説明

新規トリコデルマ(Trichoderma)遺伝子

トリコデルマレーシ(T. reesei)から単離された新規タンパク質配列について述べる。セルロース結合ドメイン含むタンパク質をエンドグルカナーゼしている2の遺伝子、すなわち、アラビノフラノジダーゼをエンコードしている遺伝子及びアセチルキシランエステラーゼをエンコードしている遺伝子を開示する。これらの配列、すなわち、CIP1及びCIP2は、セルロース結合ドメインを含む。これらのタンパク質は、布製造業、洗剤製造業並びにパルプ及び製紙業の工業分野で有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願に関するクロスリファレンス
本出願は、2003年5月29日に提出されたU.S.仮出願 No.60/474,411、タイトル、「新規トリコデルマ遺伝子」、Foreman et al. 及び、2003年6月3日に提出されたU.S.仮出願 No.60/475,826、タイトル、「新規トリコデルマ遺伝子」、Foreman et al.に対し優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による委託研究の下でなされた発明に対する権利の記述
この研究の一部は、米国エネルギー省との主契約番号DE-AC36-99GO10337の下、再生可能エネルギー研究所との下請け契約番号ZCO-30017-01により資金提供されたものである。従って、米国政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本明細書では4の遺伝子を開示する。すなわち、セルロース結合ドメインを含むタンパク質をエンコードしている2の遺伝子、1のアラビノフラノシダーゼおよび1のアセチルキシランエステラーゼである。本明細書では、これらの遺伝子から推定されるタンパク質および新規タンパク質を含む組成物も開示する。これらの組成物は特に、布製品、洗剤、バイオマス転換、飼料および食料、並びに、パルプおよび製紙産業において有用である。この遺伝子は、糸状菌、トリコデルマレーシ(Tricodema reesei)(ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)とも言う。これらの語は、本明細書では互換的に用いる。)から単離される。
【背景技術】
【0004】
セルロース及びヘミセルロースは光合成により生産される最も豊富な植物資源である。それらは、加水分解によりポリマー基質を単体糖類にすることができる細胞外酵素を作り出すバクテリア、イーストと真菌を含む、たくさんの微生物によって分解され、エネルギー源として使われることができる(Aro et al., J. Biol. Chem., vol. 276, no. 26, pp. 24309-24314, June 29,2001)。再生不可能な資源の限界が近づくにつれ、主要な再生可能資源となるセルロースの可能性は重要となる(Krishna et al., Bioresource Tech. 77: 193-196,2001)。生物学的工程利用してセルロースを効果的に利用することは、食料、飼料及び燃料の貯蔵量を増やすためのアプローチの一つである(Ohmiya et al., Biotechnol. Gen. Engineer. Rev. vol.14, pp. 365-414,1997)。
【0005】
セルロースは、β-1,4結合によって結合しているグルコース残渣の直鎖ポリサッカライドである。通常、セルロースは、キシラン及びグルコマンナン等のヘミセルロースのほかに、リグニンとも関係している。一般的にセルラーゼは各種活性および基質特異性を混合して有していることから、対象を絞り込んで使用することは困難であった。このような理由から、所望の活性だけを有するセルラーゼの確立およびセルラーゼの活性を促進するタンパク質の確立が望まれている。
【0006】
ヘミセルロースは、セルロースの他に、大部分の細胞壁に存在するいくつかのヘテロポリマー(ポリサッカライド基質)の一種である。それらの分子重量は、通常セルラーゼのものよりも少なく、結晶性セルロースと比較すると、未分化な構造を有する。しかし、「グラウンド」といわれる、鎖で交差繊維のネットワークを形成してペクチンとセルロースを結合する。したがって、ヘミセルロースの分解を高めることは価値がある。
【0007】
O-グルコシル加水分解酵素(E.C.3.2.1-)は、2以上の炭水化物間のグルコシド結合または、炭水化物と非炭水化物部分の間のグルコシド結合を加水分解する酵素の幅広いグループである。グルコシル加水分解酵素の分類システムは、配列の類似性に基づいて、60の異なるファミリーに分類される(HENRISSAT, B. AND BAIROCH, A. New families in the classification of glycosyl hydrolases based on amino acid sequence similarities. BIOCHEM. J. 293 781-788 (1993)、HENRISSAT, B. A classification of glycosyl hydrolases based on amino acid sequence similarities. BIOCHEM. J. 280 309-316 (1991)、DAVIES, G. AND HENRISSAT, B. Structures and mechanisms of glycosyl hydrolases. STRUCTURE 3 853-859 (1995)、及びHENRISSAT, B. AND BAIROCH, A. Updating the sequence-based classification of glycosyl hydrolases. BIOCHEM. J. 316 695-696 (1996))。アセチルキシランエステラーゼ(E.C.3.1.1.72)は、キシランからアセチル側鎖を分離する酵素のグループである。炭水化物エステラーゼは、配列の類似性に基づいて、13の異なるファミリーに分類される。これらのファミリーのうちの7つはアセチルキシランエステラーゼを含む(COUTINHO, P. M. AND HENRISSAT, B., 1999 Carbohydrate-active enzymes server at URL: < http://afmb.cnrs- mrs.fr/CAZY/index. html > )。
【0008】
セルロースの消化は、共同して作用するいくつかのタイプの酵素が必要である。少なくとも、3のカテゴリーに属する酵素がセルロースをグルコースに転換するために必要である。セルロース鎖をランダムに切るエンド(1,4)-ベータ-D−グルカナーゼ(EC.3.2.1.4)、セルロース鎖の端からセロビオシル単位を切るセロビオハイドラーゼ(EC.3.2.1.91)およびセロビオースおよび通うかデキストリンをグルコースに転換するベータグルコシダーゼ(EC.3.2.1.21)である。
【0009】
セルロースまたはヘミセルロース分解活性を有する改良されたタンパク質およびこのタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを提供することが本発明の目的である。セルロースまたはヘミセルロース結合活性を有する改良されたタンパク質およびこのタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドを提供することも本発明の目的である。この改良されたタンパク質は、細胞壁物質の分解、例えば、セルロースおよび/またはヘミセルロースの分解能が改良されている。このタンパク質は、例えば、バイオマスのような、植物の細胞壁の分解能を有する、他の酵素活性あるいは安定性を改善する。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本明細書で提供される新規な遺伝子を、cip1、cip2、axe2およびabf2と呼ぶ。本明細書では、新規遺伝子によりエンコードされる遺伝子産物も提供する。少なくとも2の遺伝子を、セルラーゼファミリーの遺伝子を用いて共発現させる。
【0011】
本発明の第一の側面は、本発明のポリヌクレオチドをエンコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドに関係する。
【0012】
1の態様において、本発明は、cip1コード配列に相補的な配列であるCIP1をエンコードする配列を有する単離ポリヌクレオチドおよびこのポリヌクレオチドを含む組成物を含む。このポリヌクレオチドは、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、または、これらのアンチセンスアナログである。
【0013】
他の態様において、cip1ポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1で表す核酸の相補体とハイブリダイズする、単離核酸分子を含む。この核酸分子は、セルロース結合活性を有するCIP1ポリペプチドをエンコードしている。
【0014】
他の態様において、このポリヌクレオチドは、配列番号1で表す配列およびCIP1タンパク質と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。特定の態様において、このポリヌクレオチドは、実質的に配列番号1の配列と同じ配列を含む。本発明は、好ましくは、少なくとも、約15−30ヌクレオチドの長さを有する、このポリヌクレオチドのフラグメントも意図している。
【0015】
第二の側面において、このCIP1ポリペプチドまたはタンパク質は、配列番号3および5で表す配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。
【0016】
他の態様において、本発明は、(i) 好ましくは少なくとも約20−100アミノ酸、より好ましくは約100から約200アミノ酸の長さを有する、CIP1フラグメント、及び(ii)CIP1を含む組成物を含む。各種態様において、このフラグメントは、CIP1のN末端ドメインまたはCIP1のC末端ドメインに対応している。
【0017】
1以上のセルラーゼおよびCIP1を含む酵素調製物を提供することは、本発明の目的である。
【0018】
第三の側面において、本発明は、このポリペプチドをエンコードし、適切な宿主内でこのポリペプチドの生産を制御する1以上の制御配列に作動可能に結合しているヌクレオチド配列を含んでいる、核酸構築体に関係する。
【0019】
本発明の第四の側面は、本発明の核酸構築体を含む組み換え発現ベクターに関係する。
【0020】
本発明はさらに、適切な宿主内で、効果的にタンパク質を発現する調節エレメントに作動可能に結合している、CIP1をエンコードする核酸配列、または、それらのスプライス変異体を含む、組み換え発現ベクターを提供する。
【0021】
本発明の第五の側面は、本発明の核酸構築体を含む、組み換え宿主細胞に関係する。
【0022】
本発明は、さらに、タンパク質の発現を効果的に行う条件下において、CIP1をエンコードする核酸配列を含む組み換え真核宿主細胞または原核宿主細胞の培養、組み換え技術を用いたCIP1の生産、並びに、CIP1の生産後に宿主細胞または培地からタンパク質を回収する方法を含む。
【0023】
本発明の第六の側面は、本発明のポリペプチドを生産する方法に関係する。この方法は、(a) ポリペプチドを生産することができる微生物の培養、及び、(b)このポリペプチドの回収を含む。
【0024】
第七の側面は、セルロースをエタノールに転換するのに有用な酵素組成物を提供することである。好ましい態様において、この酵素組成物は、CIP1を含む。この組成物は、さらに、エンドグルカナーゼ、および/または、セロビオハイドラーゼ、および/または、キシラナーゼ等の、付加的なセルラーゼまたはヘミセルラーゼ酵素を含む。この組成物は、CIP1を多く含む。
【0025】
さらに本発明は、cip1核酸及びCIP1タンパク質分析方法も提供する。
【0026】
CIP2
本発明の第一の側面は、本発明のポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドに関係する。
【0027】
1の態様において、本発明は、cip2コード配列に相補的な配列であるCIP2(配列番号7または配列番号9)をエンコードする配列を有する単離ポリヌクレオチドおよび/又はこのポリヌクレオチドを含む組成物を含む。このポリヌクレオチドは、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、または、これらのアンチセンスアナログである。
【0028】
他の態様において、cip2ポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下で、配列番号2で表す核酸の相補体とハイブリダイズする、単離核酸分子を含む。この核酸分子は、セルロース結合活性を有するCIP2ポリペプチドをエンコードしている。
【0029】
他の態様において、このポリヌクレオチドは、配列番号6で表す配列およびCIP2タンパク質(配列番号7)あるいは、それらの一部と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。特定の態様において、このポリヌクレオチドは、実質的に配列番号6の配列と同じ配列を含む。本発明は、好ましくは、少なくとも、15−30ヌクレオチドの長さのポリヌクレオチドのフラグメントを意図している。
【0030】
第二の側面において、このCIP2ポリペプチドまたはタンパク質は、配列番号7および9で表す配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。
【0031】
他の態様において、本発明は、(i) 好ましくは少なくとも約20−100アミノ酸、より好ましくは約100から約200アミノ酸の長さを有する、CIP2フラグメント、及び、(ii)CIP2を含む組成物を含む。各種態様において、このフラグメントは、CIP2のN末端ドメインまたはCIP2のC末端ドメインに対応する。
【0032】
1以上のセルラーゼおよびCIP2を含む酵素調製物を提供することは、本発明の目的である。
【0033】
第三の側面において、本発明は、このポリペプチドをエンコードし、適切な宿主内で、このポリペプチドの生産を制御する1以上の制御配列に作動可能に結合している、ヌクレオチド配列を含む、核酸構築体に関係する。
【0034】
本発明の第4の側面は、本発明の核酸構築体を含む組み換え発現ベクターに関係する。
【0035】
本発明はさらに、適切な宿主内で、効果的にタンパク質を発現する調節エレメントを作動可能に結合している、CIP2をエンコードしている核酸配列、または、それらのスプライス変異体を含む、組み換え発現ベクターを提供する。関連する側面において、本発明は、このベクターを含む宿主細胞を含む。
【0036】
本発明の第五の側面は、本発明の核酸構築体を含む、組み換え宿主細胞に関係する。
【0037】
本発明は、さらに、タンパク質の発現を効果的に行う条件下において、CIP2をエンコードする核酸配列を含む、組み換え真核宿主細胞または原核宿主細胞の培養、組み換え技術によるCIP2の生産、および、その後に宿主細胞または培地からタンパク質を回収する方法を含む。
【0038】
本発明の第六の側面は、本発明のポリペプチドを生産する方法に関係する。この方法は、(a) ポリペプチドを生産することができる微生物の培養、及び、(b)このポリペプチドの回収を含む。
【0039】
第七の側面は、セルロースをエタノールに転換するのに有用な酵素組成物を提供することである。好ましい態様において、この酵素組成物は、CIP2を含む。この組成物は、さらにエンドグルカナーゼ、および/または、セロビオハイドラーゼ、および/または、キシラナーゼ等の付加的なセルラーゼまたはヘミセルラーゼ酵素を含む。この組成物は、CIP2を多く含む。
【0040】
さらに本発明は、cip2核酸およびCIP2タンパク質の分析方法も提供する。
【0041】
AXE2
本発明の第1の側面は、本発明のポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドに関係する。
【0042】
1の態様において、本発明は、axe2コード配列に相補的な配列であるAXE2をエンコードする配列を有する単離ポリヌクレオチドおよび/またはこのポリヌクレオチドを含む組成物を含む。このポリヌクレオチドは、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、または、これらのアンチセンスアナログである。
【0043】
他の態様において、axe2ポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下で、配列番号14で表す核酸の相補的体とハイブリダイズする、単離核酸分子を含む。この核酸分子は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有するAXE2ポリヌクレオチドをエンコードしている。
【0044】
他の態様において、このポリヌクレオチドは、配列番号14で表す配列およびAXE2タンパク質(配列番号17または配列番号15)と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。特定の態様において、このポリヌクレオチドは、実質的に配列番号14の配列と同じ配列を含む。本発明は、好ましくは、少なくとも、15−30ヌクレオチドの長さを有するポリヌクレオチドのフラグメントを意図している。
【0045】
第二の側面において、このAXE2ポリヌクレオチドまたはタンパク質は、配列番号17または15で表す配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。
【0046】
他の態様において、本発明は、(i) AXE2フラグメント、好ましくは少なくとも約20−100アミノ酸、より好ましくは約100から約200アミノ酸の長さ、及び、(ii)AXE2を含む組成物を含む。各種態様において、このフラグメントは、AXE2のN末端ドメインまたはAXE2のC末端ドメインに対応する。
【0047】
1以上のヘミセルラーゼおよびAXE2を含む酵素調製物を提供することは、本発明の目的である。
【0048】
第三の側面において、本発明は、このポリペプチドをエンコードし、適切な宿主内で、このポリペプチドの生産を制御する1以上の制御配列に作動可能に結合している、ヌクレオチド配列を含む、核酸構築体に関係する。
【0049】
本発明の第四の側面は、本発明の核酸構築体を含む組み換え発現ベクターに関係する。
【0050】
本発明はさらに、適切な宿主内で、効果的にタンパク質を発現する調節エレメントに作動可能に結合している、AXE2又はフラグメントをエンコードしている核酸配列、または、それらのスプライス変異体を含む、組み換え発現ベクターを提供する。
【0051】
本発明の第五の側面は、本発明の核酸構築体を含む、組み換え宿主細胞に関係する。
【0052】
本発明は、さらに、タンパク質の発現を効果的に行う条件下において、AXE2をエンコードする核酸配列を含む、組み換え真核宿主細胞または原核宿主細胞の培養、組み換え技術を用いたAXE2の生産、および、その後に宿主細胞または培地からタンパク質を回収する方法を含む。
【0053】
本発明の第六の側面は、本発明のポリペプチドを生産する方法に関係する。この方法は、(a) ポリペプチドを生産することができる微生物の培養、(b)このポリペプチドの回収を含む。
【0054】
本発明の第7の側面は、セルロースをエタノールに転換するのに有用な、酵素組成物を提供することである。好ましい態様において、この酵素組成物はAXE2を含む。この組成物は、さらにエンドグルカナーゼ、および/または、セロビオハイドラーゼ、および/または、キシラナーゼ等の付加的なセルラーゼまたはヘミセルラーゼ酵素を含む。この組成物は、AXE2が豊富である。
【0055】
さらに本発明は、axe2核酸およびAXE2タンパク質の分析方法も提供する。
【0056】
ABF2
本発明の第1の側面は、本発明のポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドに関係する。
【0057】
1の態様において、本発明は、abf2コード配列に相補的な配列であるABF2をエンコードする配列を有する単離ポリヌクレオチドおよび/またはこのポリヌクレオチドを含む組成物を含む。このポリヌクレオチドは、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、または、これらのアンチセンスアナログである。
【0058】
他の態様において、abf2ポリヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下で、配列番号10で表す核酸の相補体とハイブリダイズする、単離核酸分子を含む。この核酸分子は、アラビノフラノシダーゼ活性を有するABF2ポリヌクレオチドをエンコードしている。
【0059】
他の態様において、このポリヌクレオチドは、配列番号10で表す配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有しており、ABF2タンパク質をエンコードしている。特定の態様において、このポリヌクレオチドは、実質的に配列番号10の配列と同じ配列を含む。本発明は、好ましくは、少なくとも、15−30ヌクレオチドの長さを有するポリヌクレオチドのフラグメントを意図する。
【0060】
第二の側面において、このABF2ポリペプチドまたはタンパク質は、配列番号11または13で表す配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、またはそれ以上の配列相同性を有する。
【0061】
他の態様において、本発明は、(i) 好ましくは少なくとも約20−100アミノ酸、より好ましくは約100から約200アミノ酸の長さを有する、ABF2フラグメント、及び(ii)ABF2を含む組成物を含む。各種態様において、このフラグメントは、ABF2のN末端ドメインまたはABF2のC末端ドメインに対応する。
【0062】
1以上のヘミセルラーゼおよびABF2を含む酵素調製物を提供することは、本発明の目的である。
【0063】
第三の側面において、本発明は、このポリペプチドをエンコードし、適切な宿主内で、このポリペプチドの生産を制御する1以上の制御配列に作動可能に結合している、ヌクレオチド配列を含む、核酸構築体に関係する。
【0064】
本発明の第四の側面は、本発明の核酸構築体を含む組み換え発現ベクターに関係する。
【0065】
本発明はさらに、適切な宿主内で、効果的にタンパク質を発現する調節エレメントに作動可能に結合している、ABF2をエンコードしている核酸配列、または、それらのスプライス変異体を含む、組み換え発現ベクターを提供する。関連する側面において、本発明はこのベクターを含む宿主細胞を含む。
【0066】
本発明の第五の側面は、本発明の核酸構築体を含む、組み換え宿主細胞に関係する。
【0067】
本発明は、さらに、タンパク質の発現を効果的に行う条件下において、ABF2をエンコードする核酸配列を含む、組み換え真核宿主細胞または原核宿主細胞の培養、組み換え技術を用いたABF2の生産、および、その後に宿主細胞または培地からタンパク質を回収する方法を含む。
【0068】
本発明の第六の側面は、本発明のポリペプチドを生産する方法に関係する。この方法は、(a)ポリペプチドを生産することができる微生物の培養、(b)このポリペプチドの回収を含む。
【0069】
本発明の第七の側面は、セルロースをエタノールに転換するのに有用な、酵素組成物を提供することである。好ましい態様において、この酵素組成物は、ABF2を含む。この組成物は、さらにエンドグルカナーゼ、および/または、セロビオハイドラーゼ、および/または、キシラナーゼ等の付加的なセルラーゼまたはヘミセルラーゼ酵素を含む。この組成物は、ABF2を多く含む。
【0070】
さらに本発明は、abf2核酸およびABF2タンパク質の分析方法を提供する。
【0071】
本発明の他の目的、技術的特長および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。本発明好ましい態様を示す、発明の詳細な説明および特定の実施例は、説明のためにのみ用いる。本発明の範囲及び精神を逸脱することなく種々の改良や改変を行うことは、当業者にとって自明のことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の定義および実施例を参照することによって、詳細に説明される。本明細書で引用する、すべての配列を含んだ、特許、及び、文献は、参照により本明細書に援用する。
【0073】
ここに違った形で定義されない限り、ここに使ったすべての技術の、そして科学用語は、一般的に、当業者によって理解されているのと同じ意味を持っている。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED., JohnWiley and Sons, New York (1994) 及び Hale and Marham, THE HARPER DICTIONARY OF BIOLoGY, Harper Perennial, New York (1991)は、本発明で用いられる数多くの用語の一般的な辞書である。
【0074】
本明細書で述べたものと同類のまたは等しい技術および物質は、発明の実施に用いることができるが、ここでは、好ましい太態様を開示する。数の範囲は範囲を定義している数を含めている。違った形で示されない限り、塩基配列は左から右に向かって5’末端から3’末端を表す;アミノ酸配列は、左から右に向かって、アミノ末端からカルボキシ末端を表す。専門家は特に本分野の定義と用語についてSambrook et al., MOLECULAR CLONING : A LABORATORY MANUAL (Second Edition), Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y., 1989, and Ausubel FMet al., Current Protocols in Molecular Biology, JohnWiley & Sons, New York, NY, 1993,を参考にすることができる。本発明は、説明された特定の方法、手段、試薬等が変更されるときに、これらに限定されないことは理解される。
【0075】
本発明は、セルラーゼ及びバイオマスの分解を含む、トリコデルマレーシ(T. reesei)遺伝子の核酸配列を提供する。この遺伝子は、工業に用いられるあるいは工業に必要とされている、酵素活性を有するタンパク質をエンコードしている。この酵素をエンコードする本発明のゲノム配列は、トリコデルマレーシ(T. reesei)ゲノムDNAの核酸配列と他の微生物の酵素遺伝子として知られている核酸配列を比較することにより同定される。本発明に先立ち、トリコデルマレーシの核酸配列、リーディングフレーム、エキソンおよびイントロンの位置、酵素の構造、並びに、食料、飼料、飲料、布製品、洗剤の製造についての工業的有用性については知られていない。限定をするわけではないが、この酵素遺伝子のポリヌクレオチドは、組み換え遺伝子の特徴付け、修飾、及び工業的使用を目的とする組み換え遺伝子を発現させるために、トリコデルマレーシの核酸配列との比較により同じあるいは似た生物活性または機能を有する異種の遺伝子を同定するために、同種の酵素遺伝子を同定するための他の近縁または遠縁の糸状菌の核酸配列との比較に用いるために、発現パターンの試験に用いる核酸配列に付加するためのオリゴマーの選択および作成のために、および、核酸免疫技術を用いた抗−タンパク−抗体の作成のために、用いることができる。ここで提供される配列情報は、化学的および物理的特徴づけがなされ、遺伝的に修飾された酵素の作成およびこの酵素を用いた試験に対する基礎となる。
【0076】
ここで引用する参考文献は、本発明と関係する組成物および方法を説明、および、開示する目的で、本明細書中に参照により援用される。
【0077】
