説明

放電灯点灯装置

【課題】インバータトランスの二次側にバラスト素子を設けることなく、管電流の安定化を低コストに実施できる放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る放電灯点灯装置10は、インバータ手段12とインバータトランスTRとを含み、インバータトランスTRの二次巻線16には、例えば冷陰極管等の放電灯Laがバラスト素子を介することなく直接接続されている。また、インバータ手段12にはスイッチング手段13が含まれ、スイッチング手段13とインバータトランスTRの一次巻線14との間には、バラストインピーダンス素子として、インダクタ18が直列に接続されている。インダクタ18は、高電圧が印加されるインバータトランスの二次側ではなく一次側に接続されているため、高耐圧性の素子を使用する必要がなく、部品コストが低減すると共に、装置の安全性が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置に係り、詳しくは、液晶表示装置のバックライト用の光源として用いられる冷陰極管等を点灯する放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置のバックライト用の光源として、例えば冷陰極管等の放電灯が広範に使用されており、一般に、このような放電灯は、インバータを有する放電灯点灯装置によって交流点灯される。このような放電灯点灯装置は、通常、二次側に高電圧を発生させるためのインバータトランスを有し、インバータトランスの一次側には高周波電圧を発生させるインバータ手段が接続され、二次側には、放電灯および負性抵抗特性を有する放電灯の管電流を安定化するためのいわゆるバラスト素子、例えばバラストコンデンサが接続されている。このような回路構成では、放電灯の点灯に必要な管電圧を得るために、放電灯に直列に接続されたバラストコンデンサの電圧降下分を含めた出力電圧を二次側に発生させる必要があり、インバータトランスの形状が大きくなる結果、機器の小型化を妨げていた。このため、インバータトランスの一次側に低圧定電流源を設け、この低圧定電流源から電力を供給することによって、バラストコンデンサを削除することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載の冷陰極管点灯装置の回路構成図である。この冷陰極管点灯装置は、インバータトランス1、トランジスタ2、3、抵抗4、5、コンデンサ6、およびチョークコイル7からなる電圧共振型ロイヤー回路と、低圧定電流源9とを備えており、インバータトランス1の二次側には冷陰極管8が直接接続されている。この冷陰極管点灯装置は、定電流源9からインバータトランス1に電力を供給することによって、インバータトランス1の二次側にバラストコンデンサを接続することなく、管電流を一定に維持するものである。
【特許文献1】特許第3256992号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、液晶ディスプレイのバックライトとして用いられる放電灯点灯装置の電源には、液晶ドライブ回路等と共通の定電圧電源が用いられるれるため、放電灯点灯装置に定電流源を使用することは、液晶ディスプレイ装置に新たな構成要素を追加することを意味し、装置全体としてのコストが増大する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、インバータトランスの二次側にバラスト素子を設けることなく、管電流の安定化を低コストに実施できる放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、高周波電圧を出力するインバータ手段とインバータトランスとを含み、該インバータトランスの一次側に接続された前記インバータ手段によって、前記インバータトランスの二次側に接続された放電灯を点灯する放電灯点灯装置において、前記インバータ手段はスイッチング手段を含み、該スイッチング手段と前記インバータトランスの一次巻線との間には、バラストインピーダンス素子が直列に接続されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記バラストインピーダンス素子は、抵抗、コンデンサ、インダクタのいずれか、あるいは、それらの組合せで構成されることを特徴とする。
【0008】
また、前記スイッチング手段はフルブリッジ回路にて構成され、該フルブリッジ回路は他励発振により駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る放電灯点灯装置によれば、バラストインピーダンス素子をスイッチング手段とインバータトランスの一次巻線との間に直列に接続することにより、二次側にバラスト素子を接続せずに管電流を安定化できる放電灯点灯装置を、従来の構成から部品点数を増大させることなく実現することができる。また、本発明において、バラストインピーダンス素子は、高電圧が印加されるインバータトランスの二次側ではなく一次側に接続されているため、高耐圧性の素子を使用する必要がなく、部品コストが低減すると共に、素子の絶縁破壊による故障や発火の危険性がなくなり、装置の安全性が増大する。また、インバータトランスの二次側に、放電灯に直列にバラスト素子を接続する必要がないため、インバータトランスの出力電力を低く抑えることができる。さらに、トランスの二次側に巻線間短絡(いわゆるレアショート)が発生した場合でも、一次側のバラストインピーダンス素子により巻線に流れる過電流を抑制し、インバータトランスの発煙や発火を防止することができる。
