説明

最新方法で使用するための強化バインダー組成物

強化バインダー組成物は、複合材を製造するために、樹脂トランスファー成形、減圧アシスト・トランスファー成形および樹脂フィルム注入のような最新方法でマトリックス樹脂を注入したプレフォームと一体で有用であり、このような最新方法での組成物の使用は、本発明の基礎を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
樹脂トランスファー成形(レジントランスファーモールディング)、減圧アシストトランスファー成形(バキュームアシステドレジントランスファーモールディング)および樹脂フィルム注入(レジンフィルムインフージョン)のような複合材を形成するための最新方法において、強化バインダー組成物は、マトリックス樹脂が注入されるプレフォームと一体で有用であり、このような最新方法での組成物の使用は本発明の基礎を成す。
【背景技術】
【0002】
様々な硬化剤を有するエポキシ樹脂は、様々な基材とのプリプレグ組立で使う接着剤およびマトリックス樹脂として、幅広く航空宇宙産業において使用されてきた。
【0003】
エポキシ樹脂とベンゾキサジンのブレンドは公知である。例えば、米国特許第4,607,091号(Schreiber)、同5,021,484号(Schreiber)、同5,200,452号(Schreiber)、および同5,445,911号(Schreiber)各公報を参照されたし。これらのブレンドは、電子産業において潜在的に有用であるように思われるが、なぜならこのエポキシ樹脂によってベンゾキサジンの溶融粘度を下げることができ、加工粘度を維持しながらもフィラーの充填量を高めることが可能になるからである。しかしながら、エポキシ樹脂は、しばしばベンゾキサジンが重合する温度を高めるので望ましくない。
【0004】
また、エポキシ樹脂、ベンゾキサジンおよびフェノール樹脂の3元ブレンドも公知である。米国特許第6,207,786号(Ishida)公報、およびS.RimdusitとH.Ishidaの「ベンゾキサジン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂3元系をベースとする新しい種類の電子部品実装の開発」(Development of new class of electronic packaging materials based on ternary system of benzoxazine,epoxy, and phenolic resin),Polymer、41,7941−49(2000)を参照されたし。
【0005】
樹脂トランスファー成形(「RTM」)は、樹脂(通常は、主にエポキシ樹脂をベースとする樹脂システムおよびマレイミドをベースとするシステム)を、低い粘度および圧力下においてポンプで乾燥織物のプレフォームを有する閉鎖モールド金型セットに送る方法である。樹脂をプレフォームに注入して繊維強化複合材物品を製造する。このRTM方法を使い、経費を抑えて形状が複雑な複合材部品を製造することができる。これらの部品は、典型的には、連続繊維強化とともに内側モールド・ラインおよび外側モールド・ライン制御表面を必要とする。
【0006】
繊維強化複合材物品は、RTMのように減圧アシスト樹脂トランスファー成形(「VaRTM」)によって製造することができる。RTMとは対照的に、VaRTMは、硬いモールドの代わりに頭部にバッグを採用し、システムを減圧下に置いて樹脂注入工程を支援する。
【0007】
RTMのように樹脂フィルム注入(「RFI」)は、モールドに配置したプレフォームに樹脂を注入する。しかしながら、ここでは樹脂はフィルムの形態にあり、プレフォームとともにモールド中に配置される。米国特許第5,902,535号公報は、RFI成形体および方法について触れており、本公報は参照して本明細書に明示的に含められる。
【0008】
RTMおよびVaRTM最新方法において使われるマトリックス樹脂は、粘度が低く、完全な湿潤およびプレフォームへの注入を可能にする。
【0009】
RTMおよびRFI方法のためのビスマレイミドをベースとする樹脂は公知であり、これらの例は、米国特許第5,955,566号および同6,313,248号各公報に記載されている。
【0010】
また、2成分エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤成分を使用直前に混合して使用してきた。1成分エポキシ樹脂組成物は、しばしば低い温度に制御し、早まった架橋反応を防いで保存期間を延ばさなければならなかった。そうでないと、このような1成分エポキシ樹脂組成物の粘度はあまりにも急激に上がり、それで作業可能な期間が商業的な観点から不適格になる(または少なくとも好ましくはない)。
【0011】
しばしば、バインダー組成物を使って所定の位置に層板を維持することが通常考えられる。バインダー組成物は、普通、エポキシ樹脂をベースとするものが推定される。代替として、または追加的に、層板を縫い合わせて所定の位置に層板を維持することが推定される。バインダー組成物を使う場合、熱可塑性樹脂はほとんどか全く結合性がないので、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を選択して層板を結合すると考えられる。
【0012】
