説明

方法および組成物

オピエート、NSAIDSおよび他の活性物質を即時放出型および制御放出型で含む1つまたは複数の他の鎮痛剤を任意で含む、神経障害性の疼痛または炎症性の疼痛の管理のための、フルピルチン(flupirtine)の組成物。これらの組成物の投与のための方法およびシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疼痛管理の分野に、そして詳細には、侵害性疼痛の神経障害性成分または炎症性成分を含む、神経障害性または炎症性の疼痛の管理の分野に関する。さらに詳細には、神経障害性の疼痛または炎症性疼痛の症状を治療、軽減、予防、減弱するか、さもなくば回復させる方法および組成物を、本発明は提供する。本発明はさらに、特定の疾患状態または病状の治療に関連する疼痛の治療に関与する併用療法を意図する。本発明はさらにまた、疼痛管理に関与する活性成分の持続放出または徐放性を可能にする製剤でコーティングされた、持続放出性および徐放性の製剤、タンパー・プルーフ(tamper-proof)送達システム、ならびにステント、カテーテルおよび他の機械的デバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
先行技術の説明
本明細書に記載される引用文献の書誌事項的な詳細は、本明細書に後述する。
【0003】
本明細書におけるいかなる先行技術に対する言及も、この先行技術が任意の国において共通の一般的知識の一部を形成するということの承認でも、またはいかなる示唆の形態でもなく、かつそのように解釈されるべきでもない。
【0004】
疼痛は、実際の、もしくは潜在的な組織損傷に関連する不快な感覚および感情的な経験であるか、またはこのような用語で表現される。疼痛の治療に対するアプローチを考慮すれば、急性の疼痛と持続性または慢性の疼痛との間の区別を理解することが重要である。急性の疼痛は、組織損傷の結果として生じ、そして侵害受容器として公知の疼痛受容体の化学的、機械的または熱的な刺激によって媒介される。急性の疼痛とは対照的に、慢性または持続性の疼痛はそれ自体で、防御的な生物学的機能を果たさない疾患を構成する。慢性の疼痛は弱まることなく、そして数年間にわたって持続し得、高頻度には、単独の損傷とは関連し得ない。慢性の疼痛とは主に、慢性の炎症性疼痛(例えば、関節炎)、または神経系内において一時的病変または機能不全によって発生するかまたは生じる疼痛と規定され得る「神経障害性疼痛(neuropathic pain)」を構成する(Mersky and Bogduk Classifications of Chronic Pain, 2nd edn. Seattle IASP Press: 394, 1994, De Andres and Garcia-Ribas Pain Practice 3:1-7, 2003)。神経障害性疼痛は、種々の疾患状態に関連し、臨床上広範な症状で存在する(Woolf and Mannion Lancet 353:1959-64, 1999)。特定の疼痛受容体の刺激は必要ないが、このような刺激は疼痛の感覚の強度を増大し得る(Baron Clin J Pan 16(suppl2):S12-S20, 2003)。
【0005】
神経障害性疼痛はしばしば、刺すようなまたは連続的な灼熱的な特徴を有すると報告されており、異痛症および痛覚過敏のような異常な感覚的兆候の出現を高頻度にともなっている。異痛症は、疼痛性応答を通常は誘導しない刺激から生じる疼痛として規定されており、そして痛覚過敏は、通常非疼痛性の刺激に対する増大した疼痛応答によって特徴付けられる。神経障害性疼痛によって特徴付けられるいくつかの障害としては、一神経根障害(monoradiculopathy)、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群、背痛および種々の末梢神経障害が含まれる。神経障害性疼痛はまた、糖尿病、放射線療法または化学療法およびHIVのような感染に関連し得る。神経障害性疼痛はまた、薬物治療または乱用の副作用の結果であり得る。
【0006】
臨床的な目的に関しては、侵害疼痛は、体性または内臓の疼痛に分類され得る。体性の疼痛は、骨、関節、筋肉または皮膚のような体細胞組織における非侵害性受容体の持続的活性化から生じる。他方では、内臓痛は、機械的損傷、X線照射および毒物のような病理的機構による非侵害性受容体の活性化から現れる。
【0007】
神経障害性疼痛は、以下の臨床的特徴によって特徴付けられ得る(Teng and Mekhail Pain Practice 3:8-12, 2003, Rajbhandari et al Pain, 83:627-629, 1999, Melzack et al Ann NY Acad Sci, 933:157-174, 2001):
1. 偶発的な発作性の、短時間の、射撃または突き刺すような性質をともなう、熱傷性または電気的な性質を高頻度に有する、異常な不快な感覚(異常な感覚)の存在がある。
2. ほとんどの神経障害性疼痛の発現は、損傷誘導後数日内であるが、元の神経性外傷に対する絶対的な時間的関連はなく、その結果疼痛の発現は、数週間後、数ヶ月後、さらには数年後にさえ始まることもあり得る。
3. 疼痛は、感覚の欠損の領域で感じられ得る。
4. 非侵害性刺激が、疼痛性であり得る(異痛症)。
5. 非侵害性刺激が、正常な応答よりも大きい応答を生じ得る(痛覚過敏症)。
6. 反復性の刺激で疼痛の強度が増大し得、そして疼痛は刺激の除去後も持続し得る。
【0008】
1タイプの疼痛成分について別のものよりも特異的な鎮痛剤というものはなく、そして神経障害性および侵害性の疼痛はしばしば種々の鎮痛剤に対して応答し難い。
【0009】
従って、侵害受容器の刺激によって生じる急性疼痛については多数の利用可能な療法、特にオピオイドおよび非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID)での治療があるが、神経障害性疼痛は、ほとんど満たされていない治療の必要な領域である。侵害受容器刺激の結果として生じる疼痛または急性疼痛と比較した、神経障害性疼痛に関連する異なる病態生理学的機構および臨床上の徴候に起因して、侵害受容器刺激の結果として生じる疼痛または急性疼痛の治療において有用な薬剤は、神経障害性疼痛の治療においては有効性が低い。特に、神経障害性疼痛の治療におけるオピオイドの有効性は、侵害受容器刺激の結果として生じる疼痛または急性疼痛の治療におけるそれらの使用に対して低下しており、そして神経障害性疼痛の治療のための薬物応答曲線は、侵害受容器刺激の結果として生じる疼痛または急性疼痛の治療のための薬物応答曲線の右にシフトする(Teng and Mekhail, 2003、前記、De Andres and Garcia-Ribas, 2003、前記、Stute et al J. Pain Symptom Management 25:1123-1131, 2003)。
【0010】
神経障害性疼痛に罹患している被験体におけるオピオイドの効果の低下に起因して、オピオイドの使用はしばしば、頻繁でありかつ持続される。この過剰な使用はしばしば、習慣性、耐性の発生、ならびにオピオイド使用に伴う副作用の数および重篤度の増大をともなう。これらの副作用としては、多幸感作用、催吐作用、けいれん性の便秘および平滑筋緊張の増大が含まれる。
【0011】
神経障害性疼痛の臨床的管理の従来の薬理学的中心は、三環系抗うつ薬および特定の抗痙攣薬であるが、これらでさえ、治療された患者の50%より多くにおいて、50%未満の疼痛の減少しか達成しない。これらの薬剤はまた、有意な副作用プロフィールを伴っている。
【0012】
神経障害性疼痛および炎症性疼痛の治療のための改善されたレジメン、ならびに神経障害性または炎症性の疼痛成分を有する疾患状態を治療するための改善されたレジメンについて、差し迫った必要性が存在する。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
本明細書および添付の特許請求の範囲を通じて、文脈上他を要求するのでない限り、「含む(comprise)」という用語、および「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」のような変形は、言及された整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群の包含を意味するが、任意の他の整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群の排除ではないことが理解される。
【0014】
本発明は、被験体における神経障害性および/または炎症性の疼痛に関連する症状を、治療、軽減、予防、減弱するか、さもなくば回復させる方法および組成物を提供する。「神経障害性疼痛(neuropathic pain)」または「炎症性疼痛(inflammatory pain)」に対する言及は、侵害性疼痛の神経障害性または炎症性の成分を含む。詳細には、本発明は、哺乳動物における神経障害性疼痛または炎症性疼痛に対する鎮痛応答を誘導するための方法であって、この哺乳動物に対して、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを、疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば疼痛の感覚を回復させるのに有効な量投与する段階を含む方法を意図する。関連の局面では、本発明の組成物および方法は、顕性の鎮静(overt sedation)を誘導しないか、かつ/または疼痛の治療において用いられる物質に関連する副作用の減少を生じる。
【0015】
本発明はまた、神経障害性疼痛または炎症性疼痛に罹患している哺乳動物において、鎮痛応答を誘導するための方法であって、この哺乳動物に対して、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログのうちの1つを、他の鎮痛剤またはフルピルチンもしくはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログと同時に、個別に、もしくは連続して、疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば疼痛の感覚を回復させるのに有効な量投与することによる方法を提供する。好ましくは、このフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログは、この鎮痛剤の少なくとも1つの有害な副作用を軽減するのに有効な量投与される。このような有効量は、相乗効果の量とみなされる。好ましくは、この方法は、この鎮痛剤によって生じるような顕性の鎮静を誘導しない。好ましくはこの鎮痛剤は、オピオイド、例えば以下であるが、それらに限定されない:フェンタニル、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、モルフィン、デソモルフィン、アポモルフィン、ジアモルフィン、ペチジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ペンタゾシン、デキストロモラミド、オキシモルホン、ヒドロモルフォン、ジヒドロモルフィン、ノスカピン、パパベリン、パパベレタム、アルフェンタニール、ブプレノルフィンおよびトラマドール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ、ならびにオピオイドアゴニスト。
【0016】
本発明の別の態様は、神経障害性疼痛または炎症性疼痛の治療において鎮痛応答を誘導するための薬剤の製造における、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの使用に関する。好ましくは、鎮痛は、顕性の鎮静なしに誘導され、そして好ましくは疼痛は、神経障害性疼痛である。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、炎症性疼痛または神経障害性疼痛に対する応答において、鎮痛を誘導するための1つまたは複数の個別の、または組み合わせた薬剤の製造における、鎮痛剤およびフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの使用に関する。好ましくは、鎮痛は、顕性の鎮静なしに誘導され、そして好ましくは疼痛は、神経障害性疼痛である。好ましい態様では、この鎮痛剤はオピオイドであり、そして好ましくはこのオピオイドは、上記で列挙されるオピオイドまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの1つまたは複数から選択される。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、癌、炎症、神経学的状態または慢性の疾患もしくは状態、または他の病態の治療におけるような併用療法であって、この疾患、状態または病状の治療が、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、または任意でオピオイドもしくは別の鎮痛化合物を用いる疼痛管理に関連して行なわれる併用療法を意図する。
【0019】
本発明のなおさらなる態様では、鎮痛剤およびフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを含む、哺乳動物における神経障害性または炎症性の疼痛に応答する鎮痛を誘導するための送達システムが提供される。好ましい態様では、この鎮痛剤は、オピオイドであり、そして好ましくはこのオピオイドは、上記に列挙されるオピオイドまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの1つまたは複数から選択される。この送達システムは、例えば、持続放出もしくは徐放性の製剤、またはタンパー・プルーフ製剤の形態であっても、またはステント、カテーテルもしくは医学的手順における使用のために設計された他の医学的デバイス上の薬学的製剤もしくはその上にコーティングされた薬学的製剤の形態であってもよい。
【0020】
本発明による化合物は、とりわけ、経口的に、経粘膜的に、経坐剤を含む経直腸的に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、胃内に、経鼻的に、クモ膜下腔内に、経皮的にまたは腸内に投与されてもよい。本発明の特に好ましい形態では、化合物は、経口的にまたは経皮的に投与される。
【0021】
本発明はさらに、神経障害性疼痛または炎症性の疼痛成分を有する、癌、背痛、炎症または、神経学的状態のような状態の治療の方法を提供するが、この治療は、フルピルチンおよび任意でオピオイド、またはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの投与を含む。
【0022】
好ましくは、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログは、単独でまたは鎮痛剤と組み合わせて投与される場合、約0.5mg/kg〜約20mg/kgの用量で、約1〜約50時間の間隔で投与される。好ましくは、この間隔は、約12時間〜約24時間の間である。
【0023】
本発明の特に好ましい態様では、この哺乳動物はヒトである。
【0024】
本発明のさらなる局面は、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ、および、任意でオピオイドのみ、または別の鎮痛剤もしくは活性物質と一緒の徐放性のシステムであって、以下を含むシステムを提供する:
(a)有効量の活性物質を含み、かつ規定された幾何的形態を有するデポジット・コア(deposit-core)、および
(b)このデポジット・コアに適用される支持プラットフォームであって、デポジット・コアが少なくとも1つの活性物質、および以下からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、支持プラットフォーム:
(i)ゲル化可能ポリマー材料に対する膨潤性ポリマー材料の比が1:9〜9:1の範囲内である、水または液体との接触の際に膨潤するポリマー材料、およびゲル化可能ポリマー材料、および
(ii)膨潤特性およびゲル化特性の両方を有する単一のポリマー材料であって、支持プラットフォームが弾性の支持体であり、デポジット・コアに適用され、その結果デポジット・コアの表面を部分的に覆い、かつこのデポジット・コアの水和による変化を伴い、かつ液体中で緩徐に可溶性であり、かつ/または緩徐にゲル化する、単一のポリマー材料。
【0025】
本発明はさらに、哺乳動物における鎮痛応答を誘導するための物質であって、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意で鎮痛化合物、例えば、オピオイド、および任意で、ある状態、疾患または病状を治療するための活性化合物を含む物質を提供する。1つの特定の例では、本発明は、癌のための治療プロトコールを意図し、このプロトコールは、抗癌剤の投与および/または放射線療法を、フルピルチンおよび任意でオピオイドまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログと組み合わせて含む。
【0026】
好ましい態様の詳細な説明
本発明を詳細に記載するに先立って、他に示さない限り、本発明は、成分の特定の製剤、製造方法、投薬レジメンなどに限定されず、従って変化し得ることが理解される。本明細書において用いられる専門用語は、特定の態様を記載することのみを目的とし、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0027】
単数形「1つの(「a」、「an」)」および「この、その(「the」)」は、この文脈が明確に他を示すのでない限り、複数の局面を含む。従って、例えば、「1つのオピオイド(an opioid)」との言及は、単一のオピオイド、そして2つ以上のオピオイドを含み;「1つの鎮痛剤(an analgesic agent)」との言及は、単一の薬剤、そして2つ以上の薬剤を含む。
【0028】
本発明の記載および特許請求の範囲において、以下の専門用語は、以下に記載される定義に従って用いられる。
【0029】
「化合物(compound)」、「物質(agent)」、「活性物質(active agent)」、「化学物質(chemical agent)」、「薬理学的に活性な物質(pharmacologically active agent)」、「薬剤(medicament)」、「活性な(active)」、および「薬物(drug)」という用語は、本明細書において交換可能に用いられて、所望の薬理学的および/または生理学的効果を誘導する化合物を指す。この用語はまた、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物、アナログなどを含むがこれに限定されない、本明細書に特に言及される活性物質の、薬学的に許容され、かつ薬理学的に活性な成分を含む。「化合物」、「物質」、「活性物質」、「化学物質」、「薬理学的に活性な物質」、「薬剤」、「活性な」、および「薬物」という用語が用いられるならば、これは、この活性物質自体、ならびに薬学的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝物、アナログなどを含むことが理解されるべきである。
【0030】
「化合物」、「物質」、「活性物質」、「化学物質」、「薬理学的に活性な物質」、「薬剤」、「活性な」、および「薬物」という言及は、2つ以上のオピオイドのような2つ以上の活性物質の組み合わせ(combination)を含む。「組み合わせ」とはまた、2部分の組成物のような多部分の組成物を含み、ここでこの物質は、個別に提供され、個別に与えられるか、もしくは分配されるか、または分配の前に一緒に混合される。
【0031】
例えば、多部分の製剤パックは、個別に維持される2つ以上の活性物質を有してもよい。
【0032】
本明細書において用いる場合、物質の「有効量(effective amount)」および「治療上有効量(therapeutically effective amount)」という用語は、所望の治療的または生理学的な効果または結果を得るための物質(例えば、フルピルチンおよび/またはオピオイド)の十分な量を意味する。所望されない効果、例えば、副作用は、時に、所望の治療効果とともに顕在化し;従って施術者は、適切な「有効量」はどれくらいかを決定するのにおいて、潜在的なリスクに対して可能性のある利益を釣り合わせる。必要な正確な量は、被験体の種、年齢および全身状態、投与の方式などに依存して、被験体の間で変化する。従って、正確な「有効量」を特定することは不可能であるかもしれない。しかし、任意の個々の場合における適切な「有効量」は、慣用的な実験のみを用いて当業者によって決定され得る。
【0033】
「薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)」担体、賦形剤または希釈剤とは、生物学的にも、それ以外でも所望されないことがない材料、すなわちいかなる有害反応も実質的な有害反応も生じることなく、選択された活性物質とともに被験体に投与され得る材料から構成される薬学的媒体を意味する。担体としては、賦形剤および他の添加物、例えば、希釈剤、界面活性剤、着色剤、保湿剤または乳化剤、pH緩衝化剤、防腐剤などを挙げることができる。
【0034】
同様に、本明細書に提供されるような化合物の「薬学的に許容される」塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは誘導体とは、生物学的にも、それ以外でも所望されないことがない塩、エステル、アミド、プロドラッグまたは誘導体である。
【0035】
本明細書において用いられる「治療(treating)」および「治療する(treatment)」という用語は、治療されている状態の症状の重篤度および/または頻度における軽減、症状および/または背景の原因の排除、その状態の症状の出現および/またはその背景にある原因の予防、ならびにある状態後の損傷の改善または治療または回復を指す。
【0036】
被験体を「治療する」とは、感受性のある個体における、ある状態または他の有害な生理学的事象の予防、ならびにこの状態の症状を回復させることによる、臨床上の症状がある個体の治療を包含し得る。
【0037】
本明細書において用いる場合「被験体(subject)」とは、本発明の薬学的製剤および方法から利益を得ることができる、動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくは、ヒトをいう。本明細書に記載されている薬学的製剤および方法から利益を得ることができる動物のタイプに制限はない。ヒトであるか非ヒト動物であるかにかかわらず、被験体とは、個体、患者、動物、ホストまたはレシピエントについて言及し得る。本発明の化合物および方法は、ヒトの薬剤、獣医の薬剤において、そして一般には家庭内または野生の動物の畜産において適用を有する。この組成物はまた、産業上の適用を有し得る。
【0038】
上記のように、好ましい動物とはヒトまたは他の霊長類、例えば、オランウータン、ゴリラ、マーモセット、家畜、実験室試験動物、ペットまたは捕獲された野生動物、および鳥類である。
【0039】
実験室試験動物の例としては、マウス、ラット、ウサギ、サル類、モルモット、およびハムスターが含まれる。ウサギ、げっ歯類およびサル類によって都合のよい試験系または動物モデルが得られる。家畜としては、ヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマおよびロバが含まれる。
【0040】
本発明は、哺乳動物における神経障害性疼痛または炎症性疼痛に対する鎮痛応答を誘導する方法を提供する。この文脈では、「哺乳動物」という用語は、ヒトおよび実験室試験動物のような他の動物の両方を含むものとする。
【0041】
本明細書を通じて、「神経障害性疼痛(neuropathic pain)」という用語は、神経系内の一次病変または機能不全によって開始されるかまたは生じる疼痛を意味することが理解される。本発明の方法によって治療され得る神経障害性疼痛のカテゴリーの例としては、一神経根障害(monoradiculopathy)、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛、幻肢痛、複合性局所疼痛症候群、背痛、AIDSおよびヒト免疫不全ウイルスでの感染に伴う神経障害性疼痛、ならびに、薬物誘導性および糖尿病性神経障害が含まれるがこれに限定されない、種々の末梢神経障害が含まれる。
【0042】
「炎症性疼痛(inflammatory pain)」という用語は、感染、関節炎および新生物または腫瘍関連肥大の場合に生じ得るような炎症過程から生じる急性疼痛および慢性疼痛のサブセットを記載するものとする。従って、腫瘍または癌に伴う疼痛は、炎症性疼痛の範疇内におさまるものと考えられる。
【0043】
「神経障害性疼痛(neuropathic pain)」または「炎症性疼痛(inflammatory pain)」という言及は、侵害性疼痛の神経障害性または炎症性の成分の言及を含む。
【0044】
本発明による方法は、哺乳動物、好ましくはヒトの患者によって罹患されている神経障害性疼痛および/または炎症性疼痛に対する鎮痛応答を誘導する。患者は、この文脈では、「被験体(subject)」、「標的(target)」、または「レシピエント(recipient)」とも呼ばれる。この文脈では、「鎮痛(analgesia)」および「鎮痛応答(analgesic response)」という用語は、疼痛に対する感度の低下の状態であって、好ましくは顕性の鎮静なしに生じ、そして好ましくは接触の感覚の際の影響なしに生じる状態を述べるものとする。好ましくは、疼痛に対する感度は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも70%、そして特に好ましくは少なくとも85%まで低下する。本発明の最も好ましい局面では、神経障害性疼痛に対する感受性は、完全に、または実質的に完全に除かれている。本発明に従う方法によって誘導される鎮痛に関連する、疼痛に対する感受性の低下のレベルを評価するために、短文形式のMcGill疼痛質問表、および/または疼痛強度についてのビジュアル・アナログ・スケール、および/または疼痛強度についての口頭式評価スケール、および/またはフォン・フライ・ヘア(von Frey hair)または同様のデバイスを用いる接触性異痛症の測定のような試験を行なうことが可能である。これらの試験は、当技術分野において、標準的な試験であり、そして当業者に周知である。
【0045】
従って、本発明の一局面は、哺乳動物における神経障害性疼痛または炎症性疼痛に対する鎮痛応答を誘導するための方法であって、この被験体に対して、疼痛の感覚のレベルを低下させるか、さもなくば回復させるのに有効量のフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを投与する段階を含む方法を意図している。
【0046】
本発明の別の局面は、神経障害性疼痛または炎症性疼痛に罹患している哺乳動物において鎮痛を誘導するための方法であって、この哺乳動物に対して、鎮痛剤またはフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログのうちの1つを、他の鎮痛剤またはフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログと同時に、個別に、または連続して、疼痛の感覚のレベルを低下させるか、さもなくば回復させるのに有効な量投与することによる方法を提供する。
【0047】
本発明のさらなる別の局面は、癌、炎症、背痛の治療のような、神経学的状態または慢性疾患もしくは状態または他の病状の治療における併用療法を意図しており、ここでこの疾患、状態または病態の治療は、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意でさらに鎮痛剤を用いる疼痛管理と関係して行なわれる。
【0048】
両方の場合とも、鎮痛効果は好ましくは、顕性の鎮静もなく、またはフルピルチンもしくは鎮痛剤の他の副作用もない。
【0049】
「顕性の鎮静(overt sedation)」という用語は、本発明の方法(および組成物)が、治療されている患者または被験体において、実際的に意味のある鎮静を生じない、すなわち治療されている患者の有意な、視認できるかまたは明らかな傾眠または意識消失を生じないことを意味するものとする。従って、本発明の治療方法は、日常生活に関する活動、例えば、ヒト被験体にとっては自動車の運転もしくは機械の操作、または動物被験体にとっては摂食や毛づくろい行動を妨害または阻害する睡眠も傾眠も患者において生じさせない。
【0050】
総称的に、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および他の鎮痛剤は「活性物質(active agents)」と呼ばれる。相乗効果の量のフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログは、オピオイドのような鎮痛剤と同時に、個別に、または連続して投与される場合、神経障害性疼痛または炎症性疼痛に対するオピオイド応答を回復または改善し得る。活性物質は、複合型として、すなわち活性物質を含む単一の組成物として、または別個の投薬としてのいずれで投与されてもよい。活性物質は好ましくは、所望の相加的または相乗的な鎮痛効果が達成されるような時間枠内で投与される。すなわち、投与のタイミングは、各々の活性物質またはその活性代謝物が、それぞれの治療濃度範囲内で患者に同時に存在することを可能になければならない。物質の送達の間の時間は、数秒、数分、数時間、数日または数週間である。
【0051】
「鎮痛剤(analgesic agent)」という用語は、哺乳動物における疼痛の治療のために有効である公知の化合物、そして未知の化合物(その薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを含む)を含むものとするが、この化合物としては、オピオイドおよび化合物、例えば、アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、ジクロフェナク、インドプロフェン、ニトログリセリン、プロパノロール、バルプロ酸塩、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロロプロマジン、レセルピン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、αメチルドパヒドロクロリドのプロバルオキシルオキシエチルエステル、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、乳酸鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミン、遮断薬、パラセタモール;NSAID、例えば、イブプロフェン、インドメタシンおよびフェニルブタゾン;オピオイド;三環系抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン;抗痙攣薬、例えば、カルバマゼピンおよびバルプロ酸ナトリウム;局所麻酔薬、例えば、リグノカイン、メキシレチン;NMDAアンタゴニスト、例えば、デキストロメトルファンまたはケタミン;神経ステロイド鎮痛薬、例えば、アルファドロン;ならびにGABAアナログ、例えば、GABAペンチンおよびプレガバリン(pre-gabalin)およびその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログが含まれる。GABAアナログ、例えば、GABAペンチンおよびプレガバリンの作用の1つは、電圧依存性カルシウムチャネルのα(2)δサブユニットに対して作用する。この用語は、用量を制限する副作用が関連している鎮痛剤、特に鎮静の誘導に関連する鎮痛剤を特に含むものとする。
【0052】
他の特に好ましい鎮痛剤はオピオイドである。
【0053】
GABA作動性(GABAergic)薬物はまた、神経障害性疼痛および炎症性疼痛の治療のためにフルピルチンと組み合わせて用いられ得る。GABA作動性薬物としては、中枢神経系におけるγアミノ酪酸(GABA)の作用を増強する化合物が含まれ;これらとしては、受容体に直接作用する薬物、例えば、バクロフェン、ムシモール、アルコール、神経ステロイドおよびベンゾジアゼピン、GABAの神経外酵素の破壊の阻害を生じるビガバトリン(vigabatrin)のような薬物、GABAカップリングしたイオンチャネルを調節するトピラメート(topiramate)のような薬物、ならびにニューロンおよびグリア細胞によるシナプスGABAの再取り込みを阻害するチアガビン(tiagabine)のような薬物が含まれる。
【0054】
本明細書において用いる、オピオイド化合物(オピオイド)としては、哺乳動物の系において生理学的に許容され、かつオピオイド受容体の完全または少なくとも部分的なアゴニストである任意の化合物が含まれる。オピオイド化合物は周知であり、そしてアヘンから誘導される天然に存在する化合物、例えば、コデイン、モルフィンおよびパパベリン、ならびに一般に構造類似性を有するこのような化合物の誘導体、ならびに哺乳動物の系に存在するオピオイド受容体をアゴナイズ(agonise)する他の構造的に無関係の化合物が含まれる。本発明によって意図されるオピオイド化合物の特定の例としては、以下が含まれる:フェンタニル、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、モルフィン、デソモルフィン、アポモルフィン、ジアモルフィン、ペチジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ペンタゾシン、デキストロモラミド、オキシモルホン、ヒドロモルホン、ジヒドロモルフィン、ノスカピン、ナルブフィン パパベリン、パパベレタム、アルフェンタニール、ブプレノルフィンおよびトラマドール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ。
【0055】
「薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ(pharmaceutically acceptable salt, derivative, homologs or analogs)」という句は、被験体に対する投与の際に、関与する化合物または生理学的に(例えば、鎮痛的に)活性な化合物、代謝物またはその残滓を(直接または間接的に)提供し得る、任意の薬学的に許容される互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和化合物、代謝物または他の化合物を意味するものとする。適切な誘導体の例は、適切なカルボン酸、例えば、C1-3アルキル-CO2HおよびHO2C-(CH2)n-CO2H(ここで、nは1〜10、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10であるが、好ましくは1〜4である)およびCO2H-CH2フェニルとのOH基またはSH基の反応から形成されたエステルである。
【0056】
従って、活性化合物は、遊離の化合物としてまたは溶媒和化合物(例えば、水和物)として結晶型であってもよい。溶媒和の方法は一般に、当技術分野において公知である。
【0057】
本発明の活性化合物の塩は好ましくは、薬学的に許容されるが、薬学的に許容されない塩も本発明の範囲内におさまることが理解される。なぜなら、これらは、薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用であるからである。薬学的に許容される塩の例としては、薬学的に許容される陽イオン、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニアおよびアルキルアンモニウムの塩;薬学的に許容される無機酸、例えば、塩酸、オルトリン酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸および臭化水素酸の酸付加塩;または薬学的に許容される有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トリハロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸の塩が含まれる。
【0058】
「プロドラッグ(pro-drug)」という用語は、その最も広義の意味で本明細書において用いられて、インビボで対象となる化合物に(例えば、酵素的切断または加水分解性切断によって)変換され得る化合物を含む。その例としては、エステル、例えば、ヒドロキシルまたはチオ基の酢酸塩、ならびにリン酸およびスルフォン酸塩が含まれる。ヒドロキシ基またはチオ基をアシル化するためのプロセスは、当技術分野において公知であり、例えば、アルコール(ヒドロキシ基)、またはチオ基とカルボン酸との反応による。適切なプロドラッグの他の例は、その開示が参照として本明細書に全体として組み入れられる、Design of Prodrugs, H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載される。
【0059】
「代謝物(metabolite)」という用語は、一旦被験体に投与されればインビボで活性物質が変換され得る任意の化合物を含む。このような代謝物の例は、グルクロニド、硫酸塩およびヒドロキシレート(hydroxylate)である。
【0060】
本明細書に記載されるような活性物質は、互変異性型で存在してもよいことが理解される。「互変異性体(tautomer)」という用語は、本明細書においては、その最も広義の意味で用いられて、2つの異性体形の間で平衡な状態で存在し得る化合物を含む。このような化合物は、2つの原子または基を連結する結合が、そしてこれらの原子または基の位置がこの化合物において異なり得る。特定の例はケト-エノール互変異性である。
【0061】
本発明の化合物は、電気的に中性であってもよいし、または電気的な中性のために関連する陰イオンを有するポリカチオンの形態をとってもよい。適切な関連の陰イオンとしては、硫酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、塩素イオン、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ハロスルホネートまたはトリハロメチルスルホネートが含まれる。
【0062】
活性物質は、任意の適切な経路によって治療のために投与され得る。活性物質は好ましくは、被験体の顕性の鎮静を生じない経路を介して投与されることが理解される。投与の適切な経路としては、経口、直腸、経鼻、エアロゾルまたは微粒子の吸入、局所(口腔内および舌下を含む)、経皮、膣、膀胱内および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、胸骨内、クモ膜下腔内、硬膜外および皮内を含む)が含まれ得る。好ましくは、活性物質の投与は、被験体の胃に対する化合物の初回の提示を生じる経路によるものである。本発明の特に好ましい態様では、この活性物質は、経口経路を介して投与される。別の好ましい態様では、この活性物質は、経皮経路によって投与される。しかし、好ましい経路は、被験体の状態および年齢、治療されている炎症性疼痛または神経障害性疼痛の性質、被験体内のその位置、および医師または獣医の判定で変化する。個々の活性物質が同じまたは異なる別個の経路によって投与され得るということも理解される。
【0063】
本明細書において用いる場合、「有効量(effective amount)」とは、適切な投薬レジメンに従って投与された場合、所望の鎮痛活性を提供する活性物質の量をいう。好ましくは、この活性物質の量とは、顕性の鎮静を生じることなく所望の鎮痛活性を提供する量である。投薬は、数分、数時間、数日、数週または数ヶ月の間隔で行なわれてもよい。適切な投薬量およびレジメンは、担当の医師または獣医によって決定され得る。例えば、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログは、被験体に対して、約1時間〜最大約50時間ごとに約0.5〜約20mg/kgという速度で、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50時間、例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20mg/kgで投与されてもよい。特に有用な時間は、約6時間〜約24時間、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間である。それより特に有用な時間は、約12〜約24時間の間である。例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24時間である。オピオイドのような鎮痛剤の投薬は、実際には投薬速度に従って担当医によって決定され得る。例えば、フェンタニルは、約100μgの量で投与されてもよいが、モルフィンは、これも1時間あたりで10mgの量で投与され得る。投与量は、投与が例えば、連続注入によって、数分(例えば、1、2、3または4分)ごとの一定用量によって、または5、10、20、30もしくは40分(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、45、36、37、38、39もしくは40分)ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23もしくは24時間、または最大50時間まで、例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49もしくは50時間などの投与によって、高い頻度または低い頻繁で行なわれる場合、変化し得る。多くの場合に、投与は、単に患者が疼痛緩和を要する時点に基づいて行なわれる。
