説明

有機積層部材、色変換部材およびその製造方法

【課題】 有機積層部材、特にフルカラー有機ELディスプレイ等に用いられる色変換部材の製造工程数を減らし、安定的に微細なパターンを形成でき、生産性を向上できる製造方法を提供する。
【解決手段】 基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材の製造方法であって、前記第1有機物層と第2有機物層とを単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機積層部材とその製造方法、特に好適には有機ELカラーディスプレイに使用される色変換部材とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パターニングした有機物層を積層してなる有機積層部材は様々な分野で用いられているが、そのうちの1つに有機ELディスプレイなどのカラーディスプレイに用いられる蛍光体層と外光遮断層(カラーフィルター)を積層した色変換部材がある。このような色変換部材(外光遮断層および蛍光体層)は、例えば特開平9−115668号公報や1998 SID International Symposium Digest of Technical Papers/Vol XXIXp.7-10に開示されている。
【0003】このような色変換部材を用いた有機ELディスプレイは、典型的には、青色発光有機EL素子を、任意の蛍光変換材料(CCM材料)を用いることにより緑色および赤色に変換し、RGBの3色を取り出すことによりフルカラー化を行う。現在既に青色発光EL素子が実用化レベルの性能を有しており、これを光源にしたG、Rの蛍光発光に関しても、高効率なものが得られている。この方式による有機ELカラーディスプレイは、EL素子が単色で済み、一般的なフォトリソグラフィー法により色変換部材が形成できるので、EL材料の利用効率が高く、高精細化が容易で、生産性も高いという長所がある。そして、蛍光体層に入り込む外光により蛍光体層が励起され、EL素子の非発光状態においても蛍光体層が蛍光を発生して、コントラストが低下してしまう問題を解消するため、前記文献に開示されているように、蛍光体層の外側(外光の入射側)に、蛍光体層の励起波長を遮断し、かつ、蛍光波長を透過する外光遮断層を配置して、コントラストの向上を図り、発光色の色純度を向上させることが行われている。
【0004】しかしながら、このような色変換方式において用いられる色変換部材において、積層された外光遮断層と蛍光体層が混ざり込み、外光遮断層成分が、EL素子の発光または蛍光を吸収して、色変換性能を著しく低下させる場合があった。また、外光遮断層内に蛍光体層成分が混ざり込むと、外光により蛍光体層成分が蛍光を発するため、コントラストを低下させる場合があった。さらに、このような色変換方式において用いられる色変換部材を一般的なフォトリソグラフィー法により作製する際には、外光遮断層については、少なくともR,Gの2回、ならびに蛍光体層についてR,Gの2回、計4回(パターンの数だけ)のフォトリソグラフィーを行なうことになる。このフォトリソグラフィー工程は、感材塗布、乾燥、露光、現像、焼成を行なうものであるので、蛍光体層と外光遮断層を併用した色変換部材を作製するとき、結果的に製造工程数が非常に多くなる。したがって、工程数、歩留まり、生産性、コストの面での問題が生じ、フォトリソグラフィー工程数の減少が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、有機積層部材、特にフルカラー有機ELディスプレイ等に用いられる色変換部材に関し、高性能な色変換性能を有する色変換部材を提供することである。
【0006】また、本発明の目的は、少ない工程数で、安定的に微細なパターンを形成でき、有機積層部材、特にフルカラー有機ELディスプレイ等に用いられる色変換部材の生産性を著しく向上できる製造方法を提供することである。
【0007】本発明の目的はさらに、そのような色変換部材を用いたフルカラー有機ELディスプレイを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、複数の層が、互いの機能を妨げず、高性能な機能を発揮する有機積層部材の構成、および、その効率的な製造法を見出し本発明を完成させた。
【0009】したがって本発明の有機積層部材の製造方法は、基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材の製造方法であって、前記第1有機物層と第2有機物層とを単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングすることを特徴とする方法である。
