説明

最適化ポリマー系を有する導電性有機被覆剤

有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解又は分散された有機樹脂成分を含み、少なくとも下記の有機樹脂成分:a)ビスフェノール−エピクロロヒドリン重縮合物を主成分とするヒドロキシル基含有ポリエーテルとして存在するエポキシ樹脂、b)ブロック化脂肪族ポリイソシアネート、c)非ブロック化脂肪族ポリイソシアネート、d)ヒドロキシル基含有ポリエステル及びヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の反応成分、を含む金属表面用被覆剤。この被覆剤は、また、少なくとも1種の導電性顔料を含んでいてもよい。本発明はさらに、上記被覆剤を用いて金属板を被覆する方法、それぞれ被覆された金属板、及びこれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性かつ溶接可能な、金属表面用被覆剤及び、金属表面を導電性有機被覆層で被覆する方法とに関する。
【0002】
本発明の背景において、被覆層が、硬化後に自動車産業における接合技術の通常の条件下において好ましくはスポット溶接法で溶接され得る時、このコーティングは導電性であると理解される。さらにこの導電性は、電着塗装の通常の析出条件下で、この被覆の完全な析出を可能にするのに充分なものでなければならない。
【0003】
金属加工業、特に自動車組立(製造)業においては、製品の金属部分は腐食に対して保護されなければならない。従来の先行技術では、まず金属板は圧延工場において防錆油により被覆され、場合により成形や打ち抜きの前に引抜き用コンパウンドで被覆される。車両の組み立て(製造)では、適切に成形された金属板部材が車両本体又は本体部品用に打ち抜かれ、深絞り工程では引抜き用コンパウンドもしくは油を使用して成形され、次にこれらは、通常、溶接及び/又はフランジ成形(flanging)及び/又は接合により組み立てられ、最後にコストのかかる方法で洗浄される。その後にリン酸処理及び/又はクロメート処理のような防食表面前処理が続き、ここで第一の被覆層が電着塗装により構成部材に塗布される。一般に、この最初の電着工程(特に車体の場合)後に、さらにいくつかの塗料層が塗布される。
【0004】
自動車製品及び家電製品組み立て部門のような金属加工業では、工程を単純化するために、化学的防食処理のコストを低下させる必要がある。この必要性は、すでに防食層が具備されている金属板又は金属ストリップの形状の素材を提供することにより達成され得る。
【0005】
従って、充分確立された保持方法で、被覆された(薄くめっきされた)シートを成形し、溶接し、次に電着工程で塗装することを含む、より簡単な製造法を見つける必要がある。すなわち、コイル被覆法と呼ばれる方法によるリン酸処理及び/又はクロメート処理の後に、多かれ少なかれ導電性を有する有機被覆層を形成する方法は多数ある。原則として、これらの有機被覆層は、自動車産業で使用される通常の、溶接法(例えば、電気スポット溶接)を阻害しないように、充分に高い導電性を有するものから形成されなければならない。さらにこれらの被覆層は、従来の電着塗料で上塗りできるものでなければならない。
【0006】
最近、特に自動車産業において、通常の鋼板以外に、種々の方法で亜鉛メッキ及び/又は亜鉛合金メッキされた鋼板の使用も増加している。
【0007】
溶接可能でかついわゆるコイルコーティング法により圧延工場において直接塗布される有機コーティングをもって鋼板を被覆することが、主に知られている。
【0008】
すなわち、ドイツ特許DE−C−3412234は、電解により薄層亜鉛メッキされ、リン酸処理又はクロメート処理された絞り用薄鋼板用の、導電性で溶接可能な防食プライマー(下塗剤)を記載している。この防食下塗は、60%を超える亜鉛、アルミニウム、黒鉛、及び/又は二硫化モリブデン、また他の防錆顔料、及び33乃至35%の有機結合剤、約2%の分散補助剤又は触媒からなるものである。ポリエステル樹脂及び/又はエポキシ樹脂及びこれらの誘導体は、有機結合剤として提案されている。前記有機結合剤として具体的に言及される例は、エポキシド/フェニル前縮合物、エポキシエステル、及びテレフタル酸に基づく線状のオイルフリーの混合ポリエステルである。
【0009】
ヨーロッパ特許出願EP−A−573015は、有機被覆層を有する複合鋼板を開示しており、この鋼シートはその片面又は両面上において、亜鉛又は、亜鉛合金によりめっきされた表面を有し、それをクロメート皮膜と有機コーティングが被覆しており、その被覆の厚さは0.1乃至5μmである。有機被覆層は、有機溶媒、分子量が500乃至10000のエポキシ樹脂、芳香族ポリアミン、及び促進剤としてフェノール又はクレゾール化合物からなるプライマー組成物から形成される。さらにプライマー組成物は、ポリイソシアネートとコロイダルシリカとを含む。
【0010】
同様にドイツ特許出願DE−A−3640662は、亜鉛めっきされた、もしくは亜鉛合金めっきされた鋼板、この鋼板の表面上に形成されたクロメート皮膜、及びクロメート皮膜上に形成された樹脂組成物の層を含む表面処理された鋼板を記載している。この樹脂組成物は、エポキシ樹脂とアミンとを反応させて調製された塩基性樹脂と、ポリイソシアネート化合物とからなるものである。
