説明

有機半導体材料、有機半導体膜、有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタ

【課題】 簡単なプロセスで製造され、トランジスタとしての特性が良好であり、さらに経時劣化が抑えられた有機半導体材料、それを用いた有機半導体膜、有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタを提供することである。
【解決手段】 水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を有し、かつ分子構造内に金属を含まない化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高移動度で耐久性に優れた有機半導体材料、有機半導体膜、有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、さらに情報化の進展に伴い、従来、紙媒体で提供されていた情報が電子化される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては、液晶、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、電気泳動等を利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度等を確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば、通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
【0004】
ここでTFT素子には主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)等の半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には通常、スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
【0005】
しかしながら、このようなTFT素子の製造では、真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えば、TFT素子では、通常それぞれの層の形成のために真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。スイッチング動作の要となる半導体部分に関しても、p型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされる等、設備の変更が容易ではない。
【0006】
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。
【0007】
このため実際上はガラスを用いざるをえず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイを、こうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にTFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
【0008】
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料のほか、例えば非特許文献1等において論じられているような有機レーザー発振素子や、例えば非特許文献2等、多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタ素子(有機TFT素子)への応用が期待されている。これら有機半導体デバイスを実現できれば、比較的低い温度での真空ないし低圧蒸着による製造プロセスの簡易化や、さらにはその分子構造を切に改良することによって、溶液化できる半導体を得る可能性があると考えられ、塗布法、インクジェット法による製造も考えられる。これらの低温プロセスによる製造は、従来のSi系半導体材料については不可能とえられてきたが、有機半導体を用いたデバイスにはその可能性があり、従って前述の基板耐熱性に関する制限が緩和され、透明樹脂基板上にも例えばTFT素子を形成できる可能がある。透明樹脂基板上にTFT素子を形成し、そのTFT素子により表示材料を駆動させることができれば、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)ディスプレイとすることができるであろう。
【0009】
一方、TFT素子を実現するための有機半導体としてこれまでに検討されてきた有機材料としては、ペンタセンやテトラセン等アセン類(例えば、特許文献1参照)、鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物(例えば、特許文献2参照)や、α−チエニルもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー(例えば、特許文献3参照)、ナフタレン、アントラセンに5員の芳香族複素環が対称に縮合した化合物(例えば、特許文献4参照)、モノ、オリゴ及びポリジチエノピリジン(例えば、特許文献5参照)、さらにはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子等限られた種類の化合物(例えば、非特許文献1〜3参照)が報告されており、特にSi材料同等性能を示すものとして、ペンタセンを用いた蒸着膜が高い配列性と高移動度を示すことがよく知れているが、ペンタセンは通常、有機溶媒に不溶性のため塗布することが難しい。また塗布膜としては、アルキル基を導入したポリチオフェンやオリゴチオフェンがよく知られているが、これらはアルキル基を導入することにより、有機溶媒への溶解性が向上した反面、分子配列が乱れている部分が多く、高移動度が得られておらず、「有機溶媒への溶解性」と「膜中での分子配列性」を同時に満足するようなSi材料同等性能の有機半導体材料は得られていない。
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【特許文献2】特開平5−190877号公報
【特許文献3】特開平8−264805号公報
【特許文献4】特開平11−195790号公報
【特許文献5】特開2003−155289号公報
【非特許文献1】『サイエンス』(Science)誌289巻、599ページ(2000)
【非特許文献2】『ネイチャー』(Nature)誌403巻、521ページ(2000)
【非特許文献3】『アドバンスド・マテリアル』(Advanced Material)誌、2002年、第2号、99ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、簡単なプロセスで製造され、トランジスタとしての特性が良好であり、さらに経時劣化が抑えられた有機半導体材料、それを用いた有機半導体膜、有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を有し、かつ分子構造内に金属を含まない化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【0013】
2.前記芳香族基が2つ以上有ることを特徴とする前記1に記載の有機半導体材料。
【0014】
3.前記芳香族基が芳香族複素環基であることを特徴とする前記1または2に記載の有機半導体材料。
【0015】
4.前記芳香族複素環基が下記一般式(1)で表されることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、Aは5〜7員の含窒素複素環を表し、N及びNHを少なくとも一つ含む。)
5.前記含窒素複素環が下記一般式(2)、(3)または(4)で表されるイミダゾール基であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R1〜R6は水素原子または置換基を表す。)
6.前記分子構造内に金属を含まない化合物が下記一般式(5)、(6)または(7)で表される化合物であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【0020】
【化3】

