説明

新聞用紙

【課題】スチールベルトを装備した輪転機で印刷しても、剥離等の発生を防ぐことができ、しかも、経済性に優れた新聞用紙を提供する。
【解決手段】古紙質Vを含む原料から製造された新聞用紙Pであって、新聞用紙Pにおける一方の面から光を照射した場合において、新聞用紙Pの観察面PAに投影された、粘着物質Vが形成する影SBの面積を積算した総積算面積が、新聞用紙Pの紙面1mあたり5mm未満である。スチールベルトを装備した輪転機で印刷したときに、スチールベルトと新聞用紙Pに含まれる粘着物質Vとが接触する確率を低くすることができるので、新聞用紙Pの剥離等を防ぐことができる。剥離と粘着物質Vとの関係を表す明確な指標となるから、新聞用紙Pに使用されるDIPの過剰品質も防ぐことができ、コストアップを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞用紙に関する。近年、資源の有効利用、省エネルギー化、森林資源の保全といった環境問題に配慮して、古紙の利用が促進されており、新聞用紙の原料にも古紙からインクを除去して生成された脱墨パルプ(DIP)が採用され、その配合率は平均で50%以上にまで達するようになってきている。新聞用紙を形成するときに用いられる一般的なDIPの原料には、新聞用紙以外にも、書籍、雑紙等が用いられているので、製造されたDIPには粘着物質(例えばホットメルト等)が混入することがある。
本発明は、かかる粘着物質が混入したDIPが、原料として配合された新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞用紙への印刷には、オフセット輪転機が使用され、給紙部にセットされたロールから繰り出された新聞用紙が、印刷部に供給され、印刷部で印刷された用紙が、レールフレーム部を経由して折り部に供給され、折り部において読者に配達される状態に加工される。ここで、印刷部において、新聞用紙に加わるテンションが一定でなければ安定した印刷を行うことができないので、給紙部におけるテンションを調整するために、給紙部には給紙テンションを調整するためのブレーキ装置が設けられる。このブレーキ装置として、軸端ブレーキ方式、スチールベルト方式等があるが、DIPを原料に含む新聞用紙に対して、スチールベルトを装備した輪転機で印刷すると、新聞用紙に含まれる粘着物質がスチールベルトに付着して、付着した部分の繊維が剥離する現象が生じる可能性があり、最悪の場合には、断紙が発生する可能性がある(非特許文献1、2)。
そこで、DIPを製造する段階において、粘着物質を除去する方法として、古紙パルプの製造時に粘着物除去剤を加える方法(特許文献1)、古紙パルプに高密度化剤と凝集材を加える方法(特許文献2)、パルプスラリー中の粘着物質に磁性体を結合させる方法(特許文献3)等が開発されている。
【0003】
上記方法は、DIPの製造段階において粘着物質を除去する方法については開示されているものの、実際に印刷に使用される新聞用紙中に含まれる粘着物質と剥離等の発生との関係については何ら開示されていない。つまり、DIPに含まれる粘着物質の量、言い換えれば、新聞用紙に含まれる粘着物質の量をどのくらいまで減少させれば剥離等の発生を防ぐことができるかについては、全く記載されていない。
【0004】
新聞用紙に粘着物質が含まれていても、その量が極端に多くなければ印刷品質等には問題がない場合が多い。しかし、新聞用紙中に含まれる粘着物質と剥離等の発生との関係が把握されていない以上、新聞用紙に含まれる粘着物質の含有量をできる限り少なくなるように、DIPから粘着物質を除去する運用がなされる傾向が強い。このような場合には、DIPは過剰品質となり、生産効率の悪化やエネルギー原単位の悪化、薬品コストの上昇を招くことになる。
【0005】
【特許文献1】特開2003―20584号
【特許文献2】特開2002―201579号
【特許文献3】特開平10―298882号