【0064】
療法のための併用に関して、癌、炎症、背痛または神経学的状態のような疾患、状態または病状の治療の前、間または後に、疼痛を管理し、かつ鎮痛応答を誘導するために、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを、任意でオピオイドのような鎮痛剤と一緒に用いる。
【0065】
1つの特定の態様では、癌の治療の前、間または後に、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意でオピオイドのような鎮痛剤を用いる。このアプローチを用いて治療され得る癌の例としては、以下が含まれるが、それらに限定されない:ABL1プロトオンコジーン、AIDS関連の癌、聴神経腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、副腎皮質癌、原発性骨髄線維症、脱毛症、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、血管拡張性失調症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨肉腫、腸癌、脳幹グリオーマ、脳およびCNSの腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頚癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌癌、子宮体癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、消化管カルチノイド腫瘍、泌尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液学的悪性腫瘍、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球増加症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ癌症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性ラブドイド腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、口腔癌、多発性内分泌腺腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖症候群、鼻腔癌、鼻咽腔(上咽頭)癌、腎芽腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、造瘻卵巣癌、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌(上皮小体癌)、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉腫、下垂体癌、真性赤血球増加症、前立腺癌、希な癌および関連の障害、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロスモンド・トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、シュワン細胞腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎臓-骨盤-/-尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿器系癌、ウロプラキン(Uroplakins)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症またはウイルムス腫瘍が含まれる。ある場合には、フルピルチンおよび任意でオピオイドおよび/または抗癌剤の治療能力はまた、プロノプシン(pronopshine)を含み得る。
【0066】
従って、本発明の局面は、被験体における癌のための治療プロトコールを意図しており、このプロトコールは、この被験体に対する、有効量の抗癌剤、および疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば回復するのに有効な量のフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの投与の段階を含む。癌は、上記に列挙されるいずれの癌を含んでもよい。抗癌剤の投与は、フルピルチンと連続しても同時でも独立でもよい。
【0067】
別の態様では、併用療法は、炎症に関する。炎症状態の例は、本明細書に用いられるものに限定されず、「炎症性の疾患および障害」は、損傷または疾患に影響される組織を防御することを意味する、特定の領域において発赤、腫脹、疼痛および熱感の応答を生じる疾患および障害を含む。本発明の方法を用いて治療され得る炎症性疾患としては、以下が含まれるが、それらに限定されない:座瘡、狭心症、関節炎、吸引性肺炎、疾患、蓄膿症、胃腸炎、炎症、腸のインフルエンザ、NEC、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、PID、胸膜炎、のどの痛み、赤み、発赤、咽頭炎、胃のインフルエンザおよび尿路感染、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害。
【0068】
従って、本発明のこの局面は、被験体における炎症のための治療プロトコールを意図しており、このプロトコールは、この被験体に対する、有効量の抗炎症剤、および疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば回復するのに有効な量のフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの投与の段階を含む。炎症性疾患は、上記に列挙されるいずれの疾患を含んでもよい。抗炎症剤の投与は、フルピルチンと連続しても同時でも独立でもよい。
【0069】
さらに別の態様では、併用療法は、神経学的状態に関する。神経学的状態の例としては、非限定的に、神経の損傷、神経学的疾患、重篤な火傷、重篤な外傷、慢性非神経学的疾患、慢性の感染、慢性の副腎皮質ステロイド投与、AIDSなどが含まれる。神経の損傷としては、急性脳損傷、外傷性脳損傷、閉鎖性頭部外傷、脳卒中などが含まれる。神経学的疾患としては、慢性の神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症などが含まれる。慢性の副腎皮質ステロイド投与は、抗新生物療法、抗炎症療法、免疫抑制などと関連し得る。
【0070】
従って、本発明のこの局面は、被験体における神経学的状態のための治療プロトコールを意図しており、このプロトコールは、この被験体に対する、神経学的状態を治療するために用いられる物質の有効量、および疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば回復するのに有効な量のフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ投与の段階を含む。神経学的状態は、上記に列挙されるいずれの状態を含んでもよい。神経学的疾患を治療するために用いられる物質の投与は、フルピルチンと連続しても、同時でも、独立でもよい。
【0071】
さらなる態様では、併用療法とは、神経障害性疼痛を生じるか、または神経障害性の疼痛成分を有する、とりわけ以下の疾患のうちのいずれか1つまたは複数の症状の治療または改善の間に疼痛を軽減することに関する:腹壁欠損、腹性片頭痛、軟骨無発生症、軟骨無発生症IV型、軟骨無発生症III型、軟骨形成不全症、遅発性軟骨形成不全症、軟骨形成性小人症、後天性免疫不全症候群(AIDS)、急性間欠性ポルフィリン、急性ポルフィリン症、急性肩神経炎、急性毒性表皮溶解、有痛脂肪症、副腎腫瘍、副腎脊髄神経障害、成人皮膚筋炎、筋萎縮性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症-ポリグルコサン小体、AN、AN 1、AN 2、肛門直腸奇形、肛門狭窄症、クモ膜炎(Arachnitis)、クモ膜炎骨形成、クモ膜炎(Arachnoiditis)、動脈炎巨細胞、関節炎、関節炎尿道炎、上行性麻痺、星細胞腫グレードI(良性)、星細胞腫グレードII(良性)、アテトーゼ様脳性麻痺、バレット食道、バレット潰瘍、中枢神経系の良性腫瘍、骨腫瘍類表皮嚢胞ポリポーシス、上腕神経炎、上腕神経炎症候群、腕神経叢神経炎、腕神経叢神経障害、腕頭動脈虚血、脳腫瘍、良性脳腫瘍、悪性脳腫瘍、骨粗鬆症、遺伝性水疱症、水泡性CIE、水泡性先天性魚鱗癬様紅皮症、水泡性魚鱗癬、水疱性類天疱瘡、バーキットリンパ腫、バーキットリンパ腫アフリカ型、バーキットリンパ腫非アフリカ型、外反踵骨、外反踵足、海綿状リンパ管腫、海綿状奇形、中枢型神経線維腫症、頸髄狭窄、頸椎癒合、シャルコー病、シャルコー・マリー・ツース、シャルコー・マリー・ツース病、シャルコー・マリー・ツース病変種、シャルコー・マリー・ツース・ルシー・レビー病、小児皮膚筋炎、点状軟骨異形成症、先天性石灰化軟骨形成異常症、胎児性軟骨異栄養症、軟骨形成異常筋緊張症、軟骨発育不全、弯足をともなう軟骨形成異常、骨端軟骨形成異常、軟骨形成異常過形成型、軟骨外胚葉性異形成、軟骨形成不全症、軟骨異栄養症、軟骨骨ジストロフィー、慢性癒着性クモ膜炎、慢性特発性多発性神経炎(CIP)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、瘢痕性類天疱瘡、複合性局所疼痛症候群、先天性頸部症候群、先天性脱髄神経障害、先天性低髄鞘形成多発神経障害、先天性低髄鞘形成神経障害、先天性低髄鞘形成、先天性低髄鞘形成(タマネギ鱗茎)多発性神経障害、先天性魚鱗癬様紅皮症、先天性頸髄係留症候群、頭部動脈炎、クローン病、皮膚ポリフィリン症、変性腰椎狭窄、脱髄性疾患、糖尿病、インスリン依存性糖尿病、糖尿病、糖尿病アジソン病粘液水腫、円板状紅斑性狼瘡、円板状紅斑性狼瘡、播種性紅斑性狼瘡、播種性神経皮膚炎、播種性硬化症、EDS脊柱後側弯、EDS脊柱後側弯症、EDS軽症型、EDS眼-側弯症、異栄養性弾力線維症症候群、脳顔面血管腫症、脳三叉神経領域血管腫症、多発性海綿状血管腫を伴う内軟骨腫症、地域性多発性神経炎、子宮内膜症、好酸球性筋膜炎、表皮水疱症、後天性表皮水疱症、遺伝性表皮水疱症、致死性表皮水疱症、遅発性遺伝性表皮溶解、表皮剥離性角質増殖症、表皮剥離性角質増殖症(水泡性CIE)、家族性腰椎狭窄、家族性早発性リンパ浮腫、線維筋痛、線維筋肉痛線維筋炎、線維筋炎、結合組織炎、多関節の繊維性強直、線維性骨異形成、脆弱X染色体症候群、全身性線維腫症、ギランバレー症候群、血管腫症軟骨異栄養症、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパシーI型、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパシーII型、遺伝性感覚性自律神経性ニューロパシーIII型、遺伝性感覚性運動性ニューロパシー、遺伝性感覚性ニューロパシーI型、遺伝性感覚性ニューロパシーI型、遺伝性感覚性ニューロパシーII型、遺伝性感覚性ニューロパシーIII型、遺伝性感覚根性ニューロパシーI型、遺伝性感覚根性ニューロパシーI型、遺伝性感覚根性ニューロパシーII型、帯状疱疹、ホジキン病、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、過形成性表皮水疱症、肥厚性間質性ニューロパシー、肥厚性間質性神経炎、肥厚性間質性神経根ニューロパシー、レフサムの肥厚性ニューロパシー、特発性腕神経叢神経障害、特発性頸部ジストニア、若年性(小児)皮膚筋炎(JDMS)、若年性糖尿病、若年性関節リウマチ、偏平足、下腿潰瘍、腰部脊柱管狭窄、腰椎狭窄、腰仙部脊椎狭窄、狼瘡、狼瘡、エリテマトーデス、リンパ管腫、多発単神経炎、末梢性単神経炎、末梢性単神経障害、単発性線維性骨異形成、多発性軟骨性内骨腫、多発性軟骨性外軟骨症、多発性内軟骨腫症、多発性骨髄腫、肩帯の多発性神経炎、多発性骨軟骨腫症、多発性末梢神経炎、多発性硬化症、筋骨格系疼痛症候群、神経障害性アミロイド症、神経障害性脚気、腕神経叢症候群の神経障害、遺伝性感覚性ニューロパシーI型、遺伝性感覚性ニューロパシーII型、ニーマン・ピック病A型(急性神経細胞障害型)、ニーマン・ピック病B型、ニーマン・ピック病C型(慢性神経細胞障害型)、非瘢痕性表皮水疱症、アルカプトン尿症関節炎、眼のヘルペス、オニオンバルブ(onion-bulb)神経障害、骨形成不全、骨形成不全、先天性骨形成不全、遅発性骨形成不全、末梢神経炎、末梢神経障害、ペルテス病、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎および皮膚筋炎、末梢性多発性神経炎、末梢性多発神経障害、多発神経障害および多発神経根筋障害、多発性線維性骨形成異常、多骨性硬化性組織球増殖症、骨髄造影後クモ膜炎、原発性進行性多発性硬化症、乾癬、橈骨神経麻痺、感覚根性ニューロパシー、劣性感覚根性ニューロパシー、反射性交感神経ジストロフィー症候群、再発-寛解性多発性硬化症、遺伝性感覚ニューロパシーI型、遺伝性感覚ニューロパシーII型、遺伝性感覚ニューロパシーI型、感覚根性ニューロパシー、劣性感覚根性ニューロパシー、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球貧血病、鎌状赤血球貧血ヘモグロビンC病、鎌状赤血球貧血ヘモグロビンD病、鎌状赤血球貧血サラセミア病、鎌状赤血球形質、脊椎披裂、開放性脊椎披裂、脊髄クモ膜炎、脊髄動静脈奇形、脊髄骨化クモ膜炎、脊髄狭窄、腰部脊柱管の狭窄、スティル病、脊髄空洞症、全身性硬化症、踵足、内転尖足、尖足、内反足、外反足、縦列脊髄狭窄、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、側頭動脈炎、脊髄係留症候群、脊髄係留奇形後遺症、脊髄係留症候群、頸部脊髄係留症候群、視床症候群、視床知覚過敏麻痺、三叉神経痛、異型性ポルフィリン症、強直性椎骨増殖症。
【0072】
従って、本発明の別の局面は、被験体における疾患状態のための治療プロトコールを意図しており、このプロトコールは、この被験体に対する、疾患状態の有効量、および疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば回復するのに有効な量のフルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの投与の段階を含む。この疾患状態は、上記に列挙されるいずれの状態を含んでもよい。疾患状態の投与は、フルピルチンと連続しても、同時でも、独立でもよい。
【0073】
本発明はまた、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを、任意で、別の鎮痛剤、例えば、オピオイドと、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤および任意で他の薬剤とともに含む組成物に関する。薬学的に許容される添加物は、担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤の形態であってもよく、そしてそれらとしては、全ての従来の溶媒、分散剤、充填剤、固体担体、コーティング剤、抗真菌剤または抗菌剤、皮膚透過剤、サーファクタント、等張剤および吸収剤および徐放性または持続放出性の基質が含まれる。この活性剤は、活性物質の同時、個別または連続の投与を可能にするように適合された成分のキットの形態で提示され得る。各々の担体、希釈剤、アジュバント、および/または賦形剤は、この組成物の他の成分と適合しているという意味で「薬学的に許容され(pharmaceutically acceptable)」ており、かつ被験体によって生理学的に耐容されなければならない。この組成物は、単位剤形で都合よく存在してもよく、そして薬学の当技術分野において周知の方法によって調製されてもよい。このような方法は、1つまたは複数の副成分を構成する、担体との活性成分の結合をもたらす段階を含む。一般には、この組成物は、均一にかつ近密に調製され、これによって活性成分と液体担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤もしくは微細に分割された固体担体あるいはその両方との結合がもたらされ、次いで任意でこの生成物が形成される。
【0074】
経口投与のために適切な本発明の組成物は、各々が所定の量の活性成分を含むカプセル、小袋(sachet)もしくは錠剤のような別個の単位として;粉末もしくは顆粒剤;水相もしくは非水相の液体における溶液もしくは懸濁液として;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型エマルジョンとして与えられ得る。活性成分はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして与えられてもよい。
【0075】
錠剤は、任意で1つまたは複数の副成分とともに圧縮または成形することによって作製され得る。圧縮された錠剤は、適切な機械中で活性成分を、任意で結合剤(例えば、不活性希釈剤、防腐性の崩壊剤、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)界面活性剤または分散剤とともに混合された、粉末または顆粒のような流動型に圧縮することによって調製され得る。成型された錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らされた粉末化化合物の混合物を適切な機械中で成型することによって作製され得る。錠剤は任意で、コーティングされ、または刻まれてもよく、そして所望の放出プロフィールを得るために種々の割合で、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、その錠剤中での活性成分の徐放性または持続放出性を得るように処方されてもよい。錠剤は任意で、胃以外の腸の部分での放出を得るために、腸溶コーティングで提供されてもよい。
【0076】
非経口投与のために適切な組成物としては、この組成物を意図される被験体の血液と等張にさせる、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含み得る、水性および非水性の等張性の無菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が含まれる。この組成物は、単位用量または複数用量の密閉容器、例えば、アンプルおよびバイアル中に存在してもよく、そして使用の直前の滅菌の液体担体、例えば、注射用水の添加しか要さないフリーズドライの(freeze-dried)(凍結乾燥された(lyophilized))状態で貯蔵されてもよい。即時的な注射溶液および懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌の粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。
【0077】
皮膚に対する局所投与、すなわち経皮投与に適切な組成物は、任意の適切な担体または基剤に溶解または懸濁された活性成分を含んでもよく、そしてローション、ゲル、クリーム、ペースト、軟膏などの形態であってもよい。適切な担体としては、鉱油、プロピレングリコール、ワックス、ポリオキシエチレンおよび長鎖アルコールを挙げることができる。パッチのような経皮デバイスも用いられてもよく、そしてこれは、硝酸/酢酸セルロース、プロピレンおよびポリカーボネートのような適切な物質から作製される微小孔性膜を備えてもよい。このパッチはまた、適切な皮膚接着剤および基材を含んでもよい。
【0078】
本発明の活性化合物はまた、ポリマーが生体適合性であってかつ毒性でないポリマーデバイスを保有する薬物を含み得るインプラントとして与えられてもよい。適切なポリマーとしては、ヒドロゲル、シリコン、ポリエチレンおよび生分解性ポリマーを挙げることができる。
【0079】
本発明の化合物は、持続放出(すなわち、制御放出)型または徐放型で投与されてもよい。持続放出調製物とは、活性成分が一旦投与された被験体の身体内で緩徐に放出され、最短期間よりも長く所望の薬物濃度を維持する調製物である。徐放性製剤の調製物は、当業者によって十分理解される。剤形としては、経口型、インプラントおよび経皮型を挙げることができる。徐放性投与のためには、活性成分は、徐放性粒子として、または例えば、リポソーム内で懸濁され得る。
【0080】
本発明の薬学的組成物は、他の活性物質とともに販売用に包装されてもよいし、または他の活性物質は、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意で鎮痛剤、例えばオピオイドとともに処方されてもよい。
【0081】
従って、本発明のさらなる局面は、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および、任意でオピオイドのみ、または別の鎮痛剤もしくは活性物質の制御放出のためのシステムを提供し、このシステムは以下を含む:
(a)有効量の活性物質を含み、かつ規定された幾何的形態を有するデポジット・コア、および
(b)デポジット・コアに適用される支持プラットフォームであって、デポジット・コアが、少なくとも活性物質、および以下からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、支持プラットフォーム:
(i)ゲル化可能ポリマー材料に対する膨潤性ポリマー材料の比が1:9〜9:1の範囲内である、水または液体との接触の際に膨潤するポリマー材料およびゲル化可能ポリマー材料、ならびに
(ii)膨潤特性およびゲル化特性の両方を有する単一のポリマー材料であって、支持プラットフォームが弾性の支持体であり、デポジット・コアに適用され、その結果、これがこのデポジット・コアの表面を部分的に覆い、かつデポジット・コアの水和による変化を伴い、かつ液体中で緩徐に可溶性であり、かつ/または緩徐にゲル化する、単一のポリマー材料。
【0082】
支持プラットフォームは、ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、可塑化剤、例えば、グリセリド、結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、親水性剤、例えば、ラクトースおよびシリカ、および/または疎水性剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびグリセリドを含んでもよい。ポリマー(単数または複数)は代表的には、支持プラットフォームの30〜90重量%、例えば約35〜40%を構成する。可塑化剤は、支持プラットフォームの少なくとも2重量%、例えば約15〜20%を構成する。結合剤、親水性剤および疎水性剤は代表的には、合計で支持プラットフォームの約50重量%、例えば約40〜50%である。
【0083】
錠剤コーティングは、1つまたは複数の不溶性または溶解度の乏しい疎水性賦形剤を含んでもよい。このような賦形剤は、任意の公知の疎水性セルロース誘導体およびポリマーから選択されてもよく、これには、アルキルセルロース、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体;ポリメタクリルポリマー、ポリ酢酸ビニルおよび酢酸セルロースポリマー;脂肪酸またはそのエステルもしくは塩;長鎖脂肪アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ステアリン酸ポリオキシエチレン;糖エステル;ラウロイルマクロゴール-32グリセリル、ステアロイルマクロゴール-32グリセリルなどが含まれる。ヒドロキシプロピルメチルセルロース材料は好ましくは、これらの低分子量および低粘性の材料、例えばE型のメトセル(methocel)および米国薬局方に規定されるような29-10型から選択される。
【0084】
コーティングに対して疎水性の性質を提供する他の物質または賦形剤は、錠剤賦形剤としての使用について公知の任意の蝋様物質から選択され得る。好ましくは、それらは5未満、そしてさらに好ましくは約2のHLB値を有する。適切な疎水性物質としては、カルナバワックス、パラフィン、微結晶性ワックス、蜜ろう、セチルエステルワックスなどの蝋様物質;非油性疎水性物質、例えば、リン酸カルシウム塩、例えば、二塩基性リン酸カルシウム(dibasic calcium phosphate)が含まれる。
【0085】
好ましくは、コーティングは、リン酸カルシウム塩、ベヘン酸グリセリル、およびポリビニルピロリドン、またはその混合物、および1つまたは複数のアジュバント、希釈剤、潤滑剤または充填剤を含む。
【0086】
コーティング中の好ましい成分は、以下のとおり、一般に適切な割合でコーティングの重量割合として表す。
【0087】
ポリビニルピロリドン(ポビドン)は好ましくは、コーティングの約1〜25重量%、さらに特には、4〜12%、例えば、6〜8%の量で存在する。
【0088】
ベヘン酸グリセリルは、グリセロールおよびベヘン酸(C22脂肪酸)のエステルである。ベヘン酸グリセリルは、そのモノエステル、ジエステルもしくはトリエステル型として、またはそれらの混合物として存在してもよい。好ましくは、これは、5未満、さらに好ましくは約2のHLB値を有する。これは、コーティングの約5〜85重量%、さらに特には10〜70重量%の量で、そして特に好ましい態様では30〜50重量%の量で存在し得る。
【0089】
リン酸カルシウムの塩は、二塩基性リン酸カルシウム二水和物であってもよく、そしてコーティングの約10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、例えば40〜75重量%の量で存在し得る。
【0090】
このコーティングは、他の通常の錠剤の賦形剤、例えば、潤滑剤、着色剤、結合剤、希釈剤、流動促進剤および味覚マスキング剤または香味剤を含んでもよい。
【0091】
賦形剤の例としては、着色剤、例えば、酸化鉄、例えば、黄色酸化鉄;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、および流動促進剤、例えば、二酸化ケイ素、例えば、コロイド状二酸化ケイ素が含まれる。黄色酸化鉄は、コーティングに対して約0.01〜0.5重量%の量で用いられ得る;ステアリン酸マグネシウムは、コーティングの1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10%、例えば、0.5〜1.0%の量で存在してよく;そしてコロイド状シリカは、コーティングの0.1〜20重量%、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは0.25〜1.0%の量で用いられ得る。
【0092】
コアは、薬物物質に加えて、即時放出製剤において用いられ、かつ当業者に周知である崩壊剤または崩壊剤の混合物を含む。本発明の実施において有用な崩壊剤は、水性媒体の存在下で発泡するかまたは膨潤し、それによってコーティング材料を機械的に破壊するのに必要な力を与える材料であり得る。
【0093】
好ましくは、コアは、薬物物質に加えて、架橋ポリビニルピロリドンおよびクロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium)を含む。
【0094】
以下は、好ましいコア材料の列挙である。この量は、コアの重量に対する重量パーセンテージとして表される。
【0095】
架橋されたポリビニルピロリドンは、上に記載されており、そして崩壊剤として有用であり、そしてコアに関して開示される量でこのコア中で使用され得る。
【0096】
クロスカルメロースナトリウムとは、崩壊剤として有用な内部で架橋されたカルボキシメチルセルロースナトリウム(Ac-Di-Solとしても公知)である。
【0097】
崩壊剤は、コアに対して5〜30重量%の量で用いられ得る。しかし、特定の崩壊剤の量が多ければ、膨潤して、薬物物質の放出を調整し得る基剤を形成することができる。従って、詳細には、急速な放出が遅延時間後に必要である場合、崩壊剤は、最大10重量%まで、例えば、約5〜10重量%の量で使用されることが好ましい。
【0098】
コアはさらに、コーティング材料に対して上に記載されるような通常の錠剤賦形剤を含み得る。適切な賦形剤としては、ラクトース(例えば、一水和物)、酸化鉄、ステアリン酸マグネシウム、およびコロイド状シリカを含む、潤滑剤、希釈剤および充填剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0099】
ラクトース一水和物は、1つのグルコースおよび1つのガラクトース部分からなる二糖である。これは、本発明の錠剤中で充填剤または希釈剤として機能し得る。これは、約10〜90%、好ましくは20〜80%、そして特に好ましい態様では65〜70%の範囲であり得る。
【0100】
上記に言及されるとおり、錠剤が適切なコーティングの厚みを有することを確実にするためには、コアはコーティング内に正確に位置するということが本発明の重要な局面である。
【0101】
このようにして、遅延時間は、信頼性があり、かつ再現可能であり、そして生物学的利用における被験体内および被験体間の変動は回避され得る。バッチにおける錠剤は、コーティングに対して適切な形状を有するコアを含むことを確実にするために、プロセス制御において強固であることが有利である。制御にはバッチから無作為なサンプルを取り出して、サンプルを開いてコアの質(すなわち、コアが完全であるか否か、および正確な位置であるか否か)を物理的に検査するために作業者を要するという点で、制御は困難であり得る。さらに、サンプル由来の多数の錠剤が失敗である場合、錠剤のバッチ全部が廃棄され得る。出願人は、錠剤上に強力な光が照らされるとき、コアがコーティングと視覚的に対比されるように、酸化鉄のような強力な着色剤をコアに添加する場合、コアの位置または完全性における任意の失敗については、錠剤を検査するために錠剤化装置にほぼ隣接して位置するカメラによって自動的にピックアップし、それらの錠剤をそこから取り出すことが可能であることを見出している。
【0102】
別の態様では、経口投与のための多粒子性の放出フルピルチン組成物が提供される。この製剤は、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、任意でオピオイドおよび/または他の鎮痛剤もしくは活性成分を、イオン交換樹脂を用いて小粒子の形態で、代表的には150ミクロン未満で複合体化することによって作製される。多粒子性の製剤を調製するために、以下のタイプの粒子のうち1つまたは複数を、最終の剤形に処方する。(a)唾液の天然の媒体中で不溶性であるが、胃の酸性環境では溶解するポリマーを用いて薬物含有粒子をコーティングすることによって調製された即時放出粒子;(b)胃の酸性の環境では不溶性であるが、小腸の天然の環境では溶解するポリマーを用いて薬物含有粒子をコーティングすることによって調製された腸溶性粒子;(c)水不溶性であるが水浸透性の膜を形成するポリマーを用いて薬物含有粒子をコーティングすることによって調製された長期放出粒子;(d)腸溶性コーティングを用いて長期放出薬物粒子をコーティングすることによって調製された腸コーティング長期放出粒子;(e)胃の酸性環境および上部小腸の環境において不溶性であるが、下部小腸または上部大腸においては溶解するポリマーを用いて薬物含有粒子をコーティングすることによって調製された遅延放出粒子。
【0103】
さらに本発明の別の局面は、(a)フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログと;(b)放出の時間が遅延している活性成分と;(c)即時放出オピオイド除去成分とを含む組成物を提供する。
【0104】
本発明はさらに、被験体に対する本発明の組成物の送達のための方法を提供し、この方法は、この被験体に対して、上記のような成分(a)、(b)および(c)を含む組成物を、経口的に、経皮的にまたは皮下的に投与する段階を含む。
【0105】
本発明は、麻薬性薬剤の完全な送達、および正当な患者での鎮痛作用をもたらすが同時に、麻薬中毒者による乱用のためのこの薬剤の転用、粗悪化または微粉化による不正の問題を有効に排除する、タンパー・プルーフ送達システムを作製する。本発明の組成物および方法は、医学の当技術分野において行なわれるものに対して有用であり、そして同時にこのような鎮痛剤を乱用しようとするかまたはその乱用から利益を得ようとする個人に対しては意味も有用性もない。
【0106】
オピオイドは、アルフェンタニール、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デキソシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチル、酪酸塩、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルフィン、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルフィン、ミロフィン(myrophine)、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルフィン、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、トラマドール、チリジン、その塩、またはその混合物であってもよい。
【0107】
モルフィンまたは他のオピオイドに対する言及としては、経口剤および徐放性剤が含まれる。例えば、カパノールは、徐放性のモルフィンであり、オルディン(ordine)は経口のモルフィンである。
【0108】
オピオイドは、即時放出アゴニスト、または放出時間が遅延しているアゴニストのいずれであってもよい。
【0109】
上記に特に言及された成分に加えて、本発明の組成物は、該当の組成物のタイプに関して当技術分野において都合の良い他の物質を含み得ることが理解されるべきである。例えば、経口投与に適切な物質としては、結合剤、甘味料、増粘剤、香味料、崩壊剤、コーティング剤、防腐剤、潤滑剤および/または時間遅延剤のようなさらなる物質を挙げることができる。
【0110】
さらに、他の鎮痛化合物または他の活性成分、例えば、抗癌化合物が含まれてもよい。抗癌化合物の例としては、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、分裂抑制剤、ステロイド、性ホルモン、アルキル化剤、ナイトロジェン・マスタード、ニトロソウレア、ホルモンアゴニストおよび微小管阻害剤が含まれる。
【0111】
代謝拮抗剤は、細胞増殖および再生のために必要なタンパク質またはDNAの合成のような身体の化学的プロセスを妨害する。代謝拮抗薬は、癌治療における要件である細胞分裂を妨げ得る。例としては、アザセリン、D-シクロセリン、ミコフェノール酸、トリメトプリム、5-フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン(ara-C)およびフルダラビンが含まれる。
【0112】
抗腫瘍抗生物質は、酵素および有糸分裂を停止させること、または細胞を囲む膜を改変することによってDNAと干渉する。これらの物質は、細胞周期の全ての相において作用する。従って、それらは種々の癌について広範に用いられる。抗腫瘍抗生物質の例としては、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシンおよびミトキサントロンが含まれる。
【0113】
分裂抑制因子は、植物アルカロイドおよび天然の産物に由来する他の化合物である。それらは、有糸分裂を阻害もしくは停止するか、または細胞の再生に必要なタンパク質を作製するための酵素を阻害し得る。これらは、細胞周期のM期の間に作用する。分裂抑制因子の例としては、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド(VP-16)、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビンが含まれる。
【0114】
ステロイドは天然のホルモンおよびホルモン様の薬物であって、これはいくつかのタイプの癌(例えば、非限定的には、リンパ腫、白血病および多発性骨髄腫)および他の疾患を治療するのに有用である。これらの薬物が、癌細胞を殺傷するため、またはそれらの増殖を遅らせるために用いられる場合、それらは、化学療法薬とみなされる。それらはしばしば、その有効性を増大するために他のタイプの化学療法薬と組み合わされる。例としては、プレドニゾンおよびドキサメタゾンが含まれる。
【0115】
性ホルモンまたはホルモン様薬物は、雌性または雄性のホルモンの作用または産生を改変する。それらは、身体におけるホルモンレベルに応答して通常増殖する、乳癌、前立腺癌および子宮内膜(子宮の裏層)癌の増殖を遅らせるために用いられる。例としては、抗エストロゲン(タモキシフェン、フルベストラント(fulvestrant))、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトロゾール)、プロゲスチン(酢酸メゲストロール)、抗アンドロゲン(ビカルタミド、フルタミド)およびLHRHアゴニスト(ロイプロリド、ゴセレリン)が含まれる。
【0116】
アルキル化剤は、癌細胞の再生を妨げるようにDNAに直接作用する。薬物のクラスとして、これらの物質は、期に特異的ではない(言い換えれば、それらは、細胞周期の全ての期において作用する)。これらの薬物は、慢性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、ならびに肺、乳房および卵巣の特定の癌に対して活性である。アルキル化剤の例としては、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、ダカルバジン(DTIC)、メクロレタミン(ナイトロジェン・マスタード)およびメルファランが含まれる。
【0117】
ナイトロジェン・マスタードはその塩酸塩結晶の形態で、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫および脳腫瘍の治療における薬物として用いられる。ナイトロジェン・マスタードは、細胞の遺伝因子に変異を生じ、それによって有糸分裂または細胞分裂を中断させる。細胞は、ナイトロジェン・マスタードに対してその感受性が変動し、急速に増殖する腫瘍細胞および癌細胞が最も感受性である;赤血球を生じる骨髄も感受性であり、そして赤血球産生の抑制は、ナイトロジェン・マスタード療法の頻繁な副作用である。ナイトロジェン・マスタードはまた、免疫応答を抑制する。他のタイプとしては、芳香族マスタードメルファランおよびクロラムブシルが含まれる。
【0118】
ニトロソウレアは、アルキル化剤に対して同様の方式で作用する。それらは、DNA修復を補助する酵素を妨害する。これらの物質は脳に対して移行し、その結果それらは脳腫瘍および非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および悪性黒色腫を治療するために用いられる。ニトロソウレアの例としては、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU)が含まれる。
【0119】
ホルモンアゴニストの例としては、前立腺癌のためなどのロイプロリド(Lupron, Viadur, Eligard)、乳癌および前立腺癌のためのゴセレリン(Zoladex)、ならびに卵巣癌および前立腺癌のためのトリプトレリン(Triptorelin)(Trelstar)および酢酸ナファレリン(Synarel)が含まれる。
【0120】
微小管阻害剤としては、「ビンカ(Vinca)」アルカロイド、タキソイドおよびベンズイミダソールが含まれる。このような化学療法剤の例としては、以下の癌の化学療法薬が含まれるが、それらに限定されない:ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マホスファミド(mafosfamide)、イホスファミド、シトシンアラビノシド、ビス-クロロエチルニトロソウレア、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストテスロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソウレア、ナイトロジェン・マスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-アザシチジン、ヒドロキシ尿素、デオキシコホルマイシン、4-ヒドロキシペルオキシシクロホスホラミド、5-フルオロウラシル(5-FU)、5-フルオロデオキシウリジン(5-FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP-16)、トリメトレキサート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチン、およびジエチルスチルベストロール(DES)。
【0121】
癌のような慢性疾患状態の治療のために、製剤はまた、治療剤に対する耐性の低下を補助する化合物を包含し得る。このような化合物の例は、P-糖タンパク質、または薬物の細胞内蓄積を排除することに関与する他の細胞機構を阻害する化合物である。
【0122】
この製剤は、担体、希釈剤および賦形剤を含んでもよい。薬学的に許容される担体、希釈剤および賦形剤、ならびに薬学的組成物および製剤を調製する方法は、Remmingtons Pharmaceutical Sciences 18th Edition, 1990, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania, USAにおいて提供される。
【0123】
本発明における使用のための活性物質はまた、獣医学の組成物における使用のために提示され得る。これらは、当技術分野において公知の任意の適切な手段によって調製され得る。このような組成物の例としては、以下が含まれる:
(a)経口投与、例えば、水溶液および非水溶液または懸濁液を含むドレンチ(drench)、飼料との混合のための錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、ペレット、舌への適用のためのペースト;
(b)非経口投与、例えば、滅菌の溶液もしくは懸濁液としての皮下、筋肉内または静脈内注射、または鼻腔内を通じる、投与;
(c)局所適用、例えば、クリーム、軟膏、ゲル、ローションなど。
【0124】
本発明の特に好ましい態様では、活性物質は、経口的に、好ましくは錠剤、カプセル、トローチ剤、または液体の形態で投与される。投与された組成物は好ましくは、サーファクタントおよび/または溶解度改良物質を含む。適切な溶解度改良物質は、水溶性ポリエトキシル化キャスターオイルであり、そして適切なサーファクタントの例はCremophor ELである。フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログに適切な投与範囲は、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500を含む6時間ごとの、例えば、100〜1500mgの経口的投与である。モルフィンについての適切な用量範囲は、3〜6時間ごとに2.5〜20mg、例えば、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20mgで、そしてオキシコドンおよび他のオピオイドについては3〜12時間ごとに、2〜50mg、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、30、30.5、31、31.5、32、32.5、33、33.5、34、34.5、35、35.5、36、36.5、37、37.5、38、38.5、39、39.5、40、40.5、41、41.5、42、42.5、43、43.5、44、44.5、45、45.5、46、46.5、47、47.5、48、48.5、49、49.5、50mgである。
【0125】
フルピルチンと組み合わせて、この投薬間隔は好ましくは、約12〜24時間である。
【0126】
本発明はさらに、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの持続放出または徐放性の製剤を用いてコーティングされた、身体もしくは体腔に対してまたはその中への導入のための機械的デバイスを提供する。任意で、オピオイドは単独で、または他の活性物質とともに含まれる。機械的なデバイスの例としては、ステント、カテーテル、義肢、ピン、ニードルなどが含まれる。
【0127】
ステントは例えば、代表的には、管腔、内面および外面、ならびにこの外面から内面に広がる開口を有する。本発明は、ステントの表面をコーティングする方法にまで及ぶ。ステントの少なくとも一部は、このステントの表面上に沈着されたコーティング材料を含むコーティング溶液と接触されて配置される。ステントの管腔を通じてスレッドが挿入され、ステントとスレッドとの間の相対的な動きが開口内のコーティング材料を実質的に除去するように、このスレッドは作製される。
【0128】
スレッドは、管腔の直径よりも実質的に小さい直径を有し得る。このスレッドは、ステントとコーティング溶液との接触の前後のいずれにこの管腔を通じて挿入されてもよい。ステントとスレッドとの間の相対的な動きは、ステントとコーティング溶液との接触の前に行なわれて、ステントが浄化され得る。スレッドは、フィラメントまたは複数のワイアを有するケーブルのいずれであってもよい。スレッドは、金属材料から作成されても、またはポリマー材料から作成されてもよい。
【0129】
ステントは、コーティング溶液に浸されてもよいし、またはコーティング溶液を用いて噴霧コーティングされてもよい。このコーティング材料は、薬学的に活性な化合物を伴うか伴わないかのいずれかで、生体適合性ポリマーを含んでもよい。
【0130】
1つの態様では、この相対的な動きとは、振動デバイスによって生成された振動性の動きである。この振動は、ステント上のコーティング溶液の厚みを変えるために変化(振幅および/または周波数)されてもよい。別の態様では、相対的な動きは、シェーカー・テーブルによって生成される。動きのタイプにかかわらず、この相対的な動きは、このステントがコーティング溶液と接触する後または間のいずれかに生成され得る。
【0131】
ステントとスレッドとの間の相対的な動きは、このスレッドの長さに対して実質的に平行な水平方向でこのステントを最初に動かすこと、および引き続いて、このスレッドの長さに対して実質的に垂直な鉛直方向にこのステントを動かすことを含み得る。水平方向の動きは、繰り返しの間に止めながら、繰り返されてもよい。鉛直方向の動きはまた、水平および鉛直の動きを交互させながら、繰り返されてもよい。
【0132】
相対的な動きを円滑にするために、このスレッドは、減衰補償器(damping compensator)に対して結合されてもよい。この減衰補償器は、振動デバイスに対してスレッドを接続する。1つの態様では、この減衰補償器は、このスレッドに接続された第一および第二のフィラメントを含む。
【0133】
この相対的な動きとは、スレッドに沿ったステントの動きであってもよい。例えば、このスレッドの第一端は、第一の高さで第一のスタンドに接続されてもよく、このスレッドの第二端は、第二の高さで第二のスタンドに接続される。この相対的な動きは、第二の高さとは異なる第一の高さで、重力勾配によって生成される。さらに、このステントは、第一および第二の高さの少なくとも1つで実質的に増大または減少することによって、第一のスタンドと第二のスタンドとの間で前後に動かされてもよい。この方法では、複数のコーティングがステントに加えられてもよい。
【0134】
この相対的な動きはまた、スレッドに対するステントの回転であってもよい。ガスの流れは、スレッドに対してステントを回転させるように、ステントの表面の少なくとも一部に沿って通過してもよい。この回転はまた、ステントとスレッドとの間の他の相対的な動きと連動して生じ得る。
【0135】
本発明はさらに、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意でオピオイドおよび/または他の活性物質によって少なくとも一部が覆われた外面と、ある量の活性材料を時限送達のために組み込んでいる疎水性エラストマー材料のコンフォーマル・コーティング(conformal coating)と、このコンフォーマル・コーティングと関連して活性材料の時限送達後に非血栓形成性の表面を提供する手段とを有する、移植可能な医学的デバイスを提供する。
【0136】
好ましくは、このコンフォーマル・コーティングは、疎水性エラストマー材料中に、ある量の微細に分割された生物学的に活性な材料を含む。
【0137】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに記載されるが、以下の実施例は、例示の目的のためのみに意図され、本明細書において前記されるような本発明の一般論を制限することを意図しない。
【0138】
実施例
実施例において考慮される実験上のパラメーターの1つは、フルピルチンと組み合わせて用いられる場合、副作用、例えば、モルフィンの鎮静効果またはその類似のものを回避する能力である。
【0139】
薬物併用の鎮静効果は、ロータロッド(rotarod)試験を用いて研究された(実施例1)。この試験は、回転ドラム上でラットが歩く能力を評価する。この能力の低下を生じない薬物の用量およびそれらの薬物の併用は、この方式で同定された。次いで、単独で用いられる、そして併用して用いられる薬物の同定された非鎮静用量を、以下の非侵害性パラダイムを採用した疼痛のモデルにおいて、抗侵害受容性効果について試験した。
(a)電流閾値試験(実施例2);
(b)カラゲナン誘導性の足の炎症(実施例3);および
(c)ストレプトゾトシン誘導性糖尿病性神経障害(実施例4)。
【0140】
実施例1〜4において報告された全ての実験を、雄性Wisterラット(実施例1〜3については、体重150〜200g、そして実施例4については、体重65〜80g)で、観察者盲検方式において、並行の生理食塩水媒体の対照を用いて行ない、そして全ての薬物溶液および媒体は、1.0mlの容積で腹腔内(ip)投与した。
【0141】
実施例1
ロータロッド試験
このラットは、薬物に対して未経験であり、ロータロッド試験を以前に経験していない。それらを、30〜60分の間隔を空けた1〜2分の2回のトレーニング・セッションの間、ロータロッド・アクセレレーター・トレッドミル(rotarod accelerator treadmill)(7650 accelerator rotarod、Ugo Basile, Italy)セットに最小速度で入れた。この調整期間後、媒体、薬物または薬物の組み合わせのip注射を与えた。5分後、この動物を、1分あたり4回転という定速でロータロッド上に置いた。動物はドラムのグリップをとるので、アクセレレーター(accelerator)のモードは、トレッドミル上で選択した。すなわち、ドラムの回転速度はその後、毎分ごと、1分あたり20回転数の速度で直線的に増加させた。この時間は、加速期間の開始からラットがドラムを落ちるまで測定した;これは、各々のラットについての対照(治療前)のパフォーマンス時間であった。この試験についてのカットオフ時間または最大走行時間は2分であった。なぜなら、正常な非鎮静ラットは全て2分間走り、その時点でこの試験を終了したからである。この試験は、各々の走行の間を10分の間隔として30分間の間、各々のラットで行なった。薬物注射後に測定した最低の走行時間は、各々のラットについて30分の試験期間の間に同定した。これらの値を各々の薬物について各々の用量で組み合わせて、平均±SEMを算出した。生理食塩水処理した媒体の対照由来のデータは、チューキー・クレーマー(Tukey Kramer)のポストホック(post hoc)検定を用いる一元分散分析(one-way ANOVA)を用いて、薬物注射後のデータと比較した。これらの比較によって、鎮静を生じた薬物用量の規定が可能になった。
【0142】
ラットの群は、以下の治療を用いて上記のようにロータロッドで試験した。
(a)生理食塩水
(b)モルフィンを0.4、0.8、1.6、3.2、および6.4mg/kgの用量
(c)フルピルチンを5、10および20mg/kgの用量で
(d)フルピルチン5mg/kgとモルフィン0.4 mg/kgとの併用
(e)フルピルチン10mg/kgとモルフィン1.6mg/kgとの併用。
【0143】
表1は、それらの実験の結果を示す。
(表1)

一元分散分析+チューキー・クレーマーのポストホック検定:生理食塩水の対照と比較、p<0.05
【0144】
鎮静は、10mg/kgより多いフルピルチンおよび3.2mg/kgより多いモルフィンの用量によって生じることが、これらの実験から結論され得る。
【0145】
実施例2
カラゲナンの足炎症および侵害受容の足フリック試験
右後足の実験的な炎症をカラゲナン(Sigma-Aldrich Pty. Ltd. Australia; 100μlの2重量%カラゲナン溶液含有生理食塩水)の足裏注射によって誘導した。炎症の誘導のために時間をおいた。Ugo Basile社の装置を用いて自由に動く動物の右後肢の足裏表面上に焦点を当てた赤外線ビームを用いて、足引っ込め潜時(Paw withdrawal latency)を測定した。
【0146】
カラゲナン注射での炎症の誘導の前に、3つの安定な測定値が得られるまで、足引っ込め潜時を測定した(表2および図1に示されるように-20、-10および0)。一旦炎症が確立されれば、足の閾値を、カラゲナン注射の60分、110分および120分後に測定して、痛覚過敏の発生を確認した;足引っ込め潜時の短縮は、典型的には、対照のカラゲナン前のレベルの12秒から6秒に減る。試験薬物または併用薬物を注射して、足の圧力値(paw pressure)を以後40分間にわたって10分の間隔で測定した。測定および薬物治療の時間について足引っ込め時間の反復値を合わせて平均±SEMを算出した。
【0147】
以下の薬物治療を与えて、ラットの群を分けた。
・生理食塩水対照
・フルピルチンを5および10mg/kgの用量で単独
・モルフィンを0.4、0.8および1.6mg/kgの用量で単独
・フルピルチンを5および10mg/kg、モルフィンを0.4mg/kgで併用
時間応答曲線をプロットして、図1に示されるようなピーク薬物効果を決定した。
【0148】
ip薬物注射の効果は、140〜160分でプラトーに達することが示され得る。全ての引っ込め潜時についての値を各々の群で、試験時間-20、-10および0(治療前)について、そしてまた140、150および160分の(治療後)の測定値について組み合わせた。カラゲナン誘導性足炎症での結果のまとめを表2に示す。
【0149】
(表2)

【0150】
フルピルチン5および10mg/kg、またはモルフィン0.4および0.8mg/kgの単独では、カラゲナン誘導性痛覚過敏に対して影響を有さなかった。フルピルチン5mg/kgとモルフィン0.4mg/kgとの組み合わせは、カラゲナン誘導性痛覚過敏の有意な回復を生じ、そしてこれは、単独で与えられた1.6mg/kgのモルフィンの効果に等しかった;フルピルチンは、モルフィンの抗侵害受容性の効果を4倍増大させた。モルフィン0.4mg/kgと組み合わせたフルピルチン5mg/kgは、生理食塩水またはいずれか単独の薬物と比較して、もたらす痛覚過敏が有意に小さかった。チューキー・クレーマーのポストホック検定を用いる一元分散分析でp<0.001。結局、カラゲナン誘導性痛覚過敏の完全な回復は、0.4mg/kgのモルフィンと組み合わせた10mg/kgのフルピルチンによって生じた。すなわち、単独で与えた場合無効な2つの薬物の用量は、このモデルの神経障害性疼痛では完全な抗侵害受容を生じた(カラゲナン前のレベルとの比較でp>0.05)(上記のグラフでは-20、-10および0分)、チューキー・クレーマーのポストホック検定を用いる一元分散分析)。これらの用量も薬物の組み合わせもロータロッド試験では鎮静を生じなかった。
【0151】
実施例3
電流閾値試験
ラットを拘束装置に固定して、2つの体表電極を尾の基部から2cmおよび5cmに置いた。これらの電極に電流(50Hz、2msパルス、0-10mA)を通して、ラットがキーキー鳴いて強力な回避運動をとるのに必要な最小電流を決定した。この値は、5分ごとの「up-down(アップダウン)」法によって決定した。3つの安定な連続した5分の測定値を得、(a、b、およびc)、続いて薬物、薬物併用または生理食塩水媒体のip注射を、観察者の盲検方式で行った。さらに30分間、5分ごとにECT測定を続けた(測定値、d、e、f、g、h、i)。ミリアンペア(mA)で測定したECTの個々の値を標準化して、電極の配置および抵抗に起因するラットの間の相違を最小化した。これは、最初の3つの薬物前治療の測定値の平均(a+b+cの平均)によって、得られた個々の測定値の全てを割ることによって得られた。このように変換された全ての値を、試験時間および薬物治療について合わせて、平均±SEMを算出して、以下の治療を受けたラットの群について、図2に示される時間応答曲線としてプロットした。
・フルピルチンを5mg/kgの用量でip、単独
・フルピルチンを10mg/kgの用量でip、単独
・モルフィンを0.4mg/kgの用量でip、単独
・モルフィンを0.4mg/kgの用量とフルピルチンを5mg/kgの用量との併用。
【0152】
薬物の効果は、時間0で行なった測定後に与えたip注射後10〜30分で生じてプラトーに達することが図2に示される曲線から理解され得る。統計学的比較のために、ある群でのラットについての全ての値を、治療前(a、bおよびcの値の全て)および治療後(e、f、g、hおよびiの値の全て)について組み合わせた。これらを表3に示す。
【0153】
(表3)

【0154】
チューキー・クレーマーのポストホック検定を用いる一元分散分析を上記の表におけるデータに適用した。フルピルチン5または10mg/kg、モルフィン0.4mg/kg、またはモルフィン0.4mg/kgとフルピルチン5mg/kgの併用後のECT値は全て、生理食塩水よりも有意に大きかった(p<0.001)。フルピルチン単独の5または10mg/kgおよびモルフィン0.4mg/kg(p<0.001)の後、有意な抗侵害受容が存在した。モルフィン0.4mg/kg/フルピルチン5mg/kgの併用後の抗侵害受容の大きさは、モルフィン0.4mg/kgまたはフルピルチン5mg/kgを単独で与えたよりも有意に大きかった(p<0.001)。従って、フルピルチンの非鎮静用量は、鎮静を生じることなくモルフィン後に抗侵害受容を増大し得るという結論がなされる。
【0155】
実施例4
ストレプトゾトシン誘導性の糖尿病性神経障害
ヒトでの糖尿病性神経障害を含む神経障害性疼痛状態の治療はしばしば満足のいくものではない。現在の薬理学的レジメンは、三環系抗うつ薬(Sindrup et al., Pain, 42:135-144, 1990; Max, M.B., Pain, 42:131-133, 1990; Max, M.B., Pain, 50:3-4, 1992)、抗痙攣薬、全身性の局所麻酔薬(リグノカイン)およびメキシレチン、そしてさらに最近ではGABAペンチンからなる。全ての成功は限定されたものである(Arner et al., Pain, 33:11-23, 1988; Davis et al., Pharmacology, Biochemistry and Behavior, 39:737-742, 1991; Galer,B.S., Neurology, 45:Suppl.9 S17-S25, 1995; Avidan et al., Israel Journal of Medical Sciences, 32:331-334, 1996)。ヒトの神経障害性疼痛状態は、オピオイド治療に抵抗性であることが一般に受け入れられている(Arner et al.前記)。数名の研究者は、オピオイドは神経障害性疼痛モデルでは抗侵害受容性の効果を生じ得るが、正常用量よりも高い用量では、鎮静をも生じることが、オープンフィールド(open field)活性モニタリングおよびロータロッド試験のような試験によって明らかになったということを見出している。これによって、通常の治療範囲を超えた、用量応答曲線の右へのシフトが示される(Portenoy et al., Pain.43(3):273-86, 1990)。
【0156】
Courteixおよび共同研究者らは、神経障害性疼痛の糖尿病誘導性モデルを開発した。彼らは、ラットでの実験的なインスリン依存性糖尿病の誘導が異痛症および痛覚過敏を生じたことを見出した(Courteix et al., Pain, 53:81-88, 1993)。彼らは、機械的な侵害性の足圧迫(paw pressure)試験を用いて、静脈内モルフィンは、正常なラットにおけるものよりも2倍高い用量で用量依存性の抗侵害受容効果を誘導したことを示している(Courteix et al., Pain, 53 前記)。従って、糖尿病性モデルは、ヒトでの糖尿病性の神経障害性疼痛の経験を再生する;これはオピオイド耐性である。ここで報告された実験は、Randall Sellito法を用いて測定した足圧迫(paw pressure)で評価した抗侵害受容を生じる場合における、単独の、そして併用して与えられたフルピルチンおよびモルフィンの相対的な有効性を、このモデルを用いて評価している。
【0157】
雄性Wistarラット(体重65〜80g)をこれらの実験に用いた。標準的な実験室条件下で動物を1ケージあたり5匹飼育した。食物および水は自由に摂らせた。全ての実験において、意識下の動物における実験的な疼痛の検討について倫理指針に注意を払った(Zimmerman, M., Pain, 16:109-110, 1983)。全ての研究は、Monash University Standing Committee On Ethics in Animal Experimentation (SCAE NUMBER 96-021)の許可によって行なった。
【0158】
糖尿病/痛覚過敏の誘導
ラットに対し、塩化ナトリウム(0.9%)に溶解されたストレプトゾトシン(STZ)(総用量150mg/kg)(Sapphire Bioscience)を腹腔内(IP)注射した。150mgの用量を、連続した日に2回の75mg/kg注射で与えた。Ames Glucofilm試験ストリップおよび反射比色計(Ames Glucometer 3, Bayer Diagnostics)を用いる尾静脈血糖値の測定によって、STZの注射後1週で糖尿病を確認した。最終の血液グルコースレベルが15mM以上の動物のみを糖尿病とみなした。1週あたり1回、高血糖についてラットを再試験して、高血液グルコース測定値が続いていることを確認した。RandallおよびSelittoによって以前に記載された、足圧迫(paw pressure)試験を用いて、痛覚過敏を評価した(Randall and Selitto, Archiv. Inst. Pharmacdynamie, 111:409, 1957)。
【0159】
