説明

新規化合物、抗腫瘍剤及び抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料

【課題】副作用の恐れがなく、安全で、かつ、優れた抗腫瘍作用を有する新規化合物を提供する。副作用の恐れがなく、安全で、かつ、優れた抗腫瘍作用を有する抗腫瘍剤を提供する。副作用の恐れがなく、安全で、かつ、優れた抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料を提供する。
【解決手段】
下記の式(1)で表される新規化合物A、当該新規化合物Aを含有する抗腫瘍剤並びに当該新規化合物Aを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、抗腫瘍剤及び抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
抗腫瘍剤・制癌剤・抗癌剤は腫瘍細胞に選択的に作用し、正常細胞に対して毒性の比較的少ないものが一応選ばれてはいるが、骨髄抑制に基づく白血球減少、血小板減少、好中球減少などの致命的な副作用の発現、悪心・嘔吐など消化器系障害の副作用の発現、及び脱毛などの副作用の発現、薬剤耐性の発現、並びに経口投与が困難な薬剤が多いため投与経路の制限など多くの使用上の問題点が未解決のまま残されている。従って、腫瘍細胞に選択的に作用し、正常細胞に対して毒性が極めて少なく、投与経路に制限の少ない抗腫瘍剤・制癌剤・抗癌剤が要望されている。
【0003】
天然物から得られた抗腫瘍剤として、多くの化合物が知られ、例えばマイトマイシンC(例えば、非特許文献1参照。)、カンプトテシン(例えば、特許文献1参照。)、トリテルペン化合物(例えば、特許文献2参照。)など多くの報告がある。また、天然物をリード化合物とする抗腫瘍剤として、タキソール誘導体(例えば、特許文献3参照。)、タキサン誘導体(例えば、特許文献4参照。)などが知られている。本化合物に関連、又は本化合物の生合成系や分解系に関連すると予想されるナフトキノン系の抗腫瘍剤に関するものとして、白鶴霊芝草(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)由来のリナカンチンA,B,C,D,G,H,I,K,M,N,Qに関する報告(例えば、非特許文献2参照。)がある。また、ナフトキノン系の抗腫瘍剤に関する合成化合物として、フラノナフトキノン誘導体に関する抗腫瘍剤(例えば、特許文献5〜8参照。)が知られている。
【0004】
一方、本発明により「後述する新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F及び新規化合物G」を含有することが明らかとなった白鶴霊芝(以下、白鶴霊芝草と言うこともある。Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)は、インド南部デカン高原の原産とされるリナカンサス属キツネノマゴ科に属する常緑小低木であり、その全草は駆虫、消炎、皮膚真菌に対する抗菌作用のあることが知られ(例えば、非特許文献3参照。)、主に中国、台湾等において、また、最近では日本国において漢方薬として用いられている。その他、本出願人による以前の出願で、白鶴霊芝に活性酸素消去能があること(例えば、特許文献9参照。)、排泄促進作用があること(例えば、特許文献10参照。)、抗アレルギー作用があること(例えば、特許文献11参照。)及び抗腫瘍作用があること(例えば、特許文献12参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3483257号公報
【特許文献2】特許第4296312号公報
【特許文献3】特公平6−51689号公報
【特許文献4】特許第3942197号公報
【特許文献5】特開平9−235280号公報
【特許文献6】特開平9−252753号公報
【特許文献7】特開平11−21284号公報
【特許文献8】特開2005−220037号公報
【特許文献9】特開平9−143091号公報
【特許文献10】特開平9−169662号公報
【特許文献11】特開2001−10964号公報
【特許文献12】特開2002−53481号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ザ ジャーナル オブ アンチバイオティクス 第9巻、141−146ページ、1956年
【非特許文献2】ファイトメディシン 第49巻、2001〜2003ページ、1988年
【非特許文献3】原色牧野和漢薬草大図鑑、492頁、北隆館、1988年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)、当該新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を含有する抗腫瘍剤及び当該新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料は知られていない。
【0008】
そこで、本発明は、副作用の恐れがなく、安全で、かつ、優れた抗腫瘍作用を有する新規化合物、当該新規化合物を含有する抗腫瘍剤並びに当該新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、抗腫瘍作用を有する新規化合物の検索を行った結果、白鶴霊芝から得られた7つの新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)に優れたヒト由来メラノーマ細胞株(HMV−II)に対する増殖抑制作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。上記課題を解決するために、本発明は、下記の事項より構成される。
【0010】
本発明は、「下記の式(1)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Aという。)」、「新規化合物Aを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Aを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化1】

【0011】
また、本発明は、「下記の式(2)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Bという。)」、「新規化合物Bを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Bを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化2】

【0012】
また、本発明は、「下記の式(3)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Cという。)」、「新規化合物Cを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Cを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化3】

【0013】
また、本発明は、「下記の式(4)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Dという。)」、「新規化合物Dを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Dを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化4】

【0014】
また、本発明は、「下記の式(5)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Eという。)」、「新規化合物Eを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Eを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化5】

【0015】
また、本発明は、「下記の式(6)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Fという。)」、「新規化合物Fを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Fを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化6】

【0016】
さらにまた、本発明は、「下記の式(7)で表される新規化合物(以下、当該新規化合物のことを新規化合物Gという。)」、「新規化合物Gを含有する抗腫瘍剤」及び「新規化合物Gを含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料」に関する。
【化7】

