説明

新規ヒドロキサム酸含有アミノ酸誘導体

炎症、炎症性及び免疫性疾患の治療;血糖、血清インスリン、遊離脂肪酸、コレステロール及びトリグリセリドのレベルの低減;並びに代謝障害の治療又は予防に有用な新規ヒドロキサム酸含有アミノ酸誘導体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、新規ヒドロキサム酸含有アミノ酸誘導体に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
本発明は、免疫疾患又は炎症、特にサイトカインに媒介される当該疾患の治療のための組成物を提供する。免疫系の主要素はマクロファージ又は抗原提示細胞、T細胞及びB細胞である。マクロファージは炎症の重要な媒介物であり、T細胞に必要な“助け”/刺激及び増殖をも与える。例えば、マクロファージは、すべて強力な炎症誘発性分子であるサイトカインIL-1、IL-6、IL-12及びTNF-αを生じさせる。
TNF-αは、種々の細胞型によって産生され、該細胞表面上で233-アミノ酸の26kDa膜結合型前駆体タンパク質として発現される炎症誘発性サイトカインである。TNF-α変換酵素(TACE)はタンパク質分解によって膜結合型TNF-αを切断し、非共有結合型トリマーとして存在する17kDaの可溶性成熟サイトカインを生成する。TNF-αの生物学的作用は、p55及びp75と命名された2つの膜結合型受容体によって介入される。TNF-αの無秩序な産生は多くの病的状態と関連し、この病的状態として、糖尿病、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、クローン病、乾癬、脊椎炎性関節炎、リウマチ性関節炎、うっ血性心不全及び多くの他の疾患が挙げられる。従って、TNF-αのインヒビターは種々多様な疾患の治療で非常に有用である。
サイトカインIL-1βも炎症反応に関与する。これは胸腺細胞の増殖、線維芽細胞成長因子の活性、及び滑膜細胞からのプロスタグランジンの放出を刺激する。高いか又は無秩序なレベルのサイトカインIL-1βは、多くの炎症性疾患及び他の疾患状態と関連している。このような疾患として、限定するものではないが、アルツハイマー病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、喘息、摂食障害、アテローム性動脈硬化症並びに筋挫傷、捻挫、外傷、外科術、感染又は他の病的プロセスに起因する疼痛及び炎症が挙げられる。IL-1βの過剰産生は多くの病的状態に関連するので、IL-1βの産生又は活性を阻害する化合物を開発することが望ましい。
IL-6は免疫応答、造血及び炎症に関与する。IL-6は肝臓の急性期応答の強力な誘導因子であり、かつグルココルチコイドによる負の制御下である視床下部-脳下垂体-副腎軸椎の強力な刺激因子である。IL-6は成長ホルモンの分泌を促すが、甲状腺刺激ホルモンの放出を阻害する。いくつかの炎症性疾患で高レベルのIL-6が見られ、IL-6サイトカインサブファミリーの阻害は、リウマチ性関節炎の治療を改良するための戦略として示唆されている(Carroll et al., Inflamm Res, 47:1-7, 1998)。さらに、IL-6はアテローム性動脈硬化症の進行及び冠動脈心疾患の病因に関係している(Yudkin et al., Atherosclerosis, 148:209-14, 1999)。いくつかの病気状態に関与するので、IL-6の分泌を阻害する化合物を開発することが非常に望ましい。
【0003】
IL-12は、p40及びp35サブユニットから成るヘテロダイマーサイトカインであり、強力な免疫調節特性を有し、主に細菌性産物及び免疫シグナルに応答して抗原提示細胞、樹状細胞、及び単球/マクロファージによって放出される。IL-12は、ナチュラル-キラー(NK)-媒介細胞毒性を増強し、NK細胞とTリンパ球によるインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生を誘導する。IL-12は、Th1免疫応答を促進する際に重要な役割を果たすことがin vitroとin vivoの両方で実証されている。IL-12に対する抗体は、Th1-作動される自己免疫性疾患の実験モデル、例えばマウスにおける実験用アレルギー性脳脊髄炎(EAE)及び2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)-誘発慢性腸炎症、ヒト炎症性腸疾患のモデルで有益な効果を有することが分かっている。
マウスのコラーゲン誘発関節炎(CIA)は、フロイント完全アジュバント(FCA)中に乳化させた異種天然II型コラーゲン(CII)による免疫化によってDBA/1マウスに誘発できるリウマチ性関節炎の実験モデルである。最近、DBA/1マウスをCII(ex vivo CII-刺激脾臓細胞によって増強されるIFN-γの産生及び高いコラーゲン特異性IgG2a抗体反応と関係がある重度の関節炎をもたらす)で免疫化すると、IL-12がマイコバクテリウムツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)に取って代わりうることが実証された(Stern, A.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sc.i, 1990, 87, 6808)。抗IL-12 MoAbの投与によるIL-12の遮断はCIAの発症を阻止できなかったが、関節炎の重症度を劇的に低減した(Malfait, A. M., et al., Clin. Exp. Immunol., 1998, 111, 377-383)。
クローン病は、腸組織内の抗原-提示細胞によるIL-12の産生の増加及び腸リンパ球とマクロファージによるインターフェロン-γ及びTNF-αの産生の増加によって特徴づけられる(Fuss, I. J. et al, J. Immunol., 1996, 157, 1261; Parronchi, P., et al, Am. J. Pathol., 1997, 150, 823; Plevy, S. E. et al, J. Immunol., 1997, 159, 627)。これら炎症性サイトカインは、順次、クローン病の特徴である肉芽腫の炎症及び腸壁の肥厚化を誘発かつ維持する。マウスでは、IL-12に対するモノクロナール抗体の投与が既成大腸炎の回復をもたらし、大腸炎の誘発時に与えれば、炎症を防止することができる(Neurath, M. F. et al, J. Exp. Med., 1995, 182, 1281)。抗-IL-12抗体は、ヒトCD3ε遺伝子を過剰発現するマウス及びインターロイキン-10欠損マウスなどのTh1-媒介炎症のモデルで見られる自発性大腸炎を予防及び治療することもできる(Simpson, S. J. et al, J. Exp. Med., 1998, 187, 1225).
IL-12と同様に、関連ヘテロダイマータンパク質IL-23はp19及びp40サブユニットから成る。従って、p40に向けられたヒト抗体は、IL-12とIL-23の両作用を効率的に遮断することができる。IL-12とIL-23は、両方とも活性化(成熟)樹状細胞によって産生され、それぞれ1型サイトカイン産生性のナイーブT細胞及びメモリーT細胞の分化と増殖の促進において重要である。乾癬皮膚の病変は、以下のものの過剰な存在を示す:(1)活性化樹状細胞;(2)IL-23とIL-12;及び(3)1型サイトカイン産生性CD4+及びCD8+メモリーT細胞。従って、IL-23/IL-12のp40サブユニットは乾癬の魅力的な治療標的である。Walterと共同研究者ら(J. Exp. Med., 2001, 193, 339)は、IL-12及びIL-12 p40の細胞源がウイルス感染によって誘導されうること、IL-12 p70又はINF-γの作用によらないIL-12 p40のin vivo産生の新しい機能的重要性があることを実証し、かつ喘息において上皮のIL-12 p40発現が異常にプログラムされる第1の証拠を提供した。
多発性硬化症(MS)は、世界中で約100万の人を苦しめている中枢神経系(CNS)の炎症性 脱髄疾患である。今日まで、MSを治療できる有用ない医療手当はない。EAE/MSの病因学は、CNS内におけるマクロファージ/ミクログリア細胞の活性化、脳炎惹起性Th1細胞の分化及び炎症性サイトカインの分泌を含む複雑なプロセスである。インターロイキン-12は、主にマクロファージ/ミクログリアによって産生され、脳炎惹起性Th1細胞の分化及びEAEとMSの病因で重要な役割を果たす(Nararajan, C. and Bright, J. J., Genes and Immunity., 2000, 3, 59-70)。これは、IL-12が関節炎、多発性硬化症、喘息、クローン病、炎症性腸疾患、乾癬及び関連自己免疫性疾患の病因に重大な役割を有することを示す。
上述したことから、例えば、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-12、又は炎症若しくは炎症性疾患、例えば関節炎の原因であると考えられる他の因子を阻害する化合物を提供するための広範な先行労力があったが、未だに該疾患を効率的に治療又は阻止するための新規かつ改良された化合物に対する要望が残っている。
【0004】
〔開示の概要〕
本発明は、下記一般式(I)の新規アミノ酸誘導体に関する。
【0005】
【化1】