【0010】また、本発明の有機積層部材は、基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材であって、前記第1有機物層と第2有機物層とが作成時に互いに混ざり合わない材料から構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】有機積層部材の製造方法本発明の有機積層部材の製造方法は、基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材の製造方法であって、前記第1有機物層と第2有機物層とを単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングすることを特徴としている。この方法においては、積層される有機物層は2層以上あれば何層でもよく、有機物層の間に、保護層など任意の層が積層されていてもよい。さらに単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングされる有機物層は、これらの積層された有機物層の全てでも一部でもよく、2層以上あれば何層でもよく、単一のフォトリソグラフィー工程でパターニングされる有機物層の間に、無機化合物等、任意の層が積層されていてもよい。
【0012】ここで、単一のフォトグラフィー工程とは、塗布、乾燥、露光、現像および/またはエッチングの工程を含む一連の工程を意味する。この工程内には、適宜、焼成工程が含まれていてもよい。なお、単一とはいっても、例えば、層毎に異なる薬液を用いて現像することも含まれる。具体的には例えば、第1液を塗布、乾燥後、続いて第2液を塗布、乾燥して、以後の露光、現像、エッチング、焼成工程について再度塗布、乾燥工程に戻ることなく工程を進められることを含む。より具体的には例えば、塗布■→乾燥■→塗布■→乾燥■→露光→現像(■→現像■)→エッチング(■→エッチング■)→焼成という工程が挙げられる。
【0013】色変換部材の製造方法また、本発明の色変換部材の製造方法は、基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材の製造方法であって、前記第1有機物層と第2有機物層とを単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングすることを特徴とする方法において、前記第1有機物層が蛍光体層であり、前記第2有機物層が前記蛍光体層の励起波長を遮断し、かつ、蛍光体層の蛍光波長を透過する外光遮断層である、または、 前記第2有機物層が蛍光体層であり、前記第1有機物層が外光遮断層である方法である。
【0014】この方法においては、少なくとも、基材/外光遮断層/蛍光体層または基材/蛍光体層/外光遮断層の積層順であれば、その他に任意の層がいずれの位置に積層されていてもよい。また、この任意の層は上記の単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングされる層であってもされない層であってもよい。
【0015】図1は、本発明の色変換部材の製造工程の例を説明する図である。図1(a)の透明基材1上に、図1(b)のようにブラックマトリクス2を形成する。その後、図1(c)のように青色外光遮断層3を塗布し、さらに、図1(d)のように青色蛍光体層4を塗布し、図1(e)のようにパターン露光・現像を行う。同様に緑色外光遮断層3’、緑色蛍光体層4’、赤色外光遮断層3”、赤色蛍光体層4”を形成すると図1(f)のようになり、さらに図1(g)のようにオーバーコート5を形成して色変換部材が完成する。
【0016】これに対し図2は従来の色変換部材の製造工程の例を説明する図である。図2(a)の透明基材1上に、図2(b)のようにブラックマトリクス2を形成する。その後、図2(c)のように青色外光遮断層3をパターニングし、ついで図2(d)のように緑色外光遮断層3’をパターニングし、さらに、図2(e)のように赤色外光遮断層3”をパターニングする。その後、図2R>2(f)のように青色蛍光体層4をパターニングし、ついで図2(g)のように緑色蛍光体層4’をパターニングし、さらに図2(h)のように赤色蛍光体層4”をパターニングする。そして図2(i)のようにオーバーコート5を形成して色変換部材が完成する。
