説明

有機光電変換素子、その製造方法、有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光センサアレイ

【課題】高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機光電変換素子、低温かつ大気圧下でp−i−n積層構造を有するバルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子の製造方法、この有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光アレイセンサを提供することにある。
【解決手段】陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記陰極と陽極の間に、2座以上で金属と配位可能な配位子部分を分子内に2以上有する化合物(a)と、2価以上の金属イオン(b)とを含有し、前記化合物(a)と金属イオン(b)の配位によって形成された架橋構造を有する有機層を有することを特徴とする有機光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、その製造方法、太陽電池及び光センサアレイに関し、さらに詳しくは、バルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子、その製造方法、この有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光アレイセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギーから直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いた太陽電池、GaAsやCIGS等の化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)等が提案・実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの太陽電池で発電するコストは未だ化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事が必要であり、これらも発電コストが高くなる一因であった。
【0004】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低い発電コストを達成しうる太陽電池として、陽極と陰極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合されたバルクへテロジャンクション層を挟んだバルクへテロジャンクション型光電変換素子が提案されて(例えば、非特許文献1参照)いる。
【0005】
これらのバルクへテロジャンクション型太陽電池においては、陽極・陰極以外は塗布プロセスで形成されているため、高速かつ安価な製造が可能であると期待され、前述の発電コストの課題を解決できる可能性がある。さらに、上記のSi系太陽電池・化合物半導体系太陽電池・色素増感太陽電池等と異なり、160℃より高温のプロセスがないため、安価かつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0006】
なお発電コストには、初期の製造コスト以外にも発電効率及び素子の耐久性も含めて算出されなければならないが、前記非特許文献1では、太陽光スペクトルを効率よく吸収するために、長波長まで吸収可能な有機高分子を用いることによって、5%を超える変換効率を達成するに至っている。
【0007】
なお光電変換効率は、短絡電流(Jsc)×開放電圧(Voc)×曲線因子(FF)の積で算出されるが、上記のような高効率の有機薄膜太陽電池を含めて一般に有機光電変換素子は曲線因子が0.55程度と低いものに留まっており、これらをシリコン系太陽電池並みの値(0.65〜0.75)に向上できれば一層の光電変換効率を得られるものと期待される。
【0008】
曲線因子は光電変換素子の内部抵抗と密接に関わっており、曲線因子向上のためには有機薄膜の低抵抗化、電荷分離効率の向上(整流性の向上、つまり正孔は陽極だけに流れ、電子は陰極だけに流れるようにする設計)が有効であることが知られている。
【0009】
電荷分離効率の向上には、p−i−n積層構造を有するバルクへテロジャンクション層を設けることが有力である。非特許文献2では、蒸着法によりこのようなバルクへテロジャンクション層を形成しているが、真空系のためコストが高く、安価な太陽電池とはならない。特許文献1、2では、加熱前は溶媒溶解性が高い熱変換型光電変換材料を用いて塗布し、塗布後に加熱して可溶性置換基を不溶化しているが、不溶化のために200℃前後の加熱が必要なため、安価な汎用プラスチック基板は使えず、安価な太陽電池とはならない。非特許文献3では、重合可能な二重結合を側鎖に有するポリチオフェンを塗布後に架橋して不溶化しているが、これも高温が必要で安価な太陽電池とはならず、またUV架橋は光電変換材料にダメージを与える可能性がある。特許文献3では、フェナントロリン錯体構造を有する高分子を用いた光電変換素子を開示しているが、高分子間は錯体形成によって架橋しておらず、塗布後に不溶化する思想は開示されていない。また、耐久性についても改善されるといった記載はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−16834号公報
【特許文献2】特開2008−202029号公報
【特許文献3】特開2003−332075号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A.Heeger:Nature Mat.,vol.6(2007),p497
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,vol.58(1991),p1062
【非特許文献3】Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,p1225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機光電変換素子、コストメリットに優れた塗布法かつ低温でp−i−n構造のような積層構造を達成可能なバルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子の製造方法、この有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光アレイセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0014】
1.陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記陰極と陽極の間に、2座以上で金属と配位可能な配位子部分を分子内に2以上有する化合物(a)と、2価以上の金属イオン(b)とを含有し、前記化合物(a)と金属イオン(b)の配位によって形成された架橋構造を有する有機層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【0015】
2.前記化合物(a)の金属に配位する原子の少なくとも一つが窒素原子であることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0016】
3.前記化合物(a)が、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物であることを特徴とする前記1または2に記載の有機光電変換素子。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Zは置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成する原子群を表し、Z、Zは置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表す。Y、Yは置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表し、Yは置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成する原子群を表す。R〜Rは水素原子または一価の置換基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表し、X、Xは炭素原子または窒素原子を表す。)
4.前記一般式(1)〜(3)のY、Yで表される置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群、Yで表される芳香族複素環を形成する原子群が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする前記3に記載の有機光電変換素子。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、X〜Xは置換または無置換の炭素原子または窒素原子表す。Rは水素原子または一価の置換基を表す。)
5.前記一般式(4)において、Xが窒素原子、X及びXが炭素原子であることを特徴とする前記4に記載の有機光電変換素子。
【0021】
6.前記化合物(a)が前記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記3〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0022】
7.前記一般式(1)において、Xが酸素原子であることを特徴とする前記6に記載の有機光電変換素子。
【0023】
8.前記化合物(a)の分子量が5000以下であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0024】
9.前記金属イオン(b)が2価以上の遷移金属イオンであることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0025】
10.前記遷移金属イオンが銅イオンまたはニッケルイオンであることを特徴とする前記9に記載の有機光電変換素子。
【0026】
11.前記有機層が、バルクへテロジャンクション層であることを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0027】
12.前記バルクへテロジャンクション層が、陽極側から順に
(1)p型半導体である前記化合物(a)と、前記金属イオン(b)とが配位することで架橋された層(p層)、
(2)前記化合物(a)と、前記金属イオン(b)と、n型半導体とが混合されたバルクへテロジャンクション層(i層)、
(3)n型半導体単体からなる層(n層)
の3層が積層されたp−i−n構造を有することを特徴とする前記11に記載の有機光電変換素子。
【0028】
13.前記1〜12のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の有機層が、前記化合物(a)を含有する溶液を塗布した後、前記化合物(a)を溶解しない溶媒を用いて前記金属イオン(b)を含有する溶液を塗布することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【0029】
14.前記1〜12のいずれか1項に記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【0030】
15.前記1〜12のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、高い光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機光電変換素子、低温かつ大気圧下でp−i−n積層構造を有するバルクへテロジャンクション型の有機光電変換素子の製造方法、この有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光アレイセンサを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図2】p−i−nの3層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図4】光センサアレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記陰極と陽極の間に、2座以上で金属と配位可能な配位子部分を分子内に2以上有する化合物(a)と2価以上の金属イオン(b)とを含有する液を塗布し、その後、前記化合物(a)と金属イオン(b)の配位によって不溶化した有機層を有する有機光電変換素子により、上記課題を達成できることを見出した。
【0034】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0035】
(有機光電変換素子及び太陽電池の構成)
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、透明電極(一般に陽極)12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、電子輸送層18及び対極(一般に陰極)13が順次積層されている。
