放電装置
【課題】放電装置において、安定した放電を長時間行えるようにする。
【解決手段】放電装置は、第1電極(210)と、第1電極と対向するように離間して配置される第2電極(220)と、第1電極の少なくとも第2電極と対向する放電面を覆うと共に、放電面において第1電極を部分的に露出させる開口部(310)を有する絶縁体(320)と、第1電極及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加手段(100)とを備える。
【解決手段】放電装置は、第1電極(210)と、第1電極と対向するように離間して配置される第2電極(220)と、第1電極の少なくとも第2電極と対向する放電面を覆うと共に、放電面において第1電極を部分的に露出させる開口部(310)を有する絶縁体(320)と、第1電極及び第2電極間に電圧を印加する電圧印加手段(100)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電空間において放電を行うことで、例えばオゾンの発生や各種ガス処理を行う放電装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の放電装置として、例えば対向するように配置された2つの電極間に電圧を印加することで放電を行うものがある。このような装置では、放電が発生する条件となる高電界を形成するために、少なくとも一方の電極が細線や針のような鋭利な形状とされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した鋭利な形状の電極は、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。電極が破損してしまうと、電極間の距離が変化すること等によって、正常な放電を行うことができなくなる。従って、上述した技術には、安定した放電を長時間行うことが困難であるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、安定した放電を長時間行うことが可能な放電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放電装置は上記課題を解決するために、第1電極と、前記第1電極と対向するように離間して配置される第2電極と、前記第1電極の少なくとも前記第2電極と対向する放電面を覆うと共に、前記放電面において前記第1電極を部分的に露出させる開口部を有する絶縁体と、前記第1電極及び前記第2電極間に電圧を印加する電圧印加手段とを備える。
【0007】
本発明の放電装置によれば、その動作時には、例えばパルス電源等の電圧印加手段より、互いに離間して配置される第1電極及び第2電極間に電圧が印加される。これにより、第1電極及び第2電極間において放電が生じる。
【0008】
第1電極及び第2電極間の放電空間には、例えば酸素ボンベや酸素タンク等の貯留手段から、供給系統(配管、シーリング、減圧弁及び流量調整弁等)を適宜介して酸素を含む原料ガスが供給される。このように構成すれば、原料ガスに含まれる酸素(O2)から、一種の活性酸素であるオゾン(O3)が生成することができる。尚、本発明の放電装置によって行われる放電は、上述したオゾン生成以外にも、例えば燃焼ガスや排出ガス中のNOx、SO2、CO2の処理、フロンガス等の有害物質の分解等に応用できる。
【0009】
ここで本発明では特に、第1電極は、第2電極と対向する放電面を絶縁体によって覆われている。そして、絶縁体には、放電面において第1電極を部分的に露出させるための開口部を有している。このため、第1電極及び第2電極間の放電は、絶縁体における開口部を介して行われることとなる。
【0010】
放電を発生させるためには、第1電極及び第2電極間に高電界を形成することが求められる。このため、第1電極の形状は、細線や針のような鋭利な形状とされることが多い。しかしながら、第1電極を鋭利な形状とした場合、第1電極は、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。よって、安定した放電を長時間行うことが困難である。
【0011】
しかるに本発明では、上述したように、第1電極は、放電面において絶縁体の開口部から部分的に露出するように構成されている。このため、第1電極における絶縁体の開口部を介して露出する部分は、模擬的に鋭利な形状の電極となる。即ち、第1電極自体を鋭利な形状とせずとも、絶縁膜の開口部によって模擬的に鋭利な形状の電極となる。
【0012】
以上の結果、本実施形態の放電装置は、第1電極及び第2電極間に好適に高電界を形成でき、確実に放電を発生させることが可能であると共に、長時間の放電においても電極が消耗することがない。従って、第1電極が消耗や破損することにより、放電を行えなくなってしまうことを防止することができる。
【0013】
尚、絶縁体における開口部の形状は、装置の使用に合わせて様々な態様をとることが可能であるが、開口部の面積は、上述したように、第1電極を模擬的に鋭利な形状の電極とみなせるまでに小さいものとされる。開口部の面積、電圧印加手段によって印加される電圧、第1電極及び第2電極間の距離等をそれぞれ調整することによって、より好適な放電を実現することができる。
【0014】
以上説明したように、本発明の放電装置によれば、安定した放電を長時間行うことが可能である。
【0015】
本発明の放電装置の一態様では、前記開口部は、線状である。
【0016】
この態様によれば、絶縁体における開口部が線状とされるため、開口部から露出される第1電極を模擬的に鋭利な形状の電極とすることができる。開口部は、例えば0.1mm程度の幅になるように形成される。
【0017】
上述した開口部が線状である態様では、前記開口部は、前記線状の延びる方向と交わる方向に複数配列されてもよい。
