説明

新規合成ベースストックの製造方法

この開示は、1種以上のC4〜C24モノマーを含む、液体シンジオタクチックポリαオレフィン、sPAOに関し、前記sPAOは以下:a)13C NMRで測定した場合に5〜50%のrr三連構造含量;b)13C NMRで測定した場合に25〜60%のmr三連構造含量(mr三連構造対mm三連構造の比は少なくとも1.0である);c)Z℃以下の流動点(Z=0.0648X-51.2、式中、X=センチストーク(cSt)で報告される100℃における動粘度);d)100cSt以下(或いは200cSt以下)の100℃における動粘度;e)9未満のmr三連構造対rr三連構造の比(13C NMRで決定した場合);f)8未満のビニリデンオレフィン対1,2-二置換オレフィンの比(1H NMRで決定した場合);g)120以下の粘度指数;及びh)40,000以下のMnを有する。この開示はさらに、特徴a)〜h)のいずれの組合せを有するものをも含めたsPAOの製造方法及び使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、参照によってその開示全体を本明細書に援用する、2009年12月24日に出願された米国仮出願第61/284,833号の優先権を主張する。
(分野)
この開示は、潤滑剤ベースストックとして有用な、好ましくはそれらの重合したままの状態の新規合成ポリαオレフィン液体に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
潤滑油の粘度と温度の関係は、特定用途のための潤滑剤を選択するときに考慮しなければならない重要な基準の1つである。粘度指数(VI)は、単位のない経験的な数であり、所定温度範囲内での油の粘度の変化率を示し、40℃〜100℃(典型的にASTM法D445を利用して)で測定される動粘度に関係がある。温度によって粘度の相対的に大きい変化を示す流体は、低い粘度指数を有すると言われる。例えば、低VI油は、高温で高VI油より速く薄くなるであろう。通常、高VI油は、温度が高いほど高い粘度を有し、結果として接触機械要素の潤滑膜をより良く又は厚くし、またより良い保護につながるので望ましい。別の態様では、油の作動温度が下がるにつれて、高VI油の粘度は低VI油の粘度ほどは増加しない。このことは、低VI油の過剰な高粘度が作動機械の効率を下げるであろうことから有利である。このように高VI(HVI)油は、高温と低温の両作動において性能優位性を有する。VIは、ASTM法D2270に準拠して決定される。
【0003】
ポリαオレフィン(PAO)は、典型的に1-ヘキセン〜1-オクタデセン、さらに典型的には1-オクテン〜1-オクタデセンの範囲の直鎖α-オレフィン(LAO)、最も一般的かつ多くの場合好ましい材料としては1-デセンの触媒オリゴマー化(低分子量生成物への重合)によって製造される炭化水素の分類を構成する。このような流体については、例えば、米国特許第6,824,671号及びそこで参照されている特許に記載されている。
しかしながら、通常のフリーデル・クラフツ触媒によって製造されるポリαオレフィンは、余分な比較的短い分岐、例えばメチル及びエチル等の短い側鎖を、供給オレフィンがこれらの短い分岐を含まない場合でさえ有することを特徴とする。これは、フリーデル・クラフツ触媒が、出発α-オレフィン及びオリゴマー化プロセス中に形成される中間体を部分的に異性化するためであると考えられる。短鎖分岐の存在は、VI及び揮発性を含め、優れた潤滑剤特性にとっては概して望ましくない。
例えば、還元型金属酸化物触媒(例えば、クロム)を用いてα-オレフィンの重合によって調製された高粘度指数ポリα-オレフィン(HVI-PAO)は、例えば、米国特許第4,827,064号;第4,827,073号;第4,990,771号;第5,012,020号;及び第5,264,642号に記載されている。これらのHVI-PAOは、130以上の高い粘度指数、0.19未満の分岐率、300〜45,000の重量平均分子量(Mw)、300〜18,000の数平均分子量(Mn)、1〜5の分子量分布(MWD=Mw/Mn)、及び15℃未満の流動点を有することを特徴とする。炭素数で評価すると、これらの分子は典型的にC30〜C1300の範囲である。
PAO及びHVI-PAOの製造では、供給原料を1種の特定のα-オレフィン、通常1-デセンに限定してよい。1-デセンを十分大量に入手できないときには、少量乃至中程度の量の1-オクテン又は1-ドデセンを追加して量を埋め合わせることもある。供給原料の混合物を使用すると、生成物はランダムなコポリマーよりブロッキーなコポリマーとなる傾向があり、及び/又はプロセスの初めに生成される生成物は、プロセスの最後に生成される生成物と異なり、この不均一なポリマー生成物は、不十分な粘度指数及び不十分な低温特性によって特徴づけられるであろう。このように、従来、PAO及びHVI-PAOは純粋なC10供給原料を用いて製造されてきた。とはいえ、US 7,547,811は、AlCl3型触媒を用いて製造された混合供給原料PAOを開示している。
HVI-PAOを製造するための混合供給原料α-オレフィンの利用の1つの成功例は、WO 2007/011462に開示されている方法であり、この文献は活性化メタロセン触媒上で混合α-オレフィン供給原料を重合させて、潤滑剤成分において又は機能性流体として特に有用な本質的にランダムな液体ポリマーを与える改良された方法を開示している。活性化メタロセン触媒は、例えばMAO又は非配位アニオンによって活性化又は促進された単純メタロセン、置換メタロセン又は架橋メタロセン触媒であってよい。
HVI-PAOの生産者が直面する1つの問題は、臭素数によって定量化できる(ASTM D1159)、重合したままのPAO生成物の炭素鎖の不飽和を減少させるという問題である。PAO流体は、その臭素数が2を超える場合、潤滑剤ベースストックとして満足のいくようには使用できない。より高い臭素数によって示される不飽和は、PAO分子の不十分な高温安定性をもたらし得る。従って、分子中の不飽和レベルを減らすためにこれらの重合したままのPAO生成物を水素化して、それらを潤滑剤ベースストックとしての使用に適するようにするのが一般的である。WO 2007/011462は、1.8未満の臭素数を有するポリαオレフィンを製造するため、オリゴマー化後の水素化を開示している。
しかしながら、触媒生産性を改良するために、低レベルの水素の存在下でオリゴマー化反応を行えることが示唆された(例えば、WO 2007/011462のパラグラフ[0115]参照)。
【0004】
米国特許第6,858,767号は、1-デセンを、アルキルアルミノキサンで活性化された特定タイプのメタロセン触媒と、水素の存在下で接触させることによって液体PAOポリマーを製造する方法を開示している。結果生成物は、低い分子量、低い多分散指数、制御可能な動粘度、低いヨウ素数及び低いガラス転移温度のような独特な組合せの特性を有すると開示されている。結果生成物は粘度調整剤として適すると開示されている。
メタロセン触媒系を用いて種々のPAOを調製するために労力が注がれてきた。例としてはUS 6,706,828(US 2004/0147693に相当)があり、高水素圧下でメソ型の特定メタロセン触媒からPAOが製造される。しかし、US 6,706,828の比較例Dは、水素の存在下で100℃にてrac-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリドをメチルアルモキサン(MAO)と併用してポリデセンを生成し、これは100℃での動粘度(KV100)が116cSt、40℃での動粘度(KV40)が1039cSt、VIが214、ヨウ素数が2.8、Mwが7084、Mnが2906、Mw/Mnが2.4、及びTgが-72.4℃と報告されている。同様に、WO 02/14384は、とりわけ、実施例J及びKにおいて、40℃(1379kPa(200psi)の水素圧又は1モルの水素)で、rac-エチル-ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド又はrac-ジメチルシリル-ビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリドをMAOと併用して、それぞれアイソタクチックなポリデセン(Tgが-73.8℃、KV100が702cSt、及びVIが296であると報告)を生成するか;又はポリデセン(Tgが-66℃、KV100が1624、及びVIが341と報告)を生成することを開示している。さらにWO 99/67347は、実施例1において、50℃でエチリデンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリドをMAOと併用して、11,400のMn及び94%のビニリデン二重結合含量を有するポリデセンを生成することを開示している。
【0005】
他にも何らかの特有の立体規則性を有するポリマー又はオリゴマーを生成するためにあまり知られていない種々のメタロセン触媒を用いて、ポリデセン等の種々のPAOが製造されている。例として、WO 96/23751、EP 0 613 873、US 5,688,887、US 6,043,401、WO 03/020856(US 2003/0055184に相当)、US 5,087,788、US 6,414,090、US 6,414,091、US 4,704,491、US 6,133,209、及びUS 6,713,438が挙げられる。
US 6,548,724(US 2001/0041817及びUS 6,548,723に相当)は、特定のメタロセン触媒を、典型的にはメチルアルモキサンと併用するオリゴマーオイルの製造を開示している。US 6,548,724のカラム20、40〜44行目は、実施例10〜11が、メタロセンのシクロペンタジエニル環上の二置換、三置換又は四置換は改良された収率で高粘度のポリαオレフィン(100℃で20〜5000cStの範囲の粘度)を製造するのに有用であることを示すが、ペンタアルキル置換シクロペンタジエニル環は不良であると報告されている。
WO 2007/011459は、5〜24個の炭素原子を有するモノマーからラセミメタロセン及び非配位アニオン活性化剤を用いてアイソタクチックなポリαオレフィンを製造することを記載している。
WO 2007/011973は、非架橋置換メタロセン触媒、非配位アニオン活性化剤、及び必要に応じて水素の存在下で、低粘度、より高い臭素数のポリαオレフィンを生成する方法を開示している。
WO 2008/010865は、メタロセン触媒、非配位アニオン活性化剤、及び水素の存在下で、高粘度のアタクチックなPAO流体を生成する方法を開示している。
WO 2009/017953は、メソ-メタロセン触媒と非配位アニオン活性化剤の存在下で液体アタクチックポリ-αオレフィンを生成する方法を開示している。
WO 2009/137264及びUS 2009/0281360は、0.5〜5モル%のmm三連構造及び40〜58モル%のrr三連構造を有し、好ましくは37〜59.5モル%のmr三連構造を有するPAO組成物の製造方法を開示している。PAO組成物は、理想的には、13C NMRスペクトルの27.0〜29.0ppmの領域、及び/又は20.0ppmの領域及び/又は42.5ppmの領域に実質的にピークがない。PAO組成物は、好ましくは高度の飽和を有し、かつ理想的には0.2〜5のヨウ素数を有する。PAO組成物は、メタロセン触媒、好ましくは架橋メタロセン、及び水素の存在下で好ましくはオレフィンモノマー、例えば、C8-C12オレフィン、好ましくは1-デセンの重合によって形成される。
興味のある他の参考文献には以下のものがある:US 7,129,197、US 5,177,276、US 5,731,254、US 4,892,851、US 6,706,828、EP0284708、US 5,846,896、US 5,679,812、EP0321852、US 4,962,262、EP0513380、US2004/0230016、及びUS 6,642,169。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、今日まで、メタロセンを用いて製造されたPAOは、非効率的方法、コスト及び特性欠陥のため、市場、特に潤滑剤市場で広い適用性を見い出していない。本開示は、優れた特性の組合せを有する新規PAO及び/又はHVI-PAO並びにそれらの改良された製造方法を提供することによって、このような必要性及び他の必要性に取り組む。
さらに、最近の進歩にもかかわらず、重合したままの生成物が潤滑剤ベースストックとしての使用に適するように、重合後の高価な水素仕上げの必要性を回避するため、PAOを製造するための重合反応プロセスを最適化するために当該技術で満たされていない要求が残っている。また、触媒系全体のコストを下げ、かつ触媒系の除去を簡単にできるように、触媒生産性を改良することが要望されている。この改良された生産性は、プロセス全体の経済を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(概要)
この開示は、1種以上のC4〜C24(好ましくはC6〜C24;好ましくはC8〜C24)モノマーを含む液体シンジオタクチックポリαオレフィン(sPAO)に関し、前記sPAOは以下を有する:
a) 13C NMRで測定した場合に5〜50%のrr三連構造含量;
b) 13C NMRで測定した場合に25〜60%のmr三連構造含量(mr対mmの三連構造比は少なくとも1.0である);
c) Z℃以下の流動点(Z=0.0648X-51.2、式中、X=センチストーク(cSt)で報告される100℃における動粘度);
d) 100cSt以上(或いは200cSt以上)の100℃における動粘度;
e) 9未満のmr三連構造対rr三連構造の比(13C NMRで決定した場合);
f) 8未満のビニリデンオレフィン対1,2-二置換オレフィンの比(1H NMRで決定した場合);
g) 120以下の粘度指数;及び
h) 40,000以下のMn。
【0008】
この開示はさらに、該sPAOの製造方法及び使用方法に関する。本明細書に記載の方法の生産性は典型的に1gの遷移金属化合物当たり200kgより多いsPAO、或いは250kg/1gの遷移金属化合物より多く、或いは500kg/1gの遷移金属化合物より多く、或いは1000kg/1gの遷移金属化合物より多く、及び/又は1gの活性化剤当たり10kgより多いsPAO、或いは50kg/1gの活性化より多く、或いは100kg/1gの活性化剤より多く、或いは500kg/1gの活性化剤より多い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】比較例A及びBに対する発明実施例1、2、及び3の流動点対100℃における動粘度のグラフである。
【図2】この開示のsPAO及び比較例PAOの種々のMw/Mn限界を示すグラフである。
【図3】実施例1〜10及び比較例A〜Cの臭素数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(詳細な説明)
本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲の全ての数値は、指定値を「約(about)」又は「約(approximately)」で修飾してある。また、当業者が予想するであろう実験上の誤差及び変動を考慮されたい。
本明細書では、CHEMICAL AND ENGINEERING NEWS, 63(5), 27 (1985)に記載されているように、元素周期表の新しい番号付けスキームを使用する。
特に指定のない限り、全てのpsiの圧力はpsigであり、全ての分子量はg/molである。
この開示及びそれに添付の特許請求の範囲の目的では、ポリマー又はオリゴマーがオレフィンを含むと称される場合、ポリマー又はオリゴマー中に存在するオレフィンがオレフィンのそれぞれ重合形又はオリゴマー形である。同様に用語ポリマーの使用は、ホモポリマー及びコポリマーを包含することを意味し、ここで、コポリマーには、2つ以上の化学的に異なるモノマーを有するいずれのポリマーも含まれる。同様に用語オリゴマーの使用は、ホモオリゴマー及びコオリゴマーを包含することを意味し、ここで、コオリゴマーには、2つ以上の化学的に異なるモノマーを有するいずれのオリゴマーも含まれる。
この開示の目的では、用語オリゴマーは、2〜75のmer単位を有する組成物を表し、用語ポリマーは、76以上のmer単位を有する組成物を表す。merは、もともとオリゴマー化又は重合反応で使われるオレフィンに対応するオリゴマー又はポリマーの単位として定義される。例えば、ポリデセンのmerはデセンであろう。
【0011】
この開示及びそれに添付の特許請求の範囲の目的では、用語「ポリα-オレフィン」、「ポリαオレフィン」、又は「PAO」には、C3以上のα-オレフィンモノマーのホモオリゴマー、コオリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーが含まれる。
この開示及びそれに添付の特許請求の範囲の目的では、触媒サイクル中の活性種は触媒の中性形又はイオン形を含み得る。
用語「触媒系」は、触媒前駆体/活性化剤対、例えばメタロセン/活性化剤対を、必要に応じて共活性化剤を含めて意味するものと定義される。「触媒系」を用いて活性化前のこのような対を表すとき、それは活性化剤及び必要に応じて共活性化剤(例えばトリアルキルアルミニウム化合物)と共に未活性化触媒(プレ触媒)を意味する。「触媒系」を用いて活性化後のこのような対を表すとき、それは、活性化触媒が電荷を有する場合は電荷平衡成分を含む活性化遷移金属触媒を意味する。さらに、触媒系は必要に応じて共活性化剤を含んでよい。
「触媒前駆体」は、プレ触媒、触媒、前駆体、メタロセン、遷移金属化合物、プレ触媒化合物、未活性化触媒、又は遷移金属錯体と呼ばれることも多い。これらの単語は互換的に使用される。活性化剤と共触媒も互換的に使用される。捕捉剤は、不純物を捕捉することによってオリゴマー化又は重合を促進するために典型的に添加される化合物である。一部の捕捉剤が活性化剤として作用することもあり、共活性化剤と呼ばれることもある。遷移金属化合物と活性触媒を形成するために、捕捉剤でない共活性化剤を活性化剤と共に使用することもある。一部の実施形態では、共活性化剤を遷移金属化合物と前混合してアルキル化遷移金属化合物を形成することができ、これはアルキル化触媒化合物又はアルキル化メタロセンとも呼ばれる。共活性化剤は多くの場合、アルミニウムアルキルであり、アルキル-アルミニウム、アルキルアルミニウム化合物、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウム化合物とも呼ばれる。
【0012】
この開示及びそれに添付の特許請求の範囲の目的では、非配位アニオン(NCA)は、触媒金属カチオンと配位結合しないか又は該金属カチオンと弱くしか配位結合しないアニオンを意味するものと定義される。NCAは、オレフィン性又はアセチレン性の不飽和モノマーのような中性ルイス塩基がそれを触媒中心から動かせるほど十分に弱く配位結合する。触媒金属カチオンと弱く配位結合する適合性錯体を形成できるいずれの金属又はメタロイドを使用してもよく或いは非配位アニオンに含めてもよい。適切な金属としては、限定するものではないが、アルミニウム、金、及び白金が挙げられる。適切なメタロイドとしては、限定するものではないが、ホウ素、アルミニウム、リン、及びケイ素が挙げられる。非配位アニオンのサブクラスは化学量論的活性化剤を含み、中性又はイオン性のどちらでもよい。用語イオン性活性化剤、化学量論的イオン性活性化剤、分離したイオン性活性化剤、非配位アニオン活性化剤、及びNCA活性化剤は互換的に使用可能である。同様に、中性化学量論的活性化剤及びルイス酸活性化剤も互換的に使用できる。
さらに、反応器は、中で化学反応が起こるいずれの容器でもある。
「イソオレフィン」は、少なくとも1個の三級又は四級炭素原子を有する分岐アルケンであり、各鎖の少なくとも一部に沿って少なくとも1つのC1〜C18アルキル分岐を有する。好ましくはアルキル分岐はC1〜C12である。
「液体」は、室温で流れ、+20℃未満の流動点及び30,000cSt以下の25℃における動粘度を有する物質であると定義される。
本明細書では、この発明、PAO、又はsPAOとして得られた生成物の特定フラクションを「潤滑油(lube)」、「潤滑油流体」、「潤滑油フラクション」と呼ぶことがある。
【0013】
(ポリα-オレフィン)
この開示は、1種以上のC6〜C24モノマー(或いはC6〜C18、或いはC8〜C14、或いはC8〜C12)を含んでなる液体シンジオタクチックポリαオレフィン(sPAO)に関し、前記sPAOは以下を有する:
a) 13C NMRで測定した場合に5〜50%(或いは5〜45%、或いは5〜40%)のrr三連構造含量;
b) 13C NMRで測定した場合に25〜60%のmr三連構造含量(mr対mmの三連構造比は少なくとも1.0(或いは少なくとも1.20、或いは少なくとも1.5)である);
c) Z℃以下の流動点(Z=0.0648X-51.2(或いはZ=0.0648-56.2、或いはZ=0.0648-60.2、或いはZ=0.0285X-47.5)、式中、X=センチストーク(cSt)で報告される100℃における動粘度);
d) 100cSt以上(或いは150cSt以上、200cSt以上、300cSt以上、500cSt以上、或いは600cSt以上、或いは1000cSt以上、或いは200cSt〜2000cSt又は300cSt〜2000cSt、又は1000〜2000cSt)の100℃における動粘度;
e) 9未満(或いは1〜8、或いは3〜7)のmr三連構造対rr三連構造の比(13C NMRで決定した場合);
f) 8未満(或いは0.1〜7、或いは0.1〜6、或いは0.25〜5、或いは0.5〜4)のビニリデンオレフィン対1,2-二置換オレフィンの比(1H NMRで決定した場合);
g) 120以上の粘度指数;及び
h) 40,000g/mol以下(或いは280〜35,000g/mol、或いは400〜30,000g/mol)のMn。
【0014】
別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのPAOも150以上、或いは、200以上、或いは300以上の粘度指数を有する。
別の実施形態では、本明細書に記載のPAOは、他のベースストックとブレンドした場合、-40℃で150,000cP未満のブルックフィールド粘度を有する。
別の実施形態では、本明細書に記載のPAOは、他のベースストックとブレンドした場合、-55℃で150,000cP未満のブルックフィールド粘度を有する。
別の実施形態では、この開示のsPAOは、純ベースストックとして使用するか又は他のベースストック及び添加剤とブレンドして使用する場合に優れた低温流動特性を有する。純ベースストックとして試験した場合、本明細書で生成されるsPAOは、簡単な凍結融解サイクル試験で室温にて容易に流れる。この試験では、直径1.2cm及び長さ5cmの小型試験管内で約4mlのsPAOを液体窒素で-70℃に急速冷却する(例えば、1分未満)。窒素を除去し、凍結液体をゆっくり室温に戻す(23℃)。この試験では、ポリマーの結晶性フラクションを含む多くの流体は、室温まで戻ったときに流動性のある液体状態を完全には回復せず、代わりに凍結したままであろう。理論によって拘束されることを望むものではないが、この作用は、おそらく流体の冷却-結晶化挙動のためであると考えられる。この開示で作成されるsPAOは、低温で凍結した後、室温に戻すとその容易に流れる状態を回復するであろう。この試験は、室温まで戻ったときのsPAOの流動性に影響を与えることなく、多数回(例えば100回)繰り返しが可能である。
【0015】
別の実施形態では、本明細書に記載のsPAOは、特に他の低粘度ベースストックとのブレンドストック中で使用する場合、-40℃で150,000cP以下、或いは100,000cP以下、好ましくは60,000cP以下、或いは10,000cP以下、或いは7500cP以下、或いは5000cP以下のブルックフィールド粘度をも有する。典型的に、所定の40℃又は100℃の動粘度のためには、-40℃でより低いブルックフィールド粘度を有することが望ましい。ブルックフィールド粘度は、ASTM D2983試験方法によって決定される。
別の実施形態では、本明細書に記載のsPAOは、特に他の低粘度ベースストックとのブレンドストック中で使用する場合、-55℃で150,000cP以下、或いは100,000cP以下、或いは70,000cP以下、或いは35,000cP以下のブルックフィールド粘度をも有する。所定の40℃又は100℃の動粘度のためには、-55℃でより低いブルックフィールド粘度を有することが好ましい。低温なほどブルックフィールド粘度が低い潤滑剤は、一般的により良いエネルギー効率を有する。
別の実施形態では、-40℃におけるPAOのブルックフィールド粘度が、-55℃における同一PAOのブルックフィールド粘度より少なくとも5,000cP低いか、或いは少なくとも10,000cP低いか、或いは少なくとも15,000低い。
【0016】
別の実施形態では、本明細書に記載のsPAOは、1より大きく、かつ5未満、或いは4未満、或いは3未満、或いは2.6未満の狭い分子量分布を有する。Mn及びMwは、中〜低分子量ポリマー用のカラムと、溶媒としてのテトラヒドロフランと、電力方程式に応じて流体粘度と関連する校正基準として狭い分子量分布のポリスチレンとを用いてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される。sPAOのMWDは流体粘度の関数である。或いは本明細書に記載のいずれのポリα-オレフィンも好ましくは、流体粘度によって決まる1〜2.6、或いは1〜3.5のMw/Mnを有する。
潤滑剤又は潤滑剤ベースストックの機械的せん断の低下による粘性損失は、CEC L-45-T-93手順に準拠した円錐ころ軸受(Tapered Roller Bearing)(TRB)試験、Orbahnせん断試験(ASTM D3945)又は超音波せん断試験(Sonic Shear Tests)(ASTM D2603)などのいくつかの方法により測定が可能である。TRB試験は、他のせん断試験より粘性流体の現場せん断安定性性能と良く相関すると考えられ、試験データ間で矛盾する場合は、TRB試験を使用すべきである。一実施形態では、ここで製造されるsPOAは10%以下、或いは5%以下、或いは2%以下の100℃ Kv損失(CEC L-45-T-93手順に準拠する円錐ころ軸受(TRB)試験)を有する。
ここで製造されるsPAOは、異なる触媒組成物を用いて、当該技術で製造されるPAOより一貫して低いMWDを有する。一実施形態では、本明細書に記載のsPAOは、図2の線Bによって示されるように、1.950+0.000875x(100℃ Kv,cSt)以下のMWDを有する。この開示で作製されるPAOのMWDは線B未満の値を有する。一実施形態では、ここで開示されるPAOは、図2の線Cによって示されるように1.8148+0.0001899x(100℃ Kv,cSt)の値未満のMWD値を有する。この開示で作製されるsPAOの平均下限MWDは、図2の線Dによって示されるように1.0761x(100℃ Kv,cSt)(0.0891)に等しいか又はほぼ等しい。この開示で作製される流体のMWDは、図2の線Eによって示されるように0.83242x(100℃ Kv,cSt)(0.11231)以下である。別の選択肢では、MWD値が低いほど、潤滑油用途に良いsPAOである。一般的に、MWDが線Bによって定義される値より低いいずれの潤滑油も望ましいであろう。本明細書で後述し、図2中、黒四角で示されるC生成物に対する比較例Aは、一般的に、図2の線Aによって示されるように、1.981+0.0013816x(100℃ Kv,cSt)以上の値を有する高いMWDを有する。これは、あまり望ましくない、広い分子量分布を示している。
【0017】
別の態様では、本開示は、2未満、好ましくは0.2〜1.6の重合したままの臭素数を有する1つ以上のC6〜C14α-オレフィンのポリマー又はオリゴマーを含んでなる高い(200超えの)粘度指数のシンジオタクチックポリαオレフィン(HVI-sPAO)液体に関する。「重合したままの」臭素数とは、重合反応器を出て、水素化触媒と接触する前の物質の臭素数である。何らかの前水素化によって1-デセンからポリマーを合成すると、各ポリマー又はオリゴマーは1つの不飽和二重結合を含むであろう。この完全には水素化されなていないポリαオレフィンでは、潤滑油生成物の臭素数は下記式で予測可能である:臭素数=56.158x(100℃ Kv,cSt)(-0.50939)。予想外の水素化が起こると、生成物の臭素数はこの量より有意に少ないであろう。図3は、実施例1〜10が、粘度に基づいて計算したより有意に低い臭素数を有することを示す。対照的に、比較例A〜Cは、より高い臭素数を有する。
我々の発明のsPAOの臭素数は、通常、56.158x(100℃ Kv,cSt)(-0.50939)の計算された臭素数より小さい。好ましい実施形態では、この開示のsPAOの臭素数は、計算された臭素数(56.158x(100℃ Kv,cSt)(-0.50939))より少なくとも10%低く、好ましくは少なくとも25%低く、好ましくは少なくとも50%低い。3未満、好ましくは2未満の臭素数を有するのが好ましい。より低い臭素数は高度の飽和を示し、一般的にベースストックのより高い酸化安定性及び高い品質を示唆する。臭素数は、ASTM D1159によって測定される。
別の実施形態では、ここで製造されるいずれのポリα-オレフィンも、ASTM D1159で測定した場合に好ましくは1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下の臭素数を有する。
【0018】
別の実施形態では、本sPAOは高い粘度指数のsPAO(HVI-sPAO)であり、かつ100cSt以上、或いは600cSt以上、或いは1000cSt以上のKV100を有し、VIが170以上、或いは250以上、或いは500以上である。通常、実施例1〜10に示すように、ベースストックのVIは流体粘度の関数である。通常、VIが高いほど、それは潤滑油用途に優れる。ベースストックのVIは、供給原料組成にも依存する。単一の1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン又は1-テトラデセンから作製される流体は、一般的に優れたVI及び良い流動点を有する。C3〜C18α-オレフィンから選択される2種以上のオレフィンから作製される流体は、供給LAOの平均炭素鎖長が6〜12個以内の炭素で維持されていれば、一般的に優れたVI及び優れた流動点を有する。混合LAOの供給原料の平均鎖長が相対的にずっと低い(5.5個の炭素よりずっと少ない)と、VIが低くなるであろう。混合LAOの供給原料の平均鎖長が高すぎる(12個の炭素よりずっと大きい)と、室温前後の非常に高い流動点をもたらすであろう。sPAOを他のベースストックとブレンドするときの特定の製剤におけるような高い流動点が耐えられる場合、供給LAOの高い平均長は供給原料として許容可能である。
【0019】
シンジオタクチックPAOは単一のα-オレフィンモノマータイプを含むことができ、又は2種以上の異なるα-オレフィンモノマーを含んでもよい。一実施形態では、この開示は、55mol%以上、60mol%以上、65mol%以上、70mol%以上、75mol%以上、80 mol%以上、85mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、100mol%(13C NMRで測定した場合、全てポリα-オレフィン中に存在するモノマーの全モルに基づく)から成る群より選択されるモル量のC6〜C24α-オレフィンモノマーを含んでなるシンジオタクチックポリα-オレフィン(sPAO)に関する。2種以上のα-オレフィンモノマーが存在する場合、プロピレン、又はブテン(典型的に1-ブテン)オレフィンを供給原料に添加することが望ましいこともある。供給原料にこれらの小さいオレフィンを使用すると、より低い供給コスト及び/又はより豊富な供給源を与える。供給成分の1つとしてC3又は1-C4オレフィンを添加する場合、供給LAO(直鎖αオレフィン)の全平均炭素鎖長を5.5〜12.5の炭素に維持するのが望ましい。6〜12の範囲、好ましくは8〜11の範囲、さらに好ましくは9〜10.5の範囲が好ましい。
【0020】
1以上の実施形態では、sPAOは、炭素数がC2〜C24、又はC3〜C20、又はC5〜C18、又はC6〜C14、又はC8〜C12の1種以上のα-オレフィン(1-オレフィンとしても知られる)のC15〜C1500、又はC20〜C1000、又はC30〜C800、又はC35〜C400、又はC40〜C250オリゴマー(例えばダイマー、トリマー等)を含む。好ましくは、α-オレフィンの少なくとも1つは直鎖α-オレフィン(LAO)であり;さらに好ましくは、全てのα-オレフィンがLAOである。適切なLAOとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、及びこれらのブレンドが挙げられる。好ましくは、C2、C3、及びC4α-オレフィン(すなわち、エチレン、プロピレン及び1-ブテン)は、PAOオリゴマー中に30wt%以下、又は20wt%以下、又は10wt%以下、又は5wt%以下の平均濃度で存在し;さらに好ましくは、C2、C3、及びC4α-オレフィンはPAOオリゴマー中に存在しない。
1以上の実施形態では、PAOは2種以上のC2〜C24、又はC4〜C20LAOのオリゴマーを含んで、「コポリマー」又は「ターポリマー」又はより高次のコポリマーの組合せを構成する。他の実施形態は、炭素数が偶数のC6〜C18LAOから選択されるLAOの混合物、好ましくは1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、及び1-テトラデセンから選択される2又は3種のLAOの混合物のオリゴマー化に関わる。
1以上の実施形態では、PAOは、総炭素数が5〜20、又は6〜18、又は8〜12、又は10の単一のα-オレフィン種のオリゴマーを含む。他の実施形態では、PAOは、混合(すなわち、2種以上の)α-オレフィン種のオリゴマーを含み、各α-オレフィン種は5〜20、又は6〜14、又は8〜12の炭素数を有する。他の実施形態では、PAOは、混合α-オレフィン種のオリゴマーを含み、モル平均炭素数(「CLAO」)が6〜14、又は7〜13、又は8〜12、又は9〜11である。
【0021】
別の実施形態では、この開示はさらに、好ましくは下記手順に従って13C核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定した場合に4mol%以上、好ましくは5%以上、好ましくは8%以上、好ましくは10%以上、好ましくは12%以上のrr三連構造を有するsPAOに関する。
別の実施形態では、この開示はさらに、60%以下のmm三連構造、又は50%以下のmm三連構造、又は40%以下のmm三連構造、30%以下のmm三連構造、又は20%以下のmm三連構造を有するsPAO(典型的に水素化sPAO)に関する。
一実施形態では、本開示のポリαオレフィンは、mr三連構造対rr三連構造の比が9未満、好ましくは1〜8、好ましくは3〜7である。別の実施形態では、好ましい範囲は、13C NMRで測定した場合に1.0〜9、又は2〜8、又は2〜7である。別の実施形態では、本発明開示の水素化ポリαオレフィンは、rr三連構造対mr三連構造の比が1未満であり、好ましい範囲は0.1〜0.9である。
NMR分光法は合成ポリマーについての構造情報を提供する。非水素化sPAOのプロトンNMR分析は、オレフィン構造型(すなわち、ビニル、1,2-二置換、三置換、及びビニリデン)の定量的内訳を与える。上述したように、13C NMRを用いて、場合によっては定量的に、他の場合は定性的に本開示のポリαオレフィンの立体選択性を決定する。13C NMRを用いて、mm(メソ、メソ)、mr(メソ、ラセミ)及びrr(ラセミ、ラセミ)と表示される三連構造の濃度、並びにサンプルのモル組成を決定することができる。これらの三連構造の濃度は、ポリマーがアイソタクチック、アタクチック又はシンジオタクチックかを規定する。以下のようなやり方でsPAOサンプルのスペクトルを取得する。約100〜1000mgのsPAOサンプルを2〜3mlの13C分析用クロロホルム-dに溶解させる。約10mg/ml(溶媒ベース)のアセチルアセトン酸クロム緩和剤、Cr(acac)3をサンプルに加えてデータ取得率を増強する。スペクトルの解析は、Kim, I.;Zhou, J.-M.;及びChung, H.による論文Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry 2000, 38 1687-1697に従って行われ、末端基共鳴の同定と積分及び解析に使われるピークへのそれらの寄与の除去によって解析を向上させる。この逆重畳積分は、Acorn NMR Inc.のNutsPro NMRデータ解析ソフトウェアで85/15のローレンツ型/ガウス型(Lorentzian/Gaussian)線形を用いて行われる。成分ピークをmm、mr、及びrr三連構造の割当に応じて一括してクラスターにまとめ、ベルヌーイ分布(Bernoullian distribution)と適合させる。これらの適合のために調節可能なパラメーターは、ラセミ立体化学によって添加されるモノマーのフラクションPrである。1セットの三連構造測定値(例えば上記Kimによって記載されているように)から統計モデル(例えばベルヌーイ分布)への移行の詳細については、Polymer Sequence Determination, James C. Randall, Academic Press, New York, 1977を参照されたい。
【0022】
別の実施形態では、ここで製造されるいずれのポリα-オレフィンも好ましくは、プロトンNMRで測定した場合にポリ-α-オレフィン中に存在する全ての二重結合の総モル数に基づいて10モル%以上、好ましくは15モル%以上、好ましくは20モル%以上、好ましくは30モル%以上、好ましくは40モル%以上で存在する1,2-二置換オレフィンを有する。
プロトンNMR分析(1,2-二置換及び上記式によって表される単位を測定するために使用)は、サンプルを適切な重水素化溶媒(例えば、クロロホルム-d)に溶解させ、かつオレフィン領域(約6ppm〜4.6ppm)の積分を可能にするのに十分なシグナル・ノイズ比のパルス取得実験を取得することによって行われる。50℃の温度でスペクトルを取得する。この温度は、サンプルの完全な溶解を確実にするように選択される(サンプルが50℃で完全に溶解しない場合は、サンプルが完全に溶解するまで温度を緩徐に上げる)。プロトンスペクトルの脂肪族領域は、飽和成分由来のシグナル、及びポリマーの不飽和末端由来のオレフィン領域を含む。複数のαオレフィンが共重合している場合、異なるαオレフィン分岐の分岐メチル共鳴からポリマーの組成を決定できることがある。この組成決定は、メチルピーク(1.0〜0.6ppm間で共鳴する)が十分に分離されていて直接積分、又はスペクトルの逆重畳積分が可能な場合に行える。
下表に示す化学シフト割当に従い、区分的にオレフィン領域を積分することができる。
【0023】