【0021】
(式中、Lは芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表し、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42、R51、R52、R61、R62は水素原子または置換基を表す。)
7.前記Lがチオフェンオリゴマーを含み、チオフェン環数が2〜20であることを特徴とする前記6に記載の有機半導体材料。
【0022】
8.前記Lが下記一般式(8)で表される部分構造を有することを特徴とする前記6または7に記載の有機半導体材料。
【0023】
【化4】

【0024】
(式中、R7は置換基を表す。)
9.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜。
【0025】
10.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【0026】
11.前記1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡単なプロセスで製造され、トランジスタとしての特性が良好であり、さらに経時劣化が抑えられた有機半導体材料、それを用いた有機半導体膜、有機半導体デバイス及び有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明者は鋭意検討の結果、水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を有し、かつ分子構造内に金属を含まない化合物を含有する有機半導体材料は、簡単なプロセスで製造され、トランジスタとしての特性が良好であり、さらに経時劣化が抑えられた有機半導体材料であることを見出した。
【0029】
有機半導体分子の(両末端に)水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を導入することにより、膜中での前記芳香族基同士の分子間水素結合により、分子配列性の高い結晶膜を提供することが可能になる。図1はイミダゾール基の例を示しているが、本発明はこれに限らない。また前記芳香族基は、(アルコール等の)水素結合性の有機溶媒中では分子間水素結合が解離するため、有機溶媒に可溶である。
【0030】
さらに有機半導体骨格分子間のπ−π相互作用と前記分子水素結合の相乗効果により、薄膜中での分子配列性を向上させることが可能となる。
【0031】
従来技術において、ペンタセンを用いた蒸着膜が高い配列性と高移動度を示すことがよく知れているが、ペンタセンは通常、不溶性のため塗布することが難しい。また塗布膜としては、アルキル基を導入したポリチオフェンやオリゴチオフェンがよく知られているが、これらはアルキル基を導入することにより、有機溶媒への溶解性が向上した反面、分子配列が乱れている部分が多く、高移動度が得られていない。
【0032】
本発明において、従来、配列性の悪い、有機溶媒に対して溶解性の有機半導体材料に水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を導入することにより、有機溶媒への溶解性を損なうことなく、塗布膜中での前記芳香族基同士の分子間水素結合により、高配列性、高移動度の塗布膜を形成することが可能になった。
【0033】
本発明の概念を説明するため、図1に水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基(以下、水素結合性芳香族基ともいう)を導入した有機分子膜の分子配列構造のイメージを示した。ただし、分子構造及び分子配列構造はここに示したものに限るものではない。図1でLは有機分子を表しており、例えば、水素結合性芳香族基を有しないLを用いた有機分子膜の分子配列構造は、膜全体あるいは部分的に図1(a)のようにアモルファル状態を形成しているとする。ここで図1(b)に示すように、水素結合性芳香族基を1つ導入した化合物を用いた有機分子膜の分子配列構造は、水素結合性芳香族基間の分子間相互作用により、膜全体あるいは部分的にダイマー構造を形成し、図1(a)に比べ分子配列性のよい有機分子膜が得られる。さらに図1(c)に示すような水素結合性芳香族基を2つ導入した化合物では、膜全体あるいは部分的に高次の分子配列構造を形成し、さらに分子配列性のよい有機分子膜が得られる。
【0034】
また水素結合性芳香族基の特徴としては、(アルコール等の)水素結合性の有機溶媒中では分子間水素結合が解離するため、有機溶媒に可溶となる。
【0035】
例えば、前述した有機溶媒へ溶解性の有機半導体分子へ水素結合性芳香族基を導入することにより、有機溶媒への溶解性を低下させることなく、分子配列性を向上させることができ、前述した塗布法やインクジェット法により容易に高性能な有機半導体膜を提供することが可能となる。
【0036】
さらに有機半導体骨格分子間のπ−π相互作用と前記分子間水素結合の相乗効果により、薄膜中での分子配列性を向上させることが可能となる。このため塗布法、インクジェット法等による溶液からの膜形成プロセスに限らず、蒸着法、溶融法やその他膜形成法においても高性能な有機半導体膜を提供することが可能となる。
【0037】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について説明する。
【0038】
〔有機半導体材料〕
(分子構造内に水素結合性芳香族基を有する化合物を含む有機半導体材料)
分子構造内に水素結合性芳香族基を有する化合物を含む有機半導体材料について、まず水素結合基性芳香族基の例を以下に示す。ただし、本発明はこれに限らない。
【0039】
【化5】

