説明

新規な投与レジメンおよび治療法

本発明は、癌および哺乳動物腫瘍のような疾患を治療するための治療法および投与レジメンであって、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/mの量;(3)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/mの量;ならびに(4)3週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで1mg/分以下の初期注入速度での注入による、マイタンシノイド毒素のような抗体−毒素コンジュゲートの投与による細胞毒性薬物での治療が適切である治療法および投与レジメンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2009年10月21日に出願された米国特許仮出願第61/253,804号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本願は配列表を含む。2010年10月20日に作製されたファイル名A10420SequenceListing.txt(ファイルサイズ:8.21KB)のASCIIテキストファイルの全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は投与レジメンおよび治療法、例えば、抗体が毒素、例えばマイタンシノイドなどと共有結合している、抗原と特異的に結合する抗体またはそのフラグメントのコンジュゲート(「抗原特異的マイタンシノイドコンジュゲートまたはイムノコンジュゲート」)である薬剤の投与により、例えば癌および哺乳動物腫瘍などの疾患を治療するための投与方法などに関する。この方法は、間欠投与スケジュールを用いて、例えば、著しく高い用量のコンジュゲートによる治療の抗腫瘍効果を最大化すると同時に用量制限毒性副作用を最小化する。本発明に有用な抗体としては、例えば、CD56、CD20、ヒト上皮増殖因子受容体(HER1)、IgE、血管内皮増殖因子、HER二量体化阻害剤、Bcl−2ファミリータンパク質、MET、IL−13、IFNアルファ、EGFL7、CD40、DR4およびDR5、PI3キナーゼ、リンホトキシンアルファ、ベータ7インテグリン、アミロイドベータ、CRIg、TNF、補体(C5)、CBL、CD147、IL−8、gp120、VLA−4、CD11a、CD18、VEGF、CD40L、Id、ICAM−1、CD2、EGFR、TGF−ベータ、TNF−アルファ、E−セレクチン、FactVII、TNF、Her2/neu、F gp、CD11/18、CD14、ICAM−3、CD80、CD40L、CD4、CD23、ベータ2−インテグリン、アルファ4ベータ7、CD52、HLA DR、CD22、CD64(FcR)、TCRアルファベータ、CD2、CD3、Hep B、CA125、EpCAM、gp120、CMV、gpIIbIIIa、IgE、IL5、IL−4、CD25、CD3、CD33、CD30、HLA、VNRインテグリン、CD25、IL−23およびIL−12と特異的に結合する抗体が挙げられる。投与レジメンは、コンジュゲートの初期注入速度を低下させ、予防的薬剤で患者を前治療し、以下のいずれかのスケジュール:(1)3週間ごとに1日目および8日目;(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目;または(3)4週間ごとに1日目、8日目、および15日目でコンジュゲートを投与することによる、例えば重度の頭痛などの用量制限副作用を実質的に誘発することのない、高用量の1つまたは複数のコンジュゲートの投与レジメンを含む。
【背景技術】
【0004】
有害な細胞をより効率的に標的化して殺す医薬品の発達により、様々な疾患の治療法が著しく進歩している。熱心に研究されている、標的療法に適した疾患の1つが癌である。研究者らはこの目的に向けて、癌細胞により選択的に発現される細胞表面受容体および抗原を利用して、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原と結合する抗体に基づく薬物を開発してきた。この点に関して、細菌および植物毒素、放射性核種ならびに特定の化学療法薬のような細胞毒性分子を、腫瘍特異的または腫瘍関連細胞表面抗原と結合する抗体と化学的に結合させてきた(例えば、国際出願(PCT)公開第00/02587号、同第02/060955号および同第02/092127号、米国特許第5,475,092号、同第26,340,701号、同第6,171,586号、米国特許出願公開第2003/0004210 A1号、およびGhetieら,J.Immunol.Methods,112,267−277(1988)を参照されたい)。このような化合物は通常、毒素、放射性核種および薬物「コンジュゲート」と呼ばれる。またこれらは、イムノコンジュゲート、放射性イムノコンジュゲートおよびイムノトキシンと呼ばれることも多い。腫瘍細胞殺作用は、薬物コンジュゲートと腫瘍細胞との結合およびマイタンシノイドの細胞毒性の活性化の際に生じる。薬物コンジュゲートによりもたらされる選択性は、正常細胞に対する毒性を最小化することにより、患者における薬物の忍容性を増大させる。
【0005】
癌治療のようないくつかの治療法の抗癌効果を最大化するためには、体内の腫瘍細胞を殺すことにより腫瘍を根絶するか少なくとも腫瘍サイズを減少させると同時に、毒性用量制限副作用を最小化するように、抗癌剤の用量を最大化することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イムノコンジュゲート、例えば、重度の頭痛などを引き起こし得る、ロルボツズマブ・メルタンシンとしても知られるIMGN901などによる患者の治療に関連した制限を克服する投与法を開発する必要性が生じている。効果を向上させる一方で、毒性副作用を改善することが必要である。
【0007】
本発明は、コンジュゲートの従来の用法・用量の欠点に対処する治療法に関する。例えば、本発明は、癌および哺乳動物腫瘍の治療のためのコンジュゲートの用法・用量の欠点に対処する治療法に関する。
【0008】
意外なことに、コンジュゲートの初期注入速度を低下させること、および副腎皮質ステロイド剤の予防レジメンにより患者を前治療することにより、コンジュゲートを、(1)3週間ごとに1、8日目、(2)3週間ごとに1、2、3日目、(3)4週間ごとに1、8、15日目のいずれかのスケジュールで投与した場合、著しく高い用量(最初の6週間の治療期間にわたり少なくとも25%の増加)で、かつ用量制限の重度の頭痛を誘発することなく患者に安全に投与し得ることがわかった。
【0009】
抗原、例えばD56、CD20、ヒト上皮増殖因子受容体(HER1)、IgE、血管内皮増殖因子、HER二量体化阻害剤、Bcl−2ファミリータンパク質、MET、IL−13、IFNアルファ、EGFL7、CD40、DR4およびDR5、PI3キナーゼ、リンホトキシンアルファ、ベータ7インテグリン、アミロイドベータ、CRIg、TNF、補体(C5)、CBL、CD147、IL−8、gp120、VLA−4、CD11a、CD18、VEGF、CD40L、Id、ICAM−1、CD2、EGFR、TGF−ベータ、TNF−アルファ、E−セレクチン、FactVII、TNF、Her2/neu、F gp、CD11/18、CD14、ICAM−3、CD80、CD40L、CD4、CD23、ベータ2−インテグリン、アルファ4ベータ7、CD52、HLA DR、CD22、CD64(FcR)、TCRアルファベータ、CD2、CD3、Hep B、CA125、EpCAM、gp120、CMV、gpIIbIIIa、IgE、IL5、IL−4、CD25、CD3、CD33、CD30、HLA、VNRインテグリン、CD25、IL−23またはIL−12などに対する抗体コンジュゲートなどの抗体コンジュゲートの用量を最大化すると同時に用量制限毒性を最小化することにより癌を治療するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0010】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを最大化すると同時に用量制限毒性を最小化することにより哺乳動物腫瘍を治療するための方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0011】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートの用量を最大化すると同時に用量制限毒性を最小化することにより、癌、例えば、小細胞肺癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、神経内分泌腫瘍、例えばメルケル細胞癌、肺大細胞神経内分泌癌、膵臓および消化管神経内分泌腫瘍など;乳癌;定型および非定型肺カルチノイド、神経芽腫、骨肉腫を含めた肉腫、星状細胞腫、ウイルムス腫瘍、シュワン細胞腫、多発性骨髄腫、ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫;急性骨髄球性白血病、固形腫瘍を発現する他の任意のCD56および血液悪性腫瘍を発現する他の任意のCD56などを治療するための方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0012】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートの用量を最大化すると同時に用量制限毒性を最小化することにより、哺乳動物血液系悪性腫瘍、例えば多発性骨髄腫、抗原陽性リンパ腫および白血病、ならびに急性骨髄球性白血病、ならびにNK細胞リンパ腫などを治療するための方法を提供することが、本発明の別の目的である。
【0013】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートの用量を最大化すると同時に用量制限毒性を最小化することにより、癌を治療するための投与レジメンを提供することが、本発明の別の目的である。
【0014】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートの用量を最大化すると同時に用量制限毒性を最小化することにより、哺乳動物腫瘍を治療するための投与レジメンを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
より具体的には、本発明は、用量制限毒性を伴わずに抗体−マイタンシノイドコンジュゲートにより癌を治療するための方法に関し、この方法は、治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、続いて、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/mの量;ならびに(3)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、1mg/分以下の初期注入速度での注入により抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを投与することとを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、用量制限毒性を伴わず哺乳動物腫瘍を治療するための方法に関し、この方法は、治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、続いて、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/mの量;ならびに(3)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、1mg/分以下の初期注入速度での注入により抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを投与することとを含む。
【0017】
また本発明は、抗体−マイタンシノイドコンジュゲートの投与による癌および哺乳動物腫瘍の治療において使用し、抗癌剤の用量を最大化すると同時に用量制限毒性を最小化するための投与レジメンにも関する。