試験は、STZの初回注射の5週間後に行なった。足圧迫侵害受容閾値が30g(正常な重量適合ラットにおける値の60%)未満の動物は、痛覚過敏/神経障害性疼痛を発症したとみなし、従ってさらなる実験に用いた。
【0160】
侵害性試験
糖尿病の動物における痛覚過敏の発症の足圧迫試験による成功裡の考証の後、さらに広範な侵害性試験パラダイムを糖尿病性の神経障害性動物および体重の適合した対照において行なった;対照のラットは1〜2週間若齢であった。足プレッシャー(Paw pressure、PP)は、Randall and Selittoによって記載された方法によって、Ugo-Basile Algesimeter(Apelex; プローブ1mm; 重量:10g)(Randall and Selitto, Archiv. Inst. Pharmacdynamie, 111 前記を用いて測定した;左後肢に対して漸増する圧力を、発声が誘導されるまで加えた。足の引っ込め閾値(paw withdrawal thresholds)をラットの群において、以下の腹腔内(ip)注射の20分前および10分前、直前(時間0)、および20、30および40分後に測定した。
・生理食塩水(対照)
・体重の適合した糖尿病でない対照(治療なし)
・フルピルチン5mg/kg単独
・フルピルチン10mg/kg単独
・モルフィン1.6mg/kg単独
・モルフィン3.2mg/kg単独
・フルピルチン5mg/kgに加えてモルフィン3.2mg/kgを併用
・フルピルチン10mg/kgに加えてモルフィン1.6mg/kgを併用
【0161】
個体における値を各々の試験時間について組み合わせて、平均およびSEMを算出し、これを図3に示されるような時間応答曲線上にプロットした。
【0162】
-20、-10および0の時点で測定された足引っ込め閾値の値は、糖尿病ラットの全ての群について同じであり、これらの値は、正常な重量の適合した対照についての値よりも有意に低かったということが理解される。すなわち糖尿病が痛覚過敏を生じた。薬物に対する応答は、存在場合には、薬物および薬物併用の注射後20分で明らかになり、そしてこの応答は、0の時点で与えた注射後20〜40分の間、一定かつ安定であったことも理解され得る。各々の治療群について、-20、-10および0(薬物前)の時点に得た、全ての足引っ込め閾値を、+20、+30および+40(薬物後)の時点に得た値と同様に組み合わせた。平均およびSDは、下の表4に示されるように、薬物投与前および投与後に各々の群について算出した。一元分散分析をこの表の値にあてはめて、体重の適合した糖尿病でないラットにおける、薬物後の値と足引っ込め閾値についての値とを比較した;有意な相違がないNSが返されれば、薬物または薬物併用が糖尿病誘導性痛覚過敏を完全に回復したことを示す。さらに、一元分散分析を表4のデータにあてはめて、任意の薬物治療が抗侵害受容をもたらすか否か、すなわち、この薬物治療後の足引っ込め閾値において、治療前の足引っ込め閾値と比較して有意な増大があったか否かを評価した。糖尿病性神経障害に関するデータのまとめは表4に示すとおりである。
【0163】
(表4)

【0164】
ストレプトゾトシン誘導性糖尿病性痛覚過敏の完全な回復は、単独で与えたフルピルチン10mg/kg、そしてまたフルピルチン10mg/kg+モルフィン1.6mg/kgの併用によっても生じた(p>0.05);すなわち、薬物治療後の足引っ込め閾値は、正常な糖尿病でない体重の適合した対照についての閾値と有意に異なることはなかった。フルピルチン5mg/kg単独およびモルフィン1.6mg/kg単独では、糖尿病誘導痛覚過敏の有意な回復は生じなかった;薬物注射後の足引っ込め閾値は、薬物が注射される前に測定したラットにおける閾値と比較して有意に異なることはなかった(p>0.05)。単独で与えたモルフィン3.2mg/kgは、有意な抗侵害受容を生じた;足の閾値は、投薬後有意に増大した(p<0.05)が、それらの値およびその応答の大きさは、フルピルチン10mg/kgと組み合わせて与えた低用量のモルフィン(単独で与えた場合に有効ではないことが示されている1.6mg/kg)によって生じるものよりも有意に小さかった(p<0.001)。最後に、モルフィン1.6mg/kgと組み合わせたフルピルチン10mg/kgは、フルピルチン10mg/kg単独よりも大きい抗侵害受容を生じた。
【0165】
実施例2〜4に報告された結果によって、フルピルチンの非鎮静用量は疼痛の3つの動物モデル;電気、炎症および神経障害性の疼痛において、鎮静を生じることなくモルフィンの全体的な抗侵害受容効果を増大することが示される。神経障害性および炎症性の疼痛モデルにおいて、モルフィンと組み合わせてフルピルチンを用いて、痛覚過敏を回復するような有意な抗侵害受容を生じて、これによってこれらの疼痛状態を有する動物を疼痛感度に関して正常にさせることが可能である。これによって、オピオイド薬物では部分的な鎮痛しか達成され得ないという程度までオピオイド耐性であるか、または鎮静のような副作用を生じる用量でオピオイド耐性である、特に炎症性疼痛および神経障害性疼痛のような疼痛状態において、オピオイド鎮痛剤に付随するものとしてフルピルチンの有用性が実証される。フルピルチンとオピオイドとの同時投与は、鎮静を伴わない用量および併用によって炎症および神経障害性疼痛における疼痛管理の改善をもたらす。
【0166】
実施例5
フルピルチンの臨床的適用
本研究の目的
・大型の二重盲検研究において最も有用であり得るパイロット研究を行なって、結果および変量を確立する。
・神経障害性疼痛を有する癌患者に対するフルピルチンの投与は、疼痛の経験を改善し得ることを示す。
・用量を規定する。
・モルフィンを含む他の鎮痛薬の使用の減少に伴う疼痛軽減を定量する。
・クオリティー・オブ・ライフ(quality of life)に対する影響を評価する。
・鎮痛薬治療の副作用および合併症における改善を示す。
【0167】
関与する方法論、試行のタイプおよび薬物治療
試行のデザインは、以下に記載されるように、神経障害性要素を有する癌に関連する疼痛を有する患者で行なわれる非盲検用量増大研究であった。倫理委員会の承認および各々の患者からの書面によるインフォームドコンセントを得た。癌関連神経障害性疼痛を有する緩和ケア病棟に紹介された全ての患者は、少なくとも48時間にわたってオピオイドを投与されている場合、参加について適格であるとみなされた。試行を8日続けた。0日目に患者を疼痛および副作用の経験ならびに薬物使用に関して評価した。1日目に、1日4回(qid)の100mgの用量でのフルピルチン開始の前に、24時間の観察およびベースライン測定を行なった。患者もしくは臨床従事者によって判定される場合に、疼痛が制御されずかつ用量を制限する副作用の証拠もない場合には、この用量は、100mgの1日4回から、最大300mgの1日4回まで増大され得る。この患者が一旦無疼痛になれば、さらなる用量の増大はしなかった。用量の増大は、患者が同意する場合のみ行い、医師の裁量で、一般的な臨床状況を考慮して、疼痛応答、および毒性に注意した。バックグラウンドの「徐放性(sustained release)」および即時放出のオピオイド用量および他の「付加的な」鎮痛薬を、正常な実践と同様に毎日再検討して、それらを臨床要件に従って投薬量を上下に調節した。患者は、任意の「ブレークスルー(breakthrough)」用量の即時放出モルフィン混合物を含む、それらの正常なオピオイドおよび鎮痛薬を同時に摂ることを奨励された。
【0168】
患者は毎日評価した。ベースラインの個体群統計データに加えて疼痛の注意深い説明にベースラインで注目した(0日目)。各々の引き続く機会において、WHOパフォーマンスステータス(performance status)、併用薬および任意の有害事象に注意した。Daut et al., Pain; 17:197-210, 1983およびGaler et al., Neurology; 48:332-338, 1997に記載されたような神経疼痛の評価のために改変した、簡易疼痛調査表(Brief Pain Inventory)(BPI)-簡略版に基づく直線の評価尺度を用いて疼痛を評価した。
【0169】
各々の患者に、その疼痛を分類するように求めて、それを4つの状態[前の24時間における平均的疼痛;最小の疼痛;目下の疼痛(pain right now);そして最悪の疼痛]で評価して、それを1(「疼痛なし(no pain)」)〜10(あなたがイメージできる最悪の疼痛(pain as bad as you can imagine))に及ぶ数的な10ポイントスケールにスコア付けした。彼らにはまた、疼痛緩和パーセンテージ(0〜100%)、そしてその毎日の活動に疼痛がどれほど影響していたかを1(「疼痛が妨げない(pain does not interfere)」)〜10(「疼痛が完全に妨げる(pain completely interferes)」)に及ぶ数字的な活動スケールでスコア付けするように求めた。患者に毎日このアンケートを完了するように依頼した。患者にはまた、特に消化不良、食欲の変化、眠け、悪心、歩行不安定性、および各々の研究来診における任意の他の症状について特に尋ねた。これらの「副作用」は、「全くない(not at all)」〜「非常にある(very much)」までに相当する1〜4のスケールにスコア付けした。
【0170】
症例研究1:JE氏
JEは、直腸および肛門の癌と診断された63歳の既婚男性であった。彼は、その疾患が骨盤に進行しており、そして2003年前期には肝臓および骨盤の転移を発症していた。JEは左大腿および臀部において、フルピルチンの試行のための提示の前の最後の2年間、間欠的な神経障害性の疼痛を経験していた。これは、彼の入院前2週間で増大していた。彼は、疼痛は、「自分の足の上下にブローランプが動いている(a blow torch moving up and down his leg)」と表現した。彼はまた、彼の左大腿上部に知覚麻痺を訴えた。JEは引き続き、その領域に放射線療法を受けたが、一時的な軽減しかもたらさなかった。JEは、徐放性モルフィン(Kapanol)50mgを朝に、そして100mgを夜に、急な疼痛で必要な場合は、即時放出モルフィン混合物(Ordine)80mgとともに処方されていた。このレジメンは、彼の疼痛を管理するには不成功であった。JEは、抗けいれん薬(バルプロ酸ナトリウム-Epilim)および三環系抗うつ薬(アミトリプテリン-Endep)を入院の6日前に、そしてデキサメタゾンを入院の4日前に開始した。
【0171】
フルピルチンの試行の間の事象のまとめ(添付の表を参照)
0日目:JEは入院患者緩和ケア施設に入院した。前の24時間中の彼のオピオイド使用は、150mgのカパノールおよび260mgのOrdineを併用し、さらに毎日のデキサメタゾン 4mgに加えてEpilim 600mgおよびEndep 25mgであった。彼の神経障害性疼痛の判別関数スコアは0.862であった。これは、神経障害性疼痛の指標として広く受容されている12の異なる症状の測定から算出される関数である;スコアが0より大きいことは、この疼痛が神経障害性であることを示す(Krause and Backonja. The Clinical Journal of Pain 19:306-314 2003)。彼の平均疼痛スコア:7/10、最小疼痛:4/10、そして最悪疼痛:10/10。WHOのパフォーマンスステータスは2であった[完全活動的=0、そしてこのスケールのもう一端、4=完全な障害]。その時点では、彼は、かなりの強さの眠気、食欲不振および集中不足を経験していた、そして彼は不安定な状態であった。彼は下肢の基部の脱力およびピン穿刺に対する感覚の全体的な不足を有した。彼は、この疼痛が生活に重大な影響を有していると感じており、そのため彼は家族および友人とともにあちこち移動して楽しむことはできなかった。
【0172】
1日目:フルピルチンの開始24時間前において、JEのオピオイド使用は、100mgのカパノールおよび310mgのOrdineに加えて、補助剤:デキサメタゾン4mg;Epilim 600mg;Endep 25mgであった。神経障害性疼痛の判別スコア(discriminant score)は2.448であって、平均疼痛スコア:8/10、最小疼痛:1/10、そして最悪疼痛:10/10であった。WHOのパフォーマンスステータスは3とスコア付けされた。JEは依然としてかなりの大きさの眠け(4)、食欲不振(4)および集中力不足(3)を経験していた。彼の歩調はやはり極めて不安定(2)であり、そして彼は、ある程度の悪心(2)を有した。
【0173】
2日目:JEは24時間の間、100mg QIDのフルピルチンを摂っていた。最後の24時間のオピオイド使用は、150mgのカパノールと補助剤:デキサメタゾン4mg;Epilim 600mg;Endep 25mgおよびパラセタモール 1gであった。彼の判別神経障害性疼痛スコアは、非神経障害性レベル:-1.238に落ちていた。平均疼痛スコアは2/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:3/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。この段階では、JEは、依然として全く傾眠状態で(4)彼の人工肛門形成術(3)は、緩和ケア病棟への入院まで機能していなかった。彼はまた、右手に時おり、意図関連ミオクローヌス性痙攣を発症した(2)。JEの疼痛はほとんど完全に消失して、彼は、食欲改善および移動性の向上を享受していた。
【0174】
3日目:JEはフルピルチン100mg QIDの摂取を継続した。最後の24時間のオピオイド使用は、150mgのカパノールに加えて補助剤:デキサメタゾン4mgを毎日;Epilim 600mgを毎日、そしてEndep 25mgであった。彼の神経障害性疼痛判別スコアは、疼痛全くなしを示す最小レベルに低下しており-1.408であった。彼の平均疼痛スコア:0/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:0/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:2に改善した。JEは依然として全く傾眠状態で(3)、時おり、ミオクローヌス性痙攣が依然として存在した(2)。彼は、「極めて良好(very well)」な感じだと報告しており、彼の食欲は増大しており、疼痛は全くなかった。次の24時間のフルピルチン用量は、200mg QIDまで増加させて、カパノールは30mg/24時間まで減少させた。
【0175】
4日目:JEはフルピルチン200mg QIDを摂取していた。最後の24時間のオピオイド使用は、120mgのカパノールと補助剤:デキサメタゾン4mgを毎日;Epilim 600mgを毎日;Endep 25mgであった。彼の神経障害性疼痛判別スコアは、-1.408の最小スコアでとどまった。平均疼痛スコア:0/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:0/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3。しかし、副作用は増大した。JEは、鎮静の増大(4)のせいで、もはや自己ケアできなかった。彼は、「弱って疲れた感じ(feeling weak and tired)」であったと述べた。ミオクローヌス性痙攣は休止しており、両手足に影響していた(3)。彼は、手助けなしには歩けず(4)、そして集中するために覚醒したままでいるには問題があった(2)。JEの人工肛門形成術はやはりまだ機能していなかった(2)。しかし、彼は、膨満感を経験することはなく、食欲は良好なままであった。フルピルチン用量は、100mg QIDまで、カパノールは80mg/24時間まで減少させた。
【0176】
5日目:JEはフルピルチン100mg QIDの摂取を継続していた。最後の24時間のオピオイド使用は、80mgのカパノールと補助剤:デキサメタゾン4mgを毎日;Epilim 600mgを毎日、そしてEndep 25mgであった。神経障害性疼痛判別スコアは、-1.408の最小スコアでとどまっていた。平均疼痛スコア:0/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:6/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:4。JEは、早朝の時間帯に、トイレに歩いていこうと試みて偶発的に転倒した。彼はベッドに拘束されたままであった。なぜなら、彼は補助なしには歩けなかったからである。JEは、過度に傾眠状態で(4)、集中できず(4)、食欲がなく(4)、人工肛門形成術は機能しておらず(4)、ミオクローヌス性痙攣は残っていた(4)。カパノールの用量は、さらに40mgまで低下させ、デキサメタゾンの用量は、2mgに減少させて、Epilimは中止した。なぜなら、この傾眠および他の症状は、それらの薬剤に起因すると思われたからであった。
【0177】
6日目:フルピルチン用量は100mg QIDで維持した。最後の24時間のオピオイド使用は、40mgのカパノールおよび補助剤:デキサメタゾン2mgに加えてEndep 25mgのみであった。彼の神経障害性疼痛判別スコアは、-1.048、平均疼痛スコア:8/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:9/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3。JEは、評価の時点では鎮静が低く(3)、そして彼は、より長期間にわたって集中できた(2)。彼は、歩調では不安定なままであった(3)が、最低限の手助けで日常生活の活動を行なうことができた。彼の食欲は、回復し(2)そしてミオクローヌス性痙攣はゆっくりと解消した(2)。
【0178】
7日目:JEは、フルピルチンを100mg QIDの用量で摂取を継続していた。最後の24時間のオピオイド使用は、40mgのカパノールと補助剤:デキサメタゾン2mgに加えてEndep 25mgであった。彼の神経障害性疼痛判別スコアは、最小スコアの-1.408に戻った。彼の平均疼痛スコア:0/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:4/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3。JEは依然として、ある程度の傾眠(3)およびミオクローヌス性痙攣(2)を経験していた。しかし、彼は、より長時間集中できて、神経障害性疼痛症状がないままであった。彼の食欲は不振のままであった(3)。しかし、彼の人工肛門形成術は通常に機能していた。JEはまた、クモの幻覚を訴えたが(2)、それらを気にしなかった。なぜならクモは実際にはそこに存在しないことを承知していたからである。彼は過去にモルフィンで同様の経験を有した。この問題に取り組むために、Endepおよびカパノールを停止して、オキシコンチン 20mg BDを開始した。
【0179】
8日目:JEは、フルピルチンを100mg QIDの用量で摂取を継続していた。前の24時間のオピオイド使用は、40mgのオキシコンチン(徐放性オキシコドン)+5mg エンドン(即時放出オキシコドン)であった。オキシコドンはモルフィンのほぼ2倍の力価であり、従ってJEは、90mgのモルフィンに等しい用量のオピオイドを摂取していた。彼はまた、デキサメタゾン2mgを摂取した。神経障害性疼痛判別スコアは、0.677であって、前の24時間に対する平均疼痛スコアは7/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:9/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3。JEは一晩左足の感覚がなく、意識を保っていた。その他の点では良好であった。彼はもはや傾眠状態ではなく;ミオクローヌス性痙攣は、幻覚と同様に消失した。しかし、彼は歩調ではわずかに不安定なままであった(2)。
【0180】
フルピルチン試行後の事象のまとめ
翌日、JEは退院し、フルピルチンを用量100mg QIDで、オキシコンチン40mg/24時間とともに摂取した。前の24時間の彼の平均疼痛スコアは、0/10、最小疼痛:0/10、そして最悪疼痛:0/10でWHOパフォーマンスステータスが2。彼は疼痛がなく、そして歩行器によって一人で移動していた。
【0181】
18日目:JEは自宅で、フルピルチンを用量100mg QID、オキシコンチン 20mg BD、endone 5mgをこの週の間2〜3回必要なブレークスルーのために、そして血小板数減少のためにデキサメタゾン4mgを摂取している。彼は、神経障害性の疼痛症状は有さなかった。彼は、「気分が良く、何でも食べ、外出していた」と述べた。JEは44日目の最終の追跡では依然として活動的であり、オキシコンチン20mg bdを摂取しており神経障害性の疼痛症状はなく、ブレークスルーなしで、活動的な生活がもたらされた。
【0182】
平均一日鎮痛当量(Mean Equivalent Daily Dose)(MEDD)を決定するために、最後の24時間にわたって患者に投与された各々のオピオイドの用量および経路を、標準的な変換表を用いて非経口的なモルフィン当量に変換する(表5を参照)。総MEDDのmg数は、患者の評価後各々の日に測定する。
