説明

時間測定回路およびそれを用いたIC検査装置

【課題】 電圧信号と基準電圧を比較回路で比較し、この比較回路の出力を短周期でメモリに保存して、この保存した値が変化する位置を検出して立ち上がり時間を測定していた。そのため、大きな容量のメモリが必要になり、かつ時間分解能を高くすることが困難であったという課題を解決する。
【解決手段】 電圧信号と基準電圧を比較回路で比較し、この比較回路の出力が反転したタイミングで、クロックをカウントするカウンタのカウント値をメモリに保存するようにした。必要なメモリ容量が少なくて済み、かつ時間分解能を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ないメモリ容量を用いて高時間分解の測定を行うことができる時間測定回路およびこの時間測定回路を用いたIC検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC検査装置では、指定されたタイミングで被測定ICのピンに発生する電圧を測定することにより、ICの良否判定を行うことが一般的である。しかし、最近ピン電圧が所定の電圧レベルに到達するまでの時間測定を要求されることが増えてきた。
【0003】
このような時間測定を行う時間測定回路を図5に示す。図5において、被測定IC10のピン電圧はコンパレータ11に入力される。このコンパレータ11には基準電圧源12からの基準電圧が入力される。コンパレータ11の出力はフェイルメモリ13のデータ端子Dに入力される。タイミング発生回路14は所定の周期で発生するストローブ信号STRBと連続したアドレスをフェイルメモリ13に出力する。フェイルメモリ13はこのストローブ信号STRBのタイミングでコンパレータ11の出力を指定されたアドレスに保存する。
【0004】
このような構成において、基準電圧の電圧値を到達電圧に設定し、被測定IC10の測定対象ピンに信号が発生するとタイミング発生回路14を動作させる。測定対象ピンの電圧は徐々に高くなるので、コンパレータ11の出力は最初は0であるが、測定対象ピンの電圧が基準電圧を越えると反転して1なる。この0の個数を数えることにより、測定対象ピンの信号の立ち上がり時間を測定することができる。
【0005】
図6に測定結果の一例を示す。図6(A)は測定対象ピンの電圧とコンパレータ11の出力との関係を示したグラフであり、横軸は時間、縦軸は電圧である。Vthは基準電圧、曲線20はピン電圧、21はコンパレータ11の出力、上向きの矢印はストローブ信号STRB発生のタイミングを表している。最初、ピン電圧20は基準電圧Vthより低いので、コンパレータ11の出力21は0であるが、基準電圧Vthを越えると1に反転する。
【0006】
図6(B)はフェイルメモリ13に格納された値を示す。左端列はフェイルメモリ13のアドレス、ピン1〜ピンNはそれぞれピン1〜ピンNの測定結果である。ピン1〜ピンNはそれぞれアドレス6、4、8で反転しているので、ストローブ信号STRBの周期をtpとすると、立ち上がり時間はそれぞれ5tp、3tp、7tpになる。
【0007】
図7に測定対象ピンの立ち上がり時間を測定する他の従来例を示す。なお、図5と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図7において、比較回路30a〜30nはコンパレータと基準電圧で構成されている。この比較回路30a〜30nには被測定IC10の測定対象ピンの電圧が入力される。
【0008】
スイッチ31は比較回路30a〜30nの出力のうち1つを選択してフェイルメモリ13のデータ端子Dに出力する。タイミング発生回路32はスイッチ31を制御すると共に、フェイルメモリ13に連続するアドレスとストローブ信号STRBを出力する。
【0009】
最初タイミング発生回路32はスイッチ31を制御して比較回路30aを選択し、図5従来例と同じ動作を行って比較回路31aの出力を連続したアドレスに書き込む。次に、比較回路30bを選択して、同じ動作を行う。このようにして、スイッチ31で比較回路30a〜30nを順次選択することにより、複数の測定対象ピン信号の立ち上がり時間を測定することができる。
【0010】
【特許文献1】特開2003−139817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような時間測定回路には次のような課題があった。n個のピンを測定するときのデータ数は、(測定したい時間幅)×(ピン数)/(ストローブ信号の間隔)になる。近年、ICのピン数は増加しており、1000以上になることもある。そのため、フェイルメモリ13に大容量のメモリが必要になるという課題があった。また、立ち上がり時間を求めるためにはこの膨大なデータを読み込まなければならず、処理時間が長くなってしまうという課題もあった。
【0012】
また、ストローブ信号の周期は、フェイルメモリ13の書き込み時間より短くすることはできない。そのため、測定する時間分解能が制約されてしまうという課題もあった。
【0013】
