説明

有機ハロゲン化合物の分解装置

【課題】誘導プラズマを安定化させ、有機ハロゲン化合物の安定した分解が可能な有機ハロゲン化合物の分解装置を提供する。
【解決手段】放電管13内に供給した有機ハロゲン化合物を誘導プラズマを用いて分解する分解装置10は、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第1の噴出孔18が内周面に形成された第1のガス吹込みリング19と、第1のガス吹込みリング19の上方に配置され、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第2の噴出孔20が内周面に形成された第2のガス吹込みリング21と、第2のガス吹込みリング21の上方に配置され第2のガス吹込みリング21の上端をシールすると共に、第2のガス吹込みリング21内を貫通し、先端部が第1のガス吹込みリング19の内孔の上部位置まで達する断面円形の円柱部22を備えたシール部材23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導プラズマによる有機ハロゲン化合物の分解を安定して行うための有機ハロゲン化合物の分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロンガス、トリクロロエチレン等の有機ハロゲン化合物は、溶剤、冷媒等の幅広い分野で大量に使用されており、使用後に有機ハロゲン化合物が大気中、水、土壌中に放出されると、環境に深刻な影響(例えば、オゾン層の破壊、発ガン性物質の生成)を与えることが指摘されている。そこで、近年、使用後の有機ハロゲン化合物を誘導プラズマを熱源として分解し無害化することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−232180号公報
【特許文献2】特開2004−216231号公報
【特許文献3】特開2004−216246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の分解装置では、放電管の上部を覆う上部フランジは、放電管の内径よりもやや小さな径の小径部が延出され、この小径部と放電管の内壁面との間に形成された間隙部に、処理対象物(有機ハロゲン化合物)と補助剤(水蒸気)をそれぞれ個別の供給ラインから供給している。このため、放電管に流入する処理対象物の整流化が図れても、大量の処理対象物を放電管内に供給する場合、処理対象物と補助剤が十分に混合された状態で放電管内に流入することが困難になって、プラズマの安定化が困難になるという問題が生じる。
【0005】
特許文献2の分解装置では、プラズマ生成ガスであるアルゴンガスをプラズマトーチ内に供給しながら、更に水蒸気とフロン(有機ハロゲン化合物)との混合ガスをプラズマトーチ内に供給することで、アルゴンガスの供給量を加減調整してプラズマの安定化を図っている。しかし、混合ガス供給量や混合ガスの組成に応じてアルゴンガスの供給量を調整しなければならず、分解装置の操作が煩雑になるという問題がある。
【0006】
特許文献3の分解装置では、放電管の上端部に取付けられた上部フランジ上に環状の支持体を介してヘッドを取付けて支持体とヘッドの間に隙間を形成し、支持体の内周面に設けられたガス噴出孔から処理対象ガス(有機ハロゲン化合物)及び反応補助ガス(アルゴン)が支持体の内周面に沿う旋回流となって隙間内に放出されて放電管内に流入するように構成されている。しかし、処理対象ガスと反応補助ガスの混合と旋回流化は処理対象ガスと反応補助ガスが隙間を通過する間に行われるだけなので、処理対象ガスと反応補助ガスが十分に混合された旋回流の状態で放電管内に流入することは困難で、プラズマの安定化が困難になる問題が生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、誘導プラズマの安定化を図って、有機ハロゲン化合物の分解を安定して行うことが可能な有機ハロゲン化合物の分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置は、上、下フランジで支持された放電管の外側に巻回された高周波コイルに励磁電流を流して該放電管内に発生させた誘導プラズマを熱源として、前記上フランジに取付けられた被処理物供給手段を介して前記放電管内に供給された有機ハロゲン化合物を分解し、生成した分解物を前記下フランジに接続する処理手段に供給する有機ハロゲン化合物の分解装置において、
前記被処理物供給手段は、前記上フランジの上部に取付けられ、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第1の噴出孔が該内周面の中間高さ位置に、該内周面の周方向に等間隔に形成されている第1のガス吹込みリングと、
前記第1のガス吹込みリングの上方に配置され、該第1のガス吹込みリングと同一の内径を備え、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第2の噴出孔が該内周面に上下2段にわたって、それそれ該内周面の周方向に等間隔に形成されている第2のガス吹込みリングと、
前記第2のガス吹込みリングの上方に配置されて該第2のガス吹込みリングの上側をシールすると共に、該第2のガス吹込みリングの内周面との間に隙間を設けて該第2のガス吹込みリングを貫通し、先端部が前記第1のガス吹込みリングの内孔の上部位置まで達する断面円形の円柱部を備えたシール部材とを有する。
【0009】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1及び第2の噴出孔の口径は等しく、更に該第1、第2の噴出孔の個数は等しいことが好ましい。
