説明

曳航式ソーナーの整相装置、整相方法及び整相プログラム

【課題】曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できるとともに、整相方位を容易に特定できる、曳航式ソーナー等を提供する。
【解決手段】コンパス341〜34nが受波器211〜21nの位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出回路35が受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。そのため、受波器211〜21nが直線状に並んでいなくても、受波器211〜21nの位置が座標(x1,y1)〜(xn,yn)として正確に捉えられる。そして、それらの座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき遅延量算出回路36は受波器211〜21nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出し、これらの遅延量t1〜tnになるように整相回路371〜37nは受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曳航式ソーナーの受波ビーム又は送波ビームの整相技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水中で目標が発生する音を、直線状に配列された受波器群から成る曳航アレイで受信して処理し、その音の受信方向から目標の存在と方向を探知する、曳航式パッシブソーナーが知られている(例えば特許文献1)。図19は、従来の曳航式ソーナーの一例を示すブロック図である。図20は、従来の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。以下、図19及び図20に基づき説明する。
【0003】
例示した曳航式ソーナー70は、パッシブソーナーであり、曳航船71によって水中又は水面を曳航される曳航アレイ80と、曳航船71内に設置される信号処理装置90とに分けられる。曳航アレイ80は、音波S1〜Snを受信して電気信号s1〜snに変換する複数の受波器811〜81nが、ケーブル82で連結されたものである。信号処理装置90は、整相装置91、加算回路92、表示部93等を備えている。整相装置91は、遅延量設定回路94及び整相回路951〜95nを備えている。遅延量設定回路94は、受波器811〜81nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように、遅延量t1〜tnを設定する。整相回路951〜95nは、遅延量設定回路94で算出された遅延量t1〜tnになるように、受波器811〜81nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。加算回路92は、位相φ1〜φnが整えられた電気信号s1'〜sn'を加算して合算信号ssとして、LCDなどの表示部93へ出力する。
【0004】
ここで、北を示す0°からΔθ°刻みに各方位からの受波ビーム72の音波S1〜Snを各受波器811〜81nが受信するには、遅延量設定回路94はΔθ°ごとに異なる遅延量t1〜tnを設定する。このようにして加算回路92からΔθ°ごとに異なる合算信号ssが得られ、これが表示部93で表示されると、各方位ごとの受波ビーム72の強さを示すレーダーチャートとなる。
【0005】
図21は、従来の曳航式ソーナーにおける整相の原理を示す説明図である。以下、図19乃至図21に基づき説明する。
【0006】
受波器811〜81nが直線状に0°の方位に並んでいるとき、整相方位73を時計回りに60°の方位とした場合について考える。まず、図21[1]に示すように、受波器811〜81nを整相方位73と逆向きに仮想的に移動させ、受波器811〜81nを整相方位73と直交する方向に直線状に並べる。このとき、受波器811〜81nの移動前後の距離をそれぞれd1〜dn(ただしd1=0とする。)とし、音速をvとすると、遅延量はそれぞれt1=d1/v,t2=d2/v,…,tn=dn/vで与えられる。
【0007】
つまり、整相回路951〜95nは、各受波器811〜81nで変換された電気信号s1〜snをそれぞれ遅延量t1〜tnだけ遅らせると、整相方位73から来た受波ビーム74に対して同時に電気信号s1'〜sn'を出力することになる。これにより、電気信号s1'〜sn'が加算された合算信号ssを強められるので、曳航アレイ80が整相方位73に指向性を有することになる。
【0008】
このように、曳航式ソーナー70は、曳航針路を基準とした相対方位に向けて各受波ビームを整相しており、そのビーム方位が安定していることを前提として、遠距離目標からの微弱な信号に対する長時間の積分を行って初探知を得ている。
【0009】
【特許文献1】特許第2533287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の曳航式ソーナー70は、相対方位での受波ビームの整相と長時間積分を行っている。これは、曳航船71が同一針路を直線状に航行することによって曳航アレイ80を直線状に保ちつつ、受波ビームの方位が地図上で固定された状態になっていることを前提としている。
【0011】
ここで、図21[2]に示すように、曳航船71が回頭すると、曳航アレイ80が曲がって直線状でなくなる。しかし、遅延量t1〜tnは回頭の有無に関係なく変わらないので、図示するように整相方位73を60°に保てなくなる。
【0012】
また、図21[3]に仮想線で示すように、遅延量t1〜tnに対応する整相方位は、60°(整相方位73)だけでなく、−60°(整相方位73')にも存在する。つまり、曳航アレイ80の指向性は左右対称となる。そのため、方位判定のために、曳航船71が回頭して曳航アレイ80を直線状にした後、受波ビームの整相と長時間積分をもう一度行う必要がある。
【0013】
このように、曳航式ソーナー70では、初探知を得た後に左右判定のために曳航船71が回頭すると、曳航アレイ80の形状が変形して受波ビームの方位がずれるため、地図上で固定された方位への長時間積分が中断され、探知状況の悪化を招くという問題がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できるとともに、整相方位を容易に特定できる、曳航式ソーナー等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る整相装置は、音波を受信して電気信号に変換する複数の受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相装置の特徴は、前記各受波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、この偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各受波器の座標を算出する座標算出部と、この座標算出部で算出された前記各受波器の座標に基づき、前記各受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように遅延量を算出する遅延量算出部と、この遅延量算出部で算出された遅延量になるように、前記各受波器で変換された前記電気信号の位相を整える整相部と、を備えたことにある(請求項1)。
【0016】
偏移量センサが各受波器の位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出部が各受波器の座標を算出する。そのため、各受波器が直線状に並んでいなくても、各受波器の位置が座標として正確に捉えられる。そして、それらの座標に基づき遅延量算出部は各受波器が特定の方位からの音波を受信するように遅延量を算出し、これらの遅延量になるように整相部は各受波器で変換された電気信号の位相を整える。このように、従来は曳航アレイの形状に関係なく整相方位に対応する唯一の遅延量を設定していたのに対して、本発明では常に整相方位が一定になるように曳航アレイの形状に応じて遅延量を変えている。そのため、本発明によれば、曳航船の回頭等によって曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できる。また、従来は、曳航アレイが直線状になっているときの整相方位を採用するため、二つの整相方位のどちらであるかを判定する作業が必要であった。これに対し、本発明では、曳航アレイが非直線状であるときの整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、整相方位を判定する必要がない。なお、ここでいう「音波」とは、どのような周波数の振動も含み、もちろん超音波も含むものとする。
【0017】
