説明

新鮮な蜂蜜又はミツバチの蜂蜜産生管から単離された新規細菌

本発明は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、新たな単離された乳酸菌属(Lactobacillus)株及びビフィズス菌属(Bifidobacterium)株に関する。これらの細菌株は、食品製品及び飲料製品、餌製品並びに医療用製品などの多くの製品においてそれらを有用なものにする、独自の特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな単離された乳酸菌属(Lactobacillus)株及びビフィズス菌属(Bifidobacterium)株に関する。本発明はさらに、これらの株を含む組成物及び製品に関する。
【背景技術】
【0002】
古代より医学において用いられてきた神秘的な食品である蜂蜜は、紀元前2000年のエジプト人が既に報告している、ヒトの創傷に対する治癒効果で、何世紀もの間人々を惑わせてきた。
【0003】
蜂蜜は、ミツバチのセイヨウミツバチ(Apis mellifera)などのハチにより産生される。ハチが植物から集める花蜜は、主にスクロースからなる甘い液体である。ハチが巣に帰るときまでに、スクロースの大半は、グルコース及びフルクトースに変換される。蜂蜜はさらに、タンパク質、ビタミン及びミネラルを含む。
【0004】
現在、モル浸透圧濃度及び酸性度に加えて、蜂蜜の治療特性は、ペルオキシダーゼオキシダーゼの作用としての過酸化水素含量(Whiteら、1963 Biochem Biophys Acta 73、57〜70)、その種々のフラボノイド及びフェノール酸含量による花蜜の起源(Taorminaら、2001.Int J Food Microbiol 69(3)、217〜225;Wahdan,H.A.1998.Infection 26(1)、26〜31)、並びに未同定の成分(Molan,P.C.2001.World Wide Wounds(オンライン);URL:http://www.worldwidewounds.com/2001/november/Molan/honey−as−topical−agent.htmlから入手可能)によって、説明される。過去30年間に実施された科学的な試み(Lusby,P.E.ら、2005 Arch Med Res 36(5)、464〜467;Molan,P.C.2006.Int J Low Extrem Wounds 5(1)、40〜54 Int J Low Extrem Wounds 5(2)、122;Mundo,M.A.ら、2004 Int J Food Microbiol 1、97(1)、1〜8)にもかかわらず、蜂蜜の作用様式の多くに関する神秘は、今なお解決されていない。
【0005】
蜂蜜が有する抗菌特性は、蜂蜜を、創傷の包帯における使用に適したものにしており、感染症の予防、壊死組織のデブリードマン、悪臭を放つ創傷の脱臭及び瘢痕形成の最小化を助ける。蜂蜜を含む創傷及び皮膚のケア製品は、WO2004000339及びWO03047642によって公知である。
【0006】
今日の医療実務において、抗生物質は感染症を治療するために最も一般的に使用されている。しかし、抗生物質の大規模な使用により、抗生物質耐性病原性細菌が大きな問題になっている。食品産業では、食品の保存寿命を延長し、有害な病原性微生物の増殖を防止するために、防腐剤が大規模に使用されている。しかし、人々は、食品中の添加物の副作用(例えばアレルギー)に気が付きつつあり、より天然の食品についての要求が高まっている。これらの事実が、伝統医薬における興味、並びに古来の智慧に基づく新たな治療上の解決法及び防腐処理及び添加物を見出そうとする衝動を導いてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、蜂蜜由来の有益な特性を提供する、医療用製品、食品製品、及び餌製品を得ることである。
【0008】
さらなる目的は、蜂蜜を合成により製造することである。
【0009】
別の目的は、抗菌活性を有する新規細菌株を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
これらの目的は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、新たな単離された乳酸菌属株及びビフィズス菌属株、並びにこれらの株を含む組成物及び製品、及び蜂蜜を製造する方法を提供することによって、本発明に従ってここで成就された。細菌株の単離のための方法がさらに提供される。
【0011】
このように、本発明者らは、蜂蜜の製造に密接に関与する細菌株を見出した。これらの細菌株は、医療用製品、食品製品、飲料製品及び餌製品などの多くの製品においてそれらを有用なものにする、独自の特性を有する。単離された細菌株は、低温及び酸性環境中で迅速に増殖し、高度に濃縮された糖溶液中で増殖できる。これらの細菌株は、他の生物、特に食品を腐敗させる、ヒトにとって病原性の生物(例えば、リステリア属(Listeria)、バチルス属(Bacillus)及びブドウ球菌属(Staphylococcus)の種)及びミツバチにとって病原性の生物(例えばパエニバチルス・ラルバエ(Paenibacillus larvae))と、効率的に闘うことができる。独自の蜂蜜関連の起源を有するので、これらの細菌株は、蜂蜜含有製品において使用するのに充分適している。これらの製品は、独自の健康促進特性を有する。
【0012】
今日まで、新鮮な蜂蜜又はハチの蜂蜜産生管から単離された細菌株は存在しなかった。ハチの蜂蜜産生管は、蜂蜜産生ハチ(例えばミツバチ属(Apis)種)の体幹、口、食道及び蜜胃を伴う。したがって、腸又は消化管は、ハチの蜂蜜産生管の一部ではない。新鮮な蜂蜜は、18重量%を上回る、好ましくは20重量%を上回る水分含量を有する蜂蜜である。18重量%を下回る水分含量を有する蜂蜜は、熟成蜂蜜、即ち、通常消費される蜂蜜である。
【0013】
ラクトバチルス・クンケエイ(Lactobacillus kunkeei)は、ハチに関する文献中に現れてきた。1つの報告は、社会性スズメバチのウェスプラ・ゲルマニカ(Vespula germanica)幼虫の腸の微生物生態学の試験に関するものであり(Reeson,A.F.ら、2003 Insect Mol Biol 12(1)、85−91)、第2の報告は、孤立性ハチのオスミア・ビコルニス(Osmia bicornis)幼虫の消化管細菌叢中の単一クローンに関するものである(Mohr,K.I.及びTebbe,C.C.2006.Environ Microbiol 8(2)、258〜272)。これら2種の生物は蜂蜜産生管を欠き、蜂蜜を産生せず、したがってミツバチではない。
【0014】
ハチの疾患は、感染症及び寄生虫状態であり、農業経済の甚大な損失に関連する。アメリカ腐蛆病(AFB)を引き起こすパエニバチルス・ラルバエは、多くの国で感染したコロニーの破壊をもたらしている、ミツバチにとって最も危険な病原体の1つとみなされている(Genersch,E.ら、2005.Appl Environ Microbiol 71(11)、7551〜7555)。JP2222654は、ミツバチの免疫機能を増強するための餌における、ミツバチの消化管由来の乳酸菌属の種の使用を示唆している。これらの細菌種は、ミツバチの消化管から単離され、したがって、蜂蜜様の環境には適応していない。
【0015】
JP2222654は、ミツバチの消化管から単離されたラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)を開示している。この文献はさらに、ミツバチの消化管の刺激のための、この細菌並びにラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)(即ち、アニマリス(animalis))、ストレプトコッカス・ラクチス(Streptococcus lactis)、枯草菌(Bacillus subtilis)を含むハチ用の餌を開示している。
【0016】
本発明の第1の態様は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株に関する。
【0017】
本発明の第2の態様は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株を含む組成物に関し、この組成物は医薬組成物であり得る。
【0018】
第3の態様は、上記に概説した医薬組成物を含む医療用製品に関する。
【0019】
本発明の第4の態様は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株を含む、食品製品又は餌製品に関する。
【0020】
本発明の第5の態様は、感染症又は胃腸管疾患を予防及び/又は治療するための医療用製品、食品製品、飲料製品又は医薬組成物を調製するための、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株の使用に関する。
【0021】
本発明の第6の態様は、乳酸菌属株Biut2(LMG P−24094)、乳酸菌属株Hma2(LMG P−24093)、乳酸菌属株Hma8(LMG P−24092)、乳酸菌属株Bma5(LMG P−24090)、乳酸菌属株Hon2(LMG P−24091)(前記株は、2007年4月3日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)、ビフィズス菌属株Bin7(LMG P−23986)、ビフィズス菌属株Hma3(LMG P−23983)、ビフィズス菌属株Bin2(LMG P−23984)、ビフィズス菌属株Bma6(LMG P−23985)及びラクトバチルス・クンケエイFhon2(LMG P−23987)(前記株は、2007年1月15日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)並びにBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されたHma11からなる群より選択される細菌株に関する。