【0010】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1、第2のガス吹込みリングはリングホルダーに保持され、該リングホルダーは前記上フランジ及び前記シール部材で挟持されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1、第2のガス吹込みリングの内径は、前記放電管の内径と同一であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1及び第2の噴出孔の口径範囲は1〜1.3mmであり、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量の増大に伴って前記第1及び第2の噴出孔の口径を増大することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置においては、第2のガス吹込みリングの内周面と円柱部の外周面との間に形成される隙間に、第2の噴出孔から有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを、第2のガス吹込みリングの内周面に沿った旋回流として噴出するので、混合ガスを第1のガス吹込みリング内に、その内周面に沿った旋回流として流入させることができる。そして、第1のガス吹込みリング内に流入した混合ガスの旋回流に対して、第1の噴出孔から有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを、第1のガス吹込みリングの内周面に沿って旋回流として噴出するので、有機ハロゲン化合物と水蒸気との混合状態が向上すると共に、第1のガス吹込みリング内で混合ガスの旋回流を更に安定化して放電管内に流入させることができ、放電管内に発生する誘導プラズマが安定化する。
【0014】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、第1及び第2の噴出孔の口径が等しく、更に第1、第2の噴出孔の個数が等しい場合、第1、第2のガス吹込みリングからそれぞれ噴出させる混合ガスの流量を等しくすることができ、隙間内で形成された旋回流を第1のガス吹込みリング内で維持しながら、放電管内に旋回流として流入させる混合ガスの流量を増加させることができる。
【0015】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、第1、第2のガス吹込みリングはリングホルダーに保持され、リングホルダーは上フランジ及びシール部材で挟持されている場合、第1、第2のガス吹込みリングの取付けが容易になる。
【0016】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、第1、第2のガス吹込みリングの内径が、放電管の内径と同一である場合、放電管内に放電管の内壁に沿った混合ガスの旋回流を容易に形成することができ、放電管内での誘導プラズマが安定する。
【0017】
本発明に係る有機ハロゲン化合物の分解装置において、第1及び第2の噴出孔の口径範囲が1〜1.3mmであり、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量の増大に伴って第1及び第2の噴出孔の口径を増大する場合、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量を変化させても、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを予め設定された噴出圧力範囲で第1及び第2の噴出孔からそれぞれ噴出させることができ、放電管内に水滴が発生するのを防止して、誘導プラズマの安定化を図ると共に、水滴による放電管内壁の腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る有機ハロゲン化合物の分解装置の断面図である。
【図2】(A)、(B)は同有機ハロゲン化合物の分解装置に設けられた第1のガス吹込みリングの平断面図、側断面図である。
【図3】(A)、(B)は同有機ハロゲン化合物の分解装置に設けられた第2のガス吹込みリングの平断面図、側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る有機ハロゲン化合物の分解装置10は、上、下フランジ11、12で支持された放電管13の外側に巻回された高周波コイル14に励磁電流を流して放電管13内に発生させた誘導プラズマを熱源として、上フランジ11に取付けられた被処理物供給手段15を介して放電管13内に、水蒸気と共に供給された有機ハロゲン化合物(例えばフロン)を加水分解し、生成した分解物を下フランジ12に接続する図示しない処理手段に供給するものである。以下、詳細に説明する。
【0020】
放電管13は、例えば、石英ガラスやセラミックス等の耐熱性の絶縁性物質で形成された円筒体である。そして、放電管13の上端部には、図示しないOリングを介して、例えば、ステンレス鋼で形成された環状の上フランジ11が取付けられ、放電管13の下端部には、図示しないOリングを介して放電管13を支持する基台を兼ねる、例えば、ステンレス鋼で形成された環状の下フランジ12が取付けられている。また、放電管13の外側に巻回された高周波コイル14は、例えば、銅パイプで形成され、図示しない高周波電源に接続されている。
【0021】