このとき、前記偏移量センサは、前記各受波器に設けられたコンパスであり、前記座標算出部は、前記各コンパスで計測された偏移量である方位の情報と既知である前記各受波器間の長さとに基づき、幾何学的に前記各受波器の座標を算出する、としてもよい(請求項2)。コンパスによって各受波器の方位がわかり、各受波器間の距離が既知であれば、三角測量の原理によって各受波器の座標が計算できる。したがって、コンパスという簡素な機器によって、各受波器の座標が得られる。
【0018】
本発明に係る曳航式ソーナーは、本発明に係る整相装置と、前記曳航アレイと、を備えたことを特徴とする(請求項6)。本発明に係る曳航式ソーナーによれば、本発明に係る整相装置を備えたことにより、曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できるとともに、整相方位を判定する作業を不要にできる。
【0019】
本発明に係る整相方法は、音波を受信して電気信号に変換する複数の受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相方法の特徴は、前記各受波器の位置の偏移量を計測し、この計測された偏移量に基づき前記各受波器の座標を算出し、この算出された前記各受波器の座標に基づき、前記各受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように遅延量を算出し、この算出された遅延量になるように、前記各受波器で変換された前記電気信号の位相を整える、ことにある(請求項8)。
【0020】
本発明に係る整相プログラムは、音波を受信して電気信号に変換する複数の受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイと、前記各受波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、コンピュータと、を有する曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相プログラムの特徴は、前記偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各受波器の座標を算出する座標算出手段と、この座標算出手段で算出された前記各受波器の座標に基づき、前記各受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように遅延量を算出する遅延量算出手段と、この遅延量算出手段で算出された遅延量になるように、前記各受波器で変換された前記電気信号の位相を整える整相手段と、を前記コンピュータに機能させることにある(請求項10)。
【0021】
本発明に係る整相装置は、電気信号を音波に変換して送信する複数の送波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相装置の特徴は、前記各送波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、この偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各送波器の座標を算出する座標算出部と、この座標算出部で算出された前記各送波器の座標に基づき、前記各送波器が特定の方位へ前記音波を送信するように遅延量を算出する遅延量算出部と、この遅延量算出部で算出された遅延量になるように、前記各送波器で変換される前記電気信号の位相を整える整相部と、を備えている(請求項3)。
【0022】
偏移量センサが各送波器の位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出部が各送波器の座標を算出する。そのため、各送波器が直線状に並んでいなくても、各送波器の位置が座標として正確に捉えられる。そして、それらの座標に基づき遅延量算出部は各送波器が特定の方位へ音波を送信するように遅延量を算出し、これらの遅延量になるように整相部は各送波器で変換される電気信号の位相を整える。このように、従来は曳航アレイの形状に関係なく整相方位に対応する唯一の遅延量を設定していたのに対して、本発明では常に整相方位が一定になるように曳航アレイの形状に応じて遅延量を変えている。そのため、本発明によれば、曳航船の回頭等によって曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できる。また、従来は、曳航アレイが直線状になっているときの整相方位を採用するため、二つの整相方位が存在した。これに対し、本発明では、曳航アレイが非直線状であるときの整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、一つの方位にのみ音波を送信できる。なお、ここでいう「音波」とは、どのような周波数の振動も含み、もちろん超音波も含むものとする。
【0023】
このとき、前記偏移量センサは、前記各送波器に設けられたコンパスであり、前記座標算出部は、前記各コンパスで計測された偏移量である方位の情報と既知である前記各送波器間の長さとに基づき、幾何学的に前記各送波器の座標を算出する、としてもよい(請求項4)。コンパスによって各送波器の方位がわかり、各送波器間の距離が既知であれば、三角測量の原理によって各送波器の座標が計算できる。したがって、コンパスという簡素な機器によって、各送波器の座標が得られる。
【0024】
本発明に係る曳航式ソーナーは、本発明に係る整相装置と、前記曳航アレイと、を備えたことを特徴とする(請求項7)。本発明に係る曳航式ソーナーによれば、本発明に係る整相装置を備えたことにより、曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できるとともに、ただ一つの整相方位へ音波を送信することが可能となる。
【0025】
本発明に係る整相方法は、電気信号を音波に変換して送信する複数の送波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相方法の特徴は、前記各送波器の位置の偏移量を計測し、この計測された偏移量に基づき前記各送波器の座標を算出し、この算出された前記各送波器の座標に基づき、前記各送波器が特定の方位へ前記音波を送信するように遅延量を算出し、この算出された遅延量になるように、前記各送波器で変換される前記電気信号の位相を整える、ことを特徴とする(請求項9)。
【0026】
本発明に係る整相プログラムは、電気信号を音波に変換して送信する複数の送波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイと、前記各送波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、コンピュータと、を有する曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相プログラムの特徴は、前記の偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各送波器の座標を算出する座標算出手段と、この座標算出手段で算出された前記各送波器の座標に基づき、前記各送波器が特定の方位へ前記音波を送信するように遅延量を算出する遅延量算出手段と、この遅延量算出手段で算出された遅延量になるように、前記各送波器で変換される前記電気信号の位相を整える整相手段と、を前記コンピュータに機能させることにある(請求項11)。
【0027】
本発明に係る整相装置は、電気信号を音波に変換して送信する動作と音波を受信して電気信号に変換する動作とを切り替え可能な複数の送受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる。そして、本発明に係る整相装置の特徴は、前記各送受波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、この偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各送受波器の座標を算出する座標算出部と、この座標算出部で算出された前記各送受波器の座標に基づき、前記各送受波器が特定の方位へ前記音波を送信するように、又は前記各送受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように、遅延量を算出する遅延量算出部と、この遅延量算出部で算出された遅延量になるように、前記各送受波器で前記音波に変換される前記電気信号の位相又は前記各送受波器で前記音波から変換された前記電気信号の位相を整える整相部と、を備えたことにある(請求項5)。
【0028】