【0036】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に透明電極12及び対極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0037】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0038】
図1において、基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0039】
なお図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0040】
さらに好ましい構成としては、前記光電変換部14が、いわゆるp−i−nの3層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクへテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、14i層単体であるが、p型半導体材料単体からなる14p層、及びn型半導体材料単体からなる14n層で挟むことにより、バルクへテロジャンクション層(14i)で発生した正孔はn層(14n)には移動できないために、正孔が陰極へと輸送されることによる電圧・電流の低下が起こらなくなる。同様に、バルクへテロジャンクション層(14i)で発生した電子はp層(14p)には移動できないために、電子が陽極へと輸送されることによる電圧・電流の低下が起こらなくなる。このような効果によって、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0041】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような有機光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの3層構成であってもよい。
【0042】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0043】
〔p型半導体材料〕
本発明のバルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられる。
【0044】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0045】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0046】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0047】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0048】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、n型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
【0049】
またバルクへテロジャンクション層上にさらに溶液プロセスで電子輸送層や正孔ブロック層を形成する際には、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に積層することができるが、通常溶解性のよい材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。従って、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
【0050】
このような材料として、本発明では2座以上で金属と配位可能な配位子部分を分子内に2以上有する化合物(a)を用い、塗布後、金属イオン(b)の配位によってキレート化し、不溶化した有機層を積層することができる。
【0051】
化合物(a)の金属に配位する原子の少なくとも一つは、窒素原子であることが好ましい。
【0052】
また本発明においては、高純度の精製が可能な点と、高い移動度の薄膜が得られるといった観点から、分子量は3000以下であることが好ましい。より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下である。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
【0053】
p型半導体材料の化合物(a)としては、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が好ましい。
【0054】
一般式(1)〜(3)において、Zは置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成する原子群を表し、Z、Zは置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表す。Y、Yは置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表し、Yは置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成する原子群を表す。R〜Rは水素原子または一価の置換基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表し、X、Xは炭素原子または窒素原子を表す。
【0055】
を含む置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環、Z、Zを含む置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環、Y、Yを含む置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環、Yを含む置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または含窒素芳香族複素環は、該環上にはさらに置換基を有していてもよく、縮合環を有していてもよい。
【0056】
芳香族炭化水素環、芳香族複素環、含窒素芳香族複素環の具体例としては、フェニル環、ナフチル環、ピリジル環、ピミジル環、ピラジル環、ピラゾリル環、ピロリル環、インドリル環、イミダゾリル環、フリル環、オキサゾリル環、チエニル環、チアゾリル環、キノリル環等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素環、芳香族複素環または含窒素芳香族複素環はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基、(例えばフェニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)アシルオキシ基(例えばアセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ブチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、スルファモイル基(例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)アリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(例えばアミノ、メチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、クロロアセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ベンゾイルアミノ、トリフルオロアセチルアミノ等)、アルキルウレイド基(例えばメチルウレイド、エチルウレイド、メトキシエチルウレイド、ジメチルウレイド等)、アリールウレイド基(例えばフェニルウレイド等)、アルキルスルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド、2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド等)、アリールスルホンアミド基(例えばフェニルスルホンアミド、トリルスルホンアミド等)、アルキルアミノスルホニルアミノ基(例えばメチルアミノスルホニルアミノ、エチルアミノスルホニルアミノ等)、アリールアミノスルホニルアミノ基、(例えばフェニルアミノスルホニルアミノ等)ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えばピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)等が挙げられる。
【0057】
前記フェニル環の場合の例としては、4−ヒドロキシフェニル、4−メチルアミノフェニル、4−(N−エチルアミノ)フェニル、4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル、4−(N−エチル−N−2−メトキシエチルアミノ)−2−メチルフェニル、4−(N−エチル−N−2−メタンスルホンアミニドエチルアミノ)−2−アセトアミドフェニル、4−アニリノフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−シアノ−2−ニトロフェニル、4−メチルフェニル、2,3,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、4−クロロフェニル、2,4,6−トリクロロフェニル、3−エトキシカルボニルフェニル、ジュロリジル等を挙げることができる。
【0058】
ピリジル環の場合の例としては、3−(2−メチル−6−N,N−ジエチルアミノ)−ピリジル、3−(6−N,N−ジメチルアミノ)−ピリジル、2−(6−ヒドロキシ)ピリジル、2−(5−メトキシ)ピリジル、3−(6−メトキシ)ピリジル、3−(6−ヒドロキシ−2−メチル)ピリジル、2−(3−メチル−5−ジエチルアミノ)ピリジル等を挙げることができ、ピラゾリル環の場合の例としては、3−(1,5−ジメチル)ピラゾリル、3−(1−フェニル−5−メチル)ピラゾリル等を挙げることができ、フリル環の場合の例としては、2−(5−エトキシ)フリル等を挙げることができ、チエニル環の場合の例としては、2−(5−メチル)チエニル、2−(5−ジメチルアミノ)チエニル、2−(5−エトキシ)チエニル等を挙げることができ、チアゾリル環の場合の例としては、5−(2−メチル)チアゾリル、5−(2−ジメチルアミノ)チアゾリル、5−(2−メトキシ)チエニル等を挙げることができる。
【0059】
〜Rで表される一価の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アシルアミノ基、スルフォンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アルコキシ基、スルフォニル基、チオ基、アシル基、複素環基等が挙げられる。
【0060】
一般式(1)〜(3)のY、Yで表される置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群、Yで表される芳香族複素環を形成する原子群が、前記一般式(4)で表される、ピラゾロトリアゾール構造であることが好ましい。この構造は、これまで銀塩写真のマゼンダカプラー及び免許証用写真のマゼンダ色素として用いられ、耐光性が非常に高いことが知られている。また材料設計次第で金属イオンと錯体を形成することが可能で、さらに耐光性を向上可能であることが知られている(例えば、特開10−086517号公報、特開11−099745号公報等)ためである。
【0061】
一般式(4)において、X〜Xは置換または無置換の炭素原子または窒素原子である。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アシルアミノ基、スルフォンアミド基、ウレイド基、ウレタン基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アルコキシ基、スルフォニル基、チオ基、アシル基、複素環基等が挙げられる。Xが窒素原子、X及びXが炭素原子であることが好ましい。Rで表される一価の置換基は、R〜Rで表される一価の置換基と同様である。
【0062】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物の中では、好ましい順に、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物である。一般式(1)において、Xが酸素原子であることが好ましい。これは一般にこの順序で後述する錯体金属との配位子交換が速い、つまり塗布膜の不溶化度が高くなるためである。
【0063】
また、一般式(4)で表される化合物の中では、Xが窒素原子、X及びXが炭素原子であることが好ましい。このようなピラゾロトリアゾール構造の方がモル吸光係数が高く、太陽光を有効に使えるためである。あるいは、同等の光吸収を行いたい場合に膜厚が薄くてすむため、バルクへテロジャンクション層の抵抗値を低減することができる。
【0064】
以下、一般式(1)〜(3)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0065】
【化3】