【非特許文献1】新聞印刷ハンドブック,社団法人日本新聞協会,1997年4月,p109-110
【非特許文献2】印刷と用紙2000,紙業タイムス社,2003年3月,p484
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、スチールベルトを装備した輪転機で印刷しても、剥離等の発生を防ぐことができ、しかも、経済性に優れた新聞用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の新聞用紙は、古紙を含む原料から製造された新聞用紙であって、該新聞用紙における一方の面から光を照射した場合において、該新聞用紙における他方の面に投影された、粘着物質が形成する影の面積を積算した総積算面積が、該新聞用紙における他方の面1mあたり5mm未満であることを特徴とする。
第2発明の新聞用紙は、第1発明において、前記総積算面積は、0.08mm以上となる影の面積のみを積算したものであることを特徴とする。
第3発明の新聞用紙は、第1発明において、前記新聞用紙における他方の面において、0.08mm以上の面積を有する影が、該新聞用紙における他方の面1mあたり16箇所未満であることを特徴とする。
第4発明の新聞用紙は、第1発明において、前記新聞用紙における他方の面において、0.7mm以上の面積を有する影が、該新聞用紙における他方の面1mあたり1個以下であることを特徴とする。
第5発明の新聞用紙は、古紙を含む原料から製造された新聞用紙であって、該新聞用紙における一方の面から光を照射した場合において、前記新聞用紙における他方の面において、0.08mm以上の面積を有する影が、該新聞用紙における他方の面1mあたり16箇所未満であることを特徴とする。
第6発明の新聞用紙は、第5発明において、前記新聞用紙における他方の面に投影された、前記粘着物質が形成する影の面積を積算した総積算面積が、該新聞用紙における他方の面1mあたり5mm未満であることを特徴とする。
第7発明の新聞用紙は、第6発明において、前記総積算面積は、0.08mm以上となる影の面積のみを積算したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、スチールベルトを装備した輪転機で印刷したときに、スチールベルトと新聞用紙に含まれる粘着物質とが接触する確率を低くすることができるので、新聞用紙の剥離等の発生を抑制することができる。しかも、剥離と粘着物質との関係を表す明確な指標となるから、新聞用紙に含まれる粘着物質の割合、言い換えれば、脱墨パルプ(DIP)に含まれる粘着物質の割合を極端に少なくする必要がない。つまり、新聞用紙に使用されるDIPの過剰品質も防ぐことができ、また、DIP工程運用の品質管理にも明確な基準を与えることができる。よって、新聞用紙に使用される脱墨パルプの生産効率の低下やコストアップを防ぐことができる。
第2発明によれば、小さい粘着物質を考慮しないから、新聞用紙の検査を容易にすることができる。しかも、小さい粘着物質を考慮しないから、脱墨パルプ(DIP)の製造工程において、細かな粘着物質の除去効率をそれほど高くしなくてもよい。よって、新聞用紙に使用される脱墨パルプの生産効率の低下やコストアップをより一層抑えることができる。
第3発明によれば、スチールベルトと粘着物質が接触しても、一つの粘着物質と新聞用紙との間の接着力を小さくすることができるから、新聞用紙に局所的に強い力が働くことを防ぐことができる。しかも、スチールベルトと粘着物質が接着する確率を低くできるから、剥離等の発生を低減することができる。
第4発明によれば、スチールベルトと新聞用紙が接触したときに、一つの粘着物質の面積の大きなものをできるかぎり取り除くことにより、新聞用紙に局所的に強い力が働くことを防ぐことができる。しかも、スチールベルトと、強い粘着性を発揮する粘着物質が接着する確率を限りなく低くできるから、剥離等の発生を低減することができる。