【0040】
また有機半導体材料の水素結合基性芳香族基以外の部分としては、特に限定はしないが、芳香族炭化水素環または芳香族複素環を含む化合物が好ましく、さらに好ましくは、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が縮合した芳香族炭化水素縮合環または芳香族複素縮合環である。
【0041】
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。中でも好ましく用いられるのはベンゼン環である。さらに、これらの芳香族炭化水素環は、無置換でも置換基を有していてもよいが、該置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素環は、無置換でも置換基を有していてもよい。
【0042】
芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくとも一つがさらに窒素原子で置換されている環等が挙げられる。これらの芳香族複素環は、無置換でも置換基を有していてもよい。
【0043】
さらに有機半導体材料は前記一般式(1)〜(8)で表される分子構造あるいは、一般式(1)〜(8)で表される分子構造を含む化合物であることが好ましい。
【0044】
(一般式(1)で表される分子構造)
前記一般式(1)において、Aは5〜7員の含窒素複素環を表し、N及びNHを少なくとも1つずつ含む。一般式(1)で表される部分構造の例を下記に示す。ただし、本発明はこれに限らない。
【0045】
【化6】

【0046】
(一般式(2)〜(4)で表される分子構造)
前記一般式(2)〜(4)において、R16は水素原子あるいは置換基を示す。置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。中でも、前記置換基はアルキル基であることが好ましい。これらの置換基は上記の置換基によってさらに置換されていても、複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0047】
(一般式(5)〜(7)で表される分子構造)
前記一般式(5)〜(7)において、Lは芳香族炭化水素環または芳香族複素環を含む分子構造を有する。
【0048】
芳香族炭化水素環としては、前述したベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。中でも好ましく用いられるのはベンゼン環である。これらの芳香族炭化水素環は、無置換でも置換基を有していてもよい。
【0049】
芳香族複素環としては、前述したフラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の少なくともひとつがさらに窒素原子で置換されている環等が挙げられる。これらの芳香族複素環は、無置換でも置換基を有していてもよい。
【0050】
またR11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42、R51、R52、R61、R62及びR62は水素原子あるいは置換基を示す。置換基はR16の記述で示したものが挙げられるが、好ましくはアルキル基である。
【0051】
(一般式(8)で表される部分構造)
前記一般式(8)において、R7は置換基を表す。置換基としては、前記一般式(2)〜(4)のR16で例示した置換基が挙げられるが、好ましくはアルキル基である。
【0052】
本発明に係るチオフェンオリゴマーは、構造中に、Head−to−Head構造を持たないことが好ましく、それに加えて、さらに好ましくはHead−to−Tail構造またはTail−to−Tail構造を有することである。本発明に係るHead−to−Head構造、Head−to−Tail構造、Tail−to−Tail構造については、例えば、『π電子系有機固体』(1998年、学会出版センター発行、日本化学界編)27〜32頁、Adv.Mater.1998,10,No.2,93〜116頁等により参照できる。
【0053】
以下、本発明に係る有機半導体材料の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
【化12】