【0024】
オレフィンのサブインテグラル(subintegral)は、寄与してる種のプロトン多重度、及び重複している寄与(例えば、5.3〜4.8ppm領域のビニル及び三置換の両オレフィン)に対して補正される。この補正の結果としての積分値を次に正規化して各オレフィン分類のモル百分率を与え得る。補正積分値と脂肪族積分強度(これも多重度補正された)の比較を利用して、絶対基底についてのオレフィン濃度(例えば、1000個の炭素当たりのオレフィン)を決定することができる。
別の実施形態では、本明細書に記載の、重合反応器からの純粋ないずれのポリα-オレフィンも、ASTM D5185により測定した場合に300ppm未満、又は200ppm未満、又は100ppm未満、又は50ppm未満、又は10ppm未満のいずれかの第4族金属(好ましくはTi、Hf又はZr)を有する。
別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリα-オレフィンも、ASTM D5185により測定した場合に300ppm未満、又は200ppm未満、又は100ppm未満、又は50ppm未満、又は10ppm未満のいずれかの第13族金属(好ましくはB又はAl)を有する。
別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリα-オレフィンも、ASTM D5185により測定した場合に600ppm未満、又は500ppm未満、又は600ppm未満、又は300ppm未満、又は300ppm未満、又は10ppm未満、又は50ppm未満、又は10ppm未満のアルミニウムを有する。
別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリα-オレフィンも100,000g/mol以下、又は200〜80,000g/mol、又は250〜60,000g/mol、又は280〜50,000g/mol、又は336〜40,000g/molのMwを有する。好ましいMwとしては、224〜55,100g/mol、又は392〜30,000g/mol、又は800〜24,000g/mol、又は2,000〜37,500g/molが挙げられる。或いは好ましいMwには、224〜6790g/mol及び224〜2720g/molが含まれる。
別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリα-オレフィンも好ましくは50,000g/mol以下、又は40,000g/mol以下、又は200〜40,000g/mol、又は250〜30,000g/mol、好ましくは500〜20,000g/molのMnを有する。好ましいMn範囲としては、280〜10,000g/mol又は280〜4,000g/molの範囲が挙げられる。或いは好ましいMn範囲は、200〜20,900g/mol、又は280〜10,000g/mol、又は200〜7000g/mol、又は200〜2000g/mol、又は280〜2900g/mol、又は280〜1700g/mol、又は200〜500g/molである。
【0025】
GPCにより、中分子量〜低分子量ポリマー用のカラム、溶媒としてテトラヒドロフラン及び校正基準としてポリスチレンを用いてMw、Mn、及びMzを測定し、電力方程式に基づいて流体粘度と関連づける。
この開示で供給原料として1-デセンを用いて調製される流体のMw対100℃動粘度(cSt)の関係は以下のとおりである:Mw=410.31x(100℃vis(cSt))0.60434。同様に、この開示で供給原料として1-ヘキセンを用いて調製される流体のMw対100℃動粘度(cSt)の関係は以下のとおりである:Mw=410.31x(100℃vis(cSt))0.477。他のα-オレフィンを供給原料として使用する場合、このMw対100℃粘度の関係はわずかに変化し得る。類似タイプの関係が維持されると予測される。特に指定のない限り、本明細書で報告するMw値はGPC値であり、100℃で測定した動粘度からは計算されない。
この開示の好ましい実施形態では、本明細書に記載のいずれのsPAOも0℃未満(ASTM D97によって測定した場合)、好ましくは-10℃未満、好ましくは-20℃未満、好ましくは-25℃未満、好ましくは-30℃未満、好ましくは-35℃未満、好ましくは-50℃未満、好ましくは-10℃〜-80℃、好ましくは-15℃〜-70℃の流動点を有し得る。
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのsPAOも以下のいずれかの範囲の100℃における動粘度を有し得る:100〜5,000cSt、175〜3,000cSt、200cSt〜1,500cSt、300cSt〜1,000cSt、100cSt〜800cSt、175cSt〜800cSt、200cSt〜800cSt、100cSt〜650cSt(全ての値は、ASTM D445により測定される)。
この開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも3〜10cStの100℃における動粘度及び150℃以上、好ましくは200℃以上(ASTM D56により測定した場合)引火点を有し得る。
この開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも200℃以上、或いは220以上、好ましくは250℃以上の引火点を有し得る。
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも2.5以下の比誘電率を有し得る(ASTM D924により測定した場合23℃で1kHz)。
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも0.75〜0.96g/cm3、好ましくは0.80〜0.94g/cm3、或いは0.76〜0.855g/cm3の密度を有し得る。
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも0.75〜0.96、好ましくは0.80〜0.94、或いは0.76〜0.87の比重を有し得る。
【0026】
この開示の高粘度sPAOは、工業用及び自動車用エンジンオイル又はギアオイルで使うためのAPIグループI〜V又はガストゥーリキッド(gas-to-liquid)(GTL)誘導潤滑油ベースストックとのブレンドストックと使用するに望ましい。特に一定の40〜1000cStの高KV100グレードのものは、工業用及び自動車用エンジンオイル又はギアオイルで使うためのグループI〜V又はGTL誘導潤滑油ベースストックとのブレンドストックとして使うのに特に望ましい。それらは、パーソナルケア用途、例えばパーソナルケアクリーム、ローション、スティック、シャンプー、洗剤などで使うセッケン、界面活性剤、他の軟化薬とのブレンドで使うのにも適している。
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載のいずれのポリαオレフィンも100以上、又は120以上、又は130以上;或いは、120〜450、或いは100〜400、或いは120〜380、或いは100〜300、或いは140〜380、或いは180〜306、或いは252〜306の粘度指数(VI)を有し、或いは粘度指数は少なくとも165、或いは少なくとも187、或いは少なくとも200、或いは少なくとも252である。粘度指数はASTM Method D2270-93[1998]に準拠して決定される。
【0027】
本開示の一実施形態は、鎖内の大部分のモノマーの均一のヘッドトゥーテール(head-to-tail)結合と、一部のポリマー鎖の末端位の独特のヘッドトゥーヘッド(head-to-head)結合によって特徴づけられる独特の化学的特徴とを有する新分類のポリ-α-オレフィンである。この新分類のポリ-α-オレフィンはさらに、高度の立体選択性によって特徴づけられ、すなわち、それらは相対的に高量のrr結合(又はシンジオタクチック結合)を有する。この新しいポリ-α-オレフィンを単独で使用するか又は他の流体とブレンドすると、独特の潤滑特性を有する。用語「ヘッドトゥーヘッド結合」は、オリゴマー又はポリマー鎖に最後から2番目のオレフィンが1,2挿入され、かつ最後のオレフィンが2,1挿入される、sPAOオリゴマー又はポリマーの少なくとも1つの末端に形成される結合を意味する。用語「ヘッドトゥーテール結合」は、オリゴマー又はポリマー鎖に最後から2番目のオレフィンが1,2挿入で挿入され、かつ最後のオレフィンも1,2挿入で挿入される、sPAOオリゴマー又はポリマーの少なくとも1つの末端に形成される結合を意味する。
【0028】
この開示に従って生成されるsPAOは、典型的に1つ以上のC5〜C24オレフィンモノマー、好ましくは1つ以上のC5〜C24α-オレフィンモノマー、好ましくは1つ以上のC5〜C24直鎖α-オレフィンモノマーダイマー、トリマー、テトラマー、又はより高次のオリゴマーである。或いは、オレフィン二重結合から少なくとも2個の炭素離れてアルキル置換基のあるα-オレフィンも使用できる。典型的に、本明細書で生成されるsPAOは一般的に多くの異なるオリゴマーの混合物である。これらのα-オレフィンから得られる最小オリゴマーは、C10〜C20の範囲の炭素数を有する。これらの小さいオリゴマーは、通常、ほとんどの高性能流体用途にとっては軽すぎる。それらは、通常、C20より大きい、例えば高性能流体としてさらに好ましいC24以上の炭素数を有する高次オリゴマーから分離される。これらの分離されたC10〜C20オリゴマーオレフィン又は水素化後の対応パラフィンは、特殊用途、例えば優れた生分解性、毒性、粘性などを有する掘削流体、溶媒、塗料用シンナー等として使用可能である。非水素化オレフィンは、洗剤、分散剤、潤滑油又は燃料添加剤、アルコール、酸、機能性流体などの製造の出発原料として使用し得る。低い臭素数を有するか又は低臭素数を与えるために処理したC20〜C30の流体フラクションは典型的に低い粘度を有し、このことが該流体フラクションを良い燃料経済、良い生分解性、良い低温流動特性、又は低い揮発性を有する潤滑剤のような一部の用途にとって有益にする。より高い粘度の生成物は一般的にずっと高い平均重合度及び非常に低量のC20〜C30成分を有する。これらの高粘度流体は、粘性を改良するための潤滑油用途にとって優れたブレンドストックである。それらの一般的に狭い分子量分布のため、それらは優れたせん断安定性を有する。これらの流体の純粋形態、好ましくは他のより低粘度のベースストックとのブレンドのせん断安定性は、超音波せん断試験(ASTM D2603)又はディーゼルインジェクターノズル試験(ASTM D3945)又は円錐ころ軸受(TRB)せん断試験(CEC L-45-T-93)又は他の同等の方法で測定可能である。TRB試験は現場性能と最も良く相関するので、一般的に好ましい試験である。この開示で作製される流体は通常、当該技術で作製される流体、特に触媒成分としてメチルアルモキサンを用いて作製される当該流体より良いせん断安定性を有する。また、高度の非異性化長鎖分岐を有するそれらの独特の化学組成のため、ここに記載の新規流体は優れた粘度特性値及び予想外に低いトラクション(traction)特性を有する。
これらのより高粘性sPAOは優れたブレンドストックとして利用可能である。それらは、最適の粘度測定値、溶解力、高温及び低温潤滑性等を与えるためAPIグループI〜V及びGTL流体とのブレンドストックであってよい。さらに酸化防止剤、耐摩耗添加剤、摩擦調整剤、分散剤、清浄剤、腐食防止剤、消泡剤、極圧添加剤、シール膨潤添加剤、及び必要に応じて粘度調整剤などの適性な添加剤とブレンドする場合、典型的な添加剤の詳細については、書籍“Lubricant Additives: Chemistry and Applications,” L. R. Rudnick, ed. Marcel Dekker Inc., New York, 2003で見つけられる。
【0029】
(方法)
本開示の一実施形態は、独特の化学組成を有する新分類のポリ-α-オレフィンの改良された製造方法を開示する。この改良された方法は、遷移金属触媒を1種以上の活性化剤(例えば非配位アニオン)と共に利用する。いくつかの遷移金属触媒は、モノマーのシンジオタクチック立体配置を有するPAOの形成に有利に働くCs対称活性中心を含む。本明細書に記載の方法の一態様は、ペルオキシド、酸素、イオウ、窒素含有有機化合物、及び/又はアセチレン性化合物などの触媒毒を除去するための供給オレフィンの任意の処理をも包含する。この処理は、触媒生産性を典型的に5倍、好ましくは10倍高めると考えられる。
好ましい実施形態では、この開示はポリα-オレフィンの製造方法であって、下記工程:
1) 3〜24個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンモノマーをプレ触媒化合物(後述するとおり)及び活性化剤と、重合条件下で接触させる工程(ここで、水素が存在する場合、水素は、反応器の全圧に基づいて200psi(1379kPa)以下、或いは50psi(1034kPa)以下、又は100psi(690kPa)以下、又は50psi(345kPa)以下、又は25psi(173kPa)以下、又は10psi(69kPa)以下の分圧で存在し;或いは水素が反応器内に存在する場合、水素は質量で1000ppm以下、又は750ppm以下、又は500ppm以下、又は250ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下、又は25ppm以下、又は10ppm以下、又は5ppm以下の量で存在し、かつ5〜24個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーは、触媒/活性化剤/共活性化剤溶液、モノマー、及び反応に存在するいずれもの希釈剤又は溶媒の総体積に基づいて10体積%以上で存在する);及び
2) 重合したままのPAOでは臭素数が4未満、或いは3未満、或いは2未満、或いは1未満であるポリα-オレフィンを得、必要に応じてsPAOを水素化し、かつ少なくとも50モル%のC3〜C24α-オレフィンモノマーを含むsPAOを得る工程(ここで、ポリα-オレフィンは5000cSt以下の100℃における動粘度を有し、かつポリα-オレフィンは、少なくとも8%、好ましくは10%超え、さらに好ましくは12%超えの、mr立体配置を有するポリマーを含み、ポリα-オレフィンは、主に(すなわち、50%より多くは)ヘッドトゥーテール結合を有し、ポリマー鎖の末端にヘッドトゥーヘッド結合を含むポリマーもある)
を含む方法に関する。
【0030】
代替実施形態では、この開示はポリα-オレフィンの製造方法であって、下記工程:
1) 2〜24個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンモノマーをメタロセン触媒化合物と非配位アニオン活性化剤、及び必要に応じてアルキル-アルミニウム化合物と、重合条件下で接触させ(ここで、2〜24個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーは、触媒/活性化剤/共活性化剤溶液、モノマー、及び反応器に存在するいずれもの希釈剤又は溶媒の総体積に基づいて10体積%以上で存在し、かつ供給α-オレフィン、希釈剤又は溶媒ストリームは、300ppm未満のヘテロ原子含有化合物を含む);及び少なくとも50モル%のC6〜C24α-オレフィンモノマーを含むポリα-オレフィンを得る工程(ここで、ポリα-オレフィンは、5000cSt以下の100℃における動粘度を有する)を含む方法に関する。水素が存在する場合、水素は反応器内に質量で1000ppm以下、或いは750ppm以下、或いは500ppm以下、或いは250ppm以下、或いは100ppm以下、或いは50ppm以下、或いは25ppm以下、或いは10ppm以下、或いは5ppm以下で存在する。
【0031】
代替実施形態では、この開示は、ポリα-オレフィンの製造方法であって、下記工程:
1) 6〜24個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンモノマーをメタロセン触媒化合物と非配位アニオン活性化剤、及び必要に応じてアルキル-アルミニウム化合物と、重合条件下で接触させる工程(ここで、2〜24個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーは、触媒/活性化剤/共活性化剤溶液、モノマー、及び反応器内に存在するいずれもの希釈剤又は溶媒の総体積に基づいて10体積%以上で存在し、かつ供給α-オレフィン、希釈剤又は溶媒ストリームは、300ppm未満のヘテロ原子含有化合物を含む);及び少なくとも50モル%のC2〜C24α-オレフィンモノマーを含むポリα-オレフィンを得る工程(ここで、ポリα-オレフィンは5000cSt以下の100℃における動粘度を有する);
2) 潤滑油フラクションポリマー(「潤滑油」、「潤滑油流体」又は「潤滑油フラクション」とも称する)を単離し、かつ該ポリマーが4未満、或いは3未満、或いは2未満、或いは1未満の臭素数を有する場合は蒸留後にこれらのポリマーを潤滑剤ベースストックとして使用し;或いは、臭素数が2又は3又は4より有意に高い場合は、この潤滑油フラクションを水素化触媒と共に典型的な水素化条件下で水素と接触させて、2未満の臭素数を有する流体を得る工程
を含む方法に関する。
或いは、ここに記載のいずれの方法においても、水素が存在する場合、水素は反応器内に質量で1000ppm以下、又は750ppm以下、又は500ppm以下、又は250ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下、又は25ppm以下、又は10ppm以下、又は5ppm以下で存在する。或いは、ここに記載のいずれの方法においても、水素が存在する場合、水素は、供給原料内に質量で1000ppm以下、又は750ppm以下、又は500ppm以下、又は250ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下、又は25ppm以下、又は10ppm以下、又は5ppm以下で存在する。
特に指定のない限り、全てのpsiの圧力はpsigである。
【0032】
(触媒化合物)
本発明及びそれに添付の特許請求の範囲の目的では、この文書全体を通じて用語「ヒドロカルビル基(ragical)」、「ヒドロカルビル」及び「ヒドロカルビル基(group)」を互換的に使用する。同様に用語「基(group)」、「基(radical)」及び「置換基」をもこの文書全体を通じて互換的に使用する。この開示の目的では、「ヒドロカルビル基」はC1-C100基であると定義され、直鎖、分岐、又は環状であってよい。環状の場合、炭化水素基は芳香族又は非芳香族であってよい。「炭化水素基」は、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、及びゲルミルカルビル(germylcarbyl)基を含むものと定義され、これらの用語は以下に定義される。置換ヒドロカルビル基は、少なくとも1個の水素原子がNR*2、OR*、SeR*、TeR*、PR*2、AsR*2、SbR*2、SR*、BR*2、SiR*3、GeR*3、SnR*3、PbR*3等の少なくとも1つの官能基と置き換わっているか或いは少なくとも1個の非炭化水素原子又は基が、-O-、-S-、-Se-、-Te-、-N(R*)-、=N-、-P(R*)-、=P-、-As(R*)-、=As-、-Sb(R*)-、=Sb-、-B(R*)-、=B-、-Si(R*)2-、-Ge(R*)2-、-Sn(R*)2-、-Pb(R*)2-等の少なくとも1つのヒドロカルビル基内に挿入されている基であり、ここで、R*は、独立にヒドロカルビル又はハロカルビル基であり、2つ以上のR*が結合して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状環構造を形成し得る。
ハロカルビル基は、1個以上のヒドロカルビル水素原子が少なくとも1個のハロゲン(例えばF、Cl、Br、I)又はハロゲン含有基(例えばCF3)と置き換わっている基である。
置換ハロカルビル基は、少なくとも1個のハロゲン原子が元のハロカルビル基に残るという条件で、少なくとも1個のハロカルビル水素又はハロゲン原子がNR*2、OR*、SeR*、TeR*、PR*2、AsR*2、SbR*2、SR*、BR*2、SiR*3、GeR*3、SnR*3、PbR*3等の少なくとも1つの官能基と置き換わっているか又は-O-、-S-、-Se-、-Te-、-N(R*)-、=N-、-P(R*)-、=P-、-As(R*)-、=As-、-Sb(R*)-、=Sb-、-B(R*)-、=B-、-Si(R*)2-、-Ge(R*)2-、-Sn(R*)2-、-Pb(R*)2-等の少なくとも1個の非炭素原子又は基がハロカルビル基内に挿入されている基であり、ここで、R*は独立にヒドロカルビル又はハロカルビル基である。さらに、2つ以上のR*が結合して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状環構造を形成し得る。
シリルカルビル基(シリルカルビルとも呼ばれる)は、シリル官能性が指示原子(複数可)に直接結合している基である。例として、SiH3、SiH2R*、SiHR*2、SiR*3、SiH2(OR*)、SiH(OR*)2、Si(OR*)3、SiH2(NR*2)、SiH(NR*2)2、Si(NR*2)3等が挙げられ、ここで、R*は独立にヒドロカルビル又はハロカルビル基であり、かつ2つ以上のR*が結合して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状環構造を形成し得る。
ゲルミルカルビル基(ゲルミルカルビルとも呼ばれる)は、ゲルミル官能性が指示原子(複数可)に直接結合している基である。例として、GeH3、GeH2R*、GeHR*2、GeR53、GeH2(OR*)、GeH(OR*)2、Ge(OR*)3、GeH2(NR*2)、GeH(NR*2)2、Ge(NR*2)3等が挙げられ、ここで、R*は独立にヒドロカルビル又はハロカルビル基であり、かつ2つ以上のR*が結合して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状環構造を形成し得る。
【0033】
極性基は、ヘテロ原子官能性が指示原子(複数可)に直接結合している基である。極性基は、単独で或いは共有結合又は他の相互作用、例えばイオン結合、ファンデルワールス力、若しくは水素結合などによって他の元素に連結している、周期表の第1〜17族のヘテロ原子(炭素及び水素以外)を含む。官能性ヘテロ原子含有基の例としては、カルボン酸、酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、アルデヒド及びそれらのカルコゲン(第14族)類似体、アルコール及びフェノール、エーテル、ペルオキシド及びヒドロペルオキシド、カルボン酸アミド、ヒドラジド及びイミド、アミジン並びに他の窒素類似体、アミド、ニトリル、アミン及びイミン、アゾ化合物、ニトロ化合物、他の窒素化合物、硫酸、セレン酸、チオール、硫化物、スルホキシド、スルホン、ホスフィン、ホスファート、他のリン化合物、シラン、ボラン、ボラート、アラン、アルミナートが挙げられる。官能基を広く解釈して、有機ポリマー担体又は無機担体材料、例えばアルミナ、及びシリカを含めてもよい。極性基の好ましい例としては、NR*2、OR*、SeR*、TeR*、PR*2、AsR*2、SbR*2、SR*、BR*2、SnR*3、PbR*3等が挙げられ、ここで、R*は独立に、上記定義どおりのヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル又は置換ハロカルビル基であり、かつ2つのR*が結合して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状環構造を形成し得る。
用語「置換又は無置換シクロペンタジエニル配位子」、「置換又は無置換インデニル配位子」、及び「置換又は無置換テトラヒドロインデニル配位子」を使用する場合、上記配位子への置換はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルであってよい。置換が環内にあって、ヘテロシクロペンタジエニル配位子、ヘテロインデニル配位子又はヘテロテトラヒドロインデニル配位子(それぞれさらに置換されていても又は無置換であってもよい)を与えて得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基は、メチル、エチル、エテニル、及びピロピルの異性体、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ナノデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンチル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル、トリアコンテニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、ノナデシニル、エイコシニル、ヘンエイコシニル、ドコシニル、トリコシニル、テトラコシニル、ペンタコシニル、ヘキサコシニル、ヘプタコシニル、オクタコシニル、ノナコシニル、トリアコンチニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、オクタジエニル、ノナジエニル、及びデカジエニルから独立に選択される。飽和、部分的に不飽和及び芳香族の環状及び多環状環構造(該基が上記タイプの置換をさらに受けていてもよい)の異性体も含まれる。例としては、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、ピロピルフェニル、ジプロピルフェニル、ベンジル、メチルベンジル、ナフチル、アントラセニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、ノルボルニル、ノルボルネニル、アダマンチル等が挙げられる。この開示では、基を列挙する場合、それは当該基のタイプ及び当該基のタイプが上記置換を受けたときに形成される全ての基を示す。列挙したアルキル、アルケニル及びアルキニル基には、適切な場合には環状異性体を含む全ての異性体が含まれる。例えば、ブチルにはn-ブチル、2-メチルピロピル、1-メチルピロピル、tert-ブチル、及びシクロブチル(及び類似置換シクロピロピル)が含まれ;ペンチルにはn-ペンチル、シクロペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルピロピル、及びネオペンチル(並びに類似置換シクロブチル及びシクロピロピル)が含まれ;ブテニルにはE及びZ形の1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル及び2-メチル-2-プロペニル(並びにシクロブテニル及びシクロプロペニル)が含まれ。置換を有する環状化合物には全ての異性形が含まれ、例えば、メチルフェニルにはオルト-メチルフェニル、メタ-メチルフェニル及びパラ-メチルフェニルが含まれ;ジメチルフェニルには2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジフェニルメチル、3,4-ジメチルフェニル、及び3,5-ジメチルフェニルが含まれるであろう。
シクロペンタジエニル及びインデニル配位子をアニオン配位子として以下に示す。環の番号付けスキームをも示す。シクロペンタジエニル配位子が1つの架橋置換基を有する場合、架橋置換基は1位にある。シクロペンタジエニル配位子が2つの架橋置換基を有する場合、架橋置換基は1位と2位にある。フルオレニル配位子が架橋置換基を有する場合、架橋置換基は9位にある。ジベンゾ[b,h]フルオレンが架橋置換基を有する場合、架橋置換基は12位にある。
【0035】
【化1】

