説明

有機半導体コンポジットおよびそれを用いた有機電界効果型トランジスタ

【課題】高い移動度とオンオフ比を安定して両立させることのできる有機半導体コンポジットおよび有機電界効果型トランジスタを提供すること。
【解決手段】カーボンナノチューブと複数の分子量3000以下の有機半導体を含有する有機半導体コンポジットであって、前記複数の分子量3000以下の有機半導体が、少なくとも分子量M(A)の有機半導体(A)および該有機半導体(A)の部分構造からなる分子量M(B)の有機半導体(B)を含有し、前記M(A)と前記M(B)が2M(B)≧M(A)の関係を満たす有機半導体コンポジット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブと複数の有機半導体を含有する有機半導体コンポジットならびに有機電界効果型トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成形性に優れた有機半導体を半導体層として用いた有機電界効果型トランジスタ(以下、有機FETという)が提案されている。有機半導体をインクとして利用することで、インクジェット技術やスクリーニング技術などにより、基板上に直接回路パターンを形成することが可能になることから、従来の無機半導体を用いた電界効果型トランジスタ(以下、FETという)にかわり、有機半導体を用いた有機FETが盛んに検討されている。
【0003】
FET素子の性能を示す重要な指標として、移動度とオンオフ比が挙げられる。移動度の向上は、すなわち、オン電流を増加させることを意味する。一方、オンオフ比の向上は、オン電流を増加させるとともにオフ電流を減少させることを意味する。これらはどちらもFETのスイッチング特性を向上させることであり、例えば液晶表示装置においては高階調を実現させることにつながる。例えば液晶表示装置の場合、移動度0.1cm/V・sec以上、オンオフ比10以上が求められる。
【0004】
FETに用いる有機半導体としては、ペンタセンやテトラセンといったアセン類(例えば、特許文献1参照)、金属フタロシアニン化合物(例えば、特許文献2参照)などの有機低分子半導体が提案されている。しかしながら、有機低分子半導体では蒸着などの真空プロセスを用いることが多く、大面積化やコスト削減が困難であった。そこで、共役系ポリマーやポリチオフェンなどの有機高分子半導体が開示されている。有機高分子半導体を用いた有機TFTの移動度を向上させるための技術として、ポリチオフェン類などの共役系重合体とカーボンナノチューブを有する重合体コンポジットを用いる方法(例えば、特許文献3参照)や、有機半導体分子にナノロッドまたはナノチューブを分散させた固体組成物を用いる方法(例えば、特許文献4参照)が開示されているが、いずれも十分な移動度が得られていなかった。そこで、特定のチオフェン化合物とカーボンナノチューブを含有する有機半導体コンポジットが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−55568号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−174277号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2006−265534号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−93699号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】国際公開第2008/090969号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機低分子半導体は薄膜形成時に結晶が生じやすく、カーボンナノチューブの分散が不十分となり、高いオンオフ比を安定して得にくいという課題があった。そこで、本発明の目的は、高い移動度とオンオフ比を安定して両立させることのできる有機半導体コンポジットおよび有機FETを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、カーボンナノチューブと複数の分子量3000以下の有機半導体を含有する有機半導体コンポジットであって、前記複数の分子量3000以下の有機半導体が、少なくとも分子量M(A)の有機半導体(A)および該有機半導体(A)の部分構造からなる分子量M(B)の有機半導体(B)を含有し、前記M(A)とM(B)が2M(B)≧M(A)の関係を満たす有機半導体コンポジットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高い電荷移動度と高いオンオフ比を安定して得ることのできる有機半導体コンポジットおよび有機FETを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様である有機FETを示した模式断面図
【図2】本発明の別の態様である有機FETを示した模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の有機半導体コンポジットは、カーボンナノチューブ(以下、CNTと称する)と複数の分子量3000以下の有機半導体を含有する。
【0011】
CNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTが挙げられる。本発明においては、これらのいずれを用いてもよく、2種以上用いてもよい。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法などにより得ることができる。
【0012】
本発明において、CNTの長さは、有機FETのソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTをチャネル長よりも短くする工程を設けることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。本発明においては、CNTを溶媒中に均一分散させ、分散液をフィルターによってろ過する工程を設けることが好ましい。フィルター孔径よりも小さいCNTを濾液から得ることで、チャネル長よりも短いCNTを効率よく得られる。この場合、フィルターとしてはメンブレンフィルターが好ましく用いられる。ろ過に用いるフィルターの孔径は、チャネル長よりも小さければよく、0.5〜10μmが好ましい。
【0013】
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。
【0014】
本発明においては、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNTを用いることが好ましい。これにより、CNTを有機半導体中により均一に分散させることができ、移動度とオンオフ比をより向上させることができる。CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着した状態とは、CNTの表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのは、それぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判断できる。定量的にはX線光電子分光(XPS)などの元素分析によって、付着物の存在とCNTに対する付着物の重量比を同定することができる。以下、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNTをCNT複合体と称する。
【0015】
CNTに共役系重合体を付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTをあらかじめ超音波などで溶媒中に予備分散させておき、そこへ共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTをいれ、この混合系へ超音波を照射して混合する方法などが挙げられる。本発明では、いずれの方法を用いてもよく、いずれかの方法を組み合わせてもよい。
【0016】
上記のCNTに付着する共役重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体などが挙げられるが、特に限定されない。また、上記重合体は、単一のモノマーユニットが並んだものが好ましく用いられるが、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、あるいはグラフト重合したものも用いることができる。上記重合体の中でも本発明においては、CNTへの付着が容易であり、CNT複合体を形成しやすいポリチオフェン系重合体が特に好ましく使用される。
【0017】
ポリチオフェン系重合体とは、ポリ−チオフェン構造の骨格を持つ重合体を指し、側鎖を有するものも含む。具体例としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェンなどのポリ−3−アルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェンなどのポリ−3−アルコキシチオフェン(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ−4−アルキルチオフェン(アルコキシ基およびアルキル基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−チオヘキシルチオフェンやポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜12)が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でも、ポリ−3−アルキルチオフェンまたはポリ−3−アルコキシチオフェンが好ましい。前者としては特にポリ−3−ヘキシルチオフェンが好ましい。ポリチオフェン系重合体の好ましい分子量は、数平均分子量で800〜100000である。
【0018】
本発明で用いる共役系重合体の不純物を除去する方法は特に限定されないが、基本的には合成過程で使用した原料や副生成物を除去する精製工程であり、再沈殿法、ソクスレー抽出法、ろ過法、イオン交換法、キレート法などを用いることができる。中でも低分子量成分を除去する場合には再沈殿法やソクスレー抽出法が好ましく用いられ、金属成分の除去には再沈殿法やキレート法、イオン交換法が好ましく用いられる。これらの方法を2種以上組み合わせてもよい。
【0019】
本発明における有機半導体とは、分子量分布のない単一の化合物として単離・同定できるものであり、分子量3000以下のものである。このような有機半導体はカラム精製や再結晶、昇華精製などの方法により精製することができるため、高純度化が可能である。従って、上記のような単一かつ高純度化が可能な有機半導体を半導体層として用いることにより、高性能なFETが可能となる。さらに、分子量を3000以下とすることにより、有機半導体分子の共役長が抑えられるため、酸化に対する安定性が向上する。なお、分子量は一般に使用されている質量分析装置で測定することができる。
【0020】
本発明の有機半導体コンポジットは、分子量3000以下の有機半導体を複数種含有する。そして、これら複数の分子量3000以下の有機半導体が、少なくとも分子量M(A)の有機半導体(A)および該有機半導体(A)の部分構造からなる分子量M(B)の有機半導体(B)を含有し、前記M(A)と前記M(B)が2M(B)≧M(A)の関係を満たすことを特徴とする。有機半導体(A)に加えて、その部分構造からなる有機半導体(B)を含有することにより、有機半導体(A)の結晶性が抑えられ、インクジェットなどの塗布プロセスにおいてもCNTが均一分散した有機半導体薄膜を作製することができる。これにより、高い移動度とオンオフ比を有するFET素子を安定して得ることができる。なお、有機半導体(B)が有機半導体(A)の部分構造からなるとは、有機半導体(B)の構造が、有機半導体(A)の構造の一部を取り出してその末端に水素原子が結合した構造と一致することを意味する。さらに、有機半導体(A)の分子量M(A)と有機半導体(B)の分子量M(B)が2M(B)≧M(A)の関係を満たすことにより、両者の構造の共通性が適当な範囲となり、有機半導体(A)の結晶性を適度に調整することができる。このため、有機半導体(A)の高い移動度が保持される。なお、有機半導体(B)は有機半導体(A)の部分構造からなるため、M(B)<M(A)である。
【0021】
本発明に用いられる有機半導体(A)は、下記一般式(1)で表されることが好ましい。チオフェン骨格を構造中に有することで、高い移動度が得られる。
【0022】
【化1】

