説明

有機凝結剤

【課題】凝結性および脱水性に優れ且つCOD低減率が高い両性有機凝結剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるカチオン性単量体を5〜50質量%含む(共)重合体(A)と、同じカチオン性単量体を60〜100質量%含む(共)重合体(B)との混合物から成り、共重合体(A)におけるカチオン性単量体の質量%:aと(共)重合体(B)におけるカチオン性単量体の質量%:bとの関係がb/a≧2であり、共重合体(A)と(共)重合体(B)の混合比率が1:9〜9:1である有機凝結剤。


(上記の一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基、ベンジル基を表し、Aは酸素原子またはNH基を表し、Bは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機凝結剤に関し、詳しくは、下水、し尿、工場廃水などの有機性成分からなる汚泥および排水の処理に使用するカチオン系のブレンド型有機凝結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水やし尿、工場廃水に由来する有機性汚泥およびその処理水、製紙工場などの排水処理には無機凝結剤(例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄など)が広く使用されていたが、無機凝結剤は排水に対して莫大な添加量が必要とされることから固液分離後のスラッジ量が増大するという問題があった。これに対して、有機凝結剤としてエピクロルヒドリンとアミンの重縮合物(特許文献1参照)や、ジアリルジメチルアンモニウムハライド重合体など(特許文献2,3参照)を使用することにより、スラッジ量を低減させ、排水処理のコストを低減させる提案がなされてきた。
【0003】
また、上記の廃水処理においては、昨今の汚泥および排水量の増加に対応するために処理速度を向上させることが不可欠になっており、そのためにより強固なフロックを生成することが望まれている。また、脱水工程後の脱水ケーキを焼却または埋め立て処分するためのコストを低減させるために脱水ケーキ中の含水率を低減させる性能、さらには脱水工程後の分離水の脱色やCOD低減、濁度の低減についても有機凝結剤の性能として求められている。
【0004】
しかしながら、上記提案のカチオン型有機凝結剤を単独使用した場合、これらの要求を十分に満足させることはできず、上記提案のカチオン型有機凝結剤1種類と高分子凝集剤を併せた処理においてもまだ十分な性能を発現することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭38−26794号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2001−38104号公報
【特許文献3】特開2001−270906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は凝結、COD低減、脱水性に優れるカチオン系のブレンド型有機凝結剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、一般式(1)で表されるカチオン性単量体を5〜50質量%含む共重合体(A)と、同じく一般式(1)で表されるカチオン性単量体を60〜100質量%含む(共)重合体(B)との混合物から成り、共重合体(A)におけるカチオン性単量体の質量%:aと(共)重合体(B)におけるカチオン性単量体の質量%:bとの関係がb/a≧2であり、共重合体(A)と(共)重合体(B)の混合比率が1:9〜9:1であることを特徴とする有機凝結剤に存する。
【0008】
【化1】

(上記の一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基、ベンジル基を表し、Aは酸素原子またはNH基を表し、Bは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明のカチオン系ブレンド型有機凝結剤は、製紙排水などの工業排水などに添加することにより、優れた凝結性、脱色およびCOD低減の効果を表し、無機凝結剤の添加量を大幅に低減することにより、発生するスラッジ量を大幅に低減することが出来る。さらに汚泥または排水中に添加、混合することで優れた凝結性を示し、高分子凝集剤と併用することで優れた脱水性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ポリマー(A)水溶液にポリマー(B−1)を追加したときの粘度変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のカチオン系ブレンド型有機凝結剤は、一般式(1)で表されるカチオン性単量体を5〜50質量%含む(共)重合体(A)と、同じく、一般式(1)で表されるカチオン性単量体を60〜100質量%含む(共)重合体(B)の混合物であり、(共)重合体(A)におけるカチオン性単量体の質量%:aと(共)重合体(B)におけるカチオン性単量体の質量%:bの関係がb/a≧2であるから成ることを特徴とする。
