説明

時間計測装置および距離計測装置

【課題】簡易な構成で高精度の時間計測を行うことができる時間計測装置を提供する。
【解決手段】時間計測装置10は、定電流源11,制御部12,演算部13,容量素子C〜C,抵抗器R,スイッチSW〜SW,SW11〜SW13を備える。制御部12は、発光タイミング信号および受光タイミング信号を入力し、tacoff信号,tac1信号,tac2信号,tac3信号,reset1信号,reset2信号,reset3信号を生成して各スイッチへ与え、スイッチの開閉動作を制御する。演算部13は、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout1、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout2、および、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout3を入力して、電位Vout1〜Vout3に基づいて演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間計測装置および距離計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物までの距離を計測する距離計測装置としてTOF(Time-of-flight)法に拠るものが知られている(特許文献1,2を参照)。TOF法に拠る距離計測装置は、光源から対象物へパルス光を投光し、そのパルス光が対象物に投光されて生じた反射パルス光を受光素子により受光して、投光タイミングから受光タイミングまでの時間を計測することで、その時間から距離を求める。すなわち、TOF法に拠る距離計測装置は、投光タイミングから受光タイミングまでの時間を計測する時間計測装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−10133号公報
【特許文献2】特開平6−18665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TOF法に拠る距離計測装置または時間計測装置は、部品の特性が温度によって異なったり、また、実際の部品の特性が設計値と異なったりすることにより、対象物までの計測結果に誤差を生じる場合がある。
【0005】
特許文献1に開示された距離計測装置は、このような誤差の問題に対処することを意図するものであって、既知の長さを有する光ファイバを用いた計測の結果を用いて、対象物までの距離の計測結果を補正するものである。しかし、この距離計測装置も、光ファイバの特性が温度に依存することから、やはり、対象物までの計測結果に誤差を生じる場合がある。また、この距離計測装置は、光ファイバを用いた計測を行なう必要があることから、距離計測に要する時間が長くなり、また、大型となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、簡易な構成で高精度の時間計測を行うことができる時間計測装置、および、このような時間計測装置を含む距離計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る時間計測装置は、(1) 定電流源と、(2) 第1端および第2端を有し第1端が基準電位に接続されるJ個の容量素子C〜Cと、(3) 各容量素子Cの第2端と定電流源との間に設けられたスイッチSWと、(4) 外部から与えられる信号に基づいて時刻tから時刻tまでの時間Tが既知の期間のうち時刻tj−1から時刻tまでの期間においてJ個のスイッチSW〜SWのうちスイッチSWを閉状態とするとともに他のスイッチを開状態とする制御部と、(5) 時刻tに対する時刻tの各容量素子Cの第2端の電位変化量Vおよび既知の時間Tに基づいて、時刻tj−1から時刻tまでの時間Tの何れかを求める演算部と、を備えることを特徴とする。ただし、Jは2以上の整数であり、jは1以上J以下の整数である。
【0008】
本発明に係る距離計測装置は、(1) パルス光を出力する光源と、(2) 光源を駆動して光源からパルス光を発光させるとともに、その発光タイミングを表す発光タイミング信号を出力する駆動部と、(3) 光源から出力されたパルス光が対象物に投光されて生じた反射パルス光を受光して当該受光強度に応じた電流信号を出力する受光素子と、(4) 受光素子から出力される電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力するIV変換部と、(5) IV変換部から出力される電圧信号に基づいて、受光素子が反射パルス光を受光したタイミングを表す受光タイミング信号を出力する判断部と、(6) 駆動部から出力される発光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとし、判断部から出力される受光タイミング信号が表すタイミングを時刻t〜tJ−1の何れかとして、対象物までの距離を表す時間を求める上記の本発明に係る時間計測装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、駆動部により駆動された光源からパルス光が出力される。