説明

有機物含有水の生物処理方法および装置

【課題】栄養源としてリンを添加して有機物含有水を生物処理し、得られた生物処理液を膜濾過する際の膜汚染を防止する。
【解決手段】生物処理槽21から流出した生物処理液を凝集沈殿槽22で凝集処理する。得られた凝集処理液のリン酸濃度をリン酸濃度計43で測定し、この測定値が2mg/L以下となるよう、リン酸の添加量を調整する。凝集処理液にリン酸が2mg/L以下で残存することは許容され、生物処理槽21での生物処理に際してリン酸が不足しないよう、リン酸溶液は、ある程度、過剰添加してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有水を生物処理してられる生物処理液を凝集処理し、凝集処理液をさらに濾過膜して処理する方法および装置に関する。本発明は特に、半導体記憶装置や液晶表示装置などの電子機器類の製造に伴い排出される有機物含有水の生物処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物を含む下水や産業排水等の有機物含有水の処理に生物処理が広く用いられている。有機物含有水の生物処理では、生物処理槽に有機物含有水を導入して活性汚泥と呼ばれる微生物群集と混合して有機物を生物的に分解し、有機物が低減された生物処理液を得る。生物処理槽から取り出された状態の生物処理液は、微生物により構成される生物汚泥を含むため、沈殿池等の固液分離装置で処理される。
【0003】
近年では、生物処理液を純水の原料(原水)として利用することで、水資源を有効利用することが促進されている。一般に、純水を製造する際には、原水に含まれる塩類を除去するため、逆浸透(RO)膜装置等の脱塩装置による処理が行われている。生物処理液を固液分離して得られる液(分離液)には膜を目詰まりさせる高分子物質等が含まれうる。このため、生物処理液を再利用する際には分離液をさらに清澄化させることが求められている。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されるように、分離液を精密濾過(MF)膜のような濾過膜を備える膜濾過装置で濾過して清澄化し、得られた濾液を例えばRO膜装置で脱塩する処理が開発されている。このような水回収技術は、半導体記憶装置や液晶表示装置などの電子部品を製造する工場で多く採用されているが、電子部品製造過程で排出される排水は、膜を目詰まりさせる種々の物質を含む。
【0005】
膜を汚染する物質としては、微生物の代謝により生成される高分子物質(粘性物質)がある。特許文献1に開示された方法では、リン酸カルシウムを充填した吸着塔に膜濾過装置で濾過した濾液を導入することで、微生物が生成した高分子物質を除去した後、RO膜装置へ通液することで、膜の閉塞を防止する。また、特許文献2には、半導体製品や液晶製品の製造過程で使用されるフッ酸や窒素を含む排水の処理に用いられるカルシウムが膜を目詰まりさせることが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−238152号公報
【特許文献2】特開2003−266096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生物処理液を回収して再利用する際、膜の目詰まりを防止することは安定した水処理を行うために重要である。しかし、上述したように膜を目詰まりさせる要因は多岐に渡り、カルシウムをほとんど含まない電子部品製造排水を生物処理した生物処理液を膜で処理する場合でも膜の目詰まりが生じることがあった。
【0008】
本発明は、カルシウムをほとんど含まない有機物含有水、特に電子部品製造排水を生物処理し、膜で清澄化した後、再利用する際の膜の目詰まりを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、微生物の栄養源となるリンが、無機凝集剤と反応してリン酸化合物が生成されることで膜が目詰まりすることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明は以下を提供する。
【0010】
(1) 有機物含有水にリン酸を添加して生物処理し、
前記生物処理により得られた生物処理液に無機凝集剤を添加して凝集処理し、
前記凝集処理により得られた凝集処理液のリン酸濃度を測定し測定されたリン酸濃度に基づいて前記リン酸の添加量を調整し、