また、等化サンプリングで測定するときは、時間をずらしながら何回も測定を行わなければならないので、測定時間が長くなってしまうという課題があった。さらに、図7従来例では各ピンの測定の度にスイッチ31を切り替えて測定しなければならず、測定時間が非常に長くなってしまうという課題もあった。
【0014】
従って本発明の目的は、メモリの容量を削減することができ、かつ時間分解能を高くすることができる時間測定回路およびそれを用いたIC検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
電圧信号が入力され、この電圧信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記比較回路の出力が変化したときに、前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
を具備したものである。少ないメモリ容量で、高時間分解能の測定ができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、
電圧信号が入力され、この電圧信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する複数の比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
前記比較回路の出力および前記カウンタのカウント値が入力され、前記比較回路の出力が変化したときの前記カウンタのカウント値を、前記メモリの前記出力が変化した比較回路に対応するアドレスに保存するラッチ部と、
を具備したものである。少ないメモリ容量で、複数の信号を同時に測定できる。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1若しくは請求項2記載の発明において、
前記基準電圧を調整可能としたものである。種々の測定に対応できる。
【0018】
請求項4記載の発明は、
被測定ICの測定対象ピンの信号が入力され、この信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記比較回路の出力が変化したときに、前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
を具備したものである。少ないメモリ容量で、被測定ICの出力信号の立ち上がり時間を高い時間分解能で測定できる。
【0019】
請求項5記載の発明は、
被測定ICの測定対象ピンの信号が入力され、この信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する複数の比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
前記比較回路の出力および前記カウンタのカウント値が入力され、前記比較回路の出力が変化したときの前記カウンタのカウント値を、前記メモリの前記出力が変化した比較回路に対応するアドレスに保存するラッチ部と、
を具備したものである。少ないメモリ容量で、複数の信号の立ち上がり時間を同時に測定できる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項4若しくは請求項5記載の発明において、
前記基準電圧を調整可能としたものである。種々の出力信号に対応できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1,2、3、4、5および6の発明によれば、比較回路で測定信号と基準電圧を比較し、クロックをカウントするカウンタのカウント値を、この比較回路の出力が変化したタイミングでメモリに格納するようにした。
【0022】
入力信号が特定の値になったときのカウント値のみメモリに格納するようにしたので、必要なメモリ容量を大幅に少なくすることができ、かつメモリの読み出し時間を短縮することができるという効果がある。また、少ない容量のメモリを用いることができるので、コストを削減することができるという効果もある。
【0023】
また、従来のように、クロックの周期で比較回路の出力をメモリに格納しないので、システムクロック等の高速クロックを用いることができる。そのため、時間分解能を高くすることができるという効果もある。
【0024】
さらに、等価サンプリングのように時間をずらしながら測定する場合、あるいは測定時間間隔を細かくして測定する場合にも、高速に測定することが可能であるという効果もある。
【0025】
近年、ICのピン数が1000ピン以上と増加しているために、被測定ICの立ち上がり時間を測定するために多くの時間を要していた。本発明を用いることにより、立ち上がり時間測定に要する時間を大幅に短縮することができるので、IC検査装置の測定時間を大幅に短縮することができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る時間測定回路の一実施例を示す構成図である。なお、図5と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図1において、40は比較回路であり、コンパレータ40aと基準電圧源40bで構成されている。被測定IC10の測定対象ピンの信号および基準電圧源40bが出力する基準電圧はコンパレータ40aに入力される。コンパレータ40aは、これら入力された2つの電圧の比較結果を出力する。このコンパレータ40aの出力が比較回路40の出力になる。なお、基準電圧源40bが出力する基準電圧は、外部から調整できるようになっている。
