説明

有機−無機ハイブリッド材料

【課題】熱分解温度やガラス転移温度が高い有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を提供する。
【解決手段】トリアジン環を含む熱硬化性樹脂に無機ナノ粒子が分散した構造であり、可視光に対して透明である有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を特徴とする。熱硬化性樹脂は、耐熱性が高い2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンに代表されるシアネート樹脂、あるいはビスマレイミドジフェニルエタンと2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンの共重合体であることが望ましい。樹脂中に分散する無機ナノ粒子はシリカ,チタニア,アルミナ,ジルコニアの少なくとも1種類以上の金属酸化物粒子から成り、無機ナノ粒子の粒径は、無機ナノ粒子の高い比表面積効果が得られる1nm〜100nmであることが望ましい。本発明により、ガラス転移温度や熱分解温度が高く、硬化温度が低い有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性の高い有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物、およびそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の高性能化,高速化により半導体素子からの発熱量が増加の一途をたどっており、半導体を封止する樹脂材料の耐熱性向上が望まれる。有機材料は低温では高弾性率,低熱膨張性を示すが、ある温度以上で弾性率の急激な低下や、熱膨張係数の急激な上昇が起こる。この温度をガラス転移温度と呼び、耐熱性の指標の一つとなる。更に高温になると激しい分子運動により結合の解裂が起こり、熱分解する。有機樹脂材料の場合、一定の昇温速度で昇温した場合の初期重量の95%の時点の温度を5%重量減少温度とし、耐熱性の指標の一つとなる。ガラス転移温度や5%重量減少温度を向上させる方法として、温度に対する可動性が低い無機物を樹脂中に添加する方法が提案されている。例えば、特許文献1に加水分解性アルコキシシランと重縮合反応させたエポキシシリカハイブリッド、特許文献2にポリアミック酸に有機ケイ素化合物を付加反応させたポリイミド−シリカハイブリッドなどが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−59011号公報
【特許文献2】特開平9−216938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術で提案されているエポキシ−シリカハイブリッドは、ガラス転移温度(Tg)は高いが、熱分解温度が360℃程度と低い点で課題を有する。また、ポリイミド−シリカハイブリッドは、耐熱性は十分に高いが硬化温度が350℃と高く、はんだ材を含む半導体封止には適さない。
【0005】
本発明は、低い硬化温度で硬化でき、ガラス転移温度や熱分解温度が高い有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物は、トリアジン環を含む熱硬化性樹脂に無機ナノ粒子が分散した構造であり、可視光に対して透明であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ガラス転移温度や熱分解温度が高く、硬化温度が低い有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の製造方法を説明する図。
【図2】実施例10で合成した有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルを示す図。
【図3】比較例5で合成した有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルを示す図。
【図4】パワー半導体装置の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、トリアジン環を含む熱硬化性樹脂に無機ナノ粒子が分散した構造の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物が高いガラス転移温度と熱分解温度を示すことを見出した。熱硬化性樹脂は、耐熱性が高い2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンに代表されるシアネート樹脂、あるいはビスマレイミドジフェニルエタンと2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンの共重合体であることが望ましい。また、樹脂中に分散する無機ナノ粒子はシリカ,チタニア,アルミナ,ジルコニアの少なくとも1種類以上の金属酸化物粒子から成り、無機ナノ粒子の粒径は、無機ナノ粒子の高い比表面積効果が得られる1nm〜100nmであることが望ましい。粒径が1nm以下では無機物による樹脂骨格の分子運動抑制効果が十分ではなく、粒径が100nm以上では粒子の比表面積が減少するため十分な耐熱効果を示さない。
また、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物中の無機ナノ粒子濃度は任意の量が選べるが、特に0.01wt%〜10wt%の範囲が望ましい。0.01wt%以下ではたとえ無機ナノ粒子の粒径が1nmでも比表面積の十分な効果が発現せず、10wt%以上では耐熱性向上の効果が飽和する。
【0010】
本実施形態に係る有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物は、金属アルコキシド化合物を加水分解・重合反応させて無機ナノ粒子を形成する第一のステップと、第一のステップで生成した生成物と重合性官能基とアルコキシル基を有する金属アルコキシド化合物を加水分解・重合反応させ、無機ナノ粒子の表面に重合性官能基を導入する第二のステップと、第二のステップで生成した生成物を含む反応溶液から遠心分離により溶媒を除去し、有機溶剤を加えて溶媒置換する第三のステップと、第三のステップで生成した分散液にシアネート化合物を含む樹脂原料を加えて混合する第四のステップと、第四のステップで生成した混合液から有機溶剤を除去する第五のステップと、第五のステップで得られた生成物を熱処理により硬化させる第六のステップにより製造することができる。
