説明

暗号鍵生成システム、暗号鍵生成方法および暗号鍵生成用プログラム

【課題】類似行動によって暗号鍵を生成できる暗号鍵生成システムを提供する。
【解決手段】鍵生成システムは、ユーザの動きを検出するセンサ1と、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出手段3と、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換手段4と、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較手段5と、前記行動類似性比較手段で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成手段6とを有する。周波数ごとの類似性が高い場合には特徴量を量子化して暗号鍵を生成し、分散値の時系列変化の類似性のみが高い場合は閾値処理により量子化して暗号鍵を生成し、周波数ごとの特徴の類似性も分散値の時系列変化の類似性も低い場合は鍵を生成しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に搭載された各種センサの出力の類似性から、暗号鍵を生成できる暗号鍵生成システム、暗号鍵生成方法および暗号鍵生成用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加速度センサの出力の類似性を利用したセキュリティ応用技術として、ジェスチャなどのユーザ動作を利用する認証技術が提案されている。例えば、特許文献1は、この種の認証装置である。
【0003】
特許文献1のシステムの例を図1に示す。図1に示すように、この本人認証装置は、検出部20と、認証部21から構成されており、認証部21の内部が抽出部22と、正規化部23と、記憶部24と、類似性算出部25と、判定部26とから構成されている。
【0004】
このような構成を有する従来の本人認証装置はつぎのように動作する。
【0005】
まず、前処理として認証のためのジェスチャを登録する処理として、抽出部22において分散値の大きな区間を認証の対象区間として抽出し、正規化部23においてデータを正規化し、記憶部24にそのデータを行動データとして登録する。つぎに、認証時においては、抽出部22において分散値の大きな区間を認証の対象区間として抽出し、正規化部23においてデータを正規化し、記憶部24に保持された事前に登録した行動データと類似度算出部25においてDPマッチングで類似度を算出し、判定部26において閾値など予め設定した値と比較することにより、本人の動作かどうか判定する。
【0006】
また、このような加速度センサの出力の類似性を利用したセキュリティ応用技術は、動作の類似性をもとに認証する技術にとどまらず、特許文献2および非特許文献1のように、動作の特徴量から暗号鍵を生成する技術も提案されている。
【0007】
特許文献2では、複数の筐体を重ね合わせて持ちながらランダムに振る動作により鍵を生成する方法が記載されている。この方法は、筐体運動の角速度反転回数、特定軸に沿った筐体運動の加速方向の反転回数やそのタイミングなどをもとに所定の変換を行うことによって暗号鍵を生成する。
【0008】
さらに、非特許文献1は、特許文献1と同様、複数の筐体を重ね合わせて持ちながらランダムに振る動作により鍵を生成する方法が記載されている。この方法では、加速度センサのデータについて高速フーリエ変換(FFT)を行い、低周波数成分について、各周波数のパワースペクトルの対数値をもとに量子化を行い、量子化された値を結合し、暗号鍵を生成する。
【0009】
特許文献1、非特許文献1では、認証の際の動作の微妙なゆらぎを吸収する工夫は行われている。例えば、特許文献1ではDPマッチングを行うなどにより時間方向の波形の小さなゆらぎを吸収する処理が行われている。また、非特許文献1では量子化を行う閾値を4種類用意し、どれか1種類でも共通の鍵を生成できた場合、認証に成功するようにしており、特定の周波数のパワースペクトルが閾値近辺になることがあっても、パワースペクトルが大きく異ならなければ同じ鍵が生成できるよう工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-193656号公報(第5−8頁、図3)
【特許文献2】特開2008-311726号公報(第8−9頁、[0030]-[0031]段落)
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mayrhofer, Gellersen, “Shake well before use: Authentication based on accelerometer data”, Pervasive 2007, pp.144-161, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の技術に挙げた方法は、認証の際の動作の微妙なゆらぎを吸収する工夫がされているが、いずれも加速度センサの出力波形の類似性が極めて高くならない限り利用できない。
【0013】
