説明

既設管の更生装置及び更生方法

【課題】既設管の内面全体にわたる付着物の除去又は塗膜の形成を安定して行い、既設管の更生を効果的に行うことのできる既設管の更正装置及び更正方法を提供する。
【解決手段】既設管の更正装置は、既設管20,30の一端に連結され、空気を吸引して該既設管20,30内を他端から前記一端に向かって流れる気流を生成する吸引装置60と、既設管20,30に先端から挿入される可撓性の管状部材70と、管状部材70の先端近傍の外周に設けられ、吸引装置60の吸引動作によって生成される気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材80と、を備える。そして、吸引動作に伴って研磨材又は塗料を管状部材70の後端から該管状部材70内に取り込み、その先端から排出される研磨材又は塗料を旋回流によって既設管内20,30を搬送する、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管等の既設管の内面の付着物を除去したり、既設管の内面に塗膜を形成したりすることによって既設管の機能回復、延命等を図る、既設管の更生装置及び更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マンション(集合住宅)、事務所ビル、産業用施設などの複数階建ての建築物には、排水管として、主に、各階専用の排水横枝管と、これら排水横枝管が接続される排水立て主管と、この排水立て主管の下端に接続される排水横主管と、が設けられており、この排水横主管に建物内の排水を集めて下水管などの屋外の排水設備に導くようにしている。
【0003】
このような排水管としては、鋼管が用いられることが多く、ある程度の期間が経過すると、管内面に錆や異物が付着して排水の流れを阻害したり、管内面が腐食して穴があいてしまったりすることがある。このような場合には、異常のある配水管を新しいものに取り替えてしまうことが考えられるが、特に、排水立て主管や排水横主管を新しいものに取り替えようとすると、大工事になって居住者等の負担が大きくなってしまう。そのため、近年では、排水立て主管や排水横主管を更生することで居住者等の負担を軽減しつつ、既設管の機能回復、延命を図ることが行われている。
【0004】
既設管の更生方法としては、従来から、既設管内で研磨材を気流搬送することにより管内面の付着物を除去する方法(特許文献1)や既設管内で塗料を気流搬送することにより管内面に塗膜を形成する方法(特許文献2)が知られている。
【特許文献1】特開平11−310953号公報
【特許文献2】特開昭56−95375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の技術では、単に既設管内で研磨材や塗料を気流搬送するだけであるので、排水立て主管や排水横主管のような太く長い管については、その内面全体にわたって付着物を除去したり、安定した塗膜を形成したりすることは難しく、部分的に更生が不十分になるおそれがあった。
【0006】
また、排水横主管のように、水平方向に延びる管については、管内面の上部が、下部に比べて、更生が不十分となり易く、この点で改良の余地があった。
なお、このように部分的に更生が不十分になるおそれがあることは、排水立て主管や排水横主管を更生する場合に限るものではなく、ある程度の長さを有する排水横枝管や給水管などの既設管を更生する場合にも共通する課題である。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、その目的は、既設管の内面全体にわたる付着物の除去又は塗膜の形成を安定して行って、既設管の更生を効果的に(十分に)行うことのできる、既設管の更生装置及び更生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面による既設管の更生装置は、既設管の一端に連結され、空気を吸引して該既設管内を他端から前記一端に向かって流れる気流を生成する吸引装置と、前記既設管に先端から挿入される可撓性の管状部材と、前記管状部材の少なくとも先端近傍の外周に設けられ、前記吸引装置の吸引動作によって生成される気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材と、を備え、前記吸引装置の吸引動作に伴って、前記既設管の内面の付着物を除去する研磨材又は前記既設管の内面に塗膜を形成する塗料を、前記管状部材の後端から該管状部材内に取り込み、該管状部材の先端から排出される前記研磨材又は前記塗料を前記旋回流によって前記既設管内を搬送する。
【0009】
