有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システム
【課題】圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムを提供する。
【解決手段】有害物質除去デバイス10は、筒状構成体1と、有害物質除去機能を有する機能繊維2を該筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなる。有害物質を含む気体又は液体が筒状構成体1における流入開口部10aから流入され、機能繊維2にて有害物質が除去された後、排出開口部10bから排出される。
【解決手段】有害物質除去デバイス10は、筒状構成体1と、有害物質除去機能を有する機能繊維2を該筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなる。有害物質を含む気体又は液体が筒状構成体1における流入開口部10aから流入され、機能繊維2にて有害物質が除去された後、排出開口部10bから排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質を含む気体又は液体における有害物質を押し出し流れで除去する有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気体又は液体の有害物質を除去するデバイスとして、有害物質の種類に応じて適切な吸着剤、又は触媒等の分解剤を含有した薄膜状若しくはハニカム(honeycomb) 状フィルターが一般的に使用されていた。例えば、吸着剤として活性炭粒子を基材及び結着材と混合してそのままフィルター化したり、上記フィルター材をハニカム形状成型物としたりしていた。
【0003】
また、環境改善に有用なフィルターを簡単に製作でき安価に提供できることを目的として、筒状のものや箱状のもの等に、平滑面のものに比べて表面積が大となるものを基材としたものに酸化チタン膜を形成し、これらを充填することにより構成したフィルターがある。基材としてとして例えばブラシやタワシのように細毛状の基材を束ねたものや、ガラスや樹脂等のもの、布や紙の様な繊維質のもの等の材質や形状に限定されずに、その表面が多孔質であったり、繊維状であったり、ハニカム状であったり、球面である等の基材に酸化チタン膜を形成したものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、図28(a)(b)に示すように、筒状体101の内部にブラシ体102を充填した汎用フィルター100が開示されている。
【0005】
上記ブラシ体102は、芯材であるシャフト102aにブラシ毛102bを起毛したものからなっている。そして、この汎用フィルター100の筒状体101の内部に気体や液体を通すことにより、ブラシ毛102bに塗布された有害物質除去用機能物質である酸化チタンの光触媒機能によって窒素酸化物(NOX )を分解したり、又は大腸菌等を滅菌したりできるものとなっている。
【0006】
この特許文献1に開示された光触媒機能汎用フィルターは、安価に環境改善を行うため筒状のものや箱状のもの等に有効性の高いチタンコート基材を充填するという手段を提案したものであり、圧力損失、除去効率を改善目的にしたものでない。
【0007】
また、例えば特許文献2には、図29(a)〜(d)に示すように、多数のチューブ201…を集束してハニカム形状のフィルター本体202を形成し、該フィルター本体202の上流端にガス流入口203…を千鳥状に配すると共に、フィルター本体202の下流端にガス流入口203…に対向する箇所以外の箇所にガス流出口204…を設けて、ディーゼル排ガス中の粒子状物質を捕集するハニカムフィルター200が開示されている。
【0008】
このハニカムフィルター200では、チューブ201を目の粗い炭化珪素からなる織布又は不織布にて形成する。また、図29(b)に示すように、チューブ201の外側に濾過層210を設けたものと該濾過層210を設けないものとを千鳥状に配する。濾過層210は、図29(d)に示すように、チューブ201よりも目の細かい繊維211、微小繊維212及び空隙213からなるマット層で形成されてなっている。さらに、繊維211及び微小繊維212の表面には、気相蒸着法による図示しない炭化珪素のコーティング層が有害物質除去用機能物質として設けられている。
【0009】
上記ハニカムフィルター200では、図29(c)に示すように、ガス流入口203からチューブ201内に流入したディーゼル排ガスGは、矢印で示すように、目の細かい繊維層の不織布から形成される濾過層210を通過して隣接するチューブ201に流入する。その際、ディーゼル排ガスG中に含まれている粒子状物質が濾過層210に捕集される。特に、気相蒸着法によるコーティングが施されている微小繊維212によってディーゼル排ガスG中の粒子状物質が捕集される。そして、粒子状物質が除去されて浄化されたディーゼル排ガスG’は、ガス流出口204から系外に排出される。
【0010】
これにより、高強度、高靱性で割れ難く、また、単位体積当たりの濾過面積が大きく、かつ、低コスト、低圧損及び高集塵率のハニカムフィルター200を提供するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−1022号公報(2002年1月8日公開)
【特許文献2】特開2002−320807号公報(2002年11月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の特許文献2に開示されたハニカムフィルター200においては、ディーゼル排ガスGを目の細かい繊維層の不織布マット層で形成される濾過層210を通過させるので、圧力損失が大きいという問題を有している。
【0013】
すなわち、従来の有害ガス除去フィルターでは、吸着効率を上げようとして緻密な構造にすると圧力損失が大きくなるので、例えば加圧型でないと使用できないという欠陥があった。逆に、圧力損失が大きくなることからフィルターの厚み、及びフィルターの緻密度をあまり高くすることができないので、効率及び寿命が稼げないという欠陥を有していた。また、フィルターの厚みが薄いので、分解等の時間のかかる反応では処理能力が低い等の欠陥を有していた。
【0014】
一方、上記従来の特許文献1に開示された汎用フィルター100では、ブラシ体102が筒状体101の内部に充填されたものからなっており、不織布繊維等の濾過層は存在していない。しかし、上記汎用フィルター100では、ブラシ体102の軸部が中実となっており、筒状体101の軸に直交する断面の有効断面積が低減されるので、除去効率が低下するという問題を有している。
【0015】
すなわち、特許文献1に開示された光触媒機能汎用フィルターは、安価に環境改善を行うために筒状のものや箱状のもの等に有効性の高いチタンコート基材を充填するという手段を提案したものであり、圧力損失や除去効率を改善目的にしたものではない。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有害物質除去デバイスは、上記課題を解決するために、筒状構成体と、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなり、有害物質を含む気体又は液体が、上記筒状構成体における一方の開口部から流入され、上記機能繊維ブラシモジュールにて有害物質が除去された後、他方の開口部から排出されることを特徴としている。尚、筒状構成体は、例えば、円形、楕円形、多角形等の断面形状を有していればよく、その断面形状にこだわらない。また、有害物質除去機能を有する機能繊維における、筒状構成体の内壁面へのブラシ状の起毛方法は、筒状構成体の内壁面に該機能繊維を直接静電植毛してもよいし、又は静電植毛フィルム若しくは機能繊維を起毛したフレキシブル基体を筒状加工する方法でもよく、その手段を制限するものでない。
【0018】
上記の発明によれば、有害物質を含む気体又は液体は、筒状構成体における一方の開口部から流入される。この筒状構成体の内壁面には、有害物質除去機能を有する機能繊維をブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールが設けられているので、有害物質は機能繊維ブラシモジュールによって除去され、有害物質除去後の気体又は液体は、筒状構成体における他方の開口部から排出される。したがって、簡単な構成で、有害物質除去デバイスを実現することができる。
【0019】
ここで、本発明では、機能繊維ブラシモジュールは、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛したものからなっている。
【0020】
このため、有害物質除去のための有効表面積が格段に増加するので、有害物質を含む気体又は液体における有害物質除去物質を含む機能繊維への接触面積が広くなる。有害物質を含む気体又は液体は、筒状構成体の一方から流入し内部を通過するときに、機能繊維ブラシモジュールと接触し、このときに、機能繊維の表面との接触抵抗によって乱流が発生する。このため、この乱流の発生によって、有害物質を含む気体又は液体と機能繊維との接触機会が増加し、このようなブラシ状に起毛した機能繊維の全面で接触が繰り返される。したがって、有害物質を含む気体又は液体を効率よく無害化することができる。
【0021】
ここで、本発明では、筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛された機能繊維は直立し林立状態となって整然としており、ブラシ状であるため、機能繊維は自由端を持ち、流体の流れに沿ってなびくので、流体の流れを阻害しない。このため、例えば特許文献2等に開示された従来の連続気泡を有する不織布等のフィルターにおいては通路が迷路のように入り乱れて流体の流れを阻害するのに比べて、筒状構成体の内部を通過するときの圧力損失を小さくすることができる。
【0022】
一方、例えば特許文献1に開示されているように、ブラシ体が筒状体の内部に充填されたものからなっている場合には、ブラシ体の基材を構成する軸部が筒状体の筒軸に存在することになるので、筒状体の筒軸が中実状態となっており、有害物質を含む気体又は液体が通過する筒状体の有効断面積が減少する。
【0023】
この点、本発明では、機能繊維ブラシモジュールは、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛したものからなっているので、筒状構成体の筒軸部を塞ぐものがなく、筒状構成体の筒軸に直交する断面の全てが有害物質を含む気体又は液体の有効通過領域となる。
【0024】
この結果、筒状構成体の内壁面に繊維ブラシモジュールを構成した本発明は、特許文献1と基本的に異なっており、特許文献1に比べて、大量の有害物質を含む気体又は液体を流せることになり、有害物質を含む気体又は液体を効率よく除去することができる。
【0025】
したがって、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイスを提供することができる。
【0026】
本発明の有害物質除去デバイスでは、有害物質除去機能、及び前記気体又は液体の圧力損失の度合を最適化すべく、前記筒状構成体の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を設計パラメーターとすることが好ましい。
【0027】
これにより、筒状構成体の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を調整することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができる。このため、有害物質を含む気体又は液体の種類、濃度、流量等の多様化するユーザーニーズ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0028】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記設計パラメーターにおける少なくとも2つ以上の仕様からなる前記機能繊維ブラシモジュールを配置して構成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、設計パラメーターである寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法の少なくとも1つを、複数種の仕様にて構成することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0030】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維の繊維径は、3μm〜100μmであるとすることができる。
【0031】
これにより、機能繊維の剛性を適切に保持すると共に、有害物質除去のための有効表面積を適切に確保することができる。ここで、機能繊維の繊維径が3μm未満の場合には、機能繊維の剛性が弱く、機能繊維が寝るので、機能繊維の長さに応じた除去性能を確保することができない。一方、機能繊維の繊維径が100μmを超える場合には、植毛密度やパイル長を長くして体積占有率を上げても、繊維径の小さい機能繊維に比べて有効表面積が増加しないので、有害物質除去性能も低下する。
【0032】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維ブラシモジュールは、前記筒状構成体の内壁面において全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的に配置されていると共に、上記全体に亘って均一に配置されている場合における機能繊維の植毛密度、又は複数の群をなして離散的に配置されている場合における各群の機能繊維の植毛密度は、0.1%〜50%となっていることが好ましい。尚、機能繊維の植毛密度とは、植毛部について単位面積当たりの繊維断面積が占有する面積の比率をいう。
【0033】
これにより、機能繊維ブラシモジュールを、筒状構成体の内壁面において全体に亘って均一にブラシ状に起毛したり、又は複数の群をなして離散的にブラシ状に起毛したりすることができ、用途に応じて機能繊維ブラシモジュールの配置方法を変更することが可能である。
【0034】
ここで、植毛密度が1%未満の場合には、除去のための有効面積が不足し、有害物質除去性能が不足する。一方、植毛密度が50%を超える場合には、機能繊維ブラシモジュールを通る気体又は液体の流速が低下し、圧力損失が高くなったり、又は乱流の発生が起こり難くなったりすることによって、除去効率も却って低下する。
【0035】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記筒状構成体の内部空間に対する機能繊維ブラシモジュールにおける機能繊維の占める体積の割合は、0.01%〜80%であるとすることができる。
【0036】
これにより、有害物質除去のための有効表面積を適切に確保すると共に、圧力損失を適切に抑制することができる。すなわち、機能繊維の体積占有率を0.01%〜80%に設定することによって、体積占有率が小さい場合には圧力損失を非常に少なくして有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイスを提供する一方、体積占有率が大きい場合には従来にない表面積を有して非常に高い有害物質除去効率を達成し得る有害物質除去デバイスを提供するというように、広いニーズに応える有害物質除去デバイスを提供することが可能になる。
【0037】
ここで、0.01%未満の場合は、機能繊維ブラシモジュールが乱流を起こしたとしても、有害物質除去の有効表面積が不足し、有害物質除去性能が低下する。一方、80%を超える場合は、圧力損失が大きくなり過ぎ、筒状構成体の内壁面近傍の流速が低下し、除去性能が向上しない。
【0038】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維ブラシモジュールの機能繊維は、有害物質除去機能を有する材料を含有した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、有害物質除去機能を有する材料を主成分とした表面コート層を有する高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、又は有害物質除去機能を有する材料を主成分とした粒子が固着した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維からなっていることが好ましい。
【0039】
これにより、機能繊維として、有害物質除去機能を有する材料を、繊維に付加することにより、ブラシ状の繊維における篩機能による粉塵除去のみならず、ケミカルフィルターとしての機能を果たすことが可能となる。
【0040】
尚、有害物質除去機能を有する材料は、例えば、活性炭、吸着材(ゼオライト、コロイダルシリカ、ゾルゲル法無機酸化物微粒子等)、触媒(各種金属又は金属酸化物粒子、金属コロイド等)が、適応すべき有害物質を含む気体又は液体に対して単独又は複数種にて使用される。また、種々の有害物質除去機能を有する材料を配合して同一繊維に被覆分散することもあれば、それぞれ異なる繊維に有害物質除去機能を有する材料を被覆分散することもある。これら機能繊維は、例えば吸着・分解の反応手順にしたがって、順次、最適化された配列、パターンにて筒状構成体の内壁面にセットされる。
【0041】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維ブラシモジュールには、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっていることが好ましい。尚、光エネルギーは例えば紫外線、可視光、電磁波によるものを含み、電気エネルギーは電圧印加によるものを含む。また、これらのエネルギーは、総括すると吸着・分解又は除菌を制御するために使用される。
【0042】
これにより、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーを併用することによって、有害物質除去機能が発現・向上し、さらに高い有害物質除去機能を得ることが可能となる。
【0043】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記光は、紫外線から可視光までを有効とし、有害物質除去機能を有する材料である光触媒の活性化に使用されることが可能である。
【0044】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記電気は、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧にてなることが可能である。
【0045】
これにより、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧に基づく電子放出・注入効果によって、有害物質を含む気体又は液体における有害物質の分解を促進すると共に、例えば、触媒との相乗作用によって、分解反応を促進することができる。また、高電圧を印加することにより、気中放電を誘発して有害物質の分解・除菌を促進することが可能となる。
【0046】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記筒状構成体は、複数設けられていると共に、互いに直列若しくは並列、又は直列かつ並列に配されていることが好ましい。
【0047】
これにより、反応時間が足りないときには、筒状構成体を直列に接続して使用することによって、反応時間を確保することができる。また、2種以上のガスを分別吸収する場合、有害物質除去機能を有する材料が互いに異なる機能繊維ブラシモジュールを起毛した筒状構成体を直列に配設置することによって、最適化を図ることができる。
【0048】
一方、有害物質除去機能が不足する場合には、筒状構成体を並列に配設することによって、同じ長さにて圧力損失を高めることなく、処理能力を上げることができる。
【0049】
さらに、直列かつ並列に筒状構成体を配することによって、両方の作用効果を達成することができる。
【0050】
本発明の気体又は液体の浄化・精製システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴としている。
【0051】
これにより、本発明の気体又は液体の浄化・精製システムは、気体又は液体の浄化・精製を目的とした多種の装置や設備、一般機器に付帯的に必要となる浄化装備等に備えられる。これらのシステムは、前述したような特徴により、従来にない性能を得ることができる。
【0052】
本発明の気体又は液体の化学反応システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴としている。
【0053】
上記の発明によれば、触媒等によりを効率良く化学反応をさせることが可能である。したがって、本発明の気体又は液体の化学反応システムは、多種の装置や設備に備えられる。この化学反応システムは、前述したような特徴により、従来にない性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の有害物質除去デバイスは、以上のように、筒状構成体と、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなり、有害物質を含む気体又は液体が、上記筒状構成体における一方の開口部から流入され、上記機能繊維ブラシモジュールにて有害物質が除去された後、他方の開口部から排出されるものである。
【0055】
本発明の気体又は液体の浄化・精製システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたものである。
【0056】
本発明の気体又は液体の化学反応システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたものである。
【0057】
それゆえ、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムを提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明における有害物質除去デバイスの実施の一形態を示すものであって、(a)は有害物質除去デバイスの構成を示す側面断面図であり、(b)は有害物質除去デバイスの構成を示す正面図である。
【図2】四角筒からなる筒状構成体を備えた有害物質除去デバイスの構成を示す斜視図である。
【図3】波状に屈曲した有害物質除去デバイスの構成を示す斜視図である。
