説明

有機エレクトロルミネセンス素子のための新規材料

本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子への使用に適するアントラセン誘導体及びこれらアントラセン誘導体を含む有機エレクトロルミネセンス素子に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子のための新規材料、それらの使用及びこれら材料を含む有機エレクトロルミネセンス素子に関する。
【0002】
可視スペクトル領域で発光することのできる有機エレクトロルミネセンス素子の一般的構造は、例えば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461及びWO 98/27136に記載されている。
【0003】
しかしながら、これらの素子は、高品質のフルカラー表示装置での使用のための早急な改善を要するかなりの問題をなお示している:
1.駆動寿命は、特に青色発光の場合、未だ短く、これまでは、商業的に簡単な応用を達成することができるだけであった。
【0004】
2.効率は、特に青色発光の場合、未だ不適当であり、高品質な応用のため更に改善されねばならない。
【0005】
3.青色発光エレクトロルミネセンス素子のための母体材料として使用される幾つかの化合物は、ガラス様フィルムを生成せずに蒸着中に結晶化する傾向にあり、適切に高いガラス転移温度を有していない。更なる改善がここで必要である。
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、この目的のための改善特に有機エレクトロルミネセンス素子において改善された効率と改善された寿命を生じる化合物を提供することであった。本発明の目的は、更に、より高いガラス転移温度と、より低い結晶化傾向を有する化合物を提供することであった。
【0007】
2個のフェニルアントラセン基が2価の基により連結しているフェニルアントラセン誘導体は、先行技術(EP 0681019)から公知である。開示された2価基は、単結合とアリーレン基、特にフェニレン基及びアルキレン基、-O-、-S-若しくは-NR-により中断されるフェニレン基である。他の2価基が2個のアントラセンを連結するために特に適することができることは、この出願からは明らかではない。フェニル基の代わりに結合する他の基を含むアントラセン誘導体が特に適することができることは、この出願からは同様に明らかではない。
【0008】
先行技術は、更に、式アントラセン-X-アントラセン(ここで、Xは、少なくとも2個の環を有する複素環式化合物を表わす)の2量体アントラセン誘導体を開示している(JP 2004-/002351)。9-及び9’-位で結合するヘテロアリール基を含むこの型のアントラセン誘導体が特に適することは、この出願から明らかではない。
【0009】
EP 1221434は、2個のアントラセン単位が、フルオレン単位により連結している化合物を開示している。とりわけ、2個のアントラセン単位の9-位、9’-位に夫々ピリジン基を追加的に含む化合物も開示されている。しかしながら、この文献は、フルオレン単位が、有機エレクトロルミネセンス素子で特に良好な結果を達成するために必要であることを教示している。
【0010】
驚くべきことに、以下に記載するある種のアントラセン誘導体が、上記先行技術と比較して顕著な改善を有することが見出された。この化合物により、より高い効率と改善された寿命を得ることができる。加えて、これらの化合物は、先行技術の化合物より低い結晶化傾向と、より高いガラス転移温度を有する。したがって、本発明は、これら化合物とそれらのOLEDでの使用に関する。
【0011】
本発明は、式(1)の化合物に関する。
【化7】

【0012】
ここで、使用される記号及び添字は、以下が適用される:
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり;
Arは、両方の基Arが芳香族環構造を表わすならば式(2)の基である。
【化8】