【0066】
【化4】

【0067】
【化5】

【0068】
【化6】

【0069】
【化7】

【0070】
【化8】

【0071】
上記化合物1〜25において、nは10〜100を表す。
【0072】
このような構造を有する化合物は、特開11−099745号公報、米国特許第6580027B2号明細書、国際公開第04/053019号パンフレット、または、Tetrahedron vol.51,No.44(1995)、p12127等を参考として合成することができる。
【0073】
また本発明においては、高純度の精製が可能な点と、高い移動度の薄膜が得られるといった観点から、分子量は10000以下であることが好ましい。より好ましくは5000以下、さらに好ましくは3000以下である。分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
【0074】
〔金属イオン(b)〕
キレートを形成する金属イオン(b)は、前記p型半導体材料(a)と錯体を形成することにより、塗布膜を不溶化し、この塗布膜上にさらに塗布法によって薄膜を形成する際に溶解しないようにすることができる。またこれ以外にも、前記p型半導体材料(a)と錯体を形成することにより耐光性が向上したり、吸収波長が長波長化したり、モル吸光係数が向上したり、薄膜のHOMO準位が深くなって後述する正孔ブロック層的な機能を発現したりするといった効果も期待することができる。
【0075】
前記化合物(a)とキレートを形成する金属イオン(b)としては、2価以上の金属イオンを用いる。金属イオン(b)は、金属含有化合物を用いることが好ましい。以下に金属含有化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
【化9】

【0077】
【化10】

【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
これらの金属含有化合物は、「キレート化学(5)錯体化学実験法[I](南江堂編)」等に記載の方法に準じて合成することができる。
【0082】
これらの金属含有化合物の中でも、下記一般式(5)、(6)で表される金属含有化合物が好ましい。
【0083】
【化14】

