説明

有機エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法、電気光学装置ならびに電子機器

【課題】液滴吐出法を用いて有機機能層を形成する場合、各画素内において層厚分布が不均一になる傾向がある。この場合、各画素内部での発光強度を均一に保つことが困難となり、単位画素内部での発光強度不均一性により表示画質が低下するという課題が発生する。
【解決手段】有効発光領域211の中央部に凹形状を有する、層間絶縁層202を配置する。そしてピーク波長576nmで発光する有機機能層208を配置する。有機機能層208は中央部で厚く(120nm)、周辺部で薄く(100nm)形成される。有機機能層208が薄い周辺部では、電気抵抗が低下し電流が集中し、絶対光強度は高くなるが、周辺部では層間絶縁層202が厚く、実効光路長が長くなるので発光波長は長波長側にシフトする。人間の視感度は555nm以上の長波長側では低下する。絶対光強度が高い領域での発光波長が長くなることで、絶対光強度が視感度特性により補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、及びその製造方法、電気光学装置ならびに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、自発光の表示素子として急速に普及してきている。有機エレクトロルミネッセンス素子は、美しい赤色を発光させることが可能なことから、車載用の赤色表示素子等としての需要が期待されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子を赤色表示素子として用いる場合、液状の有機機能層前駆体を液滴吐出法を用いて各画素に吐出し、乾燥→アニールを行うことで有機機能層を形成する技術が知られている。液滴吐出法を用いて有機機能層を形成することで、有機機能層を形成すべき領域にのみ有機機能層前駆体を供給することができるため、スピンコート法等、基板全面に有機機能層前駆体を塗布した後、有機機能層が不要な領域をエッチングして除去する方法と比べ、廃棄物の量を抑制できるという長所がある。
【0004】
また、有機機能層前駆体を必要とする部分にのみ吐出するため、有機機能層前駆体の消費量を削減することが可能となり、有機機能層の層形成を少ない有機機能層前駆体の使用量で行うことができる。そのため、環境負荷を削減し、かつ、エッチング工程の省略や、高価な有機機能層前駆体の使用量を削減できることからTATの短縮、製造コストの低減化が可能となる。液滴吐出法を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子を形成している例としては、例えば特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−339949号公報
【特許文献2】特開2006−13139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液滴吐出法を用いて有機機能層を形成する場合、有機機能層の形成にスピンコート法等を用いる場合と比べ層厚分布が不均一になる傾向がある。そして、各画素内においても層厚分布が不均一になる傾向がある。この場合、各画素内部での発光強度を均一に保つことが困難となり、単位画素内部での発光強度不均一性により表示画質が低下するという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板と、前記基板上に配置される、光透過性を有する第1電極と、前記第1電極上に配置され、平面視にて少なくとも一部が前記第1電極重なる位置に形成された有機機能層と、前記有機機能層上であって、平面視にて少なくとも一部が前記第1電極および前記有機機能層と重なる位置に形成され、光透過性を有する第2電極と、前記基板と前記第1電極との間に配置された光透過性の層間絶縁層と、を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の有効発光領域内において、前記層間絶縁層は実効光路長に分布を有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、実効光路長に分布を有する光透過性の層間絶縁層が、有効発光領域と重なる領域内において分布を有している。有効発光領域から射出される光の波長は、層間絶縁層の実効光路長の分布に従い、実効光路長が長い領域では長波長側にシフトし、実効光路長が短い領域では短波長側にシフトする。視感度は光の波長シフトに応じて変化するので、波長シフトにより発光強度分布に対して視覚的な変調を掛けることが可能となる。そのため、発光強度分布を、波長シフトによる視感度変化を用いて修正することが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記層間絶縁層は層厚分布を有し、前記有効発光領域において、前記有機機能層は、前記層間絶縁層の層厚が厚い領域には薄く、層厚が薄い領域には厚い層厚を有することを特徴とする。
【0011】
上記した適用例によれば、層間絶縁層が厚い層厚を有する領域では実効光路長は長く、層間絶縁層が薄い層厚を有する領域では実効光路長は短くなる。そのため、層間絶縁層が厚い領域では発光波長は長波長側にシフトし、層間絶縁層が薄い領域では発光波長は短波長側にシフトする。そして層間絶縁層が厚い領域では、有効発光領域の厚さは薄くなっている。
【0012】
発光波長が長波長側にシフトした場合、一般的に視感度は低下する。有効発光領域の厚さが薄い領域では、有効発光領域の電気抵抗が低くなることで高強度に点灯するが、この領域では層間絶縁層が厚いため、発光波長は長波長側にシフトし、視感度が低下する。一方、有効発光領域の厚さが厚い領域では、有効発光領域の電気抵抗が高くなることで低強度に点灯するが、この領域では層間絶縁層が薄いため、発光波長は短波長側にシフトし、視感度が向上する。そのため、有効発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記層間絶縁層は屈折率分布を有し、前記有効発光領域において、前記有機機能層は、前記層間絶縁層の屈折率が高い領域には薄く、屈折率が低い領域には厚い層厚を有することを特徴とする。
【0014】
上記した適用例によれば、層間絶縁層の屈折率が高い領域では実効光路長は長く、層間絶縁層の屈折率が低い領域では実効光路長は短くなる。そのため、層間絶縁層の屈折率が高い領域では発光波長は長波長側にシフトし、層間絶縁層の屈折率が低い領域では発光波長は短波長側にシフトする。そして層間絶縁層の屈折率が高い領域には、有効発光領域の厚さが薄い領域が割り当てられている。そのため、有効発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記有機機能層が555nm以上のピーク波長を有する光を発することを特徴とする。
上記した適用例によれば、有機機能層が射出する光のピーク波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。有効発光領域の厚さが薄い領域では、発光層の電気抵抗が低くなることで高強度に点灯するが、この領域では層間絶縁層の屈折率が高いため、発光波長は長波長側にシフトし、視感度が低下する。一方、有効発光領域の厚さが厚い領域では、有効発光領域の電気抵抗が高くなることで低強度に点灯するが、この領域では層間絶縁層の屈折率が低いため、発光波長は短波長側にシフトし、視感度が向上する。そのため、有効発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記層間絶縁層が酸化珪素、窒化珪素、又は酸化窒化珪素のいずれか、又はこれらの積層構造によって形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記した適用例によれば、光透過性が高く、化学的に安定な材料を層間絶縁層として用いることで光学的性能に優れ、かつ信頼性が高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板と前記層間絶縁層との間に光反射層を有することを特徴とする。