【0013】
ここで、Xは、出現毎に同一であるか異なり、CR若しくはNを表わし、
又は、Arは、少なくとも1つの基Arが芳香族環構造を表わすならば、
出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜20個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(各鎖は1以上の基Rにより置換されていてもよく、そして、1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、-N(R)-若しくは-CONRで置き代えられていてもよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられていてもよい)又は1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜30個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基、又は1以上のR基により置換されていてもよい、5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、又は、2、3、4若しくは5個のこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族環構造を形成するものであってもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくは1〜20個のC原子を有する炭化水素基であって、脂肪族、芳香族又は脂肪族及び芳香族の組合せであってよく、1以上のH原子は、Fで置き代えられていてもよく;ここで、2個以上の基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族若しくは芳香族環構造を形成するものであってもよく;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3若しくは4であり、
mは、0、1、2、3、4若しくは5である。
【0014】
本発明の目的のためには、環状アルキル基は、単環状及び二及び多環状アルキル基の両方を意味するものと解される。
【0015】
本発明の目的のためには、隣接する置換基は、隣接するC原子即ち直接結合を有するC原子に直接結合する置換基を意味するものと解される。
【0016】
本発明の目的のためには、アリール基若しくはヘテロアリール基は、共通の芳香族π電子構造を有する芳香族基若しくは複素環式芳香族基を意味するものと解される。本発明の目的のためには、これは、単純なホモ若しくはヘテロ環、例えばベンゼン、ピリジン、チオフェン等であってもよく、或いは、少なくとも2個の芳香族若しくは複素環式芳香族環、例えばベンゼン環が、互いに「縮合」する、即ち互いにアネレーション(anellation)により縮合する、即ち少なくとも1つの共通の辺を有し、それにより共通の芳香族π電子構造を有する、縮合芳香族環構造であることができる。これらアリール基若しくはヘテロアリール基は、置換されていても、非置換でもよい。したがって、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等のような構造は、アリール基とみなされ、そして、キノリン、アクリジン、ベンゾチオフェン、カルバゾール等は本発明の目的のためのヘテロアリール基とみなされるべきであり、一方、例えばビフェニル、フルオレン、スピロビフルオレン等は、それらが、別々の芳香族電子構造を含むことから、アリール基とはしない。
【0017】
本発明の目的のために、芳香族環構造は、6〜30個のC原子を環構造中に含む。本発明の目的のために、複素環式芳香族環構造は、2〜30個のC原子と少なくとも1個のヘテロ原子を環構造中に含むが、但し、C原子とヘテロ原子の合計数は少なくとも5個である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、O及び/又はSから選ばれる。本発明の目的のために、芳香族若しくは複素芳香族環構造は、必ずしもアリール又はヘテロアリール基のみを含む構造ではなく、加えて、複数のアリール又はヘテロアリール基は、例えば、sp混成のC、N又はO原子のような短い非芳香族単位(H以外の原子は、10%より少なく、好ましくは、H以外の原子は、5%より少ない)により中断されていてもよい構造を意味するものと解される。このように、例えば、9,9’-スピロビフルオレン、フルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテルも、本発明の目的のための芳香族環構造を意味するものと解されることを意図されてもいる。芳香族若しくは複素芳香族環構造の部分は、ここで縮合基であってもよい。
【0018】
本発明の目的のためには、C〜C40-アルキル基は、ここで、加えて、個々のH原子若しくはCH基は、上記した基により置換されていてよく、特に好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル或いはオクチニル基を意味するものと解される。C〜C40-アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、又は2-メチルブトキシを意味するものと解される。1〜30個の芳香族環原子を有する芳香族又は複素環式芳香族環構造は、各場合に、上記した基R若しくはRにより置換されていてもよく、任意の所望の部位で、芳香族又は複素環式芳香族系に連結していてもよいが、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランセン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、トルクセン、イソトルクセン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス-若しくはトランス-インデノフルオレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジンイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、及びベンゾチアジアゾールから誘導される基を意味するものと解される。
【0019】
式(1)の化合物の好ましい具体例は、式(3)若しくは(4)の化合物である。
【化9】

【0020】
ここで、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造を表わし;その他の記号及び添字は、上記と同じ意味を有する。
【0021】
式(3)の化合物の好ましい具体例においては、最高2個の記号Xは、Nを表わし、他の記号Xは、CRを表わす。式(3)の化合物の好ましい基Ar若しくは中央ユニットは、以下の式(5)乃至(10)の基である。これらのうち、特に好ましいのは、式(5)及び(9)の基であり、非常に特に好ましいのは、式(5)の基である。
【化10】