【0011】
WO99/24515は、金属表面を被覆するための導電性かつ溶接可能な防食組成物を開示してあり、この組成物は、
a)これは、10乃至40重量%の有機結合剤、
この有機結合剤は、
aa)少なくとも1種のエポキシ樹脂、
ab)グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、環状3級アミン、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の硬化剤、及び
ac)少なくとも1種のブロック化ポリウレタン樹脂、
を含む、
b)ケイ酸塩を主成分とする0乃至15重量%の防錆顔料、
c)40乃至70重量%の粉末化された亜鉛、アルミニウム、黒鉛及び/又は硫化モリブデン、カーボンブラック、及びリン化鉄の少なくとも1種、
d)0乃至30重量%の溶媒、
を含んでなるものである。
【0012】
WO01/85860は、金属表面を被覆するための、導電性かつ溶接可能な防食組成物に係るものであって、これは、全組成物質量を基準として、
下記の成分:
a)これは、下記成分を含む:5乃至40重量%の有機結合剤、
aa)少なくとも1種のエポキシ樹脂、
ab)シアノグアニジン、ベンゾグアナミン、及び可塑化された尿素樹脂から選択された少なくとも1種の硬化剤、
ac)ポリオキシアルキレントリアミン及びエポキシ樹脂−アミン付加物から選択された少なくとも1種のアミン付加物、
b)0乃至15重量%の防錆顔料、
c)粉末化された亜鉛、アルミニウム、黒鉛、硫化モリブデン、カーボンブラック、及びリン化鉄から選択される40乃至70重量%の導電性顔料、
d)0乃至45重量%の溶媒、
ならびに、必要な場合は、50質量%以下の追加の活性剤もしくは補助剤を含むものであって、上記成分の量を合計すると100重量%になるようにする、
を含んでなるものである。
【0013】
多くの先行技術にもかかわらず、既知の溶接可能な防食被覆層をさらに改良する必要がある。さらに溶接可能被覆層は、可能な場合は、潤滑剤無しで被覆されたシートが成形できるような良好な滑り特性を有していなければならない。このような被覆層は、まず成形油を節約でき、次に、さらなる上塗り前の必要な洗浄工程を単純化することができることを意味する。これは、全生産工程中の材料消費を減少させることを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記利点を実現する被覆剤ならびに被覆方法を提供することである。
【0015】
従って第1の様相(aspect)において、本発明は、有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解又は分散された有機樹脂成分を含む、金属表面を被覆するための被覆剤であって、少なくとも下記の有機樹脂成分a)乃至d):
a)ビスフェノール−エピクロロヒドリン重縮合産物を主成分とする、ヒドロキシル基含有ポリエーテルとして存在するエポキシ樹脂、
b)ブロック化脂肪族ポリイソシアネート、
c)非ブロック化脂肪族ポリイソシアネート、
d)ヒドロキシル基含有ポリエステル及びヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種の反応成分、
を含んでなることを特徴とする該被覆剤に関する。
【0016】
前記成分a)は、エピクロロヒドリンとビスフェノールとの完全に反応した重縮合物に関する。この成分a)は本質的に、反応性基として上記以上のエポキシ基を有さない。次に前記ポリマーは、ヒドロキシル基含有ポリエーテルの形で存在し、これは例えばヒドロキシル基とポリイソシアネートとの架橋反応を受けることができる。
【0017】
このポリマーのビスフェノール成分は、例えばビスフェノールAとビスフェノールFから選択することができる。平均分子量(製造業者のデータ、例えばゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される)は、好ましくは20000乃至60000の範囲、特に30000乃至50000の範囲である。OH数は好ましくは170乃至210の範囲、特に180乃至200の範囲である。特に好適なポリマーは、エーテル樹脂を主成分とし、5乃至7重量%の範囲のヒドロキシル含有量を有する。
【0018】
脂肪族ポリイソシアネートb)とc)は、HDI、特にHDI−トリマーを主成分とする。ブロック化脂肪族ポリイソシアネートb)では、通常のポリイソシアネートブロッキング剤をブロッキング剤として使用することができる。その例は記のとおりである:ブタノンオキシム、ジメチルピラゾール、マロン酸エステル、ジイソプロピルアミン/マロン酸エステル、ジイソプロピル/トリアゾール、ならびにε−カプロラクタム。好ましくはマロン酸エステルとジイソプロピルアミンとの組合せがブロッキング剤として使用される。
【0019】
成分b)のブロック化NCO基の含量は、好ましくは8乃至10質量%の範囲内、特に8.5乃至9.5質量%の範囲内である。その当量は、好ましくは350乃至600g/molの範囲内、特に450乃至500g/molの範囲内である。