【0011】
本実施形態の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の作製方法の詳細について、図1を用いて説明する。
【0012】
まず、アルコール(A)中に金属アルコキシド化合物(B),反応開始剤(C)を加え、アルコールの沸点以下の温度で1時間以上攪拌して加水分解・重縮合反応させ、無機ナノ粒子(G)を得る。次いで重合性官能基を有する金属アルコキシド化合物(D)を加え、更に1時間以上攪拌する。この時、金属アルコキシド化合物(D)のアルコキシル基が酸化物無機粒子表面の官能基(水酸基やアルコキシル基)と加水分解・縮重合し、酸化物無機粒子表面に重合性官能基が化学結合する。次いで、溶液に含まれる無機粒子の乾燥を極力抑えつつ遠心分離,エバポレータ等でアルコール(A)や反応開始剤(C)を除去し、有機溶剤(E)で溶媒置換する。この操作は数回繰り返してもよい。この溶液に樹脂原料(F)を加え、ハイブリッドミキサやボールミル等で10分以上攪拌し、十分に混合する。ここで、有機溶剤(E)を用いて溶媒置換する工程を省くと、樹脂原料(F)を加えて混合したときに樹脂原料とアルコール(A)や上記加水分解・重縮合反応で生成するアルコール類が反応し、耐熱性の低い構造となるため、好ましくない。混合後、有機溶剤(E)の沸点以上で保持しながらアスピレータや真空ポンプ等で有機溶剤(E)を完全に除去する。残った残留物を150℃以上で1時間以上、加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得る。
【0013】
本発明で用いられるアルコール(A)としては、常温で液体のアルコール類であれば特に限定されるものではない。例として、メタノール,エタノール,1−プロパノール,イソプロパノール,1−ブタノール,2−ブタノール,1−オクタノールなどが挙げられるが、これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明で用いられる金属アルコキシド化合物(B)としては、シラン化合物,チタン化合物,アルミニウム化合物,ジルコニウム化合物が挙げられる。シラン化合物にはテトラエトキシシランやトリエトキシシラン,ジエトキシシランなどが挙げられる。テトラエトキシシランには、テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトライソプロポキシシラン,テトラブトキシシラン,ジメトキシジエトキシシランなどが挙げられる。トリエトキシシランには、メチルトリメトキシシラン,エチルトリメトキシシラン,プロピルトリメトキシシラン,フェニルトリメトキシシラン,フェニルトリエトキシシランなど、アルキル基,フェニル基を含むシラン化合物が挙げられるが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシランγ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなど、重合性官能基を有するシラン化合物でもよい。ジエトキシシランには、ジメチルジメトキシシラン,ジメチルジエトキシシラン,ジフェニルジメトキシシラン,メチルフェニルジメトキシシラ、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
これらは単独でも複数を組み合わせて用いてもよい。チタン化合物には、チタニウムテトラエトキシド,チタニウムテトライソプロポキシド,チタニウムブトキシド,チタンブトキシドダイマー,チタンテトラ−2−エチルヘキソキド,チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート),チタンテトラアセチルアセトネート,チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート),チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等が挙げられるが、これらを必要に応じて2種類上組み合わせて用いてもよい。アルミニウム化合物には、アルミニウムメトキシド,アルミニウムエポキシド,アルミニウムn−プロポキシアルミニウム,アルミニウムイソプロポキシド,アルミニウムi−ブトキシド,アルミニウムsec−ブトキシド,アルミニウムt−ブトキシド,アルミニウムブトキシド等が挙げられるが、これらを必要に応じて2種類上組み合わせて用いてもよい。ジルコニウム化合物には、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド,ジルコニウムテトラノルマルブトキシド,ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート,ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート,ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート),ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート),ジルコニウムテトラアセチルアセトネート,ジルコニウムトリブトキシモノステアレートが挙げられるが、これらを必要に応じて2種類上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明で用いられる反応開始剤(C)は、金属アルコキシド化合物(B)と加水分解・重縮合反応を起こすものであり、触媒としてアンモニア,メチルアミン,ジメチルアミン等のアンモニア類、或いは、酢酸やリン酸,塩酸などの酸を含む水溶液であるが、特にアンモニアを含む水溶液であることが望ましい。
【0016】
