説明

有機化合物におけるまたはそれに関する改善

XとYが本明細書に記載されているのと同じ意味を有する式(I)で表されるエステル化フマル酸を含む、口腔用の悪臭抑制製剤が開示される。さらに、本発明はそれらの製造方法と、口腔悪臭を抑制するもしくは減少させるためのその使用にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フマル酸エステル類を含む、口腔に使用する悪臭抑制剤、その調製方法、および口腔悪臭の予防または抑制のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔悪臭は口腔内で微生物によって形成される。口臭の原因となる主な要素は、例えば硫化水素(HS)、メタンチオール(CHSH)、ジメチルメルカプタン((CHS)などを含む揮発性硫黄化合物(VSC)を含む。特にメチルメルカプタンは、空気中の検出可能な臭気物質の気体濃度の最小値として定義されるその臭気閾値が極めて低いことから、不快な口臭の一因となる主要化合物として知られている。唐辛子や摂取したにんにくなどに含まれる、アリルメルカプタンなどの硫黄化合物もまた、口腔悪臭の原因である。
【0003】
口腔悪臭に対抗するいくつかの可能性が文献に記載されてきた。1つの可能性としては、強烈な香りを含む口腔製品を用いて口腔悪臭を隠すことである。他の選択肢としては、ミント油、チモール、ユーカリプトール、オイゲノールなどの天然成分やクロロヘキシジンなどの人工的な化合物である抗菌剤を、単独でもしくはそれらを組み合わせて含む口腔ケア製品を用いることである。口臭に対抗するさらなる方法は、1種または2種以上の関係する細菌酵素の酵素抑制を行うことによって、そもそも揮発性硫黄化合物が形成されないようにすることである。
【0004】
口腔悪臭に対抗するさらなる選択肢は、揮発性硫黄化合物を捕捉する能力を有する化合物を用いることである。例としては亜鉛塩や、緑茶に存在するような種類のポリフェノールなどが挙げられる。フマル酸エステルの、化学反応によって周囲の空気中に存在する悪臭物質と結合する能力は長い間知られてきた。例えば、US3077457は、フマル酸ジブチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ジゲラニルやフマル酸ジベンジルなどのフマル酸のジエステルを含む組成物を空間に噴霧することによって、空間を消臭することを記載している。これらの組成物はたばこの煙のにおいや台所のにおいを低減することがわかっていた。空気の消臭にフマル酸C1〜3ジアルキルおよびフマル酸C2〜3ジアルケニルを用いることはGB1401550に記載されている。一部の芳香族不飽和カルボン酸エステルとフマル酸アルキルとの組み合わせを悪臭抑制物質として使用することはWO02/051788に開示されている。
【0005】
従来技術において知られている口腔悪臭に対抗する方法は、部分的に成功しているにすぎず、口腔悪臭に対してより効果的なさらなる選択肢が依然として必要である。
【発明の開示】
【0006】
驚くべきことに、本発明者らは、今回、2つの異なる機構を組み合わせて口腔悪臭を中和する能力を有する新たな化合物群を見出した。一方において、本発明の化合物は揮発性硫黄化合物を化学的に結合する能力を有し、もう一方で本化合物は感覚受容性(organoleptic)化合物を少量、長期にわたって放出する能力を有する。放出された感覚受容性化合物は、次いで口腔悪臭を隠すことができる。膨大な研究の結果、フマル酸誘導体のうち、十分な親水性を有する化合物だけが口腔内で口腔悪臭に対して活性を示す能力を有することが明らかになった。
【0007】
したがって本発明は、その側面の1つにおいて、式(I)の化合物を含む口腔組成物に関する。
【化1】

式中、
Xは、8〜15個の炭素原子を含む感覚受容性アルコールの残基であるか、または
Xは、2〜7個の炭素原子を含むアルコール、ジオール、トリオールもしくはポリオールの残基であり、
Yは、8〜15個の炭素原子を含む感覚受容性アルコールの残基であり、
式(I)で表される化合物は、4.5以下のCLogP値を有し、
2つのカルボキシル基間の二重結合は、好ましくはE配置である)
【0008】
ここで「CLogP」なる用語は、BioByte CorporationからのCLogPアルゴリズムに基づくCambridgeSoft Corporation, Cambridge(USA)からのChemDraw(登録商標)Ultra 8.0 Softwareで計算した、計算上のn−オクタノール/水分配係数として用いる。
【0009】
好ましい態様において、本発明は式(I)の化合物を含む口腔組成物に関する。
式(I):
【化2】