【0023】
ここで、Xは単結合、ビニレン基、エチニレン基、アゾ基、アゾメチン基、エーテル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。YおよびYは同じでも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2)で表される基を示す。
【0024】
【化2】

【0025】
上記一般式(2)中、R〜Rは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ホルミル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基またはシリル基を示す。また隣り合うR〜RまたはR〜Rは互いに結合して環構造を形成してもかまわない。nは0〜10の整数を示す。
【0026】
一般式(1)におけるXのうち、アリーレン基とは、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、フェナンスレン、ターフェニル、ピレンなどの芳香族炭化水素から導かれる2価の基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有している場合の追加の置換基に特に制限はなく、例えば、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン原子などが挙げられる。また、アリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜30の範囲である。
【0027】
ヘテロアリーレン基とは、例えば、ピリジン、ベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ベンゾオキサジアゾール、キノキサリンなど、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基から導かれる2価の基を示す。ヘテロアリーレン基は置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有している場合の追加の置換基に特に制限はなく、例えば、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ホルミル基などが挙げられる。また、ヘテロアリーレン基の炭素数は特に限定されないが、通常、4〜30の範囲である。
【0028】
一般式(2)におけるR〜Rのうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有している場合の追加の置換基には特に制限はなく、例えば、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができ、これらはさらに置換基を有していてもよい。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0029】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの飽和脂環式炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。置換基を有する場合、置換基には特に制限はなく、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基などを挙げることができ、これら置換基はさらに置換基を有していてもよい。これら置換基に関する説明は、以下の記載にも共通する。シクロアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。
【0030】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、アミド環などの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環から導かれる基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0031】
アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0032】
シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常3以上20以下の範囲である。
【0033】
アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0034】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など、エーテル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示し、脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0035】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0036】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基など、エーテル結合の一方を芳香族炭化水素基で置換した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0037】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールチオエーテル基の芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールチオエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0038】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
【0039】
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、キノリニル基など、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する芳香族基を示し、置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。
【0040】
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
【0041】
カルバモイル基、アミノ基、シリル基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0042】
アルキルカルボニル基とは、例えば、アセチル基、ヘキサノイル基など、カルボニル結合の一方を脂肪族炭化水素基で置換した官能基を示し、脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルカルボニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0043】
アリールカルボニル基とは、例えば、ベンゾイル基など、カルボニル結合の一方を芳香族炭化水素基で置換した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールカルボニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、7以上40以下の範囲である。
【0044】
アルコキシカルボニル基とは、例えば、メトキシカルボニル基など、カルボニル結合の一方をアルコキシ基で置換した官能基を示し、アルコキシ基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシカルボニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0045】
アリールオキシカルボニル基とは、例えば、フェノキシカルボニル基など、カルボニル結合の一方をアリールオキシ基で置換した官能基を示し、アリールオキシ基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールオキシカルボニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、7以上40以下の範囲である。
【0046】
アルキルカルボニルオキシ基とは、例えば、アセトキシ基など、エーテル結合の一方をアルキルカルボニル基で置換した官能基を示し、アルキルカルボニル基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルカルボニルオキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0047】
アリールカルボニルオキシ基とは、例えば、ベンゾイルオキシ基など、エーテル結合の一方をアリールカルボニル基で置換した官能基を示し、アリールカルボニル基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールカルボニルオキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、7以上40以下の範囲である。
【0048】
隣接する基同士で互いに結合して環を形成する場合、前記一般式(2)で説明すると、R〜Rの中から選ばれる任意の隣接2基(例えばRとR)が互いに結合して共役または非共役の縮合環を形成する。縮合環の構成元素として、炭素以外にも窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と縮合してもよい。
【0049】
nは0〜10の整数を示す。さらに、nが0〜7の整数であると、酸化に対する安定性や合成の容易性がより向上するため好ましい。また、nが2以上の場合、それぞれのR、Rは同じでも異なっていてもよい。
【0050】
塗布プロセスへの適合性を考慮すると、R〜Rの少なくとも一つが炭素数4以上のアルキル基もしくはアルコキシ基であることが好ましい。
【0051】
有機半導体(A)が下記一般式(1)で表される場合、その部分構造からなる有機半導体(B)の構造は、Y−X−Hであることが好ましい。かかる構造を有することにより、さらに結晶性の制御が容易となり、高いオンオフ比が安定して得られる。
【0052】
本発明の有機半導体コンポジットは、有機半導体(A)および有機半導体(B)をそれぞれ2種以上含んでもよい。
【0053】
上記一般式(1)で表される有機半導体(A)として、下記のような構造が挙げられる。
【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
【化5】

