説明

映像表示システム

【課題】表示部における人体像が表示された領域を鮮明化処理する。
【解決手段】撮像装置11と、撮像装置11により撮像された画像を表示する表示部21と、撮像装置11により撮像された画像を映像信号処理して表示部21へと出力表示させる映像信号処理部22とを備えた映像表示システムであって、表示部21に表示する画像について画像処理により人体像4を推定して検出し、検出した人体像4の表示領域に対して画像鮮明化処理の制御を行う画像分析部23を備えている映像表示システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、表示された画像を鮮明化することが可能な映像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特開2004−180165号公報(特許文献1)に示されるように、鮮明化処理が可能な映像表示システムは知られている。この映像表示システムは、図4に示すように、露出の調整が可能な撮像装置91と、撮像装置91の各画素の出力をA/D変換するA/D変換手段92と、A/D変換手段92の出力に基づいてヒストグラムを作成するヒストグラム作成手段93と、ヒストグラムの一部を除去するヒストグラム端除去手段94と、ヒストグラムの重心を算出する重心算出手段95と、予め設定された基準範囲に対するヒストグラムの重心のずれの向きと大きさとを算出する比較手段96と、基準範囲に対するヒストグラムの重心のずれの向きと大きさとに基づいてヒストグラムの重心が基準値に近付くように露出を制御する露出制御手段97とを備えている。
【0003】
したがって、この場合には、撮像装置91の露出を制御することで、表示部(不図示)全体の映像を鮮明化することができる。
【特許文献1】特開2004−180165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例である映像表示システムにあっては、表示部全体の映像を鮮明化するものであり、表示部における特定の領域を鮮明化させたい場合においては、有効な鮮明化処理を行えるシステムとはなっていなかった。例えば、テレビドアホン機器においては、表示部全体に鮮明化処理を行うという画像処理の負荷が必要であり、そのような負荷を容認して表示部全体に鮮明化処理を行っても、人体像が表示された領域が他の領域に比べてより鮮明化されるものではなく、背景光の強弱の差が大きければ依然として人体像がはっきりとしないままであろうと推測される。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、その課題は、表示部における人体像が表示された領域を鮮明化処理することが可能な映像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明では、撮像装置と、撮像装置により撮像された画像を表示する表示部と、撮像装置により撮像された画像を映像信号処理して表示部へと出力表示させる映像信号処理部とを備えた映像表示システムであって、表示部に表示する画像について画像処理により人体像の表示領域を推定して検出し、検出した人体像の表示領域に対して画像鮮明化処理の制御を行う画像分析部を備えたことを特徴としている。
【0007】
又、本願請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の検知器において、撮像装置の撮像画角範囲内に人体が映っていない状態だと推測される人体不在期間にて撮像装置により撮像された画像を記録するメモリを備えており、このメモリに記録された最新の画像と、撮像画角範囲内に人体が映っている現時点で撮像された画像とを比較することで、現時点での人体像の表示領域を推定して検出するようになしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本願請求項1記載の映像表示システムにおいては、表示部に表示する画像について画像処理により人体像の表示領域を推定して検出し、検出した人体像の表示領域に対して画像鮮明化処理の制御を行うように構成したため、人体像が表示された領域のみを鮮明化して表示部に表示することができる。
【0009】
又、本願請求項2記載の映像表示システムによれば、請求項1に記載の映像表示システムにおいて、撮像装置の撮像画角範囲内に人体が映っていない状態だと推測される人体不在期間にて撮像装置により撮像された画像を記録するメモリを備えており、このメモリに記録された最新の画像と、撮像装置の撮像画角範囲内に人体が映っている状態だと推測される人体存在期間のうち現時点で撮像された画像とを比較することで、現時点での人体像の表示領域を推定して検出するようにしたので、人体像の表示領域を信頼性高く特定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜3は、本願発明の一実施形態である映像表示システムを示している。この映像表示システムは、撮像装置11と、撮像装置11により撮像された画像を表示する表示部21と、撮像装置11により撮像された画像を映像信号処理して表示部21へと出力表示させる映像信号処理部22とを備えた映像表示システムであって、表示部21に表示する画像について画像処理により人体像4を推定して検出し、検出した人体像4の表示領域に対して画像鮮明化処理の制御を行う画像分析部23を備えている。