【0018】
より具体的には、本発明は、用量制限毒性を伴わない癌治療のための投与レジメンに関し、この投与レジメンは、治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、続いて、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/mの量;ならびに(3)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、1mg/分以下の初期注入速度での注入により抗体−マイタンシノイドを投与することとを含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、用量制限毒性を伴わずに哺乳動物腫瘍を治療するための投与レジメンに関し、この投与レジメンは、治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、続いて、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約60mg/mの量;ならびに(3)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、1mg/分の初期注入速度での注入により抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを投与することとを含む。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、用量制限毒性を伴わずに、抗原陽性血液悪性腫瘍のような哺乳動物腫瘍を治療するための投与レジメンに関し、この投与レジメンは、治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、続いて、(1)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/mの量または(2)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約45mg/mの量のスケジュールで、1mg/分以下の初期注入速度での注入により、第二の抗癌剤と組み合わせて抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを投与することとを含む。
【0021】
本発明では、忍容性が認められる場合、1mg/分以下の初期注入速度を3mg/分まで、好ましくは漸増的に、より好ましくは0.5mg/分の増分で増加させ得る。1mg/分以下で15分間の初回投与量の投与後に、被検体が中程度の強度以下(またはNCI CTCAE基準のグレード2未満)の兆候または症状を示す場合、初期注入速度は許容される(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Common Terminology Criteria for Adverse Events,Version 4.0,May 28,2009,Version 4.03,June 14,2010;U.S.Dept.Health and Human Servicesを参照されたい)。
【0022】
本発明の投与レジメンは、6週間にわたり少なくとも約360mg/mおよび12週間にわたり少なくとも約540mg/mの抗体−マイタンシノイドの用量強度をもたらし得る。
【0023】
好適な態様では、抗原はCD56であり、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートはIMGN901である。
【0024】
さらなる態様は、CD20が抗原である方法である。
【0025】
さらなる態様は、ヒト上皮増殖因子受容体が抗原である方法である。
【0026】
さらなる態様は、IgEが抗原である方法である。
【0027】
さらなる態様は、血管内皮増殖因子が抗原である方法である。
【0028】
さらなる態様は、HER二量体化阻害剤が抗原である方法である。
【0029】
さらなる態様は、Bcl−2ファミリータンパク質が抗原である方法である。
【0030】
さらなる態様は、MET、IL−13、IFNアルファ、EGFL7、CD40、DR4およびDR5、PI3キナーゼ、リンホトキシンアルファ、ベータ7インテグリン、アミロイドベータ、CRIg、TNF、補体(C5)、CBL、CD147、IL−8、gp120、VLA−4、CD11a、CD18、VEGF、CD40L、Id、ICAM−1、CD2、EGFR、TGF−ベータ、TNF−アルファ、E−セレクチン、FactVII、TNF、Her2/neu、F gp、CD11/18、CD14、ICAM−3、CD80、CD40L、CD4、CD23、ベータ2−インテグリン、アルファ4ベータ7、CD52、HLA DR、CD22、CD64(FcR)、TCRアルファベータ、CD2、CD3、Hep B、CA 125、EpCAM、gp120、CMV、gpIIbIIIa、IgE、IL5、IL−4、CD25、CD3、CD33、CD30、HLA、VNRインテグリン、CD25、IL−23またはIL−12のいずれか1つが抗原である方法である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のコンジュゲートは、マイタンシノイドのような細胞毒性薬物と抗体またはその抗原結合フラグメントとのコンジュゲーションにより合成されるイムノコンジュゲートである。
【0032】
本明細書で使用される「抗体」などは、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分、例えば、特に限定されないが、重鎖もしくは軽鎖またはそのリガンド結合部分の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域またはそれらの任意の部分などを含む分子を含有する任意のタンパク質またはペプチドも包含する。
【0033】
さらに「抗体」という用語は、抗体、その消化フラグメント、特定部分およびバリアントを包含することが意図され、抗体模倣物を含めた、あるいは一本鎖抗体およびそのフラグメントを含めた抗体またはその特定のフラグメントもしくは一部分の構造および/または機能を模倣する抗体の一部分を含む。機能的フラグメントとしては、抗原、例えばCD56などと結合する抗原結合フラグメントが挙げられる。例えば、特に限定されないがFab(例えば、パパイン消化による)、Fab’(例えば、ペプシン消化および部分的還元による)およびF(ab’)2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc’(例えば、ペプシンまたはプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分的還元および再会合による)、FvまたはscFv(例えば、分子生物学的技術による)フラグメントを含めた、CD56と結合することができる抗体フラグメントが本発明に包含される(例えば、Colligan,Immunologyを参照されたい)。
【0034】
本発明の抗体のヒト化または操作は、既知の方法、例えば、特に限定されないが、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる、Winter(Jonesら,Nature 321:522(1986);Riechmannら,Nature 332:323(1988);Verhoeyenら,Science 239:1534(1988)),Simsら,J.Immunol.151:2296(1993);ChothiaおよびLesk,J.Mol.Biol.196:901(1987),Carterら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285(1992);Prestaら,J.Immunol.151:2623(1993),米国特許第5,723,323号、同第5,976,862号、同第5,824,514号、同第5,817,483号、同第5,814,476号、同第5,763,192号、同第5,723,323号、同第5,766,886号、同第5,714,352号、同第6,204,023号、同第6,180,370号、同第5,693,762号、同第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,225,539号、同第4,816,567号、国際出願PCT/:US98/16280号、US96/18978号、US91/09630号、US91/05939号、US94/01234号、GB89/01334号、GB91/01134号、GB92/01755号;国際公開第90/14443号、同第90/14424号、同第90/14430号、欧州特許第229246号、そこに引用されている記載参考文献に記載されている方法などを用いて行い得る。抗体のリサーフィス(resurfacing)またはCDR移植は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,639,641号に開示されている通りに行い得る。
【0035】
ヒト抗原と結合するヒト抗体レパートリーを産生することができるトランスジェニックマウスは、既知の方法により作製し得る(例えば、特に限定されないが、それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる、Lonbergらに対して発行された米国特許第5,770,428号、同第5,569825号、同第5,545,806号、同第5,625,126号、同第5,625,825号、同第5,633,425号、同第5,661,016号および同第5,789,65号;Jakobovitsら,国際公開第98/50433号、Jakobovitsら,国際公開第98/24893号、Lonbergら,国際公開第98/24884号、Lonbergら,国際公開第97/13852号、Lonbergら,国際公開第94/25585号、Kucherlapateら,国際公開第96/34096号、Kucherlapateら,欧州特許第0463 151 B1号、Kucherlapateら,欧州特許出願公開第0710 719 A1号、Suraniら,米国特許第5,545,807号、Bruggemannら,国際公開第90/04036号、Bruggemannら,欧州特許第0438 474 B1号、Lonbergら,欧州特許出願公開第0814 259 A2号、Lonbergら,英国特許出願公開第2 272 440 A号、Lonbergら,Nature 368:856−859(1994),Taylorら,Int.Immunol.6(4)579−591(1994),Greenら,Nature Genetics 7:13−21(1994),Mendezら,Nature Genetics 15:146−156(1997),Taylorら,Nucleic Acids Research 20(23):6287−6295(1992),Tuaillonら,Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720−3724(1993),Lonbergら,Int Rev Immunol 13(1):65−93(1995)およびFishwaldら,Nat Biotechnol 14(7):845−851(1996))。一般に上記マウスは、機能的に再編成された、または機能的再編成を受け得る少なくとも1つのヒト免疫グロブリン遺伝子座に由来するDNAを含む導入遺伝子を、少なくとも1つ含む。このようなマウスの内在性免疫グロブリン遺伝子座は、内在性遺伝子によりコードされる抗体を産生するその個体の能力を排除するように破壊または削除され得る。
【0036】
