振回路として構成することができる。点弧トランスによって、電源回路に形成された一次電圧パルスが点弧共振回路に入力結合される。有利にはこのために点弧トランスは、強磁性コア(例えばフェライトコアまたは鉄粉コア)を備える高周波高電圧トランスである。高周波高電圧トランスは、これが単独で高電圧変換を行うように構成されている。従い高周波高電圧トランスは、例えば出力電圧が25kVのトランスである。このように構成された点弧トランスによって、点弧共振回路のQが悪化するのを甘受することができる。点弧共振回路は100以下のQを有する。
【0015】
誘導性結合素子は、相応に構成された点弧トランスだけを有することができる。有利な構成では、誘導性結合素子は少なくとも1つの結合トランスを有する。点弧トランスと結合トランスは、これらが共に誘導性結合素子を形成するように電気的に相互に接続されている。点弧トランスと結合トランスはそのために直列に接続されている。結合トランスの一次インダクタンスは電源回路の構成部分とすることができる。結合トランスの二次インダクタンスと点弧トランスの一次インダクタンスは電気的に接続されている。点弧トランスの二次インダクタンスはさらに点弧共振回路の構成部分である。
【0016】
結合トランスは電圧適合に用いる。これにより、誘導性結合素子の高変換比が結合トランスと共に点弧トランスにより形成される。この変換比は、点弧トランスだけによって支持されるのではない。結果として点弧トランスの寄与が小さくなる。このことにより、二次インダクタンス、ひいては点弧トランスの二次巻線を小さく維持することができる。このことは以下の利点に結び付く。二次巻線のオーム性抵抗が比較的少ない巻数により、従って比較的短いワイヤ長により小さくなる。オーム性抵抗には放電ランプの駆動電流も通流し、このことにより回避すべき持続的電力損失が生じる。さらに結合トランスは、点弧共振回路と電源回路を分離する。これにより、点弧共振回路において点弧電圧パルスの形成に必要な共振性の電圧上昇が緩和される。
【0017】
点弧トランスと結合トランスを上記のように組み合わせることにより、点弧回路構成体の別の構成部材が有利に構成されていれば、30kV以上のピーク電圧を有する点弧電圧パルスを達成することができる。これは別の見方では、正のピークから負のピークまでで計算して60kVss(英語では60kVpp)を有する電圧である(電圧がほぼ正弦波状であると仮定して)。
【0018】
有利な構成では、誘導性結合素子は少なくとも1つの結合共振回路を有する。結合共振回路によって結合トランスを省略することができる。しかし有利には結合トランスを設け、結合共振回路が点弧トランスと結合トランスを電気的に相互に接続する。結合共振回路はタンク共振回路とも称される。この共振回路は、結合トランスと点弧トランスとの間に、これが点弧トランスの二次巻線の共振を引き受けるように挿入される。結合共振回路では共振性の電圧上昇が生じる。この電圧上昇は電源回路の一次電圧パルスによってトリガされる。これに対して点弧回路は点弧共振回路としては構成されていない。ここでは共振性の電圧上昇は生じない。点弧トランスを介しては点弧電圧パルスだけが放電ランプの内部電極に形成される。この構成でも、点弧トランスが誘導性結合素子全体の変換比を単独で決めるのではない。変換比の大きさはタンク回路の構成に非常に大きく依存しており、変換比は適切な容量性または誘導性タップ自体により決められるか、または結合トランスの寄与により付加的に決められる。例えばタンク共振回路は2kVから10kVの電圧を展開する。これにより点弧トランスに対して中程度の変換比が可能である。電源回路形式によっては結合トランスを省略することができる。
【0019】
電源回路は適切な高周波回路素子を有する。高周波回路素子は1つまたは複数の高周波スイッチングトランジスタを有する。高周波スイッチングトランジスタは、(電力)MOSトランジスタ、およびとりわけCoolMOS(TM)トランジスタまたはpowerMESH(TM)トランジスタまたはFDmesh(TM)トランジスタまたはシリコンカーバイトFETトランジスタである。
【0020】
電源回路はパルス持続のために高電力を送出する。電源回路は、平均一次電力が300Wから2kWの間であるように設計されている。これにより、スイッチングに使用される高周波スイッチングトランジスタは、ピーク電流が10Aから100Aの間である電流パルスを導通する。ここではそのために、効率が十分に高いようにする。高周波スイッチングトランジスタに対する価格はその電流負荷能力に大きく依存する。電源の効率が高ければ高いほど、高周波スイッチングトランジスタに対する電流負荷能力を低く選択することができる。
【0021】
有利な構成では、電源回路は一次電圧パルスを形成するために高周波スイッチング素子を有する。この高周波スイッチング素子はスイッチング負荷軽減部を備える。このことは一般的に、スイッチング素子のスイッチオン時に印加される電圧および導通される電流が同じであるか、またはほぼゼロであることを意味する。このようにして、スイッチング過程時に通常は発生する損失電力ピークを回避することができる。このようにして特に効率の高い電源回路が得られる。スイッチング負荷軽減部のさらなる重要な利点は、スイッチング周波数およびそれより上のスペクトルにおける電磁的障害成分(EMC問題)を回避することである。
【0022】