バインダー組成物に加えて、さらにしばしば、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に添加することによって、熱可塑性樹脂の使用による複合材の強化が考えられる。熱硬化性樹脂は、ほとんどか全く強化性能がないと考えられるので、熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂が使われる。
【0013】
最近の技術状況にもかかわらず、前記最新方法において、特に、改良された性能特性を有する樹脂システムで、プレフォームとともに使うことのできる強化バインダー組成物への要求が存在する。より具体的には、特性またはRTM、VaRTM、RFI、もしくはプリプレグ化のような最新方法での加工性のいずれも妥協することなく、靱性および結合特性を最高にする温度で加工が可能で、強化特性を有するバインダー組成物を提供することが好ましいと考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、a.熱硬化性マトリックス樹脂、およびb.熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が複数の織物層または一方向層の間に配置される、前記複数の織物層または一方向層を含むプレフォーム、を含む組成物に関する。
【0015】
この熱硬化性樹脂は、プレフォームに熱硬化性マトリックス樹脂を注入する温度より高く、熱硬化性樹脂マトリックスの硬化温度よりも低い融点を有する。さらに、この熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
樹脂トランスファー成形方法に関連して、本発明は、以下のステップ、
(a)複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含むプレフォームを含有する、閉鎖モールドの中へ熱硬化性組成物を用意するステップ;
(b)前記熱硬化性組成物で前記プレフォームを湿潤するのに十分な第1の高い温度および圧力に、前記モールドの内部を暴露するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記モールド内で前記熱硬化性組成物を含浸させたプレフォームを、第2の高い温度で硬化するステップを含み、ここで、前記熱硬化性組成物は、(i)ベンゾキサジン成分を含む、方法を提供する。
【0017】
この熱硬化性樹脂は、プレフォームに熱硬化性マトリックス樹脂を注入する温度より高く、熱硬化性樹脂マトリックスを硬化する温度よりも低い融点を有する。この熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する。
【0018】
減圧アシスト樹脂トランスファー成形方法に関連して、本発明は、以下のステップ、
(a)モールドの中へプレフォームを用意するステップ;ここで、前記プレフォームは、複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含み、
(b)前記熱硬化性組成物で前記プレフォームを湿潤するのに十分な時間、第1の高い温度および減圧下に、前記モールドの内部に前記熱硬化性組成物を用意するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記モールド内で前記熱硬化性組成物で湿潤したプレフォームを硬化するのに十分な第2の高い温度、減圧下に、前記組成物で湿潤したプレフォームを含む前記モールドを暴露するステップを含み、ここで、前記熱硬化性組成物は、(i)ベンゾキサジン成分を含む、方法を提供する。
【0019】
この熱硬化性樹脂は、熱硬化性マトリックス樹脂をプレフォームに注入する温度より高く、熱硬化性樹脂マトリックスを硬化する温度よりも低い融点を有する。この熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する。
【0020】
樹脂フィルム注入方法に関連して、本発明は、以下のステップ、
(a)熱硬化性組成物をフィルムの形態で含有する閉鎖モールドの中へプレフォームを用意するステップ;ここで、前記プレフォームは、複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含み、
(b)前記プレフォームに前記熱硬化性組成物を注入するのに十分な時間、第1の高い温度および、任意に、圧力に前記モールドの内部を暴露し、一方、前記モールドの外部を高い圧力に暴露するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形生成物を形成するために、前記熱硬化性組成物を注入したプレフォームを、第2の高い温度で硬化するステップ;を含む方法を提供する。
【0021】
これらの各方法において、熱硬化性組成物は、ベンゾキサジン成分を含む。
【0022】
さらに、各方法において、熱硬化性樹脂は、熱硬化性マトリックス樹脂をプレフォームに注入する温度より高く、熱硬化性樹脂マトリックスを硬化する温度よりも低い融点を有する。この熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する。
【0023】