【0027】
42はタイミング発生回路であり、クロックおよびスタートストップ信号を出力する。41はカウンタであり、比較回路40の出力、およびタイミング発生回路42が出力するクロックとスタートストップ信号が入力される。カウンタ41はこのクロックでカウントアップし、またスタートストップ信号でカウントを開始し、また停止する。さらに、比較回路40の出力が反転すると、書き込み信号出力する。43はメモリであり、書き込み信号が入力されると、カウンタ41のカウント値を所定のアドレスに格納する。
【0028】
次に、この実施例の動作を図2に基づいて説明する。図2(A)は比較回路40に入力される、測定対象ピンの電圧変化を表したグラフであり、横軸は時間、縦軸は電圧、Vthは基準電圧である。同図(B)は比較回路40の出力であり、時刻t2で0から1に反転する。(C)はスタートストップ信号であり、この信号が1のときにカウンタ41はカウントを行う。(D)はクロックであり、縦矢印がクロックの立ち上がりタイミングを表している。(E)は書き込み信号であり、この信号の立ち上がりでメモリ43はカウンタ41のカウント値を格納する。なお、メモリ43はレジスタであってもよい。
【0029】
時刻t0で測定対象ピンの電圧が増加し始めると、時刻t1でスタートストップ信号が1になり、カウンタ41はカウントを開始する。ピン電圧は単調に増加し、時刻t2で基準電圧Vthを越える。そのため、比較回路40の出力は0から1に反転する。この反転により書き込み信号は短時間0から1になり、カウンタ41のカウント値はメモリ43に保存される。t1からt2までの時間Δtは、下記(1)式で求めることができる。
Δt=(クロックの周期)×(メモリ43に保存されたカウント値)・・・(1)
【0030】
図5従来例では、ストローブ信号のタイミングでコンパレータ11の出力を全てフェイルメモリに格納していたが、本実施例では比較回路40の出力が1になったときのカウント値のみメモリ43に保存するようにした。そのため、メモリの容量を大幅に削減することができる。また、読み出すときもカウント値のみ読み出せばよいので、高速で読み出すことができる。
【0031】
さらに、タイミング発生回路42が出力するクロックの周期はカウンタ41がカウントアップできる周期であればよいので、システムクロック等高速のクロックを使用することができる。そのため、従来に比べて時間分解能を大幅に向上させることができる。時間分解能を高くすることができるので時間をずらしながら測定する(等価サンプリング)必要がなくなるので、さらに高速で測定することができる。
【0032】
なお、この実施例ではカウンタ41に比較回路40の出力を入力し、このカウンタ41が書き込み信号をメモリ43に出力するようにしたが、比較回路40の出力をメモリ43に入力してその立ち上がりでカウント値を保存するなど、実施形態を適宜変更することができる。要は、比較回路40の出力が反転したときに、カウンタ41のカウント値をメモリ43に保存するようにすればよい。
【0033】
また、カウンタ41はスタートストップ信号が1のときにカウント動作を行うようにしたが、カウンタ41は常時カウント動作を行い、スタートストップ信号の立ち上がりでカウンタ41をクリアするようにしてもよい。
【0034】
図3に本発明の他の実施例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。図3において、50a〜50nは比較回路であり、それぞれ被測定IC10の測定対象ピンの電圧信号が入力される。比較回路50a〜50nは図1の比較回路40と同様に、コンパレータと基準電圧源で構成され、その出力は入力電圧(測定対象ピンの電圧)が基準電圧を越えると反転する。
【0035】
52はカウンタであり、タイミング発生回路42からスタートストップ信号とクロックが入力される。カウンタ52はスタートストップ信号が1の間、クロックをカウントする。51はラッチ部であり、比較回路50a〜50nの出力とカウンタ52のカウント値が入力され、メモリ43にアドレス、カウント値および書き込み信号を出力する。
【0036】
次に、この実施例の動作を説明する。最初に比較回路50a〜50n内の基準電圧を測定対象ピンの到達電圧に調整する。測定対象ピンの電圧が増加し始めるとスタートストップ信号が1になり、カウンタ52はカウントを開始する。測定対象ピンの電圧が基準電圧を越え、比較回路50a〜50nのどれかが1になると、ラッチ部51はそのときのカウンタ52のカウント値と書き込み信号、およびその比較回路に対応するアドレスをメモリ43に出力する。メモリ43は、書き込み信号の立ち上がりのタイミングで、入力されたカウント値を指定されたアドレスに格納する。
【0037】