ここで用いる「ポリペプチド」の語はペプチド結合で結合したアミノ酸残渣の単鎖よりなる化合物をいう。ここで用いる 「タンパク質」の語は「ポリペプチド」の語と同義であり、またはさらに2以上のポリペプチドの複合体をいう。
【0078】
「核酸分子」は、RNA、DNA及びcDNA分子を含む。遺伝暗号の退縮の結果として、CIP1のような与えられたタンパクをエンコードしている塩基配列の多様性が生まれる。本発明は、遺伝暗号の退縮により与えられたすべてのCIP1をコードする、可能な限り多くの変異塩基配列を含む。
【0079】
「異種の」核酸構築体または配列は、それが発現する細胞固有のものではない配列の一部を有している。制御配列に関する異種とは、発現を現在調節している同じ遺伝子を調節するために事実上機能しない制御配列(すなわちプロモーター又はエンハンサー)をいう。一般的に、異種の塩基配列はそれらのもともとの細胞又は遺伝子の一部には存在しないのもであり、感染、トランスフェクション、形質転換、顕微注入、エレクトロポーション又は同様の方法により細胞へ添加されたものである。「異種の」核酸構築体は、ネイティブの細胞の中で発見された制御シーケンス/DNAコーディングシーケンスの組み合わせと同じであるか、異なる制御シーケンス/DNAコーディングシーケンスを組み合わせたものを含む。
【0080】
ここで用いる「ベクター」という語は、異なる宿主細胞間を輸送することを目的とする核酸構築体である。「発現ベクター」とは、異種の細胞内で、相同なDNAフラグメントを取り込み、発現させる能力があるベクターをいう。多くの原核又は真核細胞のベクターは市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当該技術分野においてよく知られている。
【0081】
「発現カセット」又は「発現ベクター」は、目的細胞内のある特定の核酸を転写させる一連の特定の核酸要素と共に用いる組み換え処理により、または合成的に生産された核酸構築体である。組み換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA、ウイルス又は核酸フラグメントに取り込むことができる。典型的には、多くの塩基配列中の発現ベクターが取り込まれた組み換えカセット部分は、転写され、プロモーターになる。
【0082】
ここで用いる「プラスミド」という語は、クローニングベクターとして用いられる環状2本鎖DNA(duble-stranded(ds))構築体であり、染色体外にある自己複製する遺伝子要素を形成するものである。
【0083】
ここで用いる「選択マーカーをエンコードするヌクレオチド配列」の語は宿主細胞において発現できるヌクレオチド配列意味する。選択マーカーの発現により対応する選択因子の存在下、あるいは、必須栄養素の不存在下で発現遺伝子を含む細胞が成長できるようになる。
【0084】
ここで用いられる「プロモーター」という語は、遺伝子の下流側の転写に直接作用する核酸配列をいう。このプロモーターは一般的に目的遺伝子を発現する宿主細胞内に用いられる。このプロモーターは、他の転写又は翻訳調節核酸配列(「制御配列」ともいう)と共に、与えられる遺伝子の発現に必要である。一般的には、この転写又は翻訳調節配列には、プロモーター塩基配列、リボゾーム結合部位、転写開始又は転写終了塩基配列を含むがそれらに限られない。
【0085】
ここで定義される「キメラ遺伝子」又は「異種核酸構築体」は、調節領域を含む、異なる遺伝子部分を有する、非天然遺伝子(宿主細胞に導入されもの)を言う。宿主細胞の形質転換に関するキメラ遺伝子構築体は、通常、異種タンパク質のコーディング配列と、あるいは、選択マーカーのキメラ遺伝子の場合には、形質転換された細胞に対する抗体耐性を付与するタンパク質をエンコードしている選択マーカーと、作動可能に結合している転写調節領域(プロモーター)を有する。宿主細胞内の形質転換に関係する、本発明の典型的なキメラ遺伝子は、タンパク質コード配列及びターミネーター配列の構成要素となる転写調節領域、又はこれらを誘発する転写調節領域を含む。キメラ遺伝子構築体は、目的タンパク質の分泌が必要な場合には、シグナルペプチドをエンコードする第2のDNA配列も含む。
【0086】
核酸配列は、他の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに、「作動可能に結合している」。例えば、分泌リーダーをコードしているDNAは、もしそれが、ポリペプチドの分泌に関与するタンパク質として発現するなら、ポリペプチドに関するDNAと作動可能に結合する。プロモーター又はエンハンサーは、もしそれが、配列の転写に影響するなら、コード配列と作動可能に結合する。又はリボゾーム結合部位は、それが、転写を促進するような位置にあるならば、コード配列と作動可能に結合している。一般に「作動可能に結合」とは結合するDNA配列が隣接し、分泌開始端部の場合、隣接しかつリーディングフレーム中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。結合は、適宜の制限酵素認識部位で連結反応により達成される。そのような部位が存在しない場合、従来方法によりPCR用の合成オリゴヌクレオチド・アダプタ、リンカーまたはプライマーを用いる。
【0087】
ここで用いる、「遺伝子」の語はポリぺプチド鎖の生成に関するDNAの染色体フラグメントを意味し、コード領域(例えば、5’非翻訳(5’UTR)またはリーダー配列及び3’非翻訳(3’UTR)またはトレーラー配列)の前後に続く領域、及び個々のコードフラグメント(エクソン)間の介在配列(イントロン)は含んでも含まなくてもよい。
【0088】
通常、本明細書で述べる新規タンパク質を、エンコードしている核酸分子、または、それらのアナログまたはホモログは、中〜高ストリンジェンシー条件で、ここで提供される核酸配列に対応しているタンパク質に、ハイブリダイズすることができる。しかしながら、核酸配列によりエンコードされるタンパク質は、天然タンパク質として、同じ又は実質的に同じアミノ酸配列を有する一方で、核酸配列によりエンコードされる新規タンパク質は、実質的に異なったコード配列を包含したものにも、採用される場合がある。例えば、コーディング配列は、宿主により使用される具体的なコドンの頻度に応じて、特定の真核又は原核生物発現系内における、新規タンパク質のより早い発現を促進するように修飾される。例えば、Te'o, et al. は、 FEMS Microbiology Letters 190: 113-19, (2000)において、糸状菌における遺伝子発現の最適化について説明している。
【0089】
核酸配列は、2つの配列が中〜高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件下でお互いに特異的にハイブリダイズする場合、対象とする核酸配列に 「選択的にハイブリダイズ可能」であると考えられる。ハイブリダイゼーション条件は核酸結合複合体またはプローブの融点(Tm)に基づく。例えば、「最大ストリンジェンシー」は通常約Tm-5℃(プローブのTmより5℃低い)で起こり、「高ストリンジェンシー」はTmより約5〜10℃低く、「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmより約10〜20℃低く、及び「低ストリンジェンシー」はTmより約20〜25℃低い。機能上、最大ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションプローブと厳密な同一性またはほぼ厳密な同一性を有する配列を同定するために用いることができ、一方、中間または低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションはポリヌクレオチド配列相同体を同定または検出するために用いることができる。
【0090】
中〜高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は当業者に公知である(本明細書に援用するSambrook, et al., 1989, Chapters 9 and 11, 及び in Ausubel, F. M., et al., 1993を参照のこと)。高ストリンジェンシー条件の例としては、50%ホルムアミド、5X SSC、5X Denhardt’s溶液、0.5%SDS及び100μg/ml変性キャリアDNA中、約42℃でのハイブリダイゼーションを含み、続いて2X SSC及び0.5%SDS中、室温で2回洗浄し、0.1X SSC及び0.5%SDS中、42℃でさらに2回洗浄する。
【0091】
ここで用いる「組換え体」は、異種核酸配列の導入により修飾されたもの、又は、そのように修飾された細胞由来の細胞であり、細胞またはベクターに関するものを含む。従って、例えば組換え細胞は、人為的な介入により、所定の遺伝子を発現または発現させない条件下において、当該細胞の天然型(非組換え体)においては通常同一の形態で見ることのできない遺伝子を発現し、または当該細胞の天然遺伝子を異常発現する。
【0092】
ここで用いる「形質転換」、「安定な形質転換」又は「トランスジェニック」の語は、ゲノム内に統合された、または少なくとも2世代の間維持されたエピソームプラスミドとして非天然(異種)ポリヌクレオチド配列を有する細胞をいう。
【0093】
ここで用いる「発現」とは、ポリぺプチドが遺伝子の核酸配列に基づいて生成されるプロセスをいう。当該プロセスは転写及び翻訳の両方を含む。
【0094】
細胞内に核酸配列を挿入することの文脈上用いられる「導入」という語は、「形質感染」又は、「形質転換」又は「形質移入」及び核酸配列が、細胞内のゲノムに取り込まれ(例えば、染色体、プラスミド、プラスミド、又はミトコンドリアDNA)、自律レプリコン内に転化され、又は一時的な発現(例えば、核酸導入されたmRNA)の場所である、真核又は原核細胞内へ、取り込まれることを言う。
【0095】
本明細書で用いる「新規タンパク質」の語は、本明細書で開示されるABF2、AXE2、CIP1および/またはCIP2のうちの少なくとも1を意味する。
【0096】
「新規タンパク質発現」は、新規タンパク質の転写又は翻訳を言い、RNA前駆体、mRNA、ポリペプチド、翻訳後調節ポリペプチド、及びそれらの誘導体を含み、さらにトリコデルマロンギブラキアタム(Trichoderma. Longibrachiatum) (レーシ(reesei))、トリコデルマビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマコニンギ(Trichoderma koningii)、ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorin)、及び、ハイポクレアシュワイニッチ(Hypocrea schweinitzii)等の、関連種由来の新規タンパク質を有する生産物を言う。一例として、新規タンパク質の発現に対するアッセイは、新規タンパク質に対するウエスタンブロット、新規タンパク質mRNAに対するノザンブロット解析および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析を含む。
【0097】
「選択的スプライシング」は、複数のイソ型ポリペプチドを単一遺伝子から生成する方法を言い、該スプライシングは該遺伝子の全部ではないが、いくつかをプロセッシングする間、非連続エキソンをつなげる工程を含む。従って、特定のエキソンはいくつかの選択エキソンの1つに接続され、メッセンジャーRNAを形成する。この選択的にスプライスされたmRNAは、いくつかの部分が共通で、いくつかの部分が異なる、ポリペプチド(スプライス変異体)を生産する。
【0098】
「シグナル配列」という語は、細胞外タンパク質の成熟形成の分泌を促進するタンパク質のN-末端部分のアミノ酸配列部分を言う。この細胞外タンパク質の成熟形成は、分泌過程の間に切除されるシグナル配列を欠いている。
【0099】
「宿主細胞」という語は、ベクターを含み、発現構築体の複製、及び/又は転写又は、転写及び翻訳(発現)をサポートする細胞である。本発明で用いられる宿主細胞は、大腸菌のような原核生物の細胞又は、酵母菌、植物、昆虫、両生類又は哺乳類のような真核細胞である。一般的には、宿主細胞は糸状菌である。
【0100】
「糸状菌」という語は、当該技術分野において糸状菌であると認められる任意の又は全ての糸状菌を意味する。好ましい細菌は、アルペルギウス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、フサリウム(Fusarium)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、ペニシリウム(Penicillium)、フミコーラ(Humicola)、ニューロスポラ(Neurospora)、あるいは、有性型を有する種であるエメリセラ(Emericella)、ハイポクレア(Hypocrea)等から成る群より選択される。
【0101】
セロビオサッカライドという語は、例えば、セロビオースのように、2-8グルコース単位を含み、β-1,4結合を有する少糖類を言う。
【0102】
「セルラーゼ」の語は、セルロースポリマーをより短いセロオリゴ糖オリゴマー、セロビオース、及び/又はグルコースに分解する能力を有する酵素の分類をいう。エキソグルカナーゼ、エキソセロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、及びグルコシダーゼのようなセルラーゼの多くの例は、細菌、植物及びバクテリアを含むセルロース分解能を有する有機体から得られる。
【0103】
「セルロース結合領域」又は「CBD」又は「セルロース結合モジュール」又は「CBM」という語は、本明細書において、セルラーゼ又はそれらの誘導体のセルロース結合活性が含まれるセルラーゼのアミノ酸配列の部位又は酵素の領域を言う。領域とは、異なる昨日を実行する異なるタンパク質領域の一部である。従って、触媒コア領域(又は単なるコア)は、活性部位を含み、酵素反応を起こす。同様に、セルロース結合領域は、一般的にセルロースと、セルロース、セルロース誘導体またはそれらのその他の多糖類同等物を非共有結合にすることにより機能する。セルロース結合領域は構造上異なる触媒中心領域により、セルロース繊維の加水分解を実施、又は、促進し、通常、触媒中心と独立して機能する。従って、セルロース結合領域は、触媒コアに帰属する有意な加水分解活性を有する。他言すれば、セルロース結合部位は、触媒活性を有する構造成分とは区別されるセルロース酵素タンパク質の三次構造の構成要素である。もし、このタンパク質が1以上のモジュールを有していたなら、リンカーにより結合されている。
【0104】
ここで用いる「新規タンパク質をエンコードする遺伝子の発現の減少又は排除」とは、新規タンパク質をエンコードする遺伝子が遺伝子から削除されているために、組み換え宿主微生物によって発現できないこと、又は、機能的な新規タンパク質酵素が宿主微生物によって生み出されないように、新規タンパク質をエンコードする遺伝子が修飾されていることのどちらかを意味する。
【0105】
ここで「相同性%」の語は「同一性%」の語と交換可能に用いられ、配列アラインメントプログラムを用いて配置した際の、本発明のポリペプチドのいずれかをエンコードする核酸配列、又は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の間についての、核酸またはアミノ酸配列の同一性レベルをいう。
【0106】
(126)例えば、ここで用いる、相同性80%とは定義したアルゴリズムにより決定される配列同一性が80%であることと同じ意味であり、従って所定の配列の相同体は所定の配列長さと80%以上の配列同一性を有する。配列同一性の典型的なレベルは、限定されないが、所定の配列に対して80、85、90、95、98%またはそれ以上の配列同一性を含み、その一例は、本明細書に記載する本発明のポリペプチドのコード配列である。
【0107】
2つの配列間の同一性を決定するために使用できる典型的なコンピュータープログラムは、限定されないが、一連のBLASTプログラム、例えばBLASTN、BLASTX、及びTBLASTX、BLASTP及びTBLASTNなどであり、インターネット上(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)で公開されている。また、Altschul et al.、1990及びAltschul et al.、1997を参照されたい。
【0108】
配列サーチは所定の核酸配列をGenBank DNA配列及びその他の公共データベースにおける核酸配列と比較して評価する場合、一般的にBLASTNプログラムを用いて行う。BLASTXプログラムはGenBankタンパク質配列及びその他の公共データベース中のアミノ酸配列に対して全リーディングフレーム内で翻訳されている核酸配列をサーチするのに好ましい。BLASTN及びBLASTXの両方は11.0のオープンギャップ・ペナルティの初期値パラメーターを及び1.0の延長ギャップペナルティ用いて操作し、BLOSUM-62マトリックスを利用する。(Altschul, S. F., et al., NucleicAcids Res. 25: 3389-3402,1997を参照。)
2つ以上の配列間の「同一性%」を決定するために選択された配列の好ましいアラインメントは例えば、MacVectorバージョン6.5のCLUSTAL-Wプログラムを用いて実行し、10.0のオープンギャップペナルティ、0.1の延長ギャップペナルティ及びBLOSUM30類似マトリックス等の初期値パラメーターを用いて操作する。
【0109】
「変性遺伝子」又は「変性遺伝子をエンコードしている新規タンパク質」の語は、遺伝子の核酸配列が、コード配列の除去、付加、及び/又は、操作により変性されている、又は、発現するタンパク質のアミノ酸配列が修飾されていることを意味する。
【0110】
ここで用いる、「精製する」という語は、一般に、細胞を含む遺伝子組換された核酸またはタンパク質を生化学的精製、および/またはカラムクロマトグラフィーにかけることを意味する。
【0111】
ここで用いる「単離」及び「精製」の語は、天然に結合している少なくとも1の成分から取り除いた核酸またはアミノ酸(またはその他の成分)をいう。
【0112】
本明細書で用いる、「実質的に精製されたポリペプチド」の語は、本来関係しいてる物質を、調製物の重量の10%まで含む、ポリペプチド調製物を言う。ポリペプチド以外の物質は少ないほど好ましく、ポリペプチド以外の物質を、調製物の重量に対して、8%まで、6%まで、5%まで、4%まで、3%まで、2%まで、1%まで、0.5%まで含むものが好ましい。従って、実質的に精製されたポリペプチドは、少なくとも92%純正である。すなわち、調製物中に少なくとも92%ポリペプチドを含んでいる。そして、このパーデンテージは高いほど好ましく、実質的に精製されたポリペプチドは、少なくとも94%純正であり、少なくとも95%純正であり、少なくとも96%純正であり、少なくとも97%純正であり、少なくとも98%純正であり、少なくとも99%純正であり、少なくとも99.5%純正である。本明細書に開示されたポリペプチドは、実質的に純正な形態であることが好ましい。すあんわち、本明細書で開示するポリペプチド調製物は、本来関係のあるポリペプチド以外の物質を基本的には含んでいないことが好ましい。以上のことは、既知の組換え技術を用いてポリペプチドを調製することにより実行可能である。本明細書では、「実質的に精製されたポリペプチド」の語は、「単離ポリペプチド」及び「単離された形態のポリペプチド」と動議に用いる。
【0113】
ここで用いる「活性の」又は「生物学的に活性の」とは、ある特定のタンパク質と関係のある生物学的活性を言い、ここでは、互換的に使用される。例えば、プロテアーゼと関係する酵素活性はタンパク質分解であり、実際に、活性を有するプロテアーゼはタンパク質分解活性を有している。このことは、与えられたタンパク質の生物活性は一般に当業者によってそのタンパク質に帰属するどのような生物活性でも言うと理解される。
【0114】
ここで用いる「濃縮する」という語は、野生型又は自然発生する細菌性のセルラーゼ組成物に見られる新規タンパク質よりも相対的に高い濃度で存在する新規タンパク質のことを意味する。
【0115】
酵素溶液中に用いる場合、新規タンパク質組成物は、CIPタンパク質では、セルラーゼ組成物中に見られる任意のCBH及びエンドグルカナーゼ成分を高めるのに十分な量が添加される。アラビノフラノシダーゼ及びアセチルキシランエステラーゼに対しては、キシラナーゼの活性を高めるのに十分な量が添加される。新規タンパク質により提供される所望の高められた活性に依存して、所定量の新規タンパク質組成物が添加される。当業者はこの量を速やかに決定することができる。しかしながら、酵素溶液中に用いる、新規タンパク質の重量パーセントは、好ましくは約1、好ましくは約5、好ましくは約10、好ましくは約15、又は、好ましくは約20重量パーセントから、好ましくは約25、好ましくは約30、好ましくは約35、好ましくは約40、好ましくは45、又は好ましくは約50重量パーセントまでである。さらに、好ましい範囲は、約0.5から15重量パーセント、約0.5から20重量パーセント、約1から約10重量パーセント、約1から約15重量パーセント、約1から約20重量パーセント、約1から約25重量パーセント、約5から約20重量パーセント、約5から約25重量パーセント、約5から約30重量パーセント、約5から約35重量パーセント、約5から約40重量パーセント、約5から約45重量パーセント、約5から約50重量パーセント、約10から約20重量パーセント、約10から約25重量パーセント、約10から約30重量パーセント、約10から約35重量パーセント、約10から約40重量パーセント、約10から約45重量パーセント、約10から約50重量パーセント、約15から約20重量パーセント、約15から約25重量パーセント、約15から約30重量パーセント、約15から約35重量パーセント、約15から約40重量パーセント、約15から約45重量パーセント、約15から約50重量パーセントである。
【0116】
本明細書で用いるトリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)は、アメリカンタイプカルチャーコレクションから得たものである。しかしながら、他の微生物源も、対応するポリペプチド相同体を同定するために用いることができる。ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)は、トリコデルマレーシトリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)と同義に用いられる。
【0117】
ここで用いる見出しは、明細書全体より参照される本発明の各側面又は実施態様を限定するものではない。従って、以下で定義されている語は、明細全体を参酌して定義されなければならない。
【0118】
1. 宿主細胞微生物
糸状菌はすべて真菌類及び卵菌類に再分類される。糸状菌は、菌糸の伸長と偏好気性である炭素代謝による栄養生長を伴う、キチン、グルカン、キトサン、マンナン、および他の複合多糖類から構成されている細胞壁を持っている栄養菌糸によって特徴付けられている。
【0119】
本発明では、糸状菌親細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)、例えば、トリコデルマロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマコニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマハルジアウム(Trichoderma harzianum )、ペニシリウム属(Penicillium sp.)、 フミコーラインソランス(Humicola insolens)及びフミコーラグリセア( and Humicola grisea)を含むフミコーラ属(Humicola sp.)、クリソスポリウムルクノエンンス(C.lucknowense)を含むクリソスポリウム属(Chrysosporium sp.)、グリオクラジウム属(Gliocladium sp.)、アスペルギウス属(Aspergillus sp.)、フサリウム属(Fusarium sp.)、ニューロスポラ属(Neurospora sp.)、ハイポクレア属(Hypocrea sp.)及びエメリセア属(Emericella sp.)であるがこれらに限られない。ここで用いる「トリコデルマ(Trichoderma )」又は「トリコデルマ属(Trichoderma sp.)」という語は、以前にトリコデルマとして分類されているか、トリコデルマとして現在分類されているどのような細菌系統をも言う。
【0120】
1の実施態様では、糸状菌親細胞は、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)、 アスペルギウスアワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギウスアキュレイタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギウスニヂュランス(Aspergillus nidulans) 細胞である。
【0121】
他の実施態様では、糸状菌親細胞は、トリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)細胞である。
【0122】
II.分子生物学
1つの実施態様において、本発明は糸状菌の中で機能的するプロモータの制御下で新規遺伝子を発現することを提供する。それゆえ、本発明は、組み換え遺伝子の分野の既存技術を用いる。本発明に用いる一般的方法が開示されている基本テキストには、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed. 1989);Kriegler, Gene Transfer and Expression : A Laboratory Manual (1990); 及びAusubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology(1994)がある。
【0123】
A. 新規配列の同定方法
新規タンパク質をエンコードしているDNA配列を単離するために用いる方法は、相同なDNAプローブを用いたcDNA及び/又はゲノムライブラリーのスクリーニング及び新規タンパク質に対する活性測定又は抗体を用いた発現のスクリーニングを含め、この技術分野においてよく知られているが、これらに限られない。これらの方法のいくつかは、Sambrook, et al. 又は in CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, F. Ausubel, et al., ed. Greene Publishing and Wiley- Interscience, New York (1987) ("Ausubel")に記載されている。
【0124】
トリコデルマレーシ(T.ressi)由来の5000を越すcDNAが、生成され、又は配列決定されている。バイオマスを分解する役割を果たすと予測される新しい酵素をエンコードする4のcDNAが発見された。
【0125】
オープンリーディングフレームを、トリコデルマレーシ(T.ressi)由来cDNAライブラリーのクローニングに続いて、部分的又は全体的な配列決定により解析し、さらに配列解析ソフトウェアを用いて解析した後、公的あるいは私的データーベースの既知の配列との相同性を調べた。
【0126】
核酸配列は、初めに、予測される、コード配列、イントロン、及びスプライスジャンクションを同定することができるジーンスキャン(Genescan)及びビルマーM(Gilmmer M)(ジーンリサーチ研究所(The institute of Geneme Resarch)、ロックビル(Rockvill)、ニューメキシコ(NM))等のソフトウェアプログラムを用いて、注記が付される。さらに、コード領域及び他の遺伝子特性の正確な特徴を絞りこんで確立するために、この核酸配列の自動的又は手動的な修正を行う。
【0127】
B. 核酸構築体/発現ベクター