【0036】
以下に示すように、ヘテロシクロペンタペンタレニル、ヘテロフルオレニル等について同様の番号付け及び命名スキームを用いる。示した各構造はアニオンとして描いてある。
ヘテロシクロペンタペンタレニルの非限定例には以下のものが含まれ、ここで、Qは、ヘテロ原子O、S、Se、若しくはTe、又はヘテロ原子基、NR**、PR**、AsR**、若しくはSbR**であり、R**は、水素、又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、若しくはゲルミルカルビル置換基である。ヘテロシクロペンタペンタレニル配位子が架橋置換基を有する場合、架橋置換基は7位にある。
【化2】

【0037】
ヘテロフルオレニルの非限定例として以下のものが挙げられ、ここで、Zはヘテロ原子N又はPを表す。ヘテロフルオレニル配位子が架橋置換基を有する場合、架橋置換基は5位にある。
【化3】

【0038】
「環ヘテロ原子」は、環状環構造内にあるヘテロ原子である。「ヘテロ原子置換基」は、ヘテロ原子を介して環構造に直接結合している、ヘテロ原子含有基である。「架橋ヘテロ原子置換基」は、ヘテロ原子を介して2つの異なる環構造に直接結合しているヘテロ原子又はヘテロ原子基である。用語「環ヘテロ原子」、「ヘテロ原子置換基」、及び「架橋ヘテロ原子置換基」を以下に示す。ここで、Z及びR'は上記定義どおりである。R'がさらに配位子「A」と定義される場合は「ヘテロ原子 置換基」が「架橋ヘテロ原子置換基」であり得ることに留意すべきである。
【0039】
【化4】

【0040】
「環炭素原子」は、環状環構造の一部である炭素原子である。この定義によって、インデニル配位子は9個の環炭素原子を有し;シクロペンタジエニル配位子は5個の環炭素原子を有する。
遷移金属化合物は対称要素を有し、対称基に属する。これらの要素及び基はよく確立されており、F. Albert Cotton, Wiley-Interscience, 1971によるChemical Applications of Group Theory(第2版)から参照可能である。Cs対称を含む化合物は鏡面を有する。例えば、下記構造は、ジルコニウム中心を二分するCs対称面、炭素架橋並びにシクロペンタジエニル及びフルオレニル配位子を有する。
【化5】

【0041】
擬Cs対称を含む化合物は、架橋基、不安定な配位子、及びシクロペンタジエニル配位子又はフルオレニル配位子上の同様の大きさの離れた置換基が該化合物の対称性の決定に含まれないこと以外は同様である。これらの化合物は、正確にはCs-対称でないが、オレフィンの重合又はオリゴマー化のCs-対称活性活性サイトを有するとみなされる。従って、例えばMeEtSi又はMePhSi架橋配位子を有する化合物は、適切な残存配位子構造を前提として擬Cs-対称面を有するとみなされる。同様に、例えば1つのMe配位子及び不安定な1つのCl配位子を有する化合物は、適切な残存配位子構造を前提として擬Cs-対称面を有するとみなされる。擬Cs対称化合物の非限定例を以下に示す。
【化6】

【0042】
擬Cs対称性の化合物は、置換基が活性サイトから離れている場合、不安定でない配位子(すなわちシクロペンタジエニル又はフルオレニル配位子)上に異なった置換基を有すこともあり得る。擬対称置換基と呼ばれるこのタイプの置換基は、典型的に架橋基に隣接し、実質的には相互に大きさが異ならない。典型的にこれらの置換基の大きさの差異は相互の2個の非水素原子以内である。従って、2位及び5位でそれぞれメチル及びエチルによって置換されているシクロペンタジエニル、或いは1位及び8位でそれぞれヘキシル及びオクチルによって置換されているフルオレニルは、擬Cs対称性を有するとみなされるであろう。
一般に、この発明で有用な触媒は、シンジオタクチックポリプロピレンを生じさせることも水素と反応して、成長するポリマー又はオリゴマー鎖を終結させることもできる当該触媒である。
本発明の実施形態では、本発明のPAO構造を作製できる触媒は、Cs対称性又は擬Cs対称性を有する、下記式によって表されるメタロセン化合物(プレ触媒)である。
【0043】
【化7】

(1)
【0044】
式中、
Mは、金属中心であり、かつ第4族金属、好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはジルコニウム又はハフニウムであり;
L1は、無置換フルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル配位子、又は擬対称置換基で置換されたフルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル配位子であり、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり、かつ任意に2つ以上の隣接置換基が連結して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状置換基を形成してよく;
L2は、シクロペンタジエニル環又は環の2位及び5位で擬対称置換基によって置換された置換シクロペンタジエニル環であり、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり;
Gは架橋基であり;
Xは、独立に、ヒドリド基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;或いは両Xが連結して金属原子に結合して、約3〜約20個の炭素原子を含む金属環状環を形成し;或いは両方ともオレフィン、ジオレフィン又はアライン配位子であってよく;両Xが、独立に、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド又は他の一価アニオン配位子であってよく、或いは両Xが連結してアニオンキレート配位子を形成してもよい。
【0045】
式(1)中、L1は、好ましくはフルオレニル又は置換フルオレニル、さらに好ましくはフルオレニル、2,7-ジメチルフルオレニル、2,7-ジエチルフルオレニル、2,7-ジプロピルフルオレニル、2,7-ジブチルフルオレニル、2,7-ジフェニルフルオレニル、2,7-ジクロロフルオレニル、2,7-ジブロモフルオレニル、3,6-ジメチルフルオレニル、3,6-ジエチルフルオレニル、3,6-ジプロピルフルオレニル、3,6-ジブチルフルオレニル、3,6-ジフェニルフルオレニル、3,6-ジクロロフルオレニル、3,6-ジブロモフルオレニル又は 1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニル、さらに好ましくはフルオレニル、2,7-ジメチルフルオレニル、2,7-ジエチルフルオレニル、2,7-ジプロピルフルオレニル、2,7-ジブチルフルオレニル、3,6-ジメチルフルオレニル、3,6-ジエチルフルオレニル、3,6-ジプロピルフルオレニル、3,6-ジブチルフルオレニル、又は1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニル、最も好ましくは 2,7-di-tert-ブチルフルオレニル又はフルオレニルであり;L2は、好ましくはシクロペンタジエニルであり;Gは、好ましくはメチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルメチレン、ジメチルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(4-トリエチルシリルフェニル)シリレン、エチレン、さらに好ましくはジフェニルメチレン、ジフェニルシリレン、ジメチルシリレン及びエチレンであり;最も好ましくはジフェニルメチレンであり;Xは、好ましくはヒドロカルビル又はハロ、さらに好ましくはメチル、ベンジル、フルオロ又はクロロ、最も好ましくはメチル又はクロロであり;Mは、好ましくはジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはジルコニウムである。
本発明の好ましい実施形態では、Cs対称又は擬Cs対称を有する式(1)で表されるメタロセン化合物(プレ触媒)のサブセットは、下記式(1a)で表される:
【0046】
【化8】

【0047】
式中、M、G及びXは、式(1)の定義どおりであり;
各Ra及びRbは、各Raが同一であり、各Rbが同一であり、かつ化合物がCs対称又は擬Cs対称になるようにするという条件で、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、ゲルミルカルビル又は極性基から選択され、かつ任意に2つ以上の隣接置換基が連結して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状置換基を形成してよく;
各Rcは、他方に対して擬対称置換基であり、かつ水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基から選択され;
各Rdは、他方に対して擬対称置換基であり、かつ水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基から選択される。
本発明の式(1a)のいくつかの実施形態では、各Rd、Ra及びRcが好ましくは水素であり、かつ各Rbが好ましくは水素、ヒドロカルビル、ハロゲン、シリルカルビル、又は極性基;さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、ピロピル、ブチル、フェニル、メシチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ジメチルアミド、ジエチルアミド又はメトキシ;なおさらに好ましくは水素又はブチル;なおさらに好ましくは水素又はtert-ブチル;最も好ましくは水素である。
本発明の式(1a)の他の実施形態では、各Rd、Rb及びRcが好ましくは水素であり、かつ各Raが好ましくは水素、ヒドロカルビル、ハロゲン、又はシリルカルビル;さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、ピロピル、ブチル、フルオロ、クロロ、又はブロモ;なおさらに好ましくは水素又はブチル;なおさらに好ましくは水素又はtert-ブチル;最も好ましくは水素である。
さらに、本発明の式(1a)の他の実施形態では、各Rd及びRcが好ましくは水素であり、かつ各Ra及びRbが結合して、融合した部分的に飽和の6員炭素環を形成し、該融合環はそれぞれ好ましくは4つのメチル置換基で置換されている。このような好ましい配位子構造を下記式(1b)に示す。
【0048】
【化9】