有利には電源回路は、クラスE、クラスDおよびクラスDEのグループから選択されたトポロジーを有する。クラスEおよびクラスDEは、特に良好なスイッチング負荷軽減を特徴とする。スイッチング負荷軽減が大きいので、通常は電源回路に対する供給電圧バッファとして必要な電解コンデンサを小さく選択することができる。さらにこのスイッチング段に対しては1つの高周波スイッチングトランジスタが必要なだけであり、この高周波スイッチングトランジスタは効率が高められているから制限的な電流負荷能力を有すればよい。従って比較的安価な点弧回路構成体が得られる。さらなる利点は、スイッチング段の出力電圧がさらなる整合なしで、スイッチング段に供給される直流電圧の線形性にほぼ追従することである。これにより高周波電圧を、電源回路に前置接続された電圧供給部を介して制御することができる。
【0023】
クラスEには2つの形式がある:トランジスタのドレイン端子ないしはコレクタ端子には並列回路または直列回路を接続することができる。第2の解決手段は、非常に小さな供給電圧により駆動することができることを特徴とする。従って比較的素子能力の小さい高電流トランジスタを使用することができる。
【0024】
非常に良好なスイッチング負荷軽減は、クラスDEの高周波スイッチング段によっても達成される。このクラスは、2つのスイッチングトランジスタからなるハーフブリッジに基づく。使用されるスイッチングトランジスタは、クラスEで使用されるスイッチングトランジスタよりも格段に小さな絶縁耐力しか必要としない。
【0025】
この点弧回路構成体はとりわけ、高圧放電ランプ、およびビデオ技術およびプロジェクタ技術で使用される超高圧放電ランプに対するEVGで使用される。高圧放電ランプのランプ燃焼室には2barから20barの圧力が発生する。超高圧放電ランプでは100barから200barの領域で圧力が変動する。ここでの目的はできるだけ広い放射スペクトルを達成することである。VIPランプの電力は100Wから300Wの間であり、例えば120Wである。それより大きな電力および小さな電力も考えられる。この点弧回路構成体によりこのような放電ランプを、500℃以上から1000℃までの動作ホット状態でも点弧することができる。
【0026】
まとめると本発明により以下の重要な利点が得られる。
・この点弧回路構成体により、放電ランプを500℃以上の高温でも再点弧することができる。放電ランプの照明が中断した後に、新たな点弧のための冷却を必要としない。点弧休止が発生しない。
・本発明により、現在通常の点弧休止を維持するためにしばしば使用される点弧補助電極を省略することができる。
【0027】
複数の実施例と所属の図面に基づいて本発明を以下、詳細に説明する。
図1,2,3Aおよび3Bは、点弧回路構成体の種々の実施例の回路概略図である。
図4は、クラスDEの高周波周波数スイッチング段の回路概略図である。
【0028】
点弧電圧パルスを印加することにより放電ランプ2を点弧するための点弧回路構成体1は、高圧放電ランプ2のためのEVG内に実現される。高圧放電ランプ2は、電力が120WのVIP放電ランプである。これに対する択一的実施例では、VIP放電ランプは100Wまたは300Wの電力を有する。
【0029】
点弧回路構成体1の主要な構成部材は、一次電圧パルスを形成するための電源回路11、点弧電圧パルスを形成するための点弧回路12、および一次電圧パルスを点弧回路12に誘導的に入力結合するための誘導性結合素子13である。一次電圧パルスを点弧回路12に入力結合することにより点弧電圧パルスが発生する。
【0030】
高圧放電ランプ2のランプ燃焼室21内に配置された内部電極22は点弧回路12の構成部分である。点弧回路12に形成される点弧電圧パルスは、内部電極22間でフラッシュオーバを引き起こす。ランプ燃焼室21内部のガスはイオン化される。点弧引継ぎのためのホットプラズマが形成される。
【0031】
ホットプラズマを維持するために、高圧放電ランプ2には電圧供給ユニット122を介して正弦波状の点弧引継ぎ電圧が供給される。電圧供給ユニット122はEVGに組み込まれており、100kHz領域にある150Vから500Vの間の正弦波状点弧引継ぎ電圧を供給する。
【0032】
電源回路11には電圧供給ユニット111を介して適切な直流電圧が供給される。電源回路11は、高周波スイッチング素子112を有する。高周波スイッチング素子112はスイッチング負荷軽減されている。このことは、スイッチオン時に印加される電圧および導通される電流がゼロまたはほぼゼロであることを意味する。高周波スイッチング素子112の構成部材は、少なくとも1つの高周波スイッチングトランジスタ113と少なくとも1つの高周波駆動回路114である。高周波スイッチングトランジスタ113は高周波駆動回路114により駆動制御される。高周波スイッチングトランジスタ113はCoolMOS(TM)トランジスタである。これとは択一的な実施例では、powerMESH(TM)トランジスタ、FDmesh(TM)トランジスタまたはシリコンカーバイドFETトランジスタが使用される。高周波駆動回路114は高周波スイッチング信号を高周波スイッチングトランジスタ113に送出する。この高周波スイッチング信号は、点弧電圧パルスの達成すべきパルスシーケンス周波数に適合されている。このことは、電源回路11で一次電圧パルスが形成され、この一次電圧パルスは点弧回路12の点弧電圧パルスと同じ、または非常に類似するパルスシーケンス周波数を有することを意味する。