【0006】
本発明は、上記新規化合物、その誘導体、立体異性体、その医薬的に許容しうる塩及びそれらを含有する医薬組成物の製造方法にも関する。ここで、Aは5〜18員アリール又はヘテロシクリル基であり、限定するものではないが、置換若しくは無置換フェニル、インドリル及びイミダゾリルが挙げられ;Bは、置換若しくは無置換の5〜18員アリール、又はN、O及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜6員の飽和若しくは不飽和ヘテロシクリルから選択される環系を表し;R1は-OR10(式中、R10は水素、又はアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、若しくは対イオンから選択される置換若しくは無置換基を表す);NR11R12(式中、R11及びR12は同一又は異なってよく、独立にH、又はアルキル、アルケニル、アリールから選択される置換若しくは無置換基を表し、或いはR11とR12が窒素と一緒に置換若しくは無置換の単環式又は二環式の飽和若しくは不飽和環系(O、S又はNから選択される1又は2以上のヘテロ原子を含んでよい)を意味することがある)を表し;R2及びR3は同一又は異なってよく、独立にH、COR13、又はアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ若しくはヘテロシクリルから選択される置換若しくは無置換基を表し;ここで、R13はH、又はアルキル、アリール、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシ若しくはアラルコキシから選択される置換若しくは無置換基を表し;或いは基R2とR3が一緒にヘテロ環式環、例えばピペリジン、モルフォリン等を形成してよく;ZはO、S又はNR14を表し、R14は水素又はアルキルを表し;ZがO又はSを意味する場合、R6は水素、又はアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリルから選択される置換若しくは無置換基を表し;ZがNR14を意味する場合、R6はH、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル基、アミノ、又はアルキル、ハロアルキル、アルケニル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロシクリルから選択される置換若しくは無置換基を表し;YはO、S又はNR14を表し;nは0〜4の範囲の整数であり;R4、R5、及びR7は同一又は異なってよく、水素、ニトロ、ヒドロキシ、ホルミル、アジド、ハロ、又はアルキル、アルコキシ、アシル、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、ヒドラジン、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルコキシアルキル、スルファモイル、カルボン酸若しくはその誘導体から選択される置換若しくは無置換基を表し;Xは結合、O、S、SO又はSO2を表す。
本発明の化合物は、炎症、炎症性及び免疫性疾患などの障害、特に炎症誘発性サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、IL-6及びIL-12等によって媒介される当該障害の管理に有用である。本発明の化合物は、血糖、血清インスリン、遊離脂肪酸、コレステロール及びトリグリセリドのレベルの低減にも有用であり、かつ代謝障害の治療及び/又は予防に役立つ。
【0007】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書で使用する場合、以下の語句は、それら語句が使用される文脈が別の意味を示す場合を除き、通常、以下に述べるとおりの意味を有するものとする。
“アルキル”は、直鎖、分岐、又は環式炭化水素構造及びその組合せを含む意である。低級アルキルは、1〜6個の炭素原子のアルキル基を意味する。低級アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-及びt-ブチル等が挙げられる。好ましいアルキル基は、C20以下のものである。さらに好ましいアルキル基は、C13以下のものである。なおさらに好ましいアルキル基は、C6以下のものである。シクロアルキルはアルキルのサブセットであり、3〜13個の炭素原子の環式炭化水素基を含む。シクロアルキル基の例として、c-プロピル、c-ブチル、c-ペンチル、ノルボルニル、アダマンチル等が挙げられる。この出願では、アルキルはアルカニル、アルケニル及びアルキニル残基を表し;シクロヘキシルメチル、ビニル、アリル、イソプレニル等を包含する意である。
“アルキレン”は、アルキルと同じ残基を表すアルキルの別のサブセットであるが、2つの結合点を有する。アルキレンの例として、エチレン(-CH2CH2-)、プロピレン(-CH2CH2CH2-)、ジメチルプロピレン(-CH2C(CH3) 2CH2-)及びシクロヘキシルプロピレン(-CH2CH2CH(C6H13)-)が挙げられる。指定数の炭素を有するアルキル残基を名付ける場合、当該炭素数を有するすべての幾何異性体が含まれるものとする;従って、例えば、“ブチル”はn-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びt-ブチルを含む意であり;“プロピル”はn-プロピル及びイソプロピルを包含する。
用語“アルコキシ”又は“アルコキシル”は、親構造に酸素を介して結合している、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む直鎖、分岐、環式形状及びその組合せ形状の基-O-アルキルを意味する。例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロピルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられる。低級-アルコキシは、1〜4個の炭素を含有する基を指す。
用語“アミノ”は基-NH2を意味する。用語“置換アミノ”は、一置換若しくは二置換されている基-NHR又は-NRR(各Rは下記基:任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアルコキシ、任意に置換されていてもよいアミノ、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、任意に置換されていてもよいヘテロシクリル、アシル、アルコキシカルボニル、スルファニル、スルフィニル及びスルホニルから独立に選択される)、例えば、ジエチルアミノ、メチルスルホニルアミノ、フラニル-オキシ-スルホンアミノを意味する。
“アリール”及び“ヘテロアリール”は5〜18員環を意味する。例として、5、6若しくは7員の芳香族環、又はO、N若しくはSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含有するヘテロ芳香族環;二環式9若しくは10員の芳香族環系、又はO、N若しくはSから選択される0〜4個(又はそれより多く)のヘテロ原子を含有するヘテロ芳香族環系;又は三環式の12〜14員芳香族、又はO、N若しくはSから選択される0〜4個(又はそれより多く)のヘテロ原子を含有するヘテロ芳香族環系が挙げられる。芳香族炭素環式環として、例えば、フェニル、ナフタレン、インダン、テトラリン、及びフルオレンが挙げられ、芳香族ヘテロ環式環として、例えば、イミダゾール、オキサゾール、イソキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、インドール、チオフェン、ベンゾピラノン、チアゾール、フラン、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ピリミジン、ピラジン、テトラゾール及びピラゾールが挙げられる。
“ハロゲン”又は“ハロ”は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。フッ素、塩素及び臭素が好ましい。ジハロアリール、ジハロアルキル、トリハロアリール等は、複数のハロゲンで置換されているアリール及びアルキルを意味するが、必ずしも複数の同じハロゲンでなく;従って4-クロロ-3-フルオロフェニルはジハロアリールの範囲内である。
“ヘテロ環”は、1〜4個の炭素が酸素、窒素又はイオウ等のヘテロ原子で置き換わっている、5〜14個の炭素原子のシクロアルキル残基を意味する。本発明の範囲に包含されるヘテロ環の例として、イミダゾリン、ピロリジン、ピラゾール、ピロール、インドール、キノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾジオキサン、ベンゾジオキソール(置換基として存在する場合、通常メチレンジオキシフェニルと呼ばれる)、テトラゾール、モルフォリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、チオフェン、フラン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、オキサジアゾール、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
“置換-”アルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルは、1又は2以上(約5まで、好ましくは約3まで)の水素原子が下記基:任意に置換されていてもよいアルキル(例えばフルオロアルキル)、任意に置換されていてもよいアルコキシ、アルキレンジオキシ(例えばメチレンジオキシ)、任意に置換されていてもよいアミノ(例えば、アルキルアミノ及びジアルキルアミノ)、任意に置換されていてもよいアミジノ、任意に置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)、任意に置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル)、任意に置換されていてもよいアリールオキシ(例えば、フェノキシ)、任意に置換されていてもよいアラルコキシ(例えば、ベンジルオキシ)、カルボキシ(-COOH)、カルボアルコキシ(すなわち、アシルオキシ又は-OOCR)、カルボキシアルキル(すなわち、エステル又は-COOR)、カルボキサミド、アミノカルボニル、ベンジルオキシカルボニルアミノ(CBZ-アミノ)、シアノ、カルボニル、ハロゲン、ヒドロキシ、任意に置換されていてもよいヘテロアリール、任意に置換されていてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、任意に置換されていてもよいヘテロアラルコキシ、ニトロ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、及びチオから独立に選択される置換基と置き換わっている、それぞれアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルを意味する。
【0008】
用語“任意の”又は“任意に”は、その後に続いて記載される事象又は状況が存在しても存在しなくてもよいことを意味し、かつその記載は前記事象又は状況が存在する場合と存在しない場合を包含することを意味する。例えば、“任意に置換されていてもよいアルキル”は、“アルキル”又は以下に定義されるとおりの“置換アルキル”のどちらかを意味する。当業者には、1又は2以上の置換基を含有するいずれの基についても、該基が、立体的に実用的でない、合成的に実現できない及び/又は本質的に不安定な如何なる置換又は置換パターンも導入することを意図しないことが分かるだろう。
“異性体”は、同じ分子式を有する異なった化合物である。“立体異性体”は、原子の空間配置だけが異なる異性体である。“エナンチオマー”は、相互に重ね合わせることができない鏡像である1対の立体異性体である。1対のエナンチオマーの1:1混合物が“ラセミ”混合物である。用語“(±)”は、妥当な場合、ラセミ混合物を表す。“ジアステレオ異性体”は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、相互に鏡像でない立体異性体である。絶対的な立体化学は、カーン-インゴールド-プレローグ(Cahn-Ingold-Prelog)R-Sシステムに従って特定される。化合物が純粋なエナンチオマーの場合、R又はSで各キラル炭素における立体化学を特定しうる。その絶対配置が未知の分割化合物は、ナトリウムD線の波長で平面偏光を回転させる向き(右旋又は左旋)によって(+)又は(-)と命名される。本明細書で述べる特定化合物は1又は2以上の不斉中心を含むので、エナンチオマー、ジアステレオマー及び絶対的な立体化学について(R)-又は(S)-として定義しうる他の立体異性形態を生じさせうる。本発明は、ラセミ混合物、任意的に純粋な形態及び中間混合物を含め、すべてのこのような可能な異性体を包含することを意図する。キラルシントン又はキラル試薬を用いて光学活性な(R)-又は(S)-異性体を調製でき、或いは常法を用いて光学活性な(R)-又は(S)-異性体を分割できる。本明細書で述べる化合物がオレフィン性二重結合又は幾何学的に非対称な他の中心を含む場合、特に断らない限り、該化合物はE及びZ幾何異性体を包含するものとする。同様に、すべての互変異性形も含まれるものとする。
【0009】
用語“医薬的に許容しうる担体”又は“医薬的に許容しうる賦形剤”として、いずれのかつすべての溶媒、分散媒体、被覆剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。医薬的に活性な物質用の該媒体及び薬剤の使用は技術上周知である。いずれの通常の媒体又は薬剤も活性成分と不適合性でない限り、治療用組成物でのその使用が考慮される。補助活性成分も本組成物に組み入れることができる。
用語“治療的に有効な量”又は“有効量”は、以下に定義するような治療が必要な、ヒトを含む哺乳動物に投与したとき、該治療を達成するのに十分な化合物の量を指す。治療的に有効な量は、対象及び治療すべき疾患状態、対象の体重と年齢、疾患状態の重症度、選択される特定化合物、従うべき投与計画、投与のタイミング、投与様式などによって変わり、すべて当業者が容易に決定できる。
用語“治療”又は“治療する”は、哺乳動物の疾患のいずれの治療をも意味し、例えば以下のことが挙げられる:
a) 疾患を予防すること、すなわち該疾患の臨床症状を発生させないこと;
b) 疾患を阻害すること、すなわち臨床症状の発生を遅くするか又は停止すること;及び/又は
c) 疾患を軽減すること、すなわち臨床症状の退行を生じさせること。
用語“類似体”は、O、S、又はN等の1又は2以上のヘテロ原子の異なったヘテロ原子との置換だけが相互に異なる1対の化合物を指す。
用語“互変異性体形”は、アセトフェノンのケト形とエノール形のような速い平衡状態にある構造異性体を指す。互変異性体形はどちらかの形によって反応することができる。
用語“多形”は、多形性化合物の形態を指す。多形性化合物は、2以上の結晶形のような2以上の形態で存在しうる当該化合物を指す。
用語“誘導体”は、別の化合物から簡単な化学プロセスで得られる化合物を指し;例えば、酢酸は酸化によるエタノールの誘導体であり;N-アセチルエチルアミンはアセチル化によるエチルアミンの誘導体である。
【0010】
式(I)中、Aで表される適切な基として、置換若しくは無置換フェニル、ピリジニル、インドリル、ジアジニル又はイミダゾリル基が挙げられる。
Bで表される適切な基は、5〜18員アリール、例えばフェニル、ナフチル等から選択され、ピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル等から選択される置換若しくは無置換の5〜6員の飽和若しくは不飽和ヘテロ環式環でさらに置換されていてもよい。特に好適な化合物として、Bが置換若しくは無置換フェニル、ピリジニル又はチアゾリルである当該化合物が挙げられる。
R1で表される適切な基として、アミノ、ジアルキルアミノ、イソプロポキシル、ヒドロキシル、ベンジルオキシル、N-アセチル-ペルヒドロ-1,4-ジチアインジニル及びペルヒドロ-1,4-オキサアザ-インジニルが挙げられる。
R2及びR3で表される適切な基は、H、COR13、置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等;置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C2-C20アルケニル、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル等;アリール、例えばフェニル、ナフチル等(該アリール基は置換されていてもよい);アルキルスルホニル基、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル等(該アルキルスルホニル基は置換されていてもよい);アリールスルホニル基、例えばフェニルスルホニル、トリルスルホニル、又はナフチルスルホニル(該アリールスルホニル基は置換されていてもよい);アルキルスルフィニル基、例えばメチルスルフィニル、エチルスルフィニル、n-プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル等(該アルキルスルフィニル基は置換されていてもよい);アリールスルフィニル基、例えばフェニルスルフィニル又はナフチルスルフィニル、(該アリールスルフィニル基は置換されていてもよい);アルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ等(該アルキルチオ基は置換されていてもよい);アリールチオ基、例えばフェニルチオ、又はナフチルチオ(該アリールチオ基は置換されていてもよい);ヘテロアリール基、例えばピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル等(置換されていてもよい);ヘテロシクリル基、例えばピロリジニル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、ピペリジニル、ピペラジニル等(置換されていてもよい)から選択される。基R2とR3が一緒に結合してヘテロ環式環を形成しうる。R2とR3が独立に水素又はp-トルエンスルホニルである化合物が特に好適である。
【0011】
R6で表される適切な基は、H、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ基(エーテル、エステル置換ベンジルエチルエーテル等でよい);アミノ、置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等;置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C2-C20アルケニル、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル等;ハロアルキル、例えばクロロメチル、クロロエチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ジクロロメチル、ジクロロエチル、トリクロロメチル、ジフルオロメチル等(置換されていてもよい);モノアルキルアミノ基、例えば-NHCH3、-NHC2H5、-NHC3H7、-NHC6H13等(置換されていてもよい);ジアルキルアミノ基、例えば-N(CH3)2、-NCH3(C2H5)、-N(C2H5)2等(置換されていてもよい);アリール、例えばフェニル、ナフチル等(該アリール基は置換されていてもよい);アラルキル基、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等(置換されていてもよい);シクロ(C3-C6)アルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等(該シクロアルキル基は置換されていてもよい);ヘテロアリール基、例えばピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル等(置換されていてもよい);ヘテロシクリル基、例えばピロリジニル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、ピペリジニル、ピペラジニル等(置換されていてもよい);ヘテロアラルキル(該ヘテロアリール基は上記定義どおり)から選択される。R6がヒドロキシル、水素又はジアルキルアミノである化合物が特に好適である。
R4、R5、及びR7で表される適切な基は、水素、ニトロ、ヒドロキシ、ホルミル、アジド、ハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素;置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等;アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ等(置換されていてもよい);アシル基、例えばC(=O)CH3、-C(=O)C2H5、-C(=O)C3H7、-C(=O)C6H13、ベンゾイル、-C(=S)CH3、-C(=S)C2H5、C(=S)C3H7、-C(=S)C6H13等(置換されていてもよい);シクロ(C3-C6)アルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等(該シクロアルキル基は置換されていてもよい);ハロアルキル、例えばクロロメチル、クロロエチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ジクロロメチル、ジクロロエチル、トリクロロメチル、ジフルオロメチル等(置換されていてもよい);置換されていてもよいアミノ;ヒドラジン、モノアルキルアミノ基、例えばNHCH3、-NHC2H5、-NHC3H7、-NHC6H13等(置換されていてもよい);ジアルキルアミノ基、例えば-N(CH3)2、-NCH3(C2H5)、-N(C2H5)2等(置換されていてもよい);アシルアミノ基、例えば-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)C2H5、-NHC(=O)C3H7、-NHC(=O)C6H13等(置換されていてもよい);アルキルスルホニル基、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル等(該アルキルスルホニル基は置換されていてもよい);アリールスルホニル基、例えばフェニルスルホニル又はナフチルスルホニル(該アリールスルホニル基は置換されていてもよい);アルキルスルフィニル基、例えばメチルスルフィニル、エチルスルフィニル、n-プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル等(該アルキルスルフィニル基は置換されていてもよい);アリールスルフィニル基、例えばフェニルスルフィニル又はナフチルスルフィニル(該アリールスルフィニル基は置換されていてもよい);アルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ等(該アルキルチオ基は置換されていてもよい);アリールチオ基、例えばフェニルチオ、又はナフチルチオ(該アリールチオ基は置換されていてもよい);アルコキシカルボニル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n-プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル等(該アルコキシカルボニル基は置換されていてもよい);アリールオキシカルボニル基、例えばフェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニル(該アリールオキシカルボニル基は置換されていてもよい);アルコキシアルキル基、例えばメトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル等(置換されていてもよい);スルファモイル、カルボン酸又はその誘導体から選択される。R4、R5及びR7が水素である化合物が特に好適である。
【0012】
R10で表される適切な基は、水素、置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等;置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C2-C20アルケニル、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル等;アリール、例えばフェニル、ナフチル等(該アリール基は置換されていてもよい);アラルキル基、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等(置換されていてもよい);ヘテロアリール基、例えばピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ベンゾピラニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピロリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾジオキソリル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル等(置換されていてもよい);アルカリ金属(例えばLi、Na、及びK)、アルカリ土類金属(例えばCa及びMg)から選択される対イオン;塩基の塩、例えばアンモニウム若しくは置換アンモニウム塩、ジエタノールアミン、α-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、モルフォリン、ピリジン、ヒドロキシエチルピロリジン、ヒドロキシエチルピペリジン、コリン、トロメタミン等から選択される。
R11及びR12で表される適切な基は、水素、置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等;置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C2-C20アルケニル、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル等;アリール、例えばフェニル、ナフチル等(該アリール基は置換されていてもよい)から選択され、或いはR11とR12が窒素と一緒に、ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾピロリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾジオキソリル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ピロリジニル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、ピペリジニル、ピペラジニル等(置換されていてもよい)から選択される置換若しくは無置換の単環式又は二環式の飽和若しくは不飽和環系を表すこともある。前記置換基は、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、ホルミル、アジド、アルキル、アルコキシ、アシル、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、ヒドラジン、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルコキシアルキル、スルファモイル、カルボン酸又はその誘導体から選択され、ここで、R13はH、置換若しくは無置換アルキル、アリール、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシ又はアラルコキシ基;例えば直鎖若しくは分岐C1-C20アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等;置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C2-C20アルケニルオキシ、例えばエテニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ等;アリール、例えばフェニル、ナフチル等;直鎖又は分岐C2-C20アルコキシ、例えばn-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ等;アリールオキシ、例えばフェノキシ等;アラルコキシ、例えばベンゾキシ等を表す。
R14で表される適切な基は、H、置換若しくは無置換の直鎖又は分岐C1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等から選択される。
Xで表される適切な基は、結合、O、S、SO、SO2から選択される。Xが結合又はOである化合物が特に好適である。
Yで表される適切な基は、O、S又はNR14から選択される。YがOである化合物が特に好適である。
適切なnは0〜4の整数である。nが0、1又は2である化合物が特に好適である。
Zで表される適切な基は、O、S又はNR14から選択される。ZがNH又はOである化合物が特に好適である。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R10、R11、R12、R13、R14で表される基上の適切な置換基は、ニトロ、ヒドロキシ、ハロ、ホルミル、アジド、アルキル、アルコキシ、アシル、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、ヒドラジン、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルコキシアルキル、スルファモイル、カルボン酸及びその誘導体から選択される。
【0013】
本発明の医薬的に許容しうる塩として、対イオン、アルカリ金属(例えばLi、Na、及びK)、アルカリ土類金属(例えばCa及びMg)との塩、有機塩基(例えばジエタノールアミン、α-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、モルフォリン、ピリジン、ヒドロキシエチルピロリジン、ヒドロキシエチルピペリジン、コリン等)の塩、アンモニウム若しくは置換アンモニウム塩及びアルミニウム塩が挙げられる。塩には、対イオンアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、シスチン、システイン、リジン、アルギニン、フェニルアラニン、グアニジン等との当該塩も含まれる。妥当な場合、塩として、酸付加塩、例えば硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、ハロゲン化水素酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、パルモエート(palmoate)、メタンスルホン酸塩、トシレート、安息香酸塩、サリチル酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩などが挙げられる。医薬的に許容しうる溶媒和物は水和物でよく、或いは他の結晶化の溶媒、例えばアルコールを含みうる。
下記式(I)の好ましい化合物の代表は以下の化合物である。
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
下記スキームIによって一般式(I)の化合物の製法を提供する。
【0020】
【化7】