式中、
Xは、式R−OHの感覚受容性アルコールのR−O残基であり、式中、R
I)任意に1または2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含む、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C15の炭化水素残基
II)脂環式C、脂環式C、フェノール、二環式C、フラン、および1つの環員が酸素であるスピロ環式Cから選択される1つの環構造を含むC〜C13の炭化水素残基であって、このC〜C13の炭化水素残基が任意に、1または2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含むもの
からなる群から選択されたものであるか、または
【0010】
Xは、アスコルビン酸もしくはアルカノールR−OHのR−O残基であり、式中、Rは、任意に1または2以上のヒドロキシル、エーテルおよび/またはカルボニル基を含む、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分枝鎖のC〜Cアルキルであるか、または、Rは任意に1または2以上のヒドロキシルおよび/またはカルボニル基を含むC〜Cのシクロアルキルであり、
【0011】
YはR−OHという式を有する感覚受容性アルコールのR−O残基であり、この式中のR
I)任意に1もしくは2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含む、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C15の炭化水素残基
II)脂環式C、脂環式C、フェノール、二環式C、フラン、および1つの環員が酸素であるスピロ環式Cから選択される1つの環状構造を含むC〜C13の炭化水素残基であって、このC〜C13の炭化水素残基が任意に、1または2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含むもの
からなる群から選択されるものであり、
【0012】
式(I)で表される化合物は、4.5以下のCLogP値を有し、
2つのカルボキシル基間の二重結合は、好ましくはE配置である、
で表される化合物。
【0013】
残基XおよびYがそれぞれ由来する感覚受容性アルコールR−OH/R−OHの例は、
2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール、2−イソプロペニル−5−メチル−シクロヘキサン−2−オール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、5−イソプロピル−2−メチル−フェノール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、5−イソプロペニル−2−メチル−シクロヘキサ−2−エノール、1−イソプロピル−4−メチル−シクロヘキサ−3−エノール、2−ヒドロキシ−コハク酸ジエチルエステル、5−イソプロペニル−2−メチル−シクロヘキサノール、2−イソプロペニル−5−メチル−シクロヘキサノール、2−メチル−1−フェニル−プロパン−2−オール、4−エチル−2−メトキシ−フェノール、4−アリル−2−メトキシ−フェノール、3,7,11−トリメチル−ドデカ−2,6,10−トリエン−1−オール、
【0014】
1,3,3−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、3,7−ジメチル−オクタ−2,6−ジエン−1−オール、4−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ブタン−2−オン、(4−イソプロペニル−シクロヘキサ−1−エニル)−メタノール、2−フェニル−プロパン−1−オール、3,7,11−トリメチル−ドデカ−1,6,10−トリエン−3−オール、(4−イソプロピル−フェニル)−メタノール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)−ブタン−2−オン、6−イソプロピル−3−メチル−シクロヘキサ−2−エノール、3,5,5−トリメチル−ヘキサン−1−オール、2,6,10,10−テトラメチル−1−オキサ−スピロ[4.5]デカン−6−オール、5−イソプロピル−2−メチル−シクロヘキサノール、4−イソプロピル−1−メチル−シクロヘキサ−3−エノール、6,6−ジメチル−2−メチレン−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オール、4,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−3−エン−2−オール、
【0015】
4−ヒドロキシメチル−2−メトキシ−フェノール、2−(2,3,3−トリメチル−シクロペンタ−3−エニル)−エタノール、2−(5−メチル−5−ビニル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−プロパン−2−オール、3,3,5−トリメチル−シクロヘキサノール、3−ヒドロキシ−4−フェニル−ブタン−2−オン、2−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−5−メチル−シクロヘキサノール、3,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン−3−オール、3,7−ジメチル−6−オクテノール、メチル2−ヒドロキシベンゾアート、エチル2−ヒドロキシベンゾアート、exo−1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、2−エチル−1,3,3−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、
【0016】
1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、(2−メトキシ−4−プロパ−1−エニル)フェノール、および6,6−ジメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン−2−メタノール
である。
【0017】
残基XおよびYがそれぞれ由来する感覚受容性アルコールR−OH/R−OHのさらなる例は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれるS. Arctander perfume and Flavor Chemicals Vols. 1 and 2, Arctander, Monclair, NJ USA 1989に記載されている。
【0018】
メチル2−ヒドロキシシクロヘキサンカルボキシラートなどのアルコールは感覚受容特性を持たないとされており、したがって感覚受容性アルコールの定義には含まれない。
【0019】
アルカノールR−OHの例としては、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、乳酸、アルファ−グルコース、およびアスコルビン酸がある。
【0020】
特定の態様は、XとYが両方とも感覚受容性アルコールの残基である式(I)で表される化合物である。かかる化合物の例としては、メチル2−((2E)−3−(((Z)−ヘキサ−3−エニロキシ)カルボニル)アクリロイルオキシ)ベンゾアート、(Z)−ヘキサ−3−エニル2−メチル−4−オキソ−4H−ピラン−3−イルフマラート、および2−エトキシ−4−ホルミルフェニル(Z)−ヘキサ−3−エニルフマラートおよび(Z)−ヘキサ−3−エニル2−メトキシ−4−(3−オキソブチル)フェニルフマラートがある。
【0021】
さらなる特定の態様としては、Xがエタノールの残基、すなわちXがCH−CH−Oであり、Yが4−アリル−2−メトキシ−フェノールおよび2−イソプロピル−5−メチル−フェノールから選択される感覚受容性アルコールR−OHのR−O残基である、式(I)で表される化合物、
【0022】
Xがプロピレングリコールおよび乳酸から選択されるアルカノールの残基であり、Yが2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、4−アリル−2−メトキシ−フェノール、2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキサン−1−オール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、および6,6−ジメチル−2−メチレン−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オールから選択される感覚受容性アルコールR−OHの残基R−Oである、式(I)で表される化合物、
【0023】
Xがソルビトールの残基、例えばXが−O−CH−(CH(OH))−CHOHであり、Yが2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、4−アリル−2−メトキシ−フェノール、2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキサン−1−オール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、および6,6−ジメチル−2−メチレン−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オールから選択される感覚受容性アルコールR−OHの残基R−Oである、式(I)で表される化合物、
【0024】
Xがグリセリンの残基、例えばXが−O−CH−CH(OH)−CHOHであり、Yが2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、4−アリル−2−メトキシ−フェノール、2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキサン−1−オール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、および6,6−ジメチル−2−メチレン−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オールから選択される感覚受容性アルコールR−OHの残基R−Oである、式(I)で表される化合物、
【0025】
およびXがアスコルビン酸の残基、例えばXが
【化3】