【0010】
特に、バラストインピーダンス素子としてインダクタを使用した場合、そのインダクタンスを二次側に接続する場合よりも小さくすることができるため、バラストインピーダンス素子を小型化することが可能となる。また、一次側のインダクタによって高次の高調波成分が抑制されるため、インバータトランスに印加される入力波形からノイズを除去することができ、高調波成分によるトランスの発熱が抑制されるため、全体としてトランスの発熱が低減する。
【0011】
また、インバータ手段を他励型とすることによって、一次側の共振周波数に与える影響を考慮することなく、任意の適切なインビーダンスを有する素子を本発明に係るバラストインピーダンス素子として選択することができる。特に、スイッチング手段をフルブリッジ回路とすることによって、高効率の作動が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る放電灯点灯装置の一実施形態を、図面を参照して詳述する。図1は、本発明に係る放電灯点灯装置の一実施形態を示す回路構成図である。図1において、放電灯点灯装置10は、インバータ手段12とインバータトランスTRとを含み、インバータトランスTRの二次巻線16には、例えば冷陰極管等の放電灯Laがバラスト素子を介することなく直接接続されている。また、インバータ手段12にはスイッチング手段13が含まれ、スイッチング手段13とインバータトランスTRの一次巻線14との間には、本実施形態におけるバラストインピーダンス素子として、インダクタ18が直列に接続されている。
【0013】
本実施形態において、インバータ手段12は、スイッチング手段13であるフルブリッジ回路と、このフルブリッジ回路13を駆動する制御回路21を含んでいる。フルブリッジ回路13は、図2に示すように、直列に接続された1組のスイッチング素子Q1、Q3と、同様に直列に接続された1組のスイッチング素子Q2、Q4とを並列に接続してなり、例えば、スイッチング素子Q3、Q4はNMOSFET、スイッチング素子Q1、Q2はPMOSFETから構成される。インバータ手段12は、制御回路21から出力されるゲート電圧に従って、スイッチング素子の組(Q1,Q4)と(Q2,Q3)のオン・オフを所定の周波数(例えば60kHz程度)で交互に繰返し、出力端子A、Bに高周波電圧を発生させるものである。
【0014】
また、図1に示す放電灯点灯装置10は、上述した構成要素に加えて、調光回路22、電流検知回路23、保護回路24を含んでいる。本発明に係る放電灯点灯装置は、これらの回路22〜24の有無に限定されるものではないが、各回路22〜24の機能を簡単に説明すれば、次のようなものである。まず、電流検知回路23は、カレントトランス25によって検知された電流値に応じた適切な信号を生成して制御回路21に出力し、それによって、制御回路21は、例えばインバータ手段12に含まれるスイッチング素子Q1〜Q4のオンデューティを変動させ、インバータトランスTRに投入される電力を調整するものである。保護回路24は、インバータトランスTRの三次巻線26によって検知された電圧に応じた適切な信号を生成して制御回路21に出力し、それによって、制御回路21は、例えば放電灯Laのオープンやショート等の異常が検出された場合にインバータ手段21の動作を停止させ、装置を保護するものである。また、調光回路22は、例えばバースト調光により放電等Laの輝度を調整するための信号を制御回路21に出力するものであり、これによって、制御回路21は、例えば150〜300Hz程度の周波数でインバータ手段12を間欠的に動作させることによって、放電灯Laの平均的な輝度を調整するものである。図示の例では、電流検出回路23はカレントトランス25によって電流を検知しているが、放電灯Laの管電流を検知してもよい。
【0015】
本実施形態における放電灯点灯装置10は、インバータトランスTRの一次側にインダクタ18を備え、このインダクタ18がバラストインピーダンス素子として機能することによって、放電灯Laの管電流の安定化を実現するものである。すなわち、何らかの原因で管電流(以下、二次側電流ともいう)が増大した場合、インバータトランスTRの一次巻線14を流れる電流(以下、一次側電流ともいう)も増大するが、インバータ手段12によって印加される電圧は一定であるため、インダクタ18のインピーダンスは、一次側電流を減少させてその降下電圧を低下させるように作用し、結果として二次側の管電流の増大が抑制される。同様に、管電流が減少すると一次側電流も減少するが、この際、インダクタ18のインピーダンスは、一次側電流を増大させてその降下電圧を上昇させるように作用し、結果として二次側の管電流の減少が抑制される。ここで、インバータトランスTRの巻線比(2次巻線の巻数/1次巻線の巻数)をnとし、放電灯Laの等価負荷抵抗をRとすれば、インバータトランスTRの1次側から見た負荷インピーダンスはR/n2となるため、バラストインピーダンス素子に必要なインピーダンスは、R/n2もよりも十分大きければ良い。