【0020】
非ブロック化脂肪族ポリイソシアネートc)は、当量が200乃至250g/molの範囲であり、NCO含量は15乃至23質量%の範囲である。例えば当量が200乃至230g/molの範囲、特に210乃至220g/molの範囲を有し、NCO含量が18乃至22質量%、好ましくは19乃至21質量%の範囲を有する脂肪族ポリイソシアネートが選択される。他の適当な脂肪族ポリイソシアネートは、例えば当量が220乃至250g/molの範囲、特に230乃至240g/molの範囲であり、及びNCO含量が15乃至20重量%の範囲、好ましくは16.5乃至19重量%の範囲を有する。これらの上記脂肪族ポリイソシアネートのそれぞれは、成分c)を代表し得るものである。しかしこれら両ポリイソシアネートの混合物が、成分c)として提供されてもよい。上記のポリイソシアネートの両方の混合物が使用される場合、成分c)中の第2のポリイソシアネートに対する第1のポリイソシアネートの比率は、好ましくは1:1乃至1:3の範囲である。
【0021】
成分d)は、ヒドロキシル基含有ポリエステルとヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートから選択される。例えば、酸価が3乃至12の範囲、特に4乃至9mgKOH/gの範囲のヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートを使用することができる。ヒドロキシル基含量は、好ましくは1乃至5の範囲、特に2乃至4重量%の範囲である。当量は、好ましくは500乃至700の範囲内、特に550乃至600g/molの範囲内である。
【0022】
ヒドロキシル基含有ポリエステルが成分d)として使用される場合、200乃至300の範囲、特に240乃至280の範囲の当量を有する分岐ポリエステルを選択することができる。さらに例えば当量が300乃至500の範囲、特に350乃至450の範囲のわずかに分岐したポリエステルが、適している。これらの異なるタイプのポリエステルはそれぞれ、それ自体が使用されるか、又は成分d)の混合物として使用することができる。当然、ヒドロキシル基含有ポリエステルとヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートの混合物もまた、成分d)を形成することができる。
【0023】
従って本発明の被覆剤は、ブロック化脂肪族ポリイソシアネートb)ならびに非ブロック化脂肪族ポリイソシアネートc)の両方を含む。ヒドロキシル基含有成分a)とd)は、これらの両方のタイプのポリイソシアネートの反応成分候補として利用できる。硬化すると、成分a)とd)のそれぞれと成分b)とc)のそれぞれの可能な反応により、ポリウレタンの複合ポリマーネットワークが得られる。さらに、ヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートが成分d)として使用される場合、これらの成分の2重結合によりさらなる架橋が生成することがある。硬化の際に、ポリ(メタ)アクリレートの二重結合が必ずしも架橋するとは限らないとき、同様に塗料が重合可能2重結合を含有する成分を含む場合、特に表面に残存している二重結合が、次に、析出した塗料への結合を改良する結果となり得る。このことを考慮すると、成分d)は、少なくとも部分的にヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートからなることが好ましい。
【0024】
本発明の被覆剤を架橋すると、まず非ブロック化脂肪族ポリイソシアネートc)が、成分a)とd)の片方又は両方と反応する。成分d)のヒドロキシル基が成分a)のヒドロキシル基より反応性が大きい限り、硬化すると、まず成分c)が成分d)と優先的に反応する。
【0025】
これに対してブロック化脂肪族ポリイソシアネートb)は次に、非ブロック化温度に達すると、成分a)とd)の片方又は両方とのみ反応する。こうして、より低反応性のOH基を有する反応パートナーa)とd)のみが残り、ポリウレタン形成に利用できる。形成中のポリウレタンネットワークについて、これは例えば、成分a)のOH基が成分d)のものより反応性が大きい場合、一方では成分c)とd)の反応から、他方では成分a)とb)から、2つのポリウレタンネットワークが形成される。
【0026】
本発明の被覆剤は好ましくは、一方では成分a)とb)を、他方では成分c)とd)を下記の質量比で含む:
a):b)=1:0.8乃至1:1.3
c):d)=1:1.4乃至1:2.3
【0027】
一方では成分a)とd)とが、他方ではb)とc)とが、好ましくは下記の相対的質量比で含まれる:
a):d)=1:2乃至1:6(好ましくは1:3乃至1:5)
b):c)=1:0.5乃至1:5(好ましくは1:1乃至1:3)
【0028】