【0021】
下記手順で一般式(I)の化合物を調製する。
工程-(I):トルエン、DMF、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル、o-ジクロロベンゼン又はそれらの混合物から選択される溶媒の存在下、塩基、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、DMAP、水酸化アルカリ、水酸化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の存在下で式(1a)(式中、Pは保護基を表す)の化合物と置換ハロ-アリールアルデヒド(W=ハロ)とのアミノ酸誘導体の縮合を行って、式(2a)の化合物を得る。この反応は、室温から還流温度0℃〜100℃の範囲の温度で行われる。
工程-(II):溶媒THFと水の存在下、酸化剤、例えば過マンガン酸カリウム等で式(2a)の化合物上のフリーなアルデヒドを酸化して式(3a)の化合物を生成する。
工程-(III):アミド(Z=N)を調製するため、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt)から選択される試薬の存在下、塩基、例えばトリエチルアミン、ピリジン、DMAP等及び溶媒、例えばトルエン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル、o-ジクロロベンゼン又はそれらの混合物の存在下で式(3a)の化合物をH2N-R6(式中、R6は上記定義どおり)と反応させて、式(4a)の化合物を生成する。エステル(Z=O)又はチオエステル(Z=S)を調製するため、式(3a)の化合物の適切な活性化形態、例えば活性化エステル又は酸ハライドを用いてZ-R6と反応させる。
工程-(IVa):溶媒の存在下でPd/C又はHClを用いて、式(4a)の化合物の脱保護を行うことができる。或いは、アセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、1-メチル-2-ピロリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド等又はそれらの混合物から選択される溶媒の存在下でHClガスを通すことによって脱保護を行ってもよい。
工程-(IVb):脱保護したアミドの窒素を常法によってR2及び/又はR3で誘導体化する。
上記いずれの反応においても基礎分子中のいずれの反応基も化学プラクティスに従って保護しうることが分かる。上記反応のいずれかで好適な保護基は、本技術で使用されるものである。該保護基の形成及び除去の方法は、保護すべき分子に適した当該方法である。本発明で使用する保護基Pは、t-ブトキシカルボニル(t-Boc)、トリチル、トリフルオロアセチル、ベンジルオキシ、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)等の保護基である。
エーテル、THF、メタノール、t-ブタノール、ジオキサン、イソプロパノール、エタノール等の溶媒中、式(I)の化合物を1〜4当量の塩基、例えば水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水素化ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等と反応させることによって、医薬的に許容しうる塩を調製する。溶媒の混合物を使用してよい。リジン、アルギニン、ジエタノールアミン、コリン、グアニジン及びその誘導体などの有機塩基も使用しうる。或いは、酢酸エチル、エーテル、アルコール、アセトン、THF、ジオキサン等のような溶媒中、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、サリチル酸、ヒドロキシナフトエ酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、コハク酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、酒石酸などの酸との処理によって、酸付加塩を調製する。溶媒の混合物も使用しうる。
【0022】
本発明は、1又は2以上の上記一般式(I)の化合物、その互変異性形、その誘導体、その類似体、その立体異性体、その多形、その医薬的に許容しうる塩、その医薬的に許容しうる溶媒和物を、医薬的に許容しうる担体、希釈剤等と組み合わせて含有する医薬組成物をも提供する。
医薬組成物は、通常採用される形態、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、溶液、懸濁液などの形態でよい。医薬組成物は、調味料、甘味料などを適切な固形若しくは液状担体又は希釈剤中、或いは適切な無菌媒体中に含んで注射用溶液又は懸濁液を形成しうる。該組成物は、典型的に1〜25質量%、好ましくは1〜15質量%の活性化合物を含み、該組成物の残りが医薬的に許容しうる担体、希釈剤、賦形剤又は溶媒である。
好適な医薬的に許容しうる担体として、固形充填剤又は希釈剤及び無菌の水性又は有機溶液が挙げられる。活性化合物は、該医薬組成物中、上記範囲の所望用量を与えるのに十分な量で存在する。従って、経口投与のため、本化合物を適切な固形若しくは液状の担体又は希釈剤と併用してカプセル剤、錠剤、散剤、シロップ剤、溶液、懸濁液などを形成することができる。医薬組成物は、所望により、調味料、甘味料、賦形剤などの追加成分を含んでよい。非経口投与のため、本化合物を無菌の水性又は有機媒体と併用して注射用溶液又は懸濁液を形成することができる。例えば、ゴマ油又はピーナツ油中の溶液、水性プロピレングリコール等を使用でき、並びに本化合物の水溶性の医薬的に許容しうる酸付加塩又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩の水溶液も使用することができる。従って、このように調製した注射用溶液を静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内投与することができ、ヒトでは、筋肉内投与が好ましい。
【0023】
本発明の医薬組成物は、炎症及び免疫疾患、特にTNF-α、IL-1、IL-6、IL-12等のサイトカイン及びCOX-2等のシクロオキシゲナーゼシクロによって媒介される当該疾患の治療に有用であり、かつインスリン抵抗性と関係がある障害、例えば多嚢胞性卵巣症候群、並びに高脂血症、冠状動脈疾患、末梢血管疾患及び糖尿病と関連疾患の治療に有用である。
これら化合物は、例えば、TNF-α、IL-1、IL-6等のサイトカイン又は誘導性酵素によって引き起こされる炎症又は炎症性疾患、例えば炎症性コラーゲン血管疾患及び関節炎の治療又は阻害に有用である。本化合物は、喘息、気道炎症、炎症性腸疾患、乾癬、多発性硬化症などのようなIL-12媒介免疫調節作用にも役に立つ。
本発明を以下の実施例で提供するが、実施例は説明の目的だけのために提供するもであり、本発明の範囲を限定するものと考えるべきでない。
【0024】
〔実施例1〕
2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ベンジルエステル塩酸塩(6)の合成
【0025】
【化8】