【0022】
第7の態様は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、乳酸菌属又はビフィズス菌属の細菌株を少なくとも1つ、糖供給源に添加するステップを含む、蜂蜜を産生するための方法に関する。
【0023】
本発明の第8の態様は、本発明に従う細菌株を単離するための方法に関し、この方法は、a)18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜をサンプリングするステップ、又はハチから蜂蜜産生管を分離し、無菌培地中で管を振盪するステップ;b)適切な培地上でa)からのサンプルを細菌培養するステップ;c)適切な培地上でb)で得られた細菌株(単数又は複数)を純粋培養及び単離するステップを含む。
【0024】
本発明のさらなる利点及び目的は、とりわけ添付の図面を参照して、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に従う細菌株を含む系統樹を示す図である。
【図2】類型株ラクトバチルス・クンケエイ(サンプル1)及びラクトバチルス・クンケエイFhon2(サンプル2)のRAPDパターンを示す図である。
【図3】65%のスクロース及び35%の水を含む65%糖溶液中での、種々の株の糖耐性を示す図である。
【図4】19%のフルクトース、19%のグルコース、37%のスクロース及び25%の水を含む70%糖溶液中での、種々の株の糖耐性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本出願及び本発明に関しては、以下の定義が適用される。
【0027】
用語「蜂蜜」とは、種々のハチの蜂蜜産生管において花の花蜜から産生された甘い粘性の液体を意味する。
【0028】
用語「バクテリオシン」は、細菌が産生する抗菌物質に関する。バクテリオシンは、密接に関連する微生物に対して殺菌的作用を示す、生物学的に活性なタンパク質又はタンパク質複合体(タンパク質凝集物、リポ糖タンパク質、糖タンパク質など)である。乳酸細菌が産生するいくつかのバクテリオシンは、食品を腐敗させる、食品媒介性の病原性微生物に対して活性である。
【0029】
用語「糖供給源」とは、甘い可溶性二糖又は小さいオリゴ糖の炭水化物を一般に意味する。糖供給源の例は、蜂蜜、糖、グルコース、フルクトース、スクロース及びマルトースである。
【0030】
用語「CFU」とは、コロニー形成単位を意味する。
【0031】
用語「乳酸細菌、LAB」は、乳酸菌属、ラクトコッカス属(Lactococcus)及びビフィズス菌属に属する細菌などの、乳酸を産生する細菌に関する。
【0032】
用語「プロバイオティック微生物」とは、一過性又は内在性の細菌叢の少なくとも一部を形成し、それにより、宿主生物に対して有益な予防効果及び/又は治療効果を示す微生物をいう。
【0033】
用語「分子マーカー」は、ある細菌株又は関連する細菌株を同定するために使用できる、ヌクレオチド配列の鎖を意味する意図である。分子マーカーは、ハイブリダイゼーションアッセイ並びにPCRなどの増幅アッセイにおいて使用できる。
【0034】
用語「賦形剤」とは、製品又は組成物に添加される任意の非活性成分を意味する。
【0035】
本明細書において、特に断らない限り、1つの(「a」又は「an」)は「1又はそれ以上」を意味する。
【0036】
ミツバチ特異的細菌株
本発明は、少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から又は18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から単離された乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株に関する。単離された細菌株は少なくとも1つの株を伴い、したがって、1つ又はそれ以上の細菌株を伴い得る。ハチの蜂蜜産生管はさらに、体幹、口、食道及び蜜胃からなると定義でき、したがって、腸も消化管も排除される。このハチは好ましくは、蜂蜜産生ハチであるミツバチ属の種、好ましくはセイヨウミツバチ由来である。用語「新鮮な蜂蜜」は、ミツバチが巣に帰るまでに花蜜を集めてから3日以下の新しい蜂蜜として定義してよい。さらに「新鮮な蜂蜜」は、好ましくは約20重量%を上回る水分含量を有していてよく、いまだ蝋で封じられていない蜂巣の個室中に存在し得る。天然蜂蜜の産生のための原料である、ハチが収集した花蜜の水分含量は、最大93重量%であり得る。通常、花蜜中の水分含量は、約30〜50重量%であり得る。対照的に、熟成蜂蜜は約18重量%を下回る水分含量となったものである。
【0037】
この株は好ましくは、65重量%の糖溶液中で少なくとも8日間、好ましくは70重量%の糖溶液中で8日間、生存する能力を有し、この能力は、多くの産業適用で非常に重要である。本発明に従う細菌株は、食品を腐敗させる病原性微生物(例えば、ブドウ球菌属の種、リステリア属の種、クロストリジウム属(Clostridium)の種、シュードモナス属(Pseudomonas)の種、大腸菌(Escherichia coli)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びパエニバチルス・ラルバエ)の増殖を阻害する能力を有し得る。
【0038】
本発明に従う細菌株は好ましくは、乳酸菌属株Biut2(LMG P−24094)、乳酸菌属株Hma2(LMG P−24093)、乳酸菌属株Hma8(LMG P−24092)、乳酸菌属株Bma5(LMG P−24090)、乳酸菌属株Hon2(LMG P−24091)(前記株は、2007年4月3日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgium(Universiteit Gent,K.L.Ledeganckstraat 35、B−0999 Gent,BELGIUM)に寄託されている)、ビフィズス菌属株Bin7(LMG P−23986)、ビフィズス菌属株Hma3(LMG P−23983)、ビフィズス菌属株Bin2(LMG P−23984)、ビフィズス菌属株Bma6(LMG P−23985)及びラクトバチルス・クンケエイ(Lactobacillus kunkeei)Fhon2(LMG P−23987)(前記株は、2007年1月15日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)並びに本願出願前にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されたHma11からなる群より選択され得る。
【0039】
本発明に従う組成物は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株を含む。この組成物は、少なくとも1つの細菌株又はいくつかの細菌株の混合物を含む。この組成物は、糖供給源、好ましくは蜂蜜、糖、フルクトース、スクロース、デキストリン、マルトース又はグルコースからなる群より選択される糖供給源をさらに含んでもよい。この組成物は、胃腸管疾患を予防し得る食品製品(例えば、本発明に従う株を使用して合成により産生された蜂蜜)又はこの株を含む食品製品(飲料製品など)であり得る。この食品又は飲料は、プロバイオティック、プレバイオティック又は共生の組成物又は製品として使用できる。この組成物はさらに、ハチ用餌製品などの餌製品であり得る。
【0040】
この組成物は、医薬上許容される担体及び/又は希釈剤を含む、感染症又は胃腸管疾患を予防及び/治療し得る医薬組成物であり得る。この医薬組成物は、懸濁物、ゲル、クリーム、粉末又はカプセルの形態であり得る。
【0041】
本発明に従う医薬製品は、18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、乳酸菌属又はビフィズス菌属の単離された細菌株を含み、感染症又は胃腸管疾患を予防及び/又は治療し得、包帯、絆創膏又はスプレーの形態であり得る。
【0042】
本発明に従う組成物を製造するための方法は、本発明に従う細菌株を少なくとも1つ、糖供給源に添加するステップを含む。この糖供給源は好ましくは、蜂蜜、糖、フルクトース、スクロース、デキストリン、マルトース又はグルコースからなる群より選択し得る。このような方法は合成蜂蜜の製造であり得、この方法では、前記少なくとも1つの株が、糖供給源の少なくとも一部を発酵することが可能である。
【0043】
これら上述の組成物及び製品は、生きた細菌、凍結乾燥された細菌又は死滅した細菌を含んでもよい。さらに、これらは、細菌が産生する代謝産物及び/又はバクテリオシンを含んでもよい。凍結乾燥された細菌株を含む製品は、水の添加によって活性化できる。
【0044】
本発明に従う細菌株を単離するための方法は、a)18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜をサンプリングするステップ、又はハチから蜂蜜産生管を分離し、無菌培地中で管を振盪するステップ;b)適切な培地上でa)からのサンプルを細菌培養するステップ;c)適切な培地上でb)で得られた細菌株(単数又は複数)を純粋培養及び単離するステップ、を含む。この蜂蜜産生管は好ましくは、腸又は消化管による汚染を回避するために、食道の後且つ前胃の前で分離される。この方法はさらに、d)食品を腐敗させる病原性微生物を阻害する前記株(単数又は複数)の能力を評価するステップを含んでもよい。