であり、Yが2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、4−アリル−2−メトキシ−フェノール、2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキサン−1−オール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、および6,6−ジメチル−2−メチレン−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オールから選択される感覚受容性アルコールR−OHの残基R−Oである、式(I)で表される化合物がある。
【0026】
本発明の特定の態様においては、口腔組成物は、2,3−ジヒドロキシプロピル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラート(1)、エチル2−メチル−4−オキソ−4H−ピラン−3−イルフマラート(2)、2−エトキシ−4−ホルミルフェニルエチルフマラート(3)、メチル2−((E)−3−(エトキシカルボニル)アクリロイルオキシ)ベンゾアート(4)、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラート(5)、シンナミルエチルフマラート(6)、およびエチル(Z)−ヘキサ−3−エニルフマラート(7)からなるリストから選択される化合物を含む。
【0027】
式(I)で表される化合物は本質的に無臭であるが、口腔に適用されるとVSCと化学的に結合し、その後唾液中に存在するエステラーゼの触媒作用によるエステル加水分解によって感覚受容性アルコールを放出するように変質する。この新たに生成された感覚受容性化合物はマスキング剤としての役目を果たし、放出された化合物の性質次第で、抗菌剤としての役目も果たし得る。口臭マスキング剤としても抗菌剤としても作用する能力を有する感覚受容性化合物としては、例えば、メチルサリチラート(メチル2−ヒドロキシベンゾアート)、メントール(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール)、イソオイゲノール((2−メトキシ−4−プロパ−1−エニル)フェノール)、およびチモール(2−イソプロピル−5−メチル−フェノール)がある。これらの化合物は、口腔内に直接使用した場合、幾分不快な味がすることが多い。したがって、式(I)で表される化合物によってもたらされる、かかる化合物の長期にわたる制御された放出は、望ましいことである。
【0028】
本明細書中で使用される「口腔組成物」なる用語は、口の中に入れることが意図され、したがって唾液と接触する状態になる、食物および非食物組成物のことを言う。かかる組成物には、チューインガム、飴、可食性フィルム、特にブレスストリップ、および飲料が含まれる。特定の態様において、「口腔組成物」なる用語は、チューインガムおよび口腔ケア製品、例えば歯磨き粉、マウスウォッシュ、口腔スプレーおよびうがい組成物、飴、ドロップ、トローチなどのなどの口腔衛生に適した組成物のことを言う。
【0029】
ブレスストリップは、口腔内に配置し、そこに芳香剤(flavourant)や口腔清涼化剤(breath-freshening agent)などの活性剤を投与する可食性フィルムである。
【0030】
本発明における口腔組成物には、有効量の、上記で定義した式(I)で表される化合物が少なくとも1種含まれている。例えば、本発明における口腔組成物には、口腔組成物の総重量に対して約0.05重量%〜約2重量%、例えば約0.4重量%〜約1重量%の式(I)で表される化合物が少なくとも1種含まれている。
【0031】
口腔組成物には、当該技術分野でよく知られた付加的な成分および賦形剤、特に所望のフレーバーアコードをもたらすためのフレーバー成分および/または清涼な口内感覚をもたらすための冷却剤が含まれてもよい。既知のフレーバー成分および冷却剤の例は、FEMA(Falvour and Extracts Manufactures Association of the United States)出版物の1つ、またはFEMAから入手可能で、FEMAから出版され、1965年から現在までのすべてのFEMA GRAS(Generally Regarded As Safe)出版物、特に出版物GRAS1〜21(最新のものは2003年に出版されたGRAS21)を含むそれらの編集物、またはAllured Publishing Inc.出版のAllured’s Flavor and Fragrance Materials 2004において見出すことができる。口腔ケア製品用の既知の賦形物の例はまた、Gaffar, Abdul, Advanced Technology, Corporate Technology, Department of Oral Care, Colgate-Palmolive Company, Piscataway, NJ, USA. 編者:Barel, Andre O.; Paye, Marc; Maibach, Howard I.、出版社:Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y、Handbook of Cosmetic Science and Technology (2001)619ページから643ページ、およびM.S. BalsamおよびE. Sagarin編、Wiley Interscience出版、1972年発行のCosmetics: Science and technology第2版の423ページから563ページに見出すことができる。
【0032】
特定の冷却剤の例には、メントール、メントーン、イソプレゴール、N−エチルp−メンタンカルボキシアミド(WS−3)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、(WS−23)、メンチルラクテート、メントーングリセリンアセタール(Frescolat(登録商標)MGA)、モノ−メンチルスクシナート(Physcool(登録商標))、モノ−メンチルグルタラート、O−メンチルグリセリン(CoolAct(登録商標)10)、2−sec−ブチルシクロヘキサノン(Freskomenthe(登録商標))、および2−イソプロピル−5−メンチル−シクロヘキサンカルボン酸(2−ピリジン−2−イル−エチル)−アミドなどが含まれてよいが、これに限定されるものではない。さらなる冷却剤の例は、例えば、参照により組み込まれるWO2006/125334やWO2005/049553で見出すことができる。
【0033】
例として、歯磨き粉用組成物には活性成分、すなわち式(I)で表される化合物に加え、口腔殺菌剤、研磨剤、保湿剤、洗浄剤、結合剤、起泡剤、甘味剤、防腐剤、緩衝剤、フレーバーおよび冷却剤などの通常歯磨き粉に使用される他の化合物が含まれてもよく、当業者に知られた手順に従って調製することができる。
【0034】
発明者の知る限りでは、式(I)で表される化合物はかつてどの文献にも記載されたことがなく、したがってそれ自体新規なものである。したがって、本発明は、さらなる側面において、上記で定義した式(I)で表される化合物に関する。
【0035】
本発明の化合物は、対称および非対称フマル酸ジエステルの既知の製造方法によってそれぞれ製造することができる。Xがエタノールの残基、すなわちRがエチルである本発明の化合物については、(E)エチル3−(クロロカルボニル)アクリラートと、Yが上述したのと同じ意味を有する感覚受容性アルコールY−Hとを標準的なエステル化反応で反応させる。
【0036】
Xがエタノールの残基以外のものである式(I)で表される化合物は、下記スキーム1に概説された一般的な手順に従って製造できる。YとXは上述したのと同じ意味である。
【化4】

【0037】
無水マレイン酸2は、熱反応もしくは触媒の存在によって、X−HもしくはY−Hにより開環される。得られたマレイン酸モノエステル3は、その後塩化チオニルもしくは同様の塩素化試薬と反応させ、これが二重結合の同時的なE/Z−異性化反応の下に遊離カルボキシル基を酸塩化物に変換させ、対応する(E)−3−(クロロカルボニル)アクリル酸エステル4を生成する。この酸塩化物を、次に、無水マレイン酸をX−Hで開環した場合はY−Hでエステル化し、無水マレイン酸をY−Hで開環した場合はX−Hでエステル化する。X−Hがジオール、トリオールまたはポリオールの場合、反応しない1または複数の水酸基は1または複数の保護基P、例えば、アセタール、ケタール、エーテルまたはシリルエーテルなどで任意に保護することができ、これはその後、最終的な脱保護反応(スキーム1)、例えば、アセタールもしくはケタール部分の酸に触媒された開裂、シリルエーテル基のフッ化物を介した開裂、または当業者に知られた手順に従った不安定なエーテル基の除去において除去される。
【0038】
工程3のエステル化を単一の化合物Y−HもしくはX−Hで行う代わりに、例えばメントール、ネオメントール、イソプレゴール、ネオイソメントール、およびラバンデュロールなどの、感覚受容性アルコールの混合物を含むミント油を、式(I)で表される化合物の混合物を得るために添加することもでき、これを口腔内に使用したときに、ミント油に存在したのと同様の比率で個々の感覚受容性アルコールを放出することを可能にする。
【0039】
あるいは、フマル酸モノエステル6を当業者に知られた方法で用意し、これをスキーム2(YとXは上述したのと同じ意味を有する)に示すとおりにX−Hでエステル化してもよい。式(I)で表される化合物をもたらすエステル化工程は、リパーゼなどの生体触媒を用いて行うことができる。
【化5】

