説明

時刻データ取得方法

【課題】PHS等の携帯端末が内蔵する時刻表示を、正確な時刻(標準時刻)表示に自動的に修正する時刻データ取得方法を提供する。
【解決手段】PHS12は、レイヤ3メッセージ中に含まれるファシリティの空き領域を使用して、PHS12から基地局14への発呼時に、例えば時刻データ取得フラグ付CC呼設定メッセージを送信し、これを受信した交換局16から時刻データを、例えばCC応答メッセージ中に含まれるファシリティの空き領域を使用して送信する。これにより、PHS12のユーザが通話する毎に、PHS12内部の時刻データを正しい時刻に更新してPHS12の表示装置に表示可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時刻データ取得方法に関し、特に公衆PHS(Personal Handy-phone System)の表示装置に表示される時刻表示を取得した正確な時刻に修正して表示させる時刻データ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS、携帯電話およびPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯端末は、小型軽量であり、現在ではユーザが希望する殆ど全ての場所で、希望する時間に通信して希望する情報の取得、相手との通話又はメールや伝言(メッセージ)等を送信することが可能である。この利便性により、上述の如き携帯端末は急速に普及し、また各種の機能が追加され高性能化している。
【0003】
更に、デジタル機器である携帯端末は、内部回路の動作基準としてクロックを発生する基準クロック発生器を内蔵する。従って、携帯端末のユーザは、このクロックに基づく時刻を必要時にその表示装置である液晶表示パネル(LCD)に表示可能である。携帯端末のユーザは、外部との通信によることなく、この携帯端末の時刻表示により、現在時刻を知ることが可能であるので、腕時計の代わりとすることが可能である。
【0004】
斯かる携帯端末の時刻表示は、内蔵するクロック発生器に基づき且つクロック発生器は、一般に水晶振動子を使用するので、比較的高精度である。しかし、温度変化や時間の経過と共に不可避的に狂いが生じる。ユーザは、携帯端末の時刻表示が常時可能な限り正確であることを期待する。この課題乃至要求を満足するために、種々の技法が提案又は開示されている。
【0005】
携帯電話の時刻表示に狂いが生じた場合に、ユーザが手動で修正可能にすると共に、携帯電話からの自動修正要求により、時計データを送信して自動修正可能にする携帯電話内蔵時計の時刻自動修正方法並びにシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、携帯電話端末が基地局から受信する時計情報により、携帯電話に内蔵された時計回路の表示時刻を自動的に補正する携帯電話端末の時刻補正方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、地域毎や経年変化によらず、時刻表示が個々の無線端末機で異ならないようにする無線端末機用時刻報知システムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。また、携帯電話又はPHSの日付時刻を、基地局へのアクセス時又は基地局からの情報を受信するとき、自動的に内部時計に設定する携帯電話またはPHSの日付時刻を自動設定する方式が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。更にまた、無線電話器の時計の設定が指示されたとき、基地局の所定の電話番号と接続して時計データを取得して内蔵する時計データを取得した時計データに自動的に時刻設定する時計付き無線電話機が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2002-135426号公報(第5頁、第2図)
【特許文献2】特開2002−218546号公報(第3頁、第1図、第2図)
【特許文献3】特開2003-4878号公報(第3頁、第1図)
【特許文献4】特開2003−87859号公報(第5-6頁、第1図、第2図)
【特許文献5】特開平10-215487号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の携帯端末の時刻表示は、正確な時間と狂いが生じたとき又は正確な時間に修正して確認したいとき、ユーザが適宜手動により又は交換局等に接続操作して時刻データを取得して自動修正する必要があり、煩わしかった。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の如き課題に鑑みなされたものであり、例えばユーザが携帯端末を使用する毎に又は一定期間(例えば、1ヶ月)の経過毎に時刻データ取得要求して内蔵時計を修正することにより、斯かる課題を解消又は軽減することが可能な時刻データ取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するため本発明の時刻データ取得方法は次のような特徴的な構成を採用している。
【0010】
(1)内蔵されたクロックに基づき時刻を計算して表示装置に時刻を表示する時刻表示機能を有するPHSに表示する時刻データを、基地局を介して交換局から取得して時刻の不一致を修正する時刻データ取得方法において、
前記時刻データは、レイヤ3メッセージ中に含まれるファシリティの空き領域を使用して取得する時刻データ取得方法。