【0060】
【化13】

【0061】
【化14】

【0062】
【化15】

【0063】
【化16】

【0064】
本発明において、水素結合性芳香族基はその先駆体であってもよい。先駆体とは、エネルギーの印加または化学的処理により、水素結合性芳香族基を生成させることを目的とした化合物でる。例えば、含窒素複素環の先駆体としては、複素環NHのHをアシル基やベンゾイル基で置換した化合物が挙げられるが、これに限るものではない。
【0065】
以下に、これらの化合物の合成例を示す。
【0066】
〔化合物3の合成〕
下記スキームにより化合物3を合成した。
【0067】
【化17】

【0068】
(中間体2の合成)
J.Phys.Chem.,99,10,1995,3218−3224に従って合成した中間体1 6.6gをTHF200mlに溶解し、−70℃で1.6Mのn−BuLi9mlを加え、−70℃2時間、攪拌し、B(OMe)33gを加え、さらに−70℃で0.5時間、室温で2時間攪拌し、5質量%塩酸10mlを加え室温で0.5時間攪拌した。得られた反応混合物を水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去したのち、カラムクロマトグラフィーにて目的物を単離し、中間体2 3.3gを得た(収率42%)。
【0069】
(化合物3の合成)
窒素雰囲気下、THF40ml中に中間体2を1.1g、4−ブルモ−1(3)−イミダゾールを3g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を0.3g、20質量%炭酸カリウム水溶液1mlを加え、還流下72時間攪拌した。得られた反応混合物を水、飽和食塩水で洗った後、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーにより化合物2を0.45g得た(収率38%)。得られた化合物3の分子構造は、1H−NMR(核磁気共鳴スペクトル)及び質量スペクトル測定を行い、目的物と矛盾しないことを確認した。さらにHPLC測定した結果より99%以上の純度であることを確認した。
【0070】
その他の類似化合物も同様にして合成することができる。
【0071】
〔有機半導体膜、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタ〕
本発明の有機半導体膜、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタについて説明する。
【0072】
本発明の有機半導体材料は、有機半導体膜、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタの半導体層に用いることにより、良好に駆動する有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタを提供することができる。有機薄膜トランジスタは、支持体上に、半導体層として有機半導体で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にまずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体で連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
【0073】
本発明の有機半導体材料を有機半導体膜、有機半導体デバイス、有機薄膜トランジスタの半導体層に設置するには、真空蒸着により基板上に設置することもできるが、適切な溶媒に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置するのが好ましい。
【0074】
この場合、本発明の有機半導体材料を溶解する溶媒は、有機半導体材料を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば格別の制限はないが、具体的にはジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサン等の環状エーテル系溶媒、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルムや1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m−クレゾール等の芳香族系溶媒、N−メチルピロリドン、2硫化炭素等を挙げることができる。これらの溶媒のうち、非ハロゲン系溶媒を含む溶媒が好ましく、非ハロゲン系溶媒で構成することが好ましい。
【0075】
本発明の有機薄膜トランジスタは、本発明の有機半導体材料を前述のように半導体層に用いることが好ましい。前記半導体層は、これらの有機半導体材料を含有する溶液または分散液を塗布することにより形成することが好ましい。有機半導体材料を溶解する溶媒は、前記非ハロゲン系溶媒を含む溶媒が好ましく、非ハロゲン系溶媒で構成することが好ましい。
【0076】