本発明は、下記の発明を実施するための形態を読むことによって、より十分に理解されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記のように、本発明は、a.熱硬化性マトリックス樹脂、およびb.熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が複数の織物層または一方向層の間に配置される、前記複数の織物層または一方向層を含むプレフォーム、を含む組成物に関する。
【0025】
本発明の組成物は、RTM、VaRTM、RFIまたはプリプレグ化のような最新方法で形成することができる。
【0026】
樹脂トランスファー成形に関連して、本発明は、以下のステップ、
(a)複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含むプレフォームを含有する、閉鎖モールドの中へ熱硬化性組成物を用意するステップ;
(b)前記熱硬化性組成物で前記プレフォームを湿潤するのに十分な第1の高い温度および圧力に、前記モールドの内部を暴露するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記モールド内で前記熱硬化性組成物を含浸させたプレフォームを第2の高い温度で硬化するステップ、を含む方法を提供する。
【0027】
減圧アシスト樹脂トランスファー成形方法に関連して、本発明は、以下のステップ、
(a)モールドの中へプレフォームを用意するステップ;ここで、前記プレフォームは、複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含み、
(b)前記熱硬化性組成物で前記プレフォームを湿潤するのに十分な時間、第1の高い温度および減圧下に、前記モールドの内部に前記熱硬化性組成物を用意するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記モールド内で前記熱硬化性組成物で湿潤したプレフォームを硬化するのに十分な第2の高い温度、減圧下に、前記組成物で湿潤したプレフォームを含む前記モールドを暴露するステップ、を含む方法を提供する。
【0028】
樹脂フィルム注入方法に関連して、本発明は、以下のステップ、
(a)熱硬化性組成物をフィルムの形態で含有する閉鎖モールドの中へプレフォームを用意するステップ;ここで、前記プレフォームは、複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含み、
(b)前記プレフォームに前記熱硬化性組成物を注入するのに十分な時間、第1の高い温度および、任意に、圧力に前記モールドの内部を暴露し、一方、前記モールドの外部を高い圧力に暴露するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記熱硬化性組成物を注入したプレフォームを、第2の高い温度で硬化するステップ、を含む方法を提供する。
【0029】
これらの各方法において、熱硬化性組成物は、(i)ベンゾキサジン成分を含む熱硬化性マトリックス樹脂である(ここでは、熱硬化性組成物および熱硬化性マトリックス樹脂を互換的に使う)。
【0030】
さらに、各方法において、熱硬化性樹脂は、熱硬化性マトリックス樹脂をプレフォームに注入する温度より高く、熱硬化性樹脂マトリックスを硬化する温度よりも低い融点を有する。この熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する。
【0031】
当然ながら、本発明は、最新方法で製造されるRTM、VaRTMおよびRFI製品のような製品を提供する。
【0032】
複雑な3次元部品の幾何学的形状は、本明細書で記載された最新方法で一体ユニットとして成形することができる。例えば、RFIは、単一工程サイクルで部品の全幾何学的形状を規定するので、大きな複合材部品を成形するのには特に有用であり、これにより、
あらゆるその後の組立または接合工程を除去する。1つとして航空宇宙産業では、補強部材および付属部品とともにロフト表面(lofted surface)に配置され、部品の長さが最高、100フィート、幅が最高、30フィートになることはまれではない。このような大きな部品を形成するために前記最新方法を使うことで、通常、機械的に固定または結合された構造に関係する組立費および工具費は減少すると考えられる。さらに、典型的には、副組立品から構成される非一体型部品に関係する、工学的には許容度が小さい、シムを用いた仮止めが最小の大型航空機構造の組立が、前記最新方法を使って可能になることが実現すると考えられる。
【0033】
RFI方法では、通常、樹脂フィルム成形道具を使い、この道具は外部成形道具を含み、この外部成形道具は支持体構造によって支持された対面シートを含む。ベンゾキサジンから製造される樹脂フィルムを対面シート上に配置し、そしてプレフォームを樹脂フィルム上に配置する。このプレフォームは、所望の物品形状に設計して複合材料、例えば、炭素、アラミド、セラミックおよび類似物から作られる繊維のような複合材料から製造する。プレフォームは、米国特許第5,281,388号公報に記載されているようにプレフォームスキンを含み、この開示は参照して本明細書に明示的に含まれる。
【0034】
米国特許第5,369,192号、同5,567,499号、同5,677,048号、同5,851,336号、および同6,156,146号各公報に開示されているように、RTMシステムは公知であり、これらの開示は参照により本明細書に含まれる。また、米国特許第5,315,462号、同5,480,603号および同5,439,635号各公報に開示されているように、VaRTMシステムも公知であり、これらの開示は明示的に参照により本明細書に含まれる。