【0019】
上記した適用例によれば、発光層が発する光を効率良く基板と対向する方向に射出することができる。
【0020】
[適用例7]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記第2電極の上部に光反射層を有することを特徴とする。
【0021】
上記した適用例によれば、発光層が発する光を効率良く基板を透過する方向に射出することができる。
【0022】
[適用例8]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層は液滴吐出法を用いて形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記した適用例によれば、発光層を作成するための材料を効率良く配置することが可能となり、環境負荷が小さく、かつコスト的に有利な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層は液滴吐出法を用いて形成され、かつ隔壁により仕切られていることを特徴とする。
【0025】
上記した適用例によれば、液滴吐出法を用いて有機機能層を形成する場合に、有機機能層の広がり範囲を正確に設定することが可能となり、有機機能層の面積、形状を隔壁により制御し得る有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することが可能となる。
【0026】
[適用例10]本適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、(1)基板上に配置され、有効発光領域内において実効光路長に分布を有する光透過性の層間絶縁層を形成する工程と、(2)前記層間絶縁膜上であって、平面視にて少なくとも前記有効発光領域と重なる領域に、光透過性を有する第1電極を形成する工程と、(3)前記第1電極上であって、平面視にて少なくとも前記有効発光領域と重なる領域に有機機能層を形成する工程と、(4)前記有機機能層上であって、平面視にて少なくとも前記有効発光領域と重なる領域に光透過性の第2電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
これによれば、実効光路長に分布を有する光透過性の層間絶縁層が、有効発光領域と重なる領域内において分布を有する構造が形成される。有効発光領域から射出される光の波長は、層間絶縁層の実効光路長の分布に従い、実効光路長が長い領域では長波長側にシフトし、実効光路長が短い領域では短波長側にシフトする。視感度は光の波長シフトに応じて変化するので、波長シフトにより発光強度分布に対して視覚的な変調を掛けることが可能となる。そのため、発光強度分布を、波長シフトによる視感度変化を用いて修正することを可能とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができる。
【0028】
[適用例11]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、前記(3)の工程において、前記有機機能層は555nm以上のピーク波長で発光するように形成されることを特徴とする。
【0029】
上記した適用例によれば、実効光路長を短くすることで視感度を単調に向上させることが可能となるため、有機機能層が明るく光る領域の実効光路長を長くするよう層間絶縁層の厚さを調整することで光強度分布を視覚的に補正することが可能となる。
【0030】
[適用例12]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(2)の工程と前記(3)の工程との間に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を仕切る隔壁を形成する工程を有することを特徴とする。
【0031】
上記した適用例によれば、有機機能層を形成する場合に、有機機能層の広がり範囲を正確に設定することが可能となり、有機機能層の面積、形状を隔壁により制御し得る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することが可能となる。
【0032】
[適用例13]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(1)の工程の前に、(A)平坦なモニタ層間絶縁層と、前記モニタ層間絶縁膜上に前記隔壁と同一形状のモニタ隔壁と、を有する、モニタ用基板を用意する工程と、(B)前記モニタ隔壁内に、前記有機機能層を形成するための有機機能層前駆体を塗布・乾燥させモニタ有機機能層を形成する工程と、(C)前記モニタ有機機能層の層厚分布を測定する工程と、(D)前記モニタ有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく前記層間絶縁層の実効光路長の分布を決定する工程と、を含むことを特徴とする。
【0033】
上記した適用例によれば、モニタ用の基板を用いて乾燥条件や塗布条件に依存して変化する有機機能層の層厚分布を調べた後、当該層厚分布の影響を緩和すべく層間絶縁層の実効光路長を制御できる。そのため、有機機能層の層厚分布による視覚的強度をより正確に緩和することができる。
【0034】
[適用例14]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記モニタ隔壁内での前記モニタ有機機能層の層厚分布が中央部で厚い場合には、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも短くすることを特徴とする。
【0035】
上記した適用例によれば、有機機能層は、隔壁内における平面視にて、周辺側と比べ中央側が厚く形成されている。そのため、中央側では発光層の電気抵抗が上昇し、周辺側と比べ強度が低下する。一方、隔壁で囲われる領域では、中央部における実効光路長が短くなっている。そのため、周辺側に対応する領域での発光波長は、中央側に対応する領域での発光波長と比べ長くなる。発光層が射出する光の波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。つまり、強度が高い領域では視感度が低く、強度が低い領域では視感度が高くなるため、発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0036】
[適用例15]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも短くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における層厚を周辺部における層厚よりも薄くすることを特徴とする。
【0037】
上記した適用例によれば、有機機能層は、隔壁内における平面視にて、周辺側と比べ中央側が厚く形成されている。そのため、中央側では発光層の電気抵抗が上昇し、周辺側と比べ強度が低下する。一方、隔壁で囲われる領域では、中央側に凹部が形成されており、実効光路長が短くなっている。そのため、凹部の周辺(周辺側)に対応する領域での発光波長は、凹部(中央側)に対応する領域での発光波長と比べ長くなる。発光層が射出する光の波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。つまり、強度が高い領域では視感度が低く、強度が低い領域では視感度が高くなるため、発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0038】