【0018】
このように構成すれば、開口部は、線状の延びる方向と交わる方向に配列されるため、限られたスペースにおいて、複数の開口部を効率的に配置することができる。開口部の配置される間隔は、例えば電圧印加手段によって印加される電圧等に応じて適宜調整される。
【0019】
本発明の放電装置の他の態様では、前記開口部は、点状である。
【0020】
この態様によれば、絶縁体における開口部が点状とされるため、開口部から露出される第1電極を模擬的に鋭利な形状の電極とすることができる。開口部は、例えば直径が0.1mm程度になるように形成される。
【0021】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る放電装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。
【図3】図2のA−A’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図4】比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その1)である。
【図5】図4のB−B’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図6】比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その1)である。
【図7】第1実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【図8】第2実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。
【図9】図8のC−C’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図10】比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その2)である。
【図11】図10のD−D’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図12】比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その2)である。
【図13】第2実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0024】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る放電装置の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る放電装置の全体構成を示すブロック図である。
【0025】
図1において、本実施形態に係る放電装置は、ナノパルス電源100と、放電反応器200とを備えて構成されている。
【0026】
ナノパルス電源100は、本発明の「電圧印加手段」の一例であり、後述する放電反応器200における第1電極210及び第2電極220間にパルス電圧を印加可能に構成されている。ナノパルス電源100は、例えば家庭用100V電源、工業用200V電源、可搬型バッテリ或いは車載用バッテリ等に昇圧回路等の付帯回路を適宜接続してなる電源装置等に電気的に接続されている。
【0027】
放電反応器200は、パルス電源100を介して印加されるパルス電圧により、所定の放電空間に放電を生じるように構成されている。具体的には、放電反応器200は、互いに離間されて配置される第1電極210及び第2電極220を有している。第1電極210及び第2電極200は、金属等を含んでなる電極であり、放電空間を形成している。
【0028】
放電反応器200は、例えば、放電の作用により放電空間内で原料ガスからオゾンを生成できるような構成となっている。より具体的には、本実施形態に係る放電装置は、例えば車両に搭載され、排気浄化に供されるものとして利用される場合がある。この場合、放電反応器200には、車両のボディに形成された外気導入口と接続される外気導入管、この外気導入管に設置されたガスコンプレッサ等から原料ガスである外気(空気)が供給される。
【0029】
また、本実施形態に係る放電装置は、上述した用途以外にも多様な用途に適用可能である。この際、その適用用途に応じて放電装置の構成は変化してよい。例えば、放電装置が移動体でなく各種施設に設置される構成を採る場合、酸素ボンベや酸素タンク等、比較的高濃度の酸素ガスを貯留する然るべき貯留手段を含む構成、或いは当該貯留手段から放電反応器200へ酸素ガスを供給可能な構成を有していてもよい。より具体的には、ガス配管、減圧弁、圧力調整弁、流量調整弁及び気密を保ちつつこれらを適宜に連結する各種連結部材等を備える構成を採ってもよい。
【0030】
次に、第1実施形態に係る放電装置の電極部の具体的な構成について、図2及び図3を参照して説明する。ここに図2は、第1実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。また図3は、図2のA−A’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【0031】
図2及び図3において、本実施形態に係る放電装置の第1電極210は、周囲を絶縁体300によって被覆された構造となっている。そして特に、絶縁体310には、第1電極210を部分的に露出させるための開口部310が形成されている。このため、第1電極210は、開口部310を介して、第2電極220と対向することになる。一方で、第2電極220は、第1電極210と対向しない面に絶縁体320が配置されている。
【0032】