【0057】
【化6】

【0058】
【化7】

【0059】
【化8】

【0060】
【化9】

【0061】
【化10】

【0062】
【化11】

【0063】
【化12】

【0064】
また、化合物(1)を有機半導体(A)とした場合、有機半導体(B)としては、例えば下記のような構造が挙げられる。
【0065】
【化13】

【0066】
化合物(24)を有機半導体(A)とした場合、有機半導体(B)としては例えば下記のような構造が挙げられる。
【0067】
【化14】

【0068】
化合物(36)を有機半導体(A)とした場合、有機半導体(B)としては例えば下記のような構造が挙げられる。
【0069】
【化15】

【0070】
化合物(37)を有機半導体(A)とした場合、有機半導体(B)としては例えば下記のような構造が挙げられる。
【0071】
【化16】

【0072】
化合物(60)を有機半導体(A)とした場合、有機半導体(B)としては例えば下記のような構造が挙げられる。
【0073】
【化17】

【0074】
化合物(62)を有機半導体(A)とした場合、有機半導体(B)としては例えば下記のような構造が挙げられる。
【0075】
【化18】

【0076】
また、本発明で用いられる有機半導体は公知の方法により合成することができる。例えば、チオフェン同士を連結する方法として、ハロゲン化したチオフェンとチオフェンボロン酸またはチオフェンボロン酸エステルをパラジウム触媒下でカップリングする方法、ハロゲン化したチオフェンとチオフェングリニヤール試薬をニッケルまたはパラジウム触媒下でカップリングする方法が挙げられる。また、他のユニットとチオフェンを連結する場合も、ハロゲン化したユニットを用い同様の方法でカップリングすることができる。
【0077】
本発明で用いられる有機半導体は、合成過程で使用した原料や副生成物などの不純物を除去することが好ましく、例えば、シリカゲルカラムグラフィー法、再結晶法、ろ過法などを用いることができる。これらの方法を2種以上組み合わせてもよい。
【0078】
本発明において、有機半導体(B)の含有量は、有機半導体(A)100重量部に対し100重量部以下が好ましく、50重量部以下がより好ましく、30重量部以下がより好ましい。有機半導体(B)の含有量を100重量部以下にすることにより、より高いオンオフ比を安定して得ることができる。また、5重量部以上が好ましく、移動度をより向上させることができる。
【0079】
有機半導体コンポジット中のCNTの含有量は、有機半導体100重量部に対して0.01重量部以上3重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。ここで、CNTとしてCNT複合体を用いる場合には、CNT複合体の含有量をCNTの含有量とする。また、有機半導体(A)(B)を含む分子量3000以下の全ての有機半導体の合計含有量を100重量部とする。
【0080】
本発明の有機半導体コンポジットの製造方法としては、例えば、CNTまたはCNTを含有する溶液と、有機半導体またはその溶液とを混合する方法を挙げることができる。また、必要に応じて、混合を促進するための加熱または超音波照射の工程を加えてもよいし、ろ過などの固形成分を除去する工程を加えてもよい。
【0081】
本発明の有機半導体コンポジットは、高い電荷輸送能を有するため、有機トランジスタ材料として好適に用いられる。
【0082】
次に、本発明の有機トランジスタ材料を用いた有機FETについて説明する。本発明の有機FETは、ゲート電極、絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する有機電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が本発明の有機半導体コンポジットを含有する。
【0083】
図1および図2は、本発明の有機FETの例を示す模式断面図である。図1では、絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に、ソース電極5およびドレイン電極6が形成され、さらにその上に本発明の有機半導体コンポジットを含有する半導体層4が形成されている。図2では、絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する基板1上に本発明の有機半導体コンポジットを含有する半導体層4が形成され、さらにその上にソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
【0084】
基板1に用いられる材料としては、例えば、シリコンウエハー、ガラス、アルミナ焼結体などの無機材料、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレンなどの有機材料が挙げられる。
【0085】
ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6に用いられる材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など、ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させた導電性ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0086】
上記ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェットおよび印刷などが挙げられるが、導通を取ることができれば特に制限されない。また電極パターンの形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィー法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0087】
絶縁層3(ゲート絶縁膜)に用いられる材料としては、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナなどの無機材料、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリビニルフェノール(PVP)などの有機高分子材料、あるいは無機材料粉末と有機高分子材料の混合物を挙げることができる。絶縁層3の膜厚は、好ましくは50nm〜3μm、より好ましくは100nm〜1μmである。絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して複数の絶縁層を形成しても構わない。
【0088】
上記絶縁層の形成方法としては、特に限定されないが、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVD、イオンプレーティング、コーティング、インクジェットおよび印刷などの方法が挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0089】
本発明の有機FETにおいて、半導体層4は、本発明の有機半導体コンポジットを含有する。さらに絶縁性材料を含んでもよい。ここで用いられる絶縁性材料としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0090】
半導体層4の膜厚は5nm以上100nm以下が好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、有機FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。また、半導体層4は単層でも複数層でもよい。複数層の場合には、本発明の複数の有機半導体コンポジットを積層してもよいし、本発明の有機半導体コンポジットと公知の有機半導体を積層してもよい。
【0091】
