説明

施設管理システムおよび方法

【課題】各区画を移動した利用者の動線に応じて、利用者の利用者レベルを動的に変更する。
【解決手段】管理装置40の判定処理部46は、リーダ端末22からの判定要求により、入室判定処理を実行する。ドアIDと対応する区画20の区画レベルと、利用者レベル記憶部44Bから取得した利用者IDに基づく利用者レベルとを比較し、利用者レベルが区画レベル以上であった場合は、入室を許可し、電気錠を開錠する。それと同時に、利用者レベル記憶部44Bのうち利用者の利用者レベルを、区画20の区画レベルと等しい値に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設管理技術に関し、特に利用者の入退履歴に応じて入室判定を変更する施設管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
施設内に設けた各区画について、これら区画を利用する利用者の入退室を管理する施設管理システムでは、個人を識別するための個人識別番号を記録したIDカードなどの記録媒体を利用者に予め配布しておき、利用者が任意の区画で入退室する際、当該区画の出入口に設けられたカードリーダなどのリーダ端末でIDカードから読み取った個人識別番号に基づいて、当該利用者に対する入退室可否を判定し、入退可の判定に応じて、当該区画のドアに設けられた電気錠を開錠するものとなっている(例えば、特許文献1など参照)。
【0003】
また、このような施設管理システムでは、各区画への入退室を詳細に判定するため、各区画に対して、セキュリティの強度を表す基準として多段階のセキュリティレベルを設けるとともに、各利用者にも多段階のセキュリティレベルを付与し、これらセキュリティレベルを比較することにより、各区画に対する利用者の入退可否を判定するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−280752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような施設管理システムでは、通常、利用者の入室を制限する制限区画へ入室できる利用者であっても、当該利用者が特殊区画へ入室した場合には、その後、制限区画への入室を禁止したい場合がある。例えば、特定の生物を扱う生物実験室に利用者が入室した場合、他の生物を扱う生物実験室への入室を禁止することがある。また、放射線を扱う放射線室に利用者が入室した場合には、制限区画への入室を禁止することもある。
【0006】
したがって、このような場合には、利用者に対するセキュリティレベルを一時的に変更する必要がある。しかしながら、このような従来技術では、各区画のセキュリティレベルと利用者に付与したセキュリティレベルと関係は、システム管理者による設定作業により予め固定的に設定されていることから、利用者に対する入室判定を柔軟に変更できないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、各区画を移動した利用者の動線に応じて、当該利用者の利用者レベルを動的に変更できる施設管理技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる施設管理システムは、施設に設けられた区画のセキュリティの高さ示す区画レベルと、区画を利用する利用者のセキュリティの高さ示す利用者レベルとを比較することにより、区画に対する利用者の入室可否を判定する施設管理システムであって、入室を管理する区画ごとに区画レベルを記憶する区画レベル記憶部と、区画を利用する利用者ごとに利用者レベルを記憶する利用者レベル記憶部と、各区画に設けられて、利用者操作に応じて当該区画に対する当該利用者の入室可否判定を要求する判定要求を送信するリーダ端末と、リーダ端末からの判定要求に応じて、区画レベル記憶部から取得した区画の区画レベルと利用者レベル記憶部から取得した利用者の利用者レベルとを比較することにより、当該区画に対する当該利用者の入室可否を判定し、この判定結果に基づいて当該区画に設けられている電気錠の開閉を指示する判定処理部とを備え、判定処理部で、判定結果が入室可を示す場合、利用者レベル記憶部のうち利用者の利用者レベルを区画レベルと等しい値に変更するようにしたものである。
【0009】
