説明

有機ラジカル二次電池、有機ラジカル二次電池の充放電制御方法及び有機ラジカル二次電池の充放電制御装置

【課題】電池充電状態の検出が容易な二次電池の提供。
【解決手段】陰イオンを吸着及び放出できる正極と、陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える二次電池において、前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、酸化還元電位の異なるラジカル化合物を2種以上含有していることを特徴とする。この構成により、充放電時の電池電位を多段化することが可能になるため、電池充電状態の検出を容易に行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ラジカル二次電池、有機ラジカル二次電池の充放電制御方法及び有機ラジカル二次電池の充放電制御装置に関し、詳しくは充電容量の検知が容易な有機ラジカル二次電池、有機ラジカル二次電池の充放電制御方法及び有機ラジカル二次電池の充放電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ等電子機器の普及に伴い、これら電子機器を駆動するための二次電池の需要が拡大している。近年、これら電子機器は高機能化の進展に伴い消費電力が増大していることや、小型化が期待されていることから、二次電池に対しては容量の増大が求められている。二次電池の中でも正極活物質として軽量、高起電力であるラジカル化合物を用いた有機ラジカル電池は、高エネルギー密度、高出力密度を有する可能性があることから注目されている。
【0003】
ところで、二次電池に対する充放電制御は、端子電圧の変化に基づき行う方法がある。具体的には二次電池の充電容量に応じて変化する端子電圧の大きさに基づき充放電を制御している。
【特許文献1】特開2002−304966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の実施例にあるように、活物質にラジカル化合物を用いて電池を構成した場合、充放電時の電池電圧が平坦であることから、電池電圧を利用して電池の充電状態の簡便に検出することが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、充放電時の電池電位を多段化することにより、二次電池の充電状態の検出が容易な有機ラジカル二次電池、有機ラジカル二次電池の充放電制御方法及び有機ラジカル二次電池の充放電制御装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する請求項1に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、陰イオンを吸着及び放出できる正極と、陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える有機ラジカル二次電池において、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、酸化還元電位の異なるラジカル化合物を2種以上含有していることにある。
【0007】
上記課題を解決する請求項2に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項1において、前記ラジカル化合物の酸化還元電位差が各々0.1V以上であることにある。
【0008】
上記課題を解決する請求項3に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項1又は2において、前記ラジカル化合物の最高被占軌道エネルギー(HOMO,半経験的分子軌道法にて算出)差が各々0.2eV以上であることにある。
【0009】
上記課題を解決する請求項4に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、陰イオンを吸着及び放出できる正極と陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える有機ラジカル二次電池において、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、ラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体を含有していることにある。
【0010】
上記課題を解決する請求項5に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項4において、前記テトラチアフルバレン誘導体が下記一般式(A1)〜(A3)の何れか1つで表される化合物であることにある。
【0011】
【化1】

(式(A1)〜(A3)中、R〜Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H、OH、F、Cl、Br、CN、及びNHからそれぞれ独立して選択される。Yは−(CH)m−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、及び−CO−の何れかで置換されても良い。nは自然数。)
【0012】
上記課題を解決する請求項6に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、陰イオンを吸着及び放出できる正極と陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える有機ラジカル二次電池において、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、ラジカル化合物とキノン誘導体を含有していることにある。
【0013】
上記課題を解決する請求項7に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項6において、前記キノン誘導体が下記一般式(B1)〜(B3)の何れか1つで表される化合物であることにある。
【0014】
【化2】

(式(B1)〜(B3)中、R〜R15は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H、OH、F、Cl、Br、CN、及びNHからそれぞれ独立して選択される。
式(B1)中、Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、及び−CO−の何れかで置換されても良い。nは自然数。)
【0015】
上記課題を解決する請求項8に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項1〜7の何れか1項において、前記ラジカル化合物がニトロキシラジカル化合物又はオキシラジカル化合物であることにある。
【0016】
上記課題を解決する請求項9に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項8において、前記ラジカル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレートを単位化合物として含むことにある。
【0017】
上記課題を解決する請求項10に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項8又は9において、前記ラジカル化合物が下記一般式(D1)又は(D2)で表される化合物であることにある。
【0018】
【化3】

(式(D1)及び(D2)中、R16〜R20は水素、炭素数1〜4のアルキル基からそれぞれ独立して選択され、式(D1)中におけるR16及びR17の少なくとも1つは下記一般式(1)〜(4)で表される構造のうちの何れかである。式(D2)中におけるR18及びR20の少なくとも1つは下記一般式(1)〜(4)で表される構造のうちの何れかである。)
【0019】
【化4】

(式(1)〜(4)は*の部分にて、前記式(D1)におけるピロール環の炭素原子又は窒素原子に結合する。式(1)〜(4)は*の部分にて、前記式(D2)におけるチオフェン環の炭素原子に結合する。式(1)〜(4)中、RはH、OH、CH又はNHである。式(1)〜(4)中、Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、−CO−、
【化5】

で置換されてもよい。)
【0020】
上記課題を解決する請求項11に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項8〜10の何れか1項において、前記ラジカル化合物が下記一般式(E)で表される化合物であることにある。
【0021】
【化6】