【0022】
式(3)の化合物の別の好ましい具体例においては、記号Arが、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、9〜25個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造である。式(3)の特に好ましい化合物は、記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、夫々1以上の基Rにより置換されていてもよい、10〜16個の芳香族環原子を有する縮合アリール若しくはヘテロアリール基、又は芳香族基場合により架橋ビアリール基を表わすものである。式(3)の更に特に好ましい化合物は、記号Arが、出現毎に同一であるか異なり、1-ナフチル、2-ナフチル、9-アントリル、2-フェナンントレニル、9-フェナンントレニル、キノリニル、イソキノリニル、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、フラニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ピロリル、インドリル、カルバゾリルを表わし、夫々は、C若しくはN、イミダゾリルにより連結されていてもよく、C若しくはN、ベンズイミダゾリルにより連結されていてもよく、C若しくはN、2-,3-或いは4-ピリジル、ピラジニル、2-,4-或いは5-ピリミジニル、3-或いは4-ピリダジニル、キノリニル、イソキノリニル、オルトビフェニル若しくは2-フルオレニル基により連結されていてもよく、夫々は、1以上の基Rにより置換されていてもよく、特に、1以上の基Rにより置換されていてもよい1-ナフチル、2-ナフチル、9-フェナンントレニル、チエニル、ベンゾチエニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、3-ピリジル、キノリニル、オルトビフェニル若しくは2-フルオレニル基を表わすものである。2個の基Arは好ましくは同一である。
【0023】
式(4)の化合物の好ましい具体例では、複素環式芳香族環構造Arのアリール基は、アントラセンに直接結合している。記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜20個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造を好ましくは表わす。特に好ましい式(4)の化合物は、記号Arが、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜14個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基を表わすものである。非常に特に好ましい式(4)の化合物は、記号Arが、出現毎に同一であるか異なり、チエニル、ベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、フラニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ピロリル、インドリル若しくはカルバゾリルを表わし、夫々は、C若しくはN、イミダゾリルにより連結されていてもよく、C若しくはN、ベンズイミダゾリルにより連結されていてもよく、C若しくはN、2-,3-或いは4-ピリジル、ピラジニル、2-,4-或いは5-ピリミジニル、3-或いは4-ピリダジニル、キノリニル若しくはイソキノリニルル基により連結されていてもよく、夫々は、1以上の基Rにより置換されていてもよく、特に1以上の基Rにより置換されていてもよいチエニル、ベンゾチエニル、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、3-ピルジル若しくはキノリニル基を表わすものである。2個の基Arは好ましくは同一である。
【0024】
式(4)の化合物の別の好ましい具体例では、記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜14個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基を表わす。記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、特に好ましくは、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,2-、1,3-或いは1,4-フェニレン若しくは2,7-フェナントレンである。
【0025】
式(1)若しくは式(3)、(4)の更に好ましい化合物では、記号Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル若しくはアルコキシ基又は3〜10個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル若しくはアルコキシ基(各場合、1以上のCH基は、-RC=CR-、-O-、-S-若しくは-N(R)で置き代えられていてもよく、また、各場合1以上のH原子は、Fで置き代えられていてもよい)又は5〜14個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基、又は、2若しくは3個のこれらの構造の組み合わせを表わし;ここで、2個以上の基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族環構造を形成するものであってもよい。特に好ましい基Rは、H、F、1〜4個のC原子を有する直鎖アルキル基又は3〜5個のC原子を有する分岐アルキル基又は5〜10個のC原子を有する環状アルキル基(各場合、1以上のH原子は、Fで置き代えられていてもよい)又は6〜10個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基、又は、2個のこれらの構造の組み合わせより成る群から選択され、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族環構造を形成するものであってもよい。
【0026】
更に好ましい式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は、添字nが、0、1、若しくは2を表わし、特に好ましくは0若しくは1、非常に特に好ましくは、0を表わすものである。添字nが、1を表わすならば、置換基Rは、好ましくはアントラセンの2位及び/又は6位に結合している。
【0027】
更に好ましい式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は、添字mが、1、2若しくは3を表わし、特に好ましくは1若しくは2を表わすものである。
【0028】
更に好ましい式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は、その分子量は、600〜2000g/mol、特に好ましくは700〜1500g/molである。
【0029】
2個の基Ar若しくは2個の基Arが同一に選択される式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物と、2個の基Ar若しくは2個の基Arが異なって選択される化合物も両方とも本発明によるものであることが、ここで強調されるべきである。2個の基Arが同一であって、同一に置換される化合物又は2個の基Arが同一であって、同一に置換される化合物も好ましい。
【0030】
Ar、Ar及びArの選択に依存して、式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は1以上の結合(Ar若しくはAr若しくはArとアントラセンとの間の結合)に関して束縛回転を有し、それゆえアトロプ異性を形成(即ち室温で安定な立体異性の形成)することができる。式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物が、1以上の結合についてアトロプ異性を示すならば、本発明は、各場合に対応する単離された或いは豊富化されたアトロプ異性体にも関する。これは、エナンチオマー及びジアステレオマーの両方に関する。適切なアトロプ異性体の選択は、例えば、化合物の溶解性、ガラス転移温度及び電子光学特性に影響することができる。好ましい化合物はアトロプ異性を示さないものである。
【0031】
式(3)の好ましい化合物の例が、以下の表1に示される。Phはフェニル基を表わす。表の略称は、以下の基を表し、点線は、各場合アントラセンへの連結を示す。
【化11】

【表1】

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
式(4)の好ましい化合物の例が、以下の表2に示される。Phはフェニル基を表わす。表の略称は、以下の基を表し、点線は、各場合アントラセンへの連結を示す。
【化12】

【表2】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】
本発明の化合物は、一連の遷移金属触媒カップリング反応により合成することができる。特に成功することが分かったカップリング反応は、アリールボロン酸誘導体、例えばアリールボロン酸若しくはアリールボロン酸エステルと芳香族ハロゲン化物の、特にパラジウム触媒を使用する鈴木カップリングである。鈴木カップリングのための典型的反応条件は、当業者に公知である。同様に、適切なハロゲン化物は、特に臭素及び沃素であるが、トシレート、トリフレート若しくはスルホネートのようなの脱離基も一般的に使用することができることも、当業者に公知である。したがって、鈴木カップリングで随意に置換された9-ハロアントラセンにカップルされる中央芳香族ユニットArのジボロン酸誘導体を合成することも可能である。更なる工程で、アントラセンは、例えばNBSを使用して、10位でハロゲン化されることもできる。ハロゲン化化合物は、更なる工程で、鈴木カップリングで基Arのボロン酸誘導体にカップルし、式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物を得ることができる。逆に、鈴木カップリングで随意に置換された9-ハロアントラセンに、基Arのボロン酸誘導体を先ずカップルし、更なる工程で、例えばNBSを使用して、10位でハロゲン化することもできる。ハロゲン化化合物は、更なる工程で、鈴木カップリングで基Arのジボロン酸誘導体にカップルし、式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物を得ることができ、又はボロン酸誘導体への変換後、基Arのジハロゲン化物にカップルすることもできる。これらのプロセスは、基Ar及びArの正確な構造には依存しないで、芳香族及び複素環式芳香族基Ar、Ar及びArに対して等しく使用される。鈴木カップリングに代えて、他の金属触媒カップリング反応も、例えばスチル(Stille)カップリング即ちパラジウム触媒による有機錫化合物のカップリングのようなものも適している。
【0041】
本発明は、更に、アントラセンと基Ar若しくはAr若しくはArとの間の結合が、鈴木カップリングにより形成されることを特徴とする、式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物の合成方法に関する。
【0042】
以下の式(11)の化合物は、上記プロセスによる(1)若しくは式(3)、(4)の化合物の合成のための価値のある中間体である。
【0043】
したがって、本発明は、更に式(11)の化合物に関する。
【化13】