本発明に有用な抗体としては、例えば、CD56、CD20、ヒト上皮増殖因子受容体(HER1)、IgE、血管内皮増殖因子、HER二量体化阻害剤、Bcl−2ファミリータンパク質、MET、IL−13、IFNアルファ、EGFL7、CD40、DR4およびDR5、PI3キナーゼ、リンホトキシンアルファ、ベータ7インテグリン、アミロイドベータ、CRIg、TNF、補体(C5)、CBL、CD147、IL−8、gp120、VLA−4、CD11a、CD18、VEGF、CD40L、Id、ICAM−1、CD2、EGFR、TGF−ベータ、TNF−アルファ、E−セレクチン、FactVII、TNF、Her2/neu、F gp、CD11/18、CD14、ICAM−3、CD80、CD40L、CD4、CD23、ベータ2−インテグリン、アルファ4ベータ7、CD52、HLA DR、CD22、CD64(FcR)、TCRアルファベータ、CD2、CD3、Hep B、CA 125、EpCAM、gp120、CMV、gpIIbIIIa、IgE、IL5、IL−4、CD25、CD3、CD33、CD30、HLA、VNRインテグリン、CD25、IL−23およびIL−12と特異的に結合する抗体が挙げられる。
【0037】
抗体またはそのフラグメントは、好ましくはヒト、リサーフィス(resurfaced)キメラまたはヒト化抗体である。より具体的には、抗体は、リサーフィス(resurfaced)もしくはヒト化マウスN901抗体またはそのフラグメントであってよく、このN901抗体は重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖はマウス抗体N901のHCCDR1、HCCDR2およびHCCDR3を含む3つの相補性決定領域を含み、かつ前記軽鎖はマウス抗体N901のLCCDR1、LCCDR2およびLCCDR3を含む3つの相補性決定領域を含む。さらにより具体的には、リサーフィス(resurfaced)抗体はhuN901またはその抗原結合フラグメントである。さらにより具体的には、huN901のアミノ酸配列は当該技術分野で公知である。例えば、完全長huN901軽鎖および重鎖のアミノ酸配列ならびに軽鎖および重鎖可変領域のアミノ酸配列を以下に示すが、本発明において有用なアミノ酸配列は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Roguskaら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.91,pp 969−973,February 1994)、米国特許第7,342,110号および米国特許第5,552,293号など、当該技術分野で公知である。
【0038】
huN901軽鎖
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQIIIHSDGNTYLEWFQQRPGQSPRRLIYKVSNRFSGVPDRFSGS
GSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPHTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCL
LNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPV
TKSFNRGEC(配列番号1)。

huN901重鎖
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSFGMHWVRQAPGKGLEWVAYISSGSFTIYYADSVKGRFTI
SRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARMRKGYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNT
KVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYV
DGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVY
TLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQ
GNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号2)。

huN901LCV
DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCRSSQIIIHSDGNTYLEWFQQRPGQSPRRLIYKVSNRFSGVPDRFSGS
GSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPHTFGQGTKVEIKR(配列番号3)。

huN901HCV
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSFGMHWVRQAPGKGLEWVAYISSGSFTIYYADSVKGRFTI
SRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARMRKGYAMDYWGQGTLVTVSS(配列番号4)。
【0039】
本発明の一態様では、上記抗体は、マイタンシノイドのような細胞毒性薬物と化学的に結合している。
【0040】
本発明の一態様では、毒素コンジュゲートはマイタンシノイドである。マイタンシノイドは最初、ハリツルマサキ属(Maytenus)に属する東アフリカの低木から単離されたが、後にアクチノシンネマ・プレチオスム(Actinosynnema pretiosum)のような土壌細菌の代謝産物であることも発見された(例えば、米国特許第3,896,111号を参照されたい)。マイタンシノイドは、有糸分裂阻害を介して細胞毒性を誘導する。マイタンシノイドが微小管タンパク質チューブリンの重合を阻害することにより有糸分裂を阻害して微小管の形成を妨害することが、実験的証拠により示されている(例えば、米国特許第6,441,163号およびRemillardら,Science,189,1002−1005(1975)を参照されたい)。マイタンシノイドが腫瘍細胞増殖を阻害するということが、細胞培養モデルを用いてインビトロで、また実験動物系を用いてインビボで示されている。さらに、マイタンシノイドの細胞毒性は、従来の化学療法剤、例えばメトトレキサート、ダウノルビシンおよびビンクリスチンなどよりも1000倍高い(例えば、米国特許第5,208,020号を参照されたい)。マイタンシノイドには、マイタンシン、マイタンシノール、マイタンシノールのC−3エステルならびにその他のマイタンシノール類似体および誘導体があるということが当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,208,020号および同第6,441,163号を参照されたい)。マイタンシノールのC−3エステルは、天然に存在し得るか、または合成により誘導され得る。さらに、天然に存在するおよび合成のC−3マイタンシノールエステルは共に、単純カルボン酸を有するC−3エステルまたはN−メチル−L−アラニンの誘導体を有するC−3エステルに分類することができ、後者は前者よりも細胞毒性が高い。また合成マイタンシノイド類似体も当該技術分野で公知であり、例えば、Kupchanら,J.Med.Chem.,21,31−37(1978)に記載されている。マイタンシノールならびにその類似体および誘導体を作製するための方法は、例えば米国特許第4,151,042号に記載されている。
【0041】
本発明での使用に適したマイタンシノイドは、当該技術分野で公知の方法を用いて、天然源から単離されるか、合成的に生成されるか、または半合成的に生成され得る。さらに、最終的なコンジュゲート分子に十分な細胞毒性が存在する限り、任意の適当な方法でマイタンシノイドを修飾することができる。この点に関して、マイタンシノイドは抗体が連結され得る適当な官能基を欠く。
【0042】
マイタンシノイドと抗体を連結してコンジュゲートするために連結部分を用いる。連結部分は、特定の部位でのマイタンシノイド細胞毒性の活性化を可能にする化学結合を含んでいる。適当な化学結合は当該技術分野で公知であり、これにはジスルフィド結合、酸に不安定な結合、感光性の結合、ペプチダーゼに不安定な結合、スルフィドリル基/マレイミド基間に形成されるチオエーテル結合およびエステラーゼに不安定な結合が含まれる。最も好ましくは、連結部分はジスルフィド結合を含む。本発明に従えば、連結部分は、好ましくは反応性の化学基を含む。特に好適な反応性の化学基は、N−スクシンイミジルエステルおよびN−スルホスクシンイミジルエステルである。好適な態様では、反応性の化学基は、チオール基間のジスルフィド結合を介してマイタンシノイドと共有結合し得る。したがって、本発明に記載のように修飾されたマイタンシノイドは、好ましくはチオール基を含む。チオール基は水素原子と結合した硫黄原子を含み、当該技術分野において通常はスルフィドリル基とも呼ばれ、「−−SH」または「RSH」と表され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0043】
反応性の化学基を含む連結部分を含むマイタンシノイドは、連結部分がジスルフィド結合を含み、かつ化学反応基がN−スクシンイミジルまたはN−スルホスクシンイミジルエステルを含む、マイタンシノールのC−3エステルおよびその類似体であるのが特に好ましい。マイタンシノイド上の数多くの位置が、連結部分を化学的に連結するための位置として働き得る。例えば、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシで修飾されたC−15位、およびヒドロキシ基を有するC−20位はすべて有用である。連結部分は、最も好ましくはマイタンシノールのC−3位と連結している。最も好ましくは、本発明に関連して使用されるマイタンシノイドは、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシン(DM1)、N2’−デアセチル−N−2’(4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシン(DM3)またはN2’−デアセチル−N2’−(4−メルカプト−4−メチル−1−オキソペンチル)−マイタンシン(DM4)である。
【0044】
その他の化学結合を有する連結部分も本発明との関連において使用することができ、同様に他のマイタンシノイドも使用することができる。その他の化学結合の具体例としては、酸に不安定な結合、チオエーテル結合、感光性結合、ペプチダーゼに不安定な結合およびエステラーゼに不安定な結合が挙げられる。連結部分を有するマイタンシノイドを生成するための方法は、例えば、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号および同第6,333,410号に記載されている。
【0045】
切断可能なリンカーとは、穏やかな条件下、すなわち、マイタンシノイド薬物の活性が影響を受けない条件下で切断され得るリンカーのことである。多数の既知のリンカーがこの種類に該当し、これらを以下に記載する。
【0046】
ジスルフィド含有リンカーは、生理的条件下で生じ得るジスルフィド交換を介して切断可能なリンカーである。
【0047】
酸に不安定なリンカーは、酸性pHにおいて切断可能なリンカーである。例えば、エンドソームおよびリソソームのような特定の細胞内区画は酸性pH(pH4〜5)を有し、酸に不安定なリンカーを切断するのに適した条件をもたらす。
【0048】
光に不安定なリンカーは、光が届きやすい体表および数多くの体腔において有用である。さらに、赤外光は組織透過することができる。
【0049】
いくつかのリンカーはペプチダーゼにより切断され得る。特定のペプチドのみが細胞内外で容易に切断され、例えば、Trouetら,79 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,626−629(1982)およびUmemotoら,43 Int.J.Cancer,677−684(1989)を参照されたい。さらに、ペプチドはα−アミノ酸およびペプチド結合からなり、ペプチド結合は、化学的には1つのアミノ酸のカルボキシル酸と第二のアミノ酸のα−アミノ基との間のアミド結合である。その他のアミド結合、例えばカルボキシル酸とリジンのε−アミノ基との間の結合などは、ペプチド結合ではないと理解されており、切断可能でないと見なされる。
【0050】