【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食品や化粧料の原料として従来より用いられている天然物(白鶴霊芝)由来の成分であるため副作用の恐れがなく安全で、また、後述する試験例からも分かるように優れた抗腫瘍作用を有する新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)、当該新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を含有する抗腫瘍剤並びに当該新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】白鶴霊芝根から各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を分画・単離する際のフローチャートである。
【図2】新規化合物Bの七員環3位の立体配置をCD(円二色性)励起子キラリティー法により解析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)は、白鶴霊芝を原料に抽出・精製工程により得ても良いし、その他の植物体から得ても良い。また、合成によって得た新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を使用することもできる。また、白鶴霊芝草や、新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を含有する他の植物体からの抽出物や粗精製物、又は植物体の乾燥物や植物体のペーストを用いることもできる。
【0020】
白鶴霊芝草などの植物体から本発明の新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を抽出・精製する場合、通常工業的に用いるいずれの抽出・精製工程を用いることができる。原料である植物の葉、茎、根、花等を、適当な時期に採取した後、そのまま、若しくは通常通風乾燥等の乾燥工程に付し、抽出原料とする。上記の乾燥した植物体から抽出を行う場合は、公知の方法(ファイトメディシン 第16巻、929〜934ページ 2009年)を参考にして行うことができる。
【0021】
すなわち、原料を粉砕若しくは細切した後、溶媒を用いて抽出を行う。抽出溶媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ヘキサン、クロロホルム等の親油性の溶媒を、単独若しくは混合溶媒として用いることができる。抽出温度は、通常0〜100℃、好ましくは5〜50℃である。抽出時間は、1時間〜10日間程度であり、溶媒量は、乾燥原料あたり通常1〜30倍重量、好ましくは5〜10倍重量である。抽出操作は、攪拌によっても浸漬放置によっても良い。抽出操作は、必要に応じて2〜3回繰り返しても良い。上記の操作で得られた粗抽出液から不溶性残渣を濾過若しくは遠心分離により取り除いた抽出液、あるいは植物の搾汁液からの各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の精製方法は、公知の生薬の分離精製方法であればどのようなものでも良いが、二相溶媒分配法、向流分配法、カラムクロマトグラフィー法、分取高速液体クロマトグラフィー法等を単独又は組み合わせて用いることが好ましい。例えば二相溶媒分配法としては、前記の抽出液からn−ヘキサン、クロロホルム、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル等の溶媒と水との分配により、溶媒相へ目的化合物を回収する方法等があげられる。カラムクロマトグラフィー法としては、イオン交換カラムクロマトグラフィー法、担体として順相系、又は逆相系シリカゲルを用いる方法、ダイヤイオンHP−20等を用いる吸着カラムクロマトグラフィー法、担体としてセファデックスLH−20等の修飾デキストランゲルを用いるゲルろ過法等があげられ、これらを単独若しくは組み合わせて、また、反復して使用することができる。分取高速液体クロマトグラフィー法としては、オクタデシルシリカ等を用いる逆相系のカラムを用いる方法、シリカゲル等を用いる順相系のカラムを用いる方法等があげられる。
【0022】
本発明の抗腫瘍剤の投与経路としては、特に限定されないが、例えば、経口投与・直腸内投与等の経腸投与、経鼻投与などの粘膜投与、静脈内投与・皮下投与などの注射投与等をあげることができる。本発明の抗腫瘍剤の剤型としては、いずれも投与方法に適した製剤の形態をとることができ、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末、丸剤、トローチ剤等の固形剤、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤などの液剤、ゲル状の製剤などが挙げられる。各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の純品、精製物、粗精製物等をそのまま投与しても良いが、薬理的に許容される賦形剤とともに投与しても良い。賦形剤としては、単糖類、二等類、多糖類、無機塩類、油脂、蒸留水など、製剤として一般に使用可能なものであればいずれも用いることができる。製剤化する際には、結合剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることもできる。
【0023】
各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の有効投与量は、投与経路、剤形、疾患の症状、対象者の年齢等により異なるが、通常成人一日あたり0.1〜1000 mg、好ましくは0.5〜300 mg、さらに好ましくは1〜100 mgである。本発明の経口の抗腫瘍剤中の各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の含有量は、製剤の形態・有効投与量・製剤としての投与量のデータに基づき、各投与形態に最適な製剤中の有効成分含有量を設定することができる。
【0024】
食品の形態としては、白鶴霊芝草及び各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)を含有する植物体の乾燥物のお茶としての形態や、各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の純品、当該新規化合物の部分精製品、当該新規化合物を含有する植物からの当該新規化合物の粗抽出物、当該新規化合物を含有する植物体ペースト、当該新規化合物を含有する植物体乾燥物を配合した食品などがあげられる。
【0025】
お茶としては、単独又は他の茶原料と混合して用いても良い。他の茶原料としては、緑茶、ウーロン茶、プーアル茶、紅茶、ほうじ茶、玄米茶、杜仲茶、柿の葉茶、桑の葉茶など、通常お茶として食されるものであれば、どのようなものも用いることができる。
【0026】
植物抽出物を得る場合は、熱水による抽出、エタノールや含水エタノールによる抽出等、通常食品の抽出に用いられる方法であれば、いずれの方法も用いることができる。各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の植物体からの粗抽出物や部分精製品は常法により得ることができる。
【0027】
本発明の抗腫瘍作用を有する食品の形態としては、お茶のほか、ドリンク剤、ゼリー、ビスケット、錠剤、丸剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等、通常食品として提供可能な形態であれば、いずれの形態も用いることができる。副原料として、賦形剤、結合剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることもできる。
【0028】
本発明の抗腫瘍作用を有する食品による各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の有効摂取量は、摂取形態、対象者の健康状態、対象者の年齢等により異なるが、通常成人一日あたり通常0.001〜100 mg、好ましくは0.01〜10 mg、さらに好ましくは0.1〜1 mgである。
【0029】
本発明の抗腫瘍作用を有する食品中の各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の含有量は、食品の形態によって異なるが、通常0.0001〜1wt%、好ましくは0.001〜0.5wt%、より好ましくは、0.01〜0.1wt%である。
【0030】
本発明の外用医薬品及び化粧料の形態の例としては、特に限定されない。
【0031】
外用医薬品の形態としては、例えば、軟膏剤、クリーム剤、発布剤、テープ剤、外用剤等があげられる。本発明の医薬品は、各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)に、必要に応じてその他の医薬成分を含有することができ、また、結合剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いても良い。
【0032】