また、駆動部からは、その発光タイミングを表す発光タイミング信号が出力される。光源から出力されたパルス光が対象物に投光されて生じた反射パルス光は受光素子により受光されて、当該受光強度に応じた電流信号が受光素子から出力される。その受光素子から出力された電流信号はIV変換部により電圧信号に変換される。判断部により、その電圧信号に基づいて、受光素子が反射パルス光を受光したタイミングを表す受光タイミング信号が出力される。時間計測装置では、駆動部から出力される発光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとし、判断部から出力される受光タイミング信号が表すタイミングを時刻t〜tJ−1の何れかとして、対象物までの距離を表す時間が求められる。
【0010】
時間計測装置では、制御部により制御されて、時刻tから時刻tまでの時間Tが既知の期間のうち、時刻tj−1から時刻tまでの期間において、J個のスイッチSW〜SWのうちスイッチSWが閉状態とされるとともに、他のスイッチが開状態とされて、これにより、J個の容量素子C〜Cのうち容量素子Cのみ電位が変化していく、そして、演算部により、時刻tに対する時刻tの各容量素子Cの電位変化量Vおよび既知の時間Tに基づいて、時刻tj−1から時刻tまでの時間Tの何れかが求められる。この求められた時間から、対象物までの距離が求められる。
【0011】
本発明に係る距離計測装置では、(a) 判断部は、IV変換部から出力される電圧信号の値が閾値未満の状態から閾値を超える状態に遷移するタイミングを表す第1受光タイミング信号を出力するとともに、IV変換部から出力される電圧信号の値が閾値を超える状態から閾値未満の状態に遷移するタイミングを表す第2受光タイミング信号を出力し、(b) 時間計測装置は、J値が3であり、判断部から出力される第1受光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとし、判断部から出力される第2受光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとして、時間T,時間Tまたは時間Tを求める、のが好適である。
【0012】
また、本発明に係る距離計測装置では、(a) 判断部は、IV変換部から出力される電圧信号の値がピークとなるタイミング,IV変換部から出力される電圧信号の値が閾値未満の状態から閾値を超える状態に遷移するタイミング,および,IV変換部から出力される電圧信号の値が閾値を超える状態から閾値未満の状態に遷移するタイミング,のうちの何れかを表す受光タイミング信号を出力し、(b) 時間計測装置は、J値が2であり、判断部から出力される受光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとして、時間Tまたは時間Tを求めるのも好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で高精度の時間または距離の計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る距離計測装置1の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る距離計測装置1に含まれる時間計測装置10の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る時間計測装置10の動作例を説明するタイミングチャートである。
【図4】第2実施形態に係る距離計測装置に含まれる時間計測装置10Aの構成を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る時間計測装置10Aの動作例を説明するタイミングチャートである。
【図6】第2実施形態に係る時間計測装置10Aの他の動作例を説明するタイミングチャートである。
【図7】第2実施形態に係る時間計測装置10Aの他の動作例を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
【0017】
図1は、第1実施形態に係る距離計測装置1の構成を示す図である。距離計測装置1は、対象物90までの距離を計測するものであって、時間計測装置10、光源20、駆動部30、受光素子40、IV変換部50および判断部60を備える。
【0018】