いくつかのリンカーはエステラーゼにより切断され得る。同様に特定のエステルのみが細胞内外に存在するエステラーゼにより切断され得る。エステルは、カルボン酸とアルコールの縮合により形成される。単純エステルは、脂肪族アルコールのような単純アルコール、ならびに低分子環状および低分子芳香族アルコールを用いて生成される。例えば、本発明者らは、エステルのアルコール要素であるマイタンシノールが非常に大きく複雑であるため、マイタンシンのC−3においてエステルを切断するエステラーゼを全く見出さなかった。
【0051】
切断可能でないリンカーとは、マイタンシノイドと細胞結合剤を安定で共有結合的な方法で連結することが可能であり、かつ切断可能なリンカーとして上に挙げた種類に該当しない、任意の化学的部分のことである。したがって、切断可能でないリンカーは、酸による切断、光による切断、ペプチダーゼによる切断、エステラーゼによる切断およびジスルフィド結合切断に対して実質的に耐性である。
【0052】
切断に対して「実質的に耐性である」は、細胞結合剤マイタンシノイドコンジュゲート群の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%におけるリンカー中またはリンカーに隣接する化学結合が、上記薬剤のいずれかによる数時間〜数日以内の処置の間、切断可能なリンカーの化学結合(ジスルフィド結合など)を切断する酸、感光性切断剤、ペプチダーゼ、エステラーゼ、または化学的もしくは生理的化合物により切断可能でない状態であることを意味する。
【0053】
さらに、「切断可能でない」は、リンカー中またはリンカーに隣接する化学結合が、マイタンシノイドまたは細胞結合剤がその活性を失わない条件において、ジスルフィド結合を切断する酸、感光性切断剤、ペプチダーゼ、エステラーゼ、または化学的もしくは生理的化合物により誘発される切断に抵抗する能力を指す。
【0054】
当業者は、切断可能でないリンカーと切断可能なリンカーを容易に区別するであろう。
【0055】
特に好適なリンカー分子としては、例えばN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(例えば、Carlssonら,Biochem.J.,173,723−737(1978)を参照されたい)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノアート(SPDB)(例えば、米国特許第4,563,304号を参照されたい)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノアート(SPP)(例えば、CAS登録番号341498−08−6を参照されたい)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC)(例えば、Yoshitakeら,Eur.J.Biochem.,101,395−399(1979)を参照されたい)およびN−スクシンイミジル4−メチル−4−[2−(5−ニトロ−ピリジル)−ジチオ]ペンタノアート(SMNP)(例えば、米国特許第4,563,304号を参照されたい)が挙げられる。本発明での使用に最も好適なリンカー分子はSPPおよびSPDBである。
【0056】
本発明の一態様は、細胞毒性マイタンシノイド薬物DM1とリサーフィス(resurfaced)型のマウスモノクローナル抗体N901とのコンジュゲーションにより合成されるイムノコンジュゲートである、IMGN901(huN901−DM1)である。平均して、各抗体分子と連結した約3.5分子のDM1が存在する。IMGN901の調製および製剤化のための方法は、それぞれその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,374,762号、米国特許出願公開第2007/0031402号、米国特許出願公開第2007/0048314号および米国特許出願公開第2006/0182750号に記載されている。
【0057】
IMGN901(huN901−DM1)は典型的な本発明の態様である。前臨床試験において、IMGN901は従来の細胞毒性物質よりも100〜1000倍高い効力を示している。IMGN901のもう1つの特性は、ジスルフィド結合によるマイタンシノイドと抗体との結合であり、これにより、血漿中では安定であるが、抗体が結合する標的細胞内では容易に切断されるコンジュゲートがもたらされる。
【0058】
IMGN901の名称および構造を以下に示す。
コード名:IMGN901
一般名:マイタンシノイドDM1−コンジュゲートヒト化モノクローナル抗体huN901
別名:huN901−DM1、IMGN901、BB−10901、ロルボツズマブ・メルタンシン
化学名:N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシンコンジュゲートヒト化モノクローナル抗体N901
【0059】
ヒト化N901抗体と結合したDM1の略図を示すが、図中、nは平均約3.5である。
IMGN901(huN901抗体とコンジュゲートされたマイタンシノイドDM1)
【化1】

【0060】
IMGN901は、神経細胞接着分子(NCAM)ファミリーの抗原であるCD56と高い親和性で結合する(Aletsee−Ufrechtら,1990 FEBS Lett 267:295)。コンジュゲートは、CD56と結合すると、内部移行してDM1を放出する。放出されたDM1はチューブリン重合および微小管会合を阻害して、細胞死を引き起こす。IMGN901は、それが標的部位に到達するまでDM1とhuN901とのコンジュゲーションにより細胞毒性薬物が不活性であるため、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)と呼ばれる。
【0061】
CD56は典型的な本発明の抗原である。CD56は、小細胞肺癌および神経内分泌腫瘍のような固形腫瘍、ならびに多発性骨髄腫(被検体の約70%)および急性骨髄球性白血病のような血液系悪性腫瘍を含めた、様々なタイプの腫瘍で発現される(Aletsee−Ufrechtら,1990 FEBS Lett 267:295)。多発性骨髄腫(MM)を有する被検体において、CD56が15被検体のうち10被検体(66.6%)において発現されることが原発性多発性骨髄腫細胞の遺伝子発現プロファイルにより示され、28被検体のうち22被検体におけるCD56発現がMM細胞のフローサイトメトリープロファイルにより明らかとなった(Tassoneら,Cancer Res 2004 64:4629)。
【0062】
血液細胞に関するCD56の発現プロファイルは、NCAM糖タンパク質を発現するナチュラルキラー(NK)細胞および一部のTリンパ球に限られている。CD56は悪性形質細胞で発現されるが、正常形質細胞では発現されない。正常な造血コンパートメントにおける限定的なCD56発現と悪性形質細胞での発現とを考え合わせれば、多発性骨髄腫におけるイムノコンジュゲートベースの治療の標的としてCD56を評価するための概念的基礎が得られる。
【0063】
MGN901は、小細胞肺癌、卵巣癌、非小細胞肺癌、メルケル細胞癌のような神経内分泌腫瘍、肺大細胞神経内分泌癌の定型および非定型カルチノイド、乳癌、神経芽腫、骨肉腫およびその他の肉腫、星状細胞腫、ウイルムス腫瘍ならびにシュワン細胞腫のマウス異種移植腫瘍モデルにおいて十分に許容される用量で、極めて著しい抗腫瘍活性を有するということが、非臨床試験の知見により明らかになっている。
【0064】
CD56+腫瘍を有する患者におけるIMGN901の第I相臨床試験では、IMGN901の最大耐容量は、6週間ごとに240mg/mの最大用量強度では、6週間ごとに60mg/m/週×4用量であった(Tolcherら,November 2002,14th EORTC−NCI−AACR Symposium on Molecular Targets and Cancer Therapeutics “A Phase I and Pharmacokinetic Study of BB10901,a maytansinoid immunoconjugate,in CD56 expressing tumors”)。主要な用量制限毒性は、75mg/m/週で治療した4患者のうちの2患者および67.5mg/m/週で治療した4患者のうちの1患者で観察された重度の無菌性髄膜炎様頭痛であった。頭痛は、一過性(24時間未満の持続時間)ではあったが、重度(グレード3、消耗性)であり、さらにIMGN901を投与することはできなかった。
【0065】
IMGN901の用量制限毒性に関する生物学的基礎は、神経系および/または造血細胞におけるCD56発現細胞に対するIMGN901処置の影響に関連し得る。他の抗原(CD56でない)を標的とするその他のいくつかの抗体−DM1イムノコンジュゲートは、第I相試験において、比較的高い用量でも無菌性髄膜炎頭痛のような重度の頭痛を誘発しなかった(Tolcherら,J Clin Oncol 2003 21:211;Galskyら,J Clin Oncol 2008 26:2147)。
【0066】
IMGN901の用量制限毒性である重度の頭痛などは、リツキシマブ、トラスツズマブおよびセツキシマブを含めた数多くのモノクローナル抗体療法に関連した、よく記載されている注入関連毒性とは明らかに異なる。これらの認可された抗体療法の実施はサイトカイン注入反応または過敏性反応を伴い、これらの反応は患者によりその重症度および強度が異なる(Chung,The Oncologist 2008,13:725)。注入反応は、発熱、悪寒、潮紅および嘔気を特徴とし、これらの症状の開始は注入中またはその直後に生じる。抗ヒスタミン剤および副腎皮質ステロイド剤の前投薬が、抗体による注入関連毒性の発生率または重症度を低下させることが報告されている。例えば、抗ヒスタミン剤と副腎皮質ステロイド剤で前治療した患者は、セツキシマブに対する注入反応がより少なく、かつ重度がより低かった(Sienaら,J Clin Oncol 2007;25(18 suppl);Abstract 4137)。一般にこのような予防レジメンは、用量制限ではない注入関連毒性を管理するために抗体治療剤と併用されてきた。したがって、同様の予防レジメンが、IMGN901の用量制限毒性として定義される全く別の毒性である重度の頭痛を予防し得る、または患者において実質的により高いIMGN901用量強度を可能にし得ることは予想されなかったであろう。
【0067】
本発明よりも前に、6週間ごとに1、8、15および22日目に3mg/分の初期注入速度での注入により投与されたIMGN901の最大耐容量が、60mg/mであることが報告された。最大用量強度は6週間で約240mg/mであった(Tolcherら,EORTC,Nov.2002)。2治療サイクルでの用量強度は12週間で480mg/mであった。
【0068】
癌治療の抗癌効果を最大化するためには、体内の腫瘍細胞を殺すことにより腫瘍を根絶するか少なくとも腫瘍サイズを減少させると同時に、毒性副作用を最小化するように、抗癌剤の用量を最大化することが重要である(Le Tourneauら,JNCI 2009 101:708)。意外なことに、例えばIMGN901の初期注入速度を低下させること、および副腎皮質ステロイド剤または抗ヒスタミン剤と併用する副腎皮質ステロイド剤の予防レジメンで患者を前治療することにより、例えばIMGN901を、(1)3週間ごとに1、8日目(2)3週間ごとに1、2、3日目または(3)4週間ごとに1、8、15日目のいずれかのスケジュールで投与した場合、著しく高い用量(最初の6週間の治療期間にわたり少なくとも25%の増加)で、かつ用量制限の重度の頭痛を誘発することなく患者に安全に投与し得ることが見出された。投与スケジュール(1)および(2)により6週間で少なくとも約360mg/mの用量強度を得ることができ、また投与スケジュール(3)により12週間で少なくとも約540mg/mの用量強度を得ることができる。
【0069】
治療有効量の抗体−マイタンシノイドコンジュゲートを含む既知の組成物を本発明において使用し得る。「治療有効量」は、例えば、腫瘍細胞に対する細胞毒性、または特定の癌に関連したその他の関連病状(1つまたは複数)の治療、治癒、予防もしくは改善の少なくとも1つの態様を促進し、個人において有意義な効果を示すのに十分な量を意味する。治療有効量は、個人において望まれる生物学的効果、治療されるべき状態ならびに/またはコンジュゲートおよび個人の具体的特徴によって異なり得る。したがって、本明細書に記載の方法に従って、通常は担当医(または組成物の投与に対して責任のある他の医療専門家)が各個人の患者を治療するために用いる組成物の量を決定する。