新規タンパク質をエンコードする天然のまたは合成のポリヌクレオチドフラグメントは、糸状菌又は酵母菌細胞に導入されることが可能で、複製することができる非相同核酸構築体又はベクターに組み込まれる。ここで開示しているこのベクターと方法は、新規タンパク質を発現する宿主細胞に用いることに適している。導入される細胞の中で複製され、成長できる限り、どのようなベクターでも使用される。数多くの適したベクター及びプロモーターは本技術分野において知られており、商業的に入手可能である。クローニング及び発現ベクターはSambrook et al., 1989、Ausubel FM et al., 1989、 及びStrathern et al., The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, 1981において開示されており、それらは明示的に参照によってここに組み込まれる。細菌(糸状菌)に対する適切な発現ベクターは、van den Hondel, C. A. M. J.J.et al. (1991) In: Bennett, J. W. and Lasure, L.L.(eds.) More Gene Manipulations in Fungi. Academic Press, pp.396-428に記載されている。適切なDNAシーケンスは、さまざまな処置によって、プラスミドまたはベクター(「ベクター」としてここに集合的に参照される)に挿入される。一般的に、DNAシーケンスは標準的な操作法によって適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入される。そのような処置と関連したサブクローニング処置は、当業者に良く知られている。
【0128】
新規タンパク質をコードする配列を有する組換糸状菌は、選ばれた糸状菌系統の細胞の中に新規タンパク質をコードする配列を含む異種の核酸構築体を導入することによって作り出される。
【0129】
一旦変新規タンパク質核酸配列の好ましい形質が得られると、それは様々な方法により変更される。この配列の非コーディングフランキング領域を含む所で、フランキング領域は切除、変異誘発などを受ける。従って、転位、転換、欠失、および挿入が自然に存在する配列上で起こる。
【0130】
選ばれた新規タンパク質のコーディング配列は、よく知られた組換技術に従って適当なベクターに挿入され、異種タンパク質の発現が可能な糸状菌を形質転換するために用いられる。遺伝コード固有の縮退のため、実質的に同じかまたは機能的に同じアミノ酸配列をエンコードする他の核酸配列は、新規タンパク質 をクローンし、発現するために使われる。従って、コード領域の中のそのような置換が本発明によってカバーされた配列変異体に入ることは高く評価される。
【0131】
上で説明したように、本発明はまた新規タンパク質-エンコーディング核酸配列の1以上から成る組換型の核酸構築体を含む。この構築体は本発明の配列へ前に向けて又は逆向きに挿入されているプラスミド又はウイルスのベクターのようなベクターから成る。
【0132】
非相同核酸構築体は新規タンパク質コード配列を:(i)分離して;(ii) 融合タンパク質又は新規タンパク質コード配列が優性形質コード配列である所のシグナルペプチドコード配列のような付加的コード配列との組み合わせで;(iii) 適切な宿主中のコーディング配列の発現のために効果的なプロモーター及びターミネーターエレメント、または5’及び/又は3’の非翻訳領域のような、イントロン及び制御エレメントのような非コード配列との組み合わせで、及び/又は(iv) 新規タンパク質コーディング配列が非相同遺伝子であるベクターまたは宿主の環境の中に含まれる。
【0133】
本発明の1の態様において、非相同核酸構築体は確立された糸状菌及び酵母菌の系統が好む状態で、インビトロにおいて新規タンパク質エンコーディング核酸配列を細胞内へ運搬するのに用いる。長期間に渡り新規タンパク質を安定して生産するような発現が好まれる。安定した形質転換体を生成する効果的などのような方法でも、本発明を行うことにおいて使われることになる。
【0134】
適切なベクターは典型的には、選択可能マーカーをエンコードしている核酸配列、挿入部位及び適した制御エレメント、すなわち、プロモーター及びターミネーター配列を有している。このベクターは、例えば、イントロン及び制御エレメントのような非コード配列を含む調節領域、すなわち、コード配列と操作可能に結合する宿主細胞(及び/又は修正された可溶性のタンパク質抗原コード配列が正常に表現されないベクター又は宿主細胞環境)内でコード配列を発現するのに効果的なプロモーター及びターミネーターエレメント又は、5’及び/又は3’非翻訳領域からなる。数多くの適切なベクター及びプロモーターは本技術分野においてよく知られており、多くは商業的に入手可能である。そして/又は、Sambrook,et al.、(上記)に記載されている。
【0135】
典型的なプロモーターは構造プロモーター及び誘発プロモーターの両方を含み、その例は、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、RSVプロモーター、EF-1αプロモーター、説明される(ClonTechとBASF)ようにtet-onまたはtet-offシステムの中にtet応答エレメント(TRE)を含んでいるプロモーター、ベータアクチンプロモーター、および特定の金属塩の添加によって上向き調節されるメタロチオニンプロモーターを含む。プロモーター配列は、発現目的に対して特定の糸状菌によって認識されるDNA配列である。それは新規タンパク質ポリペプチドをエンコードしているDNA配列と操作可能に結び付く。そのような結合は、開示された発現ベクターの中で新規タンパク質ポリペプチドをエンコードしているDNA配列の開始コドンに対するプロモーターの位置合わせから成っている。このプロモーター配列は、新規タンパク質ポリペプチドの発現を伝達する転写と翻訳制御配列を含んでいる。このプロモーターの例として、アスペルギウス ニガー(Aspergillus niger)A.アワモリ(A. awamori)又は A.オリゼア(A. oryzae)由来の グルコアミラーゼ、アルファ-アミラーゼ、 又は アルファ-グルコシダーゼ をエンコードしている遺伝子;A.ニドゥランス(A.nidulans)のgpdA oliC又はtrpC 遺伝子;ニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)のcbh1 又はtrp1 遺伝子;A. ニガー(A.niger) 又は リゾムコアミエヘイ(Rhizomucor miehei)のアスパラギン酸プロテイナーゼエンコード遺伝子;H. ジェコリーナ(H. jecorina)(T.レーシ(T. reesei))のcbh1、cbh2、egl1、egl2、又は他のセルラーゼをエンコードしている遺伝子を含む。
【0136】
適切な選択マーカーの選択は宿主細胞に依存し、異なる宿主に対する適切なマーカーは本技術分野においてよく知られている。典型的な選択マーカーの遺伝子は、A.ニドゥランス(A.nidulans)又は T.レーシ(T. reesei)由来のargB、 A.ニドゥランス(A. nidulans)由来のamdS、ニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)あるいはT.レーシ(T. reesei)由来のpyr4、 アスペルギウス ニガー(Aspergillus niger)又は A.ニドゥランス(A.nidulans)由来のpyrGを含む。さらに典型的な選択マーカーは、非相同核酸構築体の中でtrp-、pyr-、leu-および同類のものなどの突然変異系統の変換に使われた非相同核酸構築体に含まれているtrpc、trp1、oliC31、 niaD 又は leu2を含むけれどそれらに限定されない。
【0137】
そのような選択マーカーは、糸状菌によって通常新陳代謝させられない代謝産物を利用する能力を転換体に与える。例えば、アセトアミダーゼ酵素をエンコードしているH. ジェコリーナ(H. jecorina)由来のamdS遺伝子は転換体細胞が窒素源としてアセトアミドを利用することを可能にする。この選択マーカー(例えば、pyrG)は、選択最小培地の上で成長する栄養要求変異体系統の能力を復元し、あるいは、選択マーカー(例えば olic31)は、抑制薬または抗生物質があると成長する能力を転換体に与える。
【0138】
配列をコードしている選択マーカーは、本分野で一般的に用いられている方法を用いて任意の適切なプラスミド内へクローンされる。典型的なプラスミドはpUC18、pBR322、pRAX 及びpUC100を含む。このpRAX プラスミドはA. ニガー(A.niger)内でも複製することができるA.ニドゥランス(A.nidulans)由来の AMA1 配列を含んでいる。
【0139】
本発明の実行に関しては、違った形で示されない限り、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の分野において知られている従来の技術を使用する。そのような技術は文献において十分に説明される。例えば Sambrook et al., 1989; Freshney, ANIMAL CELL CULTURE, 1987、Ausubel, et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, N. Y., 1993、及び、 Coligan et al., CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY 1991を参照のこと。これらの文献を参照により本明細書に援用する。
【0140】
C. 宿主細胞を形質転換させる方法
本発明では、親糸状菌種の例は、トリコデルマ属(Trichoderma)、例えば、トリコデル マレーシ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ コニンギ(Trichoderma koningii);ペニシリウム属(Penicillium sp.)、フミコーラ インソレンス(Humicola insolens)を含むフミコーラ属(Humicola sp.)、アスペルギウス属(Aspergillus sp.)、クリソスポリウム属(Chrysosporium sp.)、フサリウム属( Fusarium sp. )ハイポクレア属(Hypocrea sp.)及び エメリセラ属(Emericella sp.)を含むがそれらに限られない。本明細書で用いる「トリコデルマ(Trichoderma)」又は「トリコデルマ属(Trichoderma sp.)」の語は、以前よりトリコデルマと分類されているものと、近年トリコデルマと分類されうようになった系統を含む。
【0141】
新規タンパク質を発現するために、処理及び/又は修飾される親細胞の例は、糸状菌を含むがこれらに限定されない。本発明を実施するために用いる適切な細胞の例は、アスペルギウス(Aspergillus)及びトリコデルマ(Trichoderma)であるがこれらに限定されない。
【0142】
ある好ましい実施態様では、この糸状菌親細胞は、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)、アスペルギウスアワモリAspergillus awamori、アスペルギウスチュビンゲンシス(Aspergillus tubingensis)、アスペルギウスホエチダス(Aspergillus foetidus)、 アスペルギウスオリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギウスソザエ(Aspergillus sojae)、 アスペルギウスアキュレアタスAspergillus aculeatus, or アスペルギウスニドゥランスAspergillus nidulans、又は細胞である。
【0143】
他の好ましい実施態様では、この糸状菌親細胞は、ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina)である、この細胞はトリコデルマレーシ(T.ressi)細胞とも言われる。
【0144】
新規タンパク質をエンコードするDNA配列がDNA構築体の中へクローン化された後、このDNAは微生物の形質転換に用いられる。本発明に関する新規タンパク質の発現を目的とするこの微生物には、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)由来の種を含めることが好ましいであろう。従って、本発明に関する変異CBHIセルラーゼの調製のための好ましいモデルは、すくなくとも変異BCHIの一部又は全てをエンコードしているDNAフラグメントからなるDNA構造を有する形質転換されたTrichoderma sp.宿主細胞である。このDNA構造は一般的にはプロモーターに機能的に付加される。この形質転換させた宿主細胞は新規タンパク質を発現するような条件下で成長させられる。その後、目的のタンパク質生成物は実質的に均質に精製させる。この新規タンパク質は実質的に純正な形態であることが望ましい。同様に、この新規タンパク質は基本的に純正な形態であることが望ましい。
【0145】
しかしながら、変異CBHIをエンコードする与えられたDNAを最もよく発現する媒介はH.ジェコリーナ(H. jecorina)(すなわち、トリコデルマレーシ(T. reesei))とは違うものであるということは事実であるようだ。従って、新規タンパク質のために、系統発生的な類似性を持つ形質転換宿主の中でタンパク質を発現することはとても有利になるであろう。別の実施態様において、アスペルギウスニガー(Aspergillus niger)が発現媒体として用いられた。アスペルギウスニガー(A.niger)を用いた形質転換技術についてはWO 98/31821参照のこと。この記載は参照により本発明に組み込まれる。
【0146】
従って、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)の発現システムは、説明に役立つという目的だけのために、そして本発明の新規タンパク質を発現するための1つのオプションとして提供される。しかしながら、新規タンパク質を発現させるためには、最適な発現宿主を決定することを考慮すべきであるということが適切であると考えうるならば、新規タンパク質をエンコードしているDNA発現がこのことに含まれることは、当業者は理解するだろう。さらに、当業者は、入手可能なツールを利用しているルーチン的な手法を通して特定の遺伝子のために最もよい表現システムを選ぶことが可能である。
【0147】
D. 新規タンパク質の発現
必要とされる特定の発現方法を使用いずに、新規タンパク質を表現するために、本発明の方法は使用細胞に依存する。
【0148】
本発明は新規タンパク質をエンコードしている核酸配列からなる発現ベクターであって、形質を変換、転換、又は移入された宿主細胞を提供する。温度、pHのような培養条件は形質変換、形質転換又は形質移入していない親宿主細胞に対して用いているものと同じであり、それらは本技術分野でよく知られている。
【0149】
1のアプローチにおいて、糸状菌細胞又は酵母細胞は宿主細胞株の中で形質転換される。つまりこの細胞株の中で発現される新規タンパク質をエンコードするDNAセグメントに結合可能であるプロモーター又は、生物学的活性を有するプロモータフラグメント又は1以上の(例えば、一続きの)エンハンサーにより形質転換される。
【0150】
従って、本発明は、対応する形質転換されていない親糸状菌に対して、新規タンパク質を生産又は発現するのに効果的な方法で、修飾、選択、及び培養された細胞を含む糸状菌を提供する。
【0151】
新規タンパク質を発現をさせ及び/又は変換させる親糸状菌種の例は、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)、ペニシリウム属(Penicillium sp.)、フミコーラインソレンス(Humicola insolens)を含むフミコーラ属(Humicola sp.)、アスペルギウス属(Aspergillus sp.)、クリソスポリウム属(Chrysosporium sp.)、フサリウム属( Fusarium sp.)ハイポクレア属(Hypocrea sp.)及び エメリセラ属(Emericella sp.)を含むがそれらに限られない。
【0152】
新規タンパク質を発現している細胞は、通常、親糸状菌の培養に用いる条件下で培養される。一般的に細胞はPourquie, J. et al., Biochemistry and Genetics of Cellulose Degradation, eds. Aubert, J. P. et al., Academic Press, pp. 71- 86, 1988 and Omen, M. et al., Appl. Environ. Microbiol. 63: 1298-1306,1997において開示されているような生理的塩と栄養素を含む標準培地内で培養される。培養条件もまたほぼ決まっており、培養は新規タンパク質表現が要求されるレベルが達成するまで、振とう培養機または発酵槽内において28℃で培養される。
【0153】
与えられた糸状菌のための好ましい培養条件は科学文献において、および/またはアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC;「http://www. atcc.org/」)などの真菌についての情報源に見出される。細菌の発育が確立された後に、細胞は、新規タンパク質の発現を引き起こし又は可能にするのに効果的な条件下に置かれる。
【0154】
新規タンパク質コード配列が誘導性のプロモーターの制御下にある場合、誘発因子、例えば、糖、金属塩または抗生物質は、新規タンパク質発現を引き起こすために効果的な濃度で培地に添加される。
【0155】
1の実施態様においては、この系統はタンパク質の過剰発現に有用であるアスペルギルスニガー(Aspergillus nige)を含む。例えば、A.ニガー(A.niger)の1種であるアワモリ(awamori) dgr246は、多量の分泌性セルラーゼを分泌することが知られている。GCDAP3、 GCDAP4 およびGAP3-4のような A.ニガー(A.niger)の1種であるアワモリ(awamori)の他の系統が知られている。(Ward, M, Wilson, L. J. and Kodama, K. H., 1993, Appl. Microbiol. Biotechnol. 39: 738-743)
他の実施態様においては、この系統はタンパク質の過剰発現に有用であるトリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)を含む。例えば、Sheir- Neiss, et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. 20: 46-53 (1984)に記載のRL-P37は多量のセルラーゼ酵素を分泌することが知られている。RL-P37と機能的に同等な種はトリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)系統RUT-C30(ATCC No.56765)及びQM9414(ATCC No.26921)を含む。これらの系統もまた、新規タンパク質を過剰発現することについて有用であるということが予測される。
【0156】
潜在的に有害なネイティブセルロース分解活性を欠いた新規タンパク質を得ることが要求される場合、新規タンパク質をエンコードしているDNAフラグメントを含むDNA構築体又はプラスミドの導入に先駆けて1つ以上のセルラーゼ遺伝子を削除させたトリコデルマ宿主細胞を得ることは有用である。そのような系統は、U. S. Patent No. 5,246,853 及び WO 92/06209に開示されている方法により調製される。これらの内容は引用によりここに組み込まれる。1以上のセルラーゼ遺伝子を欠いている宿主微生物の中で新規タンパク質を発現することによって、識別とその後の精製処置は簡素化することができる。クローン技術で生産されたトリコデルマ種からのどのような遺伝子、例えば、cbh1、cbh2、egl1、及びegl2 遺伝子だけでなく、 それらをエンコードしているEGV タンパク質 (U. S. Patent No. 5,475,101 及びWO 94/28117をそれぞれ参照のこと)も欠失させることができる。
【0157】
遺伝子欠失は、欠失又は崩壊させるために要求される遺伝子形態を本技術分野で知られている方法によりプラスミドに挿入することによって行われる。この欠失プラスミドは、適切な制限酵素サイト、即ち要求される遺伝子コード領域の内部で切断され、遺伝子コード配列あるいは、選択マーカーと取り替えられる。欠失又は崩壊される遺伝子の位置からのフランキングDNA配列は、好ましくは約0.5から2.0 kbであり、選択マーカー遺伝子のどちらかの側にある。適切な欠失プラスミドは、欠失された遺伝子を含み、フランキングDNAシーケンスを含むフラグメントと、選択可能なマーカー遺伝子を1つの線形のフラグメントとして取り除くことを可能にするために、その中に存在するユニークな制限酵素サイトを持つ。
【0158】
選択マーカーは、形質転換された微生物の検出を可能にするように選ばれなければならない。選ばれた微生物の中で発現するどのような選択マーカー遺伝子でも適切である。例えば、アスペルギウス属(Aspergillus sp.)を用いるときには、選択マーカーは転換体の中の選択マーカーの存在がその特性に有意に影響しないように選ばれる。そのような選択マーカーは、分析可能な生産物をエンコードする遺伝子である。例えば、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)遺伝子の機能的なコピーは宿主系統の中の欠失がその栄養素要求株の表現型を結果として生じているならば使われうる。
【0159】
1の実施態様においては、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)のpyrG-誘導株は実際に、それは転換のために選択マーカーを提供する機能的なpyrG-遺伝子によって変換される。pyrG-誘導株はフルオロオロチン酸(FOA)に抵抗力があるアスペルギルス属(Aspergillus sp.)系統の選択によって得られる。このpyrG遺伝子はウリジンの生合成のために必要とされている酵素であるオロチジン-5'-モノリン酸デカルボキシラーゼをエンコードしている。インタクトpyrG遺伝子の株はウリジンを欠く培地中で成長するけれども、フルオロオロチン酸に敏感である。FOA耐性の選択により、機能的なオロチジンモノリン酸塩脱炭酸酵素を欠き、成長のためにウリジンを必要としているpyrG誘導株を選ぶことは可能である。このFOA選択を用いて、機能的なオロチンピロフォスフォリボシル(ortate pyrophosphoribosyl)転移酵素を欠くウリジン要求株を得ることも可能である。この酵素をエンコードしている遺伝子の機能的なコピーによってこれらの細胞を形質変換することは可能である(Berges & Barreau, Curr. Genet. 19: 359-365 (1991), 及び van Hartingsveldte et al., (1986) Development of a homologous transformation system for Aspergillus niger based on the pyrG gene. Mol. Gen. Genet. 206: 71-75)。誘導株の選択は、上で述べたFOA耐性技術を用いて容易に行うことができ、実際、pyrG遺伝子を選択マーカーとして用いることが好ましい。たの実施態様においては、トリコデルマ属(Trichoderma sp.)の pyr4-誘導株は、実際に、転換のために選択マーカーを提供する機能的なpyr4 遺伝子を用いて形質転換される。以下では、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)の系について議論しているけれども、トリコデルマ及び他の糸状菌を用いた系においても同じ手順を用いることができるということは当業者に理解されている。
【0160】
アスペルギルス属(Aspergillus sp.)のpyrGの 1以上のセルラーゼ遺伝子を発現する能力を欠くように形質転換するために、崩壊されたか、欠失されたセルラーゼ遺伝子から成る1つのDNAフラグメントは欠失プラスミドから単離され、形質転換のためにpyr- アスペルギウス(Aspergillus)宿主に用いられる。形質転換体は、pyrGのそれぞれの遺伝子産物を表現するそれらの能力に基づいて、識別され、選ばれる。従って形質転換体は宿主株のウリジン栄養要求性を好む。サザンブロット法分析は、部分またはすべての適切なpyr4選択マーカーによって欠失される遺伝子のゲノムのコピーのコドン領域を置換する2倍体交叉組み込みイベントを識別し、それを確認するために、結果として生じる転換体に対し行われる。
【0161】
上で説明した特定のプラスミドベクターはpyr-転換体の調製と関連しているが、本発明はこれらのベクターに制限されない。上記の技術を用いて、様々な遺伝子が、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)またはハイポクレア属(Hyprocrea sp. )トリコデルマ(Trichoderma sp.)の株において欠失されて、置換することができる。さらに、上で議論したように、どのような入手可能な選択マーカーでも使うことができる。実のところ、クローン技術で生み出され、それから識別されているどのような宿主、例えばアスペルギルス属、あるいは遺伝子でも、上記で説明された方法を使って、ゲノムから削除することができる。
【0162】
上に述べたように、選ばれた選択マーカーに対応する1の又は複数の機能しない遺伝子を欠くか、または、これらを有している宿主の系統はアスペルギルス属(Aspergillus sp.)である。例えば、pyrGの選択マーカーが選ばれるならば、特定のpyrG-誘導体株は形質転換処置の中の受容体として使われる。同様に、アスペルギルスニデュランス(Aspergillus nidulans)遺伝子amdS、argB、trpC、niaDと等しいアスペルギルス種(Aspergillus sp.)の遺伝子を含む選択が使われる。従って、対応する受容株は、それぞれargB-、trpC-、 niaD-のような誘導株でなければならない。
【0163】
新規タンパク質をエンコードしているDNAは適切な微生物へ挿入するために準備される。本発明によると、新規タンパク質をエンコードしているDNAは、例えば、酵素活性及び/又は基質結合性等の、機能的な活性を有するタンパク質をエンコードするのに必要なDNAを含んでいる。新規タンパク質をエンコードしているDNAフラグメントは細菌のプロモータ配列、例えば、glaA遺伝子のプロモーターに機能的に付着する。
【0164】
新規タンパク質をエンコードしているDNAの複数のコピーが、過剰発現を促進するためにこの株の中に組替えることも予測される。新規タンパク質をエンコードするDNAは、新規タンパク質をエンコードするこのDNAを運ぶ発現ベクターの構築体によって調製される。新規タンパク質をエンコードする挿入されたDNAフラグメントを運んでいる発現ベクターは与えられた宿主の生物の中で自律的に複製し、または宿主のDNAの中に融合することが可能であるようなベクターでもあり、一般的にはプラスミドである。好ましい実施例の中で、遺伝子の表現を得るための2タイプの発現ベクターが考えられる。一番目は、発現するためにすべてこの遺伝子に由来するプロモーター、遺伝子コドン領域、およびターミネーター配列のDNA配列である。それ自身の転写及び翻訳調節配列の制御下で、表現するためにその領域を取り除く必要から、望まれていないDNA配列(例えば、要求されていない領域のコード)を削除することによって、必要な位置で遺伝子を切断することができる。選択マーカーは、また新規な遺伝子配列の複数のコピーされた宿主の中へ組み込むために、選択を受け入れるベクター上に含まれている。
【0165】