【図4】上記有害物質除去デバイスの変形例の構成を示すものであって、機能繊維が筒状構成体の内壁面における一部において起毛されていない部分を有する有害物質除去デバイスの構成を示す正面図である。
【図5】(a),(b)は、有害物質除去デバイスにおける他の変形例の構成を示すものであって、筒状構成体の長手方向における機能繊維の植毛形態を示す側面断面図である。
【図6】上記有害物質除去デバイスの変形例の構成を示すものであって、例えばLED紫外線ランプを有する四角筒からなる筒状構成体を備えた有害物質除去デバイスを示す斜視図である。
【図7】(a)は例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図8】(a)は例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体における他の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図9】(a)は例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体におけるさらに他の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図10】(a)は軸部に例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図11】(a)は軸部に例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体における変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図12】(a)は軸部に電極を有する筒状構成体の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図13】(a)は軸部に電極を有する筒状構成体における変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図14】(a)は内壁面である天井面及び床面に電極を有する筒状構成体の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図15】(a)は内壁面である天井面及び床面に電極を有する筒状構成体における変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図16】(a)は内壁面である天井面及び床面に電極を有する筒状構成体における他の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図17】(a),(b)は、有害物質除去デバイスのさらに他の変形例の構成を示す斜視図である。
【図18】本発明における有害物質除去デバイスの、他の実施の形態を示す斜視図である。
【図19】単体の有害物質除去デバイスにおける機能繊維の充填率と表面積との関係を示すグラフである。
【図20】実施例2にて使用した有害物質除去デバイスの構成を示す斜視図である。
【図21】単体の有害物質除去デバイスにおけるトルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図22】上記有害物質除去デバイスと従来の特許文献1をモデルとした有害物質除去デバイスとの差異を、有効表面積(cm2 /cm3 )と体積占有率(%)とで示すグラフである。
【図23】上記機能繊維を起毛した有害物質除去デバイスと機能繊維の存在しない有害物質除去デバイスとの差異を、筒内表面積(cm2 )にて示すグラフである。
【図24】上記機能繊維を起毛した有害物質除去デバイスにおける繊維径と表面積との関係を示すグラフである。
【図25】LED紫外線ランプを有する機能繊維を起毛した有害物質除去デバイスにおけるホルムアルデヒドガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図26】波状に屈曲した有害物質除去デバイスにおけるトルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図27】ハニカム形状の有害物質除去デバイスにおけるトルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図28】(a)は従来の有害物質除去デバイスの構成を示す側面断面図であり、(b)は従来の有害物質除去デバイスの構成を示す正面図である。
【図29】(a)〜(d)は従来の他の有害物質除去デバイスの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
〔実施の形態1〕
本発明の有害物質除去デバイスに関する実施の一形態について、図1〜図17に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0060】
図1(a)(b)に示すように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10は、筒状構成体1と、有害物質除去機能を有する機能繊維2をこの筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなっている。尚、機能繊維ブラシモジュールとは、ブラシ状に起毛した機能繊維2の集合体をいう。
【0061】
上記筒状構成体1は、機能繊維2を直接植毛するための基体となっており、例えば、縦糸と横糸とからなる地糸としてなっている。したがって、本実施の形態では、機能繊維2は、この地糸である筒状構成体1に直接的に織り込まれたパイル糸から構成されている。上記パイル糸の先端は例えばカットされているが、カットせずにループ状になっていてもよい。
【0062】
尚、機能繊維2の起毛方法については、必ずしもこれに限らず、例えば、基材に機能繊維2を静電植毛したものでもよく、或いは、フィルム等の柔軟性を持つ基材に機能繊維2を植毛したものでもよい。
【0063】
上記筒状構成体1の断面形状は、図1(b)に示すように、例えば円形からなっている。ただし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、例えば、楕円形、若しくは三角形、四角形、五角形…等の多角形であってもよく、又はその他の断面形状であってもよい。
【0064】
四角形断面の例としては、例えば、図2に示すように、四角筒からなる筒状構成体1の内壁面1aにおける床面及び天井面に機能繊維2を起毛したものでもよい。尚、図2においては、基材2cに機能繊維2を植毛したものを記載している。図2に示す有害物質除去デバイス10の筒状構成体1の寸法は、例えば、内法巾Wが50mmであり、内法高さHが例えば50mmであり、筒長さLが30mmとなっている。また、機能繊維2の起毛長さであるパイル長dは、それぞれ、例えば15mmとなっている。ここで、本発明においては、筒状構成体1の寸法等は、必ずしもこれに限らない。例えば、筒状構成体1における開口部の面積が10mm2 〜10m2 であり、機能繊維2の繊維長が0.5mm〜30cmであり、筒状構成体1の筒内における機能繊維ブラシモジュールの体積占有率が0.01%〜80%であるとすることができる。すなわち、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、筒状構成体1の内部空間に対する機能繊維ブラシモジュールにおける機能繊維2の占める体積の割合は、0.01%〜80%であることが好ましい。詳細には、機能繊維ブラシモジュールの群が配置され有害物質除去機能を有する部位において、機能繊維2の占める体積が前記部位の全体の体積に対して0.01%〜80%を占有しているとすることができる。
【0065】
これにより、直径3mm程度の円形断面の筒状構成体1から、一辺3m程度の正方形断面の筒状構成体1とすることができ、配水管や大規模な排気ダクトへの適用が可能となる。尚、筒状構成体1における開口部の面積を50mm2 〜1m2 (直径1cm〜一辺30cmの正方形断面)とし、機能繊維2の繊維長を0.5mm〜5cmとするのがより好ましい。
【0066】
また、これらのサイズにおいて、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を0.01%〜80%とすることによって、有害物質除去物質への接触面積が広く、かつ圧力損失を小さくして、効率よく有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイス10を提供することができる。すなわち、機能繊維2の体積占有率を0.01%〜80%に設定することによって、体積占有率が小さい場合には圧力損失を非常に少なくして有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイス10を提供する一方、体積占有率が大きい場合には従来にない表面積を有して非常に高い有害物質除去効率を達成し得る有害物質除去デバイス10を提供するというように、広いニーズに応える有害物質除去デバイス10を提供することが可能になる。
【0067】
ここで、0.01%未満の場合は、機能繊維ブラシモジュールが乱流を起こしたとしても、有害物質除去の有効表面積が不足し、有害物質除去性能が低下し、実用的な効果を奏しない。一方、80%を超える場合は、圧力損失が大きくなり過ぎ、筒状構成体1の内壁面近傍の流速が低下し、除去性能が向上しない。また、製品化も困難である。
【0068】
ここで、機能繊維2の体積占有率について、例えば、内径3mの筒状構成体1において繊度2デシテックス(dtex)、密度200k本/inch2 、及び繊維長1mmの機能繊維2を全体に植毛した場合に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が0.01%となる。また、内径10mmの筒状構成体1において繊度2デシテックス(dtex)、密度1000k本/inch2 、及び繊維長6〜7mmの機能繊維2を全体に植毛した場合に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が80%となる。尚、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が0.05%〜30%(上記において繊維長5mmとした場合に30%となる)となっているのがより好ましい。
【0069】
ここで、本実施の形態では、図1(a)(b)に示すように、筒状構成体1の筒軸部における機能繊維2の配設密度を小さくし、機能繊維2の存在しない筒軸空間部3を設けることができる。この結果、一方の開口部10aから流入される有害物質を含む気体又は液体は、抵抗なく、筒軸空間部3の内部を通過することができ、圧力損失が小さいものとなる。したがって、有害物質除去物質への接触面積が広く、かつ圧力損失を小さくして、効率よく有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイス10を提供することができる。
【0070】
上記構成の有害物質除去デバイス10を製造するときには、例えば、パイル糸が織り込まれた板状の地糸を筒状に丸め、板両端を接着剤等にて接着すればよい。或いは、パイル糸が織り込まれた帯状の地糸を筒になるように螺旋状に丸め、帯両側端を接着剤等にて接着することによっても製造することが可能である。
【0071】
尚、強度補強のために、筒状に丸めて両端を接着した後、筒の外側からシートを接着することも可能である。このように、パイル糸が織り込まれた地糸を筒にした後、その外側にシートを固着した場合には、本発明においては、機能繊維2は、筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に間接的に起毛されたものとなる。
【0072】
また、筒状構成体1は、フレキシブルな材料からなり、折り曲げ可能となっていることが好ましい。これにより、図3に示すように、直管状の筒状構成体1を、例えば波打つように屈曲させて形成することができる。これにより、筒状構成体1の内部を気体又は液体が通るときに乱流が発生するので、気体又は液体の機能繊維2への接触頻度が高まり、有害物質の除去効果が高まる。尚、筒状構成体1の屈曲形状は、必ずしもこれに限らず、任意の形状とすることができる。
【0073】
上記機能繊維ブラシモジュールの機能繊維2は、図1(a)(b)に示すように、有害物質除去機能を有する材料2bを含有した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、有害物質除去機能を有する材料2bを主成分とした表面コート層を有する高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、又は有害物質除去機能を有する材料2bを主成分とした粒子が固着した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維からなっている。これにより、機能繊維2は、有害物質除去機能を有する材料2bを繊維2aに付加することにより、ブラシ状の繊維2aにおける篩機能による粉塵除去のみならず、ケミカルフィルターとしての機能を果たすことが可能となる。
【0074】
上記繊維2aは、例えば、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、アクリル樹脂、レーヨンから選ばれる高分子物質である高分子繊維、又はガラス、カーボンから選ばれる無機物質である無機繊維からなっている。これによって、柔軟性のある高分子繊維、又は耐熱性のある無機繊維を選択することができる。
【0075】
また、繊維2aは、繊維径が3μm〜100μmとなっていることが好ましい。ここで、繊維2aの繊維径が3μmとは、繊度が約0.1デシテックス(dtex)の場合をいう。また、繊維2aの繊維径が100μmとは、繊度が約80デシテックス(dtex)の場合をいう。
【0076】
これにより、機能繊維2の剛性を適切に保持すると共に、有害物質除去のための有効表面積を適切に確保することができる。ここで、機能繊維2の繊維径が3μm未満の場合には、機能繊維2の剛性が弱く、機能繊維2が寝るので、機能繊維2の長さに応じた除去性能を確保することができない。一方、機能繊維2の繊維径が100μmを超える場合には、実施例5において図24に示すように、植毛密度やパイル長を長くして体積占有率を上げても、繊維径の小さい機能繊維2に比べて有効表面積が増加しないので、有害物質除去性能も低下する。尚、図24より、繊維2aは、繊維径が10μm〜70μmであることがより好ましく、繊維径が10μm〜50μm(1デシテックス(dtex)〜15デシテックス(dtex))となっていることがさらに好ましい。
【0077】
上記有害物質除去機能を有する材料2bは、例えば、活性炭、吸着材(ゼオライト、コロイダルシリカ、ゾルゲル法無機酸化物微粒子等)、触媒(各種金属又は金属酸化物粒子、金属コロイド等)が、適応すべき有害物質を含む気体又は液体に対して単独又は複数種にて使用される。また、種々の有害物質除去機能を有する材料2bを配合して同一繊維2aに被覆分散することもあれば、それぞれ異なる繊維2aに有害物質除去機能を有する材料2bを被覆分散することもある。これら機能繊維2は、例えば吸着・分解の反応手順にしたがって、順次、最適化された配列、パターンにて筒状構成体1の内壁面1aにセットされる。
【0078】
具体的には、有害物質除去機能を有する材料2bは、例えば、多孔質材料、金属触媒、光触媒の少なくとも1種類を含んでいる。上記多孔質材料としては、例えば、活性炭、シリカゲル、ゼオライトのうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。多孔質材料においては、その孔の空隙内にガスを取り込むことができ、高いガス吸着能力等を有する。したがって、例えば、トルエン(C6 H5 CH3 )、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3 CHO)、その他の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害ガスを多数吸着等させることができる。
【0079】
また、金属触媒としては、白金(Pt),銀(Ag),マグネシウム(Mg),金(Au),銅(Cu),亜鉛(Zn),カルシウム(Ca)から選ばれる組成を少なくとも1種類含むことが好ましい。これにより、各種の触媒に対応したガス分解性能を発揮することができる。例えば、金属触媒である白金(Pt)は、自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害ガスを、無毒の炭酸ガス(CO2 )と水(H2 O)等に分解することができる。また、酸化金属触媒である二酸化マンガン(MnO2 )はオゾンを分解することができる。
【0080】
さらに、光触媒は、二酸化チタン(TiO2 )又は酸化タングステン(WO3 ) から選ばれる組成を少なくとも1種類含んでいることが好ましい。例えば、光触媒としての二酸化チタン(TiO2 )は、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3 CHO)、その他の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)、又は窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害ガスを、無毒の炭酸ガス(CO2 )と水(H2 O)等に分解することができる。また、大腸菌等を滅菌・殺菌することも可能である。
【0081】
また、機能繊維ブラシモジュールには、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっていることが好ましい。尚、光エネルギーは例えば紫外線、可視光、電磁波によるものを含み、電気エネルギーは電圧印加によるものを含む。また、これらのエネルギーは、総括すると吸着・分解又は除菌を制御するために使用される。
【0082】
これにより、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーを併用することによって、有害物質除去機能が発現・向上し、さらに高い有害物質除去機能を得ることが可能となる。
【0083】
例えば、光は、紫外線から可視光までを有効とし、有害物質除去機能を有する材料2bである光触媒の活性化に使用される。
【0084】
また、電気は、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧にてなることが可能である。これにより、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧に基づく電子放出・注入効果によって、有害物質を含む気体又は液体における有害物質の分解を促進すると共に、例えば、触媒との相乗作用によって、分解反応を促進することができる。また、高電圧を印加することにより、気中放電を誘発して有害物質の分解・除菌を促進することが可能となる。
【0085】
さらに、熱は、有害物質除去機能を有する材料2bにおける吸着時の相対湿度の調節、吸着速度を最適化、又は有害物質除去成分の脱離速度を制御するための温度調整に活用される。尚、温度コントロールには、誘導加熱、マイクロ波加熱が特に有効である。例えば、誘導加熱は全体を過熱する場合に有効であり、マイクロ波はスポット過熱に有効である。
【0086】
ここで、本実施の形態に係る機能繊維2の製造方法、つまり高分子物質又は無機物質からなる繊維2aに有害物質除去機能を有する材料2bを担持又は含有する方法としては、例えば、繊維2aを芯鞘型とし、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い熱溶融糸に粒子を固着させて製造すること等が可能である。
【0087】
上記構成の有害物質除去デバイス10における有害物質除去方法について説明する。
【0088】
図1(a)に示すように、有害物質を含む気体又は液体が、筒状構成体1における一方の開口部としての流入開口部10aから流入され、機能繊維2にて有害物質が除去された後、他方の開口部としての排出開口部10bから排出される。
【0089】
筒状構成体1の内壁面1aには、ブラシ状に起毛された有害物質除去機能を有する機能繊維2が設けられているので、有害物質は機能繊維2によって除去され、有害物質除去後の気体又は液体は、筒状構成体1における排出開口部10bから排出される。したがって、簡単な構成の有害物質除去デバイス10を実現することができる。
【0090】
上記構成の有害物質除去デバイス10は、非常に低圧力損失ながらも高い比表面積の機能部位を持ち、従来フィルターとして一般的に用いられている機能繊維2を有しないハニカムの構造体と比較しても非常に高い機能を有している。また、従来、流体の移送手段としか考えられていないパイプやチューブ等の部材として、本実施の形態の有害物質除去デバイス10を使用することによって、移送のみならず有害物質除去の効果を得ることができる。
【0091】
このように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10は、筒状構成体1と、有害物質除去機能を有する機能繊維2を該筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなっている。このため、有害物質除去のための有効表面積が格段に増加するので、有害物質を含む気体又は液体における有害物質除去物質を含む機能繊維2への接触面積が広くなる。有害物質を含む気体又は液体は、筒状構成体1の一方から流入し内部を通過するときに、機能繊維ブラシモジュールと接触し、このときに、機能繊維2の表面との接触抵抗によって乱流が発生する。このため、この乱流の発生によって、有害物質を含む気体又は液体と機能繊維との接触機会が増加し、このようなブラシ状に起毛した機能繊維2の全面で接触が繰り返される。したがって、有害物質を含む気体又は液体を効率よく無害化することができる。
【0092】
ここで、本実施の形態では、筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛された機能繊維2は直立し林立状態となって整然としており、ブラシ状であるため、機能繊維2は自由端を持ち、流体の流れに沿ってなびくので、流体の流れを阻害しない。このため、例えば特許文献2等に開示された従来の連続気泡を有する不織布等のフィルターにおいては通路が迷路のように入り乱れて流体の流れを阻害するのに比べて、筒状構成体1の内部を通過するときの圧力損失を小さくすることができる。
【0093】
一方、例えば特許文献1に開示されているように、ブラシ体が筒状体の内部に充填されたものからなっている場合には、ブラシ体の基材を構成する軸部が筒状体の筒軸に存在することになるので、筒状体の筒軸が中実状態となっており、有害物質を含む気体又は液体が通過する筒状体の有効断面積が減少する。
