説明

映像品質推定装置、方法、およびプログラム

【課題】映像品質の推定精度を改善する。
【解決手段】映像代表品質推定部16Bにより、複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定し、映像差分品質推定部17により、映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータと個別Iフレーム情報量とに対応する映像差分品質を推定し、映像個別品質算出部16Gにより、映像代表品質と映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像通信技術に関し、特にネットワーク経由で行うIPTVサービス、映像配信サービス、映像コミュニケーションサービスなどの映像通信の品質を推定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットアクセス回線の高速・広帯域化に伴い、音声及び映像メディアなどを用いた映像通信サービスが期待されている。インターネットは必ずしも通信品質の保証されていないネットワークであるため、音声及び映像メディアなどを用いて通信を行う場合、ユーザ間のネットワークの回線帯域が狭かったり、回線が輻輳したりすると、音声や映像メディアなどに対してユーザが知覚する品質、すなわちユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)が劣化してしまう。具体的には、映像に品質劣化が加わると、ぼけ・にじみ・モザイク状の歪・ぎくしゃく感などとして知覚される。
【0003】
上記サービスを品質良く提供するためには、サービス提供に先立った品質設計やサービス開始後の品質管理が重要となり、このためには、ユーザが享受する品質を適切に表現でき、しかも簡便かつ効率的な品質評価技術が必要となる。
従来、国際標準化機関ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)勧告J.144において映像品質客観評価法が記載されている。また、ITU−T勧告G.1070には、テレビ電話の品質設計を行うための品質推定法が記載されている。これらの客観評価技術は、ある一定の条件下で主観品質の統計的曖昧さと同程度の推定誤差で主観品質を推定可能である。
【0004】
【非特許文献1】ITU−T勧告J.144
【非特許文献2】ITU−T勧告G.1070
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来技術では、ネットワーク経由で行うIPTVサービス、映像配信サービス、映像コミュニケーションサービスなどの映像通信の品質を推定する際には適用できないという問題点があった。
まず、ITU−T勧告J.144は、映像メディア信号(画素信号)を用いる品質推定方法であり、品質推定に関する計算量が膨大である。そのため、ネットワーク間から品質情報を抽出し、大規模ネットワークにおける品質を推定して管理する場合には向かない。
【0006】
また、ITU−T勧告G.1070は、映像の品質に影響を与える品質パラメータから映像代表品質を推定するモデルである。図11は、ITU−T勧告G.1070で用いる品質推定モデルの品質推定精度を示す説明図である。すなわち、ITU−T勧告G.1070は、図11に示すように、映像の動き量やフレーム単位の精細度に関して異なる多数の映像から得た平均的な特性Tに基づき推定している。このため、個々の映像が持つ品質、例えば映像の動き量やフレーム単位の精細度が、平均的な映像とは異なるような映像Aや映像Bについては、実際の映像品質とは誤差ΔVaやΔVbが発生し、これら映像A、Bの品質の推定誤差が大きい原因となる。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、映像の動き量やフレーム単位の精細度が、平均的な映像とは異なるような映像であっても、映像品質の推定精度を改善できる映像品質推定装置、方法、およびプロクラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる映像品質推定装置は、Iフレームを含む複数のフレームに映像信号を圧縮符号化してパケットで送信する映像通信の映像品質を推定する映像品質推定装置であって、入力されたパケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出するパケット分析部と、複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定する映像代表品質推定部と、映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の個別Iフレーム情報量と品質パラメータとに対応する映像差分品質を推定する映像差分品質推定部と、映像代表品質と映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する映像個別品質算出部とを備えている。
【0009】
この際、映像差分品質推定部に、個別Iフレーム情報量と複数の映像から得られた単位Iフレーム数当たりの情報量の平均値を示す代表Iフレーム情報量との差から差分Iフレーム情報量を算出する差分Iフレーム情報量算出部と、映像代表品質と映像個別品質との差分の最大値を示す映像最大差分品質を推定する映像最大差分品質推定モデルから、品質パラメータに対応する映像最大差分品質を推定する映像最大差分品質推定部と、映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の映像差分品質と差分Iフレーム情報量とに対応する映像個別品質を算出する映像差分品質算出部とを設けてもよい。
【0010】