【0011】
又、撮像装置11の撮像画角範囲内に人体が映っていない状態だと推測される人体不在期間にて撮像装置11により撮像された画像を記録するメモリ22aを備えており、このメモリ22aに記録された最新の画像と撮像画角範囲内に人体が映っている現時点で撮像された画像とを比較することで、現時点での人体像の表示領域を推定して検出するようになしている。
【0012】
以下、この実施形態の映像表示システムを、より具体的詳細に説明する。この映像表示システムは、図2に示すように、宅外に設置されたドアホン子機1と、宅内に設置されドアホン子機1に建物内伝送線で接続される親機2とで構成され、親機2とドアホン子機1との間では音声信号及び映像信号が周波数変調方式により伝送されるものである。ただし、本実施形態では、映像信号はドアホン子機1から親機2への一方向にのみ伝送されるものとする。
【0013】
ドアホン子機1は、複数の画素を有する撮像素子を具備した撮像装置11を備えている。親機2は、図1に示すように、通信部24と、映像信号処理部22と、表示部21と、音声信号処理部25と、音声出入力部28と、電源部27と、制御部26とを備えている。
通信部24は、撮像装置11とのあいだの通信インターフェースであり、伝送線から周波数多重伝送で送られてくる音声及び映像の周波数多重化信号を分離して、映像信号を映像信号処理部22へ、受話音声信号を音声信号処理部25へと、それぞれ伝送する。更に、通信部24は音声信号処理部25から送られてくる送話音声信号を、伝送線を介してドアホン子機1へと伝送する。なお、通信部24は、撮像装置11から伝送された各画素の出力をA/D変換して輝度データを生成し、映像信号の一部として制御部26に伝送している。ここで、輝度データは、従来通り、RGBデータとともに、映像信号処理部22で信号処理されて、制御部26に伝送されるものであってもよい。
【0014】
映像信号処理部22は、撮像装置11により撮像された画像を映像信号処理して、映像信号として表示部21、及び制御部26へと伝送する。表示部21は、伝送された映像信号をもとに撮像装置11で撮像された画像を液晶パネル等の表示画面21aに表示している。
【0015】
又、映像信号処理部22は、メモリ22aを具備しており、撮像された画像をメモリ22aに記録するようになっている。メモリ22aに記録する画像としては、撮像装置11の撮像画角範囲内に人体が映っていない状態だと推測される人体不在期間にて撮像装置11により撮像された、人体不在時の画像が、記録される。また別のメモリ(不図示)又は映像フレームバッファも別途用意されており、こちらには、撮像装置11の撮像画角範囲内に人体が映っている状態だと推測される人体存在期間にて撮像装置11により撮像された、人体在時の画像が、記録される。
【0016】
メモリ22aに記録される人体不在時の画像は、例えば、ドアホン子機1の呼出釦が押されていない来客のない状態で、親機2がドアホン子機1に定期的に給電し、給電を受けてドアホン子機1が静止画を撮像して親機2へ伝送することで、メモリ22aに記録される。なお、ドアホン子機1が撮った静止画を親機2が受信したら、親機2はドアホン子機1への給電を停止し、その後、所定時間経過したら再び親機2はドアホン子機1への給電を行ってドアホン子機1が静止画を撮像して親機2へ伝送するという定期的な給電および画像取得を行うものとする。
【0017】
メモリ22a以外に記録される人体存在時の画像は、旧来どおり、ドアホン子機1の呼出釦が押された来客状態で親機2がドアホン子機1に給電し、来客が去るなど親機2がドアホン子機1への給電を停止するまでの間にドアホン子機1が定期的に撮った静止画を、親機2へ都度伝送することで、メモリ22a以外の別のメモリ等である所定の記録先に、記録される。
【0018】
又、メモリ22aに記録される人体不在時の画像を撮像するタイミングは、上述のように定期的に行ってもかまわないが、これ以外に、例えば、人体熱線を感知する人体検知センサ(不図示)の人体検知反応が得られない状態であってもよいし、又、親機2に設けられたタイマー(不図示)の時刻情報をもとに決定してもよい。このようにすれば、背景光が変化しやすく撮像装置11付近の来客の周囲の明るさが変化しやすい朝方或いは夕方の前後において画像を記録するように時間帯設定することもできるので、後述の本願発明の効果を充分に発揮できる。もちろん、親機2に設けられたタイマー(不図示)の時刻情報を可変に設定可能とすれば、任意の時間帯を指定することができる。
【0019】