【0012】
【化2】

(上記の一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基、ベンジル基を表し、Aは酸素原子またはNH基を表し、Bは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)
【0013】
上記のR及びRの炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられが、特にメチル基が好ましい。上記のBにおける炭素数1〜4のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられ、特にエチレン基が好ましい。上記の陰イオンXの具体例としては、Cl−,Br−等のハロゲンイオンの他、1/2SO2−の硫酸基が挙げられる。
【0014】
化学式(1)に表されるカチオン性単量体としてはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系カチオン単量体などが挙げられ、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩酸塩及び硫酸塩などの3級塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩化メチル付加物などのハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル等のハロゲン化アリール付加物などの4級塩などが挙げられる。また、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の塩酸塩及び硫酸塩などの3級塩、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル付加物などのハロゲン化アルキル付加物及び塩化ベンジル付加物などのハロゲン化アリール付加物などの4級塩も挙げられる。
【0015】
本発明の有機凝結剤においては、(共)重合体(A)におけるカチオン性単量体の質量%:aと(共)重合体(B)におけるカチオン性単量体の質量%:bの関係がb/a≧2であることが重要である。その理由は、b/aが2未満であると(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の組成差が少なくなり、2成分を混合する効果が低下するためである。
【0016】
また、本発明の有機凝結剤の0.5質量%水溶液粘度は、通常1500mPa.s.以下、好ましくは1200mPa.s.以下である。その理由は、0.5質量%水溶液粘度が1500mPa.s.を超えると処理水中の汚濁成分との反応速度が低下する傾向にあるためである。
【0017】
(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の混合比率(質量比率)は、1:9〜9:1である。その理由は、混合比率が上記の範囲外であると(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の混合による効果が発揮されないためである。
【0018】
(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の何れかの0.5質量%水溶液粘度が200mPa.s.以下であることが好ましい。その理由は、何れか一方の0.5質量%水溶液粘度が200mPa.s.以下であると、(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の混合比率が1:9〜9:1である本発明の有機凝結剤の粘度が低くなり、取扱性が向上するためである。
【0019】
本発明の好ましい態様は次の通りである。すなわち、(共)重合体(A)として、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートハロゲン化アルキル付加物とアクリルアミドの共重合体が好ましく、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド付加物とアクリルアミドの共重合体が特に好ましく、(共)重合体(B)として、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートハロゲン化アルキル付加物の重合体が好ましく、ジメチルアミノエチルメタアクリレートメチルクロライド付加物の重合体が特に好ましい。また、10≧b/a≧4が好ましく、7≧b/a≧4が特に好ましい。(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の混合比率は6:4〜1:9が特に好ましい。(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の0.5質量%水溶液粘度は、好ましくは200mPa.s.以下であるが、特に好ましくは、(共)重合体(A)が50〜150mPa.s.、(共)重合体(B)が10〜100mPa.s.である。この好ましい態様においては、凝結作用の向上だけではなく、(共)重合体(A)と(共)重合体(B)を混合しても溶解液の粘度の上昇が抑えられることから、取り扱い性のさらなる向上となる。