化粧料の形態としては、化粧水、美容液、乳液、クリーム、ジェル、パック、美容パウダー、洗顔フォーム、浴用剤等、外用剤・化粧料製剤として使用可能ないずれの形態も用いることができる。上記化粧料には、各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の純品、当該新規化合物の部分精製品、植物からの当該新規化合物の粗抽出物、又は当該新規化合物を含有する植物体等の必須成分に加え、必要に応じて化粧料製剤に配合される成分を含有しても良い。配合成分としては、例えば、固形油、半固形油、液体油、低分子保湿剤、高分子保湿剤、脂溶性保湿剤、エモリエント剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、エタノール、水等をあげることができる。
【0033】
各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の外用での有効投与量は、対象者の症状、対象者の年齢等により異なるが、通常成人一日あたり0.001〜100 mg、好ましくは0.01〜10 mg、さらに好ましくは0.1〜1 mgである。
【0034】
本発明の抗腫瘍剤、医薬品、化粧料中の各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物C、新規化合物D、新規化合物E、新規化合物F又は新規化合物G)の含有量は、単独又は混合物として通常0.0001〜1wt%、好ましくは0.001〜0.5wt%、より好ましくは、0.01〜0.1wt%である。
【0035】
以下、本発明の各新規化合物及び比較例としてのリナカンチンCの分画・単離例、抗腫瘍作用の試験例及び実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。
【0036】
1.本発明の各新規化合物及び比較例としてのリナカンチンCの分画・単離例
1−1.新規化合物A
(1)新規化合物Aの分画・単離
新規化合物Aの分画・単離は、図1に示すフローに従って行った。すなわち、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)乾燥根(5 Kg)を25 Lの90%(v/v) エタノールを用いて室温にて計3回各24時間抽出を行い、これらを合わせて濃縮し乾固物(407 g)を得た。次に、これを7 Lの90%(v/v) メタノールへ懸濁溶解後、等量のヘキサンで3回分配後、90%(v/v) メタノール相をとり減圧濃縮した。この減圧濃縮物に精製水を加え5 Lへフィルアップ、分液漏斗に移しクロロホルムにて3回2相溶媒分配を行った。次に、この操作により得たクロロホルム相を合わせ乾固物69.3 gを得た。
【0037】
このうち69.0 gをヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)に付した。すなわち、3ベッドボリューム (BV)の溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)、及び2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(7:3)によりシリカゲルカラムを順次洗浄後、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(6:4)により溶出し画分C(乾固物3.73 g)を得た。
【0038】
次に、画分Cについてメタノールを溶出溶媒とするセファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 200 mm、ファルマシア社製)を行った。すなわち、2 BVのメタノールでカラムを洗浄後、1 BVのメタノールにて溶出し画分F (乾固物 369 mg)を得た。
さらに、画分F(乾固物 369 mg)を水/メタノールを溶出溶媒とするフラッシュODSカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 150 mm、野村化学社製)に付した。すなわち、180 mlの50%(v/v) メタノールにてフラッシュODSカラムを洗浄後、ステップワイズにて順次60%(v/v) メタノール、70%(v/v) メタノールにて洗浄後、80%(v/v) メタノールにて溶出し、目的新規化合物Aを含有する画分G(乾固物 75.6 mg)を得た。
さらに画分G(乾固物 75.6 mg)を分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相:45%(v/v) アセトニトリル、検出: 254 nm UVモニター)にて精製し、新規化合物A(乾固物 9.8 mg)を得た。
【0039】
なお、上記において、高速液体クロマトグラフィーは、Waters 515システム及びWaters 600システム(ともに日本ウォーターズ株式会社製)を用いた。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、セファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー及びフラッシュODSクロマトグラフィーは、汎用の実験器具及び実験装置を用いた。
【0040】
(2)新規化合物Aの構造解析
新規化合物Aの構造解析は、高分解能質量分析法(HRFABMS)及び核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR、13C NMR)を用いて行った。以下にその結果を示す。
【0041】
(2−1)高分解能質量分析法(HRFABMS)による結果
高分解能質量分析法(HRFABMS)においては、「m/z 272.1039 [M]+ (calcd. 272.1049 Δ 0.9 mmu).」が観測され、分子式が「C16H16O4」であることが分かった。なお、低分解能質量分析法(LRFABMS)においては、「m/z 272.」が観測された。
【0042】
(2−2)核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)による結果
核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)においては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 3.69 (H-14, J = 11.2 Hz, 1H, d)、3.75 (H-14, J = 11.2 Hz, 1H, d)、3.95 (8-OMe, 3H, s)、4.22 (H-2, J = 11.7 Hz, 1H, d)、4.31 (H-2, J = 11.7 Hz, 1H, d)、5.93 (H-4, J = 11.7 Hz, 1H, d)、6.43 (H-5, J = 11.7 Hz, 1H, d)、6.51(H-7, 1H, s)、7.47 (H-10, J = 1.5, 6.7, 7.5 Hz, 1H, m)、7.50 (H-11, J = 1.5, 6.7, 7.5 Hz, 1H, m)、8.14 (H-9, J = 1.5, 7.5 Hz, 1H, d)、8.24 (H-12, J = 1.5, 7.5 Hz, 1H, d).」
【0043】
(2−3)核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)による結果
核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)においては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 55.7 (8-OMe)、65.9 (C-14)、74.4 (C-2)、74.9 (C-3)、106.8 (C-7)、119.1 (C-6)、121.6 (C-9)、122.7 (C-12)、126.0 (C-12a)、126.3 (C-10)、126.7 (C-11)、127.6 (C-8a)、130.1 (C-5)、132.1 (C-4)、148.9 (C-13)、150.6 (C-8).」
【0044】
なお、上記において、高分解能質量分析装置としては、JEOL JMS SX-102型質量分析装置(日本電子株式会社製)を用いた。また、核磁気共鳴スペクトル装置(1H NMR及び13C NMR)としては、JEOL JNM-GSX500型核磁気共鳴スペクトル装置(日本電子株式会社製)を用いた。
【0045】
以上の結果並びにHMQCスペクトル及びHMBCスペクトルから、新規化合物Aが、上記の式(1)で表される新規化合物であることが分かった。
【0046】
1−2.新規化合物B,C
(1)新規化合物B,Cの分画・単離
新規化合物B,Cの分画・単離は、図1に示すフローに従って行った。すなわち、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)乾燥根(5 Kg)を25 Lの90%(v/v) エタノールを用いて室温にて計3回各24時間抽出を行い、これらを合わせて濃縮し乾固物(407 g)を得た。次に、これを7 Lの90%(v/v) メタノールへ懸濁溶解後、等量のヘキサンで3回分配後、90%(v/v) メタノール相をとり減圧濃縮した。この減圧濃縮物に精製水を加え5 Lへフィルアップ、分液漏斗に移しクロロホルムにて3回2相溶媒分配を行った。次に、この操作により得たクロロホルム相を合わせ乾固物69.3 gを得た。
【0047】
