説明

放電灯点灯装置、及びこれを用いた照明器具並びに液晶表示装置

【課題】放電ランプを周期的に始動点灯する放電灯点灯装置において、放電ランプの始動タイミングの精度を改善する。
【解決手段】放電ランプLampに高周波電圧を与えるインバータ回路INVと、放電ランプLampを微放電もしくは消灯とする待機状態と安定点灯する点灯状態ヘ切り替える制御を行うインバータ制御回路(発振制御回路OSC1)と、待機状態と点灯状態を周期的に切り替えるタイミングを決定するバースト調光回路(調光器Dim)からなる放電灯点灯装置において、待機状態から点灯状態となるまでの時間が一定となるようにインバータ制御回路の設定を変更する始動時間制御手段(タイマカウンタCNT1、フィードバックコントローラFB1)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電ランプを周期的に始動点灯する放電灯点灯装置に関するものであり、例えば、液晶表示装置のバックライトに適する放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過型の液晶パネルを用いた表示装置には人工光源が必要である。その人工光源は様々であるが、出力特性やパフォーマンスから放電ランプを用いたバックライトシステムが現在も幅広く用いられている。放電ランプは、点光源であるHIDランプや線光源であるCCFL、さらに平面光源であるFFLも開発されている。これらの光源を駆動する点灯回路においても高速な始動や安定な電力制御が求められ、技術開発がなされている。特に液晶表示装置においては、液晶パネルの欠点である応答性の改善が可能な手法として、放電ランプを点滅させながら表示をさせる制御が知られている。これは点滅する光源で液晶表示を行うことにより、動画像の輪郭がぼける現象(いわゆる動画ぼけ)を改善するものである。
【0003】
特許文献1(特表2008−506222号公報)では、バックライトの点滅点灯において、ランプ点灯期間における電流値を積分し、その積分量を一定に制御する技術が開示されている。この制御により、バックライトの点滅点灯においてランプの光出力を安定にし、画像性能を高めるということである。
【0004】
ところで蛍光ランプを点滅点灯させる制御において、ランプの始動時間が安定でないことは問題である。すなわち、始動時間のずれにより、点灯している時間が変動するので、光出力が変化してしまう。このことは蛍光ランプに限らず、すベての放電ランプに言えることである。
【特許文献1】特表2008−506222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、ランプ始動時間の変動をランプ電流などで補償するものであるが、この方法では液晶パネルの画像更新タイミングとのずれを補償することは出来ない。
【0006】
液晶表示装置における動画ぼけの改善特性は、表示する画像の更新と光源の発光のタイミングの同期で決まる。すなわち液晶素子の応答期間では発光せず、液晶素子が完全に応答したときに発光することで、動画ぼけの改善が出来るのである。そのため、ランプ点灯のタイミングを制御することは重要である。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、放電ランプを周期的に始動点灯する放電灯点灯装置において、放電ランプの始動タイミングの精度を改善した放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、放電ランプLampに高周波電圧を与えるインバータ回路INVと、放電ランプLampを微放電もしくは消灯とする待機状態と安定点灯する点灯状態ヘ切り替える制御を行うインバータ制御回路(発振制御回路OSC1)と、待機状態と点灯状態を周期的に切り替えるタイミングを決定するバースト調光回路(調光器Dim)からなる放電灯点灯装置において、待機状態から点灯状態となるまでの時間が一定となるようにインバータ制御回路の設定を変更する始動時間制御手段(タイマカウンタCNT1、フィードバックコントローラFB1)を有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路INVの始動電圧設定を操作することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路INVの始動周波数設定を操作することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路INVの電圧掃引時間設定を操作することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記始動時間制御手段は、図13に示すように、少なくともインバータ回路INVの待機状態(待機モードSTB)の設定を操作することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、図6、図7に示すように、放電ランプLampの発光管から漏れ電流を生じさせる近接導体回路LE1を備え、前記始動時間制御手段は、待機状態からアーク放電で安定点灯する点灯状態となるまでの時間が一定となるように、少なくとも前記近接導体回路LE1の電気特性の変更を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1〜6の発明において、図5に示すように、複数の放電ランプLamp1〜Lamp3とインバータ回路INV1〜INV3を備え、複数の放電ランプLamp1〜Lamp3の始動時間の平均を一定に制御することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1〜6の発明において、図8に示すように、放電ランプの初期始動において、始動時間を長く設定し、始動とともに徐々に時間を短くすることを特徴とする。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1〜6の発明において、図9に示すように、始動モードIGNのパラメータを記録する手段(状態検出手段DET1)を備え、パラメータの変化から放電ランプLampの状態を判別することを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項9の発明において、始動モードのパラメータから放電ランプLampの寿命を検知することを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項9の発明において、始動モードのパラメータからランプ温度を検知することを特徴とする。