【0084】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、スルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはシアノ基を表す。Rは水素原子または置換基を表し、Mは2価以上の遷移金属を表す。)
として具体的には、アルキル基として、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル等;アルケニル基として、ビニル、アリル等;アルキニル基として、エチニル、プロパルギル等;アリール基として、フェニル、ナフチル、p−ニトロフェニル、p−フルオロフェニル、p−メトキシフェニル等;複素環基として、フリル、チエニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、フタラジル、ピロリジル、イミダゾリジル、モルホリル、オキサゾリジル等が挙げられる。
【0085】
として好ましくは、アルキル基、アリール基である。これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基は、さらに他の置換基で置換されてもよい。
【0086】
として具体的には、アルキル基として、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、クロロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、メトキシエチル等;アルケニル基として、ビニル、アリル等;アルキニル基として、エチニル、プロパルギル等;アリール基として、フェニル、ナフチル、p−ニトロフェニル、p−フルオロフェニル、p−メトキシフェニル等;複素環基として、フリル、チエニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、フタラジル、ピロリジル、イミダゾリジル、モルホリル、オキサゾリジル基等;アルコキシカルボニル基として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等;アリールオキシカルボニル基として、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等;カルバモイル基として、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル、オクチルアミノカルボニル、2−エチルヘキシルアミノカルボニル、ドデシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル等;スルファモイル基として、アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、オクチルアミノスルホニル、ドデシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、ナフチルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル等;スルフィニル基として、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル、2−ピリジルスルフィニル等;アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等;アリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等が挙げられる。
【0087】
として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、シアノ基であり、最も好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基である。これらの置換基は、さらに他の置換基で置換されてもよい。
【0088】
で表される置換基としては、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、クロロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、ペンタフルオロエチル、メトキシエチル等)、シクロアルキル基(シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(ビニル、アリル等)、アルキニル基(エチニル、プロパルギル等)、アリール基(フェニル、ナフチル、p−ニトロフェニル、p−フルオロフェニル、p−メトキシフェニル等)、複素環基(フリル、チエニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリル、フタラジル、ピロリジル、イミダゾリジル、モルホリル基、オキサゾリジル等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、スルファモイル基(アミノスルホニル、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、ブチルアミノスルホニル、ヘキシルアミノスルホニル、シクロヘキシルアミノスルホニル、オクチルアミノスルホニル、ドデシルアミノスルホニル、フェニルアミノスルホニル、ナフチルアミノスルホニル、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(アセチル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、ペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、オクチルカルボニル、2−エチルヘキシルカルボニル、ドデシルカルボニル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、ピリジルカルボニル等)、カルバモイル基(アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、プロピルアミノカルボニル、ペンチルアミノカルボニル、シクロヘキシルアミノカルボニル、オクチルアミノカルボニル、2−エチルヘキシルアミノカルボニル、ドデシルアミノカルボニル、フェニルアミノカルボニル、ナフチルアミノカルボニル、2−ピリジルアミノカルボニル等)、スルフィニル基(メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、シクロヘキシルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、ナフチルスルフィニル、2−ピリジルスルフィニル等)、アルキルスルホニル基(メチルスルホニル、エチルスルホニル、ブチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル、ナフチルスルホニル、2−ピリジルスルホニル等)、シアノ基等が挙げられる。
【0089】
として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、シアノ基であり、最も好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基である。これらの置換基は、さらに他の置換基で置換されてもよい。
【0090】
Mは2価以上の遷移金属を表し、銅またはニッケルが好ましいが、より好ましくは銅である。これは銅の方が環境安全性が高い点、錯体形成時の平面性が高いことから前記p型半導体材料(a)と錯体とした際の不溶化度が高い点、等からより好ましい。
【0091】
前記p型半導体材料(a)と前記錯体(b)との混合比は、これらの層の上層をさらに塗布製膜する際に溶解しない程度に架橋・不溶化されればよいが、他方でキャリア輸送材料として機能しない前記錯体(b)の混合比は、必要最小限であることが好ましい。従って、前記p型半導体材料(a)と前記錯体(b)との混合比は、好ましくは1:1〜50:1であり、より好ましくは2:1〜20:1、さらに好ましくは3:1〜10:1の範囲である。
【0092】
[n型半導体材料]
本発明のバルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0093】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0094】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0095】
また本発明においては、前記2座以上で金属と配位可能な配位子部分を分子内に2以上有する化合物(a)はn型半導体材料であってもよい。通常n型半導体単体からなる層(n層)はp層、i層を積層して最後に積層するため、必ずしもn層の不溶化は必要ないが、i層の上にn層を設ける際には有用であるし、単に架橋するだけでなく、塗布後、金属イオン(b)の配位によってキレート化し、不溶化した有機層を積層することができる。また錯体を形成することにより耐光性が向上したり、薄膜のHOMO準位が深くなって後述する正孔ブロック層的な機能を発現したりするといった効果も期待することができる。