【0035】
RTMシステムは、樹脂を含浸させたプレフォームから複合材物品を製造する。ここで、プレフォームを、このプレフォーム上に配置された強化バインダー組成物とともに空洞モールド中に配置する。ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物のような熱硬化性マトリックス樹脂は、次いで、モールドに注入してプレフォームの繊維を湿潤してプレフォームに注入する。RTM方法では、熱硬化性マトリックス樹脂は、圧力下で空洞モールドに導入し、高い温度で硬化する。得られた固体物品は、後硬化工程に従って、(これは必要ないが)最終複合材物品を製造することができる。
【0036】
従って、RTM方法では、プレフォームをモールド内に配置し、次いで、モールドを閉鎖し、熱硬化性マトリックス樹脂を導入してプレフォームに注入することが可能になる。この導入は、プレフォームの湿潤を可能にするのに十分な時間、穏やかに加温された温度条件で生じるようにして、ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物の特有の流動性を改良することができる。
【0037】
次いで、ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物を硬化するのに十分な温度[通常、121℃(250°F)から177℃(350°F)の範囲]で、十分な時間、モールド内部を加熱、維持する。この時間は、通常、90から180分の範囲であるが、当然ながら熱硬化性組成物の精密な構成要素によって決まる。硬化が完結した後、モールドの温度を下げ、この方法で製造したRTM成形製品を取り出すことができる。
【0038】
VaRTM方法では、強化バインダー組成物がその上に配置されたプレフォームを用意した後、分散媒体をこの上に配置することができる。この分散媒体は、モールド内のエンベロープの中にあるプレフォーム表面上に配置することができる。この分散媒体は、柔軟なシートまたはライナーであることが多い。減圧によって、分散媒体をプレフォームに向かって押し潰し、ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物をモールドへ導入し、プレフォームを湿潤し、プレフォームに注入するのを助ける。
【0039】
ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物をモールドへ注入し、プレフォームを湿潤してプレフォームに注入することができる。この注入は、また、プレフォームを湿潤してプレフォームに注入することができるのに十分な時間、緩やかな加温条件下で、ここでは、減圧を介しておよび減圧下で起こすことができる。
【0040】
ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物を、減圧下でエンベロープ中に導入してプレフォームを湿潤してプレフォームに注入する。真空ラインからエンベロープ内部の減圧を行なってプレフォームへ向かって柔軟なシートを押し潰す。減圧は、ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物をプレフォームを介して引き寄せ、最終物品中に気泡または空隙が形成するのを避けることに役立つ。ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物は、減圧下に置く間に硬化する。
【0041】
次いで、モールドを、通常、121℃(250°F)から177℃(350°F)の範囲の高い温度に暴露し、一方、モールド内の熱硬化性組成物で湿潤したプレフォームを硬化するのに十分な時間、減圧下に保つ。この時間は、また、通常90から180分の範囲である。また、この減圧は、硬化工程で生成するあらゆる煙霧を取り除く。硬化が完結した後、モールド温度を下げることができ、この方法で製造したVaRTM製品を取り出す。
【0042】
これらの最新方法においては、ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物は、樹脂注入温度で10から5000cpsの範囲の粘度を有する(RTMまたはVaRTMにおいては、10から500cps、RFIにおいては、100から5000cps)。さらに、加工条件で熱硬化性組成物の粘度が100%増加する間の時間は、1から10時間の範囲である。ベンゾキサジン含有熱硬化性組成物(または熱硬化性マトリックス樹脂)の注入温度は、通常、約90℃から約110℃の範囲にある。
【0043】
VaRTM方法によって得られた固体物品は、後硬化工程に従って最終複合材物品を製造することができる。
【0044】
従って、RTM/VaRTM法いずれにおいても第1ステップは、所望の物品の形状に繊維プレフォームを製造することである。一般に、プレフォームは、製造する複合材物品に所望の強化特性を与える繊維で作られた織物層または層板を多く含んでいる。強化バインダー組成物が上に配置された繊維プレフォームが製造された時点で、このプレフォームをモールド内に置く。
【0045】
熱硬化性組成物または熱硬化性マトリックス樹脂のためのベンゾキサジンは、下記の構造:
【0046】
【化1】