ここで、前記旋回流生成部材は、例えば、前記既設管内において該既設管の前記一端に向かって徐々に拡径する筒状の本体部と、前記本体部の外周面に周方向に配置された複数の羽状部材とを有し、前記既設管と前記管状部材との間に形成される空隙を徐々に減少しつつ、前記吸引装置の吸引動作によって生成される気流に旋回成分を付与するものとすることができる。
【0010】
また、前記管状部材内に前記研磨材が取り込まれているときに、前記既設管と前記管状部材との間に水を供給する水供給装置をさらに備えるようにすることができる。
また、作業者等が手動で前記管状部材の送り出し及び引き戻しを行うこともできるが、前記管状部材を送り出し又は引き戻すことによって、前記既設管内における前記管状部材の先端位置を移動させる移動装置を備えることが好ましい。この場合においては、例えば、前記管状部材内に前記研磨材が取り込まれているときには、前記管状部材の先端位置を前記既設管の前記他端から前記一端に向かう方向に移動させ、前記管状部材内に前記塗料が取り込まれているときには、前記管状部材の先端位置を前記既設管の前記一端から前記他端に向かう方向に移動させるようにする。
【0011】
さらに、本発明の他の側面による既設管の更生方法は、既設管の一端側からの空気吸引によって研磨材を該既設管内で気流搬送して管内面の付着物を除去するものであり、前記空気吸引によって生成される前記既設管内の気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材が少なくとも先端近傍の外周に設けられた可撓性の管状部材を、前記既設管の他端側から該既設管に挿入する工程と、前記空気吸引を行うと共に、前記管状部材の後端から前記研磨材を供給する工程と、を含み、前記空気吸引により前記研磨材を前記管状部材内に取り込み、該管状部材の先端から排出された研磨材を前記旋回流によって前記既設管内を搬送する。
【0012】
ここで、前記既設管内における前記管状部材の先端位置を前記既設管の前記他端側から前記一端側に向かう方向に移動させる工程や前記既設管と前記管状部材との間に水を供給する工程をさらに含むようにすることができる。
【0013】
さらにまた、本発明の他の側面による既設管の更生方法は、既設管の一端側からの空気吸引によって塗料を該既設管内で気流搬送して管内面に塗膜を形成するものであり、前記空気吸引によって生成される前記既設管内の気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材が少なくとも先端近傍の外周に設けられた可撓性の管状部材を、前記既設管の他端側から該既設管に挿入する工程と、前記空気吸引を行うと共に、前記管状部材の後端から前記塗料を供給する工程と、を含み、前記空気吸引により前記塗料を前記管状部材内に取り込み、該管状部材の先端から排出された塗料を前記旋回流によって前記既設管内を搬送する。
【0014】
ここで、前記既設管内における前記管状部材の先端位置を前記既設管の前記一端側から前記他端側に向かう方向に移動させる工程をさらに含むようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、空気吸引によって管状部材内に取り込まれた研磨材又は塗料は該管状部材の先端から排出され、この排出された研磨材又は塗料が、旋回流生成部材による生成直後の旋回流によって既設管の内面に沿って搬送される。このため、旋回流を効果的に利用することができ、研磨材による管内面の付着物の除去効率を高めることができ、管内面に安定した塗膜を形成することができる。これにより、既設管の更生を十分に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明が適用される、マンション(集合住宅)、事務所ビル、産業用施設などの複数階建て(図では5階建て)の建造物の排水管構造の一例を模式的に示す図である。図1に示すように、この種の建造物は、排水管1として、各階にそれぞれ配管された各階専用の排水横枝管10と、各排水横主管10が接続され鉛直方向にのびる排水立て主管20と、排水立て主管20の下端に接続されてほぼ水平方向にのびる排水横主管30と、を備えている。ここで、「ほぼ水平方向」には、水平方向だけでなく、わずかな勾配を有する場合、例えば排水立て主管20の下端から斜め下方にのびる場合も含まれる。
【0017】
排水横枝管10には、各階の各居住部などに設置された衛生器具等の排水口からのびる器具排水管11がそれぞれ接続されており、各階の排水をまとめて排水立て主管20へと流す。排水立て主管20は、各排水横主管10からの排水を合流して下方へと流す。排水横主管30は、排水立て主管20からの排水、すなわち、建造物の排水を集めて、図示しない下水管などの排水設備へと導く。
【0018】