この際、区画レベル記憶部で、区画のうち利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更する初期化ポイントを予め記憶し、判定処理部で、判定時、利用者レベルが無制限レベルの場合には区画のすべてに対して入室可と判定し、判定結果が入室可を示す場合であって、かつ区画が初期化ポイントである場合、利用者レベル記憶部のうち利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明にかかる設備管理方法は、施設に設けられた区画のセキュリティの高さ示す区画レベルと、区画を利用する利用者のセキュリティの高さ示す利用者レベルとを比較することにより、区画に対する利用者の入室可否を判定する施設管理システムで用いられる施設管理方法であって、区画レベル記憶部が、入室を管理する区画ごとに区画レベルを記憶する区画レベル記憶ステップと、利用者レベル記憶部が、区画を利用する利用者ごとに利用者レベルを記憶する利用者レベル記憶ステップと、リーダ端末が、各区画に設けられて、利用者操作に応じて当該区画に対する当該利用者の入室可否判定を要求する判定要求を送信する操作ステップと、判定処理部が、リーダ端末からの判定要求に応じて、区画レベル記憶部から取得した区画の区画レベルと利用者レベル記憶部から取得した利用者の利用者レベルとを比較することにより、当該区画に対する当該利用者の入室可否を判定し、この判定結果に基づいて当該区画に設けられている電気錠の開閉を指示する判定処理ステップとを備え、判定処理ステップで、判定結果が入室可を示す場合、利用者レベル記憶部のうち利用者の利用者レベルを区画レベルと等しい値に変更するようにしたものである。
【0011】
この際、区画レベル記憶ステップで、区画のうち利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更する初期化ポイントを予め記憶し、判定処理ステップで、判定時、利用者レベルが無制限レベルの場合には区画のすべてに対して入室可と判定し、判定結果が入室可を示す場合であって、かつ区画が初期化ポイントである場合、利用者レベル記憶部のうち利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各区画を移動した利用者の動線に応じて、当該利用者の利用者レベルを動的に変更することができる。これにより、利用者の入室が制限されている制限区画への入室可否を、当該利用者が特殊区画へ入室したか否かに応じて変更することができ、極めて柔軟な入室判定を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態にかかる施設管理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる区画情報の構成例である。
【図3】第1の実施の形態にかかる利用者情報の構成例である。
【図4】第1の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作例を示す説明図である。
【図6】第2の実施の形態にかかる区画情報の構成例である。
【図7】第2の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる施設管理システムについて説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる施設管理システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
この施設管理システム1には、IDカード10、リーダ端末22、電気錠23、制御装置30、および管理装置40が含まれている。各区画20のドア21に対して設置されているリーダ端末22および電気錠23は、通信回線L1を介してそれぞれデータ通信可能に制御装置30と接続されている。また、管理装置40には、通信回線L2を介して制御装置30がデータ通信可能に接続されている。この際、施設管理システムの規模に応じて、制御装置30を複数設けてもよい。
【0016】
IDカード10は、メモリカードやICカードなどの携帯可能な情報処理用のカードからなり、当該IDカードを所持する利用者の通行可否を判定するために必要な情報として、利用者に固有の利用者IDなどの利用者識別情報を記録する機能を有している。
【0017】
リーダ端末22は、区画20のドア21ごとに併設された、カードリーダなどの入力処理装置からなり、カードスロットへIDカードを挿入し(接触型)、あるいはカードアンテナへIDカードをかざすことにより(非接触型)、利用者が提示したIDカード10から利用者IDなどの利用者識別情報を読み出す機能と、当該利用者識別情報と予め自己に設定されている当該ドア21に固有のドアIDとを含む判定要求を、通信回線L1を介して制御装置30へ送信する機能とを有している。
【0018】