また、映像差分品質推定部に、代表Iフレーム情報量と品質パラメータとの関係を示す代表Iフレーム情報量推定モデルから、品質パラメータに対応する代表Iフレーム情報量を推定する代表Iフレーム情報量推定部をさらに設けてもよい。
【0011】
また、代表Iフレーム情報量推定モデルとして、符号化レートからなる品質パラメータの増加に伴って代表Iフレーム情報量が増加する特性を用いてもよい。
【0012】
また、映像最大差分品質推定モデルとして、符号化レートからなる品質パラメータの増加に伴って映像最大差分品質が増加(または減少)し、当該品質パラメータのさらなる増加に伴って映像最大差分品質が減少(または増加)する特性を用いてもよい。
【0013】
また、映像差分品質推定モデルとして、差分Iフレーム情報量と映像最大差分品質との積の増加に伴って、映像差分品質が増加する特性を用いてもよい。
【0014】
また、本発明にかかる映像品質推定方法は、Iフレームを含む複数のフレームに映像信号を圧縮符号化してパケットで送信する映像通信の映像品質を推定する映像品質推定方法であって、入力されたパケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出するパケット分析ステップと、複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定する映像代表品質推定ステップと、映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の個別Iフレーム情報量と品質パラメータとに対応する映像差分品質を推定する映像差分品質推定ステップと、映像代表品質と映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する映像個別品質算出ステップとを備えている。
【0015】
また、本発明にかかるプログラムは、Iフレームを含む複数のフレームに映像信号を圧縮符号化してパケットで送信する映像通信の映像品質を推定する映像品質推定装置のコンピュータに、入力されたパケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出するパケット分析ステップと、複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定する映像代表品質推定ステップと、映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の個別Iフレーム情報量と品質パラメータとに対応する映像差分品質を推定する映像差分品質推定ステップと、映像代表品質と映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する映像個別品質算出ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量を考慮した映像品質を推定することができる。このため、映像の動き量やフレーム単位の精細度が、平均的な映像とは異なるような映像の映像通信についても、IPパケットから抽出可能なパラメータに基づいて、誤差の少ない映像品質を推定することができる。
したがって、ネットワーク経由で行うIPTVサービス、映像配信サービス、映像コミュニケーションサービスなどの映像通信サービスを利用するユーザに対して、ある一定以上の映像品質を保っているかどうかを容易に判断することができる。これにより、上記サービスで用いる品質パラメータの設計や、提供中のサービスの品質実態を把握・管理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置について説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成を示すブロック図である。
この映像品質推定装置1は、入力された情報を演算処理するコンピュータなどの情報処理装置からなり、複数のフレームに符号化した映像信号を圧縮符号化した後、通信端末2Aから通信端末2B端末へ、インターネットなどのIPネットワーク3を介してパケットで送信する映像通信について、その映像通信のパケットを入力として、通信端末2Bで復号されて再生された当該映像から視聴者が実感する主観映像品質の推定値を映像個別品質として算出する装置である。
【0018】
この映像品質推定装置1には、主な機能部として、操作入力部11、画面表示部12、通信インターフェース部(以下、通信I/F部という)13、記憶部14、特性係数記憶部15、および演算処理部16が設けられている。また演算処理部16には、主な処理部として、パケット分析部16A、映像代表品質推定部16B、映像最大差分品質推定部16C、代表Iフレーム情報量推定部16D、差分Iフレーム情報量算出部16E、映像差分品質算出部16F、および映像個別品質算出部16Gが設けられている。このうち、映像最大差分品質推定部16C、代表Iフレーム情報量推定部16D、差分Iフレーム情報量算出部16E、および映像差分品質算出部16Fにより、映像差分品質推定部17が構成されている。
【0019】
MPEG−2(Moving Picture Experts Group-2)などの圧縮符号化方式では、Iフレームの情報は、動き量の多い映像の場合には、フレーム間予測方式のBフレームやPフレームについて符号量を配分しようとする特徴と、精細度が高い映像の場合には、BフレームやPフレームの符号量を減らしフレーム内予測方式のIフレームについて符号量を増やす特徴がある。
本実施の形態では、映像の動き量やフレーム単位の精細度に応じて個別Iフレーム情報量が変化するという特徴に着目し、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量を考慮して映像品質を推定している。
【0020】