ここで、既述したように、排水管1には鋼管が使用されることが多く、長期間の使用によって管内面に錆や異物が付着したり、管内面が腐食したりする。そこで、本実施形態においては、以下に記すような装置及び方法によって排水管1の更生を行う。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態による既設管の更生装置の概略構成を示している。ここでは、一例として、内径Dが約100mm(D≒100)の排水立て主管20及び排水横主管30を更生対象とし、研磨材を用いて管内面の付着物を除去する場合について説明する。なお、更生を行う前には、まず、排水立て主管20の上部の適切な位置で該排水立て主管20を部分的に切断して開口20aを形成し、開口20aを形成した後に本実施形態による既設管の更生装置の各要素を設置する。
【0020】
図2に示すように、第1実施形態による既設管の更生装置40は、排水横主管30の下流端に分離回収装置50を介して連結される吸引ポンプなどの吸引装置60と、排水立て主管20及び排水横主管30に挿入可能な可撓性を有するホース(管状部材)70と、このホース70の先端近傍の外周に設けられた旋回流生成部材80と、ホース70の送り出し及び引き戻しを行うホース送出装置90と、研磨材を収容する研磨材収容部100と、水供給装置110と、を備えている。
【0021】
分離回収装置50は、通過する気流から研磨材、除去された付着物及び水を分離して回収し、空気のみを下流側に流すことができる装置である。
吸引装置60は、適切な吸引圧で空気を吸引して排水立て主管20内及び排水横主管30内に気流を生成する。生成された気流は、排水立て主管20に形成した開口20aから排水横主管30の下流端に向かって流れるものとなる。
【0022】
ここで、本実施形態では、分離回収装置50と吸引装置60とを別々に設けて既設管の更生装置を構成する場合について説明するが、これに限るものではなく、例えば、分離回収装置50及び吸引装置60としての機能を有する吸引車を用いて既設管の更生装置を構成するようにしてもよい。
【0023】
ホース70は、その外径が排水立て主管20の内径及び排水横主管30の内径よりも小さく、かつ、排水立て主管20及び排水横主管30によって形成される管路長を超える長さを有するものであり、例えば、粒体輸送用のホースや送水・給水用のホースを用いることができる。但し、吸引負圧に耐えられるように、補強されているものが好ましい。補強されたホースとしては、例えば、クラレプラスチックス株式会社製のネオ・ホーマー(登録商標)6型がある。なお、ここでは、内径d1が30〜50mm程度(すなわち、d1=0.3〜0.5×D)、外径d2が40〜65mm程度(すなわち、d2=0.4〜0.65×D)のホース70を用いる。
【0024】
旋回流生成部材80は、吸引装置60の吸引動作によって生成された気流、特に排水立て主管20の内面又は排水横主管30の内面とホース70の外面との間の気流に、旋回成分を付与して該ホース70の先端よりも下流側に旋回流を生成するものであり、例えば、図2、図3に示すように、一端側がホース70の外周に外嵌する円筒状の外嵌部として形成されると共に該外嵌部から他端側に向かって徐々に拡径するように形成された筒状(略中空円錐台形状)の本体部80aと、この本体部80aの外周面に周方向に配置された複数の羽根状部材80bと、を有する。排水立て主管20、排水横主管30及びホース70のサイズにもよるが、ここでは、排水立て主管20及び排水横主管30の内径が100mm程度としていることから、本体部80aの最大外径d3が55〜65mm程度(すなわち、d3=0.55〜0.65×D)に、羽根状部材80bを含んだ最大外径d4が75〜85mm程度(すなわち、d4=0.75〜0.85×D)になるように旋回流生成部材80を形成する。ここで、図2、図3に示した旋回流生成部材80では、羽根状部材80bが本体部80aの外周面に周方向1列に配置されているが、2列配置するようにしてもよい。そして、図2、図3に示すように、ホース70の先端近傍の外周に旋回流生成部材80が取り付けられ、その後、該ホース70(の先端)が、排水立て主管20に形成した開口20aから該排水立て主管20内に挿入される。
【0025】
ホース送出装置90は、開口20aから排水立て主管20内に挿入されたホース70を所定速度で送り出し又は引き戻すことができる装置であり、例えば、モータ等の駆動源90aと、該駆動源90aによって回転駆動される駆動ローラ90bと、この駆動ローラとの間にホース7を挟み込むように配置された従動ローラ90cと、を有する構成とすることができる。かかるホース送出装置90によってホース70を送り出し又は引き戻すことにより、排水立て主管20内又は排水横主管30内におけるホース70の先端位置(旋回流生成部材80の位置)を一定速度で又は速度を変更しながら移動させることができる。
【0026】