【0183】
(表5)

注記:
1.経路=「TD」および用量<=200の場合、Duragesicおよびフェンタニルについて調節した用量:用量×24
2.MEDD算出:[用量]×[MEDD係数]
3.スフェンタニル MEDD係数:SC/IV=1 PO/SL=0.5
【0184】
表6は、この症例研究での測定値をまとめる。表6は、2つのページにまたがる。
(表6)


星印()は、1日目と比較したX日目の改善を示す。
【0185】
症例研究2:RM氏
RMは、転移性膀胱癌と診断された80歳の、妻を亡くした男性であった。RMは過去に、転倒後の骨盤骨折の外科的な固定を要した。この研究の10週前、RMは、人工股関節の上に位置する左の寛骨臼の病理的な骨折、および多発性の肺転移を有することが見出された。骨のスキャンおよびCTでは、RMの仙骨または臀部における転移の証拠は明らかにならなかった。彼は、臀部および足の疼痛の進行によって生じる運動性の減少のせいで病院に入院した。彼はまた、右側に下垂足を有し、右くるぶし反射を欠いたが正常な両側の感覚および緊張を足に保持していた。MRIでは、S2の単独の転移が示され、馬尾も神経根の関与もなかった。RMは、この研究の前4ヶ月間、右の臀部および足にかなり常在的な神経障害性型の疼痛を有していた。疼痛は、最初に左足および臀部で経験され、次いで時間の経過につれてその右側に向かってかつ下側に広がった。この研究のための入院の際、疼痛はその右側に集中していた。RMは、「焼けるような(burning)」疼痛が彼の臀部から発せられて足に下がっていったと表現した。この疼痛は常に存在したが、朝に最も悪化する傾向があった。RMは、鎮痛剤ではほとんど改善を経験しなかった。彼は、徐放性のオキシコドン20mg BDと即時放出のエンドン5mg、およびヒドロモルホン1mg sc.を突発的な疼痛に必要な際に処方されていた。RMは、この試行の前に6日間ケタミンで治療された;これは、フルピルチン投与開始の24時間前に中止された。ケタミンは、疼痛を管理できず、神経障害性疼痛スコアは、その治療の終わりに向かって増大した(0日目と1日目を比較する以下の表を参照)。疼痛を管理しようとする試みにおいて、RMはまた、cox-2阻害剤(Celebrex)および抗痙攣薬(ガバペンチン)を、フルピルチンの試行が開始する前の週に開始された。このレジメンも、彼の疼痛を管理するのには失敗していた。
【0186】
フルピルチン試行の間の事象のまとめ
0日目:RMは入院患者緩和ケア施設に入院した。前の24時間中の彼のオピオイド使用は、ガバペンチン100mgを毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールと共に、40mgのオキシコドン経口、そして1.5mgのヒドロモルフォン皮下であった。この治療にもかかわらず、彼は、有意な神経障害性疼痛を有した;彼の神経障害性疼痛判別機能スコアは、0.077であった。これは、神経障害性疼痛の指標であると広く受け入れられている12の異なる症状の測定から算出された関数である;スコアが0より大きいことは、この疼痛が神経障害性であることを示す(Development of a Neuropathic Pain Questionnaire. Krause and Backonja, The Clinical Journal of Pain 19: 306-314, 2003)。彼の平均疼痛スコア:5/10、最小疼痛:0/10、そして最悪の疼痛:10/10であった。WHOのパフォーマンスステータスは、3であった[完全活動的=0、そしてこのスケールのもう一端、4=完全な障害]。その時点では、彼は、かなりの強さの便秘、食欲不振および歩調不安定性(ウィリー・フレーム(wheelie frame)の補助で歩く)を経験していた。彼は、疼痛が常に存在していると思われるので、疼痛は彼の生活の大きな影響を有していると感じていた。
【0187】
1日目:フルピルチンの開始24時間前に、RMのオピオイド使用は、40mgのオキシコドン経口、15mgのエンドン経口および0.5mgのヒドロモルフォン皮下に加えて、補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールであった。RMは、移行の前にケタミンを投与されており、フルピルチンの開始の前に20時間以上経過した。神経障害性疼痛の判別スコアは高度に有意で0.262という値であった。彼の平均疼痛スコアは8/10、最小疼痛:0/10、そして最悪疼痛:10/10であった。WHOのパフォーマンスステータスは3とスコア付けされた。RMは、食欲不振(4)歩調不安定(4)、悪心(3)およびある程度の眠気(2)を経験していた。
【0188】
2日目:RMは、24時間の間、100mg QIDのフルピルチンを摂っていた。直近24時間のオピオイド使用は、40mgのオキシコドン経口、および2.5mgのヒドロモルフォン皮下と、補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールであった。神経障害性疼痛判別スコアは、非神経障害性レベル:-0.228に劇的に低下していた。平均疼痛スコアも5/10に低下しており、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:8/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。RMの食欲は不振のままで(3)、歩調も同様であった(4)。彼はまた、傾眠傾向(3)であって、集中することがわずかに困難であることが見出された(3)。RMは、この「ぼんやりした(foggy)」感覚は、夜間の鎮静のために深夜に投与されたバリウムに起因していると感じた。
【0189】
3日目:RMはフルピルチン100mg QIDの摂取を継続した。直近24時間のオピオイド使用は、40mgのオキシコドン経口、および2mgのヒドロモルフォン皮下に加えて補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールであった。神経障害性疼痛判別スコアは、非神経障害性レベル:-1.008で維持されていた。彼の平均疼痛スコア:8/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:8/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。RMは傾眠状態が少なく(2)、そして足の不安定性が残っていた(4)。食欲があったので、RMは睡眠が改善されたと報告した。
【0190】
4日目:RMはフルピルチン100mg QIDの摂取を継続していた。直近24時間のオピオイド使用は、40mgのオキシコドン、および5mgのエンドンを両方とも経口で、ヒドロモルフォンのブレーク・スルー注射は無く、補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールを伴った。神経障害性疼痛判別スコアは、低いままで、非神経障害性レベル:-1.138であった。平均疼痛スコア8/10、最小疼痛:0/10、最悪疼痛:8/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。RMは、彼の疼痛緩和が改善され、今や「打撲のようである」と感じた。RMは、朝に短時間の悪心発作(2)を有し、マキサロン(maxalon)10mgで治療された。彼はまた、非常に便秘(3)であった;これは彼にとっては正常な状態で、このため腸を補助するための緩下剤を通常は摂取している。彼の歩調は不安定なままで(4)あったが、それにもかかわらず彼は、この施設の周りを休憩所までまったく活発に歩いていた。RMは、疼痛の緩和は今日はかなり良くなったと考えた。彼は、75%の疼痛緩和が達成されたと報告した。これは、フルピルチンでの治療の1日前に彼が報告した10%の緩和と際立って対比された。
【0191】
5日目:RMはフルピルチン100mg QIDの摂取を継続していた。直近24時間のオピオイド使用は、40mgのオキシコドン経口、および1mgのヒドロモルフォン皮下と、補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールとであった。神経障害性疼痛判別スコアは、-1.003であった。平均疼痛スコア8/10、最小疼痛:2/10、最悪疼痛:9/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。RMは、ある程度の便秘(2)、食欲減退(2)および歩調不安定(4)を経験していた。彼はまた、歩こうとしながら質問に集中することがわずかに困難である(2)ことを見出した。彼は依然として、高い割合の疼痛緩和を報告した。
【0192】
6日目:RMは、フルピルチン100mg QIDの摂取を維持した。直近24時間のオピオイド使用は、40mgのオキシコドン経口、および3mgのヒドロモルフォン皮下と、補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールとであった。神経障害性疼痛判別スコアは、低くかつ非神経障害性のままで、-1.168であった。これによって、経験されている疼痛が神経障害性に由来しないということが示された。平均疼痛スコアは低下していた。4/10、最小疼痛:2/10、最悪疼痛:7/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。RMの疼痛に対する神経障害性の要素は、フルピルチン摂取の初日から改善されているようであった。しかし、彼は、有意な大きさの偶発的痛みを依然として経験していた。フルピルチンの追加のための理由は、オピオイド抵抗性の神経障害性疼痛を治療するためであったので、この用量は、同じく保ったが、オピオイド用量は30mgオキシコドン経口BDまで増大させた。これは、単独で与えたオピオイドに対して抵抗性である有意な神経障害性疼痛要素に関与する疼痛状態の管理において、オピオイドとフルピルチンとの組み合わせを用いるという本発明の概念に従うものである。彼は、依然としてある程度食欲が損なわれており(2)、便秘(2)、集中力不足(2)、および悪心(2)があった。彼の歩調は不安定なままであった(4)。
【0193】
7日目:RMは、フルピルチン100mg QIDの摂取を維持した。直近24時間のオピオイド使用は、60mgのオキシコドン、および10mgのエンドンを両方とも経口で、さらに補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールであった。神経障害性疼痛判別スコアは、低くかつ非神経障害性のままで、-1.168であった。他の疼痛スコアは全て低下していた。平均疼痛スコア3/10;最小疼痛:0/10;最悪疼痛:5/10。WHOパフォーマンスステータスは3のままであった。RMはわずかに元気がないように思われた。彼は「今日はちょっと落ち込んだ(a bit down today)」感じだと認めた。彼は、疼痛は緩和されたが、彼はまだ「本調子じゃない(wasn’t right)」と感じていた。RMは、入院するほどでないし、暇だと訴えた。彼は、依然としてある程度食欲が損なわれており(3)、わずかに便秘(2)、そして悪心(2)が残っていた。彼の歩調は不安定なままで(4)、彼は集中することがやや困難であった(2)。
【0194】
8日目:RMは、フルピルチン100mg QIDの摂取を継続していた。直近24時間のオピオイド使用は、60mgのオキシコンチン、5mgのエンドンを両方とも経口で、そして2mgのヒドロモルフォンを皮下で、さらに補助剤:ガバペンチン100mg毎日、Celebrex 400mgおよび厳密に6時間ごとのパラセタモールであった。神経障害性疼痛判別スコアは、-1.198であった。平均疼痛スコア4/10;最小疼痛:1/10;最悪疼痛:7/10、そしてWHOパフォーマンスステータス:3であった。RMは2回の悪心発作(3)を経験し、いずれの場合も10mgのマキサロン(maxalon)を要した。彼の食欲(2)および集中力(2)は、時折低下した。彼は、便秘(3)で、慣例の緩下剤を与えられた。RMは、疼痛が依然として存在しているにもかかわらず、フルピルチンは「良かった(been good)」と感じており、緩和ケア病棟から退院した後も従来の用量を続けたいと希望した。
【0195】
下の表7は、この症例研究での測定値をまとめる。表7は、2つのページにまたがる。
(表7)


星印()は、1日目に比較したX日目の改善を示す。
【0196】
実施例6
骨肉腫の疼痛のラットモデル
Sprague-Dawleyラットは、同系のMRMT-1ラット乳腺癌細胞の脛骨内注射を受けて、以下を含む、疼痛の指標である行動上の徴候を発症した。機械的異痛症、後足の間にある重量の相違、および機械的痛覚過敏。骨肉腫および骨に対する構造的障害の発症は、放射線解析、鉱物濃度の定量的測定および組織学によってモニターされる。3×103または3×104個の同系のMRMT-1細胞の脛骨内注射によって、脛骨の境界内の腫瘍の急速な増殖が生じ、これが骨の深刻な再構築を生じる。放射線写真によって、3×103個のMRMT-1細胞の投与後10〜14日までに皮質骨および柵状織に対する広範な障害が示され、そして20日目までに、その障害は、脛骨の完全性を脅威に曝している。鉱物濃度および鉱物密度の両方とも癌状態の骨では有意に低下するが、腫瘍周囲の緻密骨における破骨細胞数は不変のままであった。酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ染色によって、腫瘍内の破骨細胞のものに類似している、多数の多核性細胞が明らかになる。加熱して死滅させたMRMT-1細胞の注射後には、腫瘍増殖は観察されない。3×103または3×104個のMRMT-1細胞、加熱死滅細胞または媒体の脛骨内注射では、19〜20日間にわたって体重およびコア温度の変化は示されない。生きたMRMT-1細胞または加熱死滅MRMT-1細胞での注射後の動物の一般的活動度は、MRMT-1細胞の脛骨内注射を受けた対照群のラットの活動度よりも高く、対照群のラットは、それぞれ3×103または3×104個の細胞の注射後、12〜14日または10〜12日で開始して、機械的異痛症および機械的痛覚過敏の漸進的発症を示し、罹患した肢の重量が減少する。これらの症状は、加熱殺傷細胞または媒体を受容したラットでは観察されない。実験動物および対照の動物は各々、3つの群、1、2、3に分けられる。ここで、フルピルチンおよびモルフィンで治療された、3×103または3×104個の同系のMRMT-1細胞を注射された動物は、対照動物または生理食塩水で治療された動物のいずれかと比較して示された。
【0197】
実施例7
疼痛の動物モデル
脊髄損傷モデル
中枢疼痛モデルを用いて、フルピルチンとモルフィンの有無の両方の鎮痛効果を試験する。ほとんどの中枢疼痛モデルは、脊髄損傷(spinal cord injury)(SCI)に基づく。感覚不全は、SCI患者が立ち向かわなければならない主要なライフスタイルの修正的変化の1つである。自発痛および誘導痛の両方とも、外傷性または虚血性のSCIの高頻度の後遺症である。
【0198】
神経腫モデル
マウスを坐骨神経に沿った複数の位置で完全な神経切除に供し、これによって全ての方向の再生的な神経発芽からなる、神経腫の発症を近位神経基部で生じる。このような手術に供されたマウスは代表的には、自己を攻撃し、除神経された脚を棄損する。次いで、このマウスを以下の3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値(paw withdrawal threshold)または足のフリック潜時(paw flick latency)を用いてモニターする。
【0199】
慢性狭窄障害モデル(CCIまたはBennettモデル)
ラットは、大腿中央部レベルで4つの手術用縫合糸(chromic gut)結紮で坐骨神経(左側または右側)をゆるく縛る。これらのラットは、自発痛の行動的徴候、例えば、軽度から中度の自己損傷、警戒、過剰になめることおよび同側の後足の跛行、ならびに損傷側に体重を掛けることを避けることを示す。有害な熱および機械的刺激に起因する痛覚過敏が、冷感異痛症および接触性異痛症と同様に検出可能である。全ての疼痛徴候は、この研究の全期間にわたって(2ヶ月にわたる)持続した。次いで、ラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0200】
部分的坐骨神経結紮モデル(PSLまたはSeltzerモデル)
ラットは、坐骨神経の厚みの1/3〜1/2が結紮中に捕捉されるように、大腿高部レベルで同側の坐骨神経の結紮に供する。このようなラットは、結紮の時間とともに、フォン・フライ・ヘア(von Frey hair)刺激に対する異痛症の徴候、ならびに熱刺激および機械的侵害刺激の両方に対する痛覚過敏を示し;その症状は7ヶ月間にわたって継続した。結紮されたラットはまた、足の警戒および損傷側をなめるという形態で、自発痛の徴候を示す。この誘導された疼痛は、両側性のパターンに発達され得る。次いでこのラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0201】
L5/L6脊髄神経結紮モデル(SNL)
このモデルでは、マウスは、後根神経節に対して遠い位置でL5およびL6脊髄神経の片側のかつ強固な結紮に供する。異痛症および痛覚過敏は、結紮後すぐに発症し、そして少なくとも4ヶ月間継続する。自発痛の行動的徴候(警戒、なめること、および同側の後足をあげること)があるが、SNLには自己損傷は存在しない。次いでマウスを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0202】
L5脊髄神経結紮
ラットをL5結紮に供して、長期の痛覚過敏および機械的異痛症を示す。次いでラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0203】
坐骨神経の凍結神経溶解(cryoneurolysis)モデル(SCN)
ラットを坐骨神経の凍結に供して、このモデルでの神経損傷を生じる。SCNは、自己損傷および接触性異痛症を誘導し、これは15〜21日間継続する。次いで、ラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0204】
下部尾部体幹(inferior caudal trunk)切除モデル
ラットをS3神経とS4神経との間の下部尾部体幹の片側の切除に供する。機械的な異痛症および冷感または熱感の痛覚過敏は、損傷後1日以内に発症して、数週間にわたって継続し得る。次いで、ラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0205】
坐骨炎症神経炎モデル(SIN)
ラットの坐骨神経周囲にザイモサンを注射する。このモデルでは、異痛症は、注射後数時間でみられる。次いで、ラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0206】
癌疼痛モデル
癌関連の疼痛は、腫瘍炎症または神経、神経叢もしくは神経根の圧迫、腫瘍から放出される免疫反応性および侵害促進性の物質によって、あるいは治療(化学療法、放射線療法または外科手術)によって生じ得る。
【0207】
化学療法誘導性末梢神経障害モデル
ラットに、ビンカ・アルカロイド、白金化合物もしくはタキソール、またはこれも神経障害を誘導し得る他の化学療法剤のいずれかを注射する。次いで、ラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0208】
ビンクリスチン誘導性末梢神経障害モデル(VIPN)
ラットに10日間毎日ビンクリスチンを注射して(薬物5日連続+薬物なし2日+さらに薬物5日)、痛覚過敏の生成を生じた。次いでラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0209】
または、ラットを、連続の静脈内ビンクリスチン注入に供して、用量依存性の接触性異痛症を誘導させる。次いでラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0210】
タキソール誘導性末梢神経障害モデル(TIPN)
パクリタキセル(Paclitaxel)(Taxol)は、太平洋のイチイの木Taxus brevifolia由来の抗新生物剤であり、卵巣腫瘍および乳房腫瘍、および非小細胞肺癌を含む種々の癌を治療するために用いられる。タキソールは、チューブリンに(ビンカ・アルカロイドによって用いられるのとは異なる部位で)結合し、そして微小管の重合をブロックする。その有効性は、用量依存性の重篤な疼痛性末梢神経障害の発生によって制限される。タキソール神経障害の頻度は、50〜90%であると見積もられ、そして手および足の感覚不全(例えば、知覚麻痺、刺痛および灼熱痛)によって特徴付けられる。ラットにタキソールを注射して、神経障害性の疼痛を生じた。次いでラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0211】
シスプラチン誘導性末梢神経障害モデル(CIPN)