(式(E)中、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H、OH、F、Cl、Br、CN、及びNHの何れかから選択される。式(E)中、Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、−CO−で置換されても良い。)
【0022】
上記課題を解決する請求項12に係る有機ラジカル二次電池の特徴は、請求項9において、前記ラジカル化合物がポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)であることにある。
【0023】
上記課題を解決する請求項13に係る有機ラジカル二次電池の充放電制御方法の特徴は、請求項1〜12の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池に対して、所定の上限値と所定の下限値との間に充電容量を保つように充放電を行う有機ラジカル二次電池の充放電制御方法であって、
前記ラジカル化合物、前記テトラチアフルバレン誘導体、及び/又は前記キノン誘導体の酸化還元電位が、前記充電容量における前記所定の上限値に対応する値以下、前記充電容量における前記所定の下限値に対応する値以上の範囲である使用電圧範囲内に、2つ以上存在し、
前記有機ラジカル二次電池の端子電圧から充放電状態を算出することにある。
【0024】
上記課題を解決する請求項14に係る有機ラジカル二次電池の充放電制御方法の特徴は、請求項13において、前記所定の下限値側から前記所定の上限値に前記充電容量が近づいた場合に、前記有機ラジカル二次電池の前記端子電圧が前記2つ以上存在する前記酸化還元電位のうちの1つを超えることにある。
【0025】
上記課題を解決する請求項15に係る有機ラジカル二次電池の充放電制御方法の特徴は、請求項13又は14において、前記所定の上限値側から前記所定の下限値に前記充電容量が近づいた場合に、前記有機ラジカル二次電池の前記端子電圧が前記2つ以上存在する前記酸化還元電位のうちの1つを下回ることにある。
【0026】
上記課題を解決する請求項16に係る有機ラジカル二次電池の充放電制御装置の特徴は、請求項1〜12の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池に対して、所定の上限値と所定の下限値との間に充電容量を保つように充放電を行う有機ラジカル二次電池の充放電制御装置であって、
請求項13〜15の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池の充放電制御方法にて充放電の制御を行う制御手段を有することにある。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明においては、酸化還元電位が異なる複数種類のラジカル化合物を活物質として有することにより、充放電時の電池電圧が多段化されるため、電池電圧による充電状態の検出が容易乃至は高精度で行うことができることになる。
【0028】
特に、請求項2に係る発明におけるように、それぞれのラジカル化合物の酸化還元電位の差を0.1V以上にすることが効果的である。また、請求項3に係る発明におけるように、それぞれのラジカル化合物の最高被占軌道エネルギーの差が0.2eV以上にすることが効果的である。最高被占軌道エネルギーの差は半経験的分子軌道法にて算出された値である。半経験的分子軌道法としては特に限定しないが、PPP法、CNDO法、INDO法、MNDO法が例示できる。
【0029】
請求項4に係る発明においては、ラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体との混合物を電極活物質中に含有することにより、充放電時の電池電圧が多段化されるため、電池電圧による充電状態の検出が容易乃至は高精度で行うことができることになる。
【0030】
特に、請求項5に係る発明におけるようなテトラチアフルバレン誘導体を採用することにより、充放電時における電圧変動の大きさを大きくすることができる。
【0031】
請求項6に係る発明においては、ラジカル化合物とキノン誘導体との混合物を電極活物質中に含有することにより、充放電時の電池電圧が多段化されるため、電池電圧による充電状態の検出が容易乃至は高精度で行うことができることになる。
【0032】
特に、請求項7に係る発明におけるようなキノン誘導体を採用することにより、充放電時における電圧変動の大きさを大きくすることができる。
【0033】
請求項8に係る発明においては、具体的なラジカル化合物として、ニトロキシラジカル化合物又はオキシラジカル化合物を採用することにより、充放電時における電圧変動を好ましいものにすることができる。
【0034】
特に、請求項9に係る発明におけるように、具体的なラジカル化合物として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレートを単位化合物として含む化合物を採用することにより、充放電時における電圧変動をより好ましいものにすることができる。そして、請求項12に係る発明におけるように、ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を採用することにより、充放電時における電圧変動をより好ましいものにすることができる。
【0035】
また、請求項10に係る発明においては、具体的なラジカル化合物として一般式(D1)又は(D2)で表される化合物を採用することにより、充放電時における電圧変動をより好ましいものにすることができる。
【0036】
更に、請求項12に係る発明においては、具体的なラジカル化合物として一般式(E)で表される化合物を採用することにより、充放電時における電圧変動をより好ましいものにすることができる。
【0037】
請求項13に係る発明においては、上述したような有機ラジカル二次電池を用い、その有機ラジカル二次電池が有する電極活物質中に含まれるラジカル化合物、テトラチアフルバレン誘導体、及び/又はキノン誘導体がその有機ラジカル二次電池について充放電が想定される所定の上限値と所定の下限値とに対応する使用電圧範囲内に酸化還元電位を有することにより、有機ラジカル二次電池を使用する際における電圧変動を大きくすることが可能になる。
【0038】
特に請求項14に係る発明のように、有機ラジカル二次電池を使用する充放電範囲の上限値近傍にその酸化還元電位を位置させることにより、その酸化還元電位に相当する電池電圧を超えたことにより、充電容量がその充放電範囲の上限近傍になったことを容易に検知することが可能になる。
【0039】
また請求項15に係る発明のように、有機ラジカル二次電池を使用する充放電範囲の下限値近傍にその酸化還元電位を位置させることにより、その酸化還元電位に相当する電池電圧を下回ることにより、充電容量がその充放電範囲の下限近傍になったことを容易に検知することが可能になる。
【0040】
請求項16に係る発明においては、請求項13〜15の何れかに係る有機ラジカル二次電池の充放電制御方法を採用した有機ラジカル二次電池の充放電制御装置とすることにより、有機ラジカル二次電池の充放電状態を高い精度で検知することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
[有機ラジカル二次電池]
以下に本発明の有機ラジカル二次電池について実施形態に基づき説明を行う。本実施形態の有機ラジカル二次電池は、電極活物質中にラジカル化合物を含有することを特徴とする。ラジカル化合物は電池反応に寄与する化合物である。有機ラジカル二次電池は陰イオンを吸着及び放出できる正極と、陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で陽イオン及び陰イオンを溶解させた電解液とを備える。
【0042】
電極活物質(正極及び/又は負極が有する活物質)は2つ以上の酸化還元電位を有する。その酸化還元電位は有機ラジカル二次電池に対して充放電を行う範囲内において通過する電池電圧範囲内に存在する。このように酸化還元電位が2つ以上在ることにより、有機ラジカル二次電池に対して充放電を行う際の電圧変動が大きくなって、電圧変動から充放電状態を検知することが容易になる。酸化還元電位の差は0.1Vであることが望ましく、0.2V以上であることが更に望ましい。また、半経験的分子軌道方法により計算されたHOMOの値の差が0.2eV以上であることが望ましく、0.4eV以上であることが更に望ましい。
【0043】
