曲面発光性に優れた可撓性面発光シート
【課題】強度、耐久性に優れ、変形問題も起こりにくく、曲面であっても、光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られる、エッジライト式面発光ユニット用曲面発光性に優れた可撓性面発光シートの提供。
【解決手段】曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、可撓性樹脂2を含浸被覆してなる基布1を、導光性基材として含む複合シートであって、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たすことによって得られる。0.02<|n1−na|≦0.07・・・式1|n1−nb|≦0.07・・・式2
【解決手段】曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、可撓性樹脂2を含浸被覆してなる基布1を、導光性基材として含む複合シートであって、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たすことによって得られる。0.02<|n1−na|≦0.07・・・式1|n1−nb|≦0.07・・・式2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト式の面発光ユニットに用いられる面発光シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、平面はもちろん曲面であっても側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、サイズやデザインの自由度が高い、曲面発光性に優れた可撓性面発光シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,電飾看板や表示装置等に使用されている背面光源としては,ハウジング内に蛍光灯等の線状光源や発光ダイオード等の点光源を複数個配置した直下方式と,板状の導光部材の側端面に線状光源あるいは点光源を配置したエッジライト方式の面発光ユニットとがある。
【0003】
この内、直下方式では、蛍光灯や発光ダイオード等の光源の形が浮き出てしまうことを防止するために、光源と画像層との間隔を15〜20cm程度離す必要があり、装置全体を薄くすることができず、看板や表示板の小型化を図る事ができないという問題があった。
【0004】
一方、エッジライト方式の背面光源としては、通常、アクリル樹脂板やポリカーボネート樹脂板等の板状透明材料を導光部材とし、この導光部材の側端面(光入射部)に配した光源から導光部材中に光を入射させ、導光部材の表面側(照光面)あるいは裏面側(照光面とは反対面)に光拡散手段を設け、裏面側に光反射手段を設けるなどして、表面側(照光面)から光を出射させる構造が一般的であるが、この様な構造の面発光ユニットにおいては以下のような課題が知られている。
1、側端部に配した光源からの距離により明暗の差が生じる。
2、製造時及び施工時の破損、変形、使用時の光源や電源からの熱、及び屋外使用の場
合の日射による装置全体の温度上昇等による変形(ゆがみ、反り、寸法変化)等の恐
れがある。
3、曲面状にデザインされた背面光源を得ることが困難である。
【0005】
上記1の課題に対しては、例えば、テーパー型導光部材を用いる方法(例えば、特許文献1参照)、導光部材の背面に三角形の凹部からなるローレット形状のカットを連続して設け、その傾斜を、光源からの距離が遠くなるに従って徐々に小さくなる様にする方法(例えば、特許文献2参照)、導光部材の裏面に設ける拡散ドットを、導光部材の一側から他側に向かって密度が高くなるようにランダムに配置する方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。これらの方法により、ほぼ均一な発光を示す面発光ユニットを得ることができるが、面発光ユニットの形状や大きさに応じて個々に設計を変える必用があるため、大量生産される液晶パネル用のバックライト向けなどには良いが、使用場所や使用方法によってサイズや形状の異なる看板や表示体および照明向けについては、製造上・設計上の制約が大きなものであった。
【0006】
また、同じく上記1の課題に対して、特定範囲のヘーズを示す導光部材を用いることで、ほぼ均一な発光が得られる面発光ユニットも提案されている(例えば、特許文献4参照)。この方法によれば、導光部材を自由な大きさにカットして用いることができ、製造上・設計上の制約は解消されるが、上記2および3の課題については解決されていなかった。
【0007】
上記2の課題については、補強材を積層する方法、例えば、面発光体の照光面とは反対側の面に繊維製の織布や不織布を積層して補強する方法などが考えられるが、片面を補強したのでは、温度変化により収縮や膨張の応力がかかった際に反りやゆがみを生じ易く、変形を充分に抑えることができないという問題がある。
【0008】
2層の面発光体のそれぞれ裏面側を内側として貼り合わせる両面発光型の面発光ユニットを構成する際に、中間に繊維製の基布を挿入して積層することも可能であり、この場合表裏の応力差による変形を軽減できることが期待される。ただし、両面発光の場合、一方の面から反対側の面の画像や補強のために挿入した繊維製の織布や不織布が透けて見えることが無い様、中間に光隠蔽層を設ける必要があり、その光隠蔽層は通常充填剤を多く含む樹脂層であるか、蒸着・スパッタリング・鍍金などの方法で設けた金属薄膜層であり、それらの樹脂強度・剥離強力が充分でないため、応力がかかった際にそれらの層が破壊するなどして、充分な補強効果が得られないことがあった。
【0009】
上記3の課題の曲面状にデザインされた光源については、直下方式、エッジライト方式ともに困難であるが、一部で、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂からなるフレキシブルな透明樹脂シートを導光部材として用いることが行われている。フレキシブルな透明樹脂シートは空気よりも高い屈折率を有するため、エッジ部から入射した光はシートと空気の界面で全反射して、曲面であっても光が奥まで届き、例えば導光部材の裏面に、導光部材の一側から他側に向かって密度が高くなるように、拡散ドットをランダムに配置することで、均一な発光を得ることができる。しかし、面発光ユニットの形状や大きさに応じて個々に拡散ドット配置の設計を変える必用があるため、製造上・設計上の制約が大きく、なおかつ、上記2の課題については解決することができなかった。
【0010】
以上の様に、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、曲面であっても側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、サイズやデザインの自由度が高い、エッジライト式面発光ユニット用の面発光シートは、これまで存在していなかった。
【0011】
【特許文献1】特開平8−136738
【特許文献2】特開2006−49286
【特許文献3】特開2004−363059
【特許文献4】特開2006−208582
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、サイズやデザインの自由度が高く、曲面発光性に優れた、エッジライト式面発光ユニット用の可撓性面発光シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討の結果、
1、可撓性樹脂を含浸被覆してなる基布を、導光性基材として含む複合シートを用いる
ことで、基布による補強効果が与えられるため、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、
反り、寸法変化)の問題が起こりにくい。
2、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメント
が、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓
性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値
|n1−na|、および、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率
nbとの差の絶対値|n1−nb|を、特定の値とすることで、導光性基材内部で適
度な光拡散が得られるために、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源
からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、しかも導光性基材内部の基布がほと
んど目立たない。
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、可撓性樹脂を含浸被覆してなる基布を、導光性基材として含む複合シートであって、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式(1)を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式(2)を満たすものである。
0.02<|n1−na|≦0.07 式(1)
|n1−nb|≦0.07 式(2)
【0015】
本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートにおいて、前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|na−nb|が下記式(3)を満たすことが好ましい。
|na−nb|≦0.08 式(3)
【0016】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記可撓性樹脂が光拡散粒子を含んでいてもよい。本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に保護樹脂層が形成されることが好ましく、前記保護樹脂層の屈折率n2が、前記可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上であることが好ましい。本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層が形成されていてもよい。本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材に、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズおよび樹脂ビーズから選ばれた少なくとも一種と、マトリクス樹脂を含む光反射層が形成さていてもよく、前記導光性基材に、鍍金、蒸着、スパッタリングなどにより形成された金属薄膜層を含む光反射層が形成さていてもよい。本発明の可撓性面発光シートは、前記延伸フィラメントがガラス繊維、または、シリカ繊維からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記複合シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えないものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導光性基材に含まれる基布による補強効果で、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、可撓性樹脂と延伸フィラメント界面での適度な光拡散効果により、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、しかも基布がほとんど目立たず、優れた意匠性が得られる、エッジライト式面発光ユニット用の、曲面発光性に優れた可撓性面発光シートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、エッジライト式面発光ユニットに用いるものである。図1の様に導光性基材(3)の側端部に配した光源から入射した光(20−1)は、導光性基材の界面で全反射(20−2)することで、光源と対向する側端部まで到達する。導光性基材は可撓性であり、面発光シートを曲げることができるが、面発光シートが曲がっていても、界面での全反射は同様に起こり、光源と対向する側端部まで光は到達する。
【0019】
側端部から入射した光を表面(照光面)から取り出して均一に発光させるためには、従来の面発光体では、導光部材の裏面に設ける拡散ドットを導光部材の一側から他側に向かって密度が高くなるようにランダムに配置するなどする必要があったが、本発明の可撓性面発光シートは、導光性基材に含まれる基布と可撓性樹脂との界面で適度な光拡散(21)が得られるために、そのままでも均一な発光を得ることができる。この様な可撓性面発光シートを得るための最良の形態について、以下に説明する。
【0020】
本発明に使用される可撓性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの、透明な熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられ、それらから単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事がでる。この際、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、後述する基布を構成する延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式(1)を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、後述する基布を構成する延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が下記式(2)を満たす様に、従来公知の樹脂から適宜選択する必要がある。
0.02<|n1−na|≦0.07 式(1)
|n1−nb|≦0.07 式(2)
|n1−na|が0.02未満であると、導光性基材内部での適度な光拡散が得られず、面発光シートとして充分な発光が得られないことがあり、充分な発光を得るためには、従来技術の様に、拡散ドットを配置する場合には、均一な発光を得るために、光源からの距離が遠くなるに従って密度を上げて配置するなど、面発光ユニットの形状や大きさに応じて個々に設計を変える必用が生じることがあり、製造上・設計上の制約が大きなものとなる。|n1−na|、|n1−nb|のいずれか一方あるいは両方が0.07を超えると、導光性基材内部での光拡散が過剰となり、光源から近い部分は明るく発光するが、離れた部分には光が到達しないため、側端部の光源からの距離による明暗の差が大きくなることがある。また、複合シートに含まれる基布が目立つ様になり、面発光ユニットを画像と密着してディスプレイとして使用する際や、照明として使用する際の意匠性が損なわれることがある。