【0040】
下記の非限定例を参照して、本組成物および方法をこれからされに解説する。これらの例は例示を目的とするにすぎず、当業者が発明の範囲から離れることなく改変および改良を行い得ることが理解される。記載された態様は二者択一であるだけでなく、組み合わせることができることを理解すべきである。
【0041】
例1:2,3−ジヒドロキシプロピル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラート(1)
a)(−)−メントール(165.6g、1.1mol)と無水マレイン酸(98.0g、1.0mol)との混合物を100℃で3時間加熱した後、室温まで冷却し、MTBE(400ml)で希釈する。生成物を飽和NaHCO水溶液(1.1l、pH=8)で抽出し、水溶液をMTBE(各100ml)で2回洗浄する。水溶液に氷を加えた後、濃HCl水溶液(152g)で酸性化する。MTBEで抽出して、塩水で洗浄し、MgSOで乾燥して溶媒を除去すると、(Z)−3−((2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルオキシ)カルボニル)アクリル酸(265g)が白色結晶生成物として得られ、それをシクロヘキサン(600ml)に溶かす。N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF、20.8ml、0.27mol)を加え、溶液を70℃に加熱する。この温度で、塩化チオニル(65.3ml、0.9mol)を30分間滴加する。温度を80℃まで上げ、外部からの加熱でその温度を1.5時間維持する。湯浴から取り出し、ロータリーエバポレータ(RV)にて、54℃/30mbarで溶媒を蒸発させ、次いで、残渣を50℃/0.25mbarで2時間乾燥させる。(E)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル3−(クロロカルボニル)アクリレートが、微量の残留DMF(約5%)を含む褐色油として得られる(254.5g、93%)。
【0042】
IR: 1766 m, 1719 vs, 1456 w, 1269 vs, 1177 s, 1097m, 971 m, 951 m, 668 w, 645 m.
1H-NMR: 6.95 (d, J=2.0 Hz, 2 H), 4.80 (td, J=10.9, 4.4 Hz, 1 H), 1.95 - 2.04 (m, 1 H), 1.78 - 1.88 (m, 1 H), 1.65 - 1.72 (m, 2 H), 1.40 - 1.52 (m, 2 H), 0.98 - 1.09 (m, 2 H), 0.90 (t, J=6.5 Hz, 6 H), 0.84 - 0.93 (m, 1 H), 0.75 (d, J=6.8 Hz, 3 H).
13C-NMR: 165.4 (s), 163.3 (s), 138.4 (d), 136.5 (d), 76.3 (d), 46.9 (d), 40.6 (t), 34.1 (t), 31.4 (d), 26.3 (d), 23.3 (t), 21.9 (q), 20.7 (q), 16.2 (q).
MS: 237 (1), 138 (59), 123 (45), 96 (23), 95 (100), 83 (161), 82 (34), 81 (74), 55 (27), 43 (17), 41 (22).
【0043】
b)MTBE(300ml)中の、DL−α,β−イソプロピリデングリセリン(123.0g、0.93ml)とトリブチルアミン(176.0g、0.95mol)との溶液を氷浴で冷やし、MTBE(100ml)中の(E)−2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル3−(クロロカルボニル)アクリレート(254.0g、0.93mol)の溶液を40分間滴加する。(内部温度は23〜25℃)。さらに30分攪拌した後、水を加え(100ml)、次いで2N HCl水溶液(40ml)を加える。水性層を分離し、有機層を2N HCl水溶液(各25ml)で2回、水および塩水で洗浄する。MgSOで乾燥させた後、RVで溶媒を蒸発させ、残渣を55℃/0.1mbarで30分乾燥させると、ブタ−2−エン二酸2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチルエステル2−イソプロピル−5−メチル−シクロヘキシルエステルが褐色油として得られる(312g、91%)。
【0044】
IR: 1717 vs, 1644 w, 1293 s, 1256 vs, 1149 vs, 841 m.
1H-NMR: 6.83 (s, 2 H), 4.75 (td, J=10.9, 4.3, 1 H), 4.29 - 4.38 (m, 1 H), 4.22 - 4.28 (m, 1 H), 4.13 - 4.21 (m, 1 H), 4.07 (dd, J=8.6, 6.6 Hz, 1 H), 1.94 - 2.02 (m, 1 H), 1.76 - 1.87 (m, 1 H), 1.61 - 1.70 (m, 2 H), 1.40 (s, 3 H), 1.35 - 1.53 (m, 2 H), 1.33 (s, 3 H), 0.93 - 1.10 (m, 2 H), 0.87 (dd, J=6.9 Hz, 6 H), 0.82 - 0.91 (m, 2 H), 0.72 (d, J=7.1 Hz, 3 H).
13C-NMR: 164.7 (s), 164.3 (s), 134.8 (d), 132.5 (d), 109.9 (s), 75.4 (d), 73.3 (d), 66.2 (t), 65.5 (t), 46.9 (d), 40.6 (t), 34.1 (t), 31.3 (d), 26.6 (q), 26.2 (d), 25.3 (q), 23.4 (q), 21.9 (t), 20.6 (q), 16.3 (q).
MS: 353 (70, [M-CH3]+), 138 (74), 101 (70), 99 (69), 95 (100), 82 (44), 81 (69), 57 (42), 55 (64), 43 (81).
【0045】
c)グリセリン(66g)、ホウ酸(0.94g、165mmol)、水(6.6g)およびブタ−2−エン二酸2,2−ジメチル−[1,3]ジオキソラン−4−イルメチルエステル2−イソプロピル−5−メチル−シクロヘキシルエステル(22.1g、60mmol)の混合物を、18時間激しく攪拌しながら100℃に熱する。まだ熱いうちにグリセリン相を分離して除き、上清を熱いグリセリン/水3:2(10ml)で洗浄する。2,3−ジヒドロキシプロピル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラートが、粘性のある帯黄色のわずかに不透明な油として得られる(17.3g、88%)。
【0046】
IR: 3434 br., 1716 vs, 1293 vs, 1256 vs, 1157 s, 772 m.
1H-NMR: 6.87 (d, J=2.0, 2 H), 4.79 (td, J=10.9, 4.4, 1 H), 4.23 - 4.33 (m, 2 H), 3.96 - 4.04 (m, 1 H), 3.73 (dd, J=11.5, 3.9, 1 H), 3.63 (dd, J=11.3, 6.1, 1 H), 3.40 (s, 1 H), 1.98 - 2.04 (m, 1 H), 1.80 - 1.91 (m, 1 H), 1.66 - 1.75 (m, 2 H), 1.39 - 1.58 (m, 2 H), 0.98 - 1.15 (m, 2 H), 0.91 (dd, J=7.8, 6.8, 6 H), 0.76 (d, J=6.8, 3 H).
13C-NMR: 171.3 (s), 165.1 (s), 164.3 (s), 134.7 (d), 132.5 (d), 75.5 (d), 69.8 (d), 65.8 (t), 63.2 (t), 60.4 (t), 46.8 (d), 40.5 (t), 34.0 (t), 31.3 (d), 26.1 (d), 23.3 (t), 21.8 (q), 20.9 (q), 20.6 (q), 16.2 (q), 14.0 (q).
MS: 310 (<1, [M-H2O]+), 297 (4), 237 (6), 191 (4), 173 (9), 156 (5), 139 (25), 138 (70), 123 (36), 99 (51), 95 (100), 81 (73), 55 (48).
【0047】
例2:エチル2−メチル−4−オキソ−4H−ピラン−3−イルフマラート(2)
a)フマル酸モノエチルエステル(43.24g、0.30mol)を1,2−ジクロロエタン(50ml)に懸濁し、DMF(2.0ml)を加える。混合物を激しく攪拌しながら、新たに蒸留したSOClを20分間滴加する。得られた混合物を70℃で1時間、その後80℃で1時間加熱する。室温まで冷却した後、常圧下で蒸留によって溶媒を除く。減圧(15mbar)し、3−クロロカルボニル−アクリル酸エチルエステルが77〜80℃で無色の液体として蒸留される(37.37g、77%)。
【0048】
IR: 1765 m, 1721 vs, 1302 s, 1260 s, 1182 s, 1096 s, 1015 s, 969 s, 863 w, 806 w, 733 w, 666 w, 633 m.
1H-NMR: 6.97, 6.90 (AB, JAB=15.4, 2 H), 4.26 (q, J=7.2 Hz, 2 H), 1.30 (t, J=7.2 Hz, 3 H).
13C-NMR: 165.3 (s), 163.6 (s), 137.8 (d), 136.6 (d), 62.0 (t), 13.9 (q).
MS: 127 (100, [M-Cl]+) , 117 (34), 64 (99), 89 (58), 82 (38), 71 (10), 54 (34).
【0049】
b)マルトール(9.35g、74mmol、1.05当量)、ピリジン(9.8ml、120mmol、1.7当量)および4−ジメチルアミノピリジン(112mg)をメチルt−ブチルエーテル(MTBE、100ml)に懸濁し、懸濁物を氷浴で冷却する。MTBE(30ml)中の3−クロロカルボニル−アクリル酸エチルエステル(11.29g、70mmol)の溶液を20分間滴加する。得られた懸濁物を3℃で30分間、次いで室温で2.5時間攪拌する。混合物を氷/2N HCl水溶液で加水分解し、EtOAcで抽出する。有機層を0.5N HCl水溶液で、次いで塩水で2回洗浄し、MgSOで乾燥させる。溶媒を除去して得られる粗製物をSiO上のFC(ヘキサン/EtOAc1:4)により精製し、エチル2−メチル−4−オキソ−4H−ピラン−3−イルフマラートが粘性のある赤褐色油として単離される(8.95g、51%)。
【0050】
IR: 1753 m, 1721 s, 1659 vs, 1643 vs, 1421 m, 1292 s, 1240 s, 1161 vs, 1133 vs, 1029 m, 976 m, 831m.
1H-NMR: 7.94 (d, J=5.8, 1 H), 6.63 (d, J=5.8, 1 H), 4.50 (q, J=7.1, 2 H), 2.49 (s, 3 H),
1.54 (t, J=7.1, 3 H).
13C-NMR: 171.23 (s), 164.26 (s), 161.36 (s), 159.05 (s), 154.27 (d), 138.22 (s), 136.08 (d), 131.12 (d), 116.66 (d), 61.42 (t), 14.84 (q), 13.94 (q).
MS: 253(1, [M+H]+) , 224 (4), 207 (16), 179 (5), 154 (8), 137 (8), 127 (100), 126 (18), 99 (23), 55 (22).
【0051】
例3:2−エトキシ−4−ホルミルフェニルエチルフマラート(3)
例2bに記載した手順を、トルエン(90ml)中のエチルバニリン(8.63g、52mmol)、ピリジン(6.4ml、80mmol、1.5当量)、4−ジメチルアミノピリジン(80mg)および3−クロロカルボニル−アクリル酸エチルエステル(8.45g、70mmol)で行う。粗製物をSiO上のFC(ヘキサン/EtOAc5:1)により精製し、2−エトキシ−4−ホルミルフェニルエチルフマラートが粘性のある淡黄色油として単離される(10.07g、66%)。
【0052】
IR: 1749 m, 1722 vs, 1696 vs, 1599 m, 1501 m, 1434 m, 1288 vs, 1261 vs, 1115 vs, 1033 vs, 974 m, 671 m.