開口部310は、図に示すように線状とされており、第1電極210における第2電極220と対向する面(即ち、放電が行われる放電面)に複数配列されている。開口部310の幅(即ち、図2における左右方向の長さ)は、例えば0.1mm程度とされる。
【0033】
上述したような構成によれば、第1電極210における絶縁体300の開口部310を介して露出する部分は、模擬的に鋭利な形状の電極となる。即ち、細い線状の電極が複数配列されたものとみなすことができる。
【0034】
放電反応器200(図1参照)において放電を発生させるためには、第1電極210及び第2電極220間に高電界を形成することが求められる。本実施形態に係る放電装置によれば、上述したように、第1電極210が模擬的に鋭利な形状の電極とされるため、好適に放電を発生させることが可能となる。
【0035】
次に、第1実施形態に係る放電装置の効果について、図4から図7を参照して説明する。ここに図4は、比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その1)であり、図5は、図4のB−B’線断面を第2電極と共に示す断面図である。また図6は、比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その1)であり、図7は、第1実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【0036】
図4及び図5において、第1電極210が、細い線状の電極を複数配列して構成された場合を考える。即ち、上述した本実施形態に係る第1電極210のように、絶縁体300の開口部310から第1電極210露出されるものとは異なり、第1電極210自体が線状に形成されている場合を考える。
【0037】
このような放電装置では、鋭利な形状とされた第1電極210が、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。よって、安定した放電を長時間行うことが困難である。
【0038】
図6において、本願発明者の研究によれば、図4及び図5で示されるような放電装置で連続して放電を行った場合、9.2時間が経過した時点でアーク放電に移行し、その後、放電が停止してしまうという結果が得られている。従って、比較例に係る放電装置では、実際に長時間安定した放電を行うことはできない。尚、図6における電力は、放電によって電流が流れていることを示すものである。
【0039】
図7において、本実施形態に係る放電装置によれば、上述した比較例に係る放電装置とは異なり、20時間連続して放電した場合であっても、安定した放電を行うことができるという結果が得られている。これは、第1電極210が、実際には鋭利な形状とはされておらず、絶縁体300の開口部310によって、模擬的に鋭利な形状とされているからである。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態に係る放電装置によれば、安定した放電を長時間行うことが可能である。
【0041】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る放電装置について説明する。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、第1電極の構成が一部異なり、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0042】
先ず、第2実施形態に係る放電装置の電極部の具体的な構成について、図8及び図9を参照して説明する。ここに図8は、第2実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。また図9は、図2のC−C’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【0043】
図8及び図9において、第2実施形態に係る放電装置の第1電極210は、第1実施形態と同様に、周囲を絶縁体300によって被覆された構造となっており、絶縁体310には、第1電極210を部分的に露出させるための開口部310が形成されている。このため、第1電極210は、開口部310を介して、第2電極220と対向することになる。一方で、第2電極220は、第1電極210と対向しない面に絶縁体320が配置されている。
【0044】
開口部310は、図に示すように点状とされており、第1電極210における第2電極220と対向する面(即ち、放電が行われる放電面)に複数配列されている。開口部310の直径は、例えば0.1mm程度とされる。
【0045】
上述したような構成によれば、第1電極210における絶縁体300の開口部310を介して露出する部分は、模擬的に鋭利な形状の電極となる。即ち、小さな点状の電極が複数配列されたものとみなすことができる。従って、第2実施形態に係る放電装置によれば、好適に放電を発生させることが可能となる。
【0046】
次に、第2実施形態に係る放電装置の効果について、図10から図13を参照して説明する。ここに図10は、比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その2)であり、図11は、図10のD−D’線断面を第2電極と共に示す断面図である。また図12は、比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その2)であり、図13は、第2実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【0047】
図10及び図11において、第1電極210が、小さな針状の電極を複数配列して構成された場合を考える。即ち、上述した第2実施形態に係る第1電極210のように、絶縁体300の開口部310から第1電極210露出されるものとは異なり、第1電極210自体が鋭利な形状に形成されている場合を考える。
