説明

断熱耐火サンドイッチパネル

【課題】本発明は、軽量で施工性が良く、断熱性及び耐火性に優れる断熱耐火サンドイッチパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る断熱耐火サンドイッチパネルの代表的な構成は、金属材からなる表面材2、裏面材3間に、有機断熱ボード層4、6、無機ボード層5を積層接着した断熱耐火サンドイッチパネル1であって、有機断熱ボード層4、6の長手方向継ぎ目と無機ボード層5の長手方向継ぎ目は一致していないように積層してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、構築物の外壁や内壁などに使用される断熱性、耐火性に優れる断熱耐火サンドイッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサンドイッチパネルとして、金属製の表、裏面材間にフェノールフォーム等の有機断熱材よりなる芯材を充填してなる断熱サンドイッチパネルや、ロックウール等の無機繊維質板よりなる芯材を挟んでなる耐火サンドイッチパネル等がある。
【0003】
そして、このような断熱サンドイッチパネル、耐火サンドイッチパネル等に関しては、例えば、特許文献1(特開平7−048915号公報)、特許文献2(特開平9−256507号公報)、特許文献3(特開2005−163481号公報)等に例示されている如く、種々の構造を持ったパネルが知られている。
【0004】
前述の特許文献1に記載の技術は、鉄板等の不燃性基材からなる表面材、裏面材間にフェノールフォーム原液を流し込み無機ボードとからなる芯材を一体に形成し、フェノールフォームには水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム等の無機材が混入されている耐火パネルに関する技術である。
【0005】
前述の特許文献2に記載の技術は、表裏面の金属板間に3層のロックウールボードをずらして積層して形成した耐火性の建築用パネルに関する技術である。
【0006】
前述の特許文献3に記載の技術は、難燃有機系プラスチックフォームが充填された金属製表裏面材間に、1層以上の無機系材料層を挟んだ耐火断熱サンドイッチパネルに関する技術である。
【0007】
【特許文献1】特開平7−048915号公報
【特許文献2】特開平9−256507号公報
【特許文献3】特開2005−163481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
然るに、前述の特許文献1に記載の技術においては、表面材、裏面材間にフェノールフォームの原液を流し込み、発泡、硬化させる方法により、断熱層の長手方向および幅方向に継ぎ目が発生しないので、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が継ぎ目部分に集中することはない。
【0009】
しかしながら、原液を流し込み、発泡、硬化させる方法では、硬化時の収縮が大きい低密度のフォームの成形は困難であり、かつ均一な発泡体の形成のためには密度50〜300kg/m3の高密度のフォームの成形が不可欠であった。高密度のフォームは強度等には優れるが、一般にパネルの高重量化は避けられず、ボード状の成形体と比較し断熱性が悪化する傾向にある。断熱性悪化によって低下した耐熱性および耐火性を補うために水酸化アルミニウム、ポリリン酸アンモニウム等の無機材の混入が必要となる。また、発泡、硬化時に発生する水分を処理するための工夫が必要となり構造が複雑化する問題があった。
【0010】
前述の特許文献2に記載の技術においては、表裏面の金属板間にロックウールボードを3層積層して形成した耐火性のパネルであるが、ロックウールボードが密度300〜400kg/m3と高密度であり、パネルの高重量化は避けらず、有機系断熱材と比較して断熱性においては不充分である。また、長尺状の表裏面材以外の芯材各層同士の長手方向継ぎ目に関しては特に考慮がはらわれていなかったために、芯材各層同士の長手方向継ぎ目が一致または近接した場合には、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が継ぎ目部分に集中し、耐火試験等において性能が低下する問題があった。
【0011】
前述の特許文献3に記載の技術においては、金属製表裏面材内に難燃有機系プラスチックフォームを充填する際、難燃有機系プラスチックフォームの原液を流し込み、発泡、硬化させる方法をとる場合には、前述の特許文献1に記載の技術と同様にフォームの高密度化によるパネルの高重量化、断熱性の悪化や発生水分の処理の問題があった。
【0012】
また、別法として難燃有機系プラスチックフォーム成形体を詰込む方法をとる場合には、成形体のつぶれや細部への充填不良による断熱性低下が懸念され、詰込み作業や表裏面材との接着等の機械化が難しいという課題があった。また、無機系材料層を2層以上とした場合、耐火性には有効であるが、パネルの高重量化という弊害もあった。
【0013】
そこで本発明は、軽量で施工性が良く、断熱性及び耐火性に優れる断熱耐火サンドイッチパネルを提供することを目的とする。また、水分を処理するための工夫等で構造が複雑化することを抑制でき、詰込み作業や表裏面材との接着等の機械化が容易となる断熱耐火サンドイッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明に係る断熱耐火サンドイッチパネルの構成は、長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱ボード層と無機ボード層を含む2層を積層接着した断熱耐火サンドイッチパネルであって、前記有機断熱ボード層の長手方向継ぎ目と前記無機ボード層の長手方向継ぎ目は一致していないように積層してなることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る構成の断熱耐火サンドイッチパネルは、パネルが加熱された場合にも、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が継ぎ目部分に集中することがなく、JIS−A−1304の耐火構造1時間の試験に合格し得る。すなわち、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が分散されて、耐火性能を大幅にアップさせることができる。