【0026】
工程-I:
2-tertブトキシカルボニルアミノ-3-[4-(4-ホルミルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸(2)の調製
【0027】
【化9】

【0028】
炭酸カリウム(14.74g,107mmol)と4-フルオロベンズアルデヒド(18.6mL,180mmol)をアミノ酸(N-t-ブトキシカルボニル-L-チロシン)(10.0g,36mmol)の無水DMF(35mL)中の溶液に加えた。結果の懸濁液を75±5℃にてアルゴン雰囲気下で還流させた。48時間後、反応混合物を室温に冷まし、水(200mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(2×100mL)。水層を集め、5.0M HClで酸性にしてpHを約2.0としてEtOAcで抽出した(2×150mL)。結果として生じたEtOAc層を水(1×150mL)と食塩水(1×150mL)で抽出し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して所望のアルデヒドを低融点固体として得た(13.7g,約99%)。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 9.89 (s, 1H), 7.82 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.23 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.00 (重複したd, J = 9.0 Hz, 4H), 4.63 (m, 1H), 3.2 (m, 1H), 3.06 (m, 1H), 1.40 (s, 9H)。
工程II:
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4-(4-ホルミルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ベンジルエステル(3)の調製
【0029】
【化10】

【0030】
2-N-t-ブトキシカルボニル-3-[4-(4-ホルミルフェノキシ)フェニル]]プロピオン酸(2)(4.3g,11.16mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶かして0〜5℃に冷却した。N,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド(3.0g,14.5mmol)、無水ベンジルアルコール(1.2mL,11.16mmol)及び最後に4-ジメチルアミノピリジン(0.27g,2.23mmol)を加え、結果混合物を当該温度にてアルゴン雰囲気下で撹拌した。30分後、反応混合物を室温に戻して撹拌を続けた。2時間後、反応混合物を氷浴で冷却して副生物N,N′-ジシクロヘキシル尿素を沈殿させてろ過し、清澄ろ液を真空下で濃縮した。結果として生じた油を酢酸エチルに溶かし(2×100mL)、10%にのクエン酸(1×100mL)、水(1×100mL)及び食塩水(1×100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。この粗製物質をトルエン-酢酸エチル(93:7)混合物を用いてシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製してベンジルエステル(3)(4.7g,88.6%)を得た。1H NMR (DMSO-d6): 9.91 (s, 1H), 7.89 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.31-7.43 (m, 7H), 7.06 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 5.12 (s, 2H), 4.23-4.29 (m, 1H), 3.05 (dd, J = 13.6 及び 5.2 Hz, 1H), 2.91 (dd, J = 14.0 及び 10.2 Hz, 1H), 1.33 (s, 9H)。
工程III:
4-[4-(2-ベンジルオキシカルボニル-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-エチル)-フェノキシ]-安息香酸(4)の調製
【0031】
【化11】

【0032】
ベンジルエステル(3)(4.6g,9.7mmol)をTHF(100mL)に溶かし、この溶液を70℃で撹拌した。水(125mL)に溶かした過マンガン酸カリウム(7.7g,48.5mmol)を滴下ロートで2時間かかてゆっくり加えた。添加完了後、反応混合物を70℃で30分間撹拌し、室温に冷ました。褐色沈殿物をCelite(登録商標)層でろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残存油をEtOAc(100mL)に取り、2.0MのHClで酸性にした。有機層を分けて水(1×100mL)と食塩水(1×100mL)で洗浄し、乾燥させ、減圧下で濃縮して所望の酸化合物(4)を得た(4.5g,94%)。1H NMR (DMSO-d6): 12.7 (br, 1H), 7.91 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz), 7.30-7.37 (m, 7H), 7.03 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.12 (s, 2H), 4.24-4.28 (m, 1H), 3.04 (dd, J = 13.6 及び 5.2 Hz, 1H), 2.91 (dd, J = 13.6 及び 9.6 Hz, 1H), 1.33 (s, 9H)。
工程IV:
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ベンジルエステル(5)の調製
【0033】
【化12】

【0034】
酸化合物(4)(1.1g,2.24mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)に溶かし、アルゴン雰囲気下で撹拌した。N-メチルモルフォリン(1.0mL,8.96mmol)を加え、反応混合物を0℃に冷却し、BOP試薬(1.09g,2.46mmol)を加えた。20分後、ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.31g,4.48mmol)を加え、反応混合物を室温に戻して一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残存物質をEtOAc(50mL)と飽和NH4Cl溶液(1×30mL)に分配した。有機層を乾燥かつ濃縮して粗製物質を得た。1%の酢酸を含有するヘキサン-酢酸エチル(1:1)混合物を用いてSiO2ゲル上フラッシュクロマトグラフィーにより所望ヒドロキサム酸化合物(5)(0.5g,44%)を得た。1H NMR (DMSO-d6): 11.20 (br, 1H), 9.00 (br, 1H), 7.76 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.28-7.38 (m, 7H), 6.98 (重複したd, J = 8.4 Hz, 4H), 5.12 (s, 2H), 4.21-4.27 (m, 1H), 3.03 (dd, J = 13.6 及び 5.6 Hz, 1H), 2.89 (dd, J = 10.0 及び 14.0 Hz, 1H), 1.33 (s, 9H)。
工程V:
2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ベンジルエステル塩酸塩(6)の調製
【0035】
【化13】