【0044】
ここで、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、塩素、臭素、沃素若しくは式OSOの基、特に臭素を表わし、Rは、1〜20個のC原子を有する有機基を表わし、加えて個々のH原子はフッ素で置き代えられてよく、特に臭素を表わし、その他の記号及び添字は、上記と同じ意味を有する。
【0045】
式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は、有機電子素子特に有機エレクトロルミネセンス素子のための使用のために適している。
【0046】
したがって、本発明は、さらに、有機電子素子特に有機エレクトロルミネセンス素子における式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物の使用に関する。
【0047】
本発明は、再度さらに、少なくとも1つの式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物を含む有機電子素子に関する。有機電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、有機光受容器若しくは有機レーザーダイオード(O-laser)から選択され、特に好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)である。
【0048】
有機エレクトロルミネセンス素子は、陽極、陰極及び少なくとも1つの発光層を含み、そして更なる層をも含んでもよい。これらは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び/又は電荷生成層(T.Matumoto et al.,Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer,IDMC2003,Taiwan;Session21OLED(5))であってよい。これらの層での材料は、ドープされていてよい。しかしながら、これら各層は必ずしも存在する必要はない。適する正孔輸送材料は、例えばp-ドープされていてもよい先行技術に通常使用されるような芳香族アミンである。適する電子輸送材料は、n-ドープされていてもよい、例えば金属キレート錯体、例えばAlQであり、電子不足ヘテロ環系化合物、例えばトリアジン誘導体若しくは、例えばWO 05/84081及びWO 05/084082に記載されるような芳香族カルボニル若しくはホスフィンオキシドである。適する電子注入層は、特に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のフッ化物並びに酸化物、例えば、NaF、BaF、CaF、LiF若しくはLiOである。
【0049】
式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は、好ましくは、発光層で使用される。それは、ここで好ましくはドーパントと共に母体材料として使用される。母体材料は、システム中でより多い割合で存在する母体とドーパントを含むシステム(2成分混合物)中の成分を意味するものと解される。母体と複数のドーパントを含むシステム(3成分混合物)においては、母体は、その混合物中の割合が最大である成分を意味するものと解される。式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物は、特にここで、青色単項エミッターのための母体材料のみならず緑或いは赤色発光化合物のための母体材料として適している。
【0050】
混合物中の式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物の割合は、50.0〜99.9重量%、好ましくは80.0〜99.5重量%、特に好ましくは90.0〜99.0重量%である。対応して、混合物中のドーパントの割合は、0.1〜50.0重量%、好ましくは0.5〜20.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。
【0051】
好ましいドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル及びアリールアミンのクラスより選択される。モノスチリルアミンは、1置換或いは非置換スチリル基と少なくとも1個の好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。ジスチリルアミンは、2置換或いは非置換スチリル基と少なくとも1個の好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。トリスチリルアミンは、3置換或いは非置換スチリル基と少なくとも1個の好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。テトラスチリルアミンは、4置換或いは非置換スチリル基と少なくとも1つの好ましくは芳香族アミンを含む化合物を意味すると解される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベン基であり、更に置換されていてもよい。対応するホスフィン及びエーテルもアミン同様に定義される。本発明の目的のためには、アリールアミン若しくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3置換或いは非置換芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を意味すると解される。これら芳香族若しくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1つは、好ましくは少なくとも14個の芳香族環原子を含む、好ましくは縮合環構造である。それらの例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン若しくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、1個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に直接に、好ましくは9位で結合している化合物を意味すると解される。芳香族アントラセンジアミンは、2個のジアリールアミノ基が、アントラセン基に直接に、好ましくは9,10-位で結合している化合物を意味すると解される。芳香族ピレンアミン及びピレンジアミン又はクリセンアミン及びクリセンジアミンも同様に定義され、ジアリールアミノ基は、好ましくはピレンに、1位若しくは1,6位で結合している。特に好ましいドーパントは、トリスチルベンアミン、芳香族スチルベンアミン、アントラセンジアミン、ピレンジアミン及びクリセンジアミンのクラスから選択される。非常に特に好ましいドーパントは、トリスチルベンアミンのクラスから選択される。このタイプのドーパントの例は、置換或いは非置換トリスチルベンアミン若しくはWO 06/000388、WO 06/059737及びWO 06/000389に記載されたドーパントである。