【0045】
培養のための培地は、蜂蜜ベースの寒天、Tryptone Soy Broth寒天(TSB)(例えば、Oxoid、Basingstoke、Hampshire、Englandのもの)、トマトジュース寒天(TJ)(例えばOxoidのもの)、Tween(登録商標)を含む全目的培地(APT)(例えば、Merck、Darmstadt、Germanyのもの)及びRogosa寒天(例えばMerckのもの)から選択され得る。
【0046】
本発明に従う好ましい細菌株を表1中に開示する。これらの細菌株は、乳酸菌属種及びビフィズス菌属種の分類学的名称に適合する、カタラーゼ陰性でグラム陽性の非胞子形成性乳酸産生桿菌である。これらはまた迅速に増殖し、強力な病原体阻害特性を有する。さらに、本発明に従う細菌株は、ヒトに対して無害である。
【0047】
表1:単離された細菌株
【表1】

【0048】
表1に列挙した細菌株は、ブダペスト条約の下で、国際寄託に従って、BCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託された。これらの株の16S rRNA配列を他の乳酸細菌株と比較した系統学的分析により、単離された株が乳酸菌属及びビフィズス菌属に属することが確認された。実施例中でさらに具体的に記載するように、16S rRNA遺伝子のほぼ完全な配列が決定されており、これらの配列を使用して、データベースRibosomal Database Project(RDP)(Cole,J.R.ら、2005.Nucleic Acids Res 1、33)中で16S rRNA配列類似性について検索した。このデータベースは、それらの16S rRNA遺伝子による細菌の同定のために使用される。全ての生物間で高度に保存されている16S rRNA配列の比較は、生物間の系統学的関連性を評価するために使用できる。
【0049】
図1は、16S rRNA遺伝子中の約1400の位置の距離行列分析に基づいた系統樹を開示している。この系統樹は、近接接合法を使用して構築したものであり、進化距離は、PAUPのLog Det/Paralinear法を使用して概算した。略号:(B.)ビフィズス菌属、(L.)乳酸菌属、(P.)ペディオコッカス属(Pediococcus)、(Paral.)パララクトバチルス属(Paralactobacillus)。類型株番号:ラクトバチルス・ブフネリ(L.buchneri)JCM1115、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)DSM20075、ラクトバチルス・クリスパータス(L.crispatus)ATCC33820、ラクトバチルス・ガセリ(L.gasseri)ATCC33323、ラクトバチルス・バースモルデンシス(L.versmoldensis)KU−3、ラクトバチルス・カリゼンシス(L.kalixensis)DSM16043、パララクトバチルス・セランゴレンシス(Paral.selangorensis)LMG17710、ペディオコッカス・パルバラス(P.parvulus)JCM5889、ペディオコッカス・イノピナタス(P.inopinatus)DSM20285、ラクトバチルス・キタサトニス(L.kitasatonis)JCM1039、ラクトバチルス・ハムステリ(L.hamsteri)DSM5661、ラクトバチルス・アミロリティクス(L.amylolyticus)DSM1664、ラクトバチルス・クンケエイ(L.kunkeei)YH−15、ビフィドバクテリウム・サーマシドフィルム亜種ポルシナム(B.thermacidophilum subsp.porcinum)P3−14、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(B.asteroides)ATCC25910、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ(B.coryneforme)ATCC25911、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)DSM20079、ラクトバチルス・ラムノサス(L.rhamnosus)JCM1136、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)JCM1149、ラクトバチルス・カゼイ(L.casei)JCM1134、ラクトバチルス・ファーメンタム(L.fermentum)ATCC14931、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)DSM20016、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(B.animalis subsp.lactis)DSM10140、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(B.breve)ATCC15700、ビフィドバクテリウム・インファンティス(B.infantis)ATCC15697。
【0050】
乳酸菌株Biut2、Hma2、Hma8及びBma5は、系統樹により示されるとおり、乳酸菌属内の新たな種である。これらの細菌株は、乳酸菌属内の他の類縁体とはクラスターを構成しない。このクラスターは、ラクトバチルス・デルブルッキー(L.delbrueckii)の系統学的群内に割り当てられる。乳酸菌属Hon2は、乳酸菌属内の新たな種と第2のクラスターを構成する。しかし、このクラスターは、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)−ペディオコッカス属(Pediococcus)の系統学的群と、ラクトバチルス・デルブルッキー(L.delbrueckii)の系統学的群との間に、割り当てられる。ラクトバチルス・クンケエイFhon2の16S rRNA遺伝子配列は、以前に記載されたラクトバチルス・クンケエイ類型株と同一であり、ラクトバチルス・カゼイ−ペディオコッカス属の系統学的群内に位置づけられる。しかし、微生物の全DNAを比較すると(図2を参照のこと)、これら2つの生物が互いに対応しないことは明らかである。
【0051】
ビフィズス菌属Bin2、Hma3及びBin7は、ビフィドバクテリウム・アステロイデス(Bifidobacterium asteroides)に関連し、この種内の株として又はビフィズス菌属内の新たな種として割り当てることができよう。ビフィズス菌属Bma6は、ビフィドバクテリウム・コリネフォルメ(Bifidobacterium coryneforme)に密接に関連している。
【0052】
Hma11もまた、乳酸菌属内の新たな種である。
【0053】
表1中の細菌株は、ミツバチ特異的であると同定されており、ミツバチの蜂蜜産生管中又は新鮮な蜂蜜中で見出された。これらの株は、蜂蜜産生の間にハチの蜂蜜産生管から蜂蜜に移る。ビフィズス菌属株Bin2、乳酸菌属株Hon2及びラクトバチルス・クンケエイFhon2もまた、新鮮な蜂蜜中に見出されている。蜂蜜中の水分含量が約18%より下に低下した場合、非胞子形成性の細菌は生存せず、したがって、細菌の単離は不可能となる。蜂蜜は、3〜7日後、死んだ細菌並びにバクテリオシン及び代謝産物などの細菌成分を含む。
【0054】
本発明に従う細菌株は、約20〜35℃の間(例えば、約21〜32℃の間)の、比較的低い温度範囲で最適に増殖し、この温度は、ミツバチが花蜜を集める時の蜜胃中の温度である。さらに、多くの他の乳酸細菌とは対照的に、これらの細菌株は迅速に増殖する。これらの細菌株はまた、酸性環境(例えば、pH2〜5の間)に耐性であり、このpHは、天然に存在する蜂蜜のpHである。
【0055】
単離されたラクトバチルス・クンケエイFhon2は、通性嫌気性菌であり、弱くカタラーゼ陽性であり、グルコースからガスを産生し、グルコースの存在下でクエン酸塩又はリンゴ酸塩を利用し、フルクトースからマンニトールを産生する。さらに、たいていの場合、アルギニンからアンモニアを産生せず、硝酸塩を還元することもない。さらに、フルクトース、グルコース、スクロース及びラフィノースを発酵する。
【0056】
本発明に従う細菌株は、APT寒天、Rogosa寒天及びTryptic soy broth(TSB)寒天の1又は複数を添加する可能性を伴って、トマトジュース寒天などの培地上で増殖することが可能である(実施例を参照のこと)。これらのタイプの培地の適用は、細菌株の増殖のために非常に重要である。細菌株の増殖は、蜂蜜ベースの寒天プレート上でも達成できる。
【0057】