金属アルコキシド化合物(B)の加水分解・重縮合反応で生成する無機ナノ粒子(G)の種類は、合成で用いる金属アルコキシド化合物(B)の種類で決まる。例えば、シリカ,チタニア,アルミナ,ジルコニア等が挙げられ、これらを2種類以上組み合わせてもよい。これらの粒子の粒径は、反応開始剤(C)により制御することが可能で、金属アルコキシド化合物(B)の濃度,水の濃度,触媒であるアミン、或いは酸の濃度で決まる。例えば、金属アルコキシド化合物(B)の濃度が0.2mol/L、水の濃度が10mol/Lの場合、アンモニア濃度が0.1mol/lではおよそ100nmの粒子が生成し、アンモニア濃度が0.01mol/lでは50nmの粒子を得ることができる。また、メチルアミンやジメチルアミンなどの2級,3級アミンを用いると、更に小さな粒径の粒子を得ることができる。このような無機粒子は、乾燥粒子を外部から直接添加しても差し支えないが、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物により高い耐熱性を付与するには、上記合成方法で得ることが望ましい。
【0017】
無機ナノ粒子(G)は、金属アルコキシド化合物(D)を用いて表面修飾すると望ましい。この操作を行うことにより、樹脂中に無機ナノ粒子を均一に分散した透明な有機無機ハイブリッド樹脂硬化物を得ることができる。金属アルコキシド化合物(D)は金属アルコキシド化合物(B)と同様の化合物を用いることもできるが、特に、重合性官能基を持つ金属アルコキシド化合物が望ましい。フェニル基やアルキル基で置換した金属アルコキシド化合物を用いると、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物が可塑化し、ガラス転移温度が低下する恐れがある。具体的には、ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシランγ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが好ましい。本発明で用いられるシラン化合物(B)は、上記単独でも複数を組み合わせてもよい。
【0018】
また、樹脂中に分散する無機ナノ粒子の最終的な濃度は任意に決定することができるが、0.05wt%〜10wt%の範囲がより好ましい。0.05wt%以下では効果が不十分であり、10wt%以上添加しても効果が変わらないためである。
【0019】
本発明で用いられる有機溶剤(E)は、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,ジイソブチルケトン,アセチルアセトン,イソホロン,アセトフェノン,シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられ、特にメチルエチルケトン,メチルイソブチルケトンが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明における樹脂原料(F)には、シアネート化合物を用いる。また、シアネート化合物にマレイミド化合物,エポキシ樹脂プレポリマ等を任意の割合で混合してもよい。シアネート化合物の硬化反応で耐熱性に優れるトリアジン環を含む硬化物が生成される。また、シアネート化合物とマレイミド化合物,エポキシ樹脂プレポリマ等を混合した場合には、シアネート化合物とマレイミド化合物またはエポキシ樹脂との反応でもトリアジン環を含む硬化物が生成される。
【0021】
シアネート化合物としては、4,4′−ジシアナートビフェニル、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジシアナートビフェニル、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)メタン、ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナート−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナート−3−t−ブチル−6−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(3−アリル−4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)スルフィド、ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)スルホン、ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)スルホン、ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)エーテル、ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)カルボニル、ビス(4−シアナート−3−メチルフェニル)カルボニル、ビス(4−シアナート−3−t−ブチルフェニル)カルボニル、ビス(4−シアナート−3−i−プロピルフェニル)カルボニル、ビス(4−シアナート−3,5−ジメチルフェニル)カルボニル、ビス(2−シアナート−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)カルボニル、等が挙げられ、必要に応じてその2種以上を用いることもできる。
【0022】
マレイミド化合物としては、4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノール A ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3′−ジメチル−5,5′−ジエチル−4,4′−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6′−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4′−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4′−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼンなどのビスマレイミド類やマレイミド,フェニルマレイミドなどのモノマレイミド類が挙げられ、必要に応じてその2種類以上を用いることもできる。