【0049】
さらに本発明の式(1a)の他の実施形態では、Rc及びRdが好ましくは水素であり;各Ra及びRbが水素、臭素、塩素、メチル、エチル、ピロピル、ブチル又はフェニルから選択され、さらに好ましくはRaが水素であり、かつRbが水素、メチル、エチル、ピロピル、又はブチルから選択され、或いはRbが水素であり、かつRaが水素、メチル、エチル、ピロピル、又はブチルから選択され、なおさらに好ましくはRaが水素であり、かつRbがtert-ブチル又は水素であり;Gが好ましくはメチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルメチレン、ジメチルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(4-トリエチルシリルフェニル)シリレン、エチレン、さらに好ましくはジフェニルメチレン、ジフェニルシリレン、及びジメチルシリレン;最も好ましくはジフェニルメチレンであり;Xが好ましくはヒドロカルビル又はハロ、さらに好ましくはメチル、ベンジル、フロろ又はクロロ、最も好ましくはメチル又はクロロであり;Mが好ましくはジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはジルコニウムである。
【0050】
式(1)で表されるプレ触媒の好ましい非限定例としては、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、メチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウム ジメチル、メチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウム ジメチル、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウム ジメチル、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウム ジメチル、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウム ジメチル、及びエチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。式(1)で表される最も好ましいプレ触媒は、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド及びジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジメチルである。
本発明の別の実施形態では、本発明のPAO構造を作製できる触媒は、Cs対称又は擬Cs対称を有する下記式(2)で表されるメタロセン化合物(プレ触媒)を含む。
【0051】
【化10】

(2)
【0052】
式中、
Mは、金属中心であり、かつ第4族金属、好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはチタンであり;
L1は、無置換フルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくはヘテロフルオレニル配位子、又は擬対称置換基で置換されたフルオレニル、ヘテロシクロペンタペンタレニル、又はヘテロフルオレニル配位子であり、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり、かつ任意に2つ以上の隣接置換基が連結して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状置換基を形成してよく;
Gは架橋基であり;
Jは、第15族から選択されるヘテロ原子、好ましくはN又はP、最も好ましくはNであり;
R’は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、又は置換ハロカルビル基であり;
L’は、中性ルイス塩基であり、かつwはMに結合しているL’の数を表し、wは0、1、又は2であり、かつ任意にいずれのL’及びいずれのXも相互に結合し得る。
Xは、独立に、ヒドリド基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;或いは両Xが連結して金属原子に結合して、約3〜約20個の炭素原子を含む金属環状環を形成し;或いは両方ともオレフィン、ジオレフィン又はアライン配位子であってよく;両Xが独立に、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド又は他の一価アニオン配位子であってよく、或いは両Xが連結してアニオンキレート配位子を形成してもよい。
【0053】
式(2)中、L1は好ましくはフルオレニル又は置換フルオレニル、さらに好ましくはフルオレニル、2,7-ジメチルフルオレニル、2,7-ジエチルフルオレニル、2,7-ジプロピルフルオレニル、2,7-ジブチルフルオレニル、2,7-ジフェニルフルオレニル、2,7-ジクロロフルオレニル、2,7-ジブロモフルオレニル、3,6-ジメチルフルオレニル、3,6-ジエチルフルオレニル、3,6-ジプロピルフルオレニル、3,6-ジブチルフルオレニル、3,6-ジフェニルフルオレニル、3,6-ジクロロフルオレニル、3,6-ジブロモフルオレニル又は1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニル、さらに好ましくはフルオレニル、2,7-ジメチルフルオレニル、2,7-ジエチルフルオレニル、2,7-ジプロピルフルオレニル、2,7-ジブチルフルオレニル、3,6-ジメチルフルオレニル、3,6-ジエチルフルオレニル、3,6-ジプロピルフルオレニル、3,6-ジブチルフルオレニル、又は1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニル、最も好ましくは2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル、3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-オクタヒドロジベンゾフルオレニル、又はフルオレニルであり;Gは、好ましくはメチレン、ジメチルメチレン、ジフェニルメチレン、ジメチルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ(4-トリエチルシリルフェニル)シリレン、エチレン、さらに好ましくはジフェニルメチレン、ジフェニルシリレン、メチルフェニルシリレン、及びジメチルシリレン;最も好ましくはジメチルシリレンであり;Jは、好ましくは窒素であり、R’は、好ましくはヒドロカルビル又はハロカルビル、さらに好ましくはC3-C20ヒドロカルビル、さらに好ましくはピロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ベンジル、フェニル及び置換フェニルの全ての異性体(環状及び多環状異性体を含めて)、なおさらに好ましくはtert-ブチル、ネオペンチル、ベンジル、フェニル、ジイソピロピルフェニル、アダマンチル、ノルボルニル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロデシル、及びシクロドデシル、最も好ましくは、tert-ブチル、アダマンタ-1-イル、ノルボルン-2-イル、シクロヘキシル、シクロオクチル、及びシクロドデシルであり;Xは、好ましくはヒドロカルビル又はハロ、さらに好ましくはメチル、ベンジル、フロロ又はクロロ、最も好ましくはメチル又はクロロであり;wは、好ましくはゼロ(L’が非存在)であり;Mは、好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはチタンである。
【0054】
式(2)で表されるプレ触媒の好ましいが、非限定的な例としては、メチレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジメチル、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジメチル、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジメチル、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジメチル、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタン ジメチル、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(tert-ブチルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジメチル、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタン ジメチル、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジメチル、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジメチル、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタン ジメチル、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(ベンジルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジメチル、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジメチル、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジメチル、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジメチル、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジメチル、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(アダマンタ-1-イルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリド、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリド、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリド、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリド、メチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリド、メチレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジメチル、ジメチルメチレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジメチル、ジフェニルメチレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジメチル、ジメチルシリレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタン ジメチル、ジフェニルシリレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジメチル、及びメチルフェニルシリレン(9-フルオレニル)(シクロドデシルアミド)チタンジクロリドが挙げられる。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態では、本発明のPAO構造を作製できる触媒は、Cs対称又は擬Cs対称を有する、下記式(3)で表されるメタロセン化合物(プレ触媒)を含む。
【化11】

(3)
【0056】
式中、
Mは金属中心であり、かつ第4族金属、好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはジルコニウム又はハフニウムであり;
L3は、シクロペンタジエニル環であり、任意に環の4位で置換されていてもよく、該置換基はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビルである基から選択され;
L4は、置換シクロペンタジエニル環であり、環の3位と5位に擬対称置換基を有し、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり;
G’及びG”は架橋基であり;
Xは独立に、ヒドリド基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;或いは両Xが連結して金属原子に結合して、約3〜約20個の炭素原子を含む金属環状環を形成し;或いは両方ともオレフィン、ジオレフィン又はアライン配位子であってよく;或いは両Xが独立に、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド又は他の一価アニオン配位子であるか又は両Xが連結してアニオンキレート配位子を形成してもよい。
【0057】
式(3)中、L3は好ましくはシクロペンタジエニル、又はシクロペンタジエニル環の4位に置換のあるヒドロカルビル若しくはシリルカルビル置換シクロペンタジエニル、さらに好ましくはシクロペンタジエニル、4-メチルシクロペンタジエニル、4-エチルシクロペンタジエニル、4-ピロピルシクロペンタジエニル、4-ブチルシクロペンタジエニル、4-ペンチルシクロペンタジエニル、4-ヘキシルシクロペンタジエニル、4-ヘプチルシクロペンタジエニル、3-オクチルシクロペンタジエニル、又は4-トリメチルシリルシクロペンタジエニル、なおさらに好ましくはシクロペンタジエニル、4-イソピロピルシクロペンタジエニル、4-tert-ブチルシクロペンタジエニル、4-(2,2-ジメチルペンタ-3-イル)シクロペンタジエニル、4-(2,2-ジメチルブタ-3-イル)シクロペンタジエニル又は4-トリメチルシリルシクロペンタジエニル、最も好ましくはシクロペンタジエニル、4-イソピロピルシクロペンタジエニル、又は4-トリメチルシリルシクロペンタジエニルであり;L4は好ましくは、シクロペンタジエニル環の3位及び5位に置換のあるヒドロカルビル又はシリルカルビル置換シクロペンタジエニル、さらに好ましくは3,5-ジメチルシクロペンタジエニル、3,5-ジエチルシクロペンタジエニル、3,5-ジプロピルシクロペンタジエニル、3,5-ジブチルシクロペンタジエニル、3,5-ジペンチルシクロペンタジエニル、3,5-ジヘキシルシクロペンタジエニル、3,5-ジベンジルシクロペンタジエニル、又は3,5-ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル、なおさらに好ましくは3,5-ジメチルシクロペンタジエニル、3,5-ジイソピロピルシクロペンタジエニル、3,5-ジ-tert-ブチルシクロペンタジエニル、3,5-ジシクロペンチルシクロペンタジエニル、3,5-ジペンタ-3-イルシクロペンタジエニル、3,5-ジシクロヘキシルシクロペンタジエニル、3,5-ジベンジルシクロペンタジエニル、又は3,5-ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル、最も好ましくは3,5-ジメチルシクロペンタジエニル、3,5-ジイソピロピルシクロペンタジエニル、3,5-ジ-tert-ブチルシクロペンタジエニル、3,5-ジベンジルシクロペンタジエニル、又は3,5-ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニルであり;各G’及びG”は好ましくはメチレン、ジメチルメチレン、ジメチルシリレン、さらに好ましくはジメチルメチレン、及びジメチルシリレン;最も好ましくはジメチルシリレンであり;Xは好ましくはヒドロカルビル又はハロ、さらに好ましくはメチル、ベンジル、フロロ又はクロロ、最も好ましくはメチル又はクロロであり;Mは好ましくはジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはジルコニウムである。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、Cs対称又は擬Cs対称を有する、式(3)で表されるメタロセン化合物(プレ触媒)は、下記式(3a)で表される。
【化12】

【0059】
式中、M、G’、G”、及びXは式(3)の定義どおりであり;
Reは、水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビル基から選択され;
各Rf及びRgは、化合物がCs対称又は擬Cs対称になるように各Rf及びRgを選択するという条件で、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルから選択される。
【0060】
式(3a)の本発明のいくつかの実施形態では、各Rf及びRgが好ましくはヒドロカルビル又はシリルカルビル、さらに好ましくは、メチル、エチル、ピロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、又はトリメチルシリル、さらに好ましくは、メチル、イソピロピル、tert-ブチル、シクロペンチル、ペンタ-3-イル、シクロヘキシル、ベンジル、又はトリメチルシリル、最も好ましくはメチル、イソピロピル、tert-ブチル、ベンジル又はトリメチルシリルであり;かつReが好ましくは水素、ヒドロカルビル又はシリルカルビル、さらに好ましくは、メチル、エチル、ピロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、又はトリメチルシリル;なおさらに好ましくは、水素、イソピロピル、tert-ブチル、2,2-ジメチルペンタ-3-イル、2,2-ジメチルブタ-3-イル、又はトリメチルシリル、最も好ましくは、水素、イソピロピル又はトリメチルシリルである。
式1、1a、1b、2、3又は3a中、G、G’及びG”はR*2C、R*2Si、R*2Ge、R*2CCR*2、R*C=CR*、R*2CSiR*2、R*2SiSiR*2、R*B、R*2C-BR*、R*N、R*P、O、S及びSeから選択され、ここで、各R*は、水素、C1〜C20含有ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル置換基から独立に選択され、かつ任意に2つ以上の隣接R*が連結して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和、環状又は多環状置換基を形成してもよい。好ましくは、G、G’及びG”がR*2C、R*2Si、R*2Ge、R*2CCR*2、R*B、R*N、R*P、O、S、及びSeから選択され、ここで、各R*は上記定義どおりである。最も好ましくは、G、G’及びG”がR*2C、R*2Si、及びR*2CCR*2から選択される。
本発明のさらに別の実施形態では、本発明のPAO構造を作製できる触媒は、下記式(4)で表される、C2対称を有するメタロセン化合物(プレ触媒)を含む。
【0061】
【化13】