例えば、特許文献1に挙げたDPマッチングによって類似性を算出する場合、時間方向の伸張のみを行うため、同じ行動をしても加速度の大きさが異なってしまう場合には類似性は低く判定されてしまう。
【0014】
特許文献2に挙げた方法では、筐体運動の反転タイミングがずれると、類似性は低く判定されてしまう。また、非特許文献2の方法では、パワースペクトルの大きさが大きく異なる周波数が1つでも存在する場合、同一の鍵を生成することができない。
【0015】
このような手法は、類似動作ではあるが、加速度センサの出力波形レベルでは類似性がそれほど高くならない動作に適用することは難しい。例えば、同伴しているユーザの歩行状態では、同じ歩行であっても加速度の大きさが体重などの影響で異なったり、歩行タイミングがユーザによってずれたり、ユーザごとの歩き方の違いにより周波数解析結果を見ても同伴ユーザの行動が全く類似しないこともある。
【0016】
したがって、背景技術に挙げたいずれの方法でも同伴のような動作から鍵を生成することは難しい。
【0017】
従来技術では、また、鍵生成もしくは認証のために、ユーザが特有の動作を行わなければならない。ユーザが日常生活を送る中で生じる類似動作では、従来の技術が求める極めて高い類似性を有する加速度センサ出力を生み出すことが困難であるため、ユーザがそれを生み出しうる特有の動作(例えば、複数のデバイスを片手に持って振るなど)が必要となるためである。
【0018】
また、従来の技術に挙げた方法はいずれも、DPマッチングや周波数領域への変換処理を常時使用することを前提としており、加速度センサの出力波形の類似性を求める処理コストが非常に大きい。これは明らかに類似していない波形同士の比較においても高コストの処理を必要とし、限られた電力資源で動作するデバイスの電力効率を悪化させる。
【0019】
本発明は、加速度センサの出力波形に極めて高い類似性がある場合だけでなく、類似性がそれほど高くないような場合にも、類似行動に伴う加速度センサの出力波形の類似性から暗号鍵を生成できる暗号鍵生成システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の鍵生成システムは、加速度などユーザの動きを検出するセンサと、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出手段と、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換手段と、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較手段と、前記行動類似性比較手段で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成手段とを有する。そして、好ましくは、周波数ごとの特徴の類似性が高い場合には周波数の特徴量を量子化して暗号鍵を生成し、分散値の時系列変化の類似性のみが高い場合は分散値の時系列データを閾値処理により量子化して暗号鍵を生成し、周波数ごとの特徴の類似性も分散値の時系列変化の類似性もいずれも低い場合が全体の一定割合以上に存在する場合は鍵を生成しないよう動作する。
【0021】
本発明の別の視点によれば、センサから加速度などユーザの動きを検出し、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出し、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換し、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定し、判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成することを特徴とする暗号鍵生成方法が得られる。
【0022】
本発明の他の視点によれば、加速度などユーザの動きを検出するセンサと、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出手段と、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換手段と、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較手段と、前記行動類似性比較手段で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成手段とを備えたことを特徴とする端末が得られる。
【0023】