【0096】
〔バルクヘテロジャンクション層の形成方法〕
前記有機層が、バルクへテロジャンクション層であることが好ましい。電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0097】
塗布法の中では、前記化合物(a)を含有する溶液と、前記金属イオン(b)を混合すると、それぞれの化合物の錯形成速度に応じた架橋・不溶化が進行するが、その不溶化の進行速度によってそれぞれ適した形成方法を使用すればよい。例えば架橋・不溶化が比較的遅い場合は、前記化合物(a)を含有する溶液と、前記金属イオン(b)を含有する溶液を調製しておき、塗布直前に混合した後、基体上に塗布する方法が適用できる。また比較的架橋・不溶化が早い場合には、前記化合物(a)を含有する溶液と、前記金属イオン(b)を含有する溶液を調製しておき、インクジェット法によりそれぞれのノズルから吐出して、基体上で着弾混合して塗布する方法、あるいは前記化合物(a)を含有する溶液を塗布後、前記化合物(a)を溶解しない溶媒に溶解した前記金属イオン(b)を含有する溶液を続けて塗布する方法等を選択することができる。
【0098】
塗布後は、キレート化、残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクへテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0099】
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。また、バルクへテロジャンクション層が、陽極側から順に、(1)前記化合物(a)と、前記金属イオン(b)とが配位することで架橋された層、(2)前記化合物(a)と、前記金属イオン(b)と、電子受容性化合物とが混合されたバルクへテロジャンクション層、(3)電子受容性化合物単体からなる層の3層が積層されたp−i−n構造を有することが好ましい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0100】
〔電子輸送層・正孔ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と陰極との中間に電子輸送層18を形成することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0101】
電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。より好ましくは、n型半導体のHOMO準位よりも深い材料を電子輸送層として用いることである。また、電子を輸送する特性から、電子移動度の高い化合物を用いることが好ましい。
【0102】
このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0103】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0104】
〔正孔輸送層・電子ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクへテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0105】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第06/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。なお、バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0106】
〔その他の層〕
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
【0107】
〈電極〉
本発明の有機光電変換素子においては、少なくとも陽極と陰極とを有する。また、タンデム構成をとる場合には中間電極を用いることでタンデム構成を達成することができる。なお本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。
【0108】
また透光性があるかどうかといった機能から、透光性のある電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合がある。通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
【0109】
〔陽極〕
本発明の陽極は、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0110】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて陽極とすることもできる。
【0111】
〔陰極〕
陰極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。陰極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0112】
陰極の導電材として金属材料を用いれば陰極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0113】
また、陰極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成でき好ましい。
【0114】
また、陰極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の陰極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記陽極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性陰極とすることができる。
【0115】
〔中間電極〕
また、前記図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記陽極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0116】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0117】
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0118】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0119】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0120】
〔光学機能層〕
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
【0121】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0122】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0123】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0124】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
【0125】
〔パターニング〕
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0126】
バルクへテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
【0127】
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングしたりすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
【0128】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子10が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子等で公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0129】
(光センサアレイ)
次に、以上説明したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10を応用した光センサアレイについて詳細に説明する。光センサアレイは、前記のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が受光によって電流を発生することを利用して、前記の有機光電変換素子を細かく画素状に並べて作製し、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する効果を有するセンサである。