光源20は、駆動部30により駆動されて、対象物90へ向けてパルス光を出力する。光源20として好適にはレーザダイオードが用いられる。駆動部30は、光源20を駆動して光源20からパルス光を発光させるとともに、その発光タイミングを表す発光タイミング信号を距離計測装置10へ出力する。
【0019】
受光素子40は、光源20から出力されたパルス光が対象物90に投光されて生じた反射パルス光を受光して、当該受光強度に応じた電流信号をIV変換部50へ出力する。受光素子40として好適にはアバンランシュフォトダイオードが用いられる。IV変換部50は、受光素子40から出力される電流信号を電圧信号に変換して、該電圧信号を判断部60へ出力する。判断部60は、IV変換部50から出力される電圧信号に基づいて、受光素子40が反射パルス光を受光したタイミングを表す受光タイミング信号を時間計測装置10へ出力する。
【0020】
時間計測装置10は、駆動部30から出力される発光タイミング信号を入力するとともに、判断部60から出力される受光タイミング信号をも入力して、発光タイミング信号が表すタイミングから受光タイミング信号が表すタイミングまでの時間を求める。この求められた時間は、光源20から対象物90までの距離と対象物90から受光素子40までの距離との和を表しており、すなわち、距離計測装置1から対象物90までの距離を表している。
【0021】
図2は、第1実施形態に係る距離計測装置1に含まれる時間計測装置10の構成を示す図である。時間計測装置10は、定電流源11,制御部12,演算部13,容量素子C〜C,抵抗器R,スイッチSW〜SWおよび スイッチSW11〜SW13を備える。スイッチSW〜SWおよび スイッチSW11〜SW13それぞれはトランジスタからなる。
【0022】
定電流源11は、電流源11aおよびトランジスタTr,Trを含む。電流源11aの一端は基準電位Vrefと接続され、電流源11aの他端はトランジスタTrのドレイン端子と接続されている。トランジスタTrのドレイン端子は、トランジスタTrおよびトランジスタTrそれぞれのゲート端子と接続されている。トランジスタTrおよびトランジスタTrそれぞれのソース端子は接地されている。トランジスタTrのドレイン端子は、スイッチSWおよび抵抗器Rを介して基準電位Vrefと接続されている。定電流源11は、カレントミラー回路を構成しており、トランジスタTrのドレイン端子とソース端子との間に一定電流を流すことができる。
【0023】
スイッチSWの一端は、トランジスタTrのドレイン端子と接続されている。スイッチSWの他端は、スイッチSW11を介してリセット電位Vresetと接続され、また、容量素子Cを介して接地電位と接続されている。スイッチSWの他端の電位が演算部13へ入力される。
【0024】
スイッチSWの一端は、トランジスタTrのドレイン端子と接続されている。スイッチSWの他端は、スイッチSW12を介してリセット電位Vresetと接続され、また、容量素子Cを介して接地電位と接続されている。スイッチSWの他端の電位が演算部13へ入力される。
【0025】
スイッチSWの一端は、トランジスタTrのドレイン端子と接続されている。スイッチSWの他端は、スイッチSW13を介してリセット電位Vresetと接続され、また、容量素子Cを介して接地電位と接続されている。スイッチSWの他端の電位が演算部13へ入力される。
【0026】
スイッチSWは、制御部12から与えられるtacoff信号により開閉制御される。スイッチSWは、制御部12から与えられるtac1信号により開閉制御される。スイッチSWは、制御部12から与えられるtac2信号により開閉制御される。スイッチSWは、制御部12から与えられるtac3信号により開閉制御される。スイッチSW11は、制御部12から与えられるreset1信号により開閉制御される。スイッチSW12は、制御部12から与えられるreset2信号により開閉制御される。スイッチSW13は、制御部12から与えられるreset3信号により開閉制御される。
【0027】
制御部12は、駆動部30から出力される発光タイミング信号を入力するとともに、判断部60から出力される受光タイミング信号をも入力して、tacoff信号,tac1信号,tac2信号,tac3信号を生成する。そして、制御部12は、これらの信号をスイッチSW〜SWの何れかへ与えて、これらのスイッチの開閉動作を制御する。また、制御部12は、駆動部30から出力される発光タイミング信号により、reset1信号,reset2信号およびreset3信号を生成し、これらの信号をスイッチSW11〜SW13 の何れかへ与えて、これらのスイッチの開閉動作を制御する。
【0028】
演算部13は、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout1、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout2、および、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout3を入力して、これらの電位Vout1〜Vout3に基づいて所定の演算を行い、対象物90までの距離を表す時間を求める。演算部13は、アナログ演算を行ってもよいし、デジタル演算を行ってもよい。