【0017】このような色変換部材の製造においては、従来の製造法では、露光・現像によるパターニングの回数が、3色の外光遮断層毎に3回と3色の蛍光体層毎の3回、合計6回必要であるのに対し、本発明の製造方法では、外光遮断層と蛍光体層を一括して、さらに保護層を設けるときには保護層も一括してパターニングするため、露光・現像の回数が合計でも3回と少なくすることができ優れている。
【0018】有機積層部材本発明の有機積層部材は、基材と基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材であって、第1有機物層と第2有機物層とが作成時に互いに混ざり合わない材料から構成されている。好ましくは第1有機物層と第2有機物層との間に作成時に第1有機物層と第2有機物層とが混ざり合うことを防止する保護層を設けることができる。また、本発明の有機積層部材の製造方法により製造されたものであれば本発明の有機積層部材である。また、好ましくは有機物層が、基材上に平面的に分離配置されているものとすることができる。
【0019】色変換部材本発明の有機積層部材は、好適には色変換部材とすることができる。
【0020】色変換部材は、本発明の有機積層部材において、第1有機物層が蛍光体層であり、第2有機物層が蛍光体層の励起波長を遮断し、かつ、蛍光体層の蛍光波長を透過する外光遮断層とする、または、第2有機物層が蛍光体層であり、第1有機物層を外光遮断層とすることで得ることができる。
【0021】ここで、蛍光体層は、蛍光体層側に配置されたEL素子などの光源からの光を吸収し、より長波長の光に蛍光変換する層である。
【0022】また、外光遮断層は、侵入する外光の蛍光体励起波長を吸収し、かつ、蛍光体層からの蛍光を透過させることにより、コントラスト特性を向上させる層である。外光遮断層は、必要に応じて、蛍光色の色純度を向上させる役割も行う。
【0023】色変換部材においては、従来のように外光遮断層と蛍光体層との界面において、両者の材料が混ざり合っている場合、外光遮断層成分が、EL素子の発光または蛍光体層の蛍光を吸収して、色変換性能を著しく低下させてしまう。また、外光遮断層内に蛍光体層成分が混ざり込むと、外光により蛍光体層成分が蛍光を発するため、著しくコントラストを低下させてしまう。
【0024】したがって、本発明ではこれら外光遮断層と蛍光体層は、前述の有機物層と同様に、作成時に互いに混ざり合わない材料から形成する。好ましくは例えば、外光遮断層を水溶液から形成し、色変換フィルターを有機溶媒の溶液から形成することや、外光遮断層を有機溶媒の溶液から形成し、色変換フィルターを水溶液から形成することができる。
【0025】この色変換部材と有機EL素子とを組み合わせて、カラーディスプレイとすることもできる。
【0026】有機物層本発明における有機物層は、有機物を含むものであれば特に限定されることはなく、基材上に形成された第1有機物層と第1有機物層上に形成する第2有機物層から少なくともなることができる。そして、第1有機物層と第2有機物層とを、作成時に互いに混ざり合わない材料から形成する。
【0027】本発明における「作成時に互いに混ざり合わない」とは、第1有機物層形成時、第2有機物層形成時およびパターニング時、焼成時を含め最終工程終了まで互いに混ざり合わず、作成終了後に機能が損なわれていないことを意味する。
【0028】また、別の好ましい態様としては、第1有機物層と第2有機物層との間に、互いが混ざり合うことを防止するための保護層が設けられている。
【0029】本発明において、混ざり合わないとは、例えば固形化された第1有機物層が第2有機物層を形成するための塗液にこの製造方法において溶出し、その結果両層の界面を不均一に著しく乱さないことを意味する。
【0030】互いに混ざり合わないような第1有機物層と第2有機物層の組み合わせとしては、例えば表面張力の差が大きな材料の組合わせや、水に可溶な材料と有機溶媒に可溶な材料との組合わせを挙げることができる。表面張力の大小関係は、簡易的には水接触角の大小関係で判断することができる。
【0031】具体的には、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート重合体、ポリアクリル酸等)のような極性基を有する樹脂膜表面の水接触角は20〜30°程度の値を示し、アクリル酸エステル樹脂膜表面の水接触角は50〜70°程度の値を示す。このように、水接触角が好ましくは20°以上異なる材料の組合わせを選定することにより、互いに混ざり合わないようにすることができる。
【0032】また、どちらも有機溶媒に可溶な系で混ざり合わない材料としては、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂と、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム、環状ポリオレフィン、ノボラック樹脂、または、アクリル酸エステル樹脂と、環化ゴム、環状ポリオレフィンとの組み合せのように、有機溶媒に対する溶解性が異なる樹脂を挙げることができる。