電極活物質が複数の酸化還元電位をもつようにするために、大きく3つの手法を採用する。第1の手法としては、酸化還元電位が異なるラジカル化合物を採用するものである。第2の手法としてはラジカル化合物に加え、テトラチアフルバレン誘導体を含有させる構成を採用するものである。第3の手法としてはラジカル化合物に加え、キノン誘導体を含有させる構成を採用するものである。これらの第1〜第3の手法は組み合わせることも可能である。具体的には酸化還元電位が異なるラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体とを組み合わせたり、酸化還元電位が異なるラジカル化合物とキノン誘導体とを組み合わせたり、ラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体とキノン誘導体とを組み合わせたり、酸化還元電位が異なるラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体とキノン誘導体とを組み合わせたりすることができる。以下、正極及び負極に分けて説明を行う。
【0044】
(正極)
正極は、前述の活物質の他、結着材導電助剤等を水、NMP等の溶媒中で混合した後、アルミ等の金属からなる集電体上に塗布することで形成される。上記結着材としては、高分子材料から形成されることが望ましく、二次電池内の雰囲気において化学的・物理的に安定な材料であることが望ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム等が挙げられる。また導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、非晶質炭素等などが例示できる。また、導電性高分子ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどが例示できる。
【0045】
ラジカル化合物の一例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレートを一部に含む共重合体又は単独重合体、上記一般式(D1)、(D2)、そして(E)で表されるものが挙げられる。2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート、一般式(D1)、(D2)、そして(E)で表される化合物はそれぞれ任意に組み合わせた共重合体とすることができる。
【0046】
式(D1)及び(D2)中、R16〜R20は水素、炭素数1〜4のアルキル基(望ましくはメチル基)からそれぞれ独立して選択される。式(D1)中におけるR16及びR17の少なくとも1つは上記一般式(1)〜(4)で表される構造のうちの何れかである。式(D2)中におけるR18及びR20の少なくとも1つは上記一般式(1)〜(4)で表される構造のうちの何れかである。一般式(1)〜(4)のうち、一般式(1)、(2)で表される置換基が望ましい。
【0047】
(負極)
上記負極の活物質としては、正極において説明した、ラジカル化合物、テトラチアフルバレン誘導体、キノン誘導体の組み合わせが採用できる。これらの組み合わせについては再度の説明を省略する。またそれらの化合物の他、リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物を単独乃至は組み合わせて用いることができる。リチウムイオンを吸蔵及び放出できる化合物の一例としてはリチウム等の金属材料、ケイ素、スズ等を含有する合金材料、グラファイト、コークス、有機高分子化合物焼成体又は非晶質炭素等の炭素材料が挙げられる。これらの活物質は単独で用いるだけでなく、これらを複数種類混合して用いることもできる。例えば、負極活物質としてリチウム金属箔を用いる場合、銅等の金属からなる集電体の表面にリチウム箔を圧着することで形成できる。また負極活物質として合金材料、炭素材料を用いる場合は、負極活物質と結着材、導電助剤等を水、NMP等の溶媒中で混合した後、銅等の金属からなる集電体上に塗布され形成することができる。上記結着材としては、高分子材料から形成されることが望ましく、二次電池内の雰囲気において化学的・物理的に安定な材料であることが望ましい。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム等が挙げられる。また導電助剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、非晶質炭素等などが例示できる。また、導電性高分子ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセンなどが例示できる。
【0048】
(電解液)
電解質としては特に限定しないが、有機溶媒などの溶媒に支持塩を溶解させたもの、自身が液体状であるイオン液体、そのイオン液体に対して更に支持塩を溶解させたものが例示できる。有機溶媒としては、通常リチウム二次電池の電解液に用いられる有機溶媒が例示できる。例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等及びそれらの混合溶媒が適当である。
【0049】
例に挙げたこれらの有機溶媒のうち、特に、カーボネート類、エーテル類からなる群より選ばれた一種以上の非水溶媒を用いることにより、支持塩の溶解性、誘電率および粘度、安定性において優れ、電池の充放電効率も高いので、好ましい。
【0050】
イオン液体は、通常リチウム二次電池の電解液に用いられるイオン液体であれば特に限定されるものではない。例えば、イオン液体のカチオン成分としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムや、ジメチルエチルメトキシアンモニウムカチオン等が挙げられ、アニオン成分としは、BF、N(SOCF等が挙げられる。
【0051】
本実施形態の電解質において用いられる支持塩としては、特に限定されない。例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiSbF、LiSCN、LiClO、LiAlCl、NaClO、NaBF、NaI、これらの誘導体等の塩化合物が挙げられる。これらの中でも、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiCFSOの誘導体、LiN(CFSOの誘導体及びLiC(CFSOの誘導体からなる群から選ばれる1種以上の塩を用いることが、電気特性の観点からは好ましい。
【0052】
正極と負極との間には電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材であるセパレータを介装することが望ましい。電解質が液状である場合にはセパレータは、液状の電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)やガラス繊維からなる多孔質膜、不織布が例示できる。更に、セパレータは、正極及び負極の間の絶縁を担保する目的で、正極及び負極よりも更に大きい形態を採用することが好ましい。
【0053】
正極、負極、電解質、セパレータなどは何らかのケース内に収納することが一般的である。ケースは、特に限定されるものではなく、公知の材料、形態で作成することができる。
【0054】
[有機ラジカル二次電池の充放電制御方法及び充放電制御装置]
本発明の有機ラジカル二次電池の充放電制御方法及び装置について以下、実施形態に基づき説明を行う。本実施形態の充放電制御方法及び装置が充放電の制御を行う有機ラジカル二次電池は、先に説明した本実施形態の有機ラジカル二次電池である。本実施形態の充放電制御装置は本実施形態の充放電制御方法を実現する装置であるため、充放電制御方法についての説明にて充放電制御装置の説明に代える。
【0055】
本充放電制御方法は、所定の上限値と所定の下限値との間に充電容量を保つように充放電を行う制御方法である。所定の上限値及び下限値としては任意に設定可能である。本制御方法はこれら所定の上限値及び下限値に対応する上限電圧及び下限電圧で規定される使用電圧範囲に有機ラジカル二次電池の電圧を保つことで充電容量を所定の上限値及び下限値の範囲に制御する方法である。
【0056】
制御対象の有機ラジカル二次電池の電極活物質が含む、ラジカル化合物、テトラチアフルバレン誘導体、及び/又はキノン誘導体は、この使用電圧範囲内に2つ以上の酸化還元電位をもつ。つまり、酸化還元電位が異なる電極活物質を2種類以上含有する。電極活物質は酸化還元により電池反応に寄与する化合物であり、その含有割合を変化させることにより、任意の充電容量の値において、有機ラジカル二次電池の電圧に大きな変動を生じることができる。
【0057】
例えば、2種類のラジカル化合物(酸化還元電位が低いラジカル化合物(i)及び酸化還元電位が高いラジカル化合物(ii))のみを組み合わせて電極活物質を構成した有機ラジカル二次電池に基づき説明する。当然、ラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体との組み合わせ、ラジカル化合物とキノン誘導体との組み合わせ、ラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体とキノン誘導体との組み合わせの何れであっても良いことは言うまでもない。