まず、電気信号を音波に変換して送信する送波器として、送受波器を動作させる。このとき、偏移量センサが各送受波器の位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出部が各送受波器の座標を算出する。そのため、各送受波器が直線状に並んでいなくても、各送受波器の位置が座標として正確に捉えられる。そして、それらの座標に基づき遅延量算出部は各送受波器が特定の方位へ音波を送信するように遅延量を算出し、これらの遅延量になるように整相部は各送受波器で変換される電気信号の位相を整える。このように、従来は曳航アレイの形状に関係なく整相方位に対応する唯一の遅延量を設定していたのに対して、本発明では常に整相方位が一定になるように曳航アレイの形状に応じて遅延量を変えている。そのため、本発明によれば、曳航船の回頭等によって曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できる。また、従来は、曳航アレイが直線状になっているときの整相方位を採用するため、二つの整相方位が存在した。これに対し、本発明では、曳航アレイが非直線状であるときの整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、一つの方位にのみ音波を送信できる。
【0029】
続いて、音波を受信して電気信号に変換する受波器として、送受波器を動作させる。このとき、偏移量センサが各送受波器の位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出部が各送受波器の座標を算出する。そのため、各送受波器が直線状に並んでいなくても、各送受波器の位置が座標として正確に捉えられる。そして、それらの座標に基づき遅延量算出部は各送受波器が特定の方位からの音波を受信するように遅延量を算出し、これらの遅延量になるように整相部は各送受波器で変換された電気信号の位相を整える。このように、従来は曳航アレイの形状に関係なく整相方位に対応する唯一の遅延量を設定していたのに対して、本発明では常に整相方位が一定になるように曳航アレイの形状に応じて遅延量を変えている。そのため、本発明によれば、曳航船の回頭等によって曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できる。また、従来は、曳航アレイが直線状になっているときの整相方位を採用するため、二つの整相方位のどちらであるかを判定する作業が必要であった。これに対し、本発明では、曳航アレイが非直線状であるときの整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、整相方位を判定する必要がない。
【0030】
以上のように、曳航式ソーナーは、送受波器が音波を送信するとともに戻ってきた音波を受信することにより、アクティブソーナーとして動作する。なお、ここでいう「音波」とは、どのような周波数の振動も含み、もちろん超音波も含むものとする。
【0031】
次に、本発明について要約する。従来の曳航式ソーナーは、相対方位での受波ビーム整相と長時間積分を行っており、これは、曳航艦が同一針路を直線状に航行することによって曳航アレイを直線状に保ちつつ、受波ビームの方位が地図上で固定された状態になっていることを前提としている。しかし、初探知を得た後に左右判定のために回頭すると、曳航アレイの形状が変形して受波ビームの方位がずれるため、地図上で固定された方位への長時間積分が中断され、探知状況の悪化を招くという問題がある。そこで、本発明に係る曳航式ソーナーでは、リアルタイムの各受波器位置偏移量を計測するコンパス等の偏移量センサ、センサ計測値から各受波器座標を算出する座標算出回路、各受波器座標から遅延量を算出する遅延量算出回路、遅延量により整相を行う整相回路を有し、曳航によって変化する曳航アレイの形状にかかわらず地図上で固定した方向の受波ビームを形成することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、曳航アレイの形状に応じて各受波器に対する遅延量を変えることにより、常に整相方位を一定にできるので、曳航アレイが非直線状になっても整相方位を地図上で固定できる。また、曳航アレイが非直線状であるときの整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、整相方位を判定する作業を不要にできる。
【0033】
換言すると、第1の効果は、曳航アレイの形状の変化にかかわらず、地図上で固定の方向に安定して受波ビームを形成できるため、曳航船の航走状態に左右されず、長時間積分の信号処理利得を維持できる。第2の効果は、曳航船が蛇行を行い曳航アレイの形状を意図的に曲線にした場合、左右対称ではない別々の受波ビームを地図上で固定の方向に安定して形成できるため、信号を継続的に捕らえつつ、回頭動作を行うことなく目標方位の判別ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明に係る整相装置及び曳航式ソーナーの第一実施形態を示すブロック図である。図2は、図1の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0035】
曳航式ソーナー10は、パッシブソーナーであり、曳航船11によって水中又は水面を曳航される曳航アレイ20と、曳航船11内に設置される信号処理装置30とに分けられる。曳航アレイ20は、音波S1〜Snを受信して電気信号s1〜snに変換する複数の受波器211〜21nが、ケーブル22で連結されたものである。信号処理装置30は、整相装置31、加算回路32、表示部33等を備えている。受波器211〜21nと信号処理装置30とは、ケーブル22を介して電気的に接続されている。
【0036】
整相装置31は、コンパス341〜34n、座標算出回路35、遅延量算出回路36、整相回路371〜37n等を備えている。これらの座標算出回路35、遅延量算出回路36及び整相回路371〜37nは、例えばハードウェア記述言語によって設計されたディジタル回路などによって実現される。
【0037】
受波器211〜21nは、圧電素子、磁歪素子、マイクロフォンなどの一般的なパッシブソーナー用部品でよく、必要に応じて増幅回路などが付設される。
【0038】
コンパス341〜34nは、受波器211〜21nに一個ずつ設けられ、受波器211〜21nの位置の偏移量を計測する偏移量センサとして動作する。コンパス341〜34nの種類としては、磁針とロータリエンコーダとを組み合わせたものや、ジャイロコンパスなどがある。コンパス341〜34nも、ケーブル22を介して信号処理装置30に電気的に接続されている。
【0039】
座標算出回路35は、コンパス341〜34nで計測された偏移量に基づき受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。具体的には、コンパス341〜34nで計測された偏移量である受波器211〜21nの方位θ1〜θnと既知である受波器211〜21n間の長さL1〜Lnとに基づき、幾何学的に受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。この座標の算出方法については、後で詳しく述べる。
【0040】
遅延量算出回路36は、座標算出回路35で算出された受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、受波器211〜21nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出する。
【0041】
整相回路371〜37nは、遅延量算出回路36で算出された遅延量t1〜tnになるように、受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。この整相回路371〜37nは、移相器とも呼ばれ、フェイズドアレイに用いられる一般的な回路である。
【0042】
加算回路32は、位相φ1〜φnが整えられた電気信号s1'〜sn'を加算して合算信号ssとして、LCDなどの表示部33へ出力する。
【0043】
ここで、北を示す0°からΔθ°刻みに各方位からの受波ビーム12の音波S1〜Snを受波器211〜21nが受信するには、遅延量算出回路36はΔθ°ごとに異なる遅延量t1〜tnを設定する。このようにして加算回路32からΔθ°ごとに異なる合算信号ssが得られ、これが表示部33で表示されると、各方位ごとの受波ビーム12の強さを示すレーダーチャートとなる。
【0044】
図3は、図1の整相装置における整相の原理を示す説明図である。以下、図1乃至図3に基づき説明する。
【0045】
受波器211〜21nが直線状に並んでいるときは、整相装置31の動作は従来と同じである。ここでは、受波器211〜21nが非直線状に屈曲して並んでいるとき、整相方位13を時計回りに60°の方位とした場合について考える。まず、図3[1]に示すように、遅延量算出回路36は、受波器211〜21nを整相方位13と逆向きに仮想的に移動させ、受波器211〜21nを整相方位13と直交する方向に直線状に並べる。そして、受波器211〜21nの移動前後の距離をそれぞれd1〜dn(ただしdn=0とする。)とし、音速をvとすると、遅延量はそれぞれt1=d1/v,t2=d2/v,…,tn=dn/vで与えられる。このとき、受波器211〜21nの移動前の座標(x1,y1)〜(xn,yn)は座標算出回路25によって得られているので、これを用いれば受波器211〜21nの移動前後の距離d1〜dnも幾何学的に求められる。