【0029】
次に、第1実施形態に係る距離計測装置1および時間計測装置10の動作について説明する。図3は、第1実施形態に係る時間計測装置10の動作例を説明するタイミングチャートである。この図には、上から順に、駆動部30から時間計測装置10の制御部12に与えられる発光タイミング信号、IV変換部50から出力され判断部60に入力される電圧信号、判断部60から時間計測装置10の制御部12に与えられる受光タイミング信号、制御部12からスイッチSWに与えられるtacoff信号、制御部12からスイッチSWに与えられるtac1信号、制御部12からスイッチSWに与えられるtac2信号、制御部12からスイッチSWに与えられるtac3信号、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout1、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout2、および、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout3、が示されている。
【0030】
駆動部30から時間計測装置10の制御部12に与えられる発光タイミング信号は、光源20がパルス光を発光した時刻tに立ち上がる。また、この発光タイミング信号は、この時刻tから既知の時間Tが経過した時刻tに立ち下がる。すなわち、発光タイミング信号は、パルス幅Tの信号である。
【0031】
IV変換部50から出力され判断部60に入力される電圧信号は、受光素子40に到達した反射パルス光の強度の時間的変化を表す信号である。
【0032】
判断部60から時間計測装置10の制御部12に与えられる受光タイミング信号は、受光素子40が反射パルス光を受光したタイミングを表す信号であり、IV変換部50から出力された電圧信号の値が閾値未満の状態から閾値を超える状態に遷移する時刻tに立ち上がり、該電圧信号の値が閾値を超える状態から閾値未満の状態に遷移する時刻tに立ち下がる。
【0033】
制御部12により、駆動部30から出力される発光タイミング信号および判断部60から出力される受光タイミング信号に基づいて、tacoff信号,tac1信号,tac2信号,tac3信号が生成される。また、制御部12により、駆動部30から出力される発光タイミング信号に基づいて,reset1信号,reset2信号およびreset3信号が生成される。
【0034】
時刻t前に、reset1信号,reset2信号およびreset3信号それぞれが有意値であり、スイッチSW11〜SW13それぞれが閉じていて、電位Vout1〜Vout3それぞれはリセット電位Vresetとされる。時刻tに、reset1信号,reset2信号およびreset3信号それぞれは非有意値に転じて、スイッチSW11〜SW13それぞれは開状態に転じる。
【0035】
時刻t前または時刻t後では、tacoff信号,tac1信号,tac2信号およびtac3信号のうちtacoff信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0036】
時刻tから時刻tまでの期間では、tacoff信号,tac1信号,tac2信号およびtac3信号のうちtac1信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0037】
時刻tから時刻tまでの期間では、tacoff信号,tac1信号,tac2信号およびtac3信号のうちtac2信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0038】
時刻tから時刻tまでの期間では、tacoff信号,tac1信号,tac2信号およびtac3信号のうちtac3信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0039】
電位Vout1は時刻tから時刻tまでの期間に亘って変化し、その電位変化量はVとなる。電位Vout2は時刻tから時刻tまでの期間に亘って変化し、その電位変化量はVとなる。また、電位Vout3は時刻tから時刻tまでの期間に亘って変化し、その電位変化量はVとなる。
【0040】
ここで、時刻tから時刻tまでの時間をTとし、時刻tから時刻tまでの時間をTとし、時刻tから時刻tまでの時間をTとする。容量素子C〜Cそれぞれの容量値が互いに等しくCであるとする。また、定電流源11を流れる電流をIとする。このとき、これらのパラメータの間に以下の関係式が成り立つ。
=TI/C …(1)
=TI/C …(2)