【0033】
点弧回路構成体1により、放電ランプ2を点弧するための高周波点弧電圧パルスが形成される。点弧電圧パルスのパルスシーケンス周波数は、第1実施例では約1.5Hzである。別の実施例によればパルスシーケンス周波数は4MHzである。点弧電圧パルスのピーク電圧は22kVである。これは44kVss(44kVpp)に相当する。別の実施例では点弧電圧パルスのピーク電圧は30kV(60kVss)である。点弧パルス持続時間は20μsである。別の実施例によれば点弧パルス持続時間は5μsである。
【0034】
誘導性結合素子13は、約1/60の電圧変換比を有する。この高い変換比により、ピーク電圧の高い高周波電圧パルスを形成することができる。高いピーク電圧により、VIP高圧放電ランプを500℃以上の高いトーチ表面温度でも点弧することができる。放電ランプの再点弧を成功させるための冷却フェーズを待機する必要がない。
【0035】
高い変換比を達成するために、以下に3つの実施例を挙げる。
【0036】
実施例1
所属の概略的回路が図1に示されている。誘導性結合素子13は1つの点弧トランス131からだけなる。点弧トランス131は単独で高い変換比を提供する。点弧トランス131の一次インダクタンス1311は電源回路11の構成部分である。点弧トランス131の二次インダクタンス1312は、点弧共振回路121として構成された点弧回路12の構成部分である。点弧トランス131の一次インダクタンス1311と二次インダクタンス1312を介して、一次電圧パルスが点弧共振回路121に入力結合される。
【0037】
点弧トランス131は、強磁性コアと、相応の巻数の一次インダクタンス1311および二次インダクタンス1312を有する高周波高電圧トランスである。点弧共振回路121は100よりかなり小さいQを有する。
【0038】
二次インダクタンス1312は、同じ巻線のほぼ同じ2つの部分インダクタンスからなる。この部分インダクタンスは別の構成部材と共に、ほぼ対称の点弧共振回路121に統合される。これにより駆動電圧および点弧引継ぎ電圧を、点弧の高電圧パルスにより影響なしで供給することができる。
【0039】
電源回路11の高周波スイッチング素子112は、クラスE(大量生産トポロジー)の高周波スイッチング段を有する。
【0040】
実施例2
相応する概略的回路図が図2に示されている。実施例1とは異なり、誘導性結合素子13は点弧トランス131の他に結合トランス132を有する。高変換比は、点弧トランス131と結合トランス132との結合によって達成される。このために結合トランス132の一次インダクタンス1321は、電源回路11の構成部分である。一次電圧パルスは結合トランス132の二次インダクタンス1322と点弧トランス131の一次インダクタンス1311を介して点弧共振回路121に入力結合される。結合トランス132を相応に構成することによって部分的変換比が達成される。従って点弧トランス131の部分変換比を低減することができる。誘導性結合素子13全体の高い変換比はそのままである。
【0041】
電源回路11の高周波スイッチング素子112も同様に、とりわけパラレルトポロジーによるクラスEの高周波スイッチング段を有する。
【0042】
実施例3
所属の概略的回路が図3Aと3Bに示されている。点弧回路12は点弧共振回路としては構成されていない。これは点弧回路12を、寄生エレメントを無視して、点弧電圧パルスの周波数領域では発振励起できないことを意味する。
【0043】
点弧回路12に点弧電圧パルスを誘導的に形成するために、誘導性結合素子13はタンク共振回路(結合共振回路)133を有する。タンク共振回路133は容量性部分を有する(図3A)。これとは択一的に、タンク共振回路133は、タッピングされたコイルを備えるタンク共振回路として構成される(タッピングされたタンク共振回路、図3B)。このタンク共振回路133は、先行の実施例の結合素子13の改善形態では、結合トランス132と点弧トランス131との間に接続されている。点弧トランスの一次インダクタンス1311はタンク共振回路133の構成部分である。ここでも部分変換比がタンク共振回路により引き受けられる。従って点弧トランス131は比較的小さな変換比で間に合う。
【0044】
前記実施例の他に、電源回路11、点弧回路12または結合素子13とその構成部材を相応に構成することにより得られる多数の実施形態がある。例えば点弧トランス131の二次インダクタンス1312は図示しない実施例によればワンピースである。2つ以上の構成部材も同様に考えられる。別の実施形態では電源回路11に対して、Eクラスのスイッチング段を備える高周波スイッチング素子112の代わりに、DEクラスのスイッチング段を備える高周波スイッチング素子112が使用される。大量生産トポロジーによるDEスイッチング段が図4に示されている。このクラスの高周波スイッチング段は2つの高周波スイッチングトランジスタ113を有する。高周波スイッチングトランジスタの各々は固有の高周波駆動回路114により駆動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】点弧回路構成体の種々の実施例の回路概略図である。
【図2】点弧回路構成体の種々の実施例の回路概略図である。