研磨材収容部100は、例えば上部が開放され、下部の適切な位置に適切な大きさの研磨材供給口が形成された容器とすることができ、例えば、この研磨材供給口に、排水立て主管20に形成した開口20aからのびるホース70の後端が接続される。
【0027】
水供給装置110は、排水立て主管20に形成した開口20aから排水立て主管20と挿入されたホース70との間に水を供給する装置であり、例えば、貯水容器110aと、この貯水容器110aからのびる給水ホース100bと、を有する構成とすることができる。但し、これに限るものではなく、付近にある水道の蛇口に給水ホースを接続して水供給装置としてもよい。
【0028】
以上のように構成された第1実施形態による既設管の更生装置の作用を説明する。
吸引装置60の吸引動作によって、排水立て主管20及び排水横主管30内には、排水立て主管20に形成した開口20aから排水横主管30の下流端に向かって流れる気流が生成されると共に、研磨材収容部100(さらに言えば、ホース70の後端)からホース70内に研磨材が空気と共に取り込まれて該ホース70内を気流搬送される。
【0029】
排水立て主管20とホース70との間の気流は、ホース70の先端近傍の外周に取り付けられた旋回流生成部材80(羽根状部材80b)を通過する際に旋回成分が付与され、ホース70の先端(旋回流生成部材80)よりも下流側には、排水立て主管20の内面に沿って螺旋状に流れる旋回流が生成される。ここで、旋回流生成部材80の本体部80aは気流の下流方向に向かって徐々に拡径されており、排水立て主管20(の内面)とホース70(の外周面)との間に形成される空隙が徐々に縮小される。このため、気流の速度が高められつつ旋回成分が付与されることになり、より強い旋回流が生成される。
【0030】
吸引装置60の吸引動作によってホース70内を気流搬送された研磨材はホース70の先端から排出され、旋回流生成部材80によってホース70の下流側に生成された(すなわち、生成直後の)旋回流により、速やかに排水立て主管20の内面へと導かれ、該排水立て主管20の内面を螺旋状に旋回しながら下流側へと搬送される。このとき、水供給装置100によって排水立て主管20とホース70との間に適量の水が供給されており、研磨材と共に排水立て主管20の内面に沿って流れる。これにより、排水立て主管20の内面の付着物が効果的に除去されると共に、付着物を除去した後の排水立て主管20の内面がクリーニングされる。
【0031】
但し、ホース70の先端(旋回流生成部材80)から離れるほど旋回流が弱くなり、排水立て主管20の内面に沿って搬送される研磨材や水の量が減少するため、排水立て主管20の下流側における付着物の除去を効果的に行えないおそれがある。そのため、本実施形態による更生装置では、ホース送出装置90によりホース70を図中矢印Aで示すように所定速度(例えば、毎分0.5〜2(m)程度の速度)で送り出すことによって、図中破線で示すように、排水立て主管20内におけるホース70の先端位置(旋回流生成部材80の位置)、すなわち、研磨材が排水立て主管20に排出される位置及び旋回流が生成される位置を下流側へと所定速度で移動させる。ここでは、毎分1m程度の速度(すなわち、一定速度)でホース70を送り出すものとする。これにより、排水立て主管20の軸方向位置にかかわらず、その内面に研磨材及び水を十分に沿わせることができ、排水立て主管20の内面全体の付着物を効果的に除去することができる。
【0032】
その後、排水立て主管20と排水横主管30との合流部に到達したホース70は、その先端に取り付けられた旋回流生成部材80(本体部80a)により効果的に吸引されて、排水横主管30内へと導かれる。そして、排水横主管30内においても、ホース70が一定速度で送り出されながら研磨材及び水が供給され、排水立て主管20と同様に、管内面の付着物の除去及びクリーニングが効果的に行われる。
【0033】
なお、排水立て主管20及び排水横主管30内を搬送された研磨材、除去された付着物及び水は、排水横主管30の下流端と吸引装置60との間に配置された分離回収装置70によって空気と分離されて回収され、空気のみが下流側に流される。
【0034】
そして、排水横主管30の下流端まで内面付着物の除去及び内面のクリーニングが終了したら、吸引装置60を停止してホース70を引き戻して回収する。
本実施形態による既設管の更生装置によれば、次のような効果を有する。すなわち、吸引によって研磨材を排水立て主管20内及び排水横主管30内で気流搬送するため、研磨材を圧送する(押し出す)場合のように、投入した研磨材の一部が、更生対象ではない管に入り込んでしまったり、またそれにより回収不能となってしまったりすることを防止できると共に、旋回流生成部材80によって生成される旋回流によって研磨材を管内面に沿わせて管内面の付着物を効果的に除去できる。