=TI/C …(3)
=T+T+T …(4)
【0041】
上記(1)式〜(4)式から以下の関係式が得られる。
=T/(V+V+V) …(5)
=T/(V+V+V) …(6)
=T/(V+V+V) …(7)
【0042】
演算部13は、電位変化量V〜Vおよび既知の時間Tに基づいて以上のような演算を行って、時間T〜Tを求めることができる。そして、時間T、時間(T+T) または 時間(T+T/2) に基づいて、対象物90までの距離を求めることができる。また、発光のピーク値が発光時間の中心にあるとは限らないため、受光タイミング信号の大きさ、すなわち、反射パルス光の光量と発光のピーク位置を関係づけるルックアップテーブル(LUT)または関数を用意して、反射パルス光の光量に基づいて距離を算出してもよい。
【0043】
以上のように、本実施形態では、時間T〜Tは、上記(5)〜(7)式により求められるので、定電流源11を流れる電流Iのばらつきの影響を受けない。また、本実施形態では、特許文献1に開示された発明の如く光ファイバを用いた補正の為の計測を行なう必要はない。したがって、本実施形態では、簡易な構成で高精度の時間計測や距離計測を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では、スイッチSWおよび抵抗器Rが設けられていることにより、時刻t前にも定電流源11を電流が流れるので、時刻t以降に定電流源11の安定した動作が得られ、この点でも高精度の時間計測や距離計測を行うことができる。
【0045】
(第2実施形態)
【0046】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る距離計測装置の構成は、第1実施形態の場合と比較すると時間計測装置の構成の点で相違する。図4は、第2実施形態に係る距離計測装置に含まれる時間計測装置10Aの構成を示す図である。
【0047】
時間計測装置10Aは、定電流源11,制御部12A,演算部13A,容量素子C,C,抵抗器R,スイッチSW〜SWおよび スイッチSW11〜SW12を備える。スイッチSW〜SWおよび スイッチSW11〜SW12それぞれはトランジスタからなる。
【0048】
図2に示された第1実施形態に係る時間計測装置10の構成と比較すると、この図4に示される第2実施形態に係る時間計測装置10Aは、スイッチSW,SW13および容量素子Cを備えていない点で相違し、制御部12に替えて制御部12Aを備える点で相違し、また、演算部13に替えて演算部13Aを備える点で相違する。
【0049】
制御部12Aは、駆動部30から出力される発光タイミング信号を入力するとともに、判断部60から出力される受光タイミング信号をも入力して、tacoff信号,tac1信号,tac2信号を生成する。そして、制御部12Aは、これらの信号をスイッチSW〜SW および スイッチSW11〜SW12の何れかへ与えて、これらのスイッチの開閉動作を制御する。また、制御部12Aは、駆動部30から出力される発光タイミング信号を入力して、reset1信号およびreset2信号を生成し、これらの信号をスイッチSW11〜SW12 の何れかへ与えて、これらのスイッチの開閉動作を制御する。
【0050】
演算部13Aは、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout1、および、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout2を入力して、これらの電位Vout1,Vout2に基づいて所定の演算を行い、対象物90までの距離を表す時間を求める。演算部13Aは、アナログ演算を行ってもよいし、デジタル演算を行ってもよい。
【0051】
次に、第2実施形態に係る距離計測装置および時間計測装置10Aの動作について説明する。図5は、第2実施形態に係る時間計測装置10Aの動作例を説明するタイミングチャートである。この図には、上から順に、駆動部30から時間計測装置10Aの制御部12Aに与えられる発光タイミング信号、IV変換部50から出力され判断部60に入力される電圧信号、判断部60から時間計測装置10Aの制御部12Aに与えられる受光タイミング信号、制御部12AからスイッチSWに与えられるtacoff信号、制御部12AからスイッチSWに与えられるtac1信号、制御部12AからスイッチSWに与えられるtac2信号、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout1、および、スイッチSWと容量素子Cとの接続点の電位Vout2、が示されている。
【0052】
駆動部30から時間計測装置10Aの制御部12Aに与えられる発光タイミング信号は、光源20がパルス光を発光した時刻tに立ち上がる。また、この発光タイミング信号は、この時刻tから既知の時間Tが経過した時刻tに立ち下がる。すなわち、発光タイミング信号は、パルス幅Tの信号である。