具体的には、パケット分析部16Aにより、入力されたパケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出し、映像代表品質推定部16Bにより、複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定し、映像差分品質推定部17により、映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータと個別Iフレーム情報量とに対応する映像差分品質を推定し、映像個別品質算出部16Gにより、映像代表品質と映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する。
【0021】
[映像品質推定装置の構成]
次に、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の動作フローを示す説明図である。
【0022】
操作入力部11は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部16へ出力する機能を有している。
画面表示部12は、LCDやPDPなどの画面表示装置からなり、演算処理部16からの指示に応じて、操作メニューや推定結果である映像個別品質を画面表示する機能を有している。
通信I/F部13は、専用の通信回路からなり、IPネットワーク3や外部装置(図示せず)との間でデータ通信を行う機能を有している。品質推定の対象となる映像通信のパケットについては、IPネットワーク3を介して通信I/F部13により取得してもよく、受信側の通信端末2Bから通信I/F部13により取得してもよい。
【0023】
記憶部14は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置からなり、演算処理部16での処理動作に用いる各種処理情報とプログラム14Pとを記憶する機能を有している。プログラム14Pは、映像品質推定装置1に設けられている通信I/F部13などのデータ入出力機能を介して外部装置や記録媒体(図示せず)から予め読み込まれて記憶部14に格納されている。
【0024】
記憶部14で記憶される主な処理情報としては、個別Iフレーム情報量14A、符号化レート14B、および特性係数特定パラメータ14Cがある。
このうち個別Iフレーム情報量14Aおよび符号化レート14Bは、いずれも通信I/F部13から入力された対象となる映像通信のパケットから、パケット分析部16Aにより抽出されて記憶部14へ保存される。また、特性係数特定パラメータ14Cは、操作入力部11や通信I/F部13を介して予め記憶部14へ保存される。
【0025】
個別Iフレーム情報量14Aは、対象となる映像通信における単位Iフレーム数当たりの情報量を示す。
符号化レート14Bは、対象となる映像通信において単位時間当たりに送信される情報量である。
特性係数特定パラメータ14Cは、対象となる映像通信で用いる圧縮符号化方式や、当該映像を画面表示する際の表示解像度、のほか、符号化に関するキーフレーム、端末でのメディア再生機能に関するモニタサイズ、モニタ解像度、端末でのメディア再生の際の室内照度などのパラメータからなる。
【0026】
特性係数記憶部15は、ハードディスクやメモリなどの記憶装置からなり、演算処理部16での処理動作に用いる各種特性係数を記憶する複数の個別記憶部を有している。特性係数記憶部15の主な個別記憶部として、映像代表品質特性係数記憶部15A、映像最大差分品質特性係数記憶部15B、代表Iフレーム情報量特性係数記憶部15C、および映像差分品質特性係数記憶部15Dがある。
【0027】
映像代表品質特性係数記憶部15Aは、符号化レート14Bから映像代表品質22を推定する映像代表品質推定モデルを特定するための映像代表品質特性係数を、特性係数特定パラメータ14Cの値に対応して予め記憶する機能と、入力された特性係数特定パラメータ14Cに対応する映像代表品質特性係数を読み出して映像代表品質推定部16Bへ出力する機能とを有している。
【0028】
映像最大差分品質特性係数記憶部15Bは、符号化レート14Bから映像最大差分品質23を推定する映像最大差分品質推定モデルを特定するための映像最大差分品質特性係数を、特性係数特定パラメータ14Cの値に対応して予め記憶する機能と、入力された特性係数特定パラメータ14Cに対応する映像最大差分品質特性係数を読み出して映像最大差分品質推定部16Cへ出力する機能とを有している。
【0029】
代表Iフレーム情報量特性係数記憶部15Cは、符号化レート14Bから代表Iフレーム情報量24を推定する代表Iフレーム情報量推定モデルを特定するための代表Iフレーム情報量特性係数を、特性係数特定パラメータ14Cの値に対応して予め記憶する機能と、入力された特性係数特定パラメータ14Cに対応する代表Iフレーム情報量特性係数を読み出して代表Iフレーム情報量推定部16Dへ出力する機能とを有している。
【0030】
映像差分品質特性係数記憶部15Dは、映像差分品質26を推定する映像差分品質推定モデルを映像最大差分品質23と差分Iフレーム情報量25から特定するための映像差分品質特性係数を、特性係数特定パラメータ14Cの値に対応して予め記憶する機能と、映像最大差分品質23と差分Iフレーム情報量25とに対応する映像最分品質特性係数を読み出して映像差分品質算出部16Fへ出力する機能とを有している。
【0031】
図3は、特性係数特定パラメータと各種特性係数との関係を示す説明図である。図3の例では、特性係数特定パラメータ14Cとして、CODEC(符号化方式)、映像フォーマット、サービス種別が用いられている。CODECについては、H.264,H.263,H261,MPEG1,MPEG2,MPG4などの値をとり、映像フォーマットについては、HD,SD,VGA,QVGA,CIF,QCIFなどの値をとり、サービス種別については、IPTV,VoD,TV電話、TV会議などの値をとる。