【0033】より具体的には、第2有機物層を溶解する溶媒(例えば溶媒100gに対する溶質の溶解量の百分率である溶解度が1%以上)にて、第1有機物層が溶解しない、または溶解しにくい(例えば溶解度が1%未満)という有機物層の組合わせが好ましい。例えば、第1有機物層にポリアミック酸樹脂を用い、第2有機物層にアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体を用いた場合、ポリアミック酸樹脂は、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体を溶解するエステル系溶媒には溶解しない。また、第1有機物層にアクリル酸エステル樹脂を用い、第2有機物層に環状ポリオレフィンを用いた場合、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体は、環状ポリオレフィンを溶解する炭化水素系溶媒には溶解しない。このような組み合わせにより、第1有機物層と第2有機物層は混ざり合わないことになる。
【0034】保護層第1有機物層と第2有機物層との塗布液の表面張力差が余りない場合、例えば両者の水接触角差が20°未満の場合や、第1有機物層と第2有機物層のある特定の溶媒に対する溶解性が類似している場合には、好適には第1有機物層と第2有機物層との間に保護層を設けることにより、二つの有機物層を混ざり合わないようにすることができる。二つの有機物層が混ざり合いにくい場合であっても、保護層を設けることは構わない。
【0035】保護層として用いる材料としては、第1および/もしくは第2有機物層表面の水接触角との差が好ましくは20°以上あること、または、第1および/もしくは第2有機物層の溶媒に溶解しないことが望ましい。20°未満の場合、または、第1および第2有機物層の溶媒に溶解する場合には、第1有機物層と保護層、または保護層と第2有機物層とが互いに混ざり合い、所望の特性が発現することを妨げるからである。また、保護層は、好ましくは第1有機物層および/または第2有機物層で用いるパターニング液(現像液)でパターニングされるものとすることができる。
【0036】保護層に用いる材料としては、例えば第1有機物層および第2有機物層として、有機溶媒に可溶なアクリル系樹脂を用いる場合には、水溶性ポリマー層を用いることにより、各層が互いに混ざり合うことを防止することができる。
【0037】また、保護層に用いる材料として、無機化合物も挙げることができる。例えば、金等の金属、酸化錫、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ホウ酸、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化鉛、ジルコニア、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、フッ化カルシウム等の1種または2種以上の無機酸化物、無機窒化物が挙げられる。
【0038】保護層は、外光遮断層や蛍光体層の色変換部材の機能を有してもよく、さらには色変換部材の特性を向上させる機能を有してもよい。具体的には、顔料分散系外光遮断膜の分光特性を補正するものとして、染料系色素を含有する保護層を設けてもよい。色変換部材の特性を向上させない場合には、可視光領域において透過率が高い方(50%以上)が望ましい。
【0039】ここで、複数の有機物層が混ざりあっているか否かは、積層した層の断面を観察するか、それぞれの層成分を分光的または化学的に分析することにより判定することができる。具体的には、層断面の光学顕微鏡観察や、SEM(Scanning Electron Microscopy)観察にて、層界面が明確なこと、または、層の成分をAES(Auger Electron Microscopy)、EPMA、XPS、ダイナミックシムス、トフシムス等の分光分析、層材料をIR、NMR、UV−Vis、ICP等の化学分析により膜界面に層成分が混在しない場合に有機物層が混ざりあっていないと判断できる。また、色変換部材の特性を乱さない閾値としては、白色または青色などの特定光源を用いた透過率測定や放射輝度測定において、特性を50%以上低下させないものとすることもできる。