【0021】
本発明に使用される延伸フィラメントとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維から選んだ1種を用いることができ、その形状は、マルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条のいずれであってもよいが、柔軟性に優れるマルチフィラメント糸条が好ましく用いられる。
【0022】
前記延伸フィラメントは、図2(a)の様に延伸方向aを有し、図2(b)の様に延伸方向に対する延伸垂直方向bを有する。延伸方向の屈折率をna、延伸垂直方向の屈折率をnb(ここで、nbは延伸方向に垂直な全ての方向に対して同じである)とした場合、その差の絶対値|na−nb|が下記式(3)を満たすことが好ましい。
|na−nb|≦0.08 式(3)
この条件を満たす繊維としては、前記繊維の内、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維、ポリノジック繊維、ガラス繊維が好ましく用いられ、中でも耐熱性、強度、透明性に優れるガラス繊維が特に好ましく用いられる。また、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維を用いることで、不燃性の可撓性面発光シートを得ることも可能となるが、これらの中では、入手のしやすさ、取扱の容易さ、透明性などの点から、ガラス繊維が好ましく用いられる。|na−nb|が0.08を超えると、導光性基材内部での光拡散が過剰となり、側端部の光源からの距離による明暗の差が大きくなることがある。また、可撓性樹脂含浸被覆基布に含まれる基布が目立つ様になり、面発光ユニットを画像と密着してディスプレイとして使用する際や、照明として使用する際の意匠性が損なわれることがある。
【0023】
本発明に使用される基布は、織布、編布のいずれであってもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織布は、得られる可撓性面発光シートの経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率5〜50%)、及び非粗目状編織物(空隙率5%未満)を包含する。中でも、補強効果、光拡散効果などの点から、経緯糸条の間に形成される空隙率が0〜5%の高密度編織物が特に好ましく用いられる。
【0024】
前記基布には、付着する不純物を除くために、あらかじめ精錬や熱処理を行っても良く、可撓性樹脂を含浸させやすくし可撓性脂層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、シランカップリング剤処理などを行っても良い。
【0025】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記可撓性樹脂には光拡散粒子が含まれていても良い。光拡散粒子は導光性機材の光の拡散を調整するために加えられ、その添加量は特に規定されないが、加える場合には微量でよく、通常可撓性樹脂の固形分100質量部に対して、1×10−5〜1質量部である。
【0026】
前記可撓性樹脂に加えられる光拡散粒子としては、特に限定はなく、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、タルク、ガラス等の無機微粒子や、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、エポキシ系樹脂粒子等の有機微粒子などから単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。
【0027】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、表面の傷つき、汚れの付着、各種添加剤の表面への移行、などを防止する目的で、前記導光性基材の一方の面もしくは両面上に保護樹脂層を有することが好ましい。前記保護樹脂層を形成する樹脂としては、導光性基材の透光性を損なわず極度の隠蔽性を伴わないものであれば特に限定はなく、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、硬化性樹脂から、単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。前記保護樹脂層を形成する方法についても特に限定は無く、例えば、溶剤あるいは水に可溶な樹脂の溶液、または樹脂を水などの分散媒に分散したエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法で塗布してから乾燥する事によって形成することができる。
【0028】
前記保護樹脂層を設ける場合には、保護樹脂層を構成する樹脂の屈折率n2が、前記可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上であることが好ましい。導光部材としてアクリル板などを用いた従来のエッジライト式の面発光ユニットでは、導光部材よりも空気層の屈折率が低いため、側端部から入射した光は導光部材と空気の界面で全反射することで光源から離れた位置まで到達する。本発明の可撓性面発光シートにおいても、保護樹脂層が無ければ同様の効果により光源から離れた位置まで光が到達するが、保護樹脂層が形成され、n2がn1よりも高い場合には被覆樹脂層と保護樹脂層との界面では全反射が起こらず、一部の光は漏れ出してしまい、サイズの大きな面発光ユニットを作成する場合には、光源からの距離による明暗の差が生じることがある。
【0029】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材に適度な光拡散性があるため、導光性基材のみでも可撓性面発光シートとしての役割を果たすことができるが、その発光をより均一なものとし、輝度を向上させ、導光性基材内部に含まれる基布をより視認しにくくするために、導光性基材の少なくとも一方の面に、光拡散性シートを接するように配置して用いる事ができる。光拡散性シートは導光性基材に重ねて置いてもよく、接着剤や粘着剤を介して貼り合わせてもよい。光拡散性シートとしては、例えば透明基材の片面又は両面に透明バインダー樹脂および光拡散剤からなる光拡散層を設けたものや、透明基材の片面又は両面をサンドブラスト処理したものなどを用いることができる。
【0030】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記光拡散性シートを配置する代わりに、前記導光性基材の少なくとも一方の面に、光拡散層を設けてもよい。前記光拡散層は、前記導光性基材の少なくとも一方の面に、熱エンボスにより細かい凹凸を形成したり、サンドブラストやレーザーで傷をつけるなどの方法で細かい溝または凹部を形成したり、透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層を被覆したり等の方法によって形成することができる。特に、透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層を被覆する方法は、光拡散粒子の添加量を調整することで所望の光拡散性を得ることができ、加工効率的にも優れ、使用時に熱に晒されてもその特性を維持することができるため好ましい。
【0031】
前記光拡散樹脂層を形成する場合には、前記導光性基材の少なくとも一方の面に、透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂液を用いて、スクリーン印刷などの印刷法、スプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法、転写フィルム上にあらかじめ形成した光拡散樹脂層を転写する転写法、など従来公知の方法を用いることができる。
【0032】
ここで、光拡散樹脂層は、導光性基材の可撓性樹脂上に直接設けても、あるいは可撓性樹脂上に形成した保護樹脂層上に設けてもよいが、可撓性樹脂上に形成した保護樹脂層上に設けることが好ましい。可撓性樹脂上に光拡散樹脂層を直接設けた場合には、可撓性樹脂と光拡散樹脂層の界面で光が漏れて、可撓性面発光シートの発光にムラを生じる事がある。また、可撓性樹脂上に形成した保護樹脂層上に設ける場合には、保護樹脂層の屈折率n2が、可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上であることが好ましい。可撓性樹脂よりも高い屈折率を持つ保護樹脂層上に光拡散樹脂層を設けた場合には、可撓性樹脂と保護樹脂層の界面で光が漏れて、可撓性面発光シートの発光にムラを生じる事がある。
【0033】
前記光拡散樹脂層に用いる透明樹脂としては、特に限定はなく、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、硬化性樹脂から、単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。
【0034】
前記光拡散樹脂層に用いる光拡散粒子にも限定はなく、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、タルク、ガラス等からなる無機微粒子や、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ系樹脂等の有機微粒子などから、単独で、あるいは2種以上併用して用いる事ができる。
【0035】
光拡散粒子の添加量は、用いる樹脂と光拡散粒子の組み合わせ、および求められる光拡散度合いによっても異なるが、透明樹脂の固形分100質量部に対して、無機微粒子を用いる場合は0.1〜5質量部、有機微粒子を用いる場合は1〜100質量部である。
【0036】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、片面のみを照光面とする場合には、導光性基材の照光面とは反対側に光反射手段を配置することで、裏側に漏れた光を面発光シートに返して有効利用することができ、発光輝度がより向上する。光反射手段としては、従来公知の手段から適宜選択することができるが、例えば白色塗装あるいは金属鍍金を施した金属板やプラスチック板等の反射板、白色のプラスチックフィルム、金属蒸着を施したプラスチックフィルム、再帰反射シート、等を用いる事ができる。
【0037】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記反射手段を配置する代わりに、導光性基材の照光面とは反対側の面に、更に光反射層を設けた複合シートを用いることもできる。この様に一体化された光反射層を有することで、面発光ユニットを設置する際に、別途独立した反射手段を用意する必要が無く、より薄型の看板、表示体、照明などを得る事が可能となる。
【0038】
前記光反射層は、例えば、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズおよび樹脂ビーズから選ばれた1種もしくは2種以上を混合した配合剤と、マトリクス樹脂とを含む液状組成物をコーティングすることで形成する事が出来る。
【0039】
光反射層に用いられるマトリクス樹脂としては特に限定されないが、透明であることが好ましく、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、硬化性樹脂から、単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。
【0040】
前記光反射層はまた、鍍金、蒸着、スパッタリングなど、従来公知の方法により形成された金属薄膜層を含む層であってもよい。前記金属薄膜層は、面発光シートの照光面とは反対側の面の最外層上に直接、あるいは接着性樹脂層を介して鍍金、蒸着、スパッタリングなどの方法で形成してもよく、あらかじめ金属層が形成された金属転写箔から転写しても良い。また、アルミ蒸着フィルムの様な金属薄膜層を有するフィルムを、接着剤や粘着剤を介して積層してもよい。
【0041】
前記光拡散樹脂層および光反射層は、面全体に形成すれば面発光シート全体の輝度が向上するが、部分的に形成すれば、形成部分のみ輝度を向上させて周囲から浮き上がった様な効果を得ることもできる。
【0042】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、可撓性樹脂、保護樹脂層、光拡散樹脂層、および光反射層の前記各層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、それぞれ独立して、添加剤を含んでいても良い。含まれる添加剤としては例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0043】
本発明の可撓性面発光シートについて1例を挙げれば、例えば基布(1)として平織り織布を用いた場合、可撓性樹脂(2)と延伸フィラメントの選択において、|n1−nb|が非常に小さく、例えば0.02以下となるような組み合わせを選択すると、延伸垂直方向bの屈折率nb、すなわち織布の表面や裏面から見た延伸フィラメントの屈折率nbと、可撓性樹脂の屈折率n1の差が小さいため、導光性基材は内部に含まれる基布が視認できず、ほぼ透明な状態となる(図3参照)。この導光性基材の側端部に、光源(10)として例えば線光源を配置して点灯した場合、光源を発した光は線光源と平行な方向の延伸フィラメントには延伸垂直方向bから当たるためほとんど拡散されない(図4参照)。しかし、その際|n1−na|が0.02を越えて0.07以下であれば、線光源と垂直な方向の延伸フィラメントには延伸方向aから当たるため、可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面で適度に拡散し)、均一で高い輝度を示す可撓性面発光シートを得ることができる。
【0044】
本発明の可撓性面発光シートを薄型表示体のバックライトに用いた例を、図5に示す。可撓性面発光シート(7)の1側端部に冷陰極管からなる線状の光源(10)が配されており、光源が配置されていない側端部には、光もれを防止するため、反射テープ(13)が貼られている。また、光源の周囲には、光が効率よく面発光シートに入射されるように、反射カバーとして反射フィルム(14)が取り付けられている。可撓性面発光シートの照光面上には透明フィルムにインクジェットプリンターで画像を印刷した画像層(11)が配置され、必要に応じて透明樹脂板(例えばアクリルやポリカーボネート)からなるカバー(12)が取り付けられ、全体がハウジング(15)内に収納される。可撓性面発光シートとしては、例えば図6の様に光拡散樹脂層(5)と光反射層(6)を有する可撓性面発光シートを用いることができるが、図7の様に光拡散層や光反射層を有していない面発光シートを用いた場合には、照光面側に光拡散性シートを、照光面とは反対側に反射板を、それぞれ配置(図示しない)してもよい。また、面発光シートと画像層の間に、更にレンズシートを配置(図示しない)すれば、拡散した光を照光面と垂直な方向に集光して、輝度を向上させることができる。