【0130】
図4は、光センサアレイの構成を示す図である。図4(A)は、上面図であり、図4(B)は、図4(A)のA−A’線断面図である。
【0131】
図4において、光センサアレイ20は、保持部材としての基板21上に、下部電極としての陽極22、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部24及び陽極22と対をなし、上部電極としての陰極23が順次積層されたものである。光電変換部24は、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有してなる光電変換層24bと、バッファ層24aとの2層で構成される。図4に示す例では、6個のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が形成されている。
【0132】
これら基板21、陽極22、光電変換層24b及び陰極23は、前述したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10における陽極12、光電変換部14及び陰極13と同等の構成及び役割を示すものである。
【0133】
基板21には、例えば、ガラスが用いられ、陽極22には、例えば、ITOが用いられ、陰極23には、例えば、アルミニウムが用いられる。そして、光電変換層24bのp型半導体材料には、例えば、前記BP−1前駆体が用いられ、n型半導体材料には、例えば、前記例示化合物13が用いられる。また、バッファ層24aには、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)導電性高分子(スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP)が用いられる。このような光センサアレイ20は、次のようにして製作された。
【0134】
ガラス基板上にスパッタリングによりITO膜を形成し、フォトリソグラフィにより所定のパターン形状に加工した。ガラス基板の厚さは、0.7mm、ITO膜の厚さは、200nm、フォトリソグラフィ後のITO膜における測定部面積(受光面積)は、0.5mm×0.5mmであった。次に、このガラス基板21上に、スピンコート法(条件;回転数=1000rpm、フィルター径=1.2μm)によりPEDOT−PSS膜を形成した。その後、該基板を、オーブンで140℃、10分加熱し、乾燥させた。乾燥後のPEDOT−PSS膜の厚さは30nmであった。
【0135】
次に、上記PEDOT−PSS膜の上に、例示化合物11とPCBMの1:1混合膜を、スピンコート法(条件;回転数=3300rpm、フィルター径=0.8μm)により形成した。このスピンコートに際しては、例示化合物11及びPCBMをクロロベンゼン溶媒に=1:1で混合し、これを攪拌(5分)して得た混合液を用いた。例示化合物11とPCBMの混合膜の形成後、窒素ガス雰囲気下においてオーブンで180℃、30分加熱しアニール処理を施した。アニール処理後の例示化合物11とPCBMの混合膜の厚さは70nmであった。
【0136】
その後、所定のパターン開口を備えたメタルマスクを用い、例示化合物11とPCBMの混合膜の上に、電子輸送層として本発明の化合物16を5nm蒸着し、次いで陰極としてのアルミニウム層を蒸着法により形成(厚さ=10nm)した。その後、PVA(polyvinyl alcohol)をスピンコートで1μm形成し、150℃で焼成することで図略のパッシベーション層を作製した。以上により、光センサアレイ20が作製された。
【実施例】
【0137】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
実施例1
本発明に係る光電変換層の塗布積層性を評価するため、p型半導体層単体の耐溶剤性を評価した。
【0139】
〔塗布膜1の作製〕
PEN基板を界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。以降は窒素下にて作業を行った。
【0140】
クロロベンゼンに、p型半導体材料としてテトラベンゾポルフィリン前駆体(TBP前駆体、Chemical Communications,vol.22(1999),p2275に従って合成)1.0質量%を溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過しながら上記PEN基板上に700rpmで30秒のスピンコートを行った。
【0141】
得られた塗布膜を、120℃で10分間の焼成を行うことで、テトラベンゾポルフィリン前駆体の塗布膜を得た。なおPEN基板の実用的な耐熱温度は120℃である。
【0142】
〔塗布膜2の作製〕
塗布膜1の作製において、テトラベンゾポルフィリン前駆体に代えて架橋型ポリチオフェン(非特許文献2を元に合成)に変更した以外は、同様にして塗布膜2を作製した。
【0143】
〔塗布膜3の作製〕
例示化合物10(nは約20)をジクロロベンゼンに2.0質量%で溶解した溶液を700rpmでスピンコートし、90℃で90秒乾燥させた後、例示化合物M1(Cuヘキサフルオロアセチルアセトナート(アクロス社製))をテトラフルオロイソプロパノールに0.2質量%で溶解した溶液を調製して、前記例示化合物10の薄膜上に700rpmでスピンコートし、120℃で10分間の加熱を行った後、テトラフルオロイソプロパノールを滴下してスピンコートを行い、不要なCuヘキサフルオロアセチルアセトナートを除去した。さらに90℃で90秒間の乾燥を行うことで、塗布膜3を得た。
【0144】
〔塗布膜4の作製〕
塗布膜3の作製において、例示化合物10に代えて例示化合物11(nは約20)に変更した以外は、同様にして塗布膜4を作製した。
【0145】
〔耐溶剤性の評価〕
ジクロロベンゼンに対するリンス処理前後の500nmの吸光度を分光光度計(日立UV−3300)にて測定した。上記で作製した塗布膜上に、ジクロロベンゼンを滴下して1500rpmでスピンコートを行い、スピンコート(溶媒リンス)後の薄膜の残存率を次式により求め、薄膜の耐久性(耐溶剤性)を示す指標とした。
【0146】
残存率=(リンス後の吸光度)/(リンス前の吸光度)×100
評価の結果を表1に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
表1から、本発明に係る化合物を用いて薄膜形成後にキレート化処理を加えることにより、溶剤溶解性が変化し、耐久性(耐溶剤性)に優れた薄膜の形成が可能であることが分かった。
【0149】
実施例2
本発明に係る化合物を用いて、p−i−n積層構造のバルクへテロジャンクション層を有する有機光電変換素子を作製した。
【0150】
〔有機光電変換素子1の作製〕
PEN基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したものを、通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングとを用いて10mm幅にパターニングして、第1の電極を形成した。
【0151】
パターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素による乾燥を行い、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0152】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron PH510(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、120℃で大気中30分間加熱乾燥した。次いで窒素下のグローブボックスに移送し、再び120℃で15分間加熱乾燥した。
【0153】
まずp層として、クロロベンゼンにp型半導体材料としてテトラベンゾポルフィリン前駆体(TBP前駆体)を0.5質量%で溶解し、1000rpmでスピンコートし、120℃で30分間加熱することで、テトラベンゾポルフィリン前駆体のテトラベンゾポルフィリンへの変換を試みたが、テトラベンゾポルフィリン特有の緑色の膜への変換は見られなかった。
【0154】
次いでi層として、クロロベンゼンにテトラベンゾポルフィリン前駆体を1.2質量%、PCBMを1.0質量%で溶解した溶液をそれぞれ調製し、1000rpmでスピンコートすることにより、i層を形成した。次いで120℃で30分間加熱を行った。
【0155】
さらにn層として、トルエンに1.0質量%で溶解したPCBM溶液を、膜厚が50nmとなるようにスピンコートし、n層を形成した。次いで120℃で30分間加熱を行った。
【0156】
次に、PEN基板を真空蒸着機に移送し、フッ化リチウムを0.6nm、Alを100nm蒸着し、窒素雰囲気下で30μm厚のアルミニウムホイルとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出した。
【0157】
【化15】