半導体層4の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から塗布法を用いることが好ましい。具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法などを好ましく用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。例えばスピンコート塗布を行う場合には、有機半導体コンポジット溶液の濃度は1〜20g/lであると、厚み5〜200nmの塗膜を得ることができる。このとき、有機半導体コンポジットを溶解させる溶媒としては、テトラヒドロフランやトルエン、キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−イソプロピルベンゼン、1,4−ジプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、2,4,6−トリメチル安息香酸エチル、2−エトキシ安息香酸エチル、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどが挙げられる。これらの溶媒を2種以上用いてもよい。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0092】
また、絶縁層3と半導体層4の間に緩衝層を設けることもできる。本発明の有機半導体コンポジットは緩衝層がなくても高い移動度を奏するが、緩衝層を設けることにより、さらに高い移動度が可能となるため好ましい。緩衝層には、シラン化合物、チタン化合物、有機酸、ヘテロ有機酸など、公知の材料を用いることができ、中でも有機シラン化合物が好ましい。
【0093】
有機シラン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、フェニルトリクロロシラン、ナフチルトリクロロシラン、アントラセントリクロロシラン、ピレントリクロロシラン、ペリレントリクロロシラン、コロネントリクロロシラン、チオフェントリクロロシラン、ピロールトリクロロシラン、ピリジントリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、アントラセントリメトキシシラン、アントラセントリエトキシシラン、ピレントリメトキシシラン、ピレントリエトキシシラン、チオフェントリメトキシシラン、チオフェントリエトキシシラン、フェニルメチルトリクロロシラン、フェニルエチルトリクロロシラン、フェニルプロピルトリクロロシラン、フェニルブチルトリクロロシラン、フェニルヘキシルトリクロロシラン、フェニルオクチルトリクロロシラン、ナフチルメチルトリクロロシラン、ナフチルエチルトリクロロシラン、アントラセンメチルトリクロロシラン、アントラセンエチルトリクロロシラン、ピレンメチルトリクロロシラン、ピレンエチルトリクロロシラン、チオフェンメチルトリクロロシラン、チオフェンエチルトリクロロシラン、アミノフェニルトリクロロシラン、ヒドロキシフェニルトリクロロシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、ジクロロフェニルトリクロロシラン、トリクロロフェニルトリクロロシラン、ブロモフェニルトリクロロシラン、フルオロフェニルトリクロロシラン、ジフルオロフェニルトリクロロシラン、トリフルオロフェニルトリクロロシラン、テトラフルオロフェニルトリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルトリクロロシラン、ヨードフェニルトリクロロシラン、シアノフェニルトリクロロシランなどが挙げられる。
【0094】
緩衝層の抵抗を考慮すると、緩衝層の膜厚は10nm以下が好ましく、さらに好ましくは単分子膜である。また緩衝層は、例えば、上記有機シラン化合物と絶縁層表面とが化学結合して形成されたものも含む。シリル基と絶縁層表面が化学的に反応することで、緻密で強固な膜を形成することができる。反応後の強固な膜の上に、未反応のシラン化合物が積層している場合は、洗浄などをすることによって、未反応のシラン化合物を除去し、シリル基と絶縁層表とが化学結合して形成された単分子膜を得ることができる。
【0095】
緩衝層の形成方法としては、特に限定されないが、CVD法などの気相法や、スピンコート法や浸漬引き上げ法などの液相を用いた方法が挙げられる。
【0096】
緩衝層を形成する前に、その下地となる絶縁層表面をUVオゾン法や酸素プラズマ法などの方法を用いて親水化処理してもよい。これにより、シリル基と絶縁層表面の化学反応を容易にすることができる。
【0097】
このようにして形成された有機FETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流を、ゲート電圧を変化させることによって制御することができる。有機FETの移動度は、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0098】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・ε・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流(A)、Vsdはソース・ドレイン間の電圧(V)、Vgはゲート電圧(V)、Dは絶縁層の厚み(m)、Lはチャネル長(m)、Wはチャネル幅(m)、εは絶縁層の比誘電率(ここではSiOの3.9またはPVPの3.8を使用)、εは真空の誘電率(8.85×10−12F/m)である。
【0099】
また、あるマイナスのゲート電圧におけるId(オン電流)の値と、あるプラスのゲート電圧におけるId(オフ電流)の値の比からオンオフ比を求めることができる。
【0100】
ヒステリシスは、Vgを正から負へと印加した際のId=10−8におけるゲート電圧Vgと、Vgを負から正へと印加した際のId=10−8におけるゲート電圧Vgとの差の絶対値|Vg−Vg|から求めることができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、下記の各実施例にある化合物の番号は上の化学式に記載した化合物の番号を指す。
【0102】
合成化合物同定のためのH−NMRは超伝導FT−NMR「EX−270」(日本電子(株)製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
【0103】
合成例1(化合物(1)の合成)
p−ブロモベンジルブロミド((株)東京化成工業製)12.3gと亜リン酸トリエチル(和光純薬工業製)18.0gを窒素気流下、130℃で5時間還流した。室温まで冷却した後、ジメチルスルホキシド65mlを加え、カリウム−tert−ブトキシド((株)東京化成工業製)7.8gを加えて30分間撹拌した。ここへp−ブロモベンズアルデヒド((株)和光純薬工業製)10.9gを加えて室温で14時間撹拌した。水200mlを加えて生じた固体をろ取し、4、4’−ジブロモ−2,2’−スチルベン4.50gを得た。
【0104】
3−n−ヘキシルチオフェン((株)東京化成工業製)60gをジメチルホルムアミド400mlに溶解し、N−ブロモスクインイミド((株)和光純薬工業製)50gを加え、窒素雰囲気下、室温で4時間撹拌した。得られた溶液に水200mlとヘキサン200mlを加え、有機層を分取した。水200mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、2−ブロモ−3−n−ヘキシルチオフェン60gを得た。
【0105】
次に、マグネシウム粉末4.34gとヨウ素10mgをテトラヒドロフラン100mlに加え、窒素雰囲気下で30分間撹拌した。ここへ、上記2−ブロモ−3−n−ヘキシルチオフェン42gとテトラヒドロフラン100mlの混合溶液を滴下し、1時間加熱還流した。室温に冷却後、5,5’−ジブロモ−2,2’−ビチオフェン20gとテトラヒドロフラン200mlの混合溶液を加え、さらにジフェニルホスフィノプロパンニッケル(II)ジクロライド((株)東京化成工業製)0.48gを少しずつ加え、窒素雰囲気下で3時間加熱還流した。得られた溶液に1N塩化アンモニウム水溶液800mlとヘキサン600mlを加え、有機層を分取した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mlと水200mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、下記式に示す4Tを28g得た。
【0106】
【化19】