[式中、oは、1−4であり、Xは、直接結合(oが2である場合)、アルキル(oが1である場合)、アルキレン(oが2−4である場合)、カルボニル(oが2である場合)、チオール(oが1である場合)、チオエーテル(oが2である場合)、スルホキシド(oが2である場合)、およびスルホン(oが2の場合)であり、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルのようなアルキルである]、または
【0047】
【化2】

[式中、pは、2であり、Yは、ビフェニル(pが2である場合)、ジフェニルメタン(pが2である場合)、ジフェニルイソプロパン(pが2である場合)、ジフェニルスルフィド(pが2である場合)、ジフェニルスルホキシド(pが2である場合)、ジフェニルスルホン(pが2である場合)、およびジフェニルケトン(pが2である場合)から選択され、Rは、水素、ハロゲン、アルキルおよびアルケニルから選択される]を包含することができる。
【0048】
より具体的な表示では、ベンゾキサジン成分は、
【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
【化6】

の1つ以上によって包含され、上式中、Xは、直接結合、CH、C(CH、C=O、S、S=OおよびO=S=Oから選択され、R、R、RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、水素、アルキル、アルケニルおよびアリールから選択されるものである。
【0053】
より特定の表示では、ベンゾキサジン成分は、
【0054】
【化7】

によって包含され、上式中、Xは、直接結合、CH、C(CH、C=O、S、S=OおよびO=S=Oから選択され、RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、メチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択されるものである。
【0055】
さらにより具体的な表示では、ベンゾキサジン成分は、
【0056】
【化8】

によって包含され、上式中、RおよびRは、同じであるかまたは異なっており、メチル、エチル、プロピルおよびブチルから選択されるが、特に好ましい態様では、RおよびRは、各々メチルである。
【0057】
本発明で有用なベンゾキサジンの具体例としては、
【0058】
【化9】

【0059】
【化10】

【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【0065】
【化16】

の1つ以上が挙げられる。
【0066】
ベンゾキサジン成分は、多官能ベンゾキサジンおよび単官能ベンゾキサジンの組合せを含む。単官能ベンゾキサジンの例としては、下記の構造:
【0067】
【化17】

を包含し、上式中、Rは、メチル、エチル、プロピルおよびブチルのようなアルキルである。
【0068】
本発明の強化バインダー組成物の1つの側面では、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であってもよい。適したエポキシ樹脂には、分子当たり少なくとも約2つの1,2−エポキシ基を有し、熱硬化性マトリックス樹脂の注入温度よりも高い融点を有する任意のポリエポキシドが含まれる。従って、このポリエポキシドは、飽和、不飽和、環式または非環式、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリエポキシド化合物であってもよい。適したポリエポキシドの例としては、ポリグリシジルエーテルが挙げられ、これらはアルカリの存在下、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって製造される。適したポリフェノールとしては、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールS、ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、および1,5−ヒドロキシナフタレンが挙げられる。ポリグリシジルエーテルを基準とする他の適したポリフェノールは、ノボラック樹脂型である、フェノールとホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとの公知の縮合生成物である。
【0069】
本発明で使用するのに、原則上適したその他のポリエポキシドは、ポリアルコールまたはジアミンのポリグリシジルエーテルである。このようなポリグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたはトリメチロールプロパンのようなポリアルコールから誘導されるものである。
【0070】
さらに、他のポリエポキシドとしては、例えば、グリシドールまたはエピクロロヒドリンとシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸または二量体脂肪酸のような脂肪族または芳香族ポリカルボン酸との反応生成物である、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルが挙げられる。
【0071】
また、さらに他のエポキシドは、オレフィン性の不飽和脂環式化合物のエポキシ化生成物または天然油および脂肪から誘導されたものである。
【0072】
1つの市販のエポキシ樹脂であるEPON2005は、融点が120℃であり、従って、熱硬化性マトリックス樹脂に対する注入温度が90℃から110℃の範囲にある場合、このエポキシ樹脂は使用するのに適している。しかしながら、他の市販のエポキシ樹脂のEPON1009Fは融点が約80℃であるので、この注入温度では使用するのに適していないと考えられる。
【0073】
また、本発明の熱硬化性樹脂は、熱硬化性マトリックス樹脂に関連して本明細書で記載されているように、ベンゾキサジンであってもよい。
【0074】
本発明の熱可塑性樹脂は、Tgが約200℃であるポリエーテルスルホン(「PES」)であってもよい。PESは、例えば、ICI社および住友化学社から市販品が入手できる。他の熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンオキシドであり、本発明において役立つことができる。本発明の強化バインダー組成物は、エポキシ樹脂とポリエーテルスルホンとの組合せを包含するものが好ましい。
【0075】
強化バインダー組成物は、強化バインダー組成物中の熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せが重量比で10:1から1:20、例えば、1:5から1:10であるものを包含する。前のパラグラフに記載されているように、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂としてポリエーテルスルホンが重量比で1:10であるものが好ましい。
【0076】
強化バインダー組成物の熱可塑性樹脂の標準粒径は、10μmから100μmの範囲でなければならない。強化バインダー組成物の熱硬化性樹脂の標準粒径は、1μmから100μmの範囲でなければならない。
【0077】
強化バインダー組成物は、粉末、液体分散体または懸濁液、繊維、フリースまたは配向マットおよびフィルムから選択される形態をとってもよい。
【0078】
強化バインダー組成物の熱可塑性樹脂は、反応性基で官能基化されていることが好ましい。例えば、強化バインダー組成物の官能基化された熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂の融点より高い温度および熱硬化性マトリックス樹脂の硬化温度と同じかまたはこれより低い温度で、この熱硬化性樹脂およびこの熱硬化性マトリックス樹脂またはいずれか一つとの反応性がある。官能基化PESは、反応温度が150℃近辺であってもよい。
【0079】
下記の実施例は、さらに本発明を例示するのに役立つと考えられる。
【実施例】
【0080】
本実施例では、RTM樹脂として使用するのに適した配合物を、プレフォームおよび本発明の強化バインダー組成物とともに例示する。
<実施例1>
熱硬化性マトリックス樹脂
【0081】
2つの熱硬化性マトリックス樹脂を下表1に例示し、MR1およびMR2と呼ぶ。
【0082】
【表1】