【0052】
更に、好ましい有機エレクトロルミネセンス素子は、複数の発光層が使用され、これら層の少なくとも一つが、式(1)若しくは式(3)、(4)の化合物を含むことを特徴とする。これら発光層は、特に好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光長を有し、全体として、白色発光が生じ、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができ、黄色、オレンジ色若しくは赤色光を発光する少なくとも一つの更なる発光化合物も、更なる発光層に使用される。特に好ましいものは、3層構造であり、その3層は青色、緑色及びオレンジ色若しくは赤色発光するものである。(基本構造については、例えば、WO 05/011013参照。)
式(1)若しくは式(3)、若しくは(4)の化合物及びドーパントに加えて、更なる物質が、例えば、正孔-若しくは電子輸送材料が、発光層に存在してもよい。
【0053】
更なる具体例においては、式(1)若しくは式(3)若しくは(4)の化合物が、発光材料として、特に青色若しくは緑色発光材料として使用される。発光層の混合物中の式(1)若しくは式(3)、(4)の発光化合物の割合は、0.1〜50.0重量%、好ましくは0.5〜20.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。対応して、母体材料の割合は、50.0〜99.9重量%、好ましくは80.0〜99.5重量%、特に好ましくは90.0〜99.0重量%である。
【0054】
この目的のための適切な母体材料は、種々のクラスの物質である。好ましい母体材料は、オリゴアリーレン(例えば、EP 676461による2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレン若しくはジナフチルアントラセン)特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(例えば、DPVBi若しくはEP 676461によるスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(例えば、WO 04/081017による)、正孔伝導化合物(例えば、WO 04/058911による)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(例えば、WO 05/084081及びWO 05/084082による)、アトロプ異性体(例えば、WO 06/048268による)若しくはボロン酸誘導体(例えば、WO 06/117052による)のクラスから選択される。適切な母体材料は、更に上記本発明の化合物でもある。本発明の化合物に加えて、特に好ましい母体材料は、ナフタレン、アントラセン及び/又はピレンを含むオリゴアリーレン若しくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシド及びスルホキシドのクラスから選択される。本発明の化合物に加えて、非常に特に好ましい母体材料は、アントラセン及び/又はピレンを含むオリゴアリーレン若しくはこれら化合物のアトロプ異性体、ホスフィンオキシド及びスルホキシドのクラスから選択される。本発明の目的のためには、オリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリール若しくはアリーレン基が互いに結合している化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0055】
更に別の本発明の具体例においては、式(1)若しくは式(3)若しくは式(4)の化合物は、電子輸送材料として使用される。ここで、少なくとも1つの電子不足複素環式化合物、例えば、ピリジン、ピリミジン、キノリン等のような窒素へテロ環、を含む1以上のAr若しくはAr若しくはArが好ましい。更に、電子供与化合物でドープされた化合物が好ましい。
【0056】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、昇華法による1以上の層の適用により製造することができ、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満、特に好ましくは10−7mbar未満の圧力で、真空昇華ユニットで蒸着される。
【0057】
製造は、さらに、OVPD(有機蒸気相堆積)法あるいはキャリアーガス昇華による1以上の層の適用による実行することができ、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。
【0058】
製造は、更に、溶液から、例えば、スピンコーティングにより、若しくは例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷或いはオフセット印刷、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)或いはインクジェット印刷のような任意の所望の印刷プロセスによる1以上の層の適用により実行することができる。可溶性の式(1)若しくは式(3)若しくは式(4)の化合物が、この目的のためには必要である。高い溶解度は、化合物の適切な置換若しくは適切なアトロプ異性他の選択の何れかにより達成することができる。
【0059】
したがって、本発明は、更に、少なくとも1つの式(1)若しくは式(3)若しくは式(4)の化合物が、随意にドーパント及び/又は他の化合物と一緒に、昇華法により若しくは溶液から例えば印刷プロセスにより、適用されることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造法に関する。
【0060】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を超える以下の驚くべき効果を有する。
【0061】
1.素子の熱安定性は、先行技術の化合物と比較してより高くなっており、これは、顕著に長い寿命から、特に明らかである。
【0062】
2.有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術の系と比較して、特に青色ルミネッセンスの場合により顕著に高い効率を有している。
【0063】
3.本発明の化合物は、高いガラス転移温度と低い結晶化傾向を有し、それゆえ有機エレクトロルミネッセンス素子に特に適している。
【0064】
本出願の文脈及びまた以下の例は、本発明による混合物のOLED及び対応する表示装置に関する使用に向けられている。記載が限定されているのにも関わらず、当業者は、発明性を必要とすることなく、本発明による化合物を、上記電子素子に用いることが可能である。
【0065】
本発明は、以下の例により、より詳細に説明されるが、それにより限定されることを望むものではない。
【0066】