前記凝集処理液を膜濾過する有機物含有水の生物処理方法。
(2) 膜濾過する直前に前記凝集処理液のリン酸濃度を測定し、
前記凝集処理液のリン酸濃度が0.5mg/L以上2mg/L以下となるように前記リン酸の添加量を調整する(1)に記載の有機物含有水の生物処理方法。
(3) 有機物含有水にリン酸を添加するリン酸添加手段と、
前記リン酸が添加された有機物含有水を生物処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽から流出した生物処理液に無機凝集剤を添加して凝集処理する凝集処理手段と、
前記凝集処理手段から流出した凝集処理液のリン酸濃度を測定するリン酸濃度測定手段と、
前記リン酸濃度測定手段で測定されたリン濃度に基づいて前記リン酸添加手段を制御し前記リン酸の添加量を調整する調整手段と、
前記凝集処理液を膜濾過する膜濾過手段と、を備える有機物含有水の生物処理装置。
(4) 前記リン酸濃度測定手段は、前記膜濾過手段の直前に配置され、
前記調整手段は、前記凝集処理液のリン酸濃度が0.5mg/L以上2mg/L以下となるように前記リン酸添加手段を調整する(3)に記載の有機物含有水の生物処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品製造過程で排出され、リンやカルシウムをほとんど含まないような有機物含有水を生物処理して再利用する際の膜の目詰まりを防止できる。また、本発明によれば、リンの添加量を高精度で調整しなくても、前記有機物含有水を生物処理する際のリン不足による生物処理の不良と膜汚染防という、相反する課題を解決することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、有機物含有水の中でも特に、電子部品製造過程で排出される排水であってカルシウムおよびリンをほとんど含まない有機物含有水(以下、「電子系有機物含有排水」と称する)を好適な処理対象とする。具体的には、カルシウム濃度が1mg/L以下で、リン濃度が1mg/L未満で、有機物濃度が200mg/L程度の電子系有機物含有排水を好適な処理対象とする。以下、このような電子系有機物含有排水を処理する場合を例として説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施態様に係る生物処理装置1の模式図である。生物処理装置1は生物処理槽21、凝集沈殿槽22、精密濾過(MF)膜装置23、および逆浸透(RO)膜装置24をこの順に直列接続して構成されている。
【0014】
生物処理槽21には、原水管31が接続され、電子系有機物含有排水が原水管31を介して生物処理槽21に導入される。生物処理槽21には、有機物を分解する微生物(例えば好気性の活性汚泥)が保持され、槽内液に酸素を供給する散気管51が槽内に配置されている。
【0015】
生物処理槽21は、槽内の汚泥濃度(MLVSS)が2,000〜4,000mg/L程度に維持されることが好ましく、必要に応じて凝集沈殿槽22で液分と分離された固形分を返送汚泥として返送する。また、電子系有機物含有排水の有機物濃度が極端に低い場合(例えば100mg/L以下であるような場合)には微生物の増殖が少なくなる恐れがある。生物処理槽21内の微生物量が不足すると、有機物分解が良好に行われなくなるため、このような場合は有機物を添加したり有機物濃度の高い別の有機物含有水を混合したりして、生物処理槽21に導入される被処理水の有機物濃度が100〜400mg/L程度になるように調整するとよい。
【0016】
また、本実施態様では被処理水とする電子系有機物含有排水のリン濃度が低い。リンは微生物の必須栄養塩であるため、生物処理装置1ではリン酸添加手段を設けてリンを補充して生物処理を行う。具体的には、リン酸添加手段としてリン酸貯槽41およびリン添加路37を設け、生物処理槽21にリン添加路37を接続する。リン酸貯槽41にはリン酸溶液を貯留し、リン添加路37を介して生物処理槽21にリン酸を添加する。
【0017】
リン添加路37には、リン酸溶液の添加量を調整するポンプPを設け、後述する調整手段によりポンプPの回転数を調整してリン酸溶液の添加量を調整する。リン添加路37には、ポンプPに代えて流量調整弁や流路開閉弁等を設け、弁の開閉を制御してリン酸添加量を調整してもよい。リン酸添加の調整については、後に詳述する。
【0018】