【0019】
請求項12の発明は、請求項9の発明において、始動モードのパラメータからランプ種別を検知することを特徴とする。
【0020】
請求項13の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の放電灯点灯装置を備えた照明器具である。
【0021】
請求項14の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の放電灯点灯装置を備えた液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、放電ランプの待機状態から点灯状態となるまでの時間が一定となるように制御する始動時間制御手段を有するので、点灯タイミングが安定する。その結果、光出力が安定し、ちらつきも低減することができる。また、点灯装置の設置環境による点灯時間のばらつきも無くすことができるので、個別に調整することなく、安定な点灯が可能である。さらに液晶パネルと組み合わせると、その正確な始動タイミングにより、動画ぼけの改善効果を高くすることが可能である。したがって、放電灯を点滅点灯させる液晶表示装置のバックライトとして有用である。
【0023】
請求項2の発明によれば、点灯時間を一定に制御するのに放電ランプの始動電圧を制御するようにしたので、一般的になされるランプ電圧をフィードバック制御するシステムに容易に適用することが可能である。
【0024】
請求項3の発明によれば、点灯時間を一定に制御するのに放電ランプの始動周波数を制御するようにしたので、例えば、周波数共振を用いない定電圧始動制御するシステムに容易に適用することが可能である。
【0025】
請求項4の発明によれば、点灯時間を一定に制御するのにランプ印加電圧のスイープ時間を制御するようにしたので、インバータ回路へのストレスの少ない始動で制御するシステムに適用することが可能である。
【0026】
請求項5の発明によれば、点灯時間を一定に制御するのに消灯または待機点灯時の放電ランプへ与える電気的エネルギーを制御するようにしたので、少ないエネルギー消費で制御するシステムに適用することが可能である。
【0027】
請求項6の発明によれば、点灯時間を一定に制御するのに放電ランプに近接する導体ヘの漏れ電流特性を制御するようにしたので、インバータ回路と独立して始動時間を制御することが出来る。したがって、ひとつのインバータ回路の出力で多くの放電ランプを一度に点滅点灯させる放電灯点灯装置に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点を明確にすべく、以下添付した図面を参照しながら、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
(実施形態1)
図1を参照すると、本発明の一実施の形態としての放電灯点灯装置が示されている。
【0029】
本放電灯点灯装置は、交流商用電源を整流する整流器DBと、整流器DBの出力を昇圧・平滑する力率改善回路PFCと、力率改善回路PFCの直流電圧出力を入力して高周波電圧に変換し放電ランプLampに供給するインバータ回路INVと、インバータ回路INVの出力を制御する発振制御回路OSC1と、発振制御回路OSC1の状態を切り替えるタイミングを与える調光器Dimを備えている。放電ランプLampはインバータ回路INVによって駆動されている。
【0030】
発振制御回路OSC1には、始動モードIGN、点灯モードSTD、待機モードSTBという3つの動作パラメータが設定されており、調光器Dimに応じて選択されたパラメータによりインバータ回路INVを制御し、放電ランプLampを点灯・消灯させる。
【0031】
また、始動時間フィードバック系として、調光器Dimのタイミング信号を基準として放電ランプLampの状態からランプ始動を検知し、ランプの始動時間ΔTiを検出するタイマカウンタCNT1と、始動時間の設定値Aimを出力する手段と、タイマカウンタCNT1の出力値であるランプ始動時間ΔTiが始動時間の設定値Aimと等しくなるように、発振制御回路OSC1の始動モードIGNの設定を調整するフィードバックコントローラFB1を備えている。
【0032】
タイマカウンタCNT1による放電ランプLampの始動検知は、例えば、ランプ電圧やランプ電流などで検知するが、放電ランプLampの光出力などで検知しても良い。
【0033】
本発明による放電灯点灯装置は、周期的に放電ランプを始動させる点灯制御において放電ランプの始動時間をフィードバック制御するものであり、この始動時間のフィードバック制御は、放電ランプが始動する時間を検出する手段により始動時間を計測し、始動時間の測定結果と始動時間の目標値を比較し、ランプ始動のパラメータを設定変更するという動作を繰り返し実行するものである。従って、放電ランプの温度特性や近接導体による漏れ電流の影響、放電ランプ個々のばらつきによる始動時間のばらつきを抑制することができる。
【0034】
ところで本発明は蛍光ランプの始動時間が始動電圧に反比例しているという事実に基づいている。これは一見、当然のことのように思われる。しかし、蛍光ランプにおいては始動時間が数ms以下の領域となると、一般的な蛍光ランプの始動時間(100ms以上)とは違い、安定した状態で始動電圧と始動時間の反比例関係があるということが実験から分かった。つまり、一般的な始動電圧で始動させるより高い始動電圧を蛍光ランプに印加して短時間で始動させる条件においては始動電圧を高くすれば蛍光ランプは早く始動し、逆に始動電圧を低くすれば遅く蛍光ランプが始動するという特性が顕著になるのである。
【0035】