さらに、本発明の1視点によれば、加速度などユーザの動きを検出するセンシング処理と、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出処理と、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換処理と、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較処理と、前記行動類似性比較処理で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成処理とをコンピュータに実行させるためのプログラムが得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ユーザごとの個人差に影響されず、日常生活で同じ動作を行ったときは類似した特徴量が得られやすい分散値の類似性を判定し、分散値において類似性が高いと判断されたときは加速度センサの出力波形が類似しているかどうかを周波数ごとの特徴の類似性をもとに判定し、類似性が高いと判定されたものの中で、鍵生成のためのより多くの情報が得られる特徴量から暗号鍵を生成するので、加速度センサの出力波形の類似性が極めて高くない場合にも、類似行動によって暗号鍵を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】加速度センサなどを用いた従来の認証装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態のブロック図である。
【図3】第1の実施形態の動作を示す流れ図である。
【図4】図2の鍵生成部5においてFFTデータから量子化を行う方式について示した概念図である。
【図5】鍵生成部5において分散値から量子化を行う方式について示した概念図である。
【図6】鍵生成部5において分散値から量子化を行う別方式について示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図2を参照すると、本発明の実施の形態の暗号鍵生成システム100は、センサ1と、変換区間指定手段2、特徴抽出手段3と、特徴量交換手段4と、行動類似性比較手段5と、鍵生成手段6とから構成されている。
【0028】
これらの手段はそれぞれ概略つぎのように動作する。
【0029】
センサ1は、加速度、角加速度などを検出する。具体的には加速度センサやジャイロが相当する。交換区間指定手段2は、あらかじめ相互に鍵を生成する端末間(又はデバイス)で、鍵生成のために設定するセンサ出力の開始時刻、終了時刻を定めた区間で、特徴抽出手段3の1回の処理を行う区間を指定する。
【0030】
特徴抽出手段3は、交換区間指定手段2で指定された区間において、センサ出力から各種演算を行い、分散値や周波数ごとのパワースペクトルを得る。
【0031】
特徴量交換手段4は、上記特徴量のデータを通信により、相互に鍵を生成する端末(又はデバイス)間で交換する。
【0032】
行動類似性比較手段5は、交換された特徴量をもとに行動の類似性を算出し、より詳細な類似性が必要な場合は別の特徴量を得るように相互の端末(又はデバイス)に通知し、特徴抽出手段3と特徴量交換手段4で別の特徴量を得る。そして、最終的に鍵生成に利用する特徴量と鍵生成に利用する区間を定める。
【0033】
鍵生成部6では、行動類似性比較手段4で得られた結果を用いて、当該特徴量で当該区間のデータを用いて鍵を生成する。
【0034】
次に、図2及び図3のフローチャートを参照して本実施の形態の暗号鍵生成システム100の全体の動作について詳細に説明する。
【0035】
まず、センサ1によりデータを収集する(図3のステップA1)。センサ1は、交換区間指定手段2の動作とは無関係に、一定時間ごとに定期的にデータを収集するものとする。
【0036】
次に、交換区間指定手段2により、鍵生成のための開始時刻ts、時間長ΔT、各処理の時間長δtを通信により相互に鍵を生成する端末(又はデバイス)間交換する(ステップA2)。この各処理の時間長とは、後述する特徴抽出手段2から行動類似性比較手段5で1回の処理を行う対象とするセンサ出力の時間長を表す。
【0037】
相互に鍵を生成する端末(又はデバイス)との通信においては、BluetoothやWLANなどのローカル通信を使い、暗号化はされていてもいなくてもよい。そして、カウンタであるnを0にセットする(ステップA3)。
【0038】
以下、時刻がts+nδtからts+(n+1)δtまでのセンサ出力から、特徴抽出手段3により分散値を算出する(ステップA4)。さらに、特徴量交換手段4により得られた分散値の値を通信により交換する(ステップA5)。この通信においても、BluetoothやWLANなどのローカル通信を使い、暗号化はされていてもいなくてもよい。また、ステップA2の通信を継続して同じセッションで実施してもよい。
【0039】
次に、行動類似性比較手段4において、分散値を交換した端末双方で、分散値の差分を計算し、その差分の累積和を求める。その際、時間的な揺らぎを吸収するために、平滑化して差分を求めたり、ソートして同じ順位の値の差分の累積和を求めたり、ダイナミックタイムワーピング法を用いて差分を求めてもよい。そして、その累積和があらかじめ定めた閾値より小さいか判定する(ステップA6)。
【0040】
ステップA6で閾値より大きいと判定された場合(NOのとき)、その区間は類似性が低いと判定する(ステップA7)。ステップA6で閾値より小さいと判定された場合(YESのとき)、当該区間において以下の処理を行う。
【0041】