[適用例16]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも短くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における屈折率を周辺部における屈折率よりも下げることを特徴とする。
【0039】
上記した適用例によれば、有機機能層は、隔壁内における平面視にて、周辺側と比べ中央側が薄く形成されている。そのため、周辺側では発光層の電気抵抗が上昇し、中央側と比べ強度が低下する。一方、隔壁で囲われる領域では、中央側に低屈折率部が形成されており、実効光路長が短くなっている。そのため、低屈折率部の周辺側に対応する領域での発光波長は、低屈折率部(中央側)に対応する領域での発光波長と比べ長くなる。発光層が射出する光の波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。つまり、強度が高い領域では視感度が低く、強度が低い領域では視感度が高くなるため、発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0040】
[適用例17]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記モニタ隔壁内での前記モニタ有機機能層の層厚分布が中央部で薄い場合には、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長と比べ長くすることを特徴とする。
【0041】
上記した適用例によれば、有機機能層は、隔壁内における平面視にて、周辺側と比べ中央側が薄く形成されている。そのため、中央側では発光層の電気抵抗が低下し、周辺側と比べ強度が増加する。一方、隔壁で囲われる領域では、中央部における屈折率が高く設定されているため、周辺部と比べ実効光路長が長くなっている。そのため、中央側に対応する領域での発光波長は、周辺側に対応する領域での発光波長と比べ長くなる。発光層が射出する光の波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。つまり、強度が高い領域では視感度が低く、強度が低い領域では視感度が高くなるため、発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0042】
[適用例18]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも長くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における層厚を周辺部における層厚よりも厚くすることを特徴とする。
【0043】
上記した適用例によれば、有機機能層は、隔壁内における平面視にて、周辺側と比べ中央側が薄く形成されている。そのため、中央側では発光層の電気抵抗が低下し、周辺側と比べ強度が上昇する。一方、隔壁で囲われる領域では、中央側に凸部が形成されており、実効光路長が長くなっている。そのため、凸部の中央(中央側)に対応する領域での発光波長は、凸部の周辺側に対応する領域での発光波長と比べ長くなる。発光層が射出する光の波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。つまり、強度が高い領域では視感度が低く、強度が低い領域では視感度が高くなるため、発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0044】
[適用例19]上記適用例にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも長くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における屈折率を周辺部における屈折率よりも上げることを特徴とする。
【0045】
上記した適用例によれば、有機機能層は、隔壁内における平面視にて、周辺側と比べ中央側が厚く形成されている。そのため、周辺側では発光層の電気抵抗が低下し、中央側と比べ強度が上昇する。一方、隔壁で囲われる領域では、中央側に高屈折率部が形成されており、実効光路長が長くなっている。そのため、高屈折率部の中央側に対応する領域での発光波長は、低屈折率部(周辺側)に対応する領域での発光波長と比べ長くなる。発光層が射出する光の波長は、555nm以上となるよう構成されているため、発光波長が長波長側にシフトした場合、視感度は低下する。つまり、強度が高い領域では視感度が低く、強度が低い領域では視感度が高くなるため、発光領域内での視覚的強度の均一性を向上させることが可能となる。
【0046】
[適用例20]本適用例にかかる電気光学装置は、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電気光学装置であって、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子の少なくとも一部は、赤色を発光する有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記赤色を発光する有機エレクトロルミネッセンス素子は上記に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
【0047】
これによれば、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電気光学装置の赤色に発光する素子内部の視覚的強度の均一性に優れた電気光学装置を提供することができる。
【0048】
[適用例21]本適用例にかかる電子機器は、上記記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする。
【0049】
これによれば、単位画素内での発光パターンを視覚的に、より均一性が高い画像を形成し得る電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(有機エレクトロルミネッセンス素子を用いる場合の構成)
以下、本実施形態にかかる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子と記す)を用いる場合の構成について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の有機EL素子を表示装置として用いる場合の配線構造を示す模式図である。表示装置1に用いられる有機EL素子17は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと記す)を用いたアクティブマトリクス方式で駆動される。この方法では、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102と並列に配置される複数の電源線103とからなる配線構成を有するとともに、走査線101及び信号線102の各交点付近に、画素40が設けられている。
【0051】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続されている。
【0052】