2番目のタイプの発現ベクターはあらかじめ集められ、ハイレベルの転写と、選択マーカーに必要とされる配列を含んでいる。それが表現カセットプロモーターと重合停止剤配列の転写調節されるように、その遺伝子または遺伝子の部分のコドン領域が、この汎用ベクターに挿入することができるものと考えられる。例えば、アスペルギルス属の中で、pRAXはそのような汎用発現ベクターである。その遺伝子またはその部分は、強いglaAプロモーターの下流に挿入することができる。統合された発現ベクターの例は、pTrexベクターである。遺伝子またはその一部は、cbh1プロモーターの下流に挿入することができる。
【0166】
ベクター内で、本発明の新規タンパク質をエンコードしているDNAシーケンスは転写及び翻訳配列、すなわち構造遺伝子への読み枠の中の適当なプロモータ配列とシグナル配列と操作可能に結び付く。このプロモーターは宿主細胞の中で転写活性を示し、相同の、または非相同の蛋白質をエンコードしている遺伝子から宿主細胞に届けることができる任意のDNA配列である。任意的なシグナルペプチドはこの新規タンパク質の細胞外生産を提供する。シグナル配列をエンコードするDNAは、好適には、おのずから発現すべき遺伝子に関係するものであるが、適切なソースから得られるシグナル配列も本発明に含まれる。
【0167】
プロモーターとともに本発明の新規タンパク質をコードするDNA配列を結合し、そして適切なベクターへ挿入するために用いる方法は本技術分野でよく知られている。
【0168】
異種核酸配列を発現するために細胞に核酸を導入する一般的な方法は当業者に公知である。このような方法は、限定されないが、エレクトロポレーション;核へのマイクロインジェクションまたは単一細胞への直接マイクロインジェクション;無傷細胞を用いる細菌プロトプラスト(原形質)融合;ポリカチオンの使用、例えばポリブレンまたはポリオルニチン;リポソーム、リポフェクトアミンまたはリポフェクション媒介トランスフェクションを用いる膜融合;DNAコート・マイクロプロジェクタイル(microprojectiles)を用いる高速発射(high velocity bombardment);リン酸カルシウムDNA沈殿を用いる培養;DEAE-Dextran媒介トランスフェクション;修飾ウイルス性核酸を用いる感染などである。
【0169】
(191)形質転換のためにアスペルギルス属(Aspergillus sp.)を調製する、本発明において好適な方法は、細菌の菌糸体からプロトプラストを調製する方法に関係する。Campbell et al. Improved transformation efficiency of A. niger using homologous niaD gene for nitrate reductase. Curr. Genet. 16: 53-56; 1989を参照のこと。菌糸体は発芽した栄養胞子から得ることができる。菌糸体は、原形質を消化する酵素を用いて処理され、最終的にプロトプラストになる。原形質体は、懸濁培地の中の浸透圧安定剤によって保護される。このような安定剤はソルビトール、マンニトール、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、およびそれに類したものを含む。通常、これらの安定剤の濃度は0.8Mと1.2Mの間で変動する。使用するのに望ましいものは、懸濁培地の中のソルビトールの濃度が1.2Mの溶液である。
【0170】
宿主株(アスペルギルス属(Aspergillus sp.))の中へDNAを取込むことは、カルシウムイオン濃縮に依存している。一般に、約10mMのCaCl2から約50mMのCaCl2が取込むための溶液に用いられる。取込み溶液の中にはカルシウムイオンが必要であるが、この他に、一般に含まれる他のアイテムとしてはTE緩衝液(10 mMトリス、pH7.4;1 mM EDTA)または10mM MOPS、pH6.0の緩衝液(モルホニルプロパンスルホン酸(morpholine propane sulfonic acid))とポリエチレン・グリコール(PEG))と、ポリエチレン・グリコール(PEG)などの緩衝システムである。培地の内容物が宿主細胞、例えば、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)の細胞質の中に送られることを許容している細胞膜を溶融させるために、ポリエチレン・グリコールが機能することが知られており、この結果プラスミドDNAは核に転送される。この融合により、宿主の染色体の中に柔軟に組み込まれたプラスミドDNAの複数のコピーが頻繁に取られる。
【0171】
通常、105 から106/mLの密度で、好ましくは2x105/mLの密度で透過処理をされたアスペルギルス属の原形質体または細胞を含んでいる懸濁液は、形質変換に用いられる。適切な溶液(例えば1.2Mのソルビトール;50 mM CaC12)中の、これらの原形質体または細胞の体積100 μL液中の細胞は、目的とするDNAに混合される。一般に、高濃度のPEGが取込み溶液に添加される。25% PEG4000の0.1から1容量は原形質体懸濁液に添加することができるが、約0.25容量を原形質懸濁液に添加することが望ましい。ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウム、及び同種のものの添加物もまた取込み溶液に添加され、形質転換を促進する。同様の手順は他の糸状菌宿主細胞にも適用可能である。U.S. Patent No.6,268,328参照のこと。この文献を参照により本発明の明細書に援用する。
【0172】
一般に、混合物は約0℃で10から30分の間培養される。PEGの添加は、それから、さらに目的とする遺伝子またはDNAシーケンスの取り込みを強化するためにこの混合物に添加される。形質転換混合物の5から15倍の体積の25% PEG4000が一般的に添加される。しかし、これより大きい、または小さい体積であってもよい。25% PEG4000は好ましくは形質転換混合の体積の約10倍である。PEGが添加された後、ソルビトール及びCaCl2溶液の添加の前に形質転換混合物は室温でまたは氷の上で培養される。原形質体懸濁液はそれから、溶解した一定分量の増殖培地にさらに添加される。この増殖培地は転換体の成長だけを促進する。目的とする転換体を成長させるために適当な、いかなる増殖培地でも、本発明のにおいて用いることができる。しかしながら、Pyr+転換体が選択している場合、ウリジンを含まない増殖培地を使うことが好ましい。その後、コロニーはウリジンを使い果たした増殖培地の上で形質転換され、精製される。
【0173】
この段階において、安定した転換体は、ウリジンを欠いた固形培養媒質上の不完全な外形よりも、転換体のより速い生長率とスムーズな丸いコロニーの形成によって、不安定な転換体と区別できる。さらに、ある場合には、安定性のさらなる試験は、選択的でない固形培地(すなわち ウリジンを含む培地)上での転換体の成長によって行われる。そして、この試験は、ウリジンを欠いている選択培地の上で発芽し、成長した芽胞を収穫し、これらの芽胞のパーセンテージを決定することにより行われる。本技術分野で知られている他の方法も、形質転換体を選択するために用いることができる。
【0174】
上記の方法に関する特定の実施例において、新規タンパク質は、新規タンパク質の適切な翻訳過程の結果として、液体培地の中で成長した後に、宿主細胞から活性型として回収される。
【0175】
E. 新規タンパク質核酸コード配列及び/又はタンパク質発現の解析方法
新規タンパク質エンコーディング核酸構築体によって変換している細胞系による新規タンパク質の表現を評価するための検定が、タンパク質レベル、RNAレベルで、または新規タンパク質の活性、および/または生産に対する機能的な生物検定を利用することにより行うことができる。
【0176】
ここに説明された新規タンパク質の核酸とタンパク質配列の1つの典型的な用途において、糸状菌の遺伝子組み替え系統、例えば、トリコデルマレーシ(Trichoderma reesei)は、新規タンパク質の量を増加させるように設計される。かかる遺伝子組み替え糸状菌は、より大きなセルロース又はへミセルロースを分解する能力を有するセルラーゼ又はヘミセルラーゼ組成物を生産するために有益である。このことは、新規タンパク質のコーディングシーケンスを適当な宿主、例えばアスペルギウスニガー(Aspergillus niger)のような糸状菌に導入することによって行われる。
【0177】
従って、本発明は、糸状菌または他の適当な宿主の細胞の中にDNA配列エンコーディング新規タンパク質を含む発現ベクターを導入することにより、糸状菌または他の適当な宿主の中で新規タンパク質を発現するための方法を含む。
【0178】
別の側面において本発明は、糸状菌または他の適当な宿主の中で新規タンパク質の発現を変更させる方法をも提供する。かかる変異は内因性新規タンパク質の発現の減少または消失を含むものである。
【0179】
一般に、新規タンパク質の発現の解析に用いられる分析法には、ノザンブロット法、ドットブロット法(DNAまたはRNA解析に用いる)、RT-PCR法(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)、又はインサイチュハイブリダイゼーション、適切なラベルプローブの使用(核酸配列に基ずく)及び従来のサザンブロット法及びオートラジオグラフィーがある。
【0180】
新規タンパク質の生産及び/又は発現は、細胞溶解物又は培地の上清サンプルを直接、当該技術分野で知られているドデシルナトリウム硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で解析することにより測定できる。
【0181】
更に、タンパク質の発現は、細胞、組織切片の免疫組織学的染色又は組織培養培地のようなイムノアッセイ(免疫測定法)のような免疫学的方法を用いて行うことができる。(例えば、ウエスタンブロット又はエライザ(ELISA))かかるイムノアッセイは、質的及び量的に新規タンパク質の発現を評価するために用いることができる。かかる方法の詳細は当業者によく知られており、この方法を行うための多くの試薬が市販されている。
【0182】
新規タンパク質の精製物を、様々なイムノアッセイの中で使用される発現されたタンパク質に反応するモノクローナルまたはポリクロナール抗体のいずれかを生産するためにも使用される。(Hu et al., Mol Cell Biol. vol. 11, no. 11, pp. 5792-5799,1991参照のこと)。典型的な分析法としては、エライザ(ELISA)、競合イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット法、間接免疫螢光測定法、およびそれに類したものがある。一般に、市販されている抗体、および/またはキットは、セロビオハイドラーゼ タンパク質の発現レベルの多くのイムノアッセイのために使われる。
【0183】
F. 新規タンパク質を精製するための方法
細胞培養中に生産された新規タンパク質は培地の中に分泌され、そして、例えば細胞培地から不要な成分を取り除くことにより、精製、又は、単離される。しかし、場合によっては、分泌されずに、細胞内で形成された新規タンパク質は細胞溶解産物から回収しなければならない。かかる場合には、新規タンパク質は、当業者によって通常用いられている技術を利用して、細胞から精製される。例えば、アフィニティークロマトグラフィー (Tilbeurghetal., FEBS Lett. 16: 215,1984), 高い分解パワーを有する原料を使ったイオン交換をも含めた、イオン交換クロマトグラフ法 (Goyal et al., Bioresource Technol. 36: 37-50,1991 ; Fliess et al., Eur. J. Appl. Microbiol. Biotechnol. 17: 314-318,1983 ; Bhikhabhai et al., J. Appl. Biochem. 6: 336-345,1984 ; Ellouz et al., J. Chromatography 396: 307-317,1987)、(Medve et al., J. Chromatography A 808: 153-165,1998)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Tomaz and Queiroz, J. Chromatography A 865: 123-128,1999)、 及び二相仕切り(two-phase partitioning)(Brumbauer, et al., Bioseparation 7: 287-295,1999)などかあるが、これらに限定されるものではない。
【0184】
新規タンパク質は、特定の結合因子に対する結合親和性(例えば、抗体又は受容体)などの特定の特性を有するタンパク質に細分化される。これらの抗体又は受容体は選択された分子量の範囲、又は等電点の範囲を有している。
【0185】
一度、与えられた新規タンパク質の発現が達成されると、その後、生産された新規タンパク質は細胞または細胞培養から精製される。係る精製に適した典型的な処理方法としては、抗体アフィニティカラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフ法、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上またはDEAEなどの陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、 SDS-PAGE、硫酸アンモニュウム沈殿法、そして、例えば、Sephadex G-75を用いたゲルろ過、などがある。さまざまなタンパク質精製の方法が用いられており、係る方法は本分野において知られたものであり、例えば、Deutscher, Methods in Enzymology, vol. 182, no. 57, pp. 779,1990 ; Scopes, Methods Enzymol. 90: 479-91,1982に記載されている。精製手段の選択は、それが用いられる製造工程と生産された特定のタンパク質の性質に依存する。
【0186】
III.新規タンパク質の生化学的性質
A. アセチルキシランエステラーゼ(axe2)
AXE2タンパク質は、299アミノ酸を有し、約30キロダルトンの分子量であると推定される。この推定されるタンパク質は、15の強塩基(+)アミノ酸(K、R)、28の強酸(-)アミノ酸(D、E)、91の疎水性アミノ酸(A、I、L、W、V)及び108の極性アミノ酸(N、C、Q、S、T、Y)から構成されている。AXE2は、4.5の等電点及びpH 7.0で、-12.9の電荷を有すると推定される。
【0187】
Axe2は、炭水化物エステラーゼファミリー5(CE5)のメンバーであり、21アミノ酸のN末端シグナル配列を有すると推定される。図11を参照のこと。
【0188】
Axe2は、アラインメント中の291位のセリン残渣に対応する、274番目のアミノ酸のところに、成熟GIPアンカー付加部位を有する。図12を参照のこと。宿主微生物の培養培地へと分泌されるタンパク質の形態は、成熟GPIアンカー付加部位を欠いたaxe2遺伝子に対する発現ベクターの構築体により生成され、カルボキシメチル末端の疎水ドメインに結合する。
【0189】
B. アラビノフラノシダーゼ(abf2)
ABF2タンパク質は、322アミノ酸を有し、約35キロダルトンの分子量であると推定される。この推定されるタンパク質は、17の強塩基(+)アミノ酸(K、R)、18の強酸(-)アミノ酸(D、E)、107の疎水性アミノ酸(A、I、L、W、V)及び118の極性アミノ酸(N、C、Q、S、T、Y)から構成されている。ABF2は、6.4の等電点及びpH7.0で、-0.9の電荷を有すると推定される。
【0190】
Abf2は、グリコシルハイドラーゼファミリー62のメンバーであり、19アミノ酸N末端シグナル配列を有すると推定される。図8及び9を参照のこと。
【0191】
C. CIP1
CIP1タンパク質は、316アミノ酸を有し、約33キロダルトンの分子量であると推定される。この推定されるタンパク質は、14の強塩基(+)アミノ酸(K、R)、23の強酸(-)アミノ酸(D,E)、86の疎水性アミノ酸(A、I、L、W、V)及び116の極性アミノ酸(N、C、Q、S、T、Y)から構成されている。CIP1は、4.8の等電点及びpH7.0で、-8.3の電荷を有すると推定される。
【0192】
このDNA配列から予測されるタンパク質配列は、分泌に関する予測シグナル配列、すなわち、C末端セルロース結合ドメインを有する。このアミノ酸配列を、公知の配列を比較したところ、以下の相同性が明らかになった:
コア;ストレプトマイセスコエリカラー(Streptmyces coelicolor)から分泌された成熟体と42%相同性を有する、
リンカー;トリコデルマレーシ(T.ressei)EG4と48%の相同性を有する、
CBD;トリコデルマレーシ(T.ressei)CBH1のCBDと100%の相同性を有する。
【0193】
CIP1の配列は、炭水化物(セルロース)結合ドメイン及び分泌シグナルを含むと推定される。CIP1は、近年定義されたグリコシルハイドラーゼのいかなる分類にも当てはまらないけれども、ストレプトマイセスコエリカラー(Streptmyces coelicolor TrEMBL登録番号069962)から分泌される、無分類の成熟体に似ている。各種条件下にいて各種セルラーゼを生産する能力を有する系統間におけるcip1の制御は、エンドグルカナーゼと特定のセロビオハイドラーゼcbh1を区別していない。明らかになっているセルラーゼ成分がの同時制御されているということは、cip1がバイオマスの分解に役立つという活性をエンコードしているという認識を促進する。図3を参照のこと。
【0194】
D. CIP2
CIP2タンパク質は、460アミノ酸を有し、約48キロダルトンの分子量であると推定される。この推定されるタンパク質は、24の強塩基(+)アミノ酸(K、R)、24の強酸(-)アミノ酸(D、E)、160の疎水性アミノ酸(A、I、L、W、V)及び165の極性アミノ酸(N、C、Q、S、T、Y)から構成されている。CIP2は、7.1の等電点及びpH7.0で、0.27の電荷を有すると推定される。
【0195】
CIP2は、17アミノ酸のN末端シグナル配列後に、CBM1ファミリーの炭化水素結合モジュールを含む36アミノ酸を有し、約95アミノ酸のリンカー領域を有する。
【0196】
VI.同定された標的遺伝子の使用
本発明の遺伝子は、各種製品に用いることができる。
【0197】
A.アセチルキシランエルテラーゼ(AXE2)
配列番号14(図10参照)によりエンコードされるアセチルキシランエステラーゼは、キシラナーゼと組み合わせて使用されたときに、キシランベースの基質をキシロースに加水分解することが望ましい製品において、相乗効果を示すことが予想される。この主な、キシラン加水分解は、アセチル側基を切り離すアセチルキシランエステラーゼの能力により高められる。それゆえ、各種基質内に存在するキシラン鎖に、より高いキシラナーゼ活性を付与する。
【0198】
上のアセチルキシランエステラーゼの機能は、消化率を向上するための動物飼料に含まれるキシランの生体内での変性、バイオマスから発酵糖を得るための一般製品、パルプ及び製紙工業における脱リグニン工程における加工補助剤、食用製品-特に焼成食品-製品の品質を改良するために他の酵素機能との組み合わせ、及び、洗濯用洗剤製品-植物性の汚れ-他の酵素との組み合わせのように、多くの農業及び工業製品に用いることができる。
【0199】
B.CIP1及びCIP2(1及び2のタンパク質を含むセルロース)
配列番号1及び/又は2によりエンコードされるCIP1(図1及び図2参照)及び、配列番号6でエンコードされるCIP2(図4参照)を含むCBDは、バイオマス転換に用いられる、あるいは、この遺伝子を有するCBDを利用する他の製品に用いるのが適切である。従って、この遺伝子産物は、洗剤、布製品、バイオマス転換、食品及び飼料製品及びパルプ及び製紙工業等の製品中に用途が見出される。
【0200】
C.アラビノフラノシダーゼ(ABF2)
配列番号10(図7参照)によりエンコードされるアラビノフラノシダーゼは、キシラナーゼと組み合わせて使用されたときに、キシランベースの基質をキシロースに加水分解することが望ましい製品において、相乗効果を示すことが予想される。このキシラン加水分解能は、アラビノース側基を切り離すアルファアラビノキシラーゼの能力により高められる。それゆえ、各種基質内に存在するキシラン鎖に、より高いキシラナーゼ活性を付与する。
【0201】
上のアセチルキシランエステラーゼ機能は、消化率を向上するための、動物飼料に含まれるキシランの生体内での変性、バイオマスから発酵糖を得るための一般製品、布製品を加工する酵素の成分、及び、食用製品-特に焼成食品-製品の品質を改良するために他の酵素機能との組み合わせのように、多くの農業及び工業製品に用いることができる。
【0202】
以下の調製方法及び実施例は、当業者が、容易に本発明を理解し実施するために提供される。これらは、本発明の範囲及び/又は精神を限定するものではなく、単に、それらを説明するための代表例として用いる。
【0203】
以下の実験に関する開示においては、次の略語が適用される:eq(当量);M(モル濃度の);μM(マイクロモル濃度の);N(正常な);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒);Ci(キュリー);mCi(ミリキュリー);μCi(マイクロキュリー);TLC(薄層クロマトグラフィー)Ts(トシル);Bn(ベンジル);Ph(フェニル);Ms(メシル);Et(エチル);Me(メチル)。
【0204】
実施例
以下の実施例は、説明するために提供し、請求項にかかる発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0205】
トリコデルマレーシ(T.reessi)cDNAライブラリーの構築
トリコデルマレーシ(T.reessi)(ATCC 13631)は、成長条件特有のmRNAプロファイルを発現する菌糸体を成長させる条件下で育成した。このRANはその後、単離され、収集して、cDNAライブラリーを構築した。
【0206】
1A.トリコデルマレーシ(T.reessi)の生育
すべての培養物は、酵母抽出/グルコース(YEG)液体培地を用いて28℃で一晩育成した。他の方法で示さない限り、培養物は以下で示す条件下で、所定の期間培養した:
実験1
A. Volge’s + 2%アビセル、3日間及び6日間、
B. Volge’s + 2%ソルカフルコ(solkaflco)、3日間及び6日間、
C. Volge’s + 2%小麦ブラン、6日間
D. Volge’s + 2%ビートパルプ、6日間
E. 小麦ブラン上の固体培養(15g小麦ブラン、1gプロフロ、1gソルカフルコ、30ml水)、6日間
F. ビートパルプ上の固体培養(15gビートパルプ、1gプロフロ、1gソルカフルコ、30ml水)、9日間
実験2
A. Volge’s + 2%グルコース、24時間
B. Volge’s + 2%ラクトース、24時間
C. Volge’s + 2%キシロース、24時間
D. Volge’s + 2%フルクトース、24時間
E. Volge’s + 2%マルトース、24時間
F. Volge’s w/o 任意の糖添加、24時間
G. Volge’s w/o 任意の窒素添加、24時間
H. Volge’s + 2%小麦ブラン、3日間
I. Volge’s + 2%小麦ブラン、6日間
J. Volge’s + 2%ソルカフルコ、3日間
K. Volge’s + 2%ソルカフルコ、6日間
L. Volge’s + 2%アビセル、3日間
M. Volge’s + 2%アビセル、6日間
N. Volge’s + 2%リン酸膨張セルロース、3日間
O. 固形状態(15g小麦ブラン、1gプロフロ、1gソルカフルコ、30ml水)、6日間
P. YEG、42℃で1.5時間(熱刺激)
Q. YEG、20mM DTT、1.5時間(還元ストレス)
R. YEG、室温の閉鎖コンテナで1.5時間静置(無酸素化)

培地調製物
酵母抽出/グルコース培地-1リットル
1. 脱イオン水;1000ml
2. 酵母抽出物;5g
3. グルコース;20g

Vogel’s 溶液-1リットル
1. 50xVogel’s貯蔵溶液;25ml
2. 脱イオン水;975ml
3. 高圧蒸気滅菌

50xVogel’s貯蔵溶液-1リットル
1. クエン酸ナトリウム;150g
2. KH2PO4;250g
3. NH4NO3;100g
4. MgSO4*7H2O;10g
5. CaCl2*2H2O;5g
6. 微量元素溶液;5ml
7. ビオチン溶液;2.5ml
8. 脱イオン水でリットルに調製

微量元素溶液 1リットル
1. クエン酸;50g
2. ZnSO4*7H2O;50g
3. Fe(NH4)SO4*6H2O;10g
4. CuSO4*5H2O;2.5g
5. MnSO4*4H2O;0.5g
6. H3BO3;0.5g
7. NaMoO4*2H2O;0.5g
8. 脱イオン水でリットルに調製

ビオチン溶液-1リットル
1. d-ビオチン;0.1g
2. 脱イオン水でリットルに調製
【0207】
1B.RNAの単離
トータルRNAを、ライフテクノロジーズ(Life TechnologiesTM)トリゾール(TRIZOL)(登録商標)試薬(カタログNo.15596-026)用いて単離した。単離するRNAに応じて、ここに記載されている方法にわずかな変更を加えた。違った形でしめさない限り、この方法は、15℃から30℃の間の温度で行う。
【0208】
1Aで説明したトリコデルマレーシ(T. reesei)菌糸体由来の異なる培養物を、フィルターろ過により余剰の液体を取り除いたあと、液体窒素を用いて凍結した。この凍結菌糸体を、モータを用いて粉砕し、ペースト状にした。その後、凍結菌糸体1mlに対して約9mlのTRIZOL試薬を添加した。この懸濁物を、その後、2から8℃で、12,000×gで10分間遠心分離した。この懸濁物(上清)を新しいチューブに移した。
【0209】
核小体タンパク質の複合体を完全に溶解させるために、懸濁物のサンプルを、15℃から30℃で、15分間、インキュベートした。その後、トリゾール(TRIZOL)試薬1mlに対して、0.2mlのクロロホルムを添加し、このサンプルチューブに蓋をした。このチューブを手で15秒間激しく振とうし、15℃から30℃の温度で、2から3分インキュベートした。このサンプルはその後、2から8℃で、12,000xgで15分間遠心分離した。遠心分離の後、この混合物は、赤い色をしたフェノールクロロホルム相、中間相、及び、色のない水性相に分離した。水性相(試薬の約60%の容量)を、新しいチューブに移した。
【0210】
水性相のRNAは、0.25mlのイソプロパノールを添加して沈殿させ、その後、ホモジネートに用いた1mlのトリゾール(TRIZOL)試薬に、0.25mlの高塩含有沈殿溶液(0.8Mクエン酸ナトリウム及び1.2M塩酸ナトリウム)を含む溶液を添加した。得られた溶液を、混合し、このサンプルを10分間、15℃から30℃でインキュベートした。その後、2から8℃で、5分間、12,000xg以上で遠心分離をした。
【0211】
この上清を除去し、ゲル状のRNAペレットを、最初のホモジナイズに用いたトリゾール(TRIZOL)試薬1mlと、1mlの75%エタノール(RNaseを含まない水で調製したもの)を用いて、1回洗浄した。このサンプルを、ボルテックスで混合し、2℃から8℃で、5分間、75,000xg以上で遠心分離した。
【0212】
このサンプルの上清を再び除去し、RNAペレットを簡単に乾燥した(空気乾燥又は5-10分の真空乾燥)。このRNAを、ピペットチップを用で、2.3回、RNaseを含まない水を通すことにより溶解し、55℃から60℃で、10分間、インキュベートした。
【0213】
単離されたRNAの精製度を、ゲル電気泳動を用いて確認した。
【0214】
1C.cDNAライブラリーの構築