【0058】
この有機ラジカル二次電池について、SOC(充電状態:State of charge)が0%からSOCが100%に向けて充電を行う場合を考えると、2種類のラジカル化合物のうち酸化還元電位が低いラジカル化合物(i)から電池反応に供されることになる。充電が進行するにつれて、ラジカル化合物(i)が優先的に反応する。
【0059】
ラジカル化合物(i)の反応が終了すると、ラジカル化合物(ii)の反応が進行する。充電を行うことで、以上説明したように電池反応が進行し、電池反応に寄与するラジカル化合物が、酸化還元電位が低いラジカル化合物(i)から酸化還元電位が高いラジカル化合物(ii)に移行する。その結果、電池の電圧が酸化還元電位の変化に伴い高くなる。
【0060】
ここで、ラジカル化合物(i)とラジカル化合物(ii)との混合比を変更することで、電池反応に関与する化合物がラジカル化合物(i)からラジカル化合物(ii)に切り替わるSOCの値を変化させることができる。
【0061】
例えば、ラジカル化合物(i)をSOCの80%に相当する量とし、ラジカル化合物(ii)をSOCの20%に相当する量とすることで、SOCが80%になると、電圧の変化が大きくなるように調節できる。この混合量を変化させることで、電圧変化が起きるSOCの大きさを任意に変化できる他、酸化還元電位が異なる、第3、第4の成分を含有させることで、複数のSOCの値にて電圧が大きく変化させることが可能になる。
【0062】
以上、充電時における電圧変動について説明を行ったが、同様の電圧変動は放電時にも生起する。つまり、SOCが100%から0%に向けて放電を行うときに、ラジカル化合物(ii)の反応が終了した後にラジカル化合物(i)の反応に移行するため、その移行が起こるSOCに到達すると、電圧の大きな変化(低下)が生起する。そして、その電圧の変化が起こるSOCはラジカル化合物(i)及び(ii)の混合比により制御できる。
【0063】
有機ラジカル二次電池のSOCを有機ラジカル二次電池の電圧測定により検知する場合、特定のSOCにおいて電圧の変化が大きくなると、その近傍におけるSOCの変化の検知精度が良くなって、より精密な充放電量の制御が可能になる。
【0064】
特に、所定の下限値(SOC0%)側から所定の上限値(SOC100%)に充電容量が近づいた場合に、有機ラジカル二次電池の端子電圧が変化するように、2つ以上の酸化還元電位のうちの1つを超えるように、成分の混合比を制御することで、SOCの上限付近での制御性が向上できる。
【0065】
反対に、所定の上限値(SOC100%)側から所定の下限値(SOC0%)に充電容量が近づいた場合に、有機ラジカル二次電池の端子電圧が変化するように、2つ以上の酸化還元電位のうちの1つを下回るように、成分の混合比を制御することで、SOCの下限付近での制御性が向上できる。
【0066】
具体的に前述のラジカル化合物(i)及び(ii)の例で説明すると、電圧変化を生起させる目的のSOCに対応する混合比(例えば、SOC90%の場合)に相当する混合比にてラジカル化合物(i):ラジカル化合物(ii)(充放電量比)を混合(SOC90%の場合は10:90)する。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を示し、本発明の有機ラジカル二次電池の詳細について説明する。
【0068】
[実施例1]
(ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)の合成)
窒素雰囲気下、攪拌機を付けた2Lの4口フラスコ中に、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを135g(0.563モル)、エチレングリコールジメタクリレートを6.75g(0.034モル)、n−ヘキシルメタクリレートを1.35g(0.008モル)、そして乾燥トルエン780mlを仕込み、溶解させた後、−10℃まで冷却した。
【0069】
反応に係る溶解液の温度が−5℃を超えないようにシクロペンチルマグネシウムクロリドの2Mエーテル溶液14.0ml(0.028モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、そのまま−10℃で5時間攪拌してから、室温で5時間さらに攪拌した。反応溶液に酢酸34g及びメタノール34gを添加して触媒を失活させてから、水/メタノール(体積比1/9)の混合溶媒10リットル中に滴下し、ろ過及び乾燥することによってポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を得た。
【0070】
(式(E)の化合物(Yが−(CH−(mは0)、Rが水素)の合成)
−78℃で冷却した(4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ)トリメチルシラン(15.0g,41.9mmol)を加えたテトラヒドロフラン溶液(15ml)に、5mol/Lブチルリチウム(28.4mL,42.6mmol)を含有するヘキサン溶液を加えた。この溶液を−78℃で30分攪拌し、その後、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(6.9mL)、メチル−4−ブロモベンゼン(4.1g,19.1mmol)とテトラヒドロフラン(19.1mL)を加えた後、室温で12時間保持した。その後、水酸化カリウム(6.9g)を加えた水(19.1mL)を添加し、24時間攪拌し、塩化アンモニウム水溶液と水で洗浄した後、クロロホルムで抽出した。カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン−クロロホルム1:2)で抽出液の精製を行った。結果、4−ブロモ−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−ベンゼンを得た。
【0071】
4.5g(7.79mmol)の4−ブロモ−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−ベンゼンを191mLの無水酢酸に溶解し、過塩素酸を1滴加えた。その溶液を室温にて15h攪拌し、過剰の水を更に添加した。この混合溶液をエーテルと水で抽出を行った。エーテル層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、クロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒ヘキサン:クロロホルム(1:2))で精製を行った。結果、4−ブロモ−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−アセトキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−ベンゼンを得た。
【0072】
3−チオフェンボロニックアシッド(0.68g,5.33mmol)と4−ブロモ−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−アセトキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−ベンゼン(3.0g,4.84mmol)とを1,2−ジメトキシエタン(10.2mL)に溶解し、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)−パラジウム(0.352g,0.305mmol)と2Nの炭酸ナトリウム(10.2mL)とを加え、窒素雰囲気下にて95℃で24時間攪拌した。その後、室温まで冷却し、エーテルと水とで抽出を行った。エーテル層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、クロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒ヘキサン:クロロホルム(1:2))で精製を行った。結果、3−{4−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−アセトキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−フェニル}チオフェンを得た。
【0073】
3−{4−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−アセトキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−フェニル}チオフェン(0.30g,0.482mmol)を溶解させたクロロホルム溶液(96.3ml)に塩化鉄(0.31g,1.91mmol)を加え、窒素雰囲気下にて室温で200時間攪拌し赤紫色の反応混合物を得た。この反応混合物をメタノールに添加し、水とメタノールの混合溶液で数回洗浄した。結果、ポリ(3−{4−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−アセトキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−フェニル}チオフェン)を得た。