図3は、46インチの液晶表示装置用に設計された熱陰極蛍光ランプにおいて、常温での蛍光ランプへの印加電圧Vstと蛍光ランプの始動にかかる時間ΔTiの関係を示したグラフである。なお、グラフで蛍光ランプの始動にかかる時間ΔTiは数ms以下の範囲でプロットされている。
【0036】
図3より、ΔTiを小さくするには始動電圧Vstを増加させ、ΔTiを大きくするには始動電圧Vstを小さくすれば良いことが分かる。この特性は温度や放電ランプの種類によって変化する。しかし温度やランプ個体差による始動特性の変化は急激に変化するものではない。そこで、フィードバック制御によって始動時間ΔTiを自動的に一定に制御しようというのである。
【0037】
図2に本実施形態の動作状態を示す。図2には、上から調光器Dimのタイミング信号、放電ランプLampの電圧Vla、放電ランプLampの電流Ila、タイマカウンタCNT1の出力ΔTiが示されている。
【0038】
時間t1で調光器Dimがランプ点灯のタイミング信号を発生させる。これに応じて発振制御回路OSC1は始動モードIGNに移行する。発振制御回路OSC1が始動モードIGNとなると放電ランプLampには徐々に高電圧が印加される。タイマカウンタCNT1が時間計測の動作を開始する。
【0039】
時間t2で放電ランプLampに印加される電圧はピークとなる。
時間t3で放電ランプLampは微放電状態となり、微小なランプ電流Ilaが生じるが、ランプ電圧Vlaは高いままである。
【0040】
時間t4の時点で、放電ランプLampはアーク放電ヘ移行し、ランプ電圧Vlaが低下し、ランプ電流Ilaは増加し、放電ランプLampは点灯する。時間t4でタイマカウンタCNT1は放電ランプLampの点灯を検知し、始動モードIGNから点灯モードSTDへ移行し、放電ランプLampの始動にかかる時間ΔTiの計測を終了する。
【0041】
タイマカウンタCNT1は、始動時間ΔTiの計測結果をフィードバックコントローラFB1へ入力する。フィードバックコントローラFB1は、始動時間ΔTiが目標始動時間Aimと等しくなるように、発振制御回路OSC1の始動モードIGNの設定値を操作する。
【0042】
例えば、始動時間ΔTiが目標始動時間Aimに対して短い時間であるならば、フィードバックコントローラFB1は、始動モードIGNにおけるピーク時のランプ印加電圧を下げるように発振制御回路OSC1を操作する。逆に、始動時間ΔTiが目標始動時間Aimに対して長い時間であるならば、フィードバックコントローラFB1は、始動モードIGNにおけるピーク時のランプ印加電圧を上げるように発振制御回路OSC1を操作する。
【0043】
この始動モードIGNの設定値は、電圧指令値とすれば制御性が良いが、もし、インバータ回路INVが周波数に依存して出力電圧を変化させる構成であるならば、始動電圧が発生する周波数値について制御を行っても良い。
【0044】
さらに、フィードバックコントローラFB1の制御量は、図2の時間t1〜t2で設定される始動電圧の電圧スイープ速度であっても効果がある。例えば、始動時間ΔTiが目標始動時間Aimに対して短い時間であるならば、フィードバックコントローラFB1は、始動モードIGNでランプ印加電圧が0からピークに至る時間(t2−t1)を長くするように発振制御回路OSC1を制御する。逆に、始動時間ΔTiが目標始動時間Aimに対して長い時間であるならば、フィードバックコントローラFB1は、始動モードIGNでランプ印加電圧が0からピークに至る時間(t2−t1)を短くするように発振制御回路OSC1を制御する。
【0045】
このように、始動時のランプ電圧やそのスイープ時間を変更することにより、ランプ始動までの時間ΔTiを連続的に調整するのである。
【0046】
図2の時間t5で調光器Dimはランプ消灯のタイミング信号を発生させる。これに応じて発振制御回路OSC1は待機モードSTBに移行する。待機モードSTBでは、放電ランプLampを消弧または微放電で維持するようにランプ電圧を低下させるか、インバータ回路INVの出力インピーダンスを高くするかの制御が行われる。
【0047】
待機モードSTBで放電ランプLampを微放電状態に維持することにより、始動電圧を大幅に低下させることも可能である。放電ランプLampの始動電圧が高い場合は微放電を維持する方法が適している。
【0048】
時間t6の時点で再び調光器Dimはランプ点灯のタイミング信号を発生させる。以下、時間t1〜t6の動作を繰り返し、放電ランプLampは点滅点灯する。
【0049】
なお、フィードバックコントローラFB1の応答速度については、点滅回数が数10サイクル/秒〜数100サイクル/秒で応答できる程度で良い。この応答速度となるようにフィードバックループ内にローパスフィルタが設定される。たとえば、タイマカウンタCNT1に平均化手段を設ける。このような制御は、タイマカウンタを備えたマイクロプロセッサで容易に実現できる。
【0050】
本発明を用いれば、ランプ温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現できる。特にランプ配線の影響などは個別調整が難しいが、本発明を用いれば解決できる。また、始動タイミングが安定するので、液晶パネルの画像更新との同期が正確に行われ、より鮮明な画像を得ることが出来る。
【0051】
(実施形態2)
本実施形態は実施形態1とは異なり、ランプ駆動周波数で始動時間を制御する例である。回路構成は図1と同じで良い。放電ランプの始動には放電ランプに近接する導体(いわゆる近接導体)の影響が大きい。特に高周波を与えて放電ランプを始動させる場合、放電ランプに近接する金属への漏れ電流により始動性が向上するといわれている。
【0052】
図4は、ランプ電流と近接導体への漏れ電流との関係を表す図である。高周波電源であるインバータ回路INVの出力端に放電ランプLampの一端(HV)が接続され、放電ランプLampの残る一端(LV)が金属シャーシGNDに接続されている。インバータ回路INVの電位は金属シャーシGNDを基準としている。また、放電ランプLampに放電電流Iaが生じるとき、放電ランプLampに近接している金属シャーシGNDと放電ランプLampの間にも漏れ電流Isが生じる。このような放電ランプの設置条件において、始動時のランプ電圧を一定として駆動周波数を変更すると、駆動周波数に反比例して始動時間が連続的に変化することが分かった。