電気錠23は、区画20のドア21ごとに設けられた電動式の錠前からなり、通信回線L1を介して受信した制御装置30からの開錠/施錠の指示に応じて、ドア21の開錠/施錠を行う機能を有している。なお、電気錠23は、常時、施錠されており、制御装置30から開錠指示が到来した場合にのみ所定期間だけ開錠するものとする。
【0019】
制御装置30は、設備の管理・監視を行う各種制御システムで用いられるコントローラなどの制御装置からなり、通信回線L1を介して各区画20に設けられたリーダ端末22からの判定要求を受信し、通信回線L2を介して管理装置40へ通知する機能と、管理装置40からの指示に応じて、対応する区画20のドア21に設けられた電気錠23を制御する機能とを有している。
【0020】
管理装置40は、全体としてサーバ装置やパソコンなどの情報処理装置からなり、制御装置30を介したリーダ端末22からの判定要求に応じて、当該区画における利用者の入退室可否を判定し、当該区画のドアに関する開錠制御を行う機能とを有している。
管理装置40には、主な機能部として、通信I/F部41、操作入力部42、画面表示部43、記憶部44、区画レベル記憶部44A、利用者レベル記憶部44B、情報管理部45、および判定処理部46が設けられており、これら機能部は、内部バスを介して相互にデータやり取り可能に接続されている。
【0021】
通信I/F部41は、通信回線L2を介して制御装置30などの外部装置とデータ通信を行う機能を有している。
操作入力部42は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータ操作を検出して、情報管理部45などの各種機能部へ出力する機能を有している。
画面表示部43は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、情報管理部45などの各種機能部から出力された各種情報を画面表示する機能を有している。
記憶部44は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、管理装置40での処理動作に用いる各種情報やプログラムを記憶する機能を有している。
【0022】
区画レベル記憶部44Aは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、入退室を管理する区画20ごとに、当該区画を識別するための区画IDと、当該区画20のセキュリティの高さ示す区画レベルとの組を、区画情報として記憶する記憶部である。
図2は、第1の実施の形態にかかる区画情報の構成例である。ここでは、区画20ごとに、区画IDおよび区画レベルと、当該区画20に設けられているドア21のドアIDとの組が登録されている。本実施の形態では、区画レベルの値が大きいほどセキュリティが厳重な区画を示している。
【0023】
利用者レベル記憶部44Bは、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、区画20を利用する利用者ごとに、当該利用者を識別するための利用者IDなどの利用者識別情報と、当該利用者のセキュリティの高さを示す利用者レベルとの組を記憶する記憶部である。
図3は、第1の実施の形態にかかる利用者情報の構成例である。ここでは、利用者ごとに、利用者IDと利用者レベルとの組が登録されている。本実施の形態では、利用者レベルの値が大きいほどセキュリティが厳重な区画20への入室が許可されているものとし、区画レベルの初期値として、いずれの区画レベルの区画20にも入室可能な無制限レベルを示す「0」が設定されるものとする。
【0024】
情報管理部45は、CPUとプログラムとが協働してなる演算処理部により構成されており、オペレータによる操作入力部42での区画情報変更操作に応じて、区画レベル記憶部44Aで記憶している区画情報を変更して保存する機能と、オペレータによる操作入力部42での利用者情報変更操作に応じて、利用者レベル記憶部44Bで記憶している利用者情報を変更して保存する機能とを有している。
【0025】
判定処理部46は、CPUとプログラムとが協働してなる演算処理部により構成されており、制御装置30を介して通信I/F部41で受信したリーダ端末22からの判定要求に応じて、判定要求で指定されたドアIDに基づき区画レベル記憶部44Aから取得した当該区画20の区画レベルと、判定要求指定された利用者IDに基づき利用者レベル記憶部44Bから取得した利用者レベルとを比較し、この比較結果に応じて当該利用者に対する当該区画20への入室可否を判定する機能と、入室可の判定結果に応じて、通信I/F部41から制御装置30を介して当該区画20の電気錠23へ、開錠を指示する機能とを有している。