4つの上記成分a)乃至d)の好適な絶対量範囲をさらに下記に示すが、これらは必要により存在する導電性顔料の密度に依存する。本発明の被覆剤は好ましくは、成分a)乃至d)以外に導電性顔料又は導電性顔料の混合物を含む。この顔料は比較的低密度(例えばカーボンブラック及び黒鉛)か、又は比較的高密度(例えば金属の鉄)である。本発明の物質中の導電性顔料の絶対含有量は、顔料の密度に依存する。それは、導電性顔料の作用は、硬化された被覆層中の導電性顔料の質量含有率よりも、容量含有率により大きく依存するからである。
【0029】
一般にこれは、本発明の被覆剤が、その合計質量を基準にして、(0.8乃至8)ρ質量%の導電性顔料を含むことを意味するここで、ρは導電性顔料の密度、又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。本発明の被覆剤は好ましくは、その合計質量を基準として、(2乃至6)ρ質量%の導電性顔料を含む。
【0030】
これは、例えば下記のことを意味する:本発明の被覆剤が導電性顔料として、密度2.2g/cm3の黒鉛のみを含む場合、この被覆剤は好ましくは、少なくとも1.76、特に少なくとも4.4重量%の、かつ、好ましくは17.6以下、特に13.2重量%以下の黒鉛を含むことを意味する。また7.9g/cm3の鉄粉末が唯一の導電性顔料として使用される場合、その含有量は、本発明の被覆剤はその合計質量を基準にして、好ましくは少なくとも6.32、特に少なくとも15.8重量%、しかし、63.2以下、特に47.4重量%以下である。例えば密度4.8g/cm3のMoS2、密度2.7g/cm3のアルミニウム、又は密度7.1g/cm3の亜鉛のみが導電性顔料として使用される場合は、上記と同じ方法によりその質量含有率が算出される。
【0031】
しかし、本発明の被覆剤が単一の導電性顔料のみでなく、好ましくはその密度が大きく異なる少なくとも2つの導電性顔料の混合物を含む場合、好適な特性の組合せを達成し得る。例えば、混合物の第1成分が低密度導電性顔料(例えば、カーボンブラック、黒鉛、又はアルミニウム)であり、混合物の第2成分が高密度導電性顔料(例えば、亜鉛又は鉄)であるような混合物を使用することができる。これらの場合、混合物の平均密度が、上記式中の密度ρとして使用され、この平均密度は、混合物中の成分の質量含有率とそれぞれの密度から計算される。
【0032】
従って、本発明の被覆剤の具体的な実施態様は、密度3g/cm3未満の導電性顔料と密度が4g/cm3より大きい導電性顔料の両方を含むことを特徴とする。ここで導電性顔料の合計量は、被覆剤の合計質量を基準にして、(0.8乃至8)ρ質量%であり、ρは導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。
【0033】
例えば本発明の物質は、一方ではカーボンブラック又は黒鉛とを、他方では、鉄粉末の混合物を、導電性顔料として含むことができる。一方のカーボンブラック及び/又は黒鉛と、他方の鉄粉末の重量比は、1:0.1乃至1:10の範囲、特に1:0.5乃至1:2の範囲であり得る。
【0034】
従って本発明の被覆剤は、アルミニウムフレーク、黒鉛、及び/又はカーボンブラックを低密度導電性顔料として含むことができる。黒鉛及び/又はカーボンブラックの使用が好ましい。カーボンブラック及び特に黒鉛は、得られる被覆層の導電性を発生するのみでなく、この層が4以下の必要な低いモース硬度を示し、かつ容易に成形できるような寄与をする。特に黒鉛の潤滑作用は、成形器具の低摩耗に寄与する。この作用は、例えば硫化モリブデンのような追加の潤滑顔料の同時使用により、さらに促進される。本発明の被覆剤は、追加の潤滑剤として又は成形助剤として、ワックス及び/又はテフロン(登録商標)を含むことができる。
【0035】
最大密度3g/cm3の導電性顔料は、小球体又はこのような小球体の凝集物の形状のものでもよい。球又はこれらの球の凝集物の直径は2μm未満が好適である。しかし好ましくはこれらの導電性顔料は、厚さが好ましくは2μm未満の小板の形である。
【0036】
本発明の被覆剤は、少なくとも上記樹脂成分ならびに溶媒を含む。一般に樹脂成分a)乃至d)は、有機溶媒中の溶液又は分散物の形で市販されている。これらから調製される本発明の被覆剤は、同様にこれらの溶媒を含む。
【0037】
このようなことは、導電性顔料(例えば、黒鉛)及び必要により追加の顔料(例えば特に防錆顔料)を更に含んでいた場合であっても、コイルコーティング法を用いて基体に被覆剤を塗布する事を可能にする粘度に調整するためには望ましい事である。必要な場合は、追加の溶媒を加えることができる。溶媒の化学的性質は一般に、対応する溶媒を含む原料の選択によりあらかじめ決定される。使用可能な溶媒の例は、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、酢酸メトキシプロピル、酢酸n−ブチル、キシレン、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、及び/又はコハク酸ジメチルである。
【0038】
本発明の被覆剤中の、一方では溶媒の好ましい含有率と、他方では有機樹脂成分の好ましい含有率(質量%で表される)は、この被覆剤中の導電性顔料の含有率(質量%)に依存する。導電性顔料の密度が高いほど、被覆剤の全量中の好適な質量含有率が高く、溶媒と樹脂成分の質量含有率が低くなる。従って溶媒と樹脂成分の好適な質量含有率は、添加された導電性顔料の密度ρ又は導電性顔料の混合物の平均密度ρに依存する。