<実施例2>
熱硬化性マトリックス樹脂の混合方法
【0083】
ベンゾキサジンを温度71℃(160°F)から82℃(180°F)で加熱して、流体状態にした。温度180°Fでこのベンゾキサジンにエポキシを混ぜて、均一になるまで混合した。温度180°Fで混合物を減圧にして、気泡を観察しなくなるまで30から60分間、減圧を続けた。脱ガスした混合物を室温、密閉缶中で保存した。
<実施例3>
強化バインダー組成物
【0084】
2つの強化バインダー組成物を下表2に例示し、TB1およびTB2と呼ぶ。
【0085】
【表2】

【0086】
強化バインダー組成物の重量は、全繊維重量の8%である。この強化バインダー組成物を、エポキシとPESとを一緒に混合することによって製造し、この後、織物の表面に均一に塗布した。温度121℃(250°F)で30分間、この織物[AU072−1,HTS5631,12K,290gsm(ECC Fabrics社から市販)]を加熱することによってプレフォームを製造した。
<実施例4>
RTM方法
【0087】
注入温度は110℃(230°F)、硬化計画は185℃(365°F)で2時間であった。
<実施例5>
結果
【0088】
MR2およびTB1に関して、RTM方法の結果を下表3に示している。
【0089】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a.熱硬化性マトリックス樹脂、および
b.熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が、複数の織物層または一方向層の間に配置される、前記複数の織物層または一方向層を含むプレフォーム
を含み、ここで前記熱硬化性樹脂は、
i.前記熱硬化性マトリックス樹脂を前記プレフォームに注入する温度より高く、およびii.前記熱硬化性樹脂マトリックスの硬化温度よりも低い融点を有し、
ならびに前記熱可塑性樹脂は、前記熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する、組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性マトリックス樹脂がベンゾキサジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記強化バインダー組成物がエポキシ樹脂とポリエーテルスルホンとの組合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記強化バインダー組成物の前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記強化バインダー組成物の前記熱可塑性樹脂がポリエーテルスルホンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記強化バインダー組成物の前記熱硬化性樹脂と前記強化バインダー組成物の前記熱可塑性樹脂との組合せが、重量比で10:1から1:20である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂と前記熱可塑性樹脂が、重量比で1:5から1:10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂とポリエーテルスルホンが、重量比で1:10である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記強化バインダー組成物の前記熱可塑性樹脂が、10μmから100μmの範囲の標準粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記強化バインダー組成物の前記熱硬化性樹脂が、1μmから100μmの範囲の標準粒径を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記強化バインダー組成物が、粉末、液体分散体または懸濁液、繊維、フリースまたは配向マットおよびフィルムからなる群より選択される形態をとる、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記強化バインダー組成物の前記熱可塑性樹脂が、反応性基で官能基化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記強化バインダー組成物の官能基化された熱可塑性樹脂は、前記熱硬化性樹脂の融点より高い温度および前記熱硬化性マトリックス樹脂の硬化温度と同じかまたはこれより低い温度で、前記熱硬化性樹脂および前記熱硬化性マトリックス樹脂またはいずれか一つとの反応性がある、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
樹脂トランスファー成形方法であって、以下のステップ、