以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で行われる。出発物質は、アルドリッチ(ALDRICH)或いはABCRから購入することができるか、又は文献から公知の合成により調製することができる。
【0067】
例1:1,4-ビス[9-(2-ナフチル)]-10-アントリルナフタレンの調製
a)ナフタレン-1,4-ジボロン酸エチレングリコールエステル
【化14】

【0068】
1500mlの無水TMF中の223.5g(780ミリモル)のジブロモナフタレンと41.5g(1.6ミリモル)のマグネシウムから調製されたグリニャール溶液が、500mlのTMF中の260ml(2.34ミリモル)のトリメチルボレートに−75℃で滴下され、混合物は、−50℃で1時間撹拌され、次いでRTまで加熱され、500mlの水と50mlの濃酢酸を使用して加水分解され、抽出により集成される。溶媒除去後得られた残留物は、水分離機上の1000mlトルエン中の110ml(1.6モル)のエチレングリコールで煮沸され、溶媒が除去され、残留物は、酢酸エチル/ヘプタンで再結晶化され薄黄色の結晶固形物としてのジエステル157.1g(75%)が得られる。
【0069】
b)1,4-ビス(9-アントリル)ナフタレンの調製
【化15】

【0070】
22.8g(90ミリモル)の9-ブロモアントラセンと11.9g(45ミリモル)のナフタレン-1,4-ジボロン酸エチレングリコールエステルが、先ず550mlジメトキシエタンと140mlのエタノールに導入され、440mlの2MのNaCO溶液が添加され、混合物は窒素で飽和され、3.2g(10.7ミリモル)のトリス-オルト-トリルホスフィンと400mg(1.8ミリモル)のパラジウム(II)アセテートが引き続き添加され、混合物は、48時間煮沸加熱される。反応が完了すると、400mlの水が添加され、固形物は吸引ろ過され、水とEtOHで繰り返し洗浄され、真空乾燥される。ろ過と1,4-ジオキサンからの再結晶化により無色固形物(18.4g、87%)が得られる。
【0071】
c)1,4-ビス[(10-(9-ブロモアントリル)]ナフタレンの調製
【化16】

【0072】
9.1g(18.9ミリモル)の1,4-ビス(9-アントリル)ナフタレンが、150mlのジクロロメタン中に懸濁され、7.1gのNBSが添加され、生じた懸濁液は、RTで24時間撹拌される。反応混合物は、回転蒸発器で蒸発され、EtOH/HO(1:1)中で煮沸により洗浄され、引き続きジオキサンからの再結晶化され、RP-HPLCによる純度98%超の薄黄色の固形物11.2g(93%)が得られる。
【0073】
d)1,4-ビス[9-(2-ナフチル)]-10-アントリルナフタレンの調製
【化17】

【0074】
30.0g(44.4ミリモル)の1,4-ビス[(10-(9-ブロモアントリル)]ナフタレン、19.1g(110.9ミリモル)のナフタレン-2-ボロン酸、4.4g(3.84ミリモル)のパラジウムテトラキスフェニルホスフィンと440mlの2MのNaCO溶液が、550mlジメトキシエタンと140mlのエタノール中に懸濁され、48時間煮沸加熱される。固形物は吸引ろ過され、水とエタノールで洗浄され、クロロホルムに溶解され、ろ過される。引き続きトルエンから再結晶化され、RP-HPLCによる測定で純度99.9%超の薄黄色の固形物が得られる。収量:20g(68%)。Tg=195℃。
【0075】
例2−14:以下の化合物が例1と同様にして、1d)記載の方法により、1c)で調製されたジブロミドへのカップリングにより下記ボロン酸から出発して、RP-HPLCによる純度99.9%で、記載の収率で、調製される。
【化18】

【0076】

【0077】
例15:4,4’-ビス[9-(2-ナフチル)]-10-アントリル-1,1’-ジナフタレンの調製
a)4,4-ビス(9-アントリル)-1,1’-ジナフタレンの調製
【化19】

【0078】
22.8g(90ミリモル)の9-ブロモアントラセンと17.7g(45ミリモル)の1,1’-ビナフチル-4,4’-ジボロン酸エチレングリコールエステルが、先ず500mlのトルエンと100mlのジオキサンに導入され、500mlの2MのNaCO溶液が添加され、混合物は窒素で飽和される。3.2g(10.7ミリモル)のトリス-オルト-トリルホスフィンと400mg(1.8ミリモル)のパラジウム(II)アセテートが引き続き添加され、混合物は、12時間煮沸加熱される。反応が完了すると、500mlの水が添加され、固形物は吸引ろ過され、水とEtOHで繰り返し洗浄され、真空乾燥される。ろ過と1,4-ジオキサンからの再結晶化により、無色固形物(42.6g、78%)が得られる。
【0079】
b)4,4’-ビス[10-(9-ブロモアントリル)]-1,1’-ジナフタレンの調製
【化20】