【0070】
抗体−マイタンシノイドコンジュゲートは、製薬学的用途、例えばそれを必要とするヒト宿主への投与などに対して許容される組成物に製剤化することが望ましい。この目的のために、好ましくは、コンジュゲート分子を生理的に許容される担体(例えば、添加剤または希釈剤)を含む組成物に製剤化する。生理的に許容される担体は公知であって、かつ容易に入手可能であり、緩衝剤、抗酸化剤、静菌剤、製剤をヒト患者の血液またはその他の体液と等張にする塩および溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁剤(例えば、界面活性剤)、ならびに保存剤がこれに含まれる。担体の選択は、少なくとも部分的には、標的組織および/または細胞の位置、ならびに組成物を投与するために使用する特定の方法によって決まる。薬物コンジュゲート製剤での使用に適した担体および添加剤の例は、例えば、国際出願(PCT)公開第00/02587号、同第02/060955号および同第02/092127号ならびにGhetieら,J.Immunol.Methods,112,267−277(1988)において開示されている。最も好ましくは、組成物は、緩衝剤、界面活性剤、等張量(tonicifying amount)の塩化ナトリウムおよび水を含む。
【0071】
本発明の一態様では、組成物は、(i)DM1と化学的に結合したhuN901を含む約5mg/mLのコンジュゲート、(ii)約10mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤、(iii)約0.01%のポリソルベート20、(iv)約120mMの塩化ナトリウムおよび(v)水(好ましくは、注射に適した水(WFI))を含み、この組成物のpHは約5.5である。
【0072】
抗体(または一般にタンパク質)を含む組成物は酸化により不安定になる。したがって、本発明の別の態様では、組成物は抗酸化剤をさらに含む。任意の適当な抗酸化剤を組成物において使用し得る。適当な抗酸化剤は当該技術分野で公知であり、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、トコトリエノール、ポリフェノール、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロテン、システインおよびメチオニンがこれに含まれる。組成物に関連して使用する抗酸化剤は、最も好ましくはメチオニンである。抗酸化剤は、任意の適当な濃度で組成物中に存在し得る。
【0073】
抗酸化剤に加えて、スクロースの添加により組成物をさらに安定化させ得る。抗体製剤を安定化させるためのスクロースの使用は当業者に公知である。任意の適当な量のスクロースを組成物において使用し得る。
【0074】
本明細書に記載の含水組成物(本明細書では「液体」または「水性」組成物とも呼ぶ)に加え、コンジュゲートを、(i)マイタンシノイドと化学的に結合した抗体を含む治療有効量のコンジュゲート、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤、(iv)凍結保護物質および(v)増量剤を含み、水で復元したときのpHが約5〜6である、凍結乾燥組成物中に含有させ得る。「凍結乾燥」は、組成物が真空下で凍結乾燥されていることを意味する。凍結乾燥は通常、溶質が溶媒(1つまたは複数)から分離されるように特定の製剤を凍結させることにより行う。次いで、溶媒を昇華(すなわち、一次乾燥)、次に脱離(すなわち、二次乾燥)により除去する。本発明の他の態様に関連して上に記載されている、コンジュゲート(すなわち、マイタンシノイドと化学的に結合した抗体)、緩衝剤、界面活性剤およびそれらの構成成分に関する記述も、前述凍結乾燥組成物の同じ態様に適用される。凍結乾燥組成物の復元前に、凍結乾燥組成物を構成する各構成成分の相対量を、コンジュゲート1mg当たりの添加剤(例えば、緩衝剤、界面活性剤、増量剤、凍結保護物質)のmg数で記載し得る。
【0075】
凍結および乾燥の間の組成物の有効成分の分解を防ぐために、凍結乾燥組成物は凍結保護物質、好ましくは非晶質の凍結保護物質をさらに含む。本明細書で使用される「凍結保護物質」という用語は、凍結の間に不安定な分子を保護する添加剤を指す。組成物中での使用に適した凍結保護物質は当業者に公知であり、例えば、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、グルコース、トレハロースおよびスクロースがこれに含まれる。最も好ましくは、凍結保護物質はスクロースである。凍結保護物質は、任意の適当な量で凍結乾燥組成物中に存在し得る。
【0076】
凍結乾燥組成物は、増量剤、好ましくは結晶化可能な増量剤をさらに含有し得る。増量剤は通常、凍結乾燥の結果として生成される「ケーク」に構造および重量を与えるために当該技術分野において使用される。当該技術分野で公知の任意の適当な増量剤を、凍結乾燥組成物に関連して使用し得る。適当な増量剤としては、例えば、マンニトール、デキストランおよびグリシンが挙げられる。組成物中で使用する増量剤は、最も好ましくはグリシンである。凍結乾燥組成物は、任意の適当な量の増量剤を含有し得る。
【0077】
したがって、本発明に従えば、5mg/mLのコンジュゲート(例えば、好ましくは抗体を含むコンジュゲート、例えばDM1と化学的に結合したhuN901など)を含有するように復元される凍結乾燥組成物の内容物は、好ましくは(i)コンジュゲート1mg当たり約0.3mgのコハク酸ナトリウム緩衝剤、(ii)コンジュゲート1mg当たり約0.02mgのポリソルベート20、(iii)コンジュゲート1mg当たり約1mgのスクロースおよび(iv)コンジュゲート1mg当たり約3.8mgのグリシンを含む。このような凍結乾燥組成物は、水で復元されると、好ましくは約5.5のpHを有する。さらに、凍結乾燥組成物を水で復元する場合、液体組成物に関連して上に記載したコンジュゲート、緩衝剤および界面活性剤の相対濃度に関する記述も前述凍結乾燥組成物に適用される。
【0078】
本明細書に記載の好適な態様に加え、組成物(液体または凍結乾燥形態に関係なく)は、追加の治療剤または生物学的に活性な薬剤を含み得る。例えば、特定の適応症(例えば、癌)の治療において有用な治療因子が存在していてもよい。組成物のインビボ投与に関連した腫脹および炎症ならび生理的苦痛を低減するために、イブプロフェンまたは副腎皮質ステロイド剤のような、炎症を制御する因子が組成物の一部であってよい。疾患に対する身体の自然防御を上方制御するために、免疫増強剤が組成物中に含まれていてもよい。ビタミンおよびミネラル、抗酸化剤ならびに微量栄養素を組成物と共投与してもよい。組成物の投与に伴う処置に関連した感染およびその他の障害の危険性を減少させるために、抗生物質、すなわち殺菌剤および殺真菌剤が存在していてもよい。
【0079】
本発明の方法は、ヒトへのコンジュゲートの投与を含む。
【0080】
組成物をヒトに投与する任意の適当な手段を本発明との関連において使用し得るが、通常、好ましくは、注射を介して、最も好ましくは注入を介して組成物をヒトに投与する。「注射」という用語は、ヒトの標的組織内に組成物を強制的に導入することを意味する。「注入」という用語は、組成物をヒトの組織、通常、好ましくは静脈内に導入することを意味する。組成物は、任意の適当な経路によりヒトへ投与し得るが、好ましくは、ヒト静脈内または腹腔内に投与する。しかし、本発明の方法を用いて腫瘍細胞を殺す場合は、腫瘍内投与が特に好ましい。組成物を注射により投与する場合、任意の適当な注射装置を用いて、組成物を腫瘍に直接投与し得る。例えば、一般の医療用注射器を用いて、組成物を皮下腫瘍内に直接注射し得る。
【0081】
本発明の第一の態様では、抗体−マイタンシノイドコンジュゲート、例えばIMGN901などを、3週間ごとに1日目および8日目のスケジュールで投与する。
【0082】
第一の態様では、IMGN901のような典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、21日ごとに1日目および8日目に、少なくとも約90mg/mの用量で、単一薬剤治療として静脈内に投与する。典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、1mg/分以下の速度で最初に注入する。忍容性が認められれば、続いて注入速度を3mg/分まで、好ましくは漸増的に、より好ましくは0.5mg/分の増分で増加させ得る。コンジュゲートの好適な用量は、所与の治療単位において90mg/mおよび112mg/mである。IMGN901のような典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートによる治療に先行して、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲート投与の前日に、および投与日の注入前、好ましくは注入の約1時間前に副腎皮質ステロイド剤の予防レジメンを行うが、患者は、副腎皮質ステロイド剤による前投薬も受けるべきである。この投与スケジュールは、6週間の少なくとも約360mg/mの抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートの用量強度をもたらし得る。
【0083】
本発明の第二の態様では、IMGN901のような典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、3週間ごとに1日目、2日目および3日目のスケジュールで投与する。
【0084】
第二の態様では、典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、3週間ごとに毎日3日間、単一薬剤治療として静脈内に投与する。IMGN901のような抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、少なくとも約30mg/mの用量で投与する。抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、1mg/分以下の速度で最初に注入する。忍容性が認められれば、続いて注入速度を3mg/分まで、好ましくは漸増的に、より好ましくは0.5mg/分の増分で増加させ得る。コンジュゲートの好適な用量は、所与の治療単位において30mg/m、36mg/m、48mg/m、60mg/mおよび75mg/mおよび94mg/mである。抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートによる治療に先行して、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲート投与の前日に、および投与日に、好ましくは注入の約1時間前に、副腎皮質ステロイド剤の予防レジメンを行うべきである。この投与スケジュールは、6週間の少なくとも約360mg/mの抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートの用量強度をもたらし得る。
【0085】
本発明の第三の態様では、IMGN901のような典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲート治療剤を、4週間ごとに1日目、8日目および15日目のスケジュールで投与する。
【0086】