1H-NMR: 9.94 (s, 1 H), 7.46 - 7.50 (m, 2 H), 7.26 (d, J=7.8, 1 H), 7.07 (d, J=1.3, 2 H), 4.31 (q, J=7.1, 2 H), 4.13 (q, J=6.9, 2 H), 1.39 (t, J=6.4, 3 H), 1.35 (t, J=6.6, 3 H).
13C-NMR: 190.8 (d), 164.5 (s), 162.1 (s), 151.0 (s), 144.4 (s), 135.6 (d), 135.3 (s), 131.8 (d), 124.2 (d), 123.0 (d), 111.8 (d), 64.6 (t), 61.5 (t), 14.4 (q), 14.0 (q).
MS: 292 (2, M+), 247 (3), 219 (1), 166 (7), 137 (10), 127 (100), 109 (5), 99 (27), 81 (11), 55 (19).
【0053】
例4:メチル2−((E)−3−(エトキシカルボニル)アクリロイルオキシ)ベンゾアート(4)
例2bに記載した手順を、MTBE(100ml)中のメチルサリチラート(11.0g、72mmol)、ピリジン(9.2g、116mmol、1.7当量)、4−ジメチルアミノピリジン(100mg)および3−クロロカルボニル−アクリル酸エチルエステル(11.1g、68mmol)で行う。粗製物をSiO上のFC(ヘキサン/MTBE10:1→5:1→1:1)により精製し、メチル2−((E)−3−(エトキシカルボニル)アクリロイルオキシ)ベンゾアートが粘性のある淡黄色油として単離される(12.9g、68%)。
【0054】
IR: 1750 m, 1718 vs 1607 w, 1291 vs, 1256 vs, 1200 vs, 1139 vs, 1081 vs, 1028 m, 756 m, 735 m, 700 m, 674 m.
1H-NMR: 7.99 (dd, J=7.7, 1.6, 1 H), 7.53 (td, J=7.8, 1.8, 1 H), 7.29 (td, J=7.6, 1.1, 1 H), 7.08 - 7.11 (m, 1 H), 7.03 (d, J=6.1, 2 H), 4.24 (q, J=7.1, 2 H), 3.77 (s, 3 H), 1.28 (t, J=7.1, 3 H).
13C-NMR: 164.5 (s), 164.4 (s), 163.4 (s), 149.9 (d), 135.2 (d), 133.8 (d), 132.3 (d), 131.7 (d), 126.2 (d), 123.4 (d), 122.8 (s), 61.3 (t), 52.1 (q), 13.9 (q).
MS: 278 (<1, [M-OH]+), 247 (22), 233 (3), 152 (7), 127 (100), 120 (18), 113 (7), 99 (18), 92 (13), 82 (6), 71 (7), 55 (17).
【0055】
例5:2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラート(5)
a)(Z)−3−((2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルオキシ)カルボニル)アクリル酸(25g、0.10mol)を塩化フマリル(0.35g、2mol%)とともに100℃で5時間熱する。混合物を室温まで冷やし、水上に注ぎ、MTBEで抽出する。有機層を分離し、MgSOで乾燥させ、SiO上のFC(ヘキサン/MTBE10:1→5:1→EtOAc100%)により精製する。(E)−3−((2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルオキシ)カルボニル)アクリル酸が、無色粘性油として単離される(21.5g、86%)。
【0056】
IR: 3500-3000 br., 1703 vs, 1644 m, 1260 vs, 1010 s, 653 m.
1H-NMR: 11.73 (br., 1 H), 6.89 (d, J=15.9Hz, 1 H), 6.79 (d, J=15.9Hz, 1 H), 4.73 - 4.84 (m, 1 H), 1.96 - 2.02 (m, 1 H), 1.77 - 1.87 (m, 1 H), 1.61 - 1.71 (m, 2 H), 1.37 - 1.49 (m, 2 H), 0.95 - 1.06 (m, 2 H), 0.90-0.82 (m, 1 H), 0.86 (t, J=7.1 Hz, 6 H), 0.72 (d, J=7.1 Hz, 3 H).
13C-NMR: 170.0 (s), 164.2 (s), 136.1 (d), 132.4 (d), 75.7 (d), 46.9 (d), 40.6 (t), 34.0 (t), 31.3 (d), 26.2 (d), 23.3 (t), 21.9 (q), 20.6 (q), 16.2 (q).
MS: 237 (<1, [M-OH]+), 138 (42), 123 (36), 99 (58), 95 (100), 80 (81).
【0057】
b)DMF(50ml)中のD−ソルビトール(1.82g、10mmol)、DMAP(1.60g、13mmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(5.36g、26mmol)の溶液を、DMF(20ml)中の(E)−3−((2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルオキシ)カルボニル)アクリル酸(5.08g、20mmol)の溶液に加える。混合物を室温で3日間攪拌し、次いで濾過する。濾液を5%HCl水溶液に注ぎ、EtOAcで抽出する。有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させる。粗製物をSiO上のFC(ヘキサン/EtOAc10:1→5:1→1:1)を通して精製する。いくらかのジメチルフルマラートに加えて、ソルビトール−(E)−3−((2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルオキシ)カルボニル)アクリル酸ジエステルおよびトリエステルを有する画分が単離される。最も極性の画分から、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラートが単離される(1.7g、35%)
【0058】
2種の位置異性体の混合物
IR: 3364 br., 1715 s, 1656 vs, 1294 s, 1257 s, 1158 m, 662 m.
1H-NMR: 6.80 (d, J= 2 H), 4.66 - 4.76 (m, 1 H), 4.54 (series of m, 7 H), 3.51 - 4.13 (m, 7 H), 1.89 - 2.00 (m, 1 H), 1.72 - 1.86 (2 m, 2 H), 1.56 - 1.69 (m, 2 H), 1.31 - 1.51 (m, 2 H), 0.84 (dd, J=9.1, 6.8 Hz, 6 H), 0.68 (d, J=6.8 Hz, 3 H).
13C-NMR: 165.4 (s), 165.2 (s), 164.6 (s), 164.6 (s), 134.6 (d), 134.5 (d), 133.0 (d), 132.9 (d), 73.5 (d), 73.1 (d), 72.2 (d), 71.8 (d), 71.5 (d), 69.7 (d), 69.6 (d), 69.5 (d), 67.0 (t), 66.5 (t), 63.9 (t), 63.5 (t), 46.9 (d), 40.6 (t), 34.1 (t), 31.4 (q), 31.3 (d), 26.2 (d), 23.3 (t), 21.9 (q), 20.7 (q), 16.3 (q).
MS (APCI pos. + NH4OAc): 436 (100, [M+NH4]+), 419 (25, [M++]+).
【0059】
例6:シンナミルエチルフマラート(6)
例2bで述べた手順を、MTBE(100ml)中のシンナミルアルコール(11.4g、85mmol)、ピリジン(10.8g、140mmol、1.7当量)、4−ジメチルアミノピリジン(100mg)および3−クロロカルボニル−アクリル酸エチルエステル(13.5g、80mmol)で行う。粗製物をSiO上のフラッシュクロマトグラフィ(FC)(ヘキサン/MTBE10:1→5:1)により精製し、シンナミルエチルフマラートが無色油として単離される(14.5g、73%)。
【0060】
IR: 1716 s, 1645 w, 1448 w, 1368 w, 1289 vs, 1255 vs, 1222 m, 1149 vs, 1028 m, 964 vs, 774 m, 743 m, 691 s.
1H-NMR: 7.33 - 7.37 (m, 2 H), 7.25 - 7.31 (m, 2 H), 7.19 - 7.25 (m, 1 H), 6.88 (s, 2 H), 6.64 (d, J=15.9 Hz, 1 H), 6.26 (dt, J=15.9, 6.4 Hz, 1 H), 4.80 (dd, J=6.4, 1.4 Hz, 2 H), 4.21 (q, J=7.1 Hz, 2 H), 1.26 (t, J=7.1 Hz, 3 H).
13C-NMR: 164.4 (s), 164.2 (s), 135.7 (s), 134.3 (d), 133.6 (d), 132.9 (d), 128.3 (d), 127.8 (d), 126.3 (d), 122.1 (d), 65.4 (t), 60.9 (t), 13.7 (q).
MS: 260 (7, M+), 214 (2, [M-EtOH]+), 186 (5), 169 (4), 143 (5), 133 (50), 128 (68), 127 (72), 117 (89), 115 (100), 105 (54), 99 (33), 91 (25), 77 (15), 55 (17).
【0061】
例7:エチル(Z)−ヘキサ−3−エニルフマラート(7)
例2bで述べた手順を、MTBE(40ml)中のZ−3−ヘキセノール(1.44g、14mmol)、ピリジン(2.3ml、28mmol、2.0当量)、4−ジメチルアミノピリジン(37mg)および3−クロロカルボニル−アクリル酸エチルエステル(2.28g、14mmol)で行う。粗製物はSiO上のFC(ヘキサン/MTBE19:1)により精製し、エチル(Z)−ヘキサ−3−エニルフマラートが無色油として単離される(2.70g、85%)。
【0062】
IR: 1720 s, 1647 w, 1294 s, 1256 s, 152 vs, 1029 m, 988 m, 774 w.
1H-NMR: 6.80 (s, 2 H), 5.45 - 5.52 (m, 1 H), 5.24 - 5.32 (m, 1 H), 4.22 (q, J=7.1 Hz, 2 H), 4.16 (t, J=6.8 Hz, 2 H), 2.36 - 2.42 (m, 2 H), 1.98 - 2.06 (m, J=7.5, 7.5, 7.5, 7.5, 1.5 Hz, 2 H), 1.28 (t, J=7.2 Hz, 3 H), 0.93 (t, J=7.6 Hz, 3 H).
13C-NMR: 164.9 (s), 164.8 (s), 134.8 (d), 133.6 (d), 133.4 (d), 123.2 (d), 64.7 (t), 61.2 (t), 26.5 (t), 20.5 (t), 14.1 (q), 14.0 (q).
MS: 226 (<1, M+), 208 (<1, [M-H2O]+), 181 (<1), 145 (<1), 127 (27), 99 (14), 82 (100), 67 (97), 55 (26), 41 (21).
【0063】
例8:ヘッドスペースにおけるメタンチオール(MeSH)の減少
表1に列挙した化合物を、閉鎖GC−ヘッドスペースバイアル中で、最終濃度が100μM、200μM、および500μMになるよう、PH7の、1mlのリン酸緩衝液に溶かす。MeSHを最終濃度100μMで加え、混合物を1時間平衡させる。サンプルを75℃に熱し、反応混合物上のヘッドスペースを1ml、硫黄化合物の分離に適したカラム(SPW1-sulfur,Supelco)に注入する。温度プログラムを、1分間初期温度50℃、10℃/分の速度で100℃まで加熱、および20℃/分で200℃までさらに加熱と設定する。ヘッドスペースのMeSHレベルをブランクサンプル、すなわち活性化合物を含まないサンプルと比較する。結果を下記表1に記す。
【0064】
【表1】