【0053】
例えば、放電ランプに高周波電圧1.6[kVp−p]を与えたとき、周波数50[kHz]では1[ms]で放電電流Iaが発生したのに対し、周波数100[kHz]では、0.75[ms]で放電電流Iaが発生する。放電ランプの始動過程では、放電電流Iaが無い状態から放電電流Iaが有る状態へ移行するのであるが、このときの移行時間に漏れ電流Isの影響がある。
【0054】
すなわち、まず漏れ電流Isが流れる箇所について放電路が形成され、高周波のサイクルごとに漏れ電流Isにより形成される放電路が延長されてゆき、最終的に放電管の両端間に放電路が形成されるのである。放電ランプに印加される電圧が同じ条件下では、1サイクルで延長される放電路の長さが略等しく、したがって、電圧交番のサイクルが早いほど放電電流Iaが早く形成されるとも考えられる。また、漏れ電流Isが大きいほど放電電流Iaが早く形成されるとも言える。
【0055】
そこで、発振制御回路OSC1の始動モードIGNのパラメータを変更し、周波数を可変することで始動時間を制御するのである。このようにすれば、定電圧の始動電圧制御でも始動時間を一定にすることが出来る。たとえば主体的に共振系を用いない点灯回路においては、始動時のランプ電圧のピーク値を制御することが困難であるが、周波数を変更することは容易である。
【0056】
本実施形態は周波数の制御によって始動時間を制御する例であるが、漏れ電流を制御するということであれば、別のパラメータでも効果がある。たとえば、放電ランプに印加する電圧波形も制御要素となる。すなわち、ランプ電圧波形の高次成分を制御すれば、周波数を一定にして漏れ電流を変えることが出来、始動時間を変更することが出来る。
【0057】
本実施形態を用いれば、放電ランプの温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現できる。また、始動タイミングが安定するので、液晶パネルの画像更新との同期が正確に行われ、より鮮明な画像を得ることが出来る。
【0058】
(実施形態3)
本発明の実施形態3の放電灯点灯装置の構成を図5に示す。本放電灯点灯装置は、交流商用電源を整流する整流器DBと、整流器出力を昇圧・平滑する力率改善回路PFCと、力率改善回路PFCの直流電圧出力を入力して高周波電圧に変換し放電ランプに供給するインバータ回路INV1〜INV3と、その負荷である放電ランプLamp1〜Lamp3と、インバータ回路INV1〜INV3の出力を制御する発振制御回路OSC1と、発振制御回路OSC1の始動/点灯/待機などの状態を切り替えるタイミングを与える調光器Dimを備えている。
【0059】
また、始動時間フィードバック系として、ランプLamp1〜Lamp3の電気量からそれぞれのランプ始動時間を検知して平均時間を算出する演算器AVGと、演算器AVGの出力と調光器Dimのタイミング信号から放電ランプの始動時間ΔTiを検出するタイマカウンタCNT1と、始動時間の目標値Aimを出力する手段と、タイマカウンタCNT1の出力値であるランプ始動時間ΔTiが始動時間の設定値Aimと等しくなるように、発振制御回路OSC1の始動設定を調整するフィードバックコントローラFB1を備えている。
【0060】
本実施形態は、複数の放電ランプLamp1〜Lamp3の始動時間の平均を算出し、それにより始動時間制御を行うことを特徴としている。液晶表示装置においては液晶パネルへのノイズや放電ランプ間の干渉による光のちらつきを考慮して発振周波数を同一にした点灯が一般的になっている。ところが、複数の放電ランプの始動時間については、放電ランプ毎に異なったものとなってしまう。放電ランプ毎に始動時間の制御を行うのが最も理想的ではあるが、制御回路が複雑化し、コストがかかる。
【0061】
ところで、放電ランプの始動時間の変動要素としては、放電ランプの温度変化が最も影響が大きく、低温から常温にかけて50%近く変化することが分かった。そこで、放電ランプ毎の始動時間を検出し、平均化する演算手段を設けて、全体で制御することで温度変化による始動時間の変動を抑制すれば、始動時間の変動による放電ランプの光出力の変動を効率的に補正できる。
【0062】
平均時間を算出する演算器AVGは、それぞれのランプ始動時間を検知し、平均値を求める動作を行う。演算手法は相加平均が最も簡単であるが、始動時間の最大値を検出してよい。
【0063】
本実施形態によれば、放電ランプの温度変化などによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現できる。また、複数の放電ランプに対して、1つの始動時間フィードバック系を用いるので、コストを低減できる。
【0064】
(実施形態4)
本発明の実施形態4の放電灯点灯装置の構成を図6に示す。本放電灯点灯装置は、高周波電源であるインバータ回路INVの出力端に放電ランプLampの一端(HV)が接続され、放電ランプLampの残る一端(LV)が金属シャーシGNDに接続されている。インバータ回路INVの出力電圧は金属シャーシGNDを基準としている。放電ランプLampと平行に近接導体LE1が配置されている。近接導体LE1は放電ランプLampのガラス管表面に導体を備えた構成であっても良い。
【0065】
本実施形態では、放電ランプLampと近接する導体LE1に生じる漏れ電流を制御する漏れ電流制御手段ZE1を備え、その漏れ電流制御により始動時間を制御することを特徴としている。近接導体LE1は漏れ電流制御手段ZE1を介して金属シャーシGNDヘ接続されている。放電ランプLampに放電電流Iaが生じるとき、放電ランプLampに近接している近接導体LE1と放電ランプLamp間にも漏れ電流Isが生じる。
【0066】