【0094】
この点、本実施の形態では、機能繊維ブラシモジュールは、有害物質除去機能を有する機能繊維2を該筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛したものからなっているので、筒状構成体1の筒軸部を塞ぐものがなく、筒状構成体1の筒軸に直交する断面の全てが有害物質を含む気体又は液体の有効通過領域となる。
【0095】
この結果、筒状構成体1の内壁面1aに繊維ブラシモジュールを構成した本実施の形態の有害物質除去デバイス10は、特許文献1と基本的に異なっており、特許文献1に比べて、大量の有害物質を含む気体又は液体を流せることになり、有害物質を含む気体又は液体を効率よく除去することができる。
【0096】
したがって、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス10を提供することができる。
【0097】
また、本実施の形態における有害物質除去デバイス10をエアコンやクリーンルーム装置、純水装置、ケミカルフィルター等の気体又は液体の浄化・精製システムに用いれば、この有害物質除去デバイス10は気体又は液体中の有害物質を吸着・分解・殺菌により効率的に除去するデバイスとなり、高機能の気体又は液体の浄化・精製システムを提供することができる。
【0098】
また、本実施の形態における有害物質除去デバイス10を化学プラント装置等の化学反応システムに用いれば、この有害物質除去デバイス10は高品位な触媒・吸着剤を担持したデバイスであり、効率的な化学合成や精製を行う化学プラント装置等の化学反応システムを提供することができる。これにより、従来のような生成物と触媒・吸着剤粒子とを分離する手間や触媒・吸着剤の表面積不足による効率の悪さを大きく改善することができる。
【0099】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0100】
すなわち、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を最適化すべく、筒状構成体1の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を設計パラメーターとしている。
【0101】
これにより、筒状構成体1の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を調整することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができる。このため、有害物質を含む気体又は液体の種類、濃度、流量等の多様化するユーザーニーズ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0102】
例えば、機能繊維2の繊維径が細いときは長さを短くし、繊維径が太いときは長めにするのが好ましい。また、筒状構成体1の断面積形状により、機能繊維2の太さ及び長さを調整することが好ましい。これらの最適化により、有害物質除去デバイス10における単位長さ当りの吸着効率を最大化できる。また、筒状構成体1の筒内寸法、筒長さ等を適宜選択することにより、最適化を図ることが可能となる。例えば、分解等の反応時間に律速される場合には、流速に応じて筒長さを最適化すればよい。
【0103】
また、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、設計パラメーターにおける少なくとも2つ以上の仕様からなる機能繊維ブラシモジュールを配置して構成されていることが好ましい。
【0104】
これにより、設計パラメーターである寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法の少なくとも1つを、複数種の仕様にて構成することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0105】
また、上記の説明では、機能繊維2は、筒状構成体1に一様に分布して設けられているが、必ずしもこれに限らず、例えば、図4に示すように、機能繊維2が内壁面1aの一部において起毛されていない部分があってもよい。これにより、乱流の発生を促進したり、流体の流れをコントロールしたりすることができる。
【0106】
また、筒状構成体1の内部における機能繊維2の密度、繊度、長さ、材質のいずれかが2種類以上から構成されているとすることも可能である。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、2種以上の長さからなる機能繊維2が混合されて植毛されているとしたり、流体の進行方向又は周方向に異なる種類の植毛群で構成されているとしたりすることが可能である。これにより、乱流の発生等、流体の流れをコントロールすることができる。
【0107】
さらに、図5(b)に示すように、機能繊維2の密度が、筒状構成体1における流体の進行方向において、奥に進むに連れ高くなるようにすることも可能である。これにより、流体を容易に流入させ、効率よく、有害物質を除去した後、排出させることができる。
【0108】
このように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、機能繊維2は、筒状構成体1の内壁面1aにおいて全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的にブラシ状に起毛されているとすることができる。
【0109】
すなわち、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、機能繊維ブラシモジュールは、筒状構成体1の内壁面1aにおいて全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的に配置されている。そして、本実施の形態では、上記全体に亘って均一に配置されている場合における機能繊維2の植毛密度、又は複数の群をなして離散的に配置されている場合における各群の機能繊維2の植毛密度は、0.1%〜50%とすることができる。尚、機能繊維2の植毛密度とは、植毛部について単位面積当たりの繊維断面積が占有する面積の比率をいう。
【0110】
これにより、機能繊維ブラシモジュールを、筒状構成体1の内壁面1aにおいて全体に亘って均一にブラシ状に起毛したり、又は複数の群をなして離散的にブラシ状に起毛したりすることができ、用途に応じて機能繊維ブラシモジュールの配置方法を変更することが可能である。
【0111】
ここで、植毛密度が1%未満の場合には、除去のための有効面積が不足し、有害物質除去性能が不足する。一方、植毛密度が50%を超える場合には、機能繊維ブラシモジュールを通る気体又は液体の流速が低下し、圧力損失が高くなったり、又は乱流の発生が起こり難くなったりすることによって、除去効率も却って低下する。
【0112】
また、機能繊維2における単位面積当りの密度は、5%〜20%程度〔繊度2デシテックス(dtex)を180k本/inch2 以上〜繊度2デシテックス(dtex)を500k本/inch2 以下〕がより好ましい。
【0113】
尚、機能繊維2における単位面積当りの密度について、具体的には、以下のようになる。すなわち、例えば、1inch2 当たりの密度について、実際のパイル織りの機能繊維2にて試算すると、繊度2デシテックス(dtex)では、60k本/inch2 =1.6%となり、500k本/inch2 =17%となる。また、繊度6デシテックス(dtex)では、20k本/inch2 =1.9%となり、120k本/inch2 =12%となる。
【0114】
また、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、筒状構成体1の通気長さが50cm未満であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が5%以上とすることが可能である。ここで、例えば、直径30mmの筒状構成体1において機能繊維2の繊維長を5mmとし、繊度を2デシテックス(dtex)、密度を250k本/inch2 とした場合に体積占有率が5%となる。
【0115】
これにより、筒状構成体1の通気長さが50cm未満のような短い場合には、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を5%以上とすることにより、機能繊維2の密度を高くしても圧力損失はあまり増加しないので、効率よく有害物質除去を行うことができる。尚、筒状構成体1の通気長さが10cm未満であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が10%以上とすることがより好ましい。
【0116】
さらに、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、筒状構成体1の通気長さが50cm以上であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が5%以下であるとすることが可能である。
【0117】
これにより、筒状構成体1の通気長さが50cm以上のような長い場合には、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を5%以下とすることにより、機能繊維2の密度を低くして圧力損失を低減し、これによって、効率よく有害物質除去を行うことができる。尚、筒状構成体1の通気長さが100cm以上であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が3%以下であるとするのがより好ましい。
【0118】
また、前述したように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10においては、機能繊維2には、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっているが、光のエネルギーを付与する光源としての例えばLED紫外線ランプ11が、機能繊維2の少なくとも一部に光を照射する位置に配設されており、機能繊維2には、有害物質を吸着して分解する吸着分解剤が付着されていると共に、吸着分解剤は、光を透過、散乱又は吸収する機能を有しているとすることができる。吸着分解剤は、例えば、二酸化チタン(TiO2 )又は酸化タングステン(WO3 )を用いることができる。
【0119】
例えば、図6に示すように、この機能繊維2が起毛されていない内壁面1aである天井面にエネルギー発生部材である例えばLED紫外線ランプ11を設置することができる。尚、光源は必ずしもLED紫外線ランプ11に限らず、他の紫外線から可視光までのいずれかの波長領域を出射可能であり、有害物質除去機能を有する材料2bである光触媒の活性化等に使用されることが可能である。
【0120】
これにより、LED紫外線ランプ11にて機能繊維2の少なくとも一部に光を照射することによって、機能繊維2の付着された吸着分解剤に光が透過、散乱又は吸収され、該吸着分解剤の作用により、有害物質を吸着分解して、除去することが可能となる。
【0121】
ここで、LED紫外線ランプ11の配設においては、各種のものが考えられる。例えば、前記図6に示す筒状構成体1の内壁面1aにおける天井面にLED紫外線ランプ11を配設する場合においては、図7(a)(b)に示すように、機能繊維2が起毛されている部分にLED紫外線ランプ11を配設すると共に、機能繊維2の下側に空間部4が存在している構成が可能である。
【0122】
また、図8(a)に示すように、筒状構成体1の内壁面1aにおける天井面にLED紫外線ランプ11を配設すると共に、他の内壁面1aである側面及び床面に機能繊維2を起毛し、かつ筒軸空間部3を設ける構成が可能である。この場合、図8(b)に示すように、LED紫外線ランプ11を、筒状構成体1の天井面の内壁面1aにおける長さ方向の全体に配設することができる。一方、必ずしもこれに限らず、図9(a)(b)に示すように、LED紫外線ランプ11を、筒状構成体1の天井面の内壁面1aにおける長さ方向に対して離散的に配設することも可能である。
【0123】
一方、図10(a)(b)及び図11(a)(b)に示すように、筒状構成体1の軸上にLED紫外線ランプ11を配設することが可能である。尚、図10(a)(b)においては、機能繊維2とLED紫外線ランプ11との間には、筒軸空間部3が存在している一方、図11(a)(b)においては、機能繊維2とLED紫外線ランプ11とが接触している。
【0124】
さらに、本実施の形態では、LED紫外線ランプ11等の光のエネルギーを付与する光源に限らず、電気のエネルギーを付与する電極が、筒状構成体1の筒内における少なくとも1箇所に配設されていると共に、電極にて、例えば、内壁面1a同士や内壁面1a上の機能繊維2同士、又は内壁面1a若しくは内壁面1a上の機能繊維2と電極との間で電界を発生させ、電流を流し、又は放電可能になっているとすることが可能である。
【0125】
これにより、電極にて電界を発生させ、電流を流し、又は放電することによって、各種の有害物質除去機能を用いて、有害物質を除去することが可能となる。
【0126】
具体的には、図12(a)(b)及び図13(a)(b)に示すように、筒状構成体1の軸上に電極12を配設して、電極12と内壁面1aとの間で電界を発生させることが可能である。これにより、有害物質における極性分子等を引き付けることが可能となる。尚、図12(a)(b)においては、機能繊維2とLED紫外線ランプ11との間には、筒軸空間部3が存在している。一方、図13(a)(b)においては、機能繊維2が導電繊維からなっており、機能繊維2と電極12とが接触している。機能繊維2が導電性は、例えば、1012(Ω/cm)以下である。
【0127】
この場合、機能繊維2に電流が流れることにより、機能繊維2においては分解、殺菌等の有害物質除去効果を発揮することが可能となる。
【0128】
また、図14(a)(b)に示すように、筒状構成体1の天井面及び床面の内壁面1aに電極12・12を設けることが可能である。これにより、対向する電極12・12間において電界を発生し、有害物質における極性分子等を引き付けることが可能となる。
【0129】
さらに、図15(a)(b)に示すように、筒状構成体1の天井面及び床面の内壁面1aに放電用電極13・13を設けることが可能である。この場合、機能繊維2が導電繊維からなっており、機能繊維2・2の間で放電することにより、+極性分子を引き付けたり、有害物質を分解させたりすることが可能となる。
【0130】
また、電極12及び放電用電極13の場合においても、図16(a)(b)に示すように、電極12及び放電用電極13を筒状構成体1の内壁面1aにおける筒軸方向に対して離散的に配設することが可能である。これにより、流体の進行方向とは垂直方向の電界を付与したり、進行方向の部位によって電界を変えたりすることが可能となる。
【0131】
また、有害物質除去デバイス10のさらに異なる形態として、図17(a)に示すように、筒状構成体1の内部に遮蔽板14を設けたり、図示しない凹凸を設けたりすることが可能である。この場合、遮蔽板14や凹凸には、機能繊維2を起毛させておくのがさらに好ましい。また、図17(b)に示すように、筒状構成体1を折り曲げてボックス状に形成することも可能である。
【0132】
これらにより、乱流を発生させたりして、流体の流れをコントロールすることにより、筒状構成体1の内部での有害物質の除去効果を高めることができる。また、コンパクトな有害物質除去デバイス10とすることが可能である。
【0133】
〔実施の形態2〕
本発明における他の実施の形態について図18に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0134】
本実施の形態の有害物質除去デバイス20は、図18に示すように、前記実施の形態1の筒状構成体1が複数設けられ、かつ互いに並列に配されてハニカム形状になっている。
【0135】
詳細には、一つの筒状構成体1は、前記実施の形態1の図2に示す有害物質除去デバイス10と相似形のものであり、その寸法は、例えば、内法巾Wが10mmであり、内法高さHが例えば10mmであり、筒長さLが30mmとなっている。また、機能繊維2の起毛長さであるパイル長dは、それぞれ、例えば3mmとなっている。そして、このサイズの有害物質除去デバイス10における25個が、5行5列にハニカム形状に積層されて1つの有害物質除去デバイス20となっている。尚、有害物質除去デバイス20の外側には、25個の有害物質除去デバイス10を1ブロックに形成するための筐体21が設けられているとすることも可能である。
【0136】
このように、本実施の形態の有害物質除去デバイス20では、筒状構成体1は、複数設けられていると共に、互いに直列若しくは並列、又は直列かつ並列に配されているとすることが可能である。
【0137】
これにより、反応時間が足りないときには、筒状構成体1を直列に接続して使用することによって、反応時間を確保することができる。また、2種以上のガスを分別吸収する場合、有害物質除去機能を有する材料2bが互いに異なる機能繊維ブラシモジュールを起毛した筒状構成体1を直列に配設置することによって、最適化を図ることができる。
【0138】
一方、有害物質除去機能が不足する場合には、筒状構成体1を並列に配設することによって、同じ長さにて圧力損失を高めることなく、処理能力を上げることができる。
【0139】
さらに、直列かつ並列に筒状構成体を配することによって、両方の作用効果を達成することができる。
【0140】
ここで、本実施の形態の有害物質除去デバイス20では、筒状構成体1の通気長さ、つまり本実施の形態では筒長さLが50cm以下であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率(機能繊維2の体積比率)が0.01%〜40%であることが好ましい。
【0141】
すなわち、ハニカム形状においては、複数の筒状構成体1…が並列に配される。このため、複数の筒状構成体1…の体積を考慮して、筒状構成体1の通気長さを50cm以下とすると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を0.01%〜40%とすることによって、圧力損失を適切に設定して効率よく有害物質を除去することができる。尚、筒状構成体1の通気長さは10cm以下がより好ましい。
【0142】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0143】
本実施の形態の有害物質除去デバイス10・20における有害物質除去効果を確認するための各種の検討及び実験を行った。
【0144】
具体的には、以下の検討及び確認実験を行った。
(1)表面積の優位性
(2)有害物質除去性能
(3)特許文献1との有効表面積比較
(4)筒状構成体1の機能繊維2における繊維長さが短い場合の検討
(5)繊維径と表面積との関係
(6)エネルギーを付加した場合の効果
(7)筒状構成体を波状に形成した場合の有害物質除去性能
(8)複数の筒状構成体をハニカム形状に積層した場合の有害物質除去性能
以下、それぞれについて説明する。
【0145】
〔1:表面積の優位性〕
本実施の形態の有害物質除去デバイス10における機能繊維2の充填率と表面積との関係についての試算を行った。
【0146】
試算は、表1に示すように、円形断面の筒状構成体1に活性炭からなる有害物質除去機能を有する材料2bを付着させた機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10について、実施例1として、機能繊維2の充填率と表面積との関係を試算した。尚、円形断面の筒状構成体1の内径を10mmとし、筒状構成体1の筒長さLを10mmとし、機能繊維2のパイル長dを5mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、密度を50×103 、100×103 、300×103 、500×103 本/inch2 として、機能繊維2の充填率と有効表面積との関係を求めた。
【0147】
【表1】
【0148】
また、従来例1として、非常に低圧力損失ながらも高い比表面積を有しているとして一般的に市販されているハニカムフィルターについて、同様に試算した。
【0149】
試算に用いた従来例1のハニカムフィルターは、市販の排出ガス浄化装置のアルミ六角構造ハニカムフィルターであり、その仕様は、表2に示す通りである。すなわち、セルサイズは0.7〜1.0mm、セル数は600〜1200個/inch2 、開口率は96.4〜94.9%、有効表面積は35.3〜49.8(cm2 /cm3 )である。
【0150】
【表2】
【0151】
上記表1及び表2に基づいて、機能繊維2の充填率と表面積との関係を試算した結果、図19に示すグラフを得た。尚、従来例1においては、(100−開口率)%を機能部位(ハニカムの内表面)の体積占有率(%)として算出し、その機能部位(ハニカムの内表面)の体積占有率(%)と有効表面積(cm2 /cm3 )との関係についてプロットした。
【0152】
その結果、図19から分かるように、従来例1の場合は機能部位(ハニカムの内表面)の体積占有率(%)が増加しても有効表面積は35.3〜49.8(cm2 /cm3 )であり、殆ど変化がない。これに対して、実施例1では、体積占有率が0(%)から30(%)まで増加する間に、有効表面積は0(cm2 /cm3 )から800(cm2 /cm3 )まで増加する。
【0153】
この結果、実施例1では、従来例1と比較して、不可能なレベルの有効表面積(cm2 /cm3 )を容易かつ低圧力損失にて発現させることが可能であることが分かる。
【0154】
この理由は、従来例1の機能繊維2のないハニカムフィルターでは、セルサイズを小さくするために非常に微細な加工が必要になると共に、セルサイズを小さくすると圧力損失が高くなるためである。また、セルサイズを従来例1よりも小さくして実施例1と同等の表面積を得ることは構造上不可能といえるためである。
【0155】
〔2:有害物質除去性能〕
本実施の形態における有害物質除去デバイス10の有害物質除去性能について、確認実験を行った。
【0156】
具体的には、有害物質除去デバイス10を用いてトルエンガスの除去性能及び経時変化を実験により求めた。
【0157】
実験においては、実施例2の試験体として、表3及び図20に示す有害物質除去デバイス10における正方形断面の筒状構成体1を縦横10個ずつのブロックにした有害物質除去デバイス20を使用した。上記一個の有害物質除去デバイス10における筒状構成体1の寸法は、例えば、内法巾Wを10mmとし、内法高さHを例えば10mmとし、筒長さLを10mmとした。また、機能繊維2は、起毛長さであるパイル長dをそれぞれ、5.5mmとし、繊度を2デシテックス(dtex)とし、密度を300×103 本/inch2 とした。植毛位置は、筒状構成体1の上下とした。さらに、有害物質除去機能を有する材料2bとしては、活性炭を繊維2aの表面に固着した。