【0065】
上記結果に見られるように、フマラート部分が両方エステル化されていて、十分な親水性を有する、すなわちCLogP値が4.5以下である化合物だけが親水的環境でMeSHと結合する能力が高く、その結果ヘッドスペース内におけるそのレベルを下げている。CLogP値の高い二重エステル化化合物(例えば化合物(A)を参照)は、水性環境でMeSHに対してごくわずかの反応性しか見せない。化合物(B)などのモノエステル化化合物もまた低い反応性しか有していない。
【0066】
例9:アリルメルカプタンの減少
表2に列挙した化合物を、最終濃度が100mMとなるようにDMSOに溶かし、同じ溶媒で連続的に希釈する。種々の活性化合物の溶液のアリコート(2.5μl)を、マイクロタイタープレートの個々のウェルに分配する。100μlの200μMアリルメルカプタン溶液(50mMリン酸緩衝液、pH7に溶かしたもの)を各ウェルに加え、プレートをすばやく封印する。15分インキュベーション後、マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルにモノブロモビマン(Fulka, Buchs,Switzerlandから入手)原液(0.5mMを1M NaCO、pH8.8に溶かしたもの)を加え、未反応のアリルメルカプタンを誘導体化する。10分後、マイクロタイタープレートのウェル内の蛍光を、波長385nmの励起光と波長480nmの放出光で、Flex-station(Molecular devices, Sunnyvale, CA, USA)で測定する。蛍光測定後、全てのウェルから緩衝液とDMSOのみを含むブランク値を引く。次いで、アリルメルカプタンとDMSOのみのコントロールウェルの蛍光と、アリルメルカプタン捕獲能を有する可能性のある剤(化合物1から5)を含むウェルの蛍光とを比較して、抑制率をパーセントで計算する。表2に得られた結果を列挙する。
【0067】
【表2】