【0046】
つまり、整相回路371〜37nは、受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snをそれぞれ遅延量t1〜tnだけ遅らせると、整相方位13から来た受波ビーム14に対して同時に電気信号s1'〜sn'を出力することになる。これにより、電気信号s1'〜sn'が加算された合算信号ssを強められるので、曳航アレイ20が整相方位13に指向性を有することになる。
【0047】
また、このときの遅延量t1〜tnに対応する整相方位は、60°の整相方位13だけである。図3[2]に仮想線で示すように、−60°の整相方位13'は、受波器211〜21nの移動前後の距離d1'〜dn'が60°の整相方位13の場合と異なるため、遅延量t1〜tnに対応しなくなるからである。
【0048】
次に、本実施形態の整相装置の作用及び効果について、図1乃至図3に基づき説明する。
【0049】
コンパス341〜34nが受波器211〜21nの位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出回路35が受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。そのため、受波器211〜21nが直線状に並んでいなくても、受波器211〜21nの位置が座標(x1,y1)〜(xn,yn)として正確に捉えられる。そして、それらの座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき遅延量算出回路36は受波器211〜21nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出し、これらの遅延量t1〜tnになるように整相回路371〜37nは受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。
【0050】
このように、従来は曳航アレイの形状に関係なく整相方位に対応する唯一の遅延量を設定していたのに対して、本実施形態では常に整相方位が一定になるように曳航アレイ20の形状に応じて遅延量t1〜tnを変えている。そのため、本実施形態によれば、曳航船11の回頭等によって曳航アレイ20が非直線状になっても整相方位13を地図上で固定できる。
【0051】
また、従来は、曳航アレイが直線状になっているときの整相方位を採用するため、二つの整相方位のどちらであるかを判定する作業が必要であった。これに対し、本実施形態では、曳航アレイ20が非直線状であるときの整相方位13を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、整相方位を判定する必要がない。なお、ここでいう「音波」とは、どのような周波数の振動も含み、もちろん超音波も含むものとする。
【0052】
図4は、図1の整相装置における受波器の座標検出方法を示す説明図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0053】
コンパス341,…は、受波器211,…に一個ずつ設けられ、受波器211,…の方位θ1,…を出力する。方位θ1,…は、北を0°としたときの値であり、反時計回りを正とする。受波器211〜21n間の長さL1〜Lnは既知である。例えば曳航船11を原点(0,0)とした場合、受波器211の座標(x1,y1)は、(L1sinθ1,−L1cosθ1)で与えられる。同様にして、受波器212の座標(x2,y2)は、(x1+L2sinθ2,y1−L2cosθ2)で与えられ、m番目の受波器21mの座標(xm,ym)は(xm-1+Lmsinθm,ym-1−Lmcosθm)で与えられる。
【0054】
本実施形態によれば、コンパス341,…という簡素な機器によって、受波器211,…の座標(x1,y1),…が容易に得られる。
【0055】
次に、本実施形態の整相装置及び曳航式ソーナーについて、図1乃至図3に基づき、更に詳しく説明する。
【0056】
図2に示すように、曳航式ソーナー10は、曳航船11に曳航される曳航アレイ20と、曳航船11内に載置された信号処理装置30とから成る、パッシブソーナーである。曳航アレイ20を構成する受波器211〜21nからの出力信号が、ケーブル22を通過して信号処理装置30に送られる。信号処理装置30に送られた信号は、図1に示すように、整相回路371〜37n(遅延時間等を与える)で処理されて加算され、受波ビーム出力である合算信号ssとなる。
【0057】
整相装置31は、偏移量センサとしてのコンパス341〜34nと、コンパス341〜34nからの計測値に基づいて受波器211〜21nの位置情報を求める座標算出回路35と、その位置計算に基づいて受波ビーム12ごとに地図上の固定方向からの音波に位相が合うように遅延量(遅延時間)を算出する遅延量算出回路36と、遅延量算出回路36からの遅延量で整相する整相回路371〜37nとを備える。
【0058】
整相装置31及び曳航式ソーナー10の動作を説明する。整相(遅延時間等)の計算について、曳航アレイ20面に対して60°方向に整相する場合を考える。
【0059】
まず、従来技術について説明する。図21[1]に示すように、曳航アレイ80が直線の場合、到来音波は受波器811〜81nで受信する。この信号に対して、図中の矢印で示す距離d1〜dn分に相当する音波が伝わる時間t1〜tnを遅らせると、整相面で受信した場合と同様になる。また、図21[2]に示すように、曳航アレイ80が曲面の場合、曳航アレイ80が直線で一定方向に向いていると仮定して、図21[1]の場合と同じ遅延量t1〜tnを与えて整相する。そのため、整相面が曲面となって所望の方向に整相できない。
【0060】
これに対して、本実施形態では、曳航アレイ20の位置を計算して整相面が一定の向きになるよう遅延量t1〜tnを与え整相を行う。このように、変化する曳航アレイ20の位置に対して、整相面を固定するようにその遅延量t1〜tnを対応して与えることにより、受波ビーム12の方向を地図上で固定することができる。
【0061】
次に本発明に係る整相方法の第一実施形態について、図1乃至図4に基づき説明する。
【0062】
本実施形態の整相方法は、前述の整相装置31の動作として説明した内容と同じである。つまり、本実施形態の整相方法は、音波S1〜Snを受信して電気信号s1〜snに変換する複数の受波器211〜21nと、受波器211〜21nがケーブル22で連結されて成るとともに曳航船11に曳航される曳航アレイ20と、を有する曳航式ソーナー10に用いられる。そして、本実施形態の整相方法の特徴は、受波器211〜21nの方位θ1〜θnを計測し、方位θ1〜θnに基づき受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出し、座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、受波器211〜21nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出し、遅延量t1〜tnになるように、受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整えることにある。
【0063】
本実施形態の整相方法の作用及び効果は、前述の整相装置31の作用及び効果と同じである。
【0064】
図5は、本発明に係る整相プログラムの第一実施形態によって動作するコンピュータのハードウェアの一例を示すブロック図である。以下、図5を中心に、図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0065】
本実施形態の整相プログラム15aは、図1の整相装置31の座標算出回路35、遅延量算出回路36及び整相回路371〜37nと同じように、コンピュータ15を機能させるものである。つまり、整相プログラム15aは、音波S1〜Snを受信して電気信号s1〜snに変換する複数の受波器211〜21nと、受波器211〜21nがケーブル22(図2)で連結されて成るとともに曳航船11(図2)に曳航される曳航アレイ20(図2)と、受波器211〜21nの方位θ1〜θnを計測するコンパス341〜34nと、信号処理装置30(図2)内に設けられたコンピュータ15と、を有する曳航式ソーナー10(図2)に用いられる。
【0066】
コンピュータ15は、CPU151、RAM152、ROM153、バス154、入出力インタフェース155等から成る一般的なマイクロコンピュータである。整相プログラム15aは、ハードディスクなどの外部記憶装置(図示せず)からRAM152内にロードされている。CPU151は、RAM152から整相プログラム15aの命令を順次読み込み、その命令を解釈してデータの加工及び移動を実行する。