また、図5では、透明フィルムに印刷した画像層を用いているが、画像は例えば光拡散性シートに印刷してもよく、透明樹脂板に印刷してもよく、可撓性面発光シートの照光面側に直接印刷してもよい。
【0045】
本発明の可撓性面発光シートは、図8の様に曲面状に設置することができ、曲面状であっても均一に発光させることができる。図8のでは図5同様透明フィルムにインクジェットプリンターで画像を印刷した画像層(11)を重ねて配置されているが、透明フィルムへの印刷面を内側(可撓性面発光シート側)とすれば、透明フィルム自体がカバーの役割も果たすため、別途カバーを取り付ける必要も無い。また、可撓性であるため、使用していないときは筒状に丸めて収納する事も可能であり、ロールスクリーン状に設置すれば、照光面積可変の光源とする事も可能である。
【0046】
本発明の可撓性面発光シートは、面発光シート自体が可撓性であるため、インクジェット印刷用ターポリンに印刷するのと同様に、インクジェットプリンターを用いて、可撓性面発光シートに直接印刷することも可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<基布>
以下の実施例および比較例において、下記の基布を用いた。
基布の寸法は全てたて(経糸方向)60cm×よこ(緯糸方向)35cmとした
(基布1)
フィラメント直径9μm/75texのガラス繊維(naおよびnb:1.556)
を用いたガラス繊維平織り布
織密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
(基布2)
ナイロン333dtexマルチフィラメント(na:1.578、nb:1.522)
を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布3)
ポリプロピレン278dtexマルチフィラメント(na:1.530、
nb:1.496)
を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布4)
フィラメント直径9μm/75texで基布1とは屈折率の異なるガラス繊維(na
およびnb:1.524)を用いたガラス繊維平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
【0049】
[実施例1]
<導光性基材の作成>
下記配合1の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し未硬化の樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次に、厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに未硬化の樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、先に作成した可撓性樹脂含浸基布を中間に挟んで、コート面を内側にし、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがし、基布に可撓性樹脂を含浸被覆した導光性基材を得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であり、導光性基材に含まれている基布1はほとんど視認する事ができなかった。
(配合1)
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
【0050】
<平面発光性及び発光の均一性の評価>
上記作成した導光性基材を、たて(経糸方向)50cm×よこ(緯糸方向)30cmにカットして長方形の可撓性面発光シートを作成し、図9(a)の様に、可撓性面発光シート(7)の短辺の内の一方の側端部に、光源として長さ316mm、直径2.2mmの冷陰極管(10−a)を配置した。冷陰極管の周辺には、可撓性面発光シートに対向する部分を除いて反射フィルム(14)を巻き、面発光シートの冷陰極管を配さなかった側端部には反射テープ(13)を貼り付けて図9(b)の様に面発光ユニットを作成した。次いで、作成した面発光ユニットの可撓性面発光シート部分の両面に2mm厚の透明アクリル板(12−a)をあて、周辺を枠(15−a)で固定した(図10)。次に、3m四方の暗室の中央に枠で固定した面発光ユニットを、冷陰極管を配した部分を下にして立て、冷陰極管を点灯してから1時間後に、可撓性面発光シートの中心部分の輝度(cd/m2)を、表裏それぞれの面から測定した。さらに、同じ面発光ユニットを用いて、面発光シートの一方の面上に市販の光拡散性シート((株)きもと社製「ライトアップ100NSH」:シート1)を配置し、もう一方の面上に市販の光反射シート((株)きもと社製「レフホワイトRW188」:シート2)を配置してから、両面に2mm厚の透明アクリル板をあて、周辺を枠で固定し、光拡散シート(シート1)を配置した側を照光面として、照光面側の中心部のみ輝度を測定した。上記輝度評価後に、目視で発光の均一性を評価した。評価の基準は以下の通りとした。
発光ムラがほとんど感じられない:1
僅かに発光ムラが感じられる :2
明らかな発光ムラがある :3
【0051】
<曲面発光性及び発光の均一性の評価>
枠と透明アクリル板を取り外した面発光ユニットを、冷陰極管を配した部分を下にして置き、図11の様に局率半径20cmの透明な曲面状のアクリル板(12−b)に可撓性面発光シート(7)部分を重ね、冷陰極管を点灯してから1時間後に、A点とB点の輝度を測定した。ここでA点は、可撓性面発光シートの光源側の側端部から10cmの位置の、幅方向中心部であり、B点は光源から最も離れた側端部から10cmの位置の、幅方向中心部である。可撓性面発光シートの反対面の輝度は、アクリル板にかける面を反対側にして測定した。また輝度評価後に、目視で発光の均一性を評価した。評価の基準は以下の通りとした。
発光ムラがほとんど感じられない:1
僅かに発光ムラが感じられる :2
明らかな発光ムラがある :3
【0052】
<引張強度>
可撓性面発光シートから基布の糸目に沿って経糸方向30cm、緯糸方向3cmの短冊(経方向試料)、経糸方向3cm、幅方向30cmの短冊(緯方向試料)を採取し、JISL1096ストリップ法により引張試験を行い、破断強さ(N/3cm)を求めた。
【0053】
<熱変形性>
30cm四方にカットした可撓性面発光シートを、40cm四方の硝子板の上に置き、80℃オーブン中で30分間加熱した後、オーブンから取り出して20℃高温室内に1時間放置し、可撓性面発光シートの変形の有無を確認し、変形がある場合は、変形部分の硝子板から浮き上がった高さ(mm)を測定し、以下の様に判定した。
1mm未満 :1(ほとんど変形が無い)
1mm以上2mm未満:2(僅かに変形がある)
2mm以上 :3(変形する)
【0054】
<燃焼試験>(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
輻射電気ヒーターによる50kW/m2の輻射熱を可撓性面発光シートに20分間照射する発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定し、試験後の膜材外観を観察した。
(a)総発熱量:8MJ/m2以下のものを適合とした。
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/m2を超えないものを適合とした。
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合と
した。
不燃膜材に適合するには少なくとも上記特性(a)(b)が適合の評価を満たす必要がある。
各種評価の結果を表1に示す。なお、実施例1の可撓性面発光シートは、表裏に構成上の差が無いため、輝度の特定において先に測定した方を表として表1に記載した。以下、実施例及び比較例において、表裏に構成上の差がない場合には、同様に先に測定した方を表として表1に記載した。
【0055】
実施例1の可撓性面発光シートは、発光が均一で、両面に発光の得られる面発光ユニットであった。冷陰極管を点灯する前の段階では、可撓性面発光シート内の基布はほとんど視認することができなかったが、点灯時には可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面での光の拡散により、僅かに視認された。また、この可撓性面発光シートは市販の光拡散性シートや光反射シートを組み合わせることで、高い輝度の発光が得られ、光拡散性シートの効果で、可撓性面発光シート内の基布は全く視認することができなかった。曲面の発光においても、光源から近い部分A点と遠い部分B点の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0056】
[実施例2]
実施例1と同様に可撓性面発光シートを作成した。ただし、導光性基材の両面に保護樹脂層を形成し、更に一方の面の保護層上に光拡散樹脂層を形成した。保護樹脂層、光拡散樹脂層はそれぞれ以下の通り形成した。
【0057】
<保護樹脂層の形成>
可撓性樹脂含浸被覆基布の一方の面に、下記配合2の樹脂組成物を、グラビアコーターを用いて30g/m2となるよう塗布し、120℃で1分間乾燥して6g/m2の保護樹脂層を作成した。次いで、もう一方の面にも同様にして保護樹脂層を形成した。保護樹脂層の屈折率n2は1.490であり、可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差は0.102であった。
(配合2)
商標:アクリプレン ペレット HBS001(三菱レイヨン(株)製)20質量部
トルエン−MEK(50/50重量比) (溶剤) 80質量部
【0058】
<光拡散樹脂層の形成>
次に、上記で得た一方の保護樹脂層上に、下記配合3の組成物を、バーコーターを用いて塗布量100g/m2となるよう塗布し、120℃で2分間乾燥して20g/m2の光拡散樹脂層を形成した。
(配合3)
商標:アクリプレン ペレット HBS001(三菱レイヨン(株)製)19質量部
架橋ポリスチレン樹脂粒子 SBX−6(積水化成品工業(株)製) 1質量部
平均粒子径 6ミクロン
トルエン−MEK(50/50重量比)(溶剤) 79質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。ただし、光拡散樹脂層を形成した側を表面とした。
【0059】
実施例2の可撓性面発光シートは、実施例1同様両面に発光の得られる可撓性面発光シートであった。冷陰極管に点灯した際も、光拡散樹脂層の光拡散効果で可撓性面発光シート内部の基布は、表裏両面から、全く視認できなかった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0060】
[実施例3]
実施例2と同様に可撓性面発光シートを作成した。ただし、光拡散樹脂層を形成したのとは反対側の面の保護樹脂層上に光反射層を形成した。光反射層は以下の様に形成した。
【0061】
<光反射層の形成>
下記配合4の組成物を、バーコーターを用いて塗布量100g/m2となるよう塗布し、120℃で2分間乾燥して20g/m2の光反射層を形成し可撓性面発光シートを得た。
(配合4)
商標:アクリプレン ペレット HBS001(三菱レイヨン(株)製)19質量部
白色顔料(酸化チタン平均粒子径0.4μm) 1質量部
トルエン−MEK(50/50重量比)(溶剤) 79質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。ただし、光拡散樹脂層を形成した側を表(照光面)とし、輝度や発光の均一性については表面のみ評価した。
【0062】
実施例3の可撓性面発光シートは、光拡散樹脂層と光反射層を有し、実施例1の可撓性面発光シートに市販の光拡散性シートと光反射シートを組み合わせたのと同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0063】
[実施例4]
含浸被覆する可撓性樹脂を下記配合5の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物とし、基布2を用いた以外は実施例3と同様に可撓性面発光シートを作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布のナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.032(n1>nb)であった。
(配合5)
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4の可撓性面発光シートは、実施例3と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。可撓性面発光シートの強度は実施例1から3に比べてやや劣るものの、熱による変形は全く見られなかった。
【0065】
[実施例5]
基布3を用いた以外は実施例4と同様に可撓性面発光シートを作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.56であり、基布を構成するポリプロピレン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1>n21)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.058(n1>n22)であった。得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
実施例5の可撓性面発光シートは、高い輝度で均一な発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。可撓性面発光シートの強度は実施例1から4に比べて劣るものの、熱による変形は僅かであった。
【0067】
[実施例6]
基布4を用い、導光性基材を下記の様に作成した以外は実施例3と同様に可撓性面発光シートを作成した。
【0068】
<導光性基材の作成>
下記配合6の軟質塩ビ樹脂組成物を混合撹拌してから30分静置して脱泡し、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布4に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布4を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次に、厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、先に作成した可撓性樹脂を含浸した基布をを中間に挟んで、コート面を内側にし、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、基布に可撓性樹脂を含浸被覆した導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>n21=n22、)であった。