【0026】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作について説明する。図4は、第1の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作を示すフローチャートである。
管理装置40の判定処理部46は、制御装置30を介して通信I/F部41で受信したリーダ端末22からの判定要求に応じて、図4の入室判定処理を実行する。
【0027】
まず、判定処理部46は、受信した判定要求に含まれているドアIDに基づいて、当該ドアIDと対応する区画20の区画レベルを、区画レベル記憶部44Aから取得し(ステップ100)、同じく受信した判定要求に含まれている利用者IDに基づいて、当該利用者の利用者レベルを、利用者レベル記憶部44Bから取得する(ステップ101)。
【0028】
次に、判定処理部46は、区画レベルと利用者レベルとを比較し(ステップ102)、利用者レベルが区画レベルより低い場合(ステップ102:NO)、判定処理部46は、当該区画20に対する当該利用者の入室は不可と判定し、一連の入室判定処理を終了する。これにより、対応するドア21の電気錠23は施錠されたままとなり、利用者は区画20へ入室することはできない。
【0029】
一方、利用者レベルが区画レベル以上である場合(ステップ102:YES)、判定処理部46は、当該区画20に対する当該利用者の入室は可能と判定し、通信I/F部41から制御装置30を介して対応するドア21の電気錠23へ開錠指示を送信する(ステップ103)。これにより、ドア21の電気錠が開錠されて、利用者は区画20へ入室することが可能となる。
【0030】
続いて、判定処理部46は、利用者レベル記憶部44Bのうち、当該利用者IDの利用者レベルを当該区画20の区画レベルと等しい値に変更し(ステップ104)、一連の入室判定処理を終了する。これにより、利用者レベルが当該利用者が入室した区画20の区画レベルと等しいレベルに変更されるため、この後の、他の区画への入室判定において、当該区画20より高い区画レベルの区画への入室が禁止されることになる。
【0031】
[第1の実施の形態の動作例]
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作例について説明する。図5は、第1の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作例を示す説明図である。
【0032】
図5の例では、施設に区画R1〜R6からなる6つの区画20が共通区画に接して設けられている。これら区画R1〜R6には、前述の図2に示したように、区画レベルが予め設定されており、区画R1,R6にはレベル「1」、区画R2,R5にはレベル「2」、区画R3,R4にはレベル「3」がそれぞれ設定されている。
【0033】
まず、利用者が共用区画から区画R3へ入室する場合について説明する。区画R3入室前の状態において、利用者の利用者レベルは無制限レベルであるレベル「0」に初期化されている場合、区画R3への入室判定において入室可と判定される。これにより、利用者は区画R3への入室が許可される。
【0034】
次に、利用者が共用区画から区画R5へ入室した後、区画R3へ入室する場合について説明する。この際、区画R5から出た利用者が区画R3へ入室することを禁止するため、区画R3の区画レベルは、区画R5の区画レベル「2」より高いレベル「3」が設定されている。
まず、区画R5入室前の状態において、利用者の利用者レベルは無制限レベルであるレベル「0」に初期化されている場合、区画R5への入室判定において入室可と判定される。これにより、利用者は区画R5への入室が許可される。
【0035】
この区画R5への入室に応じて、利用者の利用者レベルがレベル「0」から、区画R5の区画レベルであるレベル「2」に変更される。したがって、この後、利用者が区画R5から共用区画に退室して、区画R3へ入室する際、利用者の利用者レベルがレベル「2」に変更されていることから、区画レベル「3」の区画R3への入室が禁止される。
【0036】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、判定処理部46により、入室可否の判定結果が入室可を示す場合、利用者レベル記憶部44Bのうち利用者の利用者レベルを、当該区画20の区画レベルと等しい値に変更するようにしたので、各区画20を移動した利用者の動線に応じて、当該利用者の利用者レベルを動的に変更することができる。
【0037】
これにより、利用者の入室が制限されている制限区画への入室可否を、当該利用者が特殊区画へ入室したか否かに応じて変更することができ、極めて柔軟な入室判定を実現することが可能となる。
【0038】