画素40の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT122と、このスイッチング用のTFT122を介して信号線102から共有される画素信号を保持する保持容量113を含む。また、保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT123と、この駆動用のTFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに電源線103から駆動電流が与えられる画素電極23と、画素電極23と対向する対向電極50との間に挟み込まれた有機EL素子17と、が設けられている。
【0053】
次に、本実施形態の有機EL素子17の具体的な態様を、図2を参照して説明する。ここで、図2は有機EL素子17の配列を模式的に示す平面図である。
【0054】
図2に示すように、基板20上の実表示領域4には、画素40がマトリクス状に規則的に配置されている。
【0055】
なお、本実施形態において画素部3(図中一点鎖線)は、中央部分の実表示領域4(図中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線及び二点鎖線の間の領域)とに区画されている。そして、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80が配置されている。この走査線駆動回路80は、ダミー領域5の下層側に位置して設けられている。
【0056】
また、実表示領域4の図2中上方側には検査回路90が配置されており、この検査回路90はダミー領域5の下層側に配置されて設けられている。この検査回路90は、有機EL素子17の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時における有機EL素子の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。
【0057】
(有機EL素子の構造及び製造方法−1)
以下、本実施形態にかかる有機EL素子について、その構造及び製造方法について説明する。図3(a)は、有機EL素子200の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。ガラス基板201上には、平面視にて有効発光領域211の中央部が窪んだ凹形状(領域A)を有する、層間絶縁層202が配置されている。ここで有機発光領域は、第1隔壁205によって区画された領域である。領域Aは、平面視にて、直径40μm程度の円形形状を有している。この形状としては、円形形状に限定されることはなく、例えば矩形、長方形、その他不定形を用いても良く、後述する第1隔壁205内部に配置されていれば良い。なお、領域Aは第1隔壁205の内側にあることが好ましいが、その一部が第1隔壁205と重なっていても差し支えはない。
【0058】
層間絶縁層202は、例えば領域A内部では100nmの厚さを有し、領域B内部では400nmの厚さを有している。層間絶縁層202を構成する物質としては、ここでは窒化珪素を用いている。
【0059】
層間絶縁層202上には、光透過性を有する、ITOが、50nm程度の厚さを有する第1電極(陽極)204が配置されている。第1電極204上には、有機機能層208に電流を流す領域を規定する第1隔壁205が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205を囲うように隔壁206が配置されている。隔壁206は例えば感光性のアクリル樹脂により構成されている。
【0060】
隔壁206の内側には正孔注入層207が配置されている。正孔注入層207は、例えばPEDT/PSS(ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン・スルフォン酸))が用いられ、層厚は50nm程度を有している。そして、正孔注入層207を覆うように図13(アメリカンダイソース社製、ADS106RE)に示す化学式を有し、555nm以上(ピーク波長576nm)のピーク波長で発光する有機機能層208が配置されている。有機機能層208の断面形状は、後述する製造工程を用いる場合、領域Aに対応する中央部が厚く(120nm程度)、領域Bに対応する周辺部が薄く(100nm程度)構成される。この構造は、典型的には後述する製造工程を用いる場合に発生する。
【0061】
有機機能層208上には、5nm程度の厚さを有するカルシウムを用いた第2電極(陰極)209が配置されている。そして、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを用いた光反射層210が配置されている。そして、平面視にて第1隔壁205の内側では有機機能層208に電流が供給され、有効発光領域211が第1隔壁205の内側に形成される。
【0062】
このデバイス構造を用いた場合、領域Bでは、有機機能層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、電流が集中する(図中の矢印は電流密度を模式化したもの)。そのため、領域Bに対応する領域での絶対光強度は領域Aに対応する領域と比べ高くなる。図4(a)は絶対光強度の分布を示すグラフであり、領域Bにあたる領域では強度が高くなり、有効発光領域211内部での発光強度に分布があることが示されている。
【0063】
一方、領域Bでは、層間絶縁層202の厚さが400nmと厚いため、実効光路長が長くなり、発光波長は長波長側にシフトする。人間の視感度は555nmをピークとして、長波長側での視感度は低下する。そのため、絶対光強度が高い領域での発光波長が長くなることで、絶対光強度が視感度特性により補正される。図4(b)は、視感度特性で規格化した相対光強度の分布を示すグラフである。有効発光領域211内での発光特性は視感度の波長依存性により補正され、人間の視覚に対し高い均一性を得ることが可能となる。
【0064】
ここでは、ガラス基板201を通過させるボトムエミッション型の有機EL素子200について説明したが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0065】
次に、図3(a),(b)に示される構造の製造方法について説明する。ここで、実際の製造工程に入る前に、モニタ用隔壁内に平坦なモニタ層間絶縁層を有する、モニタ用の基板に対して、モニタ用有機機能層を形成し(工程A)、そのモニタ用有機機能層の層厚分布を測定し(工程B)、モニタ用有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく層間絶縁層の実効光路長の分布を決定する(工程C)工程を実行することが好ましい。本実施形態では、典型的な層厚分布として、領域Aに対応する中央部が厚く(120nm程度)、領域Bに対応する周辺部が薄く(100nm程度)なった場合についての製造工程について説明する。この分布は、後述する製造工程を用いた場合,典型的な層厚分布となる。以下、製造工程について説明する。
図5(a)〜(c)は有機EL素子200を形成する工程を説明するための工程断面図である。
【0066】
まず、工程1として、ガラス基板201を洗浄し、層間絶縁層202となる窒化珪素層をCVD法(化学気相堆積法)等を用いて400nm程度堆積する。
【0067】
次に、工程2として、窒化珪素層を、凹部を形成する領域を開口したフォトレジスト層212を形成し、六弗化硫黄ガス等を用いてドライエッチングする。この工程を終了した状態での断面図を図5(a)に示す。この工程を行うことで、実効光路長に分布を有する構造が形成される。
【0068】
次に、工程3として、フォトレジスト層212をアッシング工程等を用いて除去し、ITOを50nm程度の厚さとなるようスパッタ法を用いて積層する。そして不要な部分をエッチング除去することで光透過性を有する第1電極204を形成する。