【0023】
エポキシ樹脂プレポリマは、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する公知のエポキシ樹脂全般を指すものである。例えば、フェノール類やアルコール類とエピクロルヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂,カルボン酸類とエピクロルヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂,アミン類とエピクロルヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂,不飽和炭化水素の2重結合の酸化より得られる酸化型エポキシ樹脂が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。具体的には、ビスフェノールA,F,Sなどを原料とするビスフェノール型エポキシ樹脂、ハロゲン化されたフェノール類から得られるハロゲン化エポキシ樹脂、ナフタレン骨格やビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、などの2官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,トリフェノールメタン型エポキシ樹脂,ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂,ナフタレン型エポキシ樹脂,フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂、などの多官能エポキシ樹脂、ポリヒドロキシルエーテル型エポキシ樹脂、などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、グリシジルエステル型エポキシ樹脂には、脂肪族系カルボン酸,芳香族系カルボン酸,環状系カルボン酸,重合脂肪酸系カルボン酸を原料として得られる各種グリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、芳香族アミン類,アミノフェノール類、及び環状脂肪族アミン類を原料として得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。また、酸化型エポキシ樹脂としては環式脂肪族エポキシ樹脂が例示される。その他にも、ナフタレン環,アントラセン環,ピレン環などを導入したエポキシ樹脂,含窒素エポキシ樹脂,含リンエポキシ樹脂,含ケイ素エポキシ樹脂,液晶性エポキシ樹脂なども例示されるが、特にこれらに限定されるものではない。また、これらは複数を併用して用いることも可能である。
【0024】
図4にパワー半導体装置の断面模式図を示す。図4に示したパワー半導体装置では、パワー半導体素子101の裏面側電極が絶縁基板106上の回路配線部材102に接合材104によって電気的に接続され、パワー半導体素子101の主電極がリード部材103にワイヤ105によって電気的に接続されている。絶縁基板106の裏面側にはパワー半導体素子101で発生した熱を外部に逃がすための放熱板が設けられている。そして、回路配線部材102,リード部材103,放熱板107の一部が露出した状態でパワー半導体素子101の周囲が封止樹脂108で封止される。この封止樹脂108に本発明の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を適用することができる。本発明の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物は、ガラス転移温度が高く温度振幅に対する弾性率や熱膨張率の変化が小さいため、パワー半導体装置の封止材に用いた時にパワー素子の発熱に伴う温度変化によりかかる熱応力を抑制し、パワー半導体装置の高信頼化に寄与するだけでなく、高い耐熱性を有するためパワー半導体装置の高寿命化に寄与することが期待できる。なお、図4に示したパワー半導体装置の構造は一例であり、他の構造の半導体装置においても半導体素子の周囲を覆う封止樹脂として本発明の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を適用可能なことはいうまでもない。
【0025】
次に、本発明を実施例および比較例によって説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〜5,比較例1〕
エタノール中にテトラエトキシシラン(TEOS)とアンモニアおよび水を加え、室温で12時間攪拌した。これより、粒径10nmのシリカが生成した。次いでビニルトリメトキシシラン(VTMS)を加え、更に12時間攪拌した。次いで、遠心分離器を用いてアルコールやアンモニア,水を除去し、メチルエチルケトン(MEK)で溶媒置換した。
この操作を2回繰り返した。この溶液に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。このとき、混合するBCPPの量を変えて樹脂中のシリカ濃度を変化させた。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプでMEKを完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0027】
また、比較例1として、シリカ粒子無添加のBCPPの樹脂硬化物を作製した。
【0028】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0029】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0030】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例1〜5のシアネート−シリカハイブリッド樹脂硬化物は、比較例1のシリカ無添加の樹脂硬化物よりもガラス転移温度と5%重量減少温度が増加する結果となった。また、実施例1〜6より、シアネート−シリカハイブリッド樹脂硬化物は、シリカ濃度が増えるに従いガラス転移温度と5%重量減少温度が増加し、シリカ濃度が5%以上でほぼ一定の値となった。得られる有機無機ハイブリッド樹脂硬化物を目視したところ、全て透明であった。これは、可視光(360nm以上)以下の粒子が均一に分散しているためと考えられる。