【0036】
ヒドロキサメート(hydroxamate)(5)(0.4g)をCH2Cl2に溶かして0〜5℃に冷却した。この溶液全体に塩化水素ガスを20分間泡立たせた。泡立てを中止して反応混合物を室温で1時間撹拌した。過剰のHClを脱気し、CH2Cl2を除去した。残存固体をEtOAc(2×50mL)と摩砕し、デカントし、乾燥させて所望化合物(6)を白色の非晶質固体として得た(0.25g,71.4%)。
1H NMR (DMSO-d6): 11.18 (s, 1H), 7.78 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.31-7.39 (m, 5H), 7.24 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.19 (s, 2H), 4.40 (m, 1H), 3.07-3.18 (m, 2H) LCMS (m/e): 観測値, 407.0; 計算値, 406.43。
【0037】
〔実施例2〕
2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイル-フェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸塩酸塩(9)の合成
【0038】
【化14】

【0039】
工程I:
3-[4-(4-ベンジルオキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸ベンジルエステル(7)
【0040】
【化15】

【0041】
酸化合物(4)(0.6g,1.22mmol)を乾燥DMF(15mL)に溶かして0〜5℃に冷却した。1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.18g,1.34mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.23g,1.22mmol)、及びトリエチルアミン(0.6mL,3.66mmol)を上記混合物に添加後、15分撹拌した。O-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.22g,1.34mmol)を加え、混合物を室温に戻して18時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、残存油をEtOAc(50mL)に取った。有機層を2.0MのHCl(1×10mL)、飽和NaHCO3(1×10mL)、水(1×25mL)及び食塩水(1×25mL)で抽出した。結果のEtOAc層を乾燥させ、濃縮して粗生成物を得た。ヘキサン-酢酸エチル(1:1)を用いてフラッシュクロマトグラフィーで所望のベンジルヒドロキサメート(7)(0.4g,56%)を得た。1H NMR (DMSO-d6): 11.73 (s, 1H), 7.75 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.29-7.47 (m, 13H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.99 (5.12 (s, 2H), 4.92 (s, 2H), 4.23-4.28 (m, 1H), 3.03 (dd, J = 13.6 及び 5.2 Hz, 1H), 2.90 (dd, J = 13.6 及び 10.0 Hz, 1H), 1.33 (s, 9H)。
工程II:
2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイル-フェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸(8)の調製
【0042】
【化16】

【0043】
MeOH(25mL)中のベンジルヒドロキサメート(7)(0.4g)の脱気溶液に炭素上パラジウム(5%,0.3g)を加え、この懸濁液を大気圧で水素にて4時間処理した。懸濁液をCelite(登録商標)層上でろ過し、濃縮して所望のヒドロキサメート(8)(0.2g,72%)を得た。1H NMR (DMSO-d6): 11.20 (s, 1H), 9.02 (br, 1H), 7.75 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.10 (ddd, J = 12.8 10.0, 及び 4.4 Hz, 1H), 3.03 (dd, J = 13.6 及び 4.4 Hz, 1H), 2.82 (dd, J = 13.6 及び 10.4 Hz, 1H), 1.33 (s, 9H)。
工程III:
2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイル-フェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸塩酸塩(9)の調製
【0044】
【化17】

【0045】
ヒドロキサメート(8)(0.2g)をCH2Cl2に溶かして0〜5℃に冷却した。この溶液全体に塩化水素ガスを20分間泡立たせた。泡立てを中止し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。過剰のHClを脱気してCH2Cl2を除去した。残存固体をEtOAc(2×25mL)と摩砕し、デカントし、乾燥させて所望化合物(9)を白色の非晶質固体として得た(0.17g,定量的収率)。1H NMR (360 MHz, DMSO-d6): 11.15 (s, 1H), 8.96 (br, 1H), 7.77 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.04 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 4.16 (m, 1H), 3.09-3.14 (m, 2H). LCMS (m/e): 観測値 317.0, 計算値 316.31。
【0046】
〔実施例3〕
4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド塩酸塩(13)の合成
【0047】
【化18】

【0048】
工程I:
{1-ジメチルカルバモイル-2-[4-(4-ホルミルフェノキシ)-フェニル]-エチル}-カルバミン酸tert-ブチルエステル(10)の調製
【0049】
【化19】

【0050】
アルデヒド化合物(2)(2.0g,5.2mmol)をCH2Cl2(30mL)に溶かしてアルゴン雰囲気下で室温にて撹拌した。トリエチルアミン(0.87mL,6.23mmol)とBOP試薬(2.53g,5.7mmol)を加えて反応混合物を15分間撹拌した。ジメチルアミン(THF中の2.0M溶液,13.0mL,26.0mmol)を加え、結果溶液を室温で約2〜3時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、結果として生じた油をEtOAc(100mL)に取った。有機層を0.5N NaOH(1×10mL)、水(2×50mL)及び食塩水(1×50mL)で抽出した。有機層の乾燥と濃縮により所望アミド(10)を得た(2.1g,約98%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): 9.91 (s, 1H), 7.90 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.15 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.57 (m, 1H), 2.94 (s, 3H), 2.75-2.91 (m, 5H), 1.31 (s, 9H)。
工程II:
4-[4-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ジメチルカルバモイル-エチル)-フェノキシ]-安息香酸(11)の調製
【0051】
【化20】

【0052】
アミド化合物(10)(2.0g,4.85mmol)をTHF(50mL)に溶かし、この溶液を70℃で撹拌した。水(50mL)に溶かした過マンガン酸カリウム(3.06g,19.4mmol)を滴下ロートで2時間にわたってゆっくり(5mL/分)添加した。添加完了後、反応混合物を70℃で30分撹拌し、室温に冷ました。褐色沈殿物をCelite(登録商標)層でろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。結果として生じた油をEtOAc(100mL)に取り、2.0MのHClで酸性にした。有機層を分け、水(1×50mL)と食塩水(1×50mL)で洗浄し、乾燥させ、減圧下で濃縮して所望の酸化合物(11)(1.9g,91%)を得た。 1H NMR (DMSO-d6): 12.7 (br, 1H), 7.91 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.13 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.56 (ddd, J = 13.6, 9.2, 及び 6.0 Hz, 1H), 2.93 (s, 3H), 2.74-2.91 (m, 5H), 1.31 (s, 9H).
工程III:
{1-ジメチルカルバモイル-2-[4-(4-ヒドロキシカルバモイル-フェノキシ)-フェニル]-エチル}-カルバミン酸tert-ブチルエステル(12)の調製
【0053】
【化21】

【0054】
酸化合物(11)(1.9g,4.43mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)に溶かしてアルゴン雰囲気下で撹拌した。N-メチルモルフォリン(1.95mL,18.0mmol)を加え、反応混合物を0℃に冷却してBOP試薬(2.16g,4.88mmol)を加えた。20分後、ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.62g,8.87mmol)を加え、反応混合物を室温に戻して一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残存物質をEtOAc(50mL)と飽和NH4Cl溶液(1×30mL)に分配した。有機層を乾燥かつ濃縮して粗製物質を得た。クロロホルム-メタノール(19:1)を用いてシリカゲル上フラッシュクロマトグラフィーにより所望のヒドロキサム酸化合物(12)を得た(0.9g,46%)。1H NMR (DMSO-d6): 8.95 (br, 1H), 7.73 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.28 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.55 (m, 1H), 2.91 (s, 3H), 2.70-2.90 (m, 5H), 1.30 (s, 9H)。
工程IV:
4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド塩酸塩(13)の調製
【0055】
【化22】

【0056】
ヒドロキサメート(12)(0.8g)をCH2Cl2(25mL)に溶かして0〜5℃に冷却した。この溶液全体に塩化水素ガスを20分間泡立たせた。泡立てを中止し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。過剰のHClを脱気してCH2Cl2を除去した。残存固体をEtOAc(2×25mL)と摩砕し、デカントし、乾燥させて所望化合物(13)を白色の非晶質固体として得た(0.34g,)。1H NMR (DMSO-d6): 11.20 (s, 1H), 7.76 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.02 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.52 (m, 1H), 2.92-3.05 (m, 1H), 2.76 (s, 3H), 2.71 (s, 3H). LCMS: 観測値 344.0, 計算値 343.48。
【0057】
〔実施例4〕
4-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシ-ベンズアミド(14)
【0058】
【化23】

【0059】
表題化合物は低融点の固体である。1H NMR (DMSO-d6): 11.90 (br, 1H), 11.14 (br, 1H), 8.98 (s, 1H), 7.76 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.30 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.95 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 6.93 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 4.32 (m, 1H), 2.81 (dd, J = 13.2 及び 7.2 Hz, 1H), 2.71 (s, 3H), 2.64 (dd, J = 13.2 及び 8.0 Hz, 1H), 2.53(s, 3H), 2.35 (s, 3H)。
【0060】
〔実施例5〕
4-[4-(2-アミノ-2-イソプロポキシカルボニルエチル)-フェノキシ]-安息香酸(15)
【0061】
【化24】

【0062】
表題化合物(15)を白色固体として単離した。1H NMR (DMSO-d6): 7.93 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.09 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.05 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.92 (m, 1H), 4.22 (m, 1H), 3.19 (dd, J = 14.0 及び 6.0 Hz, 1H), 3.06 (dd, J = 14.0 及び 8.0 Hz, 1H), 1.18 (d, J= 6.4 Hz, 3H), 1.09 (d, J = 6.4 Hz, 3H)。
【0063】
〔実施例6〕
2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸イソプロピルエステル(16)
【0064】
【化25】