【0032】
特性係数記憶部15では、これら特性係数特定パラメータ14Cの組合せごとに、映像代表品質特性係数(v1〜v3)、映像最大差分品質特性係数(v4〜v9)、代表Iフレーム情報量特性係数(t1〜t3)、および映像差分品質特性係数(a,b)が予め対応付けられて、それぞれ映像代表品質特性係数記憶部15A、映像最大差分品質特性係数記憶部15B、代表Iフレーム情報量特性係数記憶部15C、および映像差分品質特性係数記憶部15Dに予め格納されている。
【0033】
演算処理部16は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14のプログラム14Pを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム14Pとを協働させて映像品質推定処理に用いる各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部16で実現される主な処理部として、パケット分析部16A、映像代表品質推定部16B、映像最大差分品質推定部16C、代表Iフレーム情報量推定部16D、差分Iフレーム情報量算出部16E、映像差分品質算出部16F、および映像個別品質算出部16Gが設けられている。このうち、映像最大差分品質推定部16C、代表Iフレーム情報量推定部16D、差分Iフレーム情報量算出部16E、および映像差分品質算出部16Fにより、映像差分品質推定部17が構成されている。
【0034】
パケット分析部16Aは、入力された対象映像通信に関するパケットを分析して、個別Iフレーム情報量14Aおよび符号化レート14Bを抽出し、記憶部14へ保存する機能を有している。
【0035】
映像代表品質推定部16Bは、特性係数特定パラメータ14Cに応じて映像代表品質特性係数記憶部15Aから読み出された映像代表品質特性係数により映像代表品質推定モデルを導出する機能と、この映像代表品質推定モデルから記憶部14の符号化レート14Bに対応する映像代表品質22を推定する機能とを有している。
【0036】
映像最大差分品質推定部16Cは、特性係数特定パラメータ14Cに応じて映像最大差分品質特性係数記憶部15Bから読み出された映像最大差分品質特性係数により映像最大差分品質推定モデルを導出する機能と、この映像最大差分品質推定モデルから記憶部14の符号化レート14Bに対応する映像最大差分品質23を推定する機能とを有している。
【0037】
代表Iフレーム情報量推定部16Dは、特性係数特定パラメータ14Cに応じて代表Iフレーム情報量特性係数記憶部15Cから読み出された代表Iフレーム情報量特性係数により代表Iフレーム情報量推定モデルを導出する機能と、この代表Iフレーム情報量推定モデルから記憶部14の符号化レート14Bに対応する代表Iフレーム情報量24を推定する機能とを有している。
【0038】
差分Iフレーム情報量算出部16Eは、代表Iフレーム情報量推定部16Dで推定された代表Iフレーム情報量24と記憶部14の個別Iフレーム情報量14Aとから、差分Iフレーム情報量25を算出する機能を有している。
【0039】
映像差分品質算出部16Fは、特性係数特定パラメータ14Cに応じて映像差分品質特性係数記憶部15Dから読み出された映像差分品質特性係数により映像差分品質推定モデルを導出する機能と、この映像差分品質推定モデルから、映像最大差分品質推定部16Cで推定された映像最大差分品質23と差分Iフレーム情報量算出部16Eで算出された差分Iフレーム情報量25とに対応する映像差分品質26を推定する機能とを有している。
【0040】
映像個別品質算出部16Gは、映像代表品質推定部16Bで推定された映像代表品質22と映像差分品質算出部16Fで推定された映像差分品質26とから映像個別品質27を算出する機能を有している。
【0041】
[映像品質推定装置の動作]
次に、図2〜図4を参照して、本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の動作について説明する。図4は、本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像個別品質推定処理を示すフローチャートである。
【0042】
まず、以下の説明で用いる各種データの定義について説明する。
映像個別品質27(Vqin)は、個々の映像通信に対する個別の映像品質のことを指し、映像品質推定装置1は、入力された対象映像通信に関するパケットに基づいて、この映像個別品質27を推定する。一方、映像代表品質22(Vqrep)は、無限に存在する映像集合の中にある任意の映像部分集合の平均により定義される映像品質である。実際には、これら映像個別品質27および映像代表品質22は、受信側の通信端末2Bで復号されて再生された映像から視聴者が実感する主観映像品質からなる。
【0043】
映像差分品質26(ΔIc±)は、映像代表品質22と映像個別品質27との差で定義される値である。但し、映像差分品質26は、正負の値をとる。
映像最大差分品質23(ΔIcMax±)は、映像代表品質22と映像個別品質27との差が最大となる差分品質で定義される値であり、例えば、映像代表品質22と任意の映像Aの映像個別品質27との差が最大であるとすると、この値を映像最大差分品質と定義する。但し、映像最大差分品質23は、正負の値をとる。
【0044】