このうち69.0 gをヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)に付した。すなわち、3 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)によりシリカゲルカラムを洗浄後、1 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)により溶出し画分A(乾固物 4.71 g)を得た。
【0048】
次に、画分Aについてメタノールを溶出溶媒とするセファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 200 mm、ファルマシア社製)に付した。すなわち、1.5 BVのメタノールにてセファデックスLH-20カラムを洗浄後、0.5 BVのメタノールにて溶出し画分A−2(1.34 g)を得た。
さらに、画分A−2を水/メタノールを溶出溶媒とするフラッシュODSカラムクロマトグラフィー(20 mm φ × 150 mm、和光純薬社製)により分画した。すなわち、180 mlの50%(v/v) メタノールにてフラッシュODSカラムを洗浄後、ステップワイズにて順次60%(v/v) メタノール、70%(v/v) メタノールにて洗浄後、80%(v/v) メタノールにて溶出し、目的新規化合物B,Cを含有する画分A−2−1(乾固物261 mg)を得た。
画分A−2−1は、さらにヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)にて分画した。すなわち、3 BVのヘキサン/酢酸エチル(9:1)溶出溶媒でシリカゲルカラムを洗浄後、1 BVのヘキサン/酢酸エチル(8:2)溶出溶媒により溶出し、画分D(乾固物 92.4 mg)を得た。
【0049】
さらに、画分D(乾固物 92.4 mg)を分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相: 58%(v/v) アセトニトリル/水/0.1%(v/v) 蟻酸、検出: 254 nm UVモニター)にて精製し、新規化合物B(乾固物4.6 mg)及び新規化合物C(乾固物8.0 mg)を得た。
【0050】
(2)新規化合物B,Cの構造解析
新規化合物B,Cの構造解析は、高分解能質量分析法(HRFABMS)及び核磁気共鳴スペクトル法(1H-NMR、13C-NNMR)を用いて行った。以下にその結果を示す。
【0051】
(2−1)高分解能質量分析法(HRFABMS)による結果
(2−1−1)新規化合物B
新規化合物Bについては、「m/z 256.1099 [M]+ (calcd. 256.1010 Δ 0 mmu).」が観測され、分子式が「C16H16O3」であることが分かった。なお、LRFABMSにおいては、「m/z 256.」が観測され、LREIMSにおいては、「m/z 256.」が観測された。
(2−1−2)新規化合物C
新規化合物Cについては、「m/z 270.1266[M]+ (calcd. 270.1256 Δ 1.0 mmu).」が観測され、分子式が「C17H18O3」であることが分かった。なお、LRFABMSにおいては、「m/z 270.」が観測された。
【0052】
(2−2)核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)による結果
(2−2−1)新規化合物B
新規化合物Bについては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 1.31 (H-14, 3H, s)、3.89 (H-2, J = 11.7 Hz, 1H, d)、3.90 (8-OMe, 3H, s)、4.29 (H-2, J = 2.0, 11.7 Hz, 1H, d)、5.97 (H-4, J = 2.0, 11.7 Hz, 1H, dd)、6.26 (H-5, J = 11.7 Hz, 1H, d)、6.48 (H-7, 1H, s)、7.42 (H-10, J = 6.3, 7.8 Hz, 1H, m)、7.46 (H-11, J = 6.3, 7.8 Hz, 1H, m)、8.10 (H-9, J = 7.8 Hz, 1H, d)、8.20 (H-12, J = 7.8 Hz, 1H, d).」
(2−2−2)新規化合物C
新規化合物Cについては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 1.32 (H-14, 3H, s)、3.38 (3-OMe, 3H, s)、3.91 (8-OMe, 3H, s)、4.08 (H-2, J = 11.7 Hz, 1H, d)、4.33 (H-2, J = 11.7 Hz, 1H, d)、5.90 (H-4, J = 11.7 Hz, 1H, d)、6.42 (H-5, J = 11.7 Hz, 1H, d)、6.50 (H-7, 1H, s)、7.40 (H-10, 1H, m)、7.44 (H-11, 1H, m)、8.08 (H-9, J = 7.8 Hz, 1H, d)、8.20 (H-12, J = 7.8 Hz, 1H, d).」
【0053】
(2−3)核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)による結果
(2−3−1)新規化合物B
新規化合物Bについては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 23.9 (C-14)、55.7 (8-OMe)、72.9 (C-3)、79.5 (C-2)、106.55 (C-7)、119.9 (C-6)、121.7 (C-9)、122.6 (C-12)、125.8 (C-12a)、126.2 (C-10)、126.6 (C-11)、127.2 (C-5)、127.6 (C-8a)、136.8 (C-4)、149.2 (C-13)、150.8 (C-8).」
(2−3−2)新規化合物C
新規化合物Cについては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 24.3 (C-14)、52.1 (3-OMe)、55.7 (8-OMe)、77.3 (C-3)、77.5 (C-2)、106.9 (C-7)、119.5 (C-6)、121.6(C-9)、122.8 (C-12)、126.1 (C-12a)、126.5 (C-10)、127.2 (C-11)、127.7 (C-8a)、129.2 (C-5)、134.8 (C-4)、148.9 (C-13)、150.5 (C-8).」
【0054】
(2−4)新規化合物Bの七員環3位不斉炭素の立体配置の決定:
新規化合物B(5.0 mg、20 μmol)のテトラヒドロフラン溶液(500 μL)に、−78℃、窒素雰囲気下、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6 M、20 μL)を加えた。15分間撹拌後、−78℃、窒素雰囲気下、塩化ベンゾイル(10 mg、71 μmol)を反応液に加え撹拌した。15分後、反応液を室温まで昇温し、さらに30分間撹拌した。次に、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、水溶液と等量の酢酸エチルで3回抽出後、酢酸エチル相をまとめ、得られた酢酸エチル相に硫酸マグネシウムを加え脱水した。さらに、酢酸エチル溶媒を減圧下留去し、得られた乾固物をヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10 mmΦ × 80 mm、関東化学株式会社製)に付し分画した。すなわち、あらかじめヘキサン/酢酸エチル(9:1)で平衡化したシリカゲルカラムに、先に得た酢酸エチル相乾固物をアプライし、10 mLのヘキサン/酢酸エチル(9:1)にてシリカゲルカラムを洗浄後、3 BV(=18.8mL)の溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)により溶出し、ベンゾイル化された新規化合物B(2.6 mg)を得た。ベンゾイル化された新規化合物Bは、1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル、二次元NMRスペクトル(COSY、HMQC、HMBC)により確認した。
【0055】
ベンゾイル化された新規化合物Bの七員環3位の立体配置をCD(円二色性)励起子キラリティー法により解析した。すなわち、CD分光計としてはJASCO J-820型円二色性分散計(日本分光株式会社製)を用い、ベンゾイル化された新規化合物Bをメタノールへ溶解し測定、コットン効果の測定により解析した。
図2は、新規化合物Bの七員環3位の立体配置をCD(円二色性)励起子キラリティー法により解析した結果を示す図である。図2からも分かるように、CDスペクトルにおいては、266 nmで負のコットン効果、230 nmで正のコットン効果が認められた。よって、ベンゾイル化された新規化合物Bの励起子キラリティーは反時計回り(負のキラリティー)であり、七員環3位の不斉炭素の立体配置はSであると決定した。
【0056】
以上の結果並びにHMQCスペクトル及びHMBCスペクトルから、新規化合物Bが、上記の式(2)で表される新規化合物であり、新規化合物Cが、上記の式(3)で表される新規化合物であることが分かった。
【0057】
また、上記(2−4)に記載の新規化合物Bの七員環3位不斉炭素の立体配置の決定から、新規化合物Bが、以下の式(2a)で表される新規化合物であることも分かった。
【化8】