【0158】
【表3】
【0159】
一方、従来例2として、市販されているセルサイズ1mmの排出ガス浄化装置のアルミ六角構造ハニカムフィルターに実施例2と同じ活性炭を固着させたものを試験体として使用した。
【0160】
また、実験においては、各試験体に濃度5ppmのトルエン(C6 H5 CH3 )を流量40m3 /hrにて有害物質除去デバイス20等に通気させ、試験体通過後のトルエン濃度を測定した。
【0161】
その結果を、図21に示す。図21は、トルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【0162】
図21から分かるように、従来例2では、20時間まではトルエン濃度が約0.5ppmにまで除去できる。しかし、20時間を越えると除去率が急激に悪くなり、60時間以上では全く除去できないことがわかった。
【0163】
これに対して、実施例2では、20時間まではトルエン濃度が略0ppmにまで完全に除去できることが分かった。また、20時間を越えての除去率の低下は従来例2の除去率の低下に比べて緩慢であり、100時間でも除去後のトルエン濃度は約3ppmであり、約40%の除去率を確保できることが分かった。
【0164】
この結果、有害物質除去デバイス20は、従来にない高機能なケミカルフィルターとして使用できることが分かった。
【0165】
〔3:特許文献1との有効表面積比較〕
次に、図28(a)(b)に示す特許文献1に記載された、筒状体101の内部に、芯材であるシャフト102aに酸化チタンを塗布したブラシ毛102bを起毛したブラシ体102を充填した汎用フィルター100と、本実施の形態における筒状構成体1の内壁面1aに機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10とについて、有効表面積を比較検討した。
【0166】
具体的には、特許文献1に記載された汎用フィルター100と本実施の形態の有害物質除去デバイス10との各有効表面積(cm2 /cm3 )及び体積占有率(%)について、試算を行った。
【0167】
まず、従来例3としての特許文献1に記載された汎用フィルター100においては、表4に示すように、シャフト径1,5,9mmのシャフト102aにそれぞれブラシ毛102bを起毛した汎用フィルター100を試験体として使用した。汎用フィルター100の開口部形状は円形とし、筒の内径は10mmとし、筒長さは10mmとし、パイル長はシャフト径1,5,9mmに対応して4.5,2.5,0.5mmとし、繊度は2デシテックス(dtex)とし、密度は200×103 本/inch2 として試算した。
【0168】
一方、実施例3の試験体としては、筒状構成体1の内壁面1aに機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10を使用した。有害物質除去デバイス10の開口部形状は円形とし、筒の内径は10mmとし、筒長さLは10mmとし、機能繊維2のパイル長dは5mmとし、機能繊維2の繊度は2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度は200×103 本/inch2 として試算した。
【0169】
【表4】
【0170】
試算結果を図22に示す。図22は上記各試験体における有効表面積(cm2 /cm3 )と体積占有率(%)との試算結果を示すグラフである。
【0171】
図22において、左の縦軸である有効表面積(cm2 /cm3 )について棒グラフで示すように、従来例3では、シャフト径1mmの場合の有効表面積は約30(cm2 /cm3 )であり、シャフト径5mmの場合の有効表面積は約80(cm2 /cm3 )であり、シャフト径9mmの場合の有効表面積は約30(cm2 /cm3 )であった。すなわち、シャフト径が9mmになると、パイル長が短くなるので、結果的に、有効表面積は減少することが分かる。
【0172】
これに対して、実施例3の内壁面1aでの植毛においては、有効表面積は約300(cm2 /cm3 )であった。したがって、実施例3が従来例3よりも有効表面積(cm2 /cm3 )が格段に大きいことが分かる。
【0173】
また、体積占有率(%)については、図22において、右の縦軸である体積占有率(%)について折れ線グラフで表すように、従来例3では、シャフト径1mmの場合の体積占有率は約2(%)であり、シャフト径5mmの場合の体積占有率は約30(%)であり、シャフト径9mmの場合の体積占有率は約80(%)であった。すなわち、シャフト径が太くなるほど、体積占有率(%)が増加する。
【0174】
これに対して、実施例3の内壁面1aでの植毛においては、体積占有率は約10(%)であった。
【0175】
上記の結果、 シャフト102aに起毛したブラシ毛102bを単純に充填した従来例3では、シャフト径が太くなるほど筒内の開口面積が大きくなり、体積占有率(%)が大きくなり、その結果、圧力損失が高くなることが予想される。
【0176】
また、従来例3では、実施例3に比べて植毛基材の表面積が小さくなるので、必然的にブラシ毛102bの本数が少なくなる。したがって、ブラシ毛102bの有効な表面積を得ることができない。また、従来例3では、シャフト102aが太くなるほど筒内の開口面積が大きくなるので、通気性が悪くなる。
【0177】
したがって、特許文献1に記載された図28(a)(b)に示す筒状体101の内部に、芯材であるシャフト102aに酸化チタンを塗布したブラシ毛102bを起毛したブラシ体102を充填した汎用フィルター100と本実施の形態の有害物質除去デバイス10との関係においては、本実施の形態に係る筒状構成体1の内壁面1aに機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10は、体積占有率(%)が小さく、かつ有効表面積(cm2 /cm3 )が大きいので、有害物質除去性能が、格段に優れていることが把握される。
【0178】
〔4:筒状構成体1の機能繊維2における繊維長さが短い場合の検討〕
例えば、筒状構成体1の機能繊維2における繊維長さが短い場合に、有害物質除去機能を有するかが問題となる。そこで、筒状構成体1に機能繊維2を有しない場合との比較において、筒長さLを考慮した筒内部の有害物質除去に係わる表面積を試算した。
【0179】
試験体は、表5に示すように、実施例4においては、機能繊維2を植毛した筒状構成体1の形状は円筒とし、筒の内径は10mmとし、パイル長dは5mmとし、繊度は2デシテックス(dtex)とし、密度は100×103 本/inch2 とし、充填率は0.6%とした。
【0180】
一方、比較例1の試験体としては、機能繊維2のない筒状構成体1を使用した。表5に示すように、機能繊維2のない筒状構成体1の形状は円筒とし、筒の内径は10mmとした。パイル長は0mmである。
【0181】
【表5】
【0182】
そして、実施例4においては、筒の長さに対する筒内部の表面積と機能繊維2の表面積との合計を試算した。また、比較例1においては、筒の長さに対する筒内部の表面積(cm2 )を試算した。
【0183】
その結果を、図23に示す。図23は筒の長さに対する筒内部の表面積を示すグラフである。
【0184】
図23から分かるように、比較例1に示す機能繊維2のない筒状構成体1においては、筒長さLが10mmから100mmに増加しても筒内部の表面積は、2〜3(cm2 )程度の増加しかなかった。
【0185】
これに対して、実施例4に示す短い長さの機能繊維2を有する筒状構成体1においては、筒長さLが10mmから100mmに増加した場合、筒内部の表面積は10(cm2 )から120(cm2 )まで増加する。
【0186】
この結果、比較例1である機能繊維2のない筒状構成体1に機能粒子をコーティングしても大きな表面積は得られないことが分かる。
【0187】
ここで、前記従来例1に示すセルサイズ1mm、かつ筒長さが20mmのハニカムフィルターにおける筒内部の表面積は、約90(cm2 )である。したがって、実施例4である短い長さの機能繊維2を有する筒状構成体1においては、筒長さLを長くすれば、市販の上記従来例1のハニカムフィルターと同等の表面積を確保できることが分かる。
【0188】
そして、このような実施例4の短い長さの機能繊維2を有する筒状構成体1では、圧力損失の変化を略0とすることが可能となるので、有害物質除去性能を大きく向上させ得ることが把握できる。
【0189】
〔5:繊維径と表面積との関係〕
次に、実施例5として、有害物質除去デバイス10における繊維径と表面積との関係について試算した。
【0190】
試験体は、表6に示すように、筒状構成体1の筒形状を円筒とし、筒状構成体1の内径を10mmとし、筒状構成体1の筒長さLを10mmとし、機能繊維2のパイル長dを5mmとし、機能繊維2の繊度を2〜300デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 〜2×103 本/inch2 とし、機能繊維2の体積占有率18.6%としたものを使用した。
【0191】
【表6】
【0192】
その結果を、図24に示す。図24は繊維径と表面積との関係を示すグラフである。
【0193】
図24に示すように、繊維径と表面積との関係は略双曲線にて表され、繊維径約200〜100μmでは、体積当たりの表面積は約40〜80(cm2 /cm3 )であるが、繊維径が100μm未満になると急激に体積当たりの表面積が増加することが分かる。
【0194】
したがって、有害物質除去デバイス10における機能繊維2の繊維径は、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましいことが把握できる。
【0195】
〔6:エネルギーを付加した場合の効果〕
次に、有害物質除去機能を有する材料2bの有害物質の除去機能を発現・向上させるために、機能繊維2に光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーを与えた場合の効果について、実施例6として確認実験を行った。
【0196】
実施例6の試験体としては、前記図6に示す、機能繊維2が起毛されていない内壁面1aである天井面にエネルギー発生部材であるLED紫外線ランプ11を設置した有害物質除去デバイス10を使用した。また、比較例2として、実施例6と同一試験体条件であって、LED紫外線ランプ11のないものを試験体として使用した。
【0197】
具体的な試験体条件としては、表7に示すように、筒状構成体1の内寸法を30×30mmとし、筒状構成体1の筒長さLを30mmとし、機能繊維2のパイル長dを30mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の床面とし、有害物質除去機能を有する材料2bは、二酸化チタン(TiO2 )+シリカゲルとした。また、実施例6におけるLED紫外線ランプ11の設置については、筒状構成体1の天井面とした。
【0198】
【表7】
【0199】
そして、実験は、上記の各試験体に、濃度10ppmのホルムアルデヒド(HCHO)を流量10m3 /hrにて通気させ、試験体通過後のホルムアルデヒド濃度を測定した。
【0200】
その結果を図25に示す。図25は、ホルムアルデヒド(HCHO)の除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【0201】
図25に示すように、LED紫外線ランプ11の存在しない比較例2では、20時間経過後から除去率が低下し、80時間経過後においては除去性能がなくなった。これに対して、実施例6では、100時間経過後においても約95%以上の除去性能を維持し、初期の除去性能からの低下は少なかった。
【0202】
この結果、LED紫外線ランプ11と光触媒との組み合わせによる分解除去システムを導入することによって、除去性能を高めるだけでなく、有害物質除去デバイス10・20の長寿命化を図ることも可能であることが把握できた。
【0203】
〔7:筒状構成体を波状に形成した場合の有害物質除去性能〕
次に、筒状構成体1を波状に屈曲させて形成した場合の有害物質除去性能について、実施例7として確認実験を行った。
【0204】
実施例7の試験体としては、前記図3に示す、筒状構成体1を波状に屈曲させて形成した有害物質除去デバイス10を使用した。また、比較例3の試験体として、直線状の有害物質除去デバイス10である以外は、実施例7と同一試験体条件のものを使用した。
【0205】
具体的な試験体条件は、表8に示すように、筒状構成体1の内径を30mmとし、筒状構成体1の筒長さLを400mmとし、機能繊維2のパイル長dを5mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の全周囲とし、有害物質除去機能を有する材料2bを活性炭とした。また、実施例7における筒状構成体1の形状として、約100mm毎に約90度に屈曲させた波状とした。
【0206】
【表8】
【0207】
そして、実験は、上記の各試験体に、濃度5ppmのトルエン(C6 H5 CH3 )を流量20m3 /hrにて通気させ、試験体通過後のトルエン濃度を測定した。
【0208】
その結果を図26に示す。図26は、経過時間とトルエン濃度(ppm)との関係を示すグラフである。
【0209】
図26に示すように、筒状構成体1を直線状に形成した比較例2では、40時間経過後から除去率が低下し始め、80時間経過後においては除去性能がなくなった。これに対して、実施例7では、80時間経過までの除去性能の低下は小さく、80時間経過時での除去性能は約70%を維持していた。また、100時間経過後においても除去性能は約20%を維持していた。
【0210】
この結果、実施例7のように有害物質除去デバイス10を屈曲させるによって、乱流が発生してガスと機能繊維2との接触率が上がるので、有害物質除去性能が向上することが把握される。尚、この効果は、パイル長dが短い場合に特に大きい。
【0211】
〔8:複数の筒状構成体をハニカム形状に積層した場合の有害物質除去性能〕
次に、複数の筒状構成体1をハニカム形状に積層した有害物質除去デバイス20の有害物質除去性能について、実施例8として確認実験を行った。
【0212】
実施例8の試験体としては、有害物質除去デバイス10を複数積層してハニカム形状にした前記図18に示す有害物質除去デバイス20を使用した。また、比較例4として、実施例8と同一外形寸法の単体の有害物質除去デバイス10を試験体として使用した。
【0213】
具体的な試験体条件は、表9に示すように、実施例8では、筒状構成体1の内寸法を10×10mmとし、筒状構成体1の筒長さLを30mmとし、機能繊維2のパイル長dを3mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の天井面と床面との2面とし、機能繊維2の有効表面積を140(cm2 /cm3 )とし、筒状構成体1内の体積占有率を5.6(%)とし、有害物質除去機能を有する材料2bを活性炭とした有害物質除去デバイス10を、25個ハニカム形状に組んだ有害物質除去デバイス20を試験体として使用した。
【0214】
また、比較例4の具体的な試験体条件は、表9に示すように、筒状構成体1の内寸法を50×50mmとし、筒状構成体1の筒長さLを30mmとし、機能繊維2のパイル長dを15mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の天井面と床面との2面とし、機能繊維2の有効表面積を140(cm2 /cm3 )とし、筒状構成体1内の体積占有率を5.6(%)とし、有害物質除去機能を有する材料2bを活性炭とした1個の有害物質除去デバイス10を試験体として使用した。
【0215】
【表9】
【0216】
実験は、上記の各試験体に濃度5ppmのトルエン(C6 H5 CH3 )を流量20m3 /hrにて通気させ、試験体通過後のトルエン濃度を測定した。
【0217】
その結果を図27に示す。図27は、経過時間とトルエン濃度(ppm)との関係を示すグラフである。
【0218】
図27に示すように、筒状構成体1を1個にて形成した有害物質除去デバイス10を用いた比較例4では、0〜40時間における除去率が約60%であった。そして、40時間経過後においては、除去率が徐々に低下し、80時間経過後においては除去性能がなくなった。これに対して、実施例8のハニカム形状の有害物質除去デバイス20では、0〜60時間における除去率が約80%以上であった。そして、60時間経過後においては、除去率が低下し、100時間経過後において除去性能がなくなった。
【0219】
この結果、デバイスをハニカム形状にすることによって、開口面積に対して短いパイル長でも効率よくガス除去することが把握できた。
【0220】
〔総合評価〕
最後に、上述した各種の検討及び確認実験から得られた有害物質除去デバイス10・20の全般的な考察を行う。
【0221】
まず、流入開口部10aから見て機能繊維2の空隙箇所が小さい場合、つまり機能繊維2のパイル長が長い場合には、筒状構成体1の長さによらず有害物質除去に有効である。ただし、筒状構成体1の長さが長いと、若干、圧力損失が高くなる傾向が見られる。
【0222】
一方、流入開口部10aから見て機能繊維2の空隙箇所が大きい場合、つまり機能繊維2のパイル長が短い場合には、筒状構成体1の長さが短いと気流が機能繊維2に接触し難いが、非常に圧力損失が低い。ただし、機能繊維2は、内壁面1aに偏って存在しているが、有害物質除去のための表面積は十分大きい。
【0223】
したがって、機能繊維2のパイル長が短い場合は、筒状構成体1の長さが長い場合に有効といえる。特に、筒状構成体1を屈曲したり、筒状構成体1の内部で機能繊維2のパイル長を変えたりして気流を乱すことにより、有害物質除去効率を高めることが可能である。
【0224】
また、有害物質除去デバイス10を複数組み合わせてハニカム形状の有害物質除去デバイス20とした場合には、機能繊維2のパイル長を短くしておくことによって、圧力損失をかなり低くした状態にて高い有害物質除去性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明の有害物質除去デバイスは、有害物質を含む気体又は液体における有害物質を押し出し流れで除去する有害物質除去性能の優れたものである。主として、気体又は液体中の有害物質を吸着・分解・殺菌により効率的に除去する有害物質除去デバイスに適用できると共に、この有害物質除去デバイスを用いた例えばクリーンルーム装置、純水装置、ケミカルフィルター等の気体又は液体の浄化・精製システムに適用できる。
【0226】
また、本発明の用途を化学物質の処理装置に置き換えれば、本発明の有害物質除去デバイスは高品位な触媒・吸着剤を担持したデバイスであり、効率的な化学合成や精製に利用できる例えば化学プラント装置等の化学反応システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0227】
1 筒状構成体
1a 内壁面
2 機能繊維
2a 繊維
2b 有害物質除去機能を有する材料
2c 基材
3 筒軸空間部
4 空間部
10 有害物質除去デバイス
10a 流入開口部(一方の開口部)
10b 排出開口部(他方の開口部)
11 LED紫外線ランプ(光源)
12 電極
13 電極
14 遮蔽板
20 有害物質除去デバイス
d パイル長
H 内法高さ
L 筒長さ
W 内法巾
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質を含む気体又は液体における有害物質を押し出し流れで除去する有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気体又は液体の有害物質を除去するデバイスとして、有害物質の種類に応じて適切な吸着剤、又は触媒等の分解剤を含有した薄膜状若しくはハニカム(honeycomb) 状フィルターが一般的に使用されていた。例えば、吸着剤として活性炭粒子を基材及び結着材と混合してそのままフィルター化したり、上記フィルター材をハニカム形状成型物としたりしていた。
【0003】
また、環境改善に有用なフィルターを簡単に製作でき安価に提供できることを目的として、筒状のものや箱状のもの等に、平滑面のものに比べて表面積が大となるものを基材としたものに酸化チタン膜を形成し、これらを充填することにより構成したフィルターがある。基材としてとして例えばブラシやタワシのように細毛状の基材を束ねたものや、ガラスや樹脂等のもの、布や紙の様な繊維質のもの等の材質や形状に限定されずに、その表面が多孔質であったり、繊維状であったり、ハニカム状であったり、球面である等の基材に酸化チタン膜を形成したものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、図28(a)(b)に示すように、筒状体101の内部にブラシ体102を充填した汎用フィルター100が開示されている。
【0005】
上記ブラシ体102は、芯材であるシャフト102aにブラシ毛102bを起毛したものからなっている。そして、この汎用フィルター100の筒状体101の内部に気体や液体を通すことにより、ブラシ毛102bに塗布された有害物質除去用機能物質である酸化チタンの光触媒機能によって窒素酸化物(NOX )を分解したり、又は大腸菌等を滅菌したりできるものとなっている。
【0006】
この特許文献1に開示された光触媒機能汎用フィルターは、安価に環境改善を行うため筒状のものや箱状のもの等に有効性の高いチタンコート基材を充填するという手段を提案したものであり、圧力損失、除去効率を改善目的にしたものでない。
【0007】
また、例えば特許文献2には、図29(a)〜(d)に示すように、多数のチューブ201…を集束してハニカム形状のフィルター本体202を形成し、該フィルター本体202の上流端にガス流入口203…を千鳥状に配すると共に、フィルター本体202の下流端にガス流入口203…に対向する箇所以外の箇所にガス流出口204…を設けて、ディーゼル排ガス中の粒子状物質を捕集するハニカムフィルター200が開示されている。
【0008】
このハニカムフィルター200では、チューブ201を目の粗い炭化珪素からなる織布又は不織布にて形成する。また、図29(b)に示すように、チューブ201の外側に濾過層210を設けたものと該濾過層210を設けないものとを千鳥状に配する。濾過層210は、図29(d)に示すように、チューブ201よりも目の細かい繊維211、微小繊維212及び空隙213からなるマット層で形成されてなっている。さらに、繊維211及び微小繊維212の表面には、気相蒸着法による図示しない炭化珪素のコーティング層が有害物質除去用機能物質として設けられている。