本発明において、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウムマグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO及び炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0077】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0078】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。それらのうち好ましいのは酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0079】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法等のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0080】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶媒あるいは水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
【0081】
大気圧下でのプラズマ製膜処理による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406号公報、同11−133205号公報、特開2000−121804号公報、同2000−147209号公報、同2000−185362号公報等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0082】
また有機化合物皮膜として、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂及びシアノエチルプルラン等を用いることもできる。有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは100nm〜1μmである。
【0083】
また、支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えば、プラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0084】
以下に、本発明の有機半導体材料を用いて形成された有機半導体膜を用いた有機薄膜トランジスタについて説明する。
【0085】
図2は、本発明の有機薄膜トランジスタの構成例を示す図である。同図(a)は、支持体6上に金属箔等によりソース電極2、ドレイン電極3を形成し、両電極間に本発明の有機半導体材料からなる有機半導体層1を形成し、その上に絶縁層5を形成し、さらにその上にゲート電極4を形成して有機薄膜トランジスタを形成したものである。同図(b)は、有機半導体層1を、(a)では電極間に形成したものを、コート法等を用いて電極及び支持体表面全体を覆うように形成したものを表す。(c)は、支持体6上に先ずコート法等を用いて、有機半導体層1を形成し、その後ソース電極2、ドレイン電極3、絶縁層5、ゲート電極4を形成したものを表す。
【0086】
同図(d)は、支持体6上にゲート電極4を金属箔等で形成した後、絶縁層5を形成し、その上に金属箔等で、ソース電極2及びドレイン電極3を形成し、該電極間に本発明の有機半導体材料により形成された有機半導体層1を形成する。その他同図(e)、(f)に示すような構成を取ることもできる。
【0087】
図3は、有機薄膜トランジスタシートの概略等価回路図の1例を示す図である。
【0088】
有機薄膜トランジスタシート10はマトリクス配置された多数の有機薄膜トランジスタ11を有する。7は各有機薄膜トランジスタ11のゲートバスラインであり、8は各有機薄膜トランジスタ11のソースバスラインである。各有機薄膜トランジスタ11のソース電極には、出力素子12が接続され、この出力12は例えば液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。画素電極は光センサの入力電極として用いてもよい。図示の例では、出力素子として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。13は蓄積コンデンサ、14は垂直駆動回路、15は水平駆動回路である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0090】
実施例1
《有機TFT(有機薄膜トランジスタ)素子1〜3の作製》:比較例
ゲート電極としての比抵抗0.01Ω・cmのSiウェハーに、厚さ2000Åの熱酸化膜を形成してゲート絶縁層とした後、オクタデシルトリクロロシランによる表面処理を行った。比較化合物(1)(ルブレン、アリドリッチ社製)のクロロホルム溶液をアプリケーターを用いて塗布し、自然乾燥することによりキャスト膜(膜厚50nm)を形成して、窒素雰囲気下で50℃、30分間の熱処理を施した。
【0091】
さらに、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着してソース電極及びドレイン電極を形成した。ソース電極及びドレイン電極は幅100μm、厚さ200nmで、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの有機薄膜TFT素子1を作製した。
【0092】
《有機TFT素子2、3の作製》:比較例
有機TFT素子1の作製において、比較化合物1を比較化合物2、3に変更した以外は同様にして、それぞれ有機TFT素子2、3を作製した。
【0093】
【化18】