1Aの実験1に記載の各成長条件で得られたRNAを、等量プールして得た、総量2mgのサンプルを、cDNAライブラリーを構築するために、ライフテクノロジーズ(Life Life Technologies)(ロックビル、ランド;現インビトロジェン)へ輸送した。同様に、1Aの実験2で述べたサンプルも同様にプールし、cDNAライブラリーを構築するために、ライフテクノロジーズ(Life Technology)(ロックビル、ランド;現インビトロジェン)へ輸送した。cDNAライブラリーは、当技術分野の通常の手段を用いて作成される。以下に用いられる工程の概要を説明する。
【0215】
Poly-A RNAは、クロマトグラフィーを用いてトータルRNAより単離される。このトータルRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに付加し、ポリARNA(mRNA)を溶出させる。
【0216】
mRNAから、cDNAが、ライフテクノロジーズ(Life Technologies)(TM)cDNA合成システムを用いて生成する(この装置のマニュアルを参照により本明細書に援用する。)。以下の工程が用いられた。
【0217】
第一鎖合成
単離トリコデルマレーシ(T. reesei)mRNA由来のcDNAの第一鎖を生成するための反応成分を、1.5mlのミクロ遠心チューブに入れ、氷上に置く。この反応成分の混合物50μl中の成分を以下に示す:
50mM トリス-HCl(pH8.3)
75mM KCL
3mM MgCl2
10mM DTT
dATP、dCTP、dGTP及びTTPを500μMづつ
50μg/オリゴ(dT)12-18
100μg/ml ポリ(A)RNA(トリコデルマレーシ(T. reesei))
10,000単位/ml モロニーげっ歯類白血病ウイルス(M-MLV)逆転写酵素
この逆転写酵素を最後に添加し、混合し、反応を開始する。任意で、サンプルの10μlを、チューブから採取し、1μCi[α-32P]dCTPトレーサーを含むチューブに移す。ここれらのチューブは、37℃で1時間インキュベートする。このチューブをインキュベーションの後、氷上に戻し、0.25M Na2EDTA(pH7.5)を1μl添加することにより、反応を停止する。40μlの反応混合物を、cDNAの第二鎖を構築するために用いる。
【0218】
トレーサー混合物を調製する場合には、トレーサー混合物を89μlの水で希釈し、5μlのサンプルの一部を2回、フィルター(例えばガラス繊維フィルター)の上にスポットする。第二のフィルターは、洗浄1回あたり、冷蔵したTCA約50mlを用いて、5分づつ、連続して3回洗浄する。第二のフィルターを、その後、室温で約5分、95%のエタノールを用いて洗浄し、乾燥する。このフィルターは、第一鎖cDNAの生成を調べるために、第一フィルターからの混合物中の32Pの取り込み量と、第二フィルターからの第一鎖cDNA中の32Pの取り込み量を測定するために、シンチレーションカウンターでカウントされる。
【0219】
トレーサー混合物の残りは、フェノール及びエタノールを用いた沈殿方法で抽出する。このペレットを単離し、アガロースゲルを用いたゲル電気泳動により、一本鎖生成物のサイズを調べる。
【0220】
第二鎖合成
二本鎖DNAは、リンカーが添加される、cDNAを生成する手順を用いて調製する。
【0221】
300μlの第二反応混合物を製造するための成分を、第一反応成分の40μlへと添加した。DEPC処理水、dNTP混合物、濃縮緩衝塩溶液、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌RNaseH及び大腸菌DNAリガーゼの成分が順番に添加された。第一鎖反応性生物中のオリジナル成分に加えて、最終反応混合物は、以下の組成物を有する:
25mM トリス-HCl(pH8.3)
100mM KCl
10mM(NH4)2SO4
5mM MgCl2
dATP、dCTP(10μCiの[α-32P]dCTP を含む)、dGTP、dTTPを250μMづつ
0.15mM NAD
5mM DTT
250U/ml DNAポリメラーゼI
8.5U/ml Rnase I
8.5U/ml Rnase H
30U/ml DNAリガーゼ
成分を混合するために、このチューブをボルテックスで激しく混合し、16℃で12時間インキュベートした。その後、このチューブを氷上に置き、25μlのNa2EDTA(pH7.5)を添加した。
【0222】
この混合物の10μlに水90μlを添加する。この混合物の5μlをガラスフィルターの上にスポットし、乾燥させる。希釈されていない混合物の10μlを第二のガラスフィルターにスポットする。このガラスフィルターは、1回当たり50mlの冷蔵TCAで、5分ずつ、3回洗浄する。第二ガラスフィルターを、室温で、95%のエタノールを用いて5分間洗浄する。このフィルターは、第一に混合物中の32Pの量(特定の活性)を検出し、第二に、cDNAに取り込まれた32Pの量を検出するために、シンチレーションカウンターでカウントされる。
【0223】
反応混合物の残りをフェノールで抽出し、エタノールで沈降させる。このペレットを、200μlの無菌TE緩衝液(10mMトリス-HCl(pH7.5)、1mM Na2EDTA)で溶解し、7.5Mの酢酸アンモニウム100μl、次いで、500μlのエタノールを添加して沈降させた。このペレットを乾燥し、20μlの無菌TE緩衝液に溶解した。2μlを採取し、アルカリアガロースゲル電気泳動で解析した。リンカー及びアダプターをベクターに取り込ませるために残りのサンプルに添加した。
【0224】
リンカーの添加について、cDNAは、内部制限部位を生産するために用いるリンカーに対応したメチラーゼを用いてメチル化される。このcDNAのターミナルは、T4 DNAポリメラーゼで修復され、リンカーは、その後、鈍化された結合末端に付加される。リンカーは、効果的な付加のために高濃度で添加すべきである。このcDNAは、選択された制限エンドヌクレアーゼで消化され、例えば、カラムクロマトグラフィーを用いて、小さな消化物から、精製される。このベクターは、同じ制限エンドヌクレアーゼを用いて消化され、挿入によりベクター内でcDNAに結合される。
【0225】
この、cDNAに添加されるリンカー、又は、アダプターは、Sall部位が、元のmRNAのcDNA配列の5’ に対応し、Notl部位が、元のmRANのcDNA配列の3’に対応するように、制限エンドヌクレアーゼ部位を含む。このcDNAは、pREP3Yシャトルベクターに挿入される。このpREP3Yベクターは、pREP3Xベクター(ATCC No.87603)を変性する。ここで、このベクターを、BamHIIエンドヌクレーゼで消化し、合成されたオリゴヌクレオチドを制限部位に挿入する。得られたベクターは、ポリリンカー領域に以下の制限部位を有する:Xhol、Shall、Xbal、BanHI、Smal、Notl、及びSnal。このベクター及びcDNAは、Shall、Notlで消化され、ベクター内に挿入される。図15を参照のこと。
【0226】
cDNAライブラリーは、pREP3Yベクター内でインビトロジェンライフテクノロジーズにより構築された。大腸菌系統DH125をcDNAライブラリーを構築するために、このベクターを用いて形質転換する。個々のクローンは、その後、LAプラス50mg/mlカルベニシリン(バクトトリプトン、20g/l、バクト酵母抽出物10g/l;NACl1g/l、バクトアガー 17.5g/l、及び、50mg/mlカルベニシリン1ml/l(固化する前にオートクレーブで滅菌し冷却した後に添加する))上で育成する。
【実施例2】
【0227】
LT-24及びcip1遺伝子の同定
以下の原理を、cip1遺伝子を検出するために用いる。1)アマシャム(Amersham)より市販されている高結合膜上でライブラリーを成長させる。2)細胞を溶解し、DNAライブラリーを膜上に固定する。3)プローブ固有の遺伝子でブロットをハイブリダイズする。4)2回ブロットをハイブリダイズさせるが、このときは、CBMプローブ混合物を使用する。5)CBMスポットから特定の遺伝子を除いて、新しいスポットの選択及び解析を行う。
【0228】
コロニーの単離
トリコデルマレーシ(T. reesei)由来のcDNAライブラリーを含むセルロースをハイブリダーゼーション試験に用いる。この大腸菌cDNAライブラリーを、十分量のクローンを得るために、アガープレート(20cm×20cm)上に置く。
【0229】
cDNAライブラリーを、100μg/mlのアンピシリンを含む、1.5%濃度のアガーで固めた、200mlの2xTY(バクトトリプトン16g/l、酵母抽出 10g/l、Nacl 5g/l)の上に置く。1500cfuが20cmx20cmのアガープレート(ジェネティックス(Genetix)、Q-Tray)上にあるとき、効果的に採取することができる。1mlの適切な希釈物を、ガラスビーズを用いて、平板培養する。平板培養は37℃で一晩行った。
【0230】
コロニーを、採取し、Q-Pix(ジェネティックス(Genetix Ltd.))を用いて、マイクロタイタープレートに移した。
【0231】
この生育で得た、45312クローンを保存した。このマイクロタイタープレートは、使用されるまでに、10%グリセロール中で、-80℃で貯蔵した。34500コロニーのクローンを含むトリコデルマレーシ(T. reesei)cDNAを、ナイロンメンブランの上に並べ、ハイブリダーゼーション試験に用いた。
【0232】
Q-Pix(ジェネティックス(Genetix Ltd.))は、コロニーを384ウェルのMTPに採取するために用いる。生育の後、Q-Pixは、メンブレンフィルター上の384-MTPの格子配列に用いた。新規なCBM含有セルラーゼを調べるために、これらのメンブレンフィルターは、CBM含有プローブと共に、ハイブリダイゼーション試験に用いた。
【0233】
プローブの調製
プローブは、表1で示すプライマーを用いて調製した。このCBMプローブは、既知のトリコデルマレーシ(T. reesei)の炭水化物結合モジュールの配列を用いるように設計されている。Paul Birch, Curr. Genet (1998) 33; 70-76参照のこと。簡単に言うと、CBMプローブを調製するために、トータルトリコデルマレーシ(T. reesei)QM6AゲノムDNA(100ng/50μl)を、10μMの1μl/50μl容量のFRG164と、100μMの1μl/50μl容量のFRG165、FRG166、あるいはFRG167と混合する。FRG166は増幅されなかた(Serコドンは、AGY)が、FRG167は増幅された(SerコドンはAGY)。従って、FRG167プライマーは増幅に用いることができる。このフラグメントは、プライマーとしてFRG165で生産されるフラグメントと混合される。この2の分離されたフラグメントは、トリコデルマレーシ(T. reesei)中に存在するCBM配列の混合物が含まれ、CBMプローブとして使用される。要約すれば、CBMプローブは、FRG164+FRG165と、FRG164+FRG167と、2.5単位の白金TAQポリメラーゼと、5μlの10xTAQ緩衝液と、1.5μlの10×TAQ緩衝液と、1.5μlのMgCl2と、及び、1μlの10mM dNTPの混合物を用いてたPCRにより得られたフラグメントの混合により調製される。このPCRは以下の手順で行われた:
1サイクル:98℃、1分
10サイクル:94℃、1分、65-50℃、1.5分、72℃で1分、
25サイクル:94℃、1分、50℃、1.5分、72℃で1分、
15℃で反応を停止させ、保存。
【0234】
触媒コア(すなわち、遺伝子特有の)プローブを調製するために、トータルトリコデルマレーシ(T. reesei)QM6AゲノムDNA(100ng/50μl)は、上記手順を用いて、1μlの10×TQAポリメラーゼ、5μlの10xTAQ緩衝液、1.5μlのMgCl2、及び、1μlの10mM dNTPと混合するる。50℃の代わりに55℃で実施した。
【0235】
このプローブを標準的手段を用いて、精製した。この一連の試験において、このプローブは、アキゲン(Qiagen)ゲル精製キットを用いて精製した。
【0236】
検出
マイクロタイタープレートから採取されたコロニーサンプルは、20x20cmの
ナイロンメンブランフィルター(高結合+(RPN.82B)、アマシャム(Amersham))上にスポットし、2xTY(100μg/mlアンピシリン)の寒天上で、37℃で一晩平板培養を行った。2回の繰り返し実験において、20x20cmのメンブレンは、4600コロニーを含んでいた。平板培養は、その後、遺伝子特有の配列又はCBM配列のいずれかが存在するかどうかについて、製造元の取り扱い説明書に従った、ECLにより処理された。
【0237】
プレハイブリダイゼーションを、ECLダイレクトキットに含まれているECL緩衝液内を用いて、20分間行った。上記説明書によれば、この間にプローブがラベルされる。プローブは、10ng/mlの濃度で直接プレハイブリダイゼーション緩衝液に添加し、42℃、60分でハイブリダイズする。このフィルターはその後、第一緩衝液(6M尿酸、0.5xSSC、0.4%SDS)を用いて、42℃で、1回当たり20分で、2回洗浄され、第ニ緩衝液(2xSSC)を用いて、室温で、1回当たり20分で、2回洗浄される。乾燥して余分な水分を除いた後、このフィルターに、1平方センチメートルあたり、0.125mlのECL検出試薬の等量混合物を添加することにより、検出を行った。1分後、余分な試薬を排出し、メンブレンをサランラップで覆い、HyperfilmTM ECL(RPN.2 103)に2時間未満(通常、10分)の間、曝した。陽性反応を示したコロニーは、サブクローニング、DNA配列決定、制限部位のマッピング及びPCR等の他の方法による更なる解析に用いた。
【0238】
ECLシステムは、酵素ラベルを用いていること、及び、サンプルを化学発光反応の後に失活させることから、この方法は、第二、第三のハイブリダイゼーションの開始前に、古いプローブを取り除く必要はない。このブロットは、説明した手順に従って、このブロットを再ブロットする前に、検出試薬中で一晩保存される。
【0239】
全部で9の特定のプローブ、すなわち、触媒モジュールに対するプローブを、混合し、メガプローブとして用いる。このハイブリダイゼーションの後、同じブロットを再利用し、CBMプローブとハイブリダイズされる。このCBMからメガプローブを除くことにより、未知のものが検出される。全部で、34500コロニーが検出され、264コロニーが始めて採取され、これらを特定の触媒プローブを用いて調べた。264コロニーは、LT1-24由来の遺伝子特有のプローブとハイブリダイズした。このプライマーは以下のようである:前向きプライマー:P002248:GAC AAT CCA AAC GAC GCT;及び後向きプライマー:PVS173:CAA TCG AGA TGT CGT CGA AC。
【0240】
cip1を含むLT1-24の1クローンは、CBMプローブ混合物で調べたときには、シグナルを検出したが、触媒ドメインプローブで調べたときにはシグナルを検出しなかった。従って、控除ハイブリダーゼーションにより、トリコデルマレーシ(T. reesei)cip1遺伝子を含む新規CBMの同定をすることができた。この遺伝子のcDNAの全配列は、当技術分野でよく知られている方法を用いて検出することができる。この遺伝子のcDNAの全配列は、予想される分泌シグナル、未知の機能の触媒領域、リンカー領域、及び、C末端にセルロース結合モジュール(CBM)を有する。
【表1】

【実施例3】
【0241】
トリコデルマレーシ(T. reesei)の標的遺伝子の同定及び配列解析
無記名のcDNAコロニーの部分的な配列決定は、遺伝子同定のための幅広い技術である。部分的なcDNA配列又は発現された配列タグ(ESTs)は、セルロース分解能を有する重要な遺伝子の同定に対する可能性を有している。cDNAの挿入を含むプラスミドは、実施例1で説明したライブラリーのコロニーから単離され、cDNA挿入のシングルパス(single pass)5’配列は、ノースカロライナ州立大学(糸状菌ゲノム研究室(Fungal Genomics Laboratory)、 College of Agriculture and Life Sciences, ローリー(Raleigh)、ノースカロライナ(NC))で、約18,000コロニーから得られた。このcDNA配列は、cDNAを挿入する5’末端に隣接しているベクター配列に対応するプライマーを用いて得られた。個々に読まれた配列を、比較した。重複セグメントは、2以上のリード(読み)から成る2101のコンティグ配列から構成される。3010の個々の読みは、データセットの中他の読み(リード)を重複する有意配列を有していなかった。ESTセットの予測されるコード領域は、BLAST(Altschul et al. 1990. Basic local alignment search tool. J. Mol. Biol. 215: 403-410参照のこと。)を用いて、全ての利用可能な配列データベースと比較した。
【0242】
グルコシルハイドラーゼ、炭水化物エステラーゼ、又は炭水化物結合モジュールに似ているとされているcDNA配列を含むクローンは、デフォルトパラメーターを用いた、BALSTプログラム(BLASTX及びBLASTN)を用いた、更なる調査のために同定された。Altschul et al., 1990. Basic local alignment search tool. J. Mol. Biol. 215: 403-410を参照のこと。これらの遺伝子産物に対応する全長cDNAは、当技術分野において良く知られている方法を用いて、配列決定された。
【0243】
配列は、デフォルトパラメータを用いた、DNAスター又はベクターNTIソフトウェアーパッケージを用いて解析された。
【0244】
この方法により同定された標的遺伝子を表2に示す。
【表2】

【実施例4】
【0245】
cip1及びcip2遺伝子と他のセルラーゼ遺伝子の共調節(co-regulation)
同定されたエンドグルカナーゼは、セルロース、ソホロース、又はラクトースを含む培地上で育成する間に誘発される。バイオマス分解能力が推定される新規なポリペプチド、CIP1及びCIP2においても、同様に調節されているかどうかを調べるために、我々は、ノザンブロットによるこれらの遺伝子産物のmRNAレベルを調べた。QM6a;トリコデルマレーシ(T. reesei)の野生型単離体、及び、RL-P37;セルラーゼ分解酵素の生産を高めるように選択された系統の、異なる2系統が用いられた。これらの系統からの個々の菌糸体を、唯一の炭素源として、グルコース、結晶セルロース(アビセル)又はグリセロール、あるいは、1mMソホロースを添加したグリセロールのいずれかを有する最小培地を含むフラスコ内で育成した。
【0246】
cip1及びcip2遺伝子の制御を調べるためにマイクロアレイを用いた。
【0247】
mRANの生成
トリコデルマレーシ(T. reesei)系統は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture collection)より入手した。
【0248】
ノザンブロット解析のために、1x107以下の胞子を、5%グルコースを添加した50mlの最小培地内に接種し、24時間培養した。菌糸体を遠心分離で収集し、炭素を含まない培地で洗浄し、1mMソホロースを含む、5%グルコースと、2%アビセルと、2%グリセロールを添加した50mlの最小培地(シグマ(Sigma))の中に光学密度が、0.3までになるように再懸濁した。培養は、30℃で20時間、激しく通気をしながら行った。
【0249】
菌糸体を、ミラクロス(miracloth)を用いたろ過により収穫し、液体窒素中で素早く凍結させた。RNAは、乳鉢を用いて粉砕し、ペースト化して、トリゾール(TRIZOL)試薬(インビトロジェンライフテクノロジーズ)を用いて、取り扱い説明書に従い、抽出した。ポリアデニル化したRNAを、オリゴテックス(Oligotex)(キアゲン(Qiagen))を用いて、2回選択した。ブロッティングは、ノザンマックス-Glyキット(アビオン(Amcion))を用いて行った。32P標識したプローブをDECAプライマーキット(アビオン(Amcion))を用いて生成した。ハイブリダイゼーションは、ULTAhyb高感度ハイブリダイゼーション緩衝液(アビオン(Amcion))を用いて行った。
【0250】
既知のトリコデルマレーシ(T. reesei)エンドグルカナーゼは、セルロース、ソホロース、又はラクトースを含む培地上で育成する間に誘発される。cip1がこれに似たように制御さされているかどうかを調べるために、我々は、ノザンブロッティングを用いて、mRNAレベルを調べた。QM6a;トリコデルマレーシ(T. reesei)の野生型単離体、及びRL-P37;セルラーゼ分解酵素の生産を高めるように選択された系統、の異なる2系統を用いた。これらの系統からの菌糸体を、唯一の炭素源として、グルコース、結晶セルロース(アビセル)又はグリセロール、あるいは、1mMソホロースを添加してグリセロールのいずれかを含む最小培地を含むフラスコ内で育成した。図13に示すように、cip1と他のエンドグルカナーゼは、とても似たように制御されていた。ソホロースによる誘発は、全ての実験期間を通じて、セルロース上で、育成させたものよりも高い発現レベルであった。加えて、これらの遺伝子の発現は、QM6a系統よりもRL-P37系統での方が高かった。
【0251】
マイクロアレイ
cip1及びcip2の発現レベルを調べるために、マイクロアレイを用いた。それぞれのESTsの特異配列を有する60bpオリゴヌクレオチドは対応するmRNAの余剰分量を調べるために、設計されている。このヌクレオチドのプローブを、アライントテクノロジーズ(Agilent Technologies)、パロアルト、カリフォルニア)によるHughes et al. (2001) NatureBiotechnol 19: 342-347に開示されている手順を用いて配列させた。全ての実験において、実施されるマイクロアレイは、異なるサンプル間の相対的な発現レベルを検出するために用いている。
【0252】
所望のサンプルを含むmRNAをパーキンエルマー(Perkin Elmer)/MEN)蛍光色素、Cy5及びCy3で標識する。相補的な標識サンプルのペアは、この配列に結合し、共ハイブリダイズする。このプローブのそれぞれに結合する2の蛍光種の速度の指数(速度指数)は、2のサンプルにおける同種の遺伝子の相対的な発現レベルを反映している。上記のHughes et al. (2001) 及び DeRisi et al. (1996) Nat Genet 14: 457-460を参照のこと。
【0253】
この2の成熟炭水化物分解酵素、cip1及びcip2は、GHsとして知られているものに匹敵するGHs分類のいずれにもあてはまらなかった。セルラーゼ生産能力を有する系統間、及び各種条件下におけるcip1の制御は、エンドグルカナーゼ及び特に、セロビオハイドラーゼcbh1/cel7a(図13及び図14)と区別がつかない。同様に、cip2は、これらの遺伝子に共通する特にRL-P37に共通する発現パターンを有する。これらの遺伝子の共制御(co-regulation)は、確かに、セルラーゼ成分を制御しており、別々のセルロース結合モジュールを含んでいる。さらに、cip1及びcip2は、バイオマス分解に役立つ可能性のある未知の活性をエンコードしている。
【0254】
ヘミセルロースエンコード遺伝子、axe2及びabf2は、ラクトース及びソホロースを用いて、QM6a及びRL-P37又は両者の中で別々に誘発することが知られている。
【0255】
このことは、cip1及びcip2の新規遺伝子は、他のセルロース分解酵素と同様に制御されていることを示す。
【実施例5】
【0256】
4の遺伝子を欠いたトリコデルマレーシ(T. reesei)系統(4遺伝子欠失体)の構築
この実施例は、適切な発現宿主の構築を説明する。より具体的には、この実験の記載は、主要なセルラーゼ遺伝子を欠いたトリコデルマ発現宿主の構築に関するものである。この方法は、例えば、US Patents No. 5,650,322,5, 874,276 及び 6,286,196に明確に説明されている。
【0257】
我々は、分子生物学的技術を用いて、欠失又は阻害により、セロビオハイドラーゼI(CBHI,Cel7a), セロビオハイドラーゼII (CBHII, Cel6a), エンドグルカナーゼI (EGI, Cel7b), 及び、エンドグルカナーゼII (EGII, Cel5a)をエンコードしている遺伝子を失活させたトリコデルマ系統を構築した。この系統(4 遺伝子欠失体)は、他のトリコデルマレーシ(T. reesei)が分泌するタンパク質をエンコードする遺伝子を過剰発現させるための宿主細胞として有用である。
【0258】
用いられるトリコデルマ宿主細胞系統は、RL-P37系統である。この系統は、ジェネンカーインターナショナルが製造する市販セルラーゼの工業生産に用いられている系統である。この系統の供給及び特徴は、文献に記載されている(Sheir-Neiss, G. and Montenecourt, B. S. (1984) Appl. Microbiol. Biotechnol. 20: 46-53; US Patent 4,797, 361)。この系統は、野生型系統(QM6a)を、幾つかの変異誘発工程を経た結果得られた、セルラーゼを大量に生産する変異系統である。
【0259】
1)pyr4変異系統の単離
プラスミドDNAを用いた形質転換RL-P37系統を調製するために、pyr4遺伝子中にヌル突然変異を有する誘導体を単離することが必要である。
【0260】
このpyr4遺伝子は、ウリジンの生合成に必要な、酵素である、オロチジン-5’-モノフォスフェートデカルボキシラーゼをエンコードしている。この毒制御因子の5-フルオロチン酸(FOA)は、野生型細胞では、ウリジンに取り込まれ、細胞毒となる。しかしながら、pyr4遺伝子を欠く細胞は、この制御因子に耐性を有し、成長にウリジンを必要とする。それゆえ、FOAを用いて、pyr4変異体系統を選択することが可能である。実際には、トリコデルマレーシ(T. reesei)系統のRL-P37の胞子を、2mg/mlウリジンと1.2mg/mlのFOAを含む固形培地の表面に接種する。3-4日以内に、自然発生したFOA耐性コロニーが出現した。我々は、引き続き、これらの、成長にウリジンを必要とするFOA耐性変異体を同定した。これらの変異体、特に、pry4遺伝子を欠く、変異体を同定するために、プロトプラストを生成し、野生型pyr4遺伝子を含むプラスミドを用いて、形質転換させた(Smith, J.L., Bayliss, F. T. and Ward, M. (1991) Curr. Genet. 19: 27-33)。引き続き、形質転換されたプロトプラストはウリジンを欠く培地上で平板培養された。引き続き成長する形質転換体のコロニーは、プラスミドが、生み出したpyr4遺伝子によりpyr4遺伝子の欠失が補われていることを示している。このような系統をGC69と称し、RL-P37系統のPyr4変異体として同定した。
【0261】
1) CBHIエンコード遺伝子を欠失させるように設計されたプラスミドの構築
CBH1タンパク質をエンコードするcbh1遺伝子は、この遺伝子の公知の配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによりRL-P37系統のゲノムDNAからクローンされた(Shoemaker, S., Schweickart, V., Ladner, M., Gelfand, D., Kwok, S., Myambo, K. and Innis, M. (1983) Biotechnology 1: 691-696)。このcbh1遺伝子は、5.6kb Pstlフラグメント上に存在しており、pUC4K(ファルマシア)のカナマイシン耐性遺伝子を置き換える、Pstl部位に挿入した。得られたプラスミドである、pUC4K::cbh1を、HindIIIで消化し、より大きなフラグメントを単離し、pUC4K::cbh1△H/HKに結合する。この手順により、cbh1コード配列全体及び5’の約1.2kb及び3’の約1.5kbのフランキング領域を排除する。約1kbのフランキングDNAが元のPstlフラグメントのいずれかの末端に残こる。
【0262】