したがって、図5の例では、区画R5を特定の生物を扱う生物実験室や放射線を扱う放射線室などの特殊区画とし、区画R3を利用者の入室が制限される制限区画とした場合、特殊区画へ入室していない利用者については、制限区画への入室を許可し、特殊区画に入室した利用者については、制限区画への入室を禁止することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態では、管理装置40において、利用者の動線に応じて、当該利用者の利用者レベルを動的に変更する場合を例として説明したが、施設管理システム1内に設けられた制御装置30などの他の装置で実行してもよい。例えば、管理装置40のうち、判定処理部46などの必要とされる機能部を制御装置30に設け、予め区画レベル情報を管理装置40から制御装置30に展開しておき、利用者レベルの変化をシステム内の通信で共有するなどにより、制御装置30で利用者レベルを動的に変更するようにしてもよい。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる施設管理システムについて説明する。
第1の実施の形態では、区画20への入室可の判定に応じて利用者の利用者レベルを、当該区画20の区画レベルと等しい値に変更する場合について説明した。本実施の形態では、変更した利用者レベルを初期化する場合について説明する。
【0041】
本実施の形態において、区画レベル記憶部44Aは、区画のうち利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更する初期化ポイントを予め記憶している。
図6は、第2の実施の形態にかかる区画情報の構成例である。ここでは、区画20ごとに、区画ID、区画レベル、およびドアIDと、当該区画が初期化ポイントであるか否かを示す初期化ポイントフラグとの組が登録されている。初期化ポイントフラグにおいて、値「1」は当該区画が初期化ポイントであることを示し、値「0」は当該区画が初期化ポイントでないことを示している。
【0042】
判定処理部46は、入室判定時、利用者レベルが無制限レベルの場合には区画のすべてに対して入室可と判定する機能と、判定結果が入室可を示す場合であって、かつ区画が初期化ポイントである場合、利用者レベル記憶部44Bのうち利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更する機能とを有している。
本実施の形態にかかる施設管理システム1のうち、このほかの構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0043】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作について説明する。図7は、第2の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作を示すフローチャートであり、前述した図4と同じまたは同等部分には、同一符号を付してある。
管理装置40の判定処理部46は、制御装置30を介して通信I/F部41で受信したリーダ端末22からの判定要求に応じて、図7の入室判定処理を実行する。
【0044】
まず、判定処理部46は、受信した判定要求に含まれているドアIDに基づいて、当該ドアIDと対応する区画20の区画レベルを、区画レベル記憶部44Aから取得し(ステップ100)、同じく受信した判定要求に含まれている利用者IDに基づいて、当該利用者の利用者レベルを取得する(ステップ101)。
【0045】
次に、判定処理部46は、区画レベルと利用者レベルとを比較し(ステップ102)、利用者レベルが区画レベルより低い場合(ステップ102:NO)、判定処理部46は、当該区画20に対する当該利用者の入室は不可と判定し、一連の入室判定処理を終了する。これにより、対応するドア21の電気錠23は施錠されたままとなり、利用者は区画20へ入室することはできない。
【0046】
一方、利用者レベルが区画レベル以上である場合(ステップ102:YES)、判定処理部46は、当該区画20に対する当該利用者の入室は可能と判定し、通信I/F部41から制御装置30を介して対応するドア21の電気錠23へ開錠指示を送信する(ステップ103)。これにより、ドア21の電気錠が開錠されて、利用者は区画20へ入室することが可能となる。
【0047】
続いて、判定処理部46は、区画レベル記憶部44Aの初期化ポイントフラグを参照して、当該区画20が初期化ポイントか否か判定する(ステップ200)。ここで、当該区画20が初期化ポイントでない場合(ステップ200:NO)、 判定処理部46は、利用者レベル記憶部44Bのうち、当該利用者IDの利用者レベルを当該区画20の区画レベルと等しい値に変更し(ステップ104)、一連の入室判定処理を終了する。これにより、利用者レベルが当該利用者が入室した区画20の区画レベルと等しいレベルに変更されるため、この後の、他の区画への入室判定において、当該区画20より高い区画レベルの区画への入室が禁止されることになる。