又、この人体不在時の画像を記録するタイミングは、親機2に設けられたタイマー(不図示)の時刻情報によるものでなくとも、別の方法で決定されるものであってもよく、例えば住戸内の住人が親機2に操作入力を行うときに人体不在時の画像を撮像させるものであってもよい。このようにすれば、住戸内の住人が来客のない状態を意識して、好みの時間帯における人体不在時の画像を撮像できる。
【0020】
音声信号処理部25は、送話音声及び受話音声を音声信号処理して、マイク及びスピーカーを備えて音声出入力部28に送受話音声信号を入出力するものであって、例えば音声スイッチやエコーキャンセラを備えてハンズフリー通話を実現するものである。又、電源部27は親機2全体の動作電力を供給している一方で、ドアホン子機1への供給電源にも使われる。
【0021】
制御部26は、音声および映像とは異なる周波数帯で周波数多重化されてドアホン子機1から送られてくる制御信号を受信すると、その制御信号の制御依頼内容に応じて、映像信号処理部22又は音声信号処理部25の種々の動作を制御する。又、制御部26には、人体像検出アルゴリズムを有する画像分析部23を具備している。
【0022】
画像分析部23は、人体像検出アルゴリズムにより人体像4を推定して検出し、表示画面21aにおける人体像4が表示されていると推測された領域である人体像領域に対して鮮明化処理をかける制御を行っている。
【0023】
具体的な人体像検出方法は、メモリ22aに記録された人体不在時の画像のうち最新の画像を標準画像として、玄関のドアホン子機1に来客中である現時点で撮像された人体存在時の画像と差分をとることで、現時点の画像において標準画像から変化している部分を人体像4として推定し検出する。なお、人体像の2次元輪郭サンプル形状をあらわす輪郭サンプルデータを予め記憶しておき、検出された人体像4と、人体像の輪郭サンプルとを照合して、人体像4における顔画像を抽出し、顔画像の表示領域とおぼしき推定画像領域のみを鮮明化処理するようになしてもよい。
【0024】
又、画像分析部23の機能を有する回路が実装されるプリント基板には出力端子(不図示)が設けられており、この出力端子から、計測器のプローブ等により画像分析部23から出力される画像鮮明化処理の出力信号を取り出せるようなっている。こうすることで、計測器によって出力信号を把握することが可能となり、施工時やメンテナンス時の動作確認用途において非常に有効である。
【0025】
なお、これら映像、音声の各伝送の過程では、A/D変換またはD/A変換を施すのは従来の公知技術であるから、説明を省略する。
【0026】
この映像表示システムは、例えば図2に示すように、集合住宅等に設置された場合、撮像装置11の対面に位置する住戸入り口の照明器具3等、周囲光源を画面に納めてしまうことがある。この場合、撮像装置11によって撮像された人体像4が、周囲光源により見え辛く表示されてしまうため、鮮明化処理を行うことが有効となる。
【0027】
以下、図1、2より、この映像表示システムにおける鮮明化処理について説明する。住戸人は表示画像の鮮明化処理として、輝度平均化処理と露出補正の二通りの鮮明化処理方法を選択することが可能である。まず、輝度平均化処理について説明する。
輝度平均化処理を行う場合、画像分析部23は、検出された人体像領域5に限定した輝度データを読み出し平均輝度を算出する。算出された平均輝度データは、鮮明化処理信号として制御部26から映像信号処理部22へと伝送され、表示部21に表示される画像は、人体像領域5のみにおいて、算出された平均輝度で表示するように制御される。
【0028】
なお、この輝度平均化処理は、撮像装置11で撮像した映像の録画データを再生する場合においても利用することができるものである。したがって、例えば、撮像装置11が留守中に不審者の映像を録画していた場合において、不審者の顔を鮮明化させて防犯に役立てることができる。
【0029】
次に、露出補正を行う場合は、画像分析部23は、検出された人体像領域5の画素値データに限定して、輝度に対する画素数を示す輝度ヒストグラムを作成する。輝度ヒストグラムを作成した後、従来例(特開2004−180165号公報)に示された方法と同様に、予め設定された輝度の最大値及び最小値から一定幅の範囲を輝度ヒストグラムから除去し、残った輝度ヒストグラムの重心、及び基準範囲と重心との差を算出する。
【0030】
なお、算出に使われる計算式は従来例(特開2004−180165号公報)と同じ式を用いているため、ここでは省略する。又、予め設定される輝度の最大値、最小値、及び基準範囲は、必要に応じてユーザーが設定変更できるようになっている。
【0031】
制御部26は、画像分析部23で作成された輝度ヒストグラム、算出した重心及び基準範囲と重心との差等の情報を、鮮明化処理信号として通信部24に伝送し、算出された重心が基準範囲内におさまるように撮像装置11の露出補正を行う。なお、露出補正は、撮像装置11が自機の絞り量やシャッタースピードを調節することによって行う。
【0032】