【0069】
次に、工程4として、酸化珪素層を50nm程度層形成し、有効発光領域211が形成される領域をエッチング除去することで第1隔壁205を形成する。
【0070】
次に、工程5として、感光性アクリル樹脂を2μm程度の厚さに塗布し、露光・現像することで隔壁206を形成する。この工程を終了した状態での断面図を図5(b)に示す。
【0071】
次に、工程6として、酸素プラズマ処理、四弗化炭素ガスでのプラズマ処理等を行い、第1電極204と第1隔壁205に親液性を与え、隔壁206に撥液性を与える。
【0072】
次に、工程7として、PEDT/PSS分散液を液滴吐出法を用いて隔壁206内に吐出する。この場合において、隔壁206に撥液性を与えているため、隔壁206ではPEDT/PSS分散液は弾かれ、第1隔壁205、第1電極204上に流入するため、液滴吐出位置の若干のずれは補正され、液滴は第1隔壁205、第1電極204上に再現性高く配置される。
【0073】
次に、工程8として、乾燥→アニール工程を行うことで、PEDT/PSSを用いた正孔注入層207が形成される。
【0074】
次に、工程9として、図13に示す化学式を有する物質を分散させた有機機能層前駆体を液滴吐出法を用いて隔壁206内に吐出する。この場合でも工程7と同様に液滴吐出位置の若干のずれは補正される。
【0075】
次に、工程10として、乾燥→アニール工程を行うことで、図13に示す化学式を有する物質を含む有機機能層208が形成される。有機機能層208の一部は正孔注入層207を介して電気的に第1電極204と接続され、有効発光領域211が形成される。ここで、乾燥工程は、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分以上、より好ましくは10分以上で行う工程を用いることができる。
【0076】
減圧雰囲気の真空度は、乾燥に要する時間が上記した値に収まるよう設定されていれば良い。具体例としては例えば数Pa程度の値を用いることができるが、これは一例であり、この値に制約されるものではない。この工程を用いることで、領域Aでの層厚が厚く、領域Bでの層厚が薄い有機機能層208が形成される。この工程を終了した状態の断面図を図5(c)に示す。
【0077】
次に、工程11として、カルシウムを5nm程度蒸着し、第2電極(陰極)209を形成する。
【0078】
そして、工程12として、第2電極209を覆うように200nm以上の層厚を有する、アルミニウムを200nm以上の厚さで蒸着することで光反射層210を形成することで図3(a),(b)に示される有機EL素子200が形成される。
【0079】
ここでは、ガラス基板201を通過させて光を取り出すボトムエミッション型の有機EL素子200の製造方法について説明したが、これは容易にトップエミッション型の製造工程に変更することが可能である。
【0080】
具体的には、工程1で窒化珪素層の堆積前に、アルミニウムを200nm以上の厚さで蒸着することで光反射層210を形成し、工程11でカルシウムを蒸着する工程に代えて酸化に強いMg/Agを共蒸着法を用いて第2電極209を形成し、工程12を省略することでトップエミッション型の有機EL素子200を形成することができる。
【0081】
また、トップエミッション型の構造を形成する工程1で、アルミニウムを蒸着する工程を除いた場合、両面で視認可能な構造を形成する工程を提供することが可能となる。
【0082】
(有機EL素子の構造及び製造方法−2)
以下、本実施形態にかかる有機EL素子について、その製造方法及び構造について説明する。図6(a)は、有機EL素子200の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。(有機EL素子の構造及び製造方法−1)との相違は、(1)平面視にて有効発光領域211の内側に凸形状を有する層間絶縁層202が配置されており、層間絶縁層202の層厚が、凸形状の厚い領域(領域A)では400nm程度であり、凸形状での薄い領域(領域B)では100nm程度である点。(2)有機機能層208(有効発光領域211)の断面形状が、領域Aに対応する中央部では薄く(100nm程度)、領域Bに対応する周辺部では厚く(120nm程度)構成されている点。の2点である。ここで領域Aは、平面視にて、例えば直径40μmの円形形状を有している。なお、レイアウト等の条件については、(有機EL素子の構造及び製造方法−1)に準ずる。
【0083】
ここで、実際の製造工程に入る前に、隔壁内に平坦なモニタ層間絶縁層を有する、モニタ用の基板に対して、モニタ用有機機能層を形成し(工程A)、そのモニタ用有機機能層の層厚分布を測定し(工程B)、モニタ用有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく層間絶縁層の実効光路長が制御された層間絶縁層を形成する(工程C)工程を実行することが好ましい。以下に、中央部を薄く形成する典型的な条件について説明する。
有機機能層208の中央部を薄く形成する条件としては、例えば、有機機能層前駆体を液滴吐出法を用いて隔壁206内に吐出した後、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分未満、より好ましくは1分以下で行う工程を含む条件を用いることができる。減圧雰囲気の真空度は、乾燥に要する時間が上記した値に収まるよう設定されていれば良い。具体例としては例えば数Pa程度の値を用いることができるが、これは一例であり、この値に制約されるものではない。
【0084】
このデバイス構造を用いた場合、領域Aでは、有機機能層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、電流が集中する(図中の矢印は電流密度を模式化したもの)。そのため、領域Aに対応する領域での絶対光強度は領域Bに対応する領域と比べ高くなる。図7(a)は絶対光強度の分布を示すグラフであり、領域Aにあたる領域では強度が高くなり、有効発光領域211内部での発光強度に分布があることが示されている。
【0085】
一方、領域Aでは、層間絶縁層202の厚さが400nmと厚いため、実効光路長が長くなり、発光波長は長波長側にシフトする。人間の視感度は555nmをピークとして、長波長側での視感度は低下する。そのため、絶対光強度が高い領域での発光波長が長くなることで、絶対光強度が視感度特性により補正される。図7(b)は、視感度特性で規格化した相対光強度を示すグラフである。有効発光領域211内での発光特性は視感度の波長依存性により補正され、人間の視覚に対し高い均一性を得ることが可能となる。
【0086】
ここでは、ガラス基板201を通過させるボトムエミッション型の有機EL素子200について説明したが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0087】
次に、図6(a),(b)に示される構造の製造方法について図8を用いて説明する。この製造方法は(有機EL素子の構造及び製造方法−1)と共通点が多いため、上記した工程と異なる点について説明を行い、重複を避ける。この場合においても、実際の製造工程に入る前に、隔壁内に平坦なモニタ層間絶縁層を有する、モニタ用の基板に対して、モニタ用有機機能層を形成し(工程A)、そのモニタ用有機機能層の層厚分布を測定し(工程B)、モニタ用有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく層間絶縁層の実効光路長が制御された層間絶縁層を形成する(工程C)工程を実行することが好ましい。
【0088】