個別Iフレーム情報量14A(TSIin)は、ある品質推定区間(例えば、10秒間、100秒間など)において、対象映像のIPパケットからIフレームのTSパケット数(ビットレートに換算したものでもよい)をカウントし、区間内のIフレーム数で割った値、つまり、単位Iフレーム当たりのTSパケット数で定義される。なお、TS(Transport Stream)パケットとは、映像信号をMPEG−2規格に基づき圧縮符号化して生成したTSストリームを固定長で分割して生成したものである。この際、各フレームは、1つ以上のTSパケットで個々のフレームが構成されることになり、単位Iフレーム当たりに含まれるTSパケット数が多いほど、Iフレームに含まれる情報量が多く、より精細に表現されていることが分かる。
【0045】
代表Iフレーム情報量24(TSIrep)は、上記品質推定区間おいて、上記映像部分集合の各映像のIPパケットから計算した単位Iフレーム当たりのTSパケット数を、これら映像で平均して得られる代表値で定義される。
差分Iフレーム情報量25(ΔTSI)は、個別Iフレーム情報量14Aと代表Iフレーム情報量24との差分値で定義される。
【0046】
次に、図2〜図4を参照して、映像品質推定装置1の映像個別品質推定処理について詳細に説明する。
映像品質推定装置1の演算処理部16は、操作入力部11により検出されたオペレータの処理開始指示に応じて、図2および図4の映像個別品質推定処理を開始する。
【0047】
まず、演算処理部16は、IPネットワーク3から通信I/F部13により受信した映像通信に用いるIPパケットを、パケット分析部16Aにより分析する。このIPパケット内には、IPヘッダ、TS(Transport stream)パケット、ES(Elementary Stream)などが含まれている。
パケット分析部16Aは、これら入力IPパケットから、個別Iフレーム情報量14Aおよび符号化レート14Bを抽出し、記憶部14へ保存する(ステップ100)。
【0048】
次に、演算処理部16は、映像代表品質推定部16Bにより、記憶部14に予め保存されている特性係数特定パラメータ14Cに応じて映像代表品質特性係数記憶部15Aから映像代表品質特性係数(v1〜v3)を読み出し、これら映像代表品質特性係数に基づいて映像代表品質推定モデルを導出する(ステップ101)。映像代表品質推定部16Bは、この映像代表品質推定モデルから、記憶部14の符号化レート14Bに対応する映像代表品質22を推定する(ステップ102)。
【0049】
図5は、映像代表品質と符号化レートとの関係を示すグラフである。通常、映像代表品質22は、符号化レートの増加(減少)に従い、ある最大(最小)品質に漸近するという特性を有している。映像代表品質推定モデルは、この特性を利用して近似できる。映像代表品質特性値(映像代表品質から1を引いた値)をIcrepとし、符号化レートをBrとした場合、映像代表品質Vqrepは、次の関数式(1)で表される。映像代表品質特性係数v1〜v3は定数である。
【数1】

【0050】
次に、演算処理部16は、映像最大差分品質推定部16Cにより、記憶部14の特性係数特定パラメータ14Cに応じて映像最大差分品質特性係数記憶部15Bから映像最大差分品質特性係数(v4〜v9)を読み出し、これら映像最大差分品質特性係数により映像最大差分品質推定モデルを導出する(ステップ103)。映像最大差分品質推定部16Cは、この映像最大差分品質推定モデルから、記憶部14の符号化レート14Bに対応する映像最大差分品質23を推定する(ステップ104)。
【0051】
図6は、映像最大差分品質と符号化レートの対数値との関係を示すグラフである。差分Iフレーム情報量25が0より大きい場合、映像最大差分品質23は、符号化レートの増加に伴って増加し、符号化パラメータのさらなる増加に伴って映像最大差分品質が減少する特性を有している。また、差分Iフレーム情報量25が0より小さい場合、映像最大差分品質23は、符号化レートの増加に伴って減少し、符号化パラメータのさらなる増加に伴って映像最大差分品質が増加する特性を有している。映像最大差分品質推定モデルは、この特性を利用して近似できる。符号化レートをBrとした場合、差分Iフレーム情報量ΔIcMax±は、次の関数式(2)で表される。但し、差分Iフレーム情報量25(ΔTSI)の正負に応じて、関数式ΔIcMax+,ΔIcMax-は切り替えられる。映像最大差分品質特性係数(v4〜v9)は定数である。
【数2】

【0052】
次に、演算処理部16は、代表Iフレーム情報量推定部16Dにより、記憶部14の特性係数特定パラメータ14Cに応じて代表Iフレーム情報量特性係数記憶部15Cから代表Iフレーム情報量特性係数(t1〜t3)を読み出し、これら代表Iフレーム情報量特性係数により代表Iフレーム情報量推定モデルを導出する(ステップ105)。代表Iフレーム情報量推定部16Dは、この代表Iフレーム情報量推定モデルから、記憶部14の符号化レート14Bに対応する代表Iフレーム情報量24を推定する(ステップ106)。
【0053】
図7は、代表Iフレーム情報量と符号化レートとの関係を示すグラフである。通常、代表Iフレーム情報量24は、符号化レートの増加に伴って増加する特性を有している。代表Iフレーム情報量推定モデルは、この特性を利用して例えば指数関数で近似できる。符号化レートをBrとした場合、代表Iフレーム情報量TSIrepは、次の関数式(3)で表される。代表Iフレーム情報量特性係数(t1〜t3)は定数である。
【数3】

【0054】
次に、演算処理部16は、差分Iフレーム情報量算出部16Eにより、代表Iフレーム情報量推定部16Dで推定された代表Iフレーム情報量24と記憶部14の個別Iフレーム情報量14Aとの差から、差分Iフレーム情報量25を算出する(ステップ107)。代表Iフレーム情報量をTSIrepとし、個別Iフレーム情報量をTSIinとした場合、差分Iフレーム情報量ΔTSIは、次の式(4)に基づいて算出される。
【数4】

【0055】