【0035】
また、研磨材が排水立て主管20内又は排水横主管30内に排出される位置と、排水立て主管20内又は排水横主管30内で旋回流が生成される位置とを移動させるので、旋回流を効果的に利用して研磨材を排水立て主管20及び排水横主管30の内面に沿わせて付着物の除去効率を高めることができると共に、上流側から下流側へと移動させているので、除去した付着物の管内面への再付着等を未然に防止できる。さらに、水供給装置100によって排水立て主管20内及び排水横主管30内に水も供給されるため、付着物の除去に加えて管内面のクリーニングも効果的に行うことができる。
【0036】
なお、上記実施形態では、排水管1(排水立て主管20及び排水横主管30)の更生を行う場合について説明しているが、他の排水管や給水管を含む様々な既設管に広く適用することができる。
【0037】
また、排水立て主管20に開口20aを形成し、この開口20aからホース70を該配管立て主管20内に挿入しているが、排水立て主管20に予め掃除口が設けられている場合には、この掃除口を利用してもよい。一般に、掃除口は複数設けられているから、全部又は一部の掃除口を利用し、複数回に分けて排水管1の更生を行うようにしてもよい。
【0038】
また、旋回流生成部材80をホース70とは別体に構成しているが、旋回流生成部材80が一体に形成されたホースを用いてもよい。さらに、旋回流生成部材80として図3に示したものを用いているが、ホース70の少なくとも先端近傍において排水立て主管20又は排水横主管30とホース70との間の気流に旋回成分を付与し、該ホース70の下流側に旋回流を生成できるものであればよく、その形状は問わない。例えば、ホース70の外周面全体に螺旋状の溝や突条を形成しておいてもよい。
【0039】
また、ホース送出装置90を用いてホース70を所定速度(一定速度)で送り出すと共に、研磨材収容部90から研磨材を供給するようにしているが、これらの一方又は両方を省略して、作業者がホース70を手動で送り出し、作業者が手動でホース70の後端から研磨材を供給するようにしてもよい。
【0040】
さらに、排水立て主管20と排水横主管30とのサイズが異なるなど、更生対象とした管の内径が途中で変化するような場合には、内径が大きいほどホース70を送り出す速度を低くするなど、ホース送出装置90が、更生対象とする管の内径に応じてホース70を送り出す速度(移動速度)を変化させるようにしてもよい。
【0041】
さらにまた、研磨材と水とを同時に供給しているが、先に研磨材のみを供給し、その後に水を供給して管内面をクリーニングするようにしてもよい。
ところで、以上では既設管の更生装置として説明したが、更生方法として見ると次のようになる。すなわち、本発明の実施形態による既設管の更生方法は、排水立て主管20及び排水横主管30からなる既設管の下流端側からの空気吸引によって研磨材を該既設管内で気流搬送して管内面の付着物を除去するものである。そして、(1)空気吸引によって生成される既設管内の気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材80が、少なくとも先端近傍の外周に設けられたホース70(可撓性を有する管状部材)を、既設管の上流端側から既設管内の挿入する工程と、(2)空気吸引を行うと共に、研磨材をホース70の後端からホース70内に供給する工程と、を含む。ホース70内に供給された研磨材は空気吸引によってホース70内を気流搬送され、ホース70の先端から排出される。排出された研磨材は、旋回流生成部材80によって生成された旋回流によって既設管内を搬送され、既設管の内面付着物を除去する。ここで、(3)ホース70を既設管の上流側から下流側へと一定速度で送り出す工程や(4)既設管とホース70との間に水を供給する工程をさらに含むものとしてもよい。
【0042】
図4は、本発明の第2実施形態による既設管の更生装置の概略構成を示している。ここでは、上記第1実施形態による既設管の更生装置によって管内面の付着物を除去した後の排水立て主管20及び排水横主管30を更生対象とし、管内面に塗料(例えば、樹脂系塗料)による塗膜を形成する場合を説明する。
【0043】
図4に示すように、本実施形態による既設管の構成装置400は、排水横主管30の下流端に塗料回収装置120を介して連結される吸引ポンプなどの吸引装置60と、排水立て主管20及び排水横主管30に挿入可能な可撓性を有するホース(管状部材)70と、このホース70の先端近傍の外周に設けられた旋回流生成部材80と、ホース70の送り出し及び引き戻しを行うホース送出装置90と、塗料を供給する塗料供給装置130と、を備えている。
【0044】
塗料回収装置120は、通過する気流から塗料(管内面に塗布されなかった余剰塗料)を分離して回収し、空気のみを下流側に流すことができる装置である。