まず、工程1を終えた後、工程2に代え、工程2Aを行う。工程2と2Aとの相違点は、工程2では凹部を形成していたのに対し、工程2Aでは凸部を形成する点が相違している。そのため、フォトレジスト層212の配置が異なっている。工程2Aを終了した状態での断面図を図8に示す。次に、工程3〜9までを行う。
【0089】
次に、工程10に代え、工程10Aを行う。工程10と工程10Aとの相違は、有機機能層前駆体の乾燥工程において、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分未満、より好ましくは1分以下で行う工程を用いることができる。この工程を用いることで、領域Aでの層厚が薄く、領域Bでの層厚が厚い有機機能層208が形成される。減圧雰囲気の真空度は、乾燥に要する時間が上記した値に収まるよう設定されていれば良い。具体例としては例えば数Pa程度の値を用いることができるが、これは一例であり、この値に制約されるものではない。この工程を用いることで、領域Aでの層厚が厚く、領域Bでの層厚が薄い有機機能層208が形成される。
【0090】
以下、工程11〜12を行うことで図6に示す有機EL素子200が形成される。この工程で作られる有機EL素子200はボトムエミッション型のものであるが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0091】
(有機EL素子の構造及び製造方法−3)
以下、本実施形態にかかる有機EL素子について、その製造方法及び構造について説明する。図9(a)は、有機EL素子200の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。(有機EL素子の構造及び製造方法−1)との相違は平面視にて有効発光領域211の内側に、屈折率が低い(1.45)酸化珪素を用いた中心層間絶縁層202A(領域A)を配置することで実効光路長を短くし、平面視にて酸化珪素領域を囲うように屈折率が高い(2.0)窒化珪素を用いた周辺層間絶縁層202B(領域B)を配置した層間絶縁層202が400nm程度配置されている点である。ここで領域Aは、平面視にて、例えば直径40μmの円形形状を有している。なお、レイアウト等の条件については、(有機EL素子の構造及び製造方法−1)に準じる。
【0092】
このデバイス構造を用いた場合、領域Bでは、有機機能層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、電流が集中する(図中の矢印は電流密度を模式化したもの)。そのため、領域Bに対応する領域での絶対光強度は領域Aに対応する領域と比べ高くなる。
【0093】
一方、領域Bでは、周辺層間絶縁層202Bに、中心層間絶縁層202Aと比べ屈折率が高い窒化珪素を用いているため、実効光路長が長くなり、発光波長は長波長側にシフトする。人間の視感度は555nmをピークとして、長波長側での視感度は低下する。そのため、絶対光強度が高い領域での発光波長が長くなることで、絶対光強度が視感度特性により補正される。これにより、図4(a),(b)に示される関係と同様に、有効発光領域211内での発光特性は視感度の波長依存性により補正され、人間の視覚に対し高い均一性を得ることが可能となる。
【0094】
ここでは、ガラス基板201を通過させるボトムエミッション型の有機EL素子200について説明したが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。また、図15に示すように、層間絶縁層202を、領域Aに位置する中心層間絶縁層202Aでは酸化珪素層を用い、領域Bに位置する周辺層間絶縁層202Bでは酸化珪素/窒化珪素の組合せ層を用いても良い(製造方法は後述する)。
【0095】
次に、図9(a),(b)、図15に示される構造の製造方法について図10(a)〜(c)を用いて説明する。この製造方法は(有機EL素子の構造及び製造方法−1)と共通点が多いため、上記した工程と異なる点について説明を行い、重複を避ける。この場合においても、実際の製造工程に入る前に、隔壁内に平坦なモニタ層間絶縁層を有する、モニタ用の基板に対して、モニタ用有機機能層を形成し(工程A)、そのモニタ用有機機能層の層厚分布を測定し(工程B)、モニタ用有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく層間絶縁層の実効光路長が制御された層間絶縁層を形成する(工程C)工程を実行することが好ましい。
【0096】
まず、工程1,2に代えて、以下に示す工程1A,2Aを実行する。
【0097】
(工程1A)ガラス基板201を洗浄し、周辺層間絶縁層202Bとなる窒化珪素層をCVD法(化学気相堆積法)等を用いて400nm程度堆積する。次に、フォトレジスト層212Aを形成し、窒化珪素層を六弗化硫黄ガス等を用いてドライエッチングする。この工程を終了した状態での断面図を図10(a)に示す。
【0098】
(工程2A)フォトレジスト層212Aをアッシング等の方法で除去し、中心層間絶縁層202Aとなる酸化珪素層を400nm程度堆積する。ここで、(工程2A)をこの状態で打ち切り、工程3以降を行うことで、図15、図10(b)に示す層間絶縁層202の形状を得ることができる。そして、(工程2A)の続きとして、フォトレジスト層212Bを形成し、四弗化炭素ガス等を用いて酸化珪素層の不要部分をエッチングする。この工程を終了した状態での断面図を図10(c)に示す。ここで、フォトレジスト層212Bを中心層間絶縁層202Aの領域よりも若干小さくすることで、中心層間絶縁層202Aを構成すべく形成された酸化珪素層を平らにエッチングすることが可能となる。
【0099】
続けて、工程3〜12を行うことで、図9(a),(b)に示す有機EL素子200が形成される。
【0100】
この工程で作られる有機EL素子200はボトムエミッション型のものであるが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0101】
(有機EL素子の構造及び製造方法−4)
以下、本実施形態にかかる有機EL素子について、その製造方法及び構造について説明する。図11(a)は、有機EL素子200の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。(有機EL素子の構造及び製造方法−1)との相違は、平面視にて有効発光領域211の内側に、屈折率が高い(2.0)窒化珪素を用いた中心層間絶縁層202A(領域A)を配置することで実効光路長を長くし、平面視にて中心層間絶縁層202Aを囲うように屈折率が低い(1.45)酸化珪素を用いた周辺層間絶縁層202B(領域B)を配置した層間絶縁層202が400nm程度配置されている点である。ここで領域Aは、平面視にて、例えば直径40μmの円形形状を有している。なお、レイアウト等の条件については、(有機EL素子の構造及び製造方法−1)に準じる。
【0102】
有機機能層208の中央部を薄く形成する条件としては、例えば、有機機能層前駆体を液滴吐出法を用いて隔壁206内に吐出した後、大気圧から減圧させることで行われる減圧乾燥を5分未満、より好ましくは1分以下で行う工程を含む条件を用いることができる。減圧雰囲気の真空度は、乾燥に要する時間が上記した値に収まるよう設定されていれば良い。具体例としては例えば数Pa程度の値を用いることができるが、これは一例であり、この値に制約されるものではない。
【0103】
このデバイス構造を用いた場合、領域Aでは、有機機能層208の厚さが薄くなるため、電気抵抗が低下し、電流が集中する(図中の矢印は電流密度を模式化したもの)。そのため、領域Aに対応する領域での絶対光強度は領域Bに対応する領域と比べ高くなる。
【0104】