(4)
【0062】
式中、
Mは金属中心であり、かつ第4金属、好ましくはチタン、ジルコニウム or ハフニウム、最も好ましくはジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはチタンであり;
Oは酸素であり;
Nは窒素であり;
R1は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり、最も好ましくはR1がハロカルビルであり;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり、最も好ましくはR2が3個以上の炭素原子を有するヒドロカルビル又は3個以上の炭素原子を有するシリルカルビルであり;
R3、R4及びR5は、独立に水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビル基であり、最も好ましくはR3、R4及びR5が水素であり;
Xは独立に、ヒドリド基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;或いは両Xが連結して金属原子に結合して、約3〜約20個の炭素原子を含む金属環状環を形成し;或いは両方ともオレフィン、ジオレフィン又はアライン配位子であってよく;両Xが独立に、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド又は他の一価アニオン配位子であってよく、或いは両Xが連結してアニオンキレート配位子を形成してもよい。
【0063】
本発明の式(4)のいくつかの実施形態では、R1は好ましくはヒドロカルビル又はハロカルビル基、さらに好ましくは、メチル、エチル、ピロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ベンジル、フェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、ピロピルフェニル、ジプロピルフェニル、ペルフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、ジフルオロフェニル、又はフルオロフェニル、さらに好ましくは、フェニル、2-メチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2-イソピロピルフェニル、ペルフルオロフェニル、2,4,6-トリフルオロフェニル、2,6-ジフルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル又は4-フルオロフェニル、最も好ましくはペルフルオロフェニルであり;R2は好ましくはヒドロカルビル又はシリルカルビル基、さらに好ましくはC3-C12ヒドロカルビル又はC3-C12シリルカルビル、なおさらに好ましくは、ピロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、クミル、又はトリメチルシリル、なおさらに好ましくは、イソピロピル、tert-ブチル、クミル、又はトリメチルシリル、最も好ましくは、tert-ブチル又はトリメチルシリルであり;R3、R4及びR5は好ましくは水素又はヒドロカルビル基、最も好ましくは水素であり;Xは好ましくはヒドロカルビル又はハロ、さらに好ましくはメチル、ベンジル、フロロ又はクロロ、最も好ましくはメチル又はクロロであり;Mは好ましくはチタン、ジルコニウム又はハフニウム、最も好ましくはチタンである。
本開示の好ましいメタロセン化合物(プレ触媒)は、典型的に6%より多くmr三連構造を有するポリオレフィンの製造に特異的な触媒系を提供する。
【0064】
(活性化剤及び触媒活性化)
触媒前駆体は、一般に知られている活性化剤で活性化されると、オレフィンの重合又はオリゴマー化に活性な触媒を形成する。ルイス酸活性化剤は、トリフェニルホウ素、トリス-ペルフルオロフェニルホウ素、トリス-ペルフルオロフェニルアルミニウム等を包含するが、アルモキサンと呼ばれる分類の活性化剤を除外する。イオン性活性化剤には、ジメチルアニリニウムテトラキスペルフルオロフェニルボラート、トリフェニルカルボニウムテトラキスペルフルオロフェニルボラート、ジメチルアニリニウムテトラキスペルフルオロフェニルアルミナート等が含まれる。まとめると、ルイス酸活性化剤及びイオン性活性化剤は、容易に特徴づけられるので個別(discrete)活性化剤と呼ばれるが、アルモキサンは十分に特徴づけられない。同様に、ルイス酸活性化剤及びイオン性活性化剤は、非常に過剰に必要なアルモキサン活性化剤に比し、遷移金属化合物に対して相対的に低い分子比の活性化剤を必要とするので、化学量論的活性化剤と呼ばれる。
共活性化剤は、個別活性化剤と併用したときに活性触媒が形成されるように、遷移金属錯体をアルキル化することができる化合物である。共活性化剤として、アルモキサン、例えばメチルアルモキサン等、変性アルモキサン、例えば変性メチルアルモキサン等、及びアルミニウムアルキル、例えばトリメチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、及びトリ-イソピロピルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム又はトリ-n-ドデシルアルミニウム等が挙げられる。共活性化剤は、プレ触媒がジヒドロカルビル又はジヒドリド錯体でない場合は典型的にルイス酸活性化剤及びイオン性活性化剤と併用される。
共活性化剤を捕捉剤として使用して、供給原料又は反応器内の不純物を不活化することもある。また、共活性化剤を連鎖移動剤又は可逆的連鎖移動剤(chain shuttling agent)として使用することもある。
特に好ましい共活性化剤には、式:R3Al(式中、各Rは、独立に、C1〜C18アルキル基であり、好ましくは各Rは、独立に、メチル、エチル、n-ピロピル、イソ-ピロピル、イソ-ブチル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、n-ヘプチル、イソ-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、及びそれらのイソ-類似体から成る群より選択される)によって表されるアルキルアルミニウム化合物がある。
【0065】
本方法において、水素は、反応の有用な連鎖移動剤である。好ましい実施形態では、水素が存在しないか又は限定量で使用する場合に水素の必要性を減らすため、本明細書に記載の方法で代替連鎖移動剤(CTA)を使用することができる。好ましい代替連鎖移動剤としては、ジエチル亜鉛、及びトリアルキルアルミニウム、例えばトリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等、又はその混合物が挙げられる。代替CTAは、遷移金属化合物対CTAのモル比が約1:1〜1:100、好ましくは約1:4〜1:50、さらに好ましくは約1:10〜約1:33で使用されることが多い。代替CTA対遷移金属化合物のモル比は、好ましくは100:1未満、さらに好ましくは50:1未満、最も好ましくは35:1未満である。
中性又はイオン性活性化剤、例えばトリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリスペルフルオロフェニルホウ素、トリスペルフルオロナフチルホウ素、ポリハロゲン化ヘテロボランアニオン(WO 98/43983)、ホウ酸(米国特許第5,942,459号)又はその組合せを使用することも本発明の範囲内である。
化学量論的活性化剤(共活性化剤と併用する時)を本発明の実施で使用し得る。好ましくは、個別イオン性活性化剤、例えば[Me2PhNH][B(C6F5)4]、[Ph3C][B(C6F5)4]、[Me2PhNH][B(C6H3-3,5-(CF3)2)4]、[Ph3C][B(C6H3-3,5-(CF3)2)4]、[NH4][B(C6H5)4]等又はルイス酸活性化剤、例えばB(C6F5)3又はB(C6H5)3等を使用できる。ここで、Phはフェニルであり、Meはメチルである。
中性化学量論的活性化剤の例としては、三置換ホウ素、テルル、アルミニウム、ガリウム及びインジウム又はその混合物が挙げられる。3つの置換基は、アルキル、アルケニル、ハロゲン、置換アルキル、アリール、ハロゲン化アリール、アルコキシ及びハロゲン化物からそれぞれ独立に選択される。好ましくは、3つの基は、ハロゲン、単環状又は多環状(ハロ置換されたものを含め)アリール、アルキル、及びアルケニル化合物及びその混合物から独立に選択され、1〜20個の炭素原子を有するアルケニル基、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、1〜20個の炭素原子を有するアルコキシ基及び3〜20個の炭素原子を有するアリール基(置換アリールを含め)が好ましい。さらに好ましくは、3つの基は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、フェニル、ナフチル又はその混合物である。なおさらに好ましくは、3つの基はハロゲン化、好ましくはフッ素化アリール基である。最も好ましくは、中性化学量論的活性化剤はトリスペルフルオロフェニルホウ素又はトリスペルフルオロナフチルホウ素である。
【0066】
イオン性化学量論的活性化剤化合物は、活性プロトン、或いはイオン化化合物の残部と会合するが、配位していないか、又はルーズにしか配位していないいくつかの他のカチオンを含有し得る。該化合物などは欧州公報EP-A-0 570 982、EP-A-0 520 732、EP-A-0 495 375、EP-B1-0 500 944、EP-A-0 277 003及びEP-A-0 277 004、並びに米国特許第5,153,157号、第5,198,401号、第5,066,741号、第5,206,197号、第5,241,025号、第5,384,299号及び第5,502,12号並びに米国特許出願第08/285,380号(1994年8月3日出願)に記載されており、参照によって全ての内容をここに完全に援用する。
イオン性触媒は、遷移金属化合物を活性化剤、例えばB(C6F6)3と反応させることによって調製可能であり、このB(C6F6)3は、該遷移金属化合物の加水分解性配位子(X’)と反応すると([B(C6F5)3(X’)]-)等のアニオンを形成し、反応によって生成されるカチオン遷移金属種を安定化する。この触媒は、イオン性化合物又は組成物である活性化剤成分を用いて調製可能であり、好ましくは調製される。しかしながら本発明では、中性化合物を利用する活性化剤の調製をも考慮する。
本発明の方法で使用するイオン性触媒系の調製で活性化剤成分として有用な化合物は、好ましくはプロトンを供与できるブレンステッド酸であるカチオンと、適合性非配位アニオンとを含み、このアニオンは相対的に大きく(かさ高く)、2つの化合物を合わせると生じる活性触媒種を安定化することができ、かつ前記アニオンは、オレフィン性ジオレフィン基質及びアセチレン性不飽和基質又は他の中性ルイス塩基、例えばエーテル、ニトリル等によって置換されるのに十分不安定であろう。1988年に公表されたEPA 277,003及びEPA 277,004には二分類の適合性非配位アニオンが開示されている:1)中心の電荷保有金属若しくはメタロイドコアに共有結合的に配位結合してそれを遮蔽している複数の親油性基を含むアニオン性配位錯体、及び2)カルボラン、メタラカルボラン及びボラン等の複数のホウ素原子を含むアニオン。
【0067】
好ましい実施形態では、イオン性化学量論的活性化剤は、カチオン及びアニオン成分を含み、下記式:(L**-H)d+(Ad-)で表し得る。式中、L**は中性ルイス塩基であり;Hは水素であり;(L**-H)+はブレンステッド酸であり、Ad-は、電荷d-を有する非配位アニオンであり、かつdは1〜3の整数である。
カチオン成分(L**-H)d+は、ブレンステッド酸、例えばプロトン又はプロトン化ルイス塩基或いはアルキル化後のプレ触媒からのアルキル若しくはアリール等の成分をプロトン化するか又は引き抜くことができる還元性ルイス酸を包含し得る。
活性化カチオン(L**-H)d+は、結果として遷移金属カチオンをもたらす、プロトンをアルキル化遷移金属触媒前駆体に供与できるブレンステッド酸であってよく、アンモニウム、オキソニウム、ホスホニウム、シリリウム、及びその混合物、好ましくはメチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、メチルジフェニルアミン、ピリジン、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリン、p-ニトロ-N,N-ジメチルアニリンのアンモニウム、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、及びジフェニルホスフィン由来のホスホニウム、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル由来のオキソニウム、ジエチルチオエーテル及びテトラヒドロチオフェン等のチオエーテル由来のスルホニウム、並びにその混合物が挙げられる。活性化カチオン(L**-H)d+は、銀、トロピリウム、カルベニウム(carbenium)、フェロセニウム及び混合物等の成分であってもよく、好ましくはカルボニウム(carbonium)及びフェロセニウム;最も好ましくはトリフェニルカルボニウムである。アニオン成分Ad-は、式[Mk+Qn]d-(式中、kは1〜3の整数であり;nは2〜6の整数であり;n-k=d;Mは、元素周期表第13族の元素、好ましくはホウ素又はアルミニウムから選択され、かつQは、独立にヒドリド、架橋及び非架橋ジアルキルアミド、ハライド、アルコキシド、アリールオキシド、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、及びハロ置換ヒドロカルビル基であり、前記Qは20個までの炭素原子を有する(但し、最高1つの存在でQがハライドである)。好ましくは、各Qは、1〜20個の炭素原子を有するフッ素化ヒドロカルビル基であり、さらに好ましくは各Qは、フッ素化アリール基であり、最も好ましくは各Qがペンタフルオリルアリール基である。適切なAd-の例としては、参照によって全体をここに援用する米国特許第5,447,895号に記載の二ホウ素化合物も挙げられる。
【0068】
この開示の改良された触媒の調製で共活性化剤と組み合わせて非配位アニオン活性化剤として使用し得るホウ素化合物の例示的な非限定例は、三置換アンモニウム塩、例えば:トリメチルアンモニウムテトラフェニルボラート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボラート、トリピロピルアンモニウムテトラフェニルボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボラート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボラート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラフェニルボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリピロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(sec-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル) ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリピロピルアンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、ジメチル(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリピロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート, トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリピロピルアンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリエチルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリピロピルアンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリ(tert-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、N,N-ジメチル-(2,4,6-トリメチルアニリニウム)テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、及びジアルキルアンモニウム塩、例えば:ジ-(イソ-ピロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、及びジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;並びに他の塩、例えばトリ(o-トリル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラフェニルボラート、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボラート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート、トリエチルシリリウムテトラフェニルボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラフェニルボラート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トリエチルシリリウムテトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス-(2,3,4,6-テトラフルオロフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トロピリウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリエチルシリリウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トロピリウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリエチルシリリウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラートである。
【0069】
最も好ましくは、非配位アニオン活性化剤、(L**-H)d+(Ad-)はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロビフェニル)ボラート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボラート、又はトリフェニルカルベニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボラートである。
メタロイドのないシクロペンタジエニドイオンを含有する非配位アニオン含む共触媒又は活性化剤で触媒前駆体を活性化することもできる。これらは2002年5月16日に公表された米国特許公開2002/0058765 A1に記載されており、本開示のためには、触媒前駆体への共活性化剤の添加が必要である。「適合性」非配位アニオンは、最初に形成された錯体が分解するときに中性にならない当該アニオンである。さらに、このアニオンは、アニオン性置換基又はフラグメントをカチオンに移して、中性遷移金属化合物及び該アニオン由来の中性副生物を形成させることはない。この開示で有用な好ましい非配位アニオンは、+1でそのイオン電荷を釣り合わせるという意味で遷移金属錯体カチオンを安定化し、それにもかかわらず重合中にエチレン性又はアセチレン性不飽和モノマーによる置換を可能にするのに十分な不安定性を保持する適合性非配位アニオンである。これらのタイプの共触媒は、限定するものではないが、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム又はトリメチルアルミニウム等の捕捉剤と併用することもある。
【0070】
開示方法は、最初は中性ルイス酸であるが、アルキル化遷移金属化合物との反応によってカチオン性金属錯体及び非配位アニオン、又は双性イオン性錯体を形成する共触媒化合物又は活性化剤化合物を利用することもできる。アルキル化メタロセン化合物は、触媒前駆体及び共活性化剤の反応から形成される。例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素又はアルミニウムが作用してヒドロカルビル配位子を引き抜いて開示カチオン性遷移金属錯体をもたらして非配位アニオンを安定化する。類似の第4族メタロセン化合物の説明のため、EP-A-0 427 697及びEP-A-0 520 732を参照されたい。また、EP-A-0 495 375の方法及び化合物をも参照されたい。類似の第4族化合物を使用する双性イオン性錯体の形成については、米国特許第5,624,878号;第5,486,632号;及び第5,527,929号を参照されたい。
さらなる中性ルイス酸が技術上周知であり、形式的なアニオン性配位子を引き抜くのに適している。特にE. Y.-X. Chen及びT.J. Marksによる総説"Cocatalysts for Metal-Catalyzed Olefin Polymerization: Activators, Activation Processes, and Structure-Activity Relationships", Chem. Rev., 100, 1391-1434 (2000)を参照されたい。
非配位アニオン活性化剤のカチオンがブレンステッド酸、例えばプロトン又はプロトン化ルイス塩基(水以外)、又は還元性ルイス酸、例えばフェロセニウム若しくは銀カチオン、又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属カチオン、例えばナトリウム、マグネシウム若しくはリチウムのカチオンである場合、触媒前駆体対活性化剤のモル比は、いずれの比であってもよい。記載した活性化剤化合物の組合せを活性化のために使用してもよい。
イオン性又は中性化学量論的活性化剤(例えばNCA等)を使用する場合、触媒前駆体対活性化剤のモル比は1:10〜1:1;1:10〜10:1;1:10〜2:1;1:10〜3:1;1:10〜5:1;1:2〜1.2:1;1:2〜10:1;1:2〜2:1;1:2〜3:1;1:2〜5:1;1:3〜1.2:1;1:3〜10:1;1:3〜2:1;1:3〜3:1;1:3〜5:1;1:5〜1:1;1:5〜10:1;1:5〜2:1;1:5〜3:1;1:5〜5:1;1:1〜1:1.2である。触媒前駆体対共活性化剤のモル比は1:500〜1:1, 1:100〜100:1;1:75〜75:1;1:50〜50:1;1:25〜25:1;1:15〜15:1;1:10〜10:1;1:5〜5:1, 1:2〜2:1;1:100〜1:1;1:75〜1:1;1:50〜1:1;1:25〜1:1;1:15〜1:1;1:10〜1:1;1:5〜1:1;1:2〜1:1;1:10〜2:1である。
いくつかの実施形態では好ましい活性化剤及び活性化剤/共活性化剤の組合せには、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート若しくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、又はトリアルキルアルミニウムとジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート若しくはトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素の混合物がある。いくつかの実施形態では、捕捉化合物を化学量論的活性化剤と共に使用する。捕捉剤として有用な典型的なアルミニウム又はホウ素アルキル成分は、一般式RxJ’Z’2(式中、J’はアルミニウム又はホウ素であり、Rxは前記定義どおりであり、かつ各Z’は独立にRx又は別の一価アニオン性配位子、例えばハロゲン(Cl、Br、I)、アルコキシド(ORx)等である)で表される。最も好ましいアルミニウムアルキルには、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム等がある。好ましいホウ素アルキルには、トリエチルホウ素がある。捕捉化合物がアルモキサン及び改変アルモキサンであってもよく、メチルアルモキサン及び改変メチルアルモキサンが挙げられる。
【0071】
(担持触媒)
担持触媒及び担持触媒系を用いてsPAOを調製することができる。均一担持触媒を調製するため、触媒前駆体を好ましくは選択溶媒に溶解させる。用語「均一担持触媒」は、多孔性担体の内部細孔面を含め、担体の利用可能な表面積上で触媒前駆体、活性化剤、及び/又は活性化触媒が均一分布に近づくことを意味する。担持触媒のいくつかの実施形態は均一担持触媒を好み;他の実施形態は該好みを示さない。
他の配位触媒系を担持するのに有効ないずれの方法によっても有用な担持触媒系を調製することができ、有効とは、そのように調製された触媒を不均一法でオレフィンをオリゴマー化又は重合するのに使用できることを意味する。触媒前駆体、活性化剤、共活性化剤(必要ならば)、適切な溶媒、及び担体はいずれの順序でも又は同時に添加してもよい。
一方法により、トルエン等の適切な溶媒に溶かした活性化剤(共活性化剤があるか又はない)を担体材料と1分〜10時間撹拌して担持触媒を調製する。全溶液体積(触媒溶液、活性化剤溶液又は両方の)は、担体の細孔容積より大きくてよいが、ゲル又はスラリーを形成するのに必要な体積未満(細孔容積の90%〜400%、好ましくは100〜200%)に全溶液体積を制限する実施形態もある。この時間中に必要に応じて混合物を30〜200℃に加熱する。この混合物に触媒前駆体を、前工程で適切な溶媒を使用する場合は固体として加えてよく、又は溶液として添加する。或いは、混合物をろ過し、結果として生じる固体を触媒前駆体溶液と混合することができる。同様に、混合物を真空乾燥させて触媒前駆体溶液と混合してよい。結果として生じる触媒混合物を次に1分〜10時間撹拌し、担持触媒を溶液からろ過し、真空乾燥又は蒸発させて溶媒を除去する。
或いは、触媒前駆体及び活性化剤(及び任意の共活性化剤)を溶媒中で混ぜ合わせて溶液を形成してよい。次に溶液に担体を添加し、結果として生じる混合物を1分〜10時間撹拌する。全活性化剤/触媒前駆体溶液体積は担体の細孔容積より多くてよいが、ゲル又はスラリーを形成するのに必要な体積未満(細孔容積の90%〜400%、好ましくは100〜200%)に全溶液体積を制限する実施形態もある。撹拌後、典型的には周囲温度で10〜16時間かけて残存溶媒を真空下で除去するが、これより多いか又は少ない時間及び温度を用いてよい。
触媒前駆体を活性化剤なしで担持させてもよく;この場合、スラリープロセスの液相に活性化剤(及び必要ならば共活性化剤)を添加する。例えば、触媒前駆体の溶液を担体材料と1分〜10時間混合してよい。結果として生じるプレ触媒混合物を溶液からろ過し、真空乾燥させるか又は蒸発処理して溶媒を除去する。全触媒前駆体溶液体積は担体の細孔容積より多くてよいが、全溶液体積をゲル又はスラリーを形成するのに必要な体積未満(細孔容積の90%〜400%、好ましくは100〜200%)に制限する実施形態もある。
【0072】
さらに、上記開示のいずれかの担持法を利用する同一担体上に2種以上の異なる触媒前駆体を置いてもよい。同様に、2種以上の活性化剤又は活性化剤と共活性化剤を同一担体上に置いてもよい。
適切な固形粒子担体は典型的にポリマー又は難分解性酸化物材料で構成され、それぞれ好ましくは多孔性である。10μmより大きい平均粒径を有するいずれの担体材料もこの開示の使用に適している。種々の実施形態は、多孔性担体材料、例えば、タルク、無機酸化物、無機塩化物、例えば塩化マグネシウム並びに樹脂性担体材料、例えばポリスチレンポリオレフィン若しくはポリマー化合物又は他のいずれもの有機担体材料等を選択する。いくつかの実施形態は、担体材料として、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族、又は第14族金属酸化物又はメタロイド酸化物などの無機酸化物材料を選択する。いくつかの実施形態は、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、及びそれらの混合物を含めるための触媒担体材料を選択する。他の無機酸化物は単独又はシリカ、アルミナ、若しくはシリカ-アルミナと組み合わせて役立ち得る。これらはマグネシア、チタニア、ジルコニア等である。モンモリロナイト及び同様の粘土のようなルイス酸材料も担体として役立ち得る。この場合、担体が任意に活性化剤成分を兼ねることもある。しかしさらなる活性化剤を使用してもよい。場合によっては、MCM-41として一般的に知られる特定ファミリーの固形担体を使用することもできる。MCM-41は新分類の独特な結晶性担体であり、第二成分で改変すると調節可能な細孔サイズ及び調節可能な酸性を備えて調製され得る。この分類の材料及びそれらの改変の詳細な説明は米国特許第5,264,203号で見つけられる。
担体材料をあらゆる方法で前処理することができる。例えば、無機酸化物をか焼し、又はアルミニウムアルキル等の脱ヒドロキシル化剤で化学的に処理するか、或いは両方行ってよい。
上述したように、この開示によればポリマー担体も適しているであろう。例えばWO 95/15815及び米国特許第5,427,991号の記述を参照されたい。開示方法は、この開示の触媒化合物、活性化剤又は触媒系と共に使用して、特に多孔性粒子で構成される場合はそれらをポリマー担体上に吸着又は吸収させてよく、或いは官能基を介してポリマー鎖に又はポリマー鎖内に化学的結合させてよい。
有用な触媒担体は、典型的に10〜700m2/gの表面積、及び/又は0.1〜4.0cc/gの細孔容積及び10〜500μmの平均粒径を有する。一部の実施形態は50〜500m2/gの表面積、及び/又は0.5〜3.5cc/gの細孔容積、及び/又は20〜200μmの平均粒径を選択する。他の実施形態は100-400m2/gの表面積及び/又は0.8〜3.0cc/gの細孔容積、及び/又は30〜100μmの平均粒径を選択する。有用な担体は典型的に10〜1000Å、或いは50〜500Å、又は75〜350Åの細孔径を有する。
プレ触媒及び/又はプレ触媒/活性化剤の組合せは一般的に固形担体1g当たり10〜100マイクロモルの触媒前駆体;或いは固形担体1g当たり20〜80マイクロモルの触媒前駆体;又は固形担体1g当たり40〜60マイクロモルの触媒前駆体の添加(loading)レベルで担体上に沈着される。しかし、固形触媒前駆体の総量が担体の細孔容積を超えないという条件で、より多いか又は少ない値を使用してもよい。
気相重合、バルク重合、又はスラリー重合用に、或いは必要に応じて他のやり方に合わせて、プレ触媒及び/又はプレ触媒/活性化剤の組合せを担持させることができる。オレフィン重合技術分野の触媒、特にアルモキサン活性化触媒については多数の担持方法が知られており;全て本明細書での使用に適している。例えば、米国特許第5,057,475号及び第5,227,440号を参照されたい。担持イオン性触媒の例はWO 94/03056に掲載されている。米国特許第5,643,847号及びWO 96/04319Aは特に有効な方法を記載している。ポリマー及び無機酸化物は両方とも担体として役立ち得る。米国特許第5,422,325号、第5,427,991号、第5,498,582号及び第5,466,649号、並びに国際公開WO 93/11172及びWO 94/07928を参照されたい。
【0073】
別の好ましい実施形態では、反応器に入る前にプレ触媒及び/又は活性化剤(担体があるか又はない)をアルキルアルミニウム化合物、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物と混ぜ合わせる。好ましくはアルキルアルミニウム化合物は式:R3Alによって表され、式中、各Rは、独立にC1〜C20アルキル基であり;好ましくはR基は独立にメチル、エチル、ピロピル、イソピロピル、ブチル、イソブチル、n-ブチル、ペンチル、イソペンチル、n-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、n-オクチル、ノニル、イソノニル、n-ノニル、デシル、イソデシル、n-デシル、ウンデシル、イソウンデシル、n-ウンデシル、ドデシル、イソドデシル、及びn-ドデシル、好ましくはイソブチル、n-オクチル、n-ヘキシル、及びn-ドデシルから成る群より独立に選択される。好ましくはアルキルアルミニウム化合物は、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-ドデシル アルミニウムから選択される。
【0074】
(モノマー)
本明細書に記載の触媒化合物を用いて、いずれの不飽和モノマー又はモノマーをも重合又はオリゴマー化する。該モノマーには、C2〜C24オレフィン、C6〜C24オレフィン、C6〜C14オレフィン、又はC8〜C12オレフィンがある。いくつかの実施形態では、モノマーとして直鎖、分岐又は環状α-オレフィン、例えばC6〜C20直鎖α-オレフィン、C6〜C14直鎖α-オレフィン、又はC8〜C12直鎖α-オレフィンが挙げられる。特定のオレフィンモノマーは、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、3-メチル-1-ブテン、1-テトラデセン及びその混合物の1種以上であり得る。別の実施形態では、αオレフィンが、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、及び1-テトラデセン(単一又はその混合物)から成る群より選択される。別の実施形態では、αオレフィンが、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、及び1-テトラデセン(単一又はその混合物)から成る群より選択される。別の実施形態では、αオレフィンが、1-デセン、1-ドデセン、及び1-テトラデセン(単一又はその混合物)から成る群より選択される。
一実施形態では、本明細書に記載の方法を利用してホモオリゴマー又はコオリゴマーを生成する(この開示及びそれに添付の特許請求の範囲では、コオリゴマーは2、3、4、又はそれより多くの異なるモノマー単位を含み得る)。本明細書で生成されるオリゴマーには、いずれの上記モノマーのホモオリゴマー又はコオリゴマーも含まれる。一実施形態では、オリゴマーがいずれかのC8〜C12α-オレフィンのホモオリゴマーである。好ましくはオリゴマーが1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、又は1-ドデセンのホモオリゴマーである。一実施形態では、オリゴマーがデセンのホモオリゴマーである。別の実施形態では、オリゴマーが、デセンと、1種以上の上記いずかのモノマーとを含むコオリゴマーである。
【0075】
sPAOを作製するために使用するα-オレフィンとしては、限定するものではないが、C6〜C24α-オレフィンが挙げられ、C6〜C14α-オレフィン、例えば1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン及び1-テトラデセンが好ましい。得られるポリα-オレフィンの群は、ポリ-1-ヘキセン、ポリ-1-ヘプテン、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-ノネン、ポリ-1-デセン、ポリ-1-ウンデセン、ポリ-1-ドデセン、ポリ-1-トリデセン、及びポリ-1-テトラデセンであり;C12〜C18のより高次のダイマーが最終生成物に存在し得る。有用なsPAOは、一実施形態ではC4〜C18α-オレフィンから作られるC20以上から始まる炭素数のダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、及びより高次のオリゴマー又はポリマー、並びに別の実施形態ではC6〜C14α-オレフィンから作られるC20以上から始まる炭素数のオリゴマー又はポリマーである。好適なオレフィンとして、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンドデセン及び1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセンが挙げられる。一実施形態ではオレフィンが1-デセンであり、かつsPAOが1-デセンのダイマー、トリマー、テトラマー及びペンタマー(及びより高次)の混合物である。別の実施形態では、オレフィンが1-デセンであり、かつsPAOが1-デセンのトリマー、テトラマー及びペンタマー(及びより高次)の混合物である。別の実施形態では、オレフィンが1-オクテンであり、かつsPAOが1-オクテンのトリマー、テトラマー及びペンタマー(及びより高次)の混合物である。別の実施形態では、オレフィンが1-ヘキセンであり、かつsPAOが1-ヘキセンのテトラマー及びペンタマー(及びより高次)の混合物である。
別の実施形態では、sPAOが2種以上のモノマーを含むか、又は3種以上のモノマーを含むか、又は4種以上のモノマーを含むか、又は5種以上のモノマーを含み得る。例えば、C8とC10の混合物、C8とC12の混合物、C8とC14の混合物、C8、C10、C12直鎖α-オレフィンの混合物、C8、C10、C14の混合物、C6、C10、C14直鎖α-オレフィンの混合物、C6、C8、C10、C12直鎖α-オレフィンの混合物、C6、C8、C10、C14直鎖α-オレフィンの混合物、C6、C8、C12、C14直鎖α-オレフィンの混合物、又はC4、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18直鎖α-オレフィンの混合物を供給原料として使用できる。
【0076】
代替実施形態では、sPAOが50モル%未満、好ましくは40モル%未満、好ましくは30モル%未満、好ましくは20モル%未満、好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満、好ましくは3モル%未満、好ましくは0%のC2、C3、C4及びC5モノマーを含む。特に、代替実施形態では、sPAOが50モル%未満、好ましくは40モル%未満、好ましくは30モル%、好ましくは20モル%未満、好ましくは10モル%未満、好ましくは5モル%未満、好ましくは3モル%未満、好ましくは0%のエチレン、プロピレン、ブテン及びペンテンを含む。別の実施形態では、sPAOが40モル%未満のエチレンを含む。別の実施形態では、sPAOが40モル%未満のプロピレンを含む。別の実施形態では、sPAOが40モル%未満のブテンを含む。別の実施形態では、sPAOが40モル%未満のペンテンを含む。別の実施形態では、sPAOが10モル%未満のエチレンを含む。別の実施形態では、sPAOが10モル%未満のプロピレンを含む。別の実施形態では、sPAOが10モル%未満のブテンを含む。別の実施形態では、sPAOが10モル%未満のペンテンを含む。別の実施形態では、sPAOが1モル%未満のエチレンを含む。別の実施形態では、sPAOが1モル%未満のプロピレンを含む。別の実施形態では、sPAOが1モル%未満のブテンを含む。別の実施形態では、sPAOが1モル%未満のペンテンを含む。
本明細書で使用するα-オレフィンは、いくつかの商業的製造方法によって実施されるように、エチレン成長法から直接製造可能であり、或いはCO/H2合成ガスからのフィッシャー・トロプシュ炭化水素合成から、或いは内部オレフィンとエチレンのメタセシスから、又は石油若しくはフィッシャー・トロプシュ合成ワックスの高温クラッキングから、又は他のいずれのα-オレフィン合成経路からも製造可能である。この開示で好ましい供給原料は、好ましくは少なくとも80質量%のα-オレフィン(好ましくは直鎖αオレフィン)、好ましくは少なくとも90質量%のα-オレフィン(好ましくは直鎖αオレフィン)、さらに好ましくは100%のα-オレフィン(好ましくは直鎖αオレフィン)である。しかしながら、特に他成分が内部オレフィン、分岐オレフィン、パラフィン、環状パラフィン、芳香族(例えばトルエン及び/又はキシレン)の場合、この開示の供給原料としてα-オレフィン混合物を使用することもできる。これらの成分は希釈剤作用を有し、α-オレフィンの重合に実質的な有害作用を及ぼさないと考えられる。言い換えると、本明細書に記載の方法は、混合物中のα-オレフィンを選択的に変換させ、かつ他の成分を未反応のままにすることができる。これは、エチレンが混合物に存在しない場合に特に有用である。この技術を利用して、α-オレフィンを、混合供給ストリーム中の成分の残りからα-オレフィンを分離する必要性を完全に排除する重合又はオリゴマー化触媒系と選択的に反応させることによって、混合物からα-オレフィンを取り出すことができる。これは、例えば、α-オレフィン、内部オレフィン及び分岐オレフィンを含有するフィッシャー・トロプシュ合成オレフィン生成物ストリームを利用する方法で経済的に有利である。該混合物を本明細書に記載のオリゴマー化技術に供給し、選択的にα-オレフィンを反応させることができる。α-オレフィンを単離するための別工程は必要ない。この方法の有用性の別の例は、内部オレフィンとエチレンのメタセシスによって生成されるα-オレフィン(いくつかの内部オレフィンを含有し得る)に関係がある。この混合オレフィンベースストック供給原料をそのまま本開示の重合/オリゴマー化方法で反応させることができ、選択的にα-オレフィンを潤滑油生成物に変換する。従って、α-オレフィンを内部オレフィンから分離する必要なしに、ベースストック合成にα-オレフィンを使用できる。このことは、プロセス経済に有意な改善をもたらし得る。
【0077】
好ましい実施形態では、本明細書で製造されるsPAOはモノマーは、4-メチル-1-デセン、4-エチル-1-デセン、又は4-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等のように、α-不飽和から少なくとも2、好ましくは少なくとも3個離れた炭素に分岐のあるモノマーを含み得る。これらのオレフィンは、製造プロセスからの直鎖α-オレフィン中に存在してもよく、或いは意図的にそれらを添加することができる。わずかに分岐したα-オレフィンと完全に直鎖のα-オレフィンのコポリマーは、低温特性を改善した。
好ましい実施形態では、本明細書に記載のいずれのsPAOも少なくとも50モル%のC4〜C24αオレフィン及び0.5〜20モル%のエチレンを含み得る。好ましくは本明細書に記載のいずれのsPAOも少なくとも60モル%(好ましくは少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、好ましくは少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%)の、5〜24個の炭素原子を有するモノマー及び0.5〜20モル%のエチレン(好ましくは1〜15モル%、好ましくは2〜10モル%、好ましくは2〜5モル%)を含み得る。
【0078】
(重合/オリゴマー化方法)
別の実施形態では、本出願は、α-オレフィンの改良された重合又はオリゴマー化方法でに関し、この方法は、1種以上のC4〜C24α-オレフィンを、下記
(A)既に上述され、かつCs対称若しくは擬Cs対称を有する式1、1a、1b、2、3又は3aによって表されるか、又はC2対称を有する式2によって表されるプレ触媒;
(B)非配位アニオン活性化剤、
(C)トリアルキルアルミニウム、例えばトリ-イソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウムと、
(D)必要に応じて水素の非存在下又は限定量の水素の存在下で、
かつアルキルアルモキサンの非存在下、前記α-オレフィンを重合又はオリゴマー化するのに十分な反応温度及び圧力条件下で接触させる工程を含む。別の実施形態では、非配位アニオン活性化剤がN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボラートを含む。さらなる実施形態では、Cs対称又は擬Cs対称触媒が式1又は1aによって表される。別の実施形態では、触媒がジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドとも呼ばれる)を含む。
反応温度は30℃〜200℃、好ましくは50〜160℃、さらに好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜140℃であり、反応器内の水素分圧は34kPa(5psig)〜2068kPa(300psig)、好ましくは69〜1379kPa(10〜200psi)、好ましくは138〜1379kPa(20〜200psi)、好ましくは173〜1034kPa(25〜150psi)であり得る。全反応圧は、反応器内に窒素又はアルゴン等のいくらかの内部ガスを有することによって、又は特にオレフィンが反応条件下で相対的に高い部分蒸気圧を有するC2〜C6オレフィンである場合、供給オレフィン由来の部分圧を有することによって、69kPa(10psi)〜6895kPa(1000psi)であり得る。好ましい全反応器圧は、69kPa(10psi)〜5516kPa(800psi)、好ましくは103kPa(15psi)〜3447kPa(500psi)、103kPa(15psi)〜2068kPa(300psi)又は103kPa(15psi)〜1379kPa(200psi)であり得る。
【0079】
メタロセン触媒対非配位アニオン活性化剤のモル比は5〜0.2である。代替比は2〜0.5、又は1.5〜0.7、又は1.2〜0.8又は1.1〜0.9である。メタロセン濃度は、1gのオレフィン供給原料当たり1mg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり0.1mg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり50μg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり30μg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり20μg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり10μg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり5μg未満、又は1gのオレフィン供給原料当たり2μg未満から選択される。時には、反応が選択時間内で完了するように、或いは反応器内に存在し得る毒物の可能性を相殺するため、わずかに高い量の触媒を使用してよい。一般に、妥当な時間内で良い変換を維持し、かつ毒物による反応のシャットダウンを回避するのに最適なレベルで触媒濃度を保持することが目標である。
本重合方法では、必要に応じて共活性化剤を使用する。共活性化剤はメタロセンのハロゲン化物又は塩を金属アルキルに変換する。共活性化剤対メタロセンの比は、2〜200、又は4〜100又は4〜20の範囲であり得る。本開示実施形態の共活性化剤は、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、又はトリ-n-ヘキシルアルミニウムであってよい。
捕捉剤、一般的にトリ-アルキルアルミニウム化合物又は他の反応性化学薬品を添加して、供給原料又は溶媒系内の全ての不純物を捕捉し得る。捕捉剤は共活性化剤と同一でああるか又は異なってよい。アルミニウム化合物対メタロセン化合物のモル比は4〜1000、好ましくは10〜500、好ましくは20〜500、好ましくは50〜300、好ましくは75〜300、好ましくは100〜300、さらに好ましくは150〜200の範囲であり得る。大量の光捕捉剤は触媒生産性を有意に改善する。
【0080】
この開示では、溶液、スラリー、及びバルク重合又はオリゴマー化法のようなメタロセン触媒重合又はオリゴマー化法で用いられる多くの重合/オリゴマー化法及び反応器タイプを使用できる。いくつかの実施形態では、固体触媒又は担持触媒を使用する場合、スラリー又は連続固定床又は押し出し流れ(plug flow)法が適している。好ましい実施形態では、好ましくは連続撹拌タンク反応器で、連続管状反応器、又はバッチ反応器内で、溶液相、バルク相、又はスラリー相内にてモノマーをメタロセン化合物及び活性化剤と接触させる。1秒〜100時間、又は30秒〜50時間、又は2分〜6時間、又は1分〜4時間の滞留時間モノマー、メタロセン、及び活性化剤を接触させる。別の実施形態では、溶媒又は希釈剤が反応器内に存在し、好ましくはブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサンデカン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、イソピロピルベンゼン、及びn-ブチルベンゼンから成る群より選択され;好ましくはトルエン及び/又はキシレン及び/又はエチルベンゼン、直鎖状パラフィン(例えばExxonMobil Chemical Company, Houston, TXから入手可能なNorpar溶媒)、又はイソパラフィン溶媒(例えばExxonMobil Chemical Company, Houston, TXから入手可能なIsopar溶媒)である。これらの溶媒又は希釈剤は通常は供給オレフィンと同様に前処理される。
典型的に、この開示の方法では、1種以上の遷移金属化合物、1種以上の活性化剤、及び1種以上のモノマーを接触させてポリマー又はオリゴマーを製造する。これらの触媒は担持されていてよく、そのままで単一、直列、又は並列反応器内で行われる既知のスラリー、溶液、又はバルク操作様式で特に有用であろう。触媒、活性化剤又は共活性化剤が可溶性化合物の場合、反応を溶液様式で行うことができる。反応開始時又は反応中又は反応の後段階のずれかに成分の1つが反応媒体又は供給溶液に完全に溶解しない場合でさえ、溶液又はスラリー型操作が適用可能である。いずれの場合も、溶媒、例えばトルエン又は他の便利に利用可能な芳香族溶媒、又は脂肪族溶媒、又は供給α-オレフィンストリーに溶解又は懸濁した触媒成分を不活性雰囲気(普通は窒素又はアルゴン被覆雰囲気)下で反応器に供給して、重合又はオリゴマー化を起こさせる。重合又はオリゴマー化をバッチ様式で行うことができ、この場合は全ての成分を反後器に添加し、一部変換又は全変換のいずれかに予め設計された変換度まで反応させる。引き続き、任意の可能な手段、例えば空気若しくは水への曝露、又は不活化剤を含むアルコール又は溶媒の添加によって触媒を不活化する。重合又はオリゴマー化を半連続操作で行うこともでき、この場合、一定比の触媒系成分対供給オレフィンを維持するように、供給原料及び触媒系成分を連続的に及び同時に反応器に添加する。全ての供給原料及び触媒成分を添加したら、反応を所定段階まで進行させる。次にバッチ操作について述べたのと同様に触媒を不活化して反応を中断する。連続操作で重合又はオリゴマー化を行うこともでき、この場合、一定比の触媒系対供給オレフィンを維持するように供給原料及び触媒系成分を連続的及び同時に反応器に添加する。典型的な連続撹拌タンク反応器(CSTR)操作におけるように、反応器から反応生成物を連続的に取り除く。所定の変換度によって反応物質の滞留時間を制御する。取り除いた生成物を次に典型的には別の反応器内で他の操作と同様にクエンチする。好ましい実施形態では、本明細書に記載のsPAOのいずれの調製方法も連続法である。好ましくは連続法は、a)少なくとも10モル%の1種以上のC6〜C24α-オレフィンを含む供給ストリームを反応器に連続的に導入する工程、b)メタロセン化合物、共活性化剤、及び活性化剤を反応器に連続的に導入する工程、及びc)反応器からポリα-オレフィンを連続的に取り除く工程を含む。別の実施形態では、連続法は、反応器の全圧に基づいて、反応器内の水素分圧を200psi(1379kPa)以下、又は150psi(1034kPa)以下、又は100psi(690kPa)以下、又は50psi(345kPa)以下、又は25psi(173kPa)以下、又は10psi(69kPa)以下に維持する工程を含む。或いは水素が存在する場合、水素は反応器内に質量で1000ppm以下、又は750ppm以下、又は500ppm以下、又は250ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下、又は25ppm以下、又は10ppm以下、又は5ppm以下で存在する。或いは水素が存在する場合、水素は供給原料内に質量で1000ppm以下、又は750ppm以下、又は500ppm以下、又は250ppm以下、又は100ppm以下、又は50ppm以下、又は25ppm以下、又は10ppm以下、又は5ppm以下で存在する。
【0081】
反応器の大きさは2mlから、少なくとも1リットルの容積を有する市販の製造反応器の大きさまでである。製造設備は、生産性、生成物特性及び一般的なプロセス効率を最大にするために1つの単一反応器又は直列若しくは並列又はその両方で配置したいくつかの反応器を有し得る。通常は反応器及び関連機器を前処理して適正の反応速度及び触媒性能を保証する。反応は一般的に不活性雰囲気下で行われ、触媒系及び供給原料の成分はいずれの触媒不活性化剤又は触媒毒(一般的に酸素、窒素、イオウ又はアセチレン性化合物)とも接触しない。
本開示では、1つ以上の直接又は並列反応器を使用してよい。遷移金属化合物、活性化剤及び必要な場合は共活性化剤が、溶媒中又はα-オレフィン供給ストリーム中の溶液又はスラリーとして反応器に別々に送達され、反応器の直前でインラインで活性化され、或いは反応器への活性化溶液又はスラリーとして前活性化及びポンピングされ得る。重合/オリゴマー化は、単一反応操作(この場合、モノマー、又はいくつかのモノマー、触媒/活性化剤/共活性化剤、任意の捕捉剤、及び任意の調整剤を連続的に単一反応器に添加する)又は直列反応器操作(この場合、上記成分を直列に連結されたそれぞれ2つ以上の反応器に添加する)で行われる。触媒成分を直列の第1の反応器に添加する。触媒成分を両反応器に添加してもよく、一方の成分を第1の反応器に添加し、別の成分を他の反応器に添加する。好ましい一実施形態では、プレ触媒を反応器内でオレフィンの存在下にて活性化する。別の実施形態では、メタロセンのジクロリド形のようなプレ触媒をアルキルアルミニウム試薬、特に、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム及び/又はトリ-n-オクチルアルミニウムで前処理した後、他の触媒成分及び供給オレフィンを含有する反応器に入れ、或いは他の触媒成分で前活性化して完全に活性化した触媒を与えてから供給オレフィンを含有する反応器に供給する。別の代替実施形態では、プレ触媒メタロセンを活性化剤及び/又は共活性化剤と混合し、この活性化触媒を次に反応器に、何らかの捕捉剤又は共活性化剤を含有する供給オレフィンストリームと一緒に入れる。別の代替実施形態では、共活性化剤の全部又は一部を供給オレフィンと前混合して、メタロセン及び活性化剤及び/又は共活性化剤を含有する他の触媒溶液と同時に反応器に入れる。
【0082】
いくつかの実施形態では、少量の毒捕捉剤、例えばトリアルキルアルミニウム(トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソピロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム)又はメチルアルモキサンを供給オレフィンストリームに加えて触媒活性をさらに改善する。好ましい実施形態では、反応器に導入する前にモノマーをアルキルアルミニウム化合物、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物と接触させる。別の好ましい実施形態では、反応器に入る前にメタロセン及び/又は活性化剤をアルキルアルミニウム化合物、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物と混ぜ合わせる。好ましくはアルキルアルミニウム化合物は式:R3Alで表され、式中、各Rは独立にC1〜C20アルキル基であり、好ましくはR基は、メチル、エチル、ピロピル、イソピロピル、ブチル、イソブチル、n-ブチル、ペンチル、イソペンチル、n-ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、n-オクチル、ノニル、イソノニル、n-ノニル、デシル、イソデシル、n-デシル、ウンデシル、イソウンデシル、n-ウンデシル、ドデシル、イソドデシル、及びn-ドデシル、好ましくはイソブチル、n-オクチル、n-ヘキシル、及びn-ドデシルから成る群より独立に選択される。好ましくはアルキルアルミニウム化合物はトリ-イソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、及びトリ-n-ドデシルアルミニウムから選択される。
本明細書に記載のいずれもの方法の一実施形態では、供給オレフィン及び/又は溶媒を処理して触媒毒、例えばペルオキシド、酸素又は窒素含有有機化合物又はアセチレン性化合物を除去する。活性化13X分子ふるい及び脱酸素化触媒、すなわち、還元銅触媒による直鎖α-オレフィンの処理は、触媒生産性を10倍以上高める。或いは、供給オレフィン及び/又は溶媒を活性化分子ふるい、例えば3A、4A、8A又は13X分子ふるいで処理し、及び/又は活性化アルミナ若しくは活性化脱酸素化触媒と組み合わせて処理する。このような処理は、触媒生産性を2倍〜10倍以上に高めるであろう。改良された方法は、触媒毒、例えばペルオキシド、酸素、イオウ又は窒素含有有機化合物又は他の微量不純物を除去するための供給オレフィンの特殊な処理をも包含する。この処理は触媒生産性をかなり高め得る(典型的に10倍以上)。好ましくは供給オレフィンを分子ふるい、活性化アルミナ、シリカゲル、酸素除去触媒、及び/又は精製粘土と接触させて、供給原料中のヘテロ原子含有化合物を好ましくは50ppm未満、好ましくは10ppmに減少させる。
触媒組成物を個々に使用するか又は他の既知重合触媒と混合してポリマー又はオリゴマーブレンドを調製することができる。モノマー及び触媒の選択が、個々の触媒を用いる条件と同様の条件下でのポリマー又はオリゴマーブレンドの調製を可能にする。MWDが高いポリマーは、混合触媒系を用いて作製されたポリマーから入手可能であり、このようにして達成することができる。混合触媒は、2種以上の触媒前駆体及び/又は2種以上の活性化剤を含み得る。
【0083】
一般的に、供給オレフィン、溶媒、希釈剤の前処理後並びに触媒成分ストリーム及び反応器に不純物がないように維持する予防手段後にメタロセン触媒を使用すると、反応は良く進行するであろう。いくつかの実施形態では、メタロセン触媒を使用するとき、特にそれらを担体上で不動化する場合、完全な触媒系はさらに1種以上の捕捉化合物を含むであろう。ここで、捕捉化合物という用語は、反応環境から極性不純物を除去する化合物を意味する。これらの不純物は、触媒の活性及び安定性に悪影響を与える。典型的に、反応成分を反応容器に導入する前に普通は精製工程を利用する。しかし該工程は、まれに何らかの捕捉化合物を使用せずに重合又はオリゴマー化を可能にする。それでも一般的には、重合プロセスは少なくとも少量の捕捉化合物を使用するであろう。
典型的に、捕捉化合物は有機金属化合物、例えば、米国特許第5,153,157号、第5,241,025号及びWO-A-91/09882、WO-A-94/03506、WO-A-93/14132、及びWO 95/07941の第13族の有機金属化合物であろう。例示化合物には、以前に開示されたトリアルキルアルミニウムがある。金属又はメタロイド中心にかさ高い又はC6-C20直鎖ヒドロカルビル置換基が結合している捕捉化合物は一般的に活性触媒との有害な相互作用を最小限にする。例として、トリエチルアルミニウム、さらに好ましくはかさ高い化合物、例えばトリ-イソ-ブチルアルミニウム、トリ-イソ-プレニルアルミニウム、及び長い直鎖アルキル-置換アルミニウム化合物、例えばトリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、又はトリ-n-ドデシルアルミニウムが挙げられる。他の活性化剤を含む捕捉分量にアルモキサン、例えば、メチルアルモキサン、[Me2HNPh]+[B(pfp)4]-又はB(pfp)3(式中、pfpはペルフルオロフェニル(C6F5)であり、Meはメチルであり、Phはフェニルである)を加えてもよい。
好ましい実施形態では、エチレンは供給原料中に10モル%以下、好ましくは0.5〜8モル%、好ましくは0.5〜5モル%、好ましくは1〜3モル%で存在する。
【0084】
本明細書に記載のsPAOを均一溶液法で製造することもできる。一般的にこの方法は、連続反応器内の重合又はオリゴマー化に関係し、連続反応器内では、形成されたポリマーと供給された出発モノマー及び触媒材料を撹拌して、濃度勾配及び温度勾配を低減又は回避する。反応器の温度制御は、一般的に重合熱の平衡を保ち、また反応器ジャケット又は冷却コイル又は反応器の中身を冷却するための反応物質の冷却側流、自動冷蔵、予冷供給原料、液状媒体(希釈剤、モノマー又は溶媒)の気化による反応器の冷却又は上記の組合せで得られる。予冷供給原料を含む断熱性反応器を使用してもよい。反応器温度は、使用する触媒及び所望生成物によって決まる。温度が高いほど低分子量をもたらし、温度が低いほど高分子量をもたらすが、これは厳格な規則ではない。狭い分子分布の流体を製造するため、例えば最高の可能なせん断安定性を促すためには、反応温度を制御して、反応器内の温度変動又は反応時間の経時的な温度変動を最小にすることが有用である。複数の反応器を直列又は並列状態で使用する場合、温度を所定値に一定に保って、分子量分布のいずれのブロード化をも最小限にすることが有用である。広い分子量の流体を製造するためには、反応温度を変動するように調整することができ、或いは直列操作の場合には、2番目の反応器温度が1番目の反応器温より高いことが好ましい。並列反応器操作では、2つの反応器の温度は無関係である。2つのタイプのメタロセン触媒を使用することもできる。
反応時間又は反応器滞留時間は一般的に使用する触媒のタイプ、使用する触媒の量、及び所望の変換レベルによって決まる。異なるメタロセンは異なる活性を有する。通常、シクロペンタジエニル環上のアルキル置換度が高いほど、又は架橋していると、触媒生産性を改善する。本明細書では、ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソピロピリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、及びエチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、並びにその混合物などの触媒が特に有用である。
【0085】
使用する触媒成分の量は、反応効率の決定要因であり得る。高量の触媒添加は短い反応時間で高い変換をもたらし得る。しかしながら、高量の触媒の利用は製造プロセスを不経済にし、反応熱の管理又は反応温度の制御が困難になり得る。従って、本開示発明では、触媒生産性が最大の触媒を選択して、必要なプレ触媒の量及び活性化剤の量を最小限にすることが有用である。触媒系がメタロセンにルイス酸か又はNCA成分を含むイオン性活性化剤を加えたものである場合、使用するメタロセンは典型的に0.01μg〜500μgのメタロセン成分/1gのα-オレフィン供給原料の範囲である。一般的に好ましい範囲は、1gのα-オレフィン供給原料当たり0.1μg〜100μgのメタロセン成分である。さらに、NCA活性化剤対メタロセンのモル比は0.1〜10、好ましくは0.5〜5、好ましくは0.5〜3の範囲内である。アルキルアルミニウム化合物の共活性化剤を使用する場合、Al対メタロセンのモル比は1〜1000、或いは2〜500、或いは4〜400、或いは4〜200、或いは4〜50の範囲内である。
典型的に、可能な最短の反応時間で、供給α-オレフィンの可能な最大の変換が好ましい。しかしながら、CSTR操作では、100%よりわずかに低い、最適変換率で反応を行うのが有利なこともある。生成物の可能な最狭MWDが望ましいときは、一部変換がより望ましい場合もある。一部変換はMWDの広がり効果を回避できるからである。反応をα-オレフィンの100%未満の変換まで行うと、未反応出発原料を他の生成物及び溶媒/希釈剤から分離した後に再循環させてプロセス全体の効率を高め得る。
【0086】
固形担持触媒を使用する場合、一般的に前記と同様の温度、圧力及び滞留時間の範囲でスラリー重合/オリゴマー化法を操作する。スラリー重合又はオリゴマー化では、固形触媒、促進剤、モノマー及びコモノマーを含む懸濁液を添加する。希釈剤を含む懸濁液を反応器から間欠的又は連続的に除去する。次に触媒をろ過、遠心分離又は沈降によって生成物から分離する。この流体を次に蒸留して、溶媒、いずれの未反応成分及び軽質生成物をも除去する。溶媒、未反応成分又は軽質成分の一部又は全てを再利用のために再循環させ得る。
使用する触媒が溶液触媒(すなわち、担持されていない)の場合、反応が完了したら(例えばバッチ様式)、又は生成物を反応器か取り出すとき(例えばCSTRで)、生成物は未だに可溶性の懸濁又は混合触媒成分を含むことがある。これらの成分を不活性化又は除去するのが好ましい。いずれの通常の触媒不活性化方法又は水洗方法を利用して触媒成分を除去してもよい。典型的に、化学量論量又は過剰な空気、水分、アルコール、イソプロパノール等を添加して反応を不活性化する。次に混合物を希水酸化ナトリウム又は水で洗浄して触媒成分を除去する。次に残存有機層を蒸留に供して溶媒を除去し、再利用のために再循環させることができる。蒸留はさらにいずれのC18以下の軽質反応生成物をも除去することができる。これらの軽質成分をさらなる反応の希釈剤として使用することができる。或いは他の化学合成のオレフィン原材料として使用することもできる。これらの軽質オレフィン生成物はビニリデン不飽和を有するので、高性能流体でさらなに官能化するのに最も適している。或いはこれらの軽質オレフィン生成物を水素化して高品質のパラフィン溶媒として使用することができる。
【0087】
或いは、別の触媒除去法を利用する。化学量論量の過剰空気、水分、アルコール、イソプロパノール等を添加して反応を不活性化した後、少量の固体吸着剤、例えばセライト、シリカゲル、アルミナゲル、天然粘土、合成粘土、変性粘土、珪藻土、活性炭、シリカゲル、アルミナ、アルミノケイ酸塩、ゼオライト、分子ふるい、セルロース材料、金属酸化物又は金属塩、例えば酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を適切なやり方で活性化又は処理する。固体吸着剤はほとんどの触媒成分を吸収できる。適量の時間スラリーにした後、固体吸着剤をろ過で除去できる。次に液状生成物を前述したのと同様の蒸留に供して所望生成物を単離する。
別の実施形態では、本明細書で生成されたいずれのポリαオレフィンをも水素化する。特にポリα-オレフィンを好ましくは処理してヘテロ原子含有化合物を600ppm未満に減少させてから水素及び水素化触媒と接触させて、1.8未満の臭素数を有するポリα-オレフィンを生成する。好まししい実施形態では、処理したポリα-オレフィンは100ppm以下のヘテロ原子含有化合物、好ましくは10ppm以下のヘテロ原子含有化合物を含む。(ヘテロ原子含有化合物は、炭素及び水素以外の少なくとも1個の原子を含有する化合物である)。好ましくは水素化触媒は、担持された第7、8、9、及び10族の金属から成る群より選択され、好ましくは水素化触媒は、シリカ、アルミナ、粘土、チタニア、ジルコニア、又は混合金属酸化物担体に担持された1種以上のNi、Pd、Pt、Co、Rh、Fe、Ru、Os、Cr、Mo、及びWから成る群より選択される。好ましい水素化触媒は、珪藻土に担持されたニッケル、又はアルミナに担持された白金若しくはパラジウム、又はコバルト-モリブデンである。通常は、高いニッケル含量触媒、例えば珪藻土上60%のNi触媒、又は高量のCo-Moを添加した担持触媒を使用する。或いは、水素化触媒は珪藻土、シリカ、アルミナ、粘土又はシリカ-アルミナに担持されたニッケルである。
【0088】
一実施形態では、ポリα-オレフィンを25〜350℃、好ましくは100〜300℃の温度で水素及び水素化触媒と接触させる。別の実施形態ではポリα-オレフィンを水素及び水素化触媒と5分〜100時間、好ましくは5分〜24時間接触させる。別の実施形態ではポリα-オレフィンを172kPa(25psi)〜17240kPa(2500psi)、好ましくは690〜13790kPa(100〜2000psi)の水素圧で水素及び水素化触媒と接触させる。別の実施形態では水素化プロセスは、ポリα-オレフィン中のmm三連構造基の数を1〜80%減少させる。好ましくはsPAOは、水素及び水素化触媒との接触前のポリα-オレフィンより10〜80%少ないmm三連構造基を有する。sPAOの水素化に関するさらなる情報については米国特許第5,573,657号及び「Lubricant Base Oil Hydrogen Refining Processes」(Lubricant Base Oil and Wax Processing, by Avilino Sequeira, Jr., Marcel Dekker, Inc., NY, 1994の119〜152ページ)を参照されたい。
この水素化法は、バッチ操作のスラリー反応器又は連続撹拌タンク反応器(CSTR)内で達成可能であり、sPAO供給原料の0.001wt%〜20wt%、好ましくは0.01〜10wt%の触媒、水素及びポリα-オレフィンを連続的に反応器に添加して特定滞留時間、通常は5分〜10時間、不飽和オレフィンを完全に水素化し、二分子(diad)を適正に変換させる。触媒不活性化を補償するだけのためには、添加する触媒量は一般的に非常に少ない。触媒及び水素化sPAOを連続して反応器から取り出す。次に生成物混合物をろ過し、遠心分離又は沈殿させて固体水素化触媒を除去する。触媒は再生及び再利用が可能である。水素化sPAOをそのまま使用するか、或いは必要ならばさらに蒸留又は分画して軽質成分にすることができる。場合によっては、水素化触媒が長期操作にわたって触媒不活性化を示さないとき、反応器内で固定量、普通は全反応物質の0.1wt%〜10wt%の触媒を維持し、水素とsPAO供給原料のみを連続的に一定の供給速度で添加し、水素化sPAOのみを反応器から取り出す方法で撹拌タンク水素化プロセスを行うことができる。
水素化プロセスを固定床法で達成することもでき、この方法では、固体触媒を管状反応器内部に詰めて反応器温度に加熱する。水素及びsPAO供給原料を反応器を介して上部から底部に又は向流的に同時に供給して、水素、sPAO及び触媒間の接触を最大にし、かつ最良の熱管理を可能にする。sPAO及び水素の供給速度を調整して適正に滞留させて、供給原料中の不飽和オレフィンの完全な水素化及び本プロセスにおけるmm三連構造の所望の変換を可能にする。水素化sPAO流体をそのまま使用するか、或いは必要ならばさらに蒸留又は分画して軽質成分にすることができる。通常、最終炭化水素sPAO流体は、2未満の臭素数を有し、非水素化sPAOより減少した量のmm三連構造を有する。
【0089】
新しいポリ-α-オレフィンは、単独又は他の流体とブレンドして使用する場合、独特の潤滑特性を有する。
別の実施形態では、本開示の新規潤滑剤はこの開示で製造されるsPAOを含み、1種以上の他のベースストック、例えば100℃での粘度範囲が1.5〜100cStのグループI〜Vのベースストック等と共に適切な粘度等級を作り出す。さらに、下記:増粘剤、VI改良剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、清浄剤/分散剤/防止剤(DDI)パッケージ、及び/又は防錆添加剤の1種以上の添加剤を加えてよい。好ましい実施形態では、本明細書で製造されるsPAOを1種以上の分散剤、清浄剤、摩擦調整剤、トラクション(traction)改良添加剤、解乳化剤、消泡剤、発色団(染料)、及び/又は曇り防止剤と組み合わせる。これらの完全に製剤化された潤滑剤は、自動車のクランク室オイル(エンジンオイル)、工業オイル、グリース、又はガスタービンエンジンオイルに使用可能である。これらは、完成潤滑製剤に使われる添加剤の例である。全合成、半合成又は部分合成潤滑剤又は機能性流体の製剤化におけるsPAOの使用に関するさらなる情報は、“Synthetic Lubricants and High-Performance Functional Fluids,” 2nd Ed. L. Rudnick, ed. Marcel Dekker, Inc., N.Y. (1999)で見つけられる。生成物製剤化で使われる添加剤に関するさらなる情報は、“Lubricants and Lubrications,” T. Mang and W. Dresel, eds., Wiley-VCH GmbH, Weinheim 2001で見つけられる。
この開示で製造されるsPAOは、自動車エンジンの潤滑剤、工業用潤滑剤、グリース、油圧(hydraulic)潤滑剤等において使用可能であり、改良された粘度測定値、優れた低温特性を有し、燃料経済若しくはエネルギー効率の改善、又は摩耗保護及び清浄度に有意な改善をもたらす。例えば、sPAOは典型的な自動車エンジン潤滑製剤に単独で使用してVIを改善することができ、或いは他の伝統的なVI改良剤(OCP(オレフィン-コポリマー)又はポリメタクリラート)と共に使用することができる。エンジンオイル製剤では、ブレンドで使われる他の適切なベースストックは、APIグループI〜Vの低粘度流体を適正部量で含む。さらに、製剤には添加剤を添加する。典型的添加剤としては、酸化防止剤、耐摩耗剤、分散剤、清浄剤、極圧添加剤、防錆剤、消泡剤などが挙げられる。自動車エンジンの潤滑製剤及び添加剤の例は米国特許第6,713,438号で見つけられる。
本明細書で製造されるsPAOは、その予想外に高い第一法線応力差によって示されるように、高い粘弾性特性を提供し得る。潤滑剤中のこのポリマー成分は、通常のVI改良剤のよな高分子量ポリマーがその増粘力の一部又は全てを失う条件下、例えば、潤滑接触ゾーン内の高せん断速度で、予想外に高い膜厚及び予想外に良い摩耗保護を提供する。高度の粘弾性特性を有するsPAOの使用は、非常に広く交差等級付けされた(cross-graded)エンジンオイル、特に0W以上に良い低温等級付けを有するオイルの製造を可能にする。0W-20、0W-30、0W-40の交差等級又はそれ以上さえの広く交差等級付けされた、例えば0W-70以上のオイルを達成し得る。0W-70及び25W-70のような交差等級付けされたエンジンオイルは、高レベルの燃料希釈の条件下でさえ優れた摩耗保護を達成することができ、低分子量ポリマー成分を高分子量ポリマー成分と組み合わせて使用すると、燃料希釈が低粘度ベースオイルに及ぼす有害な膜菲薄化効果に逆らうことができる。この開示の別の特定成果は、非常に低い粘度を作り出す際における0W低温格付けを有する高い燃料効率オイルであり、これは、ASTM Sequence VE摩耗試験(12日の低温試験中に高レベルの燃料、水、及びブローバイ混入物がオイル内に蓄積する)に合格可能な0W-20以上に広い、例えば0W-30の交差等級付けを有する。以前に、非常に低い粘度の0W-20又は0W-30オイルで高温Sequence III E摩耗試験を合格できたが、要求が厳しいSequence V E試験の合格は今までのところ非常に見つけにくい。本明細書で製造される新規sPAOは、このような機会を与え得る。これらは、自動車用潤滑製剤におけるこれらの新規sPAOの可能な独特の用途である。
【0090】
この開示で開示されるPAOは、工業用潤滑製剤に使用可能である。工業用潤滑油製剤では、1〜99wt%又は1〜90wt%、又は50〜99wt%、又は55〜90wt%、又は5wt%〜45wt%、又は5〜60wt%、又は5〜45wt%又は20%〜60%の1種若しくは複数の粘度等級のこの開示のsPAOを1種以上のAPIグループI〜Vベースストックとブレンドして工業用潤滑油製剤用のベースオイルを与える。多くの場合、1種又は複数のこれらの他のベースストックを選択してsPAOsとブレンドして最適の粘度測定値及び性能を得る。さらに、好ましい実施形態は、この開示のブレンディング成分として使用可能なベースストックの粘度指数に関し、ある場合には、粘度指数が好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上、なおさらに好ましくは120以上である。さらに、ある特定の場合には、これらのsPAOの粘度指数は好ましくは130以上、さらに好ましくは135以上、なおさらに好ましくは140以上であり得る。上述したこれらのsPAOに加えて、好ましい実施形態では、上記流体と異なり、かつ好ましくはより高い極性を有するように選択される第2分類の流体をも製剤に添加する。流体の極性は、ASTM D611法で測定されるように、アニリン点による等、当業者により決定され得る。通常は極性が高い流体は、より低いアニリン点を有するであろう。極性が低い流体は、より高いアニリン点を有するであろう。ほとんどの極性流体は100℃未満のアニリン点を有するであろう。好ましい実施形態では、該流体は、APIグループVベースストックから選択される。これらのグループV流体の例には、アルキルベンゼン(例えば米国特許第6,429,345号、第4,658,072号に記載のもの)、及びアルキルナフタレン(例えば、米国特許第4,604,491号、第5,602,086号)がある。他のアルキル化芳香族は、"Synthetic Lubricants and High Performance Functional Fluids", M. M Wu, Chapter 7, (L. R. Rudnick and R. L. Shubkin, eds.), Marcel Dekker, NY, 1999に記載されている。
【0091】
異なる粘度のベースストック成分の適切なブレンディングによって最終製品の粘度等級を調整する。多くの従来の工業用潤滑油製剤では、増粘剤を用いて粘度を高める。本開示の1つの特定の利点は増粘剤が不要なことであり、好ましい実施形態では、増粘剤を使用しない。最も好適には、異なる粘度等級のsPAO流体を用いて、有意な性能優位性を有する完成粘度等級を達成する。通常、異なる量の異なる粘度の種々のベースストック成分(一次炭化水素ベースストック、二次ベースストック及びいずれもの追加のベースストック成分)を適宜一緒にブレンドして、完成潤滑剤の他成分(例えば後述する成分)とブレンドするのに適した粘度のベースストックブレンドを得る。本開示を把握している当業者は、過度の実験なしでこれを決定し得る。最終製品の粘度等級は、工業用ギア潤滑剤用途では好ましくはISO 2〜ISO 1000又はそれより高くさえあり、例えば約ISO 46,000までである。低粘度等級、典型的にISO 2〜ISO 13,100では、混合ベースストックの粘度は、完成製品の粘度よりわずかに高く、典型的にISO 2〜約ISO 220であるが、ISO 46,000までのより高い粘度等級では、添加剤がベースストックブレンドの粘度をわずかに低い値に下げることが多い。ISO 680等級を有する場合、潤滑剤、例えば、ベースストックブレンドは、添加剤の性質及び濃度に応じて780〜800cSt(40℃で)であろう。
工業用潤滑製剤では、ベースストックに加えて、多くの添加剤を使用する。これらの添加剤の例として、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、分散剤、清浄剤、防錆剤、消泡剤などが挙げられる。
多くの工業オイル操作ではせん断安定性が重要である。高いせん断安定性は、オイルが高せん断でその粘性を失わないことを意味する。このようなせん断安定性オイルは、より厳しい操作条件下で良い保護を提供できる。この開示に記載のオイル組成物は、工業オイル用途に優れたせん断安定性を有する。sPAOを含有する製剤化オイルは一般的に優れた粘度測定値、高VI、低温ブルックフィールド粘度を有し、これらは全て潤滑剤のエネルギー効率に貢献する。
同様に、自動車ギアオイル製剤、グリース及び油圧オイル製剤でsPAOを使用することができる。
【0092】
この開示は、以下に関する:
1. 1種以上のC4〜C24(好ましくはC6〜C24;好ましくはC8〜C24)モノマーを含む液体シンジオタクチックポリαオレフィン、sPAOであって、以下:
a) 13C NMRで測定した場合に5〜50%のrr三連構造含量;
b) 13C NMRで測定した場合に25〜60%のmr三連構造含量(ここで、mr対mmの三連構造比は少なくとも1.0である);
c) Z℃以下の流動点(Z=0.0648X-51.2、式中、X=センチストーク(cSt)で報告される100℃における動粘度);
d) 50cSt以上(或いは200cSt以上)の100℃における動粘度;
e) 9未満のmr三連構造対rr三連構造の比(13C NMRで決定した場合);
f) 8未満のビニリデンオレフィン対1,2-二置換オレフィンの比(1H NMRで決定した場合);
g) 120以下の粘度指数;及び
h) 40,000以下のMn
を有するsPAO。
2. 100℃における動粘度が100cSt以上である、パラグラフ1のsPAO。
3. モノマーがC6〜C24モノマーである、パラグラフ1又は2のsPAO。
4. sPAOが2未満の臭素数を有する、パラグラフ1〜3のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
5. sPAOが2未満の重合したままの臭素数を有する、パラグラフ1〜3のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
6. sPAOが2.0以下のMw/Mnを有する、パラグラフ1〜5のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
7. sPAOが、13C NMRで測定した場合に40〜60モル%のrr三連構造を有する、パラグラフ1〜6のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
8. sPAOが、-40℃で50,000cP以下のブルックフィールド粘度及び-55℃で50,000cP以下のブルックフィールド粘度を有し、ここで、-40℃でのブルックフィールド粘度は、-55℃でのブルックフィールド粘度より少なくとも5,000cP低い、パラグラフ1〜7のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
9. sPAOが、50モル%より多い1種以上のC6〜C18α-オレフィンモノマーを含む、パラグラフ1〜8のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
【0093】
10. sPAOが200℃以上の引火点を有する、パラグラフ1〜9のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
11. モノマーが、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、3-メチル-1-ブテン、及びテトラデセンから成る群より選択されるαオレフィンである、パラグラフ1〜10のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
12. モノマーが、αオレフィン1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン及びその混合物から成る群より選択されるαオレフィンである、パラグラフ1〜10のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
13. モノマーが、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセンの混合物である、パラグラフ1〜10のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
14. モノマーが1-デセンである、パラグラフ1〜10のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
15. モノマーが、1-ヘキセン、1-デセン及び1-テトラデセンの混合物である、パラグラフ1〜10のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAO。
16. 上記請求項のいずれか又はそのいずれかの組合せのsPAOの製造方法であって、4〜24個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンモノマーを含む供給ストリームを、プレ触媒(ここで、プレ触媒は、必要に応じてCs対称性を有する)と非配位アニオン活性化剤、及び必要に応じてアルキル-アルミニウム化合物を含む触媒系と、重合条件下(ここで、水素が存在する場合、水素は、反応器の全圧に基づいて1379kPa以下の分圧で存在し、かつ4〜24個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーは、反応器内に10体積%以上(触媒、モノマー、及び存在するいずれもの希釈剤又は溶媒の総体積に基づいて)で存在する)で接触させる工程、及びsPAOを得る工程を含む方法。
17. プレ触媒が、本出願、特にパラグラフ[00118]〜[00135]に記載どおりの構造を有する、パラグラフ16の方法。
【0094】
18. さらに以下の工程:
1) 必要に応じてsPAOを処理してヘテロ原子含有化合物を600ppm未満に減少させる工程;及び/又は
2) 必要に応じてsPAOを溶媒又は希釈剤から分離する工程;及び/又は
3) sPAOを水素及び水素化触媒と接触させる工程;及び/又は
4) 1.8未満の臭素数を有するsPAOを得る工程
を含む請求項16の方法。
19. 活性化剤が1種以上のN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジアルキルフェニルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート(ここで、アルキルはC1〜C18アルキル基である)、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリ-アルキルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート(ここで、アルキルはC1〜C18アルキル基である)、テトラ-アルキルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート(ここで、アルキルはC1〜C18アルキル基である)を含む、パラグラフ16、17、又は18の方法。
20. アルキルアルミニウム化合物が存在し、かつアルキルアルミニウム化合物が式:R3Al(式中、各Rは、独立に、メチル、エチル、n-ピロピル、イソ-ピロピル、イソ-ブチル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、n-ヘプチル、イソ-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、及びそれらのイソ類似体から成る群より選択される)によって表される、パラグラフ16〜19のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
21. 方法が連続法である、パラグラフ16〜20のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
【0095】
22. 方法が、以下の工程:
a) 少なくとも10モル%の1種以上のC4〜C24α-オレフィンを含む供給ストリームを連続的に反応器に導入する工程、
b) プレ触媒及び活性化剤を連続的に反応器に導入する工程、
c) 必要に応じて共活性化剤を連続的に反応器に導入する工程、及び
d) sPAOを連続的に反応器から取り出す工程
を含む連続法である、パラグラフ16〜21のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
23. 反応器内の温度が-10℃〜250℃である、パラグラフ16〜22のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
24. 温度が30℃〜220℃である、パラグラフ16〜23のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
25. 反応器内の圧力が0.1〜100気圧である、パラグラフ16〜24のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
26. モノマー、プレ触媒、及び活性化剤を1秒〜100時間の滞留時間接触させる、パラグラフ16〜25のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
27. プレ触媒が、ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含む、パラグラフ16〜26のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
28. 溶媒又は希釈剤が存在し、かつブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンダデカン、ヘキサデカン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、イソピロピルベンゼン、及びn-ブチルベンゼンから成る群より選択される、パラグラフ16〜27のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
【0096】
29. モノマーを反応器内でプレ触媒化合物及び活性化剤と接触させ、反応器が連続撹拌タンク反応器である、パラグラフ16〜28のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
30. モノマーを反応器内でプレ触媒化合物及び活性化剤と接触させ、反応器が連続管状反応器である、パラグラフ16〜29のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
31. モノマーを反応器内でプレ触媒化合物及び活性化剤と接触させ、反応器がバッチ反応器である、パラグラフ16〜30のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
32. モノマーを溶液相内でプレ触媒化合物及び活性化剤と接触させる、パラグラフ16〜31のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
33. モノマーをスラリー相内でプレ触媒化合物及び活性化剤と接触させる、パラグラフ16〜32のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
34. 生産性が、200kg/1gのプレ触媒化合物より高い、パラグラフ16〜33のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
35. 生産性が、10kg/1gの活性化剤より高い、パラグラフ16〜34のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
36. 触媒系が連鎖移動剤を含む、パラグラフ16〜35のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
37. 反応温度が90℃〜120℃であり、かつ反応圧力が207kPa(30psig)〜1034(150psig)である、パラグラフ16〜36のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法。
【0097】
38. パラグラフ16〜37のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法で作られた潤滑剤。
39. 通常のベースストックと、パラグラフ1〜15のいずれか又はそのいずれかの組合せの組成を含むsPAO或いはパラグラフ16〜37のいずれか又はそのいずれかの組合せの方法で作られたsPAOとを含んでなる潤滑剤。
40. 通常のベースストックが、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV又はフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑油ベースストック及びその混合物から選択される、パラグラフ39の潤滑剤。
41. さらに1種以上の増粘剤、酸化防止剤、防止剤パッケージ、防錆添加剤、分散剤、清浄剤、摩擦調整剤、トラクション改良添加剤、解乳化剤、消泡剤、発色団(染料)、粘度指数向上剤、流動点降下剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、及び/又は曇り防止剤を含む、パラグラフ39又は40の潤滑剤。
42. sPAOが、潤滑剤中に潤滑剤の質量に基づいて0.01wt%〜95wt%で存在する、パラグラフ39、40、又は41の潤滑剤。
【実施例】
【0098】
(実験セクション)
以下の実施例は、説明の目的のためであり、非限定例である。
全ての実験で使用する1-デセンは、1リットルの未処理原材料を20グラムの活性化13Xふるい(パージ乾燥窒素ガス流下200℃で少なくとも4時間でか焼することによって活性化した)、及び10グラムのOxi-Clear触媒(Altech Associates, Inc. of Deerfield, IL 60115から購入した)と、グローブ・ボックス内で窒素の乾燥不活性雰囲気下で混合することによって精製した。次に分子ふるい及び脱酸素化触媒をグローブ・ボックス内でろ過によって除去して精製1-デセンを得た。或いは、供給原料を窒素雰囲気下で活性化13X分子ふるいのみを通すことによって精製した。
重合/オリゴマー化反応は、窒素(N2)不活性雰囲気又はアルゴン不活性雰囲気下で行った。溶媒として精製トルエンを用いて全ての溶液を調製した。
実施例では、以下の略語を使用する:
メタロセンA=ジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドとも呼ばれる);
活性化剤A=N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(ペルフルオロフェニル)ボラート;
MAO=メチルアルミノキサン;及び
TIBA=トリ-イソブチルアルミニウム。
【0099】
(実施例1)
100gの精製1-デセン、1.301gのTIBAストック溶液(20mgのTIBA/1gのトルエン溶液)及び0.445gのメタロセンAストック溶液(1mgのメタロセンA/1gのトルエン溶液)の溶液を、撹拌機を備えたきれいな600mlのオートクレーブに室温で入れた。次に反応器を207kPa(30psig)の水素で加圧した。次に混合物を撹拌しながら90℃に加熱した。a)0.641gの活性化剤Aストック溶液(1mgの活性化剤A/1gのトルエン溶液)及びb)20gのトルエン溶媒を添加して調製した第2の溶液を加えて反応温度を90℃で一晩維持してから室温に冷まし、いずれの反応器圧も抜いた。液状生成物を50mlのヘプタンで希釈し、5gの活性化アルミナと半時間撹拌し、ろ過して固体を除去した。ろ液をガスクロマトグラフィーで内部標準物質を用いて分析して、1-デセンの水素化によるノルマル-デカン(n-C10)形成のwt%、潤滑油の変換wt%、及び潤滑油収率wt%を得た。次に軽質最終物(溶媒、未反応C10フラクション、及びC30より軽質のいずれものフラクション)を蒸発させて潤滑油生成物を単離し、高真空下(1ミリトル)で180℃にて2時間蒸留して潤滑油生成物を単離した。
【0100】
(実施例2〜6)
反応温度、水素圧及びメタロセン量が異なることを除き、実施例1と同様に実施例2〜6を行い、この方法を用いて、広い粘度範囲の潤滑油が得られることを実証した。実施例6は反応内で水素を使用しなかった;この潤滑油の粘度は、反応器内に少量の水素が存在する実施例1〜5に比べて非常に高く、触媒は非常に低い生産性を有した。
結果及び特性を下表1に要約する。
【0101】
表1