表1中に列挙した細菌株は、ジアセチル、過酸化水素及び有機酸(例えば、乳酸及び酢酸)を産生する株である。これらの分子は全て、蜂蜜中に存在することが示されており、したがって、蜂蜜の抗菌特性、味及び品質に寄与し得る。これらの阻害剤は、細菌株が産生するバクテリオシン及び他の抗菌物質と共に、他の種の細菌及び酵母に対する広いスペクトルのタンパク質アンタゴニストの産生を示唆する。これらの細菌株は、蜂蜜中に一般に見出されるサッカロマイセス属(Saccharomyces)に属する酵母の非常に強力な阻害剤である。酵母に対する蜂蜜の極度の感受性に起因して、蜂蜜の水分含量が約18%を上回る場合、蜂蜜1グラム当たり胞子を1つだけ有していても、発酵を行えると予測される。記載された細菌株による蜂蜜の防腐はしたがって、蜂蜜の長期保存に重要である。表1中に列挙した細菌株の防腐能力は、多くの防腐適用(蜂蜜の防腐だけでなく、食品及び飲料一般の防腐も)においてそれらを有用なものにする。細菌性の阻害は、食品を腐敗させる食品媒介性の病原性微生物などの多くの細菌(クロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌及びシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、リステリア・イノキュア(Listeria inocua)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、パニエバチルス・ラルバエが含まれる)に対して有効である。
【0058】
本発明はまた、表1中に提示された細菌株の単離された純粋培養物に関する。このような純粋培養物は、寒天プレート上のコロニーとして、液体細胞懸濁物として、又は凍結された、スプレー乾燥された、若しくは凍結乾燥された調製物として、提供され得る。この培養物は、任意の適用(例えば、食品製品若しくは飲料製品、餌製品又は医療用製品)において、単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。さらに、この培養物は、代謝産物、抗菌化合物及び/若しくはバクテリオシンを含み得及びこれらを産生するために使用され得、これらは、種々の製品又は組成物(例えば上で例示したもの)において使用できる。
【0059】
さらに、本発明に従う製品又は組成物は、表1中に列挙した細菌の、2つ以上の異なる株を含んでもよい。この株の少なくとも2つ又はそれ以上を組み合わせることによって、細菌の効果は相乗的な様式で利用され、その結果より多くの種の病原体と闘うことになるであろう。さらに、多数の異なるバクテリオシンが産生されるので、製品の有効性は増強されるであろう。結果として、蜜胃及び新鮮な蜂蜜中の天然に存在する混合物などの、細菌株のより天然に存在する混合物が得られるであろう。
【0060】
この製品は糖供給源を含み得、この糖供給源は、蜂蜜、糖、フルクトース、スクロース、デキストリン、マルトース又はグルコースを含む群より選択される。蜂蜜と組み合わせて本発明に従う細菌株を含む製品を製造することによって、これらの細菌株は、蜂蜜と相乗的な様式でそれらの機能を果たすであろう。したがって、本発明に従う細菌株の添加と、蜂蜜の効果を組み合わせることが所望され得る。
【0061】
食品製品又は飲料製品
本発明の製品又は組成物は、本発明に従う株を少なくとも1つ含み、適切な食品又は飲料の成分又は栄養素を使用することによって、食品製品又は飲料製品の形態で調製できる。この食品又は飲料は、プロバイオティック、プレバイオティック又は共生の組成物又は製品として使用できる。
【0062】
本発明に従う細菌株の1つ又は複数の添加によって、新規且つ改善された製品が得られる。これらの製品は、生きた、凍結乾燥した、又は死滅した細菌を含んでもよい。さらにこの製品は、細菌が産生する代謝産物及び/又はバクテリオシンを含んでもよい。凍結乾燥された細菌株を含む製品は、水の添加によって活性化できる。
【0063】
本発明に従う細菌株を使用することによって、高度に天然の製品が産生できる。本発明の細菌株の少なくとも2つ又はそれ以上を組み合わせることによって、細菌の効果は相乗的な様式で利用できる。この様式で、蜂蜜中などの、より天然に存在する細菌株の混合物を得ることができる。細菌株の混合物の使用はまた、種々の望ましくない病原体を打ち負かす機会を増大させる。
【0064】
製品は、蜂蜜又は例えば糖、フルクトース、スクロース、マルトース及びグルコースを含む群より選択される糖供給源を含んでもよい。少なくとも1つの本発明に従う細菌株を蜂蜜などの糖供給源と組み合わせて含む製品又は組成物を製造することによって、これらの細菌株は、糖供給源と相乗的な様式でそれらの機能を果たすであろう。蜂蜜の効果を本発明に従う細菌株の添加と組み合わせることが所望される。1つの実施形態によれば、蜂蜜及び細菌を含む飲料(例えば蜂蜜水飲料)が調製できる。この蜂蜜水飲料は、水、蜂蜜、本発明に従う細菌株及びフルーツジュース(例えば、レモンジュース、ライムジュース、オレンジジュース又はリンゴジュース)を混合することによって、調製できる。飲料中の細菌株の濃度は、製品1g当たり約10〜1014CFU(例えば、製品1g当たり10、10、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012又は1013CFU)であり得る。細菌株のこの濃度はまた、蜂蜜を添加せずに飲料製品中で使用できる。製品1g当たり約10CFUの濃度は、新鮮な蜂蜜中の細菌株の天然に存在する濃度を模倣する製品において使用され得る。蜂蜜水飲料はまた、ほとんど又は全く水分含量のない、凍結乾燥した細菌株及び上記ジュースを含む、濃縮物の形態で調製してもよい。
【0065】
蜂蜜食品製品はさらに、他の食品製品の製造のための成分として使用してもよい。
【0066】
本発明の目的は、消化管細菌叢を増大、補充及びバランスをとる目的のために、任意の消費者にとってより容易にアクセス可能であり、頻繁且つ通常の、細菌株を含む食品又は飲料を使用することであり、これは、毎日の健康状態及びスポーツ活動に関して利点をもたらすであろう。
【0067】
別の実施形態によれば、細菌株の混合物を含む機能性の食品又は飲料が提供され、これらは、生きた又は生存形態で、並びにまたそれらのバクテリオシン及び/又は代謝産物が消化管に到達することができ、細菌叢に定着し、影響を与え又は増殖し、それによってヒトの健康状態にとって重要な有益な作用を果たす。消化管に到達する細菌株はまた非生存状態であってもよく、ひいては、それらが産生したバクテリオシン及び/又は代謝産物を介して有益な作用を果たす。この食品又は飲料は、胃腸管疾患の予防及び/又は治療のために使用され得る。
【0068】
飲料の例は、乳製品、ジュース製品、ワイン、酢、スウェディッシュグログ(Swedish Glogg)、ビール、ソーダ、レモネード及びサイダー製品である。1つ又は複数の本発明に従う細菌株及び蜂蜜の添加を含む飲料は、風邪又は喉の不快感に対しての、運動選手、ストレスのかかった人の回復としての、又は免疫抑制入院患者の回復のための、蜂蜜水の形態であってもよい。飲料は、新鮮な蜂蜜中のような、所望の天然の効果を与えるミネラル及び他の物質を有するその特別な構成によって特徴付けられ得る。
【0069】
本発明に従う細菌株を添加した飲料又は食品は、細菌株の保存効果から利益を得るであろう。酵母発酵は強く阻害されるであろう。さらに、これらの細菌株は、酵母発酵を終わらせるためにワイン生産において使用できる。この細菌は、製品中で、健康にとって利益となる天然起源の細菌として維持されるであろう。
【0070】
この食品又は飲料はまた、例として、ビタミン、ミネラル、抗酸化剤、フェノール、線維、オリゴ糖、フルクトオリゴ糖又はイヌリンなどの添加剤を含んでもよい。
【0071】
食品製品の例は、肉製品、乳製品、果物製品、魚製品、パン製品又は野菜製品である。食品製品は、蜂蜜などの糖供給源を含んでもよい。この食品製品は、本発明に従う細菌を添加した新鮮な蜂蜜又は成熟蜂蜜であり得る。この蜂蜜食品製品は、本発明に従う細菌株又は本発明に従う細菌株の混合物を、蜂蜜又は他の製品に添加することによって調製できる。細菌株の濃度は、製品1g当たり約10〜1014CFU(例えば、製品1g当たり10、10、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012又は1013CFU)の濃度を達成するために、適切に選択できる。
【0072】
本発明に従う細菌株はまた、食品及び飲料の発酵のための出発培養物としても使用できる。食品及び飲料の例は、パン、バターミルク、カカオ、バニラ、コーヒー、チーズ、グリーンチーズ、キュウリ、餌添加物、発酵魚製品、発酵乳、オリーブ油、ザウアークラウト、ソーセージ、ヨーグルト、ワイン、ビール、サイダー及び蜂蜜である。
【0073】
医療用製品
本発明に従う細菌株は、病原性微生物の増殖を阻害するので、感染症を予防又は治療するのに有益である。これらの株及びそれらを含む製品は、軟膏、クリーム、スプレー、ゲル及び液体溶液などの形態で、ヒト又は動物の皮膚に移され得る。これらの細菌株は、感染症を予防又は阻害する所望の結果を達成するために、製品の種々の部分中に有効量の細菌株を含む、包帯、皮膚パッチ、ゲル又は絆創膏などの製品中にも含まれ得る。これらの製品は、創傷、ひりひりした痛み、熱傷、瘢痕、褥瘡、糖尿病性病変、挫瘡、湿疹、皮膚炎、癌、カタル、発疹、酵母感染症、毒素性ショック症候群、真菌感染症、ウイルス感染症及び潰瘍の治療のために使用され得る。
【0074】
この製品は、細菌、ウイルス、酵母又は真菌の感染症の治療において使用され得る。目的のウイルス感染症は、口唇ヘルペスを含むヘルペスウイルス感染症であり得る。本発明に従う細菌株が闘う細菌感染症は、ブドウ球菌属の種、クロストリジウム属の種、バチルス属の種、腸球菌属(Enterococcus)の種、シュードモナス属の種、リステリア属の種及び大腸菌を含む群より選択される種による感染症であり得る。
【0075】
この医療用製品は、糖供給源(例えば、蜂蜜又は合成蜂蜜)と組み合わせて本発明に従う細菌株を含んでもよい。この製品はひいては、これら細菌株の効果と組み合わせて、蜂蜜の既知の効果から利益を得るであろう。この製品は、変動する重量%の、クリーム化した若しくは結晶化した蜂蜜、スプレー乾燥した、凍結乾燥した、風乾した蜂蜜及び/又は液体蜂蜜を含み得る。この蜂蜜は、新鮮な蜂蜜でも成熟蜂蜜でもよい。