【0033】
〔実施例6〜10,比較例2〕
エタノール中にテトラエトキシシラン(TEOS)とアンモニアおよび水を加え、室温で12時間攪拌した。これより、粒径10nmのシリカ粒子が生成した。次いでビニルトリメトキシシラン(VTMS)を加え、更に12時間攪拌した。次いで、遠心分離器を用いてアルコールやアンモニア,水を除去し、メチルエチルケトン(MEK)で溶媒置換した。この操作を2回繰り返した。この溶液に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)とビスマレイミドジフェニルエタン(BMI)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。このとき、混合するBCPPとBMIの量を変えて樹脂中のシリカ濃度を変化させた。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプでMEKを完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0034】
また、比較例2として、BCPPとBMIの共重合体でシリカ粒子無添加の樹脂硬化物を作製した。
【0035】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0036】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0037】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
実施例6〜10の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物は、比較例2のシリカ無添加の樹脂硬化物よりもガラス転移温度と5%重量減少温度が増加する結果となった。また、実施例6〜10より、原料樹脂をBCPP/BMI=50/50共重合体の場合、シリカ濃度が増えるに従いガラス転移温度と5%重量減少温度が増加し、シリカ濃度が2%以上でほぼ一定の値となった。
【0040】
図2に実施例10における有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルを示す。図2において、点線がナノシリカ無添加の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルで、実線が実施例10で得られる有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルである。実施例10で得られる有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物は、1360cm-1と1560cm-1にトリアジン環由来の吸収が、1000〜1100cm-1にシリカの吸収が見られ、トリアジン環を含む樹脂硬化物中に無機粒子であるシリカが分散した構造であることが分かる。
【0041】
〔実施例11,12,比較例3〕
エタノール中にテトラエトキシシラン(TEOS)と反応開始剤(C)であるアンモニアおよび水を加え、室温で12時間攪拌した。この時、添加するアンモニアの量で生成するシリカの粒径を変化させた。次いでビニルトリメトキシシラン(VTMS)を加え、更に12時間攪拌した。次いで、遠心分離器を用いてアルコールやアンモニア,水を除去し、有機溶剤(E)であるメチルエチルケトン(MEK)で溶媒置換した。この操作を2回繰り返した。この溶液に樹脂原料(F)として2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)とビスマレイミドジフェニルエタン(BMI)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプでMEKを完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0042】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0043】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0044】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。評価結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例13,14より、粒径が100nm以下では比較例2のシリカ無添加の樹脂硬化物に対してガラス転移温度と熱分解温度の向上が見られた。これに対し、比較例3より粒径が200nm以上では、比較例2のシリカ無添加の樹脂硬化物と同レベルの耐熱性となることが分かった。この結果より、添加する無機粒子の粒径は200nmよりも小さくすることが好ましく、100nm以下とすることがより望ましい。
【0047】
〔実施例13〜17〕
エタノール中にテトラエトキシシラン(TEOS)とアンモニアおよび水を加え、室温で12時間攪拌した。次いで、ビニルトリメトキシシラン(VTMS),アリルトリメトキシシラン(ATMS),メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS),エチルトリメトキシシラン(ETMS),ヘキシルトリメトキシシラン(HTMS)をそれぞれ加え、更に1時間以上攪拌した。次いで、遠心分離器を用いてアルコールやアンモニア,水を除去し、メチルエチルケトン(MEK)で溶媒置換した。この操作を2回繰り返した。この溶液に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)とビスマレイミドジフェニルエタン(BMI)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプでMEKを完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0048】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0049】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0050】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。