nm=測定せず
【0102】
表1に記載の結果は、改良された方法のいくつかの利点、例えば、高いオレフィン変換及び潤滑油収率(両方とも85%まで)を示す。さらに、1gのメタロセン当たり、又は1gの活性化剤当たりの生成された潤滑油(kg)の比によって、高い触媒生産性が実証される。反応温度及び水素圧を調整することによって、176cSt〜730cStの広範な粘度(Kv100)が達成された。潤滑油生成物は、水素化工程から分離せずに重合から直接で2未満の臭素数を有した。
1034kPa(150psig)までの水素圧の存在下で1-デセン水素化の計算量は非常に低く、0〜3.8%の範囲である。このことは、潤滑油生成物の臭素数が非常に低いことを考えると特に予想外である。これらの結果は、供給オレフィンの水素化に対応することなく、ポリマー生成物の予想外の選択的水素化を示した。
改良された方法は、高い潤滑油収率及び高い触媒生産性で、低い臭素数の潤滑油をより簡単に製造するという点で望ましい。
潤滑油生成物は、2未満のMw/Mnに示されるように、非常に狭い分子量分布(Mw/Mn)を有し、水素の存在はMw/Mnに悪影響を与えないことを示唆している。狭いMw/Mnは、潤滑剤ベースストックの良いせん断安定性にとって重要である。
【0103】
(比較例A及びB)
比較例A及びBは、米国特許第6,858,767(B1)号に記載の触媒系(メチルアルミノキサン活性化剤を含む)を用いて行った。比較例Aでは、100gの精製1-デセンを600mlのオートクレーブに入れた。反応器を207kPa(30psig)の水素で加圧してから撹拌しながら110℃に加熱した。次に20gのトルエン溶媒、1.414gのMAO活性化剤溶液(10wt%のMAO/トルエン)及び0.2225gのメタロセンAストック溶液(1mgのメタロセンA/1gのトルエン溶液)を含有する触媒溶液を加圧下でオートクレーブに加えた。オートクレーブ温度は100℃で維持した。一晩の撹拌後、反応器を冷却し、排気して大気圧にした。次に5gの活性化アルミナを反応生成物に加えて半時間撹拌した。ろ過で固体を除去し、生成物を実施例1と同様に分析及び単離した。比較例Bは、水素圧を690kPa(100psig)に上げることを除き、比較例Aと同様に行った。結果及び生成物特性を下表2に要約する。
【0104】
表2