【0076】
この医療用製品は、本発明に従う細菌株が産生する代謝産物及び/又はバクテリオシンを含んでもよい。この製品は、生存細菌が全く存在しない無菌製品を達成するために、公知の様式でさらに無菌化してもよい。この製品は、細菌株が既に産生したバクテリオシン及び/又は代謝産物から利益を得るであろう。
【0077】
活性成分(即ち、生きた又は死んだ細菌株並びにバクテリオシン及び/又は代謝産物)は、最終製品の約0.1重量%〜約100重量%、例えば1重量%〜70重量%、例えば5重量%〜50重量%を構成し得る。典型的な製品は、10〜1014CFU(例えば、10、10、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012又は1013CFU)の生存又は死滅細菌の濃度を、1グラムの投薬製剤中に含むであろう。
【0078】
この医療用製品は、本発明の細菌株の少なくとも1又は複数或いは本発明に従う細菌株の1又は複数から産生されるバクテリオシンを含んでもよい。細菌株の混合物又は異なる細菌株由来のバクテリオシンは、病原体阻害効率に関して有益であり得る。
【0079】
この医療用製品はまた、チューインガム中にこれらの細菌株を含んでもよい。この製品は、例えば歯肉炎及び歯垢の治療において使用できる。チューインガム製品の成分は、蜂蜜、蜜蝋、ゴム及び当該分野で公知の他の成分の1又は複数であり得る。
【0080】
この医療用製品中の任意の成分には、抗生物質、殺菌剤及び他の抗菌剤などの医薬、ビタミン、緩衝剤、着色剤、ミネラル、調味料、香料、ゲル化剤又は他の化学化合物(例えば、抗酸化剤又はカルシウム)が含まれる。
【0081】
この医療用製品は、フィルム、織布包帯、多層シート包帯、パッチ、ストラップ、ロープ構成又はラップの形態の基材材料を含み得る。基材材料の選択肢としては、寒天ゲルフィルム、アルギン酸塩包帯、ハイドロコロイド、発泡包帯などが含まれる。さらに、この製品は、医薬上又は生理学的に許容される担体、賦形剤及び/又は希釈剤と共に、本発明に従う細菌株を含んでもよい。乾燥製剤のための担体は、トレハロース、マルトデキストリン、米粉、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、イノシトールなどであり得る。液体又はゲルベースの担体は、水、塩溶液、アルコールなどであり得る。医療用製品は、ひいては、吸収剤などに細菌株を適用することによって形成してもよい。
【0082】
この医療用製品は、本発明に従う細菌と共に医薬上許容される担体を使用した医薬製品の形態であってもよい。医薬上許容される担体の例としては、種々の希釈剤及び賦形剤(例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤及び当該分野で公知の他の担体)が含まれる。投薬は、丸剤、錠剤、粉末、溶液、懸濁物、エマルジョン又は顆粒の形態であり得る。錠剤は、標準的なコーティング材料でコーティングしてもよい。医薬製品中の細菌株の量は、製品の1投薬当たり約10〜1014CFU(例えば10、10、10、10、10、1010、1011、1012又は1013CFU)から選択され得る。この医療用製品は、胃腸管疾患の予防及び/又は治療のために使用され得る。
【0083】
餌製品
本発明に従う細菌株は、ハチ及びハチ幼虫のための餌製品において有益であり得る。これらの製品は、ハチ又はハチの幼虫内の微生物細菌叢を強化又は再樹立するために使用されるプロバイオティック餌の形態であってもよい。使用される細菌株は、ハチの蜂蜜産生管中の天然に存在する細菌株である。したがって、本発明に従う細菌株は、蜂蜜産生管の微小環境内の任意の天然に存在する細菌株を打ち負かさないであろう。類似の製品中の、蜂蜜産生管に起源しない他の有益な細菌株の使用は、否定的な様式でミツバチの天然の細菌叢を変更する可能性がある。したがって、このタイプの本発明に従う餌製品は特に興味深いものとなろう。
【0084】
この餌製品は、表1中に列挙した細菌株の1つ又はいくつかを含んでもよい。細菌株の混合物は、治療効率に関して有益であり得る。
【0085】
細菌株の濃度は、製品1g当たり約10〜1014CFU(例えば、製品1g当たり10、10、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012又は1013CFU)の濃度を達成するために、適切に選択できる。
【0086】
この餌製品は、病原性の細菌、ウイルス、真菌又はダニから、ミツバチ又はミツバチの幼虫を保護するために使用され得る。致死的な感染症を一般に導く、上記製品が闘うべき生物は、パエニバチルス・ラルバエ(Paenibacillus larvae)、メリッソコッカス・プルトニウス(Melissococcus plutonius)、アスコスフェラ・アピス(Ascosphaera apis)、ミツバチヘギイタダニ(Varroa destructor)、羽変形病ウイルス又はノゼマ・アピス(Nosema apis)である。
【0087】
細菌株又は細菌株混合物は、粉末、溶液又は固体として、ミツバチ又はミツバチの幼虫に投与され得る。粉末は、凍結乾燥された、スプレー乾燥された、又は風乾された形態であり得る。粉末は、取り扱い、輸送、保存が簡単であり、より延長された賞味期限を有する。この粉末又は溶液は、ミツバチ又は幼虫上に、振りかけてもスプレーしてもよい。有効な投与は、ミツバチの巣に粉末又は溶液を直接スプレー又は振りかけることによっても達成できる。
【0088】
この餌製品はまた、糖供給源を含んでもよい。この糖供給源は、蜂蜜、糖、スクロース、グルコース、フルクトース、デキストリン、マルトース又は他の形態の糖であり得る。この糖供給源は、エネルギー源としてミツバチ又はミツバチの幼虫により使用され得る。糖溶液中で蜂蜜を使用することによって、いくつかの利点が得られる。第1に、ハチは、単純なスクロース含有溶液よりも蜂蜜含有溶液を使用したがる。第2に、蜂蜜は、さらなる有益な成分(例えば、ミネラル、ビタミン及びタンパク質)を含む。
【0089】
本発明に従う細菌株を使用する場合、それらを含むミツバチ餌は、バクテリオシン及び代謝産物の細菌及び酵母阻害特性から利益を得るであろう。結果として、この糖溶液は、糖溶液の通常の場合のようには、発酵しないであろう。
【0090】
この餌製品はまた、花粉、ダイズ、ハチパン又は合成ハチパン(秋、冬及び春の間、ミツバチ及びミツバチの幼虫にとって重要な食料源)を含んでもよい。この餌製品はまた、他の添加剤(例えば、ビタミン、ミネラル、脂肪、炭水化物及びタンパク質)を含んでもよい。
【0091】
これらの細菌株の投与は、ミツバチ社会が弱く且つ休眠中である秋又は冬において、特に重要である。これらの細菌株は、その社会に存在する蜂蜜又は糖の防腐剤としても機能するであろう。花蜜が入手できない秋、冬及び早春の期間において、ハチ及びハチの幼虫は、細菌、ウイルス、真菌及び寄生生物の感染症に対して特に脆弱である。本発明に従う細菌株をミツバチ及びミツバチの幼虫に投与することによって、細菌は、それらの元の天然環境であるミツバチの蜂蜜産生管に到達したときに、生存可能な状態になるであろう。それにより、ハチ及び幼虫は、ミツバチ及び幼虫の病原体に対するより有効な保護を獲得した状態になっているであろう。
【0092】
以下の実施例は、本発明を任意の様式、形状又は形態で、明確に又は暗黙に説明することを意図しているが、限定することは意図しない。
【実施例】
【0093】
(例1)
ハチの巣の回収
約12,000匹のハチを有する小さいハチの巣を、スウェーデン南部のSkaneの北西部に位置する自然保護区Kullabergの野生のラズベリーの花畑に輸送した。その期間の間、隣接区域には開花していた花は他に存在せず、ハチの巣には、実験開始の時点では蜂蜜が入っていなかった。2週目に、サンプリングを、ハチの巣周囲の新鮮なラズベリーの花、出て行く働きバチ及び入ってくる働きバチ、並びにハチの巣からのラズベリー花の新鮮な蜂蜜に対して実施した。これらのサンプルに加えて、回収したラズベリーの蜂蜜を保存し、2ヶ月の保存後に分析した。これらのサンプルを、全ての細菌の目的のため及びLABの選択のために、4種の異なるタイプのインキュベーション培地中で培養した。細菌の正体を、クローニング及び純粋培養の両方の技術を使用して、16S rRNA遺伝子の分析によって明らかにした。
【0094】
(例2)
ミツバチからの細菌の単離
20個のラズベリーの花、10匹の入ってくる働きバチ及び10匹の出て行く働きバチ、並びに10匹の養育バチを取り、5mlの無菌生理食塩水(0.9%w/vのNaCl、0.1%w/vのTween80及び0.1%w/vのペプトン)を含む異なる無菌10mlチューブ中に仕分けした。さらに、0.5mlの新鮮な蜂蜜、5匹のミツバチ幼虫(2〜5日齢)、5つのミツバチ頭部、5つのミツバチ蜜胃及び1つのミツバチ後腸を、0.9mlの生理食塩水を含む1.5mlの無菌マイクロチューブ中に個別に収集した。ミツバチの口及び体幹の分析を、無菌の外科用メス及びピンセットを用いて体から頭部を分離して実施した。これらの頭部を無菌希釈培地中で振盪し、その後細菌培養を行った。花蜜で満たされたミツバチの胃を、無菌の外科用メス及びピンセットを用いて食道の後且つ前胃の前で切り出すことによって、ミツバチの胃の分析を実施し、消化管のどの部分もサンプルを汚染しないことを保証した。これらのチューブを振盪し、直ぐに実験室に輸送した。直接的な16S rRNA遺伝子分析のために、0.5mlの懸濁物を含むチューブを−20℃で凍結し、保存した。
【0095】
表1中に列挙した細菌株を、健康なミツバチから生存状態で単離した。本発明に従う細菌を最も多数生じた花の花蜜供給源は、ラズベリーの花であることが見出された。細菌株の消化管サンプルは、本発明に従う株が存在しないことを実証した。