本実施形態では、近接導体LE1の電圧を検出することで、放電ランプLampの始動を検知する。すなわち、放電ランプLampが始動する直前までは漏れ電流Isが最大となるが、始動するとランプ電圧が低下し、漏れ電流Isが減少する。この変化を検知してタイマカウンタCNT1はランプ始動の時間を検知する。調光器Dimはインバータ回路INVとタイマカウンタCNT1に点灯と消灯のタイミング信号を与える。タイマカウンタCNT1は調光器Dimのタイミング信号を基準としてランプ始動の時間を計測する。タイマカウンタCNT1の計測結果は、フィードバックコントローラFB1に入力される。フィードバックコントローラFB1は、タイマカウンタCNT1の計測結果が目標値Aimとなるように漏れ電流制御手段ZE1を制御する。
【0067】
液晶表示装置においては放電ランプを1つのインバータ回路で一度に多数点灯させる構成が一般的になっている。1つのインバータ回路で複数の放電ランプを点灯させることにより、安価で効率よく点灯できるからである。しかし、放電ランプの灯数が増えるほど、個々の始動時間の制御性が低下する傾向にある。その結果、放電ランプの点灯時間にばらつきが生じ、液晶表示装置の輝度むらにつながる。
【0068】
そこで、本実施形態では点灯用のインバータ回路INVと独立して始動時間を制御する手段を備える。すなわち、近接導体LE1、漏れ電流制御手段ZE1により放電ランプLampからの漏れ電流Isを調整する。漏れ電流制御手段ZE1は、インピーダンス素子である。インピーダンス素子としては、トランジスタと抵抗の直列回路が例として挙げられる。また、バリキャップなどのリアクタンス素子であっても良い。
【0069】
たとえば始動時間が目標値Aimに対して短い時間であるならば、漏れ電流制御手段ZE1のインピーダンスを増加させるように制御する。逆に始動時間が目標値Aimに対して長い時間であるならば、漏れ電流制御手段ZE1のインピーダンスを減少させるように制御する。
【0070】
46インチの液晶表示装置用に設計された熱陰極ランプで、放電ランプに導体を幅4[mm]で接着して始動させると、インピーダンス0〜数[MΩ]で始動時間が50[%]程度変化する。
【0071】
(実施形態5)
図7は、始動時間を短縮する手段を備えた実施形態である。図にはインバータ回路INVに接続されたトランスT3の1次巻線W1と、トランスT3の2次巻線W2に接続されたインピーダンスZ3と、近接導体LE1と、漏れ電流制御手段ZE1の直列回路が示されている。そのほかは図6と同じ構成である。
【0072】
近接導体LE1には、インバータ回路INVから放電ランプLampに与えている高周波と同期した電圧がトランスT3ヘ供給される。トランスT3の2次巻線W2の出力は、インピーダンスZ3と漏れ電流制御手段ZE1で分圧された形で近接導体LE1ヘ供給される。近接導体LE1の電位は放電ランプLampの高圧側HVと逆位相となっている。そのため漏れ電流Isが増加し、放電ランプLampの始動が早まる。そして近接導体LE1の電圧レベルを漏れ電流制御手段ZE1で可変すれば始動時間の調整が出来るのである。
【0073】
図7では、インピーダンスZ3を可変手段とすることにより始動時間を調整する例であるが、フィードバックコントローラFB1の制御操作は近接導体LE1の電位レベルの可変であっても良い。たとえばトランスT3への供給電力を制御するスイッチ制御などが考えられる。また漏れ電流は近接導体の電圧位相でも可変できるので、近接導体LE1とランプ高電位側HVの位相差を制御しても良い。
【0074】
放電ランプLampの点灯時には漏れ電流を少なくするように漏れ電流制御手段ZE1は設定される。また、トランスT3への電力供給を遮断する手段を別途設けても良い。そうすれば点灯時はインバータ回路INVから放電ランプLampへ有効に電力が伝わり、輝度のアンバランスやむらが回避できる。特にランプ電流を小さくして点灯させる場合は、漏れ電流の比率が大きいので、漏れ電流制御手段ZE1を切り替えると、ちらつきを回避できる効果がある。
【0075】
なお、放電ランプLampとして直管の蛍光ランプを例示しているが、ランプ形状は何でも良く、曲管や丸管でも良い。蛍光ランプだけでなく、アーク放電領域または負性抵抗特性となる放電ランプであれば、始動時間の安定と電圧低減の効果がある。
【0076】
たとえばHIDランプでは始動電圧と点灯時のランプ電圧との電圧差が非常に大きいので、近接導体による始動時間短縮の効果は大きい。
【0077】
また、漏れ電流制御手段ZE1はランプ個々に設定しても良いが、2灯以上で兼用しても効果は有る。
【0078】
本発明を用いれば、放電ランプの温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現できる。
【0079】
また、始動タイミングが安定するので、液晶表示装置に用いた場合に、液晶パネルの画像更新との同期が正確に行われ、より鮮明な画像を得ることが出来る。
【0080】
(実施形態6)
本実施形態では、放電ランプの調光でフェードインを行う制御について説明する。図8は本実施形態の動作の状態を表す図である。なお、装置の構成は実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0081】
図8には、上から調光器Dimのタイミング信号、始動時間目標値Aim、ランプ電圧Vla、ランプ電流Ilaの時間変化が示されている。
【0082】
時間t1より前には放電ランプは長期間点灯していないものとする。時間t1で調光器Dimが放電ランプLampを始動させるタイミング信号を発生する。これに応じてインバータ回路INVは動作を開始し、放電ランプLampに高周波電圧を印加し始める。このとき放電ランプLampには、高周波電圧Vst1が印加される。
【0083】
時間t1〜t2の期間、ΔTi1で放電ランプLampに電圧が印加されて、放電ランプLampが始動する。時間t2〜t3の期間、ランプ電流Ilaが発生し、放電ランプLampが点灯する。時間t3の時点で調光器Dimは放電ランプLampを消灯させるタイミング信号を発生する。それに応じてインバータ回路INVは放電ランプLampを消灯させる動作に移行し、放電ランプLampは消灯する。
【0084】