(配合6)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例6の可撓性面発光シートは、実施例3と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0070】
[実施例7]
基布1を用い、導光性基材を下記の様に作成した以外は実施例6と同様に可撓性面発光シートを作成した。
【0071】
<導光性基材の作成>
下記配合7及び下記配合8の軟質塩ビ樹脂組成物をそれぞれ混合撹拌してから30分静置して脱泡し、2種の樹脂組成物液を得た。得られた配合7の樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次にたて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに配合8の樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、コート面を内側にして、先に作成した可撓性樹脂を含浸した基布を挟んで、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は配合7、配合8とも1.520、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1<na=nb)であった。
(配合7)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
光拡散粒子(酸化亜鉛:平均粒子径0.4μm)0.05質量部
(配合8)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
実施例7の可撓性面発光シートは、実施例3と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0073】
[実施例8]
実施例1と同様に可撓性面発光シートを作成した。ただし、基布2を用い、導光性基材を下記の様に作成した。
【0074】
<導光性基材の作成>
配合8の樹脂組成物を混合撹拌してから30分静置して脱泡し、樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布2を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次にたて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、コート面を内側にして、先に作成した可撓性樹脂を含浸した基布を挟んで、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.520、ナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.058(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.002(n1<nb)であった。得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
実施例8の可撓性面発光シートは、実施例1と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度はあまり差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。また、冷陰極管を点灯する前の段階では、含浸樹脂層と繊維軸に垂直な方向(面発光シート表裏からみた方向)の屈折率に差が無いため、可撓性面発光シート内の基布は全く視認することができず、透視性も有しているが、点灯時には含浸樹脂と繊維表面の界面での光の拡散により、面発光シート内が白く濁り、十数センチ離れると向こう側がはっきり視認できない程度の目隠し効果を示した。また、この可撓性面発光シートは市販の光拡散性シートや光反射シートを組み合わせることで、更に高い輝度の発光が得られた。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。可撓性面発光シートの強度は実施例1から3及び6,7に比べてやや劣るものの、熱による変形は全く見られなかった。
【0076】
[比較例1]
可撓性樹脂を配合5より形成した以外は、実施例1と同様に導光性基材を作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.002(n1<na=nb)であった。得られた導光性基材を面発光シートとして、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
比較例1の面発光シートは、可撓性樹脂と延伸フィラメントの屈折率に差が無く、面発光シート内での適度な光の拡散が無いため、ほとんど発光せず、市販の光拡散性シートと光反射シートを組み合わせても、輝度はほとんど向上しなかったため、面発光シートとして用いることのできないものであった。
【0078】
[比較例2]
以下の様に作成した基布を含まない樹脂シートを可撓性面発光シートとして用いた。
<樹脂シートの作成>
厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用し、各フィルムの一面に実施例6と同様に調整した配合6の樹脂組成物液を0.24mmのクリアランスでコートし、コート面を内側にして、間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、基布を含まない樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを面発光シートとして、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
比較例2の面発光シートは、基布を用いていないため、面発光シート内での適度な光の拡散が無く、ほとんど発光せず、市販の光拡散性シートと光反射シートを組み合わせても、輝度はほとんど向上しなかったため、面発光シートとして用いることのできないものであった。また、基布により補強されていないため変形が大きく、強度も弱かった。
【0080】
[比較例3]
実施例1と同様に面発光シートを作成した。ただし、繊維性基布として基布4を用い、可撓性樹脂は下記配合9の樹脂組成物を用いて、以下の様に形成した。
<導光性基材の作成>
下記配合9のシリコーンゴム組成物を減圧下で20分撹拌し、さらにそのまま30分静置してして脱泡し、未硬化の樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布4に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布4を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし未硬化の樹脂含浸基布を得た。次に、厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに、上記樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、先に作成した未硬化の樹脂含浸基布を中間に挟んで、コート面を内側にし、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で100℃×30分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがし、導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.401、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値が0.123(n1<na=nb)であった。
(配合9)
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーンゴム)
A液 50質量部
B液 50質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
比較例3の可撓性面発光シートは、可撓性樹脂と延伸フィラメントの屈折率差が大きく、面発光シート内での光の拡散が過剰となり、側端部に配置した光源から近い部分は明るく発光していたが、中心部の輝度が低く、光源から最も遠い部分ではほとんど発光せず、明暗の差がはっきりしていたため、面発光シートとして用いるには不適切であった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、しかも基布がほとんど目立たず優れた意匠性が得られるため、平面または曲面の、薄型表示体向けのバックライトや薄型照明向けの面発光体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】導光性基材内部での光の反射と拡散を示す図
【図2】延伸フィラメントの延伸方向と延伸垂直方向示す図 (a)延伸方向a (b)延伸垂直方向b
【図3】延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbと、可撓性樹脂の屈折率n1が0.02以下の導光性基材を、延伸垂直方向から観察した状況を示す図
【図4】延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbと、可撓性樹脂の屈折率n1が0.02以下の導光性基材に、側端部から入射した光が延伸垂直方向ではほとんど拡散されないことを示す図
【図5】本発明の可撓性面発光シートを薄型表示体のバックライトに用いた例を示す図
【図6】本発明の可撓性面発光シートの構造の一例を示す図
【図7】本発明の可撓性面発光シートの構造の一例を示す図
【図8】本発明の可撓性面発光シートを曲面状に用いた例を示す図
【図9】実施例及び比較例における面発光ユニットを示す図 (a)可撓性面発光シートと冷陰極管の配置 (b)面発光ユニットの構成
【図10】実施例及び比較例において、透明アクリル板および枠で固定した面発光ユニットを示す図
【図11】実施例及び比較例において、曲面状に配した面発光ユニットを示す図
【符号の説明】
【0086】
1 :基布
2 :可撓性樹脂
3 :導光性基材
4 :保護層
5 :光拡散樹脂層
6 :光反射層
7 :可撓性面発光シート
10 :光源
10−a:冷陰極管
11 :画像層
12 :透明樹脂板
12−a:透明アクリル板
12−b:透明アクリル曲面板
13 :反射テープ
14 :反射フィルム
15 :ハウジング
15−a:枠
20−1:入射光
20−2:全反射光
21 :拡散光
a :フィラメント延伸方向
b :フィラメント延伸垂直方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト式の面発光ユニットに用いられる面発光シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、平面はもちろん曲面であっても側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、サイズやデザインの自由度が高い、曲面発光性に優れた可撓性面発光シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,電飾看板や表示装置等に使用されている背面光源としては,ハウジング内に蛍光灯等の線状光源や発光ダイオード等の点光源を複数個配置した直下方式と,板状の導光部材の側端面に線状光源あるいは点光源を配置したエッジライト方式の面発光ユニットとがある。
【0003】
この内、直下方式では、蛍光灯や発光ダイオード等の光源の形が浮き出てしまうことを防止するために、光源と画像層との間隔を15〜20cm程度離す必要があり、装置全体を薄くすることができず、看板や表示板の小型化を図る事ができないという問題があった。
【0004】
一方、エッジライト方式の背面光源としては、通常、アクリル樹脂板やポリカーボネート樹脂板等の板状透明材料を導光部材とし、この導光部材の側端面(光入射部)に配した光源から導光部材中に光を入射させ、導光部材の表面側(照光面)あるいは裏面側(照光面とは反対面)に光拡散手段を設け、裏面側に光反射手段を設けるなどして、表面側(照光面)から光を出射させる構造が一般的であるが、この様な構造の面発光ユニットにおいては以下のような課題が知られている。
1、側端部に配した光源からの距離により明暗の差が生じる。
2、製造時及び施工時の破損、変形、使用時の光源や電源からの熱、及び屋外使用の場
合の日射による装置全体の温度上昇等による変形(ゆがみ、反り、寸法変化)等の恐
れがある。
3、曲面状にデザインされた背面光源を得ることが困難である。
【0005】
上記1の課題に対しては、例えば、テーパー型導光部材を用いる方法(例えば、特許文献1参照)、導光部材の背面に三角形の凹部からなるローレット形状のカットを連続して設け、その傾斜を、光源からの距離が遠くなるに従って徐々に小さくなる様にする方法(例えば、特許文献2参照)、導光部材の裏面に設ける拡散ドットを、導光部材の一側から他側に向かって密度が高くなるようにランダムに配置する方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。これらの方法により、ほぼ均一な発光を示す面発光ユニットを得ることができるが、面発光ユニットの形状や大きさに応じて個々に設計を変える必用があるため、大量生産される液晶パネル用のバックライト向けなどには良いが、使用場所や使用方法によってサイズや形状の異なる看板や表示体および照明向けについては、製造上・設計上の制約が大きなものであった。
【0006】
また、同じく上記1の課題に対して、特定範囲のヘーズを示す導光部材を用いることで、ほぼ均一な発光が得られる面発光ユニットも提案されている(例えば、特許文献4参照)。この方法によれば、導光部材を自由な大きさにカットして用いることができ、製造上・設計上の制約は解消されるが、上記2および3の課題については解決されていなかった。
【0007】
上記2の課題については、補強材を積層する方法、例えば、面発光体の照光面とは反対側の面に繊維製の織布や不織布を積層して補強する方法などが考えられるが、片面を補強したのでは、温度変化により収縮や膨張の応力がかかった際に反りやゆがみを生じ易く、変形を充分に抑えることができないという問題がある。
【0008】
2層の面発光体のそれぞれ裏面側を内側として貼り合わせる両面発光型の面発光ユニットを構成する際に、中間に繊維製の基布を挿入して積層することも可能であり、この場合表裏の応力差による変形を軽減できることが期待される。ただし、両面発光の場合、一方の面から反対側の面の画像や補強のために挿入した繊維製の織布や不織布が透けて見えることが無い様、中間に光隠蔽層を設ける必要があり、その光隠蔽層は通常充填剤を多く含む樹脂層であるか、蒸着・スパッタリング・鍍金などの方法で設けた金属薄膜層であり、それらの樹脂強度・剥離強力が充分でないため、応力がかかった際にそれらの層が破壊するなどして、充分な補強効果が得られないことがあった。