【0040】基材本発明において基材は、有機積層部材または色変換部材に強度を付与するために設けられるものであり、材料は特に限定されるものではない。色変換部材に用いる場合であって、基材が光取り出し側に設けられる場合では、少なくとも可視光線のうち取り出される光が透過するものであれば限定されず、光源光を受けて蛍光体層に光を透過させるべき部位に設けられる場合は、少なくとも光源光を透過すれば限定されず、光源からみて光取り出し側と反対面に基材が設けられる場合には、基材にAlやAgなどの薄膜を設け反射率の高い基材とすることができる。
【0041】また、基材は任意に設定する使用レジストの焼成温度において、変形を伴う軟化をせず、溶融しないものとする。さらにこの温度において変質したり、光取り出し効率が低下しない基材が望ましい。例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどのガラス基板や、ポリエーテルサルフォンフィルムなとの150℃以上のガラス転移温度を有するフィルム基材が好ましい。
【0042】有機EL素子と組み合わせて使用する場合、水分および酸素による有機EL素子発光部の非発光領域(ダークスポット)の成長に伴う発光特性の低下を抑制するため、基材は水蒸気バリア性および酸素バリア性に優れた基材が好ましい。具体的には、水蒸気透過率が40℃/100%RH測定下で、10−3g/(m・day・atom)以下、酸素透過率が25℃/90%RH測定下で、10cc/(m・day・atom)以下であることが望ましい。
【0043】
【実施例】実施例1(基材)縦50mm、横50mm、厚さ0.7mmのガラス基板(日本電気硝子株式会社製OA−10)を準備した。
【0044】(外光遮断層の製膜)上記ガラス基板上に外光遮断層として、赤色カラーフィルター材料(新日鉄化学株式会社製V259R:30%アントラキノン系顔料含有アクリル酸エステル系光硬化型レジスト)をスピンコート塗布し、クリーンオーブン中80℃で15分間プリベイク(PB)を行なった。
【0045】(保護層の製膜)この上にPVA−sbq水溶液(大日本印刷株式会社製:ポリビニルアルコール系光硬化型レジスト)をスピンコート塗布し、真空クリーンオーブン中80℃で15分間プリベイク(PB)を行なった。
【0046】(蛍光体層の製膜)次に、クマリン6:0.03mol/kg(固形分中)、ローダミン6G:1重量%(固形分中)、ローダミンB:1重量%(固形分中)になるように、それぞれをアクリル酸エステル系光硬化型レジスト(新日鉄化学株式会社製V259PA/PH5、50%固形分濃度)中に混合して、赤色蛍光材料(固形分45%、溶媒:プロピレングルコールメチルエーテルアセテート)を調製した。
【0047】次に、先の保護層上に、赤色蛍光材料をスピンコート塗布し、同様にプリベイクを行なった。
【0048】(露光・現像)続いて、この積層膜を、露光機(光源:高圧水銀灯)を用いて、L/S=50μm/100μmのストライプパターンが得られる石英製クロムマスクを介して、露光量が1500mJ/cm(波長365nmにおける積算量)となる条件でパターン露光し、0.5重量%水酸化カリウム水溶液を用いて室温で1分間揺動現像した。
【0049】(ポストベーク)続いてクリーンオーブン中180℃で30分間焼成(POB)を行うことにより、外光遮断層/保護層/蛍光体層のパターン基板を得た。このときの積層膜の膜厚は約12μmであった。
【0050】実施例2(基材)実施例1と同様な基材を用意した。
【0051】(外光遮断層の製膜)上記ガラス基板上に外光遮断層として、赤色カラーフィルター材料(30%アントラキノン系顔料含有PVA−sbq水系分散液(PVA−sbq:大日本印刷株式会社製ポリビニルアルコール系光硬化型レジスト)をスピンコート塗布し、クリーンオーブン中80℃で15分間プリベイク(PB)を行なった。
【0052】(蛍光体層の製膜)実施例1と同様に行った。
【0053】(露光・現象)実施例1と同様に行った。
【0054】(ポストペーク)続いてクリーンオーブン中180℃で30分間焼成(POB)を行うことにより、外光遮断層/蛍光体層のパターン基板を得た。このときの積層膜の膜厚は約10μmであった。
【0055】実施例3(基材)実施例1と同様な基材を用意した。
【0056】(外光遮断層の製膜)上記ガラス基板上に外光遮断層として、赤色カラーフィルター材料(30%アントラキノン系顔料含有ポリアミック酸分散液(ポリアミック酸:東レ株式会社製SP910)をスピンコート塗布し、クリーンオーブン中140℃で15分間プリベイク(PB)を行なった。
【0057】(蛍光体層の製膜)実施例1と同様に行った。