トリコデルマレーシ(T. reesei)pry4遺伝子は、pTpyr2を形成するために、pUC18中のゲノムDNAのHindIIIフラグメントとしてクローンされた(Smith, J. L., Bayliss, F. T. and Ward, M. (1991) Curr. Genet. 19: 27-33)。このプラスミドpUC4K::cbh1△H/Hを、HindIIIで切り、末端を、子牛の腸由来のアルカリフォルファターゼで脱リン酸化した。このDNAは、p△CBHIpyr4を得るためにpyr4遺伝子を含むHindIIIフラグメントで結合した。
【0263】
EcoR1によるp△CBH1pyr4の消化物は、この中心の中のcbh1コード配列に置き換わるpyr4遺伝子のいずれか一方のフラグメントを遊離する。トリコデルマレーシ(T. reesei)から得られたこのフラグメント上のDNAだけが、pUC4Kの多重クローニング部位由来の21bpフラグメントであった。
【0264】
3)トリコデルマレーシ(T. reesei)のcbh1遺伝子の欠失
GC69細胞系統の菌糸体から単離されたプロトプラストは、Smith et al 1991に概説されている方法を用いて、EcoR1で消化されたp△CBH1pry4を用いて形質転換させた。安定な形質転換体が得られ、以下で説明するようにcbh1遺伝子が欠失しているものを同定した。
【0265】
トータルRNAを、Pstlで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、メンブレンフィルターにブロットして、形質転換体から単離した。このフィルターはその後、32P標識したp△CBH1pry4でハイブリダイズし、ハイブリダイゼーションのパターンをオートラジオグラフィーで観察した。このプローブは、形質転換させていない系統では、系統が本来有しているcbh1及びpyr4遺伝子をハイブリダイズした。ある形質転換体(p37p△CBH1系統)のハイブリダイゼーションのパターンは、二重交叉取り込みイベントが起こっているなら、観察される。すなわち、cbh1遺伝子は、p△CBH1pyr4から得られた、より大きなEcoR1フラグメントのシングルコピーの取り込みにより、RL-P37系統のcbh1の位置から欠失させられていた。
【0266】
このプローブが標識されたPlntCBH1であることを証明するために、サザン解析を行った。このプラスミドは、欠失させられたpUC4K::cbh1△H/Hの領域内のcbh1の位置由来の2kbのBg/IIフラグメントを含む。このプラスミドは、GC69系統のcbh1位置にハイブリダイズしたが、p37p△CBH1系統由来のDNAには、ハイブリダイズしなかった。このことは、cbh1遺伝子が欠失させられて、p△CBH1pyr4由来のpUCDNAフラグメントが欠失系統により取り込まれていることを示している。
【0267】
ゲル等電点電気泳動上の分離による、分泌タンパク質の解析は、CBH1タンパク質がp37p△CBH1系統から生産されていないことを示した。
【0268】
4)P37P△CBHIのpry4ヌル突然変異体の生成
cbh1形質転換体(P37P△CBHI)の胞子をFOAを含む培地にまく。この形質転換体のpry4欠失誘導体は、上のセクション1で説明した方法を用いて得た。このpry4欠失系統を、P37P△CBH1pyr-26と称した。サザン解析の結果は、P37P△CBH1pyr-26系統に、欠失が起こっていることを示した。この欠失は、P37P△CBH1系統中にある、cbh1に取り込まれたpry4だけでなく、もともとクローンされているゲノムDNAの6.5kbのPstlフラグメントの域を超えたところに位置しているcbh1由来のフランキングDANも、完全に除去していた。
【0269】
5)cbh2遺伝子欠失ベクターの構築
CBHIIタンパク質をエンコードしているトリコデルマレーシ(T. reesei)cbh2遺伝子は、4.1kbのゲノムDNAのEcoRIフラグメントとしてクローンされている(Chen et al., 1987, Biotechnology 5: 274-278)。この4.1kbフラグメントをpUC4XLのEcoRI部位の間に挿入した。このプラスミドは、ここで示す、EcoRl、BamHl、Sacl、Smal、 Hindlil、 Xhol、 Bglll、Clal、 Bglll、Xhol、Hindlll、Smal、Sacl、BamHl、EcoRのように配列されている制限エンドヌクレアーゼ部位の対象パターンを有するマルチクローニング部位を含む、pUCI誘導体である(ジェネンカーインターナショナルの、R.M.Berkerにより構築された)。このプラスミドpP△CBHIIを、HindIII部位(CBHIIの転写開始部位の74bp3’にある)及びClal部位(CBHIIの最終コドンの265bpの3’にある)の間にある、cbh2クローンの1.7kdの中央領域を除去し、以下の方法で得られたトリコデルマレーシ(T. reesei)pyr4遺伝子を含む、1.6kdのHindIII-ClalDNAフラグメントを置き換えることにより構築した。このトリコデルマレーシ(T. reesei)pyr4遺伝子を、1.6kbのNhel-Sphlフラグメント上のpTpyr2から取り除き、pUC219(Bglll、Clal 及びXholの制限部位を含むように伸長させた多重クローニング部位を拡張し、pUC119から誘導したもの;Wilson etal., 1989, Gene 77: 69-78)のSphl及びXbal部位の間に、p219M(Smith etal., 1991, Curr. Genet. 19: 27-33)を作るために挿入した。このpyr4遺伝子を、pUC219多重クローニング部位から誘導し、一方の端に7bpのDNAを有し、他の端に、6bpのDNAを有するHindIIIClalフラグメントとして除去し、プラスミドpP△CBHIIを形成するためにcbh2遺伝子のHindIIIとClal部位に挿入した。
【0270】
このプラスミドをEcoRIで消化すると、cbh2の位置から0.7kbのフランキングDNAを一端に有し、cbh2の位置から1.7kbのフランキングDNAを他方の端に有し、中央にトリコデルマレーシ(T. reesei)pyr4遺伝子を有するフラグメントが遊離される。このトリコデルマレーシ(T. reesei)由来でないフラグメントの中のDNAのみが、pyr4遺伝子のいずれか一方の端にある、pUC219多重クローニング部位の6bpと7bpフラグメントであった。
【0271】
6)P37P△CBHIPyr-26系統からcbh2遺伝子の欠失
上記3で概説する方法に従って、P37P△CBHpyr-26系統のプロトプラストを作成し、EcoRIで消化したpP△CBHIIを用いて形質転換した。安定な形質転換体を、振とうフラスコ内で培養し、培養物の上清中にあるタンパク質を等電点電気泳動で調べた。いかなるCBHII及びCBHIタンパク質も生成しない、1の形質転換体(P37P4△△CBH67と称す)が同定された。
【0272】
P37P△CBH67系統由来のDNAを抽出し、EcoRI及びAsp718で消化し、アガロースゲル電気泳動にかけた。このゲルからのDNAをメンブレフィルターにブロットし、32Pを標識した、pP△CBHIIを用いてハイブリダイズした。野生型cbh2遺伝子を含む4.1kbのEcoR1フラグメントが形質転換されていない対照系統からのDNA中には見られた。これとは対照的に、p37p△△CBH67系統では、4.1kdの単一バンドが排除され、約0.9kb及び3.1kbの2のバンドに置き換わっていた。このことは、pP△CBHII由来のより大きいEcoRIフラグメントのシングルコピーが、正確にcbh2の遺伝子座に取り込まれ、cbh2遺伝子が欠失したならば、予想されるパターンである。
【0273】
同じDNAサンプルを、EcoRIで消化しサザン解析を上記に従い実施した。この実験において、プローブは、32P標識されたplntCBHIIを用いた。このプラスミドは、プラスミドpP△CBHIIが有していない、cbh2DNAのセグメント内にある、cbh2遺伝子コード配列の部分を含む。サザン解析の結果、P37P△CBH67系統からのDNAとのハイブリダーゼーションは起らなかった。このことは、cbh2遺伝子が欠失しており、pP△CBHIIのpUCプラスミドフラグメントがこの系統に取り込まれていないことを示す。
【0274】
7)P37△CBH67系統のpyr4ヌル変異体の選択
cbh1とcbh2を欠失させた形質転換体(P37P△△CBH67)の胞子をFOAを含む培地にまく。この形質転換体のpry4欠失誘導体は、上のセクション1で説明した方法を用いて得た。このpry4欠失系統は、P37P△△CBH67Pyr-1と称した。サザン解析の結果は、P37P△△CBH67Pyr-1系統に、欠失が起こっていることを示した。この欠失は、P37P△△CBH67系統中にある、cbh2の遺伝子座に取り込まれたpry4だけでなく、もともとクローンされているゲノムDNAの4.1kbのEcoRIフラグメントの域を超えたところに位置しているcbh2由来のフランキングDANも、完全に除去していた。Pyr4遺伝子のいずれか一方の端にあった、pUC219多重クローニング部位由来の短い(6bp及び7bp)DNAフラグメントも、この欠失によりゲノムより除去されていた。
【0275】
8)egl2遺伝子を阻害するために設計されたプラスミドの構築
EGII(EGIIIと示す場合もある)をエンコードするgel2遺伝子は、トリコデルマレーシ(T. reesei)よりクローンされ、DNA配列は公知である(Saloheimo etal., 1988, Gene 63: 11- 21)。我々は、pUC219のPstl及びXhol部位の間に挿入される約4kdのPstl-XholゲノムDNAフラグメントとして、RL-P37系統から遺伝子を得た。この、pTpyr2から得られたゲノムDNAの2.7kbのSalフラグメント上にあるトリコデルマレーシ(T. reesei)pyr4遺伝子は、プラスミドpEGII::P-1を作るためにEGIIコード配列内に挿入した。このことにより、EGIIコード配列の阻害が起こるが、配列の欠失はおこらない。このプラスミドpEGII::P-1は、pUC219の多重クローニング部位由来の5pbの端部及び16pbの他方の端部を除いて、トリコデルマレーシ(T. reesei)由来の直鎖DNAフラグメントを生産するためにHidnIII及びBanHIで消化する。
【0276】
9)P37P△CBH67Pyr-1系統のegl2遺伝子の阻害
P37P△△CBH67Pyr-1を、HindIII及びBanHIで消化したpEGII::P-1で形質転換し、安定な形質転換体を選択した。トータルDNAを、形質転換体から単離し、サザン解析を用いて、pyr4及びegl2遺伝子を含むプラスミドDNAがegl2の遺伝子座に取り込まれ、その結果EGIIコード配列が阻害されている系統を同定した。サザン解析では、egl2遺伝子を含むトリコデルマレーシ(T. reesei)DNAの約4kbのPst1フラグメントをプローブとして用いた。P37P△△67P-1系統から単離されたDNAが、Pst1で消化されると、サザン解析において、egl2の遺伝子座は、オートラジオグラフィーでは、単一の4kbのバンドとして確認される。しかしながら、egl2遺伝子が阻害された形質転換体では、このバンドは、消失しており、予想される2のバンドに置き換わっていた。このDNAをBglII又はEcoRVで消化すると、egl2遺伝子に対応するバンドのサイズは、形質転換されていないP37P△△67P-1系統におけるegl2阻害の形質転換体の間の、約2.7kd(挿入されたpyr4フラグメントのサイズ)まで増加した。cbh1、cbh2、及びegl2遺伝子を欠く後者の形質転換体は、B31系統とされた。さらにサザン解析で、pEGII::P-1のpUC DNAフラグメントがこの系統に取り込まれないことを確認した。
【0277】
10)B31系統のpyr4ヌル変異体の選択
cbh1、cbh2、及びegl2遺伝子を欠いた形質転換体(B31)の胞子をFOAを含む培地にまく。この形質転換体のpry4欠失誘導体は、上のセクション1で説明した方法を用いて得た。このpry4欠失系統は、B31P6と称した。サザン解析の結果は、B31P6系統に、欠失が起こっていることを示した。この欠失は、B31系統のegl2の遺伝子座に組み込まれたpyr4遺伝子の大部分を除去するものであり、egl2遺伝子座のフランキングDNA内へ伸長するものではなかった。
【0278】
11)egl1遺伝子させるためのプラスミドの構築
egl1遺伝子はクローンされており、この遺伝子のDNA配列は公知である(Penttila et al., 1986, Gene 45: 253-263; van Arsdell et al., 1987, Bio/technology 5: 60-64)。我々は、トリコデルマレーシ(T. reesei)RL-P37系統由来のこの遺伝子を、pUCEGIを得るための、pUC100(BglII、Clal、及びXholのに対する制限部位を付加した多重クローニング部位へのオリゴヌクレオチド挿入によるpUC18の誘導体)のHindIII部に挿入されたゲノムDNAのHindIIIフラグメントとして入手した。EGIコード配列の中央に近い位置から、このコード配列の3’末端を越えた位置に広がっている約1kbのEcoRVフラグメントを除去し、pTPyr2から得られたpyr4遺伝子を含むトリコデルマレーシ(T. reesei)DNAの3.5kbのScalフラグメントで置き換えた。得られたプラスミドを、pP△EGIとした。
【0279】
このプラスミド、pP△EGIは、いずれかの端部にegl1遺伝子のセグメントを有し、置き換えられたEGIエンコード配列の一部の中央にpyr4遺伝子を有する、トリコデルマレーシ(T. reesei)ゲノムDNAのみを含む、DNAフラグメントを切り離すために、HindIIIで消化した。
【0280】
12)B31P6系統内のegl2遺伝子の欠失
egl1フランキング領域のPyr4遺伝子の定位のみが異なる2のpP△EG1を構築した。HindIIIで消化したこの2のプラスミドを用いて、B31P6系統を形質転換した。トータルRNAを安定な形質転換体から抽出し、HindIIIで消化し、サザン解析を行った。プローブは、ラジオラベルしたpUCEGIを用いた。欠失していないegl1遺伝子を表すB31P6系統由来のDNAの4.2kbフラグメントが観察された。形質転換体(1A52系統)では、4.2kbのバンドは検出されず、約6.8kbのフラグメントに置き換わっていた。このことは、pP△EG1由来のより大きいHindIIIフラグメントが予測されたとおり、egl1の遺伝子座に取り込まれ、EG1コード配列の部分を欠失させ、この位置にPyr4が挿入されたことを示している。サザン解析のプローブとして,pUCプラスミドを用いることにより、pUC DNAフラグメントが、1A52系統に取り込まれないことを確認した。
【実施例6】
【0281】
Trex3g発現ベクターの構築
この実験は、所望の遺伝子を発現するための基本的なベクターの構築を説明する。
【0282】
このベクターは、64の6量体制限酵素認識部位を含む、多重クローニング部位を有するベクターを基にした、pUC118ファージミド(Brosius, J. (1989) DNA 8: 759)である、大腸菌ベクターpSL1180(Pharmacia Inc., Piscataway, NJ, USA)である。このベクターは、トリコデルマレーシ(T. reesei)cbh1遺伝子のプロモーター及びターミネーター領域の間の任意の好ましいオープンリーディングフレームのゲートウェイテクノロジー(インビトロジェン)を用いて挿入することができる、ゲートウェイデシティネーションベクター(Hartley, J. L., Temple, G. F. and Brasch, M. A. (2000) Genome Research 10: 1788-1795)であると定義される。このベクターは、トリコデルマレーシ(T. reesei)における翻訳の選択マーカーとして用いる、アスペルギウスニドゥランス(Aspergillus nidulans)のamdS遺伝子を含んでいる。
【0283】
pTrex3の詳細を以下に示す。このベクターのサイズは、10.3kbである。PSL1180のポリリンカー領域に挿入されるのは、以下のDNAセグメントである:
1. トリコデルマレーシ(T. reesei)cbh1遺伝子のプロモーター領域由来のDNA2.2bpセグメント
2. クロラムフェニコール耐性遺伝子(CmR)及びccdB遺伝子に隣接している端部のいずれかに、attR1及びattR2組換え部位を含む、インビトロジェンより市販されている1.7kbのゲートウェイリーディングフレームAカセット
3. トリコデルマレーシ(T. reesei)cbh1遺伝子のターミネーター領域由来の36bpのDNAセグメント
4. プロモーター及びターミネーターを含むアスペルギウスニヂュランス(Aspergillus nidulans)amdS遺伝子を含む、2.7kbのDNAフラグメント。
【実施例7】
【0284】
pTrex3gへのcip1コード領域の挿入
この実施例は、cip1の発現ベクターの構築について説明する。
【0285】
ターミネーターとしてトリコデルマレーシ(T. reesei)系統QM6A(ATCC 13631)由来の精製ゲノムDNAを用いて、cip1のオープンリーディングフレームを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。用いたPCR装置は、Peltier Thermal Cycler PTC-200 (MJ Research)であった。このPCRに用いるDNAポリメラーゼは、Herculase (Stratagene)であった。cip1遺伝子の増幅に用いるプライマーは、170(前方向)5’- CACCATGGTTCGCCGGACTGCTCTG-3’及び171(後ろ方向)5'-TTATAAGCACTGGGAGTAGTATGG-3'であった。前方向プライマーは、5’末端にcip1遺伝子には対応していないが、pENTR/D-TOPOベクター内クローニングに必要な4の付加的なヌクレオチドを含んでいる(CACC配列)。cip1のオープンリーディングフレームを増幅するPCR条件は、以下である。工程1:94℃で2分、工程2:94℃で30秒、工程3:58℃で30秒、工程4:72℃で35秒。工程2,3及び4を、21回繰り返す。工程5:70℃、5分。
【0286】
このPCR産物は、キアゲン(Qiaquick) PCR 精製キット (キアゲン(Qiagen))を用いて精製した。この精製されたPCR産物を、pENTR/DTOPOベクター(インビトロジェン(Invitrogen)、図18)内でクローニングし、TOP10 chemically competentE coli cells (インビトロジェン(Invitrogen))で形質転換し、50ppmのカナマイシンを含むLAプレート上で平板培養する。プラスミドDNAを、QlAspin プラスミド調製キット (キアゲン(Qiagen))を用いて、大腸菌形質転換体から得た。M13前方向及び後ろ方向のプライマーを用いて、pENTR/DTOPOベクターへと挿入されたDNAについての配列データを得た。挿入された正確なDNA配列を有するpENTR/DTOPOベクターは、LR clonase(インビトロジェン(Invitrogen))を用いて、この取り扱い説明書に従って、pTrex3gベクターと再結合された。LR clonaseの反応産物は、TOP10 chemically competentE coli cells内で形質転換され、50ppmのカルベニシリンを含むLA培地上で平板培養された。得られた発現構築体(pExpression construct)は、pTrex3のattR1及びattR2部位とpENTR/DTOPOのattL1及びattL2の間の組換えにより得られた、cip1遺伝子を含むpTrex3であった。cip1オープンリーディングフレームを含む発現構築体(pExpression construct)のDNAを、トリコデルマレーシ(T. reesei)胞子のbiolistic形質転換に対するキアゲンミニプレップキット(Qiagen miniprep kit)(キアゲン(Qiagen))を用いて単離した。
【実施例8】
【0287】
pTrex3gへのcip2コード領域の挿入
この実施例は、cip2の発現ベクターの構築について説明する。
【0288】
ターミネーターとしてトリコデルマレーシ(T. reesei)系統QM6A由来の生成されたゲノムDNAを用いて、cip2のオープンリーディングフレームを、PCRにより増幅した。用いたPCR装置は、Peltier Thermal Cycler PTC-200 (MJ Research)であった。このPCR[に用いるDNAポリメラーゼは、Herculase (Stratagene)であった。cip2遺伝子の増幅に用いるプライマーは、230(前方向)5'-CACCATGGCTTCCCGCTTCTTTG-3'及び231(後ろ方向)5'- TCAACTCAGCGTTGGGGTTG-3'であった。前方向プライマーは、5’末端にcip2遺伝子には対応していないが、pENTR/D-TOPOベクター内クローニングに必要な4の付加的なヌクレオチドを含んでいる(CACC配列)。cip2のオープンリーディングフレームを増幅するPCR条件は、以下である。工程1:94℃で2分、工程2:94℃で30秒、工程3:56℃で30秒、工程4:72℃で1分。工程2,3及び4を、21回繰り返す。工程5:72℃、5分。
【0289】
このPCR産物を、キアゲン(Qiaquick) PCR 精製キット (キアゲン(Qiagen))を用いて精製した。この精製されたPCR産物を、pENTR/DTOPOベクター(インビトロジェン(Invitrogen)、図18)内でクローニングし、TOP10 chemically competentE coli cells (インビトロジェン(Invitrogen))で形質転換し、50ppmのカナマイシンを含むLAプレート上で平板培養する。プラスミドDNAを、QlAspin plasmid preparation kit (キアゲン(Qiagen))を用いて、大腸菌形質転換体から得た。M13前方向及び後ろ方向のプライマーを用いて、pENTR/DTOPOベクターへと挿入されたDNAについての配列データを得た。挿入された正確なDNA配列を有するpENTR/DTOPOベクターは、LR clonase(インビトロジェン(Invitrogen))をもちいて、この取り扱い説明書に従って、pTrex3gベクターと再結合された。LR clonaseの反応産物を、TOP10 chemically competentE coli cells内で形質転換し、50ppmのカルベニシリンを含むLA培地上で平板培養した。得られた発現構築体(pExpression construct)は、pTrex3のattR1及びattR2部位とpENTR/DTOPOのattL1及びattL2の間の組換えにより得られた、cip2遺伝子を含むpTrex3であった。Cip2オープンリーディングフレームを含む発現構築体(pExpression construct)のDNAは、トリコデルマレーシ(T. reesei)胞子のbiolistic形質転換に対するキアゲンミニプレップキット(Qiagen miniprep kit)(キアゲン(Qiagen))を用いて単離した。
【実施例9】
【0290】
pTrex3gへのabf2コード領域の挿入
この実施例は、abf2の発現ベクターの構築について説明する。
【0291】
ターミネーターとしてトリコデルマレーシ(T. reesei)系統QM6A由来の生成されたゲノムDNAを用いて、abf2のオープンリーディングフレームを、PCRにより増幅した。用いたPCR装置は、Peltier Thermal Cycler PTC-200 (MJ Research)であった。このPCRに用いるDNAポリメラーゼは、Pfu Turbo cx Hotstart (Stratagene)であった。Abf2遺伝子の増幅に用いるプライマーは、NSP071 (前方向): 5'- GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTATGGAGCTTAAAGCACTCAGTGCCG-3'、及びNSP072 (後ろ方向): 5'- GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTCAGCGCTGGAGAGTTAGCAGC-3'であった。前方向及び後ろ向きプライマーの両者は、5’末端にabf2遺伝子には対応していないが、pDONR201ベクター内クローニングに必要なattB1を示す29の付加的なヌクレオチドを含んでいる。abf2のオープンリーディングフレームを増幅するPCR条件は、以下である。工程1:95℃で2分、工程2:95℃で30秒、工程3:68℃で30秒、工程4:72℃で3分。工程2,3及び4は、29回繰り返す。工程5:72℃、1分。
【0292】
ゲートウェイ(登録商標)テクノロジー(インビトロジェン(Invitrogen))を用いた、PCRクローニングキットで、このPCR産物を、BPクロナーゼ反応を介してpDONR201ベクター内でクローンした。M13前方向及び後ろ方向のプライマーを用いて、pDONR201ベクターへと挿入されたDNAについての配列データを得た。挿入された正確なDNA配列を有するpDONR201ベクターは、LR clonase(Invitrogen)をもちいて、この取り扱い説明書に従って、pTrex3gベクターと再結合された。LR clonaseの反応産物を、TOP10 chemically competentE coli cells内で形質転換し、50ppmのカルベニシリンを含むLA培地上で平板培養した。得られた発現構築体(pExpression construct)は、pTrex3のattR1及びattR2部位とpDONR201のattL1及びattL2の間の組換えにより得られた、abf2遺伝子を含むpTrex3であった。Abf2オープンリーディングフレームを含む発現構築体(pExpression construct)のDNAを、トリコデルマレーシ(T. reesei)胞子のbiolistic形質転換に対するキアゲンミニプレップキット(Qiagen miniprep kit)(キアゲン(Qiagen))を用いて単離した。
【実施例10】
【0293】
pTrex3gへのaxe2コード領域の挿入
この実施例は、axe2の発現ベクターの構築について説明する。
【0294】
axe2のオープンリーディングフレームを、ターミネーターとして、トリコデルマレーシ(T. reesei)系統QM6A由来の生成されたゲノムDNAを用いて、PCRにより増幅した。用いたPCR装置は、Peltier Thermal Cycler PTC-200 (MJ Research)であった。このPCR[に用いるDNAポリメラーゼは、Pfu Turbo cx Hotstart (Stratagene)であった。axe2遺伝子の増幅に用いるプライマーは、NSP111 (前方向): 5'- GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTATGCGCGCCCTCTCACTCTCC-3'、及び、
NSP112 (後ろ方向): 5'- GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTCACAGCATCTGAGACACCGCC-3'.であった。前方向及び後ろ向きプライマーの両者は、5’末端にaxe2遺伝子には対応していないが、pDONR201ベクター内クローニングに必要なattB1を示す29の付加的なヌクレオチドを含んでいる。axe2のオープンリーディングフレームを増幅するPCR条件は、以下である。工程1:95℃で2分、工程2:95℃で30秒、工程3:68℃で30秒、工程4:72℃で3分。工程2,3及び4は、29回繰り返す。工程5:72℃、1分。
【0295】