【0020】
本発明の有機凝結剤は、凝結作用をさらに向上させるために、本発明の効果を阻害しない範囲で他の凝結剤(有機および無機凝結剤)を併用することが出来る。他の有機凝結剤としては、エピクロルヒドリンとジメチルアミン重縮合物(塩酸塩)、ポリアリルアミン(塩酸塩)、ポリエチレンイミン(塩酸塩)、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化イオウの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合体、ジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体などが挙げられる。無機凝結剤としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、消石灰などが挙げられる。これらの他の凝結剤のうち、濾液清澄度の観点から、さらに好ましいのは無機凝結剤、特に好ましいのは、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄である。
【0021】
また、本発明の有機凝結剤は、必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を併用することが出来る。
【0022】
本発明の有機凝結剤を構成する(共)重合体(A)と(共)重合体(B)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、ラジカル重合法、例えば水、溶液滴下重合法、逆層懸濁重合法、水溶液光重合法、沈殿重合法、逆層乳化重合法、静置断熱重合法が採用できる。これらのうち工業的観点からは水溶液滴下重合と水溶液光重合法が好ましく、この中でも水溶液光重合法が特に好ましい。
【0023】
水溶液光重合法は重合開始前の単量体反応液を均一にシート状にし、光開始剤を使用して可視光あるいは紫外光を照射することにより行われる。水溶液光重合方法では、通常、共重合が終了すると、含水ゲル状で化学式(1)で表される単量体共重合体が得られる。
【0024】
上記の光開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。光開始剤の添加量は、単量体反応液100質量部に対して0.001〜0.1質量部であることが好ましい。光開始剤の添加量が0.001質量部以上であれば、充分な共重合速度および共重合率を確保でき、生産性および品質を向上させることが出来る。また、光開始剤の添加量が0.1質量部以下であれば、共重合反応の暴走および共重合体の品質低下を防止できる。
【0025】
また、共重合を行う際には、必要に応じて連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0026】
本発明の有機凝結剤は、各種廃水に適用でき、特に製紙工場廃水の処理に好適に使用することが出来る。廃水中の懸濁物を凝集させる廃水の処理方法としては、例えば、有機凝結剤を廃水に添加、混合して懸濁粒子を有機凝結剤により凝結させた後、高分子凝集剤、特にアニオン性の高分子凝集剤を添加、混合することでフロックを形成させ、固液分離を行う方法が挙げられる。
【0027】
本発明の有機凝結剤を使用した排水の処理方法は、有機凝結剤の添加により排水内の汚濁物質を凝結して固液分離を行う方法であれば特に限定されることはない。例えば、以下に記載の処理法が挙げられる。
【0028】
(1)排水や汚泥に有機凝結剤を添加、攪拌し、必要によりpH調整した後に凝結物を固液分離する方法。
【0029】
(2)排水や汚泥に有機凝結剤および無機凝結剤を添加、攪拌し、必要によりpH調整した後に凝結物を固液分離する方法。
【0030】
(3)排水や汚泥に有機凝結剤を添加、攪拌し、必要によりpH調整し、凝結させた後、高分子凝集剤を添加することで粗大フロックを形成させた後に固液分離する方法。
【0031】
(4)排水や汚泥に有機凝結剤および無機凝結剤を添加、攪拌し、必要によりpH調整し、凝結させた後、高分子凝集剤を添加することで粗大フロックを形成させた後に固液分離する方法。
【0032】
なお、固液分離の方法としては、例えば、重力沈降、膜濾過、カラム濾過、加圧浮上、濃縮装置、脱水装置(例えば遠心分離機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機など)が利用できる。
【0033】
上記の処理方法の中では、よりフロックが粗大化し、固液分離が容易になるという観点から(3)及び(4)の方法が好ましい。また、処理法(2)及び(4)おいて無機凝結剤を使用する場合、当該無機凝結剤としては前記の無機凝結剤が挙げられ、2種類以上を併用することも可能である。
【0034】
上記の処理法(3)及び(4)で使用される高分子凝集剤としては、特に限定は無く、カチオン性、ノニオン性、アニオン性、両性の何れでもよく、またこれらを併用することも出来る。
【0035】