【0016】
また、原液を流し込み、発泡、硬化させて有機断熱層を形成した場合(特許文献1、3)や成形体を詰込んで有機断熱層を形成した場合(特許文献3)と比較すると、本発明に係る構成では、予め成形、硬化させた有機断熱ボードを用いるため、発泡、硬化時の収縮や水分発生、詰込み時のつぶれ等を抑制できる。これにより、水分を処理するための工夫等で構造が複雑化することもない。詰込み作業や表裏面材との接着等の機械化が容易となる。
【0017】
また、断熱層全面において、均一な所定性能(例えば熱伝導率、強度等)を有する有機断熱ボード層を形成でき、軽量で施工性が良く、断熱、耐火、耐熱性に優れる断熱耐火サンドイッチパネルとなる。
【0018】
さらに、金属材とボードを積層接着することによって、パネルの製造工程を簡素化できるので、従来の同等の性能を有する耐火パネルに比較して、コストをおさえることができる。
【0019】
パネル同士の連結部における各係合部分については、有機断熱ボード、無機ボードである必要はなく、断熱部材(例えば、原液を流し込み、発泡、硬化させて有機断熱層を形成する方法や成形体を詰込んで無機断熱層を形成する方法等)や無機系耐火部材(例えば、無機ボードと同一素材)等を充填することも可能である。その場合においては、断熱耐火サンドイッチパネル全体に対して係合部分の占める割合が小さく、前述のような耐火性能等への悪影響は少ない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る構成の断熱耐火サンドイッチパネルは、パネルが加熱された場合にも、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が継ぎ目部分に集中することがなく、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が分散されて、耐火性能を大幅にアップさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の好適な実施形態を図により具体的に説明する。図1は本実施形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルの斜視図である。図2は本実施形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルの長手方向断面図である。
【0022】
図1に示すように、断熱耐火サンドイッチパネル1は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の3つの層を、この順に積層接着し、かつ上部にオス型係合部Aを、下部にメス型係合部Bをそれぞれパネル長手方向に沿って形成している。
【0023】
金属材からなる表、裏面材2、3は55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板や塗装鋼板、あるいはその他の金属板をプレス成形、押出成形、ロール成形等によって所定断面形状に形成したものである。通常、表、裏面材2、3は、幅は300mm〜1000mm、長さは1.8〜12mのものを用いる。厚みは必要性能に応じて適宜選択される。
【0024】
表面側および裏面側有機断熱ボード層4、6は、それぞれフェノールフォームやイソシアヌレートフォーム等の難燃有機系プラスチックフォームなどのボード状成型体を用いる。有機断熱ボード4、6は、他の基材との接着等の点で表裏面に各種表面材付きのものが好適である。厚みは必要性能に応じて適宜選択し、幅はパネル幅に合わせて300mm〜1000mmのものを用いる。長さは、ボード原板をそのまま用い継ぎ目Cを設けて配置し、パネル端部に切断したものを配置してパネル長さに合わせる。断熱性、軽量化、経済性の点で、厚みが10〜50mm、密度が20〜50kg/m3のものが好適である。
【0025】
有機断熱ボード層4、6は表面側あるいは裏面側の片面1層でも良いが、無機ボード層5を挟んで両側に2層の方がより高性能である。このように構成された断熱耐火サンドイッチパネル1は、金属材からなる表面材2、3の間に、無機ボード層5を挟んで難燃有機系プラスチックフォーム等の有機断熱ボード4、6をそれぞれ積層していることで表面側または裏面側のいずれから熱が加わっても、常に非加熱面側に有機断熱ボード4、6が存在するものとなっているので、耐火性能を向上させることに役立つ。
【0026】
無機ボード層5には、炎に強い無機系材料である石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、ロックウールボード等を用いる。厚みは必要性能に応じて適宜選択し、幅はパネル幅に合わせて300mm〜1mのものを用いる。長さは、ボード原板長さをそのまま用い継ぎ目Cを設けて配置し、パネル端部に切断したものを配置してパネル長さに合わせる。軽量化、経済性の点で、厚み7〜21mmの石膏ボードが好適である。
【0027】
図2に示すように、断熱耐火サンドイッチパネル1は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の3つの層のうち、少なくとも無機ボード層5を含む2層を積層接着している。
【0028】
図2(a)〜(d)は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の3つの層を積層接着したものである。図2(e)は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5の2つの層を積層接着したものである。図2(f)は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の2つの層を積層接着したものである。