【0105】
比較例の重合したままの潤滑油は、それぞれ3.8及び3.4の臭素数を有し、潤滑油ベースストック用に必要とされる臭素数2を優に上回っている。比較例の臭素数を許容レベルまで下げるためには別の水素化工程が必要であろう。これはプロセス全体の複雑さ及び費用を増大する。
比較例A及びBの潤滑油濃度は50%未満であり、改良された方法の実施例1〜5が全て50%を超えたのとは対照的である。同様に、1gのメタロセン当たり又は1gのMAO活性化剤当たりの生成された潤滑油(kg)で測定されるように、触媒生産性は一般的に比較例が低い。
実施例2と比較例Aは、同一温度及び水素圧で行った。同様に、実施例3と比較例Bは同一温度及び及び水素圧で行った。両例で、重合プロセス中の望ましくない1-デセン水素化の量は、本開示の改良された方法により有意に減少した。
比較例により生じた潤滑油生成物は、2より大きいMw/Mnを有し;対照的に、NCA活性化剤を使用する本発明の改良された方法の生成物は2.0未満のMw/Mnを有した。上述したように、狭い分子量分布は、一般に、潤滑剤ベースストックとして又はブレンドストックとして使用されるときに、かなり改良されたせん断安定性につながる。
【0106】
(実施例7〜10)
実施例7〜10では、他のα-オレフィンを試して、高いVI及び低い流動点を有する高品質のベースストックを製造するためにそれらを供給原料として使用できるか判定した。重合法及び製造された生成物の分析は、実施例1と同様に行った。結果を下表3に示す。
【0107】
表3