リン酸を添加して生物処理槽21で電子系有機物含有排水を処理して得られる液(生物処理液)は、生物処理槽21から取り出された状態では、微生物体や残存有機物等を含んでいる。そこで、生物処理槽21と凝集沈殿槽22とを接続する第1送液管32を介して生物処理液を凝集沈殿槽22に導入する。
【0019】
凝集沈殿槽22は、凝集剤添加路38を介して凝集剤貯槽42と接続され、これらにより凝集処理手段が構成されている。凝集剤貯槽42には、無機凝集剤を貯留し、凝集剤添加路38から凝集剤を生物処理液に添加し、不溶性物質を凝集させて粗大化した固形分を液分と分離する。無機凝集剤としては、アルミ系凝集剤(ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等)および鉄系凝集剤(塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄等)が挙げられる。
【0020】
凝集剤は、100〜300mg/L程度の濃度で生物処理液に添加し、凝集沈殿槽22に設けた攪拌機52で攪拌して生物処理液と凝集剤を混合する。凝集剤により凝集された生物処理液中の不溶性物質は粗大化して重力沈降し凝集沈殿槽22から引き抜かれ、一部が返送汚泥として生物処理槽21に返送され、他部は余剰汚泥として排出される。なお、凝集沈殿槽22には固形分を引く抜く配管が接続され、この配管から汚泥を生物処理槽21に返送する返送配管が分岐しているが、これらの配管は図示を省略している。
【0021】
凝集沈殿槽22には、固形分と分離された液分(凝集処理液)を取り出す第2送液管33が接続されている。第2送液管33の末端にはMF膜を備えるMF膜装置23が配置されている。凝集処理液をさらに清澄化する装置としては、MF膜の代わりに限外濾過(UF)膜を備えた限外濾過膜装置を用いることも排除されない。
【0022】
凝集処理液を清澄化する膜濾過装置であるMF膜装置23の前には、リン酸濃度測定手段を設け、膜濾過装置に送られる凝集処理液中のリン酸濃度に基づいて生物処理槽21での生物処理に際して添加するリン酸溶液の添加量を調整する。凝集処理液のリン酸濃度の測定は、膜濾過装置の直前で行うことが好ましく、本実施態様ではMF膜装置23への液導入口にリン酸濃度測定手段としての全自動のリン酸濃度計43を接続している。
【0023】
本実施態様では、リン酸濃度計43はリン酸濃度測定手段と調整手段とを兼ねている。具体的には、リン酸濃度計43には、測定対象液のリン酸濃度の測定値に基づき、リン添加路37に設けたポンプPの回転数を調整する出力信号を発する制御回路が具備されている。リン添加路37に電磁式の開閉弁または流量調整弁を設ける場合は、弁の開閉または開き具合を調整する信号をリン酸濃度計43の制御回路が発するように構成すればよい。
【0024】
リン酸の添加量は、MF膜装置23の直前で採取されリン酸濃度の測定に供される凝集処理液のリン酸濃度が0.5mg/L以上2mg/L以下となるように調整する。本実施態様は、全自動のリン酸濃度計43から、リン酸添加量を自動で調整する構成としているが、リン酸濃度およびリン酸添加量の調整の両方またはいずれか一方を手動で行うことは排除されない。リン酸濃度計43に設ける制御回路としては、公知のマイクロプロセッサ等を用い、リン酸濃度の測定値を入力として、リン酸添加路37を流れるリン酸溶液の流量を調整する出力信号を発するように構成すればよい。
【0025】
一般に、リンをほとんど含まない電子系有機物含有排水を生物処理する際には、特許文献2に記載されるように、リン酸は過剰添加される。過剰添加され生物処理液に残存したリン酸は、生物処理液にカルシウムが存在する場合、リン酸カルシウムを生成して膜を目詰まりさせることが指摘されている。
【0026】
これに対し、電子系有機物含有排水がカルシウムを実質的に含まない場合には、リン酸カルシウムは生成されず膜の目詰まりは生じないと予測されるが、この場合でも膜が閉塞する場合があり、原因究明が求められていた。この課題に対し、本発明者は、生物処理の際に過剰添加されたリン酸と無機凝集剤とが反応して膜を目詰まりさせる物質が生成されることを見出した。
【0027】
詳述すると、本実施態様に示すように、微生物の栄養源として生物処理の際に添加するリン酸が生物処理液に残留し、生物処理液に添加された無機凝集剤とリン酸とが反応してリン酸アルミニウムやリン酸鉄等が生成される。生成されたリンの化合物は、凝集処理液に含まれて膜濾過装置に送られ、膜面に付着して膜の閉塞を引き起こす。