次に、演算処理部16は、映像差分品質算出部16Fにより、記憶部14の特性係数特定パラメータ14Cに応じて映像差分品質特性係数記憶部15Dから映像差分品質特性係数(a,b)を読み出し、これら映像差分品質特性係数により映像差分品質推定モデルを導出する(ステップ108)。映像差分品質算出部16Fは、この映像差分品質推定モデルから、映像最大差分品質推定部16Cで推定された映像最大差分品質23と差分Iフレーム情報量算出部16Eで算出された差分Iフレーム情報量25とに対応する映像差分品質26を推定する(ステップ109)。
【0056】
図8は、映像差分品質とΔTSI・ΔIcMax±との関係を示すグラフである。通常、映像差分品質26は、映像最大差分品質23と差分Iフレーム情報量25との積と相関が高いという特性を有している。映像差分品質推定モデルは、この特性を利用して例えば線形関数で近似できる。差分Iフレーム情報量をΔTSIとした場合、映像差分品質ΔIc±は、次の関数式(5)で表される。映像差分品質特性係数(a,b)は定数である。但し、ΔIcMax+,ΔIcMax-に応じてΔIc+,ΔIc-は切り替えられる。
【数5】

【0057】
次に、演算処理部16は、映像個別品質算出部16Gにより、映像代表品質推定部16Bで推定された映像代表品質22と映像差分品質算出部16Fで推定された映像差分品質26との和から映像個別品質27を算出する(ステップ110)。映像代表品質をVqrepとし、映像差分品質をΔIc±とし、映像代表品質特性値(映像代表品質から1を引いた値)をIcrepとした場合、映像個別品質Vqinは次の式(6)で表される。
【数6】

【0058】
映像個別品質算出部16Gは、算出した映像個別品質27を記憶部14に保存し、あるいは画面表示部12へ画面表示し、あるいは通信I/F部13から外部装置(図示せず)へ送信した後、一連の映像個別品質推定処理を終了する。
【0059】
図9は、従来の映像品質推定方法による推定結果を示すグラフである。図10は、本実施の形態にかかる映像品質推定方法による推定結果を示すグラフである。これらいずれのグラフも、映像の動き量やフレーム単位の精細度が、平均的な映像とは異なるような映像の映像通信について、実際のオピニオン評価により得た主観評価値Vqs(縦軸)と映像品質推定方法で推定した映像個別品質27である推定評価値Vqe(横軸)とを示している。
【0060】
これらグラフでは、個々の映像通信に関するデータが、原点を通る傾き45度の直線に近いほど、主観評価値と推定評価値の差、すなわち推定誤差が小さく精度が高いことを表す。
図9では、ほぼ同一の推定評価値に対して主観評価値が大きくばらついている領域があるのに対して、図10では、原点を通る傾き45度の直線に沿って各データが分布しており、本実施の形態にかかる映像品質推定方法により、映像の動き量やフレーム単位の精細度が、平均的な映像とは異なるような映像の映像通信についても、映像品質の推定誤差を低減されていることがわかる。
【0061】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、映像代表品質推定部16Bにより、複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定し、映像差分品質推定部17により、映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータと個別Iフレーム情報量とに対応する映像差分品質を推定し、映像個別品質算出部16Gにより、映像代表品質と映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出するようにしたので、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量を考慮した映像品質を推定することができる。
【0062】
特に、MPEG−2などの圧縮符号化方式では、動き量の多い映像の場合にはIフレームの符号量を減らしフレーム間予測方式のBフレームやPフレームについて符号量を増配しようとする特徴と、精細度が高い映像の場合には、BフレームやPフレームの符号量を減らしフレーム内予測方式のIフレームについて符号量を増やす特徴がある。
本実施の形態では、映像の動き量やフレーム単位の精細度に応じて個別Iフレーム情報量が変化するという特徴に着目し、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量を考慮して映像品質を推定している。
【0063】
このため、映像の動き量やフレーム単位の精細度が、平均的な映像とは異なるような映像の映像通信についても、IPパケットから抽出可能なパラメータに基づいて、誤差の少ない映像品質を推定することができる。
したがって、ネットワーク経由で行うIPTVサービス、映像配信サービス、映像コミュニケーションサービスなどの映像通信サービスを利用するユーザに対して、ある一定以上の映像品質を保っているかどうかを容易に判断することができる。これにより、上記サービスで用いる品質パラメータの設計や、提供中のサービスの品質実態を把握・管理することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、映像通信のIPパケットから容易に抽出可能な個別Iフレーム情報量や符号化レートを用いて映像品質を推定するようにしたので、著作権保護の観点から映像メディアに関する情報が暗号化されているようなケースや、品質推定に要する計算能力が十分にないようなケースでも、誤差の少ない映像品質を推定することが可能となる。但し、暗号化されているケースで個別Iフレーム情報量を計算する際には、Iフレームを特定する必要がある。