【0011】
(2)前記ファシリティとして、前記PHSから前記交換局へのCC呼設定メッセージおよび前記交換局から前記PHSへのCC応答メッセージを使用する上記(1)の時刻データ取得方法。
【0012】
(3)前記ファシリティとして、切断メッセージを使用する上記(1)の時刻データ取得方法。
【0013】
(4)前記ファシリティとして、解放メッセージを使用する上記(1)の時刻データ取得方法。
【0014】
(5)前記ファシリティとして、解放完了メッセージを使用する上記(1)の時刻データ取得方法。
【0015】
(6)PHSが内蔵する時刻表示を、基地局を介して正確な時刻データを保持している交換局から取得する正しい時刻に修正する時刻データ取得方法において、
前記PHSが発信するとき前記交換局に送信されるレイヤ3メッセージ中に時刻データの受信要求を示すフラグを付加することと、前記交換局が前記フラグを認識して前記PHSに応答する応答メッセージ中に前記正確な時刻データを付加して前記PHSに送信することと、該送信された時刻データに基づき前記PHSの時刻データを修正することとを備える時刻データの取得方法。
【0016】
(7)前記時刻データ受信要求フラグは、受信の要否を示す1ビットで構成される上記(6)の時刻データ取得方法。
【0017】
(8)前記時刻データ受信要求フラグは、前記PHSの各発呼に付加され、発呼毎に時刻データを取得する上記(6)の時刻データ取得方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の時刻データ取得方法によると、次の如き実用上の顕著な効果が得られる。即ち、本発明によると、ユーザは、時刻修正のための特別の操作をすることなく、携帯端末内部の時刻表示を正確な時間に自動的に修正可能である。また、この時刻修正は、例えば1ビットの時刻データ要求フラグにより、ユーザが発呼する毎に自動的に行われるので、携帯端末を使用することにより、正確な時間に修正又は更新される。更に、時刻データ取得には、レイヤ3メッセージ中の、例えばCC呼設定メッセージやCC応答メッセージ等のファシリティの空き領域を使用することにより簡単に実行可能である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明による時刻データ取得方法の好適実施例の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
先ず、図1は、本発明による時刻データ取得方法を実施する好適実施例であるPHSシステムの全体システム構成図である。この時刻データ取得システム10は、PHS(携帯端末)12、基地局14および交換局16により構成されている。PHS12および基地局14は、それぞれアンテナ13、15を備え、電波により無線通信する。また、基地局14および交換局16間は、ケーブル17で相互接続され有線通信する。
【0021】
図1に示す時刻データ取得システム10によると、交換局16は、正確な時刻データを常時保持している。そして、PHS12および基地局14間で無線通信する毎に、交換局16から基地局14を介してPHS12に対して正確な時刻データが送信される。
【0022】
次に、図2の説明図を参照して、本発明による時刻データ取得方法の概略動作を説明する。図2の上側には従来例を示し、下側に本発明を示す。PHS12は、表示部(以下、LCDという)18を備え、基地局14との間で送受信する各種文字又は図形情報が表示可能である。上側に示す従来例では、PHS12のLCD18には、内部クロックに基づき求められた時刻が表示される。この特定例では、LCD18の表示時刻は、12:30:40、即ち12時30分40秒である。これは、右側に示す正しい時刻(標準時刻)である12:28:40、即ち12時28分40秒に対して2分だけ進んでおり、PHS12の表示時刻および標準時刻間は「不一致」であることを示している。
【0023】
一方、図2の下側に示す本発明によると、PHS12が基地局14と通信後に、PHS12のLCD18の時刻表示は、12:34:56となり、右側に示す標準時刻12:34:56と「一致」し、PHS12のLCD18の時刻表示が、通話後に正しい時刻(即ち、標準時刻)表示に補正される。
【0024】
次に、図3に示すシーケンス図を参照して、本発明による時刻データ取得方法、即ち図1のPHS12、基地局14および交換局16間の詳細動作を説明する。先ず、PHS12が発呼(発信)すると、基地局14に対して「CC呼設定メッセージ」が送信される(ステップS1)。このとき、PHS12は、この「CC呼設定メッセージ」をレイヤ3メッセージとして送信する。
【0025】
このとき、「CC呼設定メッセージ」中に、時刻データ(又は時間データ)の受信を要求するフラグを付加する。このフラグは、例えば「0」(受信しない)又は「1」(受信する)の1ビットで構成し、「CC呼設定メッセージ」のファシリティの予備領域を使用する。図4に、ファシリティの1例を示す。この例では、ファシリティのオクテット3のビット6−7に予備領域がある。
【0026】
次に、基地局14から交換局16に対して、PHS12からの「CC呼設定メッセージ」が送信され、交換局16は、「時刻データ取得フラグ」を受信する(ステップS2)。交換局16は、その時刻データを取得するフラグを認識して、基地局14を介してPHS12へ「CC呼設定受付」を送信する(ステップS3)。交換局16は、この「CC応答メッセージ」を送出する際に、「CC応答メッセージ」中のファシリティの予備領域およびプロトコルデータユニット領域(図4参照)を使用して、その中に正しい時刻データを付加して送り返す(ステップS4およびステップS5)。