【0028】
そこで、本発明では凝集処理液を膜処理する直前でリン酸濃度を測定し、この測定値に基づいて生物処理に際して添加するリン酸の添加量を調整する。ただし上述したとおり、生物処理の際にリンが不足すると生物処理が良好に行われないため、リン酸は、生物処理に必要な量が供給されるように留意する必要がある。
【0029】
ここで、本発明者が検討したところ、被処理液にカルシウムが実質的に含まれない場合は、凝集処理液に0.5mg/L程度のリン酸が含まれていても膜汚染物質が生成されて膜を閉塞させる恐れは低い。このため、リン酸添加量の調整は、凝集処理液のリン酸濃度が2mg/L以下となるように調整すればよく、多少の(2mg/L未満)のリン酸が含まれる程度の過剰添加は許容される。よって、膜処理に供する液のリン酸濃度を0.5mg/L以下に調整することが求められる特許文献2に記載された技術に比べ、本発明ではリン酸の添加量の調整を高精度で行う必要がなく、リン酸の添加量を減らしすぎてしまうことによって生物処理が不良になる恐れも低減できる。すなわち、本発明ではリンの過剰添加による膜の閉塞およびリンの添加不足による生物処理不良という、相反する2つの問題を解決するために、リンの添加量の制御を高精度で行う必要を回避できる。
【0030】
MF膜装置23後段にはRO膜装置24が配置されている。MF膜装置23とRO膜装置24とは第3送液管34で接続され、MF膜装置23から流出した濾液は第3送液管34を介してRO膜装置24に送られる。RO膜装置24に送られた濾液は、RO膜装置24で脱塩され、純水製造に再利用される。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
図1に示した生物処理装置1を模した試験装置で、電子系有機物含有排水を処理した。電子系有機物含有排水は、カルシウム濃度0.57mg/L、リン濃度0.05mg/L、全有機物(TOC)濃度240mg/L、窒素濃度5.1mg/Lであった。生物処理槽21は、容量100m、好気性の活性汚泥を濃度2,000mg/Lで保持し、凝集沈殿槽22で液分と分離された固形分を返送汚泥としてポンプで返送した。生物処理槽21には、リン添加路37からリン酸貯槽41に貯留した濃度20%の活性汚泥栄養剤(栗田工業株式会社製、商品名「クリブレークN200」)を添加した。この活性汚泥栄養剤は、窒素とリンを含み、リン酸溶液の添加量は、リン酸濃度計43の測定値に基づき、MF膜装置23に供給される凝集処理液のリン酸濃度が2mg/L以下となるように調整した。リン酸添加量は、リン酸濃度計43からの出力信号により、リン添加路37に設けたポンプPの回転数を調整することで調整した。
【0032】
凝集沈殿槽22では、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を200mg/Lの濃度で生物処理液に添加し、pH6.5で凝集処理を行った。凝集沈殿槽22の後段に配置したMF膜装置23としては、孔径0.2μmの四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製のMF膜を備えるスパイラル式の装置を用いた。凝集処理液は0.1MPaの給水圧でMF膜装置23に供給した。MF膜装置23後段のRO膜装置24としては、ポリアミド製のRO膜を備えるスパイラル式の装置を用い、給水圧1.47MPaで給水した。
【0033】
実施例1では、上記条件で60日間、処理を継続し、上記給水圧で、MF膜装置23の膜モジュール1本当たり1トン/時間の流量で濾液を得ることができた。
【0034】
[比較例1]
比較例1では、リン酸濃度計43の測定値に基づくリン酸溶液添加量制御を停止した。その他は実施例1と同様の条件で電子系有機物含有排水を処理した。比較例1では、リン酸濃度計43で測定された凝集処理液のリン酸濃度は5〜20mg/Lで、平均値は10mg/Lであった。比較例1では、14日間の実験期間中に膜が汚染され、4日後にはMF膜装置23への給水圧は0.25MPaに上昇し、膜モジュール1本当たりの流量は0.1トン/時間に低下した。
【0035】
[参考例1]