【0048】
このような放電装置では、鋭利な形状とされた第1電極210が、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。よって、安定した放電を長時間行うことが困難である。
【0049】
図12において、本願発明者の研究によれば、図10及び図11で示されるような放電装置で連続して放電を行った場合、先ず放電開始と共に、第1電極210先端の消耗によって、第1電極210及び第2電極220間の距離が伸長され、徐々に電力が低下することが判明している。更に、放電時間が20時間に近づくと、放電が間欠的で不安定になり(図中の破線部分)、20時間経過した時点で放電が停止してしまうという結果が得られている。従って、比較例に係る放電装置では、実際に長時間安定した放電を行うことはできない。
【0050】
図13において、第2実施形態に係る放電装置によれば、上述した比較例に係る放電装置とは異なり、100時間連続して放電した場合であっても、安定した放電を行うことができるという結果が得られている。これは、第1電極210が、実際には鋭利な形状とはされておらず、絶縁体300の開口部310によって、模擬的に鋭利な形状とされているからである。
【0051】
以上説明したように、第2実施形態に係る放電装置によれば、第1実施形態と同様に、安定した放電を長時間行うことが可能である。
【0052】
尚、上述した第1及び第2実施形態では、絶縁体300における開口部310が、線状である場合及び点状である場合について説明したが、開口部310の形状は、第1電極210を模擬的に鋭利な形状とできるものである限り様々な態様をとり得る。また、開口部の大きさや数、配列、位置等についても、装置の使用に応じて適宜設定することが可能である。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う放電装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
100…ナノパルス電源、200…放電反応器、210…第1電極、220…第2電極、300…絶縁体、310…開口部、320…絶縁体
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電空間において放電を行うことで、例えばオゾンの発生や各種ガス処理を行う放電装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の放電装置として、例えば対向するように配置された2つの電極間に電圧を印加することで放電を行うものがある。このような装置では、放電が発生する条件となる高電界を形成するために、少なくとも一方の電極が細線や針のような鋭利な形状とされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した鋭利な形状の電極は、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。電極が破損してしまうと、電極間の距離が変化すること等によって、正常な放電を行うことができなくなる。従って、上述した技術には、安定した放電を長時間行うことが困難であるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、安定した放電を長時間行うことが可能な放電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放電装置は上記課題を解決するために、第1電極と、前記第1電極と対向するように離間して配置される第2電極と、前記第1電極の少なくとも前記第2電極と対向する放電面を覆うと共に、前記放電面において前記第1電極を部分的に露出させる開口部を有する絶縁体と、前記第1電極及び前記第2電極間に電圧を印加する電圧印加手段とを備える。
【0007】
本発明の放電装置によれば、その動作時には、例えばパルス電源等の電圧印加手段より、互いに離間して配置される第1電極及び第2電極間に電圧が印加される。これにより、第1電極及び第2電極間において放電が生じる。
【0008】
第1電極及び第2電極間の放電空間には、例えば酸素ボンベや酸素タンク等の貯留手段から、供給系統(配管、シーリング、減圧弁及び流量調整弁等)を適宜介して酸素を含む原料ガスが供給される。このように構成すれば、原料ガスに含まれる酸素(O2)から、一種の活性酸素であるオゾン(O3)が生成することができる。尚、本発明の放電装置によって行われる放電は、上述したオゾン生成以外にも、例えば燃焼ガスや排出ガス中のNOx、SO2、CO2の処理、フロンガス等の有害物質の分解等に応用できる。
【0009】
ここで本発明では特に、第1電極は、第2電極と対向する放電面を絶縁体によって覆われている。そして、絶縁体には、放電面において第1電極を部分的に露出させるための開口部を有している。このため、第1電極及び第2電極間の放電は、絶縁体における開口部を介して行われることとなる。
【0010】
放電を発生させるためには、第1電極及び第2電極間に高電界を形成することが求められる。このため、第1電極の形状は、細線や針のような鋭利な形状とされることが多い。しかしながら、第1電極を鋭利な形状とした場合、第1電極は、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。よって、安定した放電を長時間行うことが困難である。
【0011】
しかるに本発明では、上述したように、第1電極は、放電面において絶縁体の開口部から部分的に露出するように構成されている。このため、第1電極における絶縁体の開口部を介して露出する部分は、模擬的に鋭利な形状の電極となる。即ち、第1電極自体を鋭利な形状とせずとも、絶縁膜の開口部によって模擬的に鋭利な形状の電極となる。