【0068】
上述の結果に見られるように、本発明の化合物は、非常に低い試験濃度においても、等モル濃度でアリルメルカプタンと反応する能力を有し、したがって、消費者製品にとって、口臭を、例えばにんにくを含む食事を取ったあとなどに防止するために有効である。
【0069】
例10:唾液中のメタンチオール(MeSH)の減少
表3に列挙した化合物をGC−ヘッドスペース内で、4人のドナーから供与されプールされた唾液に、500μMの濃度で溶かした。それぞれ1時間および2.5時間の調整時間の後、200μMの濃度のMeSHを加え、1時間後にヘッドスペース内のMeSHレベルを例8に記載したとおりに測定する。結果を下記表3に記す。
【0070】
【表3】

【0071】
本発明の化合物は準安定で、例11で見られるように唾液内の酵素によって開裂されるものであるが、これらは十分な長時間揮発性硫黄化合物を減少させるためには十分安定である。
【0072】
例11:唾液の存在下における開裂による感覚受容性化合物の放出
表4に列挙した基質、すなわち本発明による化合物を、唾液/リン酸緩衝液(pH7、4.0ml)の2:1混合物に示した濃度で溶かす。37℃で4時間インキュベーションした後、水性溶媒をMTBE(4.0ml)で抽出し、放出された感覚受容性化合物を定量的GC分析で測定する。
【0073】
【表4】