【0009】
上記3の課題の曲面状にデザインされた光源については、直下方式、エッジライト方式ともに困難であるが、一部で、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂からなるフレキシブルな透明樹脂シートを導光部材として用いることが行われている。フレキシブルな透明樹脂シートは空気よりも高い屈折率を有するため、エッジ部から入射した光はシートと空気の界面で全反射して、曲面であっても光が奥まで届き、例えば導光部材の裏面に、導光部材の一側から他側に向かって密度が高くなるように、拡散ドットをランダムに配置することで、均一な発光を得ることができる。しかし、面発光ユニットの形状や大きさに応じて個々に拡散ドット配置の設計を変える必用があるため、製造上・設計上の制約が大きく、なおかつ、上記2の課題については解決することができなかった。
【0010】
以上の様に、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、曲面であっても側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、サイズやデザインの自由度が高い、エッジライト式面発光ユニット用の面発光シートは、これまで存在していなかった。
【0011】
【特許文献1】特開平8−136738
【特許文献2】特開2006−49286
【特許文献3】特開2004−363059
【特許文献4】特開2006−208582
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、サイズやデザインの自由度が高く、曲面発光性に優れた、エッジライト式面発光ユニット用の可撓性面発光シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討の結果、
1、可撓性樹脂を含浸被覆してなる基布を、導光性基材として含む複合シートを用いる
ことで、基布による補強効果が与えられるため、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、
反り、寸法変化)の問題が起こりにくい。
2、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメント
が、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓
性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値
|n1−na|、および、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率
nbとの差の絶対値|n1−nb|を、特定の値とすることで、導光性基材内部で適
度な光拡散が得られるために、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源
からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、しかも導光性基材内部の基布がほと
んど目立たない。
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、可撓性樹脂を含浸被覆してなる基布を、導光性基材として含む複合シートであって、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式(1)を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式(2)を満たすものである。
0.02<|n1−na|≦0.07 式(1)
|n1−nb|≦0.07 式(2)
【0015】
本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートにおいて、前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|na−nb|が下記式(3)を満たすことが好ましい。
|na−nb|≦0.08 式(3)
【0016】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記可撓性樹脂が光拡散粒子を含んでいてもよい。本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に保護樹脂層が形成されることが好ましく、前記保護樹脂層の屈折率n2が、前記可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上であることが好ましい。本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層が形成されていてもよい。本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材に、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズおよび樹脂ビーズから選ばれた少なくとも一種と、マトリクス樹脂を含む光反射層が形成さていてもよく、前記導光性基材に、鍍金、蒸着、スパッタリングなどにより形成された金属薄膜層を含む光反射層が形成さていてもよい。本発明の可撓性面発光シートは、前記延伸フィラメントがガラス繊維、または、シリカ繊維からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記複合シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えないものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、導光性基材に含まれる基布による補強効果で、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、可撓性樹脂と延伸フィラメント界面での適度な光拡散効果により、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、しかも基布がほとんど目立たず、優れた意匠性が得られる、エッジライト式面発光ユニット用の、曲面発光性に優れた可撓性面発光シートを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、エッジライト式面発光ユニットに用いるものである。図1の様に導光性基材(3)の側端部に配した光源から入射した光(20−1)は、導光性基材の界面で全反射(20−2)することで、光源と対向する側端部まで到達する。導光性基材は可撓性であり、面発光シートを曲げることができるが、面発光シートが曲がっていても、界面での全反射は同様に起こり、光源と対向する側端部まで光は到達する。
【0019】
側端部から入射した光を表面(照光面)から取り出して均一に発光させるためには、従来の面発光体では、導光部材の裏面に設ける拡散ドットを導光部材の一側から他側に向かって密度が高くなるようにランダムに配置するなどする必要があったが、本発明の可撓性面発光シートは、導光性基材に含まれる基布と可撓性樹脂との界面で適度な光拡散(21)が得られるために、そのままでも均一な発光を得ることができる。この様な可撓性面発光シートを得るための最良の形態について、以下に説明する。
【0020】
本発明に使用される可撓性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの、透明な熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられ、それらから単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事がでる。この際、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、後述する基布を構成する延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式(1)を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、後述する基布を構成する延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が下記式(2)を満たす様に、従来公知の樹脂から適宜選択する必要がある。
0.02<|n1−na|≦0.07 式(1)
|n1−nb|≦0.07 式(2)
|n1−na|が0.02未満であると、導光性基材内部での適度な光拡散が得られず、面発光シートとして充分な発光が得られないことがあり、充分な発光を得るためには、従来技術の様に、拡散ドットを配置する場合には、均一な発光を得るために、光源からの距離が遠くなるに従って密度を上げて配置するなど、面発光ユニットの形状や大きさに応じて個々に設計を変える必用が生じることがあり、製造上・設計上の制約が大きなものとなる。|n1−na|、|n1−nb|のいずれか一方あるいは両方が0.07を超えると、導光性基材内部での光拡散が過剰となり、光源から近い部分は明るく発光するが、離れた部分には光が到達しないため、側端部の光源からの距離による明暗の差が大きくなることがある。また、複合シートに含まれる基布が目立つ様になり、面発光ユニットを画像と密着してディスプレイとして使用する際や、照明として使用する際の意匠性が損なわれることがある。
【0021】
本発明に使用される延伸フィラメントとしては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維などの半合成繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維などの再生繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機繊維から選んだ1種を用いることができ、その形状は、マルチフィラメント糸条、モノフィラメント糸条のいずれであってもよいが、柔軟性に優れるマルチフィラメント糸条が好ましく用いられる。
【0022】
前記延伸フィラメントは、図2(a)の様に延伸方向aを有し、図2(b)の様に延伸方向に対する延伸垂直方向bを有する。延伸方向の屈折率をna、延伸垂直方向の屈折率をnb(ここで、nbは延伸方向に垂直な全ての方向に対して同じである)とした場合、その差の絶対値|na−nb|が下記式(3)を満たすことが好ましい。
|na−nb|≦0.08 式(3)
この条件を満たす繊維としては、前記繊維の内、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ジアセテート繊維、トリアセテート繊維、ポリノジック繊維、ガラス繊維が好ましく用いられ、中でも耐熱性、強度、透明性に優れるガラス繊維が特に好ましく用いられる。また、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維を用いることで、不燃性の可撓性面発光シートを得ることも可能となるが、これらの中では、入手のしやすさ、取扱の容易さ、透明性などの点から、ガラス繊維が好ましく用いられる。|na−nb|が0.08を超えると、導光性基材内部での光拡散が過剰となり、側端部の光源からの距離による明暗の差が大きくなることがある。また、可撓性樹脂含浸被覆基布に含まれる基布が目立つ様になり、面発光ユニットを画像と密着してディスプレイとして使用する際や、照明として使用する際の意匠性が損なわれることがある。
【0023】
本発明に使用される基布は、織布、編布のいずれであってもよい。織布を用いる場合、平織、綾織、繻子織、模紗織などいずれの構造をとるものでもよいが、平織織布は、得られる可撓性面発光シートの経緯物性バランスに優れているため好ましく用いられる。編布を用いるときはラッセル編の緯糸挿入トリコットが好ましく用いられる。これら編織物は、少なくともそれぞれ、糸間間隙をおいて平行に配置された経糸及び緯糸を含む糸条により構成された粗目状の編織物(空隙率5〜50%)、及び非粗目状編織物(空隙率5%未満)を包含する。中でも、補強効果、光拡散効果などの点から、経緯糸条の間に形成される空隙率が0〜5%の高密度編織物が特に好ましく用いられる。
【0024】
前記基布には、付着する不純物を除くために、あらかじめ精錬や熱処理を行っても良く、可撓性樹脂を含浸させやすくし可撓性脂層との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、シランカップリング剤処理などを行っても良い。
【0025】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記可撓性樹脂には光拡散粒子が含まれていても良い。光拡散粒子は導光性機材の光の拡散を調整するために加えられ、その添加量は特に規定されないが、加える場合には微量でよく、通常可撓性樹脂の固形分100質量部に対して、1×10−5〜1質量部である。
【0026】
前記可撓性樹脂に加えられる光拡散粒子としては、特に限定はなく、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、タルク、ガラス等の無機微粒子や、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、エポキシ系樹脂粒子等の有機微粒子などから単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。
【0027】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、表面の傷つき、汚れの付着、各種添加剤の表面への移行、などを防止する目的で、前記導光性基材の一方の面もしくは両面上に保護樹脂層を有することが好ましい。前記保護樹脂層を形成する樹脂としては、導光性基材の透光性を損なわず極度の隠蔽性を伴わないものであれば特に限定はなく、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、硬化性樹脂から、単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。前記保護樹脂層を形成する方法についても特に限定は無く、例えば、溶剤あるいは水に可溶な樹脂の溶液、または樹脂を水などの分散媒に分散したエマルジョン液をスプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法で塗布してから乾燥する事によって形成することができる。
【0028】
前記保護樹脂層を設ける場合には、保護樹脂層を構成する樹脂の屈折率n2が、前記可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上であることが好ましい。導光部材としてアクリル板などを用いた従来のエッジライト式の面発光ユニットでは、導光部材よりも空気層の屈折率が低いため、側端部から入射した光は導光部材と空気の界面で全反射することで光源から離れた位置まで到達する。本発明の可撓性面発光シートにおいても、保護樹脂層が無ければ同様の効果により光源から離れた位置まで光が到達するが、保護樹脂層が形成され、n2がn1よりも高い場合には被覆樹脂層と保護樹脂層との界面では全反射が起こらず、一部の光は漏れ出してしまい、サイズの大きな面発光ユニットを作成する場合には、光源からの距離による明暗の差が生じることがある。