【0016】
本発明は、使用するインピーダンス素子の種類に限定されるものではなく、本発明に係るバラストインピーダンス素子として、抵抗、コンデンサ、インダクタ、またはそれらの組合せのいずれも使用することができるが、好ましくは、本実施形態におけるバラストインピーダンス素子のように、インダクタまたはインダクタを含む組合せを使用するものである。本発明に係る放電灯点灯装置では、バラストインピーダンス素子をインバータトランスの一次側に接続するため高耐圧の素子を使用する必要性がなく、したがって、抵抗に比べて電力損失の少ないインダクタを、高耐圧性のインダクタは形状が大きくなるという従来の欠点を克服しつつ、バラスト素子として有利に使用することができる。加えて、上述したように、インバータトランスの一次側から見た負荷インピーダンスは1/n2程度に小さくなるため、本実施形態における放電灯点灯装置10では、バラスト素子として同様の作用を有するインダクタを二次側に接続する場合に比べて、その自己インダクタンスをL/n2程度に小さくすることができ、さらに素子を小型化することが可能となる。例えば、放電灯点灯装置10において、インバータトランスTRの巻線比nを100とし、インダクタ18の自己インダクタンスLを30μH程度とすれば、自己インダクタンスLが300mH程度のインダクタをバラスト素子として二次側に接続した場合と同様の機能を発揮するものとなる。
【0017】
なお、図6に示す回路構成のように、従来の放電灯点灯装置においても、そのインバータトランス1の一次側にはチョークコイル7が含まれているが、このチョークコイル7は、本発明に係るバラストインピーダンス素子とは異なり、トランジスタ2、3により構成されるスイッチング手段と直流電源9との間に接続され、例えばインバータトランス1の磁気飽和等によって瞬時的に過電流が流れる場合にのみインピーダンス素子として機能して、トランジスタ2、3等の破損を防護するために設けられているものであり、スイッチング手段により発生する高周波電圧を分圧して管電流を安定化させるバラスト素子としては機能しないものである。
【0018】
また、本実施形態において、インダクタ18は、ローパスフィルタとして機能するため、インバータ手段12の出力電圧の高調波成分をカットして、インバータトランスTRの一次巻線14に印加される電圧波形をほぼ正弦波状とすることができる。これによって、インバータトランスTRからノイズが除去されると共に、高調波成分によるインバータトランスTRの発熱が抑制される。
【0019】
次に、一次側にバラストインピーダンス素子を接続することの利点の一つとして、インバータトランスTRの二次側に巻線間短絡(いわゆるレアショート)が発生した場合の動作について説明する。インバータトランスの二次側にレアショートが発生した場合、二次側回路は、放電灯およびバラスト素子のインピーダンスとは無関係に、二次巻線のショート部分の抵抗Rsが二次側に接続された状態になるため、従来の放電灯点灯装置では、インバータトランスに過大な電流が流れ、その発煙や発火の要因となる。このとき、インバータトランスの一次側の電圧をVp、レアショートによる負荷抵抗を一次側から見た抵抗値をRpとすれば、ショート部分での電力損失は、
P=Vp2/Rp
で表される。しかし、本実施形態における放電灯点灯装置10では、一次側にバラストインピーダンス素子(この場合にはインダクタ)18を備えているため、ショート部分での損失Pは、
P=Rp・Vp2/((ωL)2+Rp2
となり(ただし、Lはインダクタ18の自己インダクタンス)、インダクタ18のインピーダンスによって、電力損失すなわち過電流による発熱が抑制されることが分かる。
【0020】
本実施形態における放電灯点灯装置10は、そのインバータ手段12が、フルブリッジ回路13と制御回路21からなる高効率の他励型回路にて構成され、フルブリッジ回路13は、制御回路21によって所定の周波数で駆動される。したがって、例えば、図6に示すような、インバータトランス1の一次側に設けられたLC共振回路の共振周波数によってインバータ手段の駆動周波数が決定されるロイヤー回路の場合とは異なり、一次側の共振周波数に対する影響を考慮することなく、バラストとして適切な任意のインピーダンスを有する素子を一次側に接続することができる。
【0021】
以下、図3〜図5を参照して、本発明の別の実施形態について説明するが、以下の説明を通じて、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、またその説明は適宜省略して相違点のみを説明する。
【0022】