第5発明によれば、スチールベルトと粘着物質が接触しても、一つの粘着物質と新聞用紙との間の接着力を小さくすることができるから、新聞用紙に局所的に強い力が働くことを防ぐことができる。しかも、スチールベルトと粘着物質が接着する確率を低くできるから、剥離等の発生を低減することができる。そして、剥離と粘着物質との関係を表す明確な指標となるから、新聞用紙に含まれる粘着物質の割合、言い換えれば、脱墨パルプ(DIP)に含まれる粘着物質の割合を極端に少なくする必要がない。つまり、新聞用紙に使用されるDIPの過剰品質も防ぐことができ、また、DIP工程運用の品質管理にも明確な基準を与えることができる。よって、新聞用紙に使用される脱墨パルプの生産効率の低下やコストアップを防ぐことができる。
第6発明によれば、小さい粘着物質を考慮しないから、新聞用紙の検査を容易にすることができる。しかも、小さい粘着物質を考慮しないから、脱墨パルプ(DIP)の製造工程において、細かな粘着物質の除去効率をそれほど高くしなくてもよい。よって、新聞用紙に使用される脱墨パルプの生産効率の低下やコストアップをより一層抑えることができる。
第7発明によれば、スチールベルトを装備した輪転機で印刷したときに、スチールベルトと新聞用紙に含まれる粘着物質とが接触する確率を低くすることができるので、新聞用紙の剥離等の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明は、脱墨パルプ(DIP)を使用して形成された新聞用紙に関する技術であり、新聞用紙に含まれる粘着物質の量を、所定の範囲内に調整したことに特徴を有する。
なお、粘着物質は、新聞用紙に含まれる種々の夾雑物のうち、粘着性を持たないものを除外したものをいう。夾雑物の粘着性の有無の判別は、どのような方法を使用してもよいが、本願では、人が針を夾雑物に突き刺したときに粘着性を示すか否かを基準として、粘着物質とそれ以外の夾雑物を判断している。
【0010】
本発明の新聞用紙は、通常坪量が40〜50g/mとなるように形成されたものである。本発明の新聞用紙の坪量は特に限定されないが、新聞用紙の一方の面から光を照射したときに、他方の面に光が透過する程度の坪量であれば、JISP8208に規定される夾雑物測定方法を使用して、夾雑物を識別できる。
【0011】
本発明の新聞用紙は、サーモメカニカルパルプ(Thermomechanical Pulp:TMP)等の機械パルプや、Kraft Pulp(KP)等の化学パルプからなるパルプと、古紙からインクを除去して形成された脱墨パルプ(DIP)とを原料として製造されたものである。
【0012】
そして、図1(A)〜(C)に示すように、本発明の新聞用紙Pは、その一方の面(以下、対向面という)から平行光Lを照射した状態において、新聞用紙Pをその他方の面(以下、観察面PAという)側から見たとき、つまり、JISP8208に規定される夾雑物測定方法によって夾雑物を観察したときに、新聞用紙Pの観察面PAに形成される新聞用紙P中に存在する粘着物質V1、V2の影SB1,SB2の面積を足し合わせた総面積が、新聞用紙Pの1mあたり5mm未満となるように調整されている。
すると、本発明の新聞用紙Pをスチールベルトを装備した輪転機で印刷したときに、スチールベルトと新聞用紙Pに含まれる粘着物質Vとが接触する確率を低くすることができるので、新聞用紙Pの剥離等を防ぐことができる。
【0013】
しかも、観察面PAに形成される影はCCDカメラなどの撮影機器を使用して検出が可能であるから、撮影機器を利用した影SBの面積の自動的計測も可能となる。すると、影SBの面積の総面積を算出することも容易かつ正確になるから、新聞用紙Pの検査、つまり、新聞用紙Pにおける剥離等の生じ易さの判断する検査を、部分的に自動化できる可能性が高くなる。
【0014】