【0029】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記導光性基材に適度な光拡散性があるため、導光性基材のみでも可撓性面発光シートとしての役割を果たすことができるが、その発光をより均一なものとし、輝度を向上させ、導光性基材内部に含まれる基布をより視認しにくくするために、導光性基材の少なくとも一方の面に、光拡散性シートを接するように配置して用いる事ができる。光拡散性シートは導光性基材に重ねて置いてもよく、接着剤や粘着剤を介して貼り合わせてもよい。光拡散性シートとしては、例えば透明基材の片面又は両面に透明バインダー樹脂および光拡散剤からなる光拡散層を設けたものや、透明基材の片面又は両面をサンドブラスト処理したものなどを用いることができる。
【0030】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記光拡散性シートを配置する代わりに、前記導光性基材の少なくとも一方の面に、光拡散層を設けてもよい。前記光拡散層は、前記導光性基材の少なくとも一方の面に、熱エンボスにより細かい凹凸を形成したり、サンドブラストやレーザーで傷をつけるなどの方法で細かい溝または凹部を形成したり、透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層を被覆したり等の方法によって形成することができる。特に、透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層を被覆する方法は、光拡散粒子の添加量を調整することで所望の光拡散性を得ることができ、加工効率的にも優れ、使用時に熱に晒されてもその特性を維持することができるため好ましい。
【0031】
前記光拡散樹脂層を形成する場合には、前記導光性基材の少なくとも一方の面に、透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂液を用いて、スクリーン印刷などの印刷法、スプレーコート、グラビアコート、バーコートなどのコーティング法、転写フィルム上にあらかじめ形成した光拡散樹脂層を転写する転写法、など従来公知の方法を用いることができる。
【0032】
ここで、光拡散樹脂層は、導光性基材の可撓性樹脂上に直接設けても、あるいは可撓性樹脂上に形成した保護樹脂層上に設けてもよいが、可撓性樹脂上に形成した保護樹脂層上に設けることが好ましい。可撓性樹脂上に光拡散樹脂層を直接設けた場合には、可撓性樹脂と光拡散樹脂層の界面で光が漏れて、可撓性面発光シートの発光にムラを生じる事がある。また、可撓性樹脂上に形成した保護樹脂層上に設ける場合には、保護樹脂層の屈折率n2が、可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上であることが好ましい。可撓性樹脂よりも高い屈折率を持つ保護樹脂層上に光拡散樹脂層を設けた場合には、可撓性樹脂と保護樹脂層の界面で光が漏れて、可撓性面発光シートの発光にムラを生じる事がある。
【0033】
前記光拡散樹脂層に用いる透明樹脂としては、特に限定はなく、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、硬化性樹脂から、単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。
【0034】
前記光拡散樹脂層に用いる光拡散粒子にも限定はなく、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、タルク、ガラス等からなる無機微粒子や、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシ系樹脂等の有機微粒子などから、単独で、あるいは2種以上併用して用いる事ができる。
【0035】
光拡散粒子の添加量は、用いる樹脂と光拡散粒子の組み合わせ、および求められる光拡散度合いによっても異なるが、透明樹脂の固形分100質量部に対して、無機微粒子を用いる場合は0.1〜5質量部、有機微粒子を用いる場合は1〜100質量部である。
【0036】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、片面のみを照光面とする場合には、導光性基材の照光面とは反対側に光反射手段を配置することで、裏側に漏れた光を面発光シートに返して有効利用することができ、発光輝度がより向上する。光反射手段としては、従来公知の手段から適宜選択することができるが、例えば白色塗装あるいは金属鍍金を施した金属板やプラスチック板等の反射板、白色のプラスチックフィルム、金属蒸着を施したプラスチックフィルム、再帰反射シート、等を用いる事ができる。
【0037】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、前記反射手段を配置する代わりに、導光性基材の照光面とは反対側の面に、更に光反射層を設けた複合シートを用いることもできる。この様に一体化された光反射層を有することで、面発光ユニットを設置する際に、別途独立した反射手段を用意する必要が無く、より薄型の看板、表示体、照明などを得る事が可能となる。
【0038】
前記光反射層は、例えば、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズおよび樹脂ビーズから選ばれた1種もしくは2種以上を混合した配合剤と、マトリクス樹脂とを含む液状組成物をコーティングすることで形成する事が出来る。
【0039】
光反射層に用いられるマトリクス樹脂としては特に限定されないが、透明であることが好ましく、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン系熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱可塑性樹脂、硬化性樹脂から、単独で、あるいは、2種以上併用して用いる事ができる。
【0040】
前記光反射層はまた、鍍金、蒸着、スパッタリングなど、従来公知の方法により形成された金属薄膜層を含む層であってもよい。前記金属薄膜層は、面発光シートの照光面とは反対側の面の最外層上に直接、あるいは接着性樹脂層を介して鍍金、蒸着、スパッタリングなどの方法で形成してもよく、あらかじめ金属層が形成された金属転写箔から転写しても良い。また、アルミ蒸着フィルムの様な金属薄膜層を有するフィルムを、接着剤や粘着剤を介して積層してもよい。
【0041】
前記光拡散樹脂層および光反射層は、面全体に形成すれば面発光シート全体の輝度が向上するが、部分的に形成すれば、形成部分のみ輝度を向上させて周囲から浮き上がった様な効果を得ることもできる。
【0042】
本発明の可撓性面発光シートにおいて、可撓性樹脂、保護樹脂層、光拡散樹脂層、および光反射層の前記各層には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、それぞれ独立して、添加剤を含んでいても良い。含まれる添加剤としては例えば、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、可撓性付与剤、充填剤、接着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、蛍光増白剤、蛍光顔料、蓄光顔料などが挙げられる。
【0043】
本発明の可撓性面発光シートについて1例を挙げれば、例えば基布(1)として平織り織布を用いた場合、可撓性樹脂(2)と延伸フィラメントの選択において、|n1−nb|が非常に小さく、例えば0.02以下となるような組み合わせを選択すると、延伸垂直方向bの屈折率nb、すなわち織布の表面や裏面から見た延伸フィラメントの屈折率nbと、可撓性樹脂の屈折率n1の差が小さいため、導光性基材は内部に含まれる基布が視認できず、ほぼ透明な状態となる(図3参照)。この導光性基材の側端部に、光源(10)として例えば線光源を配置して点灯した場合、光源を発した光は線光源と平行な方向の延伸フィラメントには延伸垂直方向bから当たるためほとんど拡散されない(図4参照)。しかし、その際|n1−na|が0.02を越えて0.07以下であれば、線光源と垂直な方向の延伸フィラメントには延伸方向aから当たるため、可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面で適度に拡散し)、均一で高い輝度を示す可撓性面発光シートを得ることができる。
【0044】
本発明の可撓性面発光シートを薄型表示体のバックライトに用いた例を、図5に示す。可撓性面発光シート(7)の1側端部に冷陰極管からなる線状の光源(10)が配されており、光源が配置されていない側端部には、光もれを防止するため、反射テープ(13)が貼られている。また、光源の周囲には、光が効率よく面発光シートに入射されるように、反射カバーとして反射フィルム(14)が取り付けられている。可撓性面発光シートの照光面上には透明フィルムにインクジェットプリンターで画像を印刷した画像層(11)が配置され、必要に応じて透明樹脂板(例えばアクリルやポリカーボネート)からなるカバー(12)が取り付けられ、全体がハウジング(15)内に収納される。可撓性面発光シートとしては、例えば図6の様に光拡散樹脂層(5)と光反射層(6)を有する可撓性面発光シートを用いることができるが、図7の様に光拡散層や光反射層を有していない面発光シートを用いた場合には、照光面側に光拡散性シートを、照光面とは反対側に反射板を、それぞれ配置(図示しない)してもよい。また、面発光シートと画像層の間に、更にレンズシートを配置(図示しない)すれば、拡散した光を照光面と垂直な方向に集光して、輝度を向上させることができる。
また、図5では、透明フィルムに印刷した画像層を用いているが、画像は例えば光拡散性シートに印刷してもよく、透明樹脂板に印刷してもよく、可撓性面発光シートの照光面側に直接印刷してもよい。
【0045】
本発明の可撓性面発光シートは、図8の様に曲面状に設置することができ、曲面状であっても均一に発光させることができる。図8のでは図5同様透明フィルムにインクジェットプリンターで画像を印刷した画像層(11)を重ねて配置されているが、透明フィルムへの印刷面を内側(可撓性面発光シート側)とすれば、透明フィルム自体がカバーの役割も果たすため、別途カバーを取り付ける必要も無い。また、可撓性であるため、使用していないときは筒状に丸めて収納する事も可能であり、ロールスクリーン状に設置すれば、照光面積可変の光源とする事も可能である。
【0046】
本発明の可撓性面発光シートは、面発光シート自体が可撓性であるため、インクジェット印刷用ターポリンに印刷するのと同様に、インクジェットプリンターを用いて、可撓性面発光シートに直接印刷することも可能である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
<基布>
以下の実施例および比較例において、下記の基布を用いた。
基布の寸法は全てたて(経糸方向)60cm×よこ(緯糸方向)35cmとした
(基布1)
フィラメント直径9μm/75texのガラス繊維(naおよびnb:1.556)
を用いたガラス繊維平織り布
織密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
(基布2)
ナイロン333dtexマルチフィラメント(na:1.578、nb:1.522)
を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布3)
ポリプロピレン278dtexマルチフィラメント(na:1.530、
nb:1.496)
を用いた平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
(基布4)
フィラメント直径9μm/75texで基布1とは屈折率の異なるガラス繊維(na
およびnb:1.524)を用いたガラス繊維平織り布
密度 たて(経糸) 40本/インチ よこ(緯糸) 30本/インチ
精練(ヒートクリーニング)
シランカップリング処理 メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウ
コーニング社製Z6030)
【0049】
[実施例1]
<導光性基材の作成>
下記配合1の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物を20分間撹拌し、その後減圧下で静置脱泡し未硬化の樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、窒素置換したオーブン内で100℃×30分加熱硬化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次に、厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに未硬化の樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、先に作成した可撓性樹脂含浸基布を中間に挟んで、コート面を内側にし、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で80℃×30分加熱し、さらに100℃×10分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがし、基布に可撓性樹脂を含浸被覆した導光性基材を得た。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.592、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1>na=nb)であり、導光性基材に含まれている基布1はほとんど視認する事ができなかった。
(配合1)
ビニルエステル樹脂 100質量部
(日本ユピカ(株)製 商品名:ネオポール8319)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
【0050】
<平面発光性及び発光の均一性の評価>