ここで、図示しない処理手段は、下フランジ12に取付けフランジ16を備えた連結管17を介して接続されて、有機ハロゲン化合物の加水分解で生成した可燃性分解物を燃焼させて無害化する燃焼処理部と、燃焼処理部で生成した燃焼ガスを冷却して大気中に排出する排ガス処理部と、有機ハロゲン化合物の加水分解で生成した酸性分解物をアルカリ性溶液で中和処理し中和生成物を回収し残液を排出する中和処理部とを有している。なお、燃焼処理部、排ガス処理部、及び中和処理部には、従来の有機ハロゲン化合物の分解装置で使用されているものをそれぞれ使用することができる。
【0022】
被処理物供給手段15は、上フランジ11の上部に取付けられ、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第1の噴出孔18が内周面の中間高さ位置に、内周面の周方向に等間隔に形成されている第1のガス吹込みリング19と、第1のガス吹込みリング19の上方に配置され、第1のガス吹込みリング19と同一の内径を備え、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第2の噴出孔20が内周面に上下2段にわたって、それそれ内周面の周方向に等間隔に形成されている第2のガス吹込みリング21とを有している。更に、被処理物供給手段15は、第2のガス吹込みリング21の上方に配置されて、第2のガス吹込みリング21の上側をシールすると共に、第2のガス吹込みリング21の内周面との間に隙間を設けて第2のガス吹込みリング21の内孔を貫通し、先端部が第1のガス吹込みリング19の内孔内の上部位置まで達する断面円形の円柱部22を備えたシール部材23とを有している。
【0023】
図2(A)、(B)に示すように、第1のガス吹込みリング19は、混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第1の噴出孔18が形成されたリング本体24と、リング本体24の上、下端部にそれぞれ設けられた環状の上、下つば部25、26とを有している。そして、第1の噴出孔18の軸心方向と、リング本体24の半径方向とのなす角度θは、40〜50度、例えば45度に調整されている。また、図3(A)、(B)に示すように、第2のガス吹込みリング21は、第2の噴出孔20が形成されたリング本体27と、リング本体27の上、下端部にそれぞれ設けられた環状の上、下つば部28、29とを有している。そして、第2の噴出孔20の軸心方向と、リング本体27の半径方向とのなす角度φは、40〜50度、例えば45度に調整されている。
【0024】
第1、第2のガス吹込みリング19、21の内径は、放電管13の内径と同一であり、第1及び第2の噴出孔18、20の口径は等しく、第1、第2の噴出孔18、20の個数は等しい。また、第1及び第2の噴出孔18、20の口径範囲は1〜1.3mmである。そして、第1及び第2の噴出孔18、20の口径は、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量の増大に伴って増大させる。これにより、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量を変化させても、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを予め設定された噴出圧力範囲で第1及び第2の噴出孔18、20からそれぞれ噴出させることができる。
【0025】
リングホルダー30は、上フランジ11及びシール部材23で挟持され、中央部に放電管13の内径と同一径の内孔が形成された環状の部材である。また、リングホルダー30には、リングホルダー30の内周面には内孔に向けて開口し、図示しないOリングを介して第1、第2のガス吹込みリング19、21がそれぞれ取付けられる第1、第2のリング収容溝31、32が、リングホルダー30の軸方向に並べて形成されている。そして、第1、第2のリング収容溝31、32の溝底部には、有機ハロゲン化合物と水蒸気との混合ガスを製造する図示しない混合器に接続されたガス供給管33、34がそれそれ接続されている。これにより、第1、第2のガス吹込みリング19、21が取付けられたリングホルダー30内に、第1のリング収容溝31の溝底部、リング本体24の外周面、及び上、下つば部25、26で囲まれた空間部35と、第2のリング収容溝32の溝底部、リング本体27の外周面、及び上、下つば部28、29で囲まれた空間部36をそれぞれ形成することができ、ガス供給管33、34を介して混合ガスを空間部35、36内に供給することができ、第1及び第2の噴出孔18、20から混合ガスを噴出させることができる。
【0026】
シール部材23は、第2のガス吹込みリング21の内周面との間に隙間(幅Δ)を設けて第2のガス吹込みリング21の内孔を貫通し、先端部が第1のガス吹込みリング19の上部位置まで達する断面円形の円柱部22と、円柱部22に取付けられ、図示しないOリングを介してリングホルダー30の上端面に当接するフランジ部37とを有している。このような構成とすることにより、リングホルダー30の内周面と円柱部22の外周面との隙間の上端がフランジ部37で塞がれるので、リングホルダー30の上側がシールされる。なお、円柱部は中空であってもよい。
【0027】