【0009】
上記ハニカムフィルター200では、図29(c)に示すように、ガス流入口203からチューブ201内に流入したディーゼル排ガスGは、矢印で示すように、目の細かい繊維層の不織布から形成される濾過層210を通過して隣接するチューブ201に流入する。その際、ディーゼル排ガスG中に含まれている粒子状物質が濾過層210に捕集される。特に、気相蒸着法によるコーティングが施されている微小繊維212によってディーゼル排ガスG中の粒子状物質が捕集される。そして、粒子状物質が除去されて浄化されたディーゼル排ガスG’は、ガス流出口204から系外に排出される。
【0010】
これにより、高強度、高靱性で割れ難く、また、単位体積当たりの濾過面積が大きく、かつ、低コスト、低圧損及び高集塵率のハニカムフィルター200を提供するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−1022号公報(2002年1月8日公開)
【特許文献2】特開2002−320807号公報(2002年11月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の特許文献2に開示されたハニカムフィルター200においては、ディーゼル排ガスGを目の細かい繊維層の不織布マット層で形成される濾過層210を通過させるので、圧力損失が大きいという問題を有している。
【0013】
すなわち、従来の有害ガス除去フィルターでは、吸着効率を上げようとして緻密な構造にすると圧力損失が大きくなるので、例えば加圧型でないと使用できないという欠陥があった。逆に、圧力損失が大きくなることからフィルターの厚み、及びフィルターの緻密度をあまり高くすることができないので、効率及び寿命が稼げないという欠陥を有していた。また、フィルターの厚みが薄いので、分解等の時間のかかる反応では処理能力が低い等の欠陥を有していた。
【0014】
一方、上記従来の特許文献1に開示された汎用フィルター100では、ブラシ体102が筒状体101の内部に充填されたものからなっており、不織布繊維等の濾過層は存在していない。しかし、上記汎用フィルター100では、ブラシ体102の軸部が中実となっており、筒状体101の軸に直交する断面の有効断面積が低減されるので、除去効率が低下するという問題を有している。
【0015】
すなわち、特許文献1に開示された光触媒機能汎用フィルターは、安価に環境改善を行うために筒状のものや箱状のもの等に有効性の高いチタンコート基材を充填するという手段を提案したものであり、圧力損失や除去効率を改善目的にしたものではない。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の有害物質除去デバイスは、上記課題を解決するために、筒状構成体と、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなり、有害物質を含む気体又は液体が、上記筒状構成体における一方の開口部から流入され、上記機能繊維ブラシモジュールにて有害物質が除去された後、他方の開口部から排出されることを特徴としている。尚、筒状構成体は、例えば、円形、楕円形、多角形等の断面形状を有していればよく、その断面形状にこだわらない。また、有害物質除去機能を有する機能繊維における、筒状構成体の内壁面へのブラシ状の起毛方法は、筒状構成体の内壁面に該機能繊維を直接静電植毛してもよいし、又は静電植毛フィルム若しくは機能繊維を起毛したフレキシブル基体を筒状加工する方法でもよく、その手段を制限するものでない。
【0018】
上記の発明によれば、有害物質を含む気体又は液体は、筒状構成体における一方の開口部から流入される。この筒状構成体の内壁面には、有害物質除去機能を有する機能繊維をブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールが設けられているので、有害物質は機能繊維ブラシモジュールによって除去され、有害物質除去後の気体又は液体は、筒状構成体における他方の開口部から排出される。したがって、簡単な構成で、有害物質除去デバイスを実現することができる。
【0019】
ここで、本発明では、機能繊維ブラシモジュールは、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛したものからなっている。
【0020】
このため、有害物質除去のための有効表面積が格段に増加するので、有害物質を含む気体又は液体における有害物質除去物質を含む機能繊維への接触面積が広くなる。有害物質を含む気体又は液体は、筒状構成体の一方から流入し内部を通過するときに、機能繊維ブラシモジュールと接触し、このときに、機能繊維の表面との接触抵抗によって乱流が発生する。このため、この乱流の発生によって、有害物質を含む気体又は液体と機能繊維との接触機会が増加し、このようなブラシ状に起毛した機能繊維の全面で接触が繰り返される。したがって、有害物質を含む気体又は液体を効率よく無害化することができる。
【0021】
ここで、本発明では、筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛された機能繊維は直立し林立状態となって整然としており、ブラシ状であるため、機能繊維は自由端を持ち、流体の流れに沿ってなびくので、流体の流れを阻害しない。このため、例えば特許文献2等に開示された従来の連続気泡を有する不織布等のフィルターにおいては通路が迷路のように入り乱れて流体の流れを阻害するのに比べて、筒状構成体の内部を通過するときの圧力損失を小さくすることができる。
【0022】
一方、例えば特許文献1に開示されているように、ブラシ体が筒状体の内部に充填されたものからなっている場合には、ブラシ体の基材を構成する軸部が筒状体の筒軸に存在することになるので、筒状体の筒軸が中実状態となっており、有害物質を含む気体又は液体が通過する筒状体の有効断面積が減少する。
【0023】
この点、本発明では、機能繊維ブラシモジュールは、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛したものからなっているので、筒状構成体の筒軸部を塞ぐものがなく、筒状構成体の筒軸に直交する断面の全てが有害物質を含む気体又は液体の有効通過領域となる。
【0024】
この結果、筒状構成体の内壁面に繊維ブラシモジュールを構成した本発明は、特許文献1と基本的に異なっており、特許文献1に比べて、大量の有害物質を含む気体又は液体を流せることになり、有害物質を含む気体又は液体を効率よく除去することができる。
【0025】
したがって、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイスを提供することができる。
【0026】
本発明の有害物質除去デバイスでは、有害物質除去機能、及び前記気体又は液体の圧力損失の度合を最適化すべく、前記筒状構成体の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を設計パラメーターとすることが好ましい。
【0027】
これにより、筒状構成体の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を調整することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができる。このため、有害物質を含む気体又は液体の種類、濃度、流量等の多様化するユーザーニーズ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0028】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記設計パラメーターにおける少なくとも2つ以上の仕様からなる前記機能繊維ブラシモジュールを配置して構成されていることが好ましい。
【0029】
これにより、設計パラメーターである寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法の少なくとも1つを、複数種の仕様にて構成することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0030】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維の繊維径は、3μm〜100μmであるとすることができる。
【0031】
これにより、機能繊維の剛性を適切に保持すると共に、有害物質除去のための有効表面積を適切に確保することができる。ここで、機能繊維の繊維径が3μm未満の場合には、機能繊維の剛性が弱く、機能繊維が寝るので、機能繊維の長さに応じた除去性能を確保することができない。一方、機能繊維の繊維径が100μmを超える場合には、植毛密度やパイル長を長くして体積占有率を上げても、繊維径の小さい機能繊維に比べて有効表面積が増加しないので、有害物質除去性能も低下する。
【0032】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維ブラシモジュールは、前記筒状構成体の内壁面において全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的に配置されていると共に、上記全体に亘って均一に配置されている場合における機能繊維の植毛密度、又は複数の群をなして離散的に配置されている場合における各群の機能繊維の植毛密度は、0.1%〜50%となっていることが好ましい。尚、機能繊維の植毛密度とは、植毛部について単位面積当たりの繊維断面積が占有する面積の比率をいう。
【0033】
これにより、機能繊維ブラシモジュールを、筒状構成体の内壁面において全体に亘って均一にブラシ状に起毛したり、又は複数の群をなして離散的にブラシ状に起毛したりすることができ、用途に応じて機能繊維ブラシモジュールの配置方法を変更することが可能である。
【0034】
ここで、植毛密度が1%未満の場合には、除去のための有効面積が不足し、有害物質除去性能が不足する。一方、植毛密度が50%を超える場合には、機能繊維ブラシモジュールを通る気体又は液体の流速が低下し、圧力損失が高くなったり、又は乱流の発生が起こり難くなったりすることによって、除去効率も却って低下する。
【0035】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記筒状構成体の内部空間に対する機能繊維ブラシモジュールにおける機能繊維の占める体積の割合は、0.01%〜80%であるとすることができる。
【0036】
これにより、有害物質除去のための有効表面積を適切に確保すると共に、圧力損失を適切に抑制することができる。すなわち、機能繊維の体積占有率を0.01%〜80%に設定することによって、体積占有率が小さい場合には圧力損失を非常に少なくして有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイスを提供する一方、体積占有率が大きい場合には従来にない表面積を有して非常に高い有害物質除去効率を達成し得る有害物質除去デバイスを提供するというように、広いニーズに応える有害物質除去デバイスを提供することが可能になる。
【0037】
ここで、0.01%未満の場合は、機能繊維ブラシモジュールが乱流を起こしたとしても、有害物質除去の有効表面積が不足し、有害物質除去性能が低下する。一方、80%を超える場合は、圧力損失が大きくなり過ぎ、筒状構成体の内壁面近傍の流速が低下し、除去性能が向上しない。
【0038】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維ブラシモジュールの機能繊維は、有害物質除去機能を有する材料を含有した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、有害物質除去機能を有する材料を主成分とした表面コート層を有する高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、又は有害物質除去機能を有する材料を主成分とした粒子が固着した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維からなっていることが好ましい。
【0039】
これにより、機能繊維として、有害物質除去機能を有する材料を、繊維に付加することにより、ブラシ状の繊維における篩機能による粉塵除去のみならず、ケミカルフィルターとしての機能を果たすことが可能となる。
【0040】
尚、有害物質除去機能を有する材料は、例えば、活性炭、吸着材(ゼオライト、コロイダルシリカ、ゾルゲル法無機酸化物微粒子等)、触媒(各種金属又は金属酸化物粒子、金属コロイド等)が、適応すべき有害物質を含む気体又は液体に対して単独又は複数種にて使用される。また、種々の有害物質除去機能を有する材料を配合して同一繊維に被覆分散することもあれば、それぞれ異なる繊維に有害物質除去機能を有する材料を被覆分散することもある。これら機能繊維は、例えば吸着・分解の反応手順にしたがって、順次、最適化された配列、パターンにて筒状構成体の内壁面にセットされる。
【0041】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記機能繊維ブラシモジュールには、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっていることが好ましい。尚、光エネルギーは例えば紫外線、可視光、電磁波によるものを含み、電気エネルギーは電圧印加によるものを含む。また、これらのエネルギーは、総括すると吸着・分解又は除菌を制御するために使用される。
【0042】
これにより、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーを併用することによって、有害物質除去機能が発現・向上し、さらに高い有害物質除去機能を得ることが可能となる。
【0043】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記光は、紫外線から可視光までを有効とし、有害物質除去機能を有する材料である光触媒の活性化に使用されることが可能である。
【0044】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記電気は、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧にてなることが可能である。
【0045】
これにより、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧に基づく電子放出・注入効果によって、有害物質を含む気体又は液体における有害物質の分解を促進すると共に、例えば、触媒との相乗作用によって、分解反応を促進することができる。また、高電圧を印加することにより、気中放電を誘発して有害物質の分解・除菌を促進することが可能となる。
【0046】
また、本発明の有害物質除去デバイスでは、前記筒状構成体は、複数設けられていると共に、互いに直列若しくは並列、又は直列かつ並列に配されていることが好ましい。
【0047】
これにより、反応時間が足りないときには、筒状構成体を直列に接続して使用することによって、反応時間を確保することができる。また、2種以上のガスを分別吸収する場合、有害物質除去機能を有する材料が互いに異なる機能繊維ブラシモジュールを起毛した筒状構成体を直列に配設置することによって、最適化を図ることができる。
【0048】
一方、有害物質除去機能が不足する場合には、筒状構成体を並列に配設することによって、同じ長さにて圧力損失を高めることなく、処理能力を上げることができる。
【0049】
さらに、直列かつ並列に筒状構成体を配することによって、両方の作用効果を達成することができる。
【0050】
本発明の気体又は液体の浄化・精製システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴としている。
【0051】
これにより、本発明の気体又は液体の浄化・精製システムは、気体又は液体の浄化・精製を目的とした多種の装置や設備、一般機器に付帯的に必要となる浄化装備等に備えられる。これらのシステムは、前述したような特徴により、従来にない性能を得ることができる。
【0052】
本発明の気体又は液体の化学反応システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴としている。
【0053】
上記の発明によれば、触媒等によりを効率良く化学反応をさせることが可能である。したがって、本発明の気体又は液体の化学反応システムは、多種の装置や設備に備えられる。この化学反応システムは、前述したような特徴により、従来にない性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明の有害物質除去デバイスは、以上のように、筒状構成体と、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなり、有害物質を含む気体又は液体が、上記筒状構成体における一方の開口部から流入され、上記機能繊維ブラシモジュールにて有害物質が除去された後、他方の開口部から排出されるものである。
【0055】
本発明の気体又は液体の浄化・精製システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたものである。
【0056】
本発明の気体又は液体の化学反応システムは、上記記載の有害物質除去デバイスを備えたものである。
【0057】
それゆえ、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス、気体又は液体の浄化・精製システム、及び気体又は液体の化学反応システムを提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明における有害物質除去デバイスの実施の一形態を示すものであって、(a)は有害物質除去デバイスの構成を示す側面断面図であり、(b)は有害物質除去デバイスの構成を示す正面図である。
【図2】四角筒からなる筒状構成体を備えた有害物質除去デバイスの構成を示す斜視図である。
【図3】波状に屈曲した有害物質除去デバイスの構成を示す斜視図である。
【図4】上記有害物質除去デバイスの変形例の構成を示すものであって、機能繊維が筒状構成体の内壁面における一部において起毛されていない部分を有する有害物質除去デバイスの構成を示す正面図である。
【図5】(a),(b)は、有害物質除去デバイスにおける他の変形例の構成を示すものであって、筒状構成体の長手方向における機能繊維の植毛形態を示す側面断面図である。
【図6】上記有害物質除去デバイスの変形例の構成を示すものであって、例えばLED紫外線ランプを有する四角筒からなる筒状構成体を備えた有害物質除去デバイスを示す斜視図である。
【図7】(a)は例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図8】(a)は例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体における他の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図9】(a)は例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体におけるさらに他の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図10】(a)は軸部に例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図11】(a)は軸部に例えばLED紫外線ランプを有する筒状構成体における変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図12】(a)は軸部に電極を有する筒状構成体の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図13】(a)は軸部に電極を有する筒状構成体における変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図14】(a)は内壁面である天井面及び床面に電極を有する筒状構成体の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図15】(a)は内壁面である天井面及び床面に電極を有する筒状構成体における変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図16】(a)は内壁面である天井面及び床面に電極を有する筒状構成体における他の変形例の構成を示す正面図であり、(b)はその側面断面図である。
【図17】(a),(b)は、有害物質除去デバイスのさらに他の変形例の構成を示す斜視図である。
【図18】本発明における有害物質除去デバイスの、他の実施の形態を示す斜視図である。
【図19】単体の有害物質除去デバイスにおける機能繊維の充填率と表面積との関係を示すグラフである。
【図20】実施例2にて使用した有害物質除去デバイスの構成を示す斜視図である。
【図21】単体の有害物質除去デバイスにおけるトルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図22】上記有害物質除去デバイスと従来の特許文献1をモデルとした有害物質除去デバイスとの差異を、有効表面積(cm2 /cm3 )と体積占有率(%)とで示すグラフである。
【図23】上記機能繊維を起毛した有害物質除去デバイスと機能繊維の存在しない有害物質除去デバイスとの差異を、筒内表面積(cm2 )にて示すグラフである。
【図24】上記機能繊維を起毛した有害物質除去デバイスにおける繊維径と表面積との関係を示すグラフである。
【図25】LED紫外線ランプを有する機能繊維を起毛した有害物質除去デバイスにおけるホルムアルデヒドガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図26】波状に屈曲した有害物質除去デバイスにおけるトルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図27】ハニカム形状の有害物質除去デバイスにおけるトルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【図28】(a)は従来の有害物質除去デバイスの構成を示す側面断面図であり、(b)は従来の有害物質除去デバイスの構成を示す正面図である。
【図29】(a)〜(d)は従来の他の有害物質除去デバイスの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