【0107】
16.3gの上記4Tとテトラヒドロフラン20mlの混合溶液を−30℃に冷却した後、n−ブチルリチウム溶液(1.6mol/Lのヘキサン溶液)20.8mlを滴下し、室温で1時間撹拌した。混合溶液を−10℃に冷却し、2−イソポロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,2,3−ジオキサボロラン5.73gを加え、室温で3時間撹拌した。得られた溶液に1N塩酸水溶液33ml、水200mlおよびジクロロメタン200mlを加え、有機層を分取した。水100mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、下記式に示す4T−BPinを11.5g得た。
【0108】
【化20】

【0109】
1.6gの上記4T−BPin、4,4’−ジブロモスチルベン0.30gおよびトルエン50mlの混合溶液に、エタノール10ml、2Nの炭酸ナトリウム水溶液15mlおよびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)((株)東京化成工業製)31mgを加え、窒素気流下110℃で9時間還流した。得られた溶液中に析出した固体をろ取し、水20ml、エタノール20ml、トルエン20mlで洗浄後、トルエンから再結晶した。真空乾燥した後、橙色粉末0.90gを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(1)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.89−0.93(t,12H),1.26−1.42(m,24H),1.57−1.68(m,8H),2.74−2.82(m,8H),6.93−6.96(m,6H),7.02(d,2H),7.06(d,2H),7.13−7.24(m,8H),7.52−7.63(dd,8H) 。
【0110】
合成例2(化合物(69)の合成)
ベンジルブロミド((株)東京化成工業製)8.80gと亜リン酸トリエチル17.6gを窒素気流下、130℃で4.5時間還流した。室温まで冷却した後、ジメチルスルホキシド65mlを加え、カリウム−tert−ブトキシド7.6gを加えて30分間撹拌した。ここへp−ブロモベンズアルデヒド10.6gを加えて室温で12時間撹拌した。水200mlを加えて生じた固体をろ取し、4−ブロモスチルベン4.13gを得た。
【0111】
1.6gの4T−BPin、上記4−ブロモスチルベン0.60gおよびトルエン50mlの混合溶液に、エタノール10ml、2Nの炭酸ナトリウム水溶液15mlおよびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)35mgを加え、窒素気流下110℃で5時間還流した。水100ml、トルエン150mlを加え、有機層を分取した。飽和食塩水200mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、真空乾燥後に、橙色粉末1.1gを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(69)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.89−0.93(t,6H),1.26−1.42(m,12H),1.57−1.68(m,4H),2.74−2.82(m,4H),6.93−6.96(m,3H),7.02(d,2H),7.06(d,1H),7.13−7.24(m,4H),7.52−7.72(dd,8H) 。
【0112】
合成例3(化合物(24)の合成)
チオフェン((株)東京化成工業製)8.0gをテトラヒドロフラン150mlに溶解し、0℃まで冷却した。ここにn−ブチルリチウム溶液(1.6mol/lのヘキサン溶液)62.0mlを滴下し、3時間撹拌した。n−ドデシルブロミド((株)和光純薬工業製)25.0gを滴下し、室温で18時間撹拌した。得られた溶液に、水150mlとジクロロメタン150mlを加えて、有機層を分取した。水300mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、その後減圧蒸留により2−n−ドデシルチオフェン12.9gを得た。
【0113】
2−n−ドデシルチオフェン8.00gをテトラヒドロフラン100mlに溶解し、−80℃に冷却した。ここに、n−ブチルリチウム溶液(1.6mol/lのヘキサン溶液)20.0mlを滴下し、4時間撹拌した。−30℃まで昇温し、2−イソポロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン6.63gを滴下し、室温にて4.5時間撹拌した。得られた溶液に水100ml、ジクロロメタン150mlを加え、有機層を分取した。飽和食塩水200mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、下記式に示す5−DDT−BPin10.3gを得た。
【0114】
【化21】