【0048】
一方、当該区画20が初期化ポイントの場合には(ステップ200:YES)、利用者レベル記憶部44Bのうち当該利用者の利用者レベルを無制限レベルを示すレベル「0」に変更し(ステップ201)、一連の入室判定処理を終了する。これにより、利用者レベルが無制限レベルに変更されるため、この後の、他の区画への入室判定において、いずれの区画20に対しても入室可と判定されることになる。
【0049】
[第2の実施の形態の動作例]
次に、図8を参照して、本実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作例について説明する。図8は、第2の実施の形態にかかる施設管理システムの入室判定動作例を示す説明図である。
【0050】
図8の例では、施設に区画R1〜R6からなる6つの区画20が共通区画に接して設けられている。これら区画R1〜R6には、前述の図2に示したように、区画レベルが予め設定されており、区画R1,R6にはレベル「1」、区画R2,R5にはレベル「2」、区画R3,R4にはレベル「3」がそれぞれ設定されている。
【0051】
ここでは、利用者が共用区画から区画R5へ入室した後、区画R2へ入室し、さらに区画R3へ入室する場合について説明する。この際、区画R5から出た利用者が区画R3へ入室することを禁止するため、区画R3の区画レベルは、区画R5の区画レベル「2」より高いレベル「3」が設定されている。また、区画R5から出た利用者が区画R2へ入室できるよう、区画R2の区画レベルは、区画R5と同じレベル「2」に設定されている。
【0052】
まず、区画R5入室前の状態において、利用者の利用者レベルは無制限レベルであるレベル「0」に初期化されている場合、区画R5への入室判定において入室可と判定される。これにより、利用者は区画R5への入室が許可される。また、この区画R5への入室に応じて、利用者の利用者レベルがレベル「0」から、区画R5の区画レベルであるレベル「2」に変更される。
【0053】
続いて、利用者が区画R5から共用区画に退室して、区画R2へ入室する際、利用者の利用者レベルがレベル「2」に変更されているものの、区画R2の区画レベルと等しいことから、利用者は区画R2への入室が許可される。また、この区画R2への入室に応じて、利用者の利用者レベルがレベル「2」から、無制限レベルであるレベル「0」に初期化される。
この後、利用者が区画R2から共用区画に退室して、区画R3へ入室する際、利用者の利用者レベルがレベル「0」に変更されていることから、区画R3への入室が許可される。
【0054】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、判定処理部46で、判定結果が入室可を示す場合であって、かつ区画20が初期化ポイントである場合、利用者レベル記憶部44Bのうち当該利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更するようにしたので、利用者の動線に応じて、当該利用者の利用者レベルを初期化することができる。
【0055】
これにより、利用者の入室が制限されている制限区画への入室可否を、当該利用者が特殊区画または初期化ポイントへ入室したか否かに応じて変更することができ、極めて柔軟な入室判定を実現することが可能となる。
【0056】
したがって、図8の例では、区画R5を特定の生物を扱う生物実験室や放射線を扱う放射線室などの特殊区画とし、区画R3を利用者の入室が制限される制限区画とし、さらに区画R2を初期化ポイントとした場合、特殊区画へ入室していない利用者については、制限区画への入室を許可し、特殊区画に入室した利用者については、制限区画への入室を禁止し、特殊区画に入室した後、初期化ポイントへ入室した利用者については、制限区画への入室を許可することが可能となる。これにより、クリーンルームや保安室を一端経由した利用者に対してのみ制限区画への入室を許可することが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、管理する区画のうちのいずれか1つ以上を初期化ポイントとして設定する場合を例として説明したが、初期化ポイントについて特定の区画ではなく、例えば共用区画に設けられた1つのリーダ端末22に割り当ててもよい。