そして、新聞用紙Pに含まれる粘着物質Vと新聞用紙Pの剥離等との関係を定量的に表す明確な指標となるから、新聞用紙Pに含まれる粘着物質Vの割合、つまり、DIPに含まれる粘着物質Vの割合を適正な量に調整することができる。すると、DIPに含まれる粘着物質Vを適切にコントロールして、新聞用紙Pに使用されるDIPの過剰品質を防ぐことができるから、新聞用紙Pに使用される脱墨パルプの生産効率の低下やコストアップを防ぐことができる。
【0015】
なお、総面積が、新聞用紙Pの1mあたり4mm未満となるように調整されていれば、より確実に剥離等の発生を防ぐことができる。
さらになお、新聞用紙Pに含まれる粘着物質の量を調整する方法は、DIPを製造する段階において、全古紙に対する異物混入のない残紙新聞等の割合を調整する方法や、夾雑物除去工程であるスクリーン、クリーナにおける除去割合を変更することによってインクやホットメルト等の接着剤の除去量を変更する方法、分散機の温度を適度な範囲に置く方法、また、抄造に到る段階で薬品を用いて粘着物質を吸着する方法等があるが、とくに限定されない。
【0016】
また、面積が0.08mm以上である影SBのみを積算して総面積を算出するようにすれば、影SBの面積が0.08mm未満の粘着物質、つまり、小さい粘着物質の除去に多大な考慮を払わなくてもすむ。しかも、DIPの製造工程において、大きな粘着物質さえ除去できていれば、細かな粘着物質を含むDIPでも新聞用紙Pの製造に使用することが可能となる。すると、DIPの製造工程における脱墨作業や工数を適切な範囲に抑えることができ、過剰に脱墨されたDIPを製造する必要もなくなるので、新聞用紙P自体のコストアップをより一層抑えることができる。
【0017】
さらに、剥離等は局所的に強い力が加わった場合、つまり、新聞用紙Pの局所が強くスチールベルトと接着した場合に生じやすいので、影SBの面積が0.08mm以上である粘着物質の数が16箇未満となるように調整しておけば、スチールベルトと強く接着する確率を低くできる。すると、新聞用紙Pに局所的に強い力が働くことを防ぐことがより確実になり、効果的に剥離等を防ぐことができる。
とくに、影SBの面積が0.08mm以上である粘着物質の数が、新聞用紙Pの1mあたり10箇未満となるように調整されていれば、より確実に剥離等の発生を防ぐことができる。
【0018】
また、1個あたりの粘着物質の面積が比較的大きな0.7mm以上の粒を紙面1mあたり1個以下に調整することにより、スチールベルトと強い粘着性を発揮する粘着物質が接着する確率を限りなく低くできるから、新聞用紙に局所的に強い力が働くことを防ぐことができ、剥離等の発生を防ぐことができる。
なお、新聞用紙は、通常、絶乾重量や坪量を用いてその品質などが評価されることが多いため、絶乾重量や坪量あたりの粘着物質の総面積や粘着物質の数を知ることが非常に有効であるが、新聞用紙1mあたりの粘着物質の総面積や粘着物質の数は、JISP8208(パルプ−夾雑物測定方法)や、JISP8124(紙および板紙パルプ−坪量測定方法)を準用することによって、絶乾重量や坪量あたりの粘着物質の総面積や粘着物質の数に換算可能である。
【0019】
また、粘着物質Vの影SBの面積を基準に、新聞用紙Pの状態、つまり、剥離等の生じ易さを判断してもよいが、この場合には、図1(B)における粘着物質V2のように、新聞用紙Pの紙面に露出していない粘着物質の影の面積も総面積に含まれる。新聞用紙Pの紙面に露出していない粘着物質は、実質的に剥離等を引き起こすことはないと考えられるため、新聞用紙Pが過剰品質となる可能性はある。
そこで、図1(B)における粘着物質V1のように、新聞用紙Pの紙面に露出している粘着物質において、新聞用紙Pの紙面から露出している部分Aの面積(以下、単に露出面積SAという)を積算して総面積を算出し、その総面積が新聞用紙Pの1mあたり5mmとなるように新聞用紙Pを調整すれば、より適切な品質の新聞用紙Pを製造することができる。