【0039】
一般に、本発明の被覆剤は好ましくは、当該被覆剤の合計質量を基準にして、[(25乃至60)・調整係数]質量%、好ましくは[(35乃至55)・調整係数]質量%の有機溶媒、及び[(25乃至45)・調整係数]質量%、好ましくは[(25乃至40)・調整係数]質量%の有機樹脂成分を含み、ここで有機樹脂成分と溶媒の質量含有率の合計は、[93・調整係数]質量%以下、好ましくは[87・調整係数]質量%以下であり、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。
【0040】
個々の樹脂成分a)について、発明の被覆層は好ましくは、当該被覆剤の合計質量を基準にして、[(2乃至8)・調整係数]質量%、好ましくは[(3乃至5)・調整係数]質量%の樹脂成分a)を含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。本発明の被覆剤中の樹脂成分b)乃至d)の好適な質量含有率は、樹脂成分a)の質量含有率から、個々の樹脂成分の上記の好適な質量比を使用して算出することができる。例えば、前記被覆剤の合計質量中の成分b)の割合は、[(2乃至9)・調整係数]質量%、好ましくは[(3乃至6)・調整係数]質量%であり、樹脂成分c)の割合は、[(4乃至18)・調整係数]質量%、好ましくは[(6乃至12)・調整係数]質量%であり、樹脂成分d)の割合は、[(7乃至30)・調整係数]重量%、好ましくは[(10乃至20)・調整係数]質量%である。「調整係数の意味」は、前述のとおりである。
【0041】
さらに、層b)は好ましくは、さらなる腐食防止剤及び/又は防錆顔料を含む。この目的のために、当該分野で公知の腐食防止剤及び/又は防錆顔料を使用することができる。以下の例を示すことができる:酸化マグネシウム顔料、特にナノマー形状の酸化マグネシウム顔料、微細化及び超微細化硫酸バリウム、又はケイ酸カルシウムを主成分とする防錆顔料。発明の被覆剤の合計質量を基準にして、前記防錆顔料の好適な質量含有率もまた、添加される防錆顔料の密度に依存する。前記被覆剤は好ましくは、この被覆剤の合計質量を基準として、[(5乃至25)・調整係数]質量%、好ましくは[(10乃至20)・調整係数]質量%の防錆顔料を含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。
【0042】
追加の充填剤が含まれると、本発明の被覆剤を加熱乾燥した後に得られる被覆層の機械的及び化学的性質を、さらに改良することができる。例えば、これら充填剤は、シリカ又は酸化ケイ素(必要により疎水化されている)、酸化アルミニウム(塩基性酸化アルミニウムを包含する)、二酸化チタン、及び硫酸バリウムから選択することができる。これら充填剤の好適な量について、前記被覆剤は、好ましくは、当該被覆剤の合計質量を基準として、シリカ又は酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、及び硫酸バリウムから選択される、[(0.1乃至3)・調整係数]質量%、好ましくは[(0.4乃至2)・調整係数]質量%の充填剤を含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。
【0043】
潤滑剤又は成形助剤もまた使用される場合、前記被覆剤は、好ましくは、当該被覆剤の合計質量を基準にして、好ましくはワックス、硫化モリブデン、及びテフロン(登録商標)から選択された潤滑剤又は成形助剤を、好ましくは[(0.5乃至20)・調整係数]質量%、好ましくは[(1乃至10)・調整係数]質量%の含有量で含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは腐食防止顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する。
【0044】
他の好適な実施態様では、前記被覆剤はいかなる導電性顔料も含まないものである。これは、このタイプの顔料が意図的に添加されていないことを意味すると理解されたい。しかし汚染のために、偶然少量の導電性顔料が存在することがある。前記被覆剤中の導電性顔料の含有量は、0.1重量%を超えてはならない。
【0045】
しかし、この導電性顔料を含まない前記被覆層中に、他の、既に例示した成分のすべてが存在していてもよい。好適な質量含有率は、各場合において、すでに示した方程式から調整係数=1を設定することにより得られる。
【0046】
本発明のさらなる目的は、被覆される金属板又は金属構成部材の製造法であり、この方法において被覆されるべき金属板又は構成部材は
i)必要であれば洗浄され、
ii)1mg/m2を超えないクロムを含有する化成処理層を形成する化成処理溶液と接触させられ、次に中間洗浄を施し、又は施すことなしに、
iii)前述のようにして上記被覆剤で被覆され、120乃至260℃の範囲内の温度で硬化される。
【0047】
前記被覆剤は好ましくは、150乃至170℃の範囲の基体温度で硬化される。