上記のカチオン性高分子凝集剤としては、ポリエチレンイミン、ポリアミジン、ポリビニルアミンおよびその誘導体、ポリ(メタ)アクリルアミドのマンニッヒ変性物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級化物の単独重合体または(メタ)アクリルアミド等の他の単量体との共重合体、その他化学式(1)で示されるカチオン性モノマーを含む(共)重合体などが挙げられる。
【0036】
前記のノニオン性高分子凝集剤としてはポリアクリルアミド等が挙げられる。前記のアニオン性高分子凝集剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリルアミドの加水分解物、(メタ)アクリルアミド・(メタ)アクリル酸ナトリウム共重合体、(メタ)アクリルアミド・(メタ)アクリル酸ナトリウム・2−アクリルアミド−2−メチル−プロパン−1−スルホン酸ナトリウム共重合体、(メタ)アクリルアミド・2−アクリルアミド−2−メチル−プロパン−1−スルホン酸ナトリウム共重合体、その他前記のアニオン性モノマーを含む共重合体などが挙げられる。両性高分子凝集剤としては、前記のカチオン性モノマーと前記のアニオン性モノマー、および必要によりノニオン性モノマーの共重合体などが挙げられる。
【0037】
上記の中で、各種工場廃水などの凝集沈殿処理において、有機凝結剤や無機凝結剤のカチオン成分と反応し、粗大フロックを形成して沈降させ易いという観点から、アニオン性高分子凝集剤を使用することが好ましい。また、有機性汚泥処理において、懸濁粒子のアニオン電荷の荷電中和能力を有するとの観点から好ましいのは、カチオン性高分子凝集剤および両性高分子凝集剤である。
【0038】
前記の処理法において、有機凝結剤を廃液に添加する方法としては、均一混合の観点から有機凝結剤を水溶液にした後に汚泥、または排水に添加して十分に攪拌することが好ましいが、有機凝結剤をそのまま排水に添加して、攪拌、混合してもよい。粉末状の有機凝結剤を水溶液として使用する場合は、溶解する有機凝結剤の濃度は、通常0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%である。有機凝結剤の溶解方法および溶解後の希釈方法は、特に限定されないが、例えば、予め秤量した水を攪拌モーター等の攪拌装置を使用して攪拌しながら所定量の有機凝結剤を加えて、10分〜5時間攪拌して溶解する方法などが採用される。
【0039】
上記の処理法における有機凝結剤の使用量は、汚泥または排水の種類、懸濁粒子の含有量および使用される有機凝結剤の種類によって異なり、特に限定はされないが、処理後の濾液の濁度を向上させる観点から、処理する廃水に対し、通常0.01〜10ppm、好ましくは0.5〜8ppmである。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、また、例中の「%」は、特に断らない限り、質量%を示す。
【0041】
<(共)重合体成分(A)及び(共)重合体成分(B)の製造>
製造例A−1:
水溶性カチオン性単量体としてジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(以下「DME」と略す)水溶液(大阪有機化学工業社製、純度79%)59gおよびアクリルアミド(以下「AAM」と略す)水溶液(ダイヤニトリックス社製、純度50%)1076gを、さらに、連鎖移動剤として、単量体反応液の総質量に対して、次亜リン酸12ppm(以下「HA」と略す)を、2000mL褐色耐熱瓶に投入し、pHが4.5になるように1mol/L硫酸で調整し、単量体反応液(DME:AAM=8:92(質量%比))を調製した。
【0042】
さらに、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Ciba社製「DAROCUR 1173」(以下「D−1173」と略す)を、単量体反応液の総質量に対して、80ppmとなるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながら溶液温度を16℃に調節した。その後、単量体反応液をステンレス反応容器に移し、容器の上方をガラス板で覆い、容器の下方から16℃の水を噴霧しながら、ケミカルランプを8.5W/mの照射強度で照射した。照射開始から3分後に照射強度を0.5W/mとしてさらに20分間照射した。さらに照射強度を30W/mにして10分間照射して、共重合を行った。これにより、板状の共重合体を得た。この板状の共重合体を容器から取り出し、約0.5cm角以下まで解砕した。これを60℃で16時間熱風乾燥後、粉砕して粉末状の共重合体成分(A−1)を得た。得られた粉末は吸湿を防ぐために蓋付きのポリ容器に保管した。
【0043】
<(共)重合体成分の粘度>
得られた(共)重合体成分(A−1)2.5gを脱イオン水497.5gに溶解し、0.5%水溶液500gを調製した。B型粘度計(東機産業社製)を使用し、水溶液粘度に応じたローターを使用して、温度25℃、回転速度60rpmの条件で、5分後のポリマー水溶液の粘度を測定した。
【0044】
製造例A−2〜8、B−1〜7:
表1に示すように、単量体の種類および量、連鎖移動剤の種類および量、D1173の量を変更した以外は、製造例A−1と同様な操作を行い、(共)重合体成分(A−2〜7、B−1〜7)を得た。なお、A−4とA−8の単量体濃度は水で希釈して40%とした。他は水で希釈しなかった。得られた(共)重合体成分の粘度の測定結果を表1に示す。
【0045】
<試験2:有機凝結剤の評価−1>
製紙工業廃水処理場−Iから採取したDIP排水、冷却排水などからなる総合排水−I(pH:6.85、SS分:2500ppm)を使用した。総合排水−(I)500mLを500mLのビーカーに採取した。これに、硫酸バンド600ppmを加えた後に表1に示す有機凝結剤の1%溶液を添加し、30秒間攪拌する。その後に表2記載のアニオン性凝集剤A(ダイヤニトリックス社「AP741B」)を2ppm加えてフロックを形成させ、フロック径を計測した。アニオン性凝集剤を加えた後、2分間の攪拌時間が経過したら攪拌を停止、さらにその2分後に処理液の上澄みをシリンジにて採取し、濁度計(ラコムテスター濁度計「TN−100」)にて上澄み濁度(NTU)を計測した。
【0046】
<試験3:有機凝結剤の評価−2>
製紙工業廃水処理場−IIから採取したDIP排水、冷却排水などからなる総合排水−II(pH:6.7、SS分:3100ppm)を使用した。総合排水−(II)500mLを500mLのビーカーに採取した。これに、硫酸バンド450ppmを加えた後に表1に示す有機凝結剤の1%溶液を添加し、ジャーテスターにより30秒間攪拌する。その後に表2記載のアニオン性凝集剤B(ダイヤニトリックス社「AP335B」)を5ppm加えてフロックを形成させ、目視によりフロック径を計測した。アニオン性凝集剤を加えた後、2分間の攪拌時間が経過したら攪拌を停止、さらにその2分後に処理液の上澄みをシリンジにて採取し、濁度計(ラコムテスター濁度計「TN−100」)にて上澄み濁度(NTU)を計測した。
【0047】
実施例1〜15:
表2に示す実施例1〜11の割合で前記の(共)重合体成分(A−1)〜(A−8)と(共)重合体成分(B−1)〜(B−7)とを混合し、試験2にて評価し、その結果をそれぞれ実施例1〜11として表2に示す。また、同様に、試験3にて評価した結果を実施例12〜15として表2に示す。
【0048】
比較例1〜15:
表3に示す比較例1〜12の割合で前記の(共)重合体(A−1)〜(A−8)と(共)重合体(B−1)〜(B−7)とを混合し、試験2にて評価し、その結果をそれぞれ比較例1〜12として表3に示す。また、同様に、試験3にて評価した結果を比較例13〜15として表3に示す。
【0049】
参考例2:
(共)重合体(A−6)と(B―1)を混合した場合の粘度を表1に示す。
【0050】
表2の結果から、混合排水−I、−IIの何れにおいても一般式(1)で表されるカチオン性単量体を5〜50%含む共重合体(A)と、一般式(1)で表されるカチオン性単量体を60〜100%含む(共)重合体(B)との混合物から成り、共重合体(A)におけるカチオン性単量体の%:aと(共)重合体(B)におけるカチオン性単量体の%:bの関係がb/a≧2である本発明の有機凝結剤が高い効果を示すことが明らかである。
【0051】
参考例1:
図1に(共)重合体(A−3)と(B―1)を混合した場合の粘度を示す。成分(A)と成分(B)の0.5%水溶液粘度がいずれも200mPa.s.の場合には成分(B―1)の混合比率を高めても粘度の上昇が見られないことがわかる。
【0052】
参考例2:
図1に(共)重合体(A−6)と(B―1)を混合した場合の粘度を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるカチオン性単量体を5〜50質量%含む共重合体(A)と、同じく一般式(1)で表されるカチオン性単量体を60〜100質量%含む(共)重合体(B)との混合物から成り、共重合体(A)におけるカチオン性単量体の質量%:aと(共)重合体(B)におけるカチオン性単量体の質量%:bとの関係がb/a≧2であり、共重合体(A)と(共)重合体(B)の混合比率が1:9〜9:1であることを特徴とする有機凝結剤。
【化1】

(上記の一般式(1)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、R及びRは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Rは、水素原子、メチル基、ベンジル基を表し、Aは酸素原子またはNH基を表し、Bは炭素数1〜4のアルキレン基を表し、Xは陰イオンをそれぞれ表す。)
【請求項2】
0.5質量%の水溶液粘度が1500mPa.s.以下である請求項1記載の有機凝結剤。
【請求項3】
共重合体(A)と(共)重合体(B)の何れかの0.5質量%の水溶液粘度が200mPa.s.以下である請求項1に記載の有機凝結剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−91079(P2012−91079A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238317(P2010−238317)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】