そして、上記基準を満たすように調整された新聞用紙Pも、スチールベルトを装備した輪転機で印刷したときに、スチールベルトと新聞用紙Pに含まれる粘着物質とが接触する確率を低くすることができるので、新聞用紙Pの剥離等を防ぐことができる。なお、総面積が、新聞用紙Pの1mあたり5mm未満となるように調整されていれば、より確実に剥離等の発生を防ぐことができる。
しかも、一般的な新聞用紙Pに含まれる粘着物質の割合は、露出面積SAを足し合わせた総面積が新聞用紙Pの1mあたり5mm未満になるように調整しさえすればよいので、DIPに含まれる粘着物質の割合を極端に少なくする必要がない。よって、新聞用紙Pに使用されるDIPの生産効率の低下やコストアップを防ぐことができ、新聞用紙P自体のコストアップも防ぐことができる。
なお、総面積が、新聞用紙Pの1mあたり4mm未満となるように調整されていれば、より確実に剥離等の発生を防ぐことができる。
【0020】
また、露出面積SAが0.08mm以上の箇所のみを積算して、その総面積が新聞用紙Pの1mあたり5mm未満となるようにすれば、露出面積SAが0.08mm未満の粘着物質、つまり、小さい粘着物質の除去に多大な考慮を払わなくてもすむから、新聞用紙Pに使用されるDIPの生産効率の低下やコストアップを抑えることができ、新聞用紙P自体のコストアップをより一層抑えることができる。
さらに、露出面積SAが0.08mm以上である粘着物質Vの数が16箇未満となるように調整しておけば、スチールベルトと強く接着する粘着物質Vの量を少なくできるので、新聞用紙Pに局所的に強い力が働くことを防ぐことができ、効果的に剥離等を防ぐことができる。
さらになお、露出面積SAが0.08mm以上である粘着物質の数が、新聞用紙Pの1mあたり10箇未満となるように調整されていれば、より確実に剥離等の発生を防ぐことができる。
【0021】
さらに、露出面積SAを足し合わせた総面積や粘着物質の影の面積SBを足し合わせた総面積を考慮せずに、露出面積SAが0.08mm以上の粘着物質の数が新聞用紙Pの1mあたり16個未満、好ましくは10個未満、または影SBの面積が0.08mm以上の箇所が新聞用紙Pの1mあたり16箇所未満、好ましくは10個未満とするようにしてもよい。この場合には、総面積を算出しないので、検査が容易になるし、また、新聞用紙Pに局所的に強い力が働いたことに起因する剥離等、を効果的に防ぐことができる。
【実施例】
【0022】
スチールベルトを備えた輪転機によって新聞用紙Pを印刷した場合において、粘着物質の割合と剥離との関係を確認した。剥離の評価は、10000000mの印刷したときに剥離が発生する回数によって判断し、剥離回数が、1.0未満の場合を合格とした。
【0023】
粘着物質の個数は、JISP8208に規定される夾雑物測定方法を使用して識別される夾雑物のうち、影の面積が0.08mm以上であって、かつ、粘着性を有するもののみをカウントした。
また、粘着物質の面積は、影の面積が0.08mm以上であって、かつ、粘着物質と判断されたものの面積のみを積算している。
【0024】
影の面積が0.08mm以上であるか否かは、目視により、JISP8208に規定される夾雑物測定図表と比較して判断した。
また、夾雑物の粘着性は、人が針を夾雑物に突き刺したときに、粘着性を示すかどうかにより判別した。
【0025】
図2に示すように、紙に含まれる粘着物質の個数および面積が増加するにつれ、剥離が発生する剥離回数が多くなっていることが確認できる。
そして、実施例5までは粘着物質の個数および面積の増加にしたがって徐々に剥離回数が増加しているのに対し、実施例5と比較例1を比べると、粘着物質の個数および面積がそれほど変化していないにも係わらず、剥離率は4倍以上に増加している。つまり、新聞用紙Pの1mあたり粘着物質の数が15個から17個、または、新聞用紙Pの1mあたりの粘着物質の面積が4.8から5.2mmに変わることによって、剥離回数が急激に悪化する、つまり、剥離が生じやすくなることが確認できる。
【0026】