そのような場合には、例えば以下の非特許文献を参照してIフレームを特定するようにしてもよく(牛木,他2名、「TSヘッダ情報を用いた映像フレーム種別推定法の有効性検証」、信学技報, vol.107, no.312, CQ2007-74, pp.15-19)、他の方法で特定してもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、映像差分品質算出部17として、個別Iフレーム情報量と複数の映像から得られた単位Iフレーム数当たりの情報量の平均値を示す代表Iフレーム情報量との差から差分Iフレーム情報量を算出する差分Iフレーム情報量算出部16Eと、映像代表品質と映像個別品質との差分の最大値を示す映像最大差分品質を推定する映像最大差分品質推定モデルから、品質パラメータに対応する映像最大差分品質を推定する映像最大差分品質推定部16Cと、映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の映像差分品質と差分Iフレーム情報量とに対応する映像個別品質を算出する映像差分品質算出部16Fとが設けられている。これにより、対象となる映像通信の品質パラメータを考慮して、高い精度で映像最大差分品質を推定でき、結果として、個別Iフレーム情報量を考慮した映像差分品質を精度よく推定することが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、代表Iフレーム情報量推定部16Dにより、代表Iフレーム情報量と品質パラメータとの関係を示す代表Iフレーム情報量推定モデルから、品質パラメータに対応する代表Iフレーム情報量を推定している。これにより、対象となる映像通信の品質パラメータを考慮して、高い精度で代表Iフレーム情報量を推定でき、結果として、個別Iフレーム情報量を考慮した映像差分品質を精度よく推定することが可能となる。
【0067】
[実施の形態の拡張]
以上の説明では、映像差分品質推定モデルから映像差分品質26を推定する際、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量と符号化レートとに基づいて、推定・算出した映像最大差分品質23、代表Iフレーム情報量24、および差分Iフレーム情報量25からなる中間パラメータを用いて映像差分品質26を推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量と符号化レートとに基づいて、他の中間パラメータを介して映像差分品質26を推定してもよい。あるいは、対象となる映像通信の個別Iフレーム情報量と符号化レートとに基づいて、直接、映像差分品質26を推定するモデルを作成してもよい。
【0068】
また、映像代表品質推定モデル、映像最大差分品質推定モデル、代表Iフレーム情報量推定モデル、および映像差分品質推定モデルについては、複数の映像通信から個々の特性を予め計測して、得られた計測データに対して例えば最小二乗法による収束演算を行うことにより、それぞれのモデルを作成すればよい。また、これらモデルは、関数式を用いて実現した場合を例として説明したが、例えばニューラルネットワークや事例ベースなど、入出力特性のみが特定されるようなブラックボックスモデルを用いて実現してもよい。また、対象となる映像が特定のものに限定される場合、あるいはある程度の推定誤差が許容される場合、例えば映像代表品質22、映像最大差分品質23、あるいは代表Iフレーム情報量24として、固定値を用いてもよい。
【0069】
また、以上では、対象映像通信の品質パラメータとして符号化レート14Bを用いた場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、フレームレートなどの他の品質パラメータを用いてもよい。この際、前述したように、当該品質パラメータを用いたモデルを予め作成しておけばよい。また、品質パラメータは1つではなく、複数の品質パラメータを同時に使用してもよく、中間パラメータごとに任意の品質パラメータを用いて推定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の動作フローを示す説明図である。
【図3】特性係数特定パラメータと各種特性係数との関係を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態にかかる映像品質推定装置の映像個別品質推定処理を示すフローチャートである。
【図5】映像代表品質と符号化レートとの関係を示すグラフである。
【図6】映像最大差分品質と符号化レートの対数値との関係を示すグラフである。
【図7】代表Iフレーム情報量と符号化レートとの関係を示すグラフである。
【図8】映像差分品質とΔTSI・ΔIcMax±との関係を示すグラフである。
【図9】従来の映像品質推定方法による推定結果を示すグラフである。
【図10】本実施の形態にかかる映像品質推定方法による推定結果を示すグラフである。
【図11】ITU−T勧告G.1070で用いる品質推定モデルの品質推定精度を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1…映像品質推定装置、11…操作入力部、12…画面表示部、13…通信I/F部、14…記憶部、14A…個別Iフレーム情報量、14B…符号化レート、14C…特性係数特定パラメータ、14P…プログラム、15…特性係数記憶部、15A…映像代表品質特性係数記憶部、15B…映像最大差分品質特性係数記憶部、15C…代表Iフレーム情報量特性係数記憶部、15D…映像差分品質特性係数記憶部、16…演算処理部、16A…パケット分析部、16B…映像代表品質推定部、16C…映像最大差分品質推定部、16D…代表Iフレーム情報量推定部、16E…差分Iフレーム情報量算出部、16F…映像差分品質算出部、16G…映像個別品質算出部、17…映像差分品質推定部、2A,2B…通信端末、3…IPネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Iフレームを含む複数のフレームに映像信号を圧縮符号化してパケットで送信する映像通信の映像品質を推定する映像品質推定装置であって、