【0074】
ポリ(3−{4−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−アセトキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−フェニル}チオフェン)(199mg)を少量のテトラヒドロフランに溶解し、ジメチルスルホキシド(31ml)と2.5Nの水酸化カリウム(1.5mL)を加えた。この溶液を窒素雰囲気下にて45℃で12時間攪拌、1Nの塩酸で中和した後、エーテルと水で抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧留去した。この留去した溶液をメタノールに加え、ポリ(3−{4−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−フェニル}チオフェン)を得た。
【0075】
ポリ(3−{4−[(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)(3,5−ジ−tert−ブチル−4−オキソ−シクロヘキサ−2,5−ジエン−1−イリジン)メチル]−フェニル}チオフェン)(23.5mg,20ユニットmmol/L)を溶解したトルエン溶液(2mL)に水酸化ナトリウム水溶液(1mL)を加え、窒素雰囲気下にて30分攪拌した。この溶液にフェリシアン化カリウム(13.1mg,ガルビノキシルユニットあたり12等量)水溶液1mLを加え、更に30分攪拌した。トルエン層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧留去し、上記式(E)で表されるラジカル化合物(Yが−(CH−(mは0)、Rが水素。以下単に式(E)の化合物と記載する)を得た。
【0076】
(正極の作製)
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を6質量部、式(E)の化合物を54質量部、アセチレンブラックを30質量部、そしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を10質量部に対し、ノルマルメチルピロリドン(NMP)を加え、混合、分散させて均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。
【0077】
(負極の作製)
リチウム金属箔(厚み300μm)を所定のサイズに裁断することで負極を作製した。
【0078】
(電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比3:7にて混合し、その混合有機溶媒中に支持電解質としてのLiPFを1モル/Lの濃度で溶解して電解液とした。
【0079】
(電池の作製)
上記で得られた正極及び負極の間にポリプロピレン製セパレータを挟み重ね合わせることで、平板形状の電極体を形成した。得られた平板形状の電極体をケースの内部に挿入し、ケース内に保持した。その後、平板形状の電極体を保持したケース内に上記電解液を注入した後、ケースを密閉、封止した(図2)。
【0080】
具体的には、正極1には前記正極を用い、負極2にはリチウム金属を用いた。電解液3は調製した前記電解液を用いた。セパレータ7は厚さ25μmのポリエチレン製の多孔質膜をそれぞれ用いてコイン型電池を製造した。正極1には正極集電体1aをもち、負極2には負極集電体2aをもつ。
【0081】
これらの発電要素をステンレス製のケース(正極ケース4と負極ケース5から構成されている)中に収納した。正極ケース4と負極ケース5とは正極端子と負極端子とを兼ねている。正極ケース4と負極ケース5との間にはポリプロピレン製のガスケット6を介装することで密閉性と正極ケース4と負極ケース5との間の絶縁性とを担保した。以上の手順により、φ19mm、厚さ3mmのコイン型電池を製作し本実施例の試験電池とした。
【0082】
(放電時の電池電圧の評価)
作製した非水電解液二次電池の充放電電圧特性の評価は、0.01mA/cmの電流値にて2.5Vから4.1Vまで充電した後、0.01mA/cmの電流値で4.1Vから2.5Vまで放電した際のSOCに対するを電池電圧を測定した結果を図1に示す。その結果、3.6V付近(ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)に相当)と3.1V付近(式(E)の化合物に相当)に平坦部を有し、約80%の充電状態で大きな電圧変化を起こす放電電位曲線を示すことを確認できた。
【0083】
[実施例2]
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を18質量部、式(E)の化合物を42質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。
【0084】
上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、約3.6Vと3.1V付近に平坦部を有し、約50%の充電状態で大きな電圧変化を起こす放電電位曲線を示すことを確認できた(図1)。
【0085】
[実施例3]
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を29質量部、式(E)の化合物を31質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、約3.6Vと3.1V付近に平坦部を有し、約30%の充電状態で大きな電圧変化を起こす放電電位曲線を示すことを確認できた(図1)。
【0086】
[実施例4]
(式(F)の化合物(一般式(D2)におけるRが一般式(1)、R及びRが水素;一般式(1)中、Rが水素、Yが−O(CH−(炭素原子にてピロール環の窒素原子に結合する))の合成)
氷浴で冷却しながら、3−アミノ−1−プロパノール18mL(0.24モル)を酢酸33mL中に加えた後、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン9mL(0.07モル)を一気に加え、2時間還流した。室温まで放冷後、水120mLを加え、ジクロロメタン50mLで3回抽出操作を行った。
【0087】
得られた有機層をNaSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。メタノール60mLと20質量%NaOH水溶液60mLとを残留物に加え、室温で2.5時間撹拌した。その後、飽和NaCl水溶液100mLを加え、ジクロロメタン50mLで3回抽出操作を行った。
【0088】
得られた有機層をNaSOで乾燥した後、溶媒を減圧除去し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル−ヘキサン1:1)で精製を行い1−(3−ヒドロキシプロピル)−1H−ピロールを得た。
【0089】
窒素雰囲気下、氷浴で冷却しながら、1−(3−ヒドロキシプロピル)−1H−ピロール3.5g(0.28モル)とトリエチルアミン4.16mL(0.30モル)とをジクロロメタン25mL中に加えた後、メタンスルホン酸クロライド2.45mL(0.30モル)を滴下し、室温で3時間撹拌した。水60mLを加え、ジクロロメタン60mLで抽出操作を行った。得られた有機層を5質量%NaHCO水溶液60mLで洗浄した後、NaSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。その後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行い1−(3’−MsO−プロピル)−1H−ピロールを得た。
【0090】
窒素雰囲気下、ヘキサンで洗浄したNaH(60%in Oil、0.81g、0.203mol)と4−ヒドロキシ−TEMPO3.5g(0.203モル)をDMF30mL中に加え、0℃で1時間撹拌した。その後、1−(3’−MsO−プロピル)−1H−ピロール5g(0.246モル)を滴下し、室温で15時間撹拌した。水60mLを加え、ヘキサン150mLで抽出操作を行った。得られた有機層を水25mLで6回洗浄した後、NaSOで乾燥し、溶媒を減圧除去した。その後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル−ヘキサン1:3)で精製を行い下記式(F)で表されるラジカル化合物を得た。
【0091】
【化7】