【0067】
図6は、図5のコンピュータの機能の一例を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0068】
整相プログラム15aの特徴は、コンパス341〜34nで計測された受波器211〜21nの方位θ1〜θnに基づき受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する座標算出手段35aと、座標算出手段35aで算出された座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、受波器211〜21nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出する遅延量算出手段36aと、遅延量算出手段36aで算出された遅延量t1〜tnになるように、受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える整相手段37aとを、コンピュータ15に機能させることにある。これに加え、整相プログラム15aは、図1の加算回路32と同じように、加算手段32aをコンピュータ15に機能させる。すなわち、加算手段32aは、整相手段37aで位相φ1〜φnが整えられた電気信号s1'〜sn'を、加算して合算信号ssとして表示部33へ出力する。
【0069】
図7は、図5のコンピュータの動作の一例を示すフローチャートである。以下、図5乃至図7に基づき説明する。
【0070】
受波器211〜21nが直線状に並んでいるときは、コンピュータ15の動作は従来と同じである。ここでは、受波器211〜21nが非直線状に屈曲して並んでいるときについて、コンピュータ15の動作を説明する。
【0071】
まず、座標算出手段35aは、コンパス341〜34nから受波器211〜21nの方位θ1〜θnを入力し(ステップ101)、方位θ1〜θnに基づき受波器211〜21nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する(ステップ102)。
【0072】
続いて、遅延量算出手段36aは、特定の方位Dをθo°に設定し(ステップ103)、座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、受波器211〜21nが方位Dからの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出する(ステップ104)。続いて、整相手段37aは、遅延量t1〜tnになるように、受波器211〜21nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える(ステップ105)。続いて、加算手段32aは、位相φ1〜φnが整えられた電気信号s1'〜sn'を、加算して合算信号ssとして表示部33へ出力する(ステップ106)。
【0073】
続いて、遅延量算出手段36aは、方位DにΔθ°を加えて新たな方位Dを設定する(ステップ107)。そして、遅延量算出手段36a、整相手段37a及び加算手段32aは、その新たな方位Dに対して、ステップ104〜107の処理を実行する。これらの動作はD>θe°となるまで繰り返す(ステップ108)。これにより、各方位ごとの受波ビームの強さを示すレーダーチャートが得られる。例えば、θo°=0°、θe°=360°である。
【0074】
本実施形態の整相プログラム15aの作用及び効果は、図1の整相装置31の作用及び効果と同じである。
【0075】
図8は、本発明に係る整相装置及び曳航式ソーナーの第二実施形態を示すブロック図である。図9は、図8の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0076】
曳航式ソーナー40は、アクティブソーナーの送信側であり、曳航船11によって水中又は水面を曳航される曳航アレイ41と、曳航船11内に設置される信号処理装置42とに分けられる。曳航アレイ41は、電気信号s1〜snを音波S1〜Snに変換して送信する複数の送波器421〜42nが、ケーブル22で連結されたものである。信号処理装置42は、整相装置43等を備えている。送波器421〜42nと信号処理装置42とは、ケーブル22を介して電気的に接続されている。
【0077】
整相装置43は、コンパス341〜34n、座標算出回路35、遅延量算出回路36、整相回路371〜37n等を備えている。これらの座標算出回路35、遅延量算出回路36及び整相回路371〜37nは、例えばハードウェア記述言語によって設計されたディジタル回路などによって実現される。コンパス341〜34n、座標算出回路35、遅延量算出回路36及び整相回路371〜37nは、受波を送波に置き換えた点を除き、基本的な構成が図1の整相装置31の各構成要素と同じであるので、それぞれ図1の各構成要素と同じ符号を付す。
【0078】
送波器421〜42nは、圧電素子、磁歪素子、スピーカなどの一般的なアクティブソーナー用部品でよく、必要に応じて駆動回路などが付設される。コンパス341〜34nは、送波器421〜421nに一個ずつ設けられ、送波器421〜42nの位置の偏移量を計測する偏移量センサとして動作する。
【0079】
座標算出回路35は、コンパス341〜34nで計測された偏移量に基づき送波器421〜42nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。具体的には、コンパス341〜34nで計測された偏移量である送波器421〜42nの方位θ1〜θnと既知である送波器421〜42n間の長さL1〜Lnとに基づき、幾何学的に送波器421〜42nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。この座標の算出方法については、前述したとおりである。
【0080】
遅延量算出回路36は、座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、送波器421〜42nが特定の方位へ音波S1〜Snを送信するように遅延量t1〜tnを算出する。
【0081】
整相回路371〜37nは、遅延量算出回路36で算出された遅延量t1〜tnになるように、送波器421〜42nで変換される電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。なお、遅延量t1〜tnの算出は図3を用いて説明した方法に準ずるが、遅延量t1〜tnが大きいほど位相を進ませる。
【0082】
ここで、北を示す0°からΔθ°刻みに各方位へ送波ビーム44の音波S1〜Snを各送波器421〜42nが送信するには、遅延量算出回路36はΔθ°ごとに異なる遅延量t1〜tnを設定する。
【0083】
コンパス341〜34nが送波器421〜42nの方位θ1〜θnを計測し、その方位θ1〜θnに基づき座標算出回路35が送波器421〜42nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。そのため、送波器421〜42nが直線状に並んでいなくても、送波器421〜42nの位置が座標(x1,y1)〜(xn,yn)として正確に捉えられる。そして、それらの座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき遅延量算出回路36は送波器421〜42nが特定の方位へ音波S1〜Snを送信するように遅延量t1〜tnを算出し、これらの遅延量t1〜tnになるように整相回路371〜37nは送波器421〜42nで変換される電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。
【0084】
このように、従来は曳航アレイの形状に関係なく送波ビームの整相方位に対応する唯一の遅延量を設定していたのに対して、本実施形態では常に送波ビーム44の整相方位が一定になるように曳航アレイ41の形状に応じて遅延量t1〜tnを変えている。そのため、本実施形態によれば、曳航船11の回頭等によって曳航アレイ41が非直線状になっても送波ビーム44の整相方位を地図上で固定できる。
【0085】
また、従来は、曳航アレイが直線状になっているときの送波ビームの整相方位を採用するため、二つの整相方位が存在した。これに対し、本実施形態では、曳航アレイ41が非直線状であるときの送波ビーム44の整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、一つの方位にのみ音波S1〜Snを送信できる。
【0086】