【0096】
(例3)
蜜胃由来の細菌の培養
例2に記載したサンプルから、無菌生理食塩水による希釈系列を作成し、0.1mlの体積を異なる増殖培地上に広げた。増殖及び純粋培養物を、Tryptone Soy Broth寒天(TSB)(Oxoid、Basingstoke、Hampshire、England)、トマトジュース寒天(TJ)(Oxoid)、Tween(登録商標)を含む全目的培地(APT)(Merck、Darmstadt、Germany)及びRogosa寒天(Merck)を用いた異なる希釈から、異なる培地(表2を参照のこと)上で得た。これらの培地は製造業者の指示に従って製造した。使用した単離培地の組み合わせが、細菌の増殖にとって非常に重要であることが示された。全ての単離体は、Bma5(Rogosa上で限定的に増殖した)及びFhon2(Rogosa上でほとんど増殖しなかった)以外は、Rogosa上で非常に良好に増殖した。対照的に、Fhon2(ラクトバチルス・クンケエイ)は、ビフィズス菌属に属する株(Bin2、Bin7、Bma6及びHma3)と共に、トマトジュース寒天上で非常に良好に増殖した。他の乳酸菌属種(Biut2、Hon2、Hma2、Hma8、Hma11及びBma5)は、トマトジュース寒天上で限定的に増殖した。これらの単離体を、37℃で2〜3日間、好気的及び嫌気的の両方で培養した。10〜30個のコロニーを、各々が30〜300個のコロニーを含む、使用した全ての培地からランダムにピックアップし、純粋(単離体)にするために再培養した。
【0097】
表2:特異的培地上での細菌の増殖
【表2】

【0098】
(例4)
クローニング及びPCR増幅
純化した単離体由来の1コロニーを、0.1mlの無菌水及びガラスビーズ(0.106mm、Sigma−Aldrich、St Louis、USA)と共に、0.2 Thermo−Strips(Abgene、Surrey、UK)中に配置した。細胞を、MS1 Minishaker(IKA Works,INC、Wilmington、USA)中で45分間振盪することによって分解した。Galaxyミニ遠心機(VWR、Pennsylvania、USA)中で20200×gで5分間の遠心分離後、1μlの上清を、以下のPCR反応で使用した。
【0099】
増幅は、細菌16S rRNA遺伝子の保存された領域にアニールするように設計されたプライマーを用いて実行した。フォワードプライマーENV1(5’−AGA GTT TGA TII TGG CTC AG−3’)は、大腸菌(Escherichia coli)の16S rRNAに対して位置8〜27に対応し、リバースプライマーENV2(5’−CGG ITA CCT TGT TAC GAC TT−3’)は、位置1511〜1492に対応した(Brosiusら、1978)。PCR反応は、50μlの総容量中に、5μlの10×PCR緩衝液(100mMのTris−HCl、15mMのMgCl、500mMのKCl、pH8.3)、200μmol1−1の各デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)、10pmolの各プライマー及び1〜10μlのテンプレートを含んだ。増幅は以下のとおりに、Mastercycler(Eppendorf、Hamburg、Germany)を用いて実施した:(95℃で15秒間、48℃で30秒間及び72℃で90秒間)×30サイクル、その後72℃で10分間の伸長ステップ。PCR産物を、配列決定のために−20℃で保存した。
【0100】
EZ1 DNA Tissue Kit(Qiagen、Hilden、Germany)用の手順に従って、190μlのBuffer G2及び10μlのProteinase Kをペレットに添加し、MS1 Minishakerで2分間混合した。これらのサンプルを56℃の水浴(Julabo SW1、Germany)中で、ペレットが溶解するまでインキュベートした。15分毎に、プロセスを加速するためにサンプルを1分間混合した。ガラスビーズ(0.106mm)を添加し、細胞をMS1 Minishaker中で45分間振盪することによって分解させた。Galaxyミニ遠心機での20200×gで5分間の遠心分離後、0.1mlの上清を、Qiagenの組織カードを使用して、Bio Robot EZIバージョン1.3のEZ1 DNA Tissue Kit(Qiagen Instruments AG、Germany)用の手順に従って、さらに処理した。プロセスの最後に、DNAを200μlの無菌水中に溶出した。
【0101】
PCR増幅を、PCRが導入するバイアスを最小化するために、各サンプルについて4つの複製で実施した。増幅を、50℃のアニーリング温度を用いる以外は、単離体についてと同じ方法で実施した。各DNA調製物からの4つのPCR産物を一緒にプールし、1.5%(w/v)のアガロースゲル(Type III、High EEO、Sigma、ST.Louis、USA)上で泳動することによってチェックした。ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、UV光で可視化した。
【0102】
プールしたPCR産物を、GFX(商標)PCR DNA及びGel Band Purification Kit(Amersham Biosciences、UK)で精製した。精製した産物を、製造業者の指示に従って、TOPO TAクローニングベクター(Invitrogen、USA)中にライゲーションし、コンピテントpCRII−TOPO大腸菌(E.coli)細胞中に形質転換した。コロニーを、カナマイシン(Sigma)及びX−gal(Promega)を用いてLB寒天上で青/白スクリーニングした。24個の白色コロニーを、各サンプルからランダムに選択し、再培養した。
【0103】
クローニングされたDNAを回収するために、ベクターの開始点及び終点でアニーリングするように設計されたユニバーサルプライマーM13フォワード(5’−GTA AAA CGA CGG CCA G−3’)及びM13リバース(5’−CAG GAA ACA GCT ATG AC−3’)を用いて増幅を実施した。PCR反応は、50μlの総容量中に、5μlの10×PCR緩衝液(100mMのTris−HCl、15mMのMgCl、500mMのKCl、pH8.3)、200μmol1−1の各デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)、10pmolの各プライマー及び1〜10μlのテンプレートを含んだ。増幅は、94℃で10分間の1回の変性ステップ、その後(94℃で1分間、55℃で1分間及び72℃で1分間)×28サイクル、その後72℃で10分間の伸長ステップを使用して、Mastercycler(Eppendorf、Hamburg、Germany)を用いて実施した。PCR産物を、配列決定のために−20℃で保存した。
【0104】
(例5)
16S rRNAの配列決定及び系統学的分析
単離された細菌に由来するPCR産物は、ユニバーサルプライマーENV1及びENV2を用いて、配列決定会社(MWG Biotech AB、Ebersberg、Germany)が配列決定した。これらの部分的16S rRNA配列を、National Centre for Biotechnology Informationのホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)からアクセス可能な、Advanced BLAST類似性検索オプション(Altschul,S.F.ら、Nucleic Acids Res 25,3389−3402)を使用して、GenBank(National Centre for Biotechnology Information、Rockville Pike、Bethesda、MD)に対して検索した。比較のために、配列は、ホームページ(http://rdp.cme.msu.edu)からアクセス可能な別のソフトウェアRibosomal Database Project IIに対しても検索した。これらの部分配列は、ほぼ1400塩基対(50〜1500bpの範囲)であった。
【0105】
図1中の系統樹は、以下のコンピュータソフトウェアプログラムを使用して得た:アラインメントのためにClustal X(バージョン1.81)(Thompson,J.D.ら、1997.Nucleic Acids Res 24,4876−4882)、編集のためにBioEdit(バージョン6.0.7)(Hall,T.、BioEdit Sequence Alignment Editor,Isis Pharmaceuticals,Inc)、及び系統樹の計算のためにPAUP(バージョン4.0β)(D.Swoffordが書いたもの)。この樹は、進化距離概算LogDet/Paralinearモデルを用い、PAUPにおいて近接接合法(Saitou,N.及びNei,M.1987.Mol Biol Evol 4,406−425)を使用して構築したものである。
【0106】
(例6)
発酵パターン
API 50CHL(BioMerieux SA、France)システムを使用して、それらの炭水化物発酵パターンによって細菌株を暫定的に同定した(表3を参照のこと)。トマトジュース寒天上での培養物を回収し、キットが提供した懸濁培地中に再懸濁した。製造業者の指示に従って、APIストリップを接種し、分析した(48時間後及び82時間後)。
【0107】
表3:発酵パターン
【表3−1】


【表3−2】


=CHL培地に、無菌水中に懸濁した5%W/Vのカザミノ酸を補充し、無菌濾過した。