【0092】
式(E)で表される化合物を39質量部、式(F)で表される化合物を21質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、3.6V近傍(式(F)の化合物に相当)と3.1V付近に平坦部を有し、約50%の充電状態で大きな電圧変化を起こす放電電位曲線を示すことを確認できた。
【0093】
[実施例5]
(式(G)の化合物(テトラチアフルバレン誘導体:式(A1)におけるR〜Rが水素、Yにおけるmが0)の合成)
窒素雰囲気下、氷浴で冷却しながら、テトラヒドロフラン3mLとジイソプロピルアミン(0.94mL,6.7mmol)の溶液に2.71M n−ブチルリチウム/ヘキサン(2.5mL,6.7mmol)を加え15分間攪拌してリチウムジイソプロピルアミド溶液を調製した。窒素雰囲気下、−78℃で、テトラチアフルバレン(化合物a,1.23g,6mmol)とテトラヒドロフラン20mLの溶液に、リチウムジイソプロピルアミド溶液を滴下し1時間攪拌した。トリデカフルオロヘキシルヨウ素(2.6mL,6.7mmol)を一気に加え、更に1時間攪拌した後、約1時間かけて室温に戻してから、少量の水を加え反応を停止させた。溶媒を減圧留去しクロロホルムと水で抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒ヘキサン:CHCl(2:1))で精製を行い化合物bを得た。
【0094】
窒素雰囲気下、室温で化合物b(1.0g,3mmol)とテトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0.46g,0.4mmol)とヨウ化銅(I)(0.15g,0.79mmol)に、トリエチルアミン10mLとテトラヒドロフラン20mLを加えた。次にトリメチルシリルアセチレン(1.0mL,7.2mmol)を加え5時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、ヘキサン:CHCl(1:1)と水で抽出を行った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒ヘキサン:CHCl(2:1))で精製を行い化合物cを得た。
【0095】
室温で化合物c(0.4g,1.3mmol)とテトラヒドロフラン5mlの溶液に、1.0M テトラブチルアンモニウムフルオライド/テトラヒドロフラン(0.75mL,2.6mmol)を加えて5分間攪拌した。その後、カルシウムクロライド(0.33g,3mmol)/水 5mlを加え反応を停止させた。クロロホルムと水で抽出を行い、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶媒ヘキサン:CHCl(1:1))で精製を行い化合物dを得た。
【0096】
窒素雰囲気下、室温にて化合物d(228mg,1mmol)とnorbornadiene rhodium(I)chloride dimer(11mg,2.4×10−5mol)とに、トリエチルアミン(1.59mL,11.4mmol)とテトラヒドロフラン4.5mlを加え、3時間攪拌した。クロロホルムを加えろ過し下記式(G)で表されるテトラチアフルバレン誘導体を得た。
【0097】
【化8】