まず、通信により別の特徴量を要求する(ステップA8)。この場合の通信もステップA2と同様、BluetoothやWLANなどのローカル通信を使い、暗号化はされていてもいなくてもよい。また、ステップA2の通信を継続して同じセッションで実施してもよい。次に、特徴抽出手段3により、時刻がts+nδtからts+(n+1)δtまでのセンサ出力から、FFTにより周波数ごとのパワースペクトルを算出する(ステップA9)。なお、周波数ごとの特徴量を求める手法としてFFT以外にウェーブレット変換などの方式を使うことも可能である。さらに、特徴量交換手段4により周波数ごとのパワースペクトルを交換する(ステップA10)。そして、周波数ごとのパワースペクトルを交換した端末双方で、coherenceを計算し、coherenceがあらかじめ定めた閾値より大きいかどうか求める(ステップA11)。ステップA11で閾値より大きいと判定された場合(YESのとき)、その区間は類似性が大きいと判定し、FFTデータから暗号鍵を生成することと決定する(ステップA12)。ステップA11で閾値より小さいと判定された場合(NOのとき)、その区間は類似性が中程度と判定し、分散値から鍵を生成することを決定する(ステップA13)。なお、ステップA11〜A13までの処理はcoherence以外でも周波数ごとのパワースペクトルの類似性を求める方式であれば何でもよい。
【0042】
ステップ7、ステップ12、ステップ13の処理に至った後は、処理をした区間がΔT以上かを判定する。具体的には、nδt≧ΔTになるか判定する(ステップA14)。もし、nδt≧ΔTにならないとき(NOのとき)、nに1をインクリメントし(ステップA15)、ステップA4に戻る。nδt≧ΔTとなるとき(YESのとき)、ステップA12、ステップA13で類似性高又は類似性中と判定された区間が区間ΔTのうち、どの程度の割合を占めるか計算する(ステップA16)。そして、その割合が一定割合以上(例えば8割以上等)かどうか判定する(ステップA17)。ステップA17で一定割合より小さいと判定される場合は、鍵生成を行わず、終了する(ステップA19)。
【0043】
一方、ステップA17で一定割合より大きいと判定される場合は、鍵生成手段5により以下のように鍵生成を行う(ステップA18)。まず、ステップA12で類似性高と判定された区間については、周波数ごとのパワースペクトルを閾値処理により量子化する。図4がその概念図である。図4では6段階に分けて、それぞれに閾値を設定し、当該区間に属するかどうかで1〜6までの値を定める。それを図4の右側のように周波数ごとの各レベルに応じて特徴ベクトルを生成し、これをもとに鍵を割り当てる。
【0044】
つぎに、ステップA13で類似性中と判定された区間については、分散値を閾値処理により量子化する。図5がその概念図である。図5では横軸をある時刻からの経過時間、縦軸を分散の対数値として、経過時間0〜20000までの区間で鍵を生成する場合を例に挙げて説明する。量子化においては、分散値の大きさと経過時間の双方で量子化のための区間を定め、この区間に連続的に一定時間以上存在するかしないかで値を定める。図5の例で、一定時間を1000と定めた場合、ユーザA、Bの端末とも0x01、0x02、0x10、0x20が該当するので、これらを足した値0x33をこの区間の鍵として定める。
【0045】
また、以上の方法とは別の方法でも分散値により量子化することが可能である。図6がその概念図である。図6では横軸が経過時間、縦軸は分散の対数値である。この処理では、まず、基準となる時刻の期間(t0〜t1)において平均値a0を求める。つぎに、(t1〜t1+δt)、(t1+δt〜t1+2δt)、(t1+2δt〜t1+3δt)、(t1+3δt〜t1+4δt)の各期間において、平均値a1、a2、a3、a4を求める。そして、このように得られたa1、a2、a3、a4をa0-x(xは閾値を決定するための予め定めた値)より小さい場合は1、a0-x以上、a0+xより小さい場合は2、a0+x以上の場合は3として量子化する。このように量子化すると、図6の例では、それぞれ3、3、3、3として量子化される(図では丸印3のように表示されているのに注意)。そして、このa1〜a4まで量子化した値を各要素として特徴ベクトル(3,3,3,3)を生成する。つぎに、閾値をxからx+d、x+2d、x+3d、x+4dと変更しながら同様に量子化値を算出し、特徴ベクトルを生成する。このような特徴ベクトルは閾値を変えることにより、(3,3,3,2),(2,3,3,2),(2,3,2,2)のような異なる特徴ベクトルを4つ生成することができる。
【0046】
最後に、これら区間で量子化して得られた値をもとに暗号鍵を生成する。具体的には、量子化して得られた値を連接したものを鍵とするとか、連接した値にハッシュ関数を適用して適当なビット長に変換したものを鍵とする。また、図6に示した方式では、相互のデバイスで共通に生成できた特徴ベクトル(例えば(3,3,3,2))に対して、ハッシュ関数を適用して適当なビット長に変換したものを鍵とする。
【0047】
以上本発明の暗号鍵生成システムについて説明してきたが、より具体的には、同伴しているユーザが所持する携帯電話に搭載された加速度センサの出力から暗号鍵を生成できる暗号鍵生成システムを得ることができる。
【0048】