【図3A】点弧回路構成体の種々の実施例の回路概略図である。
【図3B】点弧回路構成体の種々の実施例の回路概略図である。
【図4】クラスDEの高周波周波数スイッチング段の回路概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの放電ランプ(2)を、該放電ランプに点弧電圧パルスを印加することにより点弧する点弧回路構成体(1)であって、該点弧回路構成体は、
一次電圧パルスを供給するための少なくとも1つの電源回路(11)と、点弧電圧パルスを供給するための少なくとも1つの点弧回路(12)と、前記一次電圧パルスを前記点弧回路に誘導的に入力結合して点弧電圧パルスを形成するための誘導性結合素子(13)とを有する形式の点弧回路構成体において、
前記誘導性結合素子(13)は、1/25から1/400をまでの領域から選択される電圧変換比を有することを特徴とする点弧回路構成体。
【請求項2】
請求項1記載の点弧回路構成体であって、
前記変換比は、1/40から1/200までの領域から、とりわけ1/40から1/70までの領域から選択される点弧回路構成体。
【請求項3】
請求項1または2記載の点弧回路構成体であって、
前記誘導性結合素子は少なくとも1つの点弧トランス(131)を有する点弧回路構成体。
【請求項4】
請求項3記載の点弧回路構成体であって、
前記点弧トランスは、強磁性コアを備える高周波高電圧トランスである点弧回路構成体。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項記載の点弧回路構成体であって、
前記点弧回路は、Qが100以下である点弧共振回路を有する点弧回路構成体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項記載の点弧回路構成体であって、
前記誘導性結合素子は少なくとも1つの結合トランス(132)を有する点弧回路構成体。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載の点弧回路構成体であって、
前記誘導性結合素子は少なくとも1つの結合共振回路(133)を有する点弧回路構成体。
【請求項8】
請求項7記載の点弧回路構成体であって、
前記結合共振回路(133)は、前記点弧トランスと前記結合トランスとを電気的に相互に接続する点弧回路構成体。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項記載の点弧回路構成体であって、
前記一次電圧パルスを形成するための前記電源回路は、スイッチング負荷軽減部を備える高周波スイッチング素子(112)を有する点弧回路構成体。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項記載の点弧回路構成体であって、
前記電源回路は、クラスE、クラスDおよびクラスDEのグループから選択されたトポロジーを有する点弧回路構成体。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項記載の点弧回路構成体を使用して、点弧電圧パルスを印加することにより放電ランプを点弧する方法において、
a)放電ランプが並列接続された点弧共振回路を形成し、
b)点弧電圧パルスを前記点弧共振回路に形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、
10kVから50kVのピーク電圧、特に有利には15kVから25kVのピーク電圧を有する点弧電圧パルスを形成する方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の方法であって、
0.5MHzから30MHzのパルスシーケンス周波数、特に有利には0.9MHzから10MHzのパルスシーケンス周波数を有する点弧電圧パルスを形成する方法。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか一項記載の方法であって、
5μsから30μsの領域の点弧パルス持続時間を有する点弧電圧パルスを形成する方法。
【請求項15】
請求項11から14までのいずれか一項記載の方法であって、
点弧電圧パルスの形成は、50Hzから10kHzの領域、有利には100Hzから1kHzの領域の反復周波数により繰返される方法。
【請求項16】
請求項11から15までのいずれか一項記載の方法であって、
点弧は、放電ランプの500℃以上のランプ温度で実行される方法。
【請求項17】
請求項11から16までのいずれか一項記載の方法であって、
放電ランプとして、高圧放電ランプ、とりわけ超高圧放電ランプが使用される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−503773(P2009−503773A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523253(P2008−523253)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007469
【国際公開番号】WO2007/087836
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】