【0158】
〔有機光電変換素子2の作製〕
有機光電変換素子1の作製において、p層及びi層のテトラベンゾポルフィリン前駆体に代えて架橋型ポリチオフェン(非特許文献2を元に合成)に変更した以外は、同様にして有機光電変換素子2を作製した。
【0159】
〔有機光電変換素子3の作製〕
有機光電変換素子1の作製において、p層及びi層のテトラベンゾポルフィリン前駆体に代えて、例示化合物2(nは約20)をジクロロベンゼンに2.0質量%で溶解し溶液と、例示化合物M1(Cuヘキサフルオロアセチルアセトナート(アクロス社製))をジクロロベンゼンに0.2質量%で溶解した溶液に変更した以外は、同様にして有機光電変換素子3を作製した。
【0160】
〔有機光電変換素子4〜8の作製〕
有機光電変換素子3の作製において、p層及びi層の例示化合物2、例示化合物M1に代えて、表2記載の化合物に変更した以外は、同様にして有機光電変換素子4〜8を作製した。
【0161】
〔有機光電変換素子の評価〕
(光電変換効率)
ガラス製の封止キャップとUV硬化樹脂を用いて封止を行った有機光電変換素子に、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、光電変換効率を求めた。
【0162】
〔耐久性〕
さらに、有機光電変換素子の陽極と陰極の間に抵抗を挟んで接続した状態で、上記の100mW/cmの強度の光を100時間照射した後の光電変換効率の保持率(相対効率低下)を、初期の光電変換効率との百分率で評価した。
【0163】
相対効率低下(%)=(1−100時間暴露後の光電変換効率/暴露前の光電変換効率)×100
評価の結果を表2に示す。
【0164】
【表2】