本実施の形態では、行動類似性比較手段5において時間的な揺らぎを吸収するために、平滑化して差分を求めたり、ソートして同じ順位の値の差分の累積和を求めたり、ダイナミックタイムワーピング法を用いて差分を求めてもいるため、個人差などから加速度センサ出力が類似波形にならない場合でも,分散値の平滑化などを特徴量として用いて、同伴などの類似行動をしているユーザ行動から鍵生成を行うことが可能である。
【0049】
また、本実施の形態では、さらに、行動類似性比較手段5と鍵生成手段6の動作によって鍵生成が行いにくい場合においても、アルゴリズムを特定するごとに異なるビット長の鍵を蓄積していけるため、動作の種類によらずに鍵共有を実施することが可能である。
【0050】
本実施の形態では、さらに、行動類似性比較手段5の動作によって処理の軽い分散によってある程度の類似性を求めて、類似性の高い場合に限り特徴抽出手段2でFFT演算を行うことによって、従来法に比べて低消費電力で鍵を効率的に生成することが可能である。
【0051】
本発明は実施形態としては、コンピュータに実行させるプログラムでもよい。すなわち、加速度などユーザの動きを検出するセンシング処理と、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出処理と、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換処理と、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較処理と、前記行動類似性比較処理で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成処理とをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0052】
本発明の実施形態は、暗号鍵生成システムを搭載した端末で実施することもできる。すなわち、端末は、加速度などユーザの動きを検出するセンサと、センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出手段と、得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換手段と、得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較手段と、前記行動類似性比較手段で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成手段とを含む。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、携帯電話と周辺機器とのセキュア通信のための認証、通信暗号化といった用途に適用できる。また、同伴などの類似行動をとるユーザが所持する携帯電話間でのセキュア通信、例えば、携帯電話に保存された音楽などのコンテンツを同伴している間安全に共有する応用といった用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 センサ
2 交換区間指定手段
3 特徴抽出手段
4 特徴量交換手段
5 行動類似性比較手段
6 鍵生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度などユーザの動きを検出するセンサと、
センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換手段と、
得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較手段と、
前記行動類似性比較手段で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成手段と、
を備えたことを特徴とする暗号鍵生成システム。
【請求項2】
前記鍵生成手段は、周波数ごとの特徴の類似性が高い場合には周波数の特徴量を量子化して暗号鍵を生成し、分散値の時系列変化の類似性のみが高い場合は分散値の時系列データを閾値処理により量子化して暗号鍵を生成することを特徴とする請求項1記載の暗号鍵生成システム。
【請求項3】
前記鍵生成手段は、周波数ごとの特徴の類似性も分散値の時系列変化の類似性もいずれも低い場合が全体の一定割合以上に存在する場合は鍵を生成しないよう動作することを特徴とする請求項2記載の暗号鍵生成システム。
【請求項4】
前記行動類似性比較手段は、時系列の分散値を平滑化したデータの差分をもとに類似性を判定することを特徴とする請求項1、2または3記載の暗号鍵生成システム。
【請求項5】
前記行動類似性比較手段は、時系列の分散値をソートした後、同一順位のデータごとに差分をとり、その差分の累積値を類似性として判定することを特徴とする請求項1、2または3記載の暗号鍵生成システム。
【請求項6】
センサから加速度などユーザの動きを検出し、
センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出し、
得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換し、
得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定し、