ここで、隙間の幅Δは、例えば、1〜5mmの範囲である。隙間の幅Δが狭いほど隙間内に旋回流を形成することが容易となり、放電管13内に、放電管13の内周面に沿った旋回流を形成しやすく、放電管13内に形成する誘導プラズマを安定化させることができる。しかし、隙間の幅Δが狭すぎると、シール部材23及び第1、第2のガス吹込みリング19、21の製作コストが上昇すると共に、第1、第2のガス吹込みリング19、21の内孔に均等の隙間を有してシール部材23の円柱部22を位置させるのが困難になる。更に、第2のガス吹込みリング21から混合ガスを噴出させる際の抵抗が大きくなって、混合ガス量を増加させることができない。このため、隙間の幅Δの下限を1mmとした。また、隙間の幅Δが大きいと隙間内に旋回流を形成することが難しくなり、放電管13内に放電管13の内周面に沿った旋回流を形成することが困難となって、放電管13内に形成する誘導プラズマを安定化させるには高周波コイル14に供給する電力を大きくする必要があり、経済性が低下する。このため、隙間の幅Δの上限を5mmとした。
【0028】
続いて、本発明の一実施の形態に係る有機ハロゲン化合物の分解装置10の作用について説明する。
有機ハロゲン化合物と水蒸気を混合器に供給して混合ガスを製造し、ガス供給管33、34を介して、リングホルダー30内に形成された空間部35、36に供給する。そして、空間部36内に供給された混合ガスは、第2のガス吹込みリング21の第2の噴出孔20から、第2のガス吹込みリング21の内周面と円柱部22の外周面との間に形成された隙間内に、第2のガス吹込みリング21の内周面に沿って噴出する。その結果、隙間内には第2のガス吹込みリング21の内周面に沿った旋回流が形成される。ここで、第2の噴出孔20は、第2のガス吹込みリング21の内周面に上下2段にわたって形成されているので、混合ガスを隙間内に分散して供給することができ、隙間内に混合ガスを噴出させる際の抵抗が大きくなるのを防止すると共に、隙間内での旋回流の形成が容易になる。
【0029】
第1、第2のガス吹込みリング19、21、及びリングホルダー30の内径は同一なので、隙間内で形成された混合ガスの旋回流は、第1のガス吹込みリング19内に、第1のガス吹込みリング19の内周面に沿った旋回流として流入する。また、空間部35内に供給された混合ガスは、第1のガス吹込みリング19の第1の噴出孔18から、第1のガス吹込みリング19の内周面に沿って噴出する。ここで、第1、第2の噴出孔18、20の口径は等しく、第1、第2の噴出孔18、20の個数は等しいので、第1、第2のガス吹込みリング19、21からそれぞれ噴出する混合ガスの流量が等しくなって、第1のガス吹込みリング19の内に流入した旋回流(第2の噴出孔20から噴出した混合ガスにより形成されたもの)を第1のガス吹込みリング19内で維持しながら、第1の噴出孔18から噴出した混合ガスを混合して、第1のガス吹込みリング19内に、大きな流量を有する混合ガスの旋回流を形成することができる。
【0030】
また、第1の噴出孔18は、第1のガス吹込みリング19の内周面の同一高さ位置に形成されており、第1のガス吹込みリング19内に流入した旋回流に対して、同一高さ位置から混合ガスを噴出させて混合させるので、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合状態が向上すると共に、第1のガス吹込みリング19内における混合ガスの旋回流を安定化させることができる。そして、第1のガス吹込みリング19の内径が、放電管13の内径と同一であるので、第1のガス吹込みリング19内から放電管13内に流入した混合ガスの旋回流は、放電管13の内壁に沿った混合ガスの旋回流となる。このため、放電管13内に発生する誘導プラズマを安定化させることができる。
【0031】
また、第1及び第2の噴出孔18、20の口径範囲が1〜1.3mmであり、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量の増大に伴って第1、第2の噴出孔18、20の口径を増大する。例えば、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量が30kg/時の場合、第1及び第2の噴出孔18、20の口径は1.1mmであり、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量が40kg/時の場合、第1及び第2の噴出孔18、20の口径は1.2mmである。なお、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量を増加させた場合、混合する水蒸気量も増加させる。そして、混合する水蒸気の最適量は、実験により、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量に対して予め設定されている。
【0032】
有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量の増大に伴って第1及び第2の噴出孔18、20の口径を増大させることにより、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量が変化しても、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを予め設定された噴出圧力範囲で第1及び第2の噴出孔18、20からそれぞれ噴出させることができる。その結果、放電管13内に水滴が発生するのが防止され、水滴による放電管13内壁の腐食を防止することができる。また、混合ガス中に水滴が存在しないことから、高周波コイル14に供給する電力を増大させずに誘導プラズマの安定化を図ることができ、経済的となる。
【0033】