ゲートウェイ(登録商標)テクノロジー(インブトロジェン)を用いた、PCRクローニングキットで、このPCR産物を、BPクロナーゼ反応を介してpDONR201ベクター内でクローンした。M13前方向及び後ろ方向のプライマーを用いて、pDONR201ベクターへと挿入されたDNAについての配列データを得た。挿入された正確なDNA配列を有するpDONR201ベクターを、LR clonase(Invitrogen)をもちいて、この取り扱い説明書に従って、pTrex3gベクターと再結合した。LR clonaseの反応産物を、TOP10 chemically competentE coli cells内で形質転換され、50ppmのカルベニシリンを含むLA培地上で平板培養した。得られた発現構築体(pExpression construct)は、pTrex3のattR1及びattR2部位とpDONR201のattL1及びattL2の間の組換えにより得られた、axe2遺伝子を含むpTrex3であった。axe2オープンリーディングフレームを含む発現構築体(pExpression construct)のDNAを、トリコデルマレーシ(T. reesei)胞子のbiolistic形質転換に対するキアゲンミニプレップキット(Qiagen miniprep kit)(キアゲン(Qiagen))を用いて単離した。
【実施例11】
【0296】
トリコデルマレーシ(T. reesei)系統の4遺伝子欠失体の形質転換
この実施例は、発現構築体を用いたトリコデルマレーシ(T. reesei)系統の形質転換について説明する。cip1、cip2、及びabf2オープンリディングフレームを有するpTrex3gベクターを用いたトリコデルマレーシ(T. reesei)のバイオリスティック(Biolistic)形質転換を、以下で概説する方法を用いて得た。
【0297】
トリコデルマレーシ(T. reesei)の4遺伝子欠失体由来の懸濁液を調製した(約5x108胞子/ml)。100μl-200μlの胞子懸濁液が、MMアセトアミド培地のプレートの中央に撒かれた。MMアセトアミド内地の組成は、0.6 g/L アセトアミド; 1.68 g/LCsCI ; 20 g/L グルコース; 20 g/L KH2PO4 ; 0.6 g/L CaCl2.2H20 ; 1 ml/L 1000X 微量元素溶液; 20 g/L アガー; pH 5.5である。1000X微量元素溶液は、5.09/l FeSO4. 7H20、1. 69/l MnS04. H20、1. 4g/l ZnS04.7H20 及び1.09/l CoCl2.6H20である。この懸濁液をMMアセトアミド培地の上で乾燥させた。
【0298】
バイオリスティック(Biolistic)によるトリコデルマレーシ(T. reesei)の形質転換は、バイオラドにより供給されている、Biolistic(登録商標)PDS- 1000/He Particle Delivery Systemを用いて、この取り扱い説明書に従って行った。簡単に説明すると、60mgのM10タングステン粒子を遠心管の中に入れる。1mlのエタノールを入れ、15分間静置する。この粒子を15,000rpmで15秒間遠心分離する。エタノールを除去し、この粒子を滅菌したdH2Oで、3回洗浄し、50%(v/v)の滅菌したグリセロールを1ml入れる。25μlのタングステン粒子懸濁液を遠心管に入れる。ボルテックスで、攪拌する間に、0.5-5 μl (100-200 ng/μl) のプラスミドDNA, 25μl の2.5MCaCI2 及び 10μl の 0. 1 M スペルミジンを添加する。この粒子を3秒間遠心分離する。上清を除去し、この粒子を70%(v/v)エタノール200μlで洗浄し、3秒間遠心分離をする。上清を除去し、この粒子を100%のエタノール200μlで洗浄し、ピペッティングで、攪拌し、このチューブを約15秒間、超音波洗浄槽内におく。このチューブが超音波洗浄槽内にある間に、8μlの粒子の一部を採取し、デシケーター内置かれているミクロキャリアーディスクの中心に置く。タングステン/DNA溶液が乾燥したら、このミクロキャリアーディスクを、胞子を有するMMアセトアミドのプレートと共に、ボンバーメントチャンバー内に置く、ボンバーメント工程は、取り扱い説明書に従って行った。形質転換コロニーは、4日後に、新たしいMMアセトアミド培地に採取して移した。
【0299】
MMアセトアミドプレートで育成して5日後に、安定した形態を示す形質転換体は、30mlポロフ培地を有する250mlの振とうフラスコ内に移した。ポロフ培地の組成は以下のようである。30 g/L α-ラクトース ; 6.5 g/L (NH4)2S04 ; 2g/L KH2PO4 ; 0.3g/L MgS04.7H20 ; 0.2g/L CaCI2 ;1 ml/L 1000X 微量元素溶液; 2ml/L 10% Tween 80 ; 22.5g/L ポロフ綿実粉(Proflo cottonseed flour) (トレーダーズプロテイン(Traders Protein)、メンフィス(Memphis)、テネシー(TN)) ; 0.72g/L CaC03。28℃、140rpmで2日間育成した後、10%のプロフ培地を30mlのラクトース含有培地を含む、250mlの振とうフラスコ内に移す。ラクトース含有培地の組成は以下のようであった。5g/L (NH4)2SO4 ; 33g/L PIPPS緩衝液 ; 9g/L カザミノ酸 ; 4.5g/L KH2PO4 ;1 g/L MgS04.7H20 ; 5ml/L Mazu DF60-P 消泡剤 (マズルケミカル(Mazur Chemicals)、 ガーニー、イリノイ(Gurnee, IL)) ; 1ml/L 1000X微量元素溶液。pH5.5、40%(w/w)のラクトース含有培地を含む振とうフラスコは、28℃、140rpmで、4-5日間培養する。この培養物の上清のサンプルに2培量のサンプルローディング緩衝液を混合し、既成のゲルを用いて、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)を、NuPAGE Bis-Tris Electrophoresis Systemの取り扱い説明書に従って、行った。(NuPAGE 10% Bis-Tris 又はNuPAGE 4-12% Bis-Tris ゲルをMOPS 緩衝液と共に用いた。NuPAGE LDS サンプルバッファー 及びNuPAGE 還元バッファーを共に使用した。)タンパク質を検出するために、このゲルをクマシーブリリアントブリー染色により染色した。
【0300】
SDS-PAGE解析において、4遺伝子欠失体の上清のサンプルには見られなかった、タンパク質バンドが、cip1オープンリディングフレームを含む、pTrex3gベクターを用いた幾つかの形質転換体の培養サンプルの上清中には見られた(図20)。この新しいタンパク質のバンドは、約50KDaの分子量を有していた。これは、この遺伝子配列から予想される33kDaよりも大きい分子サイズである。この不一致は、翻訳の後に、糖形成が起こったことによる。加えて、SDS-APGEでは、幾つかのタンパク質は、そのサイズに応じて、移動することが知られている。従って、この結果は、cip1が分泌されたタンパク質であることを示している。
【0301】
SDS-PAGE解析において、4遺伝子欠失体の上清のサンプルには見られなかった、タンパク質バンドが、cip2オープンリディングフレームを含む、pTrex3gベクターを用いた幾つかの形質転換体の培養サンプルの上清中には見られた(図21)。この新しいタンパク質のバンドは、約56KDaの分子量を有していた。これは、この遺伝子配列から予想される48kDaよりも大きい分子サイズである。この不一致は、翻訳の後に、糖形成が起こったことによる。加えて、SDS-APGEでは、幾つかのタンパク質は、そのサイズに応じて、移動することが知られている。従って、この結果は、cip2が分泌されたタンパク質であることを示している。
【0302】
SDS-PAGE解析において、4遺伝子欠失体の上清のサンプルには見られなかった、タンパク質バンドが、abf2オープンリディングフレームを含む、pTrex3gベクターを用いた幾つかの形質転換体の培養サンプルの上清中には見られた(図22)。この新しいタンパク質のバンドは、これらの遺伝子から予想される35KDaにとても近い分子量を有していた。この結果は、Abf2が分泌されたタンパク質であることを示している。
【実施例12】
【0303】
Cipタンパク質の精製及び活性解析
Cip1タンパク質を、培養物の上清から、バイオキャドスプリント(BioCAD Sprint )(プレセプティブバイオシステムズ、ケンブリッジ、マサチューセッツ(Perseptive Biosystems, Cambridge, MA)) クロマトグラフ装置を用いて、以下の手順に従い精製した。Poros 20 HP2 10カラムは、プレセプティブバイオシステムズ(Perseptive Biosystems) (ケンブリッジ、マサチューセッツ(Cambridge, MA))から入手した。この疎水相互クロマトグラフィーカラムは、5カラム容量の0.5M (NH4)2SO4/0. 02M NaH2PO4、 pH 6.80で平衡化した。上清サンプル中のタンパク質濃度は、バイオラド(Bio-Rad )タンパク質解析キットを用いて測定した。カラム容量の20%(20mg/ml)のサンプルを、カラムに付加した。このカラムを10カラム容量の0. 5M (NH4)2SO4 / 0. 02M NaH2PO4、pH 6.80で洗浄した。Cip1タンパク質は、0.02M NaH2PO4、pH 6.80を5カラム容量流したところで溶出した。このCip1タンパク質は、約70%精製されていた。この溶出物を、表記上5000の分子量のろ過限界を有する、遠心ろ過ユニット(バイオマックス(Biomax5K) ;ミリポア(Millipore))を用いた、限外ろ過方法により、13mlに濃縮した。ゲルろ過カラム(カラムは ショウデックス(Superdex 75) アマシャムバイオサイエンス(Amersham Biosciences))をカラム容量の2倍の0.02M NaH2PO4、pH 6.80で平衡化し、溶出濃縮物を付加した。分画を収集し、SDS-PAGEを用いてタンパク質の分子量を解析し、p-ニトロフェニル-p-D-デロビオシド (p-NPC)に対する活性について調べた。このときに用いたタンパク質は、95%精製されていた。
【0304】
p-NPC解析では、200μlのp-NPC(7.5mg/ml)を10μlのサンプルと混合する。50℃で30分間インキュベートした後、pH10の100mMのグリシン100μlを添加して、反応を停止させた。405nmの波長における光学密度を測定した。特定の活性は、検出されなかったけれども、Cip1がp-NPCに対して活性を有することは、明らかであった。ある試験では、酵素を添加していないバックグラウンドのOD405の光学密度は、0.071であるのに対して、Cip1を添加したときには、0.121であった。この結果は、Cip1タンパク質は、セルラーゼ活性(エンドグルカナーゼ及びセロビオハイドラーゼの両方)を測定するために通常用いる基質に対して活性を有していることを示す。
【0305】
明確に説明するために、前述の発明について、図及び実施例を用いて詳細を説明したけれども、本発明を実施するための前述の方法に関する種々の変更は本発明の範囲内に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】トリコデルマレーシ(T. reesei)のcip1のcDNAの一本鎖核酸配列(配列番号1)を示す。非コード領域を下線で示す。
【図2】図2は、トリコデルマレーシ(T. reesei)のcip1のコード配列(配列番号2)である。エンコードされているシングル配列を太字のヌクレオチドで示す。
【図3】図3は、図1で提供される核酸配列に基づく、CIP1の推定されるアミノ酸配列(配列番号3)、シングル配列(配列番号4)および成熟タンパク質配列(配列番号5)である。
【図4】図4は、トリコデルマレーシ(T. reesei)cip2(配列番号6)のコード配列である。
【図5】図5は、図4で提供される核酸配列に基づく、CIP2の推定されるアミノ酸配列(配列番号7))、シングル配列(配列番号8)および成熟タンパク質配列(配列番号9)である。
【図6】図6は、ルミノコッカスアルブスフラベファシエンス(R.flavefaciens)のcesA CAB55348とCIP2とのアラインメントである。CIP2は、CBM1ファミリーの炭水化物結合分子および約95アミノ酸の結合領域を含む36アミノ酸の後に、17アミノ酸のN末端配列を有すると推定される。
【図7】図7は、アラビノフラノシダーゼをエンコードしているトリコデルマレーシ(T. reesei)abf2遺伝子の一本鎖核酸配列(配列番号10)を示す。
【図8】図8は、図7で提供される核酸配列に基づく、ABF2の推定されるアミノ酸配列(配列番号11)、シングル配列(配列番号12)および成熟タンパク質配列(配列番号13)である。
【図9】図9はC.carbonumのARF1およびS.thermoviolaceusのstxLVとABF2のアラインメントを示す。
【図10】図10は、アセチルキシランエステラーゼをエンコードしているaxe2遺伝子(配列番号14)のcDNA配列である。
【図11】図11は、図9で提供される核酸配列に基づく、AXE2の推定されるアミノ酸配列(配列番号15)、シングル配列(配列番号16)および成熟タンパク質配列(配列番号17)である。
【図12】図12は、トリコデルマレーシ(T. reesei)AXE1とAXE2とのアラインメントを示す。
【図13】図13は、各種条件下における2の糸状菌系統に対するノザンブロットを示す。QM6aおよびRLP-37を、グルコース(レーンA)、セルロース(レーンB)、グリセロール(レーンC)またはソホロースにグリセロールを添加したもの(レーンD)内で成長させた。各培養物から単離されたmRNAを、ノザンブロットで解析した。各遺伝子の上端のバンドは、cDNAでラベルした、標準物質として示すプローブである。各遺伝子の下端のバンドは、バンドが視認できるのに必要な時間、泳動されたこと、及び、サンプルの試験系への付加が正しく行われたことを示す、アクチンプローブである。
【図14】図14は、各遺伝子の発現レベルを調べるために行われた、マイクロアレイ解析の結果である。A)2の異なる系統におけるソホロースによる誘発の振とうフラスコ解析。グリセロールまたはグリセロールに1 mMのソホロースを添加した培地中で成長させたQM6aおよびRL-P37の培養物由来のmRNAを、Cy5およびCy3蛍光色素で標識した。ソホロース成長培地由来の標識mRNAを、相補的なグリセロール成長培地由来の標識mRNAに結合し、マイクロアレイでハイブリダイズした。各遺伝子に対するプローブに結合する2の異なる標識されたmRNA種の対数速度(log rate)を、下のカラーバーに従って示す。L.R.;対数速度(log rate)、色は各遺伝子が示す、ソホロース仲介誘発の強度を反映している。カラム1;RL−P37培養のソホロース誘導体。カラム2;QM6a培養のソホロース誘導体。カラム3;ソホロース誘導RL-P37培地由来の蛍光標識したmRNAを、同じ条件で育成された、ソホロース誘発QM6a培地由来の相補的な標識mRNAとコハイブリダイズ(co-hybridyze)させたサンプル。色は、QM6aに対するRL-P37の各遺伝子中のmRNAが多いことを示す。B)醗酵槽内で、異なる炭素源で培養したときの発現レベルの解析。RL-P73とQM6aの菌糸体を、はじめにグルコース含有培地で成長させた。一時間後、グルコースは使い果たされ、ラクトースを、培地内に蓄積されない割合で供給した。サンプルを、グルコースを供給している間、グルコースが欠如している間、および、ラクトース供給から24時間ならびに48時間後に、採取した。グルコース欠如サンプルに対する各採取時間のサンプルの発現レベルを検出するためにマイクロアレイを用いた。カラム4;RL-P37グルコースあり。カラム5;QM6aグルコースあり。カラム6;RL-37ラクトース供給後24時間、カラム7;RL-37ラクトース供給後48時間、カラム8;QM6aラクトース供給後24時間、カラム9;QM6aラクトース供給後48時間。
【図15】図15は、pREP3Yベクターの概略図である。
【図16】図16は、CIP1と、ストレプトマイセスコエリコラ(Streptomyces coelicolor) A3(登録番号 CAA18323)が分泌すると推定されるハイドラーゼと配列アラインメントである。
【図17】図17は、pTrex3gベクターの概略図である。
【図18】図18は、pENTR/DTOPO(インビトロジェン(Invitrogen))ベクターの概略図である。
【図19】図19は、所望の遺伝子を含む発現構築体(pExpression construct)の概略図である。所望の遺伝子は、cip1またはcip2またはaxe2またはabf2から選択される。
【図20】図20は、cip1遺伝子を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞由来の振とうフラスコサンプルから採取された上清のSDS−PAGEゲルの写真である。レーン1は、インビトロジェン(Invitrogen)から販売されている、Mark12、分子重量マーカーである。レーン2−12は、個々の形質転換系統由来の上清サンプルの電気泳動写真である。ゲル左側の矢印は、CIP1タンパク質が発現して、検出可能な量分泌されている場合に、このタンパク質が位置する箇所を示す。
【図21】図21は、cip2遺伝子を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞由来の振とうフラスコサンプルから採取された上清のSDS−PAGEゲルの写真である。レーン1は、インビトロジェン(Invitrogen)から販売されている、Mark12、分子重量マーカーである。レーン2−12は、個々の形質転換系統由来の上清サンプルの電気泳動写真である。ゲル左側の矢印は、CIP2タンパク質が発現して、検出可能な量分泌されている場合に、CIP2タンパク質が位置する箇所を示す。
【図22】図22は、abf2遺伝子を含む発現ベクターで形質転換された宿主細胞由来の振とうフラスコサンプルから採取された上清のSDS−PAGEゲルの写真である。レーン1は、ここで述べるトリコデルマ系統の4分の1欠失体由来の上清である。レーン2は、インビトロジェン(Invitrogen)から販売されている、Mark12、分子重量マーカーである。レーン3は、abf2形質転換系統由来の上清である。ゲル左側の矢印は、ABF2タンパク質が、発現して、検出可能な量分泌されている場合に、ABF2タンパク質が位置する箇所である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース結合活性を有するタンパク質をエンコードしている単離ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号5で示すアミノ酸配列と、少なくとも85%の配列相同性を有するCIP1ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(b)配列番号5で示すアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列相同性を有するCIP1ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(c)配列番号5で示すアミノ酸配列と、少なくとも95%の配列相同性を有するCIP1ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(d)配列番号5で示すアミノ酸配列を有するCIP1ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(e)配列番号3で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列相同性を有するCIP1ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、または、これと相補的な核酸配列、
(f)配列番号3で示すアミノ酸配を列有するCIP1ポリペプチドをエンコードする核酸配列、あるいは、これと相補的な配列、又は、
(g)10のオープンギャップペナルティー、0.1のエクステンドギャップペナルティー、及び、BLOSOM 30類似マトリックスを含むデフォルトパラメーターを用いて操作する、マックベクター(MacVector)version 6.5のCLUSTA-Wプログラムを用いて、相同性%を計算することを特徴とする、配列番号2で示す核酸配列、あるいは、これと相補的な配列
から成る群より選択されることを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
高ストリンジェンシーコンディション下で、配列番号2で示す配列とハイブリダイズする単離ポリヌクレオチドであって、ハイブリダイゼーションを、42℃のの50%ホルムアミド、6×SSC、5×デンハード溶液、0.5%SDS及び100μg/ml変性キャリアDNAを用いて行われ、次いで、2×SSPE及び0.5%SDSを用いて室温で2回洗浄し、次いで、42℃の0.1 SSPE及び0.5%SDSで洗浄することを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
ポリヌクレオチドがRNA分子であることを特徴とする請求項1のポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマ源由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項4の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマレーシ由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
発現構築体であって、
(i)配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するポリヌクレオチド配列、又は、
(ii)中から高ストリンジェンシー条件下で、配列番号2で示す核酸配列由来のプローブにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列、又は
(iii)配列番号3で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有する核酸配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を、含む発現構築体。
【請求項7】
請求項6の発現構築体を含むベクター。
【請求項8】
請求項1の単離ポリヌクレオチドを含むベクターであって、該ベクターで形質転換させた宿主細胞が認識する制御配列に作動可能に結合することを特徴とする、単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項7のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項10】
請求項8のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項11】
請求項10の宿主細胞であって、宿主細胞が原核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項12】
請求項10の宿主細胞であって、宿主細胞が真核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項13】
請求項1のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
【請求項14】
原核生物の細胞であることを特徴とする請求項13の組換え宿主細胞。
【請求項15】
真核生物の細胞であることを特徴とする請求項13の組換え宿主細胞。
【請求項16】
セルロース結合領域の生物活性を有する実質的に精製されたCIP1ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号5で示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号5で示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号5で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号3で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号3で示すアミノ酸配列、及び
(g)実質的に精製された生物活性を有する、配列番号5で示すアミノ酸配列のフラグメント
から成る群より選択される配列を含むことを特徴とする、実質的に精製されたCIP1ポリヌクレオチド。
【請求項17】
酵素を生産する方法であって、
(a)請求項1で定義されるポリヌクレオチドを含む発現ベクターで安定に形質転換させた宿主細胞、
(b)宿主細胞がセルロース結合を生産するのに適した環境下で形質転換宿主細胞を培養する工程、及び、
(c)セルロース結合を回収する工程
を含む、セルロース結合活性を有する酵素を生産する方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、前記宿主細胞が、糸状菌又は酵母菌の細胞であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17の方法により調製されたセルロース結合活性を有する精製酵素。
【請求項20】
cip1遺伝子の中に、cip1遺伝子を失活させ、CIP1ポリヌクレオチド生産を阻害するための欠失、挿入、又は他の変更を有する、組換え宿主細胞。
【請求項21】
配列番号5で示す配列を有するCIPポリペプチドをエンコードする伝達RNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、
CIP1生産宿主細胞において、前記オリゴヌクレオチドが、CIP1の生産を減らす又は抑制することを特徴とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項22】
請求項21のアンチセンスオリゴヌクレオチドの宿主細胞が糸状菌であることを特徴とする方法。
【請求項23】
洗剤組成物であって、
(a)配列番号5で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号5で示すアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号5で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号5で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号3で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号3で示すアミノ酸配列、及び、
(g)配列番号5で示すアミノ酸配列の実質的に精製された生物活性フラグメント
から成る群から選択されるポリペプチドを含む、洗剤組成物。
【請求項24】
請求項16のCIP1を含む食品添加物。
【請求項25】
請求項16のCIP1をウッドパルプに接触させる工程を含む、ウッドパルプの処理方法。
【請求項26】
請求項16のCIP1をバイオマスに接触させる工程を含む、バイオマスを糖に転換させる方法。
【請求項27】
セルロース結合活性を有するタンパク質をエンコードしている単離ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号9で示すアミノ酸配列と、少なくとも85%の配列相同性を有するCIP2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(b)配列番号9で示すアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列相同性を有するCIP2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(c)配列番号9で示すアミノ酸配列と、少なくとも95%の配列相同性を有するCIP2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(d)配列番号9で示すアミノ酸配列を有するCIP2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(e)配列番号7で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列相同性を有するCIP2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(f)配列番号7で示すアミノ酸配列を有するCIP2ポリペプチドをエンコードする核酸配列、あるいは、これと相補的な配列、又は