時間t3〜t4の期間で始動時間目標値Aimは放電ランプLampの始動時間が短くなるように変更される。時間t4となると再び調光器Dimが放電ランプLampを始動させるタイミング信号を発生する。これに応じてインバータ回路INVは動作を開始し、放電ランプLampに高周波電圧を印加し始める。このとき放電ランプLampには高周波電圧Vst2が印加される。
【0085】
時間t4〜t5の期間ΔTi2で放電ランプLampに電圧が印加されて放電ランプLampが始動する。時間t5〜t6の期間、ランプ電流Ilaが発生し、放電ランプLampが点灯する。時間t6の時点で調光器Dimは放電ランプLampを消灯させるタイミング信号を発生する。それに応じてインバータ回路INVは放電ランプLampを消灯させる動作に移行し、放電ランプLampは消灯する。時間t6〜t7の期間で始動時間目標値Aimは放電ランプLampの始動時間が短くなるように変更される。
【0086】
時間t7からも同様な始動〜点灯動作となる。このとき時間t7〜t8の始動過程では放電ランプLampには高周波電圧Vst3が時間ΔTi3の期間に亘って印加される。このように、始動時間目標値Aimが点滅毎にだんだんと短く変更されてゆき、最終的には定常状態の始動時間となるように設定される。すなわち、ΔTi1>ΔTi2>ΔTi3となっている。始動時間目標値Aimに応じて放電ランプLampの始動時間も徐々に短くなって行くように制御される。
【0087】
蛍光ランプのフェードインを行う場合、パルス点灯を用いると、安定した光出力を得ることが出来る。連続点灯では始動直後から微小な放電電流を安定制御するのが難しく、制御応答遅れのため始動直後の閃光などが発生する問題があるからである。それに比べてパルス点灯では、高速に点灯と消灯を繰り返すので、閃光を感じさせる問題は無い。その特性を利用してこれまでもパルス点灯の始動に関して様々な技術が開発されている。
【0088】
しかし、これまでのパルス点灯では、いつ始動するかはランプの特性に依存するものが多く、フェードイン時の調光レベルの再現性に問題があった。本実施形態では、始動時間を制御することでフェードイン時の調光レベルを制御しているので、始動のタイミングが安定し、始動初期から安定した光出力を得ることが可能である。
【0089】
もう一つの特徴は、初期の始動電圧Vst1を低く設定するところにある。始動電圧が高いと始動した瞬間に閃光が発生しやすく、光出力を低く設定できないからである。本実施形態では、初期の始動時間ΔTi1を最大設定から制御を開始し、初期の閃光を最小限に制御する。最大設定は始動時間の制御可能な値であり、蛍光ランプにおいては数[ms]以下である。
【0090】
本実施形態では、調光器Dimのタイミング信号に応じて点灯時間が設定され、ランプ電流Ilaの発生期間は、調光器Dimのタイミング信号の点灯期間から始動時間目標値Aimを引いた時間となっているが、ランプ点灯を判別する手段を用いて点灯時間を制御しても良い。たとえば点灯時間は点灯直後を基準としてゼロから徐々に増加させ、所望の時間で消灯状態へ移行するように制御すれば、さらに再現性の高いフェードイン調光制御が可能となる。
【0091】
本実施形態によれば、放電ランプの温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現できる。
【0092】
(実施形態7)
本発明の実施形態7の放電灯点灯装置を図9に示す。本放電灯点灯装置は、始動時間を制御する構成などは実施形態1と同じであるが、フィードバックコントローラFB1の出力が状態検出手段DET1に入力されていることが異なる。
【0093】
前述の通り、放電ランプの始動時間は放電ランプの温度により大きく変化する。その時間変動を始動電圧などで補正する制御を行うのであるが、本実施形態では、さらにその電圧変化を利用して、より最適なランプ電力制御を実現するものである。
【0094】
図10は、ある蛍光ランプの始動時間を一定にして制御した場合のランプ印加電圧の変化をグラフにしたものである。グラフには、始動時間一定制御でのランプ印加電圧Vstと周囲温度Taの関係が示されている。すなわち、放電ランプの周囲温度が高いときは低いランプ印加電圧で始動するが、周囲温度が低いと始動に要するランプ印加電圧が増加して行くことが分かる。この温度特性は放電ランプ内に封入された水銀の蒸気圧との関係が深いと思われる。始動時間のフィードバック制御では、始動電圧の変化はフィードバックの制御値に反映されているので、この値を検知することにより放電ランプの状態を推定することが可能である。
【0095】
すなわち、始動電圧が高いとき放電ランプの周囲温度が低いと推定されるので、放電ランプの出力を増加させる制御などを行い、放電ランプの出力光束を補正する制御を行うことが可能である。さらには、ランプ始動電圧は放電ランプの長さで変化することからランプ長(ランプ種別)を判別し、インバータの出力電力を設定変更することも可能である。
【0096】
本実施形態によれば、ランプ温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現し、温度などの影響によらず最適なランプ制御を行える。
【0097】
(実施形態8)
本発明の実施形態8の放電灯点灯装置を図11に示す。本放電灯点灯装置は、始動時間を制御する構成などは実施形態3と同じである。本発明ではランプ始動を検知し、始動時間の差を検知する手段DET2を備え、放電ランプの異常を検知することを特徴としている。
【0098】
放電ランプには寿命がある。寿命の検知は放電ランプの電圧や電流で判定されることが一般的である。さらには始動しない放電ランプを検知する例もある。しかし本発明のように高電圧を印加して短時間に放電ランプを始動させる場合は、放電ランプは寿命に至っても始動することが多い。さらには前述のように放電ランプの周囲温度によって始動時間が変化することもあり、始動時間による検出は難しかった。
【0099】
本発明は複数の放電ランプの始動時間を比較することにより寿命を検知する。すなわち、一方が寿命となって始動時間が長くなれば、双方の始動時間に差が生じるので、これを検知するのである。そうすれば温度による影響をキャンセルできる。
【0100】