【0080】
19.7g(50ミリモル)の4,4’-ビス(9-アントリル)-1,1’-ジナフタレンが、500mlのジクロロメタン中に懸濁され、18.7g(105ミリモル)のNBSが添加され、生じた懸濁液は、RTで18時間撹拌される。反応混合物は、回転蒸発器で蒸発され、500mlのEtOH/HO(1:1)中で煮沸により洗浄され、引き続きジオキサンから再結晶化され、RP-HPLCによる純度98%超の薄黄色の固形物36.7g(96%)が得られる。
【0081】
c)4,4-’ビス[9-(2-ナフチル)]-10-アントリル-1,1’-ジナフタレンの調製
【化20】

【0082】
30.6g(40ミリモル)の1,4-ビス[(10-(9-ブロモアントリル)]ナフタレンと17.2g(100ミリモル)のナフタレン-2-ボロン酸が、500mlのトルエンと100mlのジオキサン中に先ず導入され、500mlの2MのNaCO溶液が添加され、混合物は窒素で飽和される。3.2g(10.7ミリモル)のトリス-オルト-トリルホスフィンと400mg(1.8ミリモル)のパラジウム(II)アセテートが引き続き添加され、混合物は、12時間煮沸加熱される。固形物はろ過され、水とエタノールで洗浄され、クロロホルムに溶解され、ろ過される。引き続きトルエンから再結晶化され、昇華によりRP-HPLC測定による純度99.9%超の薄黄色の固形物が得られる。収量:24.4g(71%)。Tg=244℃。
【0083】
例16−28:以下の化合物が例15と同様にして、15c)記載の方法により、15b)で調製されたジブロミドへのカップリングにより下記ボロン酸から出発して、RP-HPLCによる純度99.9%で記載された収量で、調製される。
【化22】

【0084】

【0085】
例29−40:以下の化合物が例15と同様にして、15a)記載の方法によるカップリングにより下記ボロン酸から出発して、15b)記載の方法による引き続く臭素化と、15c)記載の方法によるキノリン-3-、ピリジン-4-、ベンゾチオフェン-2-若しくはベンゾフラン2-ボロン酸への引き続く再カップリングで、RP-HPLCによる純度99.9%で、記載された収量で、調製される。
【化23】

【0086】

【0087】
例41:OLEDの製造
OLEDが、WO 04/058911に記載される一般的プロセスにより製造されるが、これは、特別な状況(例えば、最適な効率と色を達成するための層の厚さの変化)に対する個々の場合において適合される。
【0088】
以下の例42乃至63に、種々のOLEDに対する結果が示される。構造化されたITO(インジウム錫酸化物)により被覆されたガラス板がOLED基板を形成する。改善された加工のために、PEDOT(水からスピンコートにより適用、H.C.Stack,Goslar独から購入。ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン))が、基板に適用される。OLEDは、以下の層配列から成る。基板/ 20nmのPEDOT/ 20nmの正孔注入材料HIL1を含む正孔注入層(HIL)/ 20nmの正孔輸送層(HTM)/ 30nmの発光層(EML)/ 20nmの正孔輸送層(HTM)及び最後に陰極。PEDOTとは別に、材料は、真空室で熱蒸着される。
【0089】
発光層は、ここで、常にマトリックス材料(母体)と、共蒸発により母体に混合されるドーパントとから成る。陰極は、1nmの薄いLiF層と上に堆積した150nmのAl層により形成される。表3は、OLEDを構成するために使用される材料の化学構造を示す。
【0090】
これらのOLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、効率(cd/Aで測定)、電流/電圧/輝度密度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)及び寿命が測定される。寿命は、当初輝度1000cd/mが半分に低下した時間として定義される。
【0091】
表4は、いくつかのOLED(例42乃至43)の結果を示す。本発明の母体材料は、例1、6、10、13、14、16、19、35、37及び40からの化合物であった。使用された比較例は、先行技術の母体材料H1及びH2である。
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)の化合物
【化1】

(ここで、使用される記号と添字は、以下が適用される:
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜30個の芳香族環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造であり;
Arは、両方の基Arが芳香族環構造を表わすならば式(2)の基である。
【化2】

ここで、Xは、出現毎に同一であるか異なり、CR若しくはNを表わし、
又は、Arは、少なくとも1つの基Arが芳香族環構造を表わすならば、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜20個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基又は3〜40個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基(各基は1以上の基Rにより置換されていてもよく、そして、1以上の隣接しないCH基は、-RC=CR-、-C≡C-、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、-N(R)-若しくは-CONRで置き代えられていてもよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CN若しくはNOで置き代えられていてもよい)又は1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜30個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基、又は1以上のR基により置換されていてもよい、5〜24個の芳香族環原子を有するアリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ基、又は、2、3、4若しくは5個のこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族環構造を形成するものであってもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H若しくは1〜20個のC原子を有する炭化水素基であって、脂肪族、芳香族又は脂肪族及び芳香族の組合せであってよく、加えて、1以上のH原子は、Fで置き代えられていてもよく;2個以上の基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族若しくは芳香族環構造を形成するものであってもよく;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3若しくは4であり、
mは、0、1、2、3、4若しくは5である。)
【請求項2】
式(3)の請求項1記載の化合物。
【化3】