上記作成した導光性基材を、たて(経糸方向)50cm×よこ(緯糸方向)30cmにカットして長方形の可撓性面発光シートを作成し、図9(a)の様に、可撓性面発光シート(7)の短辺の内の一方の側端部に、光源として長さ316mm、直径2.2mmの冷陰極管(10−a)を配置した。冷陰極管の周辺には、可撓性面発光シートに対向する部分を除いて反射フィルム(14)を巻き、面発光シートの冷陰極管を配さなかった側端部には反射テープ(13)を貼り付けて図9(b)の様に面発光ユニットを作成した。次いで、作成した面発光ユニットの可撓性面発光シート部分の両面に2mm厚の透明アクリル板(12−a)をあて、周辺を枠(15−a)で固定した(図10)。次に、3m四方の暗室の中央に枠で固定した面発光ユニットを、冷陰極管を配した部分を下にして立て、冷陰極管を点灯してから1時間後に、可撓性面発光シートの中心部分の輝度(cd/m2)を、表裏それぞれの面から測定した。さらに、同じ面発光ユニットを用いて、面発光シートの一方の面上に市販の光拡散性シート((株)きもと社製「ライトアップ100NSH」:シート1)を配置し、もう一方の面上に市販の光反射シート((株)きもと社製「レフホワイトRW188」:シート2)を配置してから、両面に2mm厚の透明アクリル板をあて、周辺を枠で固定し、光拡散シート(シート1)を配置した側を照光面として、照光面側の中心部のみ輝度を測定した。上記輝度評価後に、目視で発光の均一性を評価した。評価の基準は以下の通りとした。
発光ムラがほとんど感じられない:1
僅かに発光ムラが感じられる :2
明らかな発光ムラがある :3
【0051】
<曲面発光性及び発光の均一性の評価>
枠と透明アクリル板を取り外した面発光ユニットを、冷陰極管を配した部分を下にして置き、図11の様に局率半径20cmの透明な曲面状のアクリル板(12−b)に可撓性面発光シート(7)部分を重ね、冷陰極管を点灯してから1時間後に、A点とB点の輝度を測定した。ここでA点は、可撓性面発光シートの光源側の側端部から10cmの位置の、幅方向中心部であり、B点は光源から最も離れた側端部から10cmの位置の、幅方向中心部である。可撓性面発光シートの反対面の輝度は、アクリル板にかける面を反対側にして測定した。また輝度評価後に、目視で発光の均一性を評価した。評価の基準は以下の通りとした。
発光ムラがほとんど感じられない:1
僅かに発光ムラが感じられる :2
明らかな発光ムラがある :3
【0052】
<引張強度>
可撓性面発光シートから基布の糸目に沿って経糸方向30cm、緯糸方向3cmの短冊(経方向試料)、経糸方向3cm、幅方向30cmの短冊(緯方向試料)を採取し、JISL1096ストリップ法により引張試験を行い、破断強さ(N/3cm)を求めた。
【0053】
<熱変形性>
30cm四方にカットした可撓性面発光シートを、40cm四方の硝子板の上に置き、80℃オーブン中で30分間加熱した後、オーブンから取り出して20℃高温室内に1時間放置し、可撓性面発光シートの変形の有無を確認し、変形がある場合は、変形部分の硝子板から浮き上がった高さ(mm)を測定し、以下の様に判定した。
1mm未満 :1(ほとんど変形が無い)
1mm以上2mm未満:2(僅かに変形がある)
2mm以上 :3(変形する)
【0054】
<燃焼試験>(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
輻射電気ヒーターによる50kW/m2の輻射熱を可撓性面発光シートに20分間照射する発熱性試験において、20分間の総発熱量と発熱速度を測定し、試験後の膜材外観を観察した。
(a)総発熱量:8MJ/m2以下のものを適合とした。
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/m2を超えないものを適合とした。
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合と
した。
不燃膜材に適合するには少なくとも上記特性(a)(b)が適合の評価を満たす必要がある。
各種評価の結果を表1に示す。なお、実施例1の可撓性面発光シートは、表裏に構成上の差が無いため、輝度の特定において先に測定した方を表として表1に記載した。以下、実施例及び比較例において、表裏に構成上の差がない場合には、同様に先に測定した方を表として表1に記載した。
【0055】
実施例1の可撓性面発光シートは、発光が均一で、両面に発光の得られる面発光ユニットであった。冷陰極管を点灯する前の段階では、可撓性面発光シート内の基布はほとんど視認することができなかったが、点灯時には可撓性樹脂と延伸フィラメントの界面での光の拡散により、僅かに視認された。また、この可撓性面発光シートは市販の光拡散性シートや光反射シートを組み合わせることで、高い輝度の発光が得られ、光拡散性シートの効果で、可撓性面発光シート内の基布は全く視認することができなかった。曲面の発光においても、光源から近い部分A点と遠い部分B点の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0056】
[実施例2]
実施例1と同様に可撓性面発光シートを作成した。ただし、導光性基材の両面に保護樹脂層を形成し、更に一方の面の保護層上に光拡散樹脂層を形成した。保護樹脂層、光拡散樹脂層はそれぞれ以下の通り形成した。
【0057】
<保護樹脂層の形成>
可撓性樹脂含浸被覆基布の一方の面に、下記配合2の樹脂組成物を、グラビアコーターを用いて30g/m2となるよう塗布し、120℃で1分間乾燥して6g/m2の保護樹脂層を作成した。次いで、もう一方の面にも同様にして保護樹脂層を形成した。保護樹脂層の屈折率n2は1.490であり、可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差は0.102であった。
(配合2)
商標:アクリプレン ペレット HBS001(三菱レイヨン(株)製)20質量部
トルエン−MEK(50/50重量比) (溶剤) 80質量部
【0058】
<光拡散樹脂層の形成>
次に、上記で得た一方の保護樹脂層上に、下記配合3の組成物を、バーコーターを用いて塗布量100g/m2となるよう塗布し、120℃で2分間乾燥して20g/m2の光拡散樹脂層を形成した。
(配合3)
商標:アクリプレン ペレット HBS001(三菱レイヨン(株)製)19質量部
架橋ポリスチレン樹脂粒子 SBX−6(積水化成品工業(株)製) 1質量部
平均粒子径 6ミクロン
トルエン−MEK(50/50重量比)(溶剤) 79質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。ただし、光拡散樹脂層を形成した側を表面とした。
【0059】
実施例2の可撓性面発光シートは、実施例1同様両面に発光の得られる可撓性面発光シートであった。冷陰極管に点灯した際も、光拡散樹脂層の光拡散効果で可撓性面発光シート内部の基布は、表裏両面から、全く視認できなかった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0060】
[実施例3]
実施例2と同様に可撓性面発光シートを作成した。ただし、光拡散樹脂層を形成したのとは反対側の面の保護樹脂層上に光反射層を形成した。光反射層は以下の様に形成した。
【0061】
<光反射層の形成>
下記配合4の組成物を、バーコーターを用いて塗布量100g/m2となるよう塗布し、120℃で2分間乾燥して20g/m2の光反射層を形成し可撓性面発光シートを得た。
(配合4)
商標:アクリプレン ペレット HBS001(三菱レイヨン(株)製)19質量部
白色顔料(酸化チタン平均粒子径0.4μm) 1質量部
トルエン−MEK(50/50重量比)(溶剤) 79質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。ただし、光拡散樹脂層を形成した側を表(照光面)とし、輝度や発光の均一性については表面のみ評価した。
【0062】
実施例3の可撓性面発光シートは、光拡散樹脂層と光反射層を有し、実施例1の可撓性面発光シートに市販の光拡散性シートと光反射シートを組み合わせたのと同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0063】
[実施例4]
含浸被覆する可撓性樹脂を下記配合5の熱硬化型ビニルエステル樹脂組成物とし、基布2を用いた以外は実施例3と同様に可撓性面発光シートを作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554であり、基布のナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.032(n1>nb)であった。
(配合5)
ビニルエステル樹脂 100質量部
(昭和高分子(株)製SSP50−C06)
硬化剤 1質量部
(ジ−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パ−オキシジカ-ボネ-ト)
得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例4の可撓性面発光シートは、実施例3と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。可撓性面発光シートの強度は実施例1から3に比べてやや劣るものの、熱による変形は全く見られなかった。
【0065】
[実施例5]
基布3を用いた以外は実施例4と同様に可撓性面発光シートを作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.56であり、基布を構成するポリプロピレン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.024(n1>n21)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.058(n1>n22)であった。得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
実施例5の可撓性面発光シートは、高い輝度で均一な発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。可撓性面発光シートの強度は実施例1から4に比べて劣るものの、熱による変形は僅かであった。
【0067】
[実施例6]
基布4を用い、導光性基材を下記の様に作成した以外は実施例3と同様に可撓性面発光シートを作成した。
【0068】
<導光性基材の作成>
下記配合6の軟質塩ビ樹脂組成物を混合撹拌してから30分静置して脱泡し、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布4に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布4を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次に、厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、先に作成した可撓性樹脂を含浸した基布をを中間に挟んで、コート面を内側にし、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、基布に可撓性樹脂を含浸被覆した導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.548、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.024(n1>n21=n22、)であった。
(配合6)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 30質量部
リン酸クレジルフェニル(可塑剤) 40質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例6の可撓性面発光シートは、実施例3と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0070】
[実施例7]
基布1を用い、導光性基材を下記の様に作成した以外は実施例6と同様に可撓性面発光シートを作成した。
【0071】
<導光性基材の作成>
下記配合7及び下記配合8の軟質塩ビ樹脂組成物をそれぞれ混合撹拌してから30分静置して脱泡し、2種の樹脂組成物液を得た。得られた配合7の樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布1を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布1を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次にたて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに配合8の樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、コート面を内側にして、先に作成した可撓性樹脂を含浸した基布を挟んで、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は配合7、配合8とも1.520、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.036(n1<na=nb)であった。
(配合7)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
光拡散粒子(酸化亜鉛:平均粒子径0.4μm)0.05質量部
(配合8)
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 120質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
ステアリン酸バリウム(安定剤) 2質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例3と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0072】
実施例7の可撓性面発光シートは、実施例3と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。更に、基布による補強効果も高く、熱による変形も全く見られず、燃焼試験の結果は不燃性に適合するものであった。
【0073】
[実施例8]
実施例1と同様に可撓性面発光シートを作成した。ただし、基布2を用い、導光性基材を下記の様に作成した。
【0074】
<導光性基材の作成>
配合8の樹脂組成物を混合撹拌してから30分静置して脱泡し、樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布2を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布1に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし、オーブン内で160℃×2分加熱して樹脂をゲル化することで、可撓性樹脂を含浸した基布を得た。次にたて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、コート面を内側にして、先に作成した可撓性樹脂を含浸した基布を挟んで、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.520、ナイロン繊維の延伸方向の屈折率naとの差の絶対値が0.058(n1<na)、延伸垂直方向の屈折率nbとの差の絶対値は0.002(n1<nb)であった。得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