【0115】
4,4’−ジブロモスチルベン338mgと上記5−DDT−BPin1.10g、トルエン36.0ml、エタノール7.20ml、2Mの炭酸ナトリウム水溶液10.0mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)52.0mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で17.5時間加熱撹拌した。得られた溶液に水50ml、ジクロロメタン100mlを加えて固体をろ取した。メタノールとヘキサンで洗浄した後、トルエン50mlから再結晶した。真空乾燥後、黄色光沢粉末を470mg得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(24)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.86−0.90(t,6H),1.27(m,36H),1.68−1.73(m,4H),2.78−2.84(m,4H),6.73−6.74(d,2H),7.08(s,2H),7.12−7.14(d,2H),7.46−7.56(dd,8H) 。
【0116】
合成例4(化合物(72)の合成)
4−ブロモスチルベン400mgと5−DDT−BPin2.10g、トルエン70.0ml、エタノール15ml、2Mの炭酸ナトリウム水溶液20mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)100mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で10時間加熱撹拌した。得られた溶液に水100ml、ジクロロメタン100mlを加えて固体をろ取した。メタノールとヘキサンで洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン)で精製し、真空乾燥後に、黄色粉末810mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(72)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.86−0.90(t,3H),1.27(m,18H),1.68−1.73(m,2H),2.78−2.84(m,2H),6.73−6.74(d,2H),7.08(s,1H),7.12−7.14(d,1H),7.46−7.70(dd,8H) 。
【0117】
合成例5(化合物(36)の合成)
3−n−ヘキシルチオフェン3.0gをテトラヒドロフラン40mlに溶解し、−80に冷却した。ここに、n−ブチルリチウム溶液(1.6mol/lのヘキサン溶液)12.0mlを滴下し、2時間撹拌した。−20℃まで昇温し、2−イソポロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン5.50gを滴下し、室温にて4.5時間撹拌した。得られた溶液に水100ml、ジクロロメタン100mlを加え、有機層を分取した。飽和食塩水300mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、下記に示す4−n−HT−BPin4.64gを得た。
【0118】
【化22】

【0119】
4,4’−ジブロモスチルベン409mg、4−n−HT−BPinチオフェン1.82g、トルエン50ml、エタノール15ml、2M炭酸ナトリウム水溶液20mlの混合溶液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)120mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で19時間加熱撹拌した。生じた固体をろ取し、メタノールとヘキサンで洗浄し、トルエン50mlから再結晶した。真空乾燥後、下記式に示すBTSを438mg得た。
【0120】
【化23】

【0121】
BTS438mgをクロロホルム50mlに加熱溶解し、ジメチルホルムアミド200mlを加えた。ここにn−ブロモスクシンイミド343mgを加え、窒素雰囲気下、室温にて4.5時間撹拌した。析出した固体をろ取し、メタノールで洗浄し、下記式に示すBTS−2Brを506.5mg得た。
【0122】
【化24】

【0123】
BTS−2Brを87.8mg、5−DDT−BPinを972mg、トルエン10ml、エタノール2.0ml、2M炭酸ナトリウム水溶液3.0mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)30.9mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で9時間加熱撹拌した。得られた溶液に水50ml、ジクロロメタン100mlを加えて有機層を分取し、水100mlで洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、オレンジ色の固体を得た。トルエンから再結晶し、黄色固体を48.2mg得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(36)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.86−0.90(m,48H),1.27(m,36H),1.62−1.70(m,8H),2.72−2.84(m,8H),6.72−6.73(d,2H),6.95−6.96(d,2H),7.11−7.16(d,4H),7.49−7.59(dd,8H) 。
【0124】
合成例6(化合物(74)の合成)
BTS300mgをクロロホルム35mlに加熱溶解し、ジメチルホルムアミド150mlを加えた。ここにn−ブロモスクシンイミド272mgを加え、窒素雰囲気下、室温にて3時間撹拌した。析出した固体をろ取し、メタノールで洗浄し、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン)で精製し、真空乾燥後に下記式に示すBTS−Brを420mg得た。
【0125】
【化25】

【0126】
上記BTS−Brを170mg、5−DDT−BPinを980mg、トルエン20ml、エタノール3.0ml、2M炭酸ナトリウム水溶液4.0mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)32.9mgを加え、窒素雰囲気下、100℃で7時間加熱撹拌した。得られた溶液に水150ml、ジクロロメタン100mlを加えて有機層を分取し、水100mlで洗浄した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン)で精製し、真空乾燥後に、黄色粉末810mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(74)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.86−0.90(t,6H),1.27
(m,22H),1.62−1.70(m,4H),2.72−2.84(m,4H),6.72−6.73(d,2H),6.95−6.96(d,1H),7.11−7.16(d,2H),7.49−7.59(dd,8H) 。
【0127】
合成例7(化合物(37)の合成)
2−チオフェンエタノール((株)東京化成工業製)17.4gを0℃に冷却し、水素化ナトリウム(60%油性)7.05gをテトラヒドロフラン110mlに加えた懸濁液を滴下した。窒素雰囲気下0℃にて20分間撹拌し、1−ブロモノナン((株)和光純薬工業製)27.4gを滴下した。その後90℃に昇温し、8時間加熱撹拌した。反応溶液に水100ml、ジクロロメタン100mlを加えて有機層を分取した。飽和食塩水300mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、ノニルオキシエチルチオフェン19.7g得た。
【0128】
ノニルオキシエチルチオフェン11.7gをテトラヒドロフラン90mlに溶解し、−80℃に冷却した。ここに、n−ブチルリチウム溶液(1.6mol/lのヘキサン溶液)34.0mlを滴下し、6時間撹拌した。−30℃まで昇温し、2−イソポロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン10.2gを滴下し、室温にて18時間撹拌した。得られた溶液に水100ml、ヘキサン100mlを加え、有機層を分取した。水300mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、下記式に示す5−NOET−BPin8.75gを得た。
【0129】
【化26】