【0058】
なお、上記(2−4)において、新規化合物Bのベンゾイル化反応は、以下の反応式による。
【化9】

【0059】
1−3.新規化合物D,E
(1)新規化合物D,Eの分画・単離
新規化合物D,Eの分画・単離は、図1に示すフローに従って行った。すなわち、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)乾燥根(5 Kg)を25 Lの90%(v/v) エタノールを用いて室温にて計3回各24時間抽出を行い、これらを合わせて濃縮し乾固物(407 g)を得た。次に、これを7 Lの90%(v/v) メタノールへ懸濁溶解後、等量のヘキサンで3回分配後、90%(v/v) メタノール相をとり減圧濃縮した。この減圧濃縮物に精製水を加え5 Lへフィルアップ、分液漏斗に移しクロロホルムにて3回2相溶媒分配を行った。次に、この操作により得たクロロホルム相を合わせ乾固物69.3 gを得た。
【0060】
このうち69.0 gをヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)に付した。すなわち、3 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)、及び2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)によりカラムを順次洗浄後、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(7:3)により溶出し画分B(乾固物5.66 g)を得た。
【0061】
次に、画分Bについて、メタノールを溶出溶媒としてセファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 200 mm、ファルマシア社製)を行った。すなわち、2.5 BVのメタノールでカラムを洗浄後、1 BVのメタノールにて溶出し画分B−2(乾固物480 mg)を得た。
さらに、画分B−2(乾固物 480 mg)を水/メタノールを溶出溶媒とするフラッシュODSカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 150 mm、野村化学社製)に付した。すなわち、180 mlの50%(v/v) メタノールにてフラッシュODSカラムを洗浄後、ステップワイズにて順次60%(v/v) メタノール、70%(v/v) メタノール、80%(v/v) メタノールにて洗浄後、90%(v/v) メタノールにて溶出し、目的新規化合物D,Eを含有する画分X(乾固物 143 mg)を得た。
【0062】
さらに、画分X(乾固物 143 mg)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)にて分画した。すなわち、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)にてシリカゲルカラムを洗浄後、1 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(7:3)にて溶出、画分B−2−1(乾固物 32.3 mg)と画分B−2−2(乾固物 18.8 mg)を得た。
画分B−2−1(乾固物 32.3 mg)からは、分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相:58%(v/v) アセトニトリル、検出:280 nm UVモニター)にて精製を行い、新規化合物D(乾固物 5.0 mg)を得た。
画分B−2−2(乾固物 18.8 mg)からは、分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相: 70%(v/v) メタノール、検出: 280 nm UVモニター)、さらに分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相: 55%(v/v) アセトニトリル、検出: 254 nm UVモニター)にて精製を行い、新規化合物E(乾固物 1.6 mg)を得た。
【0063】
(2)新規化合物D,Eの構造解析
新規化合物D,Eの構造解析は、高分解能質量分析法(HRFABMS)及び核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR、13C NMR)を用いて行った。以下にその結果を示す。
【0064】
(2−1)高分解能質量分析法(HRFABMS)による結果
(2−1−1)新規化合物D
新規化合物Dについては、「m/z 397.1651 [M+H]+ (calcd. 397.1651 Δ 0.0 mmu).」が観測され、分子式が「C23H24O6」であることが分かった。
(2−1−2)新規化合物E
新規化合物Eについては、「m/z 441.1919 [M+H]+ (calcd. 441.1913 Δ 0.5 mmu).」が観測され、分子式が「C25H28O7」であることが分かった。
【0065】
(2−2)核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)による結果
(2−2−1)新規化合物D
新規化合物Dにおいては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 0.98 (H-12 and H-13, 6H, s)、1.98 (H-8’, 3H, s)、2.24 (H-7’, 3H, s)、2.65 (H-9, 2H, s)、3.90 (H-11, 2H, s)、6.21 (H-5’, 1H, d)、7.08 (H-3’, 1H, d)、7.25(H-4’, 1H, dd)、7.60 (H-7, 1H, t)、7.67 (H-6, 1H, t)、7.99 (H-8, 1H, d)、8.03 (H-5, 1H, d).」
(2−2−2)新規化合物E
新規化合物Eにおいては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 1.01 (H-12 and H-13, 6H, s)、1.48 (H-10’, 3H, s)、1.90 (H-9’, 3H, s)、2.26 (H-8’, 3H, s)、2.70 (H-9, 2H, s)、3.91 (H-11, 2H, s)、6.02 (H-5’, 1H, d)、6.67 (H-4’, 1H, dd)、7.09 (H-3’, 1H, d)、7.66 (H-7, 1H, t)、7.73 (H-6, 1H, t)、8.04 (H-8, 1H, d)、8.08 (H-5, 1H, d).」
【0066】
(2−3)核磁気共鳴スペクトル法(13C-NMR)による結果
(2−3−1)新規化合物D
新規化合物Dにおいては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 13.4 (C-8’)、25.3 (C-12 and C-13)、28.1 (C-7’)、32.2 (C-9)、37.0 (C-10)、73.4 (C-11)、121.6 (C-3)、126.1 (C-8)、127.0 (C-5)、129.3 (C-8a)、132.9 (C-4a)、132.9 (C-7)、134.8 (C-5’)、134.9 (C-3’)、135.0 (C-6)、136.2 (C-2’)、136.4 (C-4’)、154.4 (C-2)、167.3 (C-1’)、181.3 (C-1)、184.8 (C-4)、198.0 (C-6’).」
(2−3−2)新規化合物E
新規化合物Eにおいては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 12.8 (C-9’)、22.6 (C-8’)、25.2 (C-12 and C-13)、25.3 (C-10’)、32.1 (C-9)、37.2 (C-10)、73.0 (C-11)、79.4 (C-6’)、121.4 (C-3)、126.1 (C-8)、126.4 (C-4’)、127.0 (C-5)、129.1 (C-8a)、132.9 (C-7)、133.3 (C-4a)、134.9 (C-6)、136.3 (C-3’)、136.5 (C-2’)、139.8 (C-5’)、153.4 (C-2)、167.7 (C-1’)、181.6 (C-1)、184.2 (C-4)、207.3 (C-7’).」
【0067】
以上の結果並びにHMQCスペクトル及びHMBCスペクトルから、新規化合物Dが、上記の式(4)で表される新規化合物であり、新規化合物Eが、上記の式(5)で表される新規化合物であることが分かった。
【0068】
1−4.新規化合物F
(1)新規化合物Fの分画・単離
新規化合物Fの分画・単離は、図1に示すフローに従って行った。すなわち、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)乾燥根(5 Kg)を25 Lの90%(v/v) エタノールを用いて室温にて計3回各24時間抽出を行い、これらを合わせて濃縮し乾固物(407 g)を得た。次に、これを7 Lの90%(v/v) メタノールへ懸濁溶解後、等量のヘキサンで3回分配後、90%(v/v) メタノール相をとり減圧濃縮した。この減圧濃縮物に精製水を加え5 Lへフィルアップ、分液漏斗に移しクロロホルムにて3回2相溶媒分配を行った。次に、この操作により得たクロロホルム相を合わせ乾固物69.3 gを得た。
【0069】
このうち69.0 gをヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)に付した。すなわち、3 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)、及び2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)によりカラムを順次洗浄後、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(7:3)により溶出し画分B(乾固物5.66 g)を得た。
【0070】
次に、画分B(乾固物 2.8 g)について、メタノールを溶出溶媒としてセファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 200 mm、ファルマシア社製)を行った。すなわち、1.5 BVのメタノールでカラムを洗浄後、0.5 BVのメタノールにて溶出し画分B−1(乾固物1.16 g)を得た。
さらに、画分B−1(乾固物 1.1 g)を水/メタノールを溶出溶媒とするフラッシュODSカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 100 mm、野村化学社製)に付した。すなわち、180 mlの50%(v/v) メタノールにてフラッシュODSカラムを洗浄後、ステップワイズにて順次60%(v/v) メタノール、70%(v/v) メタノールにて洗浄後、80%(v/v) メタノールにて溶出し、目的新規化合物Fを含有する画分B−1−2(乾固物429 mg)を得た。