実施例8の可撓性面発光シートは、実施例1と同様、高い輝度の発光が得られるものであった。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度はあまり差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。また、冷陰極管を点灯する前の段階では、含浸樹脂層と繊維軸に垂直な方向(面発光シート表裏からみた方向)の屈折率に差が無いため、可撓性面発光シート内の基布は全く視認することができず、透視性も有しているが、点灯時には含浸樹脂と繊維表面の界面での光の拡散により、面発光シート内が白く濁り、十数センチ離れると向こう側がはっきり視認できない程度の目隠し効果を示した。また、この可撓性面発光シートは市販の光拡散性シートや光反射シートを組み合わせることで、更に高い輝度の発光が得られた。曲面の発光においても、光源から近い部分と遠い部分の輝度には大きな差が無く、全体的な発光ムラもほとんど感じられなかった。可撓性面発光シートの強度は実施例1から3及び6,7に比べてやや劣るものの、熱による変形は全く見られなかった。
【0076】
[比較例1]
可撓性樹脂を配合5より形成した以外は、実施例1と同様に導光性基材を作成した。硬化した可撓性樹脂の屈折率n1は1.554、基布1のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値は0.002(n1<na=nb)であった。得られた導光性基材を面発光シートとして、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
比較例1の面発光シートは、可撓性樹脂と延伸フィラメントの屈折率に差が無く、面発光シート内での適度な光の拡散が無いため、ほとんど発光せず、市販の光拡散性シートと光反射シートを組み合わせても、輝度はほとんど向上しなかったため、面発光シートとして用いることのできないものであった。
【0078】
[比較例2]
以下の様に作成した基布を含まない樹脂シートを可撓性面発光シートとして用いた。
<樹脂シートの作成>
厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用し、各フィルムの一面に実施例6と同様に調整した配合6の樹脂組成物液を0.24mmのクリアランスでコートし、コート面を内側にして、間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で160℃×3分加熱し、さらに180℃×5分加熱してキュアーしてからポリエステルフィルムをはがし、基布を含まない樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを面発光シートとして、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
比較例2の面発光シートは、基布を用いていないため、面発光シート内での適度な光の拡散が無く、ほとんど発光せず、市販の光拡散性シートと光反射シートを組み合わせても、輝度はほとんど向上しなかったため、面発光シートとして用いることのできないものであった。また、基布により補強されていないため変形が大きく、強度も弱かった。
【0080】
[比較例3]
実施例1と同様に面発光シートを作成した。ただし、繊維性基布として基布4を用い、可撓性樹脂は下記配合9の樹脂組成物を用いて、以下の様に形成した。
<導光性基材の作成>
下記配合9のシリコーンゴム組成物を減圧下で20分撹拌し、さらにそのまま30分静置してして脱泡し、未硬化の樹脂組成物液を得た。得られた樹脂組成物液をたて70cm×よこ40cmのバットに深さ2cmとなる様に入れ、その樹脂液槽に基布4を広げて浸漬し、減圧下で10分間静置して、基布4に樹脂組成物液を完全に含浸させた。次いで、常圧下でバットから基布4を引き出し、ドクターブレードで両面の余分な樹脂組成物液を掻き落とし未硬化の樹脂含浸基布を得た。次に、厚さ50μm、たて70cm×よこ40cmのポリエステルフィルムを2枚用意し、それぞれに、上記樹脂組成物液を0.2mmのクリアランスでコートし、先に作成した未硬化の樹脂含浸基布を中間に挟んで、コート面を内側にし、層間に空気が入らないよう注意して重ねあわせ、オーブン内で100℃×30分加熱して樹脂を固化してからポリエステルフィルムをはがし、導光性基材を得た。可撓性樹脂の屈折率n1は1.401、基布4のガラス繊維の屈折率naおよびnbとの差の絶対値が0.123(n1<na=nb)であった。
(配合9)
CY52−110(東レダウコーニングシリコーン(株)社製シリコーンゴム)
A液 50質量部
B液 50質量部
得られた可撓性面発光シートについて、実施例1と同様に各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
比較例3の可撓性面発光シートは、可撓性樹脂と延伸フィラメントの屈折率差が大きく、面発光シート内での光の拡散が過剰となり、側端部に配置した光源から近い部分は明るく発光していたが、中心部の輝度が低く、光源から最も遠い部分ではほとんど発光せず、明暗の差がはっきりしていたため、面発光シートとして用いるには不適切であった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の曲面発光性に優れた可撓性面発光シートは、強度、耐久性に優れ、変形(ゆがみ、反り、寸法変化)の問題も起こりにくく、平面はもちろん曲面であっても、側端部に配した光源からの距離に関係なくほぼ均一な発光が得られ、しかも基布がほとんど目立たず優れた意匠性が得られるため、平面または曲面の、薄型表示体向けのバックライトや薄型照明向けの面発光体として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】導光性基材内部での光の反射と拡散を示す図
【図2】延伸フィラメントの延伸方向と延伸垂直方向示す図 (a)延伸方向a (b)延伸垂直方向b
【図3】延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbと、可撓性樹脂の屈折率n1が0.02以下の導光性基材を、延伸垂直方向から観察した状況を示す図
【図4】延伸フィラメントの延伸垂直方向の屈折率nbと、可撓性樹脂の屈折率n1が0.02以下の導光性基材に、側端部から入射した光が延伸垂直方向ではほとんど拡散されないことを示す図
【図5】本発明の可撓性面発光シートを薄型表示体のバックライトに用いた例を示す図
【図6】本発明の可撓性面発光シートの構造の一例を示す図
【図7】本発明の可撓性面発光シートの構造の一例を示す図
【図8】本発明の可撓性面発光シートを曲面状に用いた例を示す図
【図9】実施例及び比較例における面発光ユニットを示す図 (a)可撓性面発光シートと冷陰極管の配置 (b)面発光ユニットの構成
【図10】実施例及び比較例において、透明アクリル板および枠で固定した面発光ユニットを示す図
【図11】実施例及び比較例において、曲面状に配した面発光ユニットを示す図
【符号の説明】
【0086】
1 :基布
2 :可撓性樹脂
3 :導光性基材
4 :保護層
5 :光拡散樹脂層
6 :光反射層
7 :可撓性面発光シート
10 :光源
10−a:冷陰極管
11 :画像層
12 :透明樹脂板
12−a:透明アクリル板
12−b:透明アクリル曲面板
13 :反射テープ
14 :反射フィルム
15 :ハウジング
15−a:枠
20−1:入射光
20−2:全反射光
21 :拡散光
a :フィラメント延伸方向
b :フィラメント延伸垂直方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性樹脂を含浸被覆してなる基布を、導光性基材として含む複合シートであって、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、 前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たすことを特徴とする、曲面発光性に優れた可撓性面発光シート。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【請求項2】
前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|na−nb|が下記式(3)を満たす、請求項1に記載の可撓性面発光シート。
|na−nb|≦0.08 式(3)
【請求項3】
前記可撓性樹脂が光拡散粒子を含む、請求項1または2いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項4】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に保護樹脂層が形成された、請求項1から3いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項5】
前記保護樹脂層の屈折率n2が、前記可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上である、請求項4に記載の可撓性面発光シート。
【請求項6】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層が形成された、請求項1から5いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項7】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材に、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズおよび樹脂ビーズから選ばれた少なくとも一種と、マトリクス樹脂を含む光反射層が形成された請求項1から6いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項8】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材に、鍍金、蒸着、スパッタリングなどにより形成された金属薄膜層を含む光反射層が形成された、請求項1から7いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項9】
前記複合シートにおいて、前記延伸フィラメントがガラス繊維、または、シリカ繊維からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記複合シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えないことを特徴とする、請求項1から8いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項1】
可撓性樹脂を含浸被覆してなる基布を、導光性基材として含む複合シートであって、前記基布が、延伸フィラメントを含んでなる編織布であり、前記延伸フィラメントが、延伸方向a、及び前記延伸方向aに対する延伸垂直方向b、とを有し、 前記可撓性樹脂の屈折率n1と前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naとの差の絶対値|n1−na|が下記式1を満たし、かつ、前記可撓性樹脂の屈折率n1と、延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|n1−nb|が、下記式2を満たすことを特徴とする、曲面発光性に優れた可撓性面発光シート。
0.02<|n1−na|≦0.07 式1
|n1−nb|≦0.07 式2
【請求項2】
前記延伸フィラメントの延伸方向の屈折率naと延伸垂直方向bの屈折率nbとの差の絶対値|na−nb|が下記式(3)を満たす、請求項1に記載の可撓性面発光シート。
|na−nb|≦0.08 式(3)
【請求項3】
前記可撓性樹脂が光拡散粒子を含む、請求項1または2いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項4】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に保護樹脂層が形成された、請求項1から3いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項5】
前記保護樹脂層の屈折率n2が、前記可撓性樹脂の屈折率n1よりも低く、その差が0.02以上である、請求項4に記載の可撓性面発光シート。
【請求項6】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材の少なくとも一面に透明樹脂および光拡散粒子を含む光拡散樹脂層が形成された、請求項1から5いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項7】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材に、白色顔料、金属フレーク、金属パウダー、パール顔料、ガラスビーズおよび樹脂ビーズから選ばれた少なくとも一種と、マトリクス樹脂を含む光反射層が形成された請求項1から6いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項8】
前記複合シートにおいて、前記導光性基材に、鍍金、蒸着、スパッタリングなどにより形成された金属薄膜層を含む光反射層が形成された、請求項1から7いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【請求項9】
前記複合シートにおいて、前記延伸フィラメントがガラス繊維、または、シリカ繊維からなり、コーンカロリーメーター試験法(ASTM−E1354)において前記複合シートに対して輻射電気ヒ−タ−による輻射熱を、50kW/m2で照射した時に、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、且つ加熱開始後20分間、10秒以上継続して最高発熱速度が200kW/m2を超えないことを特徴とする、請求項1から8いずれか1項に記載の可撓性面発光シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−146831(P2010−146831A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321894(P2008−321894)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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