【0074】
表4に示した結果に見られるように、理論上約40%の感覚受容性アルコールが4時間以内に放出される。
【0075】
例12:唾液の存在下における感覚受容性化合物の時間依存性の放出
500μMの2−エトキシ−4−ホルミルフェニルエチルフマラートを、唾液/リン酸緩衝液の2:1混合物(pH7、4.0ml)に溶かした溶液を用意し、37℃でインキュベートする。0.50mlのサンプルを示した時間間隔で採取し、MTBE(0.50ml)で抽出する。放出されたエチルバニリンの量を定量的GC分析で測定する。結果を下記表5に記す。
【0076】
【表5】

【0077】
例13:適用例
A)歯磨き粉、不透明
【表6】

【0078】
B)マウスウォッシュ
【表7】

【0079】
C)シュガーレスチューインガム
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、
Xは、8〜15個の炭素原子を含む感覚受容性アルコールの残基であるか、または
Xは、2〜7個の炭素原子を含むアルコール、ジオール、トリオールもしくはポリオールの残基であり、
Yは、8〜15個の炭素原子を含む感覚受容性アルコールの残基である、
で表され、かつ、4.5以下のCLogP値を有する化合物。
【請求項2】
Xが、式R−OHで表される感覚受容性アルコールのR−O残基であり、式中Rは、
I)任意に1または2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、および/もしくはエーテル基を含む、飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖の、C〜C15の炭化水素残基、
II)脂環式C、脂環式C、フェノール、二環式C、フラン、および1つの環員が酸素であるスピロ環式Cから選択される1つの環状構造を含むC〜C13の炭化水素残基であって、このC〜C13の炭化水素残基が任意に1または2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含むもの
からなる群から選択されるか、または
Xが、アスコルビン酸もしくはアルカノールR−OHのR−O残基であり、式中Rは、任意に1または2以上のヒドロキシル、エーテルおよび/またはカルボニル基を含む飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分枝鎖のC〜Cアルキルであるか、またはRは任意に1または2以上のヒドロキシルおよび/またはカルボニル基を含むC〜Cシクロアルキルであり、
YがR−OHの式を有する感覚受容性アルコールのR−O残基であり、式中R
I)任意に1もしくは2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含む飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分枝鎖のC〜C15の炭化水素残基
II)脂環式C、脂環式C、フェノール、二環式C、フラン、および1つの環員が酸素原子であるスピロ環式Cから選択される1つの環状構造を含むC〜C13の炭化水素残基であって、このC〜C13の炭化水素残基は任意に1または2以上のヒドロキシル、カルボニル、カルボキシルおよび/またはエーテル基を含むもの
からなる群から選択されるものであり、
式(I)で表される化合物のCLogP値が4.5以下である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xがエタノール、プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、乳酸、アルファ−グルコース、およびアスコルビン酸からなるリストから選択されるアルカノールR−OHのR−O残基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Yが、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキサノール、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オール、4−アリル−2−メトキシ−フェノール、2−イソプロペニル−5−メチルシクロヘキサン−1−オール、2−イソプロピル−5−メチル−フェノール、および6,6−ジメチル−2−メチレン−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−オールから選択される感覚受容性アルコールR−OHのR−O残基である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
2,3−ジヒドロキシプロピル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラート、エチル2−メチル−4−オキソ−4H−ピラン−3−イルフマラート、2−エトキシ−4−ホルミルフェニルエチルフマラート、メチル2−((E)−3−(エトキシカルボニル)アクリロイルオキシ)ベンゾアート、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルフマラート、シンナミルエチルフマラート、およびエチル(Z)−ヘキサ−3−エニルフマラートからなるリストから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)で表される化合物を含む口腔組成物。
【請求項7】
口腔組成物が、チューインガム、飴、可食性フィルム、飲料、および口腔ケア製品から選択される、請求項6に記載の口腔組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)で表される化合物の、口腔悪臭抑制剤としての使用。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)で表される化合物を口腔内に適用することによる、口腔悪臭を抑制する方法。
【請求項10】
有効量の、請求項1〜5のいずれかに記載の式(I)で表される化合物またはその混合物を含む口腔ケア製品を口腔内に適用することにより口腔悪臭を抑制する方法。

【公表番号】特表2009−520701(P2009−520701A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546067(P2008−546067)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000700
【国際公開番号】WO2007/071085
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】