【0108】
(例7)
ラクトバチルス・クンケエイ類型株及びラクトバチルス・クンケエイ株Fhon2の発酵パターン及びDNAフィンガープリンティング
API 50CHL(BioMerieux SA、France)システムを使用して、それらの炭水化物発酵パターンによって、株Fhon2及び類型株ラクトバチルス・クンケエイ類型株YH−15を比較した。トマトジュース寒天上での培養物を回収し、キットが提供した懸濁培地中に再懸濁した。製造業者の指示に従って、APIストリップを接種し、分析した(48時間後及び82時間後)。結果は、ラクトバチルス・クンケエイ類型株YH−15は、Fhon2が発酵できないD−ラフィノースを発酵でき、Fhon2は、ラクトバチルス・クンケエイ類型株YH−15が発酵できないD−トレハロース、グルコン酸カリウム及び5−ケトグルコン酸カリウムを発酵できる点で、異なっていた。ラクトバチルス・クンケエイFhon2を含む本発明に従う細菌株は、ラクトバチルス・クンケエイ類型株とは異なることが証明された。
【0109】
ランダム増幅多型DNA(RAPD)分析を使用して、ラクトバチルス・クンケエイFhon2を、ラクトバチルス・クンケエイ(Lactobacillus kunkeei)類型株から識別した。実験室手順を、プライマー1254(5’−CCGCAGCCAA−3’)を使用して、Jansson DSら、2004.J Med Microbiol.53,293−300に従って実施した。プライマー1254を用いて得られたRAPDパターンの結果を図2に示す。ラクトバチルス・クンケエイFhon2を含む本発明に従う細菌株のRAPDパターンが、ラクトバチルス・クンケエイ類型株とは異なることが証明された。同一の細菌株は、細菌染色体組成に関して、アガロースゲル上で同一のパターンを示すはずである。図2中に番号1で示されたラクトバチルス・クンケエイ類型株は、9つのDNAバンドを示し、番号2で示されたラクトバチルス・クンケエイFhon2は6つのDNAバンドを示す。これらの株は、全DNAゲノムの組成が異なることを意味する、異なるバンド数及びまた異なるバンドパターンを有する。
【0110】
上記のように、ラクトバチルス・クンケエイFhon2は、図1中の系統樹に示されるラクトバチルス・クンケエイFhon2と類型株との間の高い16S rRNA類似性にもかかわらず、新規ラクトバチルス・クンケエイ株である。
【0111】
(例8)
ハチの巣の感染症
ハチの巣の1つに、幼虫病原体パエニバチルス・ラルバエを感染させた。この病原体による感染症は、通常であれば、致死的なアメリカ腐蛆病(AFB)の発症を導くであろう。感染後、ハチの巣を、ラズベリーの花及びリンデンツリー(その花蜜は本発明に従う細菌にとってプレバイオティックとして作用する)の畑のそばに置いた。この時点で、パエニバチルス・ラルバエの数はその記録された幼虫1匹当たり80億の最大CFUから減少し始め、AFBを発症することなく3週間後に消滅した。この結果は、他の花蜜よりもフルクトースをより多く含むラズベリー及びリンデンの花からの花蜜を与えた場合に、本発明に従う細菌株が一緒になってこの病原体と闘うことができることを、非常に明確に示した。
【0112】
(例9)
ハチ及びハチの幼虫用のプロバイオティック餌(秋)
秋用のミツバチ餌製品(ハチ冬季休眠)を構成する凍結乾燥した本発明に従う細菌及び糖供給源を、19%のフルクトース、19%のグルコース、37%のスクロース及び25%の水を含む糖溶液とこの細菌を混合することによって調製した。使用した製品の総量は、ミツバチの社会1つ当たり16kgであり、この製品は製品1g当たり10CFUの細菌を含んだ。これらの成分を混合し、ハチ社会の上のビン中で、ハチ社会に与えた。ハチはこの溶液を摂取し、蝋で密封してそれらの蜂蜜の巣の小部屋中に保存した。
【0113】
第2の適用において、凍結乾燥した細菌を1kgの蜂蜜と混合し、製品1グラム当たり10の細菌CFU濃度にした。1kgの蜂蜜を、13kgのスクロース及び14kgの水と混合した。この製品は、約50%の花蜜などの糖含量及び蜜胃中の細菌CFUと類似の細菌CFUを有する。この糖溶液を、1日間静置し、その後ハチに投与した。この方法で、凍結乾燥された細菌は目覚めて増幅を開始し、使用前に有益な代謝産物及びバクテリオシンを産生する機会を持った。この糖溶液は、細菌を添加していない糖溶液を使用した通常の場合のようには、酵母発酵されなかった。糖溶液中に蜂蜜を使用することによって、いくつかの利点が得られた。第1に、ハチは、単純なスクロースよりもこの糖溶液を使用したがった。第2に、蜂蜜は、さらなる有益な成分(例えば、ミネラル、ビタミン及びタンパク質)を含む。
【0114】
(例10)
防腐研究
4×10のCFUラクトバチルス・クンケエイ株Fhon2を、200mlの水、5mlのレモンジュース及び17mlの蜂蜜と混合した。この蜂蜜水を、3週間冷蔵庫中に置いた。3週間後、この水は、発酵の味も細菌の味もせず、新鮮な味がした。ラクトバチルス・クンケエイの量を倍加したところ、酵母は検出できなかった。
【0115】
(例11)
糖耐性研究
本発明に従う細菌株並びに市販の製品株ラクトバチルス・アシドフィルスDSM20079、ラクトバチルス・カゼイJCM1134、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)DSM20016、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクチス(B.animalis subsp.lactis)DSM10140及びラクトバチルス・デルブルッキー亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)DSM20081を、別個のバイアル中で、65%のスクロース及び35%の水を含む糖溶液と混合した。最終糖濃度は65%であった。これらのバイアルを22℃でインキュベートし、生存カウントを実施した。これらの結果により、本発明に従う細菌株が、市販の製品株(これらは全て8日後に死滅した)よりも、かなり糖耐性が高かった(8日後、1ml当たり10cfuと10cfuとの間のcfu数で、全てがなお生存していた)ことが実証された(図3を参照のこと)。
【0116】
第2の試験を、19%のフルクトース、19%のグルコース、37%のスクロース及び25%の水を含む異なる糖溶液を用いた点以外は、最初の試験を繰り返すことによって実施した。この溶液中の糖濃度は70%であり、これは、細菌にとっては非常に高い糖濃度である。また、これらの結果により、本発明に従う細菌株が、市販の製品株(これらは全て8日後に死滅した)よりも、かなり糖耐性が高かった(8日後、1ml当たり10cfuと10cfuとの間のcfu数で、全てがなお生存していた)ことが実証された(図4を参照のこと)。
【0117】
(例12)
病原体微生物及び食品を腐敗させる微生物の阻害研究
本発明に従う細菌株を、食品及び蜂蜜を腐敗させる酵母である出芽酵母、食品を腐敗させる細菌であるシュードモナス・フルオレッセンス及びクロストリジウム・チロブチリカム、ラクトバチルス・サケイ、バチルス・セレウス、リステリア・イノキュア並びにヒト病原体である大腸菌、エンテロコッカス・フェカリス及び黄色ブドウ球菌(ここで、たとえこの種が病原体でなくても、属としてのシュードモナス属も示される(この場合、シュードモナス・フルオレッセンスなど))、並びにミツバチ病原体パエニバチルス・ラルバエに対してスクリーニングした。本発明に従う細菌株を、0.5%のL−システインを含むMRS培地上で嫌気的に35℃で3日間培養し(2%のフルクトースを含むMRS培地上で培養したFhon2を除く)、継続した増殖を、0.5%のL−システインを含むMRS寒天プレート(トマトジュース寒天プレート上で培養したFhon2を除く)の中心で嫌気的に35℃で1日間、別々に得た。表4中の試験株を、42℃の温度で、表4に従って液体培地上で培養し、次いで0.8%の寒天を含む新たな培地と混合した。この培地と細菌とを混合し、本発明に従う細菌株を培養したプレート上に注いだ。次いで、これらのプレートを35℃で3日間インキュベートし、阻止帯について分析した。阻止帯の直径はcmで測定した。
【0118】
表4:病原体微生物及び食品を腐敗させる微生物の阻害
【表4】


...cmは、試験細菌を本発明に従う細菌株の上で培養したときの、本発明に従う細菌株の周囲の阻止帯を示す。
【0119】
これらの結果は、食品を腐敗させる細菌又は病原性細菌の阻害を明確に実証し、最も頻繁には、2.0cmの帯は、それらの細菌が本発明に従う細菌株の周囲のこの球状の帯中で死ぬか又は増殖できないことを意味する。ラクトバチルス・クンケエイFhon2及びラクトバチルス・クンケエイ類型株を、ハチ病原体であるパエニバチルス・ラルバエの阻害について試験したところ、ラクトバチルス・クンケエイFhon2のみがこの病原体を阻害した(表4)が、ラクトバチルス・クンケエイ類型株(表4中には示さず)はパエニバチルス・ラルバエを全く阻害しなかった。これらの結果は再度、ラクトバチルス・クンケエイFhon2が新規ラクトバチルス・クンケエイ株であることを示す。
【0120】
(例13)
投与試験
本発明に従う細菌株を、感染症も消化管疾患も有さない種々の年齢の10人の健康な個体に経口投与した。投与前に1週間の休薬期間を与え、このときにはプロバイオティック製品を摂取しなかった。投与を10日間毎日実施した。摂取した飲料は、1株当たり約10CFUと等価な濃度を有する新鮮な培養物から調製した細菌、20mlのカラスムギミルクを含んだ。志願者は、投与直前、10日間の投与後及び最後の投与の7日後に採取した糞便サンプルを提供した。1グラムの糞便を連続希釈し、Rogosa寒天上にプレートした。糞便サンプル由来の6個のコロニーをランダムにピックアップし、6つを外観に従って選択した。単離体の同定はRAPDにより達成した。