次に、この映像表示システムの映像処理についての動作を図3に示すフロー図により説明する。まず、訪問者がドアホン子機1から住戸人を呼び出すと(ステップS01)、ドアホン子機1からの信号を受けた制御部26の画像分析部23において人体像4の検出がなされる(ステップS02,S03)。この際、訪問者が屈んでいたりして人体像4の検出に失敗した場合は、新たに撮像された画像を用いて再び人体像4の検出を行い、人体像4が正常に検出されるまでこの動作を繰り返す。ただし、一定時間経過しても人体像4が正常に検出されなかった場合は人体像4の検出を止め、検出できなかった旨を表示画面21aに表示するようになっている。
【0033】
正常に人体像4が検出され、訪問者の人体像領域5が特定された場合、制御部26は、輝度平均化と露出補正のどちらの画像鮮明化処理を行うかを選択させる選択画面を表示画面21aに表示させる(ステップS04)。最後に、住戸人が選択画面から一方の画像鮮明化処理を選択し(ステップS05)、選択信号を受けた制御部26によって人体像領域5の画像鮮明化処理がなされる(ステップS06)。
【0034】
したがって、この実施形態の映像表示システムにおいては、人体像4を検出し、人体像領域5に対して画像鮮明化処理を行うことが可能なため、表示部21における人体像4が表示された領域のみを鮮明化することができる。又、メモリ22aに記録された画像と、現時点で撮像された画像とを比較することで人体像4を検出しているため、人体像4の表示領域を推定して鮮明化することができる。
【0035】
又、人体像領域5を輝度平均化処理することが可能なため、一部突出した輝度をもつ領域があったとしても、選択した領域で平均化することで、突出した輝度に影響されることなく鮮明に画像を表示させることができる。又、撮像装置11の露出補正を行うことで画像鮮明化処理をすることが可能なため、撮像装置11に適切な条件で撮像させることができる。又、この映像表示システムは、上記二通りの鮮明化処理をすることが可能なため、必要に応じてどちらかの鮮明化処理を選択することができる。
【0036】
又、この映像表示システムを本実施形態の如くドアホン機器に利用した場合、住戸人は、撮像された訪問者が周囲光源等により見にくくなる場合においても、訪問者の人体像4が特定され、鮮明化処理により訪問者を際立たせて見やすくすることが可能となるため、より防犯に適したドアホン機器になるものである。
【0037】
又、画像分析部23は選択した領域について輝度ヒストグラムの作成等の演算処理をして露出補正を行うようになしているため、撮像した全領域について演算処理をする場合に比べて画面分析部における処理負荷をさらに軽減することができ、鮮明化処理を高速化することができる。
【0038】
したがって、明るさの変化への追従性が向上するため、特に、外乱光により明るさが変化しやすい環境に撮像装置11を設置する場合において、有効なシステムになるものである。
【0039】
又、明るさの変化への追従性を従来と同等とする場合においても、追従性を維持しながらも従来用いられた演算装置よりも安価な低速の演算装置を用いることができ、メモリ22aを少なくすることもできるため、コストを下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願発明の映像表示システムにおける親機のブロック図である。
【図2】本願発明の映像表示システムを示す説明図である。
【図3】同映像表示システムの動作を示すフロー図である。
【図4】従来の通信システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
11 撮像装置
21 表示部
22 映像信号処理部
22a メモリ
23 画像分析部
4 人体像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、撮像装置により撮像された画像を表示する表示部と、撮像装置により撮像された画像を映像信号処理して表示部へと出力表示させる映像信号処理部とを備えた映像表示システムであって、表示部に表示する画像について画像処理により人体像の表示領域を推定して検出し、検出した人体像の表示領域に対して画像鮮明化処理の制御を行う画像分析部を備えたことを特徴とする映像表示システム。
【請求項2】
撮像装置の撮像画角範囲内に人体が映っていない状態だと推測される人体不在期間にて撮像装置により撮像された画像を記録するメモリを備えており、このメモリに記録された最新の画像と、撮像画角範囲内に人体が映っている現時点で撮像された画像とを比較することで、現時点での人体像の表示領域を推定して検出するようになしたことを特徴とする請求項1に記載の映像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−34904(P2008−34904A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202747(P2006−202747)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】