図4に測定結果の一例を示す。ピン番号1に対応するアドレスには6が、ピン番号2に対応するアドレスには4が保存され、ピン番号9に対応するアドレスには8が保存されている。従って、ピン番号1、2、9の信号の立ち上がり時間はこの保存されたカウント値から直接演算することができ、クロックの周期をtpとすると、それぞれ6tp、4tp、8tpになる。
【0038】
この実施例でも、従来例に比べてメモリ容量を大幅に削減することができ、かつ時間分解能を大幅に高めることができる。さらに、複数ピンの信号の立ち上がりを同時に測定することができるので、測定時間を大幅に短縮することができる。また、カウンタ52、タイミング発生回路42は1つでよいので、ハードウエアの規模を縮小することができる。
【0039】
この実施例でも、カウンタ52はスタートストップ信号が1のときにカウント動作を行うようにしたが、カウンタ52は常時カウント動作を行い、スタートストップ信号の立ち上がりでカウンタ52をクリアするようにしてもよい。
【0040】
また、比較回路40、50a〜50nは0と1の2値を出力するものとしたが、複数の基準電圧とコンパレータを有し、入力電圧がこれら複数の基準電圧を越えたことを多値信号で出力する回路であってもよい。この場合、比較回路の出力が変化したときのカウント値をメモリに保存するようにすればよい。
【0041】
なお、図1、図3の実施例ではIC検査装置に用いるとして説明したが、その他の信号の立ち上がり時間を測定するために用いることもできる。また、IC検査装置において、カウント値を保存するメモリとして、フェイルメモリを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施例の動作を説明するための波形図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す構成図である。
【図4】メモリに保存されたカウント値の例である。
【図5】従来の時間測定回路の構成図である。
【図6】従来の時間測定回路の動作を説明するための特性図である。
【図7】従来の時間測定回路の構成図である。
【符号の説明】
【0043】
10 被測定IC
40、50a〜50n 比較回路
40a コンパレータ
40b 基準電圧源
41、52 カウンタ
42 タイミング発生回路
43 メモリ
51 ラッチ部
Vth 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧信号が入力され、この電圧信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記比較回路の出力が変化したときに、前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
を具備したことを特徴とする時間測定回路。
【請求項2】
電圧信号が入力され、この電圧信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する複数の比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
前記比較回路の出力および前記カウンタのカウント値が入力され、前記比較回路の出力が変化したときの前記カウンタのカウント値を、前記メモリの前記出力が変化した比較回路に対応するアドレスに保存するラッチ部と、
を具備したことを特徴とする時間測定回路。
【請求項3】
前記基準電圧は調整可能であることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の時間測定回路。
【請求項4】
被測定ICの測定対象ピンの信号が入力され、この信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記比較回路の出力が変化したときに、前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
を具備したことを特徴とするIC検査装置。
【請求項5】
被測定ICの測定対象ピンの信号が入力され、この信号と基準電圧を比較してその比較結果を出力する複数の比較回路と、
クロックが入力され、このクロックをカウントするカウンタと、
前記カウンタのカウント値を保存するメモリと、
前記比較回路の出力および前記カウンタのカウント値が入力され、前記比較回路の出力が変化したときの前記カウンタのカウント値を、前記メモリの前記出力が変化した比較回路に対応するアドレスに保存するラッチ部と、
を具備したことを特徴とするIC検査装置。
【請求項6】
前記基準電圧は調整可能であることを特徴とする請求項4若しくは請求項5記載のIC検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−134077(P2008−134077A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318585(P2006−318585)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】