典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、4週間ごとに1日目、8日目および15日目に、単一薬剤として静脈内に投与する。典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、少なくとも約60mg/mの用量で投与する。典型的な抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを1mg/分以下の速度で最初に注入する。忍容性が認められれば、続いて注入速度を3mg/分まで、好ましくは漸増的に、より好ましくは0.5mg/分の増分で増加させ得る。コンジュゲートの好適な用量は、所与の治療単位において60mg/m、75mg/m、90mg/mおよび112mg/mである。抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートによる治療に先行して、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲート投与の前日および当日に、好ましくは抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲート注入の約1時間前に、副腎皮質ステロイド剤の予防レジメンを行うべきである。この投与スケジュールは、12週間の少なくとも約540mg/mの抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートの用量強度をもたらし得る。
【0087】
IMGN901のような本発明のコンジュゲートの第四の態様では、4週間ごとに1日目、8日目および15日目、または3週間ごとに1日目および8日目のスケジュールで、他の抗癌剤または他の抗癌治療と組み合わせて治療を行う。抗癌剤は、癌治療において単独で、または組み合わせて使用される1つ以上の薬剤を意味する。同様に、抗癌治療は、癌治療において単独で、または組み合わせて使用される1つ以上の処置、レジメンまたは治療を意味する。例えば、レナリドマイドおよびデキサメタゾンと組み合わせた、またはエトポシドおよびカルボプラチンと組み合わせた典型的なIMGN901は、CD56陽性血液悪性腫瘍の治療に適応される。
【0088】
第四の態様では、IMGN901のようなコンジュゲートを、別の抗癌剤、例えばレナリドマイドとデキサメタゾンまたはエトポシドとカルボプラチンなどと組み合わせて静脈内に投与する。IMGN901を、4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/mの用量で、または3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約45mg/mの量で投与する。コンジュゲートを1mg/分以下の速度で最初に注入する。忍容性が認められれば、続いて注入速度を3mg/分まで、好ましくは漸増的に、より好ましくは0.5mg/分の増分で増加させ得る。好適なIMGN901の用量は、所与の治療単位において60mg/m、75mg/m、90mg/mおよび112mg/mである。治療に先行して、投与の前日に、および投与日に、好ましくは注入の約1時間前に、予防的ステロイドレジメンを行うべきである。この投与スケジュールは、12週間の少なくとも約540mg/mのIMGN901の用量強度をもたらし得る。
【0089】
デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロクトリゾン(hydroctorisone)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリマシノリオンアセトニド(trimacinolione acetonide)を含めた、一般に使用される既知の副腎皮質ステロイド剤を本発明において使用し得る。デキサメタゾンが好適なステロイド剤である。ジフェンヒドラミンを含めた既知の抗ヒスタミン剤を、本発明における予防的前治療として副腎皮質ステロイド剤と組み合わせて使用し得る。
【0090】
抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートによる、改良された本発明の治療方法および投与レジメンは、6週間の初回治療期間を従来の方法と比較した場合、少なくとも25%の用量強度の増加をもたらす。
【0091】
本明細書で引用される、刊行物、特許出願および特許を含めたすべての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれるということが個別にかつ具体的に明記され、かつその内容全体が本明細書に記載された場合と同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
実施例
以下の実施例は本発明をより詳細に記載するものであり、本発明を説明するが、限定するものではないことが意図される。
【0093】
以下に開示する改良されたIMGN901治療法は、6週間の初回治療期間を比較した場合、少なくとも25%の用量強度の増加をもたらす。
【0094】
実施例1.副腎皮質ステロイド剤による前治療および初期注入速度低下を伴うIMGN901治療とそれらを伴わないIMGN901治療との比較
MM、SCLCおよびMCCを評価する3つの第I相試験に登録された約150人の患者のデータにより、IMGN901の低い全身毒性が確認される。最も注目すべき有害事象(AE)は、頭痛を伴う、グレード3および4の髄膜炎様症状であった。いずれの試験における最大耐量(MTD)でも、本発明の投与スケジュールに従った低い注入速度および治療前の所定のステロイド予防の実施後に、髄膜炎様症状は後に報告されず、グレード3および4の頭痛は報告されなかった。臨床的に有意な血液学的パラメーターの変化、特に骨髄抑制の証拠は見られなかった。これまでに経験された大部分のAEは、この十分に前治療された癌患者の患者群において予想されたものと一致する。
【0095】
第一の試験では、最初に、予防的手段を施さずにIMGN901をIV注入により患者に投与した。2人の患者には薬物を75mg/mで、1人の患者には67.5mg/mで投与した。3人の各患者は、サイクル1の1日目に無菌性/化学的髄膜炎を有すると思われた。3人のすべての患者において、最初のIMGN901注入を受けてから約8〜12時間後に、重度の頭痛が生じた。各患者はTylenolおよびZofranを含む髄膜炎に対する治療に十分に応答し、患者の症状は急速に改善され、2〜5日で消散した。
【0096】
次に、3人のさらなる患者にIMGN901を60mg/mの用量で投与し、患者はサイクル1の1日目の最初の注入を受けた後に、SAEとして報告されるグレード3または4の頭痛を発症した。患者を入院させ、頭痛の治療を受けさせた。数日ですべての症状が消散した。
【0097】
次に、本発明による予防的手段を推奨するように、この試験のためのプロトコールを修正した。予防的手段は、IMGN901投与の前日および当日のデキサメタゾンを含んでいた。プロトコール修正の下では、予防的手段を用いて60mg/mの用量で治療した13人のさらなる患者において、重度の頭痛/無菌性髄膜炎は生じなかった。
【0098】
第二の臨床試験では、3つの計画された75mg/mでのIMGN901の1日投与量のうちの最初のものを1人の患者に投与した。予防的手段は施さなかった。患者は同じ日に頭痛を発症し、パラセタモール(アセトアミノフェン)による治療にもかかわらず頭痛が悪化した後、嘔吐のエピソードを生じた。コデインおよび制吐剤による追加の治療を行った。6日以内にすべての症状が消散した。この患者が、IMGN901を40分間で注入した後に重度の頭痛を発症したことを考慮し、6人のさらなる患者には、より低い1mg/分の注入速度でIMGN901による治療を行った。75mg/mの用量では、IMGN901に関連にしたグレード3または4の頭痛またはその他の毒性が観察されなかったが、次いで同用量で、より低い注入速度で治療した6人の患者のうち2人が、グレード2の頭痛を発症した。
【0099】
実施例2.十分に前治療したCD56陽性多発性骨髄腫患者における、3週間ごとに1日目、8日目のスケジュールでのIMGN901治療法
【0100】
21日ごとに1日目および8日目に、IMGN901を単一薬剤治療として、6週間の少なくとも360mg/mの用量強度が得られるように、少なくとも90mg/mの用量で静脈内に投与した。3人の各患者に40mg/m、60mg/m、75mg/mおよび90mg/mの投与レベルで投与し、また8人の患者に112mg/mの投与レベルで投与し、また6人の患者に140mg/mの投与レベルで投与した。最初にIMGN901を1mg/分の速度で注入した。忍容性が認められれば、1mg/分の初期注入速度を3mg/分まで増加させた。IMGN901による治療の前に、副腎皮質ステロイド剤の予防レジメンを行った。IMGN901投与の前日に、患者にデキサメタゾン8mg(または同様のステロイド同等物)をBIDで経口的に投与した。IMGN901投与の当日、注入の約1時間前に、患者にデキサメタゾン10mg(または同様のステロイド同等物)をIVで投与した。
【0101】
140mg/mで治療した1人の患者において、試験担当医師による報告で有効(partial response)が観察され、この患者はそのまま1年間治療を受けている。60、90および112mg/mの用量において、それぞれ1人の患者で3例のやや有効(minor response)が報告され、このうち2人は45週間以上継続した。11人の患者が安定(stable disease)であり、このうち4人の患者がそのまま24週間以上治療を受けている。10人の患者では、IMGN901治療期間が患者の疾患経過の初期に用いたいくつかのレジメンを上回っていた。これらの10人の患者のうち8人では、IMGN901治療期間が患者の疾患を治療するために用いた前回のレジメンよりも長かった(これら8人の患者ではIMGN901による合計治療期間=281週間であるのに対し、前回の骨髄腫レジメンの合計治療期間=69週間)。軽度から中等度までの頭痛、疲労および神経障害、ならびに軽度で一過性のいくつかの臨床検査異常が、もっともよく報告されたIMGN901関連の有害事象であった。
【0102】
実施例3.CD56陽性固形腫瘍患者における、3週間ごとに1日目、2日目、3日目のスケジュールでのIMGN901治療法
3週間ごとに毎日3日間、IMGN901を単一薬剤治療として静脈内に投与した。少なくとも60mg/mの用量でIMGN901を投与し、6週間の少なくとも360mg/mの用量強度を得た。患者には以下のように投与した。
【0103】
【表1】

【0104】
最初にIMGN901を1mg/分の速度で注入した。忍容性が認められれば、1mg/分の初期注入速度を3mg/分まで増加させた。IMGN901による治療の前に、予防的副腎皮質ステロイド剤レジメンを行った。IMGN901投与の前日に、患者にデキサメタゾン8mg(または同様のステロイド同等物)をBIDで経口的に投与した。IMGN901投与の当日、注入の約1時間前に、患者にデキサメタゾン10mg(または同様のステロイド同等物)をIVで投与した。
【0105】
36mg/mで治療した1人のメルケル細胞癌(「MCC」)患者は著効(complete response)を達成し、いかなる後続治療も受けずに5年以上無病である。60mg/mで治療した1人のMCC患者は、臨床検査で有効(partial response)であったが、後に著効(complete response)となり、17ヶ月間無病である。75mg/mで治療した1人の小細胞肺癌(「SCLC」)患者は、未確定の有効(partial response)であった(患者は難治性疾患を有していた)。全体で13人の患者が、1.3〜100パーセントの範囲の腫瘍体積の減少を経験した。さらに客観的奏効に対して、27人の患者が臨床評価および腫瘍測定で、プロトコール定義による安定(stable disease)であった。これには、(i)3人のMCC患者(4サイクルの治療を受けた2人および7サイクルの治療を受けた1人)および(ii)安定(stable disease)が少なくとも90日続いた3人のSCLC患者が含まれていた。6人の患者は、最新の前回治療よりも長い期間、IMGN901を投与された。
【0106】
実施例4.別の抗癌剤と組み合わせた、4週間ごとに1日目、8日目、15日目のスケジュールのIMGN901治療法