【0048】
好ましくは少なくとも工程ii)とiii)は、ストリップ処理法として実施され、工程iii)において、液体処理剤が、硬化後に0.5乃至10μmの範囲内の層厚さが得られるような量で塗布される。すなわち前記被覆剤は、好ましくは、いわゆるコイルコーティング法により塗布される。この方法では、連続的金属ストリップが連続的に被覆される。この被覆剤は、当該分野で一般的に使用される種々の方法により塗布することができる。例えば、塗布ロールが使用でき、これにより必要な未乾燥膜厚さを直接調整することができる。代替法として、金属ストリップを被覆剤中に浸漬するか、又は被覆剤を噴霧し、ここで、必要な未乾燥膜厚さは、強化ローラーにより調整される。
【0049】
あらかじめ電気めっきされているか、又は溶融めっき法により金属層(例えば、亜鉛又は亜鉛合金)によって被覆されている金属ストリップが被覆されている場合は、金属表面は化成処理(ii)を実施する前に洗浄する必要は無い。しかし金属ストリップがすでに貯蔵されており、特に防錆油が塗布されている時には、工程(ii)を実施する前に、洗浄工程が必要とされている。
【0050】
工程(iii)において、液体処理剤を塗布した後、被覆された金属板は、有機コーティングのために必要な乾燥もしくは架橋温度まで加熱される。被覆された基体を、120乃至260℃、好ましくは150乃至170℃の、必要な基体温度(最高到達板温=TMP)へ加熱する工程は、加熱された連続再加熱炉内で行うことができる。しかし処理剤もまた、赤外線照射、特に近赤外線照射により、好適な乾燥又は架橋温度にすることができる。
【0051】
工程(ii)において使用される化成溶液は、当該分野で既知の膜形成性又は非膜形成性リン酸処理溶液であってもよい。あるいは、膜形成性成分としてケイ素、及び特にチタン及び/又はジルコニウムのフッ化物錯体を含む酸性処理溶液を使用することができる。さらに化成溶液は、有機ポリマー(例えば、ポリアクリレート、又はアミノ置換ポリビニルフェノール誘導体)を含むことができる。工程(ii)における化成溶液へのナノマーシリカ又はナノマー酸化アルミニウムの添加により、防食性及び密着性をさらに改良することができる。この場合「ナノマー」粒子は、前記被覆剤中において、1000nm未満、特に500nm未満の平均粒子径を有する粒子を意味するものと理解されたい。
【0052】
工程iii)において、少なくとも1つの導電性顔料を含むか又はかかる導電性顔料を含まない被覆剤を必要に応じて添加することができる。導電性顔料を含まない被覆剤を使用する時、この被覆剤は好ましくは、硬化後に0.5乃至3μm、好ましくは1乃至3μmの被覆層厚さが得られるような未乾燥膜厚さで塗布される。得られる被覆層は、電気溶接により被覆された金属板の組み立てを可能にするのに充分に導電性を有している。
【0053】
自動車組み立てで一般的に行われるように、金属材料は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、亜鉛もしくは亜鉛合金、鋼、或は亜鉛により、アルミニウムにより、又は亜鉛もしくはアルミニウムの合金によって被覆された鋼から選択することができる。
【0054】
さらに本発明は、上記方法により得られる被覆された金属板又は構成部材に関する。
【0055】
本発明の被覆された金属板は、自動車組み立て、及び家電産業、ならびに家具又は建築部品の製造で好適に使用される。これらの場合に、本発明の被覆された金属板から対応する対象物を製造した後、1つ又はそれ以上の追加の被覆層が被覆されることが一般的である。自動車組み立て産業では、この追加被覆は通常、カチオン電着塗装(これは被覆層の導電性により可能になる)により施される。次に、自動車産業に典型的な追加の塗装工程が続く。例えば家庭用器具産業におけるより簡単な防食仕様については、本発明の析出層の上に上塗りとして、粉末塗装を適用することができる。
【実施例】
【0056】
本発明をいくつかの実施例によりさらに詳細に説明する。
【0057】
a)前処理
リン酸、リン酸マンガン、H2TiF6、及びアミノメチル置換ポリビニルフェノール(本出願人から市販のGranodine(登録商標)1455)をベースにした市販の前処理溶液を、アルカリ性クリーナー(例えば、Ridoline(登録商標)C72、Ridoline(登録商標)1340;本出願人から市販の含浸/噴霧−洗浄剤)で洗浄した亜鉛メッキ鋼板に塗布し、コーティングワイパー又はケムコーター(Chemcoater)により、金属表面上に分散させた。次に生成物を80℃で乾燥させた。
【0058】
b)防食組成物の製造法と応用
防錆顔料(混合物)を、室温でディソルバー容器中で有機結合剤中に細かく分散させた;これには10乃至60分を要した。次に導電性顔料を導入し、ゆっくり攪拌して完全に湿潤するまで分散させた。これにもまた10乃至60分を要した。次に必要により溶媒と追加の添加剤を混合した。
この防食組成物をドクターブレード又はロールコーターで前処理した金属板に塗布し、乾燥炉中において表に示す基板温度まで加熱して硬化させた。
【0059】
試験法:
腐食試験[DIN50021に準格]