塗料供給装置130は、塗料(例えば、樹脂系樹脂塗料)を計量しつつ吐出できるものであり、例えば、空気導入口131aが形成された接続管131を介してホース70の後端に接続される。その他の構成要素、すなわち、吸引装置60、ホース70、旋回流生成部材80及びホース送出装置90については、上記第1実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0045】
但し、本実施形態による既設管の更生装置では、初めにホース70の先端を排水横主管30の下流端近傍に位置させる。これは、例えば次のようにして容易に行うことができる。すなわち、旋回流生成部材80がその先端近傍の外周に取り付けられたホース70(の先端)を、排水立て主管20に形成した開口20aから該排水立て主管20内に挿入する。このとき、ホース70はホース送出装置90から外しておく。そして、吸引装置60を動作させてホース70を吸引して、ホース70の先端を排水横主管30の下流端近傍へと導く。ここで、旋回流生成部材80によってホース70の吸引が補助される。ホース70の先端が排気横主管30の下流端近傍の所定位置に到達したら、吸引装置60を一旦停止して、ホース70の上流側の適切な位置をホース送出装置90に取り付ける。
【0046】
以上のように構成された第2実施形態による既設管の更生装置の作用を説明する。
第1実施形態による既設管の更生装置と同様に、吸引装置60の吸引動作によって、排水立て主管20及び排水横主管30内には、排水立て主管20に形成した開口20aから排水横主管30の下流端に向かって流れる気流が生成される。また、塗料供給装置130から吐出された塗料は、接続管131の空気導入口131aから導入された空気と混合されてホース70の後端から取り込まれて該ホース70内を気流搬送される。
【0047】
排水横主管30とホース70との間の気流は、ホース70の先端近傍の外周に取り付けられた旋回流生成部材80(羽根状部材80b)を通過する際に旋回成分が付与され、ホース70(旋回流生成部材80)の下流側には、排水横主管30の内面に沿って螺旋状に流れる旋回流が生成される。ここで、旋回流生成部材80の本体部80aは気流の下流方向に向かって徐々に拡径されており、気流の速度が速められつつ旋回成分が付与されることになるため、より強い旋回流が生成される。
【0048】
吸引装置60の吸引動作によってホース70内を気流搬送された塗料はホース70の先端から排出され、旋回流生成部材80によって生成された直後の旋回流により、速やかに排水横主管30の内面へと導かれ、該排水横主管30の内面を螺旋状に旋回しながら下流側へと搬送される。これにより、排水横主管30の下流端近傍の内面には、全体にわたって安定した塗膜が形成される。
【0049】
また、この塗膜の形成と合わせて、ホース送出装置90によりホース70を図中矢印B示すように所定速度(例えば、毎分0.5〜2(m)程度の速度)で引き戻すことによって、排水横主管30内におけるホース70の先端位置(旋回流生成部材80の位置)、すなわち、塗料が排水横主管30内に排出される位置及び旋回流が生成される位置を上流側へと所定速度で移動させる。これにより、排水横主管30は、下流側から順に内面に塗膜が形成される。なお、ここでは、毎分1m程度の速度で(すなわち、一定速度で)ホース70を引き戻す。
【0050】
その後、排水立て主管20と排水横主管30との合流部に到達したホース70は、その先端に取り付けられた旋回流生成部材80(本体部80aの外面の傾斜)によって合流部でひっかかることなく、排水立て主管20内へと導かれる。そして、排水立て主管20内においても、ホース70が一定速度で引き戻されながら塗料が供給され、排水横主管30と同様に、管内面の全体にわたって安定した塗膜が形成される。
【0051】
なお、ホース70の先端よりも下流側では、塗膜の形成後においても塗料(余剰塗料)が気流搬送されることになるが、吸引塗料供給装置130は塗料を計量しつつ吐出しており、過剰な余剰塗料の発生が抑制されると共に、下流側においては旋回流が弱まる一方、管軸方向の気流が強くなるため、ほとんどの余剰塗料が管内面に塗布されることなく吸引装置60によって吸引され、余剰塗料による意図しない塗膜の形成が抑制される。また、形成された塗膜全体に吸引力が及ぶため、塗膜の不均一を抑制する(塗膜の均一化を図る)ことができる。なお、管内面に塗布されない余剰塗料は、排水横主管30の下流端と吸引装置60との間に配置された塗料回収装置120によって空気と分離されて回収されて、空気のみが下流側に流される。
【0052】
そして、排水立て主管20の上流端まで内面の塗膜形成が終了したら、吸引装置60を停止してホース70を回収する。