【0012】
以上の結果、本実施形態の放電装置は、第1電極及び第2電極間に好適に高電界を形成でき、確実に放電を発生させることが可能であると共に、長時間の放電においても電極が消耗することがない。従って、第1電極が消耗や破損することにより、放電を行えなくなってしまうことを防止することができる。
【0013】
尚、絶縁体における開口部の形状は、装置の使用に合わせて様々な態様をとることが可能であるが、開口部の面積は、上述したように、第1電極を模擬的に鋭利な形状の電極とみなせるまでに小さいものとされる。開口部の面積、電圧印加手段によって印加される電圧、第1電極及び第2電極間の距離等をそれぞれ調整することによって、より好適な放電を実現することができる。
【0014】
以上説明したように、本発明の放電装置によれば、安定した放電を長時間行うことが可能である。
【0015】
本発明の放電装置の一態様では、前記開口部は、線状である。
【0016】
この態様によれば、絶縁体における開口部が線状とされるため、開口部から露出される第1電極を模擬的に鋭利な形状の電極とすることができる。開口部は、例えば0.1mm程度の幅になるように形成される。
【0017】
上述した開口部が線状である態様では、前記開口部は、前記線状の延びる方向と交わる方向に複数配列されてもよい。
【0018】
このように構成すれば、開口部は、線状の延びる方向と交わる方向に配列されるため、限られたスペースにおいて、複数の開口部を効率的に配置することができる。開口部の配置される間隔は、例えば電圧印加手段によって印加される電圧等に応じて適宜調整される。
【0019】
本発明の放電装置の他の態様では、前記開口部は、点状である。
【0020】
この態様によれば、絶縁体における開口部が点状とされるため、開口部から露出される第1電極を模擬的に鋭利な形状の電極とすることができる。開口部は、例えば直径が0.1mm程度になるように形成される。
【0021】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る放電装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。
【図3】図2のA−A’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図4】比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その1)である。
【図5】図4のB−B’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図6】比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その1)である。
【図7】第1実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【図8】第2実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。
【図9】図8のC−C’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図10】比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その2)である。
【図11】図10のD−D’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【図12】比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その2)である。
【図13】第2実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0024】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る放電装置の全体構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る放電装置の全体構成を示すブロック図である。
【0025】
図1において、本実施形態に係る放電装置は、ナノパルス電源100と、放電反応器200とを備えて構成されている。
【0026】
ナノパルス電源100は、本発明の「電圧印加手段」の一例であり、後述する放電反応器200における第1電極210及び第2電極220間にパルス電圧を印加可能に構成されている。ナノパルス電源100は、例えば家庭用100V電源、工業用200V電源、可搬型バッテリ或いは車載用バッテリ等に昇圧回路等の付帯回路を適宜接続してなる電源装置等に電気的に接続されている。
【0027】
放電反応器200は、パルス電源100を介して印加されるパルス電圧により、所定の放電空間に放電を生じるように構成されている。具体的には、放電反応器200は、互いに離間されて配置される第1電極210及び第2電極220を有している。第1電極210及び第2電極200は、金属等を含んでなる電極であり、放電空間を形成している。
【0028】
放電反応器200は、例えば、放電の作用により放電空間内で原料ガスからオゾンを生成できるような構成となっている。より具体的には、本実施形態に係る放電装置は、例えば車両に搭載され、排気浄化に供されるものとして利用される場合がある。この場合、放電反応器200には、車両のボディに形成された外気導入口と接続される外気導入管、この外気導入管に設置されたガスコンプレッサ等から原料ガスである外気(空気)が供給される。
【0029】
