説明

暗視眼鏡

【課題】着用者に現実世界の増強像を提供する暗視眼鏡を形成する、有効赤外特性および屈折光路を有するシステムを提供することにある。
【解決手段】従来の暗視眼鏡製品と比較して軽量、小型で経済的に製造できるため或る商業的および娯楽的用途に適した像増強眼鏡(100)を開示する。開示する一実施形態では、入力光は、2つのアミチプリズム(144)、(148)およびフィールドフラットナーレンズ(150)を通って像増強器(152)に入る。像増強器により作られた増強像は、第1屈折鏡(162)から反射されてレンズ(154)を通り、曲面鏡(156)から反射されて他の光路を通ってレンズ(154)に戻る。次に増強像は、2つの付加非ダブレットレンズ(158)、(160)を通る。これらのレンズ(158)、(160)間に中間像が存在する。増強像は、次に、眼鏡の「レンズ」またはバイザー(130)から反射されて、着用者の瞳(131)に入る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示する幾つかの実施形態は、光学システムおよび光学素子に関し、より詳しくは、着用者に現実世界の増強像を提供する暗視眼鏡を形成する、有効赤外特性および屈折光路(folded optical path)を有するシステムに関する。
【0002】
関連出願の参照
本願は、2008年5月16日付米国仮特許出願第61/053,843号(名称「暗視眼鏡(Night Vision Glasses」)の優先権を請求する。また本願は、2009年3月13日付米国特許出願第12/404,087号(名称「バイザーヘッドアップディスプレイ(Visor Head-Up Display)」)および米国仮特許出願第61/036,281号に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/036,281号明細書
【特許文献2】米仮特許出願第12/404,087号明細書
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】一実施形態による1対の暗視眼鏡を示す正面図である。
【図2】図1の実施形態による光学的構成を示す正面図である。
【図3】図1の実施形態の光学システムの概略図であり、明瞭化のため2つの平面屈折鏡(planar fold mirrors)および2つの屈折プリズム(fold prism)で屈折されていない状態を示すものである。
【図4】図1の実施形態の光学的構成を示す平面図である。
【図5】図1の実施形態の光学的構成を示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の原理の理解を促進する目的で、図示の実施形態を参照されたい。また、本発明を説明するのに特殊用語を使用する。しかしながら、本発明の範囲が図示の実施形態に限定されないこと、説明しまたは図示した実施形態の任意の変更および更なる変更および本願に図示した本発明の原理の更なる用途は、本発明が関連する当業者にとって通常考え得るものであると考えられる。
【0006】
長年に亘り、暗視技術は、兵士が、ごく僅かな光条件下で状況を見ることを可能にしてきた。しかしながら、多くの暗視システムは、多くの一般人の用途および娯楽用途等の多くの用途には不適な重量配分を有しかつ全体的に嵩張るものであった。これらのシステムは別の支持体を必要とし、この支持体としてしばしば、外部構造(例えば車両のフレーム)、パイロットのヘルメットまたはユーザの片手または両手がしばしば使用された。
【0007】
概略的にいえば、本願に開示するシステムの一形態は、着用者に増強像を提供する暗視技術を含む1対の眼鏡である。種々の実施形態は、眼鏡または他の眼鏡類に装着されかつユーザの顔上でバランスを保つのに充分なほど軽量である。他の形態として、巻き付け装着型眼鏡、ヘルメットをベースとする形態、ミラーをベースとする形態および本願の開示技術分野の当業者に明白な他の実施形態がある。明瞭化のため、用語「バイザー」とは着用者の視界内の物体をいい、作られた像はバイザーから反射する。物体は、レンズ、ミラーまたは少なくとも一部に反射性を有する他の物体を含み、用語「バイザー」が一般にこれらの物体を説明するのに使用されているか否かは問わない。