本実施形態による既設管の更生装置によれば、次のような効果を有する。すなわち、旋回流生成部材80によって生成される旋回流によって、塗料を管内面に沿わせて管内面に塗膜を効果的に形成することができる。
【0053】
また、塗料が排水立て主管20内又は排水横主管30内に排出される位置と、排水立て主管20内又は排水横主管30内で旋回流が生成される位置とを共に一定速度で移動させるので、旋回流を利用した塗膜の形成をより効果的に行うことができると共に、下流側から上流側へと移動させるので、形成した塗膜にホース70が接触してしまうことが防止される。さらに、旋回流生成部材80から離れるほど(すなわち、下流側にいくほど)、吸引装置60の吸引による管軸方向の流れが強くなるので、管内を搬送される余剰塗料による意図しない塗膜の形成が抑制され、また、(乾燥前の)塗膜全体に吸引力が及ぶため塗膜の不均一が抑制される。
【0054】
なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様、排水立て主管20及び排水横主管30以外の排水管や給水管を含む様々な既設管に適用することができ、形成した開口20aに代えて予め設けられている掃除口などを利用することができる。ホース70及び旋回流生成部材80の構成等についても同様である。
【0055】
また、ホース送出装置90を用いてホース70を引き戻しているが、ホース送出装置90を省略して、作業者がホース70を手動で引き戻すようにしてもよい。
さらに、排水立て主管20と排水横主管30とのサイズが異なるなど、更生対象とした管の内径が途中で変化するような場合には、内径が大きいほどホース70を引き戻す速度を低くするなど、ホース送出装置90が、更生対象とする管の内径に応じてホース70を引き戻す速度(移動速度)を変化させるようにしてもよい。
【0056】
さらにまた、第1実施形態におけるホース70の送出速度と同じ速度でホース70を引き戻しているが、研磨材を用いる場合と塗料を用いる場合とで管内におけるホース70の移動速度を異ならせるようにしてもよい。
【0057】
ところで、以上では既設管の更生装置として説明したが、更生方法として見ると次のようになる。すなわち、本発明の実施形態による既設管の更生方法は、排水立て主管20及び排水横主管30からなる既設管の下流端側からの空気吸引によって塗料を該既設管内で気流搬送して管内面に塗膜を形成するものである。そして、(1)空気吸引によって生成される既設管内の気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材80が、少なくとも先端近傍の外周に設けられたホース70(可撓性を有する管状部材)を、既設管の上流端側から既設管内の挿入する工程と、(2)空気吸引を行うと共に、塗料をホース70の後端からホース70内に供給する工程と、を含む。ホース70内に供給された塗料は空気吸引によってホース70内を気流搬送され、ホース70の先端から排出される。排出された塗料は、旋回流生成部材80によって生成されて旋回流によって既設管内を搬送され、既設管の内面に塗膜を形成する。ここで、(3)ホース70を既設管の下流側から上流側へと一定速度で送り出す工程を含むものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明が適用される建造物の排水管構造の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態による既設管の更生装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明における旋回流生成部材の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による既設管の構成装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1…排水管、10…排水横枝管、20…排水立て主管、30…排水横主管、40,400…更生装置、50…分離回収装置、60…吸引装置、70…ホース(管状部材)、80…旋回流生成部材、90…ホース送出装置、100…研磨材収容部、110…水供給装置、120…塗料回収装置、130…塗料供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の一端に連結され、空気を吸引して該既設管内を他端から前記一端に向かって流れる気流を生成する吸引装置と、
前記既設管内に先端から挿入される可撓性の管状部材と、
前記管状部材の少なくとも先端近傍の外周に設けられ、前記吸引装置の吸引動作によって生成される気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材と、
を備え、