【0165】
表2から、本発明に係る化合物を用いて薄膜形成後にキレート化処理を加えた本発明の有機光電変換素子が、高い光電変換効率及び高い耐久性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0166】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 陽極
23 陰極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクへテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記陰極と陽極の間に、2座以上で金属と配位可能な配位子部分を分子内に2以上有する化合物(a)と、2価以上の金属イオン(b)とを含有し、前記化合物(a)と金属イオン(b)の配位によって形成された架橋構造を有する有機層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【請求項2】
前記化合物(a)の金属に配位する原子の少なくとも一つが窒素原子であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記化合物(a)が、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
【化1】

(式中、Zは置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成する原子群を表し、Z、Zは置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表す。Y、Yは置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群を表し、Yは置換または無置換の5員または6員の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を形成する原子群を表す。R〜Rは水素原子または一価の置換基を表す。Xは酸素原子または硫黄原子を表し、X、Xは炭素原子または窒素原子を表す。)
【請求項4】
前記一般式(1)〜(3)のY、Yで表される置換または無置換の5員または6員の含窒素芳香族複素環を形成する原子群、Yで表される芳香族複素環を形成する原子群が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項3に記載の有機光電変換素子。
【化2】

(式中、X〜Xは置換または無置換の炭素原子または窒素原子表す。Rは水素原子または一価の置換基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(4)において、Xが窒素原子、X及びXが炭素原子であることを特徴とする請求項4に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
前記化合物(a)が前記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項7】
前記一般式(1)において、Xが酸素原子であることを特徴とする請求項6に記載の有機光電変換素子。
【請求項8】
前記化合物(a)の分子量が5000以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項9】
前記金属イオン(b)が2価以上の遷移金属イオンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項10】
前記遷移金属イオンが銅イオンまたはニッケルイオンであることを特徴とする請求項9に記載の有機光電変換素子。
【請求項11】
前記有機層が、バルクへテロジャンクション層であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項12】
前記バルクへテロジャンクション層が、陽極側から順に
(1)p型半導体である前記化合物(a)と、前記金属イオン(b)とが配位することで架橋された層(p層)、
(2)前記化合物(a)と、前記金属イオン(b)と、n型半導体とが混合されたバルクへテロジャンクション層(i層)、
(3)n型半導体単体からなる層(n層)
の3層が積層されたp−i−n構造を有することを特徴とする請求項11に記載の有機光電変換素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機光電変換素子の有機層が、前記化合物(a)を含有する溶液を塗布した後、前記化合物(a)を溶解しない溶媒を用いて前記金属イオン(b)を含有する溶液を塗布することを特徴とする有機光電変換素子の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機光電変換素子からなることを特徴とする太陽電池。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されてなることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−60998(P2011−60998A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209076(P2009−209076)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】