【0130】
4,4’−ジブロモスチルベン207mg、上記5−NOET−BPin685mg、トルエン20ml、エタノール4ml、2M炭酸ナトリウム水溶液5mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)67.0mgを加え、窒素雰囲気下、100℃にて10時間加熱撹拌した。得られた溶液にジクロロメタン70ml、水50mlを加えて有機層を分取した。水150mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、薄黄色粉末79.6mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(37)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.85−0.90(m,6H),1.27(m,24H),1.57−1.63(m,4H),3.07−3.12(t,4H),3.45−3.50(t,4H),3.66−3.70(t,4H),6.81−6.82(d,2H),7.10(s,2H),7.15−7.17(d,2H),7.48−7.57(dd,8H) 。
【0131】
合成例8(化合物(76)の合成)
4−ジブロモスチルベン400mg、上記5−NOET−BPin690mg、トルエン25ml、エタノール6ml、2M炭酸ナトリウム水溶液7mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)75.0mgを加え、窒素雰囲気下、100℃にて8時間加熱撹拌した。得られた溶液にジクロロメタン100ml、水150mlを加えて有機層を分取した。水150mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、薄黄色粉末82.1mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(76)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.85−0.90(m,3H),1.27(m,12H),1.57−1.63(m,2H),3.07−3.12(t,2H),3.45−3.50(t,2H),3.66−3.70(t,2H),6.81−6.82(d,2H),7.10(s,1H),7.15−7.17(d,1H),7.48−7.57(dd,8H) 。
【0132】
合成例9(化合物(60)の合成)
2−チオフェンエタノール18.0gを0℃に冷却し、水素化ナトリウム(60%油性)
7.15gをテトラヒドロフラン110mlに加えた懸濁液を滴下した。窒素雰囲気下0℃にて20分間撹拌し、1−(2−ブロモエトキシ)−ブタン((株)東京化成工業製)28.1gを滴下した。その後90℃に昇温し、9時間加熱撹拌した。反応溶液に水100ml、ジクロロメタン100mlを加えて有機層を分取した。水200mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、2−(2−(ブチルオキシ)エチルオキシ)エチルチオフェン21.5g得た。
【0133】
2−(2−(ブチルオキシ)エチルオキシ)エチルチオフェン13.4gをテトラヒドロフラン100mlに溶解し、−80℃に冷却した。ここに、n−ブチルリチウム溶液(1.6mol/lのヘキサン溶液)40.0mlを滴下し、5時間撹拌した。−30℃まで昇温し、2−イソポロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン13.2gを滴下し、室温にて20時間撹拌した。得られた溶液に水100ml、ヘキサン100mlを加え、有機層を分取した。水300mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧留去し、下記式に示す5−BOEOET−BPin9.12gを得た。
【0134】
【化27】

【0135】
4,4’−ジブロモスチルベン0.50mg、上記5−BOEOET−BPin1.53g、トルエン60ml、エタノール20ml、2M炭酸ナトリウム水溶液25mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)210mgを加え、窒素雰囲気下、100℃にて13時間加熱撹拌した。得られた溶液にジクロロメタン150ml、水200mlを加えて有機層を分取した。水300mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、黄色粉末237mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(60)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.89−0.94(t,6H),1.32−1.41(m,4H),1.54−1.60(t,4H),3.09−3.14(t,4H),3.44−3.49(t,4H9,3.57−3.64(m,8H),3.69−3.74(t,4H),6.83−6.84(d,2H),7.08(s,2H),7.15−7.16(d,2H),7.48−7.55(dd,8H) 。
【0136】
合成例10(化合物(80)の合成)
4―ブロモスチルベン1.13g、上記5−BOEOET−BPin1.92g、トルエン100ml、エタノール30ml、2M炭酸ナトリウム水溶液40mlの混合溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)410mgを加え、窒素雰囲気下、100℃にて10時間加熱撹拌した。得られた溶液にジクロロメタン150ml、水200mlを加えて有機層を分取した。水500mlで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、薄黄色粉末500mgを得た。得られた粉末の1H−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(80であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.89−0.94(t,3H),1.32−1.41(m,2H),1.54−1.60(t,2H),3.09−3.14(t,2H),3.44−3.49(t,2H),3.57−3.64(m,4H),3.69−3.74(t,2H),6.83−6.84(d,2H),7.08(s,1H),7.15−7.16(d,1H),7.48−7.55(dd,8H) 。
【0137】
合成例11(化合物(62)の合成)
4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル((株)東京化成工業製)3.1gと亜リン酸トリエチル8.6mlの混合溶液を150℃で5時間加熱撹拌した。室温に冷却後、ジメチルスルホキシド50ml、カリウム−t−ブトキシド2.8gを加え室温で10分間撹拌した。続いて、3−ヘキシル−2−チオフェンアルデヒド((株)アルドリッチ社製)を4.9g加え、室温で5時間撹拌した。得られた溶液に、エタノール30mlを加え、ろ過し、エタノール20mlで洗浄後、下記式に示すTPVを2.8g得た。
【0138】
【化28】

【0139】
2.8gの上記TPVとジメチルホルムアミド30mlの混合溶媒にN−ブロモスクシンイミド1.78gを加え、窒素気流下、室温で10時間撹拌した。得られた溶液をろ過し、ジメチルホルムアミド10ml、メタノール20mlで洗浄後、下記式に示すTPV−2Brを1.4g得た。
【0140】
【化29】

【0141】
0.53gの上記4T−BPin、0.20gの上記TPV−2Brおよびトルエン15mlの混合溶液に、エタノール3mlと2Nの炭酸ナトリウム水溶液5ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)10mgを加え、窒素気流下110℃で6時間還流した。得られた溶液に水20mlとジクロロメタン50mlを加え有機層を分取した。水20mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、真空乾燥した後、赤橙色粉末70mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(62)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.87−0.94(t,18H),1.28−1.36(m,36H),1.60−1.68(m,12H),2.65−2.81(m,12H),6.91−6.95(m,6H),7.02−7.05(m,6H),7.13(d,4H),7.18(d,2H),7.26(d,2H),7.53−7.64(dd,8H) 。
【0142】
合成例12(化合物(82)の合成)
2.5gの上記TPVとジメチルホルムアミド20mlの混合溶媒にN−ブロモスクシンイミド0.85gを加え、窒素気流下、室温で5時間撹拌した。得られた溶液をろ過し、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、下記式に示すTPV−Brを0.90g得た。
【0143】
【化30】