有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスが、放電管13の内周面に沿った旋回流となって放電管13内に放出されると、放電管13内に発生している誘導プラズマを熱源として、有機ハロゲン化合物が加水分解される。そして、分解物は、処理手段に供給されて処理される。ここで、有機ハロゲン化合物がフロンR−22の場合、フロンR−22は可燃性分解物である一酸化炭素及び水素と、酸性分解物である塩化水素及びフッ化水素に分解され、可燃性分解物は燃焼処理部で燃焼して二酸化炭素及び水となり大気中に放出される。また、酸性分解物は、中和処理部で、例えば水酸化カルシウムと反応させて塩化カルシウム及びフッ化カルシウムを生成させ、それぞれ回収される。
【0034】
有機ハロゲン化合物がフロンR−12の場合、二酸化炭素と、酸性分解物である塩化水素及びフッ化水素が生成し、二酸化炭素は大気中に放出され、塩化水素及びフッ化水素は、中和処理部で、例えば水酸化カルシウムと反応させて塩化カルシウム及びフッ化カルシウムを生成させ、それぞれ回収される。更に、有機ハロゲン化合物がフロンR−134aの場合、可燃性分解物である一酸化炭素及び水素と、酸性分解物であるフッ化水素が生成し、一酸化炭素及び水素は燃焼処理部で燃焼して二酸化炭素及び水となり大気中に放出され、フッ化水素は、中和処理部で、例えば水酸化カルシウムと反応させてフッ化カルシウムを生成させ回収される。
【0035】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、第1、第2のガス吹込みリングに混合ガスの受入部をそれぞれ設けると、リングホルダーを使用せずに、上フランジの上面にOリングを介して第1のガス吹込みリングを取付け、第1のガス吹込みリングの上面にOリングを介して第2のガス吹込みリングを取付け、更に、第2のガス吹込みリングの上面にOリングを介してシール部材を取付けることができる。
【符号の説明】
【0036】
10:有機ハロゲン化合物の分解装置、11:上フランジ、12:下フランジ、13:放電管、14:高周波コイル、15:被処理物供給手段、16:取付けフランジ、17:連結管、18:第1の噴出孔、19:第1のガス吹込みリング、20:第2の噴出孔、21:第2のガス吹込みリング、22:円柱部、23:シール部材、24:リング本体、25:上つば部、26:下つば部、27:リング本体、28:上つば部、29:下つば部、30:リングホルダー、31:第1のリング収容溝、32:第2のリング収容溝、33、34:ガス供給管、35、36:空間部、37:フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上、下フランジで支持された放電管の外側に巻回された高周波コイルに励磁電流を流して該放電管内に発生させた誘導プラズマを熱源として、前記上フランジに取付けられた被処理物供給手段を介して前記放電管内に供給された有機ハロゲン化合物を分解し、生成した分解物を前記下フランジに接続する処理手段に供給する有機ハロゲン化合物の分解装置において、
前記被処理物供給手段は、前記上フランジの上部に取付けられ、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第1の噴出孔が該内周面の中間高さ位置に、該内周面の周方向に等間隔に形成されている第1のガス吹込みリングと、
前記第1のガス吹込みリングの上方に配置され、該第1のガス吹込みリングと同一の内径を備え、有機ハロゲン化合物と水蒸気の混合ガスを内周面に沿って旋回流にして噴出する第2の噴出孔が該内周面に上下2段にわたって、それそれ該内周面の周方向に等間隔に形成されている第2のガス吹込みリングと、
前記第2のガス吹込みリングの上方に配置されて該第2のガス吹込みリングの上側をシールすると共に、該第2のガス吹込みリングの内周面との間に隙間を設けて該第2のガス吹込みリングを貫通し、先端部が前記第1のガス吹込みリングの内孔の上部位置まで達する断面円形の円柱部を備えたシール部材とを有することを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解装置。
【請求項2】
請求項1記載の有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1、第2の噴出孔の口径は等しく、更に該第1、第2の噴出孔の個数は等しいことを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1、第2のガス吹込みリングはリングホルダーに保持され、該リングホルダーは前記上フランジ及び前記シール部材で挟持されていることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1、第2のガス吹込みリングの内径は、前記放電管の内径と同一であることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機ハロゲン化合物の分解装置において、前記第1及び第2の噴出孔の口径範囲は1〜1.3mmであり、有機ハロゲン化合物の単位時間当たりの分解量の増大に伴って前記第1及び第2の噴出孔の口径を増大することを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−147902(P2011−147902A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12302(P2010−12302)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(510021742)西日本家電リサイクル株式会社 (3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】