【0008】
図1に示すように、暗視眼鏡100は、フレーム110、ステム120、光学モジュール140および慣用のまたは好ましいバイザー130を有している。光学モジュール140は、受けた僅かな光エネルギを、バイザー130の表面から反射された増強像として着用者が見ることができる可視光に変換する。
光学モジュール140のコンポーネンツは、図2に、より詳細に図示されかつ図3に概略的に図示されている。光学モジュール140は、対物レンズ対物レンズサブシステム501と、像増強器152と、接眼レンズサブシステム601とを有している。対物レンズサブシステム501は、ダブレット(doublet)142と、屈折プリズム144と、シングレット(singlet)またはダブレット146と、屈折プリズム148と、フィールドフラットナー150とを有し、一方、接眼レンズ601は、平面鏡162と、レンズ154と、曲面鏡156と、レンズ158と、平面鏡164と、レンズ160とを有している。
【0009】
この実施形態では、光学モジュール140は全部で5つの光学屈折部(optical folds)、すなわち対物レンズサブシステム501に2つの屈折部および接眼レンズサブシステム601に3つの屈折部を有している。光学モジュールの屈折部に加え、バイザー130によって1つの付加屈折部を設けることにより、全部で6つの屈折部を形成する。これらの6つの屈折部は偶数であり、したがって、現実世界に関する像の正しい左右像(handedness)(リバージョン)を維持する。像増強器152は簡単なガラス窓出力(glass window output)で形成され、したがって、対物レンズサブシステム501および接眼レンズサブシステム601を通して見られる像は、対物レンズサブシステムの正規像回転(normal image rotation)により適正に配向されなくなる。これを補正するため、修正された2つのアミチプリズムすなわち「屋根型」プリズム144、148を使用して対物像を180だけ反転させ、眼で見えるように適正配向させる。
【0010】
図2および図3に示すように、ダブレット142は、着用者の前方から光を受ける。光は、屈折プリズム144、シングレットまたはダブレット146および他の屈折プリズム148を通って、フィールドフラットナーレンズ150上および像増強器152のカソード(入力)窓内に導かれる。この実施形態では、プリズム144およびプリズム148は修正されたアミチプリズムまたは「屋根型」プリズムであり、ダブレット142、シングレットまたはダブレット146およびフィールドフラットナー150と組合わされて、正しい位置および方向で像増強器152上に像を合焦させる。本願技術分野の当業者ならば明らかなように、他の実施形態では、プリズムの代わりに、簡単な前面鏡で作られた簡単なアミチリフレクタを用いることができる。明瞭化のため、図3には屈折プリズム144、148により形成される屈折が示されていないことに留意されたい。
【0011】
この実施形態では、像増強器152は、薄いガラスの第2世代(マルチアルカリ)カソード窓および薄いガラス出力窓を備えた、直径12-13mmの像フォーマットを有している。或る既存の暗視装置の出力窓に使用されている光ファイバツイスターはかなりのサイズおよび費用が嵩むが、本発明の実施形態では、アミチプリズム(またはリフレクタ)により反転が達成されるため光ファイバツイスターは不要である。サイズ、重量、コスト、商業化可能性、電力消費および昼光保護に関する種々の仕様に他の形式の像増強器を使用できる。本発明の精神を保有しつつ、これらのおよび他の設計考察に基づいて他のアノードを選択することもできるが、ガラス型出力(アノード)窓は、軍用型光ファイバベース窓より実質的に高い蛍光体からの光の透過が得られる。これらの実施形態では、ガラス型出力窓からの高い透過は、小口径の対物レンズおよび低利得の第2世代像増強器を使用することに特有の幾分の損失を相殺する。或る実施形態は、例えば、或る軍用暗視システムと比較して、これらの軍用暗視システムの重量の1/10に過ぎないが、軍用暗視システムの65-75%の増強視界が得られる。
【0012】