【0094】
《有機TFT素子4〜10の作製》:本発明
有機TFT素子1の作製において、比較化合物1を表1に記載の本発明の例示化合物(有機半導体材料)に変更した以外は同様にして、有機薄膜TFT素子4〜10を作製した。
【0095】
【化19】

【0096】
《キャリア移動度及びON/OFF比の評価》
得られた有機TFT素子1〜10について、作製直後と大気中で1ヶ月放置後の各素子のキャリア移動度とON/OFF比を求めた。なお、本発明では、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求め、さらに、ドレインバイアス−50Vとし、ゲートバイアス−50V及び0Vにしたときのドレイン電流値の比率からON/OFF比を求めた。その結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
表1から、比較の有機半導体材料を用いて作製した有機TFT素子と比べて、本発明の有機TFT素子4〜7は、作製直後においても優れたトランジスタ特性を示し、かつ、経時劣化が少ないという高い耐久性を併せ持つということが分かる。
【0099】
実施例2
本発明の有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタの応用例として、有機薄膜トランジスタを用いた有機EL素子を説明する。
【0100】
《有機EL素子の作製》
有機EL素子の作製は、Nature,395巻,151〜154頁に記載の方法を参考にして、図4に示したような封止構造を有するトップエミッション型の有機EL素子を作製した。なお、図4において、101は基板、102aは陽極、102bは有機EL層(具体的には、電子輸送層、発光層、正孔輸送層等が含まれる)、102cは陰極を示し、陽極102a、有機EL層102b、陰極102cにより、発光素子102が形成されている。103は封止膜を示す。なお、本発明の有機EL素子は、ボトムエミッション型でもトップエミッション型のどちらでもよい。
【0101】
本発明の有機EL素子と本発明の有機薄膜トランジスタ(ここで、本発明の有機薄膜トランジスタは、スイッチングトランジスタや駆動トランジスタ等として用いられる)を組み合わせて、アクティブマトリクス型の発光素子を作製したが、その場合は、例えば、図5に示すように、ガラス基板601上にTFT602(有機薄膜トランジスタ602でもよい)が形成されている基板を用いる態様が一例として挙げられる。ここで、TFT602の作製方法は公知のTFTの作製方法が参照できる。もちろん、TFTとしては、従来公知のトップゲート型TFTであってもボトムゲート型TFTであっても構わない。
【0102】
上記で作製した有機EL素子は、単色、フルカラー、白色等の種々の発光形態において、良好な発光特性を示した。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】分子構造内に水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を導入した有機分子膜の分子配列構造のイメージ図である。
【図2】本発明の有機薄膜トランジスタの構成例を示す図である。
【図3】本発明の有機薄膜トランジスタシートの概略等価回路図の1例である。
【図4】封止構造を有する有機EL素子の一例を示す模式図である。
【図5】有機EL素子に用いる、TFTを有する基板の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0104】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
6 支持体
7 ゲートバスライン
8 ソースバスライン
10 有機薄膜トランジスタシート
11 有機薄膜トランジスタ
12 出力素子
13 蓄積コンデンサ
14 垂直駆動回路
15 水平駆動回路
101、201 基板
102 有機EL素子
102a、202 陽極
102b 有機EL層
102c、204 陰極
103 封止膜
205 駆動用素子
206 正孔輸送層
207 発光層
208 電子輸送層
601 基板
602 TFT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素結合供与性部分と水素結合受容性部分とを併せ持つ芳香族基を有し、かつ分子構造内に金属を含まない化合物を含有することを特徴とする有機半導体材料。
【請求項2】
前記芳香族基が2つ以上有ることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項3】
前記芳香族基が芳香族複素環基であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
前記芳香族複素環基が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【化1】

(式中、Aは5〜7員の含窒素複素環を表し、N及びNHを少なくとも一つ含む。)
【請求項5】
前記含窒素複素環が下記一般式(2)、(3)または(4)で表されるイミダゾール基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【化2】

(式中、R1〜R6は水素原子または置換基を表す。)
【請求項6】
前記分子構造内に金属を含まない化合物が下記一般式(5)、(6)または(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機半導体材料。
【化3】

(式中、Lは芳香族炭化水素環または芳香族複素環を表し、R11、R12、R21、R22、R31、R32、R41、R42、R51、R52、R61、R62は水素原子または置換基を表す。)
【請求項7】
前記Lがチオフェンオリゴマーを含み、チオフェン環数が2〜20であることを特徴とする請求項6に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
前記Lが下記一般式(8)で表される部分構造を有することを特徴とする請求項6または7に記載の有機半導体材料。
【化4】

(式中、R7は置換基を表す。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を含有することを特徴とする有機半導体膜。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を用いることを特徴とする有機半導体デバイス。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の有機半導体材料を半導体層に用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−59780(P2007−59780A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245727(P2005−245727)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】