【0098】
【化9】

【0099】
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を15質量部、式(G)を45質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、3.6V付近と3.3V付近(化合物Gに相当)に平坦部を有する放電電位曲線を示すことを確認できた。
【0100】
[実施例6]
(式(H)の化合物(キノン誘導体:一般式(B)におけるR及びRがOH基、Yにおけるmが0)の合成)
2,5ジヒドロキシベンゾキノンを加え60℃に加温した氷酢酸中にホルムアルデヒド水溶液を加えることで、2,5ジヒドロキシベンゾキノンの重合を行い、下記式(H)の化合物を得た。
【0101】
【化10】

【0102】
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を15質量部、式(H)の化合物を45質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、3.6V付近と2.9V(式(H)の化合物部相当)付近に平坦部を有する放電電位曲線を示すことを確認できた。
【0103】
[実施例7]
(式(J)の化合物(キノン誘導体:式(B2)におけるR10及びR11が水素)の合成2)
硝酸ナトリウムを添加した濃硫酸中に、1,4−ナフトキノンを加え5℃で保持し、メタノールで再結晶化することで、5−ニトロ−1,4−ナフトキノンを得た。5−ニトロ−1,4−ナフトキノンを酢酸中に溶解し、この酢酸溶液に塩化スズを溶解した濃塩酸を添加し、100℃で保温することで、5−アミノ−1,4ジヒドロキシナフタレンを得た。
【0104】
更に上記溶液に塩化鉄(III)水溶液を添加し、カラムクロマトグラフィーで精製、再結晶化することで、5−アミノ−1,4ナフトキノンを得た。
【0105】
0.1mol/Lの過塩素酸リチウムを溶解したアセトニトリル溶液に、5−アミノ−1,4ナフトキノン(0.01mol/L)を加え、飽和カロメロ電極に対し0.5〜1.45Vの範囲で50mV/secにて電位走査を繰り返すことで電解重合し、下記式(J)で表されるキノン誘導体を得た。電解重合用の電極としてはPt製の電極を用いた。
【0106】
【化11】

【0107】
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を15質量部、式(J)の化合物を45質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、3.6V付近と2.5V付近(式(J)の化合物に相当)に平坦部を有する放電電位曲線を示すことを確認できた。
【0108】
[比較例1]
ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)を60質量部、アセチレンブラックを30質量部、PVDFを10質量部にNMPを加え、混合、分散させ均質塗料液を調製した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、約3.6V付近に平坦部を有する放電電位曲線を示すことを確認できた(図1)。
【0109】
[比較例2]
式(F)の化合物を60質量部、アセチレンブラック 30質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF) 10質量部にノルマルメチルピロリドン(NMP)を加え、混合、分散させ均質塗料液を調整した。この均質塗料液をアルミ製の集電体(50μm)の片面に塗布し、乾燥、プレス後、所定のサイズに裁断することで正極を作製した。作製した正極の厚みはアルミ製の集電体を含め100μmであった。上記正極を用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、放電時の電池電圧の評価を実施した。その結果、約3.6V付近に平坦部を有する放電電位曲線を示すことを確認できた(図1)。
【0110】
(結果)
比較例1、2に示す様に、活物質に1種のみのラジカル化合物を用いて電極を構成した場合、放電時の電池電圧が平坦であることから、電池電圧を利用して電池の充電状態の簡便に検出することが困難であったのに対し、酸化還元電位の異なる複数種のラジカル化合物を用いたり(実施例1、4)、ラジカル化合物テトラチアフルバレン誘導体やキノン誘導体を組合わせることで、放電電位を多段化することが可能になるため、電池充電状態の検出が容易な非水電解液二次電池を提供することが可能であることが確認できた。
【0111】
また図1(実施例1、2、3)に示す様に電極内に添加するラジカル化合物の配合量を調整することで電圧が変化するSOCの値を変化させることも可能なため、任意の電池充電状態の検出が容易な有機ラジカル二次電池を提供することが可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】実施例で測定した各電池の放電電位曲線を示す。
【図2】本発明の非水電解液二次電池のコイン型電池の構造の一例を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0113】
1…正極 1a…正極集電体 2…負極 2a…負極集電体 3…電解液 4…正極ケース 5…負極ケース 6…ガスケット 7…セパレータ 10…コイン型の非水電解液二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオンを吸着及び放出できる正極と、陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える有機ラジカル二次電池において、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、酸化還元電位の異なるラジカル化合物を2種以上含有していることを特徴とする有機ラジカル二次電池。
【請求項2】
前記ラジカル化合物の酸化還元電位差が各々0.1V以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機ラジカル二次電池。
【請求項3】
前記ラジカル化合物の最高被占軌道エネルギー差が各々0.2eV以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ラジカル二次電池。
【請求項4】
陰イオンを吸着及び放出できる正極と陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える有機ラジカル二次電池において、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、ラジカル化合物とテトラチアフルバレン誘導体を含有していることを特徴とする有機ラジカル二次電池。
【請求項5】
前記テトラチアフルバレン誘導体が下記一般式(A1)〜(A3)の何れか1つで表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の有機ラジカル二次電池。
【化1】