入力された前記パケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出するパケット分析部と、
複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定する映像代表品質推定部と、
前記映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の個別Iフレーム情報量と品質パラメータとに対応する映像差分品質を推定する映像差分品質推定部と、
前記映像代表品質と前記映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する映像個別品質算出部と
を備えることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像品質推定装置において、
前記映像差分品質推定部は、
前記個別Iフレーム情報量と複数の映像から得られた単位Iフレーム数当たりの情報量の平均値を示す代表Iフレーム情報量との差から差分Iフレーム情報量を算出する差分Iフレーム情報量算出部と、
前記映像代表品質と前記映像個別品質との差分の最大値を示す映像最大差分品質を推定する映像最大差分品質推定モデルから、前記品質パラメータに対応する映像最大差分品質を推定する映像最大差分品質推定部と、
前記映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の映像差分品質と差分Iフレーム情報量とに対応する映像個別品質を算出する前記映像差分品質算出部と
を備えることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記映像差分品質推定部は、代表Iフレーム情報量と品質パラメータとの関係を示す代表Iフレーム情報量推定モデルから、前記品質パラメータに対応する代表Iフレーム情報量を推定する代表Iフレーム情報量推定部をさらに備えることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の映像品質推定装置において、
前記代表Iフレーム情報量推定モデルは、符号化レートからなる品質パラメータの増加に伴って代表Iフレーム情報量が増加する特性からなることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項5】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記映像最大差分品質推定モデルは、符号化レートからなる品質パラメータの増加に伴って映像最大差分品質が増加(または減少)し、当該品質パラメータのさらなる増加に伴って映像最大差分品質が減少(または増加)する特性からなることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項6】
請求項2に記載の映像品質推定装置において、
前記映像差分品質推定モデルは、差分Iフレーム情報量と映像最大差分品質との積の増加に伴って、映像差分品質が増加する特性からなることを特徴とする映像品質推定装置。
【請求項7】
Iフレームを含む複数のフレームに映像信号を圧縮符号化してパケットで送信する映像通信の映像品質を推定する映像品質推定方法であって、
入力された前記パケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出するパケット分析ステップと、
複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定する映像代表品質推定ステップと、
前記映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の個別Iフレーム情報量と品質パラメータとに対応する映像差分品質を推定する映像差分品質推定ステップと、
前記映像代表品質と前記映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する映像個別品質算出ステップと
を備えることを特徴とする映像品質推定方法。
【請求項8】
Iフレームを含む複数のフレームに映像信号を圧縮符号化してパケットで送信する映像通信の映像品質を推定する映像品質推定装置のコンピュータに、
入力された前記パケットを分析して、当該映像通信の単位Iフレーム数当たりの情報量を示す個別Iフレーム情報量と、当該映像通信の映像品質に関する品質パラメータとを抽出するパケット分析ステップと、
複数の映像の映像品質を平均化して得られた映像代表品質を推定する映像代表品質推定モデルから、当該映像通信の品質パラメータに対応する映像代表品質を推定する映像代表品質推定ステップと、
前記映像代表品質と当該映像の映像個別品質との差に相当する映像差分品質を推定する映像差分品質推定モデルから、当該映像通信の個別Iフレーム情報量と品質パラメータとに対応する映像差分品質を推定する映像差分品質推定ステップと、
前記映像代表品質と前記映像差分品質とから当該映像通信の映像個別品質を算出する映像個別品質算出ステップと
を実行させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−194609(P2009−194609A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32816(P2008−32816)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】