図3は、本発明に係る放電灯点灯装置の第2の実施形態を示す回路構成図である。本実施形態における放電灯点灯装置30は、上述した第1の実施形態における放電灯点灯装置10とほぼ同様のものであるが、インバータ手段12とインバータトランスTRの一次巻線14との間に接続されるバラストインピーダンス素子として、コンデンサ34とインダクタ33からなる直列回路32が接続されている点で、相違するものである。
【0023】
本実施形態における放電灯点灯装置30は、上述した第1の実施形態における放電灯点灯装置10と同様の作用・効果に加えて、次のような作用を有するものである。例えば、図4に示すように、インバータ手段12の出力波形に、一方向の電圧がV、他方向の電圧がV+ΔVであるような非対称性が存在する場合、その出力電圧には、平均してΔV’(但し、ΔV’はΔVの時間平均)の直流電圧が重畳されることになる。このため、バラストインピーダンス素子がインダクタ32のみであると、インバータトランスTRに大きな直流電流が重畳されて、磁気飽和や効率の低下の原因となる。この際、放電灯点灯装置30では、そのバラストインピーダンス素子に、インバータ手段12に直列に接続されたコンデンサ34を付加することによって、非対称な電圧波形の直流成分をカットし、インバータトランスTRの一次巻線14に印加される電圧の対称性を改善するものである。
【0024】
図5は、本発明に係る放電灯点灯装置の第3の実施形態を示す回路構成図である。本実施形態における放電灯点灯装置40は、上述した第1の実施形態における放電灯点灯装置10とほぼ同様のものであるが、インバータトランスTRの一次巻線14に並列にコンデンサ42が接続されている点で、相違するものである。
【0025】
本実施形態における放電灯点灯装置40は、上述した第1の実施形態における放電灯点灯装置10と同様の作用・効果に加えて、次のような作用を有するものである。すなわち、放電灯と液晶表示装置との間の寄生容量によってインバータトランスTRの二次側に共振回路が形成されることにより、インバータ手段12の所定の駆動周波数に対して管電流が安定しない場合、本実施形態における放電灯点灯装置40のように、適切な容量を有するコンデンサ42をインバータトランスの一次巻線14に並列に接続することによって、二次側共振回路の共振周波数を調整し、管電流を安定化させることができる。また、インダクタ43とコンデンサ44との組合せによって、インバータ手段12の出力電圧の高調波成分をより効果的にカットして、インバータトランスTRの一次巻線14に印加される電圧波形をほぼ正弦波状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る放電灯点灯装置の第1の実施形態を示す回路構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における放電等点灯装置のインバータ手段を示す回路構成図である。
【図3】本発明に係る放電灯点灯装置の第2の実施形態を示す回路構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態において、インバータ手段による非対称な電圧波形を模式的に示すグラフである。
【図5】本発明に係る放電灯点灯装置の第3の実施形態を示す回路構成図である。
【図6】従来の放電灯点灯装置を示す回路構成図である。
【符号の説明】
【0027】
10,30,40:放電灯点灯装置、12:インバータ手段、スイッチング手段(フルブリッジ回路):13、バラストインピーダンス素子:18,32,43、インバータトランス:TR、放電灯:La


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電圧を出力するインバータ手段とインバータトランスとを含み、該インバータトランスの一次側に接続された前記インバータ手段によって、前記インバータトランスの二次側に接続された放電灯を点灯する放電灯点灯装置において、
前記インバータ手段はスイッチング手段を含み、該スイッチング手段と前記インバータトランスの一次巻線との間には、バラストインピーダンス素子が直列に接続されていることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記バラストインピーダンス素子は、抵抗、コンデンサ、インダクタのいずれか、あるいは、それらの組合せで構成されることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記スイッチング手段はフルブリッジ回路にて構成され、該フルブリッジ回路は、他励発振により駆動されることを特徴とする請求項1または2に記載の放電灯点灯装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−41249(P2008−41249A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312343(P2004−312343)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】