【0065】
表題化合物(16)を白色固体として単離した。1H NMR (DMSO-d6): 11.16 (br, 1H), 7.78 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.06 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.92 (m, 1H), 4.22 (m, 1H), 3.18 (dd, J = 14.0 及び 6.0 Hz, 1H), 3.06 (dd, J = 14.0 及び 8.0 Hz, 1H), 1.18 (d, J= 6.4 Hz, 3H), 1.08 (d, J = 6.4 Hz, 3H)。
【0066】
〔実施例7〕
L-6-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイル-エチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-ニコチンアミド塩酸塩(21)の調製
【0067】
【化26】

【0068】
工程I:
6-[4-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-カルボキシ-エチル)-フェノキシ]-ニコチン酸メチルエステル(17)の調製
【0069】
【化27】

【0070】
無水DMF(15mL)中のBoc-チロシン(1.0g,3.55mmol)の溶液に炭酸カリウム(1.23g,8.9mmol)と6-クロロニコチン酸メチル(1.8g,10.66mmol)を加えた。結果の懸濁液をアルゴン雰囲気下70℃で還流させた。72時間後、反応混合物を室温に戻し、水(100mL)で希釈してEtOAc(2×100mL)で抽出した。水層を集め、5.0MのHClで酸性にしてpHを約2.5とし、EtOAcで抽出した(2×100mL)。結果として生じたEtOAc層を水(1×150mL)と食塩水(1×150mL)で抽出し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過かつ濃縮し、フラッシュクロマトグラフ処理して(ヘキサン中30〜40%の酢酸エチルと1%の酢酸)所望エステル(17)を固体(1.4g)として得た。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): 12.45 (s, 1H), 8.68 (br, 1H), 8.29 (dd, J = 8.4 及び 2.4 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.08 (m, 3H), 4.12 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.05 (dd, J = 14.0 及び 4.0 Hz, 1H), 2.84 (dd, J = 14.0 及び 10.8 Hz, 1H) 1.33 (s, 9 H)
工程II:
6-[4-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ジメチルカルバモイル-エチル)-フェノキシ]-ニコチン酸メチルエステル(18)の調製
【0071】
【化28】

【0072】
化合物(17)(2.2g,5.28mmol)をCH2Cl2に溶かしてアルゴン雰囲気下で室温にて撹拌した。トリエチルアミン(0.883mL,6.33mmol)とベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬,2.5g,5.80mmol)を加えて反応混合物を15分間撹拌した。ジメチルアミン(THF中2.0M溶液,13.2mL,26.4mmol)を加え、結果溶液を室温で約2〜3時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、結果として生じた油をEtOAc(200mL)に取った。有機層を0.5N NaOH(1×30mL)、水(2×100mL)及び食塩水(1×100mL)で抽出した。有機層の乾燥と濃縮により所望アミド(18)を得た(1.3g,約98%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.67 (br, 1H), 8.29 (dd, J = 8.8 及び 2.4 Hz, 1H) 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.08 (m, 3H), 4.57 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.93 (s, 3H), 2.85-2.75 (m, 2H), 2.80 (s, 3H), 1.32 (s, 9H)。
工程III:
6-[4-(2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-2-ジメチルカルバモイル-エチル)-フェノキシ]-ニコチン酸(19)の調製
【0073】
【化29】

【0074】
アミド(18)(1.0g,2.25mmol)をTHF(10mL)に溶かして水(10mL)で希釈した。水酸化リチウム(0.107g,4.5mmol)を加えて反応混合物を室温で約2時間撹拌した。THFを蒸発させ、生じた水層を2.0MのHClで酸性にしてEtOAc(2×100mL)で抽出した。有機層を水(1×100mL)と食塩水(1×100mL)で洗浄し、乾燥かつ濃縮して所望の酸化合物(19)を得た(1.0g,97%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): 13.1 (s, 1H), 8.64 (br, 1H), 8.27 (dd, J = 8.4 及び 2.0 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.08 (m, 3H), 4.56 (m, 1H), 2.94 (s, 3H), 2.85 - 2.75 (m, 2H), 2.81 (s, 3H), 1.18 (s, 9H)。
工程IV:
{1-ジメチルカルバモイル-2-[4-(5-ヒドロキシカルバモイル-ピリジン-2-イルオキシ)-フェニル]-エチル}-カルバミン酸tert-ブチルエステル(20)の調製
【0075】
【化30】

【0076】
酸化合物(19)(1.0g,2.328mmol)を乾燥DMFに溶かしてアルゴン雰囲気にて撹拌した。N-メチルモルフォリン(1.02mL,9.32mmol)を添加した。20分後、ヒドロキシルアミン塩酸塩(0.323g,4.66mmol)を加えて反応混合物を室温に戻して一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、残存物質をEtOAc(50mL)と飽和NH4Cl溶液(1x30mL)に分配した。有機層を乾燥かつ濃縮して粗製物質を得た。1%の酢酸を含有するヘキサン-酢酸エチル(70-60%)混合物を用いて、SiO2ゲル上のフラッシュクロマトグラフィーで所望のヒドロキサム酸化合物(20)を得た(0.5g,98%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): 8.47 (br, IH) 8.14 (dd, J = 8.8 及び 2.4 Hz, IH), 7.29 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.8 Hz, IH), 7.05 (m, 3H), 4.56 (m, IH), 2.93 (s, 3H) 2.85 - 2.75 (m, 2H), 2.79 (s, 3H), 1.32 (s, 9H)。
工程V:
L- 6-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシニコチンアミド塩酸塩(21)の調製
【0077】
【化31】

【0078】
ヒドロキサメート20(0.5g)をCH2Cl2に溶かして0〜5℃に冷却した。この溶液全体に塩化水素ガスを20分間泡立たせた。泡立てを中止し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。過剰のHClを脱気してCH2Cl2を除去した。残存固体をEtOAc(2×50mL)と摩砕し、デカントし、乾燥させて所望化合物(21)を白色の非晶質固体として得た(0.4g,98%)。1H NMR (DMSO-d6): 8.49 (d, J=2.4Hz, 1H), 8.31 (br, 2H), 8.17 (dd, J = 8.8 及び 2.4 Hz, 1H), 7.40 (br,1H), 7.27 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.13 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.07 (d, J=8.8Hz, 1H), 4.58 (br, 1H), 3.08 (dd, J=13.6 及び 6 Hz, 1 H), 2.98 (dd, J = 14.0 及び 7.6 Hz, 1H), 2.81(s, 3H), 2.73(s, 3H)。
〔実施例8〕
2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイル-フェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ナトリウム塩(22)の合成
【0079】
【化32】