また、本実施形態に係る放電装置は、上述した用途以外にも多様な用途に適用可能である。この際、その適用用途に応じて放電装置の構成は変化してよい。例えば、放電装置が移動体でなく各種施設に設置される構成を採る場合、酸素ボンベや酸素タンク等、比較的高濃度の酸素ガスを貯留する然るべき貯留手段を含む構成、或いは当該貯留手段から放電反応器200へ酸素ガスを供給可能な構成を有していてもよい。より具体的には、ガス配管、減圧弁、圧力調整弁、流量調整弁及び気密を保ちつつこれらを適宜に連結する各種連結部材等を備える構成を採ってもよい。
【0030】
次に、第1実施形態に係る放電装置の電極部の具体的な構成について、図2及び図3を参照して説明する。ここに図2は、第1実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。また図3は、図2のA−A’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【0031】
図2及び図3において、本実施形態に係る放電装置の第1電極210は、周囲を絶縁体300によって被覆された構造となっている。そして特に、絶縁体310には、第1電極210を部分的に露出させるための開口部310が形成されている。このため、第1電極210は、開口部310を介して、第2電極220と対向することになる。一方で、第2電極220は、第1電極210と対向しない面に絶縁体320が配置されている。
【0032】
開口部310は、図に示すように線状とされており、第1電極210における第2電極220と対向する面(即ち、放電が行われる放電面)に複数配列されている。開口部310の幅(即ち、図2における左右方向の長さ)は、例えば0.1mm程度とされる。
【0033】
上述したような構成によれば、第1電極210における絶縁体300の開口部310を介して露出する部分は、模擬的に鋭利な形状の電極となる。即ち、細い線状の電極が複数配列されたものとみなすことができる。
【0034】
放電反応器200(図1参照)において放電を発生させるためには、第1電極210及び第2電極220間に高電界を形成することが求められる。本実施形態に係る放電装置によれば、上述したように、第1電極210が模擬的に鋭利な形状の電極とされるため、好適に放電を発生させることが可能となる。
【0035】
次に、第1実施形態に係る放電装置の効果について、図4から図7を参照して説明する。ここに図4は、比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その1)であり、図5は、図4のB−B’線断面を第2電極と共に示す断面図である。また図6は、比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その1)であり、図7は、第1実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【0036】
図4及び図5において、第1電極210が、細い線状の電極を複数配列して構成された場合を考える。即ち、上述した本実施形態に係る第1電極210のように、絶縁体300の開口部310から第1電極210露出されるものとは異なり、第1電極210自体が線状に形成されている場合を考える。
【0037】
このような放電装置では、鋭利な形状とされた第1電極210が、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。よって、安定した放電を長時間行うことが困難である。
【0038】
図6において、本願発明者の研究によれば、図4及び図5で示されるような放電装置で連続して放電を行った場合、9.2時間が経過した時点でアーク放電に移行し、その後、放電が停止してしまうという結果が得られている。従って、比較例に係る放電装置では、実際に長時間安定した放電を行うことはできない。尚、図6における電力は、放電によって電流が流れていることを示すものである。
【0039】
図7において、本実施形態に係る放電装置によれば、上述した比較例に係る放電装置とは異なり、20時間連続して放電した場合であっても、安定した放電を行うことができるという結果が得られている。これは、第1電極210が、実際には鋭利な形状とはされておらず、絶縁体300の開口部310によって、模擬的に鋭利な形状とされているからである。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態に係る放電装置によれば、安定した放電を長時間行うことが可能である。
【0041】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る放電装置について説明する。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、第1電極の構成が一部異なり、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0042】
先ず、第2実施形態に係る放電装置の電極部の具体的な構成について、図8及び図9を参照して説明する。ここに図8は、第2実施形態に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図である。また図9は、図2のC−C’線断面を第2電極と共に示す断面図である。
【0043】
図8及び図9において、第2実施形態に係る放電装置の第1電極210は、第1実施形態と同様に、周囲を絶縁体300によって被覆された構造となっており、絶縁体310には、第1電極210を部分的に露出させるための開口部310が形成されている。このため、第1電極210は、開口部310を介して、第2電極220と対向することになる。一方で、第2電極220は、第1電極210と対向しない面に絶縁体320が配置されている。
【0044】
開口部310は、図に示すように点状とされており、第1電極210における第2電極220と対向する面(即ち、放電が行われる放電面)に複数配列されている。開口部310の直径は、例えば0.1mm程度とされる。