なお、ここでいう「音波」とは、どのような周波数の振動も含み、もちろん超音波も含むものとする。また、曳航式ソーナー40はアクティブソーナーの送信側であるので、図示しないアクティブソーナーの受信側が別途存在する。更に、曳航式ソーナー40は、名称をソーナーとしたが、これに限らず、例えば特定方向に音波を送信する曳航式音波送信装置として用いてもよい。
【0087】
次に本発明に係る整相方法の第二実施形態について、図8及び図9に基づき説明する。
【0088】
本実施形態の整相方法は、前述の整相装置43の動作として説明した内容と同じである。つまり、本実施形態の整相方法は、電気信号s1〜snを音波S1〜Snに変換して送信する複数の送波器421〜42nと、送波器421〜42nがケーブル22で連結されて成るとともに曳航船11に曳航される曳航アレイ41と、を有する曳航式ソーナー40に用いられる。そして、本実施形態の整相方法の特徴は、送波器421〜42nの方位θ1〜θnを計測し、方位θ1〜θnに基づき送波器421〜42nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出し、座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、送波器421〜42nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出し、遅延量t1〜tnになるように、送波器421〜42nで変換される電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整えることにある。
【0089】
本実施形態の整相方法の作用及び効果は、前述の整相装置43の作用及び効果と同じである。
【0090】
図10は、本発明に係る整相プログラムの第二実施形態によって動作するコンピュータのハードウェアの一例を示すブロック図である。以下、図10を中心に、図8及び図9を参照しつつ説明する。
【0091】
本実施形態の整相プログラム45aは、図8の整相装置43の座標算出回路35、遅延量算出回路36及び整相回路371〜37nと同じように、コンピュータ45を機能させるものである。つまり、整相プログラム45aは、電気信号s1〜snを音波S1〜Snに変換して送信する複数の送波器421〜42nと、送波器421〜42nがケーブル22(図9)で連結されて成るとともに曳航船11(図9)に曳航される曳航アレイ41(図2)と、送波器421〜42nの方位θ1〜θnを計測するコンパス341〜34nと、信号処理装置42(図9)内に設けられたコンピュータ45と、を有する曳航式ソーナー40(図9)に用いられる。
【0092】
コンピュータ45は、CPU151、RAM152、ROM153、バス154、入出力インタフェース155等から成る一般的なマイクロコンピュータである。整相プログラム45aは、ハードディスクなどの外部記憶装置(図示せず)からRAM152内にロードされている。CPU151は、RAM152から整相プログラム45aの命令を順次読み込み、その命令を解釈してデータ加工及び移動を実行する。
【0093】
図11は、図10のコンピュータの機能の一例を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0094】
整相プログラム45aの特徴は、コンパス341〜34nで計測された送波器421〜42nの方位θ1〜θnに基づき送波器421〜42nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する座標算出手段35aと、座標算出手段35aで算出された座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、送波器421〜42nが特定の方位へ音波S1〜Snを送信するように遅延量t1〜tnを算出する遅延量算出手段36aと、遅延量算出手段36aで算出された遅延量t1〜tnになるように、送波器421〜42nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える整相手段37aとを、コンピュータ45に機能させることにある。
【0095】
図11は、図10のコンピュータの動作の一例を示すフローチャートである。以下、図5乃至図7に基づき説明する。
【0096】
送波器421〜42nが直線状に並んでいるときは、コンピュータ45の動作は従来と同じである。ここでは、送波器421〜42nが非直線状に屈曲して並んでいるときについて、コンピュータ45の動作を説明する。
【0097】
まず、座標算出手段35aは、コンパス341〜34nから送波器421〜42nの方位θ1〜θnを入力し(ステップ201)、方位θ1〜θnに基づき送波器421〜42nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する(ステップ202)。
【0098】
続いて、遅延量算出手段36aは、特定の方位Dをθo°に設定し(ステップ203)、座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、送波器421〜42nが方位Dへ音波S1〜Snを送信するように遅延量t1〜tnを算出する(ステップ204)。続いて、整相手段37aは、遅延量t1〜tnになるように、送波器421〜42nで変換される電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える(ステップ205)。続いて、送波器421〜42nは、位相φ1〜φnが整えられた電気信号s1〜snを、音波S1〜Snに変換して送信する(ステップ206)。
【0099】
続いて、遅延量算出手段36aは、方位DにΔθ°を加えて新たな方位Dを設定する(ステップ207)。そして、遅延量算出手段36a、整相手段37a及び送波器421〜42nは、その新たな方位Dに対して、ステップ204〜207の処理を実行する。これらの動作はD>θe°となるまで繰り返す(ステップ208)。例えば、θo°=0°、θe°=360°である。
【0100】
本実施形態の整相プログラム45aの作用及び効果は、図8の整相装置43の作用及び効果と同じである。
【0101】
図13は、本発明に係る整相装置及び曳航式ソーナーの第三実施形態を示すブロック図である。図14は、図13の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0102】
曳航式ソーナー50は、第一実施形態の曳航式ソーナー10(図1)と第二実施形態の曳航式ソーナー40(図8)とを組み合わせたアクティブソーナーであり、曳航船11によって水中又は水面を曳航される曳航アレイ51と、曳航船11内に設置される信号処理装置52とに分けられる。曳航アレイ51は、電気信号s1〜snを音波S1〜Snに変換して送信する動作と音波S1〜Snを受信して電気信号s1〜snに変換する動作とを切り替え可能な複数の送受波器521〜52nが、ケーブル22で連結されたものである。信号処理装置52は、整相装置53等を備えている。送受波器521〜52nと信号処理装置52とは、ケーブル22を介して電気的に接続されている。
【0103】
整相装置53は、コンパス341〜34n、座標算出回路35、遅延量算出回路36、整相回路371〜37n、加算回路32、表示部33等を備えている。これらの座標算出回路35、遅延量算出回路36、整相回路371〜37nは、例えばハードウェア記述言語によって設計されたディジタル回路などによって実現される。コンパス341〜34n、座標算出回路35、遅延量算出回路36、整相回路371〜37n、加算回路32及び表示部33は、受波を受波兼送波に置き換えた点を除き、基本的な構成が図1の整相装置31の各構成要素と同じであるので、それぞれ図1の各構成要素と同じ符号を付す。
【0104】
送受波器521〜52nは、圧電素子、磁歪素子、スピーカ兼マイクロフォンなどの一般的なアクティブソーナー用部品でよく、必要に応じて増幅回路や駆動回路などが付設される。コンパス341〜34nは、送受波器521〜521nに一個ずつ設けられ、送受波器521〜52nの位置の偏移量を計測する偏移量センサとして動作する。
【0105】
座標算出回路35は、コンパス341〜34nで計測された偏移量に基づき送受波器521〜52nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。具体的には、コンパス341〜34nで計測された偏移量である送受波器521〜52nの方位θ1〜θnと既知である送受波器521〜52n間の長さL1〜Lnとに基づき、幾何学的に送受波器521〜52nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。この座標の算出方法については、前述したとおりである。
【0106】
遅延量算出回路36は、座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき、送受波器521〜52nが特定の方位へ音波S1〜Snを送信するように、又は送受波器521〜52nが特定の方位から音波S1〜Snを受信するように、遅延量t1〜tnを算出する。