被覆された供試金属板の端と裏面を接着テープによりカバーした。長い側面に新しい切り口を作成した。次に金属板に切れ目をつけた。最後に、供試金属板を塩噴霧試験装置に入れた。切れ目、切り口、及び金属板表面のサビの程度を定期的に測定した。供試金属板上に赤いサビが現れるに要した時間を表に示す。
【0060】
耐MEK性:
1kgのブロックをメチルエチルケトン(MEK)を含浸した脱脂綿に包み、防食組成物で被覆された供試表面上に動かした。被覆層を除去して金属表面が見えるようになるのに必要な往復回数を計測し、この往復回数により耐溶媒性を表す。
【0061】
T−Bend−試験:ECCA−試験法T7[1996]:「曲げによる亀裂に対する耐性」に準拠
被覆された金属板を機械式プレスブレーキで180°曲げた。端縁部に接着テープ(Tesafilm 4104)を貼りつけ、これを剥離した。曲げられた端縁部における亀裂の形成を、DIN53230に従って測定した。
【0062】
裏面衝撃試験:ECCA−試験法T5[1985]:「急速変形下の亀裂生成に対する耐性」に準拠
片側を被覆された金属板を種々の衝撃試験機(重さ2kg;高さ1m)で変形させた。生じた隆起部に接着テープ(Tesafilm 4104)を貼りつけ、これを剥離した。接着テープにより剥離した被覆層の量を、1乃至5の評価基準に従って目視で測定した。評価基準において、「1」は被覆層が剥離しなかったことを意味し、「5」は被覆層が大きく剥離したことを意味する。
【0063】
耐アルカリ性:
裏面衝撃試験に従って、片側を被覆された金属板を変形させた。変形した部分を70乃至80℃の温かいアルカリ性洗浄液(Ridoline(商標)C72、1%濃度、pH約13)に浸した。生じた隆起部に接着テープ(Tesafilm 4104)を貼りつけ、これを剥離した。接着テープにより剥がれた被覆層量を、1乃至5の評価基準に従って肉眼で測定した。評価基準において、「1」は被覆層が剥離しなかったことを表し、「5」は被覆層が大きく剥離したことを表す。
【0064】
溶接試験:
通常の自動車製造業界の条件下において、Dalexの溶接機械(型:PMS11-4)を用いて、電気溶接試験を行った。溶接スポットをDaimler-Chrysler規格DBL4062/4066に従って測定した。これは、本発明の防食被覆剤で被覆された金属板が、実際的な条件下で、充分な電極寿命をもって電気溶接可能である。
【0065】
本発明の耐食組成物の組成と試験結果の詳細は、以下の表に記載される。これらの表において下記の略語が使用される:
PMT:最高到達板温:コーティングの硬化中の最高基板温度。
MEK:上記のMEK耐性。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
使用された成分番号の意味を表4に示す。
【表4】

【0070】
前記被覆剤はまた、導電性顔料(成分11)無しで調製することができる。従って実施例1乃至6の組成物において成分11が使用されないときは、成分11以外の成分の量は、質量部により再計算される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒又は溶媒混合物中に溶解又は分散された有機樹脂成分を含む、金属表面を被覆するための物質であって、少なくとも下記の有機樹脂成分:
a)ビスフェノール−エピクロロヒドリン重縮合産物をベースとし、ヒドロキシル基含有ポリエーテルとして存在するエポキシ樹脂、
b)ブロック化脂肪族ポリイソシアネート、
c)非ブロック化脂肪族ポリイソシアネート、
d)ヒドロキシル基含有ポリエステル及びヒドロキシル基含有ポリ(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1つの反応成分、
を含むことを特徴とする金属表面用被覆剤。
【請求項2】
樹脂成分a)乃至d)は下記の相対的重量比:
a):b)=1:0.8乃至1:1.3
c):d)=1:1.4乃至1:2.3。
で存在する請求項1に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項3】
一方で樹脂成分a)とd)、及び他方でb)とc)が、下記の相対的重量比:
a):d)=1:2乃至1:1.6、及び
b):c)=1:0.5乃至1:5。
で存在する請求項1又は2に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項4】
導電性顔料又は導電性顔料の混合物をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項5】
前記金属表面用被覆剤の合計質量を基準にして、(0.8乃至8)ρ質量%の導電性顔料(ここで、ρは導電性顔料の密度、又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する)を含む、請求項4に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項6】