判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する
ことを特徴とする暗号鍵生成方法。
【請求項7】
前記暗号鍵の生成ステップは、周波数ごとの特徴の類似性が高い場合には周波数の特徴量を量子化して暗号鍵を生成し、分散値の時系列変化の類似性のみが高い場合は分散値の時系列データを閾値処理により量子化して暗号鍵を生成することを特徴とする請求項6記載の暗号鍵生成方法。
【請求項8】
前記暗号鍵の生成ステップは、周波数ごとの特徴の類似性も分散値の時系列変化の類似性もいずれも低い場合が全体の一定割合以上に存在する場合は鍵を生成しないよう動作することを特徴とする請求項7記載の暗号鍵生成方法。
【請求項9】
前記行動類似性の判定ステップは、時系列の分散値を平滑化したデータの差分をもとに類似性を判定することを特徴とする請求項6、7または8記載の暗号鍵生成方法。
【請求項10】
前記行動類似性の判定ステップは、時系列の分散値をソートした後、同一順位のデータごとに差分をとり、その差分の累積値を類似性として判定することを特徴とする請求項6、7または8記載の暗号鍵生成方法。
【請求項11】
加速度などユーザの動きを検出するセンシング処理と、
センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出処理と、
得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換処理と、
得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較処理と、
前記行動類似性比較処理で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成処理と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
前記鍵生成処理は、周波数ごとの特徴の類似性が高い場合には周波数の特徴量を量子化して暗号鍵を生成し、分散値の時系列変化の類似性のみが高い場合は分散値の時系列データを閾値処理により量子化して暗号鍵を生成する鍵生成処理を含むことを特徴とする請求項11記載のコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項13】
前記鍵生成処理は、周波数ごとの特徴の類似性も分散値の時系列変化の類似性もいずれも低い場合が全体の一定割合以上に存在する場合は鍵を生成しないことを特徴とする請求項12記載のコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
前記行動類似性比較処理は、時系列の分散値を平滑化したデータの差分をもとに類似性を判定することを特徴とする請求項11、12または13記載のコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項15】
前記行動類似性比較処理は、時系列の分散値をソートした後、同一順位のデータごとに差分をとり、その差分の累積値を類似性として判定することを特徴とする請求項11、12、または13記載のコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項16】
加速度などユーザの動きを検出するセンサと、
センサ出力からFFTや分散値などの特徴量を抽出する特徴抽出手段と、
得られた特徴量を鍵生成デバイス相互で交換する特徴量交換手段と、
得られた特徴量のうち分散値の時系列変化と周波数ごとの特徴の類似性をもとに行動類似性を判定する行動類似性比較手段と、
前記行動類似性比較手段で判定された類似性の度合いに応じて鍵生成のための特徴量を選択し、特徴量が類似している区間のみを利用して暗号鍵を生成する鍵生成手段と
を備えたことを特徴とする端末。
【請求項17】
前記鍵生成手段は、周波数ごとの特徴の類似性が高い場合には周波数の特徴量を量子化して暗号鍵を生成し、分散値の時系列変化の類似性のみが高い場合は分散値の時系列データを閾値処理により量子化して暗号鍵を生成することを特徴とする請求項16記載の端末。
【請求項18】
前記鍵生成手段は、周波数ごとの特徴の類似性も分散値の時系列変化の類似性もいずれも低い場合が全体の一定割合以上に存在する場合は鍵を生成しないよう動作することを特徴とする請求項17記載の端末。
【請求項19】
前記行動類似性比較手段は、時系列の分散値を平滑化したデータの差分をもとに類似性を判定することを特徴とする請求項16、17または18記載の端末。
【請求項20】
前記行動類似性比較手段は、時系列の分散値をソートした後、同一順位のデータごとに差分をとり、その差分の累積値を類似性として判定することを特徴とする請求項16、17または18記載の端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−187282(P2010−187282A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31154(P2009−31154)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】