一方、領域Aでは、周辺層間絶縁層202Bに、中心層間絶縁層202Aと比べ屈折率が低い酸化珪素を用いているため、実効光路長が長くなり、発光波長は長波長側にシフトする。人間の視感度は555nmをピークとして、長波長側での視感度は低下する。そのため、絶対光強度が高い領域での発光波長が長くなることで、絶対光強度が視感度特性により補正される。これにより、図4(a),(b)に示される関係と同様に、有効発光領域211内での発光特性は視感度の波長依存性により補正され、人間の視覚に対し高い均一性を得ることが可能となる。
【0105】
ここでは、ガラス基板201を通過させるボトムエミッション型の有機EL素子200について説明したが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。また、図16に示すように、層間絶縁層202を、領域Aに位置する中心層間絶縁層202Aでは酸化珪素/窒化珪素の組合せを用い、領域Bに位置する周辺層間絶縁層202Bでは酸化珪素で用いても良い(製造方法は後述する)。
【0106】
次に、図11(a),(b)、図16に示される構造の製造方法について図12(a)〜(c)を用いて説明する。この製造方法は(有機EL素子の構造及び製造方法−1)と共通点が多いため、上記した工程と異なる点について説明を行い、重複を避ける。この場合においても、実際の製造工程に入る前に、隔壁内に平坦なモニタ層間絶縁層を有する、モニタ用の基板に対して、モニタ用有機機能層を形成し(工程A)、そのモニタ用有機機能層の層厚分布を測定し(工程B)、モニタ用有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく層間絶縁層の実効光路長が制御された層間絶縁層を形成する(工程C)工程を実行することが好ましい。
【0107】
まず、工程1,2に代えて、以下に示す工程1A,2Aを実行する。
【0108】
(工程1A)ガラス基板201を洗浄し、中心層間絶縁層202Aとなる窒化珪素層をCVD法(化学気相堆積法)等を用いて400nm程度堆積する。次に、フォトレジスト層212Aを形成し、窒化珪素層を六弗化硫黄ガス等を用いてドライエッチングし、中心層間絶縁層202Aを形成する。この工程を終了した状態での断面図を図12(a)に示す。
【0109】
(工程2A)フォトレジスト層212Aをアッシング等の方法で除去し、酸化珪素層を400nm程度堆積する。ここで、(工程2A)をこの状態で打ち切り、工程3以降を行うことで、図16、図12(b)に示す層間絶縁層202の形状を得ることができる。(工程2A)の続きとして、フォトレジスト層212Bを形成し、四弗化炭素ガス等を用いて酸化珪素層の不要部分をエッチングする。この工程を終了した状態での断面図を図12(c)に示す。
【0110】
続けて、工程3〜12を行うことで、図11(a),(b)に示す有機EL素子200が形成される。ここで、フォトレジスト層212Bを中心層間絶縁層202Aの領域より若干大きめに開口することで、周辺層間絶縁層202Bを形成すべく積層された酸化珪素層の端部の盛り上がり部分を除去することができる。
【0111】
この工程で作られる有機EL素子200はボトムエミッション型のものであるが、これは容易にトップエミッション型に変更することが可能である。即ち、ガラス基板201と層間絶縁層202との間に200nm以上の厚みを有するアルミニウム等の反射層を形成し、光透過性を有する第2電極として酸化に強いMg/Agを用い、光反射層210を除いた構造を用いることで同様の効果を有するトップエミッション型の構造を得ることができる。また、光反射層を形成しないことで、両面で視認可能な構造を得ることも可能である。
【0112】
(変形例)
上記した実施形態では、層間絶縁層は絶縁性を備える、光学的に透明な材料を用いることが可能である。例えば酸化アルミニウム等の金属酸化物や、プラスチックを用いても良い。また、酸化珪素や窒化珪素、窒化酸化珪素に副原料を添加したガラスを用いても良い。
【0113】
(電子機器への搭載例)
以下、図14を参照して、上述した有機EL素子200を含む表示装置1(電気光学装置)を用いる電子機器について説明する。図14(a)には、表示装置1を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002と表示装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、表示装置1に表示される画面がスクロールされる。図14(b)は表示装置1を備えた、情報携帯端末(PDA)の構成を示す概略図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、ならびに有機EL素子200を備えた表示装置1を備える。操作ボタン4001を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示装置1に表示される。
【0114】
なお、有機EL素子200を含む表示装置1が搭載される電子機器としては、図14に示すものの他、車載用のスピードメータや、回転計、その他モニタ等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機EL素子200が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】有機EL素子を表示装置として用いる場合の配線構造を示す模式図。
【図2】有機EL素子の配列を模式的に示す平面図。
【図3】(a)は、有機EL素子の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図。
【図4】(a)は絶対光強度の分布を示すグラフ、(b)は視感度特性で規格化した相対光強度の分布を示すグラフ。
【図5】(a)〜(c)は有機EL素子を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図6】(a)は、有機EL素子の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図。
【図7】(a)は絶対光強度の分布を示すグラフ、(b)は視感度特性で規格化した相対光強度の分布を示すグラフ。
【図8】有機EL素子を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図9】(a)は、有機EL素子の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図。
【図10】(a)〜(c)は有機EL素子を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図11】(a)は、有機EL素子の平面図、(b)は(a)のA−A’線断面図。
【図12】(a),(b)は有機EL素子を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図13】有機機能層を形成する物質の化学式。
【図14】(a)は有機EL素子を適用した携帯電話機、(b)は有機EL素子を適用した情報携帯端末(PDA)の構成を示す概略図。
【図15】層間絶縁層形状が異なる有機EL素子の断面図。
【図16】層間絶縁層形状が異なる有機EL素子の断面図。
【符号の説明】
【0116】
1…表示装置、3…画素部、4…実表示領域、5…ダミー領域、17…有機EL素子、20…基板、23…画素電極、40…画素、50…対向電極、80…走査線駆動回路、90…検査回路、100…データ線駆動回路、101…走査線、102…信号線、103…電源線、113…保持容量、122…TFT、123…TFT、200…有機EL素子、201…ガラス基板、202…層間絶縁層、202A…中心層間絶縁層、202B…周辺層間絶縁層、204…第1電極、205…第1隔壁、206…隔壁、207…正孔注入層、208…有機機能層、209…第2電極、210…光反射層、211…有効発光領域、212…フォトレジスト層、212A…フォトレジスト層、212B…フォトレジスト層、213…有機機能層前駆体、3000…携帯電話機、3001…操作ボタン、3002…スクロールボタン、4000…情報携帯端末、4001…操作ボタン、4002…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される、光透過性を有する第1電極と、