IMGN901を、レナリドマイドおよびデキサメタゾンと組み合わせて、4週間ごとに1日目、8日目、15日目に静脈内に投与する。IMGN901を、12週間で少なくとも45mg/mの用量で投与する。最初にIMGN901を1mg/分の速度で注入する。忍容性が認められれば、1mg/分の初期注入速度を3mg/分まで増加させる。初期注入速度を漸増的に、好ましくは0.5mg/分の増分で増加させる。本発明に従って投与し得るIMGN901の用量は、45mg/m、60mg/m、75mg/m、90mg/mおよび112mg/mである。12週間のIMGN901の用量強度は、用いる特定の投与スケジュールに応じて、少なくとも405mg/m、540mg/m、675mg/m、810mg/mまたは1008mg/mであることが予測される。レナリドマイドを4週間ごとに1日目〜21日目まで、1日1回25mgの用量で投与し、またデキサメタゾンを4週間ごとに1、8、15および22日目に、1日1回40mgの用量で投与し得る。レナリドマイドおよびデキサメタゾンは共に、IMGN901注入の約30分前に投与する。治療の前に、予防的ステロイドレジメンを行うべきである。IMGN901投与の前日に、患者にデキサメタゾン8mg(または同様のステロイド同等物)をBIDで経口的に投与するべきであり、またIMGN901投与の当日、注入の約1時間前に、患者にデキサメタゾン10mg(または同様のステロイド同等物)をIVで投与するべきである。患者に40mgでデキサメタゾンを投与するのであれば、注入1時間前のIVによる10mgのデキサメタゾン投与を省略する。
【0107】
この試験は、多発性骨髄腫の現在の治療レジメンの効果を向上させる投与レジメンを特定することを目的とする。血中および尿中の骨髄腫タンパク質の減少、無進行生存、進行時間および全生存期間の向上のようなパラメーターを測定することにより、効果を腫瘍応答に基づき評価する。
【0108】
本発明の好適な態様が、本発明を実施するための本発明者らが知る最良の形態を含めて、本明細書に記載されている。上述の記載を読めば、上記好適な態様の変更が当業者に明らかとなるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変更を用いることを予想し、また本発明者らは、本明細書に記載されている以外の方法で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、準拠法により許可される添付の特許請求の範囲において引用される対象物の修正および同等物をすべて含む。さらに、本明細書に別途明記されるか、または文脈と明らかに矛盾することがない限り、考え得るあらゆる変更における上記要素の任意の組合せが本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療のための方法であって、
治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、
続いて、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;ならびに(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、1mg/分以下の初期注入速度での注入により投与することと
を含む方法。
【請求項2】
前記癌治療法が哺乳動物腫瘍の治療をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートがIMGN901である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mならびに
(b)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約112mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/m
(b)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約36mg/m
(c)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約48mg/m
(d)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約60mg/mならびに
(e)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約75mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、小細胞肺癌;卵巣癌;非小細胞肺癌;メルケル細胞癌、肺大細胞神経内分泌癌、膵臓および消化管神経内分泌腫瘍からなる群より選択される神経内分泌腫瘍;乳癌;定型および非定型肺カルチノイド;神経芽腫;肉腫;骨肉腫;星状細胞腫;ウイルムス腫瘍;シュワン細胞腫;多発性骨髄腫;ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫;ならびに急性骨髄球性白血病からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記副腎皮質ステロイド剤が、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロクトリゾン(hydroctorisone)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリマシノリオンアセトニド(trimacinolione acetonide)からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記副腎皮質ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗癌剤の投与をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記前治療が、副腎皮質ステロイド剤と組み合わせた抗ヒスタミン剤をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミンである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を漸増的に3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を0.5mg/分の増分で3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
癌治療のための投与レジメンであって、
治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、
続いて、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、(1)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mの量;ならびに(2)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、1mg/分以下の初期注入速度での注入により投与することと
を含む投与レジメン。
【請求項15】
前記癌治療が哺乳動物腫瘍の治療をさらに含む、請求項14に記載の投与レジメン。
【請求項16】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートがIMGN901である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mならびに
(b)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約112mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約30mg/m
(b)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約36mg/m
(c)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約48mg/m
(d)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約60mg/mならびに
(e)3週間ごとに1日目、2日目および3日目に少なくとも約75mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、小細胞肺癌;卵巣癌;非小細胞肺癌;メルケル細胞癌、肺大細胞神経内分泌癌、膵臓および消化管神経内分泌腫瘍からなる群より選択される神経内分泌腫瘍;乳癌;定型および非定型肺カルチノイド;神経芽腫;肉腫;骨肉腫;星状細胞腫;ウイルムス腫瘍;シュワン細胞腫;多発性骨髄腫;ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫;ならびに急性骨髄球性白血病からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記副腎皮質ステロイド剤が、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロクトリゾン(hydroctorisone)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリマシノリオンアセトニド(trimacinolione acetonide)からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記副腎皮質ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記前治療が、副腎皮質ステロイド剤と組み合わせた抗ヒスタミン剤をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を漸増的に3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を0.5mg/分の増分で3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
癌治療のための方法であって、
治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、
続いて、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、(1)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/mの量;ならびに(2)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約45mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、別の抗癌治療と組み合わせて、1mg/分以下の初期注入速度での注入により投与することと
を含む方法。
【請求項27】
前記癌治療法が哺乳動物腫瘍の治療をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートがIMGN901である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/m
(b)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/m
(c)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/m
(d)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/m
(e)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約75mg/m
(f)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約90mg/mならびに
(g)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約112mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約45mg/m
(b)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約60mg/m