(g)10のオープンギャップペナルティー、0.1のエクステンドギャップペナルティー、及び、BLOSOM 30類似マトリックスを含むデフォルトパラメーターを用いて操作する、マックベクター(MacVector)version 6.5のCLUSTA-Wプログラムを用いて、相同性%を計算することを特徴とする、配列番号6で示す核酸配列、又は、これと相補的な配列
から成る群より選択される単離ポリヌクレオチド。
【請求項28】
高ストリンジェンシーコンディション下で、配列番号6で示す配列とハイブリダイズする単離ポリヌクレオチドであって、
ハイブリダイゼーションを42℃で、50%ホルムアミド、6×SSC、5×デンハード溶液、0.5%SDS及び100μg/ml変性キャリアDNAを用いて行い、次いで、2×SSPE及び0.5%SDSで室温で2回洗浄し、次いで、42℃で、0.1SSPE及び0.5%SDSで洗浄することを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項29】
ポリヌクレオチドがRNA分子であることを特徴とする請求項27のポリヌクレオチド。
【請求項30】
請求項27の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマ源由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項30の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマレーシ由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項32】
発現構築体であって、
(i)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するポリヌクレオチド配列、又は、
(ii)中から高ストリンジェンシー条件下で、配列番号6で示す核酸配列由来のプローブにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列、又は
(iii)配列番号7で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有する核酸配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を含む発現構築体。
【請求項33】
請求項32の発現構築体を含むベクター。
【請求項34】
請求項27の単離ポリヌクレオチドを含むベクターであって、該ベクターで形質転換させた宿主細胞が認識する制御配列に作動可能に結合することを特徴とする、単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項35】
請求項33のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項36】
請求項34のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項37】
請求項36の宿主細胞であって、宿主細胞が原核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項38】
請求項36の宿主細胞であって、宿主細胞が真核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項39】
請求項27のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
【請求項40】
原核生物の細胞であることを特徴とする請求項39の組換え宿主細胞。
【請求項41】
真核生物の細胞であることを特徴とする請求項39の組換え宿主細胞。
【請求項42】
セルロース結合領域の生物活性を有する実質的に精製されたCIP2ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号9で示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号9で示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号9で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号9で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号7で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号7で示すアミノ酸配列、及び
(g)実質的に精製された生物活性を有する、配列番号9で示すアミノ酸配列のフラグメント
から成る群より選択される配列を含むことを特徴とする実質的に精製されたCIP2ポリヌクレオチド。
【請求項43】
酵素を生産する方法であって、
(a)請求項27で定義されるポリヌクレオチドを含む発現ベクターで安定に形質転換させた宿主細胞、
(b)宿主細胞がセルロース結合を生産すのに適した環境下で形質転換宿主細胞を培養する工程、及び、
(c)セルロース結合を回収する工程
を含む、セルロース結合活性を有する酵素を生産する方法。
【請求項44】
請求項43の方法であって、宿主細胞が、糸状菌又は酵母菌の細胞であることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項43の方法により調製されたセルロース結合活性を有する精製酵素。
【請求項46】
cip2遺伝子の中に、cip2遺伝子を失活させ、CIP2ポリヌクレオチド生産を阻害するための欠失、挿入、又は他の変更を有する、組換え宿主細胞。
【請求項47】
配列番号9で示す配列を有するCIPポリペプチドをエンコードする伝達RNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、CIP2生産宿主細胞において、前記オリゴヌクレオチドが、CIP2の生産を減らす又は抑制することを特徴とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項48】
請求項47のアンチセンスオリゴヌクレオチド宿主細胞が糸状菌であることを特徴とする方法。
【請求項49】
洗剤組成物であって、
(a)配列番号9で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号9で示すアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号9で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号9で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号7で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号7で示すアミノ酸配列、及び、
(g)配列番号9で示すアミノ酸配列の実質的に精製された生物活性フラグメント
から成る群から選択されるポリペプチドを含む、洗剤組成物。
【請求項50】
請求項42のCIP2を含む食品添加物。
【請求項51】
請求項42のCIP2をウッドパルプに接触させる工程を含む、ウッドパルプの処理方法。
【請求項52】
請求項42のCIP2をバイオマスに接触させる工程を含む、バイオマスを糖に転換させる方法。
【請求項53】
アラビノフラノシダーゼ活性を有するタンパク質をエンコードしている単離ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号13で示すアミノ酸配列と、少なくとも85%の配列相同性を有するABF2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(b)配列番号13で示すアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列相同性を有するABF2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(c)配列番号13で示すアミノ酸配列と、少なくとも95%の配列相同性を有するABF2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列か、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(d)配列番号13で示すアミノ酸配列を有するABF2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(e)配列番号11で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列相同性を有するABF2ポリペプチドをエンコードしている配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(f)配列番号11で示すアミノ酸配を列有するABF2ポリペプチドをエンコードする核酸配列、あるいは、これと相補的な配列、又は
(g)10のオープンギャップペナルティー、0.1のエクステンドギャップペナルティー、及び、BLOSOM 30類似マトリックスを含むデフォルトパラメーターを用いて操作する、マックベクター(MacVector)version 6.5のCLUSTA-Wプログラムを用いて、相同性%を計算することを特徴とする、配列番号10で示す核酸配列、あるいは、これと相補的な配列
から成る群より選択されることを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項54】
高ストリンジェンシー条件下で、配列番号10で示す配列とハイブリダイズする単離ポリヌクレオチド、あるいは、この相補体、あるいは、これらのフラグメントであって、前記単離ポリヌクレオチドが、アラビノフラノシダーゼの生物活性を有するポリペプチドをエンコードしていることを特徴とし、ハイブリダイゼーションを42℃で、50%ホルムアミド、6×SSC、5×デンハード溶液、0.5%SDS及び100μg/ml変性キャリアDNAを用いて行い、次いで2×SSPE及び0.5%SDSで室温で2回洗浄し、次いで、42℃で、0.1 SSPE及び0.5%SDSで洗浄することを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項55】
ポリヌクレオチドがRNA分子であることを特徴とする請求項53のポリヌクレオチド。
【請求項56】
請求項53の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマ源由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項57】
請求項56の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマレーシ由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項58】
発現構築体であって、
(i)配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するポリヌクレオチド配列、又は、
(ii)中から高ストリンジェンシー条件下で、配列番号10で示す核酸配列由来のプローブにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列、又は
(iii)配列番号13で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有する核酸配列に相補的であるポリヌクレオチド配列、を含む発現構築体。
【請求項59】
請求項1の単離ポリヌクレオチドを含むベクターであって、このベクターにより形質転換させた宿主細胞が認識する制御配列に作動可能に結合することを特徴とする単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項60】
請求項59のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項61】
請求項60の宿主細胞であって、宿主細胞が原核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項62】
請求項60の宿主細胞であって、宿主細胞が真核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項63】
請求項53のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
【請求項64】
原核生物の細胞であることを特徴とする請求項63の組換え宿主細胞。
【請求項65】
真核生物の細胞であることを特徴とする請求項63の組換え宿主細胞。
【請求項66】
アラビノフラノシダーゼの生物活性を有する実質的に精製されたABF2ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号13で示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号13で示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号13で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号13で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号11で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号11で示すアミノ酸配列、及び
(g)実質的に精製された生物活性を有する、配列番号13で示すアミノ酸配列のフラグメント、から成る群より選択される配列を含むことを特徴とする実質的に精製されたABF2ポリヌクレオチド。
【請求項67】
酵素を生産する方法であって、
(a)請求項53で定義されるポリヌクレオチドを含む発現ベクターで安定に形質転換させた宿主細胞、
(b)宿主細胞がセルロース結合を生産すのに適した環境下で前記形質転換宿主細胞を培養する工程、及び、
(c)セルロース結合を回収する工程
を含む、アラビノフラノシダーゼ活性を有する酵素を生産する方法。
【請求項68】
請求項67の方法であって、前記宿主細胞が、糸状菌又は酵母菌の細胞であることを特徴とする方法。
【請求項69】
請求項67の方法により調製されたアラビノフラノシダーゼ活性を有する精製酵素。
【請求項70】
abf2遺伝子の中に、abf2遺伝子を失活させ、ABF2ポリヌクレオチド生産を阻害するための欠失、挿入、又は他の変更を有する、組換え宿主細胞。
【請求項71】
配列番号13で示す配列を有するABF2ポリペプチドをエンコードする伝達RNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、ABF2生産宿主細胞において、前記オリゴヌクレオチドが、ABF2の生産を減らす又は抑制することを特徴とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項72】
請求項71のアンチセンスオリゴヌクレオチドの宿主細胞が糸状菌であることを特徴とする方法。
【請求項73】
洗剤組成物であって、
(a)配列番号13で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号13で示すアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号13で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号13で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号11で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号11で示すアミノ酸配列、及び、
(g)配列番号13で示すアミノ酸配列の実質的に精製された生物活性フラグメント
から成る群から選択されるポリペプチドを含む、洗剤組成物。
【請求項74】
イースト生地又は焼成食品の性質を改善する方法であって、
(a)生地混合物を形成するために、少なくとも10ppmの請求項69のABF2と生地成分を混合する工程、及び、
(b)焼成食品を形成するために、生地混合物を焼く工程
を、必ず含む方法。
【請求項75】
イーストパン生地、イーストロールパン生地、イーストパン、又はイーストロールパンの性質を改善する方法であって、
(a)生地混合物を形成するために、請求項69のABF2 10ppmとパン生地あるいはロールパン生地成分を混合する工程と、
(b)この生地混合物を、かたどり、又は、パニング(panning)する工程と、
(c)この生地を補強加工する工程と、
(d)パン又はロールパンを形成するために生地混合物を焼く工程
を必ず含む方法。
【請求項76】
請求項66のアラビノフラノシダーゼを含む食品添加物。
【請求項77】
請求項66のアラビノフラノシダーゼをウッドパルプに接触させる工程を含む、ウッドパルプの処理方法。
【請求項78】
請求項66のアラビノフラノシダーゼをバイオマスに接触させる工程を含む、バイオマスを糖に転換させる方法。
【請求項79】
アセチルキシランエステラーゼ活性を有する酵素をエンコードしている単離ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号17で示すアミノ酸配列と、少なくとも85%の配列相同性を有するAXE2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(b)配列番号17で示すアミノ酸配列と、少なくとも90%の配列相同性を有するAXE2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(c)配列番号17で示すアミノ酸配列と、少なくとも95%の配列相同性を有するAXE2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(d)配列番号17で示すアミノ酸配列を有するAXE2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(e)配列番号15で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列相同性を有するAXE2ポリペプチドをエンコードしている核酸配列、あるいは、これと相補的な核酸配列、
(f)配列番号15で示すアミノ酸配列を有するAXE2ポリペプチドをエンコードする配列をエンコードする核酸配列、あるいは、これと相補的な配列、又は
(g)10のオープンギャップペナルティー、0.1のエクステンドギャップペナルティー、及び、BLOSOM 30類似マトリックスを含むデフォルトパラメーターを用いて操作する、マックベクター(MacVector)version 6.5のCLUSTA-Wプログラムを用いて、相同性%を計算することを特徴とする、配列番号14で示す核酸配列又はこれと相補的な配列
から成る群より選択されることを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項80】
高ストリンジェンシー条件下で、配列番号14で示す配列とハイブリダイズする単離ポリヌクレオチド、あるいは、これの相補体、あるいは、それらのフラグメントであって、ハイブリダイゼーションを、42℃で、50%ホルムアミド、6×SSC、5×デンハード溶液、0.5%SDS及び100μg/ml変性キャリアDNAを用いて行い、次いで、2×SSPE及び0.5%SDSで室温で2回洗浄し、次いで、42℃で、0.1SSPE及び0.5%SDSで洗浄することを特徴とする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項81】
ポリヌクレオチドがRNA分子であることを特徴とする請求項79のポリヌクレオチド。
【請求項82】
請求項79の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマ源由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項83】
請求項82の単離ポリヌクレオチドであって、酵素がトリコデルマレーシ由来であることを特徴とする単離ポリヌクレオチド。
【請求項84】
発現構築体であって、
(i)配列番号17のアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するポリヌクレオチド配列、又は、
(ii)中から高ストリンジェンシー条件下で、配列番号14で示す核酸配列由来のプローブにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列、又は
(iii)配列番号15で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有する核酸配列に相補的であるポリヌクレオチド配列、を含む発現構築体。
【請求項85】
請求項84のベクター発現構築体を含むベクター。
【請求項86】
請求項79の単離ポリヌクレオチドを含むベクターであって、該ベクターにより形質転換させた宿主細胞が認識する制御配列に作動可能に結合することを特とする単離ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項87】
請求項85のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項88】
請求項86のベクターで形質転換した宿主細胞。
【請求項89】
請求項88の宿主細胞であって、宿主細胞が原核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項90】
請求項88の宿主細胞であって、宿主細胞が真核生物の細胞であることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項91】
請求項79のポリヌクレオチドを含む組換え宿主細胞。
【請求項92】
原核生物の細胞であることを特徴とする請求項91の組換え宿主細胞。
【請求項93】
真核生物の細胞であることを特徴とする請求項91の組換え宿主細胞。
【請求項94】
アセチルキシランエステラーゼの生物活性を有する実質的に精製されたAXE2ポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号17で示すアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号17で示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号17で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号17で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号15で示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号15で示すアミノ酸配列、及び
(g)実質的に精製された生物活性を有する配列番号17で示すアミノ酸配列のフラグメント
から成る群より選択される配列を含むことを特徴とする、実質的に精製されたAXE2ポリヌクレオチド。
【請求項95】
酵素を生産する方法であって、
(a)請求項79で定義されるポリヌクレオチドを含む発現ベクターで安定に形質転換させた宿主細胞、
(b)宿主細胞がアセチルキシランエステラーゼを生産すのに適した環境下で前記形質転換宿主細胞を培養する工程、及び、
(c)アセチルキシランエステラーゼを回収する工程
を含む、アセチルキシランエステラーゼ活性を有する酵素を生産する方法。
【請求項96】
請求項95の方法であって、前記宿主細胞が、糸状菌又は酵母菌の細胞であることを特徴とする方法。
【請求項97】
請求項95の方法により調製されたアセチルキシランエステラーゼ活性を有する精製酵素。
【請求項98】
aex2遺伝子の中に、aex2遺伝子を失活させ、AEX2ポリヌクレオチド生産を阻害するための欠失、挿入、又は他の変更を有する、組換え宿主細胞。
【請求項99】
配列番号17で示す配列を有するAEX2ポリペプチドをエンコードする伝達RNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、AEX2生産宿主細胞において、前記オリゴヌクレオチドが、AEX2の生産を減らす又は抑制することを特徴とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項100】
請求項99のアンチセンスオリゴヌクレオチド宿主細胞が糸状菌であることを特徴とする方法。
【請求項101】
洗剤組成物であって、
(a)配列番号17で示すアミノ酸配列と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列、
(b)配列番号17で示すアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列、
(c)配列番号17で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(d)配列番号17で示すアミノ酸配列、
(e)配列番号15で示すアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列、
(f)配列番号15で示すアミノ酸配列、及び、
(g)配列番号17で示すアミノ酸配列の実質的に精製された生物活性フラグメント
から成る群から選択されるポリペプチドを含む、洗剤組成物。
【請求項102】
イースト生地又は焼成食品の性質を改善する方法であって、
(a)生地混合物を形成するために少なくとも10ppmの請求項94のAXE2と生地成分を混合する工程、及び、
(b)焼成食品を形成するために、生地混合物を焼く工程
を、必ず含む方法。
【請求項103】
イーストパン生地、イーストロールパン生地、イーストパン、又はイーストロールパンの性質を改善する方法であって、
(a)生地混合物を形成するために、請求項94のAEX2 10ppmとパン生地あるいはロールパン生地成分を混合する工程と、
(b)この生地混合物をかたどり、又は、パニング(panning)する工程と、
(c)この生地を補強加工する工程と、
(d)パン又はロールパンを形成するために生地混合物を焼く工程
を必ず含む方法。
【請求項104】
請求項79のアセチルキシランエステラーゼを含む酵素を主成分とする飼料添加物を含む、穀物を主成分とする動物飼料。
【請求項105】
請求項94のアセチルキシランエステラーゼを含む食品添加物。
【請求項106】
請求項94のアセチルキシランエステラーゼをウッドパルプに接触させる工程を含む、ウッドパルプの処理方法。
【請求項107】
請求項94のアセチルキシランエステラーゼをバイオマスに接触させる工程を含む、バイオマスを糖に転換させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−521797(P2007−521797A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533481(P2006−533481)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/016881
【国際公開番号】WO2005/001036
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】