【0045】
上述したような構成によれば、第1電極210における絶縁体300の開口部310を介して露出する部分は、模擬的に鋭利な形状の電極となる。即ち、小さな点状の電極が複数配列されたものとみなすことができる。従って、第2実施形態に係る放電装置によれば、好適に放電を発生させることが可能となる。
【0046】
次に、第2実施形態に係る放電装置の効果について、図10から図13を参照して説明する。ここに図10は、比較例に係る放電装置の第1電極の構成を示す平面図(その2)であり、図11は、図10のD−D’線断面を第2電極と共に示す断面図である。また図12は、比較例に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフ(その2)であり、図13は、第2実施形態に係る放電装置における放電時間と電力との関係を示すグラフである。
【0047】
図10及び図11において、第1電極210が、小さな針状の電極を複数配列して構成された場合を考える。即ち、上述した第2実施形態に係る第1電極210のように、絶縁体300の開口部310から第1電極210露出されるものとは異なり、第1電極210自体が鋭利な形状に形成されている場合を考える。
【0048】
このような放電装置では、鋭利な形状とされた第1電極210が、長時間の放電によって消耗し、破損してしまうおそれがある。よって、安定した放電を長時間行うことが困難である。
【0049】
図12において、本願発明者の研究によれば、図10及び図11で示されるような放電装置で連続して放電を行った場合、先ず放電開始と共に、第1電極210先端の消耗によって、第1電極210及び第2電極220間の距離が伸長され、徐々に電力が低下することが判明している。更に、放電時間が20時間に近づくと、放電が間欠的で不安定になり(図中の破線部分)、20時間経過した時点で放電が停止してしまうという結果が得られている。従って、比較例に係る放電装置では、実際に長時間安定した放電を行うことはできない。
【0050】
図13において、第2実施形態に係る放電装置によれば、上述した比較例に係る放電装置とは異なり、100時間連続して放電した場合であっても、安定した放電を行うことができるという結果が得られている。これは、第1電極210が、実際には鋭利な形状とはされておらず、絶縁体300の開口部310によって、模擬的に鋭利な形状とされているからである。
【0051】
以上説明したように、第2実施形態に係る放電装置によれば、第1実施形態と同様に、安定した放電を長時間行うことが可能である。
【0052】
尚、上述した第1及び第2実施形態では、絶縁体300における開口部310が、線状である場合及び点状である場合について説明したが、開口部310の形状は、第1電極210を模擬的に鋭利な形状とできるものである限り様々な態様をとり得る。また、開口部の大きさや数、配列、位置等についても、装置の使用に応じて適宜設定することが可能である。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う放電装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
100…ナノパルス電源、200…放電反応器、210…第1電極、220…第2電極、300…絶縁体、310…開口部、320…絶縁体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向するように離間して配置される第2電極と、
前記第1電極の少なくとも前記第2電極と対向する放電面を覆うと共に、前記放電面において前記第1電極を部分的に露出させる開口部を有する絶縁体と、
前記第1電極及び前記第2電極間に電圧を印加する電圧印加手段と
を備えることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
前記開口部は、線状であることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記線状の延びる方向と交わる方向に複数配列されていることを特徴とする請求項2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記開口部は、点状であることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極と対向するように離間して配置される第2電極と、
前記第1電極の少なくとも前記第2電極と対向する放電面を覆うと共に、前記放電面において前記第1電極を部分的に露出させる開口部を有する絶縁体と、
前記第1電極及び前記第2電極間に電圧を印加する電圧印加手段と
を備えることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
前記開口部は、線状であることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記線状の延びる方向と交わる方向に複数配列されていることを特徴とする請求項2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記開口部は、点状であることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−113723(P2011−113723A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267461(P2009−267461)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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