(c)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約75mg/m
(d)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mならびに
(e)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約112mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記別の抗癌治療がレナリドマイドおよびデキサメタゾンである、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
レナリドマイドを4週間ごとに、1日目〜21日目まで1日約25mgの量で投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
デキサメタゾンを4週間ごとに、1日目、8日目、15日目および22日目に1日約40mgの量で投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
デキサメタゾンを4週間ごとに、1日目、8日目、15日目および22日目に1日約40mgの量で投与する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
レナリドマイドおよびデキサメタゾンを経口投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記別の抗癌治療がエトポシドおよびカルボプラチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
3週間ごとに、エトポシドを1日目、2日目および3日目に約75〜120mg/mの量で投与し、かつカルボプラチンを1日目に約5〜6AUCの量で投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
エトポシドを約100mg/mの量で投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
カルボプラチンを約6AUCの量で投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
カルボプラチンを約6AUCの量で投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
エトポシドを経口投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
エトポシドを静脈内投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
カルボプラチンを静脈内投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記癌が、小細胞肺癌;卵巣癌;非小細胞肺癌;メルケル細胞癌、肺大細胞神経内分泌癌、膵臓および消化管神経内分泌腫瘍からなる群より選択される神経内分泌腫瘍;乳癌;定型および非定型肺カルチノイド;神経芽腫;肉腫;骨肉腫;星状細胞腫;ウイルムス腫瘍;シュワン細胞腫;多発性骨髄腫;ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫;ならびに急性骨髄球性白血病からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
前記副腎皮質ステロイド剤が、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロクトリゾン(hydroctorisone)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリマシノリオンアセトニド(trimacinolione acetonide)からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
前記副腎皮質ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項26に記載の方法。
【請求項47】
前記前治療が、副腎皮質ステロイド剤と組み合わせた抗ヒスタミン剤をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
前記抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を漸増的に3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を0.5mg/分の増分で3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
癌治療のための投与レジメンであって、
治療を必要とする被検体を予防的副腎皮質ステロイド剤により前治療することと、
続いて、抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、(1)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/mの量;ならびに(2)3週間ごとに1日目および8日目目に少なくとも約45mg/mの量からなる群より選択されるスケジュールで、別の抗癌治療と組み合わせて、1mg/分以下の初期注入速度での注入により投与することと
を含む投与レジメン。
【請求項52】
前記癌治療が哺乳動物腫瘍の治療をさらに含む、請求項51に記載の投与レジメン。
【請求項53】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートがIMGN901である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約45mg/m
(b)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約60mg/m
(c)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約75mg/m
(d)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約90mg/mならびに
(e)4週間ごとに1日目、8日目および15日目に少なくとも約112mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記抗CD56−マイタンシノイドコンジュゲートを、
(a)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約45mg/m
(b)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約60mg/m
(c)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約75mg/m
(d)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約90mg/mならびに
(e)3週間ごとに1日目および8日目に少なくとも約112mg/m
からなる群より選択される用量で投与する、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記別の抗癌治療がレナリドマイドおよびデキサメタゾンである、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
レナリドマイドを4週間ごとに、1日目〜21日目まで1日約25mgの量で投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
デキサメタゾンを4週間ごとに、1日目、8日目、15日目および22日目に1日約40mgの量で投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
デキサメタゾンを4週間ごとに、1日目、8日目、15日目および22日目に1日約40mgの量で投与する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
レナリドマイドおよびデキサメタゾンを経口投与する、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記別の抗癌治療がエトポシドおよびカルボプラチンである、請求項51に記載の方法。
【請求項62】
3週間ごとに、エトポシドを1日目、2日目および3日目に約75〜120mg/mの量で投与し、かつカルボプラチンを1日目に約5〜6AUCの量で投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
エトポシドを約100mg/mの量で投与する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
カルボプラチンを約6AUCの量で投与する、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
カルボプラチンを約6AUCの量で投与する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
エトポシドを経口投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
エトポシドを静脈内投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
カルボプラチンを静脈内投与する、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
前記癌が、小細胞肺癌;卵巣癌;非小細胞肺癌;メルケル細胞癌、肺大細胞神経内分泌癌、膵臓および消化管神経内分泌腫瘍からなる群より選択される神経内分泌腫瘍;乳癌;定型および非定型肺カルチノイド;神経芽腫;肉腫;骨肉腫;星状細胞腫;ウイルムス腫瘍;シュワン細胞腫;多発性骨髄腫;ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫;ならびに急性骨髄球性白血病からなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項70】
前記副腎皮質ステロイド剤が、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、ヒドロクトリゾン(hydroctorisone)、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾンおよびトリマシノリオンアセトニド(trimacinolione acetonide)からなる群より選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項71】
前記副腎皮質ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記前治療が、副腎皮質ステロイド剤と組み合わせた抗ヒスタミン剤をさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項73】
前記抗ヒスタミン剤がジフェンヒドラミンである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を漸増的に3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項75】
前記初期注入速度が忍容される場合に、注入速度を0.5mg/分の増分で3mg/分まで増加させることをさらに含む、請求項51に記載の方法。

【公表番号】特表2013−508400(P2013−508400A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535373(P2012−535373)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/053579
【国際公開番号】WO2011/050180
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】