【0058】(露光・現像)続いて、この積層膜を、露光機(光源:高圧水銀灯)を用いて、L/S=50μm/100μmのストライプパターンが得られる石英製クロムマスクを介して、露光量が1500mJ/cm(波長365nmにおける積算量)となる条件でパターン露光し、0.5重量%水酸化カリウム水溶液を用いて室温で1分間揺動現像した。
【0059】(ボストペーク)続いてクリーンオーブン中180℃で30分間焼成(POB)を行うことにより、外光遮断層/蛍光体層のパターン基板を得た。このときの積層膜の膜厚は約10μmであった。
【0060】比較例1保護膜を製膜しなかったこと以外は実施例1と同様にして、外光遮断層/蛍光体層パターン基板を得た。このときの積層膜の膜厚は約10μmであった。
【0061】比較例2(基材)実施例1と同様な基材を用意した。
【0062】(外光遮断層の製膜、パターニング)外光遮断層として、赤色カラーフィルター材料(新日鉄化学株式会社製V259R:30%アントラキノン系顔料含有アクリル酸エステル系光硬化型レジスト)をスピンコート塗布し、クリーンオーブン中80℃で15分間プリベイク(PB)を行なった。次に、これを露光機(光源:高圧水銀灯)を用いて、L/S=50μm/100μmのストライプパターンが得られる石英製クロムマスクを介して、露光量が1500mJ/cm(波長365nmにおける積算量)となる条件でパターン露光し、0.5重量%水酸化カリウム水溶液を用いて室温で1分間揺動現像した。
【0063】続いてクリーンオーブン中180℃で30分間焼成(POB)を行うことにより、外光遮断層パターン基板を得た。このときの外光遮断層の膜厚は約1μmであった。
【0064】(蛍光体層の製膜、パターニング)次に、クマリン6:0.03mol/:kg(固形分中)、ローダミン6G:1重量%(固形分中)、ローダミンB:1重量%(固形分中)になるように、それぞれをアクリル酸エステル系光硬化型レジスト(新日鉄化学株式会社製V259PA/PH5.50%固形分濃度)中に混合して、赤色蛍光材料(固形分45%、溶媒:プロピレングルコールメチルエーテルアセテート)を調製した。
【0065】次に、先の外光遮断層パターン上に、赤色蛍光材料をスピンコート塗布し、同様にプリベイクを行なった。
【0066】続いて、この積層膜を、アライメント機能を有する露光機(光源:高圧水銀灯)を用いて、L/S=50μm/100μmのストライプパターンが得られる石英製クロムマスクを介して、露光量が1500mJ/cm(波長365nmにおける積算量)となる条件で、先の外光遮断層パターンに重ねるように位置合わせを行い、パターン露光し、0.5重量%水酸化カリウム水溶液を用いて室温で1分間揺動現像した。
【0067】続いてクリーンオーブン中180℃で30分間焼成(POB)を行うことにより、外光遮断層/蛍光体層のパターン基板を得た。このときの積層膜の膜厚は約10μmであった。
【0068】このように、外光遮断層/蛍光体層のパターン基板を得るのに、2回のフォトリソ工程を行う必要があるのに対し、実施例は1回の工程でよく、工程数が実施例に比べて多いのは明らかである。
【0069】これらの実施例、比較例の製造条件を表1に示す。
【表1】


【0070】評価これらの実施例、比較例について以下のような評価を行った。
【0071】(分光特性評価)上記の方法で作製した基板の蛍光体層面を下にして、青色励起光源(ピーク波長470nm、半値幅50nmの青色LED)に重ね、100μmのライン部分から基板の外光遮断層側に取り出される赤色光のスペクトルを顕微分光測定装置(顕微鏡:ニコン株式会社製、分光器:大塚電子株式会社製MCPD−2000)により測定した。
【0072】一方、基板を重ねない状態での青色励起光源自体の発光スペクトルを測定した。
【0073】以上により得られたスペクトルと等色関数との演算から輝度および色度(CIE1931)を算出した。
【0074】色変換部材の評価指標として、以下の式に従い、輝度変換効率を算出した。
【0075】輝度変換効率=(基板を重ねたときの輝度)/(青色LEDの輝度)
なお、青色LEDを青色有機EL素子に置き換えても、同等の色変換部材の評価ができた。
【0076】(パターン形成評価)上記の方法で作製した基板の断面形状を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
【0077】これらの評価結果を表2に示した。
【表2】


【0078】以上の結果から、比較例1および2の従来プロセスにおける色変換部材と比較して、実施例の色変換部材は輝度変換効率が向上した。
【0079】また、工程数の著しく減少した外光遮断層/蛍光体層を含む色変換部材の製造が可能であることが実証された。