【0027】
図5は、交換局16から基地局14を介してPHS12へ送り返される時刻データ(又は時間データ)を例示する。この時刻データは、7バイト構成の「年月日曜日時分秒」データである(図5(A)参照)。即ち、オクテット1および2で西暦年号を示す。図5の具体例では、オクテット1のビット5〜8で年の1000の位の数字0〜9(図5(B)参照)、ビット4〜1で100の位の数字0〜9を示す(図5(C)参照)。一方、オクテット2のビット8〜5で10の位の数字0〜9(図5(B)参照)、ビット4〜1で1の位の数字0〜9を示す(図5(C)参照)。また、オクテット3のビット8〜5で月の数字1〜12(図5(D)参照)を、ビット4〜1で曜日(月曜日〜日曜日)を示す(図5(E)参照)。また、オクテット4で日を示す(即ち、ビット8〜5で10の位の数字0〜3(図5(F)参照)、ビット4〜1で1の位の0〜9(図5(C)参照))。以下、同様にして、オクテット5のビット8〜5でAM/PM(図5(G)参照)、ビット4〜1で時の1〜12、オクテット6で分(図5(H)参照)、オクテット7で秒(図5(H)参照)を示す。
【0028】
PHS12は、「CC応答メッセージ」のファシリティに含まれる時刻データを認識し、そのデータを参照して現在時刻をカウント(即ち、計算)しているPHS12内部のRAM(Random Access Memory:随時読み書きメモリ)の値を修正し、RAMの時計データをLCD18に表示する。
【0029】
尚、上述した好適実施例では、「CC呼設定」および「CC応答設定」のファシリティを使用して時刻データを送受信する場合について説明した。しかし、ファシリティは、CC呼設定およびCC応答以外にも、切断、解放、解放完了等のメッセージにも含まれるため、それらのメッセージのファシリティを使用しても実現可能である。
【0030】
以上、本発明による時刻データ取得方法の好適について説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。例えば、時刻データ取得フラグは、通話毎又は一定化間(例えば、1週間又は1ヶ月)経過毎に「1」として時刻データを受信するように設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の時刻データ取得システムの全体システム構成図である。
【図2】PHSシステムの従来および本発明の動作比較説明図である。
【図3】図1に示す時刻データ取得システムにおいて、PHSの接続から通話までのレイヤ3メッセージのシーケンス図である。
【図4】ファシリティのデータフォーマットの具体例である。
【図5】時刻データのデータフォーマットの具体例である。
【符号の説明】
【0032】
10 時刻データ取得システム
12 携帯端末(PHS)
14 基地局
16 交換局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内蔵されたクロックに基づき時刻を計算して表示装置に時刻を表示する時刻表示機能を有するPHSに表示する時刻データを、基地局を介して交換局から取得して時刻の不一致を修正する時刻データ取得方法において、
前記時刻データは、レイヤ3メッセージ中に含まれるファシリティの空き領域を使用して取得することを特徴とする時刻データ取得方法。
【請求項2】
前記ファシリティとして、前記PHSから前記交換局へのCC呼設定メッセージおよび前記交換局から前記PHSへのCC応答メッセージを使用することを特徴とする請求項1に記載の時刻データ取得方法。
【請求項3】
前記ファシリティとして、切断メッセージを使用することを特徴とする請求項1に記載の時刻データ取得方法。
【請求項4】
前記ファシリティとして、解放メッセージを使用することを特徴とする請求項1に記載の時刻データ取得方法。
【請求項5】
前記ファシリティとして、解放完了メッセージを使用することを特徴とする請求項1に記載の時刻データ取得方法。
【請求項6】
PHSが内蔵する時刻表示を、基地局を介して正確な時刻データを保持している交換局から取得する正しい時刻に修正する時刻データ取得方法において、
前記PHSが発信するとき前記交換局に送信されるレイヤ3メッセージ中に時刻データの受信要求を示すフラグを付加することと、前記交換局が前記フラグを認識して前記PHSに応答する応答メッセージ中に前記正確な時刻データを付加して前記PHSに送信することと、該送信された時刻データに基づき前記PHSの時刻データを修正することとを備えることを特徴とする時刻データの取得方法。
【請求項7】
前記時刻データ受信要求フラグは、受信の要否を示す1ビットで構成されることを特徴とする請求項6に記載の時刻データ取得方法。
【請求項8】
前記時刻データ受信要求フラグは、前記PHSの各発呼に付加され、発呼毎に時刻データを取得することを特徴とする請求項6に記載の時刻データ取得方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−33072(P2006−33072A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204827(P2004−204827)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】