像増強器152により作られた像は、曲面鏡(例えば、球面、非球面、双曲面、楕円面、放物面またはトロイド面の鏡)156で反射される前および後の両方で、薄い、プラスチックのメニスカス型「補正」レンズ154を通る。この実施形態では、鏡156とレンズ154との組合せが、傾斜した球面バイザー/リフレクタ130により発生される非点収差および歪みを補正する。この実施形態の鏡156は球状前面鏡が好ましいが、周辺鏡(Margin mirror)として機能する後面鏡を使用することもできる。鏡156は、任意の適当な材料で作ることができ、プラスチックで作ることもできる。この実施形態のレンズ158は、増強像をユーザの眼の瞳131に置きかつコリメートするようにレンズ160、154とマッチングされる。この実施形態では、レンズ160、158、154はプラスチックレンズであり、レンズ160とレンズ158との間に中間像が現れる。このシステムの種々のレンズおよび鏡は、ガラス、プラスチックまたは他の任意の材料で作ることができる。種々のレンズおよび鏡に種々のプラスチックの組合せを用いることにより、システムに優れた色消し効果を付与し、かつ嵩張りかつ重いガラス型アクロマート(色消しレンズ)の必要性が低減される。明瞭化のため、平面鏡162、164により作られる屈折が図3の概略図から省略されていることに留意されたい。
【0013】
最後に、像は、暗視眼鏡100のバイザー130から反射して、観察者の瞳131に入る。この実施形態ではバイザー130は球面であるが、他の実施形態では非球面、放物面またはトロイダル状にすることができ、当業者には更に別の形状も考えられるであろう。また、この実施形態のバイザー130は、通常、均一な反射率、部分反射率または幾つかの慣用サングラスのレンズにおけるように垂直方向に変化する反射率を有している。球面バイザーを用いる設計は、或る他の設計より、製造時の小さい変化に対するフレキシビリティが大きくかつ感応度が低い。
【0014】
レンズ154、160は例えばアクリル樹脂またはポリカーボネートのような軽量プラスチック材料で作るのが好ましいが、当業者に明らかな他のレンズ材料で使用することもできる。同様に、鏡156も球面、非球面、放物面またはレンズ154およびシステムの残部との適当な組合せを形成する他の形状にすることができる。種々の実施形態では、鏡156は、プラスチック、ガラス、金属または当業者に明らかな他の材料で作ることができる。鏡156、162、164は、複製方法を用いて作ることもできる。
【0015】
レンズ158は、プラスチックのポリスチレンまたはポリカーボネートで作るのが好ましい。これらのプラスチック材料の幾つかは、ゼネラルエレクトリック等の会社により製造/販売されている。当業者には明らかなように、他の実施形態では他のレンズを使用できる。
【0016】
バイザー130もプラスチックで作るのが好ましく、種々の実施形態では、着色処理、無着色処理、可変色処理および/または感光ダイナミック着色処理されるか、一方の面が薄膜反射コーティングでコーティングされる。この薄膜は、全面に塗布されるか、パッチ模様のように塗布される。バイザーはポリカーボネートプラスチックまたは眼の安全性を高める他の粉砕防止材料で作るのが好ましい。また、バイザーは、当業者に明らかな種々の任意の手段を用いてフレーム110に取付けられる。
【0017】
図4は、増強像を眼鏡の後方から見て眼鏡の右側に投影する光学システムの一実施形態における暗視眼鏡100の光学的構成を示す平面図であり、一方、図5は同じ実施形態の後面図である。光学システム全体に亘る種々の光学的屈折により、空間的にコンパクトに構成できる。より詳しくは、この実施形態は、平面屈折鏡(planar folding mirror)162、164、曲面鏡156および屈折プリズム144、148を有している。図4に示すように、増強像はバイザー130の領域166から反射して、ユーザの瞳131に入る。
【0018】
要約すれば、図1に示す実施形態は、2つのアミチプリズムまたは鏡を用いた対物レンズサブシステム501を使用する像増強システムと、光ファイバ窓の代わりに簡単なガラス出力窓を使用する像増強器と、特許文献1および2に開示されているようにバイザー130と組合わされて増強像をユーザの眼に投影する接眼レンズサブシステム601とを有している。
【0019】