(式(A1)〜(A3)中、R〜Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H、OH、F、Cl、Br、CN、及びNHからそれぞれ独立して選択される。Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、及び−CO−の何れかで置換されても良い。nは自然数。)
【請求項6】
陰イオンを吸着及び放出できる正極と陽イオンを吸着及び放出できる負極と、正極と負極との間で前記陽及び陰イオンを溶解させた電解液を備える有機ラジカル二次電池において、
前記正極及び前記負極の少なくとも一方の電極活物質は、ラジカル化合物とキノン誘導体を含有していることを特徴とする有機ラジカル二次電池。
【請求項7】
前記キノン誘導体が下記一般式(B1)〜(B3)の何れか1つで表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機ラジカル二次電池。
【化2】

(式(B1)〜(B3)中、R〜R15は水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H、OH、F、Cl、Br、CN、及びNHからそれぞれ独立して選択される。
式(B1)中、Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、及び−CO−の何れかで置換されても良い。nは自然数。)
【請求項8】
前記ラジカル化合物がニトロキシラジカル化合物又はオキシラジカル化合物であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池。
【請求項9】
前記ラジカル化合物は2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレートを単位化合物として含むことを特徴とする請求項8に記載の有機ラジカル二次電池。
【請求項10】
前記ラジカル化合物が下記一般式(D1)又は(D2)で表される化合物であることを特徴とする請求項8又は9に記載の有機ラジカル二次電池。
【化3】

(式(D1)及び(D2)中、R16〜R20は水素、炭素数1〜4のアルキル基からそれぞれ独立して選択され、式(D1)中におけるR16及びR17の少なくとも1つは下記一般式(1)〜(4)で表される構造のうちの何れかである。式(D2)中におけるR18及びR20の少なくとも1つは下記一般式(1)〜(4)で表される構造のうちの何れかである。)
【化4】

(式(1)〜(4)は*の部分にて、前記式(D1)におけるピロール環の炭素原子又は窒素原子に結合する。式(1)〜(4)は*の部分にて、前記式(D2)におけるチオフェン環の炭素原子に結合する。式(1)〜(4)中、RはH、OH、CH又はNHである。式(1)〜(4)中、Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、−CO−、
【化5】

で置換されてもよい。)
【請求項11】
前記ラジカル化合物が下記一般式(E)で表される化合物であることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池
【化6】

(式(E)中、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H、OH、F、Cl、Br、CN、及びNHの何れかから選択される。式(E)中、Yは−(CH−(mは0〜10の整数)であり、mが1以上のときはYを構成するメチレン基の1つ以上が、−O−、−CH=N−、−S−、−CO−で置換されても良い。)
【請求項12】
前記ラジカル化合物はポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)である請求項9に記載の有機ラジカル二次電池。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池に対して、所定の上限値と所定の下限値との間に充電容量を保つように充放電を行う有機ラジカル二次電池の充放電制御方法であって、
前記ラジカル化合物、前記テトラチアフルバレン誘導体、及び/又は前記キノン誘導体の酸化還元電位が、前記充電容量における前記所定の上限値に対応する値以下、前記充電容量における前記所定の下限値に対応する値以上の範囲である使用電圧範囲内に、2つ以上存在し、
前記有機ラジカル二次電池の端子電圧から充放電状態を算出することを特徴とする有機ラジカル二次電池の充放電制御方法。
【請求項14】
前記所定の下限値側から前記所定の上限値に前記充電容量が近づいた場合に、前記有機ラジカル二次電池の前記端子電圧が前記2つ以上存在する前記酸化還元電位のうちの1つを超える請求項13に記載の有機ラジカル二次電池の充放電制御方法。
【請求項15】
前記所定の上限値側から前記所定の下限値に前記充電容量が近づいた場合に、前記有機ラジカル二次電池の前記端子電圧が前記2つ以上存在する前記酸化還元電位のうちの1つを下回る請求項13又は14に記載の有機ラジカル二次電池の充放電制御方法。
【請求項16】
請求項1〜12の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池に対して、所定の上限値と所定の下限値との間に充電容量を保つように充放電を行う有機ラジカル二次電池の充放電制御装置であって、
請求項13〜15の何れか1項に記載の有機ラジカル二次電池の充放電制御方法にて充放電の制御を行う制御手段を有することを特徴とする有機ラジカル二次電池の充放電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−295397(P2009−295397A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147285(P2008−147285)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】