(a)複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含むプレフォームを含有する、閉鎖モールドの中へ熱硬化性組成物を用意するステップ;
ここで、前記熱硬化性樹脂は、
i.前記熱硬化性マトリックス樹脂を前記プレフォームに注入する温度より高く、および
ii.前記熱硬化性樹脂マトリックスの硬化温度よりも低い融点を有し、
ならびに前記熱可塑性樹脂は、前記熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有し、
(b)前記熱硬化性組成物で前記プレフォームを湿潤するのに十分な第1の高い温度および圧力に、前記モールドの内部を暴露するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記モールド内で前記熱硬化性組成物を含浸させたプレフォームを、第2の高い温度で硬化するステップを含み、ここで、前記熱硬化性組成物は、(i)ベンゾキサジン成分を含む、成形方法。
【請求項15】
減圧アシスト樹脂トランスファー成形方法であって、以下のステップ、
(a)モールドの中へプレフォームを用意するステップ;
ここで、前記プレフォームは、複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含み、前記熱硬化性樹脂は、
i.前記熱硬化性マトリックス樹脂を前記プレフォームに注入する温度より高く、および
ii.前記熱硬化性樹脂マトリックスの硬化温度よりも低い融点を有し、
ならびに前記熱可塑性樹脂は、前記熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有し、
(b)熱硬化性組成物で前記プレフォームを湿潤するのに十分な時間、第1の高い温度および減圧下に、前記モールドの内部に前記熱硬化性組成物を用意するステップ;および
(c)樹脂トランスファー成形製品を形成するために、前記モールド内で前記熱硬化性組成物で湿潤したプレフォームを硬化するのに十分な第2の高い温度、減圧に、前記組成物で濡らしたプレフォームを含む前記モールドを暴露するステップを含み、ここで、前記熱硬化性組成物は、(i)ベンゾキサジン成分を含む、成形方法。
【請求項16】
前記プレフォームを用意した後、分散媒体が前記プレフォーム上に提供される、請求項15に記載の成形方法。
【請求項17】
減圧アシスト樹脂トランスファー成形プレフォームであって、
(a)複数の織物層または一方向層と、
(b)強化バインダー組成物とを含み、ここで、前記複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む前記強化バインダー組成物が配置され、前記熱硬化性樹脂は、
i.熱硬化性マトリックス樹脂をプレフォームに注入する温度より高く、および
ii.熱硬化性樹脂マトリックスの硬化温度よりも低い融点を有し、
ならびに前記熱可塑性樹脂は、前記熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有する、プレフォーム。
【請求項18】
樹脂フィルム注入方法であって、以下のステップ、
(a)熱硬化性組成物をフィルムの形態で含有する閉鎖モールドの中へプレフォームを用意するステップ;
ここで、前記プレフォームは、複数の織物層または一方向層の間に、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との組合せを含む強化バインダー組成物が配置される、前記複数の織物層または一方向層を含み、前記熱硬化性樹脂は、
i.前記熱硬化性マトリックス樹脂を前記プレフォームに注入する温度より高く、およびii.前記熱硬化性樹脂マトリックスの硬化温度よりも低い融点を有し、
ならびに前記熱可塑性樹脂は、前記熱硬化性樹脂の融点と同じかまたはこれより高い温度のTgを有し、
(b)前記プレフォームに前記熱硬化性組成物を注入するのに十分な時間、第1の高い温度および、任意に、減圧に前記モールドの内部を暴露し、一方、前記モールドの外部を高い圧力に暴露するステップ;および
(c)樹脂フィルム注入製品を形成するために、前記熱硬化性組成物を注入したプレフォームを、前記モールド内で第2の高い温度で硬化するステップを含み、ここで、前記熱硬化性組成物は(i)ベンゾキサジン成分を含む、注入方法。

【公表番号】特表2010−510110(P2010−510110A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538397(P2009−538397)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/024193
【国際公開番号】WO2008/063611
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】