次に、画分B−1−2(乾固物 429 mg)をヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)にて分画した。すなわち、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)にてシリカゲルカラムを洗浄後、1 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(7:3)にて溶出、画分B−1−2−2(乾固物 32.9 mg)を得た。
画分B−1−2−2(乾固物 32.9 mg)を分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相: 55%(v/v) アセトニトリル、検出:280 nm UVモニター)により精製し、さらに分取高速液体クロマトグラフィー(C−30カラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相: 55%(v/v) アセトニトリル、検出: 254 nm UVモニター)により精製を行うことで新規化合物F(乾固物 10.3 mg)を得た。
【0071】
(2)新規化合物Fの構造解析
新規化合物Fの構造解析は、高分解能質量分析法(HRFABMS)及び核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR、13C NMR)を用いて行った。以下にその結果を示す。
【0072】
(2−1)高分解能質量分析法(HRFABMS)による結果
高分解能質量分析法(HRFABMS)においては、「m/z 459.2379 [M+H]+ (calcd. 459.2383 Δ 0.4 mmu).」が観測され、分子式が「C26H34O7」であることが分かった。
【0073】
(2−2)核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)による結果
核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)においては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 1.00 (H-12 and H-13, 6H, s)、1.08 (H-10’, 3H, s)、1.13 (H-8’, 3H, d)、1.46 (H-5’, 1H, m)、1.66 (H-5’, 1H, m)、1.79 (H-9’, 3H, s)、2.08 (H-4’, 1H, m)、2.23 (H-4’, 1H, m)、2.69 (H-9, 2H, s)、3.20 (6’-OMe, 3H, s)、3.80 (H-7’, 1H, q)、3.89 (H-11, 2H, s)、6.70 (H-3’, 1H, t)、7.66 (H-7, 1H, t)、7.73 (H-6, 1H, t)、8.06 (H-8, 1H, d)、8.09 (H-5, 1H, d).」
【0074】
(2−3)核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)による結果
核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)においては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 12.3 (C-9’)、17.0 (C-8’)、18.6 (C-10’)、22.7 (C-4’)、25.2 (C-12)、25.2 (C-13)、31.9 (C-5’)、32.2 (C-9)、37.0 (C-10)、49.1 (6’-OMe)、70.6 (C-7’)、72.8 (C-11)、78.4 (C-6’)、121.8 (C-3)、126.1 (C-8)、127.0 (C-5)、127.7 (C-2’)、129.4 (C-8a)、132.9 (C-7)、133.0 (C-4a)、134.9 (C-6)、142.4 (C-3’)、154.2 (C-2)、168.1 (C-1’)、181.2 (C-1)、184.8 (C-4).」
【0075】
以上の結果並びにHMQCスペクトル及びHMBCスペクトルから、新規化合物Fが、上記の式(6)で表される新規化合物であることが分かった。
【0076】
1−5.新規化合物G
(1)新規化合物Gの分画・単離
新規化合物Gの分画・単離は、図1に示すフローに従って行った。すなわち、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)乾燥根(5 Kg)を25 Lの90%(v/v) エタノールを用いて室温にて計3回各24時間抽出を行い、これらを合わせて濃縮し乾固物(407 g)を得た。次に、これを7 Lの90%(v/v) メタノールへ懸濁溶解後、等量のヘキサンで3回分配後、90%(v/v) メタノール相をとり減圧濃縮した。この減圧濃縮物に精製水を加え5 Lへフィルアップ、分液漏斗に移しクロロホルムにて3回2相溶媒分配を行った。次に、この操作により得たクロロホルム相を合わせ乾固物69.3 gを得た。
【0077】
このうち69.0 gをヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)に付した。すなわち、3 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)、及び2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)によりカラムを順次洗浄後、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(7:3)により溶出し画分B(乾固物5.66 g)を得た。
【0078】
次に、画分B(乾固物 2.8 g)についてメタノールを溶出溶媒とするセファデックスLH-20カラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 200 mm、ファルマシア社製)を行った。すなわち、1.5 BVのメタノールでカラムを洗浄後、0.5 BVのメタノールにて溶出し画分B−1(乾固物1.16 g)を得た。
さらに、画分B−1(乾固物 1.16 g)を水/メタノールを溶出溶媒とするフラッシュODSカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 100 mm、野村化学社製)に付した。すなわち、180 mlの50%(v/v) メタノールにてフラッシュODSカラムを洗浄後、ステップワイズにて順次60%(v/v) メタノール、70%(v/v) メタノールにて洗浄後、80%(v/v) メタノールにて溶出し、目的新規化合物Gを含有する画分B−1−1(乾固物319 mg)を得た。
さらに、画分B−1−1(乾固物 319 mg)を、ヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)にて分画した。すなわち、2 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)によりシリカゲルカラムを洗浄した後、1 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(8:2)による溶出画分E(乾固物 114 mg)を得た。
さらに、画分E(乾固物 114 mg)を、分取高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、20 mmφ × 250 mm、野村化学社製、移動相: 68%(v/v) メタノール、検出: 254 nm UVモニター)にて精製し、新規化合物G(乾固物3.6 mg)を得た。
【0079】
(2)新規化合物Gの構造解析
新規化合物Gの構造解析は、高分解能質量分析法(HRFABMS)及び核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR、13C-NNMR)を用いて行った。以下にその結果を示す。
【0080】
(2−1)高分解能質量分析法(HRFABMS)による結果
高分解能質量分析法(HRFABMS)においては、「m/z 399.1813 [M+H]+ (calcd. 399.1808 Δ 0.5 mmu).」が観測され、分子式が「C23H26O6」であることが分かった。
【0081】
(2−2)核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)による結果
核磁気共鳴スペクトル法(1H NMR)においては、以下のピークが観測された。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 0.99 (H-12 and H-13, 6H, s)、1.80 (H-8’, 3H, s)、2.13 (H-7’, 3H, s)、2.34 (H-4’, 2H, dd)、2.50 (H-5’, 2H, t)、2.68 (H-9, 2H, s)、3.89 (H-11, 2H, s)、6.62 (H-3’, 1H, t)、7.67 (H-7, 1H, t)、7.74 (H-6, 1H, t)、8.07 (H-8, 1H, d)、8.09 (H-5, 1H, d).」
【0082】
(2−3)核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)による結果
核磁気共鳴スペクトル法(13C NMR)においては、以下のピークが観測された。
「13C NMR (CDCl3, 125 MHz):δ 12.3 (C-8’)、22.7 (C-4’)、25.2 (C-12 and C-13)、29.9 (C-7’)、32.1 (C-9)、37.0 (C-10)、42.1 (C-5’)、72.9 (C-11)、121.8 (C-3)、126.1 (C-8)、127.0 (C-5)、128.9 (C-2’)、129.4 (C-8a)、132.9 (C-4a)、133.0 (C-7)、135.0 (C-6)、140.0 (C-3’)、154.3 (C-2)、167.9 (C-1’)、181.3 (C-1)、184.8 (C-4)、207.3 (C-6’).」
【0083】
以上の結果並びにHMQCスペクトル及びHMBCスペクトルから、新規化合物Gが、上記の式(7)で表される新規化合物であることが分かった。
【0084】
1−6.リナカンチンC(比較例)
(1)リナカンチンCの分画・単離
リナカンチンCの分画・単離は、図1に示すフローに従って行った。すなわち、白鶴霊芝(Rhinacanthus nasutus (L.) Kurz)乾燥根(5 Kg)を25 Lの90%(v/v) エタノールを用いて室温にて計3回各24時間抽出を行い、これらを合わせて濃縮し乾固物(407 g)を得た。次に、これを7 Lの90%(v/v) メタノールへ懸濁溶解後、等量のヘキサンで3回分配後、90%(v/v) メタノール相をとり減圧濃縮した。この減圧濃縮物に精製水を加え5 Lへフィルアップ、分液漏斗に移しクロロホルムにて3回2相溶媒分配を行った。次に、この操作により得たクロロホルム相を合わせ乾固物69.3 gを得た。
【0085】
このうち69.0 gをヘキサン/酢酸エチルを溶出溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(80 mmφ × 150 mm、関東化学株式会社製)に付した。すなわち、3 BVの溶出溶媒ヘキサン/酢酸エチル(9:1)により溶出した画分より、以下の式(8)で表されるリナカンチンC(乾固物5.66 g)を得た。
【化10】