【0121】
(例14)
合成蜂蜜
合成蜂蜜を、アミノ酸、ビタミン、ミネラル及び水と共に、天然の花蜜と同様の種々の最終濃度(7%と80%との間)で、糖、フルクトース、グルコーススクロース、マルトース及びメレジトース(例えば、サトウダイコン、サトウキビ又は高果糖コーンシロップ由来)を含む糖溶液に、種々の量の表1中の株を添加することによって製造した。細菌が、この製品を3日間35℃で発酵した。水分含量は、プロセスの間に、天然蜂蜜と同様、18%より下に低下した。
【0122】
(例15)
合成ハチパン
合成ハチパンを、例14のとおりに製造した表1中の株を含む合成蜂蜜、花の花粉又はダイズ粉を混合し、ミツバチが蜂蜜及び花粉から製造した天然のハチパンと類似のハチパンを固めることによって、製造した。
【0123】
(例16)
創傷管理のための合成蜂蜜
医療用製品の下に記載された、創傷などに適用する表1中の株を含む合成蜂蜜を、例14のとおりに製造した。この合成蜂蜜は、滅菌して、又は生存細菌と共に使用できる。
【0124】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜から又は少なくとも1種のハチの蜂蜜産生管から単離された、乳酸菌属(Lactobacillus)又はビフィズス菌属(Bifidobacterium)の単離された細菌株。
【請求項2】
ハチの蜂蜜産生管が、体幹、口、食道及び蜜胃からなる、請求項1に記載の細菌株。
【請求項3】
ハチの蜂蜜産生管が腸も消化管も含まない、請求項1又は2に記載の細菌株。
【請求項4】
新鮮な蜂蜜が20重量%を上回る水分含量を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の細菌株。
【請求項5】
65重量%の糖溶液中で少なくとも8日間、好ましくは70重量%の糖溶液中で8日間、生存する能力を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の細菌株。
【請求項6】
食品を腐敗させる病原性微生物の増殖を阻害する能力を有する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の細菌株。
【請求項7】
ミツバチが、ミツバチ属(Apis)種、好ましくはセイヨウミツバチ(Apis mellifera)から選択される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の細菌株。
【請求項8】
乳酸菌属(Lactobacillus)株Biut2(LMG P−24094)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Hma2(LMG P−24093)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Hma8(LMG P−24092)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Bma5(LMG P−24090)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Hon2(LMG P−24091)(前記株は、2007年4月3日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Bin7(LMG P−23986)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Hma3(LMG P−23983)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Bin2(LMG P−23984)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Bma6(LMG P−23985)及びラクトバチルス・クンケエイ(Lactobacillus kunkeei)Fhon2(LMG P−23987)(前記株は、2007年1月15日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)並びにBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されたHma11からなる群より選択される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の細菌株。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の細菌株を含む、組成物。
【請求項10】
蜂蜜、糖、フルクトース、スクロース、デキストリン、マルトース又はグルコースからなる群より好ましくは選択される糖供給源を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の細菌株並びに医薬上許容される担体及び/又は希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
懸濁物、ゲル、クリーム、粉末又はカプセルである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
包帯、絆創膏又はスプレーの形態である、請求項11又は12に記載の医薬組成物を含む、医薬製品。
【請求項14】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の細菌株を含む、食品製品又は餌製品。
【請求項15】
ハチの餌製品である、請求項14に記載の食品製品又は餌製品。
【請求項16】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の細菌株を少なくとも1つ、糖供給源に添加するステップを含む、蜂蜜を産生するための方法。
【請求項17】
感染症又は胃腸管疾患を予防及び/又は治療するための医療用製品、食品製品、飲料製品又は医薬組成物を調製するための、請求項1から8までのいずれか一項に記載の細菌株の使用。
【請求項18】
a)18重量%を上回る水分含量を有する新鮮な蜂蜜をサンプリングするステップ
又は
ハチから蜂蜜産生管を分離し、無菌培地中で管を振盪するステップ;
b)適切な培地上でa)からのサンプルを細菌培養するステップ;
c)適切な培地上でb)で得られた細菌株(単数又は複数)を純粋培養及び単離するステップ、
を含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の細菌株を単離するための方法。
【請求項19】
d)食品を腐敗させる病原性微生物を阻害する前記株(単数又は複数)の能力を評価するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
蜂蜜産生管が、腸又は消化管による汚染を回避するために、食道の後且つ前胃の前で分離される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
乳酸菌属(Lactobacillus)株Biut2(LMG P−24094)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Hma2(LMG P−24093)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Hma8(LMG P−24092)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Bma5(LMG P−24090)、乳酸菌属(Lactobacillus)株Hon2(LMG P−24091)(前記株は、2007年4月3日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Bin7(LMG P−23986)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Hma3(LMG P−23983)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Bin2(LMG P−23984)、ビフィズス菌属(Bifidobacterium)株Bma6(LMG P−23985)及びラクトバチルス・クンケエイ(Lactobacillus kunkeei)Fhon2(LMG P−23987)(前記株は、2007年1月15日にBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されている)並びにBCCM/LMG Bacteria Collection in Belgiumに寄託されたHma11からなる群より選択される、細菌株。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−525809(P2010−525809A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506128(P2010−506128)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000303
【国際公開番号】WO2008/136730
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(509303796)
【出願人】(509303800)
【Fターム(参考)】