〔実施の形態1〕
本発明の有害物質除去デバイスに関する実施の一形態について、図1〜図17に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0060】
図1(a)(b)に示すように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10は、筒状構成体1と、有害物質除去機能を有する機能繊維2をこの筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなっている。尚、機能繊維ブラシモジュールとは、ブラシ状に起毛した機能繊維2の集合体をいう。
【0061】
上記筒状構成体1は、機能繊維2を直接植毛するための基体となっており、例えば、縦糸と横糸とからなる地糸としてなっている。したがって、本実施の形態では、機能繊維2は、この地糸である筒状構成体1に直接的に織り込まれたパイル糸から構成されている。上記パイル糸の先端は例えばカットされているが、カットせずにループ状になっていてもよい。
【0062】
尚、機能繊維2の起毛方法については、必ずしもこれに限らず、例えば、基材に機能繊維2を静電植毛したものでもよく、或いは、フィルム等の柔軟性を持つ基材に機能繊維2を植毛したものでもよい。
【0063】
上記筒状構成体1の断面形状は、図1(b)に示すように、例えば円形からなっている。ただし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、例えば、楕円形、若しくは三角形、四角形、五角形…等の多角形であってもよく、又はその他の断面形状であってもよい。
【0064】
四角形断面の例としては、例えば、図2に示すように、四角筒からなる筒状構成体1の内壁面1aにおける床面及び天井面に機能繊維2を起毛したものでもよい。尚、図2においては、基材2cに機能繊維2を植毛したものを記載している。図2に示す有害物質除去デバイス10の筒状構成体1の寸法は、例えば、内法巾Wが50mmであり、内法高さHが例えば50mmであり、筒長さLが30mmとなっている。また、機能繊維2の起毛長さであるパイル長dは、それぞれ、例えば15mmとなっている。ここで、本発明においては、筒状構成体1の寸法等は、必ずしもこれに限らない。例えば、筒状構成体1における開口部の面積が10mm2 〜10m2 であり、機能繊維2の繊維長が0.5mm〜30cmであり、筒状構成体1の筒内における機能繊維ブラシモジュールの体積占有率が0.01%〜80%であるとすることができる。すなわち、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、筒状構成体1の内部空間に対する機能繊維ブラシモジュールにおける機能繊維2の占める体積の割合は、0.01%〜80%であることが好ましい。詳細には、機能繊維ブラシモジュールの群が配置され有害物質除去機能を有する部位において、機能繊維2の占める体積が前記部位の全体の体積に対して0.01%〜80%を占有しているとすることができる。
【0065】
これにより、直径3mm程度の円形断面の筒状構成体1から、一辺3m程度の正方形断面の筒状構成体1とすることができ、配水管や大規模な排気ダクトへの適用が可能となる。尚、筒状構成体1における開口部の面積を50mm2 〜1m2 (直径1cm〜一辺30cmの正方形断面)とし、機能繊維2の繊維長を0.5mm〜5cmとするのがより好ましい。
【0066】
また、これらのサイズにおいて、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を0.01%〜80%とすることによって、有害物質除去物質への接触面積が広く、かつ圧力損失を小さくして、効率よく有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイス10を提供することができる。すなわち、機能繊維2の体積占有率を0.01%〜80%に設定することによって、体積占有率が小さい場合には圧力損失を非常に少なくして有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイス10を提供する一方、体積占有率が大きい場合には従来にない表面積を有して非常に高い有害物質除去効率を達成し得る有害物質除去デバイス10を提供するというように、広いニーズに応える有害物質除去デバイス10を提供することが可能になる。
【0067】
ここで、0.01%未満の場合は、機能繊維ブラシモジュールが乱流を起こしたとしても、有害物質除去の有効表面積が不足し、有害物質除去性能が低下し、実用的な効果を奏しない。一方、80%を超える場合は、圧力損失が大きくなり過ぎ、筒状構成体1の内壁面近傍の流速が低下し、除去性能が向上しない。また、製品化も困難である。
【0068】
ここで、機能繊維2の体積占有率について、例えば、内径3mの筒状構成体1において繊度2デシテックス(dtex)、密度200k本/inch2 、及び繊維長1mmの機能繊維2を全体に植毛した場合に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が0.01%となる。また、内径10mmの筒状構成体1において繊度2デシテックス(dtex)、密度1000k本/inch2 、及び繊維長6〜7mmの機能繊維2を全体に植毛した場合に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が80%となる。尚、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が0.05%〜30%(上記において繊維長5mmとした場合に30%となる)となっているのがより好ましい。
【0069】
ここで、本実施の形態では、図1(a)(b)に示すように、筒状構成体1の筒軸部における機能繊維2の配設密度を小さくし、機能繊維2の存在しない筒軸空間部3を設けることができる。この結果、一方の開口部10aから流入される有害物質を含む気体又は液体は、抵抗なく、筒軸空間部3の内部を通過することができ、圧力損失が小さいものとなる。したがって、有害物質除去物質への接触面積が広く、かつ圧力損失を小さくして、効率よく有害物質除去を行い得る有害物質除去デバイス10を提供することができる。
【0070】
上記構成の有害物質除去デバイス10を製造するときには、例えば、パイル糸が織り込まれた板状の地糸を筒状に丸め、板両端を接着剤等にて接着すればよい。或いは、パイル糸が織り込まれた帯状の地糸を筒になるように螺旋状に丸め、帯両側端を接着剤等にて接着することによっても製造することが可能である。
【0071】
尚、強度補強のために、筒状に丸めて両端を接着した後、筒の外側からシートを接着することも可能である。このように、パイル糸が織り込まれた地糸を筒にした後、その外側にシートを固着した場合には、本発明においては、機能繊維2は、筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に間接的に起毛されたものとなる。
【0072】
また、筒状構成体1は、フレキシブルな材料からなり、折り曲げ可能となっていることが好ましい。これにより、図3に示すように、直管状の筒状構成体1を、例えば波打つように屈曲させて形成することができる。これにより、筒状構成体1の内部を気体又は液体が通るときに乱流が発生するので、気体又は液体の機能繊維2への接触頻度が高まり、有害物質の除去効果が高まる。尚、筒状構成体1の屈曲形状は、必ずしもこれに限らず、任意の形状とすることができる。
【0073】
上記機能繊維ブラシモジュールの機能繊維2は、図1(a)(b)に示すように、有害物質除去機能を有する材料2bを含有した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、有害物質除去機能を有する材料2bを主成分とした表面コート層を有する高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、又は有害物質除去機能を有する材料2bを主成分とした粒子が固着した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維からなっている。これにより、機能繊維2は、有害物質除去機能を有する材料2bを繊維2aに付加することにより、ブラシ状の繊維2aにおける篩機能による粉塵除去のみならず、ケミカルフィルターとしての機能を果たすことが可能となる。
【0074】
上記繊維2aは、例えば、ポリエステル、ナイロン(登録商標)、アクリル樹脂、レーヨンから選ばれる高分子物質である高分子繊維、又はガラス、カーボンから選ばれる無機物質である無機繊維からなっている。これによって、柔軟性のある高分子繊維、又は耐熱性のある無機繊維を選択することができる。
【0075】
また、繊維2aは、繊維径が3μm〜100μmとなっていることが好ましい。ここで、繊維2aの繊維径が3μmとは、繊度が約0.1デシテックス(dtex)の場合をいう。また、繊維2aの繊維径が100μmとは、繊度が約80デシテックス(dtex)の場合をいう。
【0076】
これにより、機能繊維2の剛性を適切に保持すると共に、有害物質除去のための有効表面積を適切に確保することができる。ここで、機能繊維2の繊維径が3μm未満の場合には、機能繊維2の剛性が弱く、機能繊維2が寝るので、機能繊維2の長さに応じた除去性能を確保することができない。一方、機能繊維2の繊維径が100μmを超える場合には、実施例5において図24に示すように、植毛密度やパイル長を長くして体積占有率を上げても、繊維径の小さい機能繊維2に比べて有効表面積が増加しないので、有害物質除去性能も低下する。尚、図24より、繊維2aは、繊維径が10μm〜70μmであることがより好ましく、繊維径が10μm〜50μm(1デシテックス(dtex)〜15デシテックス(dtex))となっていることがさらに好ましい。
【0077】
上記有害物質除去機能を有する材料2bは、例えば、活性炭、吸着材(ゼオライト、コロイダルシリカ、ゾルゲル法無機酸化物微粒子等)、触媒(各種金属又は金属酸化物粒子、金属コロイド等)が、適応すべき有害物質を含む気体又は液体に対して単独又は複数種にて使用される。また、種々の有害物質除去機能を有する材料2bを配合して同一繊維2aに被覆分散することもあれば、それぞれ異なる繊維2aに有害物質除去機能を有する材料2bを被覆分散することもある。これら機能繊維2は、例えば吸着・分解の反応手順にしたがって、順次、最適化された配列、パターンにて筒状構成体1の内壁面1aにセットされる。
【0078】
具体的には、有害物質除去機能を有する材料2bは、例えば、多孔質材料、金属触媒、光触媒の少なくとも1種類を含んでいる。上記多孔質材料としては、例えば、活性炭、シリカゲル、ゼオライトのうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。多孔質材料においては、その孔の空隙内にガスを取り込むことができ、高いガス吸着能力等を有する。したがって、例えば、トルエン(C6 H5 CH3 )、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3 CHO)、その他の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害ガスを多数吸着等させることができる。
【0079】
また、金属触媒としては、白金(Pt),銀(Ag),マグネシウム(Mg),金(Au),銅(Cu),亜鉛(Zn),カルシウム(Ca)から選ばれる組成を少なくとも1種類含むことが好ましい。これにより、各種の触媒に対応したガス分解性能を発揮することができる。例えば、金属触媒である白金(Pt)は、自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害ガスを、無毒の炭酸ガス(CO2 )と水(H2 O)等に分解することができる。また、酸化金属触媒である二酸化マンガン(MnO2 )はオゾンを分解することができる。
【0080】
さらに、光触媒は、二酸化チタン(TiO2 )又は酸化タングステン(WO3 ) から選ばれる組成を少なくとも1種類含んでいることが好ましい。例えば、光触媒としての二酸化チタン(TiO2 )は、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH3 CHO)、その他の揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)、又は窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の有害ガスを、無毒の炭酸ガス(CO2 )と水(H2 O)等に分解することができる。また、大腸菌等を滅菌・殺菌することも可能である。
【0081】
また、機能繊維ブラシモジュールには、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっていることが好ましい。尚、光エネルギーは例えば紫外線、可視光、電磁波によるものを含み、電気エネルギーは電圧印加によるものを含む。また、これらのエネルギーは、総括すると吸着・分解又は除菌を制御するために使用される。
【0082】
これにより、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーを併用することによって、有害物質除去機能が発現・向上し、さらに高い有害物質除去機能を得ることが可能となる。
【0083】
例えば、光は、紫外線から可視光までを有効とし、有害物質除去機能を有する材料2bである光触媒の活性化に使用される。
【0084】
また、電気は、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧にてなることが可能である。これにより、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧に基づく電子放出・注入効果によって、有害物質を含む気体又は液体における有害物質の分解を促進すると共に、例えば、触媒との相乗作用によって、分解反応を促進することができる。また、高電圧を印加することにより、気中放電を誘発して有害物質の分解・除菌を促進することが可能となる。
【0085】
さらに、熱は、有害物質除去機能を有する材料2bにおける吸着時の相対湿度の調節、吸着速度を最適化、又は有害物質除去成分の脱離速度を制御するための温度調整に活用される。尚、温度コントロールには、誘導加熱、マイクロ波加熱が特に有効である。例えば、誘導加熱は全体を過熱する場合に有効であり、マイクロ波はスポット過熱に有効である。
【0086】
ここで、本実施の形態に係る機能繊維2の製造方法、つまり高分子物質又は無機物質からなる繊維2aに有害物質除去機能を有する材料2bを担持又は含有する方法としては、例えば、繊維2aを芯鞘型とし、鞘部の融点が芯部の融点よりも低い熱溶融糸に粒子を固着させて製造すること等が可能である。
【0087】
上記構成の有害物質除去デバイス10における有害物質除去方法について説明する。
【0088】
図1(a)に示すように、有害物質を含む気体又は液体が、筒状構成体1における一方の開口部としての流入開口部10aから流入され、機能繊維2にて有害物質が除去された後、他方の開口部としての排出開口部10bから排出される。
【0089】
筒状構成体1の内壁面1aには、ブラシ状に起毛された有害物質除去機能を有する機能繊維2が設けられているので、有害物質は機能繊維2によって除去され、有害物質除去後の気体又は液体は、筒状構成体1における排出開口部10bから排出される。したがって、簡単な構成の有害物質除去デバイス10を実現することができる。
【0090】
上記構成の有害物質除去デバイス10は、非常に低圧力損失ながらも高い比表面積の機能部位を持ち、従来フィルターとして一般的に用いられている機能繊維2を有しないハニカムの構造体と比較しても非常に高い機能を有している。また、従来、流体の移送手段としか考えられていないパイプやチューブ等の部材として、本実施の形態の有害物質除去デバイス10を使用することによって、移送のみならず有害物質除去の効果を得ることができる。
【0091】
このように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10は、筒状構成体1と、有害物質除去機能を有する機能繊維2を該筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなっている。このため、有害物質除去のための有効表面積が格段に増加するので、有害物質を含む気体又は液体における有害物質除去物質を含む機能繊維2への接触面積が広くなる。有害物質を含む気体又は液体は、筒状構成体1の一方から流入し内部を通過するときに、機能繊維ブラシモジュールと接触し、このときに、機能繊維2の表面との接触抵抗によって乱流が発生する。このため、この乱流の発生によって、有害物質を含む気体又は液体と機能繊維との接触機会が増加し、このようなブラシ状に起毛した機能繊維2の全面で接触が繰り返される。したがって、有害物質を含む気体又は液体を効率よく無害化することができる。
【0092】
ここで、本実施の形態では、筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛された機能繊維2は直立し林立状態となって整然としており、ブラシ状であるため、機能繊維2は自由端を持ち、流体の流れに沿ってなびくので、流体の流れを阻害しない。このため、例えば特許文献2等に開示された従来の連続気泡を有する不織布等のフィルターにおいては通路が迷路のように入り乱れて流体の流れを阻害するのに比べて、筒状構成体1の内部を通過するときの圧力損失を小さくすることができる。
【0093】
一方、例えば特許文献1に開示されているように、ブラシ体が筒状体の内部に充填されたものからなっている場合には、ブラシ体の基材を構成する軸部が筒状体の筒軸に存在することになるので、筒状体の筒軸が中実状態となっており、有害物質を含む気体又は液体が通過する筒状体の有効断面積が減少する。
【0094】
この点、本実施の形態では、機能繊維ブラシモジュールは、有害物質除去機能を有する機能繊維2を該筒状構成体1の内壁面1aにブラシ状に起毛したものからなっているので、筒状構成体1の筒軸部を塞ぐものがなく、筒状構成体1の筒軸に直交する断面の全てが有害物質を含む気体又は液体の有効通過領域となる。
【0095】
この結果、筒状構成体1の内壁面1aに繊維ブラシモジュールを構成した本実施の形態の有害物質除去デバイス10は、特許文献1と基本的に異なっており、特許文献1に比べて、大量の有害物質を含む気体又は液体を流せることになり、有害物質を含む気体又は液体を効率よく除去することができる。
【0096】
したがって、圧力損失が小さく、かつ有害物質除去効率の高い有害物質除去デバイス10を提供することができる。
【0097】
また、本実施の形態における有害物質除去デバイス10をエアコンやクリーンルーム装置、純水装置、ケミカルフィルター等の気体又は液体の浄化・精製システムに用いれば、この有害物質除去デバイス10は気体又は液体中の有害物質を吸着・分解・殺菌により効率的に除去するデバイスとなり、高機能の気体又は液体の浄化・精製システムを提供することができる。
【0098】
また、本実施の形態における有害物質除去デバイス10を化学プラント装置等の化学反応システムに用いれば、この有害物質除去デバイス10は高品位な触媒・吸着剤を担持したデバイスであり、効率的な化学合成や精製を行う化学プラント装置等の化学反応システムを提供することができる。これにより、従来のような生成物と触媒・吸着剤粒子とを分離する手間や触媒・吸着剤の表面積不足による効率の悪さを大きく改善することができる。
【0099】
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0100】
すなわち、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を最適化すべく、筒状構成体1の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を設計パラメーターとしている。
【0101】
これにより、筒状構成体1の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を調整することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができる。このため、有害物質を含む気体又は液体の種類、濃度、流量等の多様化するユーザーニーズ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0102】
例えば、機能繊維2の繊維径が細いときは長さを短くし、繊維径が太いときは長めにするのが好ましい。また、筒状構成体1の断面積形状により、機能繊維2の太さ及び長さを調整することが好ましい。これらの最適化により、有害物質除去デバイス10における単位長さ当りの吸着効率を最大化できる。また、筒状構成体1の筒内寸法、筒長さ等を適宜選択することにより、最適化を図ることが可能となる。例えば、分解等の反応時間に律速される場合には、流速に応じて筒長さを最適化すればよい。
【0103】
また、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、設計パラメーターにおける少なくとも2つ以上の仕様からなる機能繊維ブラシモジュールを配置して構成されていることが好ましい。
【0104】
これにより、設計パラメーターである寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法の少なくとも1つを、複数種の仕様にて構成することによって、機能繊維ブラシモジュールの有害物質除去機能、及び気体又は液体の圧力損失の度合を調整することができ、用途等に応じて適切な形態に設計変更することができる。
【0105】
また、上記の説明では、機能繊維2は、筒状構成体1に一様に分布して設けられているが、必ずしもこれに限らず、例えば、図4に示すように、機能繊維2が内壁面1aの一部において起毛されていない部分があってもよい。これにより、乱流の発生を促進したり、流体の流れをコントロールしたりすることができる。
【0106】
また、筒状構成体1の内部における機能繊維2の密度、繊度、長さ、材質のいずれかが2種類以上から構成されているとすることも可能である。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、2種以上の長さからなる機能繊維2が混合されて植毛されているとしたり、流体の進行方向又は周方向に異なる種類の植毛群で構成されているとしたりすることが可能である。これにより、乱流の発生等、流体の流れをコントロールすることができる。