【0086】
なお、上記方法により分画・単離されたリナカンチンCについて、核磁気共鳴スペクトル法により1H NMRスペクトルデータ(CDCl3)を取得したところ、以下のピークが観測され、文献(Biol. Pharm. Bull. Vol.27, 1070-1074(2004))の値と一致した。
「1H NMR (CDCl3, 500 MHz):δ 0.99 (H-12 and H-13,6H,s)、1.52 (H-8’,2H, d)、1.55 (H-10’,2H,s)、1.76 (H-9’,2H,s)、1.98 (H-5’,2H,t)、2.13 (H-4’,2H,dd)、2.67 (H-9,2H,s)、3.88 (H-11,2H,s)、5.17 (H-7’,1H,dd)、6.66 (H-3’,1H, t)、7.64 (H-7,1H,t)、7.71 (H-6,1H, t)、8.04 (H-8,1H,d)、8.07 (H-5,1H,d).」
【0087】
2.抗腫瘍作用の試験例
抗腫瘍作用の試験は、ヒト由来メラノーマ細胞株HMV−IIに対する増殖抑制活性の測定をすることにより行った。
【0088】
ヒト由来メラノーマ細胞株HMV−IIを10%(v/v)牛胎児血清含有ハムF12培地を用い、1×104 cells/90μlの細胞濃度で96穴培養プレート(NUNC)に播種し、37℃、5%炭酸ガス存在下、24時間培養を行った。培養24時間後に、本発明の新規化合物A、新規化合物B、新規化合物D、新規化合物F又は新規化合物G(DMSOへ溶解、培地中の最終DMSO濃度 = 0.1%(v/v); なお、DMSOのみを1/1000体積量加えた培地で培養したものを対照群とした)を加え、さらに、37℃、5%炭酸ガス存在下、24時間培養した。細胞増殖度の測定は、MTT[3-(4,5-Dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide、ナカライテスク]を用いた方法で行った[株式会社東京化学同人発行、新生化学実験講座12 分子免疫学I 免疫細胞・サイトカイン 358-359ページ参照。]。
【0089】
すなわち、上記した各新規化合物を加え24時間培養後、96穴培養プレート(0.33 cm2/ウェル)の各ウェルの培養液90 μlに対し10 μlのMTT溶液[5 mg/ml; カルシウム・マグネシウムフリーPBS(Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline)溶液へ溶解後、メンブランフィルター(0.22 μm)でろ過したもの]を加え、振盪して均一にし、37℃、5%炭酸ガス存在下で4時間培養した。培養4時間後に各々のウェルに10%(w/v) SDS−50%(v/v) N , N-Dimethylformamide−0.005N 塩酸溶液100 μl を加え、18時間、37℃、5%炭酸ガス存在下静置した後、イムノリーダー(大日本製薬株式会社製)を用いて、750 nmを対照とし、590 nmにおける吸光度を測定、細胞増殖度の指標とした。
【0090】
各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物D、新規化合物F又は新規化合物G)のメラノーマ細胞株HMV−II対する細胞増殖抑制活性を第1表に示す。
【0091】
[表1]
ヒト由来メラノーマ細胞株(HMV−II)に対する増殖抑制活性
濃度(μg/ml) 増殖率(%)
無添加(対照例) 100
新規化合物A 10 85
新規化合物B 10 74
新規化合物D 10 84
新規化合物F 10 84
新規化合物G 10 81
リナカンチンC(比較例) 10 86
【0092】
表1に示すように、各新規化合物(新規化合物A、新規化合物B、新規化合物D、新規化合物F又は新規化合物G)は、優れた抗腫瘍作用を有するリナカンチンCと同等の「ヒト由来メラノーマ細胞株(HMV−II)に対する優れた増殖抑制活性」を有することが確認できた。
【実施例】
【0093】
実施例1.錠剤の作製
上記の「1−1.新規化合物A (1)新規化合物Aの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Aを用いて、次の処方で錠剤(1錠あたり500mg)を作製する。