【0080】また本発明の色変換部材は、パターン露光を行なうことによりフルカラーディスプレイに適用することが可能である。
【0081】
【発明の効果】本発明によって、有機積層部材、特にフルカラー有機ELディスプレイ等に用いられる色変換部材の性能を向上できる。また、製造工程数を減らし、安定的に微細なパターンを形成でき、著しく生産性を向上できる製造方法を提供でき、その結果、歩留まり、生産性、コストの面での改善ができる。さらにそのような色変換部材を用いたフルカラー有機ELディスプレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の色変換部材の製造方法例を説明する図である。
【図2】従来の色変換部材の製造方法例を説明する図である。
【符号の説明】
1 透明基材
2 ブラックマトリクス
3 青色外光遮断層
3’緑色外光遮断層
3”赤色外光遮断層
4 青色蛍光体層
4’緑色蛍光体層
4”赤色蛍光体層
5 オーバーコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材の製造方法であって、前記第1有機物層と第2有機物層とを単一のフォトリソグラフィー工程によってパターニングすることを特徴とする、有機積層部材の製造方法。
【請求項2】前記第1有機物層と前記第2有機物層とを、作成時に互いに混ざり合わない材料から形成する、請求項1に記載の有機積層部材の製造方法。
【請求項3】前記第1有機物層を水溶液から形成し、前記第2有機物層を有機溶媒の溶液から形成する、請求項2に記載の有機積層部材の製造方法。
【請求項4】前記第1有機物層を有機溶媒の溶液から形成し、前記第2有機物層を水溶液から形成する、請求項2に記載の有機積層部材の製造方法。
【請求項5】前記第1有機物層と前記第2有機物層との間に、作成時に前記第1有機物層および/または前記第2有機物層と混ざり合わない材料からなる保護層を設け、前記第1有機物層と前記第2有機物層とが作成時に互いに混ざり合うことを防止する、請求項1に記載の有機積層部材の製造方法。
【請求項6】前記保護層を水溶液から形成する、請求項5に記載の有機積層部材の製造方法。
【請求項7】前記保護層を水溶性ポリマーを含む水溶液から形成する、請求項6に記載の有機積層部材の製造方法。
【請求項8】請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機積層部材の製造方法であって、前記第1有機物層が蛍光体層であり、前記第2有機物層が前記蛍光体層の励起波長を遮断し、かつ、蛍光体層の蛍光波長を透過する外光遮断層である、または、 前記第2有機物層が蛍光体層であり、前記第1有機物層が外光遮断層である、色変換部材の製造方法。
【請求項9】基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材であって、前記第1有機物層と第2有機物層とが作成時に互いに混ざり合わない材料から構成されていることを特徴とする、有機積層部材。
【請求項10】基材と、前記基材上に少なくとも第1有機物層と第2有機物層とが順次積層された有機物層とからなる有機積層部材であって、前記第1有機物層と前記第2有機物層との間に作成時に前記第1有機物層と前記第2有機物層とが混ざり合うことを防止する保護層が設けられていることを特徴とする、有機積層部材。
【請求項11】前記保護層が、水溶性ポリマーから作成された層である、請求項10に記載の有機積層部材。
【請求項12】請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって製造された、有機積層部材。
【請求項13】前記有機物層が、基材上に平面的に分離配置されている請求項9〜12のいずれか1項に記載の有機積層部材。
【請求項14】請求項9〜13のいずれか1項に記載の有機積層部材であって、前記第1有機物層が蛍光体層であり、前記第2有機物層が前記蛍光体層の励起波長を遮断し、かつ、蛍光体層の蛍光波長を透過する外光遮断層である、または、 前記第2有機物層が蛍光体層であり、前記第1有機物層が外光遮断層である、色変換部材。
【請求項15】請求項14に記載の色変換部材とEL素子とを組み合わせてなるカラーディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−217846(P2003−217846A)
【公開日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−17062(P2002−17062)
【出願日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】