評価結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例13〜17のいずれも比較例2のシリカ無添加の樹脂硬化物に対してガラス転移温度と5%重量減少温度が向上した。一方で、実施例13〜15のビニル基,アリル基,メタクリル基等の重合性官能基を有する金属アルコキシド化合物を用いた場合のガラス転移温度と5%重量減少温度向上の効果に対して、実施例16,17のエチル基,ヘキシル基で置換した金属アルコキシド化合物を用いた場合には耐熱性向上の効果が小さくなった。これは、重合性官能基を有する金属アルコキシド化合物を用いた方がシリカと樹脂の親和性が高いためと考えられる。
【0053】
〔実施例18〜21〕
エタノール中にテトラエトキシシラン(TEOS),チタニウムi−プロポキシド(TIP),ジルコニウムブトキシド(ZB),アルミニウムi−プロポキシド(AP)をそれぞれ添加し、それぞれに反応開始剤(C)であるアンモニアおよび水を加え、室温で12時間攪拌した。次いでビニルトリメトキシシラン(VTMS),アリルトリメトキシシラン(ATMS),メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS),エチルトリメトキシシラン(ETMS)をそれぞれ加え、更に12時間攪拌した。次いで、遠心分離器を用いてアルコールやアンモニア,水を除去し、メチルエチルケトン(MEK)で溶媒置換した。この操作を2回繰り返した。この溶液に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)とビスマレイミドジフェニルエタン(BMI)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプでMEKを完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0054】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0055】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0056】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。評価結果を表5に示す。
【0057】
【表5】

【0058】
実施例18〜21では、シリカ粒子,チタニア粒子,ジルコニア粒子,アルミナ粒子の異なる種類の無機ナノ粒子を分散させた有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を作製した。
何れの条件でも、比較例2のシリカ無添加の樹脂硬化物に対してガラス転移温度、5%重量減少温度が向上し、無機ナノ粒子の種類による違いはほとんど見られなかった。これは、無機ナノ粒子のサイズが十分に小さいため材料バルクの特性が出現しないためと考えられる。
【0059】
〔比較例4〕
エタノール中に金属アルコキシド化合物(B)の代わりに粒径が1μmのシリカ粒子を添加し、アンモニアと水を加えてビニルトリメトキシシラン(VTMS)を加え、12時間攪拌した。次いで、遠心分離器を用いてアルコールやアンモニア,水を除去し、メチルエチルケトン(MEK)で溶媒置換した。この操作を2回繰り返した。この溶液に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)とビスマレイミドジフェニルエタン(BMI)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプでMEKを完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0060】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0061】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0062】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。
【0063】
測定の結果、外観は不透明であった。また、ガラス転移温度は270℃、5%重量減少温度は410℃と、樹脂単独の値とほぼ同程度であった。
【0064】
〔比較例5〕
エタノール中にTEOSアンモニアおよび水を加え、室温で12時間攪拌した。次いでビニルトリメトキシシラン(VTMS)を加え、更に12時間攪拌した。次いで、MEKで溶媒置換せずに、樹脂原料である2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(BCPP)とビスマレイミドジフェニルエタン(BMI)を加え、遊星ボールミルで30分間処理し、十分に混合した。混合後、160℃に保持しながら真空ポンプで溶媒を完全に除去した。最後に残った残留物を160℃/2h,250℃/4hで加熱し、有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を得た。
【0065】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の弾性率は動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis,DMA)はTA Instruments製のTA2000を用いて測定した。昇温速度は2℃/min、チャック間距離10〜20mm,試料厚さ約0.5mm,測定周波数10Hzとした。ガラス転移温度は、DMA測定よりtanδのピーク温度から求めた。5%重量減少温度は熱重量分析装置(TGA,TA Instruments,Q500)を用いて評価した。測定条件は、大気中、昇温速度10℃/minとし、測定前の全重量の95%の温度を5%重量減少温度と定義した。また、樹脂分が完全に分解される800℃の重量分率から無機ナノ粒子含有量を求めた。この値は、合成における仕込み値と一致することを確認した。