【0144】
0.53gの4T−BPin、0.50gの上記TPV−Brおよびトルエン20mlの混合溶液に、エタノール5mlと2Nの炭酸ナトリウム水溶液10ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)25mgを加え、窒素気流下110℃で6時間還流した。得られた溶液に水50mlとジクロロメタン50mlを加え有機層を分取した。水50mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、カラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し、真空乾燥した後、橙色粉末70mgを得た。得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りであり、化合物(82)であることを確認した。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):0.87−0.94(t,12H),1.28−1.36(m,24H),1.60−1.68(m,8H),2.65−2.81(m,8H),6.91−6.95(m,4H),7.02−7.05(m,2H),7.13(d,4H),7.18(d,2H),7.26(d,2H),7.53−7.64(dd,8H) 。
【0145】
実施例1
(1)有機半導体コンポジット溶液の作製
共役系重合体であるポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000、以下P3HTという)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0146】
次に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%、以下単層CNTという)1.5mgと、上記P3HT1.5mgを30mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分行った時点で一度照射を停止し、P3HTを1.5mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT複合体分散液A(溶媒に対するCNT濃度0.05g/l)を得た。
【0147】
上記CNT複合体分散液A中で、P3HTがCNTに付着しているかどうかを調べるため、分散液A5mlをメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、フィルター上にCNTを捕集した。捕集したCNTを、溶媒が乾かないうちに素早くシリコンウエハー上に転写し、乾燥したCNTを得た。このCNTを、X線光電子分光法(XPS)を用いて元素分析したところP3HTに含まれる硫黄元素が検出された。従って、CNT複合体分散液A中のCNTにはP3HTが付着していることが確認できた。
【0148】
次に、半導体層4を形成するための有機半導体コンポジット溶液の作製を行った。上記分散液Aをメンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNTを除去した。得られたろ液をCNT複合体分散液Bとした。CNT複合体分散液B0.2mlおよびテトラヒドロナフタレン0.8mlの混合溶液に、有機半導体(A)として化合物(1)4mgと有機半導体(B)として化合物(69)1mg加え、有機半導体コンポジット溶液を作製した。このとき、有機半導体(A)100重量部に対して有機半導体(B)は25重量部であり、有機半導体コンポジット溶液中の有機半導体全体の濃度を5g/l、CNTの有機半導体に対する濃度を0.2重量%に調整した。
【0149】
(2)絶縁層用ポリマー溶液の作製
メチルトリメトキシシラン61.29g(0.45モル)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点170℃)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水からなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のポリマー溶液Aを得た。
【0150】
得られたポリマー溶液Aを50gはかり取り、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート16.6gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ポリマー溶液B(固形分濃度19.5重量%)を得た。
【0151】
(3)有機FETの作製
図1に示す有機FETを作製した。ガラス製の基板1上に、抵抗加熱法により、マスクを通してクロムを5nmおよび金を50nm真空蒸着し、ゲート電極2を形成した。次に上記(2)に記載の方法で作製したポリマー溶液Bを上記ゲート電極が形成されたガラス基板上にスピンコート塗布(2000rpm×30秒)し、窒素気流下200℃、1時間熱処理することによって、膜厚600nmのゲート絶縁層3を形成した。次に、抵抗加熱法により、マスクを通して金を膜厚50nmになるように真空蒸着し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0152】
これら両電極の幅(チャネル幅)は0.1cm、両電極の間隔(チャネル長)は20μmとした。電極が形成された基板上に上記(1)に記載の方法で作製した有機半導体コンポジット溶液を0.1μL滴下し、30℃で10分間風乾した後、ホットプレート上で窒素気流下、150℃、30分の熱処理を行い、有機FETを得た。同様にして30個の有機FETを作製した。
【0153】
次に、上記有機FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用い、大気中で測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、30個の有機FETの平均の移動度は0.38cm/V・secであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ平均5.5×10であった。このとき、移動度の対数値の標準偏差を求めたところσ=0.33であり、オンオフ比の対数値の標準偏差はσ=0.29であった。
【0154】
比較例1
有機半導体として化合物(1)のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてFET素子を形成し、特性を測定した。Vg=+50〜−50Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、移動度の平均は0.42cm/V・secであり、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ平均で7.8×10であった。またこのときの移動度の対数値の標準偏差は0.48、オンオフ比の標準偏差は0.85であった。
【0155】
実施例2〜6、比較例2〜8
有機半導体として表1に示す有機半導体を用いた以外は、実施例1と同様にして有機FETを形成し、特性を測定した。各実施例および比較例の結果を表1に示した。
【0156】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の有機半導体コンポジットは、スマートカード、セキュリティータグ、フラットパネルディスプレイ用のトランジスタアレイなどへ利用可能な有機TFTや、その他有機トランジスタに用いられる。
【符号の説明】
【0158】
1 基板
2 ゲート電極
3 絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと複数の分子量3000以下の有機半導体を含有する有機半導体コンポジットであって、前記複数の分子量3000以下の有機半導体が、少なくとも分子量M(A)の有機半導体(A)および該有機半導体(A)の部分構造からなる分子量M(B)の有機半導体(B)を含有し、前記M(A)と前記M(B)が2M(B)≧M(A)の関係を満たす有機半導体コンポジット。
【請求項2】
前記有機半導体(A)が下記一般式(1)で表される請求項1記載の有機半導体コンポジット。
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは単結合、ビニレン基、エチニレン基、アゾ基、アゾメチン基、エーテル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。YおよびYは同じでも異なっていてもよく、それぞれ下記一般式(2)で表される基を示す。)
【化2】

(上記一般式(2)中、R〜Rは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ホルミル基、カルバモイル基、アミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基またはシリル基を示す。また隣り合うR〜RまたはR〜Rは互いに結合して環構造を形成してもかまわない。nは0〜10の整数を示す。)
【請求項3】
前記有機半導体(B)が下記一般式(3)で表される請求項2記載の有機半導体コンポジット。
【化3】

(上記一般式(3)中、Xは単結合、ビニレン基、エチニレン基、アゾ基、アゾメチン基、エーテル基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。Yは前記一般式(2)で表される基を示す。)
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したものである請求項1〜3いずれか記載の有機半導体コンポジット。
【請求項5】
前記有機半導体(B)の含有量が、前記有機半導体(A)100重量部に対して100重量部以下である請求項1〜4いずれか記載の有機半導体コンポジット。
【請求項6】
ゲート電極、絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する有機電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が請求項1〜5いずれか記載の有機半導体コンポジットを含有する有機電界効果型トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−225974(P2010−225974A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73356(P2009−73356)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】