新規化合物A 1mg
乳糖 479mg
乾燥コーンスターチ 10mg
タルク 9mg
ステアリン酸カルシウム 1mg
【0094】
(調製法)
乳糖(95.8g)に、新規化合物A(0.2g)、乾燥コーンスターチ(2g)、タルク(1.8g)、ステアリン酸カルシウム(0.2g)を添加して混合する。次いで、単発式打錠機を用いて常法により錠剤を作製する。
【0095】
実施例2.ハードカプセル剤の作製
上記の「1−2.新規化合物B,C (1)新規化合物B,Cの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Bを用いて、次の処方でハードカプセル剤(1カプセルあたり360mg)を作製する。

新規化合物B 5mg
乳糖 220mg
コーンスターチ 110mg
ヒドロキシプロピルセルロース 25mg
【0096】
(調製法)
新規化合物B(5g)に、乳糖(220g)及びコーンスターチ(110g)を添加して混合し、これにヒドロキシプロピルセルロース(25g)の水溶液を添加して練合する。次いで、押し出し造粒機を用いて常法により顆粒を作製する。この顆粒をゼラチンハードカプセルに充填することによりハードカプセル剤を作製する。
【0097】
実施例3.ソフトカプセル剤の作製
上記の「1−2.新規化合物B,C (1)新規化合物B,Cの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Cを用いて、次の処方でソフトカプセル剤(1カプセルあたり170mg)を作製する。

新規化合物C 0.5mg
大豆油 169.5mg
【0098】
(調製法)
大豆油(169.5g)に、新規化合物C(0.5g)を添加して混合する。次いで、ロータリー・ダイズ式自動成型機を用いて常法に従いソフトカプセルに充填することにより、ソフトカプセル剤を作製する。
【0099】
実施例4.丸剤の作製
上記の「1−3.新規化合物D,E (1)新規化合物D,Eの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Dを用いて、次の処方で丸剤(1粒あたり100mg)を作製する。

新規化合物D 0.5mg
モロヘイヤ末 20.0mg
デンプン 30.0mg
糖蜜 20.0mg
茶抽出物 15.0mg
大豆ファイバー 14.0mg
セラック 0.5mg
【0100】
(調製法)
上記配合で原料を混合し、適量加水後、練合機で均質な練合物を製造し、得られた練合物を圧延し製丸機を用いて製丸後乾燥して丸剤を作製する。
【0101】
実施例5.丸剤の作製
上記の「1−3.新規化合物D,E (1)新規化合物D,Eの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Eを用いて、次の処方で丸剤(1粒あたり100mg)を作製する。

新規化合物E 0.5mg
モロヘイヤ末 20.0mg
デンプン 30.0mg
糖蜜 20.0mg
茶抽出物 15.0mg
大豆ファイバー 14.0mg
セラック 0.5mg
【0102】
(調製法)
上記配合で原料を混合し、適量加水後、練合機で均質な練合物を作製し、得られた練合物を圧延し製丸機を用いて製丸後乾燥することにより、丸剤を作製する。
【0103】
実施例6.軟膏の作製
上記の「1−4.新規化合物F (1)新規化合物Fの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Fを用いて、次の処方で軟膏を作製する。

(油相成分)
新規化合物F 0.1g
白色ワセリン 20.0g
ミネラルオイル 20.0g
ステアリルアルコール 5.0g
ステアレス−2 3.0g
プロピルパラベン 0.1g
天然ビタミンE 0.1g
(水相成分)
1,3−ブチレングリコール 5.0g
フェノキシエタノール 0.4g
ポリソルベート 60 4.5g
精製水 適量
全量 100g
【0104】
(調製法)
油相成分及び水相成分をそれぞれ80℃に熱して均一にし、水相を油相に攪拌しながら加え乳化後冷却することにより、軟膏を作製する。
【0105】
実施例7.ローションの作製
上記の「1−5.新規化合物G (1)新規化合物Gの分画・単離」に記載した方法に従って分画・単離された新規化合物Gを用いて、次の処方でローションを作製する。

(油相成分)
新規化合物G 0.1g
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 2.0g
1,3−ブチレングリコール 5.0g
(水相成分)
グリセリン 5.0g
フェノキシエタノール 0.3g
クエン酸 0.1g
クエン酸ナトリウム 0.2g
エタノール 8.0g
精製水 適量
全量 100g
【0106】
(調製法)
油相成分及び水相成分をそれぞれ均一に溶解し、油相を水相に攪拌しながら加えることにより、ローションを作製する。
【0107】
以上、本発明の新規化合物、抗腫瘍剤及び抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料
を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される新規化合物。
【化1】

【請求項2】
下記の式(2)で表される新規化合物。
【化2】

【請求項3】
下記の式(3)で表される新規化合物。
【化3】

【請求項4】
下記の式(4)で表される新規化合物。
【化4】

【請求項5】
下記の式(5)で表される新規化合物。
【化5】

【請求項6】
下記の式(6)で表される新規化合物。
【化6】

【請求項7】
下記の式(7)で表される新規化合物。
【化7】

【請求項8】
請求項1に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項9】
請求項2に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項10】
請求項3に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項11】
請求項4に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項12】
請求項5に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項13】
請求項6に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項14】
請求項7に記載の新規化合物を含有する抗腫瘍剤。
【請求項15】
請求項1に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【請求項16】
請求項2に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【請求項17】
請求項3に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【請求項18】
請求項4に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【請求項19】
請求項5に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【請求項20】
請求項6に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。
【請求項21】
請求項7に記載の新規化合物を含有する、抗腫瘍作用を有する医薬品、食品又は化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−190250(P2011−190250A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32672(P2011−32672)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(398050777)株式会社アルソア本社 (10)
【出願人】(509114631)株式会社慧央メディカ (2)
【Fターム(参考)】