図12は動作を示す図である。図には上から、調光器Dimのタイミング信号、放電ランプLamp1、Lamp2の電圧Vla1、Vla2、エラー検出信号ERの時間変化が示されている。
【0101】
時間t1で調光器Dimが放電ランプを始動させるタイミング信号を発生する。これに応じてインバータ回路INVは動作を開始し、放電ランプLamp1とLamp2に高周波電圧を印加し始める。
【0102】
時間t1〜t2の期間で放電ランプLamp1とLamp2に電圧が印加されて放電ランプLamp1とLamp2が始動する。その後、調光器Dimはランプを消灯させるタイミング信号を発生する。それに応じてインバータ回路INVは放電ランプLamp1とLamp2を消灯させる動作に移行し、放電ランプLamp1とLamp2は消灯する。
【0103】
時間t3で再び調光器Dimがランプを始動させるタイミング信号を発生する。これに応じてインバータ回路INVは動作を開始し、放電ランプLamp1とLamp2に高周波電圧を印加し始める。時間t3〜t4の期間で放電ランプLamp1、Lamp2は電圧が印加されて、そのうち放電ランプLamp1が始動する。このとき、放電ランプLamp2は始動せず、さらに始動電圧が印加され続ける。時間t5で放電ランプLamp2は始動する。
【0104】
時間t4とt5の間で検出器DET2が時間をカウントし、そのカウント値が所定値となるとエラー検出器ER1が信号を出力する。エラー検出器ER1の信号出力により点灯装置は安全に放電ランプを点灯するように消灯または電力制限の制御が行われる。
【0105】
蛍光ランプにおいて両側の電極エミッタが枯渇した状態では、正常品と比ベて始動時間が倍程度になることが確認された。また、片側のエミッタのみ枯渇した状態では、始動時間が約1.5倍程度であった。片側エミッタ枯渇では、放電ランプの高電圧側(非接地側電極)のエミッタ枯渇と低圧側(接地側電極)のエミッタ枯渇とで始動時間に差が生じる。すなわち、高電圧側のエミッタ枯渇の方が放電路が形成しにくいことが分かっている。
【0106】
放電ランプの寿命検出の時間設定は、始動時間の比率で規定されるのが良い。例えば、始動時間で20%の時間差が生じれば異常を検知するように設定すれば、ほとんどの異常を検知することが可能である。
【0107】
さらに使用開始初期の放電ランプでの始動パラメータと始動時間の関係を半導体素子(EEPROM)などで記憶し、長期点灯中で記憶値との比較を行いながら放電ランプの寿命を判定するようにすれば、寿命検出の精度を向上できる。
【0108】
本実施形態を用いれば、ランプ温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、放電ランプの安定した点灯を実現し、さらに安全な放電ランプの制御を実現しやすい。
【0109】
(実施形態9)
本発明の実施形態9の放電灯点灯装置を図13に示す。本実施形態は実施形態1と構成が良く似ているが、始動時間のフィードバックコントローラFB1が、発振制御回路OSC1の待機モードSTBのパラメータを制御するところが異なる。フィードバックコントローラFB1が制御する待機状態のパラメータの一つは待機状態のランプ電圧または周波数である。
【0110】
放電ランプが点灯すると、放電管内はイオンの生成・再結合が絶えず行われる状態となっているが、放電ランプの消灯直後からイオンは再結合により減少してゆく。放電ランプにおいて始動の起こり易さは放電管内のイオン状態に左右されるので、イオンが残存する消灯直後に再始動させれば少ない始動エネルギーで点灯に至る。放電ランプを周期的に点滅点灯させる場合、消灯期間にイオンが再結合するが、この間の放電ランプの電気的動作状態によっても再結合速度が変化する。つまり、ランプ放電が消弧した後も放電ランプに高周波電圧を与えているとその電界によりイオンが振動し、再結合しやすくなるのである。
【0111】
例えば、待機状態の放電ランプに印加される高周波電圧を調整することでイオン再結合を促進したり抑えたりすることで、始動時間の制御が可能である。すなわち、待機状態のランプ電圧を低くすることにより、イオン再結合が起こりにくくし、再始動時の時間を短くするのである。逆に再始動時間を長くするにはランプ電圧を高くしたりすれば良い。ただし、ランプ電圧を高くし過ぎると、グロー放電が開始されるので、周波数でイオン再結合の制御をする方が良い場合がある。
【0112】
また、待機状態にインバータ回路を完全に停止させる区間を設けてその時間を可変することにより始動時間を制御することも考えられる。さらに、点灯状態から待機状態に移行する掃引時間も制御パラメータとして考えられる。このイオン再結合を制御する手法は、消灯から再点灯までの期間が比較的短い場合に有効である。
【0113】
待機状態のパラメータのもう一つは、待機状態での放電ランプの微放電レベルである。微放電とは主にグロー放電状態を指す。放電ランプの微放電を維持することで放電ランプの再始動はしやすくなる。すなわち、放電ランプの始動はグロー放電状態からアーク放電状態へ移行して始動となるが、グロー放電状態を維持しておけば始動時間が短縮されるのである。
【0114】
特に高周波点灯におけるグロー放電状態では漏れ電流による分布の差があり、近接導体に対して高電圧の部分から低電圧の部分に向かってグロー放電が伸びてゆくという現象がある。このグロー放電の状態を調整することで再始動時間を制御するのである。すなわち、待機状態のランプ電圧を高くして漏れ電流を多くし、再始動の時間を短くするのである。逆に再始動時間を長くするには待機状態のランプ電圧を低くすれば良い。
【0115】
さらに放電ランプに直流重畳を行ってグロー放電を維持する場合は、ランプ電圧の直流電圧を可変することで始動時間を制御することも考えられる。この微放電レベルを制御する手法は、消灯している期間が長い場合に有効である。
【0116】
本発明を用いれば、ランプ温度変化やランプ配線のばらつき、インバータ出力のばらつきなどによる始動タイミングのずれや長期的な変動を除去し、安定したランプ点灯を実現できる。
【0117】
(実施形態10)