シスプラチンは、卵巣癌および小細胞肺癌を治療するために用いられる。シスプラチンは、用量依存性でかつ治療期間依存性であり、そして10年以上にわたって持続し得る多発神経障害を誘導する。ラットは、機械的異痛症および痛覚過敏を生じるシスプラチンの反復される毎日の注射(i.p.)に供される。次いで、ラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0212】
癌侵襲疼痛(Cancer invasion pain)(CIP)モデル
末梢神経障害および神経炎モデルを用いて、癌侵襲に起因する末梢神経傷害を刺激し得る。Meth A肉腫細胞を、BALB/cマウスの坐骨周囲に移植する。これらの動物は神経の増殖および圧縮の徴候を発症する。自発痛の徴候(足を上げる)も可視である。次いでこのラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0213】
骨肉腫疼痛モデル
骨肉腫疼痛は、最も一般的な癌関連疼痛の1つである。骨肉腫は、原発性であっても、または乳癌、前立腺癌、卵巣癌および肺癌由来の転移性であり得る。灼熱感および刺痛感を伴う深部疼痛が、しばしば骨肉腫の患者によって訴えられる。
【0214】
マウス大腿骨肉腫疼痛モデル
骨癌を誘導するために、溶骨性マウス肉腫NCTC2472細胞を大腿骨の骨髄腔に注射する。組織適合性について、このモデルにはC3H/HeJマウスを用いる。肉腫注射の5日以内に、癌誘導性の骨破壊および破骨細胞形成が開始する。自発痛(痛覚行動、自発性の尻込み)および誘導痛(触診誘導の尻込み)の徴候、ならびに神経化学マーカーの変化は14日以内に生じ、そして破骨細胞形成抑制因子(オステオプロテゲリン)(osteoprotegerin)によって減弱され得る。次いでマウスを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0215】
マウス踵骨骨肉腫疼痛(Mouse calcaneus bone cancer pain)(CBC)
NCTC2472細胞をマウスの踵骨に注射する。骨溶解、自発痛(足をなめること)および誘導性疼痛(機械的異痛症および冷感異痛症)は、移植後6日で生じ、そして少なくとも16日間にわたって継続する。次いでラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0216】
ラット脛骨骨肉腫(Rat tibia bone cancer)(TBC)モデル
MRMT-1ラット乳腺癌腫細胞を、Sprague Dawleyラットの脛骨に注射する。骨破壊は、腫瘍細胞注射の10日以内に検出される。異痛症および機械的痛覚過敏の発現は、用量(腫瘍細胞数)依存性であって、腫瘍細胞注射の10〜12日以内に生じる。次いでラットを3つの群に分ける。1)フルピルチン単独;2)フルピルチンおよびモルフィン;そして3)生理食塩水。次いで、この動物を、疼痛についての標準的な行動試験、例えば、足引っ込め閾値または足のフリック潜時を用いてモニターする。
【0217】
本明細書に記載される本発明が、詳細に記載されるもの以外の変化および改変を受け入れる余地があることは当業者に理解される。本発明は、このような変化および改変の全てを含むことが理解される。本発明はまた、本明細書に言及されるかまたは示される、全ての段階、特徴、組成物および化合物を、個々にもしくは集合的に、そしてこのような段階または特徴のいずれかおよび任意の2つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0218】
文献

【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】雄性Wistarラットにおけるカラゲナン誘導性痛覚過敏についての時間応答曲線のグラフ表示であって、ここでは肢のフリック潜時(秒)を、生理食塩水対照(菱型)、フルピルチン5mg/kg(四角)、フルピルチン10mg/kg(星形)、モルフィン0.8mg/kg(垂直のバー)、モルフィン1.6mg/kg(水平のバー)、フルピルチン5mg/kgとモルフィン0.4mg/kgとの組み合わせ(四角)およびフルピルチン10mg/kgとモルフィン0.4mg/kgとの組み合わせ(丸)について、時間に対してプロットしている。
【図2】雄性Wistarラットにおいて電流閾値(Electrical Current Threshold)(ECT)で評価した抗侵害受容についての時間応答曲線のグラフ表示であって、ここでは対照に対する比として標準化したECT値を、生理食塩水対照(三角)、フルピルチン5mg/kg(菱型)、モルフィン0.4mg/kg(丸)、およびフルピルチン5mg/kgとモルフィン0.4mg/kgの組み合わせ(四角)について、時間に対してプロットしている。
【図3】雄性Wistarラットにおけるストレプトゾトシン誘導性糖尿病性神経障害における抗侵害受容作用のグラフ表示であって、ここでは引っ込め閾値(paw withdrawal threshold)(グラム)を、生理食塩水対照(菱型)、フルピルチン5mg/kg(四角)、フルピルチン10mg/kg(三角)、モルフィン1.6mg/kg(十字)、モルフィン3.2mg/kg(星形)、フルピルチン5mg/kgとモルフィン3.2mg/kgとの組み合わせ(黒塗り四角)およびフルピルチン10mg/kgとモルフィン1.6mg/kgの組み合わせ(白抜き四角)について、白抜き丸で示される体重の適合した非糖尿病対照の結果とともに、時間ゼロを試験薬物注入の時間として、時間(分)に対してプロットしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における神経障害性の疼痛または炎症性の疼痛に対する鎮痛応答を誘導するための方法であって、該哺乳動物に対して、フルピルチンまたは薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログを、疼痛の感覚のレベルを軽減するか、さもなくば回復させるのに有効な量投与する段階を含む、方法。
【請求項2】
フルピルチンまたは薬学的に許容される塩が投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
フルピルチンと同時の、個別の、または連続した鎮痛化合物の投与をさらに含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
鎮痛化合物がオピオイドである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
オピオイドが、以下からなるリストより選択される、請求項4記載の方法:フェンタニル、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、モルフィン、デソモルフィン、アポモルフィン、ジアモルフィン、ペチジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ペンタゾシン、デキストロモラミド、オキシモルホン、ヒドロモルホン、ジヒドロモルフィン、ノスカピン、パパベリン、パパベレタム、アルフェンタニール、ブプレノルフィンおよびトラマドール、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、ホモログまたはアナログ。
【請求項6】
オピオイドがモルフィンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
フルピルチンおよびオピオイドと同時の、個別の、または連続した別の活性物質の投与をさらに含む、請求項4または5または6いずれか一項記載の方法。
【請求項8】
活性物質が、抗癌剤、鎮痛剤、p-糖タンパク質阻害剤、中枢神経系に作用する薬物、筋弛緩薬、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、抗炎症剤、抗微生物剤、ホルモン、利尿剤、眼科剤もしくは心血管系薬、またはそれらの組み合わせである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
他の活性物質が、以下からなるリストより選択される、請求項8記載の方法:アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、ジクロフェナク、インドプロフェン、ニトログリセリン、プロパノロール、バルプロエート、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロロプロマジン、レセルピン、メチルドパ(methyl-dopa)、ジヒドロキシフェニルアラニン、α-メチルドパヒドロクロリドのプロバルオキシルオキシエチル(provaloxyloxyethyl)エステル、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、乳酸鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミン、遮断薬およびそれらの薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ。
【請求項10】
オピオイドが、フルピルチンの存在下で顕性の鎮静(overt sedation)を誘導しない、請求項4〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
フルピルチンが、約0.5mg/kg体重〜約20mg/kg体重の量で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
神経障害性疼痛または炎症性疼痛を有する哺乳動物において鎮痛応答を誘導するための送達システムであって、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ;オピオイド;および任意で1つまたは複数のさらなる活性物質の組み合わせ製剤または個別製剤を含む、送達システム。
【請求項14】
フルピルチンまたは薬学的に許容される塩が投与される、請求項13記載の送達システム。
【請求項15】
フルピルチンと同時の、個別の、または連続した鎮痛化合物の投与をさらに含む、請求項13または14記載の送達システム。
【請求項16】
鎮痛化合物がオピオイドである、請求項15記載の送達システム。
【請求項17】
オピオイドが、以下からなるリストより選択される、請求項16記載の送達システム:フェンタニル、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、モルフィン、デソモルフィン、アポモルフィン、ジアモルフィン、ペチジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ペンタゾシン、デキストロモラミド、オキシモルホン、ヒドロモルホン、ジヒドロモルフィン、ノスカピン、パパベリン、パパベレタム、アルフェンタニール、ブプレノルフィンおよびトラマドール、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、ホモログまたはアナログ。
【請求項18】
オピオイドがモルフィンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項17記載の送達システム。
【請求項19】
フルピルチンおよびオピオイドと同時の、個別の、または連続した別の活性物質の投与をさらに含む、請求項16または17または18いずれか一項記載の送達システム。
【請求項20】
活性物質が、抗癌剤、鎮痛剤、p-糖タンパク質阻害剤、中枢神経系に作用する薬物、筋弛緩薬、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、抗炎症剤、抗微生物剤、ホルモン、利尿剤、眼科剤もしくは心血管系薬、またはそれらの組み合わせである、請求項19記載の送達システム。
【請求項21】
他の活性物質が、以下からなるリストより選択される、請求項20記載の送達システム:アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、ジクロフェナク、インドプロフェン、ニトログリセリン、プロパノロール、バルプロエート、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロロプロマジン、レセルピン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、α-メチルドパヒドロクロリドのプロバルオキシルオキシエチルエステル、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、乳酸鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミン、遮断薬およびそれらの薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ。
【請求項22】
オピオイドが、フルピルチンの存在下で顕性の鎮静を誘導しない、請求項13記載の送達システム。
【請求項23】
哺乳動物における疾患または生理学的状態を治療する方法であって、該疾患または状態の症状が神経障害性疼痛または炎症性疼痛であり、該方法は、疾患または生理学的状態を治療するのに有効な量の物質、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの量を該哺乳動物に対して投与する段階を含む、方法。
【請求項24】
フルピルチンまたは薬学的に許容される塩が投与される、請求項23記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項25】
フルピルチンと同時の、個別の、または連続した鎮痛化合物の投与をさらに含む、請求項23または24記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項26】
鎮痛化合物がオピオイドである、請求項25記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項27】
オピオイドが、以下からなるリストより選択される、請求項26記載の疾患または生理学的状態を治療する方法:フェンタニル、オキシコドン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、モルフィン、デソモルフィン、アポモルフィン、ジアモルフィン、ペチジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ペンタゾシン、デキストロモラミド、オキシモルホン、ヒドロモルホン、ジヒドロモルフィン、ノスカピン、パパベリン、パパベレタム、アルフェンタニール、ブプレノルフィンおよびトラマドール、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、ホモログまたはアナログ。
【請求項28】
オピオイドがモルフィンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項27記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項29】
フルピルチンおよびオピオイドと同時の、個別の、または連続した別の活性物質の投与をさらに含む、請求項26または27または28いずれか一項記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項30】
活性物質が、抗癌剤、鎮痛剤、p-糖タンパク質阻害剤、中枢神経系に作用する薬物、筋弛緩薬、抗パーキンソン病剤、抗アルツハイマー病剤、抗炎症剤、抗微生物剤、ホルモン、利尿剤、眼科剤もしくは心血管系薬、またはそれらの組み合わせである、請求項29記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項31】
他の活性物質が、以下からなるリストより選択される、請求項30記載の疾患または生理学的状態を治療する方法:アスピリン、インドメタシン、ナプロキセン、フェノプロフェン、スリンダク、ジクロフェナク、インドプロフェン、ニトログリセリン、プロパノロール、バルプロエート、チモロール、アテノロール、アルプレノロール、シメチジン、クロニジン、イミプラミン、レボドパ、クロロプロマジン、レセルピン、メチルドパ、ジヒドロキシフェニルアラニン、α-メチルドパヒドロクロリドのプロバルオキシルオキシエチルエステル、テオフィリン、グルコン酸カルシウム、乳酸鉄、ビンカミン、ジアゼパム、フェノキシベンザミン、遮断薬およびそれらの薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログまたはアナログ。
【請求項32】
オピオイドが、フルピルチンの存在下で顕性の鎮静を誘導しない、請求項26〜31のいずれか一項記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項33】
フルピルチンが、約0.5mg/kg体重〜約20mg/kg体重の量で投与される、請求項23記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項34】
哺乳動物がヒトである、請求項23記載の疾患または生理学的状態を治療する方法。
【請求項35】
疾患または状態が、癌、関節炎、背痛、骨折または筋挫傷である、請求項23記載の方法。
【請求項36】
以下を含む、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの徐放性または持続放出性の製剤:
(a)有効量の活性物質を含み、かつ規定された幾何的形態を有するデポジット・コア(deposit-core)、および
(b)少なくとも活性物質、および以下からなる群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む該デポジット・コアに適用される、支持プラットフォーム:
(i)ゲル化可能ポリマー材料に対する膨潤性ポリマー材料の比が1:9〜9:1の範囲内である、水または液体との接触の際に膨潤するポリマー材料およびゲル化可能ポリマー材料、ならびに
(ii)膨潤特性およびゲル化特性の両方を有する単一のポリマー材料であって、支持プラットフォームが弾性の支持体であり、該デポジット・コアに適用され、その結果、これがデポジット・コアの表面を部分的に覆い、かつデポジット・コアの水和による変化を伴い、かつ液体中で緩徐に可溶性であり、かつ/または緩徐にゲル化する、単一のポリマー材料。
【請求項37】
オピオイド、および、任意で1つまたは複数の他の活性物質をさらに含む、請求項36記載の徐放性または持続放出性の製剤。
【請求項38】
支持プラットフォームが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項35または36記載の徐放性または持続放出性の製剤。
【請求項39】
支持プラットフォームが、可塑化剤、結合剤、親水性物質および疎水性物質を含む、請求項35または36または37または38いずれか一項記載の徐放性または持続放出性の製剤。
【請求項40】
哺乳動物における鎮痛応答を誘導するための物質であって、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意でオピオイドといった鎮痛化合物、および任意で状態、疾患または病状を治療するための活性化合物を含む物質であり、1つの特定の例として、本発明において、癌のための治療プロトコールが意図され、プロトコールが、抗癌剤の投与および/または放射線療法を、フルピルチンおよび任意でオピオイドまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログと組み合わせて含む、物質。
【請求項41】
神経障害性の疼痛または炎症性の疼痛の治療のためのオピオイドと組み合わせて使用するための薬剤の製造における、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログの使用。
【請求項42】
神経障害性の疼痛または炎症性の疼痛の治療のための1つまたは複数の薬剤の製造における、フルピルチンまたはその薬学的に許容される塩、誘導体、ホモログもしくはアナログ、および任意でオピオイド、およびさらに任意で抗癌剤のような活性物質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−513981(P2007−513981A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544174(P2006−544174)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001772
【国際公開番号】WO2005/058319
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506207738)シーエヌエスバイオ ピーティーワイ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】