【0107】
さらに、図5(b)に示すように、機能繊維2の密度が、筒状構成体1における流体の進行方向において、奥に進むに連れ高くなるようにすることも可能である。これにより、流体を容易に流入させ、効率よく、有害物質を除去した後、排出させることができる。
【0108】
このように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、機能繊維2は、筒状構成体1の内壁面1aにおいて全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的にブラシ状に起毛されているとすることができる。
【0109】
すなわち、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、機能繊維ブラシモジュールは、筒状構成体1の内壁面1aにおいて全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的に配置されている。そして、本実施の形態では、上記全体に亘って均一に配置されている場合における機能繊維2の植毛密度、又は複数の群をなして離散的に配置されている場合における各群の機能繊維2の植毛密度は、0.1%〜50%とすることができる。尚、機能繊維2の植毛密度とは、植毛部について単位面積当たりの繊維断面積が占有する面積の比率をいう。
【0110】
これにより、機能繊維ブラシモジュールを、筒状構成体1の内壁面1aにおいて全体に亘って均一にブラシ状に起毛したり、又は複数の群をなして離散的にブラシ状に起毛したりすることができ、用途に応じて機能繊維ブラシモジュールの配置方法を変更することが可能である。
【0111】
ここで、植毛密度が1%未満の場合には、除去のための有効面積が不足し、有害物質除去性能が不足する。一方、植毛密度が50%を超える場合には、機能繊維ブラシモジュールを通る気体又は液体の流速が低下し、圧力損失が高くなったり、又は乱流の発生が起こり難くなったりすることによって、除去効率も却って低下する。
【0112】
また、機能繊維2における単位面積当りの密度は、5%〜20%程度〔繊度2デシテックス(dtex)を180k本/inch2 以上〜繊度2デシテックス(dtex)を500k本/inch2 以下〕がより好ましい。
【0113】
尚、機能繊維2における単位面積当りの密度について、具体的には、以下のようになる。すなわち、例えば、1inch2 当たりの密度について、実際のパイル織りの機能繊維2にて試算すると、繊度2デシテックス(dtex)では、60k本/inch2 =1.6%となり、500k本/inch2 =17%となる。また、繊度6デシテックス(dtex)では、20k本/inch2 =1.9%となり、120k本/inch2 =12%となる。
【0114】
また、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、筒状構成体1の通気長さが50cm未満であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が5%以上とすることが可能である。ここで、例えば、直径30mmの筒状構成体1において機能繊維2の繊維長を5mmとし、繊度を2デシテックス(dtex)、密度を250k本/inch2 とした場合に体積占有率が5%となる。
【0115】
これにより、筒状構成体1の通気長さが50cm未満のような短い場合には、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を5%以上とすることにより、機能繊維2の密度を高くしても圧力損失はあまり増加しないので、効率よく有害物質除去を行うことができる。尚、筒状構成体1の通気長さが10cm未満であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が10%以上とすることがより好ましい。
【0116】
さらに、本実施の形態の有害物質除去デバイス10では、筒状構成体1の通気長さが50cm以上であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が5%以下であるとすることが可能である。
【0117】
これにより、筒状構成体1の通気長さが50cm以上のような長い場合には、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を5%以下とすることにより、機能繊維2の密度を低くして圧力損失を低減し、これによって、効率よく有害物質除去を行うことができる。尚、筒状構成体1の通気長さが100cm以上であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率が3%以下であるとするのがより好ましい。
【0118】
また、前述したように、本実施の形態の有害物質除去デバイス10においては、機能繊維2には、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっているが、光のエネルギーを付与する光源としての例えばLED紫外線ランプ11が、機能繊維2の少なくとも一部に光を照射する位置に配設されており、機能繊維2には、有害物質を吸着して分解する吸着分解剤が付着されていると共に、吸着分解剤は、光を透過、散乱又は吸収する機能を有しているとすることができる。吸着分解剤は、例えば、二酸化チタン(TiO2 )又は酸化タングステン(WO3 )を用いることができる。
【0119】
例えば、図6に示すように、この機能繊維2が起毛されていない内壁面1aである天井面にエネルギー発生部材である例えばLED紫外線ランプ11を設置することができる。尚、光源は必ずしもLED紫外線ランプ11に限らず、他の紫外線から可視光までのいずれかの波長領域を出射可能であり、有害物質除去機能を有する材料2bである光触媒の活性化等に使用されることが可能である。
【0120】
これにより、LED紫外線ランプ11にて機能繊維2の少なくとも一部に光を照射することによって、機能繊維2の付着された吸着分解剤に光が透過、散乱又は吸収され、該吸着分解剤の作用により、有害物質を吸着分解して、除去することが可能となる。
【0121】
ここで、LED紫外線ランプ11の配設においては、各種のものが考えられる。例えば、前記図6に示す筒状構成体1の内壁面1aにおける天井面にLED紫外線ランプ11を配設する場合においては、図7(a)(b)に示すように、機能繊維2が起毛されている部分にLED紫外線ランプ11を配設すると共に、機能繊維2の下側に空間部4が存在している構成が可能である。
【0122】
また、図8(a)に示すように、筒状構成体1の内壁面1aにおける天井面にLED紫外線ランプ11を配設すると共に、他の内壁面1aである側面及び床面に機能繊維2を起毛し、かつ筒軸空間部3を設ける構成が可能である。この場合、図8(b)に示すように、LED紫外線ランプ11を、筒状構成体1の天井面の内壁面1aにおける長さ方向の全体に配設することができる。一方、必ずしもこれに限らず、図9(a)(b)に示すように、LED紫外線ランプ11を、筒状構成体1の天井面の内壁面1aにおける長さ方向に対して離散的に配設することも可能である。
【0123】
一方、図10(a)(b)及び図11(a)(b)に示すように、筒状構成体1の軸上にLED紫外線ランプ11を配設することが可能である。尚、図10(a)(b)においては、機能繊維2とLED紫外線ランプ11との間には、筒軸空間部3が存在している一方、図11(a)(b)においては、機能繊維2とLED紫外線ランプ11とが接触している。
【0124】
さらに、本実施の形態では、LED紫外線ランプ11等の光のエネルギーを付与する光源に限らず、電気のエネルギーを付与する電極が、筒状構成体1の筒内における少なくとも1箇所に配設されていると共に、電極にて、例えば、内壁面1a同士や内壁面1a上の機能繊維2同士、又は内壁面1a若しくは内壁面1a上の機能繊維2と電極との間で電界を発生させ、電流を流し、又は放電可能になっているとすることが可能である。
【0125】
これにより、電極にて電界を発生させ、電流を流し、又は放電することによって、各種の有害物質除去機能を用いて、有害物質を除去することが可能となる。
【0126】
具体的には、図12(a)(b)及び図13(a)(b)に示すように、筒状構成体1の軸上に電極12を配設して、電極12と内壁面1aとの間で電界を発生させることが可能である。これにより、有害物質における極性分子等を引き付けることが可能となる。尚、図12(a)(b)においては、機能繊維2とLED紫外線ランプ11との間には、筒軸空間部3が存在している。一方、図13(a)(b)においては、機能繊維2が導電繊維からなっており、機能繊維2と電極12とが接触している。機能繊維2が導電性は、例えば、1012(Ω/cm)以下である。
【0127】
この場合、機能繊維2に電流が流れることにより、機能繊維2においては分解、殺菌等の有害物質除去効果を発揮することが可能となる。
【0128】
また、図14(a)(b)に示すように、筒状構成体1の天井面及び床面の内壁面1aに電極12・12を設けることが可能である。これにより、対向する電極12・12間において電界を発生し、有害物質における極性分子等を引き付けることが可能となる。
【0129】
さらに、図15(a)(b)に示すように、筒状構成体1の天井面及び床面の内壁面1aに放電用電極13・13を設けることが可能である。この場合、機能繊維2が導電繊維からなっており、機能繊維2・2の間で放電することにより、+極性分子を引き付けたり、有害物質を分解させたりすることが可能となる。
【0130】
また、電極12及び放電用電極13の場合においても、図16(a)(b)に示すように、電極12及び放電用電極13を筒状構成体1の内壁面1aにおける筒軸方向に対して離散的に配設することが可能である。これにより、流体の進行方向とは垂直方向の電界を付与したり、進行方向の部位によって電界を変えたりすることが可能となる。
【0131】
また、有害物質除去デバイス10のさらに異なる形態として、図17(a)に示すように、筒状構成体1の内部に遮蔽板14を設けたり、図示しない凹凸を設けたりすることが可能である。この場合、遮蔽板14や凹凸には、機能繊維2を起毛させておくのがさらに好ましい。また、図17(b)に示すように、筒状構成体1を折り曲げてボックス状に形成することも可能である。
【0132】
これらにより、乱流を発生させたりして、流体の流れをコントロールすることにより、筒状構成体1の内部での有害物質の除去効果を高めることができる。また、コンパクトな有害物質除去デバイス10とすることが可能である。
【0133】
〔実施の形態2〕
本発明における他の実施の形態について図18に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0134】
本実施の形態の有害物質除去デバイス20は、図18に示すように、前記実施の形態1の筒状構成体1が複数設けられ、かつ互いに並列に配されてハニカム形状になっている。
【0135】
詳細には、一つの筒状構成体1は、前記実施の形態1の図2に示す有害物質除去デバイス10と相似形のものであり、その寸法は、例えば、内法巾Wが10mmであり、内法高さHが例えば10mmであり、筒長さLが30mmとなっている。また、機能繊維2の起毛長さであるパイル長dは、それぞれ、例えば3mmとなっている。そして、このサイズの有害物質除去デバイス10における25個が、5行5列にハニカム形状に積層されて1つの有害物質除去デバイス20となっている。尚、有害物質除去デバイス20の外側には、25個の有害物質除去デバイス10を1ブロックに形成するための筐体21が設けられているとすることも可能である。
【0136】
このように、本実施の形態の有害物質除去デバイス20では、筒状構成体1は、複数設けられていると共に、互いに直列若しくは並列、又は直列かつ並列に配されているとすることが可能である。
【0137】
これにより、反応時間が足りないときには、筒状構成体1を直列に接続して使用することによって、反応時間を確保することができる。また、2種以上のガスを分別吸収する場合、有害物質除去機能を有する材料2bが互いに異なる機能繊維ブラシモジュールを起毛した筒状構成体1を直列に配設置することによって、最適化を図ることができる。
【0138】
一方、有害物質除去機能が不足する場合には、筒状構成体1を並列に配設することによって、同じ長さにて圧力損失を高めることなく、処理能力を上げることができる。
【0139】
さらに、直列かつ並列に筒状構成体を配することによって、両方の作用効果を達成することができる。
【0140】
ここで、本実施の形態の有害物質除去デバイス20では、筒状構成体1の通気長さ、つまり本実施の形態では筒長さLが50cm以下であると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率(機能繊維2の体積比率)が0.01%〜40%であることが好ましい。
【0141】
すなわち、ハニカム形状においては、複数の筒状構成体1…が並列に配される。このため、複数の筒状構成体1…の体積を考慮して、筒状構成体1の通気長さを50cm以下とすると共に、筒状構成体1の筒内における機能繊維2の体積占有率を0.01%〜40%とすることによって、圧力損失を適切に設定して効率よく有害物質を除去することができる。尚、筒状構成体1の通気長さは10cm以下がより好ましい。
【0142】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0143】
本実施の形態の有害物質除去デバイス10・20における有害物質除去効果を確認するための各種の検討及び実験を行った。
【0144】
具体的には、以下の検討及び確認実験を行った。
(1)表面積の優位性
(2)有害物質除去性能
(3)特許文献1との有効表面積比較
(4)筒状構成体1の機能繊維2における繊維長さが短い場合の検討
(5)繊維径と表面積との関係
(6)エネルギーを付加した場合の効果
(7)筒状構成体を波状に形成した場合の有害物質除去性能
(8)複数の筒状構成体をハニカム形状に積層した場合の有害物質除去性能
以下、それぞれについて説明する。
【0145】
〔1:表面積の優位性〕
本実施の形態の有害物質除去デバイス10における機能繊維2の充填率と表面積との関係についての試算を行った。
【0146】
試算は、表1に示すように、円形断面の筒状構成体1に活性炭からなる有害物質除去機能を有する材料2bを付着させた機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10について、実施例1として、機能繊維2の充填率と表面積との関係を試算した。尚、円形断面の筒状構成体1の内径を10mmとし、筒状構成体1の筒長さLを10mmとし、機能繊維2のパイル長dを5mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、密度を50×103 、100×103 、300×103 、500×103 本/inch2 として、機能繊維2の充填率と有効表面積との関係を求めた。
【0147】
【表1】
【0148】
また、従来例1として、非常に低圧力損失ながらも高い比表面積を有しているとして一般的に市販されているハニカムフィルターについて、同様に試算した。
【0149】
試算に用いた従来例1のハニカムフィルターは、市販の排出ガス浄化装置のアルミ六角構造ハニカムフィルターであり、その仕様は、表2に示す通りである。すなわち、セルサイズは0.7〜1.0mm、セル数は600〜1200個/inch2 、開口率は96.4〜94.9%、有効表面積は35.3〜49.8(cm2 /cm3 )である。
【0150】
【表2】
【0151】
上記表1及び表2に基づいて、機能繊維2の充填率と表面積との関係を試算した結果、図19に示すグラフを得た。尚、従来例1においては、(100−開口率)%を機能部位(ハニカムの内表面)の体積占有率(%)として算出し、その機能部位(ハニカムの内表面)の体積占有率(%)と有効表面積(cm2 /cm3 )との関係についてプロットした。
【0152】
その結果、図19から分かるように、従来例1の場合は機能部位(ハニカムの内表面)の体積占有率(%)が増加しても有効表面積は35.3〜49.8(cm2 /cm3 )であり、殆ど変化がない。これに対して、実施例1では、体積占有率が0(%)から30(%)まで増加する間に、有効表面積は0(cm2 /cm3 )から800(cm2 /cm3 )まで増加する。
【0153】
この結果、実施例1では、従来例1と比較して、不可能なレベルの有効表面積(cm2 /cm3 )を容易かつ低圧力損失にて発現させることが可能であることが分かる。
【0154】
この理由は、従来例1の機能繊維2のないハニカムフィルターでは、セルサイズを小さくするために非常に微細な加工が必要になると共に、セルサイズを小さくすると圧力損失が高くなるためである。また、セルサイズを従来例1よりも小さくして実施例1と同等の表面積を得ることは構造上不可能といえるためである。
【0155】
〔2:有害物質除去性能〕
本実施の形態における有害物質除去デバイス10の有害物質除去性能について、確認実験を行った。
【0156】
具体的には、有害物質除去デバイス10を用いてトルエンガスの除去性能及び経時変化を実験により求めた。
【0157】
実験においては、実施例2の試験体として、表3及び図20に示す有害物質除去デバイス10における正方形断面の筒状構成体1を縦横10個ずつのブロックにした有害物質除去デバイス20を使用した。上記一個の有害物質除去デバイス10における筒状構成体1の寸法は、例えば、内法巾Wを10mmとし、内法高さHを例えば10mmとし、筒長さLを10mmとした。また、機能繊維2は、起毛長さであるパイル長dをそれぞれ、5.5mmとし、繊度を2デシテックス(dtex)とし、密度を300×103 本/inch2 とした。植毛位置は、筒状構成体1の上下とした。さらに、有害物質除去機能を有する材料2bとしては、活性炭を繊維2aの表面に固着した。
【0158】
【表3】
【0159】
一方、従来例2として、市販されているセルサイズ1mmの排出ガス浄化装置のアルミ六角構造ハニカムフィルターに実施例2と同じ活性炭を固着させたものを試験体として使用した。
【0160】
また、実験においては、各試験体に濃度5ppmのトルエン(C6 H5 CH3 )を流量40m3 /hrにて有害物質除去デバイス20等に通気させ、試験体通過後のトルエン濃度を測定した。
【0161】
その結果を、図21に示す。図21は、トルエンガスの除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【0162】
図21から分かるように、従来例2では、20時間まではトルエン濃度が約0.5ppmにまで除去できる。しかし、20時間を越えると除去率が急激に悪くなり、60時間以上では全く除去できないことがわかった。
【0163】
これに対して、実施例2では、20時間まではトルエン濃度が略0ppmにまで完全に除去できることが分かった。また、20時間を越えての除去率の低下は従来例2の除去率の低下に比べて緩慢であり、100時間でも除去後のトルエン濃度は約3ppmであり、約40%の除去率を確保できることが分かった。
【0164】
この結果、有害物質除去デバイス20は、従来にない高機能なケミカルフィルターとして使用できることが分かった。
【0165】
〔3:特許文献1との有効表面積比較〕
次に、図28(a)(b)に示す特許文献1に記載された、筒状体101の内部に、芯材であるシャフト102aに酸化チタンを塗布したブラシ毛102bを起毛したブラシ体102を充填した汎用フィルター100と、本実施の形態における筒状構成体1の内壁面1aに機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10とについて、有効表面積を比較検討した。
【0166】
具体的には、特許文献1に記載された汎用フィルター100と本実施の形態の有害物質除去デバイス10との各有効表面積(cm2 /cm3 )及び体積占有率(%)について、試算を行った。
【0167】
まず、従来例3としての特許文献1に記載された汎用フィルター100においては、表4に示すように、シャフト径1,5,9mmのシャフト102aにそれぞれブラシ毛102bを起毛した汎用フィルター100を試験体として使用した。汎用フィルター100の開口部形状は円形とし、筒の内径は10mmとし、筒長さは10mmとし、パイル長はシャフト径1,5,9mmに対応して4.5,2.5,0.5mmとし、繊度は2デシテックス(dtex)とし、密度は200×103 本/inch2 として試算した。
【0168】
一方、実施例3の試験体としては、筒状構成体1の内壁面1aに機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10を使用した。有害物質除去デバイス10の開口部形状は円形とし、筒の内径は10mmとし、筒長さLは10mmとし、機能繊維2のパイル長dは5mmとし、機能繊維2の繊度は2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度は200×103 本/inch2 として試算した。
【0169】
【表4】
【0170】
試算結果を図22に示す。図22は上記各試験体における有効表面積(cm2 /cm3 )と体積占有率(%)との試算結果を示すグラフである。
【0171】
図22において、左の縦軸である有効表面積(cm2 /cm3 )について棒グラフで示すように、従来例3では、シャフト径1mmの場合の有効表面積は約30(cm2 /cm3 )であり、シャフト径5mmの場合の有効表面積は約80(cm2 /cm3 )であり、シャフト径9mmの場合の有効表面積は約30(cm2 /cm3 )であった。すなわち、シャフト径が9mmになると、パイル長が短くなるので、結果的に、有効表面積は減少することが分かる。
【0172】
これに対して、実施例3の内壁面1aでの植毛においては、有効表面積は約300(cm2 /cm3 )であった。したがって、実施例3が従来例3よりも有効表面積(cm2 /cm3 )が格段に大きいことが分かる。
【0173】
また、体積占有率(%)については、図22において、右の縦軸である体積占有率(%)について折れ線グラフで表すように、従来例3では、シャフト径1mmの場合の体積占有率は約2(%)であり、シャフト径5mmの場合の体積占有率は約30(%)であり、シャフト径9mmの場合の体積占有率は約80(%)であった。すなわち、シャフト径が太くなるほど、体積占有率(%)が増加する。
【0174】
これに対して、実施例3の内壁面1aでの植毛においては、体積占有率は約10(%)であった。
【0175】