図14は本発明の放電灯点灯装置を用いた液晶表示装置の概略構成を示す分解斜視図である。液晶パネルLCPの背面(直下)にバックライト装置が配置されており、バックライト装置は、筐体22と、この上に設置された反射板23及び複数の放電ランプ1a〜1dと、その上方に設置された拡散板25、プリズムシート等の光学シート26とから構成されている。また、筐体22の背面に放電ランプ1a〜1dを点灯するランプ点灯装置21が設置されている。反射板23は各放電ランプ1a〜1dの照射光を有効に前面に指向させるものである。拡散板25は放電ランプ1a〜1d及び反射板23からの光を拡散させて前面への照明光の明るさ分布を平均化する機能を有する。
【0118】
なお、本発明の放電灯点灯装置の用途は液晶表示装置に限定されるものではなく、一般の照明装置にも搭載できることは言うまでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施形態1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1の動作説明のための波形図である。
【図3】本発明の実施形態1の動作説明図である。
【図4】本発明の実施形態2の説明図であり、ランプ電流と近接導体への漏れ電流との関係を表す図である。
【図5】本発明の実施形態3の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態4の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態5の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態6の動作説明のための波形図である。
【図9】本発明の実施形態7の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態7の動作説明図である。
【図11】本発明の実施形態8の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の実施形態8の動作説明のための波形図である。
【図13】本発明の実施形態9の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の実施形態10の液晶表示装置を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0120】
INV インバータ回路
Lamp 放電ランプ
CNT1 タイマカウンタ
FB1 フィードバックコントローラ
OSC1 発振制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプに高周波電圧を与えるインバータ回路と、
放電ランプを微放電もしくは消灯とする待機状態と安定点灯する点灯状態へ切り替える制御を行うインバータ制御回路と、
待機状態と点灯状態を周期的に切り替えるタイミングを決定するバースト調光回路からなる放電灯点灯装置において、
待機状態から点灯状態となるまでの時間が一定となるようにインバータ制御回路の設定を変更する始動時間制御手段を有することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路の始動電圧設定を操作することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路の始動周波数設定を操作することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路の電圧掃引時間設定を操作することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記始動時間制御手段は、少なくともインバータ回路の待機状態の設定を操作することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1記載の放電灯点灯装置において、放電ランプの発光管から漏れ電流を生じさせる近接導体回路を備え、前記始動時間制御手段は、待機状態からアーク放電で安定点灯する点灯状態となるまでの時間が一定となるように、少なくとも前記近接導体回路の電気特性の変更を行うことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項7】
複数の放電ランプとインバータ回路を備え、複数の放電ランプの始動時間の平均を一定に制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項8】
放電ランプの初期始動において、始動時間を長く設定し、始動とともに徐々に時間を短くすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項9】
始動モードのパラメータを記録する手段を備え、パラメータの変化から放電ランプの状態を判別することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項10】
始動モードのパラメータから放電ランプの寿命を検知することを特徴とする請求項9記載の放電灯点灯装置。
【請求項11】
始動モードのパラメータからランプ温度を検知することを特徴とする請求項9記載の放電灯点灯装置。
【請求項12】
始動モードのパラメータからランプ種別を検知することを特徴とする請求項9記載の放電灯点灯装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の放電灯点灯装置を備えた照明器具。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の放電灯点灯装置を備えた液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−123507(P2010−123507A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298296(P2008−298296)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】