密度3g/cm3未満の導電性顔料と、密度が4g/cm3より大きい導電性顔料の両方[導電性顔料の総量は本物質の総重量に基づいて(0.8乃至8)ρ質量%であり、ここでρは導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する]を含む、請求項4又は5に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項7】
前記被覆層の合計重量を基準にして、[(25乃至60)・調整係数]質量%、好ましくは[(35乃至55)・調整係数]質量%の有機溶媒、及び[(25乃至45)・調整係数]質量%、好ましくは[(25乃至40)・調整係数]質量%の有機樹脂成分を含み、前記有機樹脂成分と前記溶媒との重量含有量の合計は、[93・調整係数]質量%以下、好ましくは[87・調整係数]質量%以下であり、ここで、調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項8】
前記被覆剤の合計質量を基準にして、[(2乃至8)・調整係数]質量%、好ましくは[(3乃至5)・調整係数]質量%の樹脂成分a)を含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する、請求項4乃至7のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項9】
前記被覆剤の合計質量を基準にして、[(5乃至25)・調整係数]質量%、好ましくは[(10乃至20)・調整係数]質量%の防錆顔料を含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味することを特徴とする、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項10】
前記被覆剤の合計質量を基準にして、ケイ素又は酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、及び硫酸バリウムから選択された[(0.1乃至3)・調整係数]質量%、好ましくは[(0.4乃至2)・調整係数]質量%の充填剤を含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項11】
好ましくはワックス、硫化モリブデン、及びテフロン(登録商標)から選択された潤滑剤又は成形助剤を、好ましくは[(0.5乃至20)・調整係数]質量%の量で、さらに好ましくは[(1乃至10)・調整係数]質量%の量で含み、ここで調整係数は[100−2.8ρ]:93.85であり、ρは導電性顔料の密度又は導電性顔料の混合物の平均密度g/cm3を意味する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項12】
導電性顔料を全く含まない、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤。
【請求項13】
被覆された金属板又は構成部材の製造法であって、被覆されるべき前記金属板又は構成部材は
i)必要であれば洗浄され、
ii)クロムの含有量が1mg/m2を超えない化成処理層を形成する化成処理溶液に接触させ、次に中間洗浄を施され、又は施されずに、
iii)請求項1乃至12のいずれか1項に記載の金属表面用被覆剤によって被覆され、かつ120乃至260℃の範囲の基体温度で硬化される、
ことを含む被覆された金属板又は構成部材を製造する方法。
【請求項14】
被覆されたストリップ形状の金属板が製造される際に、少なくとも工程ii)とiii)がストリップ処理法として実施され、工程iii)において、前記被覆剤が、硬化後に0.5乃至10μmの範囲の層厚さが得られるような量で塗布される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被覆されたストリップ形状の金属板の製造に際し、少なくとも工程ii)とiii)がストリップ処理法として実施され、工程iii)において請求項12に記載の金属表面用被覆剤が、硬化後に0.5乃至3μmの範囲の層厚さが得られるような量で塗布される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記金属板又は構成部材用金属が、アルミニウム又はアルミニウム合金、亜鉛又は亜鉛合金、鋼、或は、亜鉛、アルミニウム、亜鉛合金又はアルミニウム合金により被覆された鋼から選択される、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法に従って得られた被覆された金属板又は構成部材。
【請求項18】
車体、家電品、家具又は建築部品を製造するための、請求項17に記載の被覆された金属板又は構成部材の使用。

【公表番号】特表2010−514911(P2010−514911A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544372(P2009−544372)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061305
【国際公開番号】WO2008/080647
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】