ここで、記号及び添字は、請求項1に記載されるのと同じ意味を有する。
【請求項3】
式(2)の基が、式(5)乃至(10)の基から選択されることを特徴とする、請求項1又は2項記載の化合物。
【化4】

ここで、記号及び添字は、請求項1と同じ意味を有する。
【請求項4】
記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、9〜25個の環原子を有する芳香族若しくは複素環式芳香族環構造を表わし、好ましくは、1以上の基Rにより置換されていてもよい、10〜16個の芳香族環原子を有する縮合アリール若しくはヘテロアリール基、又は場合により架橋ビアリール基を表わすことを特徴とする、請求項1乃至3何れか1項記載の化合物。
【請求項5】
式(4)の請求項1記載の化合物。
【化5】

ここで、Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜30個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造を表わし;その他の記号及び添字は、請求項1に記載されるのと同じ意味を有する。
【請求項6】
記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜20個の芳香族環原子を有する複素環式芳香族環構造を表わし、好ましくは、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜14個の芳香族環原子を有するヘテロアリール基を表わすことを特徴とする、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
記号Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されていてもよい、5〜14個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基を表わし、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1,4-ナフチレン、1,5-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,2-、1,3-或いは1,4-フェニレン若しくは2,7-フェナントレンを表わすことを特徴とする、請求項5又は6記載の化合物。
【請求項8】
基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1〜6個のC原子を有する直鎖アルキル若しくはアルコキシ基又は3〜10個のC原子を有する分岐或いは環状アルキル若しくはアルコキシ基(各場合、1以上のCH基は、-RC=CR-、-O-、-S-若しくは-N(R)で置き代えられていてもよく、また、各場合、1以上のH原子は、Fで置き代えられていてもよい)又は5〜14個の芳香族環原子を有するアリール若しくはヘテロアリール基、又は、2若しくは3個のこれらの構造の組み合わせを表わし、2個以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ或いはポリ環状、脂肪族環構造を形成するものであってもよいことを特徴とする、請求項1乃至7何れか1項記載の化合物。
【請求項9】
添字nは、0、1、若しくは2を表わし、好ましくは0若しくは1を表わすことを特徴とする、請求項1乃至8何れか1項記載の化合物。
【請求項10】
添え字mは、1、2若しくは3を表わし、好ましくは1若しくは2を表わすことを特徴とする、請求項1乃至9何れか1項記載の化合物。
【請求項11】
2個の基Arは同一であって、同一に置換され、又は2個の基Arは、同一であって、同一に置換されることを特徴とする、請求項1乃至10何れか1項記載の化合物。
【請求項12】
アントラセンと基Ar若しくはAr若しくはArとの間の結合が、鈴木カップリングにより形成されることを特徴とする、請求項1乃至11何れか1項記載の化合物の合成方法。
【請求項13】
式(11)の化合物。
【化6】

(ここで、
Yは、出現毎に同一であるか異なり、塩素、臭素、沃素若しくは式OSO基、特に臭素であり、
は、1〜20個のC原子を有する有機基であって、加えて、個々のH原子はフッ素で置き代えられてよく;
その他の記号及び添字は、請求項1に記載される意味を有する。)
【請求項14】
請求項1乃至11何れか1項記載の化合物の有機電子素子特に有機エレクトロルミネセンス素子での使用。
【請求項15】
有機エレクトロルミネセンス素子(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機集積回路(O-IC)、有機太陽電池(O-SC)、有機電場消光素子(O-FQD)、有機光受容器若しくは有機レーザーダイオード(O-laser)から特に選択される、少なくとも1つの請求項1乃至11何れか1項記載の化合物を含む有機電子素子。
【請求項16】
陽極、陰極及び少なくとも1つの発光層及び随意に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及び/又は電荷生成層から選ばれる更なる層を含む、請求項15項記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項17】
請求項1乃至11何れか1項記載の化合物が、ドーパントと一緒に母体材料として使用される、又はエミッターとして若しくは電子輸送化合物として使用されることを特徴とする、請求項15又は16記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
【請求項18】
少なくとも1つの請求項1乃至11何れか1項記載の化合物が、随意にドーパント及び/又は他の化合物と一緒に、昇華法により若しくは溶液から若しくは印刷プロセスにより適用されることを特徴とする、請求項15乃至17何れか1項記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。

【公表番号】特表2009−518342(P2009−518342A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543731(P2008−543731)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011758
【国際公開番号】WO2007/065678
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】