【0108】
代替α-オレフィン供給原料によってさえ、本開示の改良された方法は、1gのメタロセン又は活性化剤当たりの高い潤滑油生産性、高い変換率及び高い潤滑油収率をもたらす。重合反応から得られた潤滑油生成物は、全て2.0未満の臭素数及び2.0に近いか2.0未満の狭い分子量分布を有する。
(比較例C)
このセットの例では、比較例Bと同様に行い、重合反応中、表4に示すように異なる反応時間間隔でサンプルを取ってガスクロマトグラフィーで分析して、重合反応量と比較した1-デセン水素化の量を数量化した。重合条件は、US 6,858,767に記載の条件と同様に行った。結果を下表4に要約する。反応条件は以下のとおりだった:110℃、690kPa(100psig)のH2、0.2223mgのメタロセン/1gの1-デセン、MAO活性化剤、MAO対メタロセンのモル比500/1。
【0109】
表4

他のC10異性体としては、内部デセン及び分岐デセン及びデカンがある。
【0110】
(実施例11)
実施例3と同様の条件を用いた。ガスクロマトグラフィーによる分析のため下表5に示すように異なる反応時間で反応サンプルを取って、重合反応の量と比較した1-デセン水素化の量を数量化した。結果を下表5に要約する。
【0111】
表5

【0112】
表4及び5を比較すると、本開示に従う実施例11が、反応時間を通して、1-デセンの潤滑油へのより高い変換、非常に高い潤滑油収率、1-デセンのn-デカンへの非常に低量の水素化及び低レベルのダイマー(C20)形成(潤滑油ベースストックとして望ましくない)を有することを明白に示している。
【0113】
(実施例12〜16、比較例D及び比較例E(ブレンド))
以下のように生成したポリ-1-デセンを利用してブレンドを調製した。
実施例12では、反応温度が130℃かつ水素圧が690kPa(100psig)であることを除き、実施例1と同様にHVI-sPAOを調製した。
実施例13では、反応温度が110℃かつ水素圧が690kPa(100psig)であることを除き、実施例1と同様にHVI-sPAOを調製した。
実施例14では、反応温度が110℃かつ水素圧が207kPa(30psig)であることを除き、実施例1と同様にHVI-sPAOを調製した。
実施例15及び16では、実施例6のHVI-sPAOを使用した。
比較例Dでは、メタロセンがジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドであり、反応温度が55℃であり、水素を添加しないことを除き、実施例1と同様にPAOを調製した。この例の製法は、WO 2007011459 A1で見つけられる。
比較例Eでは、メタロセンがジメチルシリルビス(テトラヒドロ-インデニル)ジルコニウムジクロリドであり、反応温度が70℃であり、水素を添加しないことを除き、実施例1と同様にHVI-sPAOを調製した。この例の製法は、WO 2007011459 A1で見つけられる。形成されたPAOは、NMRスペクトルで決定されるように、高度のアイソタクチック性を有した。
これらのブレンド実験では、使用する低粘度エステル流体は、単純な酸とアルコールの典型的なエステル合成反応から調製される。それは以下のような粘度測定特性を有する:100℃ Kv=1.3cSt及び40℃ Kv=3.19cSt。ブレンドで使用する低粘度PAOは、ExxonMobil Chemical Co.から入手可能である。それは以下の特性を有する:100℃ Kv=1.71cSt及び40℃ Kv=5.14 cSt。ブレンディング結果を下表6に示す。
【0114】
表6

*測定不能
【0115】
表6に示すように、本開示のHVI-sPAOを用いて調製したサンプルは全て比較例に比べてずっと低いブルックフィールド粘度を有した。このことは潤滑剤用途で有利である。
上記特定生成サンプルを1H及び13C NMRで分析して、シンジオタクチックポリマー形成メタロセンと非配位アニオン活性化剤によってもたらされる独特の化学組成を決定した。立体規則性の13C NMR特徴づけ及びオレフィン終結構造の1H NMR分析を下表A及びBに要約する。
これらのデータは、実施例1〜11で調製された新規潤滑油流体が、3.2〜6.1の低いmr/rr比を有することを示す。比較例A〜C(US 6,858,761に記載の方法に従う)で調製された潤滑油流体は、より高いmr/rr比(典型的に10より大きい)を有する。この開示の新規物質のより低いmr/rr比は、より高い含量の優先的に望まれるシンジオタクチックrr三連構造を示唆している。理論によって拘束されることを望むものではないが、より高いシンジオタクチック含量がポリマーの絡み合い長さを増加させ、低温粘度測定挙動、ブレンディング能力及び潤滑膜性能を改善し得ると考えられる。図1は、実施例1〜3で調製された本発明の1-デセン-ベース潤滑油流体の流動点を比較する。図1が示すように、実施例1、2、及び3は、比較例A及びBより低い流動点を有する。いずれの所定粘度でも、我々の発明の生成物は、先行技術例及び活性化剤としてメチルアルモキサンを用いて作製された潤滑油生成物より低い流動点を有する。
表A及びBのデータは、実施例1〜11が、0.6〜3.4の範囲のビニリデン/1,2-二置換オレフィンのより低い比を有することをも示す。それに比べて、比較例A〜Cの流体は、9.1〜14.2の範囲のビニリデン/1,2-二置換オレフィンの高い比を有する。ビニリデン及び1,2-二置換オレフィンは潤滑油流体の主要オレフィン成分である。高いビニリデン含量の流体は、ビニリデンオレフィンの、ペルオキシド又はラジカルとの1,2-二置換オレフィンに比べて高い反応性のため、一般的に悪い酸化安定性を有する。従って、ビニリデン/二置換オレフィンの低い比は良い酸化安定性を示唆している。
要約すれば、我々の発明の実施例で調製された流体は、先行技術の組成とは異なる化学組成を有する。本発明の組成は、10未満、好ましくは7未満、最も好ましくは3〜7の、mr/rr比によって定義されるアタクチック含量を有する。本発明の組成は、9未満、好ましくは7未満、さらに好ましくは5未満、最も好ましくは4未満の、ビニリデン/1,2-二置換オレフィンによって定義されるオレフィン組成を有する。
【0116】
表A. 発明実施例1〜11のNMRデータ

【0117】
(表A続き)

【0118】
表B. 比較例のNMRデータ

【0119】
実施例3サンプルのせん断安定性試験結果:純粋な実施例3サンプルを、Tapered Roller Bearing Test(CEC L-45-T-93)のためSouthWest Research Instituteに送った。試験は、60℃、1475rpm、5000N負荷で20分間行われた。試験後、オイルは1.6%だけ100℃ Kvの損失を示した。これは優れたせん断安定性である。同様の試験で、比較例A〜Cで調製されたサンプルはずっと高い量の粘度損失を有するであろう。我々の発明の実施例は全て、悪いせん断安定性につながる比較例の高い分子量分布に比べて、非常に低い分子量分布値を有し、非常にせん断安定性の生成物をもたらす。これらの結果は、この開示で調製されたサンプルは顕著なせん断安定性を有することを実証した。これは多くの高性能潤滑剤用途で重要である。
【0120】
本明細書に記載の全ての文書は、いずれの優先権書類及び/又は試験手順をも含め、このテキストと矛盾しない範囲で、参照によってここに援用される。但し、最初に出願された願書又は出願書類で指定されていないいずれの優先権書類も、参照によってここに援用されない。前述の一般的説明及び特有の実施形態から明白なように、開示の形態を例示かつ説明したが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の修正を加えることができる。従って、それによって本開示は限定されないことを意図している。同様に、用語「含む(comprising)」は、オーストラリアの法律の目的の用語「含む(including)」と同義であるとみなされる。
本明細書で引用した全ての特許及び特許出願、試験手順(例えばASTM法、UL法など)、及び全ての文書は、該開示が本発明と矛盾しない範囲で、かつ該援用が許容される全ての権限のため、参照によって全体が本明細書に援用される。
数値の下限及び数値の上限を本明細書に記載してある場合、いずれの下限乃至いずれの上限の範囲も考慮される。本発明の例示実施形態を特殊性を含めて記載したが、当然のことながら、当業者には種々の他の修正が明白であり、かつ当業者は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく容易に修正することができる。従って、本明細書に添付の特許請求の範囲を本明細書で示す実施例及び説明に限定するものではなく、特許請求の範囲は、本発明に属する特許を受けることができる新規性の全ての特徴を、本発明が関係する当該技術の当業者によって均等物として扱われるであろう全ての特徴を含めて包含するものと解釈すべきである。本発明を多数の実施形態及び具体的な実施例を参照して上述した。上記詳細な説明に照らして、当業者は多くの変形を思いつくであろう。このような全ての明白な変形は、添付の特許請求の範囲の完全な目的の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のC4〜C24モノマーを含む液体シンジオタクチックポリαオレフィン、sPAOであって、以下:
a) 13C NMRで測定した場合に5〜50%のrr三連構造含量;
b) 13C NMRで測定した場合に25〜60%のmr三連構造含量(前記mr対mmの三連構造比は少なくとも1.0である);
c) Z℃以下の流動点(Z=0.0648X-51.2、式中、X=センチストーク(cSt)で報告される100℃における動粘度);
d) 100cSt以上の100℃における動粘度;
e) 13C NMRで決定した場合に9未満のmr三連構造対rr三連構造の比;
f) 1H NMRで決定した場合に8未満のビニリデンオレフィン対1,2-二置換オレフィンの比(;
g) 120以下の粘度指数;及び
h) 40,000以下のMn
を有するsPAO。
【請求項2】
前記100℃における動粘度が200cSt以上である、請求項1のsPAO。
【請求項3】
前記sPAOが2.0以下のMw/Mnを有する、請求項1のsPAO。
【請求項4】
前記sPAOが2未満の重合したままの臭素数を有する、請求項1のsPAO。
【請求項5】
前記sPAOの製造方法であって、以下の工程:
4〜24個の炭素原子を有する少なくとも1種のα-オレフィンモノマーを含む供給ストリームを、プレ触媒化合物と非配位アニオン活性化剤、及び必要に応じてアルキル-アルミニウム化合物を含む触媒系と、重合条件下(ここで、水素が存在する場合、水素は、反応器の全圧に基づいて1379kPa以下の分圧で存在し、かつ前記4〜24個の炭素原子を有するα-オレフィンモノマーは、反応器内に、前記触媒、モノマー、及び存在するいずれもの希釈剤又は溶媒の総体積に基づいて10体積%以上で存在する)で接触させる工程を含み;かつ
前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化1】

(1)
(式中、
Mは、第4族金属であり;
L1は、無置換フルオレニル、無置換ヘテロシクロペンタペンタレニル、無置換ヘテロフルオレニル配位子、又は擬対称置換基を有する置換フルオレニル、置換ヘテロシクロペンタペンタレニル、若しくは置換ヘテロフルオレニル配位子であり、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり、かつ任意に2つ以上の隣接置換基が連結して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状置換基を形成してもよく;
L2は、シクロペンタジエニル環又は前記環の2位及び5位に擬対称置換基のある置換シクロペンタジエニル環であり、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり;
Gは、架橋基であり;
Xは、独立に、ハロゲン、アルコキシド、アリールオキシド、アミド、ホスフィド、ヒドリド基、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、ハロカルビル基、置換ハロカルビル基、シリルカルビル基、置換シリルカルビル基、ゲルミルカルビル基、又は置換ゲルミルカルビル基であり;或いは両Xが連結して前記金属原子に結合して、3〜20個の炭素原子を含む金属環状環を形成し;或いは両方ともオレフィン、ジオレフィン又はアライン配位子であってよく;或いは両Xが連結してアニオン性キレート配位子を形成してもよい)
のCs対称又は擬Cs対称を有し:
或いは前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化2】

(2)
(式中、
M、L1、G、及びXは、前記と同一であり;
Jは、第15族のヘテロ原子であり;
R’は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、又は置換ハロカルビル基であり;
L’は、中性ルイス塩基であり、かつwは、Mに結合しているL’の数を表し、ここで、wは0、1、又は2であり、かつ任意にいずれかのL’といずれかのXが相互に結合してもよい)
のCs対称又は擬Cs対称を有し;
或いは前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化3】

(3)
(式中、
M及びXは、前記と同一であり;
L3は、シクロペンタジエニル環(任意に前記環の4位で置換されていてもよく、該置換基は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基から選択される);
L4は、置換シクロペンタジエニル環(前記環の3位及び5位に擬対称置換基があり、各置換基は、独立に、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり;
G’及びG”は架橋基である)
のCs対称又は擬Cs対称を有し;
或いは前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化4】

(4)
(式中、
M及びXは、前記と同一であり;
Oは酸素であり;
Nは窒素であり;
R1は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり;
R2は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル又はゲルミルカルビル基であり;
R3、R4及びR5は、独立に水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビル基である)
のCs対称を有する、
方法。
【請求項6】
前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化5】

(式中、各Ra及びRbは、各Raが同一であり、各Rbが同一であり、かつ該化合物がCs対称又は擬Cs対称になるようにするという条件で、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、ゲルミルカルビル又は極性基から選択され、かつ任意に2つ以上の隣接置換基が連結して置換又は無置換の飽和、部分的に不飽和又は芳香族の環状又は多環状置換基を形成してもよく;
各Rcは、他方に対して擬対称置換基であり、かつ水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビル基から選択され;
各Rdは、他方に対して擬対称置換基であり、かつ水素又はヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル若しくはゲルミルカルビル基から選択される)
のCs対称又は擬Cs対称を有し;
或いは前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化6】

のCs対称又は擬Cs対称を有し;
或いは前記プレ触媒化合物が、下記構造:
【化7】

(式中、Reは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビル基から選択され;
各Rf及びRgは、該化合物がCs対称又は擬Cs対称になるように各Rf及びRgを選択するという条件で、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、シリルカルビル、又はゲルミルカルビルから選択される)
のCs対称又は擬Cs対称を有する、
請求項5の方法。
【請求項7】
前記sPAOが下記特徴:
a) 13C NMRで測定した場合に25〜60%のrr三連構造含量;
b) 13C NMRで測定した場合に少なくとも45%のmr三連構造含量(%mr三連構造含量は、前記%mm三連構造含量より少なくとも50%大きい);
c) Z℃以下の流動点(Z=0.0648X-51.2、式中、X=センチストーク(cSt)で報告される100℃における動粘度);
d) 100cSt以上の100℃における動粘度;
e) 13C NMRで決定した場合に9未満のmr三連構造対rr三連構造の比;
f) 1H NMRで決定した場合に8未満のビニリデンオレフィン対1,2-二置換オレフィンの比;
g) 120以下の粘度指数;及び
h) 40,000以下のMn
を有する、請求項5の方法。
【請求項8】
さらに以下の工程:
1) 必要に応じて前記sPAOを処理して、ヘテロ原子含有化合物を600ppm未満に減少させる工程、及び/又は
2) 必要に応じて前記sPAOを溶媒又は希釈剤から分離する工程;及び/又は
3) 前記sPAOを水素及び水素化触媒と接触させる工程;及び/又は
4) 1.8未満の臭素数を有するsPAOを得る工程
を含む、請求項6の方法。
【請求項9】
前記活性化剤が、1種以上のN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート、N,N-ジアルキルフェニルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート(前記アルキルはC1〜C18アルキル基である)、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリ-アルキルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート(前記アルキルはC1〜C18アルキル基である)、テトラ-アルキルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラート(前記アルキルはC1〜C18アルキル基である)を含む、請求項5の方法。
【請求項10】
アルキルアルミニウム化合物が存在し、このアルキルアルミニウム化合物が式:R3Al(式中、各Rは、独立に、メチル、エチル、n-ピロピル、イソ-ピロピル、イソ-ブチル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、n-ヘプチル、イソ-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、及びそれらのイソ類似体から成る群より選択される)によって表される、請求項5の方法。
【請求項11】
前記反応器内の圧力が0.1〜100気圧である、請求項5の方法。
【請求項12】
前記メタロセンがジフェニルメチリデン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含む、請求項5の方法。
【請求項13】
生産性が、200kg/1gのメタロセン化合物より高い、請求項5の方法。
【請求項14】
生産性が、10kg/1gの活性化剤より高い、請求項5の方法。
【請求項15】
通常のベースストックと、請求項1の組成を含むsPAOとを含んでなる潤滑剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−515145(P2013−515145A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546081(P2012−546081)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/061025
【国際公開番号】WO2011/079042
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】