【0080】
化合物(35)(0.3g,0.85mmol)を水酸化ナトリウム水溶液(1M,1.7mL)に溶かした。減圧下で30℃にてCentriVap内で水を除去して化合物(85)を白色の非晶質固体として得た(0.33g,定量的)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6 + DCl): 7.88(d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.96 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.13 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 3.13 (d, J = 6.4 Hz, 2H). LCMS: 観測値 339, 計算値 338.3。
【0081】
生物学的試験の手順:
本発明の化合物を、その生物学的活性の種々のモデルにおける炎症性サイトカインレベル、化学的に誘導される炎症、免疫調節及び血糖の低減について試験した。添付図面1〜9は本発明の代表化合物の活性プロフィールを示す。
表I:THP-1細胞内で主要炎症誘発性サイトカインの阻害を示す化合物
ヒトTHP-1単球細胞を培養し、種々濃度の化合物とインキュベートした。次に、細胞を一定濃度(1μg/mL)のリポ多糖(LPS)で24時間誘発した。次いで抗体特異的酵素結合免疫測定法(antibody directed enzyme-linked immunoassay)(R & D System, Minneapolis, USA)によって細胞上清をTNF-αサイトカインの存在について分析した。表Iに示されるように、代表化合物は用量依存様式で3つの主要な炎症誘発性サイトカインの産生を阻害することができる。最高濃度の化合物の存在下における細胞のインキュベーションで細胞の生存能力に有意な変化は観察されなかった。
【0082】
表II:ヒト末梢単球(hPBMC)細胞内で主要炎症誘発性サイトカインの阻害を示す化合物
ヒトPBMC単球細胞を培養し、種々濃度の化合物とインキュベートした。次に、細胞を一定濃度(1μg/mL)のリポ多糖(LPS)で24時間誘発した。次いで抗体特異的酵素結合免疫測定法によって細胞上清をTNF-α、IL-6及びIL-1βサイトカインの存在について分析した。この実験ではデキサメタゾンをポジティブコントロールとして使用した。表IIに示されるように、本化合物は用量依存様式で3つの主要な炎症誘発性サイトカインの産生を阻害することができる。最高濃度の化合物の存在下における細胞のインキュベーションで細胞の生存能力に有意な変化は観察されなかった。
表III:マウスのLPS誘発敗血症モデルにおけるTNF-αとIL-6の阻害
50mg/kg(体重)の用量でビヒクル、デキサメタゾン(5mg/kg)及び化合物でSWマウスを経口処理後、LPS注射(10μg/マウス,ip)し、90分後に血液を収集して血清TNF-αとIL-6レベルをELISAで測定した。本化合物は、このモデルでTNF-αとIL-6を有意に低減した。
【0083】
表IV:TACE、MMP-1、MMP-9、PDE-3及びPDE-4中の化合物の作用
マトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)ファミリーは有意な配列相同性及び共通のマルチドメイン構造を共有する。それらの好ましい基質に基づき、該ファミリーを4つの主分類に分けうる:コラゲナーゼ、ゲラチナーゼ、ストロメライシン及び膜型MMP。これら酵素は正常組織内では非常に低い活性を示すが、サイトカイン、成長因子及び細胞外マトリックス相互作用といった特有の刺激に応じた炎症及び生理学的リモデリングプロセスの際に上方制御及び/又は活性化される。インヒビターは癌、リウマチ性関節炎、自己免疫疾患、歯周病、組織潰瘍、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤及び心不全に役立ちうる。
MMP-1:
酵素MMP-1(間質性コラゲナーゼ;EC 3.4.24.7,ヒトリウマチ性滑液線維芽細胞,Calbiochem Cat. 444208)を使用する。MMP-1をまずAPMAで60分間37℃で活性化する。次に、試験化合物及び/又はビヒクルを、50mM MOPS(pH 7.2)、10mM CaCl2及び10μM ZnCl2を含有する反応混合物中の活性酵素(8nM)と60分間37℃でプレインキュベートする。Mca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2(配列番号1)(4μM)を添加して反応を開始し、37℃で120分間インキュベートする。N-末端保護基Mcaは7-メトキシクマリン-4-イルアセチルである。アミノ酸DpaはN3-(2,4-ジニトロフェニル)-L-ジアミノプロパノイルである。蛍光Mca-Pro-Leu-Gly(配列番号2)の形成を測定することによって分光蛍光分析的に酵素活性を決定する。化合物を10μMでスクリーニングする。
MMP-9:
酵素MMP-9(ゲラチナーゼB;EC 3.4.24.35,ヒト組換え体,Calbiochem Cat. PF024-5UG)を使用する。MMP-9をまずAPMAで60分間37℃にて活性化する。次に、試験化合物及び/又はビヒクルを、50mM MOPS(pH 7.2)、10mM CaCl2及び10μM ZnCl2を含有する反応混合物中の活性酵素(11nM)と60分間37℃でプレインキュベートする。4μMのMca-Pro-Leu-Gly-Leu-Dpa-Ala-Arg-NH2(配列番号1)を添加して反応を開始し、37℃で120分間インキュベートする。蛍光Mca-Pro-Leu-Gly(配列番号2)の形成を測定することによって分光蛍光分析的に酵素活性を決定する。化合物を10μMでスクリーニングする。
TACE:
腫瘍壊死因子-α変換酵素(TACE/ADAM-17)は、リウマチ性関節炎及び多発性硬化症などの多くの慢性衰弱疾患と関係がある強力な炎症誘発性サイトカインであるTNF-αの放出の原因である。また、TNF-αは血管形成を誘導し、線維芽細胞増殖を促進し、かつ任意の腫瘍細胞上の受容体と結合して細胞溶解を誘導しうる。TACEはアミロイド前駆体タンパク質の分泌にも関与する。Sf21細胞内で発現したヒト組換えTACE(R&D System, 930-ADB)を使用する。試験化合物及び/又はビヒクルを、変性Tris-緩衝液(pH 9.0)中の酵素(25ng/ml)及び10μMのMca-P-L-A-Q-A-V-Dpa-R-S-S-S-R-NH2(配列番号3)と30分間25℃にてインキュベートする。蛍光Mca-P-L-A-Q-A-NH2(配列番号4)を測定することによって分光蛍光分析的に酵素活性を決定する。化合物を10μMでスクリーニングする。
PDE-3:
ヒト血小板から部分的に精製したホスホジエステラーゼ-3型(PDE3)を使用する。試験化合物及び/又はビヒクルをインキュベートする。1μgの酵素及びTris緩衝液(pH7.5)中0.01μMの[3H]cAMPを含有する1μMのcAMPと20分間25℃でインキュベートする。2分間煮沸して反応を終止する。結果として生じたAMPに10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに37℃で10分間インキュベートしてアデノシンに変換する。未加水分解cAMPをAG1-X2樹脂に結合し、水相に残存している[3H]アデノシンをシンチレーション計数によって定量する。化合物を10μMでスクリーニングする。
PDE-4:
ホスホジエステラーゼ4型(PDE4)はcAMP又はcGMPのそれぞれ一リン酸形への変換を触媒する。PDE4はCa2+/カルモデュリン又はcGMP調節に無感応であり、cAMP基質依存性を示し、かつ特有のインヒビターRo-20-1724によって阻害される。環式ヌクレオチドは多くの組織及び器官の細胞内で重要な第2メッセンジャーなので、選択的に特有のPDEイソ型を標的にする治療薬の開発は重要な目標と考えられる。PDE4は、気管支の弛緩、アレルギー及び炎症で最も重要なPDEイソ型であると考えられている。従って、PDE4のインヒビターに選択的なインヒビターは気管支炎、アレルギー性及び炎症性疾患の治療に有用だろう。ヒトU-937骨髄性白血病細胞から部分的に精製したPDE4を使用する。試験化合物及び/又はビヒクルを、0.2μgの酵素及びTris緩衝液(pH 7.5)中0.01μMの[3H]cAMPを含有する1μMのcAMPと20分間25℃でインキュベートする。2分間煮沸して反応を終止し、結果として生じたAMPに10mg/mlのヘビ毒ヌクレオチダーゼを添加し、さらに37℃で10分間インキュベートしてアデノシンに変換する。未加水分解cAMPをAG1-X2樹脂に結合し、水相に残存している[3H]アデノシンをシンチレーション計数によって定量する。化合物を10μMでスクリーニングする。
表V:マウス脾臓マクロファージにおけるIL-12の分泌
この分類の化合物(6)は、LPSで72時間刺激したマウス脾臓マクロファージ内のIL-12の産生を阻害した。表Vに示される化合物は、これら細胞内でのIL-12産生を強く阻害した。この実験で並行して選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)インヒビターであるロフェコキシブを比較したが、この化合物では何ら効果が観察されなかった。
表VI:
完全フロイントアジュバント(CFA)中のキーホールカサガイヘモシアニン(KLH)でSJLマウスを免疫化した。12日後、局所リンパ節を単離し、薬物の存在下又は非存在下でのKLHに対する増殖反応を行った(3Hチミジンの存在下)。結果を刺激指数(CPM+抗原/抗原なし)で表す。同様に、化合物の存在下で測定したミトゲン誘導コンカナバリンA(CON-A)、IL-4、IL-2誘導T細胞増殖を表VIに示す。この実験でCOX-2インヒビター、ロフェコキシブを使用したが、これはT細胞に何ら効果を示さなかった。
【0084】
表I:THP-1単球細胞内における10μMでのLPS誘導TNF-αの阻害


【0085】
表II:hPBMC内における10μMでのLPS誘導サイトカインの阻害


*2実験の平均;ND=実験せず
【0086】
表III:マウスにおけるLPS誘導敗血症に及ぼす化合物の効果(50mg/kg(体重))


【0087】
表IV:TACE、MMP-1、MMP-9、PDE-3及びPDE-4酵素の阻害に及ぼす化合物(6)の効果


NE=効果なし
【0088】
表V:マウス脾臓マクロファージのLPS刺激後のIL-12、酸化窒素及びTNF-αの分泌(10μM濃度で)


【0089】
表VI:10μM濃度でのT細胞増殖の阻害


阻害:+=0〜20%、+ +=21〜60%、+ + +=61〜80%、+ + + +≦80%;
全結果は10μMの薬物濃度
【0090】
図1:コラーゲン誘発関節炎モデルにおける化合物の効果
ウシコラーゲン(100μg/マウス)でオスのDBA/1Lacマウスに関節炎を誘発した。追加免疫用量を日21に与え、臨床スコアが約2のときに治療を始めた。化合物6、9及び22(1日に経口で50mg/kg)はこれら動物の関節炎スコアを有意に改善した。デキサメタゾンをポジティブコントロールとして維持した。各足の重症度スコアを0=紅斑なし〜4=腫れた足について重度の関節炎と定義し、1匹の動物で4本の足について可能性のある最大スコアは16((4×4)である。
図2:マウスのEAEモデルにおける化合物の効果
多発性硬化症(MS)は自己免疫性疾患であり、サイトカインレベルによって調節される。多発性硬化症(MS)モデルにおける化合物の効果を試験するため、実験用アレルギー性脳脊髄炎(EAE)をSJL/Jマウスに誘発した。EAEは中枢神経系(CNS)の自己免疫性炎症性疾患である。この疾患はヒトMSと多くの類似性を示すので、MSでの適用性を有しうる新薬の可能性のある効力を試験するためのモデルとして用いられる。脊髄ホモジネートを注射してEAEを誘発して動物を例示化合物で治療した。麻痺の臨床スコアでEAEの重症度を立証した。図2に示されるように、新規化合物治療群はEAEの完全な阻止を示した。これら結果は、MS及び他の神経障害の治療のための例示化合物の有用性を示している。
図3:カラギーナン誘発ラットにおける炎症の低減
平均体重250g(6〜7週齢)のスプラーグドーリーラットを3群に無作為化し、50mg/kgの経口用量の実施例6の化合物を与えた。30分後、カラギーナンを右後ろ足底下に投与した。コントロール群には、いずれの化合物もない等量の水を与えた。2時間後と3時間後に足の体積を測定した。5mg/kg濃度のデキサメタゾンをこの実験のポジティブコントロールとして使用した。化合物は、カラギーナンによって誘発された炎症を実質的に低減することを示した。
図4:マウスのマクロファージにおけるIL-2の阻害
マウスの腹膜マクロファージを106個の細胞/mLという密度で96ウェルプレート内で培養した。細胞を化合物22で30分間前処理した後、細胞を独立にLPS(1μg/mL)、インターフェロンγ(20μg/mL)又は抗CD40抗体(2μg/mL)で抗原投与した。次に24時間インキュベーションを続け、最後にIL-12(p40)をELISAで測定した。
図5:IL-12(p40)のCD40リガンド媒介合成の阻害
CD40によって媒介されるIL-12分泌の阻害をさらに確認するため、可溶性CD40リガンド、CD154によるマクロファージの活性化後にIL-12(p40)の誘発を調べた。化合物22の存在下でマウスの腹膜マクロファージを2μg/mLの可溶性CD145(Immunex)で刺激した。化合物はIL-12の顕著な阻害を示した。
図6:ミエリン塩基性タンパク質(MBP)誘導インターフェロン-γの阻害
SJLマウスをCFA中の400μgのミエリン塩基性タンパク質(MBP)で日0と日7に免疫化し、局所リンパ節を日14に収集して化合物22の存在下又は非存在下で72時間MBPと培養した。リンパ球の増殖をチミジン取り込みアッセイで定量した。MBP刺激し、化合物22処理した細胞からの細胞培養上清をELISAでγインターフェロンについてアッセイした。化合物22処理した細胞培養では正常なT細胞の増殖反応にもかかわらずγインターフェロンレベルの減少に注意されたい。
図7:ラットにおけるアジュバント誘発関節炎の低減
オスのルイス(Lewis)ラット(約150g)を不完全フロイントアジュバント中Mycobacterium butyricum(1mg)で免疫化した。日12〜14の間に関節炎の臨床症状が現れた。ラットを群に無作為化して、毎日ビヒクル又は薬物で処理した。関節炎の臨床スコアを1週間に2回モニターした。
図8:マウスにおけるLPS-誘導発熱(pyresis)でのTNF-αレベルの阻害
SWマウスをデキサメタゾン(5mg/kg(体重))及び種々用量で水に溶かした化合物22で経口処理した。処理1時間後にLPSを投与(400μg/kg,IP)して90分後に血液を収集した。血清中のTNF-αレベルをELISAで測定した。
図9:炎症性腸疾患(IBD)における化合物22の効果
パネルAは、オスのSWマウスにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘発された炎症性腸疾患(IBD)の疾患活動指数(disease activity index)(DAI)を示す。DAIは、体重、糞便の質及び潜血含量などの因子で構成される。DSSの4%溶液を飲料水として供給し、疾患の誘発についてDAIを1週間に2回モニターした。この後、動物をPEG400製剤で1日用量50mg/kg(体重)の化合物22で処理し、活動指数を1週間に2回モニターした。
パネルBは、ラットにおける2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発IBDの寛解のパラメーターである体重の改善を示す。50%エタノール(0.25mL)に溶かしたTNBS(30mg)をメスのラット(約250〜300g)に直腸点滴注入した。15日間、100mg/kg POにて該処理化合物を動物に投与した。体重変化を初日の値のパーセンテージで表す。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】コラーゲン-誘発マウス関節炎モデルに及ぼす本発明の3つの化合物の効果を示す3つのグラフ群である。
【図2】マウスの誘発実験用アレルギー性脳脊髄炎に及ぼす本発明の3つの化合物の効果を示す3つのグラフ群である。
【図3】カラギーナン-誘発ラットの炎症の低減を示す棒グラフである。
【図4】マウスマクロファージにおけるIL-2の阻害を示す3つのグラフ群である。
【図5】IL-12のCD40リガンド-媒介合成の本発明の化合物による阻害を示す棒グラフである。
【図6】ミエリン塩基性タンパク質誘導IFN-γの本発明の化合物による阻害を示す棒グラフである。
【図7】ラットのアジュバント-誘発関節炎の本発明の化合物による低減を示すグラフである。
【図8】LPS-誘導発熱(pyresis)マウスモデルにおけるTNF-αレベルの本発明の化合物による阻害を示す棒グラフである。
【図9】炎症性腸疾患における本発明の化合物の効果を示す2つのグラフ群である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物、その誘導体、立体異性体及びその医薬的に許容しうる塩。
【化1】