また、実施例3〜5では粘着物質の個数および面積の変化に伴って剥離回数が増加しているが、実施例1〜3までは粘着物質の個数および面積が変化しても剥離回数は同等である。つまり、粘着物質の個数および面積を、新聞用紙Pの1mあたり10個未満、または、4mm未満としておけば、極端に粘着物質の量を少なくしなくても、剥離の発生を抑制することができることが確認できる。
【0027】
さらに、比較例3、4は、粘着物質の個数は比較例1、2よりも少なく、また、粘着物質の面積も比較例1、2よりも小さくなっているが、剥離回数は比較例1、2よりも多くなっている。ここで、比較例3、4における粘着物質の個数は新聞用紙Pの1mあたり16個未満であり実施例4、5と同等であるが、実施例4、5では新聞用紙Pの1mあたり0.7mm以上の粒が0または1個であるのに対し、比較例3、4では新聞用紙Pの1mあたり0.7mm以上の粒が3個あることから、粘着物質一個あたりの面積が大きくなった場合、つまり、新聞用紙に局所的に加わる力が大きくなるようなときに剥離等が発生しやすいと考えられる。そして、実施例1,2,4及び5と比較例3,4からもわかるが、粘着物質一個あたりの面積が比較的大きい0.7mm以上の粒が2以上の場合は、剥離等がどちらかといえば発生し易い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A)新聞用紙Pの概略平面図であり、(B)新聞用紙Pの概略断面図であり、(C)対向面から光を照射した場合において、表面PAに形成される影の概略説明図であり、(D)新聞用紙Pの概略平面図である。
【図2】スチールベルトを備えた輪転機によって新聞用紙を印刷した場合における、剥離と粘着物質の量の関係を表した表である。
【符号の説明】
【0029】
P 新聞用紙
V 粘着物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を含む原料から製造された新聞用紙であって、
該新聞用紙における一方の面から光を照射した場合において、該新聞用紙における他方の面に投影された、粘着物質が形成する影の面積を積算した総積算面積が、該新聞用紙の表面1mあたり5mm未満である
ことを特徴とする新聞用紙。
【請求項2】
前記総積算面積は、0.08mm以上となる影の面積のみを積算したものである
ことを特徴とする請求項1記載の新聞用紙。
【請求項3】
前記新聞用紙における他方の面において、0.08mm以上の面積を有する影が、該新聞用紙における他方の面1mあたり16箇所未満である
ことを特徴とする請求項1記載の新聞用紙。
【請求項4】
前記新聞用紙における他方の面において、0.7mm以上の面積を有する粘着物質が形成する影が、該新聞用紙における他方の面1mあたり1個以下である
ことを特徴とする請求項1記載の新聞用紙。
【請求項5】
古紙を含む原料から製造された新聞用紙であって、
該新聞用紙における一方の面から光を照射した場合において、前記新聞用紙における他方の面において、0.08mm以上の面積を有する影が、該新聞用紙における他方の面1mあたり16箇所未満である
ことを特徴とする新聞用紙。
【請求項6】
前記新聞用紙における他方の面に投影された、前記粘着物質が形成する影の面積を積算した総積算面積が、該新聞用紙における他方の面1mあたり5mm未満である
ことを特徴とする請求項5記載の新聞用紙。
【請求項7】
前記総積算面積は、0.08mm以上となる影の面積のみを積算したものである
ことを特徴とする請求項6記載の新聞用紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−184118(P2006−184118A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377532(P2004−377532)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】