全ての刊行物、先行出願および本願で引用する他の文献は、あたかもこれらの各々が個々に引用されかつ完全に開示されているかのように、これらの文献の全体を本願に援用する。本発明は、添付図面および上記記載で詳細に説明したが、好ましい実施形態が図示されかつ説明されたものであること、および本発明の精神内に含まれる変更は保護されるべきであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0020】
100 暗視眼鏡
110 フレーム
130 バイザー
140 光学モジュール
142 ダブレット
144、148 プリズム
150 フィールドフラットナーレンズ
152 像増強器
154、158、160 レンズ
156 曲面鏡
162、164 平面鏡
501 対物レンズサブシステム
601 接眼レンズサブシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
湾曲反射面を備えたバイザーと、
対物レンズサブシステムとを有し、該対物レンズサブシステムが、
2つのアミチプリズムと、
ダブレットレンズと、
シングレットおよびダブレットからなるレンズのクラスから選択された付加レンズと、
フィールドフラットナーレンズとを備え、
対物レンズサブシステムの各素子を通過した入力光を受けて増強像を作る像増強器と、
接眼レンズサブシステムとを更に有し、
前記フレームが、対物レンズサブシステム、像増強器および接眼レンズサブシステムを、増強像が接眼レンズサブシステムを通過し、次にバイザーの反射面からユーザの眼に反射するような相対位置に支持していることを特徴とする暗視眼鏡。
【請求項2】
前記対物レンズサブシステムは、F/n口径(nは約2.0以上)を有していることを特徴とする請求項1記載の暗視眼鏡。
【請求項3】
前記対物レンズサブステムは像を回転させないことを特徴とする請求項1記載の暗視眼鏡。
【請求項4】
前記像増強器を通る光路は光ファイバの回転を含まないことを特徴とする請求項1記載の暗視眼鏡。
【請求項5】
前記像増強器はガラス出力窓を有していることを特徴とする請求項1記載の暗視眼鏡。
【請求項6】
前記像増強器は第2世代像増強器であることを特徴とする請求項1記載の暗視眼鏡。
【請求項7】
フレームと、
湾曲反射面を備えたバイザーと、
対物レンズサブシステムとを有し、該対物レンズサブシステムが次の素子すなわち、
2つのアミチプリズムと、
ダブレットレンズと、
シングレットおよびダブレットからなるレンズのクラスから選択された付加レンズと、
フィールドフラットナーレンズとを備え、
対物レンズサブシステムの各素子を通過した入力光を受けて増強像を作る像増強器と、
接眼サブシステムとを更に有し、
前記フレームが、対物レンズサブシステム、像増強器および接眼サブシステムを、増強像が接眼サブシステムを通過し、次にバイザーの反射面からユーザの眼に反射するような相対位置に支持していることを特徴とする暗視眼鏡。
【請求項8】
前記対物レンズサブシステムは、F/n口径(nは約2.0以上)を有していることを特徴とする請求項7記載の暗視眼鏡。
【請求項9】
前記対物レンズサブシステムは像を回転させないことを特徴とする請求項7記載の暗視眼鏡。
【請求項10】
前記像増強器を通る光路は光ファイバの回転を含まないことを特徴とする請求項7記載の暗視眼鏡。
【請求項11】
前記像増強器はガラス出力窓を有していることを特徴とする請求項7記載の暗視眼鏡。
【請求項12】
前記像増強器は第2世代像増強器であることを特徴とする請求項7記載の暗視眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524020(P2011−524020A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509797(P2011−509797)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/044413
【国際公開番号】WO2009/105791
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510303556)デイ アンド ナイト ディスプレイ システムズ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】