(式中、
Aは置換若しくは無置換の5〜18員アリール又はヘテロシクリル環系を表し;
Bは置換若しくは無置換の5〜18員アリール又は5〜6員ヘテロシクリル基を表し;
R1は-OR10;NR11R12を表し;
R2及びR3は同一又は異なってよく、独立にH、COR13、又はアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ及びヘテロシクリルから成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し;或いはR2とR3が一緒にヘテロ環式環を形成してよく;
ZはO、S又はNR14を表し;ZがO又はSを意味する場合、R6は水素、又はアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル及びヘテロシクリルから成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し;ZがNR14を意味する場合、R6はH、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル基、アミノ、又はアルキル、ハロアルキル、アルケニル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル及びヘテロシクリルから成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し;
YはO、S又はNR14を表し;
nは0〜4の範囲の整数であり;
R4、R5、及びR7は同一又は異なってよく、水素、ニトロ、ヒドロキシ、ホルミル、アジド、ハロ、又はアルキル、アルコキシ、アシル、シクロアルキル、ハロアルキル、アミノ、ヒドラジン、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルホニル、アリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルコキシアルキル、スルファモイル及びカルボン酸とその誘導体から成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し;
R10は水素、又はアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、及び対イオンから成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し;
R11及びR12は同一又は異なってよく、独立にH、又はアルキル、アルケニル及びアリールから成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し、或いはR11とR12が窒素と一緒に置換若しくは無置換の単環式又は二環式の飽和若しくは不飽和環系(O、S又はNから選択される1又は2以上のヘテロ原子を含んでよい)を意味することがあり;
R13はH、又はアルキル、アリール、アルケニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシ及びアラルコキシから成る群より選択される置換若しくは無置換基を表し;
R14は水素又はアルキルを表し;
Xは結合、O、S、SO又はSO2を表す。)
【請求項2】
Bで表される前記環系が、置換及び無置換フェニル、ナフチル、並びに置換及び無置換ピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル及びピリダジニルから成る群より選択される5〜6員の飽和若しくは不飽和ヘテロ環式環でさらに置換されているフェニル及びナフチルから成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Bが、置換及び無置換フェニル、ピリジニル及びチアゾリルから成る群より選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、フェニル、ピリジニル、インドリル及びジアジニルから成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、アミノ、ジアルキルアミノ、イソプロポキシル、ヒドロキシル、ベンジルオキシル、N-アセチル-ペルヒドロ-1,4-ジチアインジニル及びペルヒドロ-1,4-オキサアザ-インジニルから成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R2及びR3が、水素及びp-トルエンスルホニルから成る群より独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R6が、ヒドロキシル、水素及びジアルキルアミノから成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Xが、結合又はOから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
YがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Zが、NH又はOから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
nが0、1又は2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
R4、R5及びR7が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
下記化合物:
i)2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ベンジルエステル塩酸塩、
ii)2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸塩酸塩、
iii)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド塩酸塩、
iv)4-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシ-ベンズアミド、
v)4-[4-(2-アミノ-2-イソプロポキシカルボニルエチル)-フェノキシ]-安息香酸、
vi)2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸イソプロピルエステル、
vii)6-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシニコチンアミド塩酸塩、
viii)2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸ナトリウム塩、
ix)2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸、
x)2-アミノ-3-[4-(3-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸、
xi)2-アミノ-3-[3-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸、
xii)3-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xiii)4-[3-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xiv)3-[4-(2-アミノ-3-オキソ-3-ピペリジン-1-イル-プロピル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xv)4-{3-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシベンズアミド、
xvi)3-[4-(2-アミノ-3-オキソ-3-ピペラジン-1-イル-プロピル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-ベンズアミド、
xvii)4-{3-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシ-ベンズアミド、
xviii)3-[4-(2-アミノ-3-モルフォリン-4-イル-3-オキソ-プロピル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-ベンズアミド、
xix)3-[4-(3-ヒドロキシカルバモイル-フェノキシ)-フェニル]-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-プロピオン酸メチルエステル、
xx)3-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシ-ベンズアミド、
xxi)4-[4-(2-アミノ-3-オキソ-3--ピペリジン-1-イル-プロピル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxii)2-アミノ-3-[4-(4-ヒドロキシカルバモイルフェノキシ)-フェニル]-プロピオン酸、
xxiii)4-[4-(2-アミノ-3-モルフォリン-4-イル-3-オキソプロピル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxiv)4-[4-(2-アミノ-2-カルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxv)4-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxvi)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-ベンジル]-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxvii)4-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxviii)4'-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-ビフェニル-4-カルボン酸ヒドロキシアミド、
xxix)2-アミノ-3-(4'-ヒドロキシカルバモイルビフェニル-4-イル)-プロピオン酸メチルエステル、
xxx)4'-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-ビフェニル-4-カルボン酸ヒドロキシアミド、
xxxi)4-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシ-2-メチルベンズアミド、
xxxii)4-{4-[2-ジメチルカルバモイル-2-(トルエン-4-スルホニルアミノ)-エチル]-フェノキシ}-N-ヒドロキシ-3-メチルベンズアミド、
xxxiii)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイル-エチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-2-メチル-ベンズアミド、
xxxiv)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチルベンズアミド、
xxxv)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-2-トリフルオロメトキシベンズアミド、
xxxvi)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-2-メトキシベンズアミド、
xxxvii)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-2-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxxviii)4-[4-(2-アミノ-2-ジメチルカルバモイルエチル)-フェノキシ]-3-フルオロ-N-ヒドロキシベンズアミド、
xxxix)4-[4-(アミノ-ジメチルカルバモイルメチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチルベンズアミド、及び
xxxx)4-[4-(1-アミノ-2-オキソ-2--ピペリジン-1-イルエチル)-フェノキシ]-N-ヒドロキシベンズアミド
から成る群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
医薬的に有効な量の請求項1に記載の下記式(I)の化合物と、医薬的に許容しうる担体、希釈剤、賦形剤又は溶媒とを含んでなる医薬組成物。
【化2】

【請求項15】
錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、溶液、エアロゾル又は懸濁液の形態の、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
宿主に請求項1に記載の化合物を投与することによって、血糖、遊離脂肪酸、コレステロール若しくはトリグリセリドのレベル又は血漿中におけるこれらのいずれか1つのレベルを低減する方法。
【請求項17】
炎症の治療方法であって、治療が必要な患者に、有効量の請求項1に記載の式(I)の化合物を投与することを含む方法。
【請求項18】
免疫疾患の治療方法であって、治療が必要な患者に、有効量の請求項1に記載の式(I)の化合物を投与することを含む方法。
【請求項19】
前記免疫疾患がサイトカインによって調節される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サイトカインがTNF-α又はIL-12である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬的に許容しうる塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、カリウム塩又はマグネシウム塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
下記式
【化3】

(式中、A、B、X、Y、Z、R1〜R3、R6〜R9及びnは請求項1の定義どおりであり、Pは保護基である)
の化合物の製造方法であって、以下の工程:
(a)下記式
【化4】

の化合物を下記式
【化5】

(式中、Wはハロである)
の化合物と反応させて下記式
【化6】

の化合物を形成する工程;
(b)工程(a)の生成物を酸化して下記式
【化7】

の化合物を形成する工程;
(c)工程(b)の生成物をZ-R6と反応させる工程;
を含む方法。
【請求項23】
工程(c)の生成物から前記保護基Pを除去する工程(d)をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(d)の生成物をW'R2及び/又はW'R3(式中、W'はハロである)と反応させて、下記式の生成物を形成する工程(e)をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【化8】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−500343(P2009−500343A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519610(P2008−519610)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/025571
【国際公開番号】WO2007/005603
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(505268758)ベクセル ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】