【0066】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の透明性を目視により評価した。
【0067】
有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物の赤外吸収スペクトルは赤外分光装置(PerkinElmer,Spectrum100,ATR法)で測定した。測定条件は、測定範囲380−4000cm-1,測定間隔1cm-1,積算回数12回とした。
【0068】
測定の結果、ガラス転移温度は200℃、5%重量減少温度は350℃であり、無機ナノシリカ無添加と比較してガラス転移温度は70℃、5%重量減少温度は60℃低下した。
【0069】
図3に比較例5で合成した有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルを示す。図3において、点線がナノシリカ無添加の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルで、実線が比較例5で得られるナノシリカを10wt%添加した有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物のFT−IRスペクトルである。比較例5で得られる有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物は、シリカ無添加の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物で見られる1360cm-1と1560cm-1のトリアジン環由来の吸収が消失していることが分かる。これは、MEKで溶媒置換せずに合成したため、シアネート化合物とアルコールとの反応等により樹脂が変質し、耐熱性が低下したと考えられる。
【符号の説明】
【0070】
101 パワー半導体素子
102 回路配線部材
103 リード部材
104 接合材
105 ワイヤ
106 絶縁基板
107 放熱板
108 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアジン環を含む熱硬化性樹脂に無機ナノ粒子が分散した構造であり、可視光に対して透明であることを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項2】
請求項1記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物において、前記熱硬化性樹脂が2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンの重合体であることを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項3】
請求項1記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物において、前記熱硬化性樹脂がビスマレイミドジフェニルエタンと2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンの共重合体であることを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項4】
請求項1記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物において、前記無機ナノ粒子がシリカ,チタニア,アルミナ,ジルコニアの少なくとも1種類以上の金属酸化物粒子から成り、粒径が1nm〜100nmであることを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項5】
請求項4記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物において、前記無機ナノ粒子を0.05wt%〜10wt%含むことを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項6】
請求項1記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物において、前記無機ナノ粒子の表面に重合性官能基が化学結合していることを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項7】
請求項1記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物において、金属アルコキシド化合物を加水分解・重合反応させて無機ナノ粒子を形成する第一のステップと、第一のステップで生成した生成物と重合性官能基とアルコキシル基を有する金属アルコキシド化合物を加水分解・重合反応させ、無機ナノ粒子の表面に重合性官能基を導入する第二のステップと、第二のステップで生成した生成物を含む反応溶液から遠心分離により溶媒を除去し、有機溶剤を加えて溶媒置換する第三のステップと、第三のステップで生成した分散液にシアネート化合物を含む樹脂原料を加えて混合する第四のステップと、第四のステップで生成した混合液から有機溶剤を除去する第五のステップと、第五のステップで得られた生成物を熱処理により硬化させる第六のステップにより製造されたことを特徴とする有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物。
【請求項8】
半導体素子の周囲が封止材で封止された構造の半導体装置であって、前記封止材に請求項1〜7のいずれかに記載の有機−無機ハイブリッド樹脂硬化物を用いたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10843(P2013−10843A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143735(P2011−143735)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】