【0053】
IV変換部50から出力され判断部60に入力される電圧信号は、受光素子40に到達した反射パルス光の強度の時間的変化を表す信号である。
【0054】
判断部60から時間計測装置10Aの制御部12Aに与えられる受光タイミング信号は、受光素子40が反射パルス光を受光したタイミングを表す信号であり、IV変換部50から出力された電圧信号の値がピークとなる時刻tに立ち上がる。また、受光タイミング信号は、時刻tに立ち下がる。なお、電圧信号の時間微分値の符号の変化を検出することで、電圧信号の値がピークとなるタイミングを検出することができる。
【0055】
制御部12Aにより、駆動部30から出力される発光タイミング信号および判断部60から出力される受光タイミング信号に基づいて、tacoff信号,tac1信号,tac2信号が生成される。また、制御部12Aにより、駆動部30から出力される発光タイミング信号に基づいて,reset1信号およびreset2信号が生成される。
【0056】
時刻t前に、reset1信号およびreset2信号それぞれが有意値であり、スイッチSW11,SW12それぞれが閉じていて、電位Vout1,Vout2それぞれはリセット電位Vresetとされる。時刻tに、reset1信号およびreset2信号それぞれは非有意値に転じて、スイッチSW11,SW12それぞれは開状態に転じる。
【0057】
時刻t前または時刻t後では、tacoff信号,tac1信号およびtac2信号のうちtacoff信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0058】
時刻tから時刻tまでの期間では、tacoff信号,tac1信号およびtac2信号のうちtac1信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0059】
時刻tから時刻tまでの期間では、tacoff信号,tac1信号およびtac2信号のうちtac2信号のみが有意値となり、スイッチSW〜SWのうちスイッチSWのみが閉状態となる。
【0060】
電位Vout1は時刻tから時刻tまでの期間に亘って変化し、その電位変化量はVとなる。また、電位Vout2は時刻tから時刻tまでの期間に亘って変化し、その電位変化量はVとなる。
【0061】
ここで、時刻tから時刻tまでの時間をTとし、時刻tから時刻tまでの時間をTとする。容量素子C,Cそれぞれの容量値が互いに等しくCであるとする。また、定電流源11を流れる電流をIとする。このとき、これらのパラメータの間に以下の関係式が成り立つ。
=TI/C …(8)
=TI/C …(9)
=T+T …(10)
【0062】
上記(8)式〜(10)式から以下の関係式が得られる。
=T/(V+V) …(11)
=T/(V+V) …(12)
【0063】
演算部13Aは、電位変化量V,Vおよび既知の時間Tに基づいて以上のような演算を行って、時間T,Tを求めることができる。そして、時間Tに基づいて、対象物90までの距離を求めることができる。
【0064】
図6および図7は、第2実施形態に係る時間計測装置10Aの他の動作例を説明するタイミングチャートである。図6に示される動作例では、判断部60から時間計測装置10Aの制御部12Aに与えられる受光タイミング信号は、IV変換部50から出力された電圧信号の値が閾値未満の状態から閾値を超える状態に遷移する時刻tに立ち上がる。図7に示される動作例では、判断部60から時間計測装置10Aの制御部12Aに与えられる受光タイミング信号は、IV変換部50から出力された電圧信号の値が閾値を超える状態から閾値未満の状態に遷移する時刻tに立ち上がる。これらの場合にも、演算部13Aは、電位変化量V,Vおよび既知の時間Tに基づいて同様の演算を行って、時間T,Tを求めることができる。そして、時間Tに基づいて、対象物90までの距離を求めることができる。
【0065】
以上のように、本実施形態でも、時間T,Tは、上記(11〜(12)式により求められるので、定電流源11を流れる電流Iのばらつきの影響を受けない。また、本実施形態でも、特許文献1に開示された発明の如く光ファイバを用いた補正の為の計測を行なう必要はない。したがって、本実施形態でも、簡易な構成で高精度の時間計測や距離計測を行うことができる。
【0066】
また、本実施形態でも、スイッチSWおよび抵抗器Rが設けられていることにより、時刻t前にも定電流源11を電流が流れるので、時刻t以降に定電流源11の安定した動作が得られ、この点でも高精度の時間計測や距離計測を行うことができる。
【0067】
(変形例)
【0068】