【0107】
整相回路371〜37nは、遅延量算出回路36で算出された遅延量t1〜tnになるように、送受波器521〜52nで音波S1〜Snに変換される電気信号s1〜snの位相φ1〜φn又は送受波器521〜52nで音波S1〜Snから変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。
【0108】
まず、電気信号s1〜snを音波S1〜Snに変換して送信する送波器として、送受波器521〜52nを動作させる。コンパス341〜34nが送受波器521〜52nの方位θ1〜θnを計測し、その方位θ1〜θnに基づき座標算出回路35が送受波器521〜52nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。そのため、送受波器521〜52nが直線状に並んでいなくても、送受波器521〜52nの位置が座標(x1,y1)〜(xn,yn)として正確に捉えられる。そして、それらの座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき遅延量算出回路36は送受波器521〜52nが特定の方位へ音波S1〜Snを送信するように遅延量t1〜tnを算出し、これらの遅延量t1〜tnになるように整相回路371〜37nは送受波器521〜52nで変換される電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。
【0109】
このように、本実施形態では、常に送波ビーム54の整相方位が一定になるように、曳航アレイ51の形状に応じて遅延量t1〜tnを変えている。そのため、曳航船11の回頭等によって曳航アレイ51が非直線状になっても、送波ビーム54の整相方位を地図上で固定できる。また、曳航アレイ51が非直線状であるときの送波ビーム54の整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、一つの方位にのみ音波S1〜Snを送信できる。
【0110】
続いて、音波S1〜Snを受信して電気信号s1〜snに変換する受波器として、送受波器521〜52nを動作させる。このとき、コンパス341〜34nが送受波器521〜52nの位置の偏移量を計測し、その偏移量に基づき座標算出回路35が送受波器521〜52nの座標(x1,y1)〜(xn,yn)を算出する。そのため、送受波器521〜52nが直線状に並んでいなくても、送受波器521〜52nの位置が座標(x1,y1)〜(xn,yn)として正確に捉えられる。そして、それらの座標(x1,y1)〜(xn,yn)に基づき遅延量算出回路36は送受波器521〜52nが特定の方位からの音波S1〜Snを受信するように遅延量t1〜tnを算出し、これらの遅延量t1〜tnになるように整相回路371〜37nは送受波器521〜52nで変換された電気信号s1〜snの位相φ1〜φnを整える。
【0111】
このように、本実施形態では、常に受波ビーム55の整相方位が一定になるように、曳航アレイ51の形状に応じて遅延量t1〜tnを変えている。そのため、曳航船11の回頭等によって曳航アレイ51が非直線状になっても、受波ビーム55の整相方位を地図上で固定できる。また、曳航アレイ51が非直線状であるときの受波ビーム55の整相方位を採用することにより、その整相方位は一つだけになるので、整相方位を判定する必要がない。
【0112】
以上のように、曳航式ソーナー50は、送受波器521〜52nが音波S1〜Snを送信するとともに戻ってきた音波S1〜Snを受信することにより、アクティブソーナーとして動作する。なお、整相装置53等の各機能は、第一及び第二実施形態と同様に、コンピュータ及びそのプログラムによって実現してもよい。また、送受信の切り替え等は、一般のアクティブソーナーと同様に、コンピュータ及びそのプログラムによって制御してもよい。
【0113】
なお、本発明は、言うまでもなく、上記第一乃至第三実施形態に限定されるものではない。例えば、偏移量センサは、コンパスの代わりに、座標が既知の二個又は三個の送波器を用い、これらから受波器までの音波の到達時間を計測するようにしてもよい。また、受波器等の座標は、説明を簡潔にするために二次元座標を用いたが、例えばコンパスと深度計を使って三次元座標を検出するようにしてもよい。
【実施例1】
【0114】
図15は、実施例及び比較例についてのシミュレーション条件を示す平面図である。図16は直進時のシミュレーション結果を示す円グラフであり、図16[1]が実施例、図16[2]が比較例である。図17は左旋回時のシミュレーション結果を示す円グラフであり、図17[1]が実施例、図17[2]が比較例である。図18は右旋回時のシミュレーション結果を示す円グラフであり、図18[1]が実施例、図18[2]が比較例である。以下、実施例(本発明)として図1の整相装置、比較例(従来技術)として図19の整相装置を取り上げ、それらのシミュレーション結果について図15乃至図18に基づき説明する。
【0115】
曳航アレイは全長300mであり1mごとに受波器が配置され、使用周波数は500Hzとした。このとき、曳航アレイが図15に示す軌跡をたどって運用されたとする。
【0116】
まず、直進の場合は、図15に示すように、曳航アレイは直線になっている。そのため、図16に示すように、実施例でも比較例でも受波ビームの状況は変わりがない。図16では、曳航方向に対して60°方向の受波ビームを示しているが、一般には前方及び後方の一部角度を除いて数十の受波ビームが形成される。
【0117】
続いて、左旋回の場合は、図15に示すように、曳航アレイは曲線になっていて、曳航アレイの方向は直進時とは変わっている。そのため、図17[2]に示すように、比較例における元の60°方向の受波ビームは旋回方向にずれてしまっている。これに対し、実施例では、図17[1]に示すように、受波ビームは地図上で固定となるので60°方向に直進時とほぼ同じ形で維持されている。その一方、反対側(−60°方向)は、位相が合わなくなったため、指向幅が広くなり感度も低下している。また、直進時に対称に現れた−60°方向については、図17[1]に点線で示すように、別の整相で受波ビームが作られて安定して−60方向に受波ビームが作られる。したがって、直進時に音波の到来方向が右か左かわからなかったとすると、この左旋回時にその判別ができることになる。
【0118】
続いて、右旋回の場合は、図15に示すように、曳航アレイは曲線になっていて、曳航アレイの方向は変わっている。そのため、図18[2]に示すように、比較例におけるに受波ビームは旋回方向にずれてしまっている。これに対し、実施例では、図18[1]に示すように、受波ビームは地図上で固定となるので、60°方向及び−60°方向の受波ビームは同じ形で維持されている。
【0119】
したがって、実施例によれば、曳航アレイの全行程で探知が継続され、左旋回時及び右旋回時にも受波ビームは直進時とほぼ同じ状態が維持される。このような状態で運用されると、図17[1]の状態と図18[1]の状態とを繰り返すことになるから、始めから右方向と左方向とを区別して受信できる。したがって、右か左かを判別するために旋回して再度探知する従来の手順は必要なくなり、それぞれの積分も中断することなく継続できるので、探知の機会及び精度ともに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明に係る整相装置及び曳航式ソーナーの第一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。
【図3】図1の整相装置における整相の原理を示す説明図である
【図4】図1の整相装置における受波器の座標検出方法を示す説明図である。
【図5】本発明に係る整相プログラムの第一実施形態によって動作するコンピュータのハードウェアの一例を示すブロック図である。
【図6】図5のコンピュータの機能の一例を示すブロック図である。
【図7】図5のコンピュータの動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る整相装置及び曳航式ソーナーの第二実施形態を示すブロック図である。
【図9】図8の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。
【図10】本発明に係る整相プログラムの第二実施形態によって動作するコンピュータのハードウェアの一例を示すブロック図である。
【図11】図10のコンピュータの機能の一例を示すブロック図である。
【図12】図10のコンピュータの動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る整相装置及び曳航式ソーナーの第三実施形態を示すブロック図である。
【図14】図13の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。