【0029】
有機断熱ボードと無機ボードを使用するが、このようなボード状成型体原板は、通常、厚みは最大100mm程度、幅は最大で2m程度、長さは最大3m程度である。本発明に用いる場合、各ボード同士の長手方向の継ぎ目Cをずらす必要があり、そのずらす量は、10050mm以上好ましくは300mm以上で配列する。
【0030】
図2(a)〜(d)に示すように、表面側および裏面側有機断熱ボード層4、6と無機ボード層5の3層で構成される場合は、1層目と3層目の継ぎ目Cにおいても同様のずらし量を確保して配列する方が好適である。長手方向の継ぎ目Cが一致しないように積層することにより、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が継ぎ目部分に集中することがなく、JIS−A−1304の耐火構造1時間の試験に合格し得る。すなわち、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が分散されて、耐火性能を大幅にアップさせることができる。
【0031】
図3は本実施形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルの施工状態の幅方向断面図である。図3に示すように、断熱耐火サンドイッチパネル10は、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6を、幅方向にずらして積層したものである。断熱耐火サンドイッチパネル10は、長尺状の金属材からなる表面材2と裏面材3との間に、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の3つの層のうち、少なくとも無機ボード層5を含む2層を積層接着している。
【0032】
一般にこのようなサンドイッチパネル1を施工する際、サンドイッチパネル1の一側端又は両側端に他の同一サンドイッチパネルを隣接させて両パネルの端部同士を連結する必要がある。その場合、表面側有機断熱ボード層4、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6を、幅方向にずらして積層することにより、パネル全面における層構成を変えることなく、断熱性能、耐火性能を維持したまま高強度のパネル連結部Dの係合部を形成することができる。また、パネル10の隣接する部分においても長手方向の継ぎ目Cが一致することがなく、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等がパネル10の隣接する部分に集中することを抑制できる。従って、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が分散されて、耐火性能を大幅にアップさせることができる。
【0033】
ずらす量は取り付け強度、施工性、その他要求性能に応じて適宜設定できるが、2010〜60mmが好適である。勿論、デザインその他要求性能によって、さまざまな端部形状のオス型係合部Aおよびメス型係合部Bを形成し、その部分に無機系耐火部材(例えば、無機ボード5と同一素材)や耐火性断熱部材等を充填することも可能である。
【0034】
断熱耐火サンドイッチパネル10は、固定具βにより躯体αに固定される。図3(a)、図3(b)において、固定具βをオス型係合部Aの出っ張った無機ボード層5から躯体αに貫通している。そして、隣接するパネル10のメス型係合部Bの表面側有機断熱ボード層4が固定具βを覆い隠すように、パネル10を取り付けている。なお、無機ボード層5、裏面側有機断熱ボード層6の2層の場合には、無機ボード層5が固定具βを覆い隠すようにしてもよい。
【0035】
これにより、パネル10の施工後の外観意匠を良好にすることができる。また、加熱時に発生した加熱生成ガスや火炎等が固定具βを設けた部分に集中することがなく、耐火性能を大幅にアップさせることができる。なお、図3(c)に示すように、固定具βの取り付け位置は上記の位置に限定されるものではなく、パネル10の任意の位置に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の活用例として、建築、構築物の外壁や内壁などに使用される断熱性、耐火性に優れるサンドイッチパネルとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルの斜視図である。
【図2】本実施形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルの長手方向断面図である。
【図3】本実施形態に係る断熱耐火サンドイッチパネルの施工状態の幅方向断面図である。
【符号の説明】
【0038】
A …オス型係合部
B …メス型係合部
D …パネル連結部
α …躯体
β …固定具
1、10 …断熱耐火サンドイッチパネル
2 …表面材
3 …裏面材
4 …表面側有機断熱ボード層
5 …無機ボード層
6 …裏面側有機断熱ボード層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の金属材からなる表面材、裏面材間に、少なくとも有機断熱ボード層と無機ボード層を含む2層を積層接着した断熱耐火サンドイッチパネルであって、
前記有機断熱ボード層の長手方向継ぎ目と前記無機ボード層の長手方向継ぎ目は一致していないように積層してなることを特徴とする断熱耐火サンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−132102(P2007−132102A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326915(P2005−326915)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】