参考例1として、MF膜装置23に供給する凝集処理液のリン酸濃度が0.5mg/L以下となるよう、リン酸溶液添加量を調整した。その他は実施例1と同様の条件で電子系有機物含有排水を処理した結果、実験開始から3日経過後のMF膜装置23への給水圧は0.06MPaで、膜モジュール1本当たりの流量は1トン/時間であった。
【0036】
[参考例2]
参考例2として、MF膜装置23に供給する凝集処理液のリン酸濃度が1.0mg/L以下となるよう、リン酸溶液添加量を調整した。その他は実施例1と同様の条件で電子系有機物含有排水を処理した結果、実験開始から3日経過後のMF膜装置23への給水圧は0.06MPaで、膜モジュール1本当たりの流量は1トン/時間であった。
【0037】
[参考例3]
参考例3として、MF膜装置23に供給する凝集処理液のリン酸濃度が2.0mg/L以下となるよう、リン酸溶液添加量を調整した。その他は実施例1と同様の条件で電子系有機物含有排水を処理した結果、実験開始から3日経過後のMF膜装置23への給水圧は0.06MPaで、膜モジュール1本当たりの流量は1トン/時間であった。
【0038】
[参考例4]
参考例4として、MF膜装置23に供給する凝集処理液のリン酸濃度が2.2mg/L以下となるよう、リン酸溶液添加量を調整した。その他は実施例1と同様の条件で電子系有機物含有排水を処理した結果、実験開始から3日経過後のMF膜装置23への給水圧は0.13MPaで、膜モジュール1本当たりの流量は0.8トン/時間であった。
【0039】
これらの参考例から、凝集処理液のリン酸濃度が2.0mg/Lを超えると、膜汚染が急速に進行する一方、凝集処理液のリン酸濃度が2.0mg/L以下であれば膜の急速な汚染が生じないことが示された。よって、リン酸の供給不足を防止するため、多少のリン酸の過剰添加は許容できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、電子部品製造過程で排出される有機物含有水の処理に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施態様に係る処理装置の模式図。
【符号の説明】
【0042】
1 生物処理装置
21 生物処理槽
22 凝集沈殿槽(凝集処理手段)
23 精密濾過膜装置(膜濾過手段)
24 逆浸透膜装置
37 リン添加路(リン酸添加手段)
38 凝集剤添加路(凝集処理手段)
41 リン酸貯槽(リン酸添加手段)
42 凝集剤貯槽(凝集処理手段)
43 リン酸濃度計(リン酸添加手段および調整手段)
P ポンプ(リン酸添加手段および調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有水にリン酸を添加して生物処理し、
前記生物処理により得られた生物処理液に無機凝集剤を添加して凝集処理し、
前記凝集処理により得られた凝集処理液のリン酸濃度を測定し測定されたリン酸濃度に基づいて前記リン酸の添加量を調整し、
前記凝集処理液を膜濾過する有機物含有水の生物処理方法。
【請求項2】
膜濾過する直前に前記凝集処理液のリン酸濃度を測定し、
前記凝集処理液のリン酸濃度が0.5mg/L以上2mg/L以下となるように前記リン酸の添加量を調整する請求項1に記載の有機物含有水の生物処理方法。
【請求項3】
有機物含有水にリン酸を添加するリン酸添加手段と、
前記リン酸が添加された有機物含有水を生物処理する生物処理槽と、
前記生物処理槽から流出した生物処理液に無機凝集剤を添加して凝集処理する凝集処理手段と、
前記凝集処理手段から流出した凝集処理液のリン酸濃度を測定するリン酸濃度測定手段と、
前記リン酸濃度測定手段で測定されたリン濃度に基づいて前記リン酸添加手段を制御し前記リン酸の添加量を調整する調整手段と、
前記凝集処理液を膜濾過する膜濾過手段と、を備える有機物含有水の生物処理装置。
【請求項4】
前記リン酸濃度測定手段は、前記膜濾過手段の直前に配置され、
前記調整手段は、前記凝集処理液のリン酸濃度が0.5mg/L以上2mg/L以下となるように前記リン酸添加手段を調整する請求項3に記載の有機物含有水の生物処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−214082(P2009−214082A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63415(P2008−63415)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】