定電流源11を流れる電流Iは、上記実施形態では一定であるとしたが、可変であってもよい。また、容量素子C〜Cそれぞれの容量値は、上記実施形態では互いに等しいとしたが、可変であってもよく、互いに異ならせてもよい。例えば、第1実施形態において、時間Tと比べて時間Tが非常に短い場合には、容量素子Cの容量値と比べて容量素子Cの容量値が小さいのが好ましく、このようにすることで、電位変化量Vが高感度に検出され得る。また、計測レンジや分解能に応じて、定電流源11を流れる電流Iや容量素子の容量値を調整するのが好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1…距離計測装置、10,10A…時間計測装置、11…定電流源、11a…電流源、12,12A…制御部、13,13A…演算部、20…光源、30…駆動部、40…受光素子、50…IV変換部、60…判断部、C〜C…容量素子、R…抵抗器、SW〜SW,SW11〜SW13…スイッチ、Tr,Tr…トランジスタ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流源と、
第1端および第2端を有し前記第1端が基準電位に接続されるJ個の容量素子C〜Cと、
各容量素子Cの前記第2端と前記定電流源との間に設けられたスイッチSWと、
外部から与えられる信号に基づいて時刻tから時刻tまでの時間Tが既知の期間のうち時刻tj−1から時刻tまでの期間においてJ個のスイッチSW〜SWのうちスイッチSWを閉状態とするとともに他のスイッチを開状態とする制御部と、
時刻tに対する時刻tの各容量素子Cの前記第2端の電位変化量Vおよび既知の時間Tに基づいて、時刻tj−1から時刻tまでの時間Tの何れかを求める演算部と、
を備えることを特徴とする時間計測装置(ただし、Jは2以上の整数、jは1以上J以下の整数)。
【請求項2】
パルス光を出力する光源と、
前記光源を駆動して前記光源からパルス光を発光させるとともに、その発光タイミングを表す発光タイミング信号を出力する駆動部と、
前記光源から出力されたパルス光が対象物に投光されて生じた反射パルス光を受光して当該受光強度に応じた電流信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力される電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力するIV変換部と、
前記IV変換部から出力される電圧信号に基づいて、前記受光素子が反射パルス光を受光したタイミングを表す受光タイミング信号を出力する判断部と、
前記駆動部から出力される発光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとし、前記判断部から出力される受光タイミング信号が表すタイミングを時刻t〜tJ−1の何れかとして、前記対象物までの距離を表す時間を求める請求項1に記載の時間計測装置と、
を備えることを特徴とする距離計測装置。
【請求項3】
前記判断部は、前記IV変換部から出力される電圧信号の値が前記閾値未満の状態から前記閾値を超える状態に遷移するタイミングを表す第1受光タイミング信号を出力するとともに、前記IV変換部から出力される電圧信号の値が前記閾値を超える状態から前記閾値未満の状態に遷移するタイミングを表す第2受光タイミング信号を出力し、
前記時間計測装置は、J値が3であり、前記判断部から出力される第1受光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとし、前記判断部から出力される第2受光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとして、時間T,時間Tまたは時間Tを求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の距離計測装置。
【請求項4】
前記判断部は、前記IV変換部から出力される電圧信号の値がピークとなるタイミング,前記IV変換部から出力される電圧信号の値が前記閾値未満の状態から前記閾値を超える状態に遷移するタイミング,および,前記IV変換部から出力される電圧信号の値が前記閾値を超える状態から前記閾値未満の状態に遷移するタイミング,のうちの何れかを表す受光タイミング信号を出力し、
前記時間計測装置は、J値が2であり、前記判断部から出力される受光タイミング信号が表すタイミングを時刻tとして、時間Tまたは時間Tを求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の距離計測装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−209208(P2011−209208A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79000(P2010−79000)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】