【0058】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…施設管理システム、10…IDカード、20…区画、21…ドア、22…リーダ端末、23…電気錠、30…制御装置、40…管理装置、41…通信I/F部、42…操作入力部、43…画面表示部、44…記憶部、44A…区画レベル記憶部、44B…利用者レベル記憶部、45…情報管理部、46…判定処理部、L1,L2…通信回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に設けられた区画のセキュリティの高さ示す区画レベルと、前記区画を利用する利用者のセキュリティの高さ示す利用者レベルとを比較することにより、前記区画に対する前記利用者の入室可否を判定する施設管理システムであって、
入室を管理する前記区画ごとに前記区画レベルを記憶する区画レベル記憶部と、
前記区画を利用する利用者ごとに前記利用者レベルを記憶する利用者レベル記憶部と、
前記各区画に設けられて、利用者操作に応じて当該区画に対する当該利用者の入室可否判定を要求する判定要求を送信するリーダ端末と、
前記リーダ端末からの判定要求に応じて、前記区画レベル記憶部から取得した前記区画の区画レベルと前記利用者レベル記憶部から取得した前記利用者の利用者レベルとを比較することにより、当該区画に対する当該利用者の入室可否を判定し、この判定結果に基づいて当該区画に設けられている電気錠の開閉を指示する判定処理部と
を備え、
前記判定処理部は、前記判定結果が入室可を示す場合、前記利用者レベル記憶部のうち前記利用者の利用者レベルを前記区画レベルと等しい値に変更する
ことを特徴とする施設管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の施設管理システムにおいて、
前記区画レベル記憶部は、前記区画のうち前記利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更する初期化ポイントを予め記憶し、
前記判定処理部は、前記判定時、前記利用者レベルが無制限レベルの場合には前記区画のすべてに対して入室可と判定し、前記判定結果が入室可を示す場合であって、かつ前記区画が前記初期化ポイントである場合、前記利用者レベル記憶部のうち前記利用者の利用者レベルを前記無制限レベルに変更する
ことを特徴とする施設管理システム。
【請求項3】
施設に設けられた区画のセキュリティの高さ示す区画レベルと、前記区画を利用する利用者のセキュリティの高さ示す利用者レベルとを比較することにより、前記区画に対する前記利用者の入室可否を判定する施設管理システムで用いられる施設管理方法であって、
区画レベル記憶部が、入室を管理する前記区画ごとに前記区画レベルを記憶する区画レベル記憶ステップと、
利用者レベル記憶部が、前記区画を利用する利用者ごとに前記利用者レベルを記憶する利用者レベル記憶ステップと、
リーダ端末が、前記各区画に設けられて、利用者操作に応じて当該区画に対する当該利用者の入室可否判定を要求する判定要求を送信する操作ステップと、
判定処理部が、前記リーダ端末からの判定要求に応じて、前記区画レベル記憶部から取得した前記区画の区画レベルと前記利用者レベル記憶部から取得した前記利用者の利用者レベルとを比較することにより、当該区画に対する当該利用者の入室可否を判定し、この判定結果に基づいて当該区画に設けられている電気錠の開閉を指示する判定処理ステップと
を備え、
前記判定処理ステップは、前記判定結果が入室可を示す場合、前記利用者レベル記憶部のうち前記利用者の利用者レベルを前記区画レベルと等しい値に変更する
ことを特徴とする施設管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の施設管理方法において、
前記区画レベル記憶ステップは、前記区画のうち前記利用者の利用者レベルを無制限レベルに変更する初期化ポイントを予め記憶し、
前記判定処理ステップは、前記判定時、前記利用者レベルが無制限レベルの場合には前記区画のすべてに対して入室可と判定し、前記判定結果が入室可を示す場合であって、かつ前記区画が前記初期化ポイントである場合、前記利用者レベル記憶部のうち前記利用者の利用者レベルを前記無制限レベルに変更する
ことを特徴とする施設管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−67544(P2012−67544A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214858(P2010−214858)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】