前記第1電極上に配置され、平面視にて少なくとも一部が前記第1電極重なる位置に形成された有機機能層と、
前記有機機能層上であって、平面視にて少なくとも一部が前記第1電極および前記有機機能層と重なる位置に形成され、光透過性を有する第2電極と、
前記基板と前記第1電極との間に配置された光透過性の層間絶縁層と、
を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の有効発光領域内において、前記層間絶縁層は実効光路長に分布を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記層間絶縁層は層厚分布を有し、
前記有効発光領域において、前記有機機能層は、前記層間絶縁層の層厚が厚い領域には薄く、層厚が薄い領域には厚い層厚を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記層間絶縁層は屈折率分布を有し、
前記有効発光領域において、前記有機機能層は、前記層間絶縁層の屈折率が高い領域には薄く、屈折率が低い領域には厚い層厚を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層が555nm以上のピーク波長を有する光を発することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記層間絶縁層が酸化珪素、窒化珪素、又は酸化窒化珪素のいずれか、又はこれらの積層構造によって形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板と前記層間絶縁層との間に光反射層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記第2電極の上部に光反射層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層は液滴吐出法を用いて形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記有機機能層は隔壁により仕切られていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
(1)基板上に配置され、有効発光領域内において実効光路長に分布を有する光透過性の層間絶縁層を形成する工程と、
(2)前記層間絶縁膜上であって、平面視にて少なくとも前記有効発光領域と重なる領域に、光透過性を有する第1電極を形成する工程と、
(3)前記第1電極上であって、平面視にて少なくとも前記有効発光領域と重なる領域に有機機能層を形成する工程と、
(4)前記有機機能層上であって、平面視にて少なくとも前記有効発光領域と重なる領域に光透過性の第2電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(3)の工程において、前記有機機能層は555nm以上のピーク波長で発光するように形成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(2)の工程と前記(3)の工程との間に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を仕切る隔壁を形成する工程を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記(1)の工程の前に、
(A)平坦なモニタ層間絶縁層と、前記モニタ層間絶縁膜上に前記隔壁と同一形状のモニタ隔壁と、を有する、モニタ用基板を用意する工程と、
(B)前記モニタ隔壁内に、前記有機機能層を形成するための有機機能層前駆体を塗布・乾燥させモニタ有機機能層を形成する工程と、
(C)前記モニタ有機機能層の層厚分布を測定する工程と、
(D)前記モニタ有機機能層の層厚分布に起因する視覚的強度変動を緩和すべく前記層間絶縁層の実効光路長の分布を決定する工程と、
を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記モニタ隔壁内での前記モニタ有機機能層の層厚分布が中央部で厚い場合には、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも短くすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも短くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における層厚を周辺部における層厚よりも薄くすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも短くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における屈折率を周辺部における屈折率よりも下げることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記モニタ隔壁内での前記モニタ有機機能層の層厚分布が中央部で薄い場合には、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長と比べ長くすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも長くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における層厚を周辺部における層厚よりも厚くすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項19】
請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記有効発光領域内において、前記層間絶縁層の中央部における実効光路長を周辺部における実効光路長よりも長くする手段として、前記層間絶縁層の中央部における屈折率を周辺部における屈折率よりも上げることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項20】
複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を含む電気光学装置であって、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子の少なくとも一部は、赤色を発光する有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記赤色を発光する有機エレクトロルミネッセンス素子は請求項1から9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする電気光学装置。
【請求項21】
請求項1から9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−176589(P2009−176589A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14568(P2008−14568)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】