【図15】実施例及び比較例についてのシミュレーション条件を示す平面図である。
【図16】直進時のシミュレーション結果を示す円グラフであり、図16[1]が実施例、図16[2]が比較例である。
【図17】左旋回時のシミュレーション結果を示す円グラフであり、図17[1]が実施例、図17[2]が比較例である。
【図18】右旋回時のシミュレーション結果を示す円グラフであり、図18[1]が実施例、図18[2]が比較例である。
【図19】従来の曳航式ソーナーの一例を示すブロック図である。
【図20】従来の曳航式ソーナーの使用状態を示す平面図である。
【図21】従来の曳航式ソーナーにおける整相の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0121】
10,40,50 曳航式ソーナー
11 曳航船
12,55 受波ビーム
20,41,51 曳航アレイ
211〜21n 受波器
22 ケーブル
30,42,52 信号処理装置
31,43,53 整相装置
32 加算回路
33 表示部
341〜34n コンパス(偏移量センサ)
35 座標算出回路(座標算出部)
36 遅延量算出回路(遅延量算出部)
371〜37n 整相回路(整相部)
421〜42n 送波器
44,54 送波ビーム
521〜52n 送受波器
S1〜Sn 音波
s1〜sn 電気信号
θ1〜θn 方位
(x1,y1)〜(xn,yn) 座標
t1〜tn 遅延量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を受信して電気信号に変換する複数の受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる整相装置において、
前記各受波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、
この偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各受波器の座標を算出する座標算出部と、
この座標算出部で算出された前記各受波器の座標に基づき、前記各受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように遅延量を算出する遅延量算出部と、
この遅延量算出部で算出された遅延量になるように、前記各受波器で変換された前記電気信号の位相を整える整相部と、
を備えたことを特徴とする曳航式ソーナーの整相装置。
【請求項2】
前記偏移量センサは、前記各受波器に設けられたコンパスであり、
前記座標算出部は、前記各コンパスで計測された偏移量である方位の情報と既知である前記各受波器間の長さとに基づき、幾何学的に前記各受波器の座標を算出する、
請求項1記載の曳航式ソーナーの整相装置。
【請求項3】
電気信号を音波に変換して送信する複数の送波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる整相装置において、
前記各送波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、
この偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各送波器の座標を算出する座標算出部と、
この座標算出部で算出された前記各送波器の座標に基づき、前記各送波器が特定の方位へ前記音波を送信するように遅延量を算出する遅延量算出部と、
この遅延量算出部で算出された遅延量になるように、前記各送波器で変換される前記電気信号の位相を整える整相部と、
を備えたことを特徴とする曳航式ソーナーの整相装置。
【請求項4】
前記偏移量センサは、前記各送波器に設けられたコンパスであり、
前記座標算出部は、前記各コンパスで計測された偏移量である方位の情報と既知である前記各送波器間の長さとに基づき、幾何学的に前記各送波器の座標を算出する、
請求項3記載の曳航式ソーナーの整相装置。
【請求項5】
電気信号を音波に変換して送信する動作と音波を受信して電気信号に変換する動作とを切り替え可能な複数の送受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる整相装置において、
前記各送受波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、
この偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各送受波器の座標を算出する座標算出部と、
この座標算出部で算出された前記各送受波器の座標に基づき、前記各送受波器が特定の方位へ前記音波を送信するように、又は前記各送受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように、遅延量を算出する遅延量算出部と、
この遅延量算出部で算出された遅延量になるように、前記各送受波器で前記音波に変換される前記電気信号の位相又は前記各送受波器で前記音波から変換された前記電気信号の位相を整える整相部と、
を備えたことを特徴とする曳航式ソーナーの整相装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の整相装置と、前記曳航アレイと、
を備えたことを特徴とする曳航式ソーナー。
【請求項7】
請求項3又は4記載の整相装置と、前記曳航アレイと、
を備えたことを特徴とする曳航式ソーナー。
【請求項8】
音波を受信して電気信号に変換する複数の受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる整相方法において、
前記各受波器の位置の偏移量を計測し、
この計測された偏移量に基づき前記各受波器の座標を算出し、
この算出された前記各受波器の座標に基づき、前記各受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように遅延量を算出し、
この算出された遅延量になるように、前記各受波器で変換された前記電気信号の位相を整える、
ことを特徴とする曳航式ソーナーの整相方法。
【請求項9】
電気信号を音波に変換して送信する複数の送波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイを備えた曳航式ソーナーに用いられる整相方法において、
前記各送波器の位置の偏移量を計測し、
この計測された偏移量に基づき前記各送波器の座標を算出し、
この算出された前記各送波器の座標に基づき、前記各送波器が特定の方位へ前記音波を送信するように遅延量を算出し、
この算出された遅延量になるように、前記各送波器で変換される前記電気信号の位相を整える、
ことを特徴とする曳航式ソーナーの整相方法。
【請求項10】
音波を受信して電気信号に変換する複数の受波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイと、前記各受波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、コンピュータと、を有する曳航式ソーナーに用いられる整相プログラムであって、
前記偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各受波器の座標を算出する座標算出手段と、
この座標算出手段で算出された前記各受波器の座標に基づき、前記各受波器が特定の方位からの前記音波を受信するように遅延量を算出する遅延量算出手段と、
この遅延量算出手段で算出された遅延量になるように、前記各受波器で変換された前記電気信号の位相を整える整相手段と、
を前記コンピュータに機能させることを特徴とする曳航式ソーナーの整相プログラム。
【請求項11】
電気信号を音波に変換して送信する複数の送波器がケーブルで連結されて成る曳航アレイと、前記各送波器の位置の偏移量を計測する偏移量センサと、コンピュータと、を有する曳航式ソーナーに用いられる整相プログラムであって、
前記の偏移量センサで計測された偏移量に基づき前記各送波器の座標を算出する座標算出手段と、
この座標算出手段で算出された前記各送波器の座標に基づき、前記各送波器が特定の方位へ前記音波を送信するように遅延量を算出する遅延量算出手段と、
この遅延量算出手段で算出された遅延量になるように、前記各送波器で変換される前記電気信号の位相を整える整相手段と、
を前記コンピュータに機能させることを特徴とする曳航式ソーナーの整相プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2008−261727(P2008−261727A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104671(P2007−104671)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】