上記の結果、 シャフト102aに起毛したブラシ毛102bを単純に充填した従来例3では、シャフト径が太くなるほど筒内の開口面積が大きくなり、体積占有率(%)が大きくなり、その結果、圧力損失が高くなることが予想される。
【0176】
また、従来例3では、実施例3に比べて植毛基材の表面積が小さくなるので、必然的にブラシ毛102bの本数が少なくなる。したがって、ブラシ毛102bの有効な表面積を得ることができない。また、従来例3では、シャフト102aが太くなるほど筒内の開口面積が大きくなるので、通気性が悪くなる。
【0177】
したがって、特許文献1に記載された図28(a)(b)に示す筒状体101の内部に、芯材であるシャフト102aに酸化チタンを塗布したブラシ毛102bを起毛したブラシ体102を充填した汎用フィルター100と本実施の形態の有害物質除去デバイス10との関係においては、本実施の形態に係る筒状構成体1の内壁面1aに機能繊維2を起毛した有害物質除去デバイス10は、体積占有率(%)が小さく、かつ有効表面積(cm2 /cm3 )が大きいので、有害物質除去性能が、格段に優れていることが把握される。
【0178】
〔4:筒状構成体1の機能繊維2における繊維長さが短い場合の検討〕
例えば、筒状構成体1の機能繊維2における繊維長さが短い場合に、有害物質除去機能を有するかが問題となる。そこで、筒状構成体1に機能繊維2を有しない場合との比較において、筒長さLを考慮した筒内部の有害物質除去に係わる表面積を試算した。
【0179】
試験体は、表5に示すように、実施例4においては、機能繊維2を植毛した筒状構成体1の形状は円筒とし、筒の内径は10mmとし、パイル長dは5mmとし、繊度は2デシテックス(dtex)とし、密度は100×103 本/inch2 とし、充填率は0.6%とした。
【0180】
一方、比較例1の試験体としては、機能繊維2のない筒状構成体1を使用した。表5に示すように、機能繊維2のない筒状構成体1の形状は円筒とし、筒の内径は10mmとした。パイル長は0mmである。
【0181】
【表5】
【0182】
そして、実施例4においては、筒の長さに対する筒内部の表面積と機能繊維2の表面積との合計を試算した。また、比較例1においては、筒の長さに対する筒内部の表面積(cm2 )を試算した。
【0183】
その結果を、図23に示す。図23は筒の長さに対する筒内部の表面積を示すグラフである。
【0184】
図23から分かるように、比較例1に示す機能繊維2のない筒状構成体1においては、筒長さLが10mmから100mmに増加しても筒内部の表面積は、2〜3(cm2 )程度の増加しかなかった。
【0185】
これに対して、実施例4に示す短い長さの機能繊維2を有する筒状構成体1においては、筒長さLが10mmから100mmに増加した場合、筒内部の表面積は10(cm2 )から120(cm2 )まで増加する。
【0186】
この結果、比較例1である機能繊維2のない筒状構成体1に機能粒子をコーティングしても大きな表面積は得られないことが分かる。
【0187】
ここで、前記従来例1に示すセルサイズ1mm、かつ筒長さが20mmのハニカムフィルターにおける筒内部の表面積は、約90(cm2 )である。したがって、実施例4である短い長さの機能繊維2を有する筒状構成体1においては、筒長さLを長くすれば、市販の上記従来例1のハニカムフィルターと同等の表面積を確保できることが分かる。
【0188】
そして、このような実施例4の短い長さの機能繊維2を有する筒状構成体1では、圧力損失の変化を略0とすることが可能となるので、有害物質除去性能を大きく向上させ得ることが把握できる。
【0189】
〔5:繊維径と表面積との関係〕
次に、実施例5として、有害物質除去デバイス10における繊維径と表面積との関係について試算した。
【0190】
試験体は、表6に示すように、筒状構成体1の筒形状を円筒とし、筒状構成体1の内径を10mmとし、筒状構成体1の筒長さLを10mmとし、機能繊維2のパイル長dを5mmとし、機能繊維2の繊度を2〜300デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 〜2×103 本/inch2 とし、機能繊維2の体積占有率18.6%としたものを使用した。
【0191】
【表6】
【0192】
その結果を、図24に示す。図24は繊維径と表面積との関係を示すグラフである。
【0193】
図24に示すように、繊維径と表面積との関係は略双曲線にて表され、繊維径約200〜100μmでは、体積当たりの表面積は約40〜80(cm2 /cm3 )であるが、繊維径が100μm未満になると急激に体積当たりの表面積が増加することが分かる。
【0194】
したがって、有害物質除去デバイス10における機能繊維2の繊維径は、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましいことが把握できる。
【0195】
〔6:エネルギーを付加した場合の効果〕
次に、有害物質除去機能を有する材料2bの有害物質の除去機能を発現・向上させるために、機能繊維2に光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーを与えた場合の効果について、実施例6として確認実験を行った。
【0196】
実施例6の試験体としては、前記図6に示す、機能繊維2が起毛されていない内壁面1aである天井面にエネルギー発生部材であるLED紫外線ランプ11を設置した有害物質除去デバイス10を使用した。また、比較例2として、実施例6と同一試験体条件であって、LED紫外線ランプ11のないものを試験体として使用した。
【0197】
具体的な試験体条件としては、表7に示すように、筒状構成体1の内寸法を30×30mmとし、筒状構成体1の筒長さLを30mmとし、機能繊維2のパイル長dを30mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の床面とし、有害物質除去機能を有する材料2bは、二酸化チタン(TiO2 )+シリカゲルとした。また、実施例6におけるLED紫外線ランプ11の設置については、筒状構成体1の天井面とした。
【0198】
【表7】
【0199】
そして、実験は、上記の各試験体に、濃度10ppmのホルムアルデヒド(HCHO)を流量10m3 /hrにて通気させ、試験体通過後のホルムアルデヒド濃度を測定した。
【0200】
その結果を図25に示す。図25は、ホルムアルデヒド(HCHO)の除去性能と経過時間との関係を示すグラフである。
【0201】
図25に示すように、LED紫外線ランプ11の存在しない比較例2では、20時間経過後から除去率が低下し、80時間経過後においては除去性能がなくなった。これに対して、実施例6では、100時間経過後においても約95%以上の除去性能を維持し、初期の除去性能からの低下は少なかった。
【0202】
この結果、LED紫外線ランプ11と光触媒との組み合わせによる分解除去システムを導入することによって、除去性能を高めるだけでなく、有害物質除去デバイス10・20の長寿命化を図ることも可能であることが把握できた。
【0203】
〔7:筒状構成体を波状に形成した場合の有害物質除去性能〕
次に、筒状構成体1を波状に屈曲させて形成した場合の有害物質除去性能について、実施例7として確認実験を行った。
【0204】
実施例7の試験体としては、前記図3に示す、筒状構成体1を波状に屈曲させて形成した有害物質除去デバイス10を使用した。また、比較例3の試験体として、直線状の有害物質除去デバイス10である以外は、実施例7と同一試験体条件のものを使用した。
【0205】
具体的な試験体条件は、表8に示すように、筒状構成体1の内径を30mmとし、筒状構成体1の筒長さLを400mmとし、機能繊維2のパイル長dを5mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の全周囲とし、有害物質除去機能を有する材料2bを活性炭とした。また、実施例7における筒状構成体1の形状として、約100mm毎に約90度に屈曲させた波状とした。
【0206】
【表8】
【0207】
そして、実験は、上記の各試験体に、濃度5ppmのトルエン(C6 H5 CH3 )を流量20m3 /hrにて通気させ、試験体通過後のトルエン濃度を測定した。
【0208】
その結果を図26に示す。図26は、経過時間とトルエン濃度(ppm)との関係を示すグラフである。
【0209】
図26に示すように、筒状構成体1を直線状に形成した比較例2では、40時間経過後から除去率が低下し始め、80時間経過後においては除去性能がなくなった。これに対して、実施例7では、80時間経過までの除去性能の低下は小さく、80時間経過時での除去性能は約70%を維持していた。また、100時間経過後においても除去性能は約20%を維持していた。
【0210】
この結果、実施例7のように有害物質除去デバイス10を屈曲させるによって、乱流が発生してガスと機能繊維2との接触率が上がるので、有害物質除去性能が向上することが把握される。尚、この効果は、パイル長dが短い場合に特に大きい。
【0211】
〔8:複数の筒状構成体をハニカム形状に積層した場合の有害物質除去性能〕
次に、複数の筒状構成体1をハニカム形状に積層した有害物質除去デバイス20の有害物質除去性能について、実施例8として確認実験を行った。
【0212】
実施例8の試験体としては、有害物質除去デバイス10を複数積層してハニカム形状にした前記図18に示す有害物質除去デバイス20を使用した。また、比較例4として、実施例8と同一外形寸法の単体の有害物質除去デバイス10を試験体として使用した。
【0213】
具体的な試験体条件は、表9に示すように、実施例8では、筒状構成体1の内寸法を10×10mmとし、筒状構成体1の筒長さLを30mmとし、機能繊維2のパイル長dを3mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の天井面と床面との2面とし、機能繊維2の有効表面積を140(cm2 /cm3 )とし、筒状構成体1内の体積占有率を5.6(%)とし、有害物質除去機能を有する材料2bを活性炭とした有害物質除去デバイス10を、25個ハニカム形状に組んだ有害物質除去デバイス20を試験体として使用した。
【0214】
また、比較例4の具体的な試験体条件は、表9に示すように、筒状構成体1の内寸法を50×50mmとし、筒状構成体1の筒長さLを30mmとし、機能繊維2のパイル長dを15mmとし、機能繊維2の繊度を2デシテックス(dtex)とし、機能繊維2の密度を300×103 本/inch2 とし、機能繊維2の植毛位置を筒状構成体1の天井面と床面との2面とし、機能繊維2の有効表面積を140(cm2 /cm3 )とし、筒状構成体1内の体積占有率を5.6(%)とし、有害物質除去機能を有する材料2bを活性炭とした1個の有害物質除去デバイス10を試験体として使用した。
【0215】
【表9】
【0216】
実験は、上記の各試験体に濃度5ppmのトルエン(C6 H5 CH3 )を流量20m3 /hrにて通気させ、試験体通過後のトルエン濃度を測定した。
【0217】
その結果を図27に示す。図27は、経過時間とトルエン濃度(ppm)との関係を示すグラフである。
【0218】
図27に示すように、筒状構成体1を1個にて形成した有害物質除去デバイス10を用いた比較例4では、0〜40時間における除去率が約60%であった。そして、40時間経過後においては、除去率が徐々に低下し、80時間経過後においては除去性能がなくなった。これに対して、実施例8のハニカム形状の有害物質除去デバイス20では、0〜60時間における除去率が約80%以上であった。そして、60時間経過後においては、除去率が低下し、100時間経過後において除去性能がなくなった。
【0219】
この結果、デバイスをハニカム形状にすることによって、開口面積に対して短いパイル長でも効率よくガス除去することが把握できた。
【0220】
〔総合評価〕
最後に、上述した各種の検討及び確認実験から得られた有害物質除去デバイス10・20の全般的な考察を行う。
【0221】
まず、流入開口部10aから見て機能繊維2の空隙箇所が小さい場合、つまり機能繊維2のパイル長が長い場合には、筒状構成体1の長さによらず有害物質除去に有効である。ただし、筒状構成体1の長さが長いと、若干、圧力損失が高くなる傾向が見られる。
【0222】
一方、流入開口部10aから見て機能繊維2の空隙箇所が大きい場合、つまり機能繊維2のパイル長が短い場合には、筒状構成体1の長さが短いと気流が機能繊維2に接触し難いが、非常に圧力損失が低い。ただし、機能繊維2は、内壁面1aに偏って存在しているが、有害物質除去のための表面積は十分大きい。
【0223】
したがって、機能繊維2のパイル長が短い場合は、筒状構成体1の長さが長い場合に有効といえる。特に、筒状構成体1を屈曲したり、筒状構成体1の内部で機能繊維2のパイル長を変えたりして気流を乱すことにより、有害物質除去効率を高めることが可能である。
【0224】
また、有害物質除去デバイス10を複数組み合わせてハニカム形状の有害物質除去デバイス20とした場合には、機能繊維2のパイル長を短くしておくことによって、圧力損失をかなり低くした状態にて高い有害物質除去性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明の有害物質除去デバイスは、有害物質を含む気体又は液体における有害物質を押し出し流れで除去する有害物質除去性能の優れたものである。主として、気体又は液体中の有害物質を吸着・分解・殺菌により効率的に除去する有害物質除去デバイスに適用できると共に、この有害物質除去デバイスを用いた例えばクリーンルーム装置、純水装置、ケミカルフィルター等の気体又は液体の浄化・精製システムに適用できる。
【0226】
また、本発明の用途を化学物質の処理装置に置き換えれば、本発明の有害物質除去デバイスは高品位な触媒・吸着剤を担持したデバイスであり、効率的な化学合成や精製に利用できる例えば化学プラント装置等の化学反応システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0227】
1 筒状構成体
1a 内壁面
2 機能繊維
2a 繊維
2b 有害物質除去機能を有する材料
2c 基材
3 筒軸空間部
4 空間部
10 有害物質除去デバイス
10a 流入開口部(一方の開口部)
10b 排出開口部(他方の開口部)
11 LED紫外線ランプ(光源)
12 電極
13 電極
14 遮蔽板
20 有害物質除去デバイス
d パイル長
H 内法高さ
L 筒長さ
W 内法巾
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状構成体と、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなり、
有害物質を含む気体又は液体が、上記筒状構成体における一方の開口部から流入され、上記機能繊維ブラシモジュールにて有害物質が除去された後、他方の開口部から排出されることを特徴とする有害物質除去デバイス。
【請求項2】
有害物質除去機能、及び前記気体又は液体の圧力損失の度合を最適化すべく、前記筒状構成体の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を設計パラメーターとすることを特徴とする請求項1記載の有害物質除去デバイス。
【請求項3】
前記設計パラメーターにおける少なくとも2つ以上の仕様からなる前記機能繊維ブラシモジュールを配置して構成されていることを特徴とする請求項2記載の有害物質除去デバイス。
【請求項4】
前記機能繊維の繊維径は、3μm〜100μmであることを特徴とする請求項1,2又は3記載の有害物質除去デバイス。
【請求項5】
前記機能繊維ブラシモジュールは、前記筒状構成体の内壁面において全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的に配置されていると共に、
上記全体に亘って均一に配置されている場合における機能繊維の植毛密度、又は複数の群をなして離散的に配置されている場合における各群の機能繊維の植毛密度は、0.1%〜50%となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項6】
前記筒状構成体の内部空間に対する機能繊維ブラシモジュールにおける機能繊維の占める体積の割合は、0.01%〜80%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項7】
前記機能繊維ブラシモジュールの機能繊維は、有害物質除去機能を有する材料を含有した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、有害物質除去機能を有する材料を主成分とした表面コート層を有する高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、又は有害物質除去機能を有する材料を主成分とした粒子が固着した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維からなっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項8】
前記機能繊維ブラシモジュールには、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっていることを特徴とする請求項7記載の有害物質除去デバイス。
【請求項9】
前記光は、紫外線から可視光までを有効とし、有害物質除去機能を有する材料である光触媒の活性化に使用されることを特徴とする請求項8記載の有害物質除去デバイス。
【請求項10】
前記電気は、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧にてなることを特徴とする請求項8記載の有害物質除去デバイス。
【請求項11】
前記筒状構成体は、複数設けられていると共に、互いに直列若しくは並列、又は直列かつ並列に配されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴とする気体又は液体の浄化・精製システム。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴とする気体又は液体の化学反応システム。
【請求項1】
筒状構成体と、有害物質除去機能を有する機能繊維を該筒状構成体の内壁面にブラシ状に起毛した機能繊維ブラシモジュールとからなり、
有害物質を含む気体又は液体が、上記筒状構成体における一方の開口部から流入され、上記機能繊維ブラシモジュールにて有害物質が除去された後、他方の開口部から排出されることを特徴とする有害物質除去デバイス。
【請求項2】
有害物質除去機能、及び前記気体又は液体の圧力損失の度合を最適化すべく、前記筒状構成体の形状・寸法、該機能繊維ブラシモジュールの機能繊維種類・形状・寸法・配置方法を設計パラメーターとすることを特徴とする請求項1記載の有害物質除去デバイス。
【請求項3】
前記設計パラメーターにおける少なくとも2つ以上の仕様からなる前記機能繊維ブラシモジュールを配置して構成されていることを特徴とする請求項2記載の有害物質除去デバイス。
【請求項4】
前記機能繊維の繊維径は、3μm〜100μmであることを特徴とする請求項1,2又は3記載の有害物質除去デバイス。
【請求項5】
前記機能繊維ブラシモジュールは、前記筒状構成体の内壁面において全体に亘って均一に、又は複数の群をなして離散的に配置されていると共に、
上記全体に亘って均一に配置されている場合における機能繊維の植毛密度、又は複数の群をなして離散的に配置されている場合における各群の機能繊維の植毛密度は、0.1%〜50%となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項6】
前記筒状構成体の内部空間に対する機能繊維ブラシモジュールにおける機能繊維の占める体積の割合は、0.01%〜80%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項7】
前記機能繊維ブラシモジュールの機能繊維は、有害物質除去機能を有する材料を含有した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、有害物質除去機能を有する材料を主成分とした表面コート層を有する高分子物質若しくは無機物質からなる繊維、又は有害物質除去機能を有する材料を主成分とした粒子が固着した高分子物質若しくは無機物質からなる繊維からなっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項8】
前記機能繊維ブラシモジュールには、光、電気、熱から選ばれる1種類以上のエネルギーが付与されるようになっていることを特徴とする請求項7記載の有害物質除去デバイス。
【請求項9】
前記光は、紫外線から可視光までを有効とし、有害物質除去機能を有する材料である光触媒の活性化に使用されることを特徴とする請求項8記載の有害物質除去デバイス。
【請求項10】
前記電気は、機能繊維ブラシモジュールと電極との間、又は各機能繊維間に印加される電圧にてなることを特徴とする請求項8記載の有害物質除去デバイス。
【請求項11】
前記筒状構成体は、複数設けられていると共に、互いに直列若しくは並列、又は直列かつ並列に配されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイス。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴とする気体又は液体の浄化・精製システム。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の有害物質除去デバイスを備えたことを特徴とする気体又は液体の化学反応システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図16】
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【図18】
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【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−75994(P2012−75994A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221399(P2010−221399)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390026147)東英産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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