前記吸引装置の吸引動作に伴って、前記既設管の内面の付着物を除去する研磨材又は前記既設管の内面に塗膜を形成する塗料を前記管状部材の後端から該管状部材内に取り込み、該管状部材の先端から排出される前記研磨材又は前記塗料を前記旋回流によって前記既設管内を搬送する、既設管の更生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の既設管の更生装置であって、
前記旋回流生成部材は、
前記既設管内において該既設管の前記一端に向かって徐々に拡径する筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に周方向に配置された複数の羽根状部材と、を有し、
前記既設管と前記管状部材との間に形成される空隙を徐々に縮小しつつ、前記吸引装置の吸引動作によって生成される気流に旋回成分を付与する、既設管の更生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の既設管の更生装置であって、
前記管状部材内に前記研磨材が取り込まれているときに、前記既設管と前記管状部材との間に水を供給する水供給装置をさらに備える、既設管の更生装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の既設管の更生装置であって、
前記管状部材を送り出し又は引き戻すことによって、前記既設管内における前記管状部材の先端位置を移動させる移動装置をさらに備える、既設管の更生装置。
【請求項5】
請求項4に記載の既設管の更生装置であって、
前記移動装置は、前記管状部材内に前記研磨材が取り込まれているときに、該管状部材の先端位置を前記既設管の前記他端から前記一端に向かう方向に一定速度で移動させる、既設管の更生装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の既設管の更生装置であって、
前記移動装置は、前記管状部材内に前記塗料が取り込まれているときに、該管状部材の先端位置を前記既設管の前記一端から前記他端に向かう方向に一定速度で移動させる、既設管の更生装置。
【請求項7】
既設管の一端側からの空気吸引によって研磨材を該既設管内で気流搬送して管内面の付着物を除去する既設管の更生方法であって、
前記空気吸引によって生成される前記既設管内の気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材が少なくとも先端近傍の外周に設けられた可撓性の管状部材を、前記既設管の他端側から該既設管に挿入する工程と、
前記空気吸引を行うと共に、前記管状部材の後端から前記研磨材を供給する工程と、
を含み、
前記空気吸引により前記研磨材を前記管状部材内に取り込み、該管状部材の先端から排出された研磨材を前記旋回流によって前記既設管内を搬送する、既設管の更生方法。
【請求項8】
請求項7に記載の既設管の更生方法であって、
前記既設管内における前記管状部材の先端位置を前記既設管の前記他端側から前記一端側に向かう方向に移動させる工程をさらに含む、既設管の更生方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の既設管の更生方法であって、
前記既設管と前記管状部材との間に水を供給する工程をさらに含む、既設管の更生方法。
【請求項10】
既設管の一端側からの空気吸引によって塗料を該既設管内で気流搬送して管内面に塗膜を形成する既設管の更生方法であって、
前記空気吸引によって生成される前記既設管内の気流に旋回成分を付与して旋回流を生成する旋回流生成部材が少なくとも先端近傍の外周に設けられた可撓性の管状部材を、前記既設管の他端側から該既設管に挿入する工程と、
前記空気吸引を行うと共に、前記管状部材の後端から前記塗料を供給する工程と、
を含み、
前記空気吸引により前記塗料を前記管状部材内に取り込み、該管状部材の先端から排出された塗料を前記旋回流によって前記既設管内を搬送する、既設管の更生方法。
【請求項11】
請求項10記載の既設管の更生方法であって、
前記管状部材の先端位置を前記既設管の前記一端側から前記他端側に向かう方向に移動させる工程をさらに含む、既設管の